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平成25年度創生研究プロジェクト成果報告書

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平成25年度創生研究プロジェクト成果報告書
平成25年度
部局長裁量経費 創生研究プロジェクト
報
告
書
徳島大学大学院ソシオ・アーツ・アンド・サイエンス研究部
研究推進室
2015年3月
―
プロジェクト一覧
―
徳島県における冬期越境大気汚染物質 SPM と PM2.5 の起源 ・・・・・今 井
昭二
吉野川流域における「声の言語地図」作成に関する研究
・・・・・岸 江
信介
地域電子ブック開発と大学電子出版ビジネス構築
・・・・・吉 田
敦也
GIS を用いた予防介護としての高齢者サロン・デイケア施設の効率的配置に関する研
究-徳島県小松島市を事例として-
・・・・・内 藤
徹
特定避難勧奨地点解除後における農産物への放射能移行調査・・・・・中山
信太郎
徳島県内で検出されている環境汚染物質の新規毒性の検索-環境共生分野の学部学
生・修士院生と行う国際学術誌レベルの研究実践-
・・・・・小 山
保夫
GIS と3次元都市モデルデータを援用した津波被災想定地域のシミュレーション
・・・・・塚 本
章宏
四国で栽培される柑橘に含まれる有用機能成分の単離
・・・・・中 村
光裕
新たなミトコンドリア活性因子の探索〜糖尿病対策を視野に入れて〜
・・・・・山 口
鉄生
グローバリズムとモラエス―「モラエスが世界に広げた〈徳島の自然・人・心〉の再
構築」―
・・・・・石 川
榮作
プロジェクションマッピングと GIS を用いたインスタレーション作品の制作
・・・・・河原崎
大災害への備えとしての予防的心理教育プログラムの開発 ・・・・・原 田
貴光
新
調光ミラー材料として期待される Mg 系合金薄膜の電子物性に関する研究
・・・・・久 田
旭彦
地域コミュニティにおける方言の記録・保存と継承に関わる調査・研究
・・・・・村 上
敬一
地域創生型フィールドワーク教育プログラムの開発と実施に関する研究
・・・・・玉
真之介
平成 25 年度
学部長裁量経費・創生研究プロジェクト成果報告
プロジェクト名:
徳島県における冬期越境大気汚染物質 SPM と PM2.5 の起源
代表者(氏名・職名):
今井昭二・教授
参加者(氏名・職名):
山本祐平・准教授と学生 2 名(M2 佐名川洋右,B4 耒見祐哉)
研究成果の概要:
冬季季節風によって,酸性化物質以外にも,SPM,ブラックカーボン,PAH’s 等と注目される物質や
有害重金属等様々な物が東アジアから越境輸送されることが懸念されている.大気汚染のモニタリング
地点は,日本国内に 600 カ所近くあり,大気汚染の状況は環境省大気汚染物質広域監視システム AEROS
「そらまめ君」によって公開されるなど公開性の高い常時観測態勢が整備されている。2013 年冬期は
隣国の中国・北京市内の極度の大気汚染が注目されたことで,越境大気汚染が懸念された。東アジアか
らの越境汚染に対して 2012 年度冬期(2012 年 12 月~2013 年 3 月末日)は,とくに福岡市から大阪の
西日本を発信地として社会的関心が急速に高まった。山形県大蔵村では,大陸から飛来したヘイズ(大
気汚染物質)によって雪面汚染現象調査され,黒色化した雪面が報告 2)されている。蔵王周辺でのアイ
スモンスターの濾過物が黒色となり越境飛来であると推定されている。SOx,鉛同位体比測定,硫黄同
位対比測定,気象モデルなど種々の手法により東アジアからの越境汚染が提唱されている。
越境汚染物質は平野部だけでなく山岳おいても観測されるが,冬季の山岳観測体制は劣悪な気象条
件が原因で整備されていない。そこで,我々の研究グループは四国中央部に位置する標高 1399m の山
頂において目視観測や降水試料採取を実施して,湿性沈着物として捕捉された非水溶性物質と四国上空
に観測される黒色浮遊性物質の実態を調査した。最終的な研究成果は,掲載論文や学会発表に委ねる。
特筆すべき事項:
マスコミ報道
今井昭二「FNN スーパーニュースアンカー特集ソクメン」関西テレビ 2014 年 1 月 28 日 16:48-17:54
内容:PM2.5 よりも健康リスクの高い PM0.5 の越境流入の実態調査。兵庫県ノ日本海側にある丹後半島
への同行取材により降雪中の大気汚染物質を調査した。中国の工業地帯から飛来する汚染物質の四国ノ
実態を取材され報道された。
掲載論文・公表の状況等:
学術論文
1)佐名川洋右,耒見祐哉,山本祐平,上村 健,今井昭二;「四国・高知県の梶ヶ森山頂における雨
氷の化学成分濃度」分析化学, 掲載予定,2014 年 8 月。
2)佐名川洋右,来見祐哉,山本祐平,今井昭二:「四国の梶ヶ森山頂における樹氷,降雪,冬季降雨
中の粒子状物質と黒色浮遊性物質」自然科学研究,第28巻2号」(2014 年)
学会発表
1)今井昭二, 佐名川洋右,山本祐平,上村 健:「卓上型 SEM-EDX による四国の亜高山・梶ヶ森
山頂における降雪,雨氷および樹氷中の不溶性微粒子に関する研究」第 73 回分析化学討論会,B1008
函館(北大)2013 年 5 月 18 日.
将来計画:
県内および中国地方における山岳での PM2.5 の実態調査から徳島県への健康リスク解明を念頭におい
た研究へと発展させる。科研費によって中華人民共和国や韓国など東アジアの PM2.5 調査を実施して越
境汚染経路と発生機構を解明して,対策に役立てる。
あれば関連する外部資金獲得の状況など:
科研(基盤 C)今井昭二 課題名:四国の樹氷による PM2.5 越境大気汚染評価の研究(26340084))
平成 26 年度~28 年度 3 カ年計画
取得
2011_3_5梶ヶ森山頂より国見山(三好市)
2013 2 5
2013_2_5
梶ヶ森山頂より国見山
2013_3_9梶ヶ森山頂より国見山
2013 2 5 徳島高速 東みよし町太刀野
2013_2_5
徳島県方面のPM2.5による大気汚染の実情
平成 25 年度
学部長裁量経費・創生研究プロジェクト成果報告
プロジェクト名:
吉野川流域における「声の言語地図」作成に関する研究
代表者:
岸江信介(教授)
参加者:
玉真之介(教授)
掛井秀一(准教授)
研究成果の概要:
吉野川流域を対象とした吉野川流域各地生え抜きの高年層話者、145 名に対してフィールド調査を行
った。本課題は教育活動の一環としての性格を帯びており、2013 年度の徳島大学の共通教育科目『日
本語の音声』
、総合科学部の『日本言語演習』
、総合科学教育部博士後期課程『プロジェクト研究Ⅱ』の
授業の一環として実施した方言調査の成果をまとめたものである。共通教育『日本語の音声』の受講生
をはじめ、学部・大学院で実施している日本語関連の授業の受講生たちが互いに協力し合い、一つの目
標に向かって調査研究を行いながら報告書の刊行に漕ぎ着けることができた。共通教育『日本語の音声』
の受講生の調査をサポートしたのは『日本言語演習』の受講生や博士後期の院生で、調査各地点での話
者の斡旋や引率を行った。また、これらの演習を受講した学生のみならず、日本語学研究室に所属する
院生・研究生も総力をあげて、報告書の作成に協力した。この吉野川流域の言語調査では、同報告書の
刊行と同時に博士後期課程の授業の『プロジェクト研究Ⅱ』(指導教員
玉真之介・掛井修一・岸江信
介)のメインテーマとして、
『吉野川流域の声の言語地図』
(Speaking Linguistic Atlas)の作成を並行して
行ったという点である。同言語地図は Google Map 上で各地点の話者が発した方言音声を聞くことがで
きるという特色がある。各地点で行った調査の録音をいずれも精度の高いヘッドセットを用いて行い、
その音声を地点毎、項目毎に編集し、地点上にマーカーを立てウィンドウを表示し、音声や方言形式(IPA
表記)を表示させている。
前期ではおもに調査票の作成をはじめ、調査の模擬練習、調査機材の使い方、話者を紹介してもらう
ため、各教育委員会を中心に公的機関への連絡などの準備、面接調査を行った。後期では調査結果のデ
ータ入力のほか、音声データ編集作業や、受講生各自がデータをもとにそれぞれ GIS(Geographic
Information Systems)を用いたデジタルマップの作成方法の習得を行うとともに、徳島県吉野川流域言
語地図を作成し、調査結果についてそれぞれ報告書を執筆した。
吉野川流域における総地点数は計145 地点である。調査地点は、以下の、図 1 に示す通りである。各 地
点を示すため、調査地点図を掲げる。
図 2 は項目「とうもろこし」調査結果を言語地図化したものである。
図 1
徳 島 県 吉 野 川 流 域 調 査 地 点 図 ( 2013 年 度 調 査 地 点 )
図 2 とうもろこし
この調査の結果から吉野川流域の言語動態についてそのおおよそを把握することができた。徳島市を中
心とした地域から吉野川上流にかけて多くの方言が伝播していることも判明した。全項目数 120 項目す
べての言語地図日化を終え、各図の分布の特徴を学生が中心となって整理した。
特筆すべき事項:
大規模な吉野川流域を対象とした言語地理学的研究を実施した。特に音声収録による音声の言語地図
の試作はまだ全国的には行われておらず、「危機言語」の保存という視点からも今後、日本全国的な規
模で達成されるべきものであり、これを機に実施していきたい。
掲載論文・公表の状況等:
『徳島県吉野川流域言語地図』Linguistic Atlas of Yoshino River basin in Tokushima(ISBN:9784924918283)
302 頁を刊行した。また、この報告書と並行して、音声を地図上の各調査地点に埋め込み、各地の集落
の話者の音声を地図上の任意の地点をクリックすることにより、リアルタイムで各地の方言音声を聞く
ことができる『吉野川流域声の言語地図』(英語・日本語・韓国語・中国語など 4 言語による多言語版)
を試作し、その一部を Web 上で公開した。
http://www.ncc-1701.jp/son/linguisticMap/linguisticMapK.php?language=2&wordid=32
なお、博士後期課程の授業『プロジェクトⅡ』においてこれを試作した、峪口有香子(博士後期学生
1 年)
・Abudonabi Ubul(博士後期学生 1 年)が共同で Japanese Language Variation and Change Conference
2014 (JLVC 2014)(於国立国語研究所 平成 26 年 3 月 21 日)において「徳島県吉野川流域にかける音
声の記録と保存-言語地理学的調査の一環として-」というテーマでポスター発表を行った。
将来計画:
吉野川流域における声の言語地図を完成させる。徳島県にはない『徳島県方言辞典-方言音声付き-』
を試作する予定である。
平成 25 年度
学部長裁量経費・創生研究プロジェクト成果報告
プロジェクト名:
地域電子ブック開発と大学電子出版ビジネス構築
代表者(氏名・職名):
吉田 敦也・教授
参加者(氏名・職名):
石川栄作・教授、平井松午・教授、北村修二・教授、依岡隆児・教授、佐藤健二・教授、小原繁・教授、
岸江信介・教授、宮澤一人・教授、掛井秀一・准教授、石田和之・准教授、境泉洋・准教授、斉藤隆仁・准教授
研究成果の概要:
3年計画のコラボ事業の最終年度として、総合科学部が中心となった全学的研究体制と地域連携体制のもと、
地域性の高いニッチな電子ブックの開発研究に引き続き取り組むとともに、3カ年の調査研究をまとめた。
1.電子ブック開発
23〜 24年 度 に 開 発 の 電 子 書 籍 11点 を 土 台 に 、引 き 続 き マ イ ナ ー な 地 域 冊 子 、研 究 報 告 、留 学 生
向 け 教 科 書 、ガ イ ド ブ ッ ク 、俳 句 同 人 誌 等 を 中 心 に 、学 生 、地 域 住 民 、高 齢 者 等 に 簡 単 で 馴 染
み や す い 電 子 ブ ッ ク 、ア プ リ 等 の 制 作 /公 開 、研 究 /開 発 に 取 り 組 ん だ 。今 年 度 は 特 に 、電 子 ブ
ッ ク 閲 覧 の 促 進 媒 体 と し て 、ま た 、新 た な 様 式 と し て 、大 学 ア プ リ「 徳 島 大 学 モ バ イ ル 」を 開
発し、徳島大学公式アプリとして公開した。
2.利活用体制の動向把握と効果の検証
電 子 ブ ッ ク 活 用 の 動 向 調 査 と し て「 電 子 ブ ッ ク ト レ ン ド 3 」講 演 会 を 、本 学 部 訪 問 教 授 と し て
来 日 し た ポ ー ト ラ ン ド 州 立 大 学 の ス テ ィ ー ブ・ジ ョ ン ソ ン 博 士 を 講 師 に 招 聘 し 開 催 し た 。ま た 、
電 子 ブ ッ ク 利 用 促 進 に 関 す る 学 内 動 向 把 握 と し て 、電 子 ブ ッ ク 読 書 、ソ ー シ ャ ル リ ー デ ィ ン グ 、
情 報 発 信 、大 学 ア プ リ の 利 用 状 況 /効 果 /地 域 創 生 等 へ の 寄 与 に つ い て 引 き 続 き 調 査・研 究 し た 。
3.社会創生戦略の構築(まとめ)
ICT 利 活 用 に よ る 地 域 創 生 戦 略 の 観 点 か ら 、ス マ ー ト メ デ ィ ア 、電 子 ブ ッ ク 、大 学 ア プ リ を 活
用した地域活性化策とスマートキャンパスモデルを提案し、本研究の第1期をまとめた。
特筆すべき事項:
地方国立大学のスマートライブラリーモデルを提案した。本モデルは311東日本大震災の被災地である仙
台市荒浜地区で復興のための地域住民の取り組み「海辺の図書館」構築に応用された。
平成 25 年度
学部長裁量経費・創生研究プロジェクト成果報告
プロジェクト名:
「GIS を用いた予防介護としての高齢者サロン・デイケア施設の効率的配置に関する研究
-徳島県小松島市を事例として-」
代表者(氏名・職名):
内藤 徹(教授)
参加者(氏名・職名):
古川明美(徳島文理大学・准教授)
研究成果の概要:
近年の社会保障費の増大は我々の社会において非常に深刻な問題であることは周知の事実である。さ
らに各自治体の社会保障費の逼迫が、提供される社会保障の質の低下を招くことも懸念され、これまで
以上に健康な高齢者の要介護状態への移行の抑制は必要不可欠である。また、わが国は 2006(平成 18)
年に改正された介護保険法では、高齢者が自助自立し、住み慣れた地域で安心した生活を継続するため
の政策として介護予防のあり方について言及している。近年、地域の高齢者が自主的に集い、複数の行
事を行う「高齢者サロン」活動が注目されている。しかしながら,現状ではこのような高齢者サロンの
利用が進んでいるとは言い難い.そこで本プロジェクトでは,徳島県小松島市で展開されている高齢者
サロンの活用の低迷の一因と考えられるアクセシビリティに着目し、GIS を用いて視覚化を図り、現状
の高齢者サロンの配置の問題点を明らかにする。さらに、利用低迷の一因と考えられるアクセシビリテ
ィ問題を克服する方策として高齢者サロンに公共施設を活用した場合を想定し、高齢者サロンの活用促
進の処方箋を提示することである.
具体的な分析方法として,平成 23 年度の小松島市の本論文で使用するデータは,冒頭に述べたよう
に平成 23 年に小松島市で実施された「介護予防事業に関する実態調査」を用い,GIS による分析に必
要となる各種地理データは,総務省統計局ホームページ(e-Stat)からデータを入手した.高齢者サロン,
医療機関等の各種施設の位置情報は(株)NTT タウンページが提供する i タウンページをもとにし,詳
細な住所情報が得られない場合は筆者の直接インタビューでこれを補完した.そこで得られた各種施設
の住所情報をもとに,各種施設の経緯度情報については,東京大学空間情報科学センターが提供してい
る CSV アドレスマッチングサービスを利用した.また地図情報の作成には GIS ソフトには ESRI 社の
ArcGIS を用いた. 1まず本節ではこれらのデータ GIS によって地図情報化を図り,現在小松島市の高
齢者がおかれている現状を把握した.
図は CSV アドレスマッチングサービスを利用し,小松島市内に立地する高齢者サロンをプロットし
た(ピンクのポイント)
.さらに,この高齢者サロンの立地情報をもとに,もっとも近いサロンごとに
1
http://www.csis.u-tokyo.ac.jp/japanese/service/index.html
ボロノイ分割を行い,ボロノイ図を作成した.具体的には市内7ヶ所ある高齢者サロン間を結ぶ直線に
垂直二等分線を引きくことで,各高齢者サロンの最近隣領域 を分割した.高齢者サロンについては,
図2で示した医療機関の立地よりその数が少ないため,医療機関と比較して,各高齢者サロンがカバー
する領域が大きいことが分かる.いずれもバス路線(オレンジ線)の沿線に立地しているが,各高齢者
サロンがカバーする領域の大きさは,サロンごとに大きくことなっていることが分かる. 特に南西部
の地域(領域6)については,他の高齢者サロンがカバーする領域よりも大きいことがわかる.図1よ
り,領域6に含まれる櫛渕・立江両地区においては,現段階では南小松島駅周辺の市街地である小松島
町程の高齢者数ならびに高齢化率は見られないが,それに次ぐ高齢化率を示していることから,介護予
防の観点に立脚すると,これらの地区の居住する住民に対して,要介護認定者数の増加を抑制するため
の介護予防施設としての「高齢者サロン」の立地が今後必要となってくるであろう. 特に現在の小松
島市内にある高齢者サロンは,その数の絶対数が必ずしも多いとは言えず,さらにその分布にも不均一
性が観察されるためその有効活用については,改善しなければならない問題点が浮き彫りになった.今
後,予防介護として高齢者サロンを有効活用していくためには,高齢者サロンにおける活動内容や料金
はもとより,高齢者にとっての移動負担の軽減を図っていくことが重要であることを明らかにした.
本稿では,近年介護予防の手段として注目を集めている「高齢者サロン」の利用促進のためにどのよ
うな改善を図るべきであるかという問題意識に立脚し,徳島県小松島市を対象としたデータをもとに,
地理情報システム(GIS)を用いて現状の高齢者サロンが抱える課題を明らかにした.こうした施設の
立地点を決定するにあたり,施設の利用対象者の分布を予め把握し,それに対応した立地政策が必要と
なる.介護予防の手段としての高齢者サロンに関する研究は近年数多くなされているが,その大半は高
齢者サロンの活動内容とその効果に関する研究であり,本稿で分析したようなこれらの高齢者サロンの
利用の足かせとなる,高齢者の分布と高齢者サロンとのアクセスビリティに関する研究は,筆者たちが
知る限りにおいては研究知見の蓄積が希薄であり,その意味において非常に重要であると言えよう.
高齢者サロンの立地と高齢者のアクセスビリティとの関係を表すために,高齢者サロンを基準としたボ
ロノイ分割をおこなうことによって,それぞれの高齢者サロンがカバーする領域について分析を行って
いる.しかしながら,実際にはアクセスビリティに関する議論は,直線的な距離でその領域を分割する
ボロノイ分割ではなく,実際の道路・鉄道を加味したネットワーク分析で分析を行う方が望ましいであ
ろう.また本研究ではアクセスビリティに着目したため,高齢者サロンの内容そのものについては議論
を行っていないためこれらについても議論する余地がある.これらの点については今後の課題となる.
掲載論文・公表の状況等:
1.
古川明美・内藤徹,
(2013)
,
「地理情報システムに基づいた介護予防事業としての高齢者サロンの
最適配置問題;徳島県小松島市の事例にて」
,第 50 回日本地域学会年次大会.
2.
古川明美・内藤徹,
(2013),「地理情報システムに基づいた高齢者サロンの最適配置に関する研究」
日本看護学会(地域看護)
,第 44 回日本看護学会,福井市,フェニックスプラザ.
3.
古川明美・内藤徹,
(2014)
,
「地理情報システムに基づいた高齢者サロンの最適配置に関する研究」,
日本看護学会論文集,(査読付き)
将来計画:
現在,本研究を足掛かりにさらなる論文作成に取り組んでいる.本研究をベースにした研究課題が科学
研究費補助金(基盤研究(C)
)に採択されたため,アンケート調査などの費用のねん出が可能になった
ため,現在,徳島県内で高齢者サロン活動を進めている美馬市を対象にした調査を予定している.また,
今年度の日本地域学会ならびに日本看護学会において認定率の要因分析に関する研究成果を報告よて
いである.
関連する外部資金獲得の状況:
本申請研究の成果をもとに,平成 26 年度科学研究費補助金に申請し,基盤研究(C)
「介護予防政策と
して高齢者サロン活動の有効性に関する理論・実証分析」(課題番号:26502020,研究代表者:古川明
美,研究分担者:内藤徹)が採択された.
平成 25 年度
学部長裁量経費・創生研究プロジェクト成果報告
プロジェクト名:
原子力災害復興における特定避難勧奨地点での住民支援
代表者(氏名・職名):
中山 信太郎 教授
参加者(氏名・職名):
坂口由貴子 総合科学教育部 M2
研究成果の概要:
本研究では放射性セシウムのガンマ線を検出することで環境中の放射能汚染の調査を行なっ
た。福島県伊達市特定避難勧奨地点において、住民が不安に思っている天然試料(生活用水・土
壌・農作物・植物など)の放射能濃度測定をはじめ、同場所における特定の果樹(柿・りんご・
キウイ)の放射能濃度の経年変化と、育成過程における放射能濃度変化について調べた。また、
福島県白河市では市役所と協力して陰膳調査を実施し、実際の住民の食事における含有放射能濃
度を測定して内部被ばくの検討をおこなった。
天然試料の測定をおこなったところ、しいたけ・山菜類の放射能濃度が高かった。また、くる
み・栗・クヌギについて測定したところ、一番外側の部位が共通して高濃度の放射性セシウムが
含まれていた。蜂の巣を測定したところ、巣は土泥や木くずが材料となっているので、一様に高
濃度の放射性セシウムが含まれていた。一番外側の部位は他の部位より高く、土埃など外部から
の表面汚染があったと考えられる。
特定の果樹(柿・りんご・キウイ)について放射能濃度測定をおこなった。柿は樹皮除去によ
る除染あり・なしで放射能濃度を比較したところ、樹皮除去ありの果実は樹皮除去なしの果実の
約 1/2~1/3 に低下しており、葉・枝については果実以上の放射能濃度の低下がみられた。樹皮除
去による除染は果実だけでなく葉・枝への放射能濃度の低下に効果があると言える。また、2012
年度の果実は果皮が果肉(りんごについては果肉と芯)に比べて放射能濃度が比較的高く、土埃
などの外部からの表面汚染があったといえる。
2011 年度からの柿(樹皮除去あり・なし)とりんごの果肉、2012 年度からのキウイの果肉に
おいて放射能濃度の経年変化をみたところ、指数関数的に減少していた。りんごは 2013 年秋で
すでに果肉の放射能濃度は 5 Bq/kg 程度であり、柿は、2015 年秋には樹皮除去なし・あり共に果
肉の放射能濃度は 5 Bq/kg 以下、キウイは 2014 年秋には果肉の放射能濃度は 5 Bq/kg 以下になる
と予想される。
2013 年 6 月・8 月・10 月に果樹の定期的サンプリングをおこない、育成過程における放射能
濃度の変化について検討した。柿では、6 月時は花・葉・枝の放射能濃度はほぼ一様であったが、
結実・育成過程で果実の放射能濃度が低下した。水分量の増加によって放射能濃度が低下したと
考えられる。りんごでは、育成過程における放射能濃度に変化がみられなかった。キウイでは、
柿と同様、6 月時の花・葉・枝の放射能濃度はほぼ一様であった。結実で放射能濃度に低下した
が、その後変化はみられなかった。
特筆すべき事項:
原子力災害はこれまで経験しない事例で、目に見えない放射線との戦いである。住民に寄り添って、
生活環境がどのように汚染され、農作物へと広がっていくかを調査する必要性がある。住民の信頼関
係を築き、科学的データをわかりやすく説明することは学術的にも初めての経験であり、今後の社会
貢献の方策を模索する手がかりに。
掲載論文・公表の状況等:
1. Simple screening method for radioactive concentration using a portable dose rate meter
E. Matsumoto, S. Nakayama, M. Sakama, Y. Kuwahara, K. Tominaga, and T. Saze,
Radiation Safety Management Vol.12, No.2 (2014) 56-60.
2. Application of ICP-DRC-MS to Screening Test of Strontium and Plutonium in Environmental Samples at
Fukushima, M.Sakama, Y.Nagano, T.Saze, S.Higaki, T.Kitade, N.Izawa, O.Shikino, and S.Nakayama,
Applied Radiation and Isotopes 81 (2013) 201-207.
3. Development of a simple radioactivity measurement method using a portable dose rate meter
E. Matsumoto, H. Ito, K. Tominaga, T. Saze, S. Nakayama, M. Sakama, Y. Kuwahara,
Proceedings of the 26th Workshop on Radiation Detectors and Their Users, (2012) 17~26.
将来計画:
今後も被災地への継続的な支援が必要である。原発災害の影響は長期に続く。これまでの活動を検
証し、住民の不安・不信を解消していく。
あれば関連する外部資金獲得の状況など:
平成 24 年度 JST 復興促進プログラム(A-STEP)JST 復興支援促進センター
「だれでも、どこでも、いつでも」測れる土壌放射能汚染チェッカーの開発 1690 千円
平成 24 年~平成 25 年度 放射線の健康影響に係る調査研究事業 環境省
③放射線による健康不安対策の推進に関する研究
「自治体と研究機関で進める効果的な放射線教育活動の模索と効果の検討」
平成24年度:3,900千円、平成25年度:4,590千円
平成 25 年度
学部長裁量経費・創生研究プロジェクト成果報告
プロジェクト名:
徳島県内で検出されている環境汚染物質の新規毒性の検索
̶ 環境共生分野の学部学生・修士院生と行う国際学術誌レベルの研究実践 ̶
代表者(氏名・職名):
小山保夫・教授
参加者(氏名・職名):
論文(1)参加者
大学院生:Yuanzhi Sun, Molomjamts Enkhjargal, Aya Sugihara, Saki Yamada,
Xiaohui Chen, Yukari Miura
学部学生:Eri Fukunaga
教員:Masaya Satoh, Yasuo Oyama
論文(2)参加者
大学院生:Yukari Miura, Xiaohui Chen, Saki Yamada, Aya Sugihara,
Molomjamts Enkhjargal, Yuanzhi Sun, Keiko Kuroda
教員:Masaya Satoh, Yasuo Oyama
研究成果の概要:
論文(1)
Effect
of
triclocarban
on
membrane
potential
of
rat
thymocytes:
Assessment
with
bis-(1,3-dibutylbarbituric acid)trimethine oxonol
Natural Science Research, Vol.27, No.4, pp.51-57, 2013.
http://www.lib.tokushima-u.ac.jp/repository/metadata/105960
トリクロカルバンは細胞膜のナトリウム及びカルシウムイオン透過性を亢進し、胸腺細胞を脱分
極させた。トリクロカルバンはリンパ細胞の膜電位を脱分極させ、細胞機能に影響を与える可能性
が考えられる。
論文(2)
Triclocarban-induced change in intracellular Ca2+ level in rat thymocytes: Cytometric analysis with
Fluo-3 under Zn2+-free conditions
Environmental Toxicology and Pharmacology, Vol.37, No.2, pp.563-570, 2014.
http://dx.doi.org/10.1016/j.etap.2014.01.013
低濃度トリクロカルバンは胸腺細胞の小胞体のカルシウムを枯渇させ、ストア依存性カルシウム
イオン流入を起こすことが示唆された。トリクロカルバンはカルシウムイオンに関係する細胞内シ
グナル伝達系を阻害する可能性が考えられた。
特筆すべき事項:
(A)上記の2編(1)と(2)の論文は徳島市内河川で検出される抗菌剤トリクロカルバンの
細胞レベルでの毒性を検討した研究である。論文(1)ではトリクロカルバンの細胞膜電位に対す
る影響を、論文(2)では細胞内カルシウムイオン動態に対する影響を検討し、それぞれ論文とし
て報告した。著者は Yasuo Oyama(小山保夫)と Masaya Satoh(佐藤征弥)を除いて、総合科学教
育部博士前期課程地域科学専攻および総合科学部社会創生学科の学生である。徳島市内河川底質に
含まれるトリクロカルバンの濃度(←総合科学部環境化学研究室・山本らの研究報告)は哺乳類細
胞レベルで考えると十分に影響を及ぼす濃度であることが確認された。
(B)他の化学物質(ピコリン酸クロム、パラクレゾール、ヘキサジオン等)についても検討し
たが、論文にするだけの意義があるデータは得られなかった。
(C)地域(徳島)に関係したテーマで実験を行い、それらのデータを国際学術誌レベルで論文
化することはテーマが限定されることから難しい。しかし、内1編はエルセビア社の国際学術誌に
掲載されることになり、当初の目的はほぼ達成された。
掲載論文・公表の状況等:
研究成果の概要通り、論文は公表している。
将来計画:
単年度の計画であったが、下記の研究に連結しているので関連する実験は継続される。
あれば関連する外部資金獲得の状況など:
平成 26-29 年度科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)基盤研究(C)
細胞内亜鉛イオンによる化学物質の細胞毒性の増強・抑制メカニズム解析
平成 25 年度
学部長裁量経費・創生研究プロジェクト成果報告
プロジェクト名:
GIS と3次元都市モデルデータを援用した津波被災想定地域のシミュレーション
代表者(氏名・職名):
塚本章宏・准教授
参加者(氏名・職名):
豊田哲也・教授
河原崎貴光・准教授
研究成果の概要:
現在、国・地方自治体のゾーニング策定や防災シミュレーションにおいて、GIS が運用され始め、デ
ータも蓄積されてきている。こうした背景のもとで本研究は、徳島市とその周辺の津波被災想定地域を
視覚的に伝えることを目的としたシミュレーションを行った。本研究の特徴は、これまでの 2 次元の地
理情報だけではなく、3 次元都市モデルを援用することで、より視覚的に津波浸水域を伝えることがで
きる点である。
本研究では、まず 3 次元都市モデルの作成に必要な建物形状・地盤高・建物高のそれぞれのデータを
入手することから始めた。建物形状と地盤高のデータについては、国土地理院「基盤地図情報サイト」
(http://www.gsi.go.jp/kiban/)において公開されており、これを利用することができる。建物高のデータ
については、国土地理院が地盤高のデータを公開するにあたって、測量データから建物の高さデータを
間引くクリーニング処理を行うが、この作業が行われる前の純粋な測量データである「オリジナルデー
タ」と呼ばれる原データを入手することができた。これら国土地理院の測量成果を GIS 上で加工するこ
とによって、建物の集積である 3 次元都市モデルを作成した(図1・2)。
次に、この 3 次元都市モデルに、徳島県が公表している津波浸水想定深度や避難場所のデータを重ね
合わせて表示することで視覚化した(図3)。現時点では単純な重ね合わせまでであるが、徳島市域に
おいて建物と津波浸水想定深度が視覚的に表示され、PC 上で任意の地点を表示しながら、深度を確認
することができる。2 次元の地図の被災想定は徳島県のホームページから閲覧することもできるが、本
成果ではより現実感のある情報を伝えることができる。また、津波避難ビルとそられから 600m の圏内
を示した地図を作成し、効率の良い避難場所を確認できるようにした(図4)。
本年度は、今後の改良を加えるための基礎を築くことができたと考えている。また、GIS で作成した
3 次元都市モデルのデータを、3D プリンターで出力した模型も作成している(注1。これに津波浸水想定
深度を投影することで、現実の世界においても見ることができるようにした。注)河原崎貴光代表「プ
ロジェクションマッピングと GIS を用いたインスタレーション作品の制作」を参照のこと。
図1
図2
3 次元都市モデル構築フロー
作成された 3 次元都市モデル(左:徳島駅周辺、右:徳島市域)
図3
津波浸水想定の視覚化
図4
津波避難ビルからの距離圏
特筆すべき事項:
今年度の計画においては、3 次元都市モデルの作成が主であったことを考えれば、十分な達成度が得
られたと考えている。有料のデータを購入することなく、公的機関(国土地理院)が所蔵するデータの
みで、精度の高い 3 次元都市モデルを作成することができた点は、評価できると思われる。また、3 次
元都市モデルは津波浸水想定深度の地図を重ね合わせるだけでなく、眺望分析や建造物の高さ制限など
の都市計画における応用も考えられ、次年度以降への発展の可能性も期待される。実際に、完成した 3
次元都市モデルを地域に還元すべく、徳島市都市整備部まちづくり推進総室都市政策課とコラボレーシ
ョンの可能性についての協議も行った。
掲載論文・公表の状況等:
・2013 年 10 月 18 日(金) 塚本章宏「3 次元でみる徳島の景観と災害」地理空間情報の活用に関する
徳島地域連携協議会、徳島県市町村職員共済組合
ホテル千秋閣
・2014 年 5 月 13 日 NHK 徳島 「津波浸水深度の仮想体験装置」として放送
・2014 年 5 月 24 日 徳島新聞 「津波浸水深度の仮想体験装置」として掲載
将来計画:
建築物の高さ数値の精緻化やビルや家屋以外の工作物のデータ化を進めて、都市域における3D モデ
ルの密度を増やしていきたい。そうすることで、津波被災域における建物の建築属性など考慮した津波
被害について、より精度の高いシミュレーションを実施することができると考えられる。
平成 25 年度
学部長裁量経費・創生研究プロジェクト成果報告
プロジェクト名:
四国で栽培される柑橘に含まれる有用機能成分の単離
代表者(氏名・職名):
中村 光裕・講師
研究成果の概要:
柑橘類は、ビタミン C など健康に有用な機能成分を含む食用果実として利用されている。その果皮や
種子は、古代ローマや中国において、薬用としての利用されていた。現在でも、漢方薬の陳皮、橙皮な
どとして、外傷、風邪、解熱、または健胃薬として利用されている。温暖な四国地域では、様々な柑橘
が栽培されている。徳島県においても、徳島原産のスダチを始めとして、ユズ、ユコウなど、特徴的な
柑橘類が栽培利用されている。
ERK(extracellular signal-regulated kinase)は、セリン/スレオニンキナーゼの一つであり、全身の細胞
に広く存在し、様々な細胞の機能発現に関与している (1)。特に Raf→MEK→ERK の経路は MAP キナ
ーゼカスケードとして知られている。ERK は MEK により活性化され、活性化された ERK は核内に移
行して転写因子などをリン酸化し、遺伝子発現を調節することで細胞の分化や増殖などを制御している
(図1)
。ERK の活性化により下流の転写因子 CREB(cAMP response element-binding protein)がリン酸
化される。CREB のリン酸化は、記憶力が改善される等の中枢神経系において学習と記憶に関与する事
例が報告されている (2-4)。本研究では、ERK、それに続く CREB の活性化機能に着目し、徳島を中心
にした四国地域で栽培されている柑橘果皮を評価し、有用な活性化物質を見いだす研究を行った。
図2 精製スキーム。オレンジが活性を示したフラクション、赤は特に強い活性を示したフラクショ
ンを示す。
四国の特産である柑橘の皮をメタノールで抽出し、ERK 活性化の強度を比較した。その結果、ユズ、
ブンタンに強い活性が見られた。今回は、ユズを選択し、活性成分の単離を行った。ユズの皮 20 kg を
メタノールで抽出し、ヘキサン、酢酸エチル、ブタノール、水に分配した。活性を示したヘキサン可溶
画分をさらにシリカゲルクロマトグラフィーで 11 フラクションに分けた(図2)
。そのうち活性のあっ
たフラクションをさらに HPLC や TLC により分取し、5つの化合物を単離した。5つの化合物につい
て NMR、MS 等で構造解析を行った結果、Auraptene、Phellopterin、Thymol、Coniferyl alcohol 9-methyl ether、
Methyl ferulate であった。これらの化合物について ERK 活性化を調べた結果、Auraptene、Phellopterin
に活性が確認された。また、CREB の活性化も同様に Auraptene、Phellopterin に活性が確認された。こ
れらの化合物は、学習記憶障害の改善などへの応用が期待される。
参考文献
1. Roux, P. P. and Blenis, J. (2004) Microbiol. Mol. Biol. Rev., 68, 320–344.
2. Mazzucchelli, C. and Brambilla, R. (2000) Cell. Mol. Life Sci., 57, 604–611.
3. Samuels, I. S., et al. (2008) J. Neurosci., 28, 6983–6995.
4. Adams J. P. and Sweatt, J. D. (2002) Annu. Rev. Pharmacol. Toxicol., 42, 135–163.
掲載論文・公表の状況等:
中村光裕,鈴木智子,田村啓敏,増田俊哉:ユズ果皮中の ERK リン酸化促進物質の同定(徳島産
柑橘の機能性成分の探索その 1)
,日本農芸化学会関西・中四国・西日本支部合同大会講演要旨集 2013
年9月
将来計画:
今回、ERK 活性化化合物として単離同定した Auraptene、Phellopterin に関して、構造のどの部分が
重要かを調べるために、類縁体の合成、活性測定から構造活性相関を行い ERK 活性化に関して重要な構
造を明らかにしていく。
平成 25 年度 学部長裁量経費・創生研究プロジェクト成果報告 プロジェクト名: 新たなミトコンドリア活性因子の探索 〜糖尿病対策を視野に入れて〜
代表者(氏名・職名): 山口 鉄生 准教授
研究成果の概要: 筋疲労の要因の一つとして、筋活動に伴って増加する乳酸や水素イオンによる筋の酸性化が報告さ
れている。アルカリ化剤である sodium bicarbonate (SB)を運動前に使用することで、筋の酸性化が中和
され、持久性運動能力の向上につながると考えられている(図 1)。 本研究では、以上のような背景を踏まえて SB がヒト筋芽細胞の分化へ及ぼす影響について検証した。
タカラバイオから購入したヒト骨格筋の筋芽細胞を分化誘導後、培地に含まれる SB の濃度を 11 mM〜
33 mM に設定して持続的に一週間培養した。各濃度条件による細胞内カルシウム濃度、カルシニュー
リンの活性、ミオシン重鎖(MyHC)の各アイソフォームの発現の変化、さらにミトコンドリア関連遺
伝子(PGC-1α、mtTFA、COX I)の発現を調べ、ミトコンドリアの膜電位を MitoTracker Red CMXRos
を用いて検証した。SB 濃度の増加に伴い、細胞内カルシウム濃度の増加とカルシニューリンの活性化、
MyHC-slow(図 2)と各ミトコンドリア関連遺伝子の発現(図 3)が増加し、ミトコンドリア膜電位の
増加も見られた。一方で、sodium hydroxide や sodium citrate による細胞外液のアルカリ化では、いずれ
も明らかな影響は見られなかった。 図 1 筋 疲 労 に 対 す る SB の 作 用 図 2 SB に よ る 各 ミ オ シ ン 重 鎖 ア イ ソ フ ォ ー ム の 発 現 変 化 さらにカルシウムシグナルの検証を行ったところ、SB の濃度増加に伴いヒト筋芽細胞における
NFAT-c2 と -c4 の 発 現 が 増 加 し て お り 、 siRNA に よ り NFAT-c2 と -c4 の 発 現 を 減 弱 さ せ る と
MyHC-slow の発現が低下した。逆にヒト筋芽細胞に NFAT-c2 と-c4 を過剰発現させると MyHC-slow
の発現が増加した。
SB により MyHC-slow の増加とミトコンドリアの活性化を示唆する結果が得られ、これらの変化が
持久性運動能力の向上に影響している可能性がある。SB によるこれらの作用は細胞外液の pH 変化より
も、むしろ細胞のカルシウムシグナルであるカルシニューリン/NFAT-c2, -c4 を介した機序があると考
えられる(図 4)。 図 3 ミ ト コ ン ド リ ア 関 連 遺 伝 子 の 発 現 変 化 図 4 SB に よ る 分 子 メ カ ニ ズ ム 掲載論文・公表の状況等: Tetsuo Yamaguchi, Maiko Omori, Nobuho Tanaka and Naoshi Fukui :
Distinct and additive effects of sodium bicarbonate and continuous mild heat stress on fiber type shift via
calcineurin/NFAT pathway in human skeletal myoblasts.,
American Journal of Physiology, Cell Physiology, Vol.305, No.3, pp.C323--33, 2013.
将来計画: 本研究では in vitro での SB によるミトコンドリアの活性化とそのメカニズムを明らかにした。ミト
コンドリアは糖・脂質代謝において重要な役割を担っている。今後はヒトやマウス等を用いて生体
での検証を行い、SB とミトコンドリアの関係を明らかにする事で糖尿病対策につなげたいと考え
ている。 平成 25 年度
学部長裁量経費・創生研究プロジェクト成果報告
プロジェクト名:
グローバリズムとモラエス―「モラエスが世界に広げた〈徳島の自然・人・心〉の再構築」―
代表者(氏名・職名):
石川 榮作・教 授
参加者(氏名・職名):
宮崎 隆義・教授
佐藤 征弥・准教授
境
泉洋・准教授
研究成果の概要:
代表者及び参加者は,モラエスについての研究,特にその著作についての研究を深め,さらに忘れら
れかけているモラエスを若い世代に伝えるべく「徳島大学総合科学部モラエス研究会」を 2010 年 7 月
に立ち上げた。古くからモラエスの顕彰を行ってきたモラエス会や徳島日本ポルトガル協会などの団体,
さらには県内の,モラエスの関係資料を収めているモラエス館や徳島県立文学書道館,徳島県立図書館,
徳島県立文書館,徳島市立図書館,鳴門教育大学附属図書館等との交流や連携を図りながら,基本的に
は毎月 1 回程度を目安に例会・読書会として,モラエスの著作を翻訳を通して読んでいる。取りかかり
としては,徳島県立文学書道館から「ことのは文庫」として再刊行された岡村多希子氏の翻訳による『徳
島の盆踊り』を読み,その次に同じく岡村多希子氏の翻訳による『おヨネとコハル』を取り上げて読み
続け,教員側の研究を紹介しながら参加者である地域市民から生きた情報を得るという形で進行してい
る。
平成 25 年度については,例会・読書会,並びに合同研究会,シンポジウムと特別講演を計 9 回開き,
作品の分析から様々な問題を汲み上げてきた。
研究例会・読書会の実施状況(平成 25 年度分)
・平成 25 年 5 月 18 日【モラエス研究会例会・読書会】
・平成 25 年 6 月 29 日【モラエス研究会例会・読書会】
・平成 25 年 7 月 27 日【モラエス研究会・合同研究会】
・平成 25 年 8 月 31 日【モラエス研究会例会・読書会】
・平成 25 年 10 月 12 日【モラエス研究会例会・読書会】
・平成 25 年 12 月 14 日【モラエス研究会例会・読書会】
・平成 26 年 1 月 25 日【モラエス研究会例会・読書会】
・平成 26 年 3 月 8 日【モラエスシンポジウム・特別講演】
・平成 26 年 3 月 29 日【モラエス研究会例会・読書会】
こうした基本的な研究活動としての定例の読書会を通し,教員側の研究を市民側の情報提供を交えな
がら補完し深めた結果として,研究論文という形で成果を世に問うている。
特筆すべき事項:
2013 年は,モラエスが徳島に来住して 100 年という節目であったので,
モラエス徳島来住100周年記念行事
NPO 法人神戸外国人居留地研究会
徳島大学総合科学部モラエス研究会
合同研究会
それに合わせて関連事業も展開した。7 月 28 日には,神戸の NPO 法人神戸
日 時:2013年7月27日(土)
外国人居留地研究会との合同研究会を開いた(7 月 29 日徳島新聞報道)
。
(午前の部)
「モラエスゆかりの地見学」
神戸居留地研究会の方々と,モラエスゆかりの
地を散策します
10:30 阿波おどり会館前出発
昼食は「かんぽの宿」で会食とします
(申し込み必要。移動にかかる交通費と
昼食代1500円程度が必要です。
)
(午後の部)
「研究発表会」
総合科学部1号館南棟
3階 第1会議室
13:30 研究発表1
また,本研究計画に間接に関連するものとして,7 月 1 日のモラエス忌
神木哲男氏(神戸居留地研究会,神戸大学名誉教授)
:
「モラエスの日本観・女性観 ~ 私的感想 ~」
14:30 休憩(学内展示パネル見学)
14:45 研究発表2
近藤文子氏(徳島日本ポルトガル協会,神戸居留地研究会):
「W. J. de S. Moraes の 5,163 日」
に,モラエスの従兄弟の子孫来訪も実現できた(7 月 2 日徳島新聞報道)。
17:00 懇親会(場所:徳島大学生協食堂)
(申し込み必要。懇親会費4000円程度。)
徳島大学総合科学部モラエス研究会 宮崎隆義(代表)
〒770-8502 徳島市南常三島町 徳島大学総合科学部
電話・Fax: 088-
656-
7131
E-mail: [email protected]
11 月 16 日には,
日本比較文学会第 49 回関西大会を総合科学部で開催し,
シンポジウム「モラエスとハーン―生へのまなざし,死へのまなざし―」
を企画実施した(11 月 17 日徳島新聞報道)
。
12 月 1 日には,明治大学・徳島県・徳島大学連携講座としてシンポジウム
「ポルトガルの文豪モラエス~「美しい日本」をこよなく愛した異邦人~」
を,明治大学駿河台キャンパスリバティホールにおいて実施した(12 月 2 日
徳島新聞報道)
。
2014 年 3 月 8 日には,元在ポルトガル大使四宮信隆氏を招いての特別講
演とモラエスのシンポジウムを実施した(3 月 9 日徳島新聞報道)。
このようなモラエス研究会の関連事業により,モラエスのことがマスコミで報道された効果として,
モラエス研究会の知名度も上がり研究会例会・読書会への参加者も徐々に増えつつある。また,研究会
代表の宮崎による活動として,放送大学学びの森講演会「「モラエスの徳島」〜100 年前モラエスが見
たもの〜」
(9 月 28 日:徳島県立文化の森図書館)
,徳島城博物館平成 25 年度阿波の文学と歴史セミナ
ー「阿波人物万華鏡」
:
「W. J. モラエス 徳島への想い」〜100 年前モラエスが見たもの〜」
(12 月 20
日:徳島城博物館)
,鳴門教育大学附属中学校講演会「グローバル化時代と異邦人モラエス〜100 年前
モラエスが見たもの〜」
(10 月 31 日:鳴門教育大学附属中学校)
,大阪日本ポルトガル協会での講演会
「関西のモラエス〜絵葉書書簡から〜」
(大阪日本ポルトガル協会第 76 回例会:2014 年 2 月 21 日:
ウェスティンホテル大阪)などを実施しており,これによってモラエスを知る人が増えつつある。また,
平成 26 年度には四国コンソーシアムの e-learning の授業に「モラエスの徳島〜グローバリズムと異邦
人〜」を企画し,後期に開講することが決定している。
掲載論文・公表の状況等:
徳島大学総合科学部の紀要『地域科学研究』
(第 3 巻,2013 年)に,この研究プロジェクトの成果と
して以下のものを掲載公表している。
・論文「モラエスの三つの絵葉書書簡集―絵葉書書簡からみえるモラエスの生活圏,旅行,信仰につい
て―」
(佐藤征弥・高木佳美・石川榮作・境泉洋・宮崎隆義)
・論文「モラエスの庭―(3)異邦人のまなざし―」(宮崎隆義・佐藤征弥・境泉洋)〕
・実践報告:平成 24 年度徳島大学総合科学部学部長裁量経費総合科学部創生研究プロジェクト成果報
告「モラエスの庭―徳島の自然・人・心―」
(宮崎隆義・佐藤征弥・境泉洋)
また,2013 年 12 月 1 日に明治大学駿河台キャンパスにて開催したシンポジウムの報告書が 2014 年
3 月 1 日に徳島大学より刊行された。
・報告書:
『明治大学・徳島県・徳島大学連携講座:ポルトガルの文豪モラエス シンポジウム~「美し
い日本」をこよなく愛した異邦人~』
(石川榮作・桑原信義・宮崎隆義・佐藤征弥・山田朗)
将来計画:
神戸の NPO 法人神戸外国人居留地研究会や,大阪,東京の日本ポルトガル協会とも連携が取れる
体制ができあがっており,また,総合科学部モラエス研究会のブログが縁で,モラエスの遠縁の子孫
でモラエスの研究も行っている研究者やその関係者とも連絡と連携体制が整いつつある。こうした取
り組みと本研究計画とが連動して,さらなる研究のテーマが生まれ,参加者のそれぞれが自分の立場か
ら取り組んでおり,新たなモラエス研究の論文集や資料集などを刊行することを計画している。
本研究プロジェクトは,中期計画を念頭に置き,地域科学の一側面として,徳島の歴史や文化の諸相
を再発見すべく,グローバルな視野から徳島の自然・人・心を眺めることとし,モラエスにとって徳島
が何であったかを軸として,ポルトガル,そしてヨーロッパに伝えられた「徳島」を,モラエスがとら
えた徳島の「自然」
,「人」
「心」を読み取りながら,再構築することを目的とした。参加者がそれぞれ
の専門分野から検討を加えて考察し比較しつつ,モラエスの作品分析から読み取るという基礎的な作業
や資料の調査並びに確保を現在も継続している。だが,まだ不十分なものであり,現時点ではまだ継続
中の研究プロジェクトであると考えられるが,モラエスの親戚筋の子孫一家を招き,モラエスに関する
情報交換やモラエス忌への参加を実現できたことは,本研究計画の名称にまさに合致する成果であった
と言える。さらに多方面との関わりについては,モラエス会や徳島日本ポルトガル協会との繋がりを一
層強固なものにしつつ,大阪日本ポルトガル協会,NPO 法人神戸居留地研究会,ロータリークラブな
どとの連携並びに協力関係が出来上がりつつある。また,徳島県立文学書道館や図書館,文書館,徳島
市立図書館等との連携も得られている。モラエス研究会としての活動により,例会の参加者より貴重な
情報を得ることができ,それを本研究の成果発表に活かすことができる状況ができつつある。また,地
元の文化的な遺産としてのモラエスを,若い世代に伝えたいということがあり,学生の参加も得られて
いるので,さらに広げてゆきたい。今後さらに研究を通してモラエスの作品についての十分な啓蒙を図
ることによって,学生や地域の市民,さらには他の地域に対してもモラエスを軸とした文化継承と啓蒙
が行えると考えられる。
平成 25 年度 学部長裁量経費・創生研究プロジェクト成果報告 プロジェクト名: プロジェクションマッピングと GIS を用いたインスタレーション作品の制作
代表者(氏名・職名): 河原崎貴光・准教授
参加者(氏名・職名): 塚本章宏・准教授
掛井秀一・准教授
研究成果の概要: 1. 建物形状の GIS ポリゴンデータに航空レーザー測量(国土地理院所蔵)による高さ情報を加え、
GIS アプリケーションにより3次元データ(vrml)を作成.
2. GIS アプリケーションから得られたデータ(vrml)を 3D グラフィックアプリケーションでモデリン
グと調整(stl).
3. 粉末積層プリンターで立体模型を作成.
4. 立体模型に色面化した津波浸水想定ハザードマップ(徳島県所蔵)を投影.
5. USB マイクロスコープを使用して模型の任意の場所をインスタレーション環境に映し出す.
6. マイクロスコープで捉えた、津波浸水想定ハザードマップの色域がマッピングされた模型の映像を
解析し、捉えた任意の場所の津波の高さ予測を実物大の映像でインスタレーション環境に投射.
以上の手順で、徳島駅から徳島大学常三島キャンパスまでの範囲の立体ハザードマップインスタレーシ
ョンを作成した。
特筆すべき事項: GIS データを基にインスタレーション作品を制作することで新たなプレゼンテーションの方法と表現
の可能性が広がり、横断的な研究と制作の良いキックスタートとなった。
現時点でのコンシューマーレベルで可能な範囲では目標が達成出来たが、限られた予算内での3次元デ
ータ解析には限界があり、3D データにマッピングした情報をレンダリングしてプロジェクションする、
本来の意味でのプロジェクションマッピングには至らなかった。
掲載論文・公表の状況等: 2014 年 5 月 13 日 NHK 徳島 「津波浸水深度の仮想体験装置」として放送
2014 年 5 月 24 日 徳島新聞 「津波浸水深度の仮想体験装置」として掲載
将来計画: 3D データの処理環境が向上すれば実空間での AR 避難誘導シミュレーション等、可能性が広がると感
じた。 平成 25 年度
学部長裁量経費・創生研究プロジェクト成果報告
プロジェクト名:
大災害への備えとしての予防的心理教育プログラムの開発
代表者(氏名・職名):
原田 新・特任講師
研究成果の概要:
大災害の体験後には,PTSD 反応などの心理的症状が見られることが報告されている。こ
のような被災後の後遺症を減らす対応策として,心理教育の有効性が指摘されている。し
かし本来このような心理教育は,被災前に予防的に身に付けてこそ,真の効果を発揮する
ものである。本プロジェクトでは,今後大震災が起きた際に備え,特に災害に対する脆弱
性が高いとされる子どもたちに取り組み可能な予防的心理教育プログラムについて開発す
ることを目的とした。具体的には,東日本大震災以降に被災地の学校で子どもたちに対し
て実際に取り組まれた様々な心理教育や,子どもたちが日常的に取り組み可能なストレス
マネジメント方法等についての資料収集を行い,予防的心理教育として有効な要素に関す
る整理を行った。
東日本大震災以降,被災地の学校で実際に取り組まれた主な心理教育としては,福島県
で浜松医科大学チームが実施する「心の教育プログラム」(以下,「浜松」
)や福島県臨床心
理士会が実施する「学級ミーティング」(以下,「福島」),いわて子どものこころのサポー
トチームが実施する「こころのサポート授業」(以下,「いわて」
)等が挙げられる。これら
は,1 回もしくは複数回にわたって学校の児童生徒たちに実施されており,主に以下の内容
から構成されていた。
1.ストレス反応やトラウマ反応に対する質問紙項目での状態チェック(「福島」「いわて」
が実施)
2.ストレス反応やトラウマ反応に関する心理教育(「いわて」が実施)
3.ストレスマネジメント方法(ストレス反応への対処法)の心理教育
(1)自己評価の向上・適応行動の確認(
「浜松」が実施)
(2)気持ちの切り替え方法の習得(
「浜松」が実施)
(3)ストレス場面での対処法の考案(「浜松」
「福島」「いわて」が実施)
(4)体験の共感的共有(ピアサポート)
(「福島」が実施)
(5)リラクセーション方法(呼吸法,肩上げの筋弛緩法,ペアリラクセーション等)の習
得(
「浜松」
「福島」
「いわて」が実施)
(6)相談の勧め(
「浜松」が実施)
(7)教師,スクールカウンセラーらによる個別面談への繋ぎ(「福島」
「いわて」が実施)
以上のように,実際に被災地で実践されたストレスマネジメント方法には様々なものが
見受けられたが,大災害時に向けた事前準備として実施可能なストレスマネジメント方法
は他にも多々提案されている(竹中,冨永,2011 など)
。また,海外においては,大災害後
に学校教員自身が子どもたちに心理教育を実施できるよう,教員向けの研修会の方法が開
発され,効果検討も積極的に行われている。東日本大震災以降には,その日本語版の作成
も見受けられた(例えば,オーストラリアのクイーンズランド大学の研究グループが開発
した「Child Trauma ― 自然災害を体験した子どもの反応」など)。このような学校の子ど
もたちに向けた心理教育の実践活動においては,心理の専門家にのみ実施できるものでは
なく,学校の教員にも実施可能なように,簡便かつ有益なものであることが重要であると,
いずれの研究チームにおいても指摘されていた。
本プロジェクトでは,以上から得られた知見をもとにして,現場の教員にも実施可能な
予防的心理教育プログラムの原案が作成された。平成 26 年度には,オーストラリアのクイ
ーンズランド大学の研究チームが,日本の各地で自身らの作成した上記の教員研修プログ
ラムに関する講習会を開催することが決定している。本プロジェクト代表者もその講習会
に参加することになっている為,海外での先進的な取り組みからの知見を学び,さらに本
プロジェクトの予防的心理教育を洗練させる予定である。
特筆すべき事項:
これまで東日本大震災以降,各地で様々な心理教育が実践されてきたが,それらは各チ
ームがそれぞれ独自に開発したものであり,各チームでの取り組みは独立して行われてき
た。本プロジェクトで,まずは改めて資料収集を行い,各チームでの取り組み内容の要素
を整理し,内容的な重なりや相違についての検討を行ったことは意義あることである。ま
た,他のストレスマネジメント方法や,海外での心理教育の内容も加味して,新たに予防
的心理教育の原案を作成したことで,本研究の目的は一定程度は達成されたといえる。
将来計画:
平成 25 年度内には作成した原案を用いての実践的検討や効果測定の実施にまでは至れな
かった。今後,まずは海外での効果検討も行われた心理教育についての詳細な知見を得て,
それも参考にしながら本プロジェクトの心理教育の原案を洗練させる予定である。さらに
その上で,実際に小中学校や教員研修の場等で実践活動を行うと共に,効果検証も行って
いく予定である。
平成 25 年度
学部長裁量経費・創生研究プロジェクト成果報告
プロジェクト名:
調光ミラー材料として期待される Mg 系合金薄膜の電子物性に関する研究
代表者(氏名・職名):
久 田 旭 彦・助 教
参加者(氏名・職名):
小 山 晋 之・教 授、齊 藤 隆 仁・准 教 授、真 岸 孝 一・准 教 授
研究成果の概要:
1.はじめに
金属薄膜の中には、水素化/脱水素化によって透明状態と鏡状態を切り替えられるものが存在する。
この性質を利用すれば、窓からの光や熱の出入りを操作することができることから、新しい省エネ技術
「調光ミラー」の材料として注目されている。初期に発見された Y や La の薄膜の他、Mg-Ni 合金薄膜
などでもこうした性質は発見されてきたが、少ない回数の切り替えで薄膜が劣化する等の課題があった。
そうした中、産業技術総合研究所が開発した Mg-Y 合金薄膜は 10,000 回以上の切り替えに耐える耐久性
を示すものであり、実用化に向けて研究が進められている。
調光ミラーの原理は、水素化/脱水素化によって金属-絶縁体転移を起こさせる点にあり、水素化の
各段階における電子状態を調べることで、それが光学特性に及ぼす効果や、組成変化についての情報が
得られると考えられる。そこで本プロジェクトでは、産業技術総合研究所から提供してもらった Mg-Y
合金薄膜試料について、X 線回折測定による構造解析や、電気抵抗測定による輸送特性の研究を行い、
水素化/脱水素化に伴う物性の変化を調べた。また、微視的な情報を調べることを目的として、NMR
測定も行った。
2.実験方法
X 線回折測定では、水素化させる前の試料と、一度水素化させた後、脱水素化させた試料のそれぞれ
について構造解析を行った。また、電気抵抗測定では、密封式プローブを用いて試料空間の水素雰囲気
を調整し、水素化/脱水素化の各段階における電気抵抗の温度依存性を観測した。NMR 測定では 1H
NMR 信号の観測を行った。
3.結果と考察
X 線回折測定による構造解析では、
水素化前の試料について c 軸配向を示唆するピークが観測された。
また、脱水素化後はアモルファス化を示唆するスペクトルの変化が観測された。
一方、電気抵抗測定では、水素化に伴う金属-絶縁体転移によって、電気抵抗率が1桁上昇すること
が観測された。また、その温度依存性からは、温度低下に伴い水素化が進むことを示唆する電気抵抗率
の上昇が観測されたほか、脱水素化後も電子状態は水素化前の状態には戻っていないことが確認された。
これは前述のアモルファス化によるものであると考えられる。以上の結果は、従来から研究されてきた
光学特性だけでなく、電子物性からも、調光ミラー材料における水素化/脱水素化の効果を評価できる
ことを示唆するものである。
本研究では、水素化後の試料の NMR 測定も行った。この測定では、水素雰囲気から取り出した状態
であっても 1H NMR 信号を観測することができ、このことから、試料中に水素が残っていることが確認
された。但し、その緩和率の温度依存性は金属的性質を示さなかった。
将来計画:
試料の電子状態についてより詳細な情報を得る為には、1H 以外の NMR 測定を行うことが重要である
と考えられる。今のところ、共鳴条件の問題で NMR 信号を観測できていないことから、ピックアップ
コイルの調整が今後の課題になると考えられる。
掲載論文・公表の状況等:
2013 年 9 月 25 日から 28 日に開催された日本物理学会 2013 年秋季大会において、本プロジェクトの
研究成果「核磁気共鳴法を用いた Mg‒Y 薄膜の水素化特性の研究」を発表した。
平成 25 年度
学部長裁量経費・創生研究プロジェクト成果報告
プロジェクト名:
地域コミュニティにおける方言の記録・保存と継承に関わる調査・研究
代表者(氏名・職名):
村上 敬一(SAS 研究部・准教授)
参加者(氏名・職名):
総合科学部学生有志
研究成果の概要:
【研究の目的】
本プロジェクトは,阿波方言を事例として,地域の習俗や歴史を背景に持つ,消滅の危機にある伝統
方言を記録・保存し,後世に継承していくことを目的とした。
【研究の概要】
ふたつの課題に取り組んだ。
ひとつは,徳島県内において伝承される昔話に基づいた「方言テキスト」
「方言文法の記述」
「方言辞
書の作成」である。
具体的には『阿波の民話 3 集~12 集』
(徳島新聞社)に採録された昔話・民話から,徳島県内の地域差
を考慮して 40 作品ほどを選定し,それらを,村上と関わりのある総合科学部 1~3 年生 17 名で分担の
のち,標準語訳と,文法的な特徴の解説を付したものを作成した。取り上げた作品は,以下の通りであ
る。
ひょっとこらしょ,寺を救ったクマンバチ,狸の火事真似,継子の栗拾い,おせんとこせん,食わず女房,
祠のタタリ,引野の天神さん
など
方言事象の記述と合わせて,当該地域,関係する風俗・習慣の記録を目的とする「コラム欄」も作成
した。コラムには,地域に記録されている種々の報告書類や,祭りなどに関する資料も合わせて採録し
ている。
上述した「方言テキスト」
「方言文法の記述」
「方言辞書の作成」は,伝統方言の記述に必要な3点セ
ットとされるものである。本プロジェクトでは,小松島市と東みよし町の2地点で,方言テキストの音
声データを収録し,生きた音声を保存・記録することで「4点セット」とすることができた。
もうひとつは,高校生,大学生を対象としたアンケート調査による,若年層方言の動態の解明である。
具体的な内容は,現代日本語方言の地理的分布と世代差,方言に対する意識などである。対象は,山陽,
瀬戸内,東四国の若年層(高校生,大学生)約 500 名である。約 100 の調査項目について,エクセル
を用いてデータを電子化し,図表化を進めている。
【研究の成果】
紙幅の都合上『阿波の民話』からは,方言形「コンマイ」についての記述を取り上げる。
『日本言語地図』(国立国語研究所 1966~1974)による
と、「小さい」に相当する語形は 69 語ある。四国ではチイ
サイ、コマイ、コンマイ、ホソイ、ケマイなどがあり、徳
島にはチイサイ(黒三角)
、コマイ(赤 V)、コンマイ(赤
菱形)の形式があり、コマイが広範囲に分布していること
がわかる。参考『日本言語地図』
http://www.ninjal.ac.jp/s_data/drep/laj_map/LAJ_022.pdf
図 1 「小さい」を何というか(徳島県)
若年層(高校生・大学生)の調査結果について,一例として下の図2は食べ物が脂っこいことを何と
いうか,徳島県内の高校生の結果をみる。
県西の A 高校と、徳島市内中心部の E 高校で、共通語形
の「アブラッコイ」が多い。吉野川中流域の B 高校で、方言
形「ムツゴイ」が最も多くなる。A 高校のある三好市は、県
西部に位置するも、四国の中では交通の要衝である。他県と
の交流のしやすさが、若年層での共通語化の背景にあると思
われる。
図 2 「脂っこい」
(徳島県・高校生)
特筆すべき事項:
先述した「方言テキスト」
「文法書」
「辞書」
「音声データ」の4点セットは,現在の阿波方言を記録する
上で,必要不可欠な資料に位置づけることができたと思われる。今後の継続的な調査にも,有効活用できる
ことが期待される。
掲載論文・公表の状況等:
今後の予定:『グラフで見る高校生の阿波方言』
(仮称)の公刊
『民話の中の阿波方言』
(仮称)の公刊
このほか,方言語彙の習得や,方言語彙の意味の拡散・収束など,本研究の調査結果に基づいた学術論
文の作成にも取り組んでいきたい。
将来計画:
地域言語の今後のあり方を探るための具体的事例として,高校生調査は,地点を増やして今後も続け
ていきたい。また,中学生や大学生にも拡大して,方言の継承,習得や,共通語との使い分けなど,若
年層における地域言語研究や,第一言語習得,第二言語習得の比較など,社会言語学に関わる課題につ
いても継続的に取り組んでいく。
民話の記述には,言語そのものの記述とともに,地域社会のありかた,文化,習俗なども関わってく
る。民話を題材とした地域言語の記述的研究の事例として,社会学や文化人類学的な視点も合わせて継
続できればと考えている。
平成 25 年度
学部長裁量経費・創生研究プロジェクト成果報告
プロジェクト名:
地域創生型フィールドワーク教育プログラムの開発と実施に関する研究
代表者(氏名・職名):
玉真之介(教授)
参加者(氏名・職名):
豊田哲也(教授)
、田口太郎(准教授)
研究成果の概要:
地域づくりに資する人材を養成することは、総合科学部の重要な教育目標の一つであり、フィールド
ワーク学習を通じ、地域の実態を正しく把握する能力や課題に向き合う態度を養うことが必要である。
これを実現するため、平成 25 年 9 月に上勝町において 4 泊 5 日の合宿研修「インターユニ・フィール
ドワーク・プログラム 2013」を実施した。参加者は、学生 28 名(徳島大学 20 名、鳥取大学 3 名、岐
阜大学 5 名)
、教員 12 名(徳島大学 5 名、鳥取大学 2 名、岐阜大学 1 名、オブザーバ 4 名)。参加学生
の感想は非常に好評で、最終日に実施したアンケートによると、満足度の平均スコアは 5 点中 4.7 であ
った。成果は以下 3 点に要約される。①地域学系大学・学部等連携協議会の加盟校と協力し、他大学と
の交流による相乗的な教育効果があった。②上勝町から町長、町職員、NPO 関係者、一般住民など十
数名の強力を得て「大学と地域が学びあう関係」をつくることができた。③フィールドワーク教育の授
業開発(FD)を行い、課題解決・探求型学習プログラムの方法についてノウハウを蓄積共有できた。
1.プロジェクトの背景
平成 25 年 5 月に文部科学省教育再生実行会議が示した「人材力強化のための教育改革プラン」では、
「学生を鍛え上げ社会に送り出す機能強化」が柱の一つに据えられ、「農山漁村も含めた地域における
フィールドワーク等の体験型授業の充実を通じて社会との接続を意識した教育を強化する」ことが提起
された。地域活性化に貢献しうる人材を育成するには、地域の実態を正しく把握する能力や課題に向き
合う態度を養うことが重要であり、実践的なフィールドワーク教育は非常に有効な方法である。総合科
学部では「インターユニ・フィールドワーク・プログラム(IFP2013)」と銘打って、平成 25 年 9 月に
徳島県上勝町で 5 日間の合宿研修を含む教育プログラムを実施した。本年度は、授業科目「総合科学実
践プロジェクト」
(集中 2 単位)としてカリキュラムに位置づけ単位化している。
2.目的と経緯
この事業の眼目は、以下の 3 点にある。
①大学間連携による教育プログラム開発
地域学系大学・学部等連携協議会は地域科学や地域貢献を標榜する全国の国立大学によって構成され、
現在7学部が加盟している(北海道教育大学函館校、山形大学地域教育文化学部、宇都宮大学国際学部、
岐阜大学地域科学部、金沢大学人間社会学域地域創造学類、鳥取大学地域学部、徳島大学総合科学部)
。
平成 24 年 6 月に本学部主催により「地域科学フォーラム」を開催し、同年 11 月には「地域交流シン
ポジウム・大学改革シンポジウム-地域の元気をつくるプレミアム人材の育成」を開催した。そこでは、
協議会構成校が互恵・補完の立場から人材育成のための教育プログラム開発に向けて協力することが合
意され、
「インターユニ・フィールドワーク・プログラム」の第 1 回として、徳島大学が 25 年度に上勝
町における合宿研修を試行実施することを提案し了承された。複数の大学から多様な分野の教員や学生
が参加することで、協議会活動の実質化を図るともに、交流による相乗的な教育効果を期待できる。
②上勝学舎を拠点とする地域連携教育の推進
本学地域創生センターは平成 21 年度に上勝学舎を設置し、中山間地域における持続可能な発展や自
然共生型社会の構築を目指し、人材育成や研究支援を展開してきた。今年度は、上勝町の全面的な支援
を得て、継続的な地域再生活動と COC 型の拠点構想の推進を図ることになっている。今回の IFP2013
は「課題の解決と新たな価値創造」をテーマとする上勝学舎の取り組みとしても位置づけられ、徳島大
学として町民に開かれた学習機会を提供し、地域活性化に向けた社会貢献に資するという意義を有して
いる。
③総合科学部の教育改善とカリキュラム改革
平成 21 年度の改組計画書において、総合科学部は従来の細分化された学問の垣根を越えて諸科学の
融合を図り、「知の総合化」を目指すことを宣言した。これを実現するカリキュラムとして「総合科学
テーマ科目」を設け、総合科学の視点と方法を獲得させるとともに、専門教育に幅と奥行きを保障する
こととした。その中で「総合科学実践プロジェクト」は、フィールドワークを通じ実践的で総合的な学
習姿勢を体得させるための中核的な授業と位置づけられる。しかしながら、現状ではその目標が十分達
成されているとは言えない。そこで、IFP2013 を同授業に組み込み、課題解決・探求型学習プログラム
の確立とカリキュラムの体系化を図りつつ、教育内容の改善と充実を目指すこととなった。
3.実施体制とタイムテーブル
(1)概要
期間:平成 25 年 9 月 11 日(水)~15 日(日)
場所:徳島県上勝町
研修拠点:福原ふれあいセンター、月ヶ谷温泉
宿泊所:月ヶ谷温泉及び同キャンプ場コテージ
(2)参加者
徳島大学:教員 5 名、学生 20 名
鳥取大学:教員 2 名、学生 3 名
岐阜大学:教員 1 名、学生 5 名
ほかオブザーバ(補助)教員4名、事務員
合計:教員 12 名、学生 28 名
(3)目的
大学や学部、専門を異にする学生がチームを組み、フィールドワークを通じた相互交流を図りながら、
地域科学を総合的に学ぶ機会とする。4泊5日のワークショップに参加し、地域活性化への取り組みの
理解、成果&課題の把握および改善提案までをおこなう。
(4)タイムテーブル
【第1日】
13:00 徳島大学総合科学部でエントリー
14:30 上勝町ごみステーション見学
15:30 開会式(福原ふれあいセンター)
16:00 町長他によるミニレクチャー
□基調講演
花本 靖(上勝町長)
「上勝町のまちづくり」
□話題提供
①飯山 直樹(県立千年の森ふれあい館)
「上勝の森づくり」
②松下 和照(樫原の棚田村)
「棚田保全による地域の再生」
③大西 正泰(一般社団法人ソシオデザイン)
「農村起業で地域を元気に」
19:30 夕食交流会(月ヶ谷温泉)
【第2日】
9:00 まちづくりリーダーによるセミナー
①粟飯原 啓吾(株式会社いろどり)
「いろどり事業とインターンシップ」
②藤井 園苗
(NPO 法人 ゼロ・ウェイストアカデミー)
「ゼロウェイスト運動の展開」
③小林 篤司(一般社団法人 地職住推進機構)
「持続可能で住みよい地域づくり」
④東 輝実 ・松本 卓也(合同会社 RDND)
「新しい農村起業」
13:00 調査課題の設定とグループ分け
①葉っぱビジネスといろどり事業
②棚田景観保全とオーナー制度
③ごみリサイクルと環境問題
④都市農村交流と農村起業
⑤インターンシップと I ターン
⑥自然林再生プロジェクトと地域林業
⑦行政組織と住民自治
15:00 グループワーク(1)調査計画の立案
19:30 グループワーク(2)調査の準備
【第3日】
終日グループ別にフィールドワークを実施
(現地観察、インタビュー、アンケートなど)
19:30 グループワーク(3)中間発表と討議
【第4日】
9:00 グループワーク(4)考察と発表準備
17:00 公開形式による成果報告会
19:30 夕食交流会(月ヶ谷温泉)
【第5日】
8:30 閉会式(総括、修了証伝達、優秀賞の表彰)
12:00 徳島大学到着後解散
4.教育効果の検証と課題
最終日に参加学生全員にアンケートをおこない(N=25)、「プログラムに参加したことで得られた成
果」についてたずねている。ガイダンス時に説明した到達目標別に5段階評価の平均スコア(1≦x≦5)
を求め以下に示す。
①地域を調査研究する方法を身につける 4.4
②地域の人々との交流を深める
4.3
③チームワークで課題に取り組む
4.4
④新しい友人をつくる
4.4
⑤課題解決に向けた提案能力を高める
4.0
⑥自分の生き方や社会との関係を考える 4.2
当日の一種祝祭的な高揚感の中での回答となった点を割り引いて考える必要はあるが、いずれも非常
に高い値を示している。このうち⑤がやや低いのは、設定目標の難しさと「発表会でさらに明確な提言
ができなかったか」という学生の自省によると思われる。また、「異なる大学の教員や学生がプログラ
ムに参加すること」の意義に関する質問の平均スコアは 4.8 と極めて高かった。さらに、自由記述では、
「最初は不安だったが参加してよかった」
「充実した 5 日間でとても短く感じた」
「通常の授業では得ら
れない刺激を受けた」など肯定的な感想が多く寄せられた。
今回の IFP2013 は 3 大学が参加する合宿研修という初の試みであり、事前の企画調整や予算確保に
は困難な面もあった。もっと参加人数を増やすべきだという要請もあるが、現地での交通手段の確保や
施設の収容力など運用面での限界もある。今後のカリキュラム設計に向けての課題としては、単発のイ
ベントに終わることなく、事前学習や事後学習を組み合わせて実施する体制をどう構築するかが重要で
ある。今回の参加学生には地域調査に関する通年の実習科目を受講中の 9 名が含まれるが、それ以外の
学生に対するフォローが難しい。また、プログラムの運営や指導にあたる教員スタッフを広く募集しそ
の教育能力を高める方法についても検討する必要があるだろう。
掲載論文・公表の状況等:
平成 25 年 12 月 26 日に開催された全学FD推進プログラム・大学教育カンファレンス in 徳島(徳
島大学)において、「大学間連携によるフィールドワーク教育プログラムの開発と実施」として成果報
告をおこなった。
平成 26 年 1 月 11 日に開催された徳島大学上勝学舎研究報告会(上勝町コミュニティセンター)にお
いて、「上勝を探求し提案する大学生合宿の取り組み-インターユニ・フィールドプログラムから-」
として成果発表をおこなった。
平成 26 年 3 月に『インターユニ・フィールドプログラム報告書』を刊行した。
将来計画:
本プロジェクトによる IFP2013 の取り組みの成果をもとに、次年度に IFP2014 を同じく上勝町で実施
する方向で計画中である。
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