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位置情報収集解析技術の利用に関する調査研究

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位置情報収集解析技術の利用に関する調査研究
位置情報収集解析技術の利用に関する調査研究
本調査研究事業は、平成21年度自転車等機械工業補振興助事業により実施
した事業です。
1.事業概要及び目的
携帯電話にインターネット機能や GPS(Global Positioning System)機能が
搭載され、情報を「いつ」でも「どこ」でも入手でき、また、所在地付近の種々
の情報を容易に入手することが可能な環境が整ってきた。一方、増大する情報
を整理し、効率的に検索や利活用するために、
「位置」や「時間」の情報を活用
する試みが拡大しつつある。
携帯電話に限らず屋外での地理空間情報サービスは、GPS による測位を中心
に据えたものが主流となっている。また、屋内でも「いつ」でも、
「どこ」でも、
位置が分かるシームレスな測位環境が整備されつつある。地理空間情報サービ
スを提供する中で、多量に蓄積された測位データ(動線データ)を高度に活用
するための空間情報解析技術が研究開発されつつあり、今後は、利用者の行動
支援やマーケティング等の新たなサービスが提供されることが予想される。
本調査研究では、携帯電話などのモバイル機器等を通じて収集される動線デ
ータに着目し、その解析技術やサービスについて調査を実施することで、動線
データを活用した新サービスの実現性を検討することが目的である。
2.事業の実施内容
2.1 地理空間情報と動線解析技術
インターネットにより地理空間情報分野の動向、衛星測位分野の動向、屋内
測位分野の動向を調査し動線解析技術の必要性を検討した。
時間情報を含んだ位置情報と地図などの地理情報は、「地理空間情報」と呼
ばれ、その高度な活用を推進する法律として、2007年5月に「地理空間情報活用
推進基本法」が成立し、その具体化を推進すべく、2008年に「地理空間情報活
用推進基本計画」が閣議決定された。この基本計画を受け、政府は、「G空間ア
クションプラン」として、地理空間情報関連分野をはじめとする様々な分野で、
研究開発や実証実験の準備を進めている。内閣府発表の2010年度G空間行動プラ
ン関連予算概算要求状況のGIS関係は、10府省庁、101施策、37,768百万円とな
っている。一方、衛星測位を含めた宇宙の開発と利用に関する基本的枠組みを
定める法律として、2008年5月に「宇宙基本法」が成立し、その具体化を推進す
べく、2009年に「宇宙基本計画」が閣議決定された。この基本計画を受け、政
府は、
「G空間アクションプラン」として、衛星測位関連分野をはじめとする様々
な分野で、研究開発や実証実験の準備を進めている。2010年1月の宇宙開発戦略
本部発表の2010年度宇宙関係予算(政府原案)は、11府省庁、338,965百万円と
なっている。
屋外での位置特定手段としては衛星測位が今後も主流であり、アメリカのGPS
衛星、ロシアのGLONASS衛星に加え、今後は、EUのGalileo衛星、日本の準天頂
衛星などが打上げられ、屋外での測位精度の向上や利用可能エリアの拡大が期
待できる。一方、屋内での位置特定手段としては屋内GPS測位、無線LAN測位、
ZigBee測位、RFID測位など多様な測位手段が提案されている状況である。今後
は、屋外・屋内で複数の測位手段が組み合わされシームレスな測位環境が提供
されて行くと予想される。
屋外・屋内でシームレスな測位環境が提供されることで、今後は、位置情報
サービスによって蓄積される屋外・屋内の大量の位置情報を解析・活用し、新
たな位置情報サービスを提供することや従来の位置情報サービスに新たな付加
価値を提供することが求められると想定される。
2.2 動線解析技術の調査
動線解析技術調査として、インターネット等により関連する論文の調査、及
び関連する特許の調査を実施した。
動線解析結果の利用先としては、論文・特許共に店舗内の顧客の行動に関す
るものが最も多い。一方で、モノの動線解析に関する報告は少なく、食の安全
等、トレーサビリティが重要視されている昨今、更なる検討が必要であると思
われる。また、実態行動の動線分析とは異なるがWeb等の仮想空間における
動線の解析もニーズがあることが分かる。
解析の手法に関しては途中で切断された動線についても効率的に利用する手
段に関する論文や特許が見受けられ、特徴点を抽出する手法と合わせて実際に
動線解析を行う際に、このような研究成果が重要になってくると推測される。
また、解析のみに留まらず最終的に解析結果をシミュレーションによって将来
予測等に反映させる技術についても今後さらなる研究が必要であることが分か
る。
以上の技術調査より、動線解析の利用に際しては①動線の収集、②分断され
た動線の接続、③解析・特徴点の抽出、④シミュレーションによる将来予測と
言う4点を合わせて検討していくことが重要であることが分る。
2.3 動線解析技術を利用したサービス調査
動線解析技術を利用したサービス調査として、インターネットにより関連す
るサービス、及びシステムを調査した。
調査結果から動線解析技術を利用したシステムやサービスでは、コンシュー
マの行動を解析して情報を提供する「レコメンデーション」や小売・商業施設、
イベント施設での行動を解析してお勧めの商品情報を提供するものが中心とな
っている。コンシューマ以外では、小売・商業施設や工場・倉庫などでの顧客
や作業員の動線を解析し、レイアウト変更等の業務効率向上のために動線解析
を用いているものが中心となっている。また、動線解析をセキュリティに応用
するようなケースも出始めている。
調査結果から、①コンシューマへのサービス向上を目的とした動線解析の利
用、②業務効率改善を目的とした動線解析の利用、③セキュリティの高度化を
目的とした動線解析の利用と言った大分類ができ、動線解析技術は今後もこの
どれかの目的で利用されて行くと考えられる。
2.4 動線解析技術に求められる要件の整理
2.2、2.3 の調査結果を受け、今後の動線解析技術に求められる要件を測位の
観点と解析の観点から整理した。
(1)動線を取得するための測位に関する要件の概要
項目
要件概要
測位手段
動線解析技術には、どの様な測位手段から得られた測位結果
であっても共通に扱える汎用性が求められる。
測位結果
測位手段によって得られる測位結果は、絶対座標、相対座標、
位置に関連した位置 ID などがある。
測地系
測地系には、世界測地系、日本測地系があり、使用する測地
系の違いにより、同じ場所で測位を行っても測位結果として
得られる座標が異なることとなる。測位手段が使用している
測地系を識別し、共通処理が可能な測地系に変換する処理が
必要となる。
測位時刻
測位時刻は、世界共通の時刻系である世界時、世界時を基に
地域毎に決められた標準時、測位手段が任意に定めたシーケ
ンシャルな数値などがある。測位時刻は、測位手段が使用し
ている時刻によって異なるため、動線解析を行うためには、
必要に応じて時刻系を合わせる必要がある。
測位タイミング
測位手段の制約により一定間隔のものから、利用者が指定す
る任意のものまで様々である。動線解析を行う場合、動線解
析を行うエリアにより解析に必要となる測位の粒度が異な
ってくる。従って、解析対象となるエリアを考慮し、そのエ
リアに応じた測位手段の選択、測位タイミングの選択を行う
必要がある。
測位誤差
測位手段や測位環境によって測位誤差は異なる。動線解析を
行う場合、測位誤差が動線解析の粒度を超えてしまうと動線
解析の意味を成さなくなる。従って、動線解析の粒度を考慮
し、その粒度以下の測位誤差を持つ測位手段を選択する必要
がある。また、測位環境により解析粒度を超えた測位誤差が
発生する場合もあり、動線解析を行うにあたっては外乱とな
るため、正しい解析結果が得られなくなる。この様な外れ値
は動線解析を行う前に除去するか補正する必要がある。
個人情報保護
動線解析を行うためには多数の測位結果を収集・蓄積する必
要がある。多数の測位結果から動線解析された結果は、個人
を特定することはできないため個人情報にはあたらない。し
かし、動線解析を行うために収集した測位結果については、
データから個人が特定できないよう、暗号化などを施し匿名
性に配慮する必要がある。また、対象が個人である場合、動
線解析された結果についても動線解析を行うために収集し
た測位結果と同様に細心の注意を払った管理が必要となる。
(2)動線解析処理の要件の概要
動線解析処理は、例えば図1の流れで処理する事になる。
元データ
前処理後
データ
(a)前処理
状態遷移
(b)状態判別処理
統計情報
(c)状態遷移解析
図1:動線解析処理の全体構成(例)
(a)前処理
図1(a)の前処理とは、意味づけが実施される前の時系列測位データ(元デー
タ)に対して加えられる処理である。この処理としては、測位誤差の低減のた
めの平滑化処理や、測位誤差が大きいために極端に外れた位置が得られた測位
データを除去する外れ値除去処理、地図情報との整合性をとるマップマッチン
グと呼ばれる処理などがある。
(b)状態判別処理
図1(b)の状態判別処理では、動線区間に対し移動体の状態を示す符号が付与
される。動線区間とは、移動体の移動軌跡の一部区間を切り取ったものを指し、
動線のサンプリングを行ったものが時系列測位データである。動線区間と他の
情報を関連づけるためには、動線区間がどのような状態を表現しているか判定
する必要がある。状態判別処理では、時系列測位データに基づき、移動中、停
留中など、各区間の状態を判別する。
(c)状態遷移分析
図1(c)の状態遷移分析は、動線を状態遷移へ変換した後に実施される統計処
理である。前述の状態判別処理によって、動線区間が状態へ変換されるため、
動線の全体は状態間の遷移と見なすことができる。状態遷移は一種の記号列で
あるので、記号列に対する統計処理が実行できる。例えば、状態遷移をマルコ
フモデルであると見なしてモデルパラメータの推定を行ったり、記号列マッチ
ングにより動線間の類似度を判定したりすることができる。
3.本事業実施により期待される効果
本事業の実施により、動線解析を取り巻く社会的環境、技術的環境、サービ
ス的環境を整理し、動線解析技術に求められる要件として整理することができ
た。本調査研究結果により、携帯電話などのモバイル機器を通じて収集・蓄積
される動線データを活用した新たな位置情報サービスの研究・開発・製品化の
一助になると考える。
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