...

一 一 ロ - Core

by user

on
Category: Documents
15

views

Report

Comments

Transcript

一 一 ロ - Core
県立広高大学人語文化学部紀要
2, 3
9
4
7(
2
0
0
7
)
各種市販トロミ調整食品の物性に及ぼす温度の影響
出戸毅子・山勝、誉志江・桔下
淳
要 約
本研究では、湿度の異なる本に 4種類の市販トロミ奔jを誘加し、物性からトロミ剤の種類による違
いおよび温度が及ぼす影響を比較検討した。また、市販ト E ミ剤 1
種類を思いて、官能評値も行った。
温震による比較は、低温でかたさ、付着性が高いイ直を示し、高温になるとかたさ、付着性は低い値を
示した。官能評価では、健常者において、べたつきが少ないものが飲み込みゃすい結果を示したが、
水はべたつかないにも関わらず飲み込みにくく、
トマトジュースやごまだれ状の物性のものの評価が
高かった c トロミ離は添加量によって物性が異なり、飲み込みゃすさも異なることがわかった。また、
トロミ剤を添加する液棒の温度の違いによっても物性が変化するため、
トロミ剤の使用には添加量、
温度について十分配慮する必要があることが示唆されたむ
ロ
一
一
緒
揺卒中の後遺症として、急性期では約 30% の患者が膜下樟害にな母、漫性期においても 5~10% の
患者が膜下葎害の症状を呈するとの報告がある九厚生労働省の鈴本一夫の研究班による調査報告で
年度の脳卒中の患者数は 272
万7千人であるが、 2020年に;ま 287万 7千人へと増加が予想され
は
、 2005
ている G このことから、今後 1
0年以上は礁下葎害者の増加が予想されるむ
礁下障害患者は、低栄養、脱水、誤聴性肺炎のリスクを有することが知られている九この 3つの
リスクのうち脱水は、譲体の日冒頭通過速度が速いことで誤礁を引き記こし、その結果、水分摂取を制
課してしまうために生じる。このような液体による誤聴や説水を防ぐためには、 Z
冒頭通過速度を抑え
ることが重要で、あり、液体にトロミをつけて対正、するに
礁下障害患者向けの譲体にトロミをつける製品として、
トロミ調製食品〈以下トロミ剤〉が 1
990年
代から市場に出回り始めた。現在で辻二十種類以上ものトロミ剤が上市されており、病院、施設、在
宅等で幅広く使用されている九トロミ荊は、原料によりその特性も異なるが、詳細に比較検討され
た報告は少ない司
そこで本研究では、トロミ剤が幅広い温度の水分補給に愛用されていることから、温度による物性
の比較検討を試みた。また、併せて飲み込みゃすい物性の基礎的な研究として、健常者に対しての官
能評髄を試みた。
方 法
上試料
市販されているト E ミ剤は、発売された時期によって 3つの種類に分類することができる。初期の
トロミ荊は主に 1
9
9
1年頃から発売され、デンプンを主原軒とした第 1世 1
tのトヨミ剤、次に 1994年頃
から発売され、グァーガムを主原料とする第 2世代のトロミ菊、 2000
年頃から発売され、キサンタン
0
ガムを主原料とする第 3世代のトロミ荊の 3世代に分類される〈表 1)
39
出戸綾子ほか
各種市販トロミ調整食品の物性に及ぼす極度の影響
この 3つの世代から第 1世代のもの
1種類、第 2世代のもの 1種類、第 3
世代のもの 2種類の市販トロミ剤を実
験に用いた。吊いたトロミ剤は、第 1
世代としては、
トロメリン穎荘(株式
表 1 主な市販トロミ剤の分類
分類
第 1世代
会社三和化学研究所)以下 f
第 1世代」、
第 2世代としては、スカイスルー(キ
ツセイ薬品工業株式会社)以下「第 2
世代」、第 3世代としては、つるりん
第 2世代
こQuickly (株式会社クリニコ〉以下
「
第 3世代①」、ネオハイトロミール E
(株式会社フードケア)以下「第 3世
代②j を用いた。
今屈の実験では、蒸留水に対するト
ロミ荊の影響について検討した c トロ
第 3世代
ミ剤を添加する蒸留水は、広い誼度帯
0
0
での試験を行うため、 5 C、 20Cおよ
ミ剤は、蒸留水に少しずつ入れながら、
発売年
トロメリン
1
9
9
1
ムースアップ
1
9
9
5
エンガード
1
9
9
6
トロメリン穎粒*
1
9
9
8
スルーソフト S
1
9
9
4
トロミアップ A
1
9
9
9
スカイスルーネ
2
0
0
0
ハイトロミール
2
0
0
0
ソフティア 1
2
0
0
0
i
トロメリン H
2
0
0
2
スルーキング
2
0
0
2
つるりんこ
2
0
0
3
トロミノ fーフェクト
2
0
0
5
つるりんこ Q
u
i
c
k
l
y
*
2
0
0
5
トロメイク
0
び6SCのインキュベータに入れておい
た 3種の温度のものを準儒した。トロ
製品名
SP
2
0
0
6
ネオハイトロミール誼ネ
2
0
0
6
*今回の実験で使用したトロミ剤
ティースプーンを用い 21!!1/秒の速度
で 15
秒間手動で援持したむダマができた場合は取り除き、この試料を車径40mm、高さ 15mmのシャ
}レに充填し、再度所定温衰のインキュベータに入れ、 トロミ剤を添加後 1、 5、 10、 15、20、30お
よび60分の試科をクワープメータ[山電(株)豆E23305BJ を用いて経詩的に測定した。測定条件と
・
しては、直径 20mmのプランジャーで、クワアランス 5 m m、圧縮速震 1mm/secの定速 2回圧縮で
物性灘定を行った。得られた波形より、かたさ、凝集性、付着性を算出した。かたき、凝集性、付着
性の比較は 30分後のデータを用いたむ
2
. 吉能評価
第 3世代①の市販トロミ期を用い、 J
I]夏位法による官能評舗を県立広島大学健康科学科の学生 15名を
対象として行った。試科としては、蒸留水にふ 0
.
5、1.
0、2
.
0、3.0% (w/w) 濃度のトロミ剤を添加
したものを用いた。かたさの呂安とし
ては、
0 %が「水 j、0.5%が「トマト
表 2 第 3世代のトロミ剤を添加した試料の物性
ジ、ユースム1.
0%が「ごまだれ」、 2.0%
が「とんかっソースム 3.0%が「ヨー
40
試料
濃度
かたさ
付着性
凝集性
(J1m3)
8
4
0
.
9
4
0
1
1
.
7
0
.
5
1
1
5
0
.
9
5
1
1
3
.
9
)
1
貢位効果を配憲するため、ラ
1
.
0
1
2
8
0
.
9
6
2
1
9
.
8
テン方格の方法に従い並べた。試科は、
2
.
0
1
9
7
0
.
9
2
8
4
8
.
6
プラスチック製のミニカップに 50mlず
3
.
0
2
5
6
0
.
9
4
1
6
9
.
7
グルト j 程度のものである G 第 3t
世代
Cw/w%)
(N/m2)
①のトロミ剤を添加した試料の物性に
O
ついては、表 2に示す。この 5種類の
試料を、
県立広島大学入詩文化学部紀要
2, 3
9
4
7(
2
0
0
7
)
つ入れ、一口量辻ティースプーン 1杯分とした c 試料の温度は、 2
0
:
:
!
:
:2Cにし、姿勢は椅子に座った
0
状態で、部屋は室温2
0Cに設定し、評{亜は 1入ず、つ行った。評価項目は、欽み込みやすさ、べたつき
0
感、総合評舗の 3項目について行い、それぞれ最も欽み込みやすい、最もべたつきが少ない、最も好
ましいの各評値を 1位として 5住まで頼位づけを行った c
集計・解析には SPSS13.0 を用い、順位の差は Friedman検定を行い、試料開の JI!~ 位合計の差は
Wilcoxonの符号付き l
I
}
貢位検定により検定した c
結 果
1.常渥におけるトロミ剤の物性
(1)経時的な変化
0
20Cの本に第 1世代、第 2世代、第 3堂代①、第 3世代②のトロミ剤を、それぞれ4.0%、 2.5%、
2.5%、1.5%添加すると、 3
0分後のかたさが約 220N1m2になった。その持のかたさの経時的変化を図
1(引に示した。トロミ剤の経時的な変化は、ト E ミ部を添加したときを 0分とし、その後ト 5、
1
0、 1
5
、2
0、3
0、6
0分経過したときの結果である O
この結果から、どの世代のトロミ剤もかたさは、類似した経時的変北を示した。また、このときの
凝集性と付着性の経時的変化を見た場合、凝集性辻、すべてのタイプにおいて 1分後が高いものの 5
分後以降はほぼ一定であり〈図 1(b))、付蒼性は、かたさと類恨の挙動を示したが、第 2世代のト
ロミ荊については、他のトロミ剤と比較して付着性が高く、持需が経つにつれさちに付着笠が増した
く
図 1(c))o
{防凝集↑生
(
a
)語
、T
こ
さ
1.4ぃ
1,2 ~
300
250
[
を200
1,0
z
石 150
き 100
f
一一+ー創世代
一個...第2宮代
ドマ~
i
翼 0.6
o
1
0
20
30
40
50
60
o
1
0
モ
、
一ーιー 第3
世代②
ーー..
80
.
2 60
•
一
..'ー‘ー-・一
乙 島 沖 也ι ニー会ー・一一一一-…-へ
P-'T.
.
.
一一三ーーー一
事
選 40Á~
.../;.…第3
蛍代①
t
:
4
ト ー 第3蛍 代 ②
,
時間(分〉
ー
‘
ー
ー
ー弓
一 一 + ー 第1
蛍代
.......第抱代
0.
4 I
02 t
0
.
0 ,
一
一
G
~
~‘ム主
4
・
I
W::::::I~ムft:....:....:..
望。ι
---<トー第3
澄代②
50
100
獄
.
.
.
/
;
.
.
ー
ー
第3蛍 代 ①
一一+ー第?澄代
.-.---第 2蛍 f
t
ー
ー
.
/
;
.
.
.
.
第3世{市1)
(
c
)付着性
20
f
(
G
20
30
40
50
60
o
10
20
30
40
50
60
時間{分〉
時忌守足分〉
図 1 市販ト E ミ膏j
の経時的変化 (20Cの場合)
0
(2)添加濃度の違いによる物性詑較
菌 2に市販トロミ剤の添加濃度と 3
0
分後のかたさ、凝集性、付著性を示した。
この結果かち、第 1世代は飽のトロミ剤に比べ、同じかたさを得るのに多くの添加量を必要とする
ことが分かるむ第 2世代は 2.5%まで第 3世代①とほぼ同じかたさを示しているが、添加濃度が増す
と急にかたさが上昇するという特散があった。また、 2
0
0
6年に発売された第 3世代②辻、同じかたさ
を得るのに少ない量でかたくなった a 凝集笠は、すべてのトロミ離で0.85~0.95 の範酉で、添加量が
増すほど低下する傾向があった。付着性は、かたさと同様の挙動を示した。
2
. 温度の遣いによる物性比較
0分後の市販トロミ剤のかたさに及ぼす温度の影響を国 3に示す。どのタ千プにおい
トロミ剤添加3
4
1
出戸
各種市販トロミ謡整食品の物性に及ぼす温度の影響
綾子ほか
十一二ぷ
(
a
)かT
こさ
~
1
:
、
、
z
600
石 400 .
,
!
.
!
,
唱
(
b
)
凝 集f
生
C
cH
寸着性
一+ー第1t堂代
ーー・--.第 Z世代
・
・
・1
1
-ー第 3
t
註代。
1
.0
0
..A .
.
阜
、
.
.,,~.
0
.
9
5
製
紙 0
.
9
0
潟
200
・
:
/
.
¥
1
1
¥
"
;
久
- 、 会 、 、H r ¥
--<>一一第 3
t
主代②
/
企
ノ
.
.
.
/
.
'a
ノ
一
]
主 - ' " / / 全 /
∞ . s " 占 / '
」
…
50'
_A
a 機 1
.".古〆
ー
./片、ザー~
~
,
,
!
l
'
0
.
8
0
」
-~一一一一」一一一
o
O
・'
1
1
"・第3
世代①
2
0
0
空間
ヲ
ー
ー
0
.
8
5
G
一一+ー第1t註代
.......第2世代
ーベトー第3世 i'@
・
.
.
1
2
5
0
4
1
G
濃度附
;震度翁)
図 2 市悪トロミ宵j
の添加 30
分後の物性 (
2
0
'
Cの場合)
ても程度には差があるも
第 1 世代のトロミ~J
のの、温度が低くなるほ
どかたくなり、高くなる
1000
1000
0
傾向はトロミ剤の添加濃
度が高くなるほど顕著に
---ロ・・・ 2
00C
600
・
.
-65C
0
E
ロ
400
U
企
200
o
なる O 特 i
こ、第 1世代、
︺拘どゐ
[
℃
﹄ ¥Z
800
¥Z]
拘どる
が見られた己また、この
一 + 一 一 5C
一-+-ー-5C
0
モ
[
ほどやわらかくなる鎮向
第3世代舎のトロミ斉IJ
ー~----.---
第 2世代での、高い温度
2
3
---ロ・・・ 2
00C
a
600
400
4
込毛並
G
一一
o
7
・・.---6
50C
.
.
/
'
"
ー
200
'--一一」一一一一---'-一一~ー--'一一」一一一
o
800
ι
.J'fU :
.
_
1
:
,酒量盆-ー
ι
~----'---→
2 3 4
濃度似〉
」一一」
5 6 7
濃度(誌)
0
のかたさは、 20Cと比べ
000 I
600
0
c
γ一
i
U
20C
・・・企・・・ 6
50C
I --ロ・・・
¥
j
d
3
麟
かたさが異なる 5つの
hH
200
3
. 官能評錨の結果
¥Z]拘りす
:
!
i
・
.
-65C
0
800
︹ヤト﹄
した。
¥Z]拘けh
'q
かたさと同様の挙動を示
1000 I
,
-一寸併一一 5C
0
一 + 一 一 5C
℃
800 J 5 2 9
モ
[
ほとんど無く、付着性は
第 3世代②のトロミ剤
第 2世代のトロミ剤
凝集性は温震による差が
一
一
一
て著しくやわらかかったむ
試科の官能評価結果を図
4~こ示した o F
r
i
e
d
m
a
n検
函 3 市販ト E ミ需のかたさに及ぼす温震の彰響
定により、「飲み込みゃす
さj、[べたつき感ム「総合評価 j の全ての項目において、
5つの試料開での差が認められた (pく
0
.
0
1
)0
飲み込みゃすさは、 0.5%、1.0%が飲み込みゃすく、 2.0%、3.0%と濃震が増す迂ど飲み込みにくい
、 3.0%と比べて有意に欽み込みやすかっ
結果であった 5 試料聞の差を検定した結果、 0.5%と1.0%は
た (pく 0
.
0
5
)0 トロミ梨を添加していない水何%)は、
トロミ躍を 0
.
5弘、1.
0%添加したものより
飲み込みにくい傾向を示した。
.
0
5
)0
べたつき惑は、濃度が増すほどべたつきがあり、全ての試軒間に有意会差が認められた (pく 0
総合評倍は、飲み込みゃすさと同じ傾向がみられ、 3.0%に比べて 0.5%、1.0%辻有意に総合評憧が
高いと認められた (pく 0
.
0
5
)0
42
県立広島大学人詩文化学部紀要
まベたつき慾E
f
欽み込みやすさ〉
蓄
量 50
構会祭器
b
7
0
昏
母
2, 39-47 (
2
0
0
7
)
ー
b
身
,
a
.
b
援7
鈎
関
窃
主主必
み
a
,
わ
a
.
b
ま 40
会事
喜
厳重9
会主
宰
ま
す主
宰
1
0
1
0
s
号
母
0
.
5
1
.
0
2
.
0
3
.
0
9
2
量
I
l
'
伶
}
容5
1
.
0
2
.
0
3.
0
温度{紛
。
0.
5
1
.
0
2
.
0
3
.
0
濃度{紛
※ 0%:;
水
、 0
.
5
%:トマトジュース状、1.0%:ごまだれ状、 2
.
0
%:とんかっソース状、 3
.
0
%:ヨーグルト状
※欽み込みやすさ…順位合計が小さい沼ど、飲み込みゃすいことを示す。
※べたつき感…頗位合計が小さい詰ど、べたつきが少ないことを示す。
i
j
副主合言が小さい i
まど、評留が高いことを示す。
※韓合評錨… J
※ a~e
異なったアルファベット罰;こは有意差があることを示す (P <
0
.
0
5
)0
堕 4 官能評僅の結果
考 察
欽み物などの液体に添加し、 E
冒頭通過速度を抑えるために使用されるトロミ荊であるが、現在二十
種類以上ものトロミ剤が甫販されており、その謹類は年々増え続けている G この二十種類以上販売さ
れているト E ミ揺を発売年や原科によって、第 1世代、第 2世代、第 3世代の大きく 3つに分類し比
較した。今国の研究に用いた市販トロミ剤は、多くの病説、施設等で使用されているものである
トロミ剤を添加した液体〈液体食品)の物性部定には、
O
E転粘度計を用いて粘度の測定をする場合
が多い 4) が、本研究では、固形食品の物性として測定されるかたさ、凝集性、付着性でも譲状食品の
物性を測定することが可能であるのではないかと考え、この 3つの物牲を測定することにした。この
3つの物性をみることにより、粘度とは異なった視点から渡状食品の物性特性が得られる可龍性があ
ると考えた。かたさは、物質を変形させるのに必要な力、凝集性は、食品の形態を構成する内部的結
合に必要な力、付着性辻、食品の表面と他の物鉢〈舌、歯、口腔等)の表面とが付着している引力に
打ち勝つのに必要な力として測定される 5)。かたさについては厚生省が定めた高齢者用食品群別許可
基準でも用いられているものであり、凝集性、付着性については、嘆下障害者用の食品の物性を測定
する場合にも頻繁に用いられている叱
車販トロミ剤の第 1世代、第 2世1
-t、第 3世代に分類されるものは、
トロミを発現する主罪科が頗
にデンプン、グァーガム、キサンタンガムであることから、デンプン系、グァーガム系、キサンタン
ガム系ともいわれる
0
G
今屈の実験の 20Cにおける結果は、同じかたさ、付着性を得るのに第 1世代で
最も多くの量のトロミ剤を必要とし、逆に第 2世代は少量でトロミがつく傾向がある
O
一穀にグァー
ガムは、時間が経つにつれかたさが増すといわれるが、今居溺定したグァーガムを主原料とする第 2
世代のトロミ揺は、それ i
まど大きな経時的変化がみられなかった。しかし、他の世代のトロミ荊によ七
べ、間じかたさの時の付着?生は高く、経時的変化がみられた。また、図 2~こ示したように第 2 世代は、
2.5%の濃震までかたさ、付着性とも直隷的な増加を示すが、 2.5%を越えると急激にかたさ、付着性
が増す傾向がみられた。第 3世代のかたさ、付着性は、①と@のいずれも濃度と車線的な比例関係が
みられた c 第 3世代①は、濃震に対するかたさと付着笠の傾きは殺やかであるが、第 3世代②では、
その{頃きが大きかった。第 3世代②は、透暁惑や味などからキサンタンガムが主原料と考えられるが、
キサンタンガム系といわれる第 3世代告と同じ護度を添加すると 2倍近くのかたさ、付着性を示した。
すなわち、少量の添加量でトロミ付けができるということである
G
このことは、添加量が少なくて済
むため、味の変化が少なく安倍であるなどの利点がある反面、わずかな添加量の違いで異なった物性
43
出戸綾子ほか
を示す司このことから、
各韓市販トロミ調整食品の物性に及ぼす温震の影響
トロミの震合い調節が難しくなるといった欠点もあり、注意が必要である s
最近では少量でトロミがつく製品が新商品として販売される額向がある O 以上のことから、物性の面
からみるとトロミ剤の種類、添加量によってその物性は大きく異なっており、それぞれのトロミ荊の
特性を良く理解し、選択する必要があることが分かつた c
液体にトロミ剤を添加するとき、液体の進度は、お茶や味噌汁などの温かいものに使用する場合や、
ジ、ユースや牛乳、冷やしたお茶など冷たいものに捜吊する場合がある G しかし、温度の違いによる物
0
性の比較はこれまでほとんど報告がない。今回の研究では、体温と 20C程度差の温麦帯〈冷たいもの
0
0
はl
SC以下、濫かいものは60C以上)が礁下反射を高めるという報告械を参考に、冷たいものは
0
0
0
5C、温かいものは6SCのインキュベータに入れ、 20Cの場合との比較を行った c
グラフには示していないが、同じト臼ミ剤、罰じ濃度で異なる 3つの逼度のかたさの経時的変化を
比較すると、どの世代の市販トロミ剤においても、 20Cと比べて、 5Cでは立ち上がりが遅く、 6SC
0
0
0
で立ち上がりが早かった。凝集性は、いずれのトロミ揺においても 1分を除き、経時的変化は逼度に
よる差はほとんど無く 0.8S~0.9S付近であった。付着性は、かたさとほぼ再じ挙動を示した c
トロミ
剤添加30
分後の添加濃度によるかたさの影響は、程度には差があるものの、どのタイプのトロミ荊に
0
0
0
おいても 20Cと比較して 5Cのものでかたく、 6SCでやわらかくなった。 Huckabeeらの研究におい
0
0
ても、冷たくした液体では粘震が上昇すると報告されている 9)むまた、蒸留本自体を 5C、20C、
6SCで物性を測定した場合、温度による物性の差は見られなかったため (5C :かたさ 89N/mえ 凝
0
0
集性0
.
9
31,付着性1
2
.
2J
I白人 20C :かたさ 84N/m2,凝集性0
.
9
4
0,付着性 11
.7J1m3、6SC :かた
0
さ81N/m2,凝集笠0
.
9
3
7,付着性11
.
4J
1m3)、蒸留水邑体の影響で、はなく、
0
トロミ剤が水の温震によ
って影響したと考えられる。
第 1世代のトロミ剤に黒いられているデンプンは加熱しなくてもトロミがつくように α化デンプン
を使用しているむ
α 化したデンプンを水分含量1O ~18% 以下で保存すると老化しないが、水分含量30
~60% で低温におくと分子相互の結合が生デンプンの状態のようにミセル状になり老化しやすいむ
5Cでかたく去ったのは、 α化したデンプンを水に溶かし低温で放置したため老化した可能性が考え
られる s また、デンプンの α化の進行に拝い粘震辻上昇するが、デンプン粒が膨潤すると加熱などに
よりデンプン粒が破壊、分散され粘度が低下する c高温でやわらかくなったのは、 α化されたデンプン
0
を高温に放置したため粘震が低下し、それにしたがってかたさや付着性も低下したと考えられる 10、
印
。
また、今回用いた第 1世代のトロミ剤は、水温が高くなるに従ってダマができやすく、ダマができた
分のトロミ剤が蒸留水に落解されなかったことも一つの要国として考えちれる O
グァーガム、キサンタンガムなどの増粘多糖類の粘度の出現は、多糖が水和するその結果として洛
読の粘度が高まる 12)。このことから、本研究の結果を考察すると、溶液の j
量度が下がると水和能力が
上昇し、温震が上昇すると水和龍力が佳下したと考えられる g またグァーガムは、現に冷水に容易に
分散、 7
]
(
和して高粘度の水溶液を作ることが可能で、あるという報告があるむこれ辻、主鎮のマンノー
スに非常に多くのガラクトース基が分鼓しているため、分子鎖が互いに会合するのを防ぎ水が浸透す
るのを手助けすると考えちれている 13)。また、グァーガムは熱に対して弱く、高逼にさらすと粘度が
低下するとの報告がある辺、
1
3
)
ため、この主原料の現象が市販トロミ剤においても出現したと考えら
れる。今回用いた第 2世代のトロミ剤も、第 1世代間様、水温が高くなるに従ってダマができやすし
このことも影響したと思われる O 一方、キサンタンガムは、冷水にも熱水にも溶解し、親水コ百イド
を作る。そのため 10~90VC の間では、他のガムの性質とは異なり加熱による粘度変化はあまりみられ
ない G これは分子構造上、部鎮が多いためである 1針。キサンタンガムを主原料とする第 3世代@にお
いて、温度によるかたさ、付着性差が地のトロミ剤と比較して小さかったのは、このためであると考
44
県立広高大学人関文化学部紀要
えられる
O
2, 3
9
4
7(
2
0
0
7
)
しかし、第 3
i
t
t
代②においては、第 1世代①と比較して大きなかたさ、付着性の差がみら
れた。これは、キサンタンガム以外の粘度を発現する原科が慣用されている可詑性があり、その原料
の影響が考えられる G これらの結果から、温震により物性は異なるため、
トE ミ剤を使用するときは
温度による物1
空への影響も記慮する必要があることが示唆された。
トロミ剤の添加濃度や逼度によって物性が変化すること辻分かったが、 トロミ剤を液体に混ぜて使
用するとき、どの程度のトロミが飲み込みゃすいのか明らかになっていない。そのため、現在最も使
用され販売されている第 3世代のト百ミ部(第 3世代①〉を用いて、濃度(物性)の異なる水の試科
を作成し、官龍評価を行った。飲み込みゃすさ、べたつき感、総合評倍の結果を比較した。 P
earson
の相関係数により相関孫数を求めると、べたつき感と飲み込みゃすさの簡に正の椙関 (
r=0
.
6
8
4
,pく
0
.
0
1
) があり、飲み込みゃすいものほどべたつき惑が低く、飲み込みにくいもの誌どべたついた。欽
み込みやすさと総合評留の関にも正の相関 (
r=0
.
9
6
4,pく 0
.
0
1
) があ号、飲み込みゃすいほど総合評
価が高くなり、飲み込みにくいもの迂ど総合評錨が低いことがわかった。また、べたつき惑と総合評
r
=
0
.
8
3
9
,pく 0
.
01)があり、べたつきが少ないものほど総合評揺が高く、べた
価の間にも正の相関 (
つきがある誌ど総合評価が低かったむトロミ荊の添加濃度1.0%以上の試料においては、べたつくも
のほど飲み込みにくくなり、総合評価が抵い。しかし、 0 %の水においては、 0.5%および工0%のも
のと比べ、べたつき感が少ないと評錨されているにも関わらず飲み込みにくく、訟合評価も抵く評価
された(図 4)0 これは、一般的に高齢者会ど膜下機能が低下した人で、水などのサラリとした液体
が欽み込みにくいといわれることと関係していると思われ、礁下機能が正常な入であっても、水が口
控内でまとまりにくく、保持することが難しい物性であるということが分かった。
これらのことから、有意差はないものの礁下障害のない鍵常者に対して、飲み込みゃすいトロミと
は、水よりも少しトロミがつき、べたつき感の少ないトマトジュースやごまだれ状のものが好ましい
といえる
O
今回用いた市販トロミ斉rjO.5~ 1.0% の物性は、かたさ 115~ 128N
1m2、凝集性0
.
9
5
1~0.962 、付着性
J1m3であり、この物性が健常者にとって好ましかった。この結果は、壊下障害のない入
に対してであるが、実際使用する必要があるのは、高齢者であるため、今後同じ官能評債を高齢者に
おいても行う必要があるむ
13.9~19.8
文 献
1) r2006年抜高齢者/病者患食品市場総合分析調査 i
、株式会社シード・プランニング、東京、
9-7
,
1 2
0
0
6
rLogemann摂食・藤下障害』、夏茜薬出張株式会社、東京、 2-10、
2)道 建一、道協幸博
2
0
0
0
3)江頭文江:膜下食の考え方と工夫、『セミナーわかる!摂食・膜下 1
)ハピワテーション 3巻
養管理と聾害へのアプローチ j、医歯薬出版株式会社、東京、 92-103、2
0
0
6
栄
,PhD
,E
dgarChambersIV,PhD,Z
i
a
dMatta
,MeganC
l
a
r
k,MS:V
i
s
c
o
s
i
t
y
4) JaneMertzG
a
r
c
i
a
.
tLiquid,andTimeComparisons,
Measurementso
fN
e
c
t
a
r
-andH
o
n
e
y
t
h
i
c
kL
i
q
u
i
d
s:Produc
Dysphagia20:3
2
5335
,2
0
0
5
r
食品のテクスチャー評植の標準化』、株式会社光琳、東京 1-25、 1
9
9
7
5)森 友彦、JIl端品子
撰下障害者に対して誤礁を防ぐための食品物性、司本バイオレオロジー
6)坂井真奈美、栢下 淳 :I
学会誌、 2
0 (2)、60-69、2
0
0
6
・
45
出戸綾子ほか
各撞市販トロミ調整食品の物性に及;ます温度の影響
r
7)藤谷)頓子、金谷節子、林静子
改訂新版聴下聾害食のっくりかたj
、抹式会社 E本塁療企
7
2
6
、2
0
0
4
雷
、 1
8) 金谷節子&聖隷三方涼需院栄養科スタッフ
聖隷三方原病院栄養蒋の大いなる挽戦「病院食事
革命J
j、女子栄養大学出版部、 126-128
、1
9
9
8
r
9
) HuckabeeML.P
e
l
l
e
t
i
e
rC
A
:Managemento
fA
d
u
l
tN
e
u
r
o
g
e
n
i
cD
y
s
p
h
a
g
i
a
.S
a
n
D
i
e
g
o
,CA:
S
i
n
g
u
l
a
r,1999
r
でん粉製品の知識L 株式会社幸書房、 35-89
、1
9
9
6
1
0
) 高橋櫨治
I
I祥子、下村道子
新版調理と理論 i
、株式会社同文書院、 1441
1
) 山崎清子、島田キミエ、渋 J
、2
0
0
5
1
4
8
食品多糖類-乳化・増粘・ゲル化の知識』、株式会社幸書房、 1
0-178、
1
2
) 露崎直道、佐野征男
2
0
0
1
食惑創造ハンドブックト株式会社サイエンス
1
3
) 西成勝好、大越ひろ、神山かおる、山本 詮
フォーラム、 315-330
、2
0
0
5
r
r
r
4
6
県立広島大学人関文化学部紀要
2, 3
9
4
7(
2
0
0
7
)
A
b
s
t
r
a
c
t
E
f
f
e
ε
t
sofTemperatureont
h
eP
h
y
s
i
c
a
lP
r
o
p
e
r
t
i
e
sof
VariousCommercialThickeningAgentsf
o
rDysphagia
AyakoDeto,YoshieYarnagata
,J
unKayashita
I
nt
h
i
ss
t
u
d
y
,wec
omparedt
h
ep
h
y
s
i
c
a
lp
r
o
p
e
r
t
i
e
so
fwatero
fv
a
r
i
o
u
st
e
m
p
e
r
a
t
u
r
e
st
o
whichf
o
u
rk
i
n
d
so
fc
o
m
m
e
r
c
i
a
lt
h
i
c
k
e
n
i
n
ga
g
e
n
t
shadbeena
d
d
e
d
. Wea
l
s
oe
v
a
l
u
a
t
e
dt
h
es
e
n
s
o
r
y
e
v
a
l
u
a
t
i
o
no
fwaterw
i
t
ht
h
ec
o
m
m
e
r
c
i
a
lt
h
i
c
k
e
n
i
n
ga
g
e
n
t
s
. Comparedt
owatero
fnormalt
e
m
p
e
r
o
l
dwateri
n
d
i
c
a
t
e
dh
i
g
h
e
rh
a
r
d
n
e
s
sanda
d
h
e
s
i
v
e
n
e
s
s
,w
h
i
l
eh
o
twateri
n
d
i
c
a
t
e
dl
o
w
e
r
a
t
u
r
e,c
h
a
r
d
n
e
s
sanda
d
h
e
s
i
v
e
n
e
s
swhenc
o
m
m
e
r
c
i
a
lt
h
i
c
k
e
n
i
n
ga
g
e
n
t
swerea
d
d
e
d
. Samplesw
i
t
hl
o
w
e
r
s
t
i
c
k
i
n
e
s
sweree
s
t
i
m
a
t
e
dt
obee
a
s
i
e
rt
oswallowi
ns
e
n
s
o
r
ye
v
a
l
u
a
t
i
o
n
si
nh
e
a
l
t
h
yp
e
r
s
o
n
s
.
,t
h
es
e
n
s
o
r
ye
v
a
l
u
a
t
i
o
n
si
n
d
i
c
a
t
e
dmoree
a
s
ei
ns
w
a
l
l
o
w
i
n
gl
i
司u
i
dw
i
t
htomatoj
u
i
c
e
l
i
k
e
However
p
h
y
s
i
c
a
lp
r
o
p
e
r
t
i
e
st
h
a
nw
a
t
e
r
. Wef
o
u
n
dt
h
a
tt
h
ev
a
r
i
o
u
scommercialt
h
i
c
k
e
n
i
n
ga
g
e
n
t
shadv
a
r
i
宜e
r
e
n
te
s
t
i
m
a
t
e
ds
e
n
s
o
r
ye
v
a
l
u
a
t
i
o
n
sdependingont
h
eamounts
o
u
sp
h
y
s
i
c
a
lp
r
o
p
e
r
t
i
e
sandd
i
addedt
ow
a
t
e
r
. Theser
e
s
u
l
t
ss
u
g
g
e
s
t
e
dt
h
a
twehavet
oc
a
r
e
f
u
l
l
yc
o
n
s
i
d
e
rhowt
ou
s
ecommerc
i
a
lt
h
i
c
k
e
n
i
n
ga
g
e
n
t
sb
e
c
a
u
s
et
h
e
i
rp
h
y
s
i
c
a
lp
r
o
p
e
r
t
i
e
sc
a
nchangea
c
c
o
r
d
i
n
gt
ot
h
eamountsused
andt
h
ewatert
e
m
p
e
r
a
t
u
r
e
.
47
Fly UP