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米国におけるデマンドレスポンス アグリゲータの現状と今後

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米国におけるデマンドレスポンス アグリゲータの現状と今後
NRI K NOWLEDGE INSIGHT
2012 MAR. VOL.23
当レポートに掲載されているあらゆる内容の無断
転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の
著作権法及び国際条約により保護されています。
米国におけるデマンドレスポンス
アグリゲータの現状と今後
佐藤仁人
滝雄二朗
Copyright ⓒ 2012 Nomura Research Institute,
Ltd. All rights reserved. No reproduction or
republication without written permission.
3
インフラ産業コンサルティング部 コンサルタント
インフラ産業コンサルティング部 副主任コンサルタント
電力小売会社にDRアグリゲーションサー
マニュアル制御型アグリゲータは、主
収する形でDR市場参入の動きを見せて
要家のリアルタイムのエネルギー使用デー
発・導入が進むことになろう。具体的に
DRアグリゲータとは
ビスを提供している。本稿では、業務・
に大規模事業所を顧客とし、産業用需要
い る。Siemensは、 遠 隔・ 自 動 制 御 型
タをモニタリングし、省エネ・省コスト
は、負荷設備をより精緻に制御するため
産業需要家を対象としたDRアグリゲー
家の生産ライン、大規模施設の空調、照
DRアグリゲータであるSite Controlsを、
に関する提案を行う。このようなDRア
のコントローラや制御ロジックの開発・
デマンドレスポンス(DR)アグリゲー
ション事業に関する現状と今後の動向
明、冷蔵設備などの負荷設備、および
Johnson Controlsは、DRを 実 施 す る た
グリゲータの動きに対して、大手EMS・
導入が想定される。この領域においては、
タは、DRプログラムに参加する需要家
について分析をする。
CHP(Combined Heat and Power)
、自
めのプラットフォームを提供している
電機メーカは、既顧客や販売網を防衛す
EMS・電機メーカの事業機会が増大す
を集め、電力会社や系統運用機関にDR
家発電設備などの供給設備を制御対象と
EnergyConnect Groupを、Honeywellは、
るために、DRアグリゲーション事業へ
ると考えられる。
サービスを提供する中間事業者のこと
する。マニュアル制御では、数秒から数
DRプラットフォームを業務・産業用需
参入している。
分単位の短い時間の需要反応、および需
要家に提供しているAkuacomをそれぞ
要抑制の発生頻度が高いプログラムへの
れ買収した。
②遠隔・自動制御ニーズの高まり
1
対してプログラム参加を呼び掛ける営
2
業活動に始まり、需要家との契約、日々
DRアグリゲータは、系統運用機関や
対応は困難であるため、マニュアル制御
このように大手EMS・機器メーカが
今後は、DRアグリゲーション市場に
上述のような市場の動きに加えて、今
のサービスの運用など、DRに関わる種々
電力小売事業者から要請を受けると、契
型アグリゲータは、主に反応時間が長く、
市場参入を進める背景には、機会と脅威
おいて遠隔制御・自動制御の重要性が高
後は米国以外の地域でもDRアグリゲー
の手続きを代行し、その対価として、
約関係にある需要家の負荷制御を実施す
需要抑制の発生頻度が低い、ピークカッ
の側面がある。まず、機会の側面として
まっていくことが考えられる。まず、今
ション市場が顕在化していくことも想定
電力会社や系統運用機関から支払われ
る。その際、DRアグリゲータが需要家
トへの対応や系統運用機関が整備する容
は、DRをきっかけとした自社製品の販
後DRアグリゲーション市場が拡大して
され、DRアグリゲータを取り巻く事業
る報酬の一部を得る。また、DRアグリ
に電話やメール等で負荷制御依頼を行い
量市場などのプログラムに参画している。
売拡大があげられる。DRは、系統運用
いくことで、対象顧客が、大規模需要家
環境は大きく変化していくことが見込ま
ゲータは、一般家庭と業務・産業需要
需要家が予め定められたマニュアルに従っ
一方、遠隔・自動制御型アグリゲータ
機関や電力会社からサービスの対価を得
中心の現状から、中小規模需要家にまで
れる。エネルギー関連事業において新た
家の双方を対象としている。
て制御行動を実施する場合と、DRアグ
は、大規模需要家に加え多店舗型の中小
て、その一部を需要家に還元するビジネ
拡げられることが予測される。中小規模
な事業展開を検討する企業にとっては、
現在、家庭においてDRの対象となり
リゲータが遠隔からの直接制御や自動制
規模需要家(食品スーパーチェーン店
スである。そのため、ビジネスモデルの
需要家は、多くの場合、エネルギー管理
このような市場の変化を捉えることで、
える設備は、セントラル空調、電気温
御により需要家の負荷設備を制御する場
等)も顧客とし、自家発電設備などの発
組み方によっては、需要家はコストを負
者を置くことができないため、DRアグ
新たな事業展開の切り口が得られる可能
水器、プールポンプなどの負荷設備に
合がある。業務・産業需要家を対象とす
電設備および空調、照明、冷蔵設備など
担することなくDRに必要なエネルギー
リゲータからの要請に従い、マニュアル
性がある。
限られており、DRアグリゲータは、外
るDRアグリゲータには、前者の方式を
の負荷設備を制御対象とする。遠隔・自
監視装置や各種機器制御設備を導入する
制御を実施することは難しい。このため、
新たな事業機会として、まずDRアグ
部から直接制御可能なデバイスやシス
主力とする「マニュアル制御型アグリゲー
動制御では、数秒から数分単位の短い時
ことができる。また、それらの監視装置
今後中小規模需要家がDRアグリゲーショ
リゲーション事業自体の市場拡大を背景
テムを家庭需要家に導入し、電力小売
タ」と、後者の方式を主力とする「遠隔・
間の需要反応、および需要抑制の発生頻
や各種機器制御設備は、現在大手EMS・
ンの主要な対象になることで、遠隔・自
にアグリゲータとしての事業機会の獲得
事業者が需要制御を実施可能なプラッ
自動制御型アグリゲータ」がおり、それ
度の高いプログラムに対応することが可
電機メーカが販売しているシステムと似
動制御のニーズが高まることが予測され
が想定される。また、遠隔・自動制御ニー
トフォームを提供している。一方、業務・
ぞれ得意とする顧客、サービス内容等が
能であるため、マニュアル制御が対応で
た機能を保有しており、関連する幅広い
る。
ズの高まりを受け、遠隔・自動制御を実
産業需要家においてDRの対象となり得
異なる。
きる容量市場に加え、アンシラリー市場
サービスを拡販することが期待できる。
また、政府機関や系統運用機関・電力
施 す る た め の 機 器 設 備 やITプ ラ ッ ト
(周波数制御や予備力対応)のプログラ
一方、脅威の側面としては、先行する
会社による制度変更によってDRアグリ
フォームを提供する機会も顕在化する。
ムにも参加することが可能となる。
DRアグリゲータによるエネルギーサー
ゲータが参入可能な市場が拡大してきて
次に、DRアグリゲーションサービス
現在、米国における業務・産業需要家
ビス事業の拡大があげられる。一部の
いること、DRアグリゲータが容量市場
を切り口とした各種エネルギー関連事業
を対象としたDRアグリゲーション市場
DRアグリゲータは、DRサービスにより
や一部のアンシラリー市場のみでは十分
における事業機会の獲得も考えられる。
の大半は、容量市場によるものであり、
築いた顧客基盤を足掛かりにし、DR以
な収益を上げられなくなってきているこ
具体的には、DRアグリゲーションによっ
多くのDRアグリゲータがマニュアル制
外のエネルギーサービスへの展開を志向
とから、今後はDRアグリゲータが、反
て獲得した顧客接点を活用し、省エネ改
御型である。
している。例えば、EnerNOCは、DRア
応時間が短く、需要抑制の発生頻度が高
修やカーボンマネジメント、エネルギー
グリゲーションサービスを利用している
いアンシラリー市場にも展開していくこ
設備管理、エネルギー調達支援などDR
需要家のうち、エネルギー料金が年間
とが予測される。この流れからも、遠隔・
以外の各種サービスをクロスセリングす
100万USドル以上の需要家を対象に、
自動制御ニーズの高まりが見込まれる。
ることが想定される。
エネルギー管理代行サービスを提供して
以上のように、遠隔・自動制御に対す
このように、各企業は、DRアグリゲー
①大手EMS・電機メーカの市場参入
いる。同サービスでは、DRサービスの
るニーズが高まることで、今後はDRア
ションを新たな事業機会と捉え、新たに
現在、大手EMS(Energy Management
ために導入したシステムを需要家の施設
グリゲーション事業において遠隔・自動
拡大する事業機会の取り込みを検討して
System)・電機メーカが、既存企業を買
管理システムと統合することにより、需
制御を実施するための各種設備機器の開
いく必要がある。
である。DRアグリゲータは、需要家に
DRアグリゲータの分類
る設備は、空調・照明、冷蔵/冷凍設備、
製造プロセスなどの負荷設備から、自
図表1:DR アグリゲータの分類
家発電設備などの供給設備まで多岐に
マニュアル制御型
アグリゲータ
わたる。そのため、DRアグリゲータは、
遠隔・自動制御型
アグリゲータ
個々の業務・産業需要家に対し、制御
代表企業 EnerNoc、Comverge等
対象機器の選定、需要制御容量の算定、
制御対象 空調・照明、冷蔵/冷凍 空調・照明、冷蔵/冷凍設
設備、製造プロセス、
機器
CHP、自家発電設備等 備、自家発電設備等
オペレーションマニュアルの作成、デ
マンド制御装置、遠隔・自動制御装置
の導入などを行い、需要制御可能な容
量を集める。
現在、DRアグリゲーション市場が最
主な顧客 大規模需要家
SiteControls等
大規模需要家、および中小規
模需要家(特に多店舗型需要
家)
ピークカット、容量市場、アン
対応市場 ピークカット、容量市場等 シラリーサービス市場(周波
数制御市場、予備力市場等)
も先行する米国では、DRアグリゲータ
対応可能な 数十分~数時間
反応時間
数秒~数分
は一般家庭と業務産業需要家の双方に
対応可能な
需要抑制の 低
発生頻度
低~高
対してアプローチし、系統運用機関・
01
3
DRアグリゲーション市場
の動向と今後
③DRアグリゲーション市場における事
業機会
02
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