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学校周辺の自然観察学習をサポ〟 トする教材 ・ 教具の開発とその活用
学校周辺の自然観察学習をサポートする教材・教具の開発とその活用 専攻 教育実践高度化 コース 小学校教員養成特別 学籍番号 P09067G 氏名 門野真司 第I章 研究の目的と研究の方法の概要 ンピュータや情報通信ネットワークなどの情報 手段に慣れ親しみ,適切に活用する学習活動を充 第】1章 小学校における理科教育の概要 実するとともに,視聴覚教材や学習機器などの教 第皿章 Wθb生物検索図鑑を用いた授業づくり 材・教具の適切な活用を図ること」(3)とあるよう 第1V章 研究成果をもとにした授業改善案 に,I CTを活用した新たな学習方法が求められ 1.研究報告書の構成 第V章 研究の成果と今後の課題と展望 ている。 これらを踏まえ,本研究では学校周辺の自然観 2.研究の概要 察による学習と,その支援システムとしてのWeb 新たな理科の目標として,平成20年3月改訂 生物検索図鑑を用いた授業を実践した。そして, の小学校学習指導要によるとr実感を伴った理解」 発話記録とワークシートの記述などの分析・考察 という文言が新たに加えられた。これによって, からWeb生物検索図鑑の有効性を明らかにする 「より一層具体的な体験を通しての理解を促す ことを目的とした。 こと,主体的な問題解決を通して理解を促すこと, そして,実際の自然や生活と関連付けて理解を促 3.研究の対象と方法 すこと」(1)が重要になった。このr実感を伴った 研究の対象は以下のとおりである。 理解」を児童らに促すためには,実際に生物を観 (1)期間 2011年9月∼2011年12月 察・飼育したり,野外へ出掛け地域の自然に親し (2)対象校 明石市立沢池小学校 む活動や体験的な活動を多く取り入れる必要が (3)対象児童沢池小学校3年3組24人 ある。 次に,研究方法は以下のとおりである。 このように,理科の学習ではより直接的体験活 (1)沢池小学校の植物・動物図鑑の作成 動が重視されるようになった。しかし,教育内容 授業で用いるWeb生物検索図鑑を作成するた の増加とともに授業時数が増加したとはいえ,十 めに,沢池小学校に生息する植物と動物の画像記 分な観察の時間や,外に出て自然に親しむ活動の 録と種の同定を行い,データ化した。主に樹木が 時間は十分ではないように思える。特に,自然の 図鑑データの対象である。 観察などにおいては,学校の環境,天候,教員の (2)授業実践 知識・技能などに大きく左右されるものである。 Web生物検索図鑑を用いた授業を検討し,実践 中でも,小学校教員の理科の指導について,小学 した。その際,まず,事前に質聞紙を実施し,理 校の学級担任として理科を教える教員の約3分の 科,特に自然に関する意識調査で興味・関心の度 2が観察・実験についての知識・技能について「や 合いを測った。同時に図鑑やPCの利用に関して や低い」かr低い」と感じており12),子どもの理 の経験や技能についての実態も探った。次に,授 科離れの要因となっていると推察される。 業中の児童の言葉やワークシートヘの記述を分 さらに,学習指導要領総則によると「児童がコ 析した。これらのことから,Web生物検索図鑑を 一114一 用いた授業が有効であったか検証した。 うことが,発話記録とワークシートの分析の結果 4研究の成果 考察された。また(2)は,実践における課題を 事前アンケートの相関分析から,自然体験の有 構造的課題と活用の方法の課題の2つに分け,そ 無が,理科学習における児童の主体的な働きかけ れぞれの課題を改善するための具体的な改善 に影響を与えているということが明らかになっ 案・方法を示すことができた。 た。また,PCやインターネットを使う頻度は全 体的に高く,自らが使えると感じている児童が7 5.総括と今後の課題 割以上だということがわかった。 この実践は,理科ではなく総合的な学習の時間 Web生物検索図鑑(以下本教材)を活用した授 として行った。それは,環境体験学習との関連を 業実践では,4時間の授業を行うことができた。 意識してのことである。確かに,関連が深く理科 単元の流れは,「観察」→「本教材の活用」→「発 の学習としても成立するものだった。しかし,実 表」である。以下に実際に使用した本教材の一部 際の第3学年「身近な自然の観察」での実践では を示す。なお,同定できた樹木の種は64,その内 ないため,理科学習として研究の成果があったと 教材化できたのは中庭の25であった。 言い切ることはできない。例えば,時間的,目標 的,評価的な観点から総合的な学習との違いは否 めない。このことか阜,本実践で得られた成果を もとに,理科学習へと具体的に落とし込む必要が あると考える。 また,改善案の実践の検証ができていないとい うことも課題である。その検証の結果得られた成 果や課題をもとに,さらなる改善を加えてよりよ い授業を実践していきたい。ここで得られた成果 や課題は,本教材の活用のみならず理科学習にお ける様々な場面において生かされるものである と考える。 本研究での実践を通して,自然の観察だけでな く理科学習そのものへの示唆を得ることができ 図1帖b生物検索図鑑のトップページ た。今後はそれを生かして,更なる教材研究をし, 次に,授業実践において,発話記録での質的研 授業力を磨いていきたい。 究と,ワークシートの記述のカテゴリ別の数値化 での量的研究を行った。その結果,研究の成果と 主な引用・参考文献 (1)文部科学省:『平成20年度版小学校学習指導要領 して明らかになったことは以下の2点である。 (1)本教材が,自然の観察の学習において有効 .に活用されるということがわかった 解説一理科編・』,東洋館出版社,2009年 (2)国立教育政策研究所:『理数教育部分にかかる調 査研究』,2009年 (2)本教材を活用した自然の観察の学習におい て,本実践の省察から改善案を示すことが できた (1)は,本教材が,実感を伴った理解を促す ための問題解決の過程で有効に活用されるとい 一115一 (3)文部科学省:『平成20年度版小学校学習指導要領 一・総則』,東洋出版社,2009年 Web生物検索図鑑URL: 修学指導教員:小学校教員養成特別コース特任教授 坂口 隆康