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メイクアップ化粧子
日心第70回大会(2006) 生活充実感と肌状態の関わりの検討(1) ―肌生理指標と質問紙調査の検討から― ○木戸彩恵1・サトウタツヤ2・佐々木喜美子3(非会員)・吉井隆3(非会員) (1京都大学大学院教育学研究科・2立命館大学文学部・3(株)P&G) Key words: 化粧(メークアップ・スキンケア) 、生活習慣、肌生理指標 友 達 が 化 粧 品 を 使 い 就 出 職 し た か き 年 ら れ 頃 い だ に か な ら り た か っ た ス キ ン ケ ア 興 味 人 関 に 心 勧 め ら れ て 化 粧 を 変 し 親 始 化 や め 姉 た コ ン の プ の真 で レ 似 ッ を ク し ス て を 補 う た め 身 だ 大 し な 人 み っ ぽ い か ら 問 題 から(29 名)であった。スキンケアは、20 代女性の化粧を始め 女性はその人生発達のプロセスにおいて、身体に関わる たきっかけとして最も多くあげられていたが、スキンケアが 様々な出来事を経験する。男性に比べて女性は持続的に変化 日常的な化粧として行われ、関連するメークアップ化粧品の し続ける自身の身体を意識せざるを得ないし、また自ら変化 使用開始が日常化するまでには平均で 2.6 年の時間的遅延が させることを経験する。身体は、個々人のセルフ・イメージ あった。メークアップの開始期とスキンケアの開始時期の時 を代表し、セルフ・イメージはまた、アイデンティティの感 間的な差異は個人差が大きく、スキンケア先行型・同時進行 覚とも深く関連する(岡本,2005)。特に、顔はセルフ・イメ 型・メークアップ先行型の3タイプにほぼ三分された。 ージに大きな役割を果たしており、化粧は容貌印象管理の一 16 環として女性によって日常的行われる行為である。 14 化粧には、他者との対峙を目的とした inter-personal な性質 12 をもつ化粧(メークアップ)と、intra-personal な性質を持つ 20代 10 30代 自己や自身の身体との対話的化粧(スキンケア)がある。従来、 40代 8 心理学領域では、メークアップとしての化粧を取り扱う研究 6 は広く取り扱われてきたが、スキンケアについての心理学的 4 2 な見地からの研究は少ない。これは女性の化粧が他者に対す 0 る印象管理の側面の検討が強かったことを示唆する。 化粧品使用の歴史と化粧スタイルは、個人のライフスタイ ルとその反映、時代性と深く結びついている。このことは、 個人が自らの多様な側面を探求したり強調したりすることに も繋がると考えられる。また、スキンケアとしての化粧は身 Figure1 40代を基準にした化粧を始めたきっかけ 体としての肌状態と関係する。肌状態は特に、女性の身体的 次に、生活充実項目に対して、重みなし最小二乗法を用い (内的)な変化を表す指標であり、心理学的要因との関係が考 て因子分析を行い、3 因子を抽出した。これらを、因子1) えられるが、そうしたデータに心理学者が接近することは難 未来志向型ポジティブ因子、因子2)生活ストレス因子、因 しい。そこで私たちは、肌の生理状態と心理的要因を検討す 子3)社会的協調性因子と命名した。調査対象者自身の記述 るために基礎的な分析を行った。 による、主観的な現在の肌状態と生活満足度得点の相関分析 本研究では、1)メークアップとスキンケアの始まり方の を行ったところ、中程度の相関が得られた(r=.336)。また、 質的な違いと2)将来の研究のために生活充実項目と肌状態 肌生理指標と年齢の相関を計算したところ、それぞれ r=.404 の検討を行う。さらに、3)肌状態の良さと年齢の関連を検 (肌のキメ) 、r=.-309(肌のトーン)となった。 討する。 考 察 方 法 化粧開始のきっかけに関して、20 代と 30・40 代の調査対象 調査対象者 20~40 代女性 160 名,平均年齢 39.3 歳(うち、 者の回答傾向には異なる分布が認められた。メークアップ的 20 代女性 49 名(平均年齢 24.2 歳:SD=2.8 歳),30 代女性 55 化粧の開始とスキンケアの日常化に何種類かのタイプがある 名(平均年齢 34.4 歳:SD=3.0 歳),40 代女性 56 名(平均年 ことは、興味深い結果であるといえる。しかし、本調査では、 齢 44.3 歳:SD=3.0 歳) 。承諾を得て調査を行った。 化粧という概念が調査対象者によって多様な解釈をされてい 調査日 2006 年3月6~9日。 た可能性があるため、今後、二つの化粧の定義をより明確し 手続き 1)P&G 独自開発の肌のキメと肌トーンの測定を行 たうえで検討を行いたい。また、主観的な肌状態と生活満足 った。デジタルカメラによる皮膚生理特性のイメージングお 得点のみに有意な相関が得られたことから、意識的に肌と生 よび画像解析による数値化を行い、肌生理指標の測定を行っ 活の関係性が結び付けられている可能性が示唆された。 た。2)現在の肌状態及びスキンケア意識と、生活充実に関 年齢と肌指標には相関が見られた。加齢とともにキメが粗 する質問項目を含む質問紙への回答を求めた。 くなり明度が下がる。こうした相関は生理的なものが主要因 結 果 ではあるが、それを促進したり妨げたりする要因は何なのか スキンケア及びメークアップを含む、いわゆる広義の化粧 についての検討が求められる。 開始年齢は平均 17.8 歳であった。ただし世代による違いもあ 今後は、本研究で得られた定量的データで得られた知見を り、20 代,16.8 歳:30 代,18.2 歳:40 代,18.3 歳であった。化 もとに、個別インタビューを行うなど個性記述アプローチを 粧を始めたきっかけついて、自由記述項目から分析を行った 用いることによって、女性の化粧行為の実際と多様性をさら ところ、20 代女性では、スキンケアと回答した者が最も多く、 に検討していきたい。 次いで、友人が化粧品を使用し始めたから、が続いた。これ に比べて、40 代女性は、就職(15 名)が最も多く、次いで年 引 用 文 献 頃になったから、友人が化粧品を使い始めたから(各 8 名)と 岡本祐子 2005 成人女性の「自分らしい生き方」の確認と いう回答が多かった。30 代女性は、全体的に 20 代と 40 代の アイデンティティ―アイデンティティにとっての化粧の意味 中間に位置していた。 化粧文化,45,8-13,ポーラ文化研究所 (KIDO Ayae, SATO Tatsuya, SASAKI Kimiko, YOSHII Takashi) 全世代で最も多かったのは、友人が化粧品を使用し始めた