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アヴィニョン大学 留学報告書

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アヴィニョン大学 留学報告書
アヴィニョン大学
留学報告書
留学期間:2014 年 8 月 25 日~2015 年 6 月 8 日
文理学部哲学科 4 年
竹崎奈有加
【はじめに】
百聞は一見に如かず。私がフランスに留学を志望したのは、フランスという国が知的障
害児教育の父と呼ばれるオネジム=エドゥアール・セガン(Onézime-Édouard Séguin)
の母国であったからだ。障害児教育を勉強する中で、セガンという人物を知り、人権思想
が生まれた国であるフランスに興味を抱いた。私にとって留学とは、そのような国で勉強
ができる大きなチャンスで、セガンの思想を辿る最大の手段であったのだ。確かに、日本
に居ながらにして研究は可能かもしれない。しかし、実際に自分の目で確かめ、触れなけ
ればわからないことがきっとあるはずである。この思いは私を、異国の地への留学へと突
き動かした。
【アヴィニョン大学での学習成果】
基礎語学力の向上が、学習成果として一番にあげられるだろう。大学付属の語学学校に
てフランス語を学びながら、後期は人文学部および自然科学部の講義を履修した。
フランス語の授業では、言語を実践的にバランスよく学べたと思う。とくに授業内での
ディスカッションやプレゼンテーションは本当に大変ではあったが、自分の殻を破ること
ができる良い機会であったことは間違いない。なかでも毎週のレポートでは、書く力に自
信がついた。フランス人教師からの丁寧なアドバイスおよび学生を褒める姿勢は、純粋に
嬉しかったし、私を含め学生の自信につながったと思う。一方で最も苦手だったことは、
リスニングである。とくにラジオのリスニングは早口であることに加え、発話者の顔が見
えないため、最も困難であった。帰国後も継続して学習していきたい。
大学の授業では、フランス文学及びフランスの歴史について学んだ。それらの授業では、
フランス人学生やヨーロッパを中心とする他国の留学生と机を並べ、勉学に励むことがで
きたと思う。なかでも外国文献への慣れは、今後の学習の幅を広げてくれるだろう。また、
院生を対象とした授業では学部とは異なる雰囲気を感じた。学ぶことに対する意識の高さ
に、私も努力しようと鼓舞された。多くの教授は早口で話すため、すべてを理解したわけ
ではないが、フランス人学生に助けをかりながらも、授業に参加することができた。
【フランスでの留学生活を通して】
フランス人家庭にホームステイしていたことから、フランスの文化、国民性を垣間見る
ことができたように思う。時には、正午から食前酒を開けたはずなのに、デザートを食べ
終えたのは夕方 5 時頃、その間ずっと食べ続ける、なんてこともあった。どういう胃をも
ってしたらそのようなことになるのかは全くもって不明であったが、食文化の豊かさを感
じ、家族で過ごす時間を心から大切にする彼らの文化が愛おしくも思えた。
また、留学生活を通してしか触れ合うことのない世界各国からの学友と過ごした時間は、
かけがえのない財産となったことも留学の成果として挙げなければならない。友人になっ
た途端、その国が身近に感じるようになるのは、本当に不思議なものである。加えて、フ
ランス語という共通のコミュニケーションツールをもちい、意思疎通ができたことに感動
を覚え、言語の持つ力を知った。文化相違を超えて、相手のこと何らかの手段をもちいて
深く知ることは可能であり、自らの考えや思いを伝えることはできるということを肌で感
じた。尊敬でき、その人のためならば何でもしたいと心から思える友人が、日本以外の国
でも出来た事は、忘れられない留学生活の一ページである。
日本を離れ、異国の地で人間関係を一から構築していく過程は、大きな経験になったと
思う。まるで白紙の上に自分がたっていて、そこでどう振る舞うのか、どこまでやれるの
かが試されている気がした。そういった環境に身を置くことで、再び自己を見つめ直し、
人間的な成長を図るまたとない機会になったと言える。
【おわりに】
たった九ヶ月の留学期間で、こんなにもたくさんのことを学び経験し、そして自分に自
信を持てるようになったことは大きな変化である。あのとき留学への一歩を踏み出して本
当によかったと思う。
今後は語学力を活かしながら、研究対象としている、フランス革命以降における障害児
教育の理解を深めること力を注いでいきたと考えている。フランス留学を志すきっかけと
なった、オネジム=エドゥアール・セガン(Onézime-Édouard Séguin)についてあまり
深く勉強できずに終わったことが少し残念だった。ただ、私にとって最大の収穫は、何と
いっても外国語文献への「慣れ」を得たこと、そしてそれを読む力が飛躍的に伸びたこと
である。読解力が上がったことで今後の勉強の幅も大いに広がり、様々な場面でその重要
性を実感できるようになると確信している。
そして、言葉や文化の異なる、多様なバックグラウンドを持つ人々との交流は、今後さ
まざまな場面において、役に立つ経験であることは間違いない。たとえば、私の根底をな
す「障害児教育」という分野においてである。子どもたちの持つ障害は多種多様であり、
中には言葉を持たない子どももいる。共通点を見つけコミュニケーションを図ること、相
手に寄り添って関わっていくことは、留学生活を通して身に付けた順応性、または他者を
理解しようとする姿勢を十分に活かせると考えている。
将来的には、障害児教育のプロフェッショナルとして、他の教員が体験したことのない
経験をもとに、生徒たちにとって、魅力ある教師になりたいと思っている。人生において
も、何事にも柔軟で寛容な思考で生きていきたいと考えるようになった。本当に充実した 9
か月であった。
以上、今回のフランス留学は紛れもなく自分にとって生涯の財産と言えます。そのよう
な留学をする機会を頂けたことに感謝しています。
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