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与えられた環境をsigを

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与えられた環境をsigを
 新学術領域研究 「植物の環境感覚 刺激受容から細胞応答まで」 領 域 ニ ュ ー ス
:
2013
6
Perceptive Plants Vol. 6 目次
1
領域代表挨拶
2
9
公募研究紹介
イベント報告
長谷あきら(京都大学大学院理学研究科)
第6回班会議報告
河村 幸男(岩手大学農学部)
第7回班会議報告
鈴木 光宏(大阪市立大学大学院理学研究科)
第54回日本植物生理学会年会参加報告
小林 啓恵(東北大学大学院生命科学研究科) 14
技術ノート
「先端レーザー計測・制御技術により学ぶ植物の環境感覚」
細川陽一郎(奈良先端科学技術大学院大学)
17
若手研究紹介
18
21
21
総括班からの報告
関連学術集会カレンダー
編集後記
濱田 隆宏(東京大学大学院総合文化研究科)
表紙の説明
フェムト秒レーザーによるシロイヌナズナ胚軸の顕微手術。レー
ザー照射装置を備えた顕微鏡(上図)を用いてシロイヌナズナ茎
頂直下を穿孔した
(下図)。右下挿入図は穿孔部分の拡大像。フェ
ムト秒レーザーを用いることで、周辺組織への損傷が少なく、再
現性のある植物組織への加工が可能である。本技術の詳細は技
術ノートを参照のこと。
画像提供:長谷あきら(京都大学)
、細川陽一郎(奈良先端科学技術大学院大学)
領域代表挨拶
領域代表あいさつ
長谷 あきら(京都大学大学院理学研究科)
早いもので領域の活動も 4 年目に入り、まとめを意識する時期になりました。あと 1
年半、気を引き締めて活動を続けていきたいと思いますので、ご協力のほど、よろしく
お願いいたします。
さて、この領域の最大の特徴の一つは A03 班による新技術の開発です。皆様の努力
によりその活動も実を結びつつあります。以下、その現状や今後の展望について報告し
ます。まずは計画研究キ「植物組織を対象とした 1 細胞計測技術の開発」ですが、いよ
いよ微細組織片で網羅的な解析が可能なところまで来ました。この技術については、9
月のワークショップで具体的に紹介させていただきます。遺伝子発現応答は、およそ全
ての生理応答に関わると言っても過言ではありません。生理応答の過程を十分に理解す
るには、遺伝子発現応答の空間構造を知ることが必要不可欠と考えられますが、そこま
で解析が進んでいないのが現状では無いでしょうか。これを打ち破るべく、幅広い生理
応答に本技術が応用されることを願っています。
また、計画研究ク「質量顕微鏡による高空間分解能分子動態解析」についても、技術
開発が進み、数ミリのサイズの領域を 10 ∼ 20 μm の分解能で質量分析するまでになり
ました。技術的な詳細については、本ニュースレター第 5 号の高橋勝利さんの紹介記事
を参照ください。さて、光応答にこの技術を何とか活かしたいと奮闘するなかで、改め
て、代謝物を網羅的に調べることの意義が見えてきたように思います。遺伝子発現をモ
ニターすることは比較的簡単ですが、
代謝物の解析には様々な困難が待ち構えています。
だからこそ、一つの研究フロンティアがそこにあるのではないでしょうか。この技術に
ついても、皆様に広く利用していただきたいと思います。
さて、上記の研究を進めるにあたって今さらながら強く意識させられるのは、大規模
データの取り扱いの難しさです。例えば、1 本のシロイヌナズナの胚軸を上から順に 10
等分して網羅的解析を行うことが可能になりました。質量顕微鏡では、2 次元の画素一
つ一つに一万以上の代謝物ピークを含むマス・スペクトルが張り付いています。私自身
は 1+1=2 のシンプルな生理学の世界で生きてきましたが、遅ればせながら情報処理技
術の必要性を強く意識させられています。個別のタンパク質、遺伝子、あるいは生理応
答と、これらの大規模データをどのように繫ぐのか、その道筋を用意する必要がありま
す。この領域でどこまでできるか分かりませんが、ここにも開拓すべきフロンティアが
あると思います。
最後に計画研究ケ「フェムト秒レーザーを駆使した植物細胞の局所操作と刺激法の開
発」です。この技術については、すでに昨年度初頭にワークショップを開催しました。
班会議でも報告していますが、我々はこの技術を利用してレーザー顕微手術による子葉
―胚軸間のシグナル伝達に関する興味深いデータを得ています。西村班では、パーオキ
シゾームと葉緑体の接着力の測定に成功しました。ここからは大変個人的な感想になり
ますが、フェムト秒レーザーを使った実験が進んだこともさることながら、物理を専門
とする細川さんが領域に加わっていることの意義は非常に大きいと感謝しています。植
物を専門とする我々にとって物理は苦手分野になりがちですが(もちろん例外はあると
思いますが)
、物理的視点を植物研究に応用することで何か全く新しい研究ができるの
ではないかと、大いに期待が膨らみます。
さて、この領域の目的の一つは、新技術の開発と応用です。少し遅れたところもあり
ますが、いよいよツールも
いつつ。残りの時間は少ないですが、班員の皆様、さらに
は班外の皆様にも、
これらの技術を大いに利用していただき、
ぜひ植物科学のフロンティ
アを切り拓いていただけたらと思います。
1
公募研究紹介
研究項目 A01
個別刺激応答機構
CPD 光回復酵素の発現制御・局在・構造変異をモデルとした植物の紫外線環境感覚研究
研究代表者 日出間 純(東北大学大学院生命科学研究科・准教授)
連携研究者 寺西 美佳(東北大学大学院生命科学研究科・助教)
高橋 文雄(立命館大学生命科学部・助教)
谷内 哲夫(東北大学学際科学フロンティア研究所・教授)
植物にとって太陽紫外線(UVB)による障害から身を守
青色・赤色光による CPD 光回復酵素の光発現誘導機構と相
る防御機構は必須である。中でも、UVB による植物生育障
互作用に関する解析、② 光発現、特に UVB による発現誘導
害の主要因である、UVB 誘発 DNA 損傷の一つであるシク
に関与するプロモーター領域の解析を実施する。
ロブタン型ピリミジン二量体(cyclobutane pyrimidine dimer
(2) 「CPD 光回復酵素のオルガネラ移行メカニズムと細
[CPD]
)を修復する CPD 光回復酵素は、核、葉緑体、ミト
胞内局在に関する光応答反応」: 核、ミトコンドリア、葉緑
コンドリアの DNA を有する全てのオルガネラへ移行する
体移行に関わる移行シグナル配列の同定とそのメカニズムを
“triple targeting protein” として機能し、太陽光の下で生きる
植物にとって必須の酵素である。このような紫外線防御機構
明らかにする。
(3) 「CPD 光回復酵素の構造変異と UVB 適応戦略機構に
は、紫外線によって応答することが知られているが、未だ紫
関する研究」: CPD 光回復酵素は、有胎ほ乳類を除く全ての
外線環境感覚に関する学術的理解は極めて乏しい。本研究で
生物が有するフラボタンパク質であるが、生物が陸上に進出
は、独自に開発した紫外─可視光波長可変レーザーを導入し
した段階で、アミノ酸配列はダイナミックに変化し、アミ
た「一細胞顕微照射システム」を利用し、CPD 光回復酵素
ノ酸構造、酵素活性は植物種間でも大きく異なっている。そ
の光発現制御、細胞内局在、構造変異と UVB 抵抗性に関す
こで、種々の植物を材料に、CPD 光回復酵素の構造、活性、
る研究課題を遂行し、紫外光に対する植物の環境感覚を明ら
細胞内局在解折から、個々の生物が生きる UVB 環境、UVB
かにすることを目的に研究を行う。具体的には、以下の 3 課
抵抗性との関連について解析する。そして、いつ、どのよう
題を遂行する。
にして “triple targeting protein” の機能を獲得したのか? と
(1) 「CPD 光回復酵素遺伝子(PHR)の UVB 発現誘導」:
いった点に着目し、CPD 光回復酵素の構造変異からみた植
本課題では、光センサーとして知られる UVR8、クリプトク
物の紫外線環境感覚獲得機構、UVB 適応戦略機構を考察し
ロム、フィトクロムの欠損変異体等を利用した、① UVB・
たいと考えています。
低温シグナル伝達因子 ICE1 の調節及びカルシウムチャネルによる低温感覚機構
研究代表者 三浦 謙治(筑波大学生命環境系・准教授)
連携研究者 飯田 秀利(東京学芸大学教育学部・教授)
低温シグナルにおいて ICE1 は最上位に位置する転写因子
ポイントから低温ストレス応答というアウトプットまでのシ
であるが、ICE1 の活性化及びセンサーに関してはほとんど
グナル伝達経路が明らかになると期待される。
分かっていない。植物が低温を受けるとカルシウムの放出が
(2) ICE1 と相互作用するキナーゼが実際に ICE1 のリン
見られ、カルシウム放出に関わる因子がセンサーとしての役
酸化及び活性化に関わるかを明らかにする。また、リン酸化
割があると考えられている。申請者は ICE1 と相互作用する
部位の特定及びリン酸化のカルシウムイオン依存性を明らか
タンパク質を酵母 2 ハイブリッドスクリーニングにより単
にすることで、ICE1 活性化機構の詳細を解明することに繫
離してきた。その中には活性化機構に関わると考えられるキ
がる。
ナーゼやカルシウムの認識に関わると考えられるカルシウム
(3)
ICE1 相互作用因子として 3 種の MYC タンパク質を
結合タンパク質、転写因子 MYC タンパク質が含まれる。こ
単離し、変異体解析の結果、これら MYC タンパク質は負
れらの因子の解析を通じて、低温シグナル伝達機構をより詳
の調節因子であることが明らかとなった。これらの因子が
細に解明するとともに、低温センサーへの解明へと繫げてい
ICE1 と相互作用することによる低温シグナル伝達への影響
くことを本研究の目的とする。そこで、以下の 3 点を中心に
を明らかにする。
研究を行う。
上記 3 点の研究を通して低温ストレス時における包括的な
(1)
カルシウム放出に関わる因子を同定し、センサーと
シグナル伝達機構の詳細な解明のみならず、低温ストレスへ
しての役割をもつかを明らかにする。また、カルシウム放
の感覚機構を明らかにするに繫がる。本研究により本領域の
出によるシグナルをカルシウム結合タンパク質が認識して
重要課題である環境感覚の分子機構解明に貢献したいと考え
ICE1 へとシグナルを伝達する一連の機能を明らかにするこ
ている。
とを目的とする。この研究により、低温の感知という最初の
2
研究項目 A01
個別刺激応答機構
公募研究紹介
植物の栄養応答における葉緑体場の代謝制御
研究代表者 増田 真二(東京工業大学バイオ研究基盤支援総合センター・准教授)
連携研究者 太田 啓之(東京工業大学バイオ研究基盤支援総合センター・教授)
葉緑体は、光合成を行う重要な器官である一方、核酸合成
す。緊縮応答の中核を担う分子は、セカンドメッセンジャー
やアミノ酸合成など植物に取って必須の代謝反応を行う場で
として機能する特殊な核酸分子グアノシン 4 リン酸(ppGpp)
もあります。本研究の目的は、様々な外部刺激に応じて駆動
です。ppGpp の合成・分解酵素は RSH と呼ばれており、シ
する、葉緑体を場とする植物の栄養応答の仕組みを明らかに
ロ イ ヌ ナ ズ ナ に は 4 つ の ホ ロ モ グ(RSH1, RSH2, RSH3,
することです。
CRSH)が存在します。これまでの研究により、緊縮応答は
葉緑体はもともと、シアノバクテリアと呼ばれる光合成を
葉緑体を場とした光合成、アミノ酸合成、核酸合成など様々
行う細菌が、細胞内共生によって真核単細胞に入り込んだも
な機能を包括的に制御しており、植物の成長や栄養欠乏応答
のと考えられています。実際、葉緑体における遺伝子発現や
に重要な機能を果たすことを明らかにしました。
具体的には、
代謝反応は、原核生物型のシステムを色濃く残しています。
緊縮応答が葉緑体の代謝や遺伝子発現調節、クロロフィル分
したがってその制御機構も原核生物型のシステムを引き継い
解などを通じて植物細胞全体の C/N バランスを制御してお
でいると考えられます。私たちは近年、緊縮応答と呼ばれる
り、緊縮応答の機能を強化すると、リン欠乏や窒素欠乏に耐
バクテリア型の遺伝子発現/代謝の制御システムが、葉緑体
性を示すことがわかりました。
の恒常性維持に重要な働きをしていることを明らかにしまし
本研究では、葉緑体の機能と C/N バランスの制御に焦点
た。
を当て、次世代シーケンサー等を用いたポストゲノム的解析
緊縮応答はもともとバクテリアで発見/研究されてきた細
を取り入れ、植物の環境感覚における緊縮応答の役割を明ら
胞内シグナル伝達システムですが、近年植物のゲノムにもそ
かにします。
の関係する遺伝子が保存されていることがわかってきていま
光屈性を誘導するフォトトロピンシグナル伝達経路の解析
研究代表者 酒井 達也(新潟大学大学院自然科学研究科・准教授)
連携研究者 芳賀 健(新潟大学大学院自然科学研究科・科学技術振興研究員)
植物の成長制御は光に強く依存している。植物が光の方向
はパルス照射誘導光屈性では著しい光屈性異常を示すが、連
を認識し成長方向を制御する現象を光屈性という。
光屈性は、
続光照射誘導光屈性では全く野生型と分からず正常な光屈性
植物ホルモン・オーキシンの不等分布による細胞の伸長の差
応答を示した。この結果は、PIN は確かに光屈性誘導に働く
が偏差成長によっておきる現象と考えられており、オーキシ
が、一方で PIN に非依存的な未知の光屈性誘導機構が連続
ン調節による植物の成長制御機構のモデルの一つとして研究
光照射下では働くことを強く示唆していた。
されている。我々は光屈性を誘導する分子機構について、シ
そこで平成 25-26 年度本学術領域では、光屈性誘導機構に
ロイヌナズナの突然変異体を用いた分子遺伝学的解析手法を
ついて 3 つの研究課題に分けて解析を進める計画である。第
用いて、研究を行っている。
一に光屈性誘導に働く青色光受容体フォトトロピン、これに
平成 23 24 年度本学術領域の研究では、光屈性誘導にお
結合して働く NPH3、RPT2 の機能解明、第二にオーキシン
-
けるオーキシン不均等分布形成機構解明を目的に解析を進め
輸送体 PIN の機能調節機構の解明、第三に PIN 非依存的光
た。オーキシン輸送体 PIN が光屈性におけるオーキシン不
屈性誘導機構の探索を行う。これらの研究によって、光受容
均等勾配形成に働くことが予想されていたが、pin 突然変異
体からオーキシン不均等勾配形成に至るシグナル伝達経路を
体の胚軸光屈性はほとんど正常な反応を示し、PIN の生体内
明らかにし、一方で PIN に非依存的な未知の光屈性誘導機
での機能証明ができていなかった。我々はシロイヌナズナ胚
構についても明らかにしていきたい。特に後者は、本当に予
軸光屈性の高感度測定法を確立し、PIN1、PIN3、PIN7 の 3
想を裏切る分子機構が存在するのか、オーキシンの関与があ
つが少なくとも機能を重複して胚軸光屈性誘導に働くことを
るのかということも含め、慎重な解析を進めていきたいと考
明らかにした。興味深いことに、pin1 pin3 pin7 三重変異体
えている。
3
研究項目 A01
個別刺激応答機構
公募研究紹介
二酸化炭素のセンシングと光合成制御機構の解明
研究代表者 福澤 秀哉(京都大学大学院生命科学研究科・教授)
連携研究者 山野 隆志(京都大学大学院生命科学研究科・助教)
梶川 昌孝(京都大学大学院生命科学研究科・助教)
光合成によって生育する植物にとって、刻々と変化する環
(Yamano et al. 2013)、DNA タグ index ライブラリーを構築し
境に応じて光合成を制御・維持する事は生存のために必須で
た。このライブラリーから新たな CO2 要求性変異株を単離
ある。そこで、環境の変化を感覚刺激と同様に受容する機構
して、新規な CO2 シグナル伝達因子を同定しつつある。
が必要である。CO2 濃縮機構(CCM)をもつ緑藻クラミド
低 CO2 誘導性の LCIB は、葉緑体ピレノイド周囲に局在
モナスは、植物の環境感覚の分子機構を研究する上で優れた
し、CCM に必須である(Yamano et al. 2010)。この LCIB は、
モデル生物である。我々はこの緑藻を用いて、CO2 応答に関
低 CO2 条件でピレノイドに集合し、CO2 濃度の上昇によっ
わるシグナル伝達機構を解明し、植物の CO2 環境応答の原
てピレノイドから離れてストロマ内に拡散することから、
理と進化的意義を解明しようとしている。
CO2 に依存した LCIB の移動を担う機構が存在すると考え
これまでに CO2 濃度の変化に応答する遺伝子を同定し、
た。そこで、LCIB の局在変化を担う因子を同定するために、
合わせて、CO2 欠乏に順化できない株(CO2 要求性変異株)
GFP タグ付きの LCIB を発現する株を作出し、CO2 欠乏条件
から、マスター制御因子 CCM1 を見出している。CCM1 欠
で LCIB がピレノイド周囲に集合しない局在異常変異株 abl
損変異株と野生株との遺伝子発現プロファイルを比較する
(aberrant LCIB localization) を、蛍光像観察により単離した。
と、多くの CO2 応答性遺伝子が CCM1 によって発現制御を
LCIB が葉緑体内にスペックル状に拡散した abl 変異株では、
受ける事が判明した。CCM1 は、N 末端に亜鉛原子を配位し、
CO2 濃縮能が損なわれ、光合成における無機炭素への親和性
高分子複合体を形成する。CO2 濃度変化に応じた CCM1 の
が低下していた。LCIB がピレノイド周囲に局在できなくなる
修飾や、複合体構成因子が明らかになれば、CO2 のセンシン
と、CCM が損なわれ、光合成を維持できない事が示唆された。
グ機構の核心が明らかになると考えた。現在、新たな CCM1
さらに、CO2 応答と他の環境応答(光、N 源、S 源、温度)と
複合体構成因子を LC-MS/MS 分析によって同定しており、
の間のクロストークを、トランスクリプトームのレベルで解析
その挙動を解析中である。また、高頻度形質転換系を開発し
して、ゲノム発現データベースとして公開予定する予定である。
細胞内レドックス変化に対する植物応答機構の解明
研究代表者 多田 安臣(香川大学総合生命科学研究センター・准教授)
植物は、あらゆる環境刺激に応じて細胞内酸化還元状態
(レ
ドックス)を変移させ、適切な生理・生化学的反応を誘導す
タチオン分解酵素群の一部は JA 応答性を示すことを明らか
る。レドックスシグナルに関与する一酸化窒素(NO)や活
にした。そこで、JA による SA シグナル拮抗反応が本因子に
性酸素種(ROS)の生理機能に関する知見が増える一方で、
よるものかを調査する(三村班との共同研究)
。
植物のレドックス認識機構と、それに続く遺伝子発現制御機
NO は SA 及び JA シグナル伝達系の両者に必須のシグナル
構は殆ど明らかになっていない。本研究では、植物病害抵抗
伝達物質であるが、NO マイクロアレイ解析により、その初
性シグナルに重要な役割を担う NO 及び ROS 応答性転写制
期応答時には JA 応答性遺伝子群の発現誘導が確認された。
御因子の同定と特徴付けを行う。レドックスシグナルを介在
さらに、NO 処理により誘導される遺伝子群のプロモーター
するタンパク質翻訳後修飾である S ニトロソ化や S グルタ
解析から(山本班との共同研究)
、G-box 及び GCC-box が
チオン化が、転写制御因子のシス配列認識能に与える影響な
有意に検出された。一方、NO 処理によって JA は蓄積しな
どを調査し、疾病防御応答、特にサリチル酸(SA)及びジャ
いとの報告もあることから、NO の標的は JA 合成系ではな
-
4
するかを調査する。最近本研究室で、シロイヌナズナのグル
-
スモン酸(JA)シグナル伝達系を調節するレドックスセンサー
く下流の転写制御系の可能性が考えられる。そこで、JA 受
タンパク質の役割を明らかにする。
容体である COI1、リプレッサーの JAZ 及び転写制御因子で
SA シグナルは、転写補助因子である NPR1 の蓄積・活性
ある MYC2 を介した NO 感受性システムについて調査する。
化に伴い誘導される。NPR1 はレドックス変化に応答して高
また、これまで明らかにしてきた NO 感受性 WRKY 転写因
次構造(オリゴマー)を形成し、活性化するが、本研究では
子群の NO による不活化を介した SA/JA 系制御機構について
特に細胞内レドックスがどの様な分子機構で NPR1 を活性化
も引き続き調査する。
研究項目 A01
個別刺激応答機構
公募研究紹介
気孔の青色光情報伝達の遺伝学的・生化学的解析
研究代表者 武宮 淳史(九州大学大学院理学研究院・助教)
連携研究者 島崎研一郎(九州大学大学院理学研究院・教授)
植物表皮に存在する気孔は、絶えず変動する環境に応じて
答してリン酸化レベルが変動するタンパク質の解析を進めて
その開度を変化させ、光合成に必要な二酸化炭素の取り込み
きました。その結果、BLUS1(BLUE LIGHT SIGNALING1)
や蒸散を介した水の損失など、植物と大気間のガス交換を促
と名付けた気孔開口の必須因子を同定しました。BLUS1 は
進しています。気孔が多様な環境変化に応じて開閉し得るの
青色光による気孔開口を完全に欠損する変異体の原因遺伝子
は、気孔を構成する孔辺細胞が多くの刺激を感知・統合し柔
として単離されました。その後の解析から、BLUS1 は孔辺
軟に応答する能力を備えているためであり、孔辺細胞は植物
細胞特異的に発現する機能未知のプロテインキナーゼをコー
細胞の中で「環境感覚」を最も発達させた細胞の一つといえ
ドしていること、BLUS1 はフォトトロピンにより直接リン
ます。本研究の目的は、孔辺細胞を用いて青色光に応答する
酸化され、このリン酸化は青色光情報伝達の初期過程である
気孔開口の情報伝達機構を解明し、植物の「光環境感覚」の
こと等を見出しました。しかしながら、BLUS1 が下流へと
分子機構を提示することです。
情報を伝達し気孔開口の駆動力を形成させるメカニズムにつ
青色光による気孔開口は、青色光受容体フォトトロピンに
いては依存として不明です。
よる光の受容と変換、情報の伝達、効果器としての細胞膜
そこで本研究では、遺伝学的手法と生化学的手法による情
H ATPase の活性化、膨圧の形成等の一連の過程を経て誘導
報伝達因子の探索を継続し、気孔開口に関わる新たな成分の
されます。私たちはこれまでに上記過程に関わる新規因子を
同定を行います。また、気孔開口の鍵因子 BLUS1 キナーゼ
同定することを目的として、
(1)赤外線サーモグラフィによ
がフォトトロピンからの情報を H+-ATPase に伝達する分子
る青色光特異的な気孔開口に異常を示すシロイヌナズナ突然
機構を明らかにします。これらの研究により、孔辺細胞青色
変異体の探索、(2)リン酸化プロテオームによる青色光に応
光情報伝達の全容解明を目指します。
+
-
フィトクロムによるグリセリン酸キナーゼの細胞内局在制御機構の解析
研究代表者 松下 智直(九州大学大学院農学研究院・准教授)
植物は、周囲の光情報に応じて形態や代謝を変化させるこ
が生じた(Matsushita et al., Nature 2003)。
とで適応を図り、自らの置かれた環境において光合成効率を
そこで我々は大規模な変異体スクリーニングによる順遺
最適化している。フィトクロムはその際に働く主要な光情報
伝学的解析を徹底的に行い、その結果、新奇スプライシン
受容体であり、赤色光依存的に PIF と呼ばれる転写因子と
グ制御因子 RRC1 が phyB の光シグナル伝達に必要であるこ
相互作用し、様々な遺伝子の転写制御を行うことで光シグナ
と、phyB が PIF を介した転写制御に加えて RRC1 を介して
ルを伝達すると考えられている。そして現在、PIF を介した
選択的スプライシング制御も行うこと(Shikata et al., Plant J
転写制御による光シグナル伝達の分子機構解明が、国内外に
2012)、そして光呼吸 C2 回路に必須なグリセリン酸キナー
おけるフィトクロム研究の専らの課題となっている。
ゼ(GLYK)が、phyB による RRC1 を介した選択的スプライ
フィトクロム蛋白質は、光受容に働く N 末端領域と、
キナー
シング制御を受けることで、光依存的に細胞内局在を変化さ
ゼドメインを持つ C 末端領域の、2 つの領域から成る。従来
せること、などを発見した。
フィトクロムは C 末端領域内のキナーゼ活性により下流に
そこで本研究では、GLYK の光依存的な細胞内局在変化に着
シグナルを伝達すると信じられてきたが、申請者の研究によ
目し、その生理学的意義と分子機構を明らかにすることにより、
りその「常識」が覆され、フィトクロムの最も主要な分子種
現時点で不明である、
(1)phyB による標的遺伝子の選択的ス
である phyB が C 末端領域ではなく N 末端領域からシグナ
プライシング制御の光生理学的意義、ならびに、
(2)phyB か
ルを発することが証明され、phyB 下流の経路を見直す必要
ら RRC1 に至るシグナル伝達機構、この 2 点の解明を目指す。
5
研究項目 A01
個別刺激応答機構
公募研究紹介
光屈性の生態学的機能を支える分子機構
研究代表者 飯野 盛利(大阪市立大学大学院理学研究科・教授)
高等植物の光屈性は、植物の代表的な光感覚反応として古
クとその高光量側に小さなピークを示す。イネ幼葉
くから研究され、多くの複雑な結果が示されてきた。本研究
光量側にも小ピークが同定された。パルス誘導光屈性が示す
では古典的な研究を分子遺伝学的手法により発展させ、光屈
光量反応曲線の多相性は広帯域青色光を刺激光にして示され
性というブラックボックスの中身を探る。特に、光シグナル
たが、狭帯域青色光を用いるとより単純化し、イネ幼葉
受容・伝達の調節機構という視点から研究を進め、光屈性は
は低光量側の小ピークが失われことが分かった。さらに、そ
環境感覚反応として自然界でどのように機能しているかを考
のピークは青色光に微量の近紫外光を加えると生じることな
察していく。
ど、興味ある結果が出ている。本研究では多相的な光量反応
本研究で特に着目したのは光屈性の光量反応曲線が示す多
曲線の分子基盤をさらに追求していきたい。
相性である。シロイヌナズナ胚軸とイネ幼葉
ダーウィンによる光屈性の研究以来、イネ科植物幼葉
を用いた研究
では低
で
の
から、光量反応曲線の多相性はすべて phot1 を光受容体とし、
先端部は光受容の中枢として働いていることが示されてき
NPH3/CPT1 を必須なシグナル因子とするシグナル伝達系に
た。代表者らは、イネ幼葉
基づくことが明らかになった。光屈性は、光量反応曲線に基
した突然変異体(cpt2)を分離して、先端特異的な光受容の
づいて、パルス誘導光屈性(パルス照射により誘導され、相
存在を遺伝学的に裏付けた。これまでの研究により、この突
反則が成り立つ光屈性)と時間依存光屈性(照射時間が数分
然変異の原因遺伝子は葉緑体移行シグナルとキナーゼ様ドメ
を超えると照射時間に依存して増大する光屈性)に大別され
インをもつことを明らかにしている。本研究では、これらの
る。私たちの研究から、時間依存光屈性の発現には感覚順
配列を手掛かりにして、幼葉
応が関与し、RPT2 がその中心的な役割をしていることが分
ル受容・伝達機構の分子基盤を探っていきたい。
先端部の光屈性が特異的に欠損
で先端特異的に働く光シグナ
かってきた。パルス誘導光屈性の光量反応曲線は主要なピー
低温感知から PIF4 分解までの分子機構の解明
研究代表者 古本 強(広島大学大学院理学研究科・准教授)
連携研究者 柘植 知彦(京都大学化学研究所・助教)
固着生活をおくる植物は、光や温度など周囲の環境変化を
味がわいた。
敏感に感知し応答する能力を獲得している。通常生育温度変
「比較的穏やかな低温をどのように感じているか」という
化範囲内での温度変化では、これに応じて形態変化を引き起
疑問を解決するために、シロイヌナズナの遺伝学を応用する
こす。比較的穏やかな高温(28 度)条件下での徒長現象そ
実験系を着想した。実験コンセプトは、16 度を感じられな
のものは多くの植物種で知られているが、一方で、比較的
い新規変異体をスクリーニングする、というものである。い
穏やかな低温(16 度)を感知しているのか否かについては、
くつかの工夫によりこれらを実践できる実験系を構築し、複
ほとんど情報はない。
数の確認実験によって、低温を感じられない新規変異体を単
申請者はこれまでに、大気温度に応じた伸長成長の分子機
離することができた。前述したとおり、PIF4 は光シグナル
構の解明の端緒として、28 度条件下で伸長できない変異体
と温度シグナルを統合する因子として機能する。両方のシグ
を単離し、原因遺伝子が PIF4 であることを明らかにした。
ナルを受けることから、変異体は、温度シグナルに特異的な
ついで、PIF4 タンパク質が 16 度の低温処理で不安定化され
異常を示す変異体と、光シグナルにも異常を呈する変異体の
ることを独自に見出すことに成功した。この結果は、ファイ
二通りに分類できると想像された。赤色光/遠赤色光の応答
トクロームを介した光環境感覚について中心的に機能する転
性を調査し、予想通り、変異体を二つのグループに大別する
写因子である PIF4 が温度環境感覚においても鍵因子として
ことができた。このように、
得られた変異体の解析を通して、
機能することを意味している。また、低温を感じて PIF4 を
温度シグナルに関する分子機構の解明を目指しているが、同
分解する分子機構については、光を感じて PIF4 を分解する
時に光シグナルについても新規知見を得ることが期待でき
シグナル伝達系とは区別されることを見いだした。これらの
る。現在、得られた変異体について、原因遺伝子の同定を試
知見は、16 度を植物が感知することを示す初めての分子的
みている。
な現象としてとらえることができ、その分子メカニズムに興
6
研究項目 A02
受容体・細胞応答機構
公募研究紹介
環境感覚により誘導される植物細胞死のオートファジーによる制御機構の解明
研究代表者 森安 裕二(埼玉大学大学院理工学研究科・教授)
研究分担者 金子 康子(埼玉大学教育学部・教授)
井上 悠子(埼玉大学大学院理工学研究科・助教)
オートファジーは細胞が自らの成分の一部を液胞やリソ
ンパク質、カタラーゼやペルオキシダーゼなどの活性酸素除
ソームで分解する現象です。その主たる生理機能は、栄養飢
去酵素、アスコルビン酸などの抗酸化剤を誘導・合成するこ
餓時の細胞内栄養調達であると考えられていますが、最近、
とが知られています。
栄養調達以外の様々な生理現象にオートファジーが関与する
私たちは、オートファジーの生理機能を解明する目的で、
ヒメツリガネゴケにおいて ATG5 遺伝子のノックアウト株
ことが報告されています。
植物の緑葉は暗所に置かれると死んでしまいます。この現
(atg5 株)を作製しました。緑色の原糸体を暗所に置くと、ク
象は暗誘導老化と呼ばれます。暗誘導老化では、葉肉細胞は
ロロフィルが分解されて細胞死が起こりますが、atg5 株では
クロロフィルや葉緑体タンパク質 Rubisco を効率よく分解し
この過程が著しく速く進行します。この結果は、ヒメツリガ
てから死に至るというプログラム細胞死(PCD)を実行して
ネゴケ原糸体でも高等植物緑葉と同様の暗誘導老化が起こり、
いると考えられます。
この過程をオートファジーが負に制御していることを示唆し
植物に適応範囲を少しだけ超えた環境ストレスを与えると
ています。一方で、atg5 株は野生株に比べて高い乾燥耐性を
細胞死が起こります。この細胞死においても、葉緑体タンパ
示します。ヒメツリガネゴケに乾燥ストレスを与えた後に、
ク質分解やクロロフィル分解などの老化様の症状が観察さ
通常の栄養培地に戻して培養を再開すると、野生株では老化
れ、植物は意図的に細胞死を実行していると考えられます。
様症状が観察され PCD が起こりますが、atg5 株では老化様症
よって、この細胞死も PCD と看做すことができます。
状はほとんど見られず細胞死も起こりません。すなわち、オー
一方で、環境ストレスはタンパク質変性や膜リン脂質酸化
トファジーは乾燥ストレス後に起こる PCD を正に制御します。
などの傷害をもたらし、傷害の蓄積により細胞死が起こると
本研究では、植物 PCD の全容解明を最終目的に据え、植
考えられています。植物は、細胞傷害を防止・軽減するため
物 PCD のオートファジーによる正負両方向の制御メカニズ
に、熱ショックタンパク質や LEA タンパク質などの保護タ
ムを明らかにすることを目的とします。
葉緑体における光環境感覚と細胞応答機構
研究代表者 華岡 光正(千葉大学大学院園芸学研究科・准教授)
連携研究者 田中 寛(東京工業大学資源化学研究所・教授)
植物細胞は、核とミトコンドリアを持つ真核細胞の祖先が
光環境感覚」像の理解を目指しています。
光合成器官である葉緑体を獲得することで誕生したと考えら
単細胞紅藻シゾンには典型的な植物型の光受容体(フィト
れています。目まぐるしく変動する光環境の中で効率良くエ
クロム等)が保存されていません。一方で、葉緑体の起源で
ネルギーを得るため、また過剰な光ストレスから身を守りな
あるシアノバクテリアに由来する、光受容体型と考えられる
がら生き抜くために、植物は様々な光受容系・光シグナル伝
ヒスチジンキナーゼのホモログ(HIK)が葉緑体の中に残さ
達系を発達させていることが知られています。
れています。これまでの研究により、この HIK が葉緑体の
葉緑体は、原始シアノバクテリアの細胞内共生によって生じ
自律的な光応答とプラスチドシグナル(葉緑体から核への情
たとされていることから、共生当初の植物細胞においては、少
報伝達経路)を介した核遺伝子の転写制御に関わっているこ
なくとも光に関する環境感覚は主に葉緑体に集結していたと考
とを見出しました。シロイヌナズナの核ゲノムにも、シゾン
えられます。しかし、共生後の長い進化により葉緑体ゲノム上
HIK のオーソログ(CSK)をコードする遺伝子が存在し、葉
の遺伝子や環境応答系の大部分が核に移行した結果、葉緑体の
緑体に局在することが示されていますが、詳細な役割は未だ
自律性は失われ、様々な葉緑体の機能は核による支配を強く受
明らかにされていません。
けるようになりました。そのような背景から、高等植物におけ
本研究では、CSK が葉緑体における光環境感覚と葉緑体
る従来の光環境応答の研究は、主に核を中心とした遺伝子発現
遺伝子の発現調節にどのように関与しているのかについて明
制御の視点で進められてきました。本研究ではそれらに加え、
らかにしたいと考えています。また、葉緑体で受容した光情
光合成反応の場である「葉緑体」においても何らかの光刺激を
報が、プラスチドシグナルを介して細胞全体の光応答に波及
受容している可能性があるとの仮説に立ち、葉緑体の自律的な
する可能性についてもあわせて検証することで、植物細胞に
光環境応答系と葉緑体から核への情報伝達経路の解析を中心に
おける光環境感覚のより詳細な分子機構が解明されるものと
進めることで、
「植物細胞場」の視点に立った新しい「植物の
期待されます。
7
公募研究紹介
研究項目 A02
受容体・細胞応答機構
環境ストレス応答におけるポストゴルジオルガネラのダイナミクスと生理的意義の解明
研究代表者 植村 知博(東京大学大学院理学系研究科・助教)
連携研究者 上田 貴志(東京大学大学院理学系研究科・准教授)
真核細胞内の単膜系オルガネラ間の物質輸送は、膜小胞や
と、野生型植物では見られないサリチル酸依存的な葉の黄化
細管を介したダイナミックな輸送システム「膜交通」によっ
が引き起こされる。この結果は、うどんこ病感染時における
て厳密に制御されている。膜交通は、タンパク質などを細胞
葉緑体と TGN の機能的相互作用を強く示唆している。また、
内の正しい場所へと輸送するために必須の機構であり、細胞
syp4 では塩耐性が著しく低下しており、塩ストレス環境下に
の多様な機能を発現するうえでも重要な役割を果たしてい
おいて子葉の著しい白化が観察される。しかしながら、その
る。植物は、様々な外部環境の変化に対して “動いてその場
分子機構の多くは未解明であり、環境ストレスとオルガネラ
を逃げる” という手段が使えないため、細胞レベルで柔軟に
機能を結びつける因子の同定もほとんどなされていない。
これに対応しなければならない。そのため、動物や酵母と比
本研究では、高塩ストレス(非生物学的ストレス)とうど
較しポストゴルジ膜交通網を独自に発達させ、外部環境を最
んこ病菌感染(生物学的ストレス)を外部環境刺激のモデル
初に受容するインターフェイスとして機能する細胞壁や細胞
として用い、ポストゴルジ膜交通がそれらの環境ストレスを
膜の構築や維持をはじめとする植物独自の細胞構造や細胞機
どのように受容し、いかに応答するかを解明するべく、以下
能を構築してきたと考えられる。
の 4 項目について実験を行うことを計画している。
我々は、輸送小胞と標的膜の接着と融合を担う SNARE 分
① 高塩ストレス条件下におけるオルガネラダイナミクスの解析
子と RAB GTPase 分子を中心に、植物のポストゴルジ膜交通
② 高塩ストレスの「受容」と「応答」の可視化システムの構築
の研究を行い、様々な外部環境刺激(環境ストレス)に対し、
③ うどんこ病菌に対するオルガネラ応答システムの解明
膜交通とポストゴルジオルガネラが重要な役割を果たしてい
④ 環境ストレス下での葉緑体機能発現におけるトランスゴ
ることを報告してきた。トランスゴルジ網(TGN)に局在す
ルジ網(TGN)の役割の解明
る SNARE 分子であるシロイヌナズナ SYP4 の変異体(syp4)
これらの研究を進めることにより、ポストゴルジ膜交通の
に、シロイヌナズナに感染可能なうどんこ病菌を感染させる
環境刺激応答における役割を明らかにすることを目指す。
RNA 顆粒 P ボディーを介した環境応答
研究代表者 渡邊雄一郎(東京大学大学院総合文化研究科・教授)
生物的ストレスを考える際に、植物をめぐる非生物的スト
る様子が観察された。このことは P ボディーと呼んでいる
レスも加味する必要があることを体感してきた。遺伝子発現
ものにも複数の種類のものが存在する、あるいは互いに階層
制御に対する RNA を介した機構に関する蓄積を活かし、複
的に P ボディーを構成している(DCP1 がまず変化して初め
合的な応答を見据えての解析を行っている。本公募研究に加
わって確立した、mRNA の 5' 末端構造のキャップ構造を外
て DCP2 が変化をする等の可能性)などの可能性を考えてお
す活性を担う Decapping Enzyme 1 と 2(DCP1/DCP2)それ
れることを見いだした。このことは温度変化を受けた際にあ
ぞれを可視化したシロイヌナズナ植物体を用いて解析をして
る種のキナーゼ活性が上昇し、DCP1 をリン酸化しているこ
いる。このマーカーによって、種々の mRNA の的確な分解、
とを示唆している。そのリン酸化をうけるアミノ酸にたいし
翻訳抑制、貯蔵等が起こっていると想像される Processing
て構成的なリン酸化 mimic、非リン酸化 mimic への置換を起
Body(P ボディー)が顕微鏡下にみとめられる。本研究でそ
こした変異タンパク質を発現する植物体を入手した。その植
の実態を分子レベルで検証する。高温、低温、あるいは塩ス
物体のストレス耐性を検討した結果、DCP1 がリン酸化をう
トレスを加えた際に、その P ボディーが数、あるいは大き
けて耐性を高めていることが明らかとなり、環境変化の感知
さの上で変化をすること、ストレスを解除するともとのレベ
をした早い時期にこのリン酸化が引き起こされていることが
ルに戻ること、ストレスの種類によってその変化に要する時
想像される。本研究班内での共同研究を通して、実際に制御
間が異なることなどを見いだした。当初、予想していなかっ
を受けている、あるいは受けていない遺伝子群を対照しなが
たこととして、ストレスによっては DCP1 で可視化して得ら
ら、制御の特異性、実態を解析している。
れた像と、DCP2 で可視化して得られた像の間で異なってい
8
り、検討している。高温におかれた際に DCP1 がリン酸化さ
イベント報告
第 6 回班会議報告
河村 幸男(岩手大学農学部)
新学術領域「植物の環境感覚」の第 6 回班会議・研究成
圧迫刺激と細胞膜変化に関する研究は主にアメーバーや動
果報告会が、3 月 8 日(金曜日)から 10 日(日曜日)の
物細胞で報告され、植物でも孔辺細胞で報告されていまし
三日間にかけて、キャンパスプラザ京都にて開催されまし
た。それらの研究では、細胞膜張力が変わりそのときに、
た。会場は JR 京都駅から歩いて 5 分程度とかなり便利な
張力制御が膜の取り込みもしくは供給により行われている
位置にあり、全国にたくさんある小京都の一つ、盛岡から
だろう、とのことでした。以前、私たちのグループでも凍
出席しました僕は久しぶりの「本家」を満喫できました。
結下における細胞膜の観察を行い、その結果、細胞レベル
ただ、10 日に京都マラソンがあったため、市内のホテル
で氷晶圧迫によるストレスに応答し、細胞膜の張力を制御
は早いうちから予約できなくなり、例えば、W 先生は「大
していそうだ、という結論を得ていました。長谷先生の報
津のホテルに泊まっている」、とのことでした。そう考え
告は、これまでの報告にない細胞内における現象でしたの
ると、本当にキャンパスプラザ京都で開催されてよかった
で、特にそのあたりに非常に興味深いものを感じました。
と思いました。また、2 日目にあった懇親会(写真 1 は中
この研究に関する質問では、実際の植物の生活において、
村研三先生の乾杯の音頭です)の会場もキャンパスプラザ
そのような負荷が掛かるか?、
というものがありましたが、
京都内にあり、ご飯も美味しく至れり尽くせりでした。
凍結や孔辺細胞だけでなく、形態的に力学的負荷が掛かる
開催期間中は、土曜日までは天気がよく、昼間は 20 度
部位や風、動物に踏まれることなど、いろいろとありそう
を超えていたそうですが、日曜日の天候はかなり荒れ、前
だと想像していました。
日の気の緩みもあり、この日の強風 & 低温はかなりの「ス
「個体差」に関しましては日頃生理実験では必ず生じ、
トレス」を感じました。こういった気温の上下による温度
生命現象の本質的なところの現れだと感じるものの、取り
ストレスは植物も同様に受け、例えば、春先に急に暖かく
扱いが分からず、統計学的な処理で扱うことにより考えな
なると急激に植物の脱馴化が進み、その結果急激に寒くな
いようにしていたところです。例えば、私たちの研究室で
ると、馴化中であれば何ともない低温でも植物は傷害を受
日頃行っている凍結耐性試験では、生存から死に移る凍結
けるそうです。そのため、春先の気温の上下は農産物、例
温度のところで生存率の標準偏差は必ず大きくなります。
えばキャベツなどにかなりの被害を与えることが報告され
これは個体により凍結耐性差があるためで、どれだけ実験
ています。こういった「ストレス」を身体で実感するたび
条件を均一に扱っているつもりでも必ず発生してしまいま
に、
「植物の環境感覚」の解明の大切さが身にしみます。
す。長谷先生のお話ですと、
「個体差」は環境要因の揺ら
さて、班会議。今回の報告もすべてとても興味深いお話
ぎや細胞分子の撹乱による揺らぎにより生じるそうです
で、
かつ、かなり高度な内容が短い時間に詰まって、
加えて、
が、これに対し、神原班との共同研究で、植物微細組織に
お話の領域が生物学系だけでなく物理系や情報処理系など
おける遺伝子発現計量技術の開発を進めることにより正面
も含まれていました。ですので、とても充実した時間をお
から取り扱っていました。今回の発表では、個体毎の遺伝
くれました。班会議出席のたびに思うことですが、休憩時
子発現を比較すると、遺伝子に応じて様々なタイプの個体
間中も皆さん活発に議論され、学術的なアクティビティの
差が存在することを報告されていました。
高さに本当に刺激を受けます。この班会議報告では、その
細川先生のお話は、
いつも現象から綿密にモデルを考え、
中でも、特に個人的興味で惹かれた極一部のお話を私事を
また、そのモデル検証に正確に計算およびシミュレーショ
交えながらピックアップさせていただきます(ただ、班会
ンをするという、最近の生理学系ではなかなか聞けない
議の性質上、残念ながら詳細には書けないのですが…)
。
刺激的なもので、今回も西村班との共同研究で新たなオル
代表あいさつ & 最初の報告は長谷先生で、内容はいき
ガネラ間の接着力測定に関するモデルを発表されていまし
なりついて行くことが大変なほど密度の高い内容でした。
た。また、フェムト秒レーザーによる氷核形成のお話もあ
その中でとても印象に残ったお話が「圧迫刺激応答」と「個
りましたが、今後、細川先生とこの関連で共同研究を行っ
体差」でした。まず、圧迫刺激に関してですが、今回の報
ていくことを計画していることもあり、とても印象に残り
告では、直接組織を圧迫することにより、細胞内の変化を
ました。この実験ではモデル系としてエタノールと水混合
観察され、いくつか GFP ラベルされたタンパク質が特徴
液を使用し、高速カメラにより氷化誘導の過程がミリ秒
的な構造体を形成しているとのことでした。これまでも、
オーダーで鮮明に捉えられていました。あとで聞いた話で
9
イベント報告
10
すと、1 回のレーザー照射では氷核形成は起こらず、必ず、
と温度との関連のお話でした。この変異体は、常温ではミ
数回のレーザー照射が必要だと言うことでしたが、その点
トコンドリアの分裂に異常が生じ、形態異常を起こすので
は非常に不思議でした。また、細川先生らしく、今回の実
すが、低温になると分裂は正常に起こり形態的には元に戻
験から既に氷核形成のモデルを考えておられ、断熱膨張に
ります。しかし、面白いことに、低温での表現型の復帰は
よる温度低下を一つの仮説として発表されていました。以
一過的で半日程度低温に置くと、また、元の形態異常が観
前、私たちの研究室では共同研究で高速カメラを用いた細
察されるそうです。こういった現象を見ると、
「温度刺激
胞内凍結、すなわち細胞内での氷晶発生を捉えようと試み
受容」というのは絶対的な温度ではなく、温度差が非常に
たことがありますが、これがなかなか難しく、鮮明に捉え
重要ではないか?、と思えてしまいます。
ることができませんでした。また、凍結耐性のある植物は
一方、三浦先生および飯田先生による共同研究の報告で
細胞の周りに氷晶ができても人為的な操作をしない限り細
は、あるカルシウムチャンネルが低温馴化に関与するとい
胞内凍結は起こさず、その結果から何らかの細胞内凍結を
うことでした。こういったお話を聞いていますと、温度刺
防ぐ仕組みがあるはずと考えられています。
細川先生とは、
激を受容するセンサータンパクもありそうな感じで、そう
今後このあたりことを解明できればと思っています。
なりますと植物にも動物と同じく絶対温度感知のシステム
温度刺激受容に関し複数の先生から非常に興味深いお話
があっても不思議ではないように思えます。温度刺激受容
が聞けました。まず、三村先生からの報告で、セントポー
は「絶対温度」か「温度差」か? 私たち上村班の研究で
リアの冷温傷害についてです。セントポーリアは特に冷温
は、シロイヌナズナは 11℃以下の低温でないと凍結耐性
感受性の高い植物として知られていまして、普通に水やり
の上昇を伴う低温馴化は起こさないことを明らかにしまし
をするときでも直接水道水の水を室温に戻さずに与える
たが、一方、馴化の深まりには温度差も大切である結果も
と、それだけで冷温傷害を受けることが知られています。
得ています。ですので、一概に、
「絶対温度」か「温度差」
今回の発表では、冷温傷害が生じる原因として液胞膜の機
か、とは言えるようなシステムではないのかもしれません。
能不全や活性酸素発生を指摘されていましたが、その傷害
さて、班会議報告はここで筆を止めさせていただきます
は絶対温度、すなわち、ある温度を境に生じるものではな
が、この他にもとても興味深いお話はたくさんあり、また、
く、ある一定の温度差が生じれば発生するということでし
アイデアとしてもとても刺激を受けました。加えて、今回
た。例えば、比較的低い温度で育てられたセントポーリア
の報告会の機会を通して多くの方と情報の交換をすること
は、高い温度で育てられたものより見た目上の冷温耐性は
もできましたので、とても有意義に過ごすことができまし
強いということです。何か低温馴化に近いシステムがある
た。最後になりましたが、このようなとても有益な班会議
ように思えました。
の準備をしていただいた長谷研究室のみなさまには本当に
次に、有村先生の報告で、ミトコンドリアの形態変異体
感謝を申し上げます。ありがとうございました。
写真 1 懇親会での乾杯
写真 2 コーヒーブレークでのディスカッション
イベント報告
第 7 回班会議報告
鈴木 光宏(大阪市立大学大学院理学研究科)
第 7 回班会議
について担当されている研究代表者の方々の発表となりま
2013 年 6 月 28 日(金)から 30 日(日)の 3 日間にわ
した。光や温度、水などの環境刺激の受容や感知、それら
たり、大阪府立大学において、新学術領域研究「植物の環
のシグナル伝達機構の解明に関する発表がなされました。
境感覚」の第 7 回班会議が開催されました。今年の近畿地
光受容ではフィトクロムやフォトトロピンを介した応答機
方は例年よりも 10 日間ほど早く梅雨入りしたにも関わら
構の研究はもちろんのこと、UV-B への適応機構に関する
ず、その前半はほとんど降雨がなく、班会議の 10 日ほど
研究についても進展がみられたことが報告されました。さ
前から、ようやく梅雨空が続いていましたが、班会議当日
らには、低温感知、水分屈性、二酸化炭素、細胞内レドッ
は再び梅雨の中休みとなり、大変蒸し暑い中での班会議と
クス変化に対する植物応答機構の解明など、様々な環境刺
なりました。比較的過ごしやすい所から来られた方々は、
激に関する発表がありました。セッションとセッションの
体調の調整が難しかったのではないでしょうか。会場は大
間には、休憩としてコーヒーブレークの時間が設けられま
阪府立大学中百舌鳥キャンパスの中百舌鳥門のすぐそばに
したが、この時間も活発なディスカッションの時間となり
あるサイエンス棟(A12 棟)に隣接したサイエンスホール
ました(写真)
。
で、100 人以上は入れるホールながら、演台やスクリーン
2 日目の午前は研究項目 A02「受容体・細胞応答機構」
と座席が近く、集中して発表を聞くことが出来ました。ま
を担当されている研究代表者の方々の発表でした。午前の
た、余談ですが、サイエンス棟入り口には季節柄、七夕飾
セッションでは、受容体など環境情報を受け取る分子や、
りがあり、班会議出席者も自由に短冊に願い事を書くこと
様々なオルガネラで構成された植物細胞での反応に関する
が出来ました。飾られている場所がサイエンス棟というこ
研究が発表されました。光受容体分子、機械的刺激受容体
ともあり、アカデミックな内容はもちろんのこと、健康面
の構造や作用機作、環境刺激による構造変化など受容体そ
の願い事が多かったように記憶しています。
のものに関する研究から、葉緑体運動を仲介する複合体タ
今回の班会議は新学術領域研究の 5 年間の研究期間のう
ンパクの解析、環境刺激に対する細胞内環境の適応機構を
ち、後半 2 年間の最初の班会議でもあり、今年から新たに
液胞動態、葉緑体、細胞死の観点から捉える研究などが発
公募研究班に加わった方もあり、アドバイザーの先生方、
表され、さらには、これらの環境応答機構の普遍性と多様
研究代表者、分担・連携研究者や各研究室構成員等も含め、
性に焦点を当てた研究もあり、様々な手法、植物種を用い
事前参加予定者は 120 名近くになり、この新学術領域研究
た成果についての発表が続きました。また、技術面では一
に携わる研究者が一堂に会する大きな会議となりました。
細胞レベルでの質量分析法の確立を目指した発表もありま
私自身、これまでも本研究領域の若手の会や第 1 回国際シ
した。
ンポジウムに参加させていただいていましたが、班会議に
昼休みは 2 時間半と長い時間がとられ、その間に拡大総
出席させていただくのは初めてでしたので、会議が始まる
括班会議が開催されました。さらに、
この時間を利用して、
前は緊張感でいっぱいだったと記憶しています。
今回の班会議の世話役である徳富哲先生の研究室のツアー
班会議は予定通り 13 時から始まり、はじめに領域代表
が企画されました。各々昼食をとった後、サイエンス棟 1
の長谷あきら先生より挨拶があり、本研究領域の目的や中
階に集合し、研究室や実験室がある 3 階に移動した後、徳
間評価の概要を踏まえた今後 2 年間の展望を話され、最終
富研の吉原先生、岡島先生、直原先生の案内で 3 つの実験
的な目的を達成するために、班員間の連携が大切であるこ
室を見学させていただきました。建物自体はまだ比較的新
とが強調されました。その後、早速、計画班および公募班
しく、効率的に実験できように様々な実験器具が配置され
の研究代表者による発表が行われ、各研究課題 15 分(発表
ていました。一つは通常のベンチワークを行う実験室で、
12 分、質疑応答 3 分)という短い持ち時間ながら、それぞ
室内に植物を培養できる大型の人工気象器が設置されてお
れの発表に対する活発な討論が続くことになりました。新
り、すぐに実験植物を取り出せるよう工夫されていました。
年度初めの班会議ということもあり、発表内容は研究目的
残り二つの実験室は、様々な試料の調整・単離ができるよ
や研究計画が主となりましたが、新たな研究成果の発表が
うに温度・光質が調整出来るよう工夫されており、抽出・
あったり、または、これまでの研究成果を踏まえ、新しい
分析機器や顕微鏡が配置されていました。様々な機器の説
研究内容に挑む研究代表者の方もいて、とても刺激的でし
明はもちろんのこと、この場でも様々な討論が交わされた
た。初日の発表は主に研究項目 A01「個別研究応答機構」
ことは言うまでもありません。
11
イベント報告
2 日目午後は午前に引き続き研究項目 A02 を担当された
第 7 回班会議サテライトセミナー
研究代表者の方々が発表されました。午後のセッションで
班会議終了後の 6 月 30 日(日)午後に第 7 回班会議サ
は主に環境応答におけるオルガネラの相互作用の役割に関
テライトセミナーとして「植物 “光” 環境感覚 : 最新のト
しての発表が中心となり、光依存的なオルガネラ相互作用
ピックス」が大阪府立大学のサイエンス棟の 3 階 323 号室
や環境ストレスに対する耐性の獲得や応答、ミトコンドリ
に場所を移し、班会議同様、非公開で開催されました。午
アの動態に関する研究がイメージング解析を介した生理機
前の班会議が予定より早く終了したため、サテライトセミ
能の解析を通して明らかにされました。また、これらの環
ナーも予定より 30 分早く開始されました。はじめに領域
境応答に対する遺伝子発現制御に関わる因子の同定と解析
代表の長谷あきら先生とサテライトセミナーのオーガナイ
に関しても明らかにされています。これらの発表に引き続
ザーである徳富哲先生より、セミナー開催の経緯、目的な
き、
午後のセッションの後半は研究項目 A03「
「植物細胞場」
どの説明がなされた後、すぐにプレゼンテーションへと移
解析技術開発」の発表でした。このセッションは異分野間
りました。
の融合と新技術の開発が大きな目的であることもあって、
発表は光質の短波長側から UVB 応答に関して日出間純
大変興味深いものでした。その名の通り、ここではあまり
先生、フォトトロピンの構造解析からのアプローチ、葉緑
多くのことは語れないのですが、突然変異体の新規なスク
体定位運動、気孔開口における情報伝達経路に関して、そ
リーニング法、単一細胞の遺伝子操作、遺伝子発現のプロ
れぞれ岡島公司先生、孔三根先生、武宮淳史先生、フィト
ファイリングやプロモーター解析など様々な新規な取り組
クロムを介したシグナル伝達や植物免疫とのクロストーク
みが発表され、これらで得られた成果が様々な研究で応用
に関して松下智直先生、多田安臣先生が発表され、そして、
されることを期待したいです。
最後に酒井達也先生が光屈性の観点から光シグナル伝達に
2 日目の班会議の予定が全て終了した後は、会場を大阪
関して発表されました。多くの方が班会議で発表された内
府立大学生協・食堂ホールへと移し、懇談会が開催されま
容から、さらに踏み込んで、直近に出された成果と思われ
した。ここでも例に漏れず、研究の話で盛り上がること
る生データや、実験上積み重ねられた知見を惜しみなく発
はもちろん、共同研究や材料提供の話などもでき、久しぶ
表され、発表中から演者の先生方と活発なディスカッショ
りにお会いすることができた方々ともお話しすることがで
ンが繰り広げられました。また、これまでに発表されてい
き、2 時間があっという間に過ぎたという感じでした。終
る原著論文や国際会議での発表を引用しながら、これらの
了後は、懇談会場を後にし、この余韻を消さぬように、大
光受容体やシグナル伝達経路のクロストークを踏まえ、い
阪の街でお酒を交わしたのではないでしょうか。
わゆる「生の声」や「裏話」も混じって、植物の “光” 環
最終日 3 日目の班会議は午前のみで、A02 と A03 を担
境応答に関する本質についての議論が展開されました。私
当されている研究代表者の方々の発表となりました。環境
にとっても、何が解明されていて、何が今後の課題なのか
応答におけるオルガネラ Ca シグナリングに関する発表
を網羅的に把握する事ができ、
とても有意義な時間でした。
に続き、2 日目午後の発表同様、様々な新技術開発に関す
そして、今回のセミナーは開始時間が早く始まったのにも
る発表がありました。特に、微小切片採取技術、質量顕微
関わらず、終了時間は予定を大幅に越えての終了となりま
2+
鏡を用いた解析やフェムト秒レーザーを用いた植物細胞の
した。
局所操作と刺激法の開発などでは植物細胞を取り扱うため
最後に、今回の班会議およびワークショップのお世話を
に最適化され、さらに、研究項目 A01 や A02 の研究課題
して下さった大阪府立大学の徳富哲先生と研究室の皆様に
との連携が進んでいることが示されており、今後のさらな
感謝の意を申し上げます。
る進展が期待されました。
総合討論では、領域代表の長谷あきら先生より、拡大総
括班会議の概要が紹介され、
ワークショップとして
「イメー
ジング質量分析ワークショップ」と「植物対応 1 細胞網羅
的遺伝子発現解析技術の前処理技術講習会」がそれぞれ東
京と京都で開催される予定であること、また、最終年度に
開催予定の国際シンポジウムに向けての準備が開始された
こと、などが報告されました。さらに、今年度の若手の会
は三村徹郎先生の研究室が世話役となり、10 月 20 日から
22 日までの 2 泊 3 日の日程で、小豆島のふるさと村で行
われることが報告され、班会議は閉会となりました。
写真
12
イベント報告
第 54 回日本植物生理学会年会(岡山大学)参加報告
小林 啓恵(東北大学大学院生命科学研究科)
2013 年 3 月 21 日から 23 日まで、岡山大学津島キャン
験成果も大変楽しみです。質疑応答では、重力刺激に素
パスにて第 54 回日本植物生理学会年会が開催されまし
早く応答するカルシウムイオンということで、重力感受
た。今回は、12 シンポジウム(77 講演)、474 の口頭発表、
を担うと考えられるアミロプラストの沈降との関連に関
493 のポスター発表があり、参加者は約 1,700 名でした。
する議論が展開されていました。3 番目の演者は、酒井達
昨年に続いて、本領域と共催のシンポジウムも開催さ
也先生で、胚軸の光屈性とオーキシンについて発表され
れ、今回のテーマは「Tropism」でした。海外からの演
ました。phototropin1(phot1)や phot2 で受容した青色光
者 2 名を含む 5 名の演者が、200 人程入りそうな階段教
がどのように伝達されてオーキシンの偏差分布を誘導し
室を会場として、主な屈性である光屈性、重力屈性、水
ているのかを、オーキシン極性輸送体である pin-formed1
分屈性、そして、それら屈性に関与するオーキシンやカ
(pin1)pin3pin7 三重変異体などの様々な多重変異体を
ルシウムイオンなどの研究について講演してくださいま
用いて、パルス照射による一次正光屈性と連続光照射に
した。本稿では、このシンポジウムを中心に報告したい
よる二次正光屈性の実験により解析されていました。そ
と思います。シンポジウムの開催に際し、まずオーガナ
の結果、パルス照射では PIN1、PIN3、PIN7 が必要であ
イザーである高橋秀幸先生から、シンポジウムの簡単な
る一方で、連続光では、これらは機能せずに別なトラン
趣旨と紹介があり、続いて長谷あきら領域代表からご挨
スポーター等が働くことが示唆されたことや、赤色光を
拶いただき、最初の演者として、シロイヌナズナの根の
前照射したパルス照射での際の光屈性の促進に PINOID
水分屈性について宮沢豊先生が発表されました。水分屈
(PID)やそのホモログが関与することなどを発表されて
性は、未だ研究者が少ない分野ではありますが、それで
いました。三重変異体や四重変異体を用いることで、こ
も水分屈性制御遺伝子として MIZU KUSSEI1(MIZ1)や
れまで見えていなかった現象を明確にされ、着実に光屈
MIZ2/GNOM が単離され、発現の分子機構が徐々にわか
性機構の解明に近づいていると感じられました。4 番目の
りつつある課題です。発表内容は MIZ1 を中心にし、そ
演者は、森田美代先生で、重力屈性について発表されて
-
の機能が主根のみならず、側根形成に影響し、根系の発
いました。これまで多くの重力屈性突然変異体の単離か
達にも寄与していること、MIZ2/GNOM の上流で働き、
ら、重力屈性に関与する遺伝子が同定されてきましたが、
オーキシン量の調節に関与することが盛り込まれていま
まだ重力屈性発現の分子機構の全容は明らかになってお
した。質問で出ていたセンサーは何かという点は、水分
りません。このような中で、重力屈性発現機構の感受と
屈性を研究している筆者も課題にしているもののなかな
伝達の経路における分子メカニズムに着目し、野生型と
か辿り着けずにもどかしく思うところです。次の演者は、
複数の突然変異体を組み合わせ、マイクロアレイを使っ
ウィスコンシン大学の Simon Gilroy 先生で、前演者と同
た発現解析から新規の因子として DOWN-REGULATED
じく根に着目した研究で、重力屈性と嫌気ストレスにお
GENE IN EAL1(DGE1)を単離されていました。単離さ
けるカルシウムイオンの関連について講演されました。
れた因子は、そのホモログとの三重変異体にすることで、
ま ず、Fluorescence Resonance Energy Transfer(FRET)
花茎の重力屈性を完全に欠損するもので、屈曲応答に関
を利用したカルシウムセンサーであるカメレオンを使っ
与するオーキシンの発現量や偏差分布の違いも示してい
たリアルタイムのイメージングの研究について話され、
ました。さらに、三重変異体は花茎だけでなく、胚軸や
細胞レベルでのカルシウムイオンの変化や、重力刺激変
根の重力屈性も低下しており、重力屈性全般に共通する
化に伴う迅速なカルシウムイオンの変化を捕らえた成果
因子でもありました。これらの因子がどのように重力感
を紹介していました。リアルタイムによるありのままの
受の伝達につながっているのか、大変興味深く思いまし
変化の観察には大変感動しました。そして次に、低酸素
た。最終演者は、フランス国立農業研究所(INRA)の
下で機能する因子としてカルシウムイオン輸送体である
Pierre Hilson 先生でした。分泌型ペプチド GOLVEN(GLV)
autoinhibited Ca2+-ATPase1(ACA1)や Cation exchanger2
の重力屈性や側根原基形成への作用について発表されて
(CAX2)について発表されていました。さらにこれら 2
いました。GLVs が重力屈性に関与しており、そのファミ
つの因子の機能解析や低酸素ストレスについて、宇宙実
リーの中でも GLV1 と GLV3 の添加によって、根におけ
験も遂行されているということでした。無重力下での実
るオーキシン極性輸送体 PIN2 の局在に影響を与えずに、
13
イベント報告
技術ノート
そのタンパク質量を増加させていました。さらに、根の
私にとりましても現象の理解を深めるアプローチにさら
側根原基の開始に発現する GVL6 を過剰発現すると、オー
なる工夫と努力の必要性を感じさせてくれた有意義なシ
キシン量が低下することを報告していました。これまで
ンポジウムでした。
に重力屈性におけるシグナル伝達としてカルシウムイオ
学会では、他にも環境ストレス、代謝や転写制御など
ンやオーキシンだけでなく、GLV のような分泌型ペプチ
様々な分野のシンポジウムや発表が多々あり、相変わら
ドも作用するということで大変面白く聴かせていただき
ず賑やかでした。そして、私は学会後に岡山周辺を散策し、
ました。いずれの先生方も屈性やそれに関連する因子に
東北より一足早い花見をして春を実感しつつ仙台へ戻り
ついて、既知の知見を踏まえながら独自の実験系を構築
ました。
するなどして、研究を展開されているのが印象的でした。
先端レーザー計測・制御技術により学ぶ植物の環境感覚
細川陽一郎(奈良先端科学技術大学院大学物質創成科学研究科)
1. はじめに
筆者は工学研究科応用物理学専攻の出身であり、本新学術
2. 工学における機能と植物における機能
工学における機能とは入力と出力の関係で規定されるが、
領域に参画するまでは動物細胞を中心としたレーザー技術の
生物の機能発現のための入力は環境そのものである。その
応用研究を展開しており、
植物に対する知識は皆無であった。
機能を司る細胞や細胞内分子の環境適応能力・環境適用能力
ゼロからのスタートであった筆者に対して、長谷あきら教授
を工学的な観点から学んでいくことは、新しいグリーンイノ
をはじめとする諸先生方から温かいご指導をいただき、現在
ベーションを開拓していく上で不可欠であると考える。植物
では世界的に例のないレーザーを用いた新しい植物の計測技
は光合成により光エネルギーをエネルギーに変換する。この
術や制御技術を確立しようとしている。本稿はそのような筆
機能は、太陽電池において光エネルギーを電力に変換する機
者が、植物研究者に向けたレーザーの「技術ノート」をまと
能になぞられるが、植物が光を利用しているのは光合成のみ
めたものではなく、筆者がこれまでの新学術研究を通じて学
ではない。植物では光合成を効率的におこなうために、自ら
んだ成果と自身の考えを、筆者自身に向けた植物研究に対す
の成長を制御する多数の光受容蛋白質が光合成系とは別に働
る「技術ノート」としてまとめたものである。第 2 項では植
いている。また、植物は光のみではなく、風などの外力、湿
物を知ることによって深まった筆者の考える工学研究(先端
度(水)
、温度(熱)、重力などの環境変化を敏感に受容し、
レーザー研究)と植物研究の関わりについて述べ、第 3 項で
それらに適応する機能を有している。特に近年、原子力に変
は長谷あきら教授らと推進している共同研究、第 4 項では西
わる自然エネルギーの利用戦略においては、太陽光のみでは
村幹夫教授、及川和聡博士らと推進している共同研究につい
なく、風力、水力、地熱、重力と関係する潮力などが注目さ
て述べる。
れており、これらを最適に利用する上で、植物や動物が進化
の中で獲得してきた環境適応能力・環境適用能力を学ぶこと
は、自然エネルギーを効率的に利用する方法を考えて行くう
えで不可欠であることは自明である。
本研究では、このような植物や動物が獲得してきた環境
適応能力・環境適用能力のことを「生物のもつ環境感覚」と
いうキーワードでとらえ、生物学で得られている知見を、工
学的な観点から学んでいくことを目指している。生物学にお
いては、植物や動物が獲得した高度な機能(入力と出力の関
係)を、遺伝子レベルの要素に分割して理解しようとする研
究が主流である。つまり、生物学においては、機能(入力と
出力の関係)は自然から与えられたものであり、ときにはそ
の入力自身が不明な場合もある。一方、工学(たとえば電気
工学)においては、トランジスター・抵抗・コンデンサーな
どといった単純な機能を有する素子を如何に組み立て、如何
図 1 工学における機能と植物における機能
14
に要請に答えうる入力と出力の関係を実現するかを考える。
技術ノート
このような観点から研究を進める生物学の研究は、機能の実
現・制御を目指す工学とは、研究の出発点が全く異なると感
じている。
3. フェムト秒レーザーによる細胞組織の非熱的加工による
シロイヌナズナの光応答特性の検討
植物は、他の物体により自らへの太陽光の照射が阻まれ
工学においてデバイスの機能を評価するにあたり、イン
たとき、多の物体の陰から逃れようとする避陰反応とよばれ
パルス入力に対する出力応答をみることが基本である。植
る機能を有している。この機能発現には、植物のもつ光受容
物や動物などの生物個体、それを構成する細胞をデバイス
蛋白質の一つであるフィトクロム(Phytochrome)が関与し、
として捉え、工学的な観点からデバイスの入力に対する出
フィトクロムが光受容した情報により、植物成長ホルモンで
力の応答特性を評価するという視点に立てば、植物や動物
あるオーキシン(Auxin)の伝達が制御され、陰から逃れる
にインパルス入力として扱える環境変化を与え、その後の
植物の生長が促されるとされている。ここで光受容したフィ
出力応答特性を評価することが、生物学で得られている知
トクロムがオーキシンの伝達を直接的に制御するわけではな
見を工学的な観点から学んでいく上で重要であると考えら
く、その間をつなぐシグナル伝達機構があると考えられてい
れる。超短パルスレーザー光は、生物個体や細胞に対して、
るが、未知である。本研究では、シロイヌナズナの芽生でお
非接触に極短時間にインパルス的な環境変化を与えること
こるオーキシンの伝達をフェムト秒レーザーにより茎を加工
ができ、上記の目的を達成する上でも最も有効な手段であ
(掘削)することにより阻害し、その影響を調べた。シロイ
ると考えられる。特に筆者らは、フェムト秒レーザーに代
ヌナズナの芽生では、双葉が受ける光の影響をフィトクロム
表される超短パルスレーザーを、生物試料にパルスレーザー
が感知し、双葉から茎へオーキシンが伝達し、茎の伸張が制
を直接照射し、その光応答を調べるための源としてのみで
御される。本研究では、茎頂をフェムト秒レーザーにより掘
はなく、生物試料に過渡的な力学作用を引き起こす源とし
削し、そこでのオーキシンの伝達を阻害した。図 2 にフェム
て利用する新手法を考案し、様々な生物試料の計測や制御
ト秒レーザーにより加工したシロイヌナズナの芽生を示す。
に成功してきている[1]。本手法では、高強度のフェムト
フェムト秒レーザーによる茎の掘削部分に熱変性の影響が見
秒レーザーを生物試料の近傍に集光し、そこに存在する生
られず、細い針で突き刺した様な穴を空けることができた。
物試料の培養液に爆発現象を誘起し、発生した衝撃力を生
もちろん、細い針を用いてもこの様な小さな穴を空けること
体試料に作用させる。近年、生物物理学分野においては、
は難しく、またできたとしても、その周囲に機械的な損傷が
生体への最も基本的な物理作用である“力”が、生体個体
残る。フェムト秒レーザーの三次元選択性に優れた非熱的な
や細胞にもたらす作用と、それにより誘導される生体の機
加工を施すことにより初めて、周辺組織の破壊の少ない、非
能創発の仕組みが注目されており、“メカノバイオロジー”
常に再現性の高い茎の掘削が実現したと言える。
という新しい研究分野が創設されている。しかしながら、
これまで、細胞を単一レベルで力学的に過渡的に刺激する
図 3 に、長谷らによって解析された双葉に遠赤色光(800
手段がなく、このフェムト秒レーザーにより誘導される衝
nm 付近の光)を照射したときの茎の伸張挙動の比較を示す。
撃力は、生体試料の力のインパルス応答を評価する手法と
フェムト秒レーザーによる茎の加工がない場合には、遠赤色
して、最も有望であると考えられる。我々はこのような観
光照射した場合、
茎は大きく伸張した。しかし、
フェムト秒レー
点に基づき、超短パルスレーザーを利用した新しい植物の
ザーにより茎を加工した場合、茎の伸張はほとんど見られな
制御方法、計測方法を開拓していこうとしている。
かった。この結果は、
フェムト秒レーザーによる茎の加工部で、
図 2 シロイヌナズナ茎頂下部の掘削
茎頂下部の掘削部に、レーザーによる熱変性は観察されず、茎頂から
茎へのオーキシン伝達が阻害された以外は、シロイヌナズナの生理活
性は乱されなかった。
図 3 フェムト秒レーザー加工による双葉から茎への物質伝達阻害
フェムト秒レーザー加工により、正常な光応答による茎の伸張は阻害
される。しかし、そこにオーキシンを添加した場合、正常な光応答に
よる茎の伸張がみられた。
15
技術ノート
双葉から茎へ送られる成長制御シグナルの伝達が阻害された
割を果たすと考えられている。基礎生物学研究所の西村幹夫
ことを示す。つぎに、フェムト秒レーザーにより加工した茎
教授らはペルオキシソームを緑色蛍光蛋白質(GFP)により
をオーキシン添加した溶液に浸し、同様の遠赤色光の照射実
染色し、植物細胞に光を照射した状態(明状態)と照射して
験を行った。このときレーザー加工を施していないときとほ
いない状態(暗状態)でその挙動を観察することに成功した。
ぼ同様の茎の伸張過程が見られた。この結果は、オーキシン
その結果、明状態ではペルオキシソームは葉緑体に積極的に
が茎の成長制御に関与していることを示す。一方で、加工部
接着し、暗状態では葉緑体に接着しない挙動が示された。こ
から浸透したオーキシンが茎の伸張を直接的に促すのであれ
の結果より、明状態における葉緑体の光合成を、葉緑体にペ
ば、遠赤色光を照射していない時にも、同様の茎の伸張が観
ルオキシソームが接着して補助していることが示唆される
察されるはずである。つまり、遠赤色光を照射していない時
が、これを明確にするためには葉緑体とペルオキシソームの
には茎の伸張が促されない。この結果は、茎の伸張に、オー
接着を明らかにしていく必要がある。しかし、密閉空間であ
キシン以外の成長制御因子が存在する明確な証拠である。
る植物細胞内のオルガネラ同士の接着強度を調べることは極
超短パルスでない赤外レーザーにより材料を加工すると、
めて難しい。
光ピンセットによりペルオキシソームを捕捉し、
生体材料には熱的な損傷が残り、加工部近辺の組織は壊死す
葉緑体から引き剥がすことにより接着力を測定する方法が当
る可能性が高い。また、超短パルスでない柴外レーザーによ
初提案された。しかしながらペルオキシソームは、細胞内の
り材料を加工すると、生体材料には化学的な損傷が残り、加
液体と同等の屈折率しか持っておらず、GFP による染色な
工部近辺の組織はその活性が阻害される可能性が高い。本研
しで、透過像として観察することはできない。光ピンセット
究は、近赤外光のフェムト秒レーザーによる機械的な掘削に
のく駆動力となる光の放射圧による力は、大きな屈折率変化
近い加工特性により実現できたものであり、植物材料の高度
がある微小物体にのみ働くため、ペルオキシソームを光ピン
な加工や制御を実現する可能性を示すものである。
セットにより捕捉することは不可能である。そこで本研究で
は、我々が独自に開発を進めているフェムト秒レーザー誘起
4. フェムト秒レーザー衝撃力によるペルオキシソームと葉
緑体の接着力評価
16
衝撃力を用いた細胞内の微小物体の操作方法を応用し、葉緑
体とペルオキシソームの接着力を調べた。
植物における光合成は、生物が獲得した最も重要な光エ
図 4 に実験系を示す。高倍率の対物レンズを用いることに
ネルギーの利用手段であり、また環境問題を考える上でも極
より、フェムト秒レーザーを 1 μm 以下のスポットに集光す
めて重要な現象である。高等植物において光合成は、細胞内
ることができ、10 μm 以内の領域に局在した衝撃波を誘導
の葉緑体でおこなわれるが、植物では葉緑体での光合成を最
することができる。植物細胞の大きさは 100 μm 程度であり、
適化するため、光の照射方向に葉を向けたり、光強度に応じ
レーザーを細胞内に集光照射し、細胞内の小器官をレーザー
て細胞内の葉緑体の位置を調節したり、光合成の効率に合わ
誘起衝撃波により操作することも可能である。
本研究は、フェ
せて細胞内の代謝を制御したりする多くの補助機能が存在す
ムト秒レーザーを照射できるレーザー共焦点顕微鏡を用い
る。本研究では、そのような光合成補助機能の一つである葉
て、植物細胞を高倍率で観察しながら植物細胞内に衝撃波を
緑体とペルオキシソームの相互作用に注目した。ペルオキシ
発生させ、それにより葉緑体に接着したペルオキシソームの
ソームは数ミクロンの大きさの細胞内オルガネラであり、植
接着力を評価しようとした。図 5 に、その代表例を示す。暗
物細胞内では、光合成における植物細胞の代謝を補助する役
状態にある葉緑体とペルオキシソームの接着(a)は、明状
図 4 フェムト秒レーザー衝撃力による葉緑体からのペルオキシソーム
剥離の実験系
図 5 ペルオキシソームの葉緑体からの剥離
矢印にレーザーを集光照射した時、(a)の場合、近傍にあるペルオキシ
ソームが葉緑体から剥離した。一方で(b)では剥離がみられなかった。
若手研究紹介
技術ノート
態にある接着(b)と比べて明らかに弱く、レーザー衝撃力
誤解かもしれないし、工学と植物学の考えの相違点であるか
により、葉緑体に接着したペルオキシソームを簡単に引き剥
もしれない。筆者の誤解についてはご指摘いただきたいし、
がすことができた。この実験を複数の標的に対して繰り返し
工学と植物学の相違点についても意見を伺いたい。誠に勝手
行い、葉緑体からペルオキシソームを剥離できる確率とその
な考えであるが、皆様からご意見をいただき、筆者の「技術
レーザー光強度依存性を調べた。実験に用いたレーザー光強
ノート」を完成させたいと考えている。
度で発生する衝撃力の大きさは原子間力顕微鏡(AFM)を
用いた局所応力評価方法により定量した。その結果、明状態
[1]
細川陽一郎,
“バイオ分野に注目されるフェムト秒レー
における葉緑体とペルオキシソームの接着力は、暗状態の約
ザー細胞プロセス,
”応用物理,82,63(2012).
2 倍であることが初めて示した。
5. おわりに
植物学者が本稿を読まれて違和感を覚えた部分は、筆者の
植物の P-body とオルガネラの停止に働く微小管の役割
濱田 隆宏(東京大学大学院総合文化研究科)
植物と動物の違いの一つにオルガネラ輸送システムの
い場所で停止することが出来ました。そこで P-body の停止
違いがあります。植物の細胞内輸送(原形質流動)は
とても速く、動物の 10 倍以上のスピードを出すことが可能で
頻度が微小管の有無で変化するかを調べると、微小管の有
無に関わらず 7 割方の P-body が動かず、変化はありません
す。実は両者は全く違うシステムでオルガネラ輸送を行ってお
でした。このことより「微小管が存在する時には微小管上で
り、植物はアクチン繊維─ ミオシンを、動物は微小管─ キネ
P-body が停止するのだが、実際の P-body の停止には必須で
シン / ダイニンを使っています。また動物ではオルガネラ輸送
はない」ことが明らかとなりました。
と同じシステムで RNA 顆粒(膜に囲まれていない巨大タンパ
では他のオルガネラ(ミトコンドリア、
ペルオキシソーム、
ク質─RNA 複合体)の輸送も行っています。しかしながら植
ゴルジ体)ではどうでしょう? 同様の解析を行った結果、
物の RNA 顆粒の輸送に関しては全く知見がありませんでした。
これらの 3 種のオルガネラでも「微小管が存在する時には微
そこで私は RNA 顆粒の一つである Processing body(P-
小管上で停止するのだが、停止には必須ではない」ことが明
body)に注目し、植物における RNA 顆粒の輸送システムを
らかになりました。なぜこのような現象が起きるのかは不明
調べました 1)。P-body の可視化には P-body の主要構成因子
ですが、オルガネラーオルガネラ間の相互作用によりオルガ
である DCP2 に GFP を融合させたタンパク質を用いました。
ネラの停止が引き起こされているのではないか? と考えて
DCP2 GFP の動態を経時観察すると、DCP2 GFP が方向性
います。特に細胞全体に広いネットワークを形成し、一部が
を持って素早く動き、しばしば停止するのが観察されまし
細胞膜に係留されている小胞体は、他のオルガネラ停止に大
た。アクチン繊維の脱重合剤であるラトランキュリン B で
きく貢献すると思われる有力な候補です。
植物を処理すると、DCP2-GFP の方向性のある動きは完全
次にその小胞体と微小管に注目して解析を行いました。小胞
に阻害されました。このことより DCP2 GFP はアクチン繊
体もアクチン繊維依存的に動き、多量の小胞体が流れる原形質
維によって輸送されていることが明らかになりました。
一方、
流動や個々の小胞体チューブの伸長がアクチン繊維により引き
DCP2-GFP の停止に関しては微小管の関与が予想されまし
起こされることが知られています。一方、
微小管に関してはシャ
た。そこで mCherry-TUB6 を用いて微小管を可視化し P-
ジクモにおいて、微小管を脱重合させると細胞表層の小胞体の
-
-
-
body と微小管の同時観察を行いました。その結果、P body
メッシュサイズが大きくなり、また小胞体チューブの動きが鈍
は微小管の存在している箇所で停止しました。P-body で観
ることが報告されています 2)。本研究ではそれまで行われてい
察された「アクチン繊維で長距離輸送されて微小管上で停止
なかった微小管と小胞体の同時経時観察をシロイヌナズナにお
するという動き」は、オルガネラ(ミトコンドリア、ペルオ
いて行いました。まずオリザリンにより微小管を完全に脱重合
キシソーム、ゴルジ体)で観察されている動きと同じです。
させた場合、小胞体チューブのメッシュサイズが大きくなるこ
-
P-body の停止に関わる微小管の役割をより明確にするた
とを追認しました。さらに安定的な小胞体チューブの分岐点の
めに、微小管脱重合剤であるオリザリンを用いた実験を行い
7 割以上が微小管上で形成されていることを見いだしました。
ました。微小管が完全に脱重合したのを確認しつつ P-body
オリザリンで処理した場合、分岐点が不安定になることでメッ
の動態を観察すると、驚くべきことに P-body は微小管の無
シュサイズが大きくなったと考えています。
17
若手研究紹介
総括班からの報告
また微小管を完全に脱重合させた場合でも一部の安定的な
1)Hamada et al.(2012)Plant Cell Physiol. 53 : 699-708.
小胞体分岐は存在したままでした。ただし他のオルガネラと
2)Foissner et al.(2009)Protoplasma 224 : 145-157.
比較すると、微小管を脱重合した時の影響は明らかであり、
3)Crowell et al.(2009)Plant Cell 21 : 1141-1154.
「微小管 ─小胞体の相互作用」は「微小管と他のオルガネラ
の相互作用」よりも強いことが示唆されます。
4)Gutierrez et al.(2009)Nat. Cell Biol. 11 : 797-806.
5)Ambrose et al.(2013)Dev. Cell 24 : 649-659.
本研究により「微小管」が「RNA 顆粒やオルガネラが停止す
る場所」に共局在することが明らかとなりました。なぜ微小管
とオルガネラの停止場所は共局在するのか? また植物オルガ
ネラ輸送における微小管の役割は何であるのか? ポジティブ
な解釈の一つとして、微小管が細胞表層で RNA 顆粒・オルガネ
ラ間の相互作用を強める場所の形成と維持に働いているのでは
ないかと考えています(図 1)
。近年、ゴルジ体から分泌される
小胞が微小管上を動くことが報告され 3, 4)、また PIN2 のリサイ
クリングに関わる小胞も微小管と共局在することが知られてい
ます 5)。今後の詳細な解析により、微小管の細胞内輸送におけ
る働きとメカニズムが徐々に明らかになると考えられます。
図1
植物においてオルガネ
ラ /RNA 顆 粒 は ア ク チ
ン繊維依存的に運ば
れ、微小管上で停止す
る。微小管が細胞表層
で RNA 顆粒・オルガネ
ラ間の相互作用を強め
る場所の形成と維持に
働いているのかもしれ
ない。
新学術領域「植物環境感覚」
総括班からの報告
★第 6 回拡大総括班会議議事録
日 時:2013 年 3 月 9 日
場 所:キャンパスプラザ京都 6F 第 8 講習室
書 記:長谷研・鈴木友美
出席者(敬称略)
計 18 人
班 員:長谷・上村・三村・徳富・西村(い)
・高橋(秀)・宮沢・細川・梶山・林・真野・高橋(勝)・大西・鈴木
アドバイザー:今関・柴岡・佐藤(公)
評価委員:山本
1−1. 報告
中間評価について
2012 年 6 月に資料提出、9 月 10 日に中間ヒアリングを受けた。
評価:A
指摘事項
1)最終出口を、産業への応用、社会貢献、広報などで意識する必要がある。
2)領域外への情報発信をより積極的に行う。
3)新技術を利用した論文の投稿(総括班が主導し、後半に向けて応用化を進める)等の可能性を検討した。
第 5 回班会議以降の活動について
1)日本植物学会第 76 回大会(2012 年 9 月 15 日∼ 17 日)において、シンポジウム「植物の低温応答における
カルシウムの役割」を行った
2)第 3 回若手の会(担当者:山田、林、真野)
場 所:浜名湖カリアック
日 時:2012 年 10 月 15 日(月)∼ 17 日(水)
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総括班からの報告
3)第 4 回ワークショップ「IR-LEGO を用いた遺伝子発現誘導法」
(担当者:浦和、亀井)
場 所:基礎生物学研究所
日 時:2012 年 10 月 18 日∼ 19 日
1−2. 今後の活動予定
・次回以降の班会議
開催場所・担当
2012 年度後半(第 6 回)
京都大 長谷担当
2013 年度前半(第 7 回)
大阪府立大 徳富担当
・若手の会
担 当:神戸大・三村グループ
・国際シンポジウム
次年度(2013 年度)は予定なし
2014 年度に開催予定(2015 年度 9 月頃が事後評価)
・関連シンポジウム
1)第 54 回日本植物生理学会年会(2013 年 3 月 21-23 日、岡山大学)
「Tropism studies at the front ; sensors and signal transduction」
:3 月 21 日(本学術領域共催)
(オーガナイザー:高橋(秀)
、宮沢)
・ワークショップ
1)神原・梶山班担当「単一細胞、微小組織の遺伝子発現解析」
2)高橋(勝)班担当「質量顕微鏡の植物への応用」
・班会議分科会
第 7 回班会議に合わせて、光関連で予定
1−3. ニュースレター(報告者:宮沢)
特になし
1−4. ホームページ(報告者:細川)
適宜更新を行っている
★第 7 回拡大総括班会議議事録
日 時:2013 年 6 月 29 日
場 所:大阪府立大学 A13 号棟 3F 323 号室
書 記:長谷研・鈴木友美
出席者(敬称略)
計 18 人
班 員:長谷・徳富・上村・三村・西村(幹)・神原・高橋(秀)・宮沢・細川・梶山・真野・山田・大西・鈴木
アドバイザー:今関・柴岡・佐藤(公)
学術調査官:北垣
1−1. 報告
第 6 回班会議以降の活動について
1)第 54 回日本植物生理学会年会(2013 年 3 月 21 日∼ 23 日)において、シンポジウム「Tropism studies at the
front ; sensors and signal transduction」を行った。
2)第 7 回班会議分科会(2013 年 6 月 30 日)「植物光環境感覚:最新のトピックス」
(担当 徳富)
1−2. 今後の活動予定
・次回以降の班会議
開催場所・担当
2013 年度後半(第 8 回)京都大 長谷担当
2014 年度前半(第 9 回)東北大 高橋(秀)担当
2014 年度後半(第 10 回)京都大 長谷担当
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総括班からの報告
・若手の会
2013 年度 神戸大学(三村グループ)担当
-22 日(火)
日 時:10 月 20 日(日)
場 所:小豆島ふるさと村 国民宿舎
2014 年度 長谷代表が関係者に打診する
・国際シンポジウム
今年度(2013 年度)は予定なし
2014 年度に、奈良での国際シンポジウムと同程度の規模で開催予定
ワーキンググループ(長谷・徳富・三村)にて、計画
海外で興味深い新技術を開発している研究者に講演依頼することも検討する
日本植物生理学会年会(東京開催)とのカップリングについても検討する
・関連シンポジウム
1)日本生物物理学会年会(2013 年 10 月 28-30 日、国立京都国際会館)
「カラフルな植物光環境感覚タンパク質」
(オーガナイザー:徳富、細川)
2)日本植物生理学会年会(2014 年 3 月富山)シンポジウム申込予定
新技術関連でシンポジウムを立ち上げる(まとめ役:長谷)
3)新学術領域研究「少数性生物学」との合同シンポジウム計画
今年度秋頃を目処に、合同シンポジウムを行う
形 式:
(提案)代表者数人が公開合同シンポジウムの形式で発表する
・ワークショップ
1)神原・梶山班担当「単一細胞、微小組織の遺伝子発現解析」
日 時・場 所:2013 年 8 月か 9 月、長谷研(京大)
内 容:cDNA 合成
2)高橋(勝)班担当「質量顕微鏡の植物への応用」
日 時:2013 年 8 月頃
内 容:最大 10 人程度で、お台場にて開催
第 8 回班会議(長谷担当)と合わせて検討する
1−3. ニュースレター(報告者:宮沢)
特になし
1−4. ホームページ(報告者:細川)
新公募班の参加に合わせて、更新を行う。平成 23-24 年度の研究組織についてもページを残す。
1−5. トランスクリプトームについて(報告者:山田)
これまでの担当(林)に代わり、山田が引き続き行う
・システムは変更なし
1−6. データベースについて(報告者:真野)
http://podb.nibb.ac.jp/Organellome/
西村特定の時に作ったデータベースが古くなっているので、新しくプログラムを作り直す
超微細構造(電子顕微鏡写真)に対応したコンテンツを作成中
PCP のデータベース特集号(来年 1 月刊行予定、〆切は 8 月末)掲載を目指す
1−8. アウトリーチ活動について
中間評価の指摘に基づき、各班員がどれくらいの頻度で一般向け広報活動を行っているか調査を行う
(担当 長谷)
1−9. その他
1)最終年度の予定
平成 26 年度秋頃:とりまとめ経費の申請(最終年度の次年度(平成 27 年度)に使用)
最終報告書は 1 年後(平成 28 年度)
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編集後記
関連学術集会カレンダー
関連学術集会カレンダー
新学術領域研究「植物の環境感覚」第 5 回ワークショップ 「イメージング質量分析ワークショップ」
会 期:2013 年 8 月 20 日〜21 日
会 場:産業技術総合研究所臨海副都心センター
日本植物学会第 77 回大会
会 期:2013 年 9 月 13 日〜15日
会 場:北海道大学高等教育推進機構
大会ホームページ:http://www.knt.co.jp/ec/2013/bsj77/
新学術領域研究「植物の環境感覚」第 6 回ワークショップ 「植物対応1細胞網羅的遺伝子発現解析技術の前処理技術講習会」
会 期:2013 年 9 月 19 日〜20 日
会 場:京都大学理学研究科 2 号館
新学術領域研究「植物の環境感覚」第 4 回若手の会
会 期:2013 年 10 月 15 日〜17 日
会 場:小豆島ふるさと村(http://www.shodoshima.jp/)
第 51 回日本生物物理学会年会 新学術領域研究「植物の環境感覚」共催シンポジウム
「カラフルな植物光環境感覚タンパク質:Colorful plant light-perceptive proteins.」
オーガナイザー:徳富 哲、細川陽一郎
会 期:2013 年 10 月 28 日
会 場:国立京都国際会館
大会ホームページ:http://cls.kuicr.kyoto-u.ac.jp/bsj2013/welcome.html
第 55 回日本植物生理学会年会
会 期:2014 年 3 月 18 日〜20 日
会 場:富山大学五福キャンパス
大会ホームページ:http://www.jspp.org/toyama/
16th International Congress on Photobiology 会 期:2014 年 9 月 8 日〜12 日
会 場:Universidad Nacional de Córdoba, Argentina
大会ホームページ:http://www.photobiology2014.com.ar
編集後記
今年はことのほか暑い夏でした。それにも関わらず暑さに負けずに育つ植物を見ながら、改めて植物
の環境適応能に驚かされております。今号が刊行されるころには幾分暑さも和らいでいると良いので
すが。さて、本領域も新たな公募研究班員を迎え、いよいよ最終目標に向けて弾みをつけたところです。
今号と次号では新たな公募研究の紹介を掲載します。また、奈良先端科学技術大学院大学の細川先生に
技術ノートを寄稿していただきました。フェムト秒レーザーの原理と植物細胞への利用についてわかり
やすく解説されています。是非一読いただければと思います。ニュースレターに関するご意見、ご要望
などございましたら、編集部([email protected])までご連絡ください。(Y.M.)
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文部科学省 科学研究費補助金 新学術領域研究
「植物の環境感覚:刺激受容から細胞応答まで」領域ニュース
編集人:高橋 秀幸
発行人:長谷 あきら
発行日:2013 年 9 月
発行所:新学術領域「植物の環境感覚」事務局
〒606 − 8502 京都府京都市左京区北白川追分町
京都大学大学院理学研究科生物科学専攻植物学系植物生理学研究室
電話:075 − 753 − 4123 FAX:075 − 753 − 4126
e-mail:[email protected]
ホームページ:http://esplant.net/index.html
印刷:笹氣出版印刷株式会社
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