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研究室紹介(Lab Introduction)
マテリアルは安心を支える大黒柱 〜苛酷環境に耐える高性能セラミック材料を創製する〜 矢野 ・ 吉田 研究室 先導原子力研究所 物質理工学院 材料系 原子核工学コース 教授 矢野豊彦 北2号館223号室 [email protected] 1 専門分野: 苛酷環境材料工学、セラミックス、欠陥 と固体物性、中性子照射損傷 准教授 吉田克己 キーワード:苛酷環境下の材料物性、原子炉・核融 北2号館221号室 合炉材料、電子顕微鏡、複合材料 [email protected] Homepage:http://www.nr.titech.ac.jp/~tyano/ 研究内容と目指すもの 材料物性を、その結晶構造や、粒界組織、内在する欠陥との関連で明らかにすることを研究のベースとして いる。特に、高分解能電子顕微鏡を用いた局所構造解析により、微細構造欠陥解析、界面及び粒界構造の解析 を通して材料特性評価を行っている。研究対象は、超高温、高熱勾配下、腐食性環境など過酷環境下で使用す るセラミックス系材料及び各種機能材料である。さらに、単独の物質では得られない特性を得るための複合材 料の開発を行っている。 また、中性子照射による材料物性変化を、主として導入される構造欠陥との関連で明らかにしている。照射 効果を利用して新規機能性材料を開発する。原子力へのセラミックスの別の応用として、使用済み核燃料の再 処理により発生する高レベル廃棄物の保持材、あるいは、それらの再照射により核変換するための固定化材と してのニーズが高まっている。そのための材料開発も行っている。 2 最近の研究のテーマ1 セラミックスの微視的構造解析と材料特性−製造から評価まで 材料特性は、それを構成する結晶、結晶構造欠陥、粒界相、粒子配列、表面などの微細構造に大きく依存す る。従って、結晶構造を基礎として、欠陥、粒界、表面、など、ナノサイズの微細構造の評価が極めて重要で ある。本研究室では、ナノサイズ構造を直視できる高分解能電子顕微鏡を駆使することにより、材料特性評価 を行っている。さらに、それらの知見に基づき、新規機能性材料、構造材料の作製を行っている。すなわち、 自ら創成した材料について、種々の物性をはじめ、それらに影響する微細構造、原子構造まで評価できる。 ガスタービン等の各種高温構造材料、高温ガス炉の燃料 被覆や核融合炉の第一壁に使われる炭化ケイ素や窒化ケイ 素、核融合炉の絶縁材料として利用されるアルミナや窒化 アルミニウム、スピネル、高周波伝播性の優れたダイヤモ ンドなど各種セラミックスの構造的な欠陥を、高分解能電 子顕微鏡や高分解能走査型電子顕微鏡、局所元素分析法、 XRD等を用いて解析し、その局所原子構造を明らかにする とともに、種々の物理的特性変化との関連を解明してきた。 また、セラミックス/金属接合界面の原子構造解析、超伝 導セラミックス、光触媒微粒子、ナノコンポジット複合材 料の作製と微細構造評価を行ってきた。さらには、宇宙環 境でのセラミックス材料の特性変化の研究も行っている。 巨視的材料特性 結晶、欠陥 の原子配 列が見える 最新分析機器に よる解析評価 微視的構造変化 材料のナノ構造解析に威力を発揮する高分解能電子顕微鏡 3 最近の研究のテーマ2 原子炉・核融合炉用セラミックスの中性子照射損傷の解析 高速炉や核融合炉では、材料は軽水炉に比べてより過酷な中性子照射を受け、熱勾配、冷却材と構造材料の 化学的な両立性が問題となる。従って、材料の照射下での安定性に対してはより高い要求がされている。特に、 核融合炉に於いては、中性子のエネルギーが極めて高く、また、軽水炉に於いては使用されなかった各種材料 の適用が必須である。本研究室では、高速炉及び核融合炉に於いて使用される各種材料の放射線損傷の実験的 研究を進めてきた。具体的には、高温ガス炉の燃料被覆や原子炉の燃料温度のモニター、核融合炉の第一壁に 使われる炭化ケイ素や窒化ケイ素、核融合炉の絶縁材料として利用されるアルミナや窒化アルミニウム、スピ ネル、高周波伝播性の優れたダイヤモンドなど各種セラミックスの中性子照射損傷を高分解能電子顕微鏡を用 いて解析し、その構造を明らかにするとともに、種々の物理的特性変化を解明してきた。さらに、それらの欠 陥の熱による回復過程を解明することで、欠陥の安定性や、生成条件を明らかにしてきた。 中性子を重照射した窒化ケイ素の高分解能電子顕微鏡写真と原子配列モデル 4最近の研究のテーマ3 先進セラミックス基複合材や多孔質材の作製と微視的構造解析を ベースとした材料特性評価 2 エンジニアリングセラミックスの材料特性は、それを構成する結晶、結晶構造欠陥、粒界相、粒子配列など の微細構造に大きく依存する。従って、結晶構造を基礎として、欠陥、粒界など、ナノサイズの微細構造の評 価が極めて重要である。本研究室では、宇宙・航空機用非酸化物エンジニアリングセラミックスの新規合成法 の開発、特に、セラミックス長繊維、短繊維及び粒子によりマトリックスを強化したセラミックス基複合材料 (CMC)の新規な手法による作製から、室温及び高温での機械的・熱的特性評価に加え、各種電子顕微鏡を駆使す ることにより、否脆性的な破壊を示す信頼性の高い材料の開発を目指して総合的な材料特性評価を行っている。 炭化ケイ素や窒化ケイ素、アルミナ、ダイヤ モンドなど、主として高温、高荷重負荷、腐食 環境下で使用されるエンジニアリングセラミッ クス(緻密質および多孔体)を研究対象として、 その合成から微視的構造変化に基づく巨視的特 性変化を解析している。特に、炭化ケイ素、窒 化ケイ素、アルミナ基の複合材料に関して、長 繊維強化材および短繊維、粒子強化材を原料か ら焼結過程を経て作製している。それらの機械 的、熱的特性を高温まで明らかにすると共に、 粒界構造、ナノ粒子分散、界面構造、結晶欠陥 など、ナノスケールの微視的構造解析により、 特性に及ぼすキーとなる微構造を明らかにし、 新規高性能エンジニアリングセラミックスの開 発にフィードバックしている。また、高機能セ ラミック多孔材の創製に関する研究を行ってい る。現在、独自に提案した「その場結晶成長・ 粒子配向」等を利用した機能付与や、用途に応 じたナノ~マクロレベルでの気孔径制御を軸と した基礎研究を行っている。 製造したSiC長繊維強化SiC 複合材 その場粒成長炭化ケイ素多 孔体の微構造SEM写真 5 スタッフ 矢野豊彦教授、吉田克己准教授、今井雅三技術職員(大岡山キャンパス) 6 原子核工学コース (3つの学院にまたがる複合系コース) 21COE「世界の持続的発展を支える革新的原子力」(2003〜2007) 、大学院教育 改革プログラム(GP) (2008〜2010)、大学院博士課程リーディングプログラム (2011〜2017)、廃止措置等基盤研究・人材育成プログラム(2014〜2018)の運営中 心組織、国内最高レベルの原子力教育環境 ⇨大学院教育(博士・修士)の充実・学生支援、 (リーディングプログラムは修士・博士全寮制教育) ⇨ネイティブによるライティング、プレゼンテーション教育 ⇨国際会議発表旅費支援、国際・国内インターンシップ制度、フィールドスタ ディ、充実した実験科目 研究キーワード セラミックス基複合材料、原子炉・核融合炉材料、苛酷環境下の材料物性、欠 陥と固体物性、セラミックス多孔体、中性子照射損傷、材料科学 7 大学院受験・進学希望者へ 研究の基礎は材料科学(セラミックス)系ですが、出身学科は問いません。研究環境は大 変恵まれていますので、やる気次第で、どんどん進んでいけます。外国で開催される国際会 議で発表することも夢ではありません。21世紀を支える研究を一緒にやりましょう。 (1)原子核工学コース修士課程、1教員あたりの受け入れ人数 最大3名 博士課程進学希望者は歓迎、ただし直ぐに決める必要はありません。 修士ー博士一環プログラムに入れば,短期修了可能 (2)ほとんどは原子核の専門ではない学科の出身者、また、東工大以外の大学出身者も 多い。さらに、国際大学院コースがあるので、留学生が多いのが特徴。 (3)研究室OB就職状況:九州大学、大阪府立大学、産業総合技術研究所、電力会社各社、 日立、東芝、三菱重工、IHIなどの総合電気、プラント関連会社、日本原子力開発 機構、電中研、原子力規制庁などが多いが、三菱総研、野村総研、自動車、製鉄、 ソフトウエア関連も。三菱マテリアル、信越化学などの素材関連も。 (4)共同研究:原子力研究開発機構、物質材料研究機構やJAXA等の準国立研究機関など や企業と共同研究を行っている。 (5)学生に望むこと ■自主性(規制は少なく自由、受け身の姿勢から、自ら行う姿勢に変わる時) ■協調性(研究室は1つの社会、家族。そこから学ぶこと、生まれることが多い) (6)在籍学生 D3 1,D2 1,D1 1,M2 2,M1 1, B4 2, 研究生 1(内留学生5)(H28年4月予定) 教官から一言:「卒業研究や修士課程は就職までの単なる経過点ではない。自ら研究をする ことを習得し、その楽しさを是非分かって欲しい。自分の可能性を試して伸ばして欲しい」 8 最近の研究テーマ ■ 各種セラミックスの中性子照射損傷解析(欠陥の回復過程) ■ 各種セラミックスの中性子照射損傷解析(TEMによるセラミックスの欠陥種の同定等) ■ セラミックス基繊維強化複合材料(電気泳動沈着法によるSiC/SiCの合成法の確立:JAXA) ■ 炭化ケイ素、ムライト等機能性多孔体の開発:産総研、企業との共同研究 ■ マイナーアクチニド固定化セラミックスの開発と特性評価(Si3N4系,SiC系:JAEA) ■ 炭化ケイ素ナノファイバーの合成とそれを用いた複合材料開発 ■ セラミックスの原子力応用(核変換燃料、制御材) ■ 高熱伝導性炭化ホウ素複合材の合成と高温熱・機械特性 ■ 磁場配向を利用した微構造制御セラミックスの作製(産総研) ■ その場粒成長による高純度多孔質セラミックスの合成 15 nm 60 nm 500 nm [111] [101] 50nm 炭化ケイ素ナノファイバーのTEM写真 みんなが待っています!来てね