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企業における不動産マネジメントに関する動向調査(2

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企業における不動産マネジメントに関する動向調査(2
8100
日本建築学会大会学術講演梗概集
(中国) 2008年 9 月
企業における不動産マネジメントに関する動向調査(2)
不動産
NPV
企業
キャッシュフロー
正会員
正会員
正会員
マネジメント
企業価値
○
秋元佑介*
小松幸夫**
板谷敏正***
表 1.地域別利用形態
(件数)
表 2.業種別利用形態
(件数)
1.研究背景と目的
前報では企業における不動産マネジメントに関する動
向調査として、公開情報やアンケート調査により企業が
所有及び利用する不動産の現状及び今後の動向について
調査を行った。結果として、各企業の不動産所有の傾向
について分類及び評価することができた。本研究は、前
回の調査に引き続き行った企業の不動産マネジメントに
関する調査・分析を行う。前回の調査では企業が保有す
る不動産全てを対象として調査を行ったが、本調査では
全ての会社に共通して存在する「本社機能」の不動産
(以下本社)を対象として、現状及び今後の動向につい
賃借コストの削減
て調査を行うとともに、本社を「所有」する場合と「賃
借」する場合のそれぞれについてモデルケースを想定し、
60
立地性
中長期的なキャッシュフローに関する分析評価を行った
97
15
取得価格が安かった
結果についても報告する。
自社仕様の建物が必要
55
2.アンケート調査
セキュリティ対応
東京証券取引所一部上場かつ資本金十億円以上の企業
28
良いテナントビルがない
約 1700 社を対象に、本社の利用形態についての実態調査
8
0
を目的とした、郵送によるアンケートを行った。アンケ
20
40
60
80
100
120
図 1.本社施設を所有する理由について(件数)
ートは各社の不動産管理部門あるいは管財部門あてに送
付し回収率は 13.8%であった。全体でみると本社施設を
32
本社取得の投資コスト削減
賃借する企業が 39%、所有する企業の割合が 61%という
が所有を上回り、それ以外の地域では所有の割合のほう
33
フレキシブルな移転や増床が可能
が大きいという結果になった(表 1)。また、業種別に見
てみると、製造業や金融業では所有の割合が大きく、情
58
立地性
調査結果になった。地域別に見ると、東京は賃借の割合
13
資産を削減し、ROAを向上させる
2
減損会計導入の際にオフバランスした
報通信業等は賃借の割合が所有を大きく上回るという結
果となった(表 2)。今後の利用については本社を所有し
0
ている企業の大半は今後も所有していくという回答が大
いったものがあげられ、課題としては維持管理費用・建
物の老朽化・テナント確保が難しいといったものがあげ
られていた。賃借の理由としては、立地性・フレキシブ
ルな移転及び増床・投資コスト低減などがあげられ、課
題としてレイアウト・設備の自由度が低いことがあげら
20
40
60
80
100
120
図 2.本社施設を賃借する理由について(件数)
半であった。また、所有することの理由としてはセキュ
リティ・自社仕様にできる・立地性・賃借コスト削減と
6
有利子負債削減のために売却した
3.利用形態別キャッシュフローシミュレーション
平成 15 年法人土地建物基本調査、土地白書等各種調査
書をみると法人の不動産利用の傾向は、売却・取得の抑
制・利用形態の見直し、特に収益性の低い不動産の売却
というように、なるべく不動産資産を持たない方向にあ
るといえる。しかし、アンケートの結果では所有をして
いる企業が非常に多く、今後も現状を維持していくとい
れていた。(図 1・図 2)
う回答が非常に多かった。賃借での利用と所有での利用
Research on the Trend and Management of Japanese Corporate
Real Estate(Part2).
Yusuke AKIMOTO, Yukio KOMATSU, Toshimasa ITAYA
―1321―
は、各企業にとってのメリットやリスクを総合的に判断
0
するとともに、各企業の経営方針や立地戦略などに基づ
-1000
1)2)
-2000
の一要素となる中長期的なキャッシュフロー(以下 CF)
-3000
に着目し、それぞれについて分析評価を行った。評価は
モデル不動産(表 3)を想定し、将来の CF を算出した。
NPV(百万円)
、本研究では、企業判断
いて判断されるものであるが
建設費坪単価60万円
建設費坪単価70万円
建設費坪単価80万円
建設費坪単価90万円
建設費坪単価100万円
建設費坪単価110万円
建設費坪単価120万円
-4000
-5000
また、算出した CF については、割引率を適用して現在価
-6000
値(Net Present Value:以下 NPV)を算出する現在価値
-7000
0.5
換算法を用い、賃借する場合と所有の場合の比較分析を
1
1.5
2
建設費に対する土地取得費比率(建設費/土地取得費)
図 4.
行った。今回のシミュレーションではどちらも割引率を
2.5
所有した場合の NPV
7%とし 10 年間の CF について NPV を算出した。
0
表.3 モデル不動産の概要
-1000
NPV(百万円)
-2000
-3000
-4000
-5000
3-1)
-6000
所有で利用する場合の条件
所有する場合の条件を表 4 に示す。減価償却による節
-7000
賃料15000円
た。建設費は坪単価 60 万円から 120 万円まで変化させ、
さらに建設工事費に対する土地取得費の比率を 0.5 から
賃料25000円
賃料30000円
賃料35000円
賃料40000円
賃料45000円
賃料50000円
賃料(坪単価)
税効果を考慮するとともに、修繕維持等の費用は J-REIT
の公開情報より想定不動産に近いものから平均を算出し
賃料20000円
図 5.
賃借した場合の NPV
NPV の結果から、賃借においては賃料、所有においては
土地取得費が重要な要素となっていることが確認された。
2.5 まで変化させて、それぞれが NPV に与える影響を分析
例えば、建設単価 80 万円/坪で本社を建設する場合、土地
することとした。
取得費が建設費と同額(土地取得比率 1.0)だった場合に、
表4
NPV は-3,000 百万円程度となり、賃料 3.0 万円/坪の賃借
所有の場合の条件
のケースと同額となる。取得費や賃料がこの条件より過
大になった場合は、それぞれ NPV は悪化する。
4.まとめ
アンケート調査では各企業の本社の利用動向や課題等
を抽出することができた。10 年間 NPV 評価を行った結果
3-2)
では、所有の場合は初期投資から最後の転売にいたるま
賃借で利用する場合の条件
賃借での利用の条件を表 5 に示す。また、賃料を坪単
でに検討課題が非常に多いことと、建設費や土地取得費
価で 15000 円から 50000 円位までと想定し、その変化に
が NPV に与える影響を数値化することができた。賃借の
よる NPV への影響を分析した。
場合は賃料が NPV に与える影響を数値化できた。本社の
表5
利用形態は、企業の経営戦略や立地戦略あるいは企業規
賃借の場合の条件
模など様々な観点から総合判断されるものであるが、
NPV は企業価値の一部を構成しており
4)
、NPV の適正化
はひとつの目安になると考えられる。
【参考文献】
1)CRE 研究会/CRE 戦略と企業経営/東洋経済新報社/2006
2)国土交通省土地水資源局CRE研究会/CRE戦略を実践する
3-3)
ためのガイドライン/国土交通省ホームページ/2008 年 3 月
シミュレーション結果
実際にシミュレーションを行い、現在価値換算を行っ
た結果のグラフを以下に示す。
*早稲田大学大学院創造理工学研究科修士課程
**早稲田大学建築学科教授・工学博士
***早稲田大学大学院理工学研究科博士課程
3)
経理情報(2006.10.1)No、1128/KPMG
4)朝岡大輔/戦略的コーポレートファイナンス/NTT 出版/2006
* Graduate School of Creative Science and Eng. Waseda UNIV.
** Faculty of Architecture. Waseda UNIV. Professor, Dr Eng.
*** Graduate School of Science and Eng. Waseda UNIV.
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