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1 「新体力テスト」Q&A
1 「新体力テスト」Q&A (1) 「新体力テスト」は、どのような経緯で作成されたので すか。 昭和36年に制定されたスポーツ振興法において、地方公共団体はひろく住民が自主 的かつ積極的に参加できるような運動能力テストを実施するよう努める必要があること が明示されたことを受け、当時の文部大臣は、正しいスポーツの発展と国民体力の向上 をねらいとするスポーツテストの内容と方法を保健体育審議会に諮問しました。 同審議会による審議研究を経て、昭和38年3月に「スポーツテスト(旧)」が誕生し、 文部省(現:文部科学省)では、国民の体力の現状を把握するため、昭和39年から「ス ポーツテスト」を用いて体力・運動能力調査を継続して実施してきました。 しかし、開始以来30年以上が経過し、国民の体位の変化、スポーツ医・科学の進歩、 高齢化の進展等に伴い、これまでのテスト項目の見直しや新しい体力テストの在り方に 関する検討が必要となってきました。そこで平成8年に、学識経験者等による協力者会 議を設置し、健康関連体力及び基礎的運動能力測定の重視や国民の体力を経年的に追跡 するための各年齢層共通のテスト項目の設定などの観点で具体的検討を行い、新しいテ ストである「新体力テスト」が作成され、文部科学省では、平成11年度から「新体力 テスト」を用いて、体力・運動能力調査を実施しています。 (2) 「新体力テスト」には、どのような特徴がありますか。 「新体力テスト」作成に当たっての大きなねらいは、所要時間の短縮化や場所の確保 が容易であること、健康関連体力や幅広い年齢層の体力の現状を把握できること、さら に、これまでのデータが活用できることなどの条件を踏まえたテスト項目の検討と項目 数の精選でした。 このようなねらいで作成された「新体力テスト」には、次のような特徴があります。 ① データの継続性が重視されています。 握力、50m走、ソフト・ハンドボール投げ、持久走、反復横とびなどの記録の年 次変化を継続して比較することが可能です。 ② 広い年齢層にわたって同一のテスト項目が選定されています。 ひとつの対象年齢区分だけに特有なテスト項目ができる限り除外され、小学生から 高齢者までを対象に同一の項目(握力、上体起こし、長座体前屈)が選定されていま す。 ③ 同一テスト項目は年齢や性別が違っても同一方法で行うことができます。 例えば、反復横とびでは、全年齢男女ともステップの間隔が統一され、同一の方法 で行うことができるようになっています。 ④ 屋内で対応できるテスト項目となっています。 従来は対象年齢によって、立ち幅とびと走り幅とびが使い分けられていましたが、 屋内で対応できる立ち幅とびに統一されています。 ⑤ 特殊な器具を必要としないテスト項目となっています。 例えば、長座体前屈は市販のコピー用紙の収納箱の利用での測定が可能になってい ます。 ⑥ 信頼性、妥当性が高いテスト項目となっています。 測定実施上の立場や学問的な見地から再考が指摘されていたり、妥当性や信頼性な どの観点から、踏み台昇降運動や背筋力、垂直とびなどのテスト種目が除外されてい ます。 ⑦ 意欲的に取り組めるテスト項目となっています。 20mシャトルランが全身持久力テストとして組み入れられるなど、意欲的に取り 組め、安全性の高いテスト項目が採用されています。 ⑧ 健康に関連した体力にも配慮されています。 レベルが下がることによって病気の引き金となる体力要素の測定、評価という観点 からテスト項目(上体起こし、長座体前屈など)が採用されています。 (3) 「新体力テスト」により、どのような体力が測定できる のですか。 下図に示したように、 「新体力テスト」を構成するテスト項目は、運度能力を構成する 基本的な体力要素であるスピード、全身持久力、筋パワー(瞬発力) 、巧緻性、筋力、筋 持久力、柔軟性及び敏捷性に対応しており、そのうち、心肺持久力、筋力、筋持久力及 び柔軟性は健康に関連した体力となります。また、走、跳、投能力は基礎的運動能力と 考えられます。したがって、「新体力テスト」は、スポーツ選手の体力テストとしても、 一般人の体力テストとしても、その評価と活用の可能性を内包したものとなっています。 基礎運動能力評価 テスト項目 体力評価 健康評価 (4) 「新体力テスト」の評価システムには、どのような特徴 があるのですか。 「新体力テスト」の評価システムは、従来の体力・運動能力調査における連続性と課 題を考慮し、個人で評価しやすく、ライフステージを通しての変化が把握できるように 作成されており、以下のような特徴があります。 ① テスト項目別に10点法を用いるため、どの能力が優れており、何が劣っているか について自己評価ができます。 ② 総合得点の5段階評価により、同年代で、自分の体力がどの程度なのかについて自 己評価ができます。 ③ 握力、上体起こし、長座体前屈の全年齢共通の3テスト項目については、時系列的 変化の評価が可能であり、ライフステージを通しての筋力、筋持久力、柔軟性の変化 が把握できます。 ④ 全年齢を通して5段階尺度(A~E)を用いているため、ライフステージを通して の総合的な体力の時系列変化が把握できます。 ⑤ 性差を考慮した評価ができ、また、成人では、体力年齢を求めることができます。 (5) 「新体力テスト」実施上の注意事項にはどのようなもの がありますか。 「新体力テスト」の実施要項には、実施上の一般的注意として、以下の6点が記され ています。 ① テスト実施に当たっては、被測定者の健康状態を十分把握し、事故防止に万全の注 意を払う。 特に、医師から運動を禁止または制限されている者はもちろん、当日身体の異常(発 熱、倦怠感など)を訴える者には行わない。 なお、小学校1年生については、健康診断実施後に行う。 ② テストは定められた方法のとおり正確に行う。 また、低学年の場合は、あらかじめテスト運動に慣らしておくことが望ましい。 ③ テスト前後には、適切な準備運動及び整理運動を行う。 ④ テスト場の整備、器材の点検を行う。 ⑤ テストの順序は定められていないが、20mシャトルラン(往復持久走)は最後に 実施する。 ⑥ 計器(握力計、ストップウォッチなど)は正確なものを使用し、その使用を誤らな いようにする。すべての計器は使用前に検定することが望ましい。 (6) 教育課程と「新体力テスト」には、どのような関連があ るのですか。 小(中)学校学習指導要領解説 総則編には、小(中)学校学習指導要領 第1章 総 則の教育課程編成の一般方針に示された「体育・健康に関する指導」に関して、次のよ うな記述がされています。 ○ 各学校において、体育・健康に関する指導を効果的に進めるためには、地域や学校の 実態及び新体力テストなどを用いて児童(生徒)の体力や健康状態等を的確に把握し、 それにふさわしい学校の全体計画を作成し、地域の関係機関・団体の協力を得つつ、計 画的、継続的に指導することが重要である。 ○ また、体育・健康に関する指導を通して、学校生活はもちろんのこと、家庭や地域社 会における日常生活においても、自ら進んで運動を適切に実践する習慣を形成し、生涯 を通じて運動に親しむための基礎を培うとともに、児童(生徒)が積極的に心身の健康 の保持増進を図っていく資質や能力を身に付け、生涯を通じて健康・安全で活力ある生 活を送るための基礎が培われるよう配慮することが大切である。 -4