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皮 膚 の 病 態 生 理 皮膚の病態生理 特に生理的方面の観察

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皮 膚 の 病 態 生 理 皮膚の病態生理 特に生理的方面の観察
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皮 膚 の 病 態 生 理
Pathologic Physiology
of the Skin
午前10時∼11時
本奥川浦奥
講
山谷荒三谷
セクレタ
会 一 師
司
俊
平(京大)
喜
平(信太)
忠
良(徳大)
祚
晶(北大)
喜
平(信大)
序 辞 山木 俊平
求を指すことにした.斯かる意味での皮膚疾患の病態生l
病理学は長い間,病理解剖学,即ち形態学的病理学で
理学的研究は,かなり以前から一部の人により注目され
あったが,近年に至って,病理学も新しい方向を打開
ていた.又近年に至っては伊藤・北村(包)・山本・竹一
し,生理学,生化学の方法をとり入れた病態生理学的研
内等の諸教授により研究されていた.
究が勃興した.皮膚科亀長い間,形態学的病理学に基礎
本日は,早くからこの方面の研究に着手された3君’
を置いた記載皮膚学であったが,上述の如き新しい病理
に,我国の皮膚疾患の病態生理学的研究の現況を紹介し
学の分野の発達と共に,皮膚疾患の病態生理学的検索が
ていたゞくことにする.尚生理学的方面は荒川教授に,
注目される様になった.こtゝで云う病態生理学的検索と
鉱質並びにビタミソB群代謝は谷奥教授に,SH基並び’
は,皮膚疾患々者の血清化学的検索でなく,主として病
その他2, 3 の酵素活性にっいては三浦教授に御願いす
変局所皮膚,即ち場,
にすることにする.
lesionの生理生化学的変動の追
皮膚の病態生理 特に生理的方面の観察
T、Arafeaiむ'<3:
Problem
der
Pathologischen
Physiologie
der
Hautkrankheit
忠 良*
荒 川
I はじめに
康者について色々の方面から正常闘を決め,次いで皮膚
複雑な皮膚の生理機能を表現するため,我々は今まで
疾患々者にっいての測定からその変動の程度,方向を知’
29種の嶮査方法を実施して来た.これを大まかに分類す
り,さらに生体に色々の操作を加えて起る皮膚機能の変’
ると,1つは皮膚の物理的性格に関係の深い屯のであ
化から,臨床的な異常状態を類推しようと考えて来た.
り,他は皮膚の炎症に関連深いものである,後者はさら
従って,これら各種の成績の総括的把握によって始めで
に①皮膚刺戟による反悪性と,②これに関沢する皮膚血
意味づけが可能となる訳であるか,嶮査項目の増加に伴=
管系の機能に関係するもの,及び③物理化学的機能を反
つて,この一括的表現が困難となって来た.よって私た
映するもの,と区分できる.研究方針としては,先ず健
ちはこれら多数の嶮査種目のうちから重要なものを選ん
*徳島大学教授
−667−
石68
日本皮膚科学会雑誌 第69巻 第7号
Abb.
1
昇,毛管抵抗及び電気抵抗は夜中に低下,皮上温度は午
前に最低を示す).従って比較朧討のためには測定時間を
一定にすることが望ましい. 2)特に女子では月経と
関連する月間の変化部署明である. 3)季節的には
反I9
夏にピークかおり,冬に最低.言詮秋より感受性に富
・に・∼し貼⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮
1
廿(以上健康者の成績にっいては医学四あゆみ28巻4号
參照).
Ill 皮膚機能に影響する2,3の因子
A 紫外線照射: 連日紫外線を照射すると,血量の
増加,ヒスタミン反庖及び酸化還元能⑤充進,
QRZの
短縮が見ら且るが,毛管抵抗は増強さ江る.
B 騒音環境: 1日8時間づっ騒音環境においた家
兎の皮膚機能は,皮宵機能圖ではすべて外方に移動し,
炎症に傾くことを予想させる.
傘こ弓一てゴ⊇y
4痢司6仙衣盲仏4
C 自律神経中枢刺戟: 1)黒津氏Cm交感帯の電
気刺戟により,家兎の皮膚機能はすべて外方に移動(圖
友膚。物理的性状
瓜膚色と皮膚也光度及表面反射。
浚康五・瓦!iJt
皮膚・石見さ,
皮膚吸附息唇`の比重.
2).
2)黒体b交感帯刺戟によって光感受性,駿化
還元能,菌膜ワクチン反言は内方に,毛管抵抗,皮温復
元時間, ZRQは外方に移動する.
で,その測定値を,1点に交わる放射状の線上にとり,
Abb. 2.
これらを結んで得られる形及び四がりから総体的に表現
しようと工夫した.(皮膚機能圖Dermato-physiogram
C一副交威彰但ゆ貼代絆呟妬
匁い
と暇栃する.圖1).この際,後述の如き條件を考慮し
て,いわゆる健康闘値が同心円で囲まれる一定の環内に
あるように配分したから,この範囲を逸脱するものは多
少とも異常と判定できる.
II.健康者皮膚の生理機能
A 部位的の変化: 各機能瞼査とも,部位的に大き
憲差が見られ,躯幹と四肢,前面と後面,中心部と末梢
部⑤差は著明であるから,皮膚機能の測定,比較には一
定の部位に限定しないと無意味である.私共は測定の便
左右考慮して大体前腕胴側を選んで健康値⑤標準を定め
ることにした.このことは皮膚疾患の好発部位と関連が
ノありそうである.
B 性的の差異: 殆どの嶮査で男女差が見られて詣
り,炎症に対する準賠吐は多少男子に強いようである.
い特に女子では月経周期に伴う変動が大変強いから,乙万
方面の完瞼には雄性家兎を用いるのが無難と考える.
C 年令による変動: 年令的にも変動は大きく,青
犬春期にピーク牡示し,その而側で次第に低下する傾向か
塵る.
-一刺八潮
一一一
夕1残嘱
D 時間的の推移: 1)皮宵の生理機能は甚だlabil
で,1日のうちでも午前,午後,夜中でかなり大きく変
じ動し,8∼10時に帽換期かおる(皮膚感受性は夜間に上
D 肝障害: 四塩化炭素による実言性肝障害では皮
膚機能圖ですべて外方に移動する(圖8).
昭和34年7月20日
669
Abb.
3.
肝障雲にn皮肩泉哨し変移心仁)
(、吝瓢)
大別できる.急性潔疹(圖5)及び慢性原疹(圖6)で
代表されるもので,皮温復元時間(RT),
QRZ,皮温及
び血量ヒスタミン指数(THI及びBHI)で全く対照的
であり,また炎症反庖が前者で強いことが特長と見られ
る.
急性証疹型に属するものとして各種皮肖炎,多型紅
斑,結節性紅斑かおり,光線過敏症及びこ以二近似すご
Abb.
CC^^TTIA
Abb.
5.
CLCutiiym
4.
副腎刻
(衣兄)
Abb. 6 .
E9む9・'^^orxXou/・t
E ホルモン投与: 1)副腎皮質ホルモンによりす
べて内方に移動(回4). 2)卵胞ホルモンの雌性家
兎投呉ではすべてタト方に移動,雄性家兎では不定.3)
男性ホルモンは雌性家兎に対して内方に移動.
IV 各種皮膚疾患における皮膚生理機能
疾患の性格によって皮膚生理機能を異にすることはす
でに報告したか,皮膚機能回によって表現すると2型に
日本皮膚科学会雑誌 第69巷 第7号
670
Abb.
Abb. 8.
7.
EA摂。7れ4かねs
形態を示すErythematodes
KjuiuXcS
(圖7)か最も強い形と
iS
れる皮膚機能生理の変化から推測できる.すなわち常に
変化して止まない生体の内的及びタト的環境の変化か(こ
見られる.
慢性潔疹型としては廃港,円形脱毛性,各種角化性疾
れを刺戟, stressと考えてよいか)常に皮膚の生理機能
患(圖8)かおり,聯麻疹,乾癖は特異な形態を示す.
を或は促進し,或は抑制しており,これら多数の因子の
V おわりに
総和か皮膚機能として表明されているものと考えられ
要するに皮膚機能は常に動揺し,変化しているか,こ
る.従って総括的表現法として皮膚機能圖を考案した訳
れは体外及び体内のあらゆる條作に順噫する表現と見ら
であるが,この分析,意味づけは今後の研究にまたねば
れる.この事は実験的に外的刺戟,内的変調の際に見ら
ならない.
皮膚に於けるSH基並びに酵素活性について
Y、Mtitra:Studies
on Sulfhydryl Groups
一
Activity in the Skin.
浦 祐 晶*
一
一
正常人体皮膚SH値は個体差がかなりあるが,胸部,
1● 皮膚SH基
人体及び動物の皮膚をVan
and Enzymatic
Scottのstretch
method
腹部及び背部に於て,4∼6例の平均は,
により表皮と真皮とを分離し,表皮部を低温凍結させて
9.54∼52.7±14.7mMX10-2/工00
粉末とし,電流滴定法によりfreely
軍位略), P-SH
及びpotentially
reactive SH(F-SH)
reactive SH (P-SH)を測定した.
*北海道大学教授
F-SH
37.1±
g dry weight (以下
n5±13.3∼144±27.3である.
人体色素脱失部(尋訃比白斑)ではF-SHの増量か見
昭和34年7月20日
671
られた.モルモット白色部,褐色部並びに黒色部のF-SH
Nucleotidase (Wachstein・
は,この順に増量が認められた.
正常皮膚のアルカリPh.は表皮,毛嚢に活性かないか,
紫外線,赤外線並びにX線の大量照は,人体に於てい
酸Ph.は表皮基底層と角質下に強い活性かある.
ずれもF-SHの減少傾向を来した.
は毛細管壁に活性があるが,そのほかはアルカリPh,に
白色家兎にACTH
(20単位/kg),
耘),テストステロン・プロピオネート(
トラジオール・ペンソエートC
cortisone (20illg/
2 mg/kg).エス
2 mg/kg)をそれぞれ7
Meisel・硫化コバルト法):
6-Nuc.
似た活性分布を示す.
コノヽク酸脱水素酵素(Foraker
・Denham
法):表皮
の基底層に活性か高く,エクリン腺は最も強い活性を示
日間注射した後に,前後の皮膚SH値を測定すると,い
す.
ずれも対照群に比しF-SHの明らかな減少か認められ
II,脂肪及び脂肪酸代謝系
た.
Lipase
健常ラツトの爾側副腎摘出10日後の皮膚SH値はF-
Seligman法):L.は有辣層下部に活性が高いが,
SHが対照群に比し減少を示したが,この際cortisone
E,は角層下部に強い活性帯か見られる.
を2昭宛10日間投沢すると,減少を阻止する傾向か見ら
Cholinesterase (Koelle変法):表皮下部に非特異的
れた.
Ch・,エクリン腺をとりまく御経線維に特異的Ch.の活
(武内一色素染色法),
Esterase (Nachlas ・
ecu肝障碍家兎では,肝障碍の高度なもの程減少が
性が見られる.
著明であった.
ln.蛋白及びアミノ酸系
以上,メラニン形成機軸に於ける皮膚SH基の役割
Aminopeptidase
は複雑で,諸種に)色素増生的囚子の影響にっいても,皮
ら基底層に活性かおる.
膚SH基に対する直接作用のみならず,体内諸臓器機能
以上,正常表皮に於ては,アルカリ Phosphataseと
(Braun-Falco法):有隷層下部か
その他の要素の関沢を考慮しなければならない.
5 -Nucleotidase を除いて,今同嶮索した酵素のすべて
2,皮膚に於ける酵素活性
の活性が見られたか,その中で,基底層に強い活性を示
I.炭水化物系
すものと,角層下の,穎粒層又はそれに密接して活性の
Phosphorylase
高いものかあり,主としてこの部で諸種物質体謝が行わ
(武内-Lugol法):正常皮膚では基底
層江活性か高く,汗腺,起毛筋に最も強い活性が見られ
れることを示すと共に,これら酵素が表皮機能に関員す
る.潔疹,乾癖ではacanthosisの部に活性が高まって
ることを物語っている.又エクリン腺にはほとんどすべ
いる.
ての酵素の強い活性か見られたことから,汗の生成,分
β-Glucuronidase (Seligman法):角層の下に活性
泌に少なからざるエネルギーか要求されることか窺われ
帯が見られる.
る.
アルカリPhosphatase
ト法),酸Phosphatase
病的皮膚に於げる変動にっいては今後更に嶮討を進め
(Gomori:高松一硫化コバル
(Gomori
・ 高松一硫鉛法),
5-
る予定である.
皮膚の鉱質並びにビタミンB群代謝
K. Ta㎡∂んg:
Studies on the Metabolism
Vitamin
B Group
谷 奥
of Electro】ytesand
in the Skin Lesion.
喜 平*
1)季節的変動
夏秋冬に分けて追求すると,夏に減少するものとしては
皮膚の鎬質並びにビタミンB群の季節による変動を春
合水量, Na,パントテン酸,ビオチンであり,逆に夏季
*信州大学教授
日本皮膚科学会雑誌 第69巷 第7号
672
増加するものはなく,春季に増加するものはCa,
Mg,
e)甲状腺剔出後は含水量,
Na, k, Ca糖,糖原,
逆に減少するものはVB,である.冬季に増加するもの
V.Bsナイアミー,パントテン酸,ビオチン,
は含水量,
少する. ・・
Na, K, V.Bjナイアシン,パントテン酸,ビ
v.c.は減
オチンであり,減少するものは糖,糖原である.四季を
7)人体皮膚の正常値
通じて変動の少ないものはV.C・. CHE
この正常値は主として側腹部皮膚の失礼である.
である.
a)
2)年令的変動
X,糖,糖原は幼若家兎皮膚に高く,含水量,
Mg,ナイアシン,パントテン酸,ビオチン,
Na, Ca,
VC, CHEは
CHE:平均432
(男性),
61T.5 C女性)で,女性
か高値を示す.側腹部のCHE値大対し下腹部の失礼
は梢々高値を示す.a)含水量:平均65.6%,
成熟家兎皮膚に高い.
平均96.4iiig%。d)K:平均36.3lllg%.
3)性別による変動
Wi%.
雌にて高値を示すものは含水量,
ン,ビオチン,
Na,糖原,ナイアシ
CHEとある.
4)外来刺戟による変動
Ca,
e) Ca:平均12.B
f) Mg:平均6.6昭%.g)糖:平均12.0m%.
ii)
糖原:平均49.7iiig%. i) V.C : 平均5.03Dig%.
f) V.B・
:平均3.57/g.
I)ナイ
h)ビオチン:平均47.2m7/g.
アシン:平均r.977/g.
a)太陽燈照射により増加するものは含水量,
c)Na:
m)パントテン酸:平均i.or7/g
である.
Mg,糖,糖原,ビオチンであり,これに反し減少するも
8)人体病巣皮膚の代謝
のはv.c.である.
人体病巣皮膚の各症例数が比較的多いものに就て○
句 ソラツクス燈照射により増加するものは含水量,
み,その代謝の大体の傾向を述べることにする.
K, Ca,糖原,
a)急性潔疹ではK,糖,
V.B,減少するものはビオチン,パントテ
ン酸,ナイアシンである.
CHEは増加し,
Na, V.B
ビオチンは減少している.
c)クロトン油皮膚炎部ではNa,
Mg, CHEは増加
b)慢性胆疹ではKは増加し,
Na, CHEは減少して
し,含水量,K糖,糖原,V.B,ナイアシン,パントテ
いる.
ン酸, v.c.は減少している.
c)御経皮膚炎ではCHEは減少している・
5)内臓障碍による変動
d)尋常性狼盾では含水量,X,葉酸,パントテン
a)肝障碍時にはNaは増加し,その他は減少する.
b)腎障碍時にはNa,
Ca糖原は増加し,これに反し
酸, v.c・,糖,エステラー七は増加し,
いる.
含水量, K, Mg,糖V.B,,ナイアシン,パントテン酸,
e)癩腫癩ではK,
ビオチンは減少する.
糖は増加し,
6)内分泌腺剔出による変動
a)章丸剔出後はNa,
V,B,,は減少して
Mg,
V.Be, V.C. エステラーゼ,
V.B。葉酸は減少している,
9)皮膚代謝とHost・lesion-parasite-drug-relatio・
K,糖,
VC, CHEが増加し,ナ
イアシン,パントテン酸は減少する.
nshipとの関係
尋常性狼盾並びに癩腫癩にD.D.Sを投興すると,癩
句 卵巣剔出後は合水量,
Ca,パントテン酸,
増加し, Na, K,糖,糖原,
V.B・,ビオチン,
CHEは
v.c は減
少する.
病巣部の方がD.D.Sの濃度か高く,アセチール化か低
い.これは尋常性狼拾に比し癩病巣部では自律紳経障碍
かおり,血管壁並びに浸潤細胞のアルカリ,フォスファ
c)副腎剔出後はパントテンm.
v.cは増加し,含水
ター七,浸潤細胞の酸素消費,糖が増加しているために
量, Na, K,糖,ビオチンは減少する.
癩病巣部のD.D.S濃度が高く,癩病巣部ではエステラ
d)脳下垂体剔出後はNa,
ー七が増加し,パントテン酸が,正常値に止まつている
ントテンm,
Mg, V.B,ナイアシン,パ
v.cは増加し,含水量,K,糖,糖原,ビ
オチンは減少する.
ことが該病巣部のアセチール化か低いことを示すものと
考えられる.
昭和34年7月20日
673
協同研究者
含水量, Ca, Mg, Na, K : 松山隆三
コリソエステラJゼ(CHE)
糖,糖原,ビタミソC
:
■・斎田泰彦
西村幸雄
リボフラビソ,ビオチソご
鶴見和弘
ナイフシソ,パソ}テソ酸s
川住昭夫
アルカリ,フォスフアターゼ,
酸フォスフ7ターゼ,!Jパーゼご矢沢 武
結 辞 山本 俊平
主とした疾患群に於ける病態生理学的検索の結果が紹介
以上3君の講演により,家兎,白鼠並びに人体に於け
された.以上の3君の基礎的研究を基として,臨床方面
る皮膚の生理学的及び生化学的正常値,更にこれ等の年
へと,とりくみ,症状の分析を行い,疾患の好発部位,
令,性別,四季,太陽光線,ホルモソ,ビタミンによる
頻発時期,病因論等を生理学的,生化学的機序により説
変動が明らかとたった.又人体に於て湿疹等表皮の変化
明し,更に実験的に発症せしめる研究へと進まれるよう
を主とした疾患群,並びに皮膚結核,癩等真皮の変化を
祈る次第である.
討
論
筧 秀夫(名大): 組織化学的にSH基と色素との
は, Chevremont法及びBennet試薬を用いて一部に
関係を見て見ると従来の解説の如く色素脱失部に多く,
行ったに過ぎず,その正常皮膚におげる分布はコノヽク酸
沈着部に少ないとは限らない様である.この点電流滴定
脱水素酵素のそれと似ていた.
による三浦教授の成績と全く結果は同様で,メラエン形
北村(包)教授に.今同の研究中に,症例によって各
成とSH基との関係は原因結果の面からも,叉他の諸
酵素の活性変動かやyゝ異なることを知ったが,これは,
種酵素或は酸化還元反鷹の様相を全面的に捉えない限
方法の差を除けば,恐らく症状の機相(Phase)の違い
り,把握し難い問題と思われる.
によると思われる.今後この点に注意して,各機根に於
北村包彦(東大): 三浦教授,谷奥教授に伺いたい
ける酵素活性之)動的状態を把握したいと考える.
のは,病態生理の皮膚の所見は結局各種疾患に共通のも
谷奥教授に.血清SH基の消長と皮膚SH基の変動
のにはならないかと云う点である.これに就て各種疾患
は必ずしも一致しない結果を得ているか,皮膚のビタミ
の特殊性を把握する可能性に就て御意見を伺いたい.
ン,鍍質と,血清のそれとの関係は如何でしたが.
三浦部晶: 筧氏に.皮膚SH基の組織化学的嶮索
シンポジウム
皮膚の老化,老人性皮膚疾患
Senile Changes
in the Skin and Senile Skin Diseases
午後2時30分∼3時15分 、
司 会 高 橋 吉 定(東北大)
セクレタリー 小 嶋 理 一(三 楽)
講 師 伊 崎 正 勝(岩手医大)
小 嶋 理 一(三 楽)
皮膚の老化に関する2,3の観察
M. Izaki: Some
Observation
on Senile Changes
in the Skin
正 勝*
伊 崎
私はかねがね.皮膚はそれ自体体質的に年令の進むに
20, 30代と低く,40才を過ぎるにっれて,漸次高い値を
従い変化し,更に外界の刺戟,特に日光々線の影響を受
示した.
けて2次的に斯変化の増強を来すと考えていたか.最
3)性差にっいては,一般に女性に於ては男性に比し
近,此の点に関し教室員と共に2,3の観察を試み,此
10代に高く,40才以降に於ては却って低く,即ち表皮の
の感を愈々深くしたので私共の観察した処を申述べ,最
成熟老化過程に於いては,女性は男性に比し成熟に至る
後に老人性変化に関し種々調査を行っているうち偶然見
事遅く,老化の進展緩慢なる如く推測された.
出した老年者に好発する一種の御経線維腫について報告
4)露出皮膚部位と被覆皮膚部位との比較に於ては,
レ七ニ.その要点を簡単に総括すると次の如くであった.
前者は後者に比し年令的変動か穎著であり,老化の進展
I. 正常人体皮膚インピーダンス:特にその年令的,
急峻と考えられた.
性的,及び部位的変動について.(高須原当)
II.皮膚インピーダンス:一般人と半農半漁に従事す
岩手医大生理三田教授の考案になる3サイクル正弦波
る崎山村部落民(岩手県宮古市)との比較: (高須,
交流を用いる特殊装置によって,冬季,10才代以上の各
高野,道叉担当)
年令層の一般男女総計258名を研究材料として,身体各
皮膚の老化に及ぼす気候的影響,特に日光々線の影響
部位に於ける正常皮膚インピーダンスを測定し,推計学
を見る寫に,一般人と日光々線の影響を強く受ける半農
的処理の結果,皮膚インピーダンスの年令的,性的及び
牛漁に従事する筒山村部落民との身俸
部位的変動について次の如く結論する事が出来た.
膚インピーダンス(平均値)を比較し,日光々線の影響
1)各皮膚部位を抵抗の低い部位より列學すると次の
を強く受ける崎山村部落民は,男女を問わず,部位を問
如くである.
わず,一般人に比し有意に高い皮膚インピーダンス値を
前額≦下顎<頬≦項<手掌≦足底く手背≦足背<前胸
示し,即ち,皮真の老化か進んた状態にある事が窺われ
≦上腹<上肢<下肢
た.
2)これ等各部位に於ける正常皮膚インピーダンスは
更に筒山村部落民男子を日光々線の影響を特に強く受
極めて有意なる年令的変動を示し.10代に比較的高く
ける群(例えば半裸乃至それに準ずる服装を以って作業
*岩手医科大学教授
−674−
675
昭和34年7月20日
を行う事を常とする如き場合)と,その影響を特に強く
の差異は,皮膚の老化に於ける両性間の差異に連なり,
受けない群とに大別し,前胸部及び四肢に於ける雨群の
同性間の本質的内因的差異に帰する外は底いと考えられ
皮膚インピーダンスを比較した結果,雨群間に明らかな
た.
差異があり,此の差異は日光光線の影響の強度の差によ
IV.老年者に見られる一種の神経線維腫 (高須,道
って嗇らざれると推測された.
叉,間山揃当)
III. 項部菱形皮膚:特にその発生に及ぼす気候的就
本症の臨床的特徴は,淡紅色乃至常色の半球状隆起
中日光々線の影響について.(高須,道又,高野担当)
で,その表面は平滑,硬度軟,
崎山村部落民に於ける項部菱形皮斑の発生頻度を調査
の軟腫瘍と同様指圧によって陥入し,所謂ヘルニア様の
Recklinghausen氏疾患
し,同時に身体各部位の皮膚インピーダンスを測定し,
感触を興える.翠発,時に2ケ発生し,その大きさは扁
之等を一般人のそれと比較嶮討し,次の如く推測する事
豆大より小指頭大に至る.背部,背柱の爾側に好んで,
が出来た.
時に胸部,特に乳房部に発生する.性との関係はたい.
1)項部皮膚の1次的老化は気候的,特に白光々線の
組織学的には真皮内に特別の被膜を育しない結節状の
影響を強く受ける事により2次的に増強され,之が或る
増殖性変化を示し,
Recklinghausen氏疾患の際見られ
程度以上高度に達すれば,項部菱形皮斑を発生する.即
る軟腫瘍の組織像によく一致している.
ち項部菱形皮斑は老人の皮膚萎縮の最も極端な場合であ
50才代以上の男女142名について水症の発現を統計的
ろうとの確信を深める事が出来た.
観察した結果,60才代に4.5%.
2)木症が男子に好発し,女子に稀な事は,男女ほ2
代以上に16.8%とその発現率は漸次大となり,特に70才
60才代に5.3%,
同作業に従事し,同程度に日光々線の影響を強く受ける
代以上の老令者に多く発現する事が窺われた.
崎山村部落民に於いても同様に認められた.此の爾性問
皮膚の老化,老人性皮膚疾患
R、Koiiwia:Aging
of the Skin and Gerodermatosis
小 嶋
理 一*
〔I〕老年期皮膚疾患の実相.
を主訴として来院するかとみるに,昭和81年度217名
a)総外来患者に対する比率: 三業病院皮膚科外来
中,最多数を占めるは急性潔疹46人,脂漏性頷疹1S,皮
を訪ねた60才以上の患者数の総外来患者数に対する比率
膚癈雄症18,慢性誤疹14,糸球菌症32等で,普通タト来患
は昭和12年には2.31%,
者の最多数を占める澄疹類が多い.
13年には3.4%,最底は昭和26
年の2.0%であるか,昭和81年度には4.4%,昭和82年
〔H〕老年期皮膚変化の分類
度は5.8%と近年増加の傾向にある.
老年期にみる皮膚変化を分類すると次の3つの範鴫と
文献上に現われた統計では,最高は東北大の昭和14∼
なる.
18年5年間の5.5%であり,最底は岩手大の昭和29年よ
① 老年性皮膚疾患,②老年期に好発する皮膚疾患,
り4年間,
⑧老化現象性皮膚変化(老徴).
2.6%である.即ち外米慰者の2∼6%が60
才以上の老人であるということか出来る.尚近年増加の
①の老年性皮膚疾患には老人性枕贅,老人性角化腫
傾向にある.
等,老人に特有の皮膚疾患を指し.
b)老年期に多い皮膚疾患:老人がどの様な皮膚疾患
② 老年期に好発する皮膚疾患とは慢性厖疹,皮膚廣
* 三楽病院部長
70才
676
日本皮膚科学会雑誌 第69巻 第7号
疹症,帯状庖疹等をいう.
と殆ど総ての例は第T型,即ち女性型となる.
③ 老化現象性皮膚変化(老徴)は白毛,禿毛,「し
(c)老人性白斑:白斑の大きさは加令によつて次第
わ」等の老人にみられる生理的の変化を示すことにな
にその大きさを増す.
る.
(b)老人性血管腫:血管腫の大きさは白斑よりも梢
〔III⊃皮膚の老徴
々小さく,直径2回程度のものか多い.組織像よりは毛
皮膚組織の変性,萎縮を主とし,細胞の増殖のない,
細血管の僕張と延長とか主で,細胞の増殖像は認め底
加令による生理的の皮膚変化を指し,これには(1)皮膚
し≒ .●
機能面よりみた老徴,
(e)色素斑:従来の老人性色素とは全く関係のた
(2)皮膚解剖学的老徴,
(3)皮膚
組織学的老徴の3項目に分けることが出来る.
い,-1種特有な色素斑を亀頭,陰嚢に認めた.亀頭には
皮膚機能面よりみた老徴にはふれない.
70才以上になると殆ど総ての例に色素斑を認め,陰嚢で
解剖学的にみた老徴にっいてみるに,
(a)「しわ」に
は一般に表皮性の「しわ」,真皮性の「しわ」及び老人
性の「しわノの3つかある.
Sump法をもってこの丿し
は亀頭にみる程に穎著ではないが,70才以上になると,
その大多数に色素斑をみる.尚,その組織像では.色素
部の表皮突起は延長し,その先端に色素沈着をみた.
わ」を嶮討するに,表皮性の「しわ」には変化をみない
(f)本邦人特有の色素移動症として,胸骨部に,倒
か,真皮性の「しわ」は減少し,老人性の「しわ」は増
三角形の色素移動斑を認め,これは和服の型による,胸
加する.但し,
骨部皮膚が外界に曝らされているためと思われる.
Sump法では老人性「しわ」は描出する
ことは出来ない.
[IV]老人性皮膚疾患
(b)2次性徴の老化:(i)肢毛は女性では50才を過
(a)老人性凍洽:主として趾端に来る凍借を事げ,
ぎると殆ど総ての例か粗となり,60才以上では禿毛とな
これには低血圧のためと考えられるものと,高血圧によ
っている.この関係は男性では遥かに遅れる.しかし50
ると考えられる2つの型があることを事げた.
才代から生毛は減少してきている.但し,70才を過ぎて
(b)老人性面庖:本症の3例を事げ,臨床上,部位
馬女性に比して禿毛の程度は軽い.
的に特徴あることを指摘した.即ち,爾外皆側方に,主
(ii)陰毛(男性):
Dupertuisに従って4型に分けて調査し,70才を過ぎる
として下側方に面庖を認めた.
討
論
高橋吉定(東北大): (1)皮膚インピーダンスは
響,特に日光々線の影響について述べられたわけであり
どういう意義があるか.
ます.
(2)老人性皮膚疾患とはどういう範囲のものをいう
(2)小堀博士に. 結論的に申上げますと項部菱
か.
形皮斑様を老人性皮膚萎縮の最も極端な場合であると考
小嶋理一(三楽): 伊筒教授の老人性紳経線維腫は
えています.その理由は1つは脱に演述したインピーダ
母斑細胞母斑の老化したものではあるまいか.この型は
ンスをインジイケータとしての項部皮膚に於ける一般人
川村教授のC型との関係は如何.
と日光々線の影響を強く受ける者の表在萍薄化の程度の
小堀辰治(東京逓信): 紫外線長期照射による変化
差から,他の1つは私か嘗て行った項部菱形考慮の病理
と老人性変化と菱形皮膚に於てどのように区別出来た
組織学的嶮索の結果,即ち水症か組織学的に皮膚の一般
か.
老化と連った関係にある点からである.
伊筒正勝: (1)高橋吉定教授に. インピーダ
(8)小嶋博士に. 私は私共のこれら等症例が川
ンスは表皮の厚さ特に有錬層の厚さに関連すると云うの
村教授他の先年発表されました「被膜を有せざる神経鞘
が私共の考えであり,叉三田教授及びBarnett
腫」症例中,第2例目の77才男子前頚部正中線上に見ら
%同様
の見解を表明している.此の前提のもとにインピーダン
れた腫瘍と同一のものと考えてるが,川村教授は水腫瘍
スをインジイケータとして一般老化に及ぼす気候的影
をC型母斑とも見える見解を発表されておりますので,
昭和34年7月20日
677
唯今の小嶋博士の質問に対しては川村教授の御教示を頂
寧ろ皆様の御教えをいた5こきたい所であるが,確かにこ
いた方が良いの七はないかと考えます.
のようなものか存在する.そしてこのよう痙ものは殆ど
川村太郎(金 大): 私か,被膜を有せざる呻経鞘
常に老人に見られる.小嶋博士の御意見のように,私も
腫と呼んだものは,伊崎教授屯云われるように,同教授
色素細胞母斑の老人性変化に因って生じたものではなが
・の此処に指摘された御経鞘腫と同一と思われる.之をC
るうかと考えていたが,未だ之について確実な証跡を得
型母斑と呼ぶべきか,神経鞘腫と呼ぶべきかについては,
るに到って居ない.
シンポジウム
皮膚疾患のホルモン療法
Hormone
Treatment
of Skin
Diseases.
午後3時45分∼5時15分
精
司 会 北 村
一(長 大)
利
セクレタリー 安 田
顕(関東逓信)
家
政(熊 大)
忠
夫(山口医大)
藤田村
三(京府大)
中 村
斎安矢
講 師 岩 下
健
利
顕(関東逓信)
一卓
三(長 大)
皮膚疾患のホルモン療法とビタミン
K. hりashita:The Siginifi・nee of Several Vitamins in Hormone-treatment
of Cutaneous
Diseases.
岩ヽ下 健 三*
副腎皮質,向副腎皮質,卵胞,黄体,男性,甲状腺ホ
(2)正常人では ビB2処理能低下がみられたが,1
ルモンのビタミンA,B2,B。C,パントテン酸代謝に及ぼ
例のAriboflavinosisでは血中異常ビB,負荷曲線が著
す影響を人体で実験し,これ等ホルモン療法とビタミン
しく正常に近づいた(表8).
療法との交渉を嶮討した.ホルモンは日常用うる量を,
(8)正常人でビ民負荷によると,血中ではPIN十
今同は比較的短期間(7∼20日毎日叉は隔日)用いた成
PAM,特にPIAの増加か減り,
績で,紙幅に制限のあるため,それらの中から興味ある
し,尿では8分屑の排泄か減じた(表4).体内でPIN+
事項だけを記する.
〔A〕副腎皮質ホルモン: すべてPrednisolone
PAM→PAL→PAL
(以
下JPと略)を経口投興した成績である.
phosphate
PALは一時増し急派
が促進される寫と考え
られる.
(4)正常人でビC負荷によると,血中では殆ど影響
(1)正常人でも角化症でも血中ビAは増し,カロチ
かなかつたか尿中排泄が減じた(表6).腎のthreshold
ン量には影響なく,ビA負荷によると負荷前値への復蹄
上昇と体内でのビC消費に基けるのであろう.
が遅れる(表1,2).角化症では特にPhrynodermaに
(5)パントテン酸は正常人では血中遊離型(F)が
穎著で,中,異常ビA負荷曲線を示した2例(表2,
減じ結合型(B)は影響されず,鍔にB/Fは増大し,
N0,
1 , 2)では著しく正常に近づいた.角化症に:Pが
尿中排泄は影響され底い(表6).Pか体内で緩徐に消費
或程度効くこと,叉rとビAとの併用かビA単独より退
される鍔であろう.
かに効くことがビA代謝面から説明出来る.(併用療法
ス(この場合は慢性円板状型)ではやはりB/Fは増大
前後の写真2例供覧)
するが,これはFか余計減るのではなくBが増す埓であ
*京都府立医科大学教授
−678−
B/Fの病的に小さいここリテマトーデ
昭和34年7月20日
679
る(表7).
た.
‥この点, ACTHでは著しく異なり,正常人では血中
(8)(a)ピB八まE1万u.(隔日15iB])により血中
:Fは著明に,Bも軽度に減じ,寫にB/Fは著しく増大
に梢々減じ,負荷すると尿中排泄か梢々減じ(肝内での
し,尿中排泄は殆ど影響されず(表8),叉B/Fの病的
E不活性化等に用いられるらしい).
に小さいエリテマトーデス(この場合は悪急性播種型)
5万u.(毎日7日)により既述Predonisoloneに似る
でも略々同様であった(表9).
ACTHにより,腎の
threshold低下も考えられるか,それ以上にsteroid
かより軽度の影響がみられ,
ho-
Cb)ビB,はE1∼
(c)ビCはE2万u.(毎日
14日)により血中に梢々増し,ビC負荷によると尿中排
rmone生成その他の鍔に,体内でのパントテン酸需要
泄がかなり増し(ビC利用能低下),(d)パントテン酸ぱ
がrより熹かに増せる謂であろう.
E1∼5万u.(毎日7∼14
〔B3 Estrogen(Progesterone): (1)性周期に
れなかった.
おける血中ビA量はestrogen分泌量と平行し2峰性に
〔C〕Androgen (testosterone propionate毎日10昭
変動し(表10,圖),正常人男女にB
7∼14日):(1)ビA負荷曲線は著しく平坦を来たし,
(Estrodiol benzoate
毎日5∼10日)を注射すると,血中ビAは2,000
u.では
B)により有意の影響はみら
(2)ビCは血中に増し,ビC負荷によると尿中排泄が増
減少,1万u・では増加に傾き,5万u.では大差なく,
し(ビC利用能低下),(8)パントテン酸は影響されなか
況ビA負荷曲線は前2者では殆ど異常なく,6万u.で
った.
は著しく平坦であった.
〔D〕甲状腺ホルモン(thyradin
(2)上記CD,並にProgesteroneは正常人男女の
血中ビA及カロチンは軽度に減り,ビA負荷によると
血中ビA,カロチンを減少せしめること(表11),更に尿
負荷前値への復帰か遅れる(表14).従って以前報告し今
中Androgen/Estrogen変動がE2,000
回も経験せるも(表15),肝機能に異常なく,血中カロチ
u.では軽微,1
0.2g): 正常人
万u.では梢々著しいこと(表12)底どから,我々は尋常
ンは多いか甲状腺機能低下のためにビAへの輔化か妨げ
性座盾の治療にはE1万u.を適量と考え,女では性周期
られ,ために発症せる一部の角化症の洽療には,甲状腺
の
剤投具は勿論であるか,同時にビA投興のより合理的な
れを少くするためEを月経後期に,ビA(1日5∼
10万u.)を月経前期に,男ではEとビAとを交互に投具
ことかわかった.(治療前後の写真供覧)
する方式を基本とし,これに他の療法を適宜併用し.著
なお尋常性座唐の甲状腺機能を嶮討し,殆ど総て正常
効をあげている.(治療前後の写真供覧).
の中にj2例の所謂hypothyroid
底お尋常性痙唐の中,2例にみられたビA代謝異常か
16, lr).共に若い女で,
acne
を見出した(表
E1万u.により殆ど正常に復した事例(表13),叉尿A/E
療により著効がみられた.(治療前後の写真供覧)
unbalance例はかなり少なく(51例中工2例),而もA増に
以上ビタミソAは柳田,B2は吉田,B6は広井,Cは
よるものか多かったこと(半数),前記方式による治療効
沖田,パソトテソ酸は中橋,
果かA/E正常より異常例に著しかったこと等を見出し
高石,雨森その他が夫々分担協力した屯のである.
thyradin十ピAを主体とした治
A/Eは六車,甲状腺機能は
皮膚疾患の'ホルモン療法
I、Nafeamura:Evaluationof Corticoidtherapy
中 村
in Dermatology.
家 政*
従来副腎皮質ホルモンの休療後に起る再燃の防止等と
よる萎縮を最少限度に止める対策か講じられているが,
して種々薬剤を併用して下垂体副腎系のCorticoidに
最近この目的に使用されている薬剤中辻例えばascorbic
*熊本大学助教授
680
日本皮膚科学会雑誌 第69巷 第7号
acid. (!3acchus) butazolidin. Salycilate (Kersten
aL)熊谷他),
et
glycyrrhizine C熊谷他)等の如く肝に於
その成績によると8剤共期間,量等投図條件の相違で
遊離型lTOHCSの増量と結合型lrOHCs
の減量を来す
けるCorticoid代謝系を抑制する薬剤が幾つか指摘さ
場合と,逆に遊離型の減量,結合型の増量を来す場合と
れている.
かあり,前者は皮疹の改善,後者は逆に増悪を来す傾
演者はこの点に着目して結節性動脈周囲炎,急性エリ
向か頗る濃厚である.之等の成績より推測すると,中のl
テマトーデス,アトピー皮膚炎その他2,3の皮膚疾患
bioactiveのcorticoid
にIrgapyrin
は下垂体副腎系以外に肝に於ける代謝系の促進屯看過出
(Butazolidin, aminopyrine合剤)
Glyc-
level の低下を惹起する原因に
yrrhizine, chlorpromazineを投呉,その尿中lTOHCS
来ないのではないかと考えられる.詳細は臨床と研究6
を測定,再燃と尿中のbiocorticoid
月号に発表の予定.
(遊離型lroHCS)
との関係を槍討した.
皮膚疾患のホルモン療法(特に性ホルモン治療と肝機能について)
T、S・\to:
Treatment
of Skin Diseases by Hormones
斎 藤
忠 夫*
性ホルモンが肝臓で不活性化されるという事は昔から
が現われるが去勢,非去勢には重大な差がない.
知られている.従って肝機能障碍のときには性ホルモン
組織学及組織化学的に此等の動物の肝を見ると,大量
が不活性化されずに過剰の状態となり,相唐した症状を
投興する程肝の変化は著明であるか,化学的な肝機能低
示す.叉性ホルモンを過剰に投員したら肝機能を障碍す
下の時期より少し遅れて現われる.又肝のグリコーゲン
るだろうか.-という事が私の最も関心の深い事であ
は男,.女性ホルモン共に始め増加し後減少する.脂肪は
るので実験的に追求した結果,大量叉は長期に亘ると強
胴性ホルモン共に増加するが,特にきの去勢家兎に著明
い肝障碍を惹起することが判明した.
で女性ホルモンの方が此の作用が強い.酸フォスファタ
臨床的には一般に性ホルモン代謝と関係かおるか,或
ーゼは男性ホルモンで漸増し女性ホルモンでは1ヵ月後
は性ホルモン投員で効果のあるもの(乾性脂漏,皮膚座
著増,以後減少するか正常よりは退かに強い.アルカリ
禅症,更年期皮膚症,尋常性座唐,前立腺腫瘍)に性ホ
フォスファターゼは雨性ホルモン共に漸次増加する.琥
ルモン投典を行い,経過に従って肝機能を測定し肝機能
珀教脱水素酵素は共に漸増し,特に去勢家兎に強く現わ
と治療効果の関係を嶮討した,詳絹にっいては臨床と研
れる.叉脂肪及び琥珀酸脱水素酵素以外は去勢,非去勢
究34,
に重大な差は認められない.
2号及皮膚紀要52,
213,昭32にのべているので
省略する.前立腺腫瘍は皮膚疾患ではないか大量の性ホ
結 論
ルモンを投員するので肝機能を嶮査するとやはり肝障碍
1)臨床方面では肝機能と性ホルモン治療効果は概ね
を起して来ることか証明された.
並行する.
実験的には犬と家兎を使用し,犬では少量(1日1
2)実験的には少量短期ではむしろ促進し,大量長期
昭),中等量(1日12.6n)g),大量C
では肝障碍をおこす.
1 H 5 nig)を80ロ間投
輿,家兎では1日弓昭連続80日,60日,90日に分け投興
3)臨床で使用している位の量では高度の肝障碍がな
し肝機能を嶮査した.犬では性ホルモンか大量になると
い限り先ず問題にならない.
肝機能が低下する.量が少なくて肝障碍の程度が軽けれ
4)組織学的又は組織化学的所見屯他の化学的所見と
ば中止後元にかえる.特に女性ホルモンで♀犬に強く現
概ね並行する.又組織化学的には他の内泌臓器や物質代
われる.家兎では性ホルモン投員が長期に亘ると肝障碍
謝との関連もうかがわれる.
*山口医科大学教授
681
昭和34年7月20日
更年期皮膚病変の臨床的観察
7.yαs心:Skin Changes
Seen in the Climacterics and Postclimacterics
安 田
利 顕
最近2年間に,更年期と密接な関係にあると考えられ
一形列におくべき,完成した臨床型とみることができ
る9例の皮膚病変を観察したが,それを分類すると次の
通りである.
る.
これらの治療には,
顔面紅斑落屑性潔疹
m漏性皮膚炎型
日光皮膚炎型
頭部脂漏性皮膚炎
parakydroxy
propiophenone
例
ヴィダール氏苔癖
899 18 64 3 4 1
CO
1-I<︱(
Climacteric dermatitis(更年期皮膚炎)
(PHP)1日2g内服.estrogens,
または注射,ビタミンE
000∼5,000
200 mg内服を用いた.
は21例中著効14例,有効5例,無効2例,
PHPで
estrogenでは
84例巾著効32例,有効2例,ビタミンEは12例巾著効8
例,有効2例,無効8例,無効1例であった.この際,
PHP,ビタミンEは更年期女子に,
estrogenは閉経期
日光皮膚炎
女子に特に効果がすぐれていた.
皮膚癈輝症
更に,われわれは更年期皮膚病変の1つとして,
壽麻疹様苔癖
xthausenの更年期角化症(Keratoderma
募麻疹
um)の10例にっいてのべた.何れも閉経期か,子宮筋ご
Haclimacteric-
このうち,われわれが更年期皮膚病変の特異な臨床型
腫のためめ子宮摘出を受けたものであった.疹感著しく
として提唱したいのは,更年期皮膚炎である.それは主
臨床的に汗庖状白癖と類似しているため,これと聞違え
として項頚部に好発し,更に前胸三角部,耳囲,顔面に
られて治療を受けていたものが,8例あった.また,う
屯拡る禰漫性の発赤腫脹,落屑にはじまる癈冷性皮膚症
ち4例は,前記の更年期皮膚炎を併発していた.同降
等で,潔潤することなく,乾燥落屑性の軽度の褐色々素
に,指腹先端に,進行性指掌角皮症に際してみられる
沈着をみるものとして存続するか,苔癖他傾向の著しい
と,同一病変がみられたものか,6例あった,これらに
ものである.(これからヴィダール氏苔癖への移行がみら
対しては何れもestrogenの内服,またはその軟膏の
れる,かつ,これにも脂漏性部位に好発するものと,光
外用による著効が認められた.従って,この皮膚病変
線直射部にあつて,日光皮膚炎の性格か強いものがあ
は,決して今までに考えられていた程稀なものとは考え.
る.
られない.且つ,更年期以前においても,月経不順なる,
そうして,前記の更年期皮膚病変は,夫々に独立した
例に,同一皮膚病変がみられ,高年者男子においても1
ものではなくて,相互に移行がみられる.その関係は次
例にこれをみた.何れもestrogenによって軽快したこ
の通りである.
u内服,
とは,更年期角化症なる名稀が妥当なものであるか否か
を疑わしめるものである.更に,6例に小水庖形成があヽ
蒋麻疹
→ヴィダール氏苔癖
/ \
脂漏性皮膚炎型 日光皮膚炎型
り,それか原発病変とみられる点もあり,これかまた汗・
庖状白癖と誤診されたもとンゝ考えられるか,組織学的に
みるとSubcorneal
vesiculatlonであって,掌耽膿庖症j
脂漏性皮膚炎 日光皮膚炎
とも類似している点かおり,この角化症にっいては,敞
上記病変の中相互に連絡が記してないのは,それと同
今後愉索かす!ゝめられる必要があるものと考えられる.
*関東逓信病院部長
682
日本皮膚科学会雑詰 第69巻 第7号
皮膚疾患のホルモン療法
T。 Ya/mura:
Hormone
矢 村
Treatment
卓
of Skin
Diseases.
ご*
-
最近に於ける副腎皮質ホルモンの合成進歩には著しい
る.人体にThorn's
奄のがあり,又臨床的に下垂体,副腎皮質ホルモンか盛
注射しておこる血清中の抗プクスミンカ價,プラスミン
Test の方法に準催しACTH25mg
んに投興され夫々の効果を得ている.
カ價を測定するとモルモットのそれと同じく抗プラスミ
われわれは先人の云う如くコーチゾンはモルモットの
ンカ價が上昇してくる(第2圖).
アナフィラキシー・ショックを抑制しないこと,叉血清
コーチゾン150町筋注し,同様に抗プフスミンカ價及
グロブリン値の低下をきたすことを確認した.
びプラスミンカ價を流血中のエオジノ細胞の変動と共に
下垂体,副皮皮質ホルモン剤の抗アレルギー作用,抗
観察するにヱオジノ細胞の減少するものに於ては抗プラ
炎症作用機序に関しては多くの研究成績か報告されてい
スミンカ價は同様に上昇してくるか,エオジノ細胞の減
る,われわれぱ最近侵襲に対し生体で活性化される蛋白
少しないものに於ては抗プラスミンカ價の上昇は軽度で
溶解酵素(Protease)に着目し,かゝるホルモン剤の
ある.しかしてモルモットのアナフィラキシー・ショッ
木酵素系に及ぼす影響について実験した.今日流血中の
タを完全に抑制する抗プラスミンカ價は,
Protease中最秀よく知られているもものは線維素溶解
あり,コーチゾン投興により上昇する抗プラスミンカ價
酵素(Fibrinolysin)或はプラスミン(Plasm
の最高値は56P.U.である・即ちコーチゾン投輿により上
in)であ
る. Ungarは生体の侵襲に対しかこる炎症反感機序を
l,280P.U.で
昇する抗プラスミンカ價ではモルモットのアナフィラキ
酵素学的に第1圖の如く説明している.
シー・ショックを抑制出来ないことが推察される.
われわれはペプトン賦活法により調製したプラスミン
しかしACTH,コーチゾン投呉により上昇する抗プラ
によりモルモットのアナフィラキシー様症状の惹起,或
スミンカ價は侵襲に対し活性化されるproteaseを不活
はヒスタミン,プラデイキェンの遊離を確認したか,コ
性化しproteaseの活吏生化のもとに蛋白溶解をきたし,
ーチゾンをモルモットに投興し,血清中の抗プラスミ
その結果おこるペプチード,ヒスタミン,ブヲデイキュ
ン,プラスミンカ價を測定すると,プラスミンカ價は殆
ンの放出を抑制し,抗アレルギー作用,抗炎症作用を示
ど有意な変動を見ないか抗プラスミンカ價は上昇してく
すものと推論する.
第 1 図
AGRESSION→Kinase Pr^curseur
de protfese
(Comp16ment?) (Profibrynolysine,
↓① plasminogene,
etc).
Propeptidase 1 Peptidase l → |
rProactivateur)→(Activateur)② ↓ ③ Proteolyse,
Protease 一一→lyberation
(Fibrinolysine, de
peptides→Wズlt畿
plasmine, etc). et amines
1
Peptidase n phlogogenes
(Antitrypsine, ④
antifibiynolysine etc).↓
Protease inactiv^e
結 辞 北村精一
に小著を公けにしているが,内分泌剤の発達と共に皮膚
「皮膚と内分泌」「皮膚疾患とホルモン療法」この雨
との相関々係叉,皮膚疾患に対する内分泌例の療法は頗
者は内分泌学の上に大きな,多数の問題を持っている・
る複雑多岐となり特に最近,脳下垂休一副腎系のホルモ
このことに就て既に私も演者の1人である矢村博士と共
ンの目ざましい発展は益々興味ある幾多の業績を生みつ
ホ長崎大学講師
昭和34年7
H20日
683
第 2 図
ACTH
情が明らかにされたと思う.
次ぎに最近,世人のホルモンに対する認識か余りにも
25m│
0 CD
cri
4 2 Q8 ∼ 4 り∼
<:zs <o
える.元来,或る内分泌系疾患の場合,マイナスのホル
c:^
7 7 7
大きい処から,持薬的にホルモン剤を飲用する,更に化
うのか原則ですか,或種のホルモンが充分ある場合にこ
粧品類中にも無闇にホルモン剤を附加する.これは相当
吾々の専門家も警戒せねばたらないことではないかと考
モンを附呉して,こ岫こ士となって平衡状態になると云
C2)
れに更に附加して果してそのホルモンが(十)に働く
か,又,全くそのホルモンは生体に過剰となって素通り
図 oo
をするか,又は更に,単なる過剰排泄にと2まらず,
このため一方に於て内分泌器官の本来の機能の低下,
to
萎縮を招来して,取ったホルモン剤のため或種の毒作用
"=d- cni
を興えてはいないか,これらの点は充分嶮討する價値加
あると思う.斎藤教授の肝機能の嶮索等は詳細にこの間
の経緯を明らかにされている.亦中村博士の発表の如
Ci
く,或るホルモンの欠除か疾患を招待している場合,そ
のホルモンの発生機能の低下か完仝にたち直るまで外部
0 ∂ 6 4 2Q
7
からの補給か,そのホルモ;/そのもののみでは,凡ゆる
角度より不可能な場合,他の薬剤をその織ぎとし.又,
切換え剤としての役割をするものを補給する研究も頗る
重要であると考える.カペる研究は他方前述のホルモン
過剰による毒作用も亦,救われるのではないかと思う.
次ぎに在来知られている内分泌性の皮膚疾患は甚だ多
いもので安田博士の更年期皮膚病型にしても頗る多岐で
Z
J
顔
ある.即ち,皮膚そのものに表現する症状はその原因の
同一であるときにも多型で現われ,他方.その病因が全
!ゝある.
く異なっているにも拘わらず,同一症状で表現すること
只今までの5人の各演者の方々の御意見を,綜合して
は内分泌型疾患にかぎらず,吾々は多くを経験してい
見ますに,多少とも内分泌系と関係をもっ皮膚疾患に対
る.例え,尋常性痙焉の場合に於てもホルモン剤の効力
し現在の各種のホルモン剤が,有効であると云う場合,
はたしかに認めますか,他方,ホルモン系と全く関係のな
必ずしもそのホルモンが直接の働きをしているとは考え
い各種の療法が相当度の効力を示していることも日常経
られず,却って間接の重要なる影響を興えていることも
験している処であります.カハる軍なる尋常性座療でも
にっきりしていると思われる.
か只
又在来ホルモン療法と云えば吾々の領域では専ら性ホ
内分泌剤の直接叉は間接の影響を充分考慮する必要を知
ルモンを主体として考えられて来た.叉,その性ホルモ
るものであります.最近では,
ンも直接的のホルモン剤を以てこれに当ていたのです
てホルモン剤にして然も,その有効作用は,内分泌性機
が,今日では決して直接ホルモンのみならず,全く別箇
能ではなくアレルギー性脱感作であるという薬剤すら発
な系続からのもの特に下垂体の分泌が凡ゆる部分に大な
資されている.
る影響を持つものであることも明瞭となって来た.他
かゝる事情を勘案しますと矢村博士の報告の如く,ホ
Acne
vulgaris に対し
方,ホルモンとビタミンと云うこの2者の相互関連作用
ルモン剤の作用機序が直接乃至間接にのみではなく,こ
も頗る重絹されて来て,岩下教授の御説でもこの間の事
ゝに酵素の作用を考えることは頗る興味あるもので,饒
684
日本叉膚科学会雑誌 第69巻 第7号
にアレルギー疾患発生の直接機序が抗原抗体反悪の結
を考慮することは今後の内分泌系統に於ける各種の機
果,各種の酵素がこの間に活性化して生体の異常現象を
能,又,カハる疾患に対するホルモン剤の効力の機序を
招来する如く,ホルモンの作用にはその薬剤の作用が,
説明していく上に多くの示唆白
生体内の或種の酵素の活性化を主体として発生すること
である.
討
論
自取 昭(北大): 中村家政氏に. グリチルリ
いるのではないかと考える.即ち本剤にはこの両方の作
チン,イルカピリンの大量叉は少量投回がSteroid療
用が考えられますが,現在の処前者,即ち臨床的に奏効
法後の再燃叉は再発防止に有効であるといわれるか,臨
せしめるには之等少なく共,9錠C
床的に各症例について併用する薬剤の撰庫及び量の決定
ると考えている.
225iitg)を必要とす
に何か基準となるべき事があるのでしようか.と云うの
小堀氏に. 私は唯今も中上げました様にGlycyr-
は,私共も動物実験で種々の薬剤かSteroid投興後の
rhizineで血中のCorticoid
副腎皮質に及ぼす影響を観察し,その一部は昨年の中部
剤か肝臓に於けるCorticoidの非活性化を抑制する場合
連合地方会で報告したか,動物実験の結果では成程グリ
と考えます.水剤は小量投具では逆には代謝系を促進
level を上昇するのは本
チルリチンは萎縮した副腎皮質の恢復を促進します.し
する場合か実験的に推測されますか,かかる使用法は
かし,臨床的には之等薬剤が必らずしも適確に再燃を防
Corticoid療法後の再燃防止策としては望まれなく,こ
止せず叉同一疾患に於ても各症例によって態度を異にす
の様な投具法は別の使い道を考えています.
る事を経験しているからであります.
松原忠言(京大): 矢村先生に. 薬疹は副腎皮
小堀辰洽(東京逓信): 1)合成副腎皮質ホルモン
ではある程度,疾患特有性がみられる.例えばmethylprednisoloneは紅皮症に,
triamcinoloneはPsoriasis
に特有な作用がみられる.
2)岩下氏に.
Androgen-estrogen
質剤使用によって予防出来ない事をブラスミン,抗プク
スミン研究の見地からどのようにお考えですか.
追 加
岩下健三(京府大): 我々はMethyJprednisolone,
ratio は月経周期
Deχamethasone, Deχamethasone
acetate を200余例
のどの時期に測定するのか標準と考えられるか.その測
に用い近く誌上に公刊される筈であるかPrednisolone
定方法は如何.
に比し,用量比の遥かに少なくてすむことは暫らく別と
8)中村氏に.
Cortisneの代謝をおさえて血中濃度
し,臨床効果,副作用は大体大同小異であった.唯Pre-
を上げると副腎皮質がI回復するというのはどういうわけ
dnisoloneよりGlyconeogenesisが軽度ではないか
か.
(フルンケル発生が少ない),叉中指性刺戟症状(不眠,
岩下健三: 小堀氏に, Androgenは増田氏法,
頭部熱感等)が梢々強いのではないかという印象をうけ
Estrogenは南部氏変法螢光比色法により共に1日量に
た.優秀な薬剤ではあるが,多数例に就ての長期使用成
就て測定した.叉女におけるこれら性ホルモンの測定は
績か今日まだ内タトに殆どみられないので,それを侯って
総て性周期10日日を基準とした.詳細は近く日皮会誌上
真の評價分下さるべきであり,叉他方,
Prednisolone
に発表される六車勇二の原著を參照されたい.
に比し抗炎症作用は強いか,
中村家政: 白取氏に. 御質問の中にglycyrrhi-
以上に下垂体前葉への抑制作用が強く謂にCa,
zine動物実験では下垂体副腎等に刺戟像か確かにみら
中排泄が強いといわれているので(Bunim
れたが臨床的に動か底いとの事ですか,私は本剤か奏効
らのことも考えなくてはならない.更に優秀なものの出
する場合は逆に肝臓に於ける代謝等を抑制する場合と考
現か切望される.
えます.下垂体系を刺戟する場合は同系を逆に促進して
Dexamethasoneではそ札
Pの尿
1958),これ
シンポジウム
皮膚疾患の局所療法
Topical Treatment
of Skin
Diseases
午後5時15分∼6時
司
山
会 横
セクレタ リー 小
講
堀
師. 樋
□
謙
砧C慶 大)
辰
洽(東京逓信)
太
郎(九 大)
小 堀 辰
治(東京逓信)
局所療法一管見
K、Higぼw:On Topical Treatment
of Skin
Diseases
樋 口 謙 太 郎*
最近皮膚病の原因か漸次開明されるに至り,内用療法
ローション,吸水軟膏は不良であった.
は外用療法と・ヽもに重絹されるようになった.しかしそ
II. steroid軟膏療法について
の確実な有効性に対する疑問と費用の点より,目下のと
Steroid化合物の提供は炎症性疾患に対し劃期的の効
ころまだ局所療法が皮膚病治療の本命であろ弘この局
果を貸し,ことに限局性病巣にっいては局所療法の便
所療法の2,8について嶮討を加えたい.
かおる.しかし使用法についてはまだ槍討の余地かお
I.各種軟膏基剤適応の再検討
る.まず急性症状を呈する湯疹類308例についてプレド
湯疹およびその類症を対象とし,その皮疹を肥厚型,
ユン剤使用と従来の治療法とを比較するに,前者の内外
潔潤型,乾燥型に分ち,9種の新蓉基剤(チンク油,リ
用の効果は従来の治療法に比して即効的なるも,再発率
ニメント,パスタ,ワセリン,ボールザルペ,吸水軟
は高い.ことに再発率とプレドエソロン使用量゛との関係
膏,親水軟膏,ソルペース,ローション)に1%ピチロ
に具味かおり,一般に使用量の少ないとき,多すぎると
ールを配合して使用した.
きに再発串高く,中間の量の場合には少ない.すなわち
その結果は従来記載されている使用規準にほぼ一致し
少量すぎる場合は使用量の不足ということか考えられ,
た成績をえたか,中にはやや異なった点もあった.たと
多過ぎるときは症状の比較的高度なもので,症状の急速
えば泥膏の使用範囲は予想外に廣いこと,逆にソルペー
な消退により,早期に中止するためであろう.治療期間
スは各皮疹に廣く賞用されて,便利次ものと考えられて
との関係においても同様なことが窺われる.要するに木
来たのにかい
剤は上手に利用して即効を発揮せしめたあと,中止期間
となどかそれである.また乳剤性基剤は優秀であるか,
あるいは後療法に考慮を佛い,再発を防ぐ要がある.
刺戟することも多かった.動物実験的にモルモットにク
最近steroid軟膏にタール剤,抗ヒスタミン剤ある
ロトン油皮膚炎を発生せしめ,同様に治療実験を実施す
いは抗生物質などを配合したものか販賀されている.わ
ると,力らる急性炎症に対してはチンク油が最も優れ,
れわれもこれらについて比較してみたが,結局潟疹群に
曇九州大学教授
−685−
686
日本皮膚科学会難誌 第69巻 第7号
対しては他の配合剤の有無よりもプレドエソロンの含有
モルモットのクロトン油皮膚炎に対する影響は両光線
量の方か効果に対する影響は大であった.
ともやや治癒日数の短縮がみられ,ことに人工太陽燈に
III.光線療法併用の価値について
おいて高度であった.
温疹を主とする皮膚疾患の治療には,外用療法とい
IV.
に光線療法あるいはレ線療法等の理学療法を併用するの
Dermopan装置は豊富な軟線を出し,使用も便利で
が習慣となって来た.レ線療法のことはしばらくおくと
あり,皮膚病のレ線治療に最適である.われわれは68例
して,ソラックス,人工太陽燈の照射が日常の診療に際
に試用し,慢性厖疹,ビダール苔癖,血管腫,ケロイド
し,皮疹の治癒にどれほど有利になっているか疑問であ
などに有効であり,ことに他の療法に抗したものにも効
Dermopan【こよる皮膚病の治療
る.
果をあげた.なお皮膚癌にも適庖かおる.
まず臨床的に湯疹類2吟にっき,左右対稽的に存する
V.社会保険診療報酬と皮膚科処置
同一病巣を選んで,一方に光線療法を併用してみた.七
今回改正された報酬規定を甲,乙両表につき槍討し
の結果効果あるものもあるが,それはあくまで自覚的の
た.すなわち投薬,注射,理学療法,創傷および皮膚科
ものであり,他覚的に良果をえたものは人工太陽燈照射
的処置,ことに軟膏および処置材料の購入價格,原價計
群15例中1例のみに過ぎなかった. また別の症例群
算などにつき例をあげて,皮膚科的方面では一般に不利
20例を,急性と慢性に分けて観察するに,ソラツクス照
になること,とくに甲表を採用するときその傾向か著し
射の場合,爾型とも特別の影響を呉えず,人工太陽燈の
いことを警告した.そして改正すべき8点をあげて注意
場合,慢性例1例に軽快の兆がみられたに過ぎなかっ
を喚起した.
た
皮膚疾患の局所療法
T。 Kobori:Topical
Treatment
of Skin Diseases.
辰 治*
jヽ 堀
1. 新しい基礎膏
yleaeを5%に加えたもの.これも廣範囲の温度変化に
私は嘗って新型式基剤を提唱したが,このたび更に次
同一祠度を示す.
の新基礎膏を加えることが出未だ.
2. Crude
Jelene 50Wと同様に使用出来る.
Coaltar
軟膏,
Ammoniated
Mercury
(1)窒素ガス入り軟膏
軟膏
半硬化油脂に窒素ガスを微粒子の状態に混じたもの,
両者とも尋常性乾麿,聯経皮膚炎,貨幣状皮膚炎,脂
これに5∼20%に亜鉛華を混じると在来のWilson
pa-
staと同じ適庖に使用出来る.
(2)
はCoaltar軟膏の方が概して自降釆軟膏より有効率が
Jelene 50W
重質炭化水素ワックスと鍍物油の混合物で,
+600の廣範囲温度変化でも同一程度を示す.
漏性皮膚炎,掌疏膿庖症に有効であった.著者の経験で
高かつた.
-60°∼
Vaselin
Coaltar軟膏の基剤としてはLassar
よりこれに8%にtween
り,自降張軟膏ではPlastibaseよりもVaselinの方
と同様に使用出来る.
がすぐれていた.
(8)
3. 副腎皮質ホルモン
Plastibase
重質流動パラフィンに平均分子量21,000のpolyeth*東京逓信病院部長
Pasta
20を加えたものがすぐれてお
(1)同等の効果を示す各種副腎皮質ホルモン軟膏の
687
昭和34年7月20日
濃度は次の如くであった.
mycin軟膏の順であった.
l.Q% hydrocortisone=
%
0.59^ prednisolone==
met!lylprednisolone二〇.1%
0.5
triamcinolone=0.05
2次感染の証明せられる潔疹面でも同順列の効果か証
明せられた.病巣の治癒と共に急速に細菌は消滅した.
9^dexamethasone.
1次性感染病巣では抗生物質を添加したものが明らか
(2)基剤による効果の相違
に有効で,副腎皮質ホルモン軟膏のみでは治癒せしめ得
副腎皮質ホルモン軟膏は基剤によってその効果に相違
なかった.
がみられた.各種基剤の0.1%
4. 東芝Dermopanによる治療
て比較すると,
Kenacort
(plastibase) >Kenacort
Kenacort軟膏につい
cream >Kenacort
Ointment
lotion の順であった.
Softray, Grenz
ray を自由に照射しうる國産品か製
作されるようになったので,これで実験を行った.
副腎皮質ホルモン軟膏は急性期の,浮腫,腫張の著し
(1) HVLの問題
いときより屯,むしろ慢性期で浸潤,苔癖化の著しいと
各種潔疹様病変に対してはHVLに0.18nM
き著効を示すから,基剤として乳剤性軟膏の方か有効性
で,それ以上の硬線を使用する必要の次いことを知っ
A1 が適当
か高いことになると考えられる.
た. Acne
0.1% Kenacort
腫瘍にはHVL=0.45∼0.82A1が適当であると結論され
lotion は脂漏性皮膚炎に特に有効
vulgaris, SycosisではHVL=0.46mmAI,
であった.従って,一部では疾患毎に,又病期によって
た.
基剤を選ぶべきことか証明せられた.
C2)
(8)抗生物質加副腎皮質ホルモン軟膏
湯疹様病巣には1同線量50∼80yが適当で,1週間
同程度の病巣を有する貨幣状皮膚炎にCortril軟膏,
隔,8∼4同照射を標準とすべきことを示した.
Terracortril軟膏,
(3)副腎皮質ホルモン軟膏とX線を併用すると,そ
Terramycin軟膏を塗布,その効果
を比較するとCortril軟膏>Terracortril軟膏>
Terra-
追 加
樋口謙太郎(九大): 小堀氏より提供を受けた8種
の基剤,すなわちプラチペース,窒素ガス軟膏,亜鉛華
窒素ガス軟膏(基剤そのまま,および1%の割にピチロ
ールを配合して)を用いてモルモットのクロトン油皮膚
炎の治療を試みた.その結果はいずれも有効で,ことに
亜鉛華窒素ガス軟膏は従来の同様基剤に比してとくに優
れていることを確認した.
1同線量
の治癒とづ
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