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e コマースの発展とメジャーの取組み - 一般財団法人 日本エネルギー
,((- :国際動向: 年 月掲載 e コマースの発展とメジャーの取組み 宇佐美 崇∗ はじめに 近年、,7(情報技術)とよばれる技術が急速な発展をしている。特に、H コマース(電子 商取引)とよばれる分野では、今後急速な市場規模の拡大が予測されている。なかでも、 %%(EXVLQHVV WR EXVLQHVV)とよばれる企業間の取引の成長が著しく、米国の調査会社フ ォレスターリサーチ社によれば、 世界の %% 市場規模は 年の約 億ドルから、 年には約 兆 億ドルにまで達すると見られている。 H コマース市場が急速に発展するなか、国際石油産業においても積極的に H コマースに取 り組む動きが活発になっている。 国際石油産業は、 年代以降の過剰能力の発生、市場規制緩和による競争激化といっ た状況下、厳しい経営環境にさらされてきた。これに伴いメジャー各社は、製油所や 66 と いった資産の売却、人員削減といった経営効率化、合理化を進めてきた。また、製油所や 流通部門での共同運営等の合理化努力を進め、 年代後半以降は、各社間での戦略的提 携や、より一層の規模の経済性を追求した大型合併にまで合理化策を拡大している。しか も、厳しい競争環境が続くなかで、さらなるコスト削減努力が求められ続けているのであ る。 このため、コスト削減努力を進める国際石油産業にとって、H コマースは資材調達面での コストの削減等を図るアプローチとして重要な戦略として位置づけられ、積極的に取り組 む姿勢が現れている。 そこで本稿では、まず第1章で、H コマースの中心的な役割を果たしているインターネッ トの普及について述べ、,7 を利用した今後の各企業の経営戦略の中心になると見られてい る H コマースの発展について、その特徴および背景を紹介する。第 章では、メジャー各 社の H コマース戦略の動きとその特徴について紹介する。 第1章 インターネットの普及と e コマース戦略 (1)インターネットの普及 現在、米国では空前の好景気が続いており、こうした好調な米国経済を支えている要因 の つとして、,7(情報技術)の革新があげられている。,7 の進展が、経済全体に与える 影響を示す具体的な数字はなく、,7 革命による経済成長の寄与に関しては懐疑的な意見も あるが、,7 を活用することによって、情報機器の活用による生産性の大幅な向上、 時間 日のサービス提供、 ネットワークの拡大による世界中への市場の拡大などビジネスのあ り方が大きく変化していることは間違いない。 こうした ,7 の基盤となっているのが、グローバルでオープンなネットワークであるイン ターネットである。 そもそも、インターネットは米国国防総省高等研究計画局が、軍事研究の効率化を目的 ∗ 国際動向分析グループ研究員 (PDLO :XVDPL#WN\LHHMRUMS ,((- :国際動向: 年 月掲載 として 年に開発したアーパネット($53$1(7)が始まりである。その後、 年 代に学術用のネットワークとして全米の大学や研究所を結ぶネットワークとして使われる ようになった。 年代には商業利用が開始され、ワールド・ワイド・ウェブ(:::) 、 ウェブブラウザー「モザイク」の開発といった技術革新により一気に大衆化が進展した。 さらに、パソコンの高性能化とウィンドウズの登場により、インターネットは世界中で急 速に普及している。 インターネットの戦略立案企業である 18$ によると、 年の世界のインターネット アクセス人数は 億 万人に達しているといわれ、 年には 億 万人になる といわれている。また、インターネットに接続されている国は、 年代はじめにはわず か カ国だったものが、 年には カ国にまで増加している。 <図 >地域別に見たインターネットアクセス人数( 万人) °( | ]¥f ]s]¶% W | | £·¨~ | f {¶(Ö | ò ' q | <出所>「ディジタル・エコノミーⅡ」米国商務省著、室田泰弘編訳 (2)e コマースの概要 の進展により、企業は、パソコンの導入、インターネットへの接続、さらにはホーム ページでの情報公開などを行い、生産性の向上、経営効率化、顧客サービスのさらなる拡 充などを行っている。こうしたなか、,7 活用のさらなる経営革新の手法として登場し、現 在最も注目され急速に導入が進められているのが H コマースである。 eコマースは、ネットワークを利用した商取引であり、インターネットの普及により拡 大したネットワークによって近年急速に世界に浸透しており、企業間取引の %%(EXVLQHVV WR EXVLQHVV)と企業対消費者取引の %&(EXVLQHVV WR FRQVXPHU)の大きく つに分類さ れる。 ,7 <%%> ,((- :国際動向: 年 月掲載 オンラインを利用した企業間の取引は、従来 9$1(付加価値通信網)と呼ばれる専用線 等を利用した (',(電子データ交換)によって行われていた。しかし、(', ではペーパー レス化による業務の効率化は図れたものの、インフラ整備の費用、運用コストが高く、個 別の企業に合わせたソフトウェアの開発も必要であったため、中小企業が利用するには困 難があり、特定少数の取引先との間でしか利用できなかった。しかし、インターネットの 普及により、安いコストでネットワークが利用できるようになり、様々な規模の企業がネ ットを利用した商品や情報のやりとりを行うことで効率化を進めることが可能となった。 なお、最近では、H マーケットプレイスと呼ばれる複数の売り手と買い手を引き合わせる仲 介型の市場が中心となってきている。 (参考)一般的な %% 市場の例 <従来の形態> ・従来の取引方法では、調達企業は一般的に商社、あるいは系列の企業に電話、)$;、 (', などで発注を行い、商社、問屋などの中間業者を経て、調達を行っていた。この際、 既存の取引先との取引が中心であり、たとえ他の取引先がより安い価格で供給が可能で あったとしても、こうした取引先を開拓することが困難であった。 (調達側) (供給側) $ 社 中間業者等(商社、問屋等) 供給者 $ % 社 中間業者等(商社、問屋等) 供給者 % <H マーケットプレイス型の %%> ・現在 %% の主流となりつつある H マーケットプレイスは、インフォミディアリとよば れる仲介業者(市場運営者)が、市場に参加する売り手と買い手をマッチングさせ取引 の仲介を行う形態の H コマースである。H マーケットプレイスは、既存の系列を越えた多 数の売り手が存在するため、より有利な条件で調達できる可能性が高まる。 (調達側) $ 社 % 社 & 社 (供給側) 供給者 $ H コマース市場 数量・価格情報等 供給者 % 供給者 & ,((- :国際動向: 年 月掲載 <図 >日米 %% 電子商取引市場規模 è 3^é ãÄ ]¥f 注)$ 円で計算 <出所>「日米電子商取引の市場規模調査」通商産業省より作成 <%&> は、従来伝統的な通信手段である電話や )$; を利用してカタログ販売や商品の配達 等を行っていた企業が、新たな販売手法としてインターネットを取り入れたことから始ま ったといわれる。現在では、%& ビジネスは多岐にわたっており、消費者への直接販売か ら集金業務までを行う企業のホームページから、総合的なショッピング・モールまで多種 多様な商品・サービスの提供が行われている。 %& (参考)一般的な %& 市場の例 <従来の形態> ・従来の形態では、企業は商品を販売店に卸し、販売店が消費者に商品の販売を行って いた。この形態では、消費者は商品購入に当たり、販売店へ出向く必要があるほか、商 品を製造する企業にとっても、販売店に商品を卸すまでにいくつかの流通業者を経るこ とが多く、実際の在庫の把握が困難であった。 企業 中間業者(問屋等) 販売店 消費者 <%& による販売> (直接販売) ・企業が、自社のホームページを利用して、消費者に直接販売する方法。消費者は、自 ,((- :国際動向: 年 月掲載 宅にいながら買い物ができ、商品によっては自分の好みにあった仕様に容易にカスタマ イズが行えるなどのメリットがある。企業は、中間業者がいないため流通のスピード化、 販売価格の低減、適正な在庫管理が図れる。さらに企業は消費者からの声が直接届くた め、より一層消費者のニーズに答えることが可能になる。 企業 消費者 (ショッピング・モール) ・近年、多く見られるショッピング・モールでは、様々な企業の商品を取りそろえ、消 費者への販売を行っている。消費者は、 カ所のサイトから様々なジャンルの商品を購入 することが可能であるため、欲しい商品を取り扱うサイトを捜す手間が省ける。なお、 ショッピング・モールの運営者は、同サイト上に掲載する企業の広告料や取引成立時の 手数料により利益をあげている。 企業 $ ショッピング・ モール・サイト 企業% 消費者 企業 & è ^é <図 >日米 %& 電子商取引市場規模 ãÄ ]¥f 注)$ 円で計算 <出所>「日米電子商取引の市場規模調査」通商産業省より作成 ,((- :国際動向: 年 月掲載 (3)e コマース発展の背景 H コマースが近年積極的に促進されている要因にはいくつかの点があげられる。 (中間業者の排除) 売り手にとっても買い手にとっても、ネット上での直接取引となるため中間業者が不要 となる。このため、調達の効率化、スピードアップが図れ、コスト削減が可能となる。 (競争的市場からの安価な調達) H コマースでの調達は、通常入札やオークションあるいは逆オークション形式で行われる ことが多い。したがって、ネット上に多数の売り手が存在すればするほど競争効果が高ま り、買い手はより安い価格での購入が可能となる。 (新規取引先の開拓) 売り手にとっては、商品を買いたいという相手はネット上に存在しているため、新規顧 客の開拓コストが低く、世界中にその市場を広げることが可能である。また、買い手にと っても、これまで取引のなかった相手からの購入も容易に行え、仕様の複雑な部品や資機 材もネット上にその仕様を提示することで、世界中から受注を募ることができる。 (企業経営の合理化) 新規取引先や顧客を開拓する手間が少なく、事務処理量の大幅な削減や、調達部門や販 売部門の人員削減が可能である。また、取引のスピードアップにより過剰在庫を抑えるこ とが可能である。 こうした効果は市場への参加者が多ければ多いほど最大限に発揮される。前述した %% の H マーケットプレイスと呼ばれる市場形態も、多数の買い手と売り手を集約することに よって規模の経済性を発揮することができ、参加者はより有利な条件で調達が可能となる。 また、市場運営者も、通常、参加企業の会費や取引成立に対する手数料によって利益を上 げており、市場規模の拡大によりさらなる高収益をあげることを望んでいる。このため、 市場の創設者や運営者は、多数の提携先を設け、既存の枠組みを越えた業界全体を網羅す るような巨大市場を作り上げようと激しい競争を繰り広げている。 なお、,7 革命の進展や、H コマースの発展と経済への影響については、 「ディジタル・エ コノミー(米国商務省リポート)」、「ディジタル・エコノミーⅡ」(米国商務省著、室田泰 弘氏訳)が詳しい解説を行っているので参照されたい。 第2章 メジャー各社の取組み (1)国際石油産業と e コマース 第 章で概説した新たな経済の仕組みは、一般に“ニューエコノミー”とよばれる。そ れに対する用語で、従来からの伝統的な経済のしくみ、主体は“オールドエコノミー”と よばれる。最近、そのオールドエコノミーの代表の つである国際石油産業においても、 ニューエコノミーの波が押し寄せてきており、新たな融合が始まっている。特に、 年 に入ってからの、シェブロン、%3 アモコ、ロイヤル・ダッチ・シェルなどのメジャー各社 の動きが激しく、相次いで商品取引、資材調達などを行う H コマースの大型プロジェクト ,((- :国際動向: 年 月掲載 の立ち上げを発表している。 年末までには、数多くのプロジェクトが立ち上げられ、 運用が開始されると見られている。 (2)メジャー各社の e コマース メジャー各社が取り組んでいる主なプロジェクトの概要は以下の通りである。 <商品取引、資材調達のための大型 H マーケットプレイス> (D)ペトロコスム・マーケットプレイス 年 月、シェブロンはソフトウェア会社のアリバと共同で、エネルギー業界向けの %% サイト「ペトロコスム・マーケットプレイス」を設立することで合意し、 月 日よ り運用を開始している。 ペトロコスム・マーケットプレイスは、独立した中立のオンライン市場であり、同サイ トを利用した取引により、石油、天然ガス、掘削・電気機器、パイプ、バルブ、備品のほ かエンジニアリング面での専門的なサービス提供を行うことが可能である。同サイトの利 用により、エネルギー産業はコストの削減、新たな収入源の創出、競争力で優位に立つこ とが可能であるとみている。なお、また、市場は全ての参加者にオープンとし、マーケッ トの運用者であるアリバは、取引額の %を徴収することで利益を得ることになっている。 なお、同サイトには、 年 月にテキサコがパートナーとして参加することを表明し ている。 (サイト名:ZZZSHWURFRVPFRP) (E)インターコンチネンタル・エクスチェンジ 年 月、ロイヤル・ダッチ・シェル、%3 アモコ、トタル・フィナ・エルフは、欧 米の大手金融企業4社とともに「インターコンチネンタル・エクスチェンジ」の創設計画 を発表した。 インターコンチネンタル・エクスチェンジは、石油、貴金属、その他店頭商品の %% 市 場で、将来的には天然ガス、電力、合金にも取引範囲を拡大する予定。同市場は、会員制 をとらず、すべての企業にオープンなマーケットを提供し、会費、手数料はいっさい徴収 せず、取引にかかる処理費用のみ徴収する。 年における、資源関連商品の取引額は、 兆 億ドルにのぼり、従来電話など で行っていた取引をネット上で行うことにより、市場の透明性や流動性が高まるとともに、 消費者はより安い運用コストで取引が可能になる。 現在、 年第 四半期の運転開始に向け準備が進められている。 (F)石油・石油化学大手による資材調達のための H コマース ロイヤル・ダッチ・シェル、%3 アモコ、トタル・フィナ・エルフのメジャー 社を含む 石油および石油化学大手 社は、 年 月、資材調達等のための電子商取引市場を創 設することを発表した。創設メンバーはさらに複数の企業に同市場への参加を呼びかけて いる。 同市場では、油田掘削機や油送管などの売買が行われる予定。参加企業の年間資材調達 額は 億ドルにものぼり、資材調達の大部分を同サイトに移行することで大幅なコス ト削減が見込めるとしている。なお、サイト名は未定。 ,((- :国際動向: 年 月掲載 <船舶関連の H コマース> (G)オーシャンコネクト・コム オーシャンコネクト・コムは、インターネットを利用した船舶用品の H コマース市場の 開設・運営を行うサイトであり、%3 アモコの %所有子会社である %3 マリン、ロイヤ ル・ダッチ・シェルの %子会社シェルマリン、テキサコとシェブロンの船舶燃料、潤滑 油を取り扱う合弁会社 )$00()XHO $QG 0DULQH 0DUNHWLQJ)の 社により 年 月 に設立された。 海運会社など船舶燃料の買い手は、現在ブローカーなどを通じて船舶燃料を購入し、ブ ローカーが石油会社に電話や )$; で手配をしているが、同市場を利用することにより、在 庫確認や見積もりがオンライン上で行え、大幅なコスト削減と効率化が図れると見られて いる。 同社は、オーシャンコネクト・コムは独立したオープンな市場で、その透明性が特徴で あると述べている。現在、さらなる出資者および市場への参加者を集めており、 年第 4 の運用開始を目指している。運用開始後は、当面船舶燃料油の売買のみを取り扱い、そ の後、船舶用品や関連サービスなどに取扱商品を拡大し、最終的には船舶用品の総合ショ ッピングモール・サイトを目指している。 (サイト名:ZZZRFHDQFRQQHFWFRP) (H)レベルシー・コム %3 アモコ、ロイヤル・ダッチ・シェル・グループ、穀物商社カーギル、船舶ブローカー クラークソンズの 社は、 年 月に海上貨物を対象としたオンライン取引のサイトを 開設すると発表した。運用開始は 年第 4 の予定。レベルシー・コムでは、貨物管理、 オンラインチャーター、貨物デリバティブなどの提供を行う。 レベルシー・コムではさらに多くの企業へ戦略的パートナーとしての参加を呼びかけて いる。 (I)バンカーステム バンカーステムは、英国のテレマリン社が運営する船舶用燃料油のオンライン取引サイ トである。同サイトでは、ユーザー登録を行えば、船舶用燃料油の価格情報の閲覧や取引 を無料で行える。 年 月にエクソン・モービルの子会社である (00)(([[RQ0RELO 0DULQH )XHOV)が参加している。(00) は、世界最大の船舶用燃料油の供給者で、年間 万トンの供給を行っている。 同社は、バンカーステムの利用により、市場の透明性が高まり、コストが削減されるこ とによって全ての船舶燃料油産業が利益を得るだろうと述べている。 (サイト名:ZZZEXQNHUZRUOGFRP) <情報の取引を行う %% 市場> (g)アップストリームインフォ・コム 年 月、シェブロン、('6、5D\WKHRQ、インフォメーション・ストアの 社は、 石油・ガス会社向けのアップストリームインフォ・コムの設立を発表した。 近年、石油産業の上流部門では地理的条件の悪化などに伴い、開発に必要な技術的な情 報が増加、複雑化してきており、こうした情報の収集や分析のために年間 億ドル以上 のコストが支払われているともいわれている。アップストリームインフォ・コムでは、上 ,((- :国際動向: 年 月掲載 流部門における多量で複雑な技術的なビジネス情報の管理や、情報提供者とその利用者の 間で取引の仲介を行う。情報提供者は、市場に参加する多くの利用者に情報販売網を広げ ることが可能になり、利用者もこうした情報を素早く、低コストで利用可能になる。同社 によれば、アップストリームインフォ・コムの利用により、実際に %のコスト削減、% 以上の生産性の向上、%のサイクルタイムの短縮が図れた例があるという。 なお、同サイトのサービスの利用料金については、それぞれ利用に応じて支払うことに なっている。 (サイト名:ZZZXSVWUHDPLQIRFRP) (K)ペトロコア・コム ペトロコア・コムは、 年 月に米国コンサルタント会社プライスウォーターハウス クーパーズ社によって設立が発表された、石油・ガスの上流部門の情報取引を仲介する企 業である。 現在、石油・ガス会社では、上流部門に散らばる油田操業者、-9 のパートナー等に情報 を提供する際に、電話や )$; 等で個々に連絡を取っている。ペトロコアでは、石油・ガス 会社等の情報提供者が、インターネット上の同サイトに情報を提供し、利用者はそこにア クセスすることで、その情報を利用することが可能となる。利用者は大幅な効率化とコス ト削減が可能になる。 同社によれば、同サービスの利用によりペーパレス化や従来の専用線等のインフラが不 要になることなどから大幅なコスト削減が可能になると見ている。 なお、同サイトは会員制であり、会員登録の際には情報提供者か利用者かを区別して登 録する。すでに、%3 アモコとシェブロンが情報提供者として参加している。なお、現在は 試用期間中のため登録料が無料となっている。 (サイト名:ZZZSHWURFRUHFRP) <コンビニエンスストアの資材・商品調達市場> (L)リテイラーズ・マーケット・エクスチェンジ・コム シェブロン(業界 位のコンビニ・チェーンを持つ) 、ウォルマートの物流子会社マクレ ーン、ソフトウェア会社オラクルの 社は、 年 月、コンビニおよび小規模小売業者 向けの商品および資材の共同調達を行うオープンな市場であるリテイラーズ・マーケッ ト・エクスチェンジの構築を発表した。同市場では、シェブロンがビジネスモデル、オラ クルが技術、マクレーンが物流網をそれぞれ提供し、当面はマクレーンのコンビニエンス ストア、シェブロンの 66 が利用する。 リテイラーズ・マーケット・エクスチェンジによると、同市場の利用により、売り手側 は、多くの買い手へアクセスが容易になること、カタログ制作や配送コストが削減できる などのメリットがある。また、小売り事業者にとっても 時間の経営が容易になること、 在庫の管理等が容易に行えるなどのメリットがある。 現在、 年夏の運用開始向け、さらなる資本参加者、市場への参加者を募集しており、 他業種へのサービス拡大を目指している。 (サイト名:ZZZ50;FRP) メジャーがこうした H コマースプロジェクトへ積極的に参加する理由は、前述の通り大 幅なコスト削減が見込めることがもっとも大きい。ゴールドマンサックスの調査によれば、 インターネットを利用した調達による、石油産業のコスト削減効果は年間 億から ,((- :国際動向: 年 月掲載 億ドルにも達し、上流部門だけで見ても年間 億から 億ドル(石油換算で バレルあ たり ∼ ドルのコスト削減)になると見られている。 メジャーにとって、H コマースによるコスト削減等の効果は、全ての企業に対しオープン なマーケットでは、当初から設立に関わることなく、市場に参加するだけでコスト削減等 のメリットを享受する事ができると考えられる。にもかかわらず、メジャーは、プロジェ クトの設立や資本参加を積極的に行っている。彼らのこうした動きは、H コマースの新たな ビジネスモデルを確立し、多くの企業が市場に参加することによる高収益を期待している ためと思われるが、大規模な H マーケットプレイス型のプロジェクトでは、メジャーはわ ずかな権益しか持っていないうえ、インターコンチネンタル・エクスチェンジのように会 費や手数料を一切徴収しないというプロジェクトも存在する。明確な理由は不明であるが、 メジャー各社は積極的にプロジェクトの設立に関わることで、H コマース市場でのブランド 力を向上し、競争で優位に立つことがねらいではないかと思われる。 (3)プロジェクトに見るメジャー各社ごとの特徴 H コマースに対するメジャー各社の取組みは様々である。こうしたなか最も積極的な活動 を行っていると思われるのがシェブロンである。 シェブロンの会長兼最高責任者(&(2)デイブ・オラリー氏は、ソフトウェア会社のア リバと提携の際に、 「エネルギー業界は、インターネットと H コマースにより変貌しつつあ り、当社はビジネスプロセスの効率化を促進するために、こうした技術の導入を積極的に 進めている」と発表し、その後もシェブロンは H コマースサイトの立ち上げに積極的なイ ニシアティブをとっている。あるアナリストによれば、シェブロンの本拠地であるサンフ ランシスコの隣にシリコンバレーがあり、こうした地理的な条件によってシェブロンがイ ンターネットの潜在力を十分認識していることが影響しているのではないかと分析してい る。 ロイヤル・ダッチ・シェルや %3 アモコもまた、シェブロンと並び H コマース戦略を積極 的に推進している企業である。両者は、インターコンチネンタル・エクスチェンジやオー シャンコネクト・コム等、いくつかのプロジェクトで協力を行っている。 ロイヤル・ダッチ・シェルは、 年 月に米国で H コマース事業を手がけるコマース・ ワンとの提携を発表した。合併によるコスト削減へのアプローチを行っていない同社では、 H コマースによるコスト削減策を重要なアプローチと位置づけており、 年 月に発表 した 年までの 億ドルのコスト削減計画の一環であるとしている。 %3 アモコの H コマースへのアプローチは積極的かつ多様である。同社は、インターコン チネンタル・エクスチェンジなどの大型プロジェクトを進める一方で、様々なインターネ ットベンチャー企業への投資を行っている。これらのなかには、米国の電力・ガス取引所 であるアルトラ・エナジー・テクノロジー、グリーンエネルギーのオンライン販売を行う グリーンマウンテン・コム、オンラインによる自動車販売を行う英国のワンスウープ・コ ム、化学品の取引を行うケムコネクト・コムなどが含まれている。 テキサコもまた、H コマース戦略を積極的に進めている。しかし、これまでの動きを見る 限りでは、同社は H コマースに対して積極的なイニシアティブはとらず、シェブロンが進 めているペトロコスムスへの参加に見られるように、他の企業が着手したプロジェクトへ の資本提携等を行うといった傾向があるように思われる。 一方で、エクソン・モービルは H コマースに対して今のところ積極的な姿勢をとってい ないように思われる。同社は、船舶用燃料の取引を行うバンカーステムに今年の夏から参 加を予定しているだけで、ペトロコスムスやインターコンチネンタル・エクスチェンジと いった大型のプロジェクトに参加していない唯一のメジャーである。エクソン・モービル が H コマースに対し積極的でない理由は、いくつか考えられる。エクソン・モービルはど ,((- :国際動向: 年 月掲載 ちらかといえば「保守的」であり、従来からあるビジネスモデルをその操業技術で大規模 に改良していくことのほうにより高い能力を発揮するケースが多いことを指摘する向きも ある。また、長期的に見れば、その企業規模から考えると H コマース市場を運営する側か ら参加へのアプローチがくることが予測され、彼らから積極的にこうした市場を作り上げ る必要がないこと等も影響していることが考えられる。 なお、既存のプロジェクトへ参加しないことについては、ライバル社との共同事業には 興味がなく、もし H コマースによる調達を始めるとしても、独自の市場を希望するものと 見る見解もある。 おわりに メジャー各社は、最近の原油価格の高騰とこれまでのコスト削減効果により、 年に 入ってからも大幅な業績回復を続けている。とはいえ、下流部門での収益悪化など改善す べき点はまだまだ多い。より一層のコスト削減を図るため、メジャー各社は積極的に H コ マースへ取り組んでいるが、国際石油産業における H コマースはここ数ヶ月に始まったば かりであり、どういった H コマースが成功し、新たなビジネスモデルとして定着するかは 全くわからず、個々のプロジェクトに対する評価は現時点では難しい。 H コマースがコスト削減等のアプローチとして効果的に働くためには、スケールメリット の発揮が重要なポイントでもあり、今後多数立ち上がるであろう同様なプロジェクトのう ち、実際に残るのは から つだけであろうともいわれている。メジャーを含めた各企業 とも、試行錯誤の取組みのなかで、激しい競争が進められて行くであろう。 また、H コマースでは、仲介業者抜きでの取引が主流となり、売り手が買い手と直接向き 合うこととなる。ロイヤル・ダッチ・シェル、%3 アモコの両者はともに、買い手のニーズ にいかに答えていくかが重要であるという認識で一致している。こうしたことからも、H コ マースを進めていく上では、顧客のニーズに即応できる新たな社内プロセスの構築も重要 な鍵となりそうである。 いずれにせよ、エネルギー市場が急速に変化し、世界的な規模での H コマースが進展す るにあたって、資本力、技術力に優れ、世界中で経済活動を行っているメジャーが主導的 な役割を果たすことは非常に重要であり、今後の動向が大いに注目される。