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美術科
美術科 ■新学習指導要領において、美術科で重視されていること ①思考・判断し、表現するなどの造形的な創造活動の基礎的な能力の育成 ②各学校段階の内容の連続性についての配慮 ③生活を美しく豊かにする造形や美術の働きを実感させるような指導の重視 ④思いを語り合ったり、価値意識をもって批評し合ったりするなど、鑑賞指導の重視 ⑤我が国の美術や文化に関する指導の一層の重視 ■題材名【第3学年】 ・あかりに願いを込めて(全14時) ■題材の目標 ・作品に込めた願いを明確にし、その願いを基に和紙と木の特性や作品の形、和紙の加工の仕 方に関心をもちながら表現しようとする。(美術への関心・意欲・態度) ・直線・曲線のよさを生かした形の工夫、和紙の色や貼り方の工夫と自分の主題とのつながり を考えるとともに、作品の機能や美しさについても考えを深め、それらを生かして豊かに発 想し構想する。(発想や構想の能力) ・和紙と木の特性を考え、その特性を生かすとともに、安全面や強度面についての配慮をしな がら美しく表現する。(創造的な技能) ・感性や想像力を働かせ、あかりの作品に込められた仲間の願いや意図、創造的な技能の工夫 などを深く感じ取り理解する。(鑑賞の能力) ■本題材を取り上げた意図 あかりは、多くの中学校で取り組まれている題材である。本題材では、美術科で育成する資質 や能力「美術科への関心・意欲・態度」「発想や構想の能力」「創造的な技能」「鑑賞の能力」を バランスよく身に付けることができる。特に、「発想や構想の能力」と「創造的な技能」は、そ れぞれ単独で指導するものではなく、原則として関連付けて指導することが求められている。そ れは、「発想や構想の能力」と「創造的な技能」とが関連し合うことにより、相互の資質や能力 が一層高まるためである。 また、教育基本法において、教育の目標に伝統と文化を尊重する態度を養うことが新たに規定 され、各教科でその充実を図ることが求められている。本題材は、美濃市に古くから伝わる美濃 和紙を扱う。その美濃和紙を材料として用いたあかりの制作を通して、日本美術、伝統文化への 関心・意欲・態度を高めるとともに、それらの理解を図ることを重視したい。 以上の理由から、本題材を取り上げた。 ■題材指導計画を作成する上で留意したいこと ・単位時間の役割を明確にするとともに、題材全体を「主題を生み出す段階」「発想・構想す る段階」「技能を身に付け発揮する段階」「鑑賞する段階」の4段階に分けて捉え構想した。 ・中学校においては、主たる学習として、主題を生み出し、それを基に構想することが求めら れる。本題材においても、「主題を生み出す段階」を題材指導計画の第 1 時に位置付けた。 ・「共通事項」である「形や色彩、材料、光などの性質や、それらがもたらす感情を理解する こと」「形や色彩の特徴をなどを基に、対象のもつイメージをとらえること」を、表現及び 鑑賞の各活動に適切に位置付けた。 ■本時のねらい・展開例・指導計画作成時のポイント 第1時「作品に込める自分の願いを明らかにしよう」 題材の導入 本時のねらい 様々なあかりの作品を鑑賞し、そのよさや美しさについて交流したり、作品に込めたい自分の願いを文章化 したりすることを通して、自分の主題を明らかにするとともに、用途や機能等を考えてあかりの作品を表現す ることへの関心をもつことができる。 本時の展開 指導計画作成時のポイント ○美濃市で開催されている「あかりアート展」の様子やそこに出品さ れている作品について、映像を用いて鑑賞する。 題材導入のポイント ○「あかりアート展」の様子やそこに出品されている作品を見て、感 じたこと、考えたことを交流する。 作品制作に対する関心を高めるた T:今、みなさんが見た作品は、美濃市で毎年開催されている「あか めの工夫 りアート展」に出品された作品です。これらの作品はすべて美濃 和紙が使用されています。作品を見て、感じたこと、考えたこと □題材導入時に、生徒が憧れを抱き、 制作への関心を高めるための手立 を発表してください。 てを講じることは大変重要である。 C:似たような作品がなく、どれも工夫があっておもしろいと思いま 本題材においては、 「あかりアート す。私は、和紙に青く着色してある作品が特におもしろいと思い 展」の様子やそこに出品されている ました。自分も和紙を青くしたいと思います。 作品を映像を通して紹介すること C:美濃和紙を使用しているため、どの作品も光が温かくて、柔らか で、作品づくりへの関心を高める。 い感じがします。 その際、できるだけ多様な作品を紹 C:作品の形だけでなく、和紙に着色をしたり、穴をあけたり、何枚 介することで、和紙を中心としたあ も重ねたりするなど、貼る和紙についてもいろいろな工夫がして かりの表現でも、表現の可能性を追 あると思いました。 求し、多様に表現することができる ○本時の課題を確認する。 ことを感じ取らせたい。 自分の作品に込める願いを明らかにしよう。 ○配布された学習プリントに、作品に込める願いや用途等を記入する。 ○学習プリントに記入した作品に込めたい願いについて交流する。 C:入試のこともあってなかなか忙しい毎日なので、このあかりの作 品を見たときぐらいはほっとすることができるような作品をつく 自分の主題を生み出すための工夫 りたいです。そのためには、作品から漏れてくる光をできるだけ □生徒が主題を生み出す際、題材その 優しい感じにしようと思います。 ものを自分のものとして受け止め、 C:今、何か自分に元気が足りないと思うことが多いです。だから、 主題を考えやすくするよう配慮す そんな自分に元気を与えてくれるようなあかりの作品にしたいで ることが必要である。本題材におい す。そこで、作品から漏れてくる光は、自分を元気付けてくれる ては、学習プリントにあかりの作品 ような黄や赤にしようと思います。また、あかりを着けていない に込めたい思いを文章化すること ときも作品を見て元気ができるように、全体を丸い形にしたいで で、生徒の主題が明らかになるよう す。 配慮する。 C:この世界が平和であって欲しいという願いを作品に込めたいと思 います。 います。この作品を見たとき、みんなが優しい気持ちになってく れるといいです。そのため、作品から優しい光が漏れてくるよう な工夫をしたいと思います。電球の周りをすべて和紙で囲んでし まい、直接光が漏れてこないようにすることを考えています。 T:一人一人の願いが強いものであることがよく分かりました。また、 <評価の観点> その願いを基に作品の具体的なイメージまで考えている点がよい 【美術への関心・意欲・態度】 です。今度は、その願いを表す形を考えます。形を考えるというこ 【鑑賞の能力】 は、単なる形状の工夫だけでなく、その用途や機能まで考えること を言います。自宅にある照明器具について、どのような工夫がある か調べてきてください。 【授業と家庭学習との関連を図った指導】 家庭学習:自宅の照明器具(できれば間接照明)の形状について、どのような工夫があるのかを調べておく。 このことにより、作品の形を考える際、造形的な工夫だけでなく、用途や機能についても同時に考えるこ とが必要であることを理解させたい。 → 第2時「自分の主題を表すシェードの形を考えよう。」へとつながる。 第2時「自分の主題を表すあかりの形を考えよう。 」 本時のねらい 自分の主題を表すあかりの形を考え交流する中で、安全面や強度面についても考慮しなければならないこと を理解し、自分の作品に生かすことができる。 本時の展開 指導計画作成時のポイント ○本時の課題を確認する。 用途や機能面について考慮させる 自分の主題を表すあかりの形を考えよう。 ための工夫 ○まずは制約のない中で自分の主題を表すあかりの形を考えスケッチ □白熱灯は、エネルギーの約90%が熱 する。 に変わるため、表面の温度が高くな ○今、自分が考えている作品を実際に使用した場合、起こりうる問題 る。したがって、シェードと電灯は、 点等を班内で交流する。 C:シェードが電球に近くなっているため、燃える危険性があると思います。 C:作品の下の方が細くて不安定であるため、 倒れてしまう恐れがあり、危険だと思います。 ○自分が考えた作品を安全面、強度面 という観点から見直し、修正していく。 シェードの上部が空いている場合は 4㎝、空いていない場合は20㎝程度 確保しなければならない。このことを アイデアスケッチの段階から理解さ せていく。このことを掲示物等でも示 すようにする。 <評価の観点> 【発想や構想の能力】 第3時「これまで考えてきたあかりの形を見直そう。」 本時のねらい 仲間の作品から、直線と曲線の効果を生かしたり、それらを組み合わせたりすることで自分の主題を表すこ とができることを理解し、これまで考えてきた自分の主題を表わすあかりの形を見直すことができる。 本時の展開 指導計画作成時のポイント ○本時の課題を確認する。 言語活動の充実のための工夫 これまで考えてきたあかりの形を見直そう。 「形」と「イ ○仲間のスケッチを鑑賞し、形について工夫してある点を発表し合う。 □生徒に発言させる際、 メージ」をつなげる共通事項の視点 <A さんの作品について> <B さんの作品について> を意識させる。 C:A さんの作品は尖った部分が多くて 鋭 C:B 君の作品は丸い部分が多用されて い感じがする。 C:骨組みには真っ直ぐに伸びた木の枝を 使ってやると鋭さが増すと思う。 いて明るくて元気な感じがする。 C:Cさんのように骨組みに竹ひごと角 材 を組み合わせるとよいと思う。 ○直線や曲線の効果を生かしたり、それらを組み合わせたりすれば、 主題を表す形を表すことができることを理解し、さらにスケッチを 進める。 ○寸法を入れた設計図を作成する。 <共通事項> ア 形や色彩、材料、光などの性質や、それ らがもたらす感情を理解すること。 イ 形や色彩の特徴などを基に、対象のイメ ージをとらえること。 <評価の観点> 【発想や構想の能力】 第4時「安全面や強度面について考慮しながら、自分の主題を表すあかりの設計図を完成させよう。 」 本時のねらい 作品の骨組みに用いるために選択した木の特徴を生かしながら、さらに自分の主題を表すあかりの形を構想 することができる。 本時の展開 指導計画作成時のポイント ○本時の課題を確認する。 発想・構想を高めるための工夫 安全面や強度面について確認しながら、自分の主題を表すあかり の設計図を完成させよう。 □材料の材質感についても考えなが ら構想させるために、材料コーナー ○第2時で学習した安全面や強度面について確認しながら、設計図の を設け、竹ひご、角材、自然木に触 作成を進める。 りながら構想しようとする生徒に 対応する。 ○班内で完成した設計図を交流する。 <材料コーナー>→ <評価の観点> 【発想や構想の能力】 第5時「自分の主題を表す形の骨組みに合った木を選択しよう。 」 本時のねらい 竹ひご、角材、自然木に触れ、木の性質を知るとともに、自分の主題を表すために作品の骨組みにはどの材 料を用いればよいのかをつかみ、材料を選ぶことができる。 本時の展開 指導計画作成時のポイント ○本時の課題を確認する。 発想・構想を高めるための工夫 自分の主題を表す形の骨組みに合った木を選択しよう。 ○各班のテーブル毎に並べてある竹ひご、角材、自然木に実際に触れ □テーブルには竹ひご、角材、自然木 を少量ずつ並べておく。竹ひごと角 てみるとともに、これらの材料をシェードの骨組みに使うことを知 材はそれぞれ1m のものを、自然木 る。 については木の枝とアケビやフジ ○竹ひご、角材、自然木が、それぞれどのようなシェードの形に合う のつるを準備する。材料を視覚だけ のかを交流する。 でとらえさせるだけではなく、実際 C:竹ひごは、曲線を多用した作品に合うと思います。 に触れさせ、材料の材質感について C:角材は、直線を多用した作品に合うと思います。 理解させた上で構想させるように C:自然木は、不規則な形をした作品に合うと思います。 する。 ○自分の作品の骨組みには、どの材料を用いればよいのかをこれまで <評価の観点> のアイデアスケッチを基に構想する。 【発想や構想の能力】 ○自分は骨組みにどの材料を用いるのかを班内で交流し合う。 第6時「木の切断や接合の仕方を知り、正確に木を切断し接合しよう。」 本時のねらい 竹ひご、角材、自然木の切断や接合の仕方を知るとともに、設計図を基にしながら骨組みに使用する木を正 確に切断し接合することができる。 本時の展開 指導計画作成時のポイント ○本時の課題を確認する。 基礎的・基本的な技能定着のための 木の切断や接合の仕方を知り、正確に木を切断し接合しよう。 工夫 ○学習プリントを見ながら、竹ひご、角材、自然木の切断や接合の仕 □一人一人に木の切断の仕方や接合 方の説明を聞く。 の仕方を正しく理解させるため、竹 ○自宅からもってきた材料以外に、材料コーナーにある竹ひご、角材、 ひご、角材、自然木のそれぞれの切 断の仕方や接合の仕方を示した学 自然木の中から必要な材料を選ぶ。 習プリントを準備し説明する。 □正確に切断したり接合したりする ○自宅からもってきたり、材料コーナーから選んできたりした材料の ことができない生徒には示範し理 寸法を測り、糸のこぎりやのこぎりを使って必要な長さに切断して 解させる。 いく。 <評価の観点> 【創造的な技能】 第7時「強度面で問題が生じないように正確に木を切断するとともに、木を接合しよう。 」 本時のねらい 班内での交流を生かしながら、強度面で問題が生じないように正確に木を切断するとともに、木を接合し、 骨組みをつくることができる 本時の展開 指導計画作成時のポイント ○班内で作品を交流し、骨組みの強度面で十分にできているところに 基礎的・基本的な技能定着のための ついては学び合い、不十分なところは指摘し合う。 工夫 ○本時の課題を確認する。 □第6時で示した学習 強度面で問題が生じないように正確に木を切断するとともに、木 プリントの他に、美 を接合しよう。 術室の掲示物等でも ○班交流を生かし、正確に骨組みを切断する。 正しい切断・接合の ○電球セットを組み立て、この時点で骨組みに取り付けなければなら 仕方を理解させてい ない場合は取り付けてから制作を進める。 く。 ○釘や酢酸ビニル樹脂エマルジョン接着剤、ホットメルト接着剤、瞬 <評価の観点> 間接着剤、木綿糸、たこ糸を使って接合する。 【発想や構想の能力】 第8時「強度面で問題が生じないように正確に木を接合しよう。 」 本時のねらい 強度面で問題が生じないように正確に木を接合し、骨組みをつくることができる。 本時の展開 指導計画作成時のポイント ○本時の課題を確認する。 基礎的・基本的な技能定着のための 強度面で問題が生じないように正確に木を接合しよう。 工夫 ○前時の続きで、釘や酢酸ビニル樹脂エマルジョン接着剤、ホットメ □班隊形で制作させることで、班交流 ルト接着剤、瞬間接着剤、木綿糸、たこ糸を使って接合する。 の場がなくても、自然と助言し合う ○実際に地面に置いて強度を確認したり、接合箇所を手で引っ張り確 姿を生み出すようにする。 認したりすることで、骨組みをより正確なものにしていく。 <評価の観点> 【創造的な技能】 第9時「形に歪みが出ているところを中心に修正をして、骨組みを仕上げよう。 」 本時のねらい 形に歪みが出ているところを中心に修正をして、骨組みを仕上げることができる。 本時の展開 指導計画作成時のポイント ○本時の課題を確認する。 基礎的・基本的な技能定着のための 形に歪みが出ているところを中心に修正をして、骨組みを仕上げ 工夫 よう。 □表現傾向ごとに指導する場を大切 ○使用している材料ごとに説明を受け、修正のポイントをつかむ。 にしたい。本時は、生徒が使用して ・角材 → ぐらつかないように接地面がそろっているか。 いる材料ごとに指導する。 ・竹ひご → 接地面の強度を高めるために針金を巻き付ける。 ○形に歪みが出ているところを切断し直したり、接合し直したりして、 <評価の観点> 【創造的な技能】 可能な限り修正していく。 ○骨組みが紙によって隠れない部分については、着色をするか、木そ のものの色を生かすかを選択し、着色する場合についてはオイルス テインやアクリル塗料などを使って着色していく。 第10時「和紙の色や厚さを変化させることで、光の色や明るさを変え、自分が求める光の感じに近づけよう。 」 本時のねらい 光を和らげたり拡散させたりするという和紙の性質を理解するとともに、和紙の色や厚さの違いで透過する 光の色が変わってくることを知り、光の明るさに変化をつけるために和紙の厚さを変えたり、光の色を変える ために和紙に色をつけたりするなどの構想を立てることができる。 本時の展開 指導計画作成時のポイント ○日本家屋に古くから使用されている障子の効果について意見を交流 発想・構想を高めるための工夫 し合う。 <色に関する資料>→ C:太陽の光を和らげるためにある。 □和紙の厚さや色の種類を書いた学 C:光を部屋全体に広げる効果がある。 習プリントや掲示物を準備する。特 ○本時の課題を確認する。 に色について、その色を使用するこ 和紙の色や厚さを変化させることで、光の色や明るさを変え、自 とでどのような光の効果が得られ 分が求める光の感じに近づけよう。 るのかが可能な限りわかる資料を 準備する。 ○学習プリントや掲示物を見ながら、和紙の色や厚さを変化させる方 □本制作でも使用する和紙を一人に 法を知る。 つき一枚準備する。複数試してみた ・和紙の厚さ、種類(厚手、薄手、雲竜) いという生徒の要求に応えられる ・和紙の色(赤、黄、青)→染め方(染色液に浸す、筆で染色液や絵 ように、多めに和紙を準備してお の具を塗る) く。 ○自分が求める光の感じが出るような和紙の厚さ、色を選び、試し用 の和紙を使って表現してみる。(可能であれば光を通しながら制作 <評価の観点> する) 【発想や構想の能力】 第11時「自分の主題にあった和紙の加工方法を見つけ出そう。 」 題材の中核となる時間 本時のねらい 資料を見たり、仲間の発想した和紙の加工の仕方を聞いたり、自分で試したりしながら、自分の主題を基に 和紙を染色液で染めたり、和紙を重ねて貼ったり、和紙に切り込みを入れたりするなどの和紙を加工する方法 について発想し構想することができる。 本時の展開 指導計画作成時のポイント ○和紙を染め、骨組みに貼ろうとしている生徒の作品を鑑賞し、そこ 題材の中核となる時間のポイント に込められた願いを知る。 C:自分がこのあかりを見たときにほっと一息 できるような、落ち着いた作品にするため に和紙を橙色に染め、骨組みに貼ろうとし ています。また、和紙と和紙の間にすき間 をあけることで、直接光が漏れるようにし ました。これからは、その上に白い和紙を 細かくちぎって、少しずつ重ねながら、雲 が広がるようなイメージで加工したいです。 生徒の発想・構想を引き出し、高め るための工夫 □参考資料選定のポイント ○本時の課題を確認する。 自分の主題にあった和紙の加工方法を見つけ出そう。 ○同じ形で和紙を染色液で染めた参考作品と和紙を重ねて貼った参考 作品を見て、よさを中心に感じたことを発表する。 T:どちらも自分を癒してくれるあかりということで制作しましたが、和紙を染色液で染め た作品(A)と和紙を重ねて貼った作品(B)のどちらが好きですか。それぞれのよさを 中心に発表してください。 (A)について C:和紙が橙色で染められているので、 漏れてくる光も橙色で、癒してくれ る感じがします。 C:私は橙色の光を見て、癒しというよ りも、元気付けてくれる感じがする ので、染める色を赤くします。 C:薄い和紙を使っているので、もう少 し厚手の和紙を使えば、橙色も落ち 着いた感じになり、癒しの感じが出 てくると思います。 (B)について C:普通の和紙よりも厚みが増している ので、漏れてくる光も弱くなり、癒 してくれる感じが出ています。 C:暗い感じがするので、和紙の厚さを 変え、薄い和紙を重ねるようにすれ ば、丁度いい感じがすると思いま す。 C:和紙を重ねる前に、和紙を赤っぽく 染めてから貼るようにすれば、癒し てくれる感じが出ると思います。 (A)の作品のように、和紙を染めてみる。 →染める色をさらに追求し、和紙を染め てみる。 →和紙を染めてから、その和紙同士を重 ねてみようとする。 (B)の作品のように、和紙を重ねて貼る。 →全体に和紙を貼ってから、さらにその 上に細かくちぎった和紙を貼る。 →全体に和紙を貼った後、染めた和紙を 細かくちぎってその上に貼る。 ・資料が生徒の発想・構想に結び付くように するためには、生徒の実態把握、本題材の 場合は、作品にどのような願いを込めてい るのか、その主題の基、どのよう工夫をし ようと考えているのかを詳細に把握して おく必要がある。 ・生徒の発想・構想が画一的にならないよう にするため、できるだけ生徒に示す資料は 多様にする必要がある。 ・一斉指導において参考資料を示す場合は、 時間の関係で2~3パターンの資料しか 提示することができない。今回は、和紙を 染色液に染めた作品(A)と和紙を重ねて貼 った作品(B)の二つを提示することにし た。その他のパターン(墨汁を垂らす、和 紙に切り込みを入れるなど)については、 掲示資料として示すようにするとよい。 □電子黒板や大型テレビ等で該当生 徒の作品を提示しながら紹介する ようにする。その際、制作途中の作 品や制作の様子等をデジタルカメ ラで撮影し、併せて紹介するように するとよい。 ○仲間の作品や二つの参考作品の表現から自分の作品を見直し、 自分 の主題にあったものにするための和紙の加工方法を考え制作する。 言語活動を充実させるための工夫 □美術科の授業においては、自分一人 で表現を追求する時間を大切にし たい。しかし、発想や構想の能力を 広げ深めるためには、言葉によって 新たな和紙の加工方法を生み出す。 →和紙に切り込みを入れ、直接光の効果を 自分の考えを整理したり、仲間の意 生かそうとする。 見を聞いたりする場も必要である。 →和紙に墨汁を垂らし、それを全体に貼る。 本時は授業の終末において、次時に ○本時の制作を振り返り、よくなった点や課題点を班で交流し合う。 つなげるために班での交流を位置 C:私は、ただ和紙染めて表現しようとしていたけれど、厚めの和紙を染めて明るさを変え 付けた。 てみたことで自分が求めていた柔らかな光になってきました。 このように、生徒の発想や構想の C:薄めの和紙に赤く色を着けた和紙を重ねたことで元気が出るような光の感じが出てき 能力を広げ深めるために有効であ ました。でも、もっと元気な感じにするために貼る和紙の数を増やしていきたいです。 る場合に交流を位置付けたい。 ○本時の制作において、自分の主題を基に試行錯誤しながら和紙の加 工の仕方に工夫を加えることができた生徒を紹介する。 T:最初に紹介した A さんは、ほっと一息できるような、落ち着いた作品にするため、和紙 を橙色に染めました。その後、その和紙の上に白い和紙を細かくちぎって、少しずつ重 いきました。A さんがイメージしていた雲が広がる感じが出てきましたね。ほっと一息 できるような、落ち着いた作品に近づいてきました。次回は、加工した和紙を骨組みに 貼っていきます。 評価の観点> 【発想や構想の能力】 第12時「シェードにしわがつかないように、和紙を正確に糊付けしよう。 」 本時のねらい しわをつけずに和紙を骨組みに糊付けしていく方法を理解するとともに、和紙を正確に骨組みに糊付けする ことができる。 本時の展開 指導計画作成時のポイント ○本時の課題を確認する。 基礎的・基本的な技能定着のための シェードにしわがつかないように、和紙を正確に糊付けしよう。 工夫 ○学習プリントを見ながら、しわがつかないように骨組みに糊付けし □紙をしめらせることで紙が伸び、乾 ていく方法を知る。 くことで紙が縮むことを教え、その ○紙に水を含ませながら少しずつ骨組みに糊付けしていく。 伸縮を利用して糊付けしていくこ とを理解させる。そのために、骨組 みに糊を付け、その上に水で湿らせ た和紙を貼り付けていく過程を示 した学習プリントを準備する。 <評価の観点> 【創造的な技能】 第13時「光が漏れていないかを確かめながら和紙を糊付けし、作品を完成させよう。 」 本時のねらい 和紙が正確に貼れてないために光が漏れてないかを確かめながら和紙を糊付けし、作品を完成させることが できる。 本時の展開 指導計画作成時のポイント ○本時の課題を確認する。 基礎的・基本的な技能定着のための 光が漏れていないかを確かめながら和紙を糊付けし、作品を完成 工夫 させよう。 ○実際に作品を点灯させ、和紙が正確に貼れてないために作品から光 □班隊形で制作させることで、班交流 の場がなくても、自然と助言し合う が漏れている箇所を確認し、光が漏れている場合は和紙を貼り直し 姿を生み出すようにする。 たり、該当箇所に和紙を貼り重ねたりするなどして作品を修正し、 □前時の制作の様子から、うまく糊付 完成させる。 けされていない生徒を確認し、その 生徒を中心に指導する。 <評価の観点> 【創造的な技能】 <毎時間の制作について記録していく学 習プリント例> ① 評価規準を示すようにする。 ② 自分の主題を記入させる。 ③ スケッチ終了段階、骨組み完成段階、 和紙の加工方法を選択した段階など で振り返りを記入させる。 ④ 制作途中段階の様子が分かるように、 写真等を貼るなど工夫する。 ⑤ 毎時間の自己評価については、時間短 縮のために「ABC」等で簡単に記入 させるようにする。 第14時「自分や仲間の制作ぶりについて振り返ろう。 」 題材の終末 本時のねらい 自分の主題を表現するために工夫してきたことを振り返ったり、仲間の作品を鑑賞してあかりの作品に込め られた願いを知るとともに、創造的な技能の工夫などを感じ取ったりして、これまで制作してきたあかりの作 品を幅広く味わうことができる。 本時の展開 指導計画作成時のポイント これまでの自分の制作や仲間の制作ぶりについて振り返ろう。 ○学習プリントに、これまでの制作の中で自分の主題を表現するため に工夫してきたことや苦労したことなどを記入する。 C:<作品に込めた願い> 最近、何か自分に元気が足りないと思うことが多いです。だから、 そんな自分に元気を与えてくれるようなあかりの作品にしたいと 思い、作品づくりに取り組んできました。 <形の工夫> 風船に和紙を貼り付けることでできあがった球体を作品の中央に 置き、さらにつるを帯状に編んだものでその周りを囲むようにし ました。元気の素が中央の球体で、その元気の素が人と人とのつ ながり(つる)によって包まれている様子を表現しました。 <色の工夫> 自分を元気付けてくれるように和紙を橙色で染め、その和紙で球 体をつくりました。さらにその上から墨を垂らして、あかりを着 けると橙色の球体に黒い斑点が浮かび上がるよう工夫しました。 す。 ○部屋を暗くし、一斉に作品を点灯する。 ○仲間の作品を見て感じ取ったよさや美しさ、表現の工夫について付 箋に記入し、作品の横に置いてある学習プリントに貼っていく。 題材の終末のポイント 自分の制作を振り返らせるための 工夫 □これまでの制作において工夫して きたことを改めて言葉で整理させ ることは大切である。学習プリント に記入させるが、この後に行う全体 鑑賞会において、自分が作品に込め た願いや工夫したことが仲間に伝 わるように大きめの文字で記入さ せるなど、学習プリントの形式等に ついても配慮したい。 仲間の作品のよさや美しさ、表現の 工夫などを感じ取らせるための工 夫 □仲間の作品を鑑賞した感想を交流 することも大切にしたいが、時間に 限りがあるため、付箋などを活用し 作者に伝えるようにするなど、鑑賞 の仕方について工夫したい。 鑑賞に入る前、鑑賞の視点を明示 するとよい。本時は、作品に込めら れた願いを基に、あかりの形、和紙 の加工について工夫することがで きているかを視点として鑑賞させ たいため、事前に生徒に伝えるよう にする。 ○仲間の作品を見て感じたことを交流する。 C:A さんは、世界が平和であって欲しいという願いを作品に込めた とのことですが、作品から漏れてくる黄色っぽい光が優しくて、 心が落ち着く感じがしました。また、シェードの形も球体で、地 <評価の観点> 球を表しているように思いました。私はこの作品を見て、A さん 【鑑賞の能力】 が願っている世界が平和であって欲しいということを感じ取るこ とができました。 T:それぞれの願いが込められたあかりの作品が完成しました。ここ にあるすべての作品からその願いが伝わってきます。ぜひ、作品 を自宅に持ち帰って、自分が置きたかった場所に置いてください。 そして、自分が込めた願いを思い出しながら使ってください。 【授業と家庭学習との関連を図った指導】 家庭学習:自分が置きたかった場所に作品を置き、あかりを点灯させたとき の家族の感想をまとめてくる。 今回の制作は、自分の願いを作品に込めることだけでなく、用途や機能に ついても考えることを重視している。そのことをより実感させるため、題材 終了後に実施したい。