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開く - 横浜市

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開く - 横浜市
Vol.16
2003新春号
今号のメニュー
・10∼12 月 分 の検 査 結 果
検査結果の集計・・・・・・・・・・・・・・・・・・1p
検査結果の解説・・・・・・・・・・・・・・・・・・3p
・
続報!ウイルスによる食中毒の季節到来
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4p
ちょっと寄り道(青果物の残留農薬検査結果)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7p
特集
1. 2002 年腸炎ビブリオ対策(その2)・・8p
2. 2002 年温度管理結果・・・・・・・・・・・・・・・・10p
トピックス A型肝炎
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11p
横浜市衛生局中央卸売市場
本場食品衛生検査所
TEL 045-441-1153
FAX 045-441-8009
はじめに
新年おめでとうございます!
暖冬と言われていたこの時期も、どうやら世間の景気を反映するかのように、寒い
冬になりそうです。年末はいかがでしたか?
食品衛生の立場から見てみますと、10 月に入って横浜市内で「殻付きのカキ」が原
因と思われる食中毒(SRSV)が頻発しています。今回も特集として発生状況をお知らせします。
今年は、食品衛生検査所もホームページを開設し、市場の食品の安全性についてアピールしていきま
す。この「細菌検査室レポート」もホームページに掲載する予定です。今年もよろしくお願いします。
検査結果
( 10∼ 12月 )
10月から12月の間に,453検体の細菌検査を行いました。
10月は122検体,11月は187検体,12月は144検体の検査を行いました。また、区福センター・専門監
視班からの依頼検査として166検体を検査しました。検査結果は,次のページの表に記載しました。
表の見方については,下の表を参照してください。
◎表の見方
検査検体数以外の数字は,陽性検体数を示します。
生食用魚介類については個々の結果を示し,加工食品については加熱の必要性で分類しました。
生食用魚介類
検査検体数
青柳
小柱
ホタテ柱
3
7
2
生菌数
100万以上
10万∼100万
大腸菌群
2
1
2
1
大腸菌
セレウス菌
加工食品
加熱しないで 加熱が必要な
食べる食品
食品
生野菜
合計
9
117
5
5
3
4
7
11
9
23
1
1
5
72
24
見 本
1gあたりの生菌数:異常に多い場合は品質が悪いといえます。
(一般に1,000万以上は腐敗状態)
検出された食中毒菌:
この他に,黄色ブドウ球菌,
腸炎ビブリオ等があります。
大腸菌群: 主に加工食品において,加工工程や取扱
い,保管状態の良否を推測する指標菌で
す。
大 腸 菌: ヒトや動物の糞便由来の汚染を推測する
指標菌です。陽性の場合は,食品の不適切
な取扱いが推察されます。
− 1 −
10∼12月分検査結果
加工食品
検査検体数
− 2 −
汚
染
指
標
菌
生
菌
数
100万以上
大
腸
菌
群
10,000以上
300∼100万
1∼10,000
生
ウ
ニ
ホ
タ
テ
貝
柱
生
食
用
カ
キ
そ
の
他
加熱しないで
食べれる食品
※1
加熱が必要な食品
※2
弁
当
・
惣
菜
12
6
48
2
226
54
63
5
1 ※3
31
9
8
3
37
1
56
ゆ
で
カ
ニ
・
ゆ
で
ダ
コ
4
魚
卵
活
魚
水
・
海
水
合 計
28
10
453
6(1.3%)
2
19
10
2(0.4%)
2
9
14
13
14
3
9
3
大腸菌(E.coli)
食
中
毒
菌
176(38.9%)
65(14.3%)
0
E.coli最確数
6
6(1.3%)
病原大腸菌
2
2(0.4%)
黄色ブドウ球菌
1
腸炎ビブリオ
セレウス
2
1
26
6
※1:魚肉練り製品、食肉製品、鶏卵、卵加工品、シャコ、魚介類加工品、佃煮等
※2:冷凍食品、惣菜半製品、ボイルほたて、加熱用カキ、魚介類、生野菜等
※3:衛生規範不適
依頼検査(区福センター、専監班):166検体
3
1
2
1
2(0.4%)
3
5(1.1%)
39(8.6%)
10 月∼12 月の検査結果・解説
① 昨年との比較
1.
生食用生カキについては、冒頭でSRSVによる食中毒が頻発していると述べましたが、汚染
の指標となる細菌(生菌数・大腸菌)は減少しています。特に糞便系の汚染指標とされている
E.coli(大腸菌)は昨年 22 検体が陽性であったのに対し、今年は6検体と減少しました。また、
食中毒菌についてセレウス菌が昨年の 10 検体が陽性だったのに対し、26 検体が陽性になり 2 倍
以上増えました。
セレウス菌ってどのような細菌ですか?
?
セレウス菌は、土壌細菌の一種で自然界に広く分布しています。劣悪な条件下では芽胞形態で
休眠して存在し、好条件になると旺盛に増殖し食品の腐敗や変敗を起こす原因になります。
セレウス菌食中毒は「下痢型」と「嘔吐型」に分けられます。
(1)下痢型
腸管内で本菌が増殖して産生するエンテロトキシンによって起こります。潜伏期間が 8∼16
時間で下痢を主徴とし、食肉製品・スープなどが原因食品とされています。
(2)嘔吐型
食物内で産生された毒素(耐熱性の低分子のペプタイド)を摂取して起こります。潜伏期間が
1∼5 時間と短く食中毒事件となるのは、ほとんどがこの嘔吐型によるものです。チャーハン・
スパゲティーなどが原因食品とされています。
検査所の検査で検出されるセレウス菌のほとんどは、これらの毒素はもっていません。たと
え毒素が検出されても、極少量であり食中毒に結びつくことはありません。しかし、保存状態
が悪くなると急激に増殖しますので 10℃以下での保存を徹底し、長期の保存は避ける事が必要
です。
2.
生食用生カキのSRSVは昨年2検体検出されたのに対し、今年は本場・南部ともに検出され
ていません。例年1月・2月が一番検出される時期です。SRSVは加熱すれば死滅します。生
食をする場合、販売する方、食べる方ともにそれなりにリスクを負う必要があります。
② 集計結果から
汚染指標菌(生菌数・大腸菌群)については非常にきれいだったと言えます。夏場から徹底し
た、食品の保存方法や取り扱いが良かったのではないかと思います。腸炎ビブリオの2検体につ
いては、まだ海水温の高い 10 月に検出されたものです。
− 3 −
12 月に入って全国的にSRSV(小型球形ウイルス)による食中毒が頻発しています。横浜市内で
は 12 月から 1 月中旬の間に合計で 11 件のSRSV食中毒が発生し、患者数は 179 人にのぼっていま
す。メニューに殻付カキが含まれるものもあり市場でも注意が必要です。
当検査所では 12 月から生食用カキのSRSV検査を実施しています。市場外を流通するカキも含め
て 32 検体を検査し、1 月に 1 検体がSRSV陽性となりました。幸い、このカキを原因とする苦情等
はありませんでしたが、生産地を管轄する自治体へ通報し、改善の指導を依頼しました。
今回は今シーズンの横浜市のSRSV食中毒発生状況と、平成 10 年∼13 年の全国の細菌性食中毒
とウイルス性食中毒の次発生状況についてお知らせします。
表①平成 14 年 12 月以降横浜市内 SRSV 食中毒発生状況
発生日
発生場所
患者数
原因食品
原因施設
発生原因
処分等
12/2
港南区
8
不明
(12/1 バイキング料理)
レストラン
不明
営業禁止 2 日間
12/13
南区
37
推定(殻付カキ)
一般食堂
SRSV に汚染さ
れた生カキの生
食(推定)
営業禁止 3 日間
12/14
都筑区
40
調査中
レストラン
調査中
営業禁止 2 日間
12/15
西区
12
不明(12/14 会食料理)
レストラン
不明
営業禁止 2 日間
12/20
戸塚区
13
推定(殻付カキ)
大衆酒場
12/20
旭区
12
12/25
磯子区
6
推定(12/24 夕食)
家庭
12/25
西区
4
推定(殻付カキ)
バー
12/31
1/12
1/12
金沢区
西区
西区
27
25
2
不明(12/19 会食料理) 一般食堂
調査中
給食食堂
調査中
一般食堂
調査中(1/10 会食料理)
レストラン
SRSV に汚染さ
れた生カキの生
食(推定)
不明
不明
SRSV に汚染さ
れた生カキの生
食(推定)
調査中
調査中
調査中
営業禁止 4 日間
営業禁止 2 日間
営業禁止 1 日間
営業禁止 3 日間
営業禁止 2 日間
営業禁止 2 日間
《SRSV食中毒の事件例》
① レストランで 37 人が食中毒!(南区)
平成 14 年 12 月 13 日に南区内のレストランで忘年会を開いた同区内の会社員 12 人が吐き気や下痢
などの症状を訴えました。南区福祉保健センターで調査したところ、12 日から 15 日の4日にわ
たって店を利用した他の客も同様の症状を訴えていることがわかりました。いずれの患者便から
− 4 −
もSRSVが検出されました。患者が食べた共通のメニューに殻付生カキがあり、これが原因と
推定されています。また、この事件と同時期の殻付生カキを原因とした食中毒や苦情の届出の状
況を周辺自治体に調査依頼した結果、複数の事例が確認され、それらの殻付生カキと南区で提供
された殻付生カキの出荷地が同一であるものもありました。
② 結婚式二次会で食中毒!(西区)
平成 15 年 1 月 11 日に結婚式の 2 次会を開いたグループ(52 人)のうち、25 人が翌日深夜か
ら腹痛や嘔吐、下痢、発熱などの症状を訴えました。患者は 20 代から 60 代で、いずれも軽症
でした。当日のメニューには生カキのカクテルソースがあり、原因の可能性が高いとみられて
います。
③ 病院で食中毒!(金沢区)
平成 14 年 12 月 31 日午前 6 時ごろから入院患者 110 人のうち 27 人が吐き気、嘔吐、腹痛、
下痢(軟便)などの症状を訴えました。症状のあった人のうち7人からSRSVが検出され、
SRSVによる食中毒と断定されました。病院で入院患者に提供された病院給食が原因と考え
られていますが、原因食品は不明です。メニューにカキはありませんでした。
小型球形ウイルスSRSVについて
小型球形ウイルスは、直径 30nm(1nmは 1mmの百分の一)前後のウイルスの総称で
す。ヒトだけに感染して主に腸管粘膜で増殖し、吐き気、嘔吐、急性下痢症(胃腸炎)、腹
痛、発熱(微熱)を起こし、風邪と症状が類似します。感染後、通常24時間から48時間の
潜伏期を経て症状が現れ、ほとんどが 3 日以内に回復します。細菌による食中毒と異な
り、冬(おおよそ 12 月から 3 月)に多発します。
感染経路には次の 3 つのケースがあります。
① ヒトの糞便中にあったSRSVが下水処理場、河川を通り海に流れ込んでカキなど
の二枚貝に蓄積するケース
② SRSVに感染した調理従事者(主に手)を介して食品を汚染するケース
③ 食品を介さず嘔吐物や排泄物から直接感染を受けるケース
予防のポイントは
① 食材の加熱調理(中心温度 85℃1 分間以上)を行う
② 手洗いを励行する
③ 下痢や風邪に似た症状のある場合には調理に従事しない
④ 生鮮食品(野菜、果物など)は十分に洗浄する
⑤ 清潔な器具、容器を使用する
⑥ 盛り付けや配膳などの作業時は使い捨て手袋の着用を習慣づける
⑦ 嘔吐物や排泄物を衛生的に処理し消毒を行う
− 5 −
《細菌性食中毒とウイルス性食中毒の発生状況》
食中毒の原因物質であるウイルスには、SRSVの他A型肝炎ウイルス、ロタウイルス、アデノウ
イルスなどがありますが、代表的なものはSRSVです。また、これらが食中毒の原因物質として含
まれるようになったのは平成9年5月からのことで、それまでは感染症(ウイルス性下痢)として扱
われていました。しかし、毎年冬季に胃腸炎を主たる症状とする感染症の集団発生があり、患者の糞
便や摂食した食品からウイルスが検出されたため、全国的なウイルス発症状況調査のあと食中毒原因
物質に含まれることになりました。 そして、下のグラフのとおり、ウイルス性食中毒の事件数は年々
増えつつあります。
細菌による食中毒とウイルスによる
食中毒の事件数推移
3000
123
116
2500
左のグラフより、平成10年以
降を食中毒事件数で比較すると,
247
細菌性食中毒事件数は年々減少
270
1500
2620
しつつありますが,ウイルス性食
中毒事件数は増加の傾向にあり
2356
1000
ます。
1783
1469
500
0
10年
11年
細菌事件数
12年
13年
ウイルス事件数
一事件あたりの患者数の平均
50
また,一事件あたりの食中毒患
者数の平均を比較しますと,ウイ
40
ルス性食中毒の患者数が多く、大
患者人数
事件数(件)
2000
30
規模食中毒が多いことがわかりま
45
42
す。
33
20
27
10
14
毒に対して占める割合が、事件数,
18
12
ウイルス性食中毒が全体の食中
13
患者数ともに大きくなってきてい
ます。
0
10年
11年
細菌
12年
13年
ウイルス
− 6 −
ちょっと寄り道・・・
青果物の残留農薬検査結果(11∼12月)について
11月と12月の残留農薬検査は、県内産を中心にだいこん、
キャベツなどの野菜9品目12検体、みかん,りんごなどの果実
3品目6検体について実施しました。検査した農薬は今年社会問
題となったダイホルタン,プリクトラン,PCNB をはじめとして,
その他塩素系農薬11種類,りん系農薬23種類,ピレスロイド
系農薬6種類です。
検査結果は次の表にまとめました。キャベツ1検体からトルク
ロホスメチル0.06ppm(基準値:2ppm)を検出しました
が,その他の農薬はすべて不検出でした。
青果物の残留農薬検査結果(平成 14 年 11 月∼12 月)
1
2
3
品目
だいこん
キャベツ
サラダ菜
生産地
検体数
検査結果
*
不検出
県内(三浦市、葉山) 3
県 内
2 1検体からトルクロホスメチル0.06ppm
不検出*
県 内
1
4
5
6
7
8
9
カリフラワー
小松菜
にんじん
里いも
はくさい
ほうれん草
10
みかん
11
かき
12
りんご
市
市
千
千
茨
群
愛
福
山
奈
青
長
合
注1)
2)
計
内
内
葉
葉
城
馬
媛
岡
梨
良
森
野
県
県
県
県
県
県
県
県
県
県
16産地
1
1
1
1
1
1
不検出
2
不検出
2
不検出
2
不検出
不検出
不検出*
不検出*
不検出*
不検出
18
:県内・市内産のもの
*
の印を付けた各1検体はプリクトランの検査をしていません。
− 7 −
特集1
2002 年 腸炎ビブリオ対策(その2)
腸炎ビブリオ対策については,細菌検査室レポート(vol.14 2002 夏号)
において中間発表を掲載しましたが,このたび最終結果がまとまりました。
その結果,違反食品については,2001 年の 3 件に対し,2002 年は 11 件(生
食用鮮魚介類 10 件,ゆでだこ 1 件)と大幅に増加しました。このことをふま
え,当食品衛生検査所では,今後とも新基準に基づいて,さらに監視や食品
検査を強化していきたいと考えています。
2002 年の腸炎ビブリオ・・規格検査最終結果
2002 年はエルニーニョ現象により、早くから気温の高い日が続
きました。そのため、当検査所で検査した食品や活魚水槽水など
から腸炎ビブリオが例年に比べて早い時期から検出されました。
また,違反食品についても 2001 年は 3 件であったのに対し,2002
年では最確数検査で小柱と舌切りで 10 件,定性検査でゆでだこ 1
件が違反となりました(下表のとおり)。
2002 年 腸炎ビブリオ規格検査結果(食品別)
品名
検査検体数
違反検体数
小柱
舌切り
アオヤギ
生ウニ
生食用カキ
マグロ
ネギトロ
ゆでだこ
ゆでがに
その他
31
13
3
20
32
7
11
10
8
14
8
2
0
0
0
0
0
1
0
0
違反食品の内訳
品名
小柱
小柱
小柱
小柱
小柱
小柱
小柱
小柱
舌切り
舌切り
ゆでだこ
− 8 −
腸炎ビブリオ
検査日 検 査 結 果
(/g)
14.7.8
>1400
14.7.23
>1400
14.7.8
1100
14.8.26
1100
14.7.23
290
14.7.8
240
14.8.26
150
14.9.30
150
14.7.8
>1400
14.9.9
1100
14.8.26
陽性
今夏も昨年に引き続きせり場・仲卸店舗において生食用鮮魚介類等の保管温度を実測したとこ
ろ,冷蔵ショーケース外や冷媒未使用で販売しているものにおいては10℃を超えるものも多々
見受けられました。今年は幸いにして当市場流通の生食用魚介類等を原因とした食中毒はありま
せんでしたが,今後は保管方法を改善しないと,食中毒が発生してしまう可能性があります。冬
季は外気温が低く,腸炎ビブリオ食中毒の発生はほとんど見られませんが,来夏に向け,保管方
法について再考する必要があると考えます。
腸炎ビブリオは食品に少量付着していても低温(10℃以下)保管していればほとんど増殖し
ません。しかし,温度が高くなると急激に増殖し,早ければ2時間程度で食中毒を起こす菌数ま
で達してしまいます。
特に基準で10℃以下の保存が義務づけられている生食用鮮魚介類等,ゆでかに,ゆでだこ等
は,保存温度が守られていないものは販売が禁止されます。今後は基準の保存温度10℃以下を
守り,腸炎ビブリオによる食中毒を防止するよう努めましょう。
2002 年食中毒発生状況(横浜市内)
2002 年は下表のとおり,31 件の食中毒が横浜市内で発生しています。そのうち,腸炎ビブ
リオを病因物質とするものは 5 件で小形球形ウイルスの 14 件に次いで多くなっています。
病因物質
件数
患者数
1
小形球形ウイルス
14
532
2
腸炎ビブリオ
5
36
3
サルモネラ属菌
3
14
4
キャンピロバクター
3
21
2
3
5 腸管出血性大腸菌O157
6
黄色ブドウ球菌
1
12
7
植物性自然毒
1
5
8
調査中
2
51
小計
31
674
− 9 −
特集2
2002 年 温度管理検査結果
生食用鮮魚介類等の保存基準が設定されて、既に1年以上が経過しました。
しかし、当保存基準が完全に遵守されていないのが現状です。そこで、2002 年
に当食品衛生検査所が調査した結果を今号から3回シリーズで掲載しますので、
2003 年以降は、当該基準を遵守するよう対策を講じ、食中毒の発生を未然に防止するのに役立てて
ください。当食品衛生検査所におきましても,基準の守られていない食品が流通しないように引き
続き監視を強化していきたいと考えています。
PART 1 : 低温せり場
当市場の低温せり場では、常時アオヤギ、小柱等の生食用貝類や生ウ
ニが保存・販売されており、その食品の温度測定結果を下の図に示しま
した。
温度(℃)
15.0
10.0
5.0
0.0
アオヤギ
小柱
舌きり
生ウニ
食品名
低温せり場は、通常は10℃以下に保たれていますが、ときどき10℃を超えることがあります。
このようなときに、氷入り発泡スチロール箱に食品を入れ、蓋をしておけば温度の上昇をある程度防
げますが、蓋が開放されていたり、生ウニのように容器のまま低温せり場内に置いてあると温度が上
昇してしまいます。上のグラフを見てわかるとおり、舌きりのように氷水に浸けてあるものに比べ、
生ウニなどは温度が高いことがわかります。今後は、温度計において低温せり場内が何℃であるのか
定期的に確認し、保存基準の遵守するよう努めましょう。
次号においては、「常温せり場」の結果を掲載します。
− 10 −
トピックス
微生物による食中毒というと,かつては腸炎ビブリオ、サルモネラ、黄色ブドウ球菌など細菌によ
るものを指していましたが、最近は、主に生カキを原因食品とするSRSVに代表されるウイルスに
よるものも急増しています。そのなかで、あまりなじみがありませんが肝炎ウイルスの一部が消化器
症状を起こすといわれています。今号ではこのウイルス性肝炎について簡単にふれてみます。
ウイルス性肝炎の分類
ウイルス
A型肝炎ウイルス
主な感染源
感染経路
糞便、汚染された
経口
食品等
潜伏期間
4 週間
B型肝炎ウイルス
血液
非経口
1∼4 か月
C型肝炎ウイルス
血液
非経口
1∼4 か月
D型肝炎ウイルス
血液
非経口
3∼7 週間
E型肝炎ウイルス
糞便、汚染された
経口
食品等
6 週間
主な症状
消化器症状、発熱、頭痛、筋肉痛、
黄疸、まれに劇症肝炎
慢性肝炎、肝硬変、肝ガン、
劇症肝炎
慢性肝炎、肝硬変、肝ガン、
劇症肝炎(まれ)
単独ではなく、B型肝炎ウイルスと
の二重感染
発熱、消化器症状、黄疸、
まれに劇症肝炎
上の表のとおり、経口的に急性肝炎を起こすのはA型肝炎及びE型肝炎ウイルスです。
① A型肝炎
主な感染経路は口からで、ウイルスに汚染された飲食物の摂取により感染します。潜伏期間は平
均で 4 週間と長く、初発症状は発熱と倦怠感であり、食欲不振、悪心、嘔吐、腹痛などが伴います。
黄疸、肝腫脹も見られます。通常は 1∼2 か月後には回復しますが、まれに劇症化して死亡すること
もあります。
(予防方法)
・ 手洗いの励行
・ 生食を避け、加熱(85℃以上で 1 分間以上)して食べる。特に、糞便で汚染された可能
性のある海産物を生食、あるいは加熱不十分な状態で食べるときは十分な注意が必要
② E型肝炎
E型肝炎は開発途上国で散発的に発生しており、海外では時として飲料水などを介して大規模な
流行を引き起こしています。潜伏期間は 6 週間と長く、主な症状は、A型肝炎と同様であり、発熱、
悪心、腹痛などを呈し、下痢などが初発症状としてあらわれる場合もあります。予防方法はA型肝
炎と同様です。
− 11 −
Fly UP