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2.総 合 教 育 科 目 B
2.総 合 教 育 科 目 B 科 目 名 (開講期 曜日・時限 クラス) 単 位 数 英文科目名 ②は第2部 ①は第1部 表示が無い場合は第1部 授 業 担 当 者 人間と知識・思想 論理学入門 (後期 火・ 4 全) 2 単位 Introduction to Logic 文学研究科 美濃 正 第11課 命題論理における「真理の木」の方法Ⅱ ●科目の主題 論理学は推論とその原理について研究する学問であ 第12課 命題論理の健全性と完全性 る。正しく推論できる能力がなければ、分野を問わず、 第13課 述語論理をちょっとだけⅠ どんな学問的研究も適切に行うことはできないし、どん 第14課 述語論理をちょっとだけⅡ な学問を習得することもできないだろう。そのように勉 第15課 全体のまとめ 学を志す者なら誰にとっても重要な推論能力を養い、推 ●評価方法 論の正しさに対する鋭敏な感覚を磨くために、論理学の 2回程度の小テストと2回程度のレポート(主題され 基礎を学習することを主題とする。 た演習問題に対する解答を1週間後にレポートして提出 ●授業の到達目標 する)の点数にもとづいて成績評価を行う予定。期末試 この科目では、現代論理学の最も基礎的な部分である 「命題論理」を完全に習得するとともに、さらに進んだ 「述語論理」の基礎的部分についての理解をもつことを 験は行わない予定。出席点は考慮しない。 ●受講生へのコメント 学生諸君の理解を促進するため、小テストの答案、 も目標とする。 レポートはすぐに採点し、原則として1週間後に返却す ●授業内容・授業計画 る。出席はとらないが、欠席を重ねて小テストを受けそ 第1課 論理学とはどんなものか こねたり、レポート提出を怠ると、単位修得がかなり難 第2課 論理的結合子の導入と説明Ⅰ しくなるので要注意。 少しでも分からないことがあったら遠慮せずに質問す 第3課 論理的結合子の導入と説明Ⅱ る積極性がこの科目では特に望まれる。 第4課 結合子の特性とシェファー・ストローク また、小テスト・レポートの採点を短時間で行わなけ 第5課 真理表 第6課 推論の妥当性と真理値分析Ⅰ ればならないので、受講者数は100名程度に制限する。 第7課 推論の妥当性と真理値分析Ⅱ ●教 材 R. ジェフリー『形式論理学』 (産業図書)を教科書と 第8課 恒真命題(トートロジー) して用いる(参考図書は授業中に紹介) 第9課 推論の妥当性と文集合の矛盾性 第10課 命題論理における「真理の木」の方法Ⅰ 心理学への招待 (前期 月・ 3 全文) 2 単位 Introduction to Psychology 文学研究科 佐伯 大輔 る。 ●科目の主題 多くの人たちは、心理学を人の心を見抜く学問と ●授業の到達目標 いった理解をしているかもしれない。そうした理解が必 日常生活の場面で人がなぜそのような行動をするのか ずしも正しくないことが、この講義を受講することに ということに対する答えを、受講生自身が見出すことが よって明らかになるだろう。もちろん、心理学は人の性 できるようになることを目標とする。 格を判定したり、人の行動を予測したりもするが、それ ●授業内容・授業計画 らのことができるのは、心理学が人や動物の行動の基礎 となる心の働きを科学的に研究する学問だからである。 この授業では、主に以下に示した章立てに従って、心 理学分野の全般にわたり、講義形式で授業を進める。 心とは感覚、知覚、認知、感情、欲求、学習、記 ⑴ 心理学の歴史 憶、言語、思考、性格、知能などのことである。心理学 ⑵ 心理学の方法 者は様々なアプローチの仕方によって、これらがどのよ ⑶ 感覚 うに生じ、その結果どのような行動として現れるか、あ ⑷ 知覚 るいは逆に、行動の結果として心がどう影響を受けるか ⑸ 子どもの発達 を問題にしている。 ⑹ 青年期以降の発達 この講義は、心に対する知識を獲得してもらうと同時 に、心理学への理解を深めてもらうことを主題としてい −48− ⑺ 学習 ⑴:古典的条件づけ ⑻ 学習 ⑵:オペラント条件づけ 人間と知識・思想 ・同じ心理学であっても、研究分野によって、研究者の ⑼ 記憶 ⑽ 思考と言語 視点、研究対象、研究方法は異なる。受講生には、心 ⑾ 動機づけと情動 理学における様々な考え方を習得し、幅広く知識を身 につけることを期待する。 ⑿ パーソナリティ ・心理学の研究方法への理解を深めてもらうため、授業 ⒀ 知能 ⒁ 社会心理 時間内に種々の質問紙調査に協力を求めたり、授業 ⒂ 心理臨床 時間外に行われる実験への参加を要請する場合があ ●評価方法 る。受講者は、これらに積極的に参加、協力してほし 主として平常点と学期末に行う試験の成績に基づき評 い。 価する。 ●教 材 ●受講生へのコメント 参考書:伊藤正人「行動と学習の心理学:日常生活を理 解する」(昭和堂 2005) ・授業中の私語、携帯電話の操作は厳禁とする。 心理学への招待 (前期 木・ 4 全文) 2 単位 Introduction to Psychology 非常勤 宮崎 弦太 ●授業内容・授業計画 ●科目の主題 多くの人たちは、心理学を人の心を見抜く学問と 心理学の各領域からトピックを精選して講義する。内 いった理解をしているかもしれない。そうした理解が必 容は、およそ以下のとおりである。各テーマに2回程度 ずしも正しくないことが、この講義を受講することに 充てる予定である。ただし、授業の進捗状況により、そ よって明らかになるだろう。もちろん、心理学は人の性 れぞれのトピックの順序を変更したり、内容を一部省略 格を判定したり、人の行動を予測したりもするが、それ する可能性がある。 らのことができるのは、心理学が人や動物の行動の基礎 1.心の捉え方の変遷:心理学の歴史と方法 となる心の働きを科学的に研究する学問だからである。 2.心の働きの生物学的基盤 心とは感覚、知覚、認知、感情、欲求、学習、記 3.進化と心 憶、言語、思考、性格、知能などのことである。心理学 4.心の発達 者は様々なアプローチの仕方によって、これらがどのよ 5.意識と無意識 うに生じ、その結果どのような行動として現れるか、あ 6.対人関係と社会のなかの心の働き るいは逆に、行動の結果として心がどう影響を受けるか 7.心の健康と精神疾患 を問題にしている。 ●評価方法 この講義は、心に対する知識を獲得してもらうと同時 に、心理学への理解を深めてもらうことを主題としてい 期末試験と平常点で評価する。 ●受講生へのコメント 心理学の研究方法への理解を深めてもらうため、授業 る。 時間内に種々の質問紙調査に協力を求めたり、授業時間 ●授業の到達目標 日常生活の場面で人がなぜそのような行動をするのか 外に行われる実験への参加を要請する場合もある。受講 ということに対する答えを、受講生自身が見出すことが 者は、これらに積極的に参加、協力してほしい。 できるようになることを目標とする。 ●教 材 教科書:特に使用しない。適宜プリントを配布。 −49− 人間と知識・思想 心理学への招待 (前期 火・ 3 全理) 2 単位 Introduction to Psychology 文学研究科 池上 知子 義する。なお、講義内容に対する理解を深めるため、適 ●科目の主題 多くの人たちは、心理学を人の心を見抜く学問と 宜、心理検査や心理実験を実施し、ビデオ教材等も活用 いった理解をしているかもしれない。そうした理解が必 する。内容は、およそ以下のとおりである。各テーマに ずしも正しくないことが、この講義を受講することに 2回程度充てる予定である。 よって明らかになるだろう。もちろん、心理学は人の性 1.心理学とは何か:科学と常識のあいだ 格を判定したり、人の行動を予測したりもするが、それ 2.心と体を結ぶもの:脳科学と心理学 らのことができるのは、心理学が人や動物の行動の基礎 3.精神疾患の脳生理 となる心の働きを科学的に研究する学問だからである。 4.心と身体疾患 心とは感覚、知覚、認知、感情、欲求、学習、記 5.行動異常と心の力学 憶、言語、思考、性格、知能などのことである。心理学 6.心を動かす源泉:欲求と感情 者は様々なアプローチの仕方によって、これらがどのよ 7.心の個人差と形成因 うに生じ、その結果どのような行動として現れるか、あ ●評価方法 るいは逆に、行動の結果として心がどう影響を受けるか 期末試験と平常点で評価する。 ●受講生へのコメント を問題にしている。 この講義は、心に対する知識を獲得してもらうと同時 心理学の研究方法への理解を深めてもらうため、授業 に、心理学への理解を深めてもらうことを主題としてい 時間内に種々の質問紙調査に協力を求めたり、授業時間 る。 外に行われる実験への参加を要請する場合もある。受講 ●授業の到達目標 者は、これらに積極的に参加、協力してほしい。 日常生活の場面で人がなぜそのような行動をするのか ●教 材 ということに対する答えを、受講生自身が見出すことが 教科書:特に使用しない。適宜プリントを配布。 できるようになることを目標とする。 参考書:無藤隆他編『よくわかる心理学』(ミネルヴァ 書房) ●授業内容・授業計画 心理学における基本的で身近なトピックを精選して講 心理学への招待 OHP、ビデオ、DVDを使用する予定。 (前期 金・ 1 全理) 2 単位 Introduction to Psychology 非常勤 恒松 伸 ●授業の到達目標 ●科目の主題 多くの人たちは、心理学を人の心を見抜く学問と 日常生活の場面で人がなぜそのような行動をするのか いった理解をしているかもしれない。そうした理解が必 ということに対する答えを、受講生自身が見出すことが ずしも正しくないことが、この講義を受講することに できるようになることを目標とする。 よって明らかになるだろう。もちろん、心理学は人の性 ●授業内容・授業計画 格を判定したり、人の行動を予測したりもするが、それ 本講義では、以下を主要な内容とし、それぞれ1∼2 らのことができるのは、心理学が人や動物の行動の基礎 コマ程度を目安として、講義を進める予定である(ただ となる心の働きを科学的に研究する学問だからである。 し進捗状況により、講義の順番の変更や一部の省略もあ 心とは感覚、知覚、認知、感情、欲求、学習、記 りうる) 。 憶、言語、思考、性格、知能などのことである。心理学 1.はじめに:心理学とはどのような学問か 者は様々なアプローチの仕方によって、これらがどのよ 2.心理学の歴史:意識から行動への研究対象の変遷 うに生じ、その結果どのような行動として現れるか、あ 3.行動の原因はどこにあるか:心的過程と外的環境 るいは逆に、行動の結果として心がどう影響を受けるか 4.行動の変化に影響する要因:学習・成熟・その他 を問題にしている。 5.行動とは何か:定義と分類 この講義は、心に対する知識を獲得してもらうと同時 6.行動のさまざまな原理 ⑴:強化・弱化 に、心理学への理解を深めてもらうことを主題としてい 7.行動のさまざまな原理 ⑵:消去・復帰・派生 る。 8.行動のさまざまな原理 ⑶:罰の使用の問題点 −50− 人間と知識・思想 9.選択行動:個体はなぜ衝動的な選択を行うのか 理する。最後に私たちの日常生活と密接に関連した個体 10.消費行動:個体の消費に影響を及ぼす要因は何か の衝動的選択や消費行動の諸問題について考えていく。 講義は、以下の指定教科書を適宜参照しながら、配布 ●評価方法 主として、期末試験の成績により評価する。詳しくは 資料を主要な教材として進められる。なお、この資料は 第1回目の講義で説明するので、履修予定者は必ず出席 当日の講義内のみで入手可能であるため、講義内容を十 すること。 分に理解するには、毎回の出席が必要である。 ●受講生へのコメント ●教 材 本講義では、まず、心理学の研究対象と歴史および行 教科書:伊藤正人「行動と学習の心理学―日常生活を理 解する」(昭和堂 2005) 動の原因について考え、心と行動の関係性や両者の理解 の仕方について概観する。次に、行動に影響を与える諸 参考書:小野浩一「行動の基礎―豊かな人間理解のため に」(培風館 2005) 要因と、行動の繰り返しを規定するさまざまな原理を整 心理学への招待 (前期② 月・ 1 全) 2 単位 Introduction to Psychology 文学研究科 山 祐嗣 適宜、心理検査や心理実験を実施することもある。内容 ●科目の主題 多くの人たちは、心理学を人の心を見抜く学問と は、おおよそ以下の通りである。各テーマに1回または いった理解をしているかもしれない。そうした理解が必 2回程度充てる予定である。 ずしも正しくないことが、この講義を受講することに 1.心理学の歴史:哲学から科学へ よって明らかになるだろう。もちろん、心理学は人の性 2.脳科学と心理学 格を判定したり、人の行動を予測したりもするが、それ 3.感覚と知覚 らのことができるのは、心理学が人や動物の行動の基礎 4.学習 となる心の働きを科学的に研究する学問だからである。 5.記憶と思考 心とは感覚、知覚、認知、感情、欲求、学習、記 6.精神の発達 憶、言語、思考、性格、知能などのことである。心理学 7.動機づけと情動 者は様々なアプローチの仕方によって、これらがどのよ 8.対人関係と集団 うに生じ、その結果どのような行動として現れるか、あ 9.性格 るいは逆に、行動の結果として心がどう影響を受けるか 10.精神分析・分析心理学 を問題にしている。 ●評価方法 この講義は、心に対する知識を獲得してもらうと同時 主として学期末に行う試験の成績にもとづき評価す に、心理学への理解を深めてもらうことを主題としてい る。 る。 ●受講者へのコメント 講義形式の授業ではあるが、参加型の授業を目指した ●授業の到達目標 日常生活の場面で人がなぜそのような行動をするのか いため、授業時間中に受講者に発言を求めることが多く ということに対する答えを、受講生自身が見出すことが なる。受講者は、これらに積極的に参加、協力してほし できるようになることを目標とする。 い。 ●授業内容・授業計画 ●教 材 心理学における基本的で身近なトピックを精選して 講義する。なお、講義内容に対する理解を深めるため、 −51− 教科書:山祐嗣他編『基礎から学ぶ心理学・臨床心理 学』 (北大路書房) 。 人間と知識・思想 行動と学習の心理 (後期 木・ 4 全) 2 単位 Psychology of behavior and learning 非常勤 空間 美智子 5.対応法則と一般対応法則 ●科目の主題 ヒトを含む動物がおこなうすべての行動は、二者択 6.セルフコントロールと衝動性 一の選択行動として捉えることができる。Herrnstein 7.報酬の価値割引 (1961)により発見された対応法則(the matching law) 8.リスク選択とプロスペクト理論 を出発点とする選択行動研究は、さまざまな選択場面に 9.ゲーム理論:囚人のジレンマゲーム おけるヒトや動物の選択行動がどのような要因により影 10.選択行動研究と行動経済学 響され、また、そこにどのような行動の規則性が見られ 11.選択行動研究と行動生態学 るのかを問題としてきた。本講では、対応法則の発見を 12.選択行動研究の今後 通して、ヒトを含む動物の意志決定に関する1つの研究 13.日常場面に見る行為の原理 領域として確立した選択行動研究の最先端を紹介する。 14.教育、臨床現場における適用 ●授業の到達目標 15.まとめ 心理学の一分野である学習心理学のうち、オペラント 条件づけの理論とその展開、特に、選択行動研究の成果 について理解することを目標とする。また、このような ●評価方法 期末試験と平常点で評価する。 ●受講生へのコメント 研究を通して得られた知見と私たちの日常生活における 心理学の研究方法への理解を深めてもらうため、授業 さまざまな事象との関連について理解することを目標と 時間内に質問紙調査に協力を求めたり、授業時間外に実 する。 験への参加協力を要請する場合もある。受講者は、これ ●授業内容・授業計画 らに積極的に参加、協力してほしい。授業中の私語は厳 1.行動的接近法 禁とする。 2.オペラント条件づけの基礎 ●教 材 3.オペラント条件づけの理論 教科書:伊藤正人 2005 「行動と学習の心理学:日常生 活を理解する」(昭和堂) 4.オペラント条件づけと選択行動研究 対人行動の影響と意味 (前期 月・ 3 全) 2 単位 Various Effects and Meanings of Interpersonal Behavior 大学教育研究センター 渡邊 席子 ●授業の到達目標 ●科目の主題 この授業で主に取り上げるのは、社会心理学の中で この授業の到達目標は、①説得的コミュニケーション も特に、説得的コミュニケーションと呼ばれる分野に関 に関する学術的知見の基礎を理解すること、②各種課題 することがらである。説得的コミュニケーションとは、 を通じて、日常的な対人行動と説得的コミュニケーショ 人々の態度や行動を変化させることを目的とする複合的 ンに関する学術的知見とを具体的に結びつけて理解でき なコミュニケーションのことである。 るようになること、の2点である。 この授業を通じて、受講生には、日常的な対人場面に ●授業内容・授業計画 おいてさまざまな説得的コミュニケーション技法が用い この授業では、個人ワークのみならずグループワーク られていることを知っていただくとともに、それらの技 を多用する。説得的コミュニケーションに関連する講義 法によってどのようなプラスの影響あるいはマイナスの を行いつつ、日常的な問題をからめた各種課題作成(小 影響がもたらされるかを理解していただきたい。特に、 話、短編演劇シナリオ、セールス戦略など)に取り組 実際の対人行動場面においてこれらの技法がわれわれの む。授業計画は以下のとおりである。 生活にマイナスの影響を及ぼす形で利用される可能性を なお、授業期間中に2度、授業内容の理解度チェック 知り、そのような場面において己の身を守るために何が をかねた小テストを行う。 必要かを自覚し、日常的・積極的な防衛意識・行動へと 第1回:ガイダンス+導入課題 結びつけるきっかけとしてこの授業を活用していただき 第2∼6回:ユニット1=説得的コミュニケーション に関する講義、および各種課題作成 たい。 第7∼11回:ユニット2=説得的コミュニケーション −52− 人間と知識・思想 単位認定の最低ラインである。 に関する講義、および各種課題作成 第12∼14回:ユニット3=ここまでに扱った説得的 ・授業の進行に付随して課題・宿題を提示し、それら コミュニケーション技法を用いた大規模グ を解いていることを前提として毎回の授業を進行す る。 ループワーク、相互評価 ・授業は3つのユニットから成っている。特に重要な回 第15回:まとめと総合自己評価 ●評価方法 を欠席した場合、以降の授業に参画できないこともあ ⑴ 平常点(学ぼうとする意思・態度・行動、各種 る。 課題・宿題・報告書等の内容、タイムマネジメ ・誰かに答えを教えてもらう受け身の姿勢ではなく、 ントができていたか、授業期間中に行う小テス 「自ら学び、身に付け、掴みとる」意思を持つ学生の ト、自己評価等) :80点満点 受講を強く希望する。 ⑵ 各種課題作成に対する学生同士の相互評価:20点 ●教 材 満点 ・教科書は用いない。必要な教材は授業中に配布する。 →合計100点満点 ・なお、教材となりうる素材を受講生自身が集めて持ち 寄る場合もある。 ●受講生へのコメント ・「全15回のうち、13回以上の授業への誠実な参画」が ゲームで学ぶ社会行動 (後期 木・ 3 全) 2 単位 Learning about Social Behavior with Experimental Games 大学教育研究センター 渡邊 席子 の基礎講義、教材作成、相互評価、自己評 ●科目の主題 価) この授業は、自分のキャリア(=労働を含む「生き 方」全般)について「自分で考える」授業である。より 第11∼15回:ユニット2=意思決定ゲーミング・シ 具体的には、キャリアカウンセリング理論の基礎を学ぶ ミュレーションを通じて「自分」と「社 とともに、ゲーミング・シミュレーション教材作成、 会」を知る(ゲーミング・シミュレーション および、意思決定ゲーミング・シミュレーションへの参 への参画、討論、相互評価、自己評価)、ま とめと総合自己評価 画を通じて、受講生それぞれが自分を取り巻く環境(世 界/社会)との折り合いをつけ、いかにして自分のキャ ●評価方法 リアを発達させるために行動するか/しないかについて ⑴ 平常点(学ぼうとする意思・態度・行動、各種 少し時間をかけて考え、かつ、考えたことを頭の中だけ 課題・宿題・報告書等の内容、タイムマネジメ にとどめず、自分の言葉で説明し、表して確認する機会 ントができていたか、授業期間中に行う小テス を提供することを目指す授業である。 ト、自己評価等) :80点満点 ⑵ 各種課題作成に対する学生同士の相互評価:20点 ●授業の到達目標 満点 この授業の到達目標は、①キャリアカウンセリング →合計100点満点 理論の基礎を理解すること、②各種課題を通じて自分の キャリアについて分析・考察し、自身を取り巻く環境と ●受講生へのコメント 折り合いをつけながら生きる自立した人となるために必 ・「全15回のうち、13回以上の授業への誠実な参画」が 要なことを自分なりの視点から見出すこと、の2点であ 単位認定の最低ラインである。 ・授業の進行に付随して課題・宿題を提示し、それら る。 を解いていることを前提として毎回の授業を進行す ●授業内容・授業計画 この授業では、個人ワークのみならずグループワーク る。 を多用し、ゲーミング・シミュレーションを介して、い ・授業は2つのユニットから成っている。特に重要な回 かに自身のキャリアを発達させるために行動するか/し を欠席した場合、以降の授業に参画できないこともあ る。 ないかを問う。授業計画は以下のとおりである。 なお、授業期間中に2度、授業内容の理解度チェック ・「自分と向き合うこと」が求められる授業である。自 をかねた小テストを行う。 分と向き合うことを通じての優れた側面の発見はも 第1回:ガイダンス+導入課題 ちろんのこと、不十分な点や曖昧な点、迷いや恐れ 第2∼10回:ユニット1=大学生向けキャリアデザイ 等々も含めて自らの今の姿を受け止める準備ができて ン・ゲーミング・シミュレーション教材をつ いるかどうか、よく見極めたうえで受講するかどうか くる(キャリアカウンセリング理論について を決めていただきたい。 −53− 人間と知識・思想 ●教 材 ・教科書は用いない。必要な教材は授業中に配布する。 ・なお、教材となりうる素材を受講者自身が集めて持ち 寄る場合もある。 日常の中の不思議を探す 演習 Seminar: Let s find out wonders in our daily life (前期② 木・ 2 全) 2 単位 (後期① 火・ 3 全) 2 単位 大学教育研究センター 渡邊 席子 生「自らが」掴み、自分なりの思考方法を見出すための演 ●科目の主題 本演習は、少人数によるactive learning(学生による 習である。専攻・学年の異なる他受講生との交流の中で、 討論、発表、グループワーク等を伴う形式)を介して、 自らの立ち位置を確かめつつ、柔軟に思考し、失敗を恐 われわれの周りにある身近な情報や、日々置かれている れずに試行錯誤してみる積極性と行動力が求められる。 状況のもつ意味を、当たり前と受け流さず、鵜呑みにせ ●評価方法 ず、今一度自分の頭で考え捉えなおしながら、総合的思 ⑴ 課題への取組みに対する評価(教員・学生それぞ れからの評価) :60点満点 考力(=実践を伴う筋の通ったものの考え方)の確立を ⑵ 参画への意思・態度・行動(積極的に意見を述べ 目指す科目である。 たか、各種課題・宿題・報告書等の内容、授業 ●授業の到達目標 本演習の主な到達目標は、受講生各自が自分に合った 目標達成にかかる具体的な問題解決とその結果 総合的思考力の基礎を確立することである。あわせて、 に対する自己評価、タイムマネジメントができ 他者に「いい質問」をし、創造的な議論・討論の場を作 ていたか等) :40点満点 →合計100点満点 るエンハンサーとしての役割を果たせるようになること を副次的目標とする。 ●受講生へのコメント ●授業内容・授業計画 ・受講人数の上限を12名とする。 本演習では、個人またはグループで各種active learning課題に取り組む。演習のスケジュールは以下の ・「全15回のうち、13回以上の演習への誠実な参画」が 単位認定の最低ラインである。 ・演習の進行に付随して課題・宿題を提示し、それら とおりである。 を解いていることを前提として毎回の演習を進行す 第1回:ガイダンス+導入課題 第2∼6回:演習1(時事問題に関する討論、質疑応 る。 ・誰かに答えを教えてもらう受け身の姿勢ではなく、 答、逐語録に基づく自己評価、相互評価) 第7∼10回:演習2(「社会ではたらくこと」に関 「自ら学び、身に付け、掴みとる」意思を持つととも する調査、発表/討論、質疑応答、相互評 に、極度に失敗を恐れることなく試行錯誤してみる積 価、自己評価) 極的を有する学生、ないしは、現時点の自分の力量に 第11∼14回:演習3(解きたい問題を発見し、本質を 見極める調査、発表/討論、相互評価、自 不足を感じ、もっと学ぶ力を伸ばしたい/積極性を持 ちたいとの強い意志のある学生の受講を希望する。 ●教 材 己評価) ・教材は演習中に適宜配布される。なお、教材となりう 第15回:まとめと総合自己評価 本演習は、単なる発表・討論スキルアップ講座ではな い。自立した大人に資する総合的思考力とは何かを受講 教育と発達の心理学 る素材を受講生自身が調査の上、集めて持ち寄る場合 もある。 (前期 火・ 2 全) 2 単位 Psychology on Education and Development 大学教育研究センター 西垣 順子 ●授業の到達目標 ●科目の主題 人間の発達に関する3人の研究者の発達理論とその理 ① ピアジェ、ヴィゴツキー、田中昌人の3名の人間 論の成立背景を学びながら、 「人間の発達とは何か」 「す 発達理論のエッセンスとその成立背景を理解す べての人の発達する権利を保障するために教育はどのよ うな役割を果たすのか」という問題について考えます。 −54− ること ② 自分自身の発達過程を多面的に分析することを通 人間と知識・思想 じて、現代社会における教育と発達に関わる諸 評価します(配点はおおよその目安です。5点程度は変 問題について、より広い視野から検討できるよ 動する可能性がありますが、初回の授業の際に確定した うになること 数値を出します) 。60点以上が合格。 ③ 「発達する権利」について理解し、その権利が保 障される社会の創出に参画する市民として、自 ●受講生へのコメント 総合科目においては、専門知識を覚えることより も、学生が自分で考え、悩むことが重要です。授業の内 分自身の役割を考察できるようになること ●授業内容・授業計画 容をもとに大いに考え、議論するという態度で受講して 第1週 ガイダンス ください。 第2−4週 ピアジェの発生的認識論 レポート課題の他に、ミニアドベンチャーという課題 第5−7週 ヴィゴツキーの発達理論 を出します。これは、図書館の使い方や文献の引用の仕 第8−9週 発達保障運動の背景と発達の障碍 方などを身をもって体験してもらうためのものです。必 第10週 「論じる」とはどういうことか ずやってきましょう。 なお、授業には遅刻せずに、毎回出席するのが常識で 第11−13週 田中昌人の発達理論 第14−15週 映画「夜明け前の子ども達」検討 す。この常識に従って授業を進めますので、欠席を理由 (または「幸せの太鼓を響かせて―インクルージョン」) とする課題の不提出等は認めません。「卒業が危ないの ●評価方法 で単位をください」という依頼も受け付けません。 「授業に参加して、授業中も授業時間外も考えて、そ 担当教員のオフィスアワーは火曜日の昼休み。内線番 して書く」このプロセスと成果をもとに成績評価を行い 号とメールアドレスは授業中に呈示します。 ます。具体的には、レポートが30点、毎回の授業で執筆 ●教 材 するミニペーパーは40点、宿題が30点の計100点満点で 授業中に参考文献を提示する。 教育と発達の心理学 演習 (後期 木・ 3 全) 2 単位 Seminar: Psychology on Education and Development 大学教育研究センター 西垣 順子 べるボランティア活動や社会活動に参加した場合、それ ●科目の主題 すべての人が「健康に発達する権利」が保障されなけ ればならないという発達保障の思想を理解し、それもふ まえつつ、受講生各自が、教育と発達に関するテーマの もとで問題を設定し、多面的に検討してレポートします。 も評価の対象に加えます。 ●受講生へのコメント 演習形式の授業のため、受講生数を16名程度以下に制 限します。 演習形式ですので、受講生の発表や議論を中心に授 ●授業の到達目標 ① 発達する権利とその保障について、基本的な考え 業を進めます。授業への積極的な関与を期待します。次 の2つは単位認定に値するレポートを作るための必要 方を理解すること ② 自ら探究する課題を設定し、それについて資料等 条件になります。①遅刻や欠席をせずに授業に参加す を収集しながら検討し、ひとつの回答を立てら ること。②自習時間を授業に出席する時間(1時間30分 れること /1週間あたり)より多く確保すること。(この2つが ③ 自ら設定した課題とその回答を、他の受講生と共 できていなくて単位取得できた受講生は過去にありませ 有し(プレゼンと議論)、レポートにまとめられ ん。)なお、市民教育・社会教育や障害児教育に関連す ること。 るボランティア活動等に参加してそれらの問題について ●授業内容・授業計画 学んだ学生は、その活動の報告などをしてもらえれば、 第1週 ガイダンス 評価の対象にします。 担当教員のオフィスアワーは火曜日の2時限目と昼休 第2週 発達保障思想の概略の説明 第3−7週 教科書の輪読会 み。内線番号とメールアドレスは授業中に呈示する。 第8−10週 レポートとプレゼン作成の準備 ●教 材 第11−14週 受講生による発表会 大久保智生・枝郁子編「実践をふりかえるための教育 第15週 総合討論会 心理学」を教科書として指定します(ナカニシヤ出 ●評価方法 版) レポート執筆、発表、討論、授業への参加状況をそれ 京都教職員組合養護教育部 編「田中昌人講演録 子 ぞれ同じの割合で(100点満点に喩えると25点ずつで) どもの発達と健康教育④」(クリエイツかもがわ)を 評価します。また、授業内容に関連したことについて学 参考書とします。 −55− 人間と知識・思想 現代社会と人間 リテラシー教育の思想と方法 (後期 火・ 4 全) 2 単位 Philosophical and Psychological Issues on Literacy Education 大学教育研究センター 西垣 順子 [平成22年度以前に「読むこと書くことの科学」の単位を修得した者は、この科目は履修出来ない。] するミニペーパーは40点、宿題が30点の計100点満点で ●科目の主題 リテラシーは読み書き能力という意味が基本ではある 評価します(配点はおおよその目安です。5点程度は変 が、実際には一般的に考えられているようには単純な概 動する可能性がありますが、初回の授業の際に確定した 念ではない。本授業では、リテラシーという概念の多面 数値を出します) 。60点以上が合格。 的な意味を踏まえながら、リテラシーとその教育が人間 ●受講生へのコメント 個人と社会の発達において果たす役割について考え、こ 本授業では、大学教育の中で実施されるリテラシー学 れからのリテラシー教育のあり方について考察する。 習、教育についても扱いますので、みなさんが「レポート ●授業の到達目標 を書くこと」 「書く力を強くすること」について改めて考 ① 機能的リテラシー、批判的リテラシー等のリテラ えるきっかけになると思います。しかし、 「レポートをど シー概念を理解し、多様に展開されているリテラ う書けば良い点数がもらえるか」を直接的に講義する科 シー教育について、その目的や意義を理解すると 目ではありませんので、予め承知しておいてください。 受講生の多くの方は受けたことがないと思われるリテ ともに、批判的に検討できるようになること ② 自らが直接的に巻き込まれているリテラシー学習 ラシー教育について知るために、参考資料を宿題として について、その目的と意義を理解しながら、批判 読み、それについて、授業中にディスカッションをしま 的に検討し、自分自身の学習を再構築できること す。授業を聞くだけではなく、参加するという姿勢で取 り組んでください。 ●授業内容・授業計画 レポート課題の他に、ミニアドベンチャーという課題 第1週 ガイダンス 第2週 機能的リテラシーとアカデミックリテラシー を出します。これは、図書館の使い方や文献の引用の仕 第3−4週 読み書き能力の仕組みと発達 方などを身をもって体験してもらうためのものです。 なお、授業には遅刻せずに、毎回出席するのが常識で 第5週 精神の文字化とレイ・リテラシー 第6−7週 批判的リテラシー論 す。この常識に従って授業を進めますので、欠席を理由 第8週 フレイレの教育実践 とする課題の不提出等は認めません。「卒業が危ないの 第9週 フレイレの教育思想 で単位をください」という依頼も受け付けません。 担当教員のオフィスアワーは火曜日の昼休み。内線番 第10週 フレイレの思想と識字教育まとめ 第11週 「引用」についての説明 号とメールアドレスは授業中に呈示します。 第12週 「生きなおすことば」を読む① ●教 材 第13週 「生きなおすことば」を読む② 大沢敏郎(著)「生きなおす、ことば―書くことのち 第14週 「効果のある学校」を読む から―横浜寿町から」(太郎次郎エディタス)(1,800 第15週 映画「学校」を検討する 円)を教科書とします。必ず購入しておくこと。 ●評価方法 小柳正司(著)「リテラシーの地平:読み書き能力の 「授業に参加して、授業中も授業時間外も考えて、そ 教育哲学」(大学教育出版)(1,600円)を参考書とし して書く」このプロセスと成果をもとに成績評価を行い ます。授業を聞くだけでは理解できない部分はこの本 ます。具体的には、レポートが30点、毎回の授業で執筆 を読んで復習してください。 現代文化の社会学 (後期 火・ 2 全) 2 単位 Contemporary Cultural Studies 文学研究科 石田 佐恵子 響を与えている。 ●科目の主題 「現代文化」とは、いかなる特徴を持つものなのだろ ② 音楽、マンガ、テレビ、インターネット記事など うか。たとえば、以下のような特徴がしばしばとりあげ の文化商品が、国境を越えて流通し、グローバ られる。 ルな脈絡において消費されている。 ① テレビ・携帯電話・インターネットなどの電子的 メディアの性質が、人々の日常生活に大きな影 −56− ③ ポストモダンと呼ばれる社会状況に共通の生活様 式・価値観などが世界規模で出現しつつある。 現代社会と人間 (第6−10回) 。 では、「現代文化」を社会学的に考えるとはどのよ うなことなのだろうか。本講義では、現代文化のなか ⑷ 現代文化と知識消費(第11−13回)。 から、特にテレビ文化をとりあげ、「クイズ形式」を ⑸ まとめと評価(第14−15回)。 キーワードにその特質を論じていく。 ●評価方法 ●授業の到達目標 講義時には、毎回出席をとる。この出席の配点は 「現代文化」とは、私たち自身にとって馴染みの深い 30%程度。授業時に随時行うミニ・レポートは出席点 日常生活そのものであり、もはやそれなしでは生きるこ としてカウントする。学期末には「現代文化現象につ とができないほど深く浸透している。また、国内のみな いての考察・分析を行う」段階として、論述形式の試 らず、グローバルな共通性を持って生きられている文化 験を実施する。試験による評価は、成績全体の 70%程 でもある。 度。 したがって、文系・理系の学生を問わず、私たち誰も ●受講生へのコメント にとって、このような文化のありようを理解すること 現代のメディア文化のさまざまな領域について、積 は、きわめて重要な意味を持つ。この講義を通して、 極的関心を持っている受講生を望む。なお、 受講に際し、 「現代文化」のさまざまな現象についての理解を深め、 他の学生に迷惑をかけるような行為(私語・遅刻など) それらを実践的かつ批判的に読み解く能力を養うことを を行う者には、退出を求めることがあるので、充分留 目標とする。 意すること。 ●授業内容・授業計画 ●教 材 上記テーマを、以下のパートに分けて論じる。 教科書:石田佐恵子・小川博司(編)『クイズ文化の社 会学』(世界思想社、2003)。 ⑴ 現代文化研究におけるテレビ文化研究の位置づけ 参考書:高野光平・難波功士(編)『テレビ・コマー (第1−3回)。 ⑵ クイズ形式の文化の特徴(第4−5回)。 シャルの考古学』(世界思想社、2010)。そ ⑶ 放送史におけるクイズ番組の制作と消費の変遷 の他、授業中に適宜指示する。 社会科学のフロンティア (後期 火・2 全) 2 単位 A Frontier of the Social Science 経済学研究科 中村 健吾/福原 宏幸 ばれている。日本でも2011年から「求職者支援」制度が ●科目の主題 この講義の主題は、EUの加盟国において20世紀末か スタートした。 ら21世紀初頭にかけて進行した福祉国家の改革の動向を 社会保障において就労を重視するそうしたアプローチ 概観しながら、そうした改革が日本の社会保障制度に は、私たちの生活にどのような変化をもたらすのだろう とって有する意味合いを考察することにある。 か。 先進資本主義諸国において20世紀に発展した社会保障 ●授業の到達目標 制度の多くは、政労使が保険料を分担する社会保険と、 現代社会における社会保障制度の基本的な仕組みとそ 税を財源とする公的扶助の2本立てになっている。そこ れを支える理念を理解し、今日におけるこの制度の改革 には、就労している(いた)者が直面する疾病・失業・ の動向を評価するための視座を獲得する。 老齢等リスクは社会保険がカバーし、就労していないか ●授業内容・授業計画 社会保険に加入していない者の生活保障は公的扶助がに この授業では、下に掲げる教科書に沿いながら、EU なうという制度上の分業がなされている。第2次世界大 加盟国における社会保障制度の変容を各国の専門家がリ 戦後から1990年代までは、そうした制度配置が多くの国 レー式に講義していくことになる。授業はおおむね以下 で運用され、定着していた。 のように進行する。 ところが、経済のグローバル化、失業の長期化、少 1.授業全体のねらい 子高齢化、不安定雇用の拡大といった趨勢のなかで、ま 2.EUによる社会政策の調整 ずは社会保険制度が空洞化していき、公的扶助の背負う 3.オランダ 負担が増大していった。そして、20世紀末から21世紀初 4.デンマーク 頭の先進諸国の失業保険制度と公的扶助においては、生 5.イギリス 活保障のための資金やサービスを提供するだけでなく、 6.フランス それの受給者に求職活動または職業訓練を提供する、あ 7.ドイツ るいは義務づけるという傾向が共通して見られるように 8.スウェーデン なった。そうした傾向は、「アクティベーション」と呼 9.イタリア −57− 現代社会と人間 ヨーロッパの視察旅行をして日本にもどってくるとい 10.ハンガリー 11.日本 うつもりで受講してください。 12.まとめ ●教 材 ●評価方法 教科書:福原宏幸/中村健吾編著『21世紀のヨーロッパ 福祉レジーム』(昭和堂、2012年刊行予定。) 期末試験の成績により評価する。 ●受講生へのコメント 日本国憲法 The Constitution of Japan (前期① 木・ 2 全) 2 単位 (前期② 木・ 1 全) 2 単位 法学研究科 米澤 広一 ●科目の主題 11.教師の「教育の自由」 教育を通じて日本国憲法を読み解く。 12.私立学校と憲法、児童の権利条約 ●授業の到達目標 13.国会 「日本国憲法」は教員免許取得のための必修科目に指 14.内閣 定されているため、受講生の多くが教育問題に関心を 15.裁判所 持っている。そこで、本講義では、後掲の教科書に沿っ ●評価方法 て、学校教育での憲法問題について解説を加え、日本国 学期末に行う定期試験によって評価する。 憲法への関心と理解を深めることを、目標とする。 最終学年の者のみ、レポートの提出を認め、定期試験 ●授業内容・授業計画 の成績に加味する。 1.明治憲法から日本国憲法へ ●受講生へのコメント 2.未成年者の人権享有主体性、生徒の自己決定権 法学部生に対しては、本講義は、教職の単位としての 3.日の丸・君が代と学校 み認定される(全学共通教育の単位としては認定されな 4.宗教と公立学校、生徒と政治 い) 。 5.教育情報の本人開示と公開 教職の単位を必要としない法学部生は、専門科目の憲 6.教科書の検定、採択、給付、使用 法Ⅰ、憲法Ⅱのみを受講されたい。 7.学校事故の賠償と防止 ●教 材 8.障害児の教育を受ける権利 教科書:米沢広一『憲法と教育15講』 [第3版] (北樹出 版) 9.外国人の子どもの教育を受ける権利 10.親の教育の自由 都市的世界の社会学 (前期 木・ 3 全) 2 単位 Sociology of Urbanization 文学研究科 伊地知 紀子 ●科目の主題 ●授業内容・授業計画 都市的世界を社会学の視点から考察する。モノ・ヒ 1.オリエンテーション ト・情報がさまざまなボーダーを越えて移動する現代世 2.日本社会とエスニシティ⑴ 界では、グローバル化が一つのキーワードとなり、日本 3.日本社会とエスニシティ⑵ もまたその流れのなかにある。この講義では、グローバ 4.韓国・済州島/日本・大阪⑴ ル化のなかで生じる日本の都市的世界を朝鮮半島との関 5.韓国・済州島/日本・大阪⑵ わりのなかから考える。具体的には、明治期から現代ま 6.越境する生活圏−解放前⑴ でを射程に入れ、大阪が多民族・多文化社会となってい 7.越境する生活圏−解放前⑵ く様子を韓国・済州島との関わりを考察対象とする。 8.越境する生活圏−解放後⑴ ●授業の到達目標 9.越境する生活圏−解放後⑵ 都市を重層的に捉える視点を身につけ、自分に身近な 10.オールド・カマーとニュー・カマー⑴ 歴史や生活を見直すなかで、視野を広げ汎用性の高い世 11.オールド・カマーとニュー・カマー⑵ 界観を養う。 12.都市化と移動 13.多文化と共生⑴ −58− 現代社会と人間 14.多文化と共生⑵ ●教 材 15.試験 井上俊・伊藤公雄編『都市的世界』(社会学ベーシッ ●評価方法 クス4)(世界思想社)。伊地知紀子『生活世界の創 授業中のミニレポートを含む平常点40%、期末試験 造と実践−韓国・済州島の生活誌から』(御茶の水書 60%。 房)。その他、授業中に適宜指示する。資料配布、ビデ ●受講生へのコメント オやスライドも使用予定。 授業終了後に配布資料を熟読すること。 宗教と社会 (前期 木・ 4 全) 2 単位 Religion and Human Society 文学研究科 仲原 孝 ●科目の主題 8. 『道徳と宗教の二源泉』における宗教哲学 あらゆる宗教は社会を構成する。したがって宗教には 9.閉じた道徳と開いた道徳 必ず社会的な問題がつきまとう。この授業ではこうした 10.静的宗教 宗教をめぐる社会的問題を、講義形式でさまざまな角度 11.動的宗教 から考察していく。 12.宗教論の実践的帰結 ●授業の到達目標 13.ベルグソンが現代哲学に与えた影響 (1) 宗教と社会との関係をめぐる問題に関して、各自が自 14.ベルグソンが現代哲学に与えた影響 (2) 分独自の見解を形成することができるようになること 15.総括。宗教哲学の課題 を、授業の目標とする。 ●評価方法 ●授業内容・授業計画 小論文形式の試験またはレポートを課す。論ずるべき 今年は、道徳や宗教の社会的側面について考察したこ 課題を通知する時に、同時に、枚数、テーマ、論じ方な とで知られるベルグソンの哲学について解説しながら、 ど、論述が満たすべき条件を何項目かにわたって指定す 宗教と社会との関係の問題について考えてゆく。 る。それらすべてが満たされていることが、単位認定の 講義はおおむね以下の構成で進められる。ただし、授 必須の条件となる。 業進度の関係上、各テーマを扱う順序が変更されたり、 ●受講生へのコメント 授業計画の一部が省略されたりする場合もありうること 宗教の問題に唯一の確定的な答はありえない。講義の を、あらかじめ付記しておく。 目的はあくまで受講者各自が問題を考える上での手がか 1.序論。講義の主題の説明 りを提供するところにある。したがって、小論文では講 2.ベルグソンの宗教哲学の基本性格について 義で提示された問題に対して各自が主体的に答を模索す 3. 『創造的進化』における生命哲学 ることが求められ、ノートや参考書をまとめただけの答 4.生命哲学の根本原理=生命の跳躍 案は最低の評価となるので注意すること。 5.生命の跳躍の頂点=知性 ●教 材 6.知性の起源 教科書は用いない。必要な資料は印刷して配布する。 7.従来の哲学への批判 現代社会学入門 (前期 月・ 2 全) 2 単位 Invitation to Contemporary Sociology 文学研究科 進藤 雄三 ●科目の主題 ●授業内容・授業計画 現代社会で起きている多様な社会現象を素材に、社会 1.社会学:オリエンテーション 学的分析を提示する。 2.自己論:「私」という存在を問う/ 「個人化」 ●授業の到達目標 3.逸脱:犯罪は凶悪化/増大したか? 1.社会学という学問領域についての概括的知識を習 4.医療:「医師不足」はなぜ起きた? 5.政治:支配と権力/世界史における日本 得する 2.現代社会の多様な現象に関する理解を深めるとと もに、社会学的思考法についての理解を深める。 −59− 6.情報・メディア:メディアはメッセージ? 7.教育:資格社会の陥穽/日本型学歴社会 現代社会と人間 8.宗教:世界における宗教/苦難と幸福の神義論 ●評価方法 9.家族:「婚活」の誕生/家族のゆくえ 出席2・コメント3・試験5の三者によって判定す 10.ジェンダー: 「家父長制」と資本制? る。 11.エスニシティ論: 「エスニシティ」の誕生 ●受講生へのコメント 12.エイジング論:高齢社会の誕生/ 「エイジズム」 次回講義のさいに使用されるキーワードを指示する 13.グローバリゼーション論:それは何を意味するの ので、参考書の該当箇所を読んでくること。 ●教 材 か 参考書:『新しい世紀の 社会学中辞典』(ミネルヴァ 14.現代社会の歴史的位相:日本、世界の共時変容 書房、 2005) 15.結語:社会学的想像力 現代の社会問題 (前期 水・ 2 全) 2 単位 Contemporary Social Problems 文学研究科 川野 英二 ●科目の主題 第5・6講 福祉国家と社会問題 近代化とともに生まれた「社会問題」とその変容の歴 第7・8講 新しい貧困と社会的排除の登場 史的プロセスをたどりつつ、現代の新しい社会問題の特 第9・10講 都市貧困と社会的排除 徴について論じる。講義では、労働と貧困に関係する社 第11・12講 貧困と社会的排除の国際比較 会問題の歴史と現代におけるその変容をヨーロッパやア 第13・14講 社会的不安定化の諸問題 ジア、日本、とくに大阪の都市問題と関係づけながら、 ●評価方法 「社会的なもの」のあり方を考える。 出席とコミュニケーションカード(40%)、試験 ●授業の到達目標 (60%)の結果を総合的に判断して評価する。 現代の社会は、非正規雇用やワーキングプアの増加、 ●受講生へのコメント 相対的貧困率の高さ、ホームレスやネットカフェ難民な 本講義をつうじて、新聞やニュースなどメディアで取 ど、新たな社会問題に取り組まざるをえなくなってい り上げられるようなアクチュアルな問題を、歴史や社会 る。これら現代の社会問題に関する問題意識を深めると 構造などマクロな社会の変化と関係づけてとらえる想像 同時に、関連する統計や映像、インタビューなど様々な 力を養ってほしい。 データを読み解き、解釈する能力を養う。 ●教 材 ●授業内容・授業計画 教科書は使用しない。 第1・2講 近代と社会問題 参考図書は授業中に適宜指示する 第3・4講 貧困と「社会問題」の登場 世界のなかの日本経済 Japanese Economy from the World Viewpoint (前期① 火・ 2 全) 2 単位 (前期② 火・ 1 全) 2 単位 経済学研究科 松島 正博 ●科目の主題 表土の純喪失量は年間240∼260億トンにのぼること、開 本講義は、身近なトッピクをとりあげ、世界的な視野 墾=森林伐採が帯水層の水の補充を妨げていること、世 からみた日本経済の特徴、世界と日本の関連を考えるこ 界的にみて施肥効率が低下傾向にあること、潅漑農地で とを目標としている。本年の講義では、世界の食糧・農 は帯水層の枯渇、潅漑農地の冠水、塩害が生じ、現在、 業問題とその中における日本の地位を検討する。 世界の潅漑農地の三分の一が生産力を失いつつあること 現在、世界人口は70億人を超えている。1960年の30億 等が指摘されている。 人から半世紀で二倍以上になったことになる。しかも、 こうした中で、わが国では農業生産の縮小が進み、食 一年間に8000万人の人口増加が続いており、今世紀半ば 糧の海外依存度が高まっている。とすれば、それはどの までには90億人を突破するとみられている。 ような国内的要因、対外的条件によってもたらされたの 他方、温室効果による温暖化、酸性雨、オゾン層の破 か。政治の世界でスローガン的に語られる食糧自給率の 壊、砂漠化等の環境問題も日々厳しさを増している。こ 向上は可能なのか。わが国がとるべき対応策はどこにあ れらが、食糧生産にマイナスに働くことは言うまでもな るのか−およそこのような問題群に対して分析的にアプ い。さらに、表土・地下水の使用が限度を超えたこと、 ローチしようというのが、本講義のテーマである。 −60− 現代社会と人間 ●授業の到達目標 9.わが国農業の展開と農産物輸入の拡大過程② 上のように、世界的規模でみた場合、我々を取り巻く 10.WTO農業協定と日本農業 生存のための諸条件は確実に悪化しつつある。そうした 11.わが国農産物輸出の現状と可能性 現実を分析的に捉えることによって、受講生諸君の視野 12.世界農産物貿易の現状 が、空間軸でも時間軸でも広がれば、本講義の目的は達 13.食糧援助から農業技術協力へ① 成される。 14.食糧援助から農業技術協力へ② ●講義内容・計画 15.まとめ 次のような諸点を中心に講義することを予定してい ●評価方法 る。 基本的には学期末の試験による。授業中に小テストを 1.世界の食糧需給①供給 する場合がある。 2.世界の食糧需給②需要 ●受講生へのコメント 3.今後の世界の食糧需給を考える 全学科目なので、経済学に関する予備知識は求めない 4.アジア農業と緑の革命 が、世界経済と日本経済についての新聞記事を読む程度 5.ヨーロッパ型農業の特質 の問題関心が必要。 6.新大陸型農業の展開と限界 ●教 材 7.サハラ以南の農業と食糧 教科書は用いない。参考文献については、講義中に指 8.わが国農業の展開と農産物輸入の拡大過程① 示する。 現代経済学入門 Introduction to Modern Economics (前期① 水・ 3 全) 2 単位 (前期② 水・ 1 全) 2 単位 非常勤 長沼 進一 ●科目の主題 8.競争とゲーム 【科学としての経済学の目的と領域】 9.国民経済と世界経済のかかわり 複雑な経済現象を科学的に分析し、人間存在の価値を 10.投資と国民所得の決定 高めるために私たちはどのような合理的行動をとらなけ 11.成長と景気循環 ればならないかを考えてみよう。 12.貿易自由化の有用性 ●授業の到達目標 13.信用供与とバブル テレビや新聞で報道される経済記事を読んで「なるほ 14.金融政策の有効性 ど、そうか」とわかり、エコノミー・マインドを身につ 15.財政政策の有効性 けること。 ●評価方法 ●授業内容・授業計画 小テストと期末の定期試験の成績によって評価する。 1.経済と人間のかかわり ●受講生へのコメント 2.人間行動の社会性 経済に興味をもつため、テレビや新聞の経済記事に耳 3.Well-beingの価値基準 を傾け、目を通す習慣をみにつけること。授業が終わっ 4.価格による財とサービスの配分 たときに、理解力が向上します。 5.生産要素の投入と最適生産 ●教 材 6.消費者の合理的行動 テキストは特に指定しませんが、簡単な経済学入門書 7.企業の合理的行動 については授業で指示します。 −61− 現代社会と人間 法と社会 (後期 木・ 4 全) 2 単位 Law and Society 法学研究科 恒光 徹 ●科目の主題 獄刑が実現するまでの過程を検討する。 ミシェル・フーコー「監獄の誕生」とチェーザレ・ ⑩−⑭同第3部 規律・訓練 第1章 従順な身体 ベッカリーア「犯罪と刑罰」を素材に、近代社会の刑事 第2章 良き訓育の手段 第3章 一望監視方式 近代 司法制度を、そして近代社会の構造を考える。また、日 社会の「自由と平等」な社会の裏の構造、監獄刑を刑罰 本の現代社会と刑事司法を考える視点を示す。 の中心にした近代社会の規律・訓練的、一望監視的構造 ●授業の到達目標 を示す。 日常の犯罪報道や刑事裁判報道などを批判的に(否定 ●評価方法 的という意味ではなく、現実を無条件で肯定するのでは 定期試験60点、予告なしの2回の小テスト40点で評価 なく、伸ばすべき点と変革すべき点を見極めるという意 します。 味で)理解するのみならず、現代社会と法を批判的に検 ●受講生へのコメント 討する力を身につけることを目標とする科目である。 授業中の質問は大歓迎です。ただし、私語、途中退室 ●授業内容・授業計画 は厳禁です。授業後の質問も受け付けます。 ①−④ベッカリーアの犯罪と刑罰の内容を検討する。 ●教 材 ⑤−⑨フーコーの監獄の誕生「第2部 処罰 第1章 参考書:ミシェル・フーコー著、田村俶訳「監獄の誕 一般化される処罰 第2章 刑罰のおだやかさ」を検討 生」(新潮社)。チェーザレ・ベッカリーア著、 小谷眞男訳「犯罪と刑罰」(東京大学出版会) し、 ベッカリーアら刑事司法改革者たちの構想とそこ における監獄の位置づけ、近代的刑罰の中心としての監 現代の経営 Contemporary Business Management 毎回、資料を配布します。 (前期① 月・ 4 全) 2 単位 (後期② 月・ 1 全) 2 単位 特 任 田中 智恵子 ●科目の主題 第4回:問題解決の技術①MECE 現在、日本の企業の経営環境は厳しく、経営者も社員 第5回:問題解決の技術②フレームワーク も経営知識だけでは太刀打ちできない状況にある。知識 第6回:問題解決の技術③ロジックツリー だけではなく、問題に対して、既成概念に捉われない柔 第7回:問題解決の技術④利益ツリー 軟な思考法や思考の整理術が重要となっている。 第8回:情報収集分析の技術 本講座では経営、マネジメントの実践において、ある 第9回:ロジカルコミュニケーションの技術① いは、社会人として、すべての思考の基本スキルとなる 第10回:ロジカルコミュニケーションの技術② 問題解決思考法(ロジカルシンキング)を学ぶ。 第11回:戦略策定 ●授業の到達目標 第12回:組織 論理的に思考するとはどういうことか、また思考した 第13回:ケーススタディ ものをどのように整理するか、ロジカルシンキングの思 第14回:ケーススタディ 考と技術を理解出来る。 第15回:学期末試験 (レポートにて代用する場合あり) ●授業内容・授業計画 ●評価方法 講義の中では、経営に特化した事例だけではなく、日 出席率や講義態度、意見発表やレポート提出、学期末 常生活面で論理的に思考できるよう身近な事例も用い 試験などで総合評価する。 る。講義を聞くのみにとどまらず、講義の中で事例や ●受講生へのコメント ケーススタディなどを通し、思考法を深めていただきた 問題解決手法(ロジカルシンキング)を如何に日常 い。 生活で使えるようになるかが重要である。論理(ロジッ 尚、講義内容は学生の理解の程度により、内容や順番 ク)を理解するだけではなく実践することが重要である を修正変更する場合がある。 ので、日々の練習が必要となる。 第1回:イントロダクション 問題解決手法とは ●教 材 第2回: 問題解決の思考法① 講義の中で随時紹介する。 第3回: 問題解決の思考法② −62− 現代社会と人間 現代社会と健康 Today’ s Health Science (前期① 火・ 1 全) 2 単位 (前期① 木・ 2 全) 2 単位 (後期① 火・ 1 全) 2 単位 (後期① 木・ 2 全) 2 単位 (前期② 水・ 1 全) 2 単位 医学研究科 運動生体医学 藤本 繁夫(前後期の①火曜を担当) 医学研究科 運動生体医学 吉川 貴仁(前後期の①木曜、②を担当) ●科目の主題 5.スポーツ障害(内科編・外科編)とその予防 文明の進歩に伴い現代社会は細分化し、我々の生活は 6.健康と薬物(麻薬について) 便利にかつ快適になってきた。その反面、社会機構や人 7.健康と嗜好品(タバコ、アルコール、嗜好品) 間関係はより複雑になり、健康を損ねる条件は時代と共 −受講生のアルコール分解酵素の測定実習を行う− に変わりつつある。産業廃棄物や原発事故などによる環 8.各病気とその予防 境汚染、運動不足の習慣、アンバランスな食生活、複雑 ① 癌(肺癌、胃癌、大腸癌、子宮頚癌)の予防 な社会生活や人間関係によるストレス病などの健康を阻 ② メタボリック症候群(肥満、高血圧、糖尿 害する要因が溢れている。一方では、社会の高齢化が進 み、健康寿命は延長しているが、生活習慣病や癌は増加 病、脂質異常など) ③ アレルギー疾患(気管支喘息、鼻炎、湿疹な の傾向を示し、メタボリック症候群や種々のアレルギー 疾患の増加、エイズや新型インフルエンザのような新し ど) ④ 感染症(伝染病、エイズ、結核、インフルエ い感染症が出現し、健康的な日常生活はむしろ脅かされ ンザなど) るようになっている。 ⑤ 血管障害(心筋梗塞、狭心症、脳卒中など) “現代社会と健康”は、自身の健康をキー・ワードに 9.現代社会とストレス病(心身症、神経症、自殺な して、健康維持・増進のための情報を提供し、積極的な ど) 健康づくりを支援する科目である。健康は自身で守るべ 10.健康政策、その他救急処置(AEDなど) きものであるが、そのためには正しい医学知識やエビデ ●評価方法 ンスに基づいて実践する必要がある。新しい時代に即し 期末試験と平常の受講状況(出席率)で評価する。 た健康と医学の情報を提供していく。 ●受講生へのコメント ●授業の到達目標 自らの健康に関心があり、健康の維持・増進方法と病 ・現在の体力の増進のための運動方法が理解できる。 気の予防に興味のある学生の受講を歓迎します。心身の ・運動療法のメリットとデメリットを説明できる。 成長が一段落したこの時期に、一生涯を見すえた“自分 ・健康維持のための運動と栄養・休養を理解する。 の健康”について考えてみよう。(生涯の健康維持に、 ・感染症、癌、アレルギー疾患の予防法を理解する。 また病気予防に興味のある学生の受講を期待していま ・ストレス病の理解と対処方法を模索する。 す) ●授業内容・授業計画 ●教 材 1.総論(健康とは、病気とは、病気の傾向) 1.スポーツ医学(やさしいスチューデントトレー 2.健康の生理学(健康維持・増進に必要な心・肺・ 筋・代謝の機能) ナーシリーズ).(嵯峨野書院) 2.スポーツ医学テキスト.(金芳堂) 3.運動の生理学(体力維持のための運動方法とト レーニング効果) 3.病気に関しては、最新の情報をスライド、プリン トで提供する。 4.運動と栄養・睡眠(スポーツ栄養の基礎と実際) −63− 現代社会と人間 家族と社会 (前期 金・ 5 全) 2 単位 Family and Modern Society 非常勤 松田 いりあ ●科目の主題 10.家族と消費 高度経済成長期に確立された日本の近代家族モデルが 11.家族とジェンダー 現在経験している変化について、この講義では、家族社 12.家族と性愛関係 会学の先行研究の紹介から、最近の家族をめぐる問題に 13.家族というひとつの共同性のゆくえ までフォローする。 14.家族について学ぶ困難――後半の授業のまとめ ●授業の到達目標 15.試験 現代日本の家族をとりまく諸課題の理解 ●評価方法 ●授業内容・授業計画 期末試験(100点)のみで評価を行う。 1.家族とは何か ●受講生へのコメント 2.前近代家族 家族とは、私たちの存在そのものと良くも悪くも不可 3.近代家族 分の関係にあるため、学問の対象とすることが難しい。 4.日本の近代家族⑴――過去 この授業を、家族について考え、語ることの困難を理解 5.日本の近代家族⑵――現在 する第一歩にしてほしい。 6.日本の近代家族⑶――未来 ●教 材 7.映像にみる家族――前半の授業のまとめ 教科書:使用しない。資料を配布する。 8.家族と格差 参考書:授業中、適宜指示する。 9.家族の個人化 メディアの社会学 (後期 火・ 3 全) 2 単位 Sociology of Media 非常勤 小林 聡明 ●科目の主題 ●授業内容・授業計画 本授業は、近代日本におけるメディアの歴史的展開に 1.はじめに−メディアを考える/社会をまなざす ついて、朝鮮半島とアメリカの事例に言及しながら講述 2.メディアの世紀と大衆社会−欧米におけるメディ ア技術の近代 するものです。 私たちは、さまざまな「メディア」に囲まれて暮らし 3.近代日本と新聞の成立−「不偏不党」と権力 ており、メディアは、私たちの社会において、重要な構 4.近代朝鮮と新聞の成立−日本の「協力」と帝国主 成要素として存在しています。メディアの歴史的展開を 考えることは、私たちが生きる社会が、いかなるもので あるのかを歴史的な観点から捉えようとするものです。 本授業では、朝鮮半島やアメリカの状況を参照するこ とで、近代日本メディアが、もはや「日本」というナ ショナルな枠組では論じきれない空間的広がりと歴史的 重層性を持っていることを示しながら、社会とは何かを 義の時代 5.植民地のメディア/帝国の支配−植民地朝鮮の新 聞と民衆 6.ラジオ時代の到来−メディアの戦時利用と動員さ れる学知 7.戦争とプロパガンダ−ラジオとアジア・太平洋戦 争 8.記憶とメディア−メディア・イベントしての「8 受講者のみなさんと共に考えていきたいと思います。 月15日」 ●授業の到達目標 いったいメディアとは何であり、それによって成立す るコミュニケーションとはいかなるものなのでしょう 9.言論の自由とメディア検閲−GHQの対日メディ ア政策と「民主主義」 か。そして、これら諸実践によって編み上げられる社会 10.テレビとアメリカ−戦後日本のテレビ放送 とは、どのような構造を持っているのでしょうか。こう 11.放送の公共性−朝鮮戦争とNHKの「協力」 した「難問」と格闘することで、社会に対する鋭敏なま 12.冷戦とメディア−東アジアの「電波戦争」 なざしを獲得してもらうことが、本授業のもっとも大き 13.マイノリティとメディア−現代日本のエスニッ ク・メディアと多文化社会 な目的です。 14.グローバリズムとメディア−韓流再考 −64− 現代社会と人間 15.おわりに−アジアで考える/歴史から見通す ラクティブな授業になるように心がけたいと思います。 ●評価方法 受講者には毎日、新聞を読み、時事問題への関心をもっ 出席状況(20%)や随時提出してもらうコメントの内 て出席してもらうことを、とくに希望します。 容(20%)、レポート(60%)によって総合的に評価しま ●教 材 す。なお出席を重視するため、7割以上の出席率が、成績 さしあたり吉見俊哉『メディア文化論』(有斐閣、 評価の前提条件となります。 2004年)、『メディア史を学ぶ人のために』(有山輝雄、 ●受講生へのコメント 竹山昭子編、2004年)をあげておきます。授業では、毎 本授業では、時事的なトピックをあげながら、具体的 回、参考文献を紹介するとともに、詳細なレジュメを配 かつ平易な解説をおこなうとともに、できるだけインタ 付します。 現代社会におけるキャリアデザイン (後期 火・ 3 全) 2 単位 Career Design in Modern Society 大学教育研究センター 飯吉 弘子 ●科目の主題 また、キャリアや職場をめぐる現代の社会変化の中に 本科目は、キャリアや職場をめぐる現代の社会変化の おける、個人の生涯を通じての幅広いキャリアのあり方 状況について学び、その中における、個人の生涯を通じ や可能性について、受講生が自らの問題として考える中 ての幅広いキャリア(社会人としての人生)のあり方や で、最終的には現在の自分を相対化できるようになるこ 可能性について、受講生が自らの問題として考える科目 とを目指す。 である。就職支援・対策のための直接的な科目ではな ●授業内容・授業計画 く、教養教育の一環としてキャリアデザインを考えるも 授業は具体的には、以下の内容に沿って進める。 のである。 1回目:ガイダンス・イントロダクション・キャリ 知識基盤社会化やグローバル化が急速に進む中で、社 アデザインとは?/なぜ今キャリアデザイ 会・世界のあり方も変化し、多様で複雑な課題が生じて ン?−大学へ行く意味の変化 いる。「就職」で人生の大半が決まるという従来の日本 2回目∼15回目の授業の中では、以下の1.∼3.の 人の典型的な職業観・働き方・生き方モデルも急激に変 側面についてそれぞれ3∼4回分の授業を使って扱い、 化・多様化している。そのような状況の中で、我々1人 以下の4.の側面については、4∼5回分の授業を使っ 1人が、多様な価値観の中で、自らの「質の高い人生」 て考えていく予定である。 をそれぞれに構築していくことや、「より上手に機能す 1.現代社会における職場・仕事をめぐる動向 る社会」の実現に向けて多様な人々とともに協働しなが 2.キャリア選択の多様性と現代の若年労働者の状況 ら取り組んでいくことが必要となってきている。本科目 3.必要とされる能力・スキルとは? では、このような社会変化の中で求められる力や姿勢に 4.自らのキャリアデザインについて考える(自己イ ついても考え、その基本を学んでいく。 メージと他者から見た自分像・仕事のイメージ ●科目の到達目標 と現実・これからの自らの人生と現在の自分、 すなわち、急速な変化のなかにある社会において、個 現代社会におけるキャリアデザインとは 等) 人の「質の高い人生」と「より上手に機能する社会」の 前半は講義を中心に、毎回の小レポート課題に書かれ 両方を実現していくためには、「自ら取り組むべき課題 た意見のフィードバックを行いつつ進め、中盤∼後半 に気づき、自ら考え、多様な人々と協力しつつ解決に向 は、課外課題・レポート等にもとづく発表やグループ けて行動すること」が一層重要となる。また、そのため ワーク、授業内ディスカッションなど参加型の授業を行 には、「情報や知識を複数の視点から注意深く、かつ論 う予定。 理的に分析する」姿勢と能力が必要であり、それととも ●評価方法 に、他者の意見や情報を鵜呑みにするのではなく、自分 1)毎時間提出の小レポートと授業参加度55点、およ の思いこみも点検しながら、自らの意見をまとめ表現し び2)期末レポート等課外課題(複数の課外課題を予 ていける力を身につけることが重要となる。こうした力 定)とその発表等45点の総合評価とする。 を「クリティカル・シンキング」と呼ぶが、なかでも本 ただしこれに加えて、授業回数全体の3分の2以上の 科目では、キャリアをめぐる現代の社会変化を題材に、 出席が最低限求められる。これは、本授業が、単なる知 他者の意見や情報、自らの思いこみ等を分析・点検し 識伝達型授業ではなく、授業における思考や論理的意見 ながら、多角的に考え、自分の意見をまとめ・他者に伝 表明、各種活動への積極参加など思考・学習プロセスや え、相互に理解し合おうとする力・姿勢の基礎の修得を その成果を重視する授業だからである。 目指す。 −65− 現代社会と人間 ●受講生へのコメント 考え方を相対化する経験を得る機会として欲しい。その 本授業では、各テーマの現状・動向を、ただ知識とし ため、授業内の発表やグループワーク等にも積極的に参 て吸収するだけでなく、毎回、自らの問題として向き合 加してほしい。 い・考えていくことを求める。そのため、毎時間の授業 最終的には、社会における自らの今後の人生・キャリ 内レポートや課外課題等で自らの意見を根拠とともに ア・働くということについて考えることを通して、現在 論理的に表明してほしい。それらを出来る限り授業で の自己や社会を相対化し把握する契機として欲しい。 フィードバックしながら進めたいと考えている。 ●教 材 また、全学共通教育科目であり、異なる学部学科の異 教科書は使用しない。随時授業時間中に紹介・配布す なる考え方や観点を持つ多様な受講生のなかで、互いの る。 意見を分かりやすく伝え合い、意見交換を行い、自分の 現代社会と大学 (前期 木・ 4 全) 2 単位 University and Modern Society 大学教育研究センター 飯吉 弘子 ●科目の主題 4.大学で学ぶということは? 同世代の2人に1人以上が大学や短大に進学する時代 ∼教育機能と21世紀の教養教育 を迎えた日本の大学は、広く大衆や世界に開かれた場と 5.これからの大学はどうなっていくのか? なり、かつてないほど多くの役割を社会から期待されて ∼法人化・大学評価・学士課程教育 いる。大学に関する論議も頻繁に行われ、大学は存在意 授業計画としては、初回授業はガイダンスを行い、 義・あり方を社会から問われている。 2∼6回目授業で1.の側面について扱い、その後、 「大学」とはそもそもどのような場か?自分が通ってい 7∼10回目で2.と3.について、11∼15回目で4.と る「自分の大学」はどういうところなのか?当たり前の 5.について考えていく予定である。 ように今通っている大学はどうやって出来たのか?考え なお、それぞれのテーマを扱う際には、現在の状況と てみたことはあるだろうか。 同時にその背景についても考え、また、日本の大学全体 今ある「大学」はどのように出来たのか。大学が現在 の問題と同時に、自分がその中で学んでいる大阪市立大 抱える諸問題はどのようなもので、何故生じたのか。大 学という長い歴史を持つ1公立大学のケースについても 学および学生に対する社会からの現在の評価はいつ頃生 考える。日本の大学全体の中に大阪市大はどのように まれたのか。本科目では、これらの点について、現在の 位置づけられるのだろうか。「大阪市大らしさ」とは何 問題を起点としつつ、歴史の側面からも考えることを通 か、についても考えていく。 して、今後の大学のあり方を考えることを目指す。 ●評価方法 ●科目の到達目標 評価割合は1)毎時間提出のレポート課題と授業内活 本授業で大学について考えることを通し、自らの足も 動参加度合いが60%、2)期末レポートが40%とする。 とを改めて確認し、今後の大学のあり方、大阪市大での ただしこれに加えて、授業回数全体の3分の2以上の 自らの学びのあり方・学生としての関わり方について考 出席が、最低限求められる。これは本授業が単なる知識 えることを最終目標とする。 伝達型授業ではなく、授業における思考や論理的意見表 「大学」というテーマは、学生にとって、学部を超え 明、各種活動への積極参加など思考・学習プロセスやそ た共通の身近なテーマであるとともに、自らの足もとか の成果を重視する授業だからである。 ら社会や世界に広がるテーマでもある。本授業を通し ●受講者へのコメント て、大学とは何かを考え、自分の大学の色(特色)を実 この授業は、講義をただ聴き知識を吸収するのではな 感し、そこから広がる現代社会を考えつつ、学生として く、大学に関するテーマについて自らの問題として考え の自分を相対化して捉えてみてほしい。 ることを通して、 「学生」としての自らの立場や、 「大学 ●授業内容・授業計画 で学ぶ」ということの意味を考えることを目標としてい 以下の5つの内、1.と2.の側面を中心に、見てい る。そのため毎回の小レポートや授業内発表等で、大学 くこととする。 に関する問題への自らの意見を積極的に表明することを 1.今ある大学はどのようにできたのか? 求める。それら意見を出来る限り授業内でフィードバッ ∼大学「制度」成立過程 クしつつ授業を進めていく。 2.今の学生・昔の学生∼大学で学ぶ「学生」の変化 また、現在の大学をめぐる動向・大学や学生への社会 3.大学とはどういう存在なのか? の眼差しを実感するために、毎回、大学に関する記事・ ∼「社会との関係」の変遷 ニュース等を探すことを課外課題として課し、その要約 −66− 現代社会と人間 と意見を毎回の小レポートに記入することも求める。 ●教 材 教科書は使用しない。随時授業時間中に紹介・配布す る。サブテキストとして『大阪市立大学の歴史』 (あるい は『大阪市立大学の125年』 )を使用する。 国際理解と教育 演習 (後期 木・ 4 全) 2 単位 Seminar: International Understanding and Education 文学研究科 滝沢 潤 ●科目の主題 ●授業内容・授業計画 急速なグローバル化のなかで、政治、経済、社会、文 1.国際理解と教育を考える多様な視点について 化のあらゆる分野において「国際化」が進展している。 2.∼4.アメリカ合衆国の多言語化と教育(講義と こうした動向は、人間社会の新たな可能性を示すととも に大きな課題をもたらしている。特に次世代の育成に関 わる教育においては、将来への可能性・課題であると同 時に現在の実践的な可能性・課題でもある。本演習で は、現代社会のマクロレベルの動向を視野に入れながら 議論) 5.∼7.日本の外国人児童生徒と学校教育(講義と 議論) 8.調査テーマの設定とグループ分け、レポートの作 成方法について も、具体的な教育の可能性・課題について、多様な視点 9.∼13.グループによる調査およびレポート作成 から批判的に検討し、理解をより深めることを目的とす 14.グループによる研究発表と議論⑴ る。 15.グループによる研究発表と議論⑵ ●授業の到達目標 ●評価方法 本演習を通じて以下のことができるようになることを 演習形式であるため、毎回出席を取り、出席点を評価 目標とする。 の30%とする。また、授業参加の状況を30%、グループ ⑴ 先行研究や他の受講生の意見など、他者の考え で作成発表するレポートを40%とする。 ●受講生へのコメント 方・意見から誠実に学ぶことができる。 ⑵ 国際理解における教育の可能性と課題を多様な視 演習形式の授業のため、受講生数を16名以下に制限す 点から批判的に検討し、より深く理解することが る。受講生多数となった場合は、抽選を行う。 できる。 演習形式なので、毎回授業に出席し、意見・交換、調 ⑶ 多様な視点からの批判的検討を踏まえ、自分の意 査等積極的な授業参加を期待する。 ●教 材 見を持つことができる。 特に指定しない。必要な資料は授業時に配布する。参 考文献は授業中に指示する。 現代社会と大学 演習 (後期 木・ 3 全) 2 単位 Seminar: University and Modern Society 大学教育研究センター 飯吉 弘子 ●科目の主題 の演習授業である。 本授業では、現代の大学が抱える多様な問題を共通 ●科目の到達目標 題材として調べ考え発表・ディスカッションすることに その経験を通して、自ら課題を発見し解決策を考える よって、「大学」のあり方や「自分自身が大学で学ぶ意 力や多角的に物事を捉える力・相互の考えを深めるコ 味」をより客観的に捉えなおしたり、考察したりする。 ミュニケーションを行う力の基礎の修得を目ざす。 現代社会において大学が抱える諸問題や大学教育や学生 この授業で、大学という存在のあり方について考え、 のあり方等さまざまなテーマについて、自分で調べ、考 大学の一部である「学生」という立場で内側から見る え、その成果を発表し、学年・学部学科を超えたメン 「大学」と、社会など大学の外側から見られている「大 バーでのディスカッションを行う。そのような一連の学 学」像・「学生」像を比較し実感することを通して、最 習活動の中で、自らテーマを設定し、自分の意見をまと 終的には、現在の大学の課題や今後の大学自体のあり方 め、互いに伝えあい話し合う経験をする、受講生参加型 とともに「自らの学びや学生としてのあり方」を考え、 −67− 現代社会と人間 社会と人権 自己の相対化・客観化を行うことを目ざす。 ●評価方法 ●授業内容・授業計画 1)授業内提出課題、2)テーマについての調査報告 本授業では、大学に関する以下の6テーマ(他に興味 発表の相互評価、3)それをもとにまとめた最終レポー のあるテーマがあれば応相談)の中から、各自orグルー ト、4)ディスカッションへの参加度合い、5)授業 プの調査希望に沿って選んだ4∼5つのテーマに関して 活動全体への参加度合いをそれぞれ20%ずつ総合評価す 進める。 る。 (20点×5項目=100点) 【テーマ】1.大学の大衆化と学生の学力の問題 なお、授業内の活動参加を重視する科目のため、全体 2.社会から求められる能力・スキル の3分の2以上の出席回数が最低限求められる。 3.社会への出口としての大学・大学院 ●受講生へのコメント 4.21世紀に求められる教育内容 本演習では、自らの発表担当回に限らず、授業内外で 5.大学の入り口と初年次教育 の多くの自律学習と、授業内の活動への積極的な参加が 6.グローバル化と大学の目的・あり方 求められるが、それらに真剣に取り組むことで、課題設 授業は以下のとおり進める予定。 定・探求力、思考力、自律的学習力・コミュニケーショ 1回目授業:ガイダンス・メンバー紹介・希望テーマ ン力等の基本が身につくと考える。投げ出さずに最後ま でがんばって取り組んでいってほしい。 調査 2∼3回目:調査テーマ決定・調査方法の検討・グ 参加型の演習授業のため、受講生を18名程度に制限す ループ分け等必要に応じて資料検索・収 る。 集と調査のまとめ方指導 ●教 材 4∼15回目:上記4∼5テーマについて、テーマ毎に授業 2∼3回分を1サイクル(発表と補足講義+ 教科書は使用しない。随時授業時間中に紹介・配布す る。 ディスカッション)として授業を進める。 現代の部落問題 (後期 金・ 2 全) 2 単位 Buraku Issues in Modern Japanese Society 特 任 野口 道彦 ●科目の主題 いの解答ではない、一人一人にとってのユニークな意見 部落問題とはどんな問題か。今も差別は、なぜ残って をもつことを目標とする。 いるのか。21世紀になって、どのように変ったのか。部 ●授業内容・授業計画 落差別は、解消の過程にあるのだろうか。これらの問を 講義は、次のようなテーマを中心に考える。 解いていくことで、日本の社会の現実がみえてくる。社 1)今日の部落差別 会の構造が浮かび上がってくる。 2)結婚忌避 さまざまな差別問題に共通することは、「差別はもう 3)地縁忌避 ない」という意見と、「まだある」という意見に分かれ 4)雇用差別と行政の取り組み ることだ。部落差別をめぐってもそうである。問題認識 5)社会システムと差別 の出発点での認識の食い違いが、どうして生まれるのだ 6)部落問題の三位一体的認識からのパラダイム転換 ろうか。 ●評価方法 講義では、まず具体的な差別事件を通して、今、部落 コミュニケーション・カードの内容、期末の試験によ 差別はどのような形であらわれているのかを考える。そ り評価を行う。 こから、差別がなくなりつつあるのか。新しいバージョ ●受講生へのコメント ンの差別が生まれてきているのかを考える。 授業に関連した本を少なくとも3冊読むことを期待し もう一つの主題は、バラダイムの転換である。部落 ている。毎回、コミュニケーション・カードに、講義内 問題の常識的な見方を疑ってみる。「部落」とは何だろ 容に関連した意見や疑問を書いてもらう。次回にはその うか、「部落民」とは誰のことをいうのだろうか。今ま うちのいくつかを紹介し、コメントする。このようなや で、わかりきったことと思っていることも、あらためて りかたを通して、できるだけ一方通行の講義にならない 考えてみると、あやふやな知識に頼っていたり、カテゴ ようにしたい。積極的な受講態度を期待している。 リカルな見方をしていることに気づく。 ●教 材 ●授業の到達目標 寺木伸明・野口道彦編『部落問題論への招待―資料と 差別をなくすためには何をしたよいのだろうか、これ 解説、 第2版』 (2006年、解放出版社) を一人ひとりの学生が自分の頭で考えることだ。できあ −68− 社会と人権 メディアと人権 (前期 金・ 1 全) 2 単位 Media and Human Rights 非常勤 中村 一成 [平成 23 年度以前に「都市社会と差別」の単位を修得した者は、この科目は履修出来ない。 ] もある。なぜ起こるのか?その構造は? ●授業の主題と到達目標 マス・メディアからインターネットまで、巷間溢れ返 ⑨∼⑫ メディアの可能性や本来の役割は?「多数 る情報を読み取るリテラシー能力は、21世紀の「読み書 者」への迎合を旨とするマス・メディアとは一 き、ソロバン」といっていい。 線を画し続ける独立系メディアや、撮影・編集 記憶に新しい「アラブの春」は、メディアが抑圧体制 手段の簡易化がもたらした自主制作系のドキュ の下でも人々をつなぎ、解放の力となりえることを歴史 メンタリーを通して、冒頭の問題について考え てみる。 (5∼6回程度) に刻んだ――それは権力に都合よい情報を流し続けるマ ス・メディアではなく、個々人がメディアとなるネット ⑬、⑭ チュニジアやエジプトの「アラブの春」で だった――。 導火線にもなったインターネット。その可能性 本講座の主題は「メディアと人権」。到達目標は、そ と、一方で起こっている新たな差別事件の現状 の情報を「人権」の視点から読み解くこと。垂れ流され と「対応」への動き。一方で進む権力の取り締 る情報を批判的に受け止め、書かれていないこと、報じ まりや規制の動きとその狙いについて られていないことを考え、そこから情報を読み直す力を ⑮ 総括、討論 養うことである。 ●評価方法 よく引用される箴言「国民はその国民と同レベルの政 出席状況とレポートの内容などを基にして、総合的に 治しかもてない」をもじれば「国民はその国民と同レベ 評価する。 ルのメディアしかもてない」。メディアを人権の視座か ●受講生へのコメント ら解析することは、この社会の「差別」に対する認識を 講師はマス・メディア出身のフリーランス・ジャーナ 考えること、表面化しない人権意識を読み解いていく作 リスト。授業では抽象論ではなく、これまでに行った取 業でもある。 材や、授業とほぼ同時進行で行うメディア各界の人々へ 大本営発表を報じていた嘘が露呈した「8・15」から のインタビュー映像(授業で受け取った疑問も当然、ぶ 66年目の「3・11」で、本質的に権力の「補完物」であ つける)を徹底的に盛り込みながら、アクチュアルな話 ることを改めて露呈したマス・メディアの抱える構造 から切り込んでいきたい。後半に触れるインターネット 的な問題や、「アラブ革命」を可能ならしめたインター 規制の問題は、私自身、いまのところその是非について ネットの可能性と危険性まで。「メディアと人権」にま 立場を明確にし得ないイシューである。一緒に考えられ つわるさまざまな問題について受講者と共に考えたい。 ればうれしい。 ●授業内容・授業計画 ●教 材 ① オリエンテーション。マス・メディアの役割は? 新聞、雑誌記事など、必要に応じて配布する。新聞を 読む人自体が少数派だが、ネットでも気になったニュー 「知る権利」 「言論の自由」とは何か ②∼⑦ では具体的なマイノリティー報道において、 スについては、最低限、新聞各紙(できればテレビも) マス・メディアは何を報じ、何を隠ぺいしてき の報道内容を併読して、報じ方に対する自分なりの問題 たか。「分かる」ことの陥穽。「放送禁止」「用語 意識を持ってほしい。 集」にみる自主規制の問題など。 ⑧ 一方でマス・メディアの歴史は人権侵害の歴史で 部落解放のフロンティア (後期 金・ 1 全) 2 単位 Frontiers of Buraku Liberation 特 任 野口 道彦 他 ●科目の主題 どのように構想していくのかが、重要なポイントとな 部落問題は、現代の日本社会の構造に根ざした問題で る。 ある。部落を解放する営みは、日本の社会運動に大きな この講義は、部落解放の最先端(フロンティア)で取 影響を与えてきた。21世紀にどのような社会を作って行 り組んでいる三人の講師を招き、今、何が課題となって くのかということを考える場合にも、差別からの解放を いるのか、それぞれの立場から語る。 −69− 社会と人権 景への考察 部落解放とは何かということについて、過去にも何度 となく議論されてきたが、不況と混迷がつづく今の時代 第5回目:<谷元担当>部落解放運動の歴史と日本の 社会運動 に、あらためて新鮮な問題意識をもって、既成の観念に 第6回目:<谷元担当>部落差別克服への基本方向と とらわれず考えていく必要がある。 課題 ●授業の到達目標 部落解放の重点の置き方は、論者によって意見は異な 第7回目:<大北担当>排除と隔離の100年を問う る。そのために、部落解放のフロンティアといっても一 第8回目:<大北担当>2000年大阪府部落実態調査が 示したもの つではなく、さまざまなフロンティアがある。講師たち の講義に触発されて、受講者自身がそれぞれに自分の人 第9回目:<大北担当>セツルメントから隣保館へ 権社会創造のフロンティアを見いだすことを目標とす 第10回目:<大北担当>福祉と人権のまちづくりへの 挑戦 る。 ●授業内容・授業計画 第11回目:<大北担当>部落の経験を社会発展の糧に この講義は、オムニバス形式で行う。谷元昭信先生 第12回目:<友永担当>部落解放運動の国際展開⑴ は、部落解放同盟綱領の2011年改正にあたって中心的役 第13回目:<友永担当>部落解放運動の国際展開⑵ 割をはたされた。その中で「差別克服への3つの戦略課 第14回目:<野口担当>まとめと補足的な講義 題」を提起された。それがどのような問題意識から生ま 第15回目:試験 れたのかを、じっくりと話をしてもらう。大北規句雄先 ●評価方法 生は、隣保館活動の重要性を一貫して主張されてきた方 出席状況と、毎回提出してもらうコミュニケーション であり、また茨木で「福祉と人権のまちづくり」をまっ カードの内容と試験によって総合的に評価する。 たく新しい手法で実践されている。友永雄吾先生は、 ●受講者へのコメント オーストラリアのアボリジニ問題にも詳しく、部落差別 この講義は部落問題について知らない人を排除するも の撤廃を目指す運動を国際人権NGOや国連の人権諸機 のではないが、問題解決という実践的課題に焦点を絞る 関と連携しつつ展開されている。そうした動きを中心に ために、すでに部落問題の基礎知識を有していることを 話をしていただく。野口道彦(本学、人権問題研究セン 前提としてすすめる。大学入学までに十分な同和教育を ター)が全体をコーディネイトする。 受けていない人には、前期に『部落差別の成立と展開』 授業計画は次の通りである。 や『現代の部落問題』などを受講するか、部落問題につ 第1回目:<野口担当>部落解放運動の歩みを振り返 いての基礎的な文献を読んで勉強しておくことを強く希 望する。 る(ビデオ『水平』2002年制作) 第2回目:<谷元担当>部落差別の実相と現状に関す ●教材 『2012年度 部落解放のフロンティア―講義レジュメ る認識論 第3回目:<谷元担当>明治維新以降の部落差別の実 と資料』を、第1回目に配布する。 参考図書などについては、『講義レジュメと資料』を 態変遷 第4回目:<谷元担当>部落差別を生みだす社会的背 部落差別の成立と展開 参照 (前期 金・ 1 全) 2 単位 History of Discrimination against Buraku 非常勤 上杉 聰 ●科目の主題 ●授業の到達目標 被差別部落とそれを生みだした社会の歴史について、 どんな物事においてもそうだが、歴史を知ることは、 学生諸君はもうすでに小、中、高の段階である程度学ん 現状を知り、将来の展望を導き出すために不可欠だ。大 だと思う。「士農工商穢多非人」のピラミッド図式や、 学に学んでいるこの機会に、部落問題をいちど根底から 部落の始まりは江戸時代の初期にあるなど、聞き飽きた 考えてみたい、また本格的に取り組んでみたいと考える 人もいるかもしれない。 諸君に、是非とも歴史学(実証と全体性)を通して深く だが、部落の歴史研究の進展は、とくにこの20年間め 学び考える方法を知ってもらいたいと考える。 まぐるしく、その固定観念をゆさぶっている。本講義 ●授業内容・授業計画 では、そうした最先端の研究成果をもとに、部落差別 第1回 なぜ部落の歴史を勉強するか とは何か、そしてその始まりと歴史(中世から明治維新 第2回 「士農工商穢多・非人」のまちがい まで)について、平易に、しかし本格的に検討してみた 第3回 「社会外」という部落のあり方 い。 第4回 「部落は江戸時代に作られた」のまちがい −70− 社会と人権 第5回 中世の部落の姿 が、それを根底から考え直すとき、私たちの精神は自由 第6回 討論(テーマを学生が決め運営する) となり、解放される。部落の歴史を知ることは楽しい。 第7回 宗教と部落差別 もし、お説教やドグマを求めて講義を受けに来る人がい 第8回 戦国時代に何が起こったか れば、その人をガッカリさせてあげたいし、大学らしい 第9回 江戸時代に差別制度が本格化 知性溢れる授業にするよう努力したい。 第10回 差別のゆるみと強制 ●教 材 第11回 賤民制度が廃止される 教科書(毎回授業で使用するので必ず入手のこと) 第12回 浅香部落と大阪市立大学 上杉 聰『これでわかった!部落の歴史』(解放出版 第13回 討論(テーマを学生が決め運営する) 社) 第14回 総括授業 参考書 ●評価方法 上杉 聰『天皇制と部落差別』 (解放出版社) 期末試験と出席で評価する。 同 上『部落史がかわる』 (三一書房) ●受講生へのコメント 同 上『よみがえる部落史」 (社会思想社) 真実は人を自由にする。厳しく不条理な差別の歴史だ 部落差別の成立と展開 (後期② 金・ 1 全) 2 単位 History of Discrimination against Buraku 非常勤 辻本 正教 ●科目の主題と目標 さらには、部落史に手を染められている学者・研究者 1970年代以降活発化してきた部落史論は、膨大な地域 の中に、現実の部落解放運動に対する意識・無意識を間 史科の発掘とともに、これまでとまったく違った様相を わない遠慮や配慮があったからだと言える。 呈してきている。中でも、近世大和における旧穢多村と 本講では上記のような二側面からする制約をとっばら それ以外の「一般村」との間における土地所有実態等の いつつ、自由な立場で部落史を、いや日本史の一断面を 解明から、これまでの部落史観がその根本から崩されよ 切りとってみたい。その意味で本講では部落の成立を中 うとしていることの意義は大きい。被差別部落はその成 世とみるいわゆる中世起源説をとり、古代をその前史、 立からして悲惨であり貧困であったとする従来の歴史観 近世をその燗熟期ととらえて論を進めていく。また、近 が打ち破られたのである。近世大和における多くの旧穢 代にあっては融和運動の歴史、ならびにそれと密接不可 多村は他に比して遜色なく土地を所有し、経済活動もま 分にかかわるものとしての全国水平社の歴史をこれまで た他に比してより活況を呈していたことが公然化された にはない視点で明らかにしてゆく。 のである。逆に、部落の貧困化は明治期以降、とりわけ 方法論としては、従来の文献史学にみえる社会経済史 松方デフレ以降に現出したものであったということが明 的観点の限界性や、民俗学的手法の限界性を超えるべ らかとなってきたわけであるが、そんな中、では一体、 く、精神史とでも言うべき方法をとる。より具体的に 部落差別とは何であり、何によって形作られたもので は、我が国の古代・中世、果ては近世に至るまでの社会 あったのかという点の解明が、従来に増して必要とされ を席巻した道教や陰陽五行説、ないし易学などをも駆使 るようになってきたのである。そこでこの講義は、部落 しながら、そこに神道や密教の歴史や教理内容にも触れ 解放にむけた展望とも重ね合わせながら、従来の部落史 ていく形で展開していきたい。 観の転換を図っていくものとする。 講義時間の割り振りは、総論1、古代2、中世3、近 ●授業内容・授業計画 世2、近代2、グループ討論2、まとめ1を予定してい 従来の部落史論の多くは、部落の成立が近世にあるも る。 のとし、穢多身分は近世幕藩勢力によって創出されたと ●評価方法 する立場をとりつづけてきた。ところが、一般の歴史学 レポートと出席率(三分の二程度の出席を期待す 界ではすでに、そのような考え方が一笑に付されている る。 ) 現実にあるのである。では何故そのような部落史が今も ●受講生へのコメント なお通用しているかというと、圧倒的多くの歴史学者が レジメを基にするが、適宜、参考書を紹介する。 今なお部落問題をタブーとし、彼と彼女らがもっている はずの本音をいまだに語ろうとしないという理由が一 つ。 −71− 社会と人権 部落差別の近現代史 (前期 金・ 2 全) 2 単位 Modern History of Buraku Discrimination 非常勤 上杉 聰 ●科目の主題 第9回 法体系と裁判による差別 部落差別は、なぜ今も残っているのか。どうすればな 第10回 部落の改善と水平社運動 くすことができるのか。この大問題を解き明かすため、 第11回 日本国憲法の制定と部落問題 この授業では歴史を知ることを基本とする。そのため本 第12回 戦後の部落改善と解決の未来へ 講義は、明治維新から現在までの部落の歴史をまず取り 第13回 浅香部落の解放運動(フィールドワーク) 上げる。 第14回 グループ討論(テーマと進行は学生諸君が決 めて実施する) その上で、部落差別を生み出してきたこの社会を広い 視野から根底的に見直し、克服への道筋を追究する。差 ●評価方法 別を克服したいと願う学生諸君と共に考える授業にして 期末の試験と出席により評価を行う。 いきたい。 ●受講生へのコメント ●授業の到達目標 今も部落差別が残っていることに疑問を持つ諸君は多 歴史を解明すれば部落差別はどのようなものか、その いと思う。そこでまず現在起こっている差別を紹介し、 解決への課題も具体的に浮かび上がる。その結果、部落 それを歴史的にたどることで、明治初年以降の近現代社 差別の撤廃にむけた展望や政策も明確となる。本講義 会に差別が残されてきた仕組みを解明する。そこには多 は、そうした歴史的事実を把握する手法とともに解決に くの学生諸君にとって予想外の知識が待っているだろ 向けた考え方を学ぶことを目標とする。それを促進する う。その発見は、学生諸君の心に必ずや差別を撤廃する ため学生同士のグループ討論を行い、さらに大学のすぐ 意欲をかきたてることと思う。 近くにある被差別部落へのフィールドワークを行い、解 部落差別を最終的に克服する課題は、学生諸君の肩に 放運動のお話を直接聴く機会を作りたい。 委ねられる。この大切な課題について真剣に考えてみた ●授業内容・授業計画 いと思う諸君の受講を期待する。 第1回 部落差別は今、どんな形で存在するのか ●教 材 第2回 なぜ部落差別は今まで残ったのか 教科書(毎回授業で使用するので必ず入手のこと) 第3回 「解放令」と「四民平等」という錯覚 上杉 聰『これでなっとく!部落の歴史』(2010年、解 第4回 部落解放反対騒擾の悲劇はなぜ起こったか 放出版社) 第5回 グループ討論 参考書 第6回 旧「非人」部落の分解と近代社会 上杉 聰『これでわかった!部落の歴史』(解放出版 第7回 旧「穢多」部落の経済的分解と資本主義 社) 第8回 キリスト教と自由民権運動と部落 同 上『天皇制と部落差別』 (三一書房) 障害者と人権Ⅰ Human Rights of People with Disabilities I (前期① 金・ 5 全) 2 単位 (前期② 金・ 2 全) 2 単位 生活科学研究科 長濱 輝代 他 ●科目の主題 ら多面的に、身近な問題としてとらえ理解することがで 年齢、性別、職業、思想、そして障害の有無などにか きる。 かわらず、全ての人間は生きていくための権利を等しく ●授業内容・授業計画 有している。しかし、こうした多様な状況を有する人々 以下のサブテーマについて、生活科学部の専任教員お から構成される社会の中にこれまで長い間、差別や偏見 よび外部の非常勤講師によるオムニバス形式による授業 が存在し、様々な場面できびしい生活状況に置かれてい を行う。 (カッコ内は担当教員と回数を示す) る人々も数多く存在する。そのため、それらに対応する ① イントロダクション (長濱,1) 福祉の考え方や施策も進行しつつある。この講義では、 ② 乳幼児の育ちの場から (長濱,1) このような社会のあり方を具体的な問題を考察すること ③ ユニバーサルデザインの考え方と進め方 (岡田,1) を通して問い直していく。 ④ 人は人に関わってはじめて人になる1 (中村, ●授業の到達目標 「福祉」 「環境」 「健康」という生活上の3つの視点か −72− 4) 社会と人権 ⑤ 障害者の生活保障と生活支援1 (井上,5) ●受講生へのコメント ⑥ あなたがあなたらしく、私が私らしく生きるため 本来「健常者」「障害者」という区分は存在しない。 障害の捉え方や人権の考え方を様々な視点から理解し、 に(加納,2) ⑦ 課題レポート作成 (1) 社会の一般常識として学んでほしい。 ●評価方法 ●教 材 出席状況、および授業の最終回に作成する課題レポー 科目全体の教科書等は特にない。適宜資料を配布す トにより評価する。 る。 障害者と人権Ⅱ Human Rights of People with Disabilities II (後期① 金・ 5 全) 2 単位 (後期② 金・ 2 全) 2 単位 生活科学研究科 長濱 輝代 他 ●科目の主題 ① イントロダクション (長濱,1) 年齢、性別、職業、思想、そして障害の有無などにか ② 乳幼児の育ちの場から (長濱,1) かわらず、全ての人間は生きていくための権利を等しく ③ 高齢者・障がい者施設のデザイン (三浦,1) 有している。しかし、これまで長い間、こうした多様な ④ 人は人に関わってはじめて人になる2 (中村, 4) 状況を有する人々から構成される社会の中に差別や偏見 が存在し、様々な場面できびしい生活状況に置かれてい ⑤ 障害者の生活保障と生活支援2 (井上,5) る人々も数多く存在する。そのため、それらに対応する ⑥ あなたがあなたらしく、私が私らしく生きるため 福祉の考え方や施策も進行しつつある。この講義は、前 に2 (加納,2) 期に開講される「障害者と人権Ⅰ」の続編として、さら ⑦ 課題レポート作成 (1) に範囲と深みを広げた内容にしていく。 ●評価方法 ●授業の到達目標 出席状況、および授業の最終回に作成する課題レポー 「福祉」「環境」「健康」という生活上の3つの視点か トにより評価する。 ら多面的に、我々の身近な問題として理解することがで ●受講生へのコメント きる。 出来れば「障害者と人権Ⅰ」を履修したのち受講して ●授業内容・授業計画 ほしい。 以下のサブテーマについて、生活科学部の専任教員お ●教 材 よび外部の非常勤講師によるオムニバス形式による授業 科目全体の教科書等は特にない。適宜資料を配布す を行う。 (カッコ内は担当教員と回数を示す) る。 ジェンダーと現代社会Ⅰ (前期 金・ 2 全) 2 単位 Gender in Modern Society Ⅰ 人権問題研究センター 古久保 さくら 他 [平成 20 年度以前に「女性学入門編」の単位を修得した者は、この科目は履修出来ない。 ] ●科目の主題 されている社会の中で、主体的に生きる力を身につける 本講義では、学生諸氏が慣れ親しんできた学校教育と ことを期待する。 マスメディアという領域と、大学を卒業して出て行く労 ●授業内容・授業計画 働社会の現場を中心に、ジェンダー化された社会の現状 第1回 オリエンテーション について、考察したい。 第2回∼5回 メディアにおけるジェンダー ●授業の到達目標 ① CMにみるジェンダー わたし達は社会的存在であり、社会的につくられた文 ② アニメーションにみるジェンダー 化による刷り込みを日々受けている。社会的文化的刷り ③ アニメーションを批判的に見てみよう 込みとしてのジェンダーに自覚的になり、社会のなかで ④ ジェンダー視角から報道をみる 当然と認識し、目にしていながら理解してこなかった問 第6回 グループディスカッション 題を見えるもの、語りうるものにできる能力をつけるこ 第7回∼10回 教育におけるジェンダー平等をめざして と、これが本講義の主目標である。 ① 教育におけるジェンダー格差 そのうえで、大学卒業後の生活においてジェンダー化 ② 人権教育としての性教育 −73− 社会と人権 ③ ワークショップ ●受講生へのコメント ④ キャンパスセクシュアルハラスメント 20分以上の遅刻はみとめない。 第11回∼14回 変容期にあるジェンダー 双方向型授業をめざすため、毎回のコミュニケーショ ① 近代的ジェンダーの成立と問題点 ンカード(感想文)の提出が義務づけられている。これ ② 変容期にあるジェンダー をまとめて「ジェンダー・ペーパー」の発行を手伝って ③ 男女共同参画社会化はすすんだか くれる学生を募集している。ボランティアとして関与し ④ ジェンダー平等をめざす女性たちの運動 てくれることを期待している。 第15回 まとめ 質疑応答 また、数度にわたりグループワークが計画されている ●評価方法 ので、積極的な受講姿勢が求められる。 出席点(毎回提出した感想文による)・中間レポー ●教 材 ト・最終レポートにより評価する。 参考文献は、1回目の授業時に一覧表を渡す。それ以 外にも随時指示する予定である。何回かの授業では、教 材としてDVDを利用する。 ジェンダーと現代社会Ⅱ (後期 金・ 2 全) 2 単位 Gender in Modern Society Ⅱ 人権問題研究センター 古久保 さくら 他 [平成 20 年度以前に「女性学応用編」の単位を修得した者は、この科目は履修出来ない。 ] ●科目の主題 第10回 労働としての性の商品化 ジェンダースタディーズという学問で扱う問題領域の 第11回 ジェンダー視角からみた性の商品化 うち、セクシュアリティというテーマを中心に取り上 第12回 グループディスカッション げ、それを様々な角度から考察する 第13回 生殖をめぐる商品化 ●授業の到達目標 第14回 まとめにかえて 「自己責任」を考える 本講義では、メンズ・リブ運動の活動家や、フェミニ 第15回 質疑応答とレポート提出 スト・カウンセラー、弁護士など多様な非常勤講師をむ ●評価方法 かえ、現状の問題とその解決に向けた具体的方策などを 出席点(毎回感想文=コミュニケーションカードを提 講義いただく予定である。このような講義を受ける事を 出する)と最終レポートにより評価する。 通じて、その問題のもつ複雑さを理解し、関連問題の克 ●受講生へのコメント 服のための方策をともに考えるという姿勢を習得するこ 双方向型授業をめざすため、毎回のコミュニケーショ とを本授業の到達目標とする。それは、物事を複眼的に ンカードの提出が義務づけられている。これをまとめて 考察するという能力を養う事でもあると考える。 「ジェンダー・ペーパー」の発行を手伝ってくれる学生 ●授業内容・授業計画 を募集している。積極的に関与してくれることを期待し 以下の内容を計画しているが、非常勤講師の日程の都 ている。 合で、若干の変更の可能性がある。 また、数度にわたりグループワークが計画されている 第1回 オリエンテーション ので、積極的な受講姿勢が求められる。 第2回 若者の性行動におけるジェンダー 遅刻に対しては、厳しく対応し、20分以上の遅刻者の 第3回 異性愛だけが性愛か? 教室入室を禁止する予定である。 第4回 グループディスカッション レポート作成のために3冊以上の文献を読むことが必 第5回 男性性とセクシュアリティ DVという問題 要とされる。 第6回 性暴力被害者の心理と援助者の役割 ●教 材 第7回 キャンパス・セクシュアル・ハラスメントと 毎回プリント資料を配布する。 参考文献については、1回目の授業時に一覧表を渡す いう問題 第8回 ワークショップ:アサーティブ・トレーニング が、それ以外にも随時指示する予定である。 第9回 法律家からみたジェンダー・セクシュアリティ 何回かの授業では、教材としてDVDを利用する。 −74− 社会と人権 ジェンダーと現代社会 (前期② 月・ 2 全) 2 単位 Gender in Modern Society 非常勤 日野 玲子 [平成 21 年度以前に「女性学」の単位を修得した者は、この科目は履修出来ない。 ] ●科目の主題 第9回 配偶者間暴力について 「婦人問題講座」「女性学」を受け継ぎながら、女性 第10回 デートDV 暴力防止のために 学・男性学・ジェンダー研究の視点から現代社会を検討 第11回 男性学の課題と主張 することを課題とする。制度的な取り組みの整備だけで 第12回 ジェンダーと教育 なく、大学におけるセクシュアル・ハラスメント、デー 第13回 ジェンダーの視点にたつ男女平等教育 トDVなど、権力関係の視点で現代社会をみると、さま 第14回 結婚制度とジェンダー ざまな課題が浮き彫りになってくる。暮らしの中にある 第15回 試験 ジェンダー秩序に気づき、ジェンダー平等な関係を考え *授業の展開によって内容の変わる場合がある。 る機会としたい。 ●評価方法 ●授業の到達目標 授業時におけるレポート 30% ① ジェンダー概念を理解する 試験 70% ② ジェンダーの視点で現代社会を検討できる ●受講生へのコメント ③ 現代社会にあるジェンダー秩序を理解する 実践的なテーマを扱うため、積極的な参加を求める。 ●授業内容・授業計画 ●教 材 第1回 オリエンテーション 時間ごとにプリント資料を配布。 第2回 文化の力をしる⑴ 視聴覚教材も使用。 第3回 文化の力をしる⑵ <参考図書> 第4回 ジェンダー意識の形成 ・木村涼子・古久保さくら編著『ジェンダーで考える教 育の現在』(解放出版社2008) 第5回 ジェンダー秩序を考える⑴ ・天野正子・木村涼子編『ジェンダーで学ぶ教育』(世 第6回 ジェンダー秩序を考える⑵ 界思想社2003) 第7回 男女共同参画社会基本法について 第8回 女性に対する暴力を考える セクシュアル・ハラスメント エスニック・スタディ入門編 Ethnic Study (前期① 金・ 2 全) 2 単位 (前期② 火・ 2 全) 2 単位 経済学研究科 朴 一 ●科目の主題 7.特攻隊として散った在日コリアン 日本には200万を超える外国人が生活している。この 8.忘れられた皇軍たち 講義では、在日コリアンを事例に、在日外国人をめぐる 9.外国籍住民への指紋押捺は必要か 人権問題(戦後補償問題、社会保障、入居差別、雇用問 10.無年金の外国人は訴える 題など)について考えてみたい。 11.公務員の国籍条項について考える ●授業の到達目標 12.永住外国人への参政権問題 在日外国人が抱える諸問題について最低限の知識を身 13.新井将敬代議士はなぜ自決したのか につけ、外国籍住民との共生のあり方についての多用な 14.孫正義の挑戦 視点を理解する。 15.多様化する在日コリアンのアイデンティ ●授業内容・授業計画 ●評価方法 1.私の生い立ち 出席点を含む平常点50%、レポート20%、確認テスト 2.ダーリンは外国人 30%を総合し、採点する。 3.外国人の入居拒否は区別、それとも差別。 ●受講生へのコメント 4.日本の中の外国人学校 出席意欲のない学生、内職に懸命な学生、私語の多い 5.在日コリアンの来歴 学生、講義に非協力的な学生は遠慮されたい。 6.震災と在日外国人の受難 −75− 社会と人権 ●教 材 ・朴一『在日コリアンってなんでんねん』(講談社+α 新書) ・朴一『僕たちのヒーローはみんな在日だった』 (講談社) エスニック・スタディ応用編 (後期 金・ 2 全) 2 単位 Ethnic Study 経済学研究科 朴 一 他 ●科目の主題 4∼5.インドの民族問題 世界のあらゆる地域でエスニック紛争が激化してい 6∼8.フランスの移民問題 る。アジア、欧州、米国など、大部分の地域・国家で顕 9∼11.エスニック問題への理論的アプローチ 在化するエスニック集団の間の対立・紛争は、国家の基 12∼15.ゲスト講義 盤を揺るがす要素とさえなっている。この講義では、い ●評価方法 くつかの国家を事例に、民族問題やエスニック紛争の背 出席点を含む平常店50%、レポート20%、確認テスト 景、政府の取り組み、今後の課題などについて考えてみ 30%を総合して採点する。 たい。 ●受講生へのコメント ●授業の到達目標 この講義は経済学部の教員とゲスト講師によるオムニ 世界の民族問題に対する基本的な知識を提供し、民族 バス講義です。 問題の断面を理解する。 ●教 材 ●授業内容・授業計画 教材は、担当者がそのつどプリントを配布します。 1∼3.日本における外国人労働者問題 企業と人権 (前期 金・ 1 全) 2 単位 Business and Human Rights 非常勤 李 嘉永 [平成 23 年度以前に「部落産業論」の単位を修得した者は、この科目は履修出来ない。 ] ●科目の主題 ●授業内容・授業計画 今日、企業の社会的責任(CSR)を求める動きが、各 概ね、次のような構成で講義を進めたいと考えていま 方面で高まっています。CSRとは、事業活動に社会的公 す。 正さや環境への配慮を組み込み、多様なステークホル 1.イントロダクション:企業の社会的責任の概念 ダーに対して説明責任を果たしていくことを指します 2.CSR促進の多様なツール が、その一つの重要な問題領域として、人権問題が挙げ 3.労働問題 られます。その背景には、経済不況のもとで、職場が余 4.セクシュアル・ハラスメント 裕をなくし、しばしば人権侵害が発生していることが指 5.パワー・ハラスメント 摘されています。 6.女性と労働 そこで、この講義では、企業経営のさまざまな側面で 7.障害者・高年齢者の雇用促進 発生している人権問題について概観し、その改善のため 8.非正規労働をどう考えるか に実施されているCSRの取り組みを紹介したいと考えて 9.児童労働・強制労働 います。 10.少子化対策 ●授業の到達目標 11.消費者保護 企業を評価する際に、経済的指標に留まらず、社会的 12.サプライチェーンと人権 指標・環境的指標を含めた「トリプル・ボトムライン」 13.地域社会と企業 を用いて判断できる思考を習得してほしいと考えていま 14.人権問題解決に向けた社会貢献活動 す。また、企業が事業展開するにあたって、社会問題、 15.人権問題に関するNGOとの共働 とりわけ人権に関わる問題に対し、肯定的な影響を及ぼ ●評価方法 しうる配慮を組み込む工夫を理解していただければと思 期末に試験を実施しますが、授業中にも、数回小テス います。 トを実施できればと考えています。小テストは、数回の −76− 社会と人権 講義を簡単に振り返るものですから、復習を欠かさない また、ご質問等については、レジュメにメールアドレ ようにしてください。 スを記載しますので、メールでも受け付けています。 配点は次の通りです。 ●教 材 期末試験:80点 教科書は特には指定しません。毎回レジュメを配布し 小テスト:20点 ます。その際に、いくつか参考文献を提示しますので、 ●受講生へのコメント 各項目で関心を持たれた際には、それらを参照してくだ 毎回コミュニケーション・カードを書いてもらいます さい。 ので、ご意見・ご感想を自由に書いてください。 地球市民と人権 (前期 金・ 2 全) 2 単位 Global Citizenship and Human Rights 創造都市研究科 阿久澤 麻理子 ●科目の主題 9.国家と暴力 人類社会のすべての構成員が、人種や性、宗教、思 10.労働者の権利 想・信条、社会的出身等に関わりなく「人権」を有する 11.子ども・若者とシチズンシップ という理念を実現するための、人権の擁護・促進に関わ 12.国際協力と人権 るメカニズムと、多様な主体に関わる人権課題を学ぶ。 13.アジアと人権 ●授業の到達目標 14.市民運動 人権の概念と、個別具体的な課題について基礎的知識 15.企業という「名宛人」 を得るとともに、学習者自らの生活の中の課題を発見・ ●評価方法 解決する視座を獲得する。 出席状況、テスト ●授業内容・授業計画 ●受講生へのコメント 1.人権とは何か 多様な主体の視点から、人権を学ぶことによって、自 2.憲法と人権 分自身の権利についても知り考えるきっかけとしてほし 3.国際人権条とは い。 4. 「普遍的」人権への道のり(1)女性の場合 ●教 材 5. 「普遍的」人権への道のり(2)人種をめぐって 基本的に授業ではレジュメを配布するので、特定の教 6.在日外国人と国際人権 科書を指定しない。参考図書としては下記。 7.移住労働者 阿久澤麻理子・金子匡良(2006)『人権ってなに? 8.難民 Q&A』 解放出版社 人権と多様性の研究 演習 (前期 金・ 4 全) 2 単位 Seminar: Research of Human Rights and Diversity 特 任 野口 道彦 ●科目の主題 たい。自己の考えに説得力を持たせるために、当事者か 差別や排除、暴力やハラスメント、あるいはいじめな らじっくり話を聞いたり、既存の研究の成果や社会調査 ど人権侵害ではないかと思われる事象は、じつは私達の や世論調査の結果を利用する方法も習得することもねら 身の回りにたくさんある。 いとしている。 「これは差別ではないか」、 「ちょっと、おかしいので ●授業内容・授業計画 は?」と直感的に思っていることは、だれにも一つや二 「この事象は人権問題・差別の問題ではないか?」「こ つはある。普段は、それを深く考えたり、友達と議論す の問題を放置しておいてよいのだろうか?」「この社会 る機会もあまりないだろう。そのようなことについてグ 問題をどうすれば解決できるのだろうか?」という問題 ループで議論を深め、自分の問題意識を明確にすること 意識がある学生の受講を基本とする。 をテーマとする。 演習では、1)まず、各人が関心をもっている差別問 ●授業の到達目標 題・人権問題について発表する。2)それについて、議 考察を深め、議論を通して、自分なりに論理的に主張 論を行う。それにより、見落としていた視点に気づいた できるような能力を高めることを、本演習では目標とし り、各人の問題意識の明確化を行う。3)それを踏まえ −77− 社会と人権 歴史 て、さらに研究のテーマを絞りこみ、中間発表をする。 要請される。したがって、出席さえしていれば単位がと 4)さらに深く考察するために関連した調査研究、実践 れるというものではない。受講するにはそれなりの覚悟 記録など資料を探索・分析したり、どのような先行研究 が必要である。 があるのか調べる。5)他の人の報告や意見を参考にし ●受講生へのコメント ながら、最終的なレポートにまとめる。 主題「社会と人権」に属する科目のいくつかをすでに 受講生が多ければ、グループに分けることもある。グ 受講したか、受講中であることを参加の前提とする。演 ループ内でそれぞれの問題意識を発表し、議論して、グ 習科目であるので、各人の発表、議論への参加など、能 ループとしての共通した研究テーマを決める。また、グ 動的な授業参加が期待される。また、持続的な討論を行 ループのテーマにそって、各人がサブ・テーマや役割分 うために出席は極めて重要である。受講生は20名程度に 担を決める。 限定する。 また、必要となれば、外部から講師をお招きし、議論 ●教 材 することも予定している。 教材はとくに定めない。発表する人は、レジュメを用 ●評価方法 意し、必要な資料を全員に配布するように、あらかじめ 授業への参加の積極性などの平常点と最終レポートに 準備する。配布資料については、人権問題研究センター よって評価する。発表、議論への参加など、動的参加が のコピー機を利用できる。 日本史の見方 (前期 金・1 全) 2 単位 An Introduction to the Japanese History 特 任 栄原 永遠男 ●科目の主題 な天平文化の背後で何が起こっていたのか。この授業で 多面的な奈良時代史を政治過程に注目して分析する。 は、近年の発掘調査や最近の研究の成果をふまえて、奈 ●授業の到達目標 良時代の政治過程を、できるだけ具体的に検討してい 政治過程は、さまざまな集団が複雑に関係しあって形 く。 成される。したがって、一面的で単純な考え方では理解 次の内容で授業を進める。 することがむずかしい。1つの歴史事象を総合的多面的 1)道祖王の廃太子と官号改正 複眼的に見る目を養う。 2)藤原仲麻呂の権力掌握 ●授業内容・授業計画 3)光明皇太后の死 奈良時代というと、皆さんはいったいどのようなこと 4)藤原仲麻呂権力の動揺 を思い浮かべるのか。壮大な平城京や東大寺が造営さ 5)孝謙太上天皇と対立 れ、阿修羅像に代表される天平彫刻の優品や絢爛豪華な 6)仲麻呂政権の体制建てなおし 正倉院宝物が製作された時代、聖武天皇や光明皇后、藤 7)藤原仲麻呂の乱の経過と乱の影響 原不比等や仲麻呂などの藤原氏の人々や、万葉歌人大伴 ●評価方法 家持が活躍した時代、などなどであることが多いのでは テストと出席。 ないか。 ●受講生へのコメント たしかに、この時代が、一面で華やかさに満ちた時代 この授業は、諸君が抱いている奈良時代のイメージや であったことはまちがいない。しかし、実は、それはこ 先入観とはかなり違う内容になる。高校までの授業や、 の時代の一面にしかすぎない。 さまざまな影響で形成された先入観や固定観念にとらわ この時代には、長屋王の変、光明立后、藤原広嗣の反 れずに、歴史や現実を見ていく柔軟な眼を育ててほし 乱、橘奈良麻呂の乱、藤原仲麻呂の乱、道鏡事件その い。 他、多くの事件・政変があいついで起き、諸勢力がぶつ ●教 材 かりあい、殺し合った。この時代は、政治的にみると大 教科書はない。授業で使用する史料は適宜プリントで 変な激動期だった。 配布する。 では、なぜこのように大事件が頻発したのか。華やか −78− 歴史 東洋史の見方 (前期 木・2 全) 2 単位 An Introduction to the Asian History 文学研究科 井上 徹 ●科目の主題 ●授業内容・授業計画 私たちは急速に進行しつつあるグローバリズムの時代 ① 問題の所在 に生きている。グローバリズムがもたらした一つの現象 ② 城郭都市の成立 は、ヒト・モノ、そして各種情報の都市への集中という ③ 城郭都市の展開 現象である。こうした都市への集中現象は日本のみでな ④ 商業化と都市化 く世界的に出現しているが、それは歴史のなかでどのよ ⑤ 明清時代の都市をめぐる諸問題 うに位置づけられるのであろうか。中国を取りあげて、 ⑥ 個別事例としての都市広州 この問題を考えてみたい。 ⑦ ヨーロッパの都市1 ●授業の到達目標 ⑧ ヨーロッパの都市2 中国の都市の歴史は古く夏王朝にまで遡り、それ以 ⑨ 日本の都市1 来、20世紀初頭に至るまで、都市の主要な形態は城壁で ⑩ 日本の都市2 囲まれた城郭都市であった。城郭都市は政治・軍事を主 ⑪ 近代化の開始 要な機能とするが、唐宋変革期を経て、商業的性格を強 ⑫ 近代化に巻き込まれた都市 め、また城郭都市の外側に市鎮と総称される商業町が展 ⑬ 近代都市のモデル 開するようになった。都市史のうえで、16世紀以降は城 ⑭ グローバリズムと都市 郭都市の商業化が一層強まり、また市鎮が農村地帯に叢 ●評価方法 生するという新たな段階に突入した時代であり、社会総 ミニレポート、定期試験、出席により評価する。 体が都市と商業ルートを中心として結びつけられるよう ●受講者へのコメント になった。こうした中国の都市の歴史を追跡して、日本 この授業は都市史を中心に据えるので、通常の中国史 やヨーロッパの都市と比較しつつ、中国都市固有の問題 の概説とはかなり異なる内容となる。高校までに学んだ を検討するとともに、グローバリズムが中国の伝統的な 知識を踏まえつつも、柔軟な見方をしてほしい。 都市にいかなる変化をもたらしたのかを考えてみたい。 ●教 材 教科書は用いず、適宜プリントを配布する。参考書と して、斯波義信『中国都市史』(東京大学出版会、2002 年)を挙げておきたい。 西洋史の見方 (前期 火・4 全) 2 単位 An Introduction to the Western History 文学研究科 北村 昌史 ●科目の主題 業を行う。1∼2時間目が導入的授業である。3∼6時 1980年代以降研究手法として定着した観のある社会史 間目で長期的な視野に立つ社会史研究の成果に基づき、 研究の成果からみた、西洋史の見方を提示する。具体 この転換の流れを確認した後、7時間目以降では転換点 的には、16世紀から19世紀にいたるヨーロッパ史の動向 前後の時期のヨーロッパ社会の諸相を描く。 を、高校の世界史のような政治史や経済史からではな 1 ガイダンス く、人々の日常生活のレベルからヨーロッパ史を描きた 2 社会史研究の背景 い。 3 『子供』の誕生 ●授業の到達目標 4 近代家族 できるだけ具体的な史料・素材から話を展開すること 5 エリート文化と民衆文化 によって、教科書の記憶が中心の、高校までの「歴史」 6 食事・都市化 と異なる、大学で学ぶ「歴史学」についての理解を深め 7 転換点以前の社会⑴ る。 8 転換点以前の社会⑵ ●授業内容・授業計画 9 転換点以前の社会⑶ 18世紀後半から19世紀前半にかけての時期が、社会史 10 転換点以前の社会⑷ から見たヨーロッパ史の転換点であるという観点から授 11 転換点以前の社会⑸ −79− 歴史 12 転換点以後の社会⑴ 出てくる人物や事件はあまり授業では出てきません。ど 13 転換点以後の社会⑵ ちらかといえば、高校までの歴史に抵抗感を感じた人に 14 転換点以後の社会⑶ 受講していただきたいです。受講するに当たっては予習 15 転換点以後の社会⑷ や復習などは必要ありませんが、授業で紹介する文献 ●評価方法 に、図書館などで折を見て触れていただけるとありがた 最終成績評価100点満点すべてが定期試験の成績によ いです。 る。 ●教 材 ●受講生へのコメント 参考文献などは授業中適宜指示する。教科書はとくに 高校の世界史の知識は特に必要としません。世界史で 用いない。教材は、プリントを授業で配布する。 日本社会の歴史 (後期 水・3 全) 2 単位 Japanese History and Culture 文学研究科 仁木 宏 ●科目の主題 5:港町ではやった宗派 日本の中世都市は、古代の都(都城)とも、近世の城 6:山岳宗教都市の発見 下町ともちがう個性的な姿かたちや性格をもっていた。 7:寺と都市 西欧の中世都市や宋代・明代の中国都市とくらべると、 8:武士が嫌った都市 武士を嫌った都市 似ている点、異なる点があって興味深い。 9:室町時代の城下町 都市はどのような地形環境の所につくられるのか。港 10:戦国城下町を守る 町の船着き場はどのような構造になっていたのか。市は 11:城塞都市=京都 どうやって立てられるのか。社寺や武士は都市にどのよ 12:安土城下町の力量 うにかかわったのか。都市はどのように描かれるのか。 13:大坂の誕生 安土城下町は安土城ほど画期的であったのか。 14:中世都市の潜在力 現代に生きる私たちからみれば不思議なことがたくさ 15:まとめ んあった中世という時代(鎌倉・室町・戦国時代)の都 講義は、プロジェクターの画像と、配布するプリント 市を、北は青森県から南は鹿児島県までの事例によって を中心におこなう。 紹介しながらみてゆく。 ●評価方法 ●授業の到達目標 講義内容を的確に理解できているか、講義に能動的に 都市をキーワードにして日本中世社会の特色を垣間 かかわっているかを、小レポート(30/100)と定期試験 見、日本社会の歴史の多様性、特徴を学び、複雑かつ具 (70/100)で評価する。 体的な事象が歴史を作りあげてゆくことが理解できるよ ●受講生へのコメント うにする。 高校までの「日本史」受講の有無、暗記的知識の量は ●授業内容・授業計画 問わない。但し、受講にあたっては論理的展開をおって 講義はおおよそ以下のテーマでおこなう。 ゆく努力が必要である。 1:日本の中世都市の特徴 ●教 材 2:平安京から京都へ テキスト:特になし。 3:市の立つ場所 参考文献:適宜しめす。 4:港町と自然地形 プリント:毎回配布する。 東洋社会の歴史 (後期 木・2 全) 2 単位 Asian History and Culture 文学研究科 平田 茂樹 ●科目の主題 を歴史的に考察することは不可欠な作業である。 「絵画資料から読む前近代中国都市社会」 本講義では、「清明上河図」、「姑蘇繁華図」といった 中国社会の歴史を考える際に基礎単位となるのは都市 絵画資料を利用しながら、中国の都市がどのように発達 と農村である。現代中国の社会問題の一つとして都市と していったかを講義していく。 農村の格差問題があり、中国社会を理解する上で、都市 −80− 歴史 ●授業の到達目標 10.「姑蘇繁華図」の世界②:世界経済との連結 歴史を過去の遺物と考えないようにと、講義の中では 11.「姑蘇繁華図」の世界③:江南文化の隆盛 過去と現在、過去と未来の問題、具体的には東アジアの 12.「京師生春詩意図」の世界:首都北京の繁栄 現代社会の問題について言及しながら、歴史を学ぶこと 13.現代中国の都市と前近代中国の都市の比較 を通じて、日本と世界との関係、あるいは自己の存在に 14.総括 ついて長期の基軸からみつめる姿勢を養うことを狙いと ●評価方法 する。 授業中に書く小レポート(50%)と試験(50%) ●授業内容・授業計画 ●受講生へのコメント 順次以下の項目について講義していく。 毎回小レポートを書いてもらい、きちんとした東アジ 1.授業の目的、授業内容の概略紹介 ア理解を身につけてもらいます。毎回の取り組みが最終 2.中国の都市の発展史概観Ⅰ:政治都市、軍事都市 試験に直結します。主体的に自己の問題或いは周囲の問 3.中国の都市の発展史概観Ⅱ:経済都市 題を見つめる意識を持って出席するようにしてくださ 4.「清明上河図」の世界①:交通、商業の発達 い。 5.「清明上河図」の世界②:貨幣経済の発達 ●教 材 6.「清明上河図」の世界③:庶民文化の発達 参考書:斯波義信『中国都市史』(東京大学出版会) 7.中間総括 伊原弘『「清明上河図」と徽宗の時代』(勉誠 8.「平江図」の世界:地方都市の都市構造 出版) 9.「姑蘇繁華図」の世界①:市鎮の発達 西洋社会の歴史 History of Western Society (後期① 火・3 全) 2 単位 (後期② 火・1 全) 2 単位 文学研究科 草生 久嗣 ●科目の主題 4)ビザンツ帝国史3・・・多民族世界 西洋の東地中海世界、その前近代(16世紀以前)にお 5)ビザンツ帝国史4・・・十字軍期 ける社会の在り方を、ビザンツ帝国史というテーマに 6)ビザンツ帝国史5・・・パレオロゴス期 沿って論じてゆく。 7)ビザンツ帝国史6・・・ポスト・ビザンツ ●授業の到達目標 ●評価方法 ビザンツ帝国史は、三大陸(ヨーロッパ・アジア・ア 課題付小論文によって評価します。なお、この小論文 フリカ)の要に位置し、異文化との恒常的な接触を経験 は、レポートや自由作文ではなく、各自が十分な時間を しつつ千年続いた。多民族によって形成されたその社会 とって、授業で順次説明されていく執筆の条件を押さえ の在り方には、現代社会と重なるところが多い。日本と ていることが評価の条件です。 は多くの意味で異質な世界について、それを学ぶことを ●受講生へのコメント 通して、自分の今いる社会を見直す手がかりを得てもら 前提となる歴史知識はそれほど求めません。文房具や う。 図書館・博物館・文書館、大型新刊書店や古書店、イン ●授業内容・授業計画 ターネット書店を使いこなせている人の受講をすすめま 講義形式であるが、受講生自身の知識・関心を重視し す。 て、授業に取り入れることもこともある。(各回2回ず ●教 材 つ割り当て) 井上浩一・栗生沢猛夫『ビザンツとスラブ』(中央公 0)イントロ 論新社) 1)世界史におけるビザンツ帝国 根津由喜夫『ビザンツの国家と社会』(山川出版社) 2)ビザンツ帝国史1・・・古代末期 和田廣『史料が語るビザンツ世界』(山川出版社) 3)ビザンツ帝国史2・・・三帝国期 −81− 歴史 現代の歴史 (前期 木・4 全) 2 単位 Modern History 文学研究科 野村 親義 ●科目の主題 7.欧米の自由主義プロジェクトとアジアの植民地化 講義では、アンガス・マディソンらが構築した数量経 8.植民地支配下のアジアの経済⑴−貿易・金融 済史研究の成果を踏まえ、19世紀から現代に至るアジア 9.植民地支配下のアジアの経済⑵−製造業 現代史の動向を、昨今注目著しいインドに焦点を当てな 10.植民地支配下のアジアの経済⑶−労働 がら、論じます。 11.植民地支配と独立運動 19世紀初頭、世界のGDPの6割近くを占めたアジア 12.独立と開発政策 は、20世紀半ばにはその比率を2割程度まで大きく下落 13.輸入代替型工業化 させました。しかしその後、アジアの奇跡などを経、現 14.輸出志向型工業化 在は19世紀に得ていた地位を回復しつつあります。本講 15.アジアの奇跡とアジア通貨危機 義の目的は、アジアが世界に占める経済的地位を大きく ●評価方法 変化させてきた背景を、工業化、植民地化、帝国主義、 期末試験で評価します。 ナショナリズム、開発政策など、時々の世界の政治・経 ●受講生へのコメント 済・社会情勢に配慮しつつ、特にインドに焦点を当てな 昨今の日本の政治・経済・社会情勢は、アジア諸国の がら、理解することにあります。 政治・経済・社会情勢と分かちがたく結ばれています。 ●授業の到達目標 本講義を通じ、アジア諸国、特に昨今注目著しいインド 本講義の到達目標は、世界の注目著しいアジアの200 の現代史の理解を深めることで、日本の今後を考える上 年を、歴史を通じ理解する目を養うことにあります。 で重要なアジア諸国の政治・経済・社会情勢をよりよく ●授業内容・授業計画 理解する一助としてもらえれば幸いです。 1.導入 あわせて、現代をよりよく理解する上で、歴史を理解 2.アジアとはどこか することがいかに重要であるかを感じ取ってもらえれば 3.19世紀以前のアジア⑴−インド より一層幸いです。 4.19世紀以前のアジア⑵−中国・日本 ●教 材 5.比較対象としての19世紀以前のヨーロッパ 教科書はありません。プリントを授業中に配布しま 6.欧米における工業化とアジアの経済的地位の相対 す。また、適宜ビデオ等も利用します。 的低下−統計が示すこと 考古学入門 (後期 火・2 全) 2 単位 Introduction to Archaeology 文学研究科 岸本 直文 ●科目の主題 代・古墳時代という時代区分をする。それぞれがどんな ひとびとが暮らした住まいの跡、使っていた道具など 時代であったのか、研究史をひもとき、遺跡の発掘調査 のモノ、これらが地面のなかに埋もれて遺っている。こ の事例を紹介しながら、いま考えられている歴史像を紹 れが遺跡である。人間の活動が多様であるので、遺跡に 介する。 もさまざまな種類がある。考古学は、こうした遺跡を発 1 考古学とはなにか 掘調査することにより、遺された痕跡やモノから、そこ 2 考古学の資料は遺跡 で生活したひとびとの営みを復元する。考古学により明 3 遺跡の発掘調査 らかになった日本の歴史をたどる。 4 旧石器時代 氷河の時代の狩猟生活 ●授業の到達目標 5 縄文時代⑴ 定住のはじまり 考古学が明らかにした日本列島の原始・古代につい 6 縄文時代⑵ 縄文文化の豊かさと限界 て、各時代の本質的な意味を学び、その歴史過程の基本 7 弥生時代⑴ 米作りの開始 を理解すること、および考古学に興味をもってもらうこ 8 弥生時代⑵ ムラからクニへ とを目標とする。 9 弥生時代⑶ 王墓の成立と地域ブロックの競合 ●授業内容・授業計画 10 古墳時代⑴ 邪馬台国の考古学 日本の考古学では、旧石器時代・縄文時代・弥生時 11 古墳時代⑵ 前方後円墳の誕生 −82− 歴史 12 古墳時代⑶ 古墳時代の政治変動 ●受講生へのコメント 13 古墳時代⑷ 中央権力の卓越と前方後円墳の停廃 遺跡は全国で40万カ所といわれる。どこにでもあり、 14 古代 律令社会の考古学 ごく身近なところにある。有名な遺跡ばかりでなく、あ 15 まとめ まり知られていない数多くの遺跡のすべてが、みなさん ●評価方法 が住んでいる地域の歴史を明らかにする素材となる。そ 小レポート提出2回(各15点)、締め切り日以降に提 うした身近な遺跡に関心をもってほしい。 出しても受けとらない。期末試験(70点)、持ち込み不 ●教 材 可。 プリントを配布する。授業はパワーポイントによる。 歴史学の世界 演習 (前期 木・1 全) 2 単位 Seminar:World of History 文学研究科 佐賀 朝 ●科目の主題 ① ガイダンスと「概説・浮世絵とは何か」 「浮世絵の社会=文化構造を読む」と題し、近世日本 ②∼⑬ テキストに関する報告とディスカッション が生み落とした浮世絵について美術史・都市社会史の視 *浮世絵を取り上げたビデオの鑑賞も時々はさむ。 点から論じた文献を読むことで、「歴史学の世界」に触 ⑭ まとめ れる。 ●評価方法 ●授業の到達目標 出席と感想用紙・課題シート等の内容、発表やディス 浮世絵と、それが描いた素材である芝居や遊廓、寄 カッションへの取り組み、期末レポートなどを総合的に 席、盛り場、講中などを都市社会・文化史の視点から論 評価する。 じたテキスト『浮世絵を読む』1∼6の中から、いくつ ●受講生へのコメント かの論文を取り上げて、受講生による分担・発表とディ 「社会=文化構造」というのは、耳慣れず難しい印象 スカッションの形で読み進めていく。 を与えるかもしれませんが、私たちもよく知っている江 こうした作業を通じて、浮世絵をはじめとする近世江 戸時代の文化作品である浮世絵は、江戸という近世の巨 戸の文化に触れてもらうとともに、近年、歴史学の分野 大都市を母胎として生まれたものであり、そこには当時 で進展しつつある都市社会史の視点と方法についても学 の都市社会の現実が様々な形で刻み込まれています。 んでいきたい。 この授業は、文化現象を、単に表層的に楽しみ論評す ●授業内容・授業計画 るのではなく、美術史や都市社会史の研究から解き明か テキストから以下の論稿を候補とし、読み進めてい される社会的な背景も含めて、浮世絵の歴史的意味と楽 く。 しさを、より深く知り、考えようというものです。浮世 分量が長いものは適宜、2回に分けるなどする。 絵を見て楽しむだけでなく、その背後にある江戸の社会 ・浅野秀剛「写楽の第一期役者大首絵をめぐって」 まで覗いてみたいという学問的好奇心のある受講生をお ・神田由築「二代目山下金作と寛政期の芝居興行」 待ちしています。 ・吉田伸之「芝居地」 ●教 材 ・浅野秀剛「広重の風景画の虚構」 ・浅野秀剛・吉田伸之編『浮世絵を読む』1∼6(朝日 新聞社、1997∼98年) ・大久保純一「広重―図会の時代の名所絵師」 ・吉田伸之「両国」 *上記は事実上のテキストだが、購入は不要。 ・浅野秀剛「「北国五色墨」の虚と実」 ・大久保純一『カラー版 浮世絵』(岩波新書、2008年) ・吉田伸之「新吉原と仮宅」 *その他の文献などは、授業のなかで随時、紹介する。 ・田沢裕賀「北斎が見たもの学んだもの」 ・吉田伸之「講中」 ・吉田伸之「浮世絵の社会=文化構造」 −83− 地域と文化 現代の地理学 (前期 月・ 3 全) 2 単位 Current Geography 文学研究科 祖田 亮次 から、アジア・ヨーロッパなど世界各地のものを取り上 ●科目の主題 本講義では、人間−環境関係について、様々な視点か げる。 ら考える。その際、自然科学的な作業から自然現象を明 ① イントロダクション らかにするのではなく、人文学的な視点から、何を問題 ②∼③ 環境決定論・環境可能論、風土論、政治生態学 と捉え、どのように考えればよいのかということを中心 ④∼⑦ 河川改修、自然再生、災害文化、流域社会論 に講義を進める。 ⑧∼⑩ 熱帯雨林、プランテーション、バイオマス社 会論 ●授業の到達目標 自然や環境の意味は、社会状況や時代によって大き ⑪∼⑫ 焼畑・狩猟採集・水田・里山、半自然・半栽培 く異なるものであることを理解し、我々が「認識」して ⑬∼⑮ 国立公園・世界遺産、エコツーリズム いる自然環境と、どのような関係を結んでいけばよいの ●評価方法 か、多角的・多面的にとらえるための知識と考察方法を 評価のおよその内訳は以下のとおりである。出席: 身につける。 20%、小テスト・課題提出:40%、レポート40% ●授業内容・授業計画 ●受講生へのコメント 水田や里山は自然なのか?近所を流れる河川はなぜこ 高校時代に地理を履修していたかどうかは、問題で のような形になっているのか?国立公園や世界自然遺産 はない。高校までに地理を履修した人は、地理=地名や はどのような意味を持つのか?熱帯雨林の消滅に日本は 特産品の暗記というイメージを持っているかもしれない どう関わっているのか?エコツーリズムの背景にはどの が、本来の地理学は、人間−環境関係を考察することを ような政治的意図があるのか?自然災害をどう認識し、 主眼としている。したがって、少しでも環境認識や環境 克服すべきなのか? 問題、災害文化等に関心があれば、誰でも受講可能であ 現代は、様々な環境問題が国際政治の場において語ら る。3∼4回に1回の割合で、小テストあるいは課題提 れる一方で、人々は「身近な自然」に対しても意識的に 出を求める。 なりつつある。この講義では、これらの自然や環境に関 ●教 材 わる具体的な現象や問題を取り上げながら、私たちがど のように自然や環境と関わっていくべきかを考察する。 特定のテキストは使用しない。参考図書などがある場 合は、講義の際に提示する。 考察対象とする具体的事例としては、関西の身近なもの 現代の地理学 (後期② 月・ 1 全) 2 単位 Current Geography 文学研究科 山﨑 孝史 ●科目の主題 ③ 第4章 空間分離主義批判 本講義は、現代社会を地理学的に理解する一つの手段 ④ 第5章 場所の政治的意味 として、政治という側面について考える。 ⑤ 課題1 空間と場所が緊張する例を考える ●授業の到達目標 ⑥ 第6章 人間の領域性 本講義によって、政治的事象が空間や場所といかに密 ⑦ 第14章 安全・安心のまちづくり 接に結びついているかを理解することを目標とする。 ⑧ 課題2 人間の領域性が行使されている例を考え る ●授業内容・授業計画 政治地理学の入門編として、山崎孝史(2010)『政 ⑨ 第7章 グローバル化とナショナリズム 治・空間・場所―「政治の地理学」にむけて』(ナカニ ⑩ 第9章 スケールの政治 シヤ出版)をテキストに、政治地理学の理論と分析方法 ⑪ 課題3 ナショナリズムがローカルに現れる例を 考える について数回講述したあと、受講生各自が関連する具 体的な事例について考え、発表する。これを4回繰り返 ⑫ 第10章 言説の政治 す。 ⑬ 第11章 社会運動の領域性 ① イントロ:講義の構成 ⑭ 課題4 地政言説の例を考える ② 第3章 政治地理学の展開と課題 ⑮ まとめ −84− 地域と文化 ●評価方法 ●教 材 週リーディングレポート40%、課題口頭発表60%。 山崎孝史(2010)『政治・空間・場所―「政治の地理 ●受講生へのコメント 学」にむけて』(ナカニシヤ出版)を購入すること。そ 受講生数が少ないと予想されるので、演習に近い形式 の他については、以下の担当教員のホームページを参 で行う。よって出席や課題提出が重視される。「地理学 照。 概論I」と一部内容が重複するので、留意すること。 http://www.lit.osaka-cu.ac.jp/user/yamataka/home.htm 都市の地理学 (後期 月・ 3 全) 2 単位 Geography of Urban Area 文学研究科 大場 茂明 ●科目の主題 ②・③ 都市の形成過程 現在、世界人口の過半数、先進工業国では国民の三分 ④・⑤ 都市機能分化と空間構造の変容 の二以上が都市に居住している。古代にメソポタミアで ⑥・⑦ 日本の都市 誕生して以来、都市の歴史は長いが、現代こそまさに ⑧・⑨ 現代社会と都市問題 「都市の時代」であるといえよう。また、都市は人々の ⑩・⑪ 都市更新事業とまちづくり 日常生活や産業活動の舞台であると同時に、過密、環境 ⑫・⑬ 人口減少と都市の縮退 汚染など様々な問題が集積している場所でもある。 ⑭ まとめと今後の展望:都市の未来像 そこで本講義では、自然・人文の諸現象が相互にむす ●評価方法 びついて展開する地表面の空間的な構造を研究する地理 評価は、毎回の授業終了時に記入してもらうコミュニ 学の立場から、都市の形態、機能、構造について内外の ケーション・カードによる平常点(20%)と、定期試験 具体的事例を提示しつつ概説する。 の点数(80%)によって行う。 ●授業の到達目標 ●受講生へのコメント この講義では、地理学のアプローチを通じて、近年の 授業では、理論や概念のみを取り上げるのではなく、 都市問題や今後のまちづくりの課題について考え、激動 具体例に則して進めていく。したがって、高校時代に地 する現代社会の諸問題を理解するための術(すべ)を身 理を履修していたかどうかは問わないし、特別な予備知 につけてもらうことを目標とする。 識も必要としない。専門用語については、その都度解説 ●授業内容・授業計画 や補足説明を加えていくので、授業に集中して臨んでほ 授業では、以下の項目に従って、映像資料などを用い しい。 て内外の具体的な素材を提示しつつ講述する(数字は ●教 材 授業回数)。なお、最初の20分間を利用して、コミュニ 教科書:使用しない(講義資料として、授業時にプリン トを配布する)。 ケーション・カードに基づき、質疑応答などを行い、前 参考書:必要に応じて授業時に紹介する。 回内容の確認を行う。 ① 序:地理学では都市をどう捉えるか? 文化人類学入門 Introduction to Cultural Anthropology (前期①・火・ 3 全) 2 単位 (前期②・火・ 1 全) 2 単位 文学研究科 多和田 裕司 ●科目の主題 ●授業の到達目標 文化人類学とは、自分とは「異なる」人々にたいする 本講義は文化人類学を初めて学ぶ者にたいする入門的 理解を深め、同時に、どうすれば「異なる」もの同士の 講義であり、文化人類学の基礎的知識や考えたかを身に 間でよりよいコミュニケーションを持つことが出来るの つけることを目標とする。あわせて人類学的フィールド かを探ろうとする学問である。本講義においては、諸学 ワークの一端を自ら経験することで、「他者/異文化理 説や具体的な民族誌の紹介をとおして、文化人類学がこ 解」という営為そのものについての理解の深化をはか れまで「他者/異文化」をどのようにとらえてきたかに る。 ついて理解する。それとともに、受講者それぞれが「他 ●授業内容・授業計画 者/異文化」と実際にかかわることで「他者/異文化理 主な内容は下記のとおり。 解」を自覚的に経験する。 ① 文化人類学とはどういう学問か −85− 地域と文化 ② 文化人類学の対象:他者、文化、異文化 (レポート課題) ③ 文化人類学の方法:フィールドワーク 海外から日本を訪問中の人を対象にインタビューを行 ④ フィールドワークおよびレポート作成について い、⑴その人が「日本にたいして感じたこと」、⑵自分 が「そのインタビュー経験のなかで感じたこと」、につ の説明と助言 ⑤⑥ 推論と偏見による異文化理解 いてまとめる。なお留学生や教員をインタビューの相手 ⑦⑧ 「科学的」異文化理解への志向 とすることは認めない。詳細については授業中に説明す ⑨⑩ 文化相対主義とアメリカ文化人類学 る。 ⑪⑫ 文化を解釈する ●受講生へのコメント ⑬⑭ 双方向的異文化理解へ向けて 本講義では、レポート作成のためのインタビューはも ⑮ 講義の総括 ちろんのこと、通常の講義においても能動的な姿勢で学 ●評価方法 ぶことが求められる。 定期試験(60点満点)およびレポート(40点満点)に ●教 材 よって評価する。 教科書はとくに指定しない。授業中に適宜参考文献を 紹介する。 ことばと文化 (後期 水・ 4 全) 2 単位 Japanese and our culture 文学研究科 丹羽 哲也 ●科目の主題 13∼ 言語の地理的変異 現代日本語およびその歴史的背景について、基礎的・ 方言分布の類型や新方言について解説する。 体系的な知識を身につけ、我々が普段何気なく使ってい ●評価方法 る言葉についての自覚を深める。 毎回課される課題の提出(2割)と学期末の試験(8 ●授業の到達目標 割)による。 ことばの乱れ、敬語法、漢字問題といった、日本語に ●受講生へのコメント 関する基礎的な教養を身につける。 課題の問題は、題材は身近でも、必ずしも簡単なもの ●授業内容・授業計画 ではない。問題を通して、ことばの論理性と多様性を学 1 日本語の位相差 んでもらう。 2∼4 言葉の「乱れ」 ●教 材 日本語の「乱れ」と言われるものについて、言語変 プリントを配布する。 化、言語の位相差、規範意識という観点から考察 参考書:金田一春彦『日本語(上・下)』(岩波新 書)、井上史雄『日本語ウォッチング』(岩 する。 5∼9 敬語の体系 波新書)、同『敬語はこわくない』(講談社 敬語の3分類(尊敬語・謙譲語・丁寧語)を5分 現代新書)、菊地康人『敬語再入門』(講談 類に改めるという方針(文化審議会答申)に即し 社学術文庫)など、日本語に関して手軽に読 て、敬語の体系を解説し、敬語の誤用や敬語の歴 める本はいろいろあります。 史についても考察する。 10∼12 表記の問題 常用漢字や人名漢字など漢字制限に関わる問題や仮 名遣の問題について解説する。 −86− 地域と文化 景観と文化 (前期 木・ 2 全) 2 単位 Landscape and Culture 非常勤 山野 正彦 ●科目の主題 る。究極に、景観や場所がわれわれの生活のコンテクス グローバル化の進んだモダン/ポストモダン都市に新 トとなり、アイデンティティの形成と密接につながって しく出現した、消費の景観(landscape)の様相と形成 いることを明らかにしたい。 過程を具体的に示し、文化が景観を作り出すという観点 授業内容は以下のとおりである。 から、都市に生活する人々の生活の仕方と景観や場所と ⑴はじめに:授業の目的とキーワード(2回)、⑵都市 の関係を明らかにする。 再開発によって創造された景観(2回)⑶場所のマク ●授業の到達目標 ドナルド化と均質化(2回)、⑷ディズニー景観と場所 私たちの生活の舞台となっている景観や場所が、どの のディズニー化(2回)、⑸ショッピングモールの景観 ように作られ、どのように私たちの日常行動や考え方と (2回)、⑹アメリカ村・堀江・南船場界隈の形成、⑺ 関係しているのかが理解できる。受講生が自分で現実の ツーリズムの景観(2回)、⑻弾力ある都市空間の創造⑼ 生活環境を見て、ほんものの(authentic)生活の仕方 まとめ:ほんものの「場所」の創造と生活の仕方再考。 を考えることができるようになることを目標とする。現 講義ではビジュアルな教材を使用することに努める。 代の都市づくり、場所づくりや、消費に基礎をおく都市 ●評価方法 社会・文化について考える諸学問に関する横断的な知識 2回のレポートによる。出席点を加味する。 を提供する。 ●受講生へのコメント ●授業内容・授業計画 この科目は、単に科学的知識や技術を教えることを目 1970年代ごろから、都市空間に新しいコンセプトやデ 標とするものではない。現代都市に生きる人々が、どの ザインに基づいて建設された建築物、街区、商業・観光 ような日常生活を過ごしたらよいのかについて、ゆっく 施設などが現われ、日常生活の様相が変化してきた。 り思考したいと考える受講者の参加を期待している。 この傾向は北米で最初に現れた。モダン/ポストモダン ●教 材 の生活様式とデザインに従った建築計画や再開発の進 参考書:レルフ、高野・阿部・石山訳『場所の現象 行、快適で便利な消費施設、ツーリストにとって魅力的 学 』( ち く ま 学 芸 文 庫 、 1 9 9 9 ) . ボ ー ド リ な場所づくりなどを目ざそうとする傾向など、新しい景 ヤール、今村・塚原訳『消費社会の神話』 観と場所の創造を意図した開発が進められている。授業 (紀伊國屋書店、1995).リッツア、山本・ では、現代の消費文化と資本の論理が生み出した景観の 坂田訳『消費社会の魔術的体系』(明石書店、 特徴を示すとともに、このような一見したところ魅力的 2009).ほか。毎回授業時に参考資料を配布 で便利そうに見える現代都市の景観が、人間の生き方に する。 関するどのような問題点を含んでいるのかについて考え アジアの文化 (前期 月・ 3 全) 2 単位 Culture in Asia 文学研究科 中川 眞 ●科目の主題 「グローバルとローカル」という視点も導入し、伝統的 東南アジア(主にインドネシア)の音楽、舞踊などの な側面だけではなく、現代的な都市文化の創造について 身体文化について講義する。 も論じる。 ●授業の到達目標 ●授業内容・授業計画 アジアの文化は多様であるが、ひとつの国のなかにお (1)グローバル化時代における東南アジアの文化 いても多様な民族文化が併存していることを認識するの (2∼3)インドネシアへの序章 が目標である。インドネシアはオランダの植民地を引き (4∼8)ジャワの芸能 継ぐ形で第2次大戦後に独立したが、内発的な統一国家 (9∼12)バリの芸能と儀礼 としてスタートしたわけではなく、様々な民族、文化が (13)異文化のなかのインドネシア 並存している。特にジャワ(イスラーム)、バリ(ヒン (14)新たな都市文化の創造 ドゥー)の両文化を比較しながらその特質を論じ、「多 (15)まとめ 様性のなかの統一」という国是を検証する。さらに、 授業は基本的に講義形式であるが、可能であれば、コ −87− 地域と文化 ンサート美術展見学など、実際の表現に触れてみたい。 ●受講生へのコメント ●評価方法 「評価方法」の項で書いたように、多くの課題が出さ 第2回の講義時に「私のなかのアジア文化」という れる講義なので、生半可な気持ちで受講すると挫折する テーマでレポート(1200字程度)を提出することが受講 可能性があるので、注意されたい。但し、アジアの身体 の条件である。この場合の「アジア」には日本は含まな 文化について深く知りたい人には受講を勧める。 い。事前に調べる必要はなく、あなたの体験に即した ●教 材 感想文を自由に書いてほしい。その他、イベントレポー 講義時に指示する。 ト、最終課題(レポート)など、多くの課題が出され る。 アジアの地域と文化 演習 (前期 月・ 2 全) 2 単位 Seminar: Regional and Cultural Studies of Asia 文学研究科 中川 眞 ●科目の主題 授業は基本的に実習形式であり、初歩からの演奏の手 インドネシアのガムラン音楽の実習により、地域の文 ほどきを行う。音楽経験の有無は問わない。また、授業 化を肌で感じる。 の仕上げとして、7月に学内でミニコンサートを開催す ●授業の到達目標 る。 ガムラン音楽の基礎からはじめ、いくつかの楽器の演 ●評価方法 奏法を習得し、最終的には3∼4曲を合奏できるように 演奏の習得レベルをチェックする。学期末の終了時に なるのが目標である。その過程で、音楽は楽譜にではな 実技習得の見極めチェックを行う。 く身体にある、ということを実感するだろう。そういっ ●受講生へのコメント た音楽的身体を体験することによって、音楽に対するこ 楽器の数に制約があるため、受講生の数を15名以内に れまでの先入観は打ち砕かれていくことを期待する。 制限する。受講希望多数の場合は選抜する。ガムランは ●授業内容・授業計画 コミュニティ重視の音楽であり、他者への関心と寛容性 (1)ガムランの手ほどき を心がけてもらいたい。もちろん、出席重視。 (2∼6)ランチャラン形式の演奏法習得 ●教 材 (7)ガムランコンサートの鑑賞(随時) 授業中に配布する。 (8∼12)ラドラン形式の演奏法習得 (13∼14)演奏の仕上げ (15)まとめ 日本事情ⅠA (前期 火・ 2 全) 2 単位 Current Japanese Culture and Society ⅠA 非常勤 山東 功 ●科目の主題 ①ガイダンス・授業科目「日本事情」について 「日本事情IA」は留学生に対して現代日本の事情を ②∼⑫日本事情概説 日本語・日本文学、日本文化、 紹介・解説する科目である。なお、本科目受講者は留学 日本史、日本(大阪)の地理、 生を対象にしているため、日本の学生は単位取得できな 日本の政治・経済 いので注意すること。 ⑬⑭特別講義(2回 日程については後日連絡) ●授業の到達目標 ⑮まとめ 日本事情について紹介されたさまざまな文章の読解を ●評価方法 通じて、日本に関する基礎知識を身につける。 レポート40% 平常点(出席・コメント)60% ●授業内容・授業計画 ●受講生へのコメント 日本事情について紹介されたさまざまな文章の読解を 問題意識を明確にしたレポートを特に評価するが、授 通じて、日本に関する基礎知識を身につける。なお、期 業中の積極的な参加・質問等についても重視する。 間中に学内教員による2回の特別講義が設けられている ●教 材 ので、必ず出席すること。 プリントを配布する。 −88− 地域と文化 日本事情ⅠB (後期 火・ 2 全) 2 単位 Current Japanese Culture and Society ⅠB 非常勤 山東 功 ●科目の主題 ①ガイダンス・授業科目「日本事情」について 「日本事情IB」は留学生に対して現代日本の事情を ②∼④日本事情概説 住宅、買い物、食生活 紹介・解説する科目である。なお、本科目受講者は留学 ⑤∼⑫学生スピーチ 交通事情、四季、年中行事、祭 生を対象にしているため、日本の学生は単位取得できな り、教育(大学)、大衆娯楽、 家族、宗教 いので注意すること。 ●授業の到達目標 ⑬⑭特別講義(2回 日程については後日連絡) 日常生活の中で疑問に思ったことについて、スピーチ ⑮まとめ や学生同士の討論などを通して、納得のいく答えが見つ ●評価方法 けられるようにする。 レポート40% 平常点(出席・コメント)60% ●授業内容・授業計画 ●受講生へのコメント 「日本事情」の諸事項について、自分の力で調べ、自 問題意識を明確にしたレポートを特に評価するが、授 分の言葉で説明できるようにする。なお、期間中に学内 業中の積極的な参加・質問等についても重視する。 教員による2回の特別講義が設けられているので、必ず ●教 材 出席すること。 プリントを配布する。 日本事情ⅡA (前期 水・ 2 全) 2 単位 Current Japanese Culture and Society II A 文学研究科 増田 聡 ●科目の主題 は、日本の(あるいは自国の、または他国の)音楽文化 現代日本および諸外国のポピュラー音楽文化や都市の について、PCやiPod等のIT機器を使用しつつ映像や音 音楽環境の諸相について検討する。留学生が参加する授 楽を交えたプレゼンテーションを、最低一人あたり一回 業という特性を生かし、受講者間の討議を交えながら授 は必ず行うことになる。そのため、受講に際しては基礎 業は進行する。 的な情報処理知識(ウェブ閲覧、音楽・動画の提示、プ ●授業の到達目標 レゼンテーション資料作成など)を身につけていること 比較文化論的な観点から現代日本および諸外国の音文 が前提となる。発表準備はかなりの負担となるので、覚 化・大衆文化を検討する批判的視座を獲得すること。お 悟して受講すること。日本や諸外国のポピュラー音楽文 よび映像・音楽をもちいた効果的なプレゼンテーション 化についての比較文化論的な知見を深めようと考える学 技術を修得すること。 生の受講を期待する。 ●授業内容・授業計画 (1)イントロダクションと授業方針の決定 カラオケ、携帯オーディオプレイヤー、多彩なCM音 (2∼5)Jポップ、歌謡曲における「日本的イメー ジ」の諸相 楽、携帯電話着信メロディ、Jポップ、レンタルCD店、 音楽配信、YouTubeなど、現在の日本の都市空間やメ (6∼9)日本の都市音楽環境・音楽メディア環境につ いて ディア空間で目に(耳に)することができる音楽環境 は、あるものは海外から由来し、あるものは日本で生ま (10∼15)諸外国の都市音楽環境・音楽メディア環境に ついて れたものであるが、さまざまな歴史的・社会的な文脈を 経て現在あるような姿へと至っている。われわれが聞き ●評価方法 流す「あたりまえ」の音楽や音楽環境が、異なる社会の 発表内容を中心に、出席点、討議への参加度、毎回課 耳にとってどのように聞こえているかを探るべく、留学 されるミニレポート、および最終レポートを総合して評 生と日本人学生との意見交換を行いながら授業は進行す 価する予定だが、受講者数によっては変更する可能性が る。よって、下記の授業計画は大まかな方向性を示すも ある。 のであり、受講生の関心に応じて内容は適宜変更され ●受講生へのコメント る。 留学生特例科目のため、留学生は優先的に全員受け入 授業はゼミ形式を主軸に、ときおり講義を交えるかた れ、日本人学生を選抜して受講生の上限を20名程度とす ちで行われる。数回のレポート提出を経た後、受講生 る予定。受講生の選抜方法などは初回の授業で指示する −89− 地域と文化 ので必ず出席すること。初回の授業に欠席した学生の受 ●教 材 講は認めない。また、出席と討議への参加度を非常に重 烏賀陽弘道『Jポップとは何か』(岩波新書)。入手の 視する。 上通読しておくこと。 日本事情ⅡB (後期 水・ 4 全) 2 単位 Current Japanese Culture and Society Ⅱ B 非常勤 鈴木 伸太郎 ●科目の主題 資産を持っているという事実がある。こうした財政状況 この講義は主に留学生向けに日本の経済や社会の最近 の判断の違いが経済政策の違いになって表れてくる。こ の変化に着目しながら説明するものであるが、日本で生 のことを説明する(4回分)。 まれ育った人たちが聴いても参考になる内容になるよう 日本の景気対策としては伝統的には「公共事業」の名 にしていきたい。 の下に公共工事が行われてきた。その理由と現状、将来 必ずしも日本の「特殊な事情」ではなく、マスメディ の展望などについて(2回分) 。 アのあり方や、政府の財政事情や、少子高齢化など、世 公共事業が削減された結果、地方経済が疲弊してし 界の他の国々にも共通する課題の中で、日本はどのよう まったこと。その対策が急がれていること。その関連 な「解」を出そうとしているのか、どの程度までそれが で、農業の可能性について(2回分)。 成功と言えるのか、などについて理解を深めることが目 公共事業以外の公共投資のさまざまな可能性につい 的である。言い換えるなら、21世紀初頭の世界における て。諸外国に比べて教育や医療などの公共投資が少ない ひとつの社会としての日本社会がテーマである。 ことなどが問題である(2回分)。 ●授業の到達目標 少子高齢化の進展によって、医療の問題とともに年金 21世紀初頭の世界において、特に先進国型の経済社会 の問題なども不安視されている。社会保障制度をいかに を達成した国の社会では、どのようなことが課題となる 充実させていくかが大きな課題となっていることについ のかについて、マスメディアのあり方や、政府の財政事 て(2回分)。 情や、少子高齢化問題などの点から、大きな図式の中で ●評価方法 捉える能力が身につくこと。受講生の現在の生活空間で レポート試験(やや長文・5000字程度)の評価が主体 ある日本社会の理解を通して、世界の国々(あるいは受 である。ただし、毎回の授業で作文という形で各自の意 講生の出身国)の社会の理解が深まるようになること。 見を書いてもらうことを(受講人数によってはディス ●授業内容・授業計画 カッションなども)課題にする予定なので、課題への取 まず日本のマスメディアの問題をとりあげる。イン り組み状況が良好であれば、プラスの方向で評価に加え ターネットの普及のインパクトとともにマスメディアの る予定である。 在り方が問い直されている日本の現状について解説す ●受講生へのコメント る。日本特有の制度である記者クラブ制度によって、官 受講生は留学生であることを想定しているが、留学生 庁の発表がそのまま報道されやすい体質があり、必ずし 以外の学生の履修も認める。 もバランスよく正確な情報が得られるわけではないこと ●教 材 を事例を挙げながら説明していく(3回分)。 教科書は指定しない。参考書は随時紹介し、必要な資 日本の財政事情に関しても、政府の債務の大きさばか 料は授業において配布する。 りが強調される傾向があるが、政府も民間も豊富な金融 −90− 文学と芸術 日本の古典文学 (前期 火・2 全) 2 単位 Introduction to the Classics of Japanese Literature 文学研究科 小林 直樹 を読む意義を理解することを目標とする。 ●科目の主題 人間が、長い時間の経過によっても侵食されることの ●授業内容・授業計画 ない、不易の側面を有していることは言うまでもない。 本年度は、軍記物語の名作の一つ、『平治物語』を絵 古の書物をひもとけば、古人の喜び、悲しみ、悩む姿が 巻化した『平治物語絵巻』をよむ。詞書(文章の部分) 現前して、我々の共感を誘い、また数々の智慧の言葉が を読んだ後に、それに該当する絵画部分を鑑賞し、物語 発せられて、我々の心をとらえる。時代を超えて読みつ を総合的に味わう。予定している授業の概略は以下の通 がれる古典というものは、こうした点によって支えられ り。 ている面が大きいと言えよう。 ガイダンス(1回)、総説(1回程度)、「三条殿夜討 けれども、その一方で、人間の営みの中には、時代 巻」(2回程度)、「信西巻」(2回程度)、「六波羅行幸 と共に変化し、あるいは失われて、後代の人間の常識や 巻」(2回程度)、「六波羅合戦巻」(1回程度)、「常葉 感覚では、もはや捉えがたくなってしまうような部分が 巻」 (5回程度)。 存在することも否定できない。古典を読む際、この点は ●評価方法 いくらかの障害となって前方に立ちふさがることもあろ 試験による。ただし、授業中に書いてもらうコミュニ う。が、我々が少し努力して古人の側に身を添わせるな ケーションカードの内容も加味する。 ら、そこに、日頃何らの疑念も抱かずに当然視してきた ●受講生へのコメント 「常識」を相対化し、くつがえす新鮮な視点が潜んでい 物語や歴史が好きな人にお奨め。NHK大河ドラマ 『平清盛』の視聴は授業の理解を助けよう。授業中はテ るのを発見することも稀ではないのである。 何百年という時を超えて、古典の世界に飛び込み、し キストとスクリーンに写される絵画世界にひたすら没頭 ばし古人と哀歓を共にし、また大いに彼らに学びたいと してほしい。 思う。 ●教 材 ●授業の到達目標 教科書:プリントを配布。 前近代の日本人が遺した文章と絵画から、我々とは異 なる彼らの発想や思惟、世界観を読み取り、現代の「常 参考書:宮本常一『絵巻物に見る日本庶民生活誌』 (中公新書)他 識」を相対化する視点を養う。その上で、現代人が古典 西洋の文学 (前期 火・3 全) 2 単位 European Literature 非常勤 筒井 香代子 他 考察する。王は自らの超越性を示すのに文学を必要と ●科目の主題 文学と政治の関わりは時代を問わず深い。政策実現 し、文学自体も貴族社会同様にジャンルによる階層が存 などの目的で、国家が文学を利用するということもあれ 在した。そして華やかな宮廷の複雑な政治力学の下で多 ば、創作活動の源となるべき作家の自由精神を、国家や くの文学論争と作品が生み出されたのだった。 政治が抑圧しようとする時、文学によって批判がなされ 英文学では筒井香代子が、20世紀の作家ジョージ・ ることは、古今東西を問わず、頻繁に見聞きすることで オーウェルを取り上げる。彼は、イギリスの統治下に ある。本講義では仏文学、英文学、独文学で、それぞれ あったビルマに警察官として赴任するが、イギリスのビ ある特定の時代の作家及び作品を取り上げ、文学と政治 ルマに対する圧政を目の当たりにして職を辞し、文筆家 について講義を行う。 を志す。彼の主要な作品に触れながら、彼が伝えようと ●授業の到達目標 した政治的メッセージ、そして当時の出版事情など彼を それぞれの担当者が取り上げた作家、作品そして当時 の時代背景などについて理解を深める。同時に文学に慣 取り巻く社会状況を考察する。 最後に独文学では中村恵が、エーリヒ・ケストナー れ親しみ、作品と向き合う機会を持つ。 (1899−1974)を取り上げ、焚書・執筆禁止令等ナチス ●授業内容・授業計画 ドイツによって作家精神に弾圧を加えられつつも強かに 仏文学では藤田あゆみが、17世紀に絶対王政を確立し たルイ14世の宮廷における文学と政治についての関係を −91− 生き抜いたその生涯と絡み合わせつつ、作品のいくつか を、児童文学を中心に紹介する。 文学と芸術 ●評価方法 ① オリエンテーション(藤田、筒井、中村) ② ルイ14世とテクストとしてのべルサイユ(藤田) 定期試験・小レポート・出席状況等を総合的に判断し ③ 古典主義文学と階級制(藤田) て、評価する。 ④ ル・シッド論争、新旧論争(藤田) ●受講生へのコメント 授業で取り扱われる作品は、入手可能なものは、邦訳 ⑤ ルイ14世と宮廷作家たち(藤田) ⑥ ジョージ・オーウェルと時代背景(筒井) でよいので、必ず読んでおくこと。 ⑦ 『カタロニア讃歌』 (筒井) ●教 材 ⑧ 『動物農場』 (筒井) 参考書: ⑨ 『1984年』 (筒井) 《藤田》 ⑩ 時代背景と初期の作品(『エーミールと探偵た ラ・フォンテーヌ著『寓話』 (岩波文庫) ち』 、 『点子ちゃんとアントン』 、 『飛ぶ教室』等) ラ・ロシュフーコー著『箴言集』 (岩波文庫) (中村) ピエール・コルネイユ『ル・シッド』 (大学書林) ⑪ 第二次世界大戦中のケストナー(中村) 《筒井》 ⑫ ポーランド人作家コルチャックの作品との比較 ジョージ・オーウェル著『カタロニア讃歌』(現代思潮 新社)『動物農場』(岩波文庫)『1984年』(ハヤカワepi (中村) ⑬ キーワード「ユーモア」で読み解く(中村) 文庫) ⑭ まとめ 《中村》 ⑮ 試験 クラウス・ゴードン著『ケストナー』 (偕成社) エーリヒ・ケストナー著『ケストナー少年文学全集1∼ 8、別巻』 (岩波書店) その他、各担当者が、適宜授業内において指示する。 日本の詩歌 (前期 火・3 全) 2 単位 Japanese Poetry 文学研究科 村田 正博 上、おそらくあるだろう。諒とされたい。) ●科目の主題 ●評価方法 詩歌は人間を救えるか? 人間を人間としてあらしめる最も根幹をなすものがコ 毎回の授業に関する意見・感想(特製出席カードを配 トバであり、そのコトバを手段として人現存在の根源に 布・回収)と期末のレポート(授業の趣意に沿って、諸 迫ろうとするのが詩歌である―、にもかかわらず、われ 君が見つけた詩歌作品をめぐる思索を披瀝すること)に われは、詩歌を、不当に軽く見てはいないであろうか? よる。 詩歌に対する認識を改め、その意義について思索を深 評価の比重は、前者50%、後者50%。 ●受講生へのコメント める。 教えるとは、夢を語ること、 ●授業の到達目標 学ぶとは、誠実を胸に刻むこと。 近現代の詩歌を対象として―、 詩歌はわれわれに何を提言しようとしてきたのか? それを読み解くことを通して、われわれはどのよう これは、フランスの詩人、アラゴンのことば。 詩は、知識の量の問題というより、知恵の質に関わる もの。したがって、通常の評価にはなじまない面がある に生きてゆけばよいのだろうか? そんな思案を心の一角に持つことができる―、この授 が、夢を語り、誠実を胸に刻む時間が実現されるよう、 業の到達目標は、実は皆さんの将来に託するところが大 担当者も精一杯の努力を約束するので、受講の諸君のう きい。 るわしい協力を期待する。 ●授業内容・授業計画 ●教 材 プリント配布。 1. 詩とはなにか? (4∼5回) 2. 詩のことば、日常のことば (4∼5回) 参考書:茨木のり子『詩のこころを読む』(岩波ジュ 3. 新しい時代を拓いた詩 (4∼5回) ニア新書 ― ジュニア用とあなどることなかれ!) 4. 詩人が追放されない国をめざして (最終回) 宗 左近『あなたにあいたくて生まれてきた詩』 5. まとめ・レポート受取 (最終回) (新潮社) (授業回数は、おおよその目安である。1のなかで2 宗 左近『詩のささげもの』 (新潮社) や3の内容にもふれるといったことも、テーマの性格 正津 勉『詩人の愛』 (河出書房新社) −92− 文学と芸術 日本の近代文学 (後期 木・2 全) 2 単位 Japanese Modern Literature 文学研究科 奥野 久美子 [平成23年度以前に「日本の物語」の単位を修得した者は、この科目は履修出来ない。] 6∼9 芥川龍之介「地獄変」 ●科目の主題 日本の近代文学作品、中でも大正期以降の作品は、使 10∼13 太宰治「駆込み訴へ」 われている言葉も現代と変わりないため、学んだり教え 14 まとめ てもらったりせずとも、趣味や楽しみとして読むことは 15 試験 充分に可能である。では文学研究とは、大学で敢えて文 ●評価方法 学を学ぶとはどういうことか、その意味と面白さの一端 授業中に数回提出してもらう小レポート、試験、およ を知ることを主題とする。具体的には日本の近代文学を び出席状況による。 代表する作家から、芥川龍之介と太宰治の作品を精読す ●受講生へのコメント 作品の下読みなど予習が必要な講義である。初読時の る。 読みや感想をメモに残しておき、授業を受けてそれがど ●授業の到達目標 原典との比較や作品執筆の背景なども考慮しつつ、文 う変わるかを実践すること。 学研究の方法を取り入れることによって読みがどのよう ●教 材 に深まるかを実践してゆく。鑑賞とは異なる研究の方法 教科書:芥川龍之介著「藪の中」(講談社文庫) を学び、その一端を身に付けることを目標とする。 ※「藪の中」「地獄変」の2編が入っている講談社文庫 を教科書として指定する。ページ数行数で箇所を伝え ●授業内容・授業計画 特に語り手の設定に注目して多様な読み方のできる作 ることもあるので、できるだけ指定のものを購入する こと。その他の資料は適宜配布する。 品を取り上げる。 1 ガイダンス 2∼5 芥川龍之介「藪の中」 芸術の世界 (前期 月・2 全) 2 単位 Aesthetics and Science of Art 文学研究科 高梨 友宏 深める手がかりを得ることを本授業の到達目標として設 ●科目の主題 美学、芸術学の諸思想を通じて、「芸術」概念の諸相 定したい。 ● 授業内容・授業計画 を理解する。 「芸術」とは何か。この問いに応じるに有効かつ不 ①―③ テーマ1:「芸術と美」 可欠の手続きとして、古代から現代にいたる個々の芸術 ④―⑥ テーマ2:「芸術と社会」 作品の流れを体系的・具体的に追っていくことがまず挙 ⑦―⑨ テーマ3:「芸術と現実」 げられるだろう。しかし、本講では、個々の芸術作品 ⑩―⑫ テーマ4:「芸術の美的経験」 を歴史的に概観するのではなく、むしろ、「芸術」一般 の本質や機能について、(主として西洋の)思想におけ る「芸術」概念を手がかりに、考察しようとするもので ある。その際、便宜上、次項で挙げるようないくつかの ⑬ まとめ ●評価方法 定期試験による評価。 ●受講生へのコメント テーマを設定し、芸術の本質や機能の多様性に応じて、 予備知識は特に必要としない。芸術作品への関心はも 多面的なアプローチを試みたい。「芸術の世界」と題さ とより、哲学にも関心を持つ人を歓迎。先に話したこと れた本講の主題は、より適切に言えば「芸術思想の世 が後の話の前提になる場合があるので、休まないで出席 界」への案内である。 してほしい。 また、テーマ2「芸術と社会」に関連して、フンデル ●授業の到達目標 芸術と美の歴史的関係、芸術と社会の関係、近代芸術 トヴァッサーのデザインによる舞洲のゴミ処理工場の見 と現代芸術の本質的な相違、芸術経験に求められるべき 学を、授業期間中に1回、課外授業として取り入れる予 ことなどについて学び、「芸術」について自分で思考を 定(参加は任意とする)。 −93− 文学と芸術 ●教 材 教科書:拙著『美的経験の現象学を超えて』(晃洋書 房) 参考書:当津武彦編『美の変貌』(世界思想社)/今道 友信編『講座・美学(全5巻)』(東京大学出 版会)/谷村・原田・神林責任編集『芸術学 フォーラム(全8巻)』(勁草書房)/岩城見一 編『感性論』(晃洋書房)/佐々木健一著『美 学辞典』(東京大学出版会)/竹内敏雄編『美 学事典』(弘文堂)/その他、必要に応じて授 業中に指示する。 東洋美術の流れ (後期 火・2 全) 2 単位 History of Eastern Art 非常勤 土井 久美子 ④ 日本の工芸、中国、朝鮮半島との関わりなどにつ ●科目の主題 「美術」は芸術の一分野であり、現在では視覚でと いて学ぶ。キーワード;正倉院、漆工、陶磁、 らえることを目的とする芸術をさして使われる。「美術 金工、染織、蒔絵、工芸、美術工藝、クラフ ト、デザイン、伝統工芸 史」は美術の歴史を研究する西洋で生まれた学問であ る。東洋、即ち日本や中国などの東アジア各国の各種造 ⑤ 日本の彫刻について学ぶ。キーワード;仏教美 術、仏像、荘厳 形を西洋になぞらえ「美術」ととらえ、その歴史を研究 する日本美術、中国美術、そして東洋美術の研究は19世 ⑥ ジャンルを超えて。日本に人の美意識と美術 紀後半から盛んになる。日本の造形美術の特色は、漆 キーワード;浮世絵、書、印籠・根付、小袖、 茶湯、民芸 工、陶磁、染織、金工、絵画、彫刻など様々な技法によ るものが並立して存在し、融合しながら空間を形成して ⑦ レポートを書くために いることにあり、中国、朝鮮半島の美術と深い影響関係 ●評価方法 のなかで成立した。しかし現在こうした東洋古来の造形 開催中の展覧会、社寺の現地見学を前提とするレ 表現は西洋化した日常空間の中に埋没してしまい、とも ポートを必ず各一本、計二本作成すること。提出レポー すれば忘れられがちである。 トの内容と本数によって評価する。出席と出席態度を評 この講義では絵画、彫刻、工芸など造形作品のいく 価の基準に加える。授業態度のよくない学生は退出願 つかのジャンルに視点をあて、その成り立ちと、とらえ うこともある。出席30点、小レポート1本30点、期末レ 方、流れ、現状、東アジア諸国の美術との関わりなどに ポート1本40点を100点の持ち点として評価する。 ついて学習し、それぞれの作品を日本そして東洋美術の ●受講生へのコメント 美術、芸術作品との出会いは現代においては直感的な 流れのなかに位置づけていく。 ものと位置づけられる。しかしこの講義では、これらの ●授業の到達目標 受講生は講義終了後に講義でとりあげた造形作品の少 美術作品が作られた背景、制作の意図などについて学習 なくとも二点以上を実地で見学・鑑賞し、作品に関する し、それぞれの作品が歴史の流れのなかでどのように生 背景を知ると同時に、その作品を実際に見ることによっ み出されていったかについて考える。基礎知識を学びつ て、作品の持つ臨場感を直感的に感じ取ってほしい。 つ、美術作品にふれることにより、現代生活のなかで忘 ●授業内容・授業計画 れられている日本文化の伝統を再確認する手がかりとし ① 「東洋」と「西洋」の概念、「美術史」について てほしい。 学ぶ。(目標授業コマ数1、以下同様) キーワー ド;西洋美術、東洋美術、日本美術、美術・工 ●教 材 受講生の人数が多数にならない場合はプリントを配布 する。 芸、美術史 ② 生活と美術、芸術の関わりについて考える。キー 参考図書 美術検定 公式テキスト 西洋・日本美術史の基本 ワード;美術作品と日常雑器 ③ 日本の絵画について、中国、西洋との関わりを 美術検定実行委員会編 美術出版 考える。水墨画、やまと絵、漢画、絵巻、屏風 すぐわかる日本の美術̶絵画・仏像・やきもの&暮らし 絵、掛け軸 と美術 −94− 文学と芸術 すぐわかる日本の仏教美術̶彫刻・絵画・工芸・建築 すぐわかる日本の絵画 すぐわかる東洋の美術̶絵画・仏像・やきもの&暮らし と美術 すぐわかる正倉院の美術̶見方と歴史 米田雄介 東京 美術 音楽の諸相 (前期 水・4 全) 2 単位 Aspects of Musics 文学研究科 増田 聡 (14)90年代以降のテクノ/クラブカルチャーの展開 ●科目の主題 英米圏を中心に20世紀のポピュラー音楽史について論 じる。19世紀末に出現し、20世紀前半に欧米から世界中 へと普及していったレコードやラジオといった音響複製 (15)MTV以後の音楽/映像文法の諸相とインター ネット 順序は入れ替わったり、二つの主題を一つのコマで行 メディアは、それまでの音楽文化の姿を大きく変えるこ う場合もある。 とになった。さまざまな民族や都市文化の美学を反映し ●評価方法 た多様なポピュラー音楽が市場に出回り、音楽産業は巨 学期末試験の点数のみにより評価する。出席はとらな 大なビジネスになっていく。本講義では、とりわけ20世 いので、授業内容に強く関心を持つ学生の出席を要望す 紀の音楽産業の発展に最大の影響をもたらした英米のポ る。 ピュラー音楽史を、技術、経済、思想、政治、民族性、 ●受講生へのコメント 美学などの観点から、視聴覚資料に基づいて概観してい 例年受講希望者が多く、履修の可否は抽選となる可 く。 能性が高い。また、単位取得の困難さが苛烈を極める授 ●授業の到達目標 業であるので、授業内容に関心が持てない学生は必ずや 20世紀英米ポピュラー音楽史について概括的な知見を 履修登録を後悔するだろうことを覚悟せよ。単に時間割 獲得し、それを社会史的・文化史的な背景と関連づけて を埋めるための履修登録は講義内容に関心をもつ学生に 理解できるようになること。 とって迷惑となるので厳禁とする。初回授業に欠席した ● 授業内容・授業計画 学生の受講は認めない。視聴覚資料を多用するので、授 (1)ポピュラー音楽形成の社会的背景 業中の私語には厳しく対処する。また、YouTube等を (2∼4)初期音楽産業、ジャズ、ブルース(アメリカ 利用して授業外での積極的な自学自習が必須となること も留意のこと。 黒人音楽文化の浮上と複製メディアの役割) ●教 材 (5)ロックンロールの誕生 参考書として下記を挙げる。購入の必要はないが、授 (6)公民権運動とフォークロック (7)60年代ソウル 業期間内に通読しておくことが望ましい。 (8)英国へのアメリカ黒人音楽の影響 ・増田聡・谷口文和『音楽未来形―デジタル時代の音楽 文化のゆくえ』(洋泉社) (9)サイケデリック文化とロック ・大和田俊之『アメリカ音楽史―ミンストレル・ショ (10)70年代ロックの拡大と展開 (11)パンク・ロック ウ、ブルースからヒップホップまで』(講談社選書メ (12)70年代黒人音楽の発展(ファンク、ディスコ) チエ) (13)80年代のMTV文化とヒップホップ −95− 文学と芸術 視覚文化の世界 (前期 木・4 全) 2 単位 The World of Visual Culture 非常勤 横田 洋 5 視覚文化の諸相―写真の歴史 ●科目の主題 近年、視覚文化に関わる問題が盛んに議論されてい 6 視覚文化の諸相―映画の歴史 る。特にテキスト/言語情報のみの議論に対して、光や 7 視覚文化の諸相―映画の歴史 影、色や形、それらの動きなどを捉える視覚の重要性 8 視覚文化の諸問題―視覚と主観 が、文化的な問題を考える際に、現代の問題、歴史的な 9 視覚文化の諸問題―視覚と身体 問題を問わず強く認識されるようになっている。 10 視覚文化の諸問題―視覚と物語 この講義では主に絵画や演劇といった前近代から存 11 視覚文化の諸問題―視覚とメディア 在する文化から写真、映画といった近代的な文化まで、 12 視覚文化の諸問題―視覚と産業 代表的な視覚文化のあり方を概観し、それを通して「見 13 視覚文化と諸問題―視覚と脳科学 る」こと自体の文化性や歴史性を考える。 14 視覚文化と諸問題―視覚とネットワーク ●授業の到達目標 15 まとめ 視覚文化の重要性、特にその多様性と視覚文化にまつ わる様々な問題点を理解する。また芸術学やメディア論 ●評価方法 複数回の小テスト(50)・期末テスト(50)の割合で をそれぞれの分野で専門的に学ぶための基礎的な知識や 評価する。 考え方も身に付ける。 ●受講生へのコメント 授業で紹介する作品、特に映画や演劇の作品について ●授業内容・授業計画 1 イントロダクション―視覚文化とは? は授業時間中には観賞しないので、各自で観賞する。 2 視覚文化の諸相―絵画の歴史 ●教 材 プリント等を適宜配布。 3 視覚文化の諸相―演劇の歴史 4 視覚文化の諸相―見世物の歴史 文学と芸術へのいざない 演習 (前期 木・2 全) 2 単位 Seminar:Introduction to the Literature and Art 特任 浅岡 宣彦 き方、狂気や賭博の問題など)に焦点を絞って受講生と ●科目の主題 文学と音楽との関係を取り上げる。主として、ロシア 意見交換をし、作品の理解を深めていく。三つのクール 文化を代表する二人の芸術家、詩人プーシキンと作曲家 に分け、「ガイダンス」と『オネーギン』で5回ほど、 チャイコフスキイに絞り、詩人の作品を素材に作られた 『マゼッパ』は4回、『スペードの女王』と「まとめ」 オペラ作品と原作との比較を通して、文学と音楽の表現 で5回ほどの授業に配分し、2回ほど簡潔なレポートを の相違、作家と作曲家の解釈の相違などを検討する。 作成してもらう。 ●授業の到達目標 ●評価方法 プーシキン文学とチャイコフスキイ音楽の魅力の一端 2回のレポートと平常点(出席率、意欲など)で総合 に触れてもらい、文学と音楽に関心を抱いてもらう。 的に判断する。 ● 授業内容・授業計画 ●受講生へのコメント プーシキンはロシア文化の要に位置する詩人であ り、彼の作品からは多くのオペラ・バレエ作品が誕生 している。チャイコフスキイの場合は、詩人の韻文小 1)受講生の数は40名程度とする。 2)ロシアのイメージにとらわれず、文学と音楽に関 心のある方を歓迎。 説『エヴゲーニイ・オネーギン』(1823∼1831)、叙事 3)原作は邦訳があるので、それを利用する。 詩『ポルタワ』(1829)、散文小説『スペードの女王』 ●教 材 (1833)を題材に3作のオペラを作曲した。オペラ『エ 教材はとくになし。適宜プリントを配布する。 ヴゲーニイ・オネーギン』(1877∼78)、『マゼッパ』 参考図書として、 (1881∼83)、『スペードの女王』(1890)である。原作 プーシキン作『エヴゲーニイ・オネーギン』木村彰一 を講読し、並行してオペラを鑑賞しつつ、それぞれの作 品の問題点(女性像の描き方、主人公の形象、都市の描 −96− 訳(講談社文芸文庫) プーシキン作『スペードの女王・ベールキン物語』神 文学と芸術 現代の自然科学 西清訳(岩波文庫) 他の参考図書、参考文献は適宜、授業中に指示す る。 数学の考え方 (後期 月・3 全文・H(人) ・M(看) ) 2 単位 Concepts of Mathematics 特任 住岡 武 [平成16年度以前に「現代数学の考え方」の単位を修得した者は、この科目は履修できない。 ] ⑷ 微分・積分 ●科目の主題 常識や先入観にとらわれない客観的思考力と自由な発 ⑸ 極限、無限級数 想というものの重要性の認識。 ⑹ 2進法 ●授業の到達目標 ⑺ 論理数学(2回) 数学の色々な問題を考えて行く中で、将来出会う ⑻ パラドックス(2回) 色々な場面において物事の本質を捉える洞察力と正しい ⑼ 特殊相対性理論(3回) 判断ができる能力を養成する。 ⑽ 非ユークリッド幾何(2回) ●授業内容・授業計画 ●評価方法 講義は数学的な考え方を重視するような内容を主に選 ぶが、中には少し難しく思える式も現れる。また、一つ 授業中に行う何回かの試験で評価する。 ●受講生へのコメント の話題は通常1、2回の講義で終わり、前の話が分から 数学の予備知識としては、大学への文系志望者が学習 なくても次に影響しないように授業を進める。具体的に する高校までの数学を仮定する。更に、数学への興味と は、次のような項目から話題や問題を取りあげ、それら 論理的思考力のあることが不可欠である。 について考えていきたい。 ●教 材 教科書は用いない。授業中に配付するプリント等を用 ⑴ 集合と濃度 いる。参考書は講義のなかで紹介する。 ⑵ フィボナッチ数列と黄金分割 ⑶ 巨大な数 数学の考え方 (前期② 月・ 1 全) 2 単位 Concepts of Mathematics 理学研究科 金信 泰造 ●授業の到達目標 ●科目の主題 数学は自然科学の基本的言語であることはもとよ 現代数学の取り扱っている問題や、『なぜそのように り、人文科学・社会科学においても大切な概念・視点を 考えるのか』といった発想法にまで立ち入ったことがら 供給し続けている重要な基礎科学である。しかし現代数 を学ぶことにより、数学の面白さを知ることを目標とす 学はその豊富な歴史と研究対象の膨大さ・高度に専門化 る。 した研究手法の複雑さから、ともすればとても近寄りが ●授業内容・授業計画 たい対象のようにも見えるだろう。専門用語の複雑さ、 現代数学を語る上で重要な概念を、1∼3 回のオムニ その概念構成の厳密さのゆえに、現代数学の最先端の成 バス形式の講義で取り上げる。各話題の間には緩やかな 果を平易に説明することはたいへん困難な状況になって 関連があるが、基本的には各話題は独立である。 いるようにも見える。高度に専門化した数学的訓練を受 ●評価方法 けなければ、現代数学のもたらす豊かな実りを享受する ことは出来ないのだろうか。実際には決してそうではな 出席率、レポート、小テストによって評価する。 ●受講生へのコメント いと考える。数学は、もっと素朴な形で日常生活の様々 予備知識はあまり必要ない。高校までの内容で十分で な側面に、その本質を失うことなく静かに息づいている ある。しかし、数学への興味と論理的思考力があること と思う。この講義では、現代数学の中の重要なキーコン は不可欠である。 セプトを、様々な例を通して列伝的に紹介していく。 ●教 材 適宜プリントを配付する。参考書等は講義中に挙げ る。 −97− 現代の自然科学 ニュートンからアインシュタインへ (前期 木・2 全文、H(人) 、M(看) ) 2 単位 History of Physical Concept from Newton to Einstein 非常勤 内藤 清一 保存 7)角運動量 8)四つの力 9)落体の法則 ●科目の主題 古典物理学から相対性理論や量子力学に代表される現 10)慣性 11)円運動 12)ミリカンの実験 13)ケプ 代物理学に至る歴史的過程において、種々の自然現象を ラーの法則 14)波動 15)温度と気体の法則 16)曲 理解するために先人達に依って工夫、発見された種々の がった空間とブラック・ホール 更に、“物理学読本” 物理的思考法を、出来るだけ易しく理解できるように講 (朝永振一郎編、みすず書房)を準教科書として採用 義する。 し、以下の項目より適宜説明する。 ●授業の到達目標 1)月はなぜ地球に落ちてこないか。地球の重さはどう この“文科系学生の為の講義”を通して、次のような してはかるか。 2)光が波であるとはどういう意味 「21世紀的認識」を獲得出来るようになる事を(講義者 か。3)エネルギーの旅 4)電気振動 5)原子論の の) “大きな目標”とする:「 “絶対的真理”が(我々の 発展 6)原子内部の構造 7)量子の概念と物理学の 人類世界を含む)全宇宙を支配している」と云う基本的 将来 認識は、 “21世紀に生きる文科系若者達にとっても、欠 ●評価方法 かすことが出来なくなってくる” であろう。 「ああ言えば、 こうも言える」との従来の学問では、最早21世紀の諸問 出席率、中間試験及びレポートなど。 ●受講生へのコメント 講義内容が広範囲にわたるので欠席しないように心が 題に対処できず、21世紀を救うことは出来ない。 ける。また、講義項目は講義の進捗状況により変わるこ ●授業内容・授業計画 特に、力学的現象を中心に、ビデオ教材を利用しなが とがある。数式は若干使用する。 ら授業を進める。 ●教 材 1)ニュートンの法則 2)リンゴと月 3)調和振動 教科書 朝永振一郎“物理学読本” (みすず書房) 。 4)宇宙の航行 5)エネルギーの保存 6)運動量の ニュートンからアインシュタインへ (後期② 月・1 全) 2 単位 History of Physical Concept from Newton to Einstein 特任 牲川 章 6 近代原子論 ●科目の主題 ガリレイ、ニュートンに始まる古典物理学からアイン 7 熱の分子運動論 シュタインによる相対性理論の構築、ハイゼンベルグと 8 相対性理論の誕生 シュレーディンガーによる、ミクロ世界の基礎理論であ 9 量子物理学の世界 る、量子力学の確立を経て現代物理学に至る物理学の発 10 よりミクロの世界へ(素粒子論) 展史を概説する。 11 究極理論を目指して ●授業の到達目標 12 宇宙の進化 物理学の発展史を習得する。物理学の各分野(物体の ●評価方法 運動を記述するニュートン力学、熱現象を含む物理的シ 理解度を計るために、毎回配布する用紙に、その日の ステムを記述する物理学、電磁気学、相対性理論、量子 講義内容から得られた知見の記入・提出を求める。これ 力学)の輪郭を理解する。素粒子の世界、宇宙、及びそ に、出席状況も勘案して評価する。 の進化にも興味をもつようになる。 ●受講生へのコメント 授業中、授業終了後を問わず、いろんな形での質問を ● 授業内容・授業計画 歓迎する。尚、上記の授業内容は一部変更することがあ 以下の項目について、複雑な数式を用いず概説する。 1 ケプラーの法則の発見 る。 2 ガリレイの実験と洞察 ●教 材 プリント(適宜配布) 3 ニュ−トン力学の完成 参考書:朝永振一郎「物理学とは何だろうか(上)、 4 熱の科学の確立 (下)」(岩波新書) 5 電磁気学の完成 −98− 現代の自然科学 現代の分子科学 Modern Molecular Science (前期① 月・3 全) 2 単位 (後期② 水・1 全) 2 単位 特任 工位 武治 を知る。講義では、「日常」を離れて、知的なtripを行 ●科目の主題 私たちの日常の健康に重要な役割を果たす食品や医 う。 薬品は、化学物質からできている。また、PCをはじめ ●授業内容・授業計画 とするエレクトロニクス、ニューセラミックス、高速 ① 化学に強くなる「化学の基礎」 光通信などに使われている素材は高度な化学技術の上に ② 生活と化学(水は何色、地球上の水はどこから来 たかなど) 成り立っている。無論、私たちの身体はすべて化学物 質からできており、生命体としての機能は物質の機能 ③ 環境・気候変動(地球温暖化)・低炭素社会と化 学 に支えられている。現代社会は、いわば「ユビキタス 分子」、「ユビキタス分子科学」に支えられている。本 「環境問題では嘘がほんとうにまかり通っている か」 科目では、化学を専門としない学生に、化学なんて嫌 い・関係ないという学生に化学に興味をもってもらうこ ④ 地磁気の消滅と渡り鳥の謎 と、ちょっとした化学の知識と考え方が質の良い生活 ⑤ 生命の化学と分子進化 (QOL=Quality of Life)を日常的に送るために大変役 ⑥ DNAの分子科学 に立つことを念頭において、どのような化合物が何のた ⑦ 近未来の通信・コンピュータ=量子暗号通信・量 めに、どのように使われているか、その根底にある化学 子コンピュータとはどんなものか?実証実験は 終わり、数年後には実用化の時代が到来? の法則とはどのようなものか、また物質の構造はどのよ うにして決められるか、さらに加齢によるシミに煩わさ ⑧ メタ科学と科学リテラシー れない人生はどうしたら送れるかなどを学ぶ。 各課題を1−2週間で消化する。 ●授業の到達目標 ●評価方法 講義の進め方は私たちにとって身近な現象を取り上 レポートと平常点を含む総合評価(出席評価を含 げ、それらの背後に潜む謎を解き明かすと共に、現代の む) 。 分子科学の果たしている役割について考え、最終的に、 ●受講生へのコメント 「日常的に化学に親しめる」ように講義する。何気ない 日常の現象がいかに「非日常的なサイエンス」で支えら れているかを学び、知的な満足・探求の面白さ・重要性 新しい動物行動学入門 化学に関するどんな疑問・質問にも応えます。 ●教 材 教科書の指定はない。教材は担当者が提供する。 (前期 金・2 全文、H(人) 、M(看) ) 2 単位 Introduction to Behavioral Ecology 理学研究科 幸田 正典 第5,6回 動物の多様な結婚様式と子育て:性淘汰。 ●科目の主題 自然淘汰理論は、生物進化をうまく説明する。より多 第7,8回 動物の性転換と性決定様式。 く自分の子孫(あるいは自分の遺伝子)を残すことがで 第9回 協同繁殖とアリやハチの社会:血縁淘汰。 きた個体の遺伝的性質や行動が進化するのである。動物 第10回 雌が雄を操る脊椎動物の社会:したたかな雌の の諸行動や諸形質、さらには知性までもが、子孫をより 多く残す上で有利であるからこそ、進化してきたと考え 戦略。性役割。 第11回 ライオンの子殺し:動物の不可思議な行動も説 明可能。雄の代替繁殖戦略。 られる。 そのメカニズムを理解する。 第12回 動物のコミュニケーション、擬態他。 ●授業の到達目標 ヒトを含めた動物の行動や諸形質がどのように進化 してきたのか、それを理解することが本科目の目標であ 第13回 進化理論から見える動物の知性の進化。 第14,15回 ヒト化への道と現代人の由来。日本人っ て?何処から来たの? る。 ●評価方法 ●授業内容・授業計画 第1―3回 具体例でみる動物の行動研究とその進め方。 第4回 生命誕生と生物進化への自然淘汰論の説明。な ぜ男女がいるの?なぜ男女比は1:1? −99− 毎回の小テスト及び質問票(30)点、定期試験(70 点)の100点満点で採点する。 現代の自然科学 ●教 材 ●受講生へのコメント 印刷物の資料を毎回配布する。教科書は特には使わな 生物学は決して暗記科目ではありません。高校で生物 を習わなかった人も、よく勉強した人にも分かりやすく い。参考書等は授業中に紹介する。 面白い講義をします。「なるほど!そうやったんか!」 という授業をします。特に動物(含むヒト)の行動に興 味のある人に受講を薦めます。 生物学への招待 (前 期① 水・3 全文・H(人) ・M(看) ) 2 単位 (前 期② 水・1 全) Introduction to Biology 2 単位 理学研究科 田中 俊雄 他 反応の概要について理解する、次に、各環境シグナルの ●科目の主題 地球上に生命が誕生して35億年ほどが経過した。この 受容のしくみ、受容されたシグナルの変換・伝達機構、 間、生物は遺伝子DNAを営々と子孫に伝え、そこに刻 そして伝達されたシグナルに対する応答や適応のメカニ まれた暗号を弛まなく変化させながら進化した。本講義 ズムについて理解する。 では、まず、生命の最も基本的な単位である細胞(遺伝 ●授業内容・授業計画 子・タンパク質)について理解し、肉眼では見ることの [第1ターム]担当:田中俊雄 できないミクロの生命体、すなわち微生物の多様性やヒ 1.細胞(遺伝子、タンパク質)とは何か 2.微生物 トとの関わりについて論じる。次いで、海洋大型動物を とは何か 3.微生物の多様性 4.微生物とヒトとの 題材として形態や行動、繁殖システムなどマクロな視点 関わり 5.まとめと小テスト から生物進化を解説する。さらに、生命の特徴の1つで [第2ターム]担当:松沢慶将 ある環境に対する反応について、主に植物を例にとって 1.ハ虫類、鳥類、哺乳類の形態、生理、ならびに生息 概説する。 環境への適応 2.クジラやウミガメの回遊とその意 ●授業の到達目標 義、および定位能力 3.ハ虫類における性決定の仕組 [第1ターム]ヒトのゲノムが解読された今日において みと意義 4.まとめと小テスト も、微生物はあいかわらず私たちにとって未知の存在で [第3ターム]担当:保尊隆享 あり、あるものは私たちの生命を脅かす存在である。多 1.環境要因の種類と反応の概要 2.光に対する反応 種多様な微生物の姿をとおして、その分類上の位置づけ 3.重力に対する反応 4.水に対する反応 5.温度 や生物界における意義や役割について理解する。 に対する反応 [第2ターム]動物はどのようにして海、陸、空などの ●評価方法 小テスト、レポート、出席点。 環境に適応し、数千キロもの距離を移動するのか。動物 にはなぜ雄と雌が存在するのか。動物の行動や性にまつ ●教 材 わるさまざまな現象について理解する。 プリント:適宜配布 [第3ターム]生物は、まわりの環境の情報を捉え、そ 参考書等:田中 担当:村尾澤夫ら『くらしと微生物』 れに適切に反応することによって生命活動を営んでい (培風館)、保尊 担当:テイツ・ザイガー る。まず、植物の生命活動に影響する環境要因の種類と 『植物生理学』(培風館) 地球の科学 (後期 火・1 全) 2 単位 The Aspect of the Earth 理学研究科 益田 晴恵 他 ●授業の到達目標 ●科目の主題 人間の社会活動と関係の深い地震や都市災害、環境汚 「環境の世紀」と言われる21世紀に、私たちは生きてい 染、地下資源など、地球の現在の姿と将来予測を概説す る。本講義は、私たちが暮らす自然環境が、様々な自然 る。また、地球の姿を理解してこようとしてきた科学史 現象の微妙なバランスの上に保たれていることを理解 を織りまぜながら、最新の地球学の知識に基づいて、地 し、地球環境問題を考えるきっかけとしたい。また、未 球の歴史を概観し、地球について理解することの意義を 来を見通した社会的選択について、自然環境を基盤とし 考える。 て考える素養を育てたい。 −100− 現代の自然科学 ● 授業内容・授業計画 13 水循環と水資源、水質汚濁 1 地震と災害 14 生物と地球の共進化。大量絶滅事件。 2 津波の発生と伝播、被害と対策 15 講義全体のまとめ(以上、益田担当) 3 活断層と表層地質構造 ●評価方法 出席点40点、レポート20点、期末試験40点。出席点に 4 断層周辺の歪と応力 5 構造探査と資源調査 は、講義ごとに行う小テストを含む。 6 都市地盤の特性と住環境 ●受講生へのコメント これまでに地学の授業を受けたことがないことを前 7 地磁気の変遷と地球中心核(以上、領木担当) 8 地球誕生と初期進化。地球システムの概念。 提に授業を行う。自然環境問題に興味がある人はもちろ 9 海洋と大気の歴史 ん、持たない人にも、「地球の歴史と現在の姿を知る」こ 10 プレートテクトニクスとプルームテクトニクス。 との大切さがわかる授業を行いたい。 ●教 材 固体地球内部でのエネルギー循環と物質分化。 講義の資料は準備する。参考書は授業中に指示す 11 大気圏と水圏の構造とエネルギー循環。 る。 12 炭素循環と生物活動、地球温暖化 実験で知る自然の世界 (後期 水・3 ∼ 4 全文・H(人) ・M(看) ) 3 単位 Expedition to Science World 理学研究科 飯尾 英夫 他 電子楽器や自分の声をマイクロホンで電気信号に ●科目の主題と目標 変え、音を波としてとらえて、音の基本的な性 現代における自然科学の発達は著しく、私たちの身 質を理解する。 の周りのみならず、社会のあり方にまで大きな影響を及 ぼしている。本科目は、文科系専攻(H・人間福祉を含 5∼6.「身近な確率の話 ⑴モンテカルロ法、⑵勝 ち負けの流れ」 (竹内敦司) む)の学生を対象に、身近なテーマの自然科学実験を通 身の回りのいろいろなところで確率という言葉が して自然の世界に親しむ。 用いられ、ランダムな現象が数多くある。その ●科目の主題と目標 中に潜む数学法則を、コンピューターによる数 実験・実習をつうじ幅広く体験し、現代人にとって必 値実験を通じて、理解する。 要な自然科学の知識を身につけ、自ら対応できる力をつ ちかい総合的に判断する力を養う。 7.「空中写真から読み取る活断層」 (升本眞二) ●授業内容・授業計画 地震をおこす可能性のある地下の活断層は、地表 第1回目はガイダンスおよび消火訓練を行い、第2回 にも地形の違いとして明瞭に現れる。空中写真 目からは以下の実験を行う。( )内は各テーマの担当 を用いて地形を立体的に観察し、活断層がどの 教員を示し、適宜、実験室の技術職員が加わる。 ような場所にあり、どのような変位が生じてい 1.「植物の形態とフラクタル」(伊東 明、名波 るのかを理解する。 8.「偏光で見る自然」 (篠田圭司) 哲) 構内に生育する植物の形態を観察し、さらに樹 偏光板を通していろいろなものを見ると、日常見 形形成過程のコンピュータシミュレーションを る光景と違った光景が見えます。また方解石を 行って、植物の形の多様性と生態学的意義を理 通してみる二重文字も偏光と関係しています。 解する。 これらを理解した上で、二重に見えない方解石 を作ってみます。 2.「DNAとRNAの抽出」(若林和幸、曽我康 9.「医薬品の活性成分−解熱剤からアスピリンの単 一) 離」(舘 祥光) 生物の設計図である遺伝子の本体は核酸であり、 DNAとRNAの2つの種類が存在する。植物 身近な化学物質の一つである医薬品を通じて物質 組織から変性剤等を用い、DNAとRNAをそ の性質を理解するとともに、医薬品に含まれる れぞれ分けて抽出し観察する。 物質とその役割について考察する。 10.「地球温暖化・温室効果ガス、二酸化炭素分子の 3.「地球の重力加速度」(矢野英雄) 秘密」(工位武治) ガリレオやニュートンの言うように物体の自由落 下が等加速度的かどうかを確かめ、ボルダの振 二酸化炭素は何故に地球温暖化の原因物質なのか を分子の世界の言葉で考え、この分子に隠され り子の周期から重力加速度を求める。 た秘密を先端化学によって解き明かす。また、 4.「楽器と声の音波」(小原 顕) −101− 現代の自然科学 地球温暖化は日常生活に何をもたらしつつある 自然界の物質は極めて広い範囲でコロイドの状態 かを知る。 で存在する。界面活性剤分子が主役を演じる薄 11.「生物発光と化学発光」(品田哲郎、飯尾英夫) 膜とコロイド溶液の構造と機能を解説し、特殊 生物発光および化学発光は熱を伴わない発光(冷 なシャボン玉を作って目に見えないナノメート ルサイズの世界を観る再発見の科学。 光)である。ルミノールと過シュウ酸エステル ●評価方法 を用いて、その発光現象を観察する。 毎回の平常点を総合して成績を付ける。また、最後に 12.「平面を覆う正多角形のタイルの図形は3種類し どれか1つの実験に関するレポートを出してもらい、平 かない」(村田惠三) 正多角形で平面を覆うには、許される多角形は、 3、4、6角形しかなく、それ以外にはない。 常点に加点する。 ●受講者へのコメント これを利用して水面を覆う多数の6角形で、自 初心者歓迎。白衣貸与。定員48名。第1回目のガイ 然に微結晶から、大きな結晶に成長することを ダンス(基礎教育実験棟308室集合)時に受講者を決め 体験する。結晶化とは自己組織化そのものであ る。『実験で知る自然環境と人間』(前期開講)と本科 る。これと、二酸化炭素排出削減の効果につい 目をともに履修することはできない。 て学ぶ。 ●教 材 実験指導書を配布する 13.「シャボン玉の科学」 (田中礼二) 地球学入門 (後期 火・1 全文・H(人) ・M(看) ) 2 単位 Introduction to Geosciences 理学研究科 前島 渉 ト境界における巨大地震の発生機構、内陸部に ●科目の主題 おける活断層と直下型地震。(2回) 現在の地球の姿は46億年にわたる地球の生成流転のほ んのつかの間の姿にすぎない。地球の創生以来、幾多の 4)地球の生成と進化:隕石が語る原始太陽系と地球 できごとがあり、地球は変貌をとげてきた。そして現在 の創成、地球の大気・水の起源とその変遷、地球 の豊かな地球がつくりあげられてきた。惑星としての地 になれなかった金星と火星。(2∼3回) 球から身近な地域まで、さまざまなスケールで、かけが 5)過去の地球環境を探る:地層に残された過去の地 えのない地球を見つめなおす。 球環境変遷の記録、地層から読みとる地球の変 ●授業の到達目標 動リズム、地層に記録された年・月・日・時。 (2回) 人間社会と地球自然とのかかわりが問い直されている いま、地球についての理解をより深め、われわれ人間が 6)生物の大量絶滅とその背景:古生代/中生代境 今後地球に対してどうあるべきかを考える。 界における大量絶滅−プルームの冬−、中生代 ●授業内容・授業計画 /新生代境界における大量絶滅−衝突の冬−(1 回)。 まず現在の地球の構成と構造を概観する。とくに、人 間の様々な活動の場である地球表層部の構成と運動につ 7)地球の年齢を測る:地球の年齢を知るさまざまな いて、自然災害との関連を含めて解説する。ついで、太 試みとその社会背景、放射性同位体による岩石 陽系における地球の特異性を理解するために、地球環境 の年代測定。 (1∼2回) の生い立ちと変遷を、他の惑星との比較を含めて解説す ●評価方法 期末試験(50%)、レポート(30%)、出席(20%)を る。また、地層に残された記録から過去の地球環境を探 る方法とその具体例を紹介し、地球史規模での環境変動 総合して評価する。 とその背景要因を考える。 ●受講生へのコメント 1)地球の構成と構造:地球の内部を探る様々な方 高等学校で地学を履修しなかった学生を念頭において 法、地震波の伝わり方と地球の内部構造、重力 講義する。授業内容の講義項目は授業の進捗状況によっ からみた地球の内部構造。 (2∼3回) て変わることがある。「地球の科学」の単位取得者は本科 2)地球の表層部:地球表層部の物質と構造、大陸移 動説、海洋底の拡大、プレートテクトニクス、 目を受講することはできない。 ●教 材 授業に必要な資料をプリントとして配付する。参考書 プルームテクトニクス。 (3∼4回) 3)日本列島周辺のプレート運動と地震活動:日本列 は必要に応じて授業中に指示する。 島周辺のプレート配置と運動、沈み込みプレー −102− 現代の自然科学 現代の理学A 自然科学と人間 (前期 火・2 全文、H(人) 、M(看) ) 2 単位 Modern Science A 理学研究科 平澤 栄次 他 6講 元素の化学Ⅰ(木下勇)5月22日 ●科目の主題 高校で履修した数学・理科の内容では、文系学生が社 7講 元素の化学Ⅱ(木下勇)5月29日 会にでるまでに必要な理系の教養として十分とは言い難 8講 鳥類の繁殖戦略(堀江明香)6月5日 い。この講義では、入学生が高校ではよく学べなかった 9講 動物行動学:動物の行動の意味と仕組みを探る 面白い学問(幸田正典)6月12日 数学・理科をもう一度学ぶとともに、その必要を理解す る。 10講 地球温暖化の化学(中島信昭)6月19日 ●授業の到達目標 11講 はじめての生化学(平澤栄次)6月26日 講義終了時には、大学生として社会にでるまでに必要 12講 植物の栄養(平澤栄次)7月3日 な教養の理学とは何かを知り、在学中に学ぶ理学の範囲 13講 初等整数論入門Ⅰ(古澤昌秋)7月10日 を把握する。 14講 初等整数論入門Ⅱ(古澤昌秋)7月17日 ● 授業内容・授業計画 15講 食品の放射能汚染をどう考えるか (平澤栄次)7月24日 下記の1講から15講までを授業15回で行う。 ●評価方法 1講 巨大地震と津波、そのメカニズムと災害 レポートを提出できる条件は出席回数10回以上とす (原口強)4月10日 2講 大阪の都市地盤の成り立ちと災害危険度 る。評価はレポートと出席質問票より総合的に行う。 (原口強)4月17日 ●受講生へのコメント 授業毎に出席質問票を配布して出席率や質問を集約す 3講 未定(生物特任)4月24日 4講 未定(生物特任)5月8日 る。 5講 宇宙の創生と、物質世界の成り立ち ●教 材 必要に応じて資料を配布する。 (村田)5月15日 科学と社会 (前期 木・ 4 全) 2 単位 Science and Society 非常勤 木野 茂 ●科目の主題 7.サンデル流対話型授業(原子力の光と影) この授業では科学と社会のかかわりについて、環境問 8.原発で働く労働者 題をテーマに考える。 9.エネルギーと人間(ビデオ:京大原子炉実験所・ 小出裕章) この授業は私(現在、立命館大学)が本学にいたときに 始めた科目であるが、いつも授業を行う上で重視してい 10.公害と行政(ゲスト:高槻市会議員・二木洋子) るのは、①分かりやすく、②興味深く、③楽しく、④双 11.薬害を防いだ労働者(ゲスト:大鵬薬品労組・北 野静雄) 方向型に(一方的な講義にならないように) 、である。 12.薬害エイズは今…(ゲスト:薬害エイズ患者・花 ●科目の到達目標 井十伍) 科学と社会の関わり方について理解を深めることはも ちろんであるが、他の人とコミュニケーションを取る力 13.環境問題と差別(受講生による創作討論劇予定) と自分で考える力を身につけることも重視する。 14.環境問題と専門家の役割 ●授業内容・授業計画 15.授業を振り返って 1.この授業への誘い―東日本大震災と福島原発事故 ●評価方法 レポート評価5、平常評価3、授業への積極度2で総 から考える 2.公害の原点・水俣病 合評価する。レポートの課題は授業で扱った範囲内なら 3.水俣病は終わっていないⅠ/ディベートのチーム 自由で、内容は自力で何かをつかんだと認められるもの を高く評価する。 分け 4.水俣病は終わっていないⅡ/ディベートの準備 ●受講者へのコメント 5.公害と労災職業病/ディベートのレジュメ提出 この授業は、環境問題に関心を持っている人はもちろ 6.チーム・ディベート大会(テーマは福島原発事故) ん、聞くだけの授業に不満な人、一度ディベートをやっ −103− 自然科学と人間 てみたい人、風変わりな授業を経験してみたい人にお勧 問い合わせはe-mailで:[email protected] めである。 ●教 材 また環境問題では当事者の方々の話を聞くことが大事 教科書:木野茂編『新版 環境と人間−公害に学ぶ』 (東京教学社)。 なので、ゲストを招いたり、ビデオで話を聞く機会も設け る。なお、ゲストの二木さんと北野さんは市大の卒業生で 教室では、毎回、授業用プリントを配布する。 ある。授業の順番はゲストの都合で変更することもある。 参考文献やビデオは学術情報総合センターに多数揃え 関連科目:「ドキュメンタリー・環境と生命」 てもらっているので、自由に利用すること。 現代科学と人間 (前期 木・ 4 全) 2 単位 Today s Natural Sciences and Human Beings 理学研究科 宮田 真人 他 3.近代科学の研究手法:今日の物質文明の繁栄をもた ●科目の主題 自然科学の最先端の知識を正確に理解した上で、現代 らした近代科学、そこでは物理学における研究手 の人間生活に及ぼす科学的成果の功罪を理解する。 法が原点となっている。自然現象の解明を目指す ●授業の到達目標 際の基本的アプローチは、実験・観測を詳細に行 主題を理解した上で、有意義な考察が行えること。 い、その結果を客観的に整理することにある。特 ●授業内容・授業計画 に、多くの物理現象では、法則性が数学的に記述 1.パンデミック(感染症世界流行)への警鐘:1970年 されることが見いだされてきた。このような自然 代、人類は抗生物質やワクチンなどによってすべ 現象の法則性とその数学的な構造について議論す ての感染症を制圧したかに見えたが、それは幻想 る。 (小栗 章) にすぎなかった。今日、インフルエンザ、マイコ 4.化学と持続的未来:持続的未来の為には地球規模 プラズマ、AIDS、O157、プリオン、など、感染症 での環境に対する視点が必要である。この為に物 が話題にあがらない日がめずらしいと言って過言 質を取り扱う科学としてどのような視点を持つこ ではない。現代社会は発達した医療技術を有して とが必要だろうか?歴史的な解決策に学び、現在 いる反面で、グローバリゼーション、高齢化、テ の状況を解決し、新しい時代を切り開く。これを ロリズムといった、アウトブレイクを誘発しうる 水、環境、エネルギーの観点から論じていく。(木 要因も多い。既存の映画を例に用いて、現代社会 下 勇) ●評価方法 における感染症を考察する。 (宮田 真人) 2.生命が進化のプロセスで生物時計を持つことの意味 質問カード(毎時間提出)・レポートにより総 を考えてみる。30∼25億年前に出現したとみられ 合的に評価する。 ている原始的な藍藻にも生物時計があり、このこ ●受講生へのコメント とからも生物が生きていく上で時計はとても大切 積極的な発言を希望する。 なものであることがわかる。また私たち人間は体 ●教 材 内に時計を持っていることを意識することはあま 平澤担当分教科書:平澤栄次「体内時計を調節する技 りないが、やはり生きていく上でなくてはならな 術」 (フォレスト出版) いものである。この時計のしくみとその特性を知 その他は教科書は使わないので、参考図書を各時間に ることで、人はより健康な生活を送ることができ 指示する。また、ビデオを用いる。 る。(平澤 栄次) 近代科学の成立 The Development of Modern Science (後期① 木・ 4 全) 2 単位 (後期② 木・ 1 全) 2 単位 非常勤 大久保 稔 ●科目の主題 論主導型科学としての性格をつよめてきている。しかし 今日の科学の進歩は止まることを知らず、日進月歩の 巨大な自然力を解放した結果、強力な生産力だけでなく 勢いで発展している。科学の本質は究理であるが、はじ 反社会的な破壊力さえも生み出してしまった。本講では め哲学主導型科学から出発して、のちに技術と結びつ 近代科学の成立にいたる歴史的経緯を明らかにすると共 き、また理論的な追究ともあいまって、技術支援型&理 に、その影響について考察する。 −104− 自然科学と人間 ●授業の到達目標 3 我が国科学の推移 和魂洋才から和魂和才へ 1 科学の性格、特徴を理解する 4 個別科学の例 化学 質の変化の科学 2 科学の歴史的発展を理解する 5 近代科学の影響 3 近代科学の現代への影響を理解する 1)現代の科学 科学と技術の相互高揚 ●授業内容・授業計画 2)科学の功罪 苦情、公害、環境破壊 近代科学がどのような経過をたどり成立してきたか、 ●評価方法 を要点をまとめて時系列的に話をする。また、単なる歴 「試験に代わるレポート」の出題によって行う。 史の後追いに終わらせず、未来展望ともからめて、今後 出席率も考慮する。 の科学のあり方についても触れる。 ●受講生へのコメント 講義の項目は以下のようにわける。 1 授業開始5分前までに入室してほしい。 1 科学とはなにか 2 講義に先立ち約10分間、その時々の話題について小 話をする。 労働の役割、科学の特徴、科学と技術 3 理系、文系を問わず、科学に強い関心をもち、積極 2 科学の歴史 的に受講を希望する諸君を待つ。 1)科学のあけぼの期 疑似科学 4 参考書をざっと読んであらかじめ概要をつかんでお 2)古代ギリシアの自然哲学 論証の科学 いてほしい。 3)中世、科学の低迷 神学のしもべ 4)アラビアの錬金術 神秘的実験科学 参考書「例」 5)科学と宗教のたたかい 科学の受難 鈴木、馬場共著「科学・技術史概論」(建帛社) 6)近世、科学の復活 サロン的実験科学 藤村、他 「科学−その歩み」(東京教学社) 7)フランスでの科学発展 哲学と科学の分離 平田 寛 著 「図説 科学・技術の歴史」 8)イギリスでの産業革命 科学と技術の接近 (上・下)(朝倉書店) 9)近代、科学の躍進 技術支援型&理論主導型 ●教 材 教科書は使わない。図、表で要点をまとめたプリント 科学 を配布する。 心と脳 (後期② 月・ 2 全) 2 単位 Mind and Brain 文学研究科 川辺 光一 ●科目の主題 ●授業内容・授業計画 脳科学は今世紀における自然科学の最も重要な研究 講義は概ね以下の内容で進められる。ただし、授業進 テーマの一つとされている。脳は、外界からの感覚情報 度の関係上、講義の順番が変更されたり、一部を省略し を処理し、行動や運動の制御を行う生体の司令塔として たりすることもあるということを付記しておく。 の役割を果たしている器官であるといえるが、脳の構造 1)行動神経科学・生理心理学とは はあまりに複雑であるため、その機能的役割については 2)行動神経科学・生理心理学における研究手法 未だ不明な点が多い。しかしながら、生理学、解剖学、 3)脳の構造と機能 心理学、分子生物学、薬理学、医学、工学などさまざま 4)神経系を構成する細胞とその機能 な領域からアプローチが試みられ、数々の研究手法や方 5)神経系における情報伝達機構 法論が開発された結果、20世紀後半に脳研究は飛躍的な 6)脳と睡眠・覚醒 発展を遂げた。現在でも数多くの精力的な研究がなされ 7)脳と生物時計 ており、高次精神機能と脳の関係についても解明が進み 8)脳と摂食 つつある。 9)脳と情動 この講義では、いくつかの精神機能をトピックとして 10)脳とストレス とりあげ、それらと脳の関係についてこれまで得られて 11)脳と学習・記憶 いる知見について概説する。 12)脳と思考 ●授業の到達目標 13)脳と精神疾患 脳や神経系に関する基本的知識を習得し、脳と精神機 14)脳と薬物依存 能・行動の関係についての理解を深めることを目標とす ●評価方法 る。 期末試験の成績を基本とするが、これに平常点も加味 する。試験は、授業内容についての深い理解が求められ −105− 自然科学と人間 るので、講義には必ず出席すること。 配布する。 ●受講生へのコメント 参考書:ブルーム, F.E. 他(中村克樹・久保田競 監 訳)『新・脳の探検(上・下)』 講談社ブ 授業を通して、脳と精神、行動の関係についての正し ルーバックス い知識を得てもらいたい。 また、本講義で扱う内容は、「心」の問題を取り扱う カールソン, N.R.(泰羅雅登・中村克樹 監 「心理学」の領域に関わるものである。心理学の研究方 訳)『神経科学テキスト―脳と行動(第3版)』 法への理解を深めてもらうため、授業時間内に行われる 丸善 質問紙調査や、授業時間外に行われる実験への参加を要 ピネル, J.P.J. (佐藤敬他 訳)『バイオサイコ 請する場合もある。受講者は、これらに積極的に参加、 ロジー:脳―心と行動の神経科学』 西村書 協力してほしい。 店 ベアー, M.F. 他(加藤宏司他 監訳)『神経科 ●教 材 学―脳の探求―』 西村書店 毎回、その日の講義に関する図表等をプリントとして ドキュメンタリー・環境と生命 (後期 水・ 4 全) 2 単位 Documentary・Environment and Life 非常勤 木野 茂 ●科目の主題 10回目からは、グループ研究の成果をグループ全員で この授業は環境と生命に関する現代的な課題にどう向 プレゼンテーションし、クラスメイトとQ&Aを行う。 き合うかを主題にして、考える力、調べる力、伝える このときの司会進行は受講生に行ってもらう。 力、ディスカッションする力を身に付けるための総合教 ●評価方法 育科目である。 毎週のメーリングリストへの感想意見5、番組要約 ●科目の到達目標 1、グループ研究2、レポート2の割合で総合評価す 授業の前半ではテレビ・ドキュメンタリーを教材に る。 し、自分の考えをまとめる力と自分の意見を人に伝える 番組要約は各自1回ずつ担当する。 力をつけることを目指す。 レポートの課題は、授業期間中に放送されるテレビ・ 後半では自分たちでテーマを設定してグループ研究を行 ドキュメンタリーの中から一つを選び、その番組要約と い、その成果を教室で発表し、プレゼンテーションと 感想意見をまとめることである。 ディスカッションの力をつける。 ●受講者へのコメント ●授業内容・授業計画 ドキュメンタリーの好きな人、環境と生命の問題に関 9回目までの授業では最初に30∼50分程度のテレビ・ 心を持つ人、聞くだけではなく自分たちも参加できる授 ドキュメンタリーを鑑賞する。ドキュメンタリーの作品 業を求めている人を歓迎する。とくにグループワークを は最近数年間に放映されたものが中心で、内容は環境と やってみたい人にはお勧めである。 生命に関するもので、テーマは多岐に渡っている。 毎週のメーリングリストで最も良かったと思う意見を 授業で取り上げる番組一覧は第1回目の授業で発表す 全員の投票で選び、1分間スピーチとちょっとしたプレ る。教室での鑑賞後は、自分の感想や考えを400字程度 ゼントで表彰するアトラクションもある。 にまとめ、メーリングリストでクラスメイトと交換す この授業では、何事にも縛られずに自由に学ぶことの る。 楽しさを味わってほしい。 また、鑑賞と並行して、ドキュメンタリーのテーマご 関連科目:「科学と社会」 とにグループ研究を始める。グループは各自の関心を尊 問い合わせはe-mailで:[email protected] 重しながら5−6人程度になるよう調整する。ドキュメ ●教材 ンタリーの鑑賞後はグループごとに別れてグループワー 毎回、プリントを配布する。 クを行う。 −106− 自然科学と人間 実験で知る自然環境と人間 (前期 水・ 3 ∼ 4 全) 3 単位 Exploration into our Natural Environment 理学研究科 飯尾 英夫 他 ●科目の主題 東京の様々な地形を生みだした歴史や地質構造 複雑な地球環境のもと私たち現代人が生きていく上で を考える。 は、私たちを取り巻く自然環境や私たち自身のことを深 7.「河原の礫と海岸の礫」 (前島 渉) く理解することが要請されている。本科目では理系学生 礫の形や丸さかげんが河原の礫と海岸の礫とで も含め全学の学生を対象に、地球環境や人間についての どうちがっているかを調べ、川の水の流れと海 身近なテーマを取り上げる。 岸の波による礫の摩滅の受け方のちがいを理解 ●授業の到達目標 するとともに、川や海岸の波の作用と我々の生 活との関連を考える。 実験・実習をつうじ幅広く体験し、自ら対応できる力 8.「分子の宝石−分子結晶をつくろう−」(亀尾 をつちかい総合的に判断する力を養う。 肇) ●授業内容・授業計画 第1回目はガイダンスおよび消防訓練を行い、第2回 分子を結晶にすると宝石のようにキラキラと美 目からは以下の実験を行う。( )内は各テーマの担当 しい輝きを放つ。実験では、キノンとヒドロキ 教員を示し、適宜、実験室の技術職員が加わる。 ノンを用いて、金属光沢をもつ結晶をつくり、 1. 「動物のからだ」 (水野寿朗) 分子の水素結合や電荷移動相互作用を考えてい 自由生活をする動物には我々ヒトと同様に外 く。 皮、神経系、筋肉、消化管など基本的な器官が 9.「地球温暖化・温室効果ガス、二酸化炭素分子の 秘密」 (工位武治) 揃っている。小動物のすがたを実体顕微鏡で観 察し、動物のからだの成立ちについて理解を深 二酸化炭素は何故に地球温暖化の原因物質な のかを分子の世界の言葉で考え、この分子に隠 める。 された秘密を先端化学によって解き明かす。ま 2.「色で見分ける殺菌パワー」(田中俊雄、藤田憲 た、地球温暖化は日常生活に何をもたらしつつ 一) あるかを知る。 メチレンブルーは細胞の酸化・還元力のイン デイケーターであり、細胞の生死を簡便に判定 10. 「生物発光と化学発光」(品田哲郎、飯尾英夫) できる。本課題では、酵母を用いて市販の抗菌 生物発光および化学発光は熱を伴わない発光 剤、抗生物質の殺菌力を評価するとともに、身 (冷光)である。ルミノールと過シュウ酸エス 近な食品成分の殺菌力についても検討する。 テルを用いて、その発光現象を観察する。 11.「身の回りにある色素の謎を探る」(臼杵克之助、 3. 「自分の体温時計」 (平澤栄次 他) 飯尾英夫) 体内時計で制御されている深部体温を起床か ら就寝まで継続して基礎(婦人)体温計で測定 美しく華やかな花や果実の色素を抽出する。そ する。そして、測定結果、特に体温の上昇・下 して化学合成で手にした色素とその性質を比較 降の記録から、自分の体内時計がどのようなタ することにより、物質の機能と分子構造との関 連を考察する。 イプかを分析して、日常の体調との関連を調べ 12.「平面を覆う正多角形のタイルの図形は3種類し る。 かない」(村田惠三) 4. 「都市環境とセミの生活」 (後藤慎介) 近年大阪では、クマゼミが著しく増加した。都 正多角形で平面を覆うには、許される多角形 市環境とセミの生活の関係を考察するために、 は、3、4、6角形しかなく、それ以外にはな キャンパス内でクマゼミの観察を行うととも い。これを利用して水面を覆う多数の6角形 に、クマゼミの卵が雨の日に孵化するしくみに で、自然に微結晶から、大きな結晶に成長する ついての実験を行う。 ことを体験する。結晶化とは自己組織化そのも 5. 「放射線を測る」 (神田展行) のである。これと、2酸化炭素排出削減の効果 五感に感じない放射線を測定器を使って測る。 について学ぶ。 また、霧箱を使って放射線の飛跡を観察した 13.「シャボン玉の科学」 (田中礼二) り、身の回りの自然放射線を測定してみる。 自然界の物質は極めて広い範囲でコロイドの状 6. 「3Dで診る東京の地形」 (原口 強) 態で存在する。界面活性剤分子が主役を演じる デジタル標高地形図「東京」を立体視し、地形 薄膜とコロイド溶液の構造と機能を解説し、特 の凹凸を実感しながら地形図の読み方を学び、 殊なシャボン玉を作って目に見えないナノメー −107− 自然科学と人間 トルサイズの世界を観る再発見の科学。 ●受講者へのコメント ●評価方法 初心者歓迎。白衣貸与。定員48名。第1回目のガイ 毎回の平常点を総合して成績を付ける。また、最後に ダンス(基礎教育実験棟308室集合)時に受講者を決め どれか1つの実験に関するレポートを出してもらい、平 る。 『実験で知る自然の世界』(後期開講)と本科目 常点に加点する。 をともに履修することはできない。 ●教 材 実験指導書を配布する。 森林環境と人間社会 Forest environment and human society (前期① 火・ 3 全) 2 単位 (後期② 木・ 2 全) 2 単位 大学教育研究センター 大久保 敦 ⑨ 森林の生い立ち3 針葉樹の森林・広葉樹の森林 ●科目の主題 の出現 この授業では科学的な視点も含めた多角的視点で森林 環境を観ることを通して、森林環境と人間社会の関わり ⑩ 日本の森林 を学習します。また特に、これまで取り上げられること ⑪ 世界の森林 のなかった、地球46億年の歴史の中で森林の生い立ちや ⑫ 人間社会と森林1 日本の森林問題 森林存在の意義を考えます。 ⑬ 人間社会と森林2 地球規模の森林問題(東南ア ジアの熱帯林) ●授業の到達目標 半期の授業のみでは森林環境問題の全てを網羅するこ ⑭ 人間社会と森林3 地球規模の森林問題(アマゾ ンの熱帯林) とは不可能です。従って、この授業では森林環境問題を 考える「きっかけ作り」を目指します。 ⑮ まとめ 具体的には森林環境について ●評価方法 ① 興味・関心が持てるようになること 1.毎授業の課題:50点 ② 多角的視点で観る態度を身につけること 2.小レポート:10点 ③ 主体的に情報を得る態度を身につけること 3.最終レポート(40点) ④ 保全の意識を高めること 1、2、3を総合的に評価(記述内容を重視) ⑤ 保全につながる態度を身につけること ●受講生へのコメント ●授業内容・授業計画 積極的に授業に参加しようとする人を期待しています ① 森と林の違い(森林の基本概念) (受身の授業を期待している人には不向き)。授業の内 ② 身の回りの森林環境1(野外観察実習) 容は毎回完結していますが、それぞれ関連しているので ③ 身の回りの森林環境2(野外観察実習まとめ) 授業目標を達成するために、全ての授業に参加すること ④ 森林の恩恵1 が理想です。高校時代に生物を履修していない人を対象 ⑤ 森林の恩恵2(ディベート) に授業内容を設定します。 ⑥ 森林の恩恵3(ディベートまとめ) ●教 材 ⑦ 森林の生い立ち1 植物分類の基礎(室内観察実 教科書は使用しません。その都度参考図書などを紹介 します。 習) ⑧ 森林の生い立ち2 陸上植物の出現、最初の森林 の出現 −108− 自然科学と人間 21世紀の植物科学と食糧・環境問題 (後期 火・ 3 全) 2 単位 Plant Biology for Addressing Societal Challenges of the 21st Century 理学研究科 飯野 盛利 他 4. 植物園から考える環境問題(伊東・植松 4回 ●科目の主題 分) この世紀、人類はかつてない深刻な問題に直面するこ とが予測されている。その一つは、増え続ける人口を支 植物園で実施されている環境問題研究プロジェ えるための食糧供給の問題(食糧問題)であり、もう一 クト「都市と森の共生をめざして」の成果をふ つは、人類の活動による環境破壊がもたらす緒問題(環 まえて森の植物園の役割を考える。⑴なぜ今、 境問題)である。植物の光合成によって固定される光エ 都市と森の共生か(植松)、⑵森林の二酸化炭素 ネルギーは、私たち人間を含めた全ての動物の生命活動 固定(非常勤講師:小南裕志)、⑶森林に暮らす を支えている。本講義では、食糧・環境問題を植物科学 動物の多様性(非常勤講師:谷垣岳人)、⑷タン の視点から考える。 ポポの多様性と保全(伊東)、について解説す る。 ●授業の到達目標 植物の機能や生態系について理解し、食糧・環境問題 5. 地球温暖化防止のために(植松 3回分) の諸相を知り、これらの問題の解決策を探るために自分 ⑴地球温暖化−国際会議の現場から−(非常勤 で考え、行動できるようになることを目標とする。 講師:早川光俊)、⑵菜の花プロジェクト(非常 ●授業内容・授業計画 勤講師・藤井絢子)、⑶バイオエタノールを中心 1. 食糧・環境問題の現状(飯野盛利 1回分) とする自然エネルギー利用の可能性(植松)、な どについて最新の状況を紹介する。 2. 生態学から見た環境問題(伊東明 3回分) 環境問題には様々な側面がある。ここでは、 6. 生物の進化および地球環境の変遷と食糧・環境 問題(飯野盛利 1回分) 「生態学」の視点から環境問題を考えて見た い。生き物と環境との関わりを研究してきた生 誕生から現在までの生物の進化、およびそれと 態学には、生物(人間)にとって環境とは何 密接に関連する地球環境の変遷について、最近 か、環境が変わると生物にどんな影響が出る の研究成果も踏まえて概説する。これらの知見 か、生物の活動が環境にどう影響するか、な から現在の食糧・環境問題のもつ意味を探る。 ど、環境問題を考えるときの参考になりそうな ●評価方法 概念がたくさんある。そこで、⑴共有地の悲劇 授業で課す小テスト・レポートと期末に実施する試 ⑵生物多様性 ⑶森林破壊と地球温暖化、な 験、ならびに出席率によって評価する。 ど、具体的なトピックスを紹介しながら、関連 ●受講生へのコメント する生態学の基本概念について解説し、環境問 食糧・環境問題は社会的な問題であり、解決策は一つ 題に関する情報や報道を理解する時の助けとし とは限らない。受講生各自がこれらの問題にどう対処す たい。 るかを考えるきっかけとなることを期待する。 3. 食糧・環境問題に対する植物遺伝学からのアプ ●教 材 教科書は使用しない。適宜、プリントを配布し、参考 ローチ(植松千代美 3回分) 不可分の関係にある食糧問題と環境問題の現状 図書を紹介する。 を認識することが問題解決の第一歩となる。植 物科学、特に遺伝学の立場からその解決を目指 す取り組みとその問題点について以下の点から 解説する。⑴環境問題と食糧問題入門、⑵遺伝 子組換え植物とその功罪。 −109− 自然科学と人間 植物の機能と人間社会 (後期 月・ 2 全) 2 単位 Plant Function and Human Society 理学研究科 曽我 康一 6.植物ホルモン(サイトカイニン、アブシジン酸、 ●科目の主題 エチレン) 植物の持つ機能には、有用で優れたものが多く存在す る。植物の機能を利用したり、植物の機能を模倣したり 7.組織培養技術とその利用 するためには、まず、植物の持つ機能を理解する必要が 8.遺伝子組換え技術 ある。この科目では、はじめに、植物の性質について概 9.遺伝子組換え植物の利用 説し、次に、私たちの生活に植物の機能がどのように役 10.植物工場 立っているのかを具体例を示しながら解説する。 11.宇宙農業 ●授業の到達目標 12.植物を利用した有用物質の生産 植物は忘れられやすい存在である。しかしながら、人 13.植物による環境浄化 間をはじめとするほとんどの生物は植物に依存して生き 14.まとめ ている。この科目を通して植物に興味・関心が持てるよ 15.まとめと試験 うになることを目指す。また、人間の生存にとって植物 ●評価方法 がいかに重要であるかについて考えるきっかけを作るこ 定期試験で評価する。 とを目標とする。 ●受講生へのコメント ●授業内容・授業計画 高等学校において生物を履修していないことを前提に 1.植物と動物 授業をおこなう。また、授業毎に質問票を配布・回収 2.植物の生殖 し、次回以降の授業時に質問に答える。 3.環境シグナルに対する反応とシグナル伝達 ●教 材 4.環境シグナルの受容 プリントを適宜配布する。 5.植物ホルモン(オーキシン、ジベレリン) 参考書:神阪盛一郎、谷本英一 共編 「新しい植物科 学−環境と食と農業の基礎」(培風館) 植物と人間 演習 (前期 集中 全) 2 単位 理学研究科 飯野 盛利・名波 哲・植松 千代美 Seminar : Plants and human life 大学教育研究センター 大久保 敦 ●科目の主題 復元されているさまざまな森林型を観察しながら、森林 植物は生態系における生産者として、私たち人間を含 を構成する植物の集団としての性質や、植物と無機的環 む、ほぼ全ての生物の生存に必要な有機物とエネルギー 境との相互作用、森林環境の創出と維持のしくみを理解 を作り出している。植物は、私たちの食料としてだけで する。 はなく、衣料や医薬品の原料として、あるいは鑑賞用と ・植物の進化(担当:大久保敦、大教センター) しても利用されている。このように、私たちの生活は植 植物と人間の関係を理解する上で、植物の進化の過程 物と切っても切れない関係にある。本講義は、理学部附 を把握しておくことは重要です。かつて地球上の陸地に 属植物園で収集・保存されている植物を活用して、植物 は植物も動物も存在しない時代があった。植物がどのよ と人間の関係について学び、植物についての理解を深め うにして水中から陸上へ進出し、現在のような多様な姿 ることを主題とする。 の森林に至ったのか、その歴史を植物園に植栽されてい ●授業の到達目標 る実際の植物を観察しながらたどる。 植物園内に植栽されている植物の観察を通じて植物の ・遺伝資源と多様性(担当:植松千代美) 多様性を体験的に学ぶ。また森林や植物進化の道筋、植 植物園には様々なバラ科植物が植栽されているが、そ 物の遺伝資源としての重要性について学び、これらを伝 れらの中からナシ属野生種のコレクションを例に、観察 える技術を習得する。 や簡単な実験を通して遺伝的多様性、野生種から栽培種 ●授業内容・授業計画 への進化、遺伝資源の重要性などを学ぶ。 ・森林と環境(担当:名波哲) ・有用植物(担当:飯野盛利) 森林は、環境条件や人間の影響の程度、成立してから 植物園で収集・保存されている熱帯植物には、鑑賞植 の時間などに応じて、多様な姿を持っている。植物園に 物として親しまれているもの、食料、香辛料として、ま −110− 自然科学と人間 情報と人間 た工業用に利用されているものなどが含まれている。そ ●受講生へのコメント れらを観察、学習する。また、各自が興味をもった植物 授業は夏季休暇中の研修期間に、大阪府交野市にある について、図書、インターネット、文献などで調べ、そ 理学部附属植物園において、集中・オムニバス方式で行 れをポスターにまとめることを実習する う。野外での実習が含まれるので、帽子など日除け対策 ●評価方法 を講じること。 各担当教員が提示した課題のレポートをそれぞれ100 ●教 材 点満点で評価し、4課題の評点を平均して科目の評価と プリントを適宜配布する。 する。また、演習科目であることを考慮して、講義時間 中における発言などの積極的参加を評価し、加点する。 情報基礎 Introduction to Information Processing (以下の科目の単位を修得した者は、この科目は履修できない。 □平成17年度以前の「情報処理Ⅰ」 創造都市研究科 □平成17年度以前の「コンピュータのシステムとその応用」 <1部> クラス 期・曜・時 担当者 クラス 期・曜・時 担当者 全 前・月・3-4 村上 晴美 全理 前・金・1-2 (豊田 博俊) 全文 前・火・1-2 安倍 広多 全 前・金・1-2 ベンカテッシュ・ラガワン 全理 前・金・3-4 (吉田 大介) 全 前・金・3-4 永田 好克 クラス 期・曜・時 全 後・金・3-4 全 前・火・1-2 米澤 剛 全文 前・木・3-4 大西 克実 全 前・木・3-4 (豊田 博俊) クラス 期・曜・時 全 後・金・1-2 担当者 村上 晴美 担当者 安倍 広多 <2部> クラス 期・曜・時 全 前・金・1-2 担当者 永田 好克 ピュータがさまざまな情報をどのように扱っているかを ●科目の主題 日常の行動において行っているさまざまな情報処理の 理解する。 過程の中で、コンピュータを道具として使いこなすこと をコンピュータ・リテラシと呼ぶ。研究や学習ばかりで 担当者:安倍、豊田、永田、村上 なく、日常生活においてもコンピュータの利用が不可避 ●授業内容・授業計画 になりつつある中で、将来も柔軟にコンピュータとかか ①② コンピュータになじむ わっていけるよう、リテラシの奥行きを深めることを目 この授業で採用しているシステムに慣れる。また 的とする。いくつかの代表的なアプリケーションに慣れ 電子メール、Webブラウザ、ワードプロセッサ 親しむことを交えながら、コンピュータの動作原理につ などの初歩的なツールに慣れる。 いてソフトウェア・ハードウェアの両面から理解を深め ③④ Webページの作成手始め る。また情報利用者・情報発信者として安全にかつ責任 簡単なWebページを作成しながら、ファイルシ ステム、ソースファイルの編集、HTMLの基礎 を持ってコンピュータを活用できる能力を涵養する。 を理解する。 ●授業の到達目標 ワードプロセッサ、表計算、プレゼンテーションな ど、よく用いられるアプリケーションの基本操作を身に ⑤ 画像と描画ツール 画像ファイルの取り扱いや、画像描画ツールの考 え方を理解する。 つける。インターネット、Webや電子メールなどの基 本的な仕組みを理解し、情報利用者・発信者としての能 ⑥⑦ 情報の符号化 力を身につける。コンピュータの基本的な仕組み、コン デジタルとアナログの違い、2進数や16進数の表 −111− 情報と人間 現、情報符号化の考え方、情報圧縮、文字コー ② 電子メールとコミュニケーション ドなどを理解する。 電子メールの作成で文書作成の基礎を修得し併せてコ ミュニケーションの便利さと問題点を覚える。 ⑧ コンピュータの仕組み コンピュータシステムを構成するハードウェアと ソフトウェアについての基礎的な知識を習得す ③④ リテラシと情報セキュリティ コンピュータリテラシ、ネットワークリテラシ、メ ディアリテラシやリテラシのレベル等を学び、併せて る。 情報セキュリティ、プライバシや知的財産権/著作権 ⑨ インターネット通信の仕組み などの考え方を知る。 インターネット通信によって目的のコンピュータ ⑤⑥ 情報発信―ホームページ作成 と情報を交換する仕組みを理解する。 各自のホームページ作成を通して、インターネット世界 ⑩⑪ 洗練されたWebページを目指して での情報収集や情報発信の便利さと問題点を覚える。 ソースファイル編集の視点から、また、Web 併せて、プライバシや著作権の重要性も理解する。 ページ閲覧者の視点から、洗練されたWebペー ⑦⑧ 調べ方―情報検索 ジとは何かを理解する。 インターネットでの検索エンジン等を使いながら、基 ⑫ 情報セキュリティ 礎的な情報検索手法を学ぶ。併せて、インターネット 通信の秘密と信憑性を確保する技術とその意味に でのセキュリティについても理解を深める。 ついて理解する。 ⑬ 情報システムの利用と社会的問題 ⑨⑩ 考え方―アルゴリズム 情報システムの利用につきまとう社会的問題につ コンピュータで考え方を実現するのはプログラミング であるが、その基本となるアルゴリズムを疑似言語等 いて、その事象と対処法を理解する。 を使いながら修得する。論理的な考え方を身につける ⑭ 表計算、プレゼンテーションなど ことも目的の一つである。 表計算、プレゼンテーション、あるいはその他の ⑪⑫ 空間情報の利用 基礎的内容や発展的内容を取り扱う。 なお、担当教員によって取り上げる順番や回数 地球上の位置と直接・間接に関連づけられた対象物や 現象に関する情報である空間情報の取扱い方法の理解 配分を変更することがある。 を深める。 ●評価方法 出席、レポート、期末試験により総合的に評価す ⑬⑭ 情報セキュリティ ここまで修得した情報検索や学術情報総合センターの る。 図書サービス等を使い、文章の組み立てを考えなが ●受講生へのコメント ら、表作成と文章作成を組み合わせたレポート作成を コンピュータに関する予備知識や経験がほとんどない 修得する。 学生は、特に前半に授業外でも積極的にコンピュータに 慣れる機会を作り、経験者に追いつく努力をすることが 望ましい。 講義の部分ではVOD(Video On Demand)等の教材 ●教 材 を使って自学自習が可能になるように配慮している。ま た、演習では各自の習熟度に応じての対応を考えてい 講義メモやWebページなどを活用する。 参考書: る。なお、担当者はそのクラスの採点責任者であるが、 情報処理学会編集ITText一般教育シリーズ「情報とコ 講義の内容に応じて、教材作成担当者がその時間の質問 ンピューティング」 などを受ける場合もある。 情報処理学会編集ITText一般教育シリーズ「情報と社 ●評価方法 出席、レポート、期末試験により総合的に評価する。 会」 ●教 材 Webページを基本的に利用する。 担当者:大西、吉田、米澤、ラガワン ●授業内容・授業計画 ① コンピュータとその操作の基礎 −112− 情報と人間 プログラミング入門 Introduction to Programming (前期 金・3 − 4 全) 2 単位 (後期 金・3 − 4 全) 2 単位 創造都市研究科 松浦 敏雄 ⑺ Javaによるプログラム開発方法(他の言語を採用 ●科目の主題 する可能性あり) この講義では、プログラミングとは何かを体験し、そ れを通じて、コンピュータの仕組みについての理解を深 ⑻ if文、while文 めることを目的とする。まず、プログラミング言語につ ⑼ 二重ループ、変数の有効範囲 いて共通する概念を、教育用擬似言語を用いて体験的に ⑽ 配列、文字列の扱い方 学ぶ。さらに、特定の言語(Javaを用いる予定であるが ⑾ オブジェクト指向の考え方 変更する可能性もある)を通して、プログラミングを経 ⑿ メソッドの記述方法、ファイルの扱い方 験する。 ⒀ GUIプログラムの作成 ●授業の到達目標 ⒁ 最終課題のプログラムの作成 自らアルゴリズムを考案し、プログラムが書けるよう ⒂ 最終課題のプログラムの作成 ●評価方法 になることを目指す。 レポートおよび試験により総合的に判断する ●授業内容・授業計画 ⑴ 変数、制御構造などプログラミングの基本概念、 ●受講生へのコメント エディタ、Webブラウザなどは自由に使えることを および、順次処理について学ぶ。 ⑵ 条件分岐 前提とする。「情報基礎」を受講していることが望まし ⑶ 繰り返し い。演習を重視した授業を行うので、できるだけ欠席し ⑷ 実数、配列 ないこと。 ⑸ 図形描画 ●教 材 配布資料およびWebページなどを利用する。 ⑹ 中間試験 プログラミング入門 Introduction to Programming (前期 月・3 − 4 全) 2単位 (後期 月・3 − 4 全) 2単位 創造都市研究科 石橋 勇人 ⑹ 中間課題 ●科目の主題 この講義は、いわゆる職業的プログラマを養成するた ⑺ オブジェクト指向プログラミング めのものではない。プログラミングとは何かを体験し、 ⑻ 再帰呼び出し それを通してコンピュータについての理解を深めること ⑼ GUIプログラミング⑴ を目的とする。 ⑽ GUIプログラミング⑵ ●授業の到達目標 ⑾ 正規表現とWebアクセス 特定の言語(Pythonを用いる予定)を通してプログ ⑿ 最終課題⑴ ラミングを体験的に学びつつ、どのプログラミング言語 ⒀ 最終課題⑵ にも共通する概念を身につけ、自由にプログラムが書け ⒁ まとめ、試験 るようになることを目指す。 ※ 内容や順序は必要に応じて変更する場合がある。 ●授業内容・授業計画 ●評価方法 各回の演習課題(中間課題、最終課題を含む)および 各回、原則として1コマを講義、1コマを演習に充て る。毎回課題を課し、提出を求める。 試験によって評価する。 ⑴ イントロダクション (授業の概要、プログラム ●受講生へのコメント エディタ、Webブラウザ、電子メールなどは自由に 作成から実行までの流れ、など) ⑵ 変数と制御構造 使えることを前提とする。演習を重視した授業を行うの ⑶ リストとディクショナリ で、できるだけ欠席しないこと。 ⑷ 文字列処理 ●教 材 Webページなどを使用する。 ⑸ ファイル入出力と関数 −113− 情報と人間 プログラミング入門 (後期 木・3 − 4 全) 2 単位 Introduction to Programming 創造都市研究科(兼)学術情報総合センター 大西 克実 ⑹ メソッド・クラス・オブジェクト指向プログラミ ●科目の主題 ング この講義はいわゆる職業的プログラマを養成するため のものではない。プログラミングとは何かを体験し、そ ⑺ データ構造・再帰呼出 れを通して、コンピュータについての理解を深めること ⑻ 整列問題⑴ を目的とする。 ⑼ 整列問題⑵ ●授業の到達目標 ⑽ ファイル入出力 どのプログラミング言語にも共通する概念を体験的に ⑾ アプレットプログラミング⑴GUI部品 学ぶ。さらに、特定の言語(Javaを用いる予定)を通し ⑿ アプレットプログラミング⑵イベント処理 て、プログラミングを体験的に学び、自由にプログラム ⒀ ネットワーキング が書けるようになることを目指す。 (それぞれが、1回の授業に対応するわけではない) ●授業内容・授業計画 ●評価方法 出席とレポート ⑴ プログラム言語の構成・ソースファイルの入力・ ●受講生へのコメント コンパイル、コマンドプロンプト使用法 エディタ、Webブラウザなどは自由に使えること ⑵ Java・形式、コメント・入力の扱い方・変数、演 (「情報基礎」程度)を前提とする。演習を重視した授 算子、型 ⑶ 型の変換・制御構造(if,while) 業を行うので、できるだけ欠席しないこと。 ⑷ 制御構造(for,continue,break)・配列・アルゴリ ●教 材 Webページなどで提示する。 ズム(1)[数列] ⑸ 参照型の特徴・アルゴリズム⑵[成績処理] 情報の探索と利用 Information retrieval and it’s application (前期 月・3 全) 2 単位 (後期 水・1 全) 2 単位 (後期 水・2 全) 2 単位 前期 創造都市研究科 北 克一 後期 非常勤 米谷 優子 ・論文・レポート作成のステップ ●科目の主題 大学では自主的に研究や学習を進め、考察を深める 3 テーマの絞込み ことが期待され、その成果として論文・レポートの作成 ・発想法 が必須となっている。論文・レポート作成においては、 4−9 情報の収集 テーマを絞り込み、そのテーマに即した情報をさまざま ・学術情報総合センターの使い方 な情報源から収集し、読解し、整理し、論理的に思考を OPAC、閲覧・貸出、外部データベース、ILL、 深め、新たな情報として発信する、情報活用能力が求め レファレンスサービス られる。本講義では、上のような知的生産の基礎を身に ・文献情報の探索と文献の入手 付けられるよう、論文・レポート作成のプロセスを段階 図書、雑誌記事、新聞記事 的に取り上げて、各ステップの要点を習得できるよう講 ・検索エンジン 義と演習によって、実践的な力を育成する。 ・各種データベース ●授業の到達目標 10−11 情報の読解 論文・レポートの作成プロセスを理解し、大学の各専 12−13 論文・レポートの執筆 門分野での研究生活を円滑に、より効果的に進めるため ・読んでもらえるレポート・論文 の、知的生産に関する基礎力を育成する。 ・表・グラフの挿入 ● 授業内容・授業計画 ・著作権への配慮・引用のルール 1 授業の概要・計画(概説) 14−15 発表 2 論文・レポートの要件と作成のステップ ・口頭発表・プレゼンテーションソフトによる発 表の方法と要点 ・論文・レポートの意義と要件 −114− 情報と人間 ※理解度その他によって、授業計画は変更することがあ る。 演習課題の提出が必須となるので、期日を守って提出 る。 すること。電子提出の場合は提出の際のマナー等にも気 ●評価方法 演習課題の提出レポートを対象に評価する(定期試験 をつけること。 ●教 材 は実施しない)。 適宜プリントを配布する。 ●受講生へのコメント 授業は、講義と実際の演習を組み合わせて進行す 地図と地理情報 (後期 火・2 全) 2 単位 Maps and Geographic Information 文学研究科 木村 義成 第6∼8回 ●科目の主題 ・地理情報を用いた空間分析法 地理情報と言えば、何か特殊な分野に聞こえるが、 Google MapやYahoo Mapに代表されるように、地理情 第9∼11回 ・危機管理分野(防災、犯罪、感染症)における 報は、誰にとっても身近にアクセスでき、日々の生活の 地理情報の利用 中で役立つ情報となっている。近年のIT技術の進展に より、地理情報は、GIS(地理情報システム)で管理・ 第12回 ・環境分野における地理情報の利用 分析できるようになり、GPS(全地球測位システム)で 高精度の位置情報を取得できるようになった。カーナビ 第13回 ・マーケティング分野における地理情報の利用 ゲーションは、それらの一例であり、日々の生活の中で 第14回 地理情報の技術が利用されている。 ・総括、および全体質疑 ●授業の到達目標 本講義では、地理情報の取得・分析方法を中心に説 ●評価方法 講義中の課題やレポート等から総合的に評価する。 明を行う。また、地理情報がどのような分野で、どのよ うに活用されているかについて数多く紹介することで、 ●受講生へのコメント 日常生活で利用されている地理情報の活用事例を中心 日々の生活の中で、地理情報がどのように役立つかを理 解してもらう。 に判り易く説明するので、受講されたい。 ●授業内容・授業計画 ●教 材 講義の中で、定義参考文献を紹介する。なお、自習書 第1∼5回 としては以下の文献を推薦する。 ・イントロダクション 岡部篤行著 『空間情報科学の挑戦』(岩波書店)、 ・GIS (Geographic Information System)とは? ・GPS (Global Positioning System)とは? マーク・モンモニア著 『地図は嘘つきである』(晶文 ・地理情報の取得方法 社)、Paul A. Longley, et al.『Geographic Information ・地理情報の管理方法 Systems and Science』John Wiley & Sons ・地理情報の表現方法 情報化の光と影 Information Age: Its Bright and Dark Sides (後期① 木・2 全) 2 単位 (後期② 木・1 全) 2 単位 法学研究科 国友 明彦 他 学、法学、医学、経営学、経済学という多視点から眺 ●科目の主題 人々はインターネットを介しウエブやメールで、画 像や動画を含む多くの情報を簡単に得ることが出来るよ め、その功罪についてともに考えてみたい。 ●授業の到達目標 情報化の功罪について多くの分野にわたって見聞を広 うになった。さらに携帯電話の普及により、子ども達ま でも携帯メールというきわめて手軽な情報交換ツール め、自分の考えを表現できるようにする。 をフルに利用している時代となっている。便利な社会で ●授業内容・授業計画 あることに異論はないが、それで十分なのであろうか? 法学研究科・国友明彦(1,2) 本科目では、この現在社会における情報化について、文 −115− 情報を不当な模倣から守る法が知的財産法である 情報と人間 初年次教育 が、ここではそのうち最も身近と思われる著作権法を取 技術がもたらした社会の否定的側面を考察する。具体的 り上げる。 には⑴ブログ、ツィッターにおける私的自己と公共性、 一 知的財産とは何か ⑵ネット社会の規範―「誰もが主人公になれる」メディ 二 著作権法入門:著作権を保護する理由、何が著作物 アの危険性、⑶e-text, ネット文学における媒体の意味、 か、著作権の成立、著作権(財産権)と著作者人 等を中心として議論し、相互に考察を深めることを目的 格権の違い、著作権(財産権)の効力、著作隣接 とする。受講生諸君は「情報化社会」について議論でき 権(歌手、俳優などの権利) るよう、少なくとも文献を一つは読んで受講のこと(参 三 著作物の自由利用:そのうち特に私的利用のための 考文献は授業中に提示する)。 医学研究科 中村 肇(12, 13) 複製(著作権法30条)に重点を置く予定。 人は外界の状況を5感でキャッチし、その情報をう 経営学研究科・太田雅晴、テキ 林瑜、高橋信弘(3, まく処理しながら生きている。情報化は単にPCを使い 4,5) 情報システム及び情報ネットワークの進展は、企業経 こなすことだけではない。医療は個人の情報を扱うサー 営だけではなく企業関係も変貌させつつあり、それは私 ビス業であるが、医師と患者の間には、医師が圧倒的に たちの生活、価値観さえも変えようとしている。本講義 情報を多く持つという「情報の非対称性」が存在してい では、次のような視点で、企業と情報、企業と情報シス る。情報時代の現在、患者も簡単に専門情報にアクセス テムの関係を論じる。 できるようになり、医学知識の情報格差は減少している ⑴ 情報化と企業戦略、太田雅晴 が、多くの問題点も存在する。このような医学医療面の ⑵ 情報と企業行動、テキ林瑜 情報化について一緒に考えてみたい。評価は、レポート ⑶ 情報とグローバル化、高橋信弘 で行う。 レポート作成(14,15) 経済学研究科・中島義裕(6,7,8) 市場は取引を実現させる場所であるが、同時に価格を ●評価方法 発見する所でもある。この講義では、最初に経済学の基 レポート、出席、小テストなど(各講義担当者によ 礎を実験経済学の手法を利用して説明する。需要曲線と る)。各担当者が担当1回当たり7.7点で評価したものを 供給曲線によって価格が決定されること、このグラフを 合計する。 レポートを提出しなかったり小テストを受けない 利用して税金や独占、生産調整など身近なニュースの背 景が理解できることを示す。その上で、情報の非対称性 と、その部分は0点となる。 が価格形成にもたらす影響と、その解決策について説明 ●受講生へのコメント 出席は必須である。 する。 ●教 材 文学研究科 古賀哲男(9,10,11) 必要に応じて掲示、または講義中に配布する。 本講義では、「情報化社会の闇」と題して、近年のIT 初年次セミナー (前期 1 回生のみ) 2 単位 First Year Seminar 〔この科目は1回生を対象にした少人数の対話型で行うゼミナール型式の授業である] 大学1回生となった諸君―、諸君は、これから始まろ て、諸君の中に潜んでいる可能性をそれぞれに発見する うとする大学生活というものに、きっと、胸をときめか ための場であり、その可能性を人類の幸福のために発揮 せ、夢をふくらませておられることだろう。大学生活を する、その方策をともにさぐろうとするところである。 どのようなものとして実現してゆくか―、それは、諸君 大学に入られた諸君の前に、共通教育科目・専門教育科 の思索と感性とによって、自由にデザインし、細心に・ 目、さらに大学院前期博士課程・後期博士課程が用意さ 大胆に造型してゆけば、よい。型にはめられた無難より、 れているのは、その目的の実現のためにほかならない。 新しい時代を拓こうとする混沌こそ、若い諸君には、ふ 共通教育では、幅広い教養を身につけることにより、 さわしい。 多様な分野と関わりを持つことができる間口の広さを しかし、それは、我流を通すということでは、必ずし ―、専門教育では、選び取った専門分野に関する深い理 も、ない。我流を通すことで新しい時代を拓いた、いわ 解を―、大学院においては、当該の専門分野の研究者・ ゆる天才と称される人々がいたことは、たぶん、確かで 専門家の養成を―、それぞれの目的としている。その、 ある。しかし、天才は、大学で学んでなれるものではな まさしく入り口に、諸君は、いま立っているわけである。 く、大学もまた、天才を輩出することを任務とは考えて 果敢に・柔軟に、諸君がそれぞれの道程を進んで行く いない。 ならば、必ずや、諸君は、みずから望む以上の可能性を 大学は、学ぶこと・感じること・思索することを通し 諸君の中に見出されることであろう。だが、同時に、自 −116− 初年次教育 分の立っている位置や向かうべき方向がわからず、文字 い! どおり途方に暮れることがあるだろうことも予想され ●授業内容・授業計画 る。その状況における真摯な模索こそが、諸君が、これ 具体的には、以下のプロセスを個人のペースにあわせ まで形成してきた自分というものの殻から脱皮して、も て進めますが、授業進行の目安は以下の通りです。 うひとふり大きく成長するための、言わば生みの苦しみ 1∼2回:ガイダンスとテーマ選定 というものであって、諸君の可能性を本物にするための、 3∼5回:文献検索、資料収集、テーマ・仮説の決定 だれもが経験する試練なのだ。 6∼8回:資料読解、アウトライン決定、レポート執筆 存分に苦しみなさい。その試練に耐え抜こうとする意 志があれば、道は開けるだろう。と同時に、学びの道に と第1次提出 9∼12回:資料読解、アウトライン調整、レポート執筆 おける少しばかりの先達として、この大学では「初年次 と第2次提出・発表準備 セミナー」と名づけられた、 これから大学で学ぶにあたっ 13∼15回:発表と相互評価、最終レポート提出 てまず身につけておくのが望ましい、言わば学び・考え 毎回、各自の進行状況報告を行い、クラス全体で問題 るためのマナーについて、諸君とともに思索する時間を、 の共有化・意見交換を行います。 以下のように用意している。もちろん、こういう趣旨だ 各プロセスの進め方の説明、学術情報総合センターの から、講義を聴くだけというのではなく、少人数のクラ 活用法のガイダンス、レポート執筆の個別指導も行いま ス編成でactive learning をめざす時間であり、諸君が すが、大前提となるのは、授業時間内外における受講生 それぞれの道程を拓いてゆくための底力を養成する、そ 個々人の自発的かつ積極的な取り組み・学びです。 の介添えをすることができればとの大学の念願をかたち ●評価方法 にしたものである。 授業への参加、プロセスへの真剣な取り組み、レポー これら「初年次セミナー」では、通常の授業では必ず ト・発表などを総合評価します。最終レポートや発表の しもあらわではない、大学教員の、諸君と同様に迷い・ 評価はもちろん、作業プロセスの記録・授業内提出物・ 苦しみ、それを克服しようとする姿にふれることもある 資料やレポート作成の途中成果物(第1次草稿・第2次 だろうし、同輩の人々の、同じ弱さや卓抜する力量に安 草稿ほか)等を全てファイリング保存しておき、最終レ 堵したり発憤させられたりすることもあるだろう。その ポートと共に提出してもらい、それらの全体の評価を行 経験は、諸君がこれから大学生活を豊かなものとして実 います。 現してゆかれる際の、よき手引きとなるものであること 成績評価の割合は、授業内諸活動への参加度合20%、 を願って、今年度は、4名の教員による、4コマの「初 提出課題20%、最終発表の相互評価20%、最終レポート 年次セミナー」をもって、諸君との道交(感応道交、心 30%、途中資料・プロセス10%とします。 ばかりか魂まで結ばれること)をはかろうと目論んでい ●受講者へのコメント る。 1.毎回の授業で報告や意見交換を行い、1人1人が ◎「初年次セミナー」 「考える」プロセスに教員もじっくりつきあい (前期 火・4) ながら個別指導を行うため、受講生は15名程度 大学教育研究センター 飯吉 弘子 ●科目の主題 までとします。 2.自分で考え・探っていくという作業は、途中プロ 本授業では、「大学生としての基本的な学びの姿勢」 セスは苦しい反面、それが最終的に形になって を身につけることを目指している。レポートのテーマ設 いくと楽しい作業でもあります。途中で投げ出 定から作成の一連の流れやプロセスに沿って、高校まで さず最後までがんばって取り組んでみてくださ の学びのあり方とは異なる「大学での学び方」の基本を い。 理解し身につけることを目指します。すなわちレポート 3.全学共通のセミナーなので、様々な学部・分野の 作成のプロセスの中で、「自ら」調べ・「自ら」考え、 仲間とのコミュニケーションを存分に図り、多 考えたことを他者に伝わるように表現することを経験す 様な考え方やアプローチがあることを実感して る中で、とくに「自分で考える」ことの重要性に気付い ください。 てもらいたいと考えています。また、「自分とは異なる ●教 材 考えを持つ他者とそれらを共有する経験」も重視して授 必要に応じて、授業中に資料等を紹介します。 業を進めます。 ●授業の到達目標 この授業の最終的な目標は、第1に「自ら課題を探し 考える力や姿勢の基本を身につける」、第2に「資料・ 文献の調べ方やレポート作成の基本を学ぶ」、第3に 「プレゼンテーションと意見交換の基本を学ぶ」です。 「大学生として自ら学び考えること」を学んでくださ −117− 初年次教育 ◎「新年次セミナー」 ◎「初年次セミナー」 (前期① 火・4 1回生のみ) 2単位 (前期① 木・2 全) 2単位 大学教育研究センター 西垣 順子 大学教育研究センター 大久保 敦 ●科目の主題 ●科目の主題 「人は社会の中でどのように成長するのか」または 身近な自然(キャンパス内の植物)を対象とした 「社会はどのように変化していきうるのか」というテー フィールドワークを通して、大学での学び方を学びま マのもとに、レポートを作成することを通じて、大学で す。 の学びを拡充させるための基本的な認識とスキルを身に ●授業の到達目標 つけることを目指します。 ① 大学で学ぶための基本的な方法を身につけること ●授業の到達目標 ② 映像と音声を用いて効果的に自分の考えを第三者 に伝える方法(ビデオ番組作成)の基礎を身に ① 自らの興味関心を、学問的に探究しうる「問い」 つけること に変換し、資料を収集分析、批判的に検討する などして、その問いへの自分なりの答えを探究 ③ グループでの作業を通して仲間と協力して円滑に チームワークを行えるようになること できること ② 自ら立てた問いの意義と回答について、他の受講 ●授業内容・授業計画 ① オリエンテーション 生と共有し、議論ができること ③ 他の受講生の立てた問いを共有し、議論に建設的 ② 身近(キャンパス近辺)な自然に親しむ ③ 調査地域の分担、調査方法の基礎 に参加できること ●授業内容・授業計画 ④ プレ・プレゼンテーション この授業では、上述の目標のために、頭と心と体を総 ⑤ プレ・プレゼンテーション 動員して学習する経験を積んでもらいます。そのため ⑥ 効果的なプレゼンテーションの方法1 に、知的障碍者のスポーツの祭典であるスペシャルオリ (④、⑤のプレ・プレゼンテーションをもとに) ンピックスの日常プログラム(大阪工業大学で日曜日に ⑦ 効果的なプレゼンテーション方法2 開催)に3回以上参加し、1冊以上の文献資料を読んで ⑧ 調査 レポートを作成する「活動参加組」と、活動には参加せ ⑨ 調査 ずに、3冊以上の文献資料を読み込んでレポートを作成 ⑩ 調査 する「学習重点組」に受講生をわけます。どちらの組を ⑪ 調査 選んでもらっても結構です。 ⑫ プレゼンテーション準備 第1週 ガイダンス ⑬ リハーサル 第2-4週 主に「大学の役割」に関する検討 ⑭ 最終プレゼンテーション 第5-6週 問題設定の絞り込み ⑮ まとめ(最終レポート作成) 第7-8週 レポートの書き方 ●評価方法 第9-10週 プレゼンテーションの方法 平常点(授業参加度(20%)、小レポート・中間発表 第11-14週 発表会と相互評価 (30%)及び最終レポート・発表(50%)を総合的に評 第15週 総合的討論 価します。 ●評価方法 ( )の数字はおおよその評価の割合を示します。 レポート課題、プレゼンテーション、授業での発言状 ●受講生へのコメント 況をもとに評価します。比率は3:3:4です。 受講生は15名までとします。フィールドワークや植 ●受講生へのコメント 物、また映像や音声などのマルチメディアでのプレゼン 受講生数は15名程度以下に制限します。 テーションに興味があり、積極的に授業に参加しようと 教員が教えることよりも、受講生の皆さんが行動した する人を期待しています(受身の授業を期待している人 り考えたりすることが多い授業です。それがなければ授 には不向きです) 。 業が成り立ちませんので、積極的に参加してください。 ●教 材 教科書は使用しません。その都度参考図書などを紹介 次の2つは単位認定に値するレポートを作るための必要 条件になります。この2つができていなくて単位が取得 します。 できた受講生は過去にありません。 ①遅刻や欠席をせずに授業に参加すること。 ②自習時間を授業時間(1週間あたり1時間30分)より 多く確保すること。 ●教 材 授業中に、適宜参考資料を配布する。 −118− 初年次教育 ていたか等) :40点満点 ◎「初年次セミナー」 (前期① 木・3 1回生のみ) 2単位 大学教育研究センター 渡邊 席子 →合計100点満点 ●受講生へのコメント ●科目の主題 ・受講人数の上限を12名とする。 本セミナーは、「高校性」から「大学生」へ、やがて ・「全15回のうち、13回以上のセミナーへの誠実な参 画」が単位認定の最低ラインである。 は「社会人」になるために必要な基礎力を、それぞれの 受講生が自分に合った形で学びとることを目指す1回生 ・セミナーの進行に付随して課題・宿題を提示し、それ 向けの少人数演習科目である。 らを解いていることを前提として毎回のセミナーを進 なお、本セミナーはactive learning形式(学生による討 行する。 論、発表、グループワーク等を伴う形式)を採用してい ・誰かに答えを教えてもらう受け身の姿勢ではなく、 る。受講生には、積極的にセミナーに参画することを通 「自ら学び、身に付け、掴みとる」意思を持つととも じて、大人の知的思考方法・知的表現方法・礼節ある討 に、極度に失敗を恐れることなく試行錯誤してみる積 論への参画姿勢を自ら学びとっていただきたい。 極的を有する学生、ないしは、現時点の自分の力量に ●授業の到達目標 不足を感じ、もっと学ぶ力を伸ばしたい/積極性を持 ちたいとの強い意志のある学生の受講を希望する。 本セミナーの到達目標は、①誰かに答えを教えてもら うのではなく、大学および社会で自ら学び行動するため ●教 材 に必要な思考力の基礎を確立すること、②知的なコミュ ・教材はセミナー中に適宜配布される。なお、教材とな ニケーションに必要な4つの力(読む力・書く力・聴く りうる素材を受講生自身が調査の上、集めて持ち寄る 力・話す力)の基礎を確立すること、の2点である。 場合もある。 ●授業内容・授業計画 本セミナーでは、個人またはグループでactive learning課題に取り組む。課題への取組みを通じて、何 が問題の本質であるのかを見極めながら(考える)、受 講生同士で創造的な討論を行い(聴く・話す)、800∼ 2000字程度のレポートをまとめ(書く)、書いたものを 相互評価・自己評価し(読む)、自分の知的スキルの強 みを把握し、弱みのカバーを目指す。 第1回:ガイダンス+導入課題 第2∼3回:基礎演習1(今の自分にできることを知 り、もっと伸ばしたいことを把握、整理す る) 第4∼9回:基礎演習2(ミニレポート作成を通じ て、テーマに関して突き詰めて考え、調 べ、表すための基礎を学ぶ) 第10∼14回:基礎演習3(企画書作成を通じて、解く べき課題を発見し、解決するための現実的具 体策を提案する) 第15回:まとめと総合自己評価 なお、本セミナーは、単なるレポートの書き方講座 や、発表・討論スキルアップ講座ではない。なぜレポー トを表すのか、なぜ発表や討論を行うのか、そもそもな ぜものを考えるのかを含め、これから社会に出て行く大 人として必要な力とは何かを受講生「自らが」「自分な りに」発見するための科目である。 ●評価方法 ⑴ 各種課題への取組みに対する評価(教員・学生そ れぞれからの評価) :60点満点 ⑵ 参画への意思・態度・行動(積極的に意見を述べ たか、各種課題・宿題・報告書等の内容、授業 目標達成にかかる具体的な問題解決とその結果 に対する自己評価、タイムマネジメントができ −119−