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地球温暖化問題の科学 と総合的対応の試案

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地球温暖化問題の科学 と総合的対応の試案
地球温暖化問題を考える
2010年11月5日
地球温暖化問題の科学
と総合的対応の試案
独立行政法人海洋研究開発機構
松野 太郎
1
講演のアウトライン
I.
地球温暖化の理論と「懐疑論」の問題点
II.
気候変化の現状と予測
IPCC第4次報告書
地球シミュレータを使った日本での予測研究
III. CO2排出削減と安定化について
2
I. 地球温暖化の理論的基礎
3
太陽放射と地球放射のスペクトルと大気層の吸収率
太陽放射
地球放射
255K
遠赤外
可視光
完全吸収
透明
全大気層の吸収率
4
温室効果

もし大気がなければ
-18℃



大気層は日射(可視
光)に対して透明
熱放射(赤外線)に対
して不透明
大気(温室効果)のお
かげで33℃高温に
-18℃
30℃
-18℃
15℃
5
放射対流平衡理論(Manabe and Strickler, 1964)
地球大気の温度分布は何故このようになっているか?
気象学の古典的問題に対する最初のそして決定的理論
6
放射・対流平衡における各成分の役割
CO2が無かったら地表温度は10℃低い
成層圏の高温はオゾンによる紫外線吸収のため
10℃
7
放射・対流平衡に基づく温暖化理論
Manabe & Wetherald (1967)
CO2濃度を変えた時の平衡温度(地表面)
の変化
CO2濃度
(ppm)
水蒸気量
固定
相対湿度
固定
150
289.80
286.11
300
291.05
288.39
600
292.38
290.75
CO2 2倍により2.4℃高温に
(相対湿度不変と仮定)
8
温室効果ガスの増加
と
気温の変化
9
氷床コア観測と現代の観測による温室効果ガスの変化
10
1850年以降の地表気温の変化
全地球
北半球
南半球
11
都市化(ヒートアイランド)の効果
日本の大都市気温、日本の平均気温、及び日本周辺海域の海面水温の推移
東京
札幌・名古屋・大阪・福岡
日本の平均気温
日本周辺海域の海面水温
日本の平均気温は国内17地点(図3.1.1)の平均。いずれも年平均値で、1901~1930年
の30年平均値からの差。
算出に用いた地点は以下のとおり。北日本(網走、根室、寿都、山形、石巻)、東日本
(伏木、長野、水戸、飯田、銚子)、西日本(境、濱田、彦根、宮崎、多度津)、沖縄・奄美
(名瀬、石垣島)
「日本の気候変動とその影響」(文部科学省、気象庁、環境省)より
作成:気象庁
12
北極域の気温変動は大きい(面積は小)
温度スケールに差あり
北極域(65°N以北)の陸域
熱帯域(20°N-20°S)の気温
13
北半球(北極域)の海氷面積の変化(IPCC AR4による)
青線:北半球3月の気温
黒線:ノルウェー海4月の海氷
赤線:北半球9月の海氷(最小期)
緑線:ロシア北極域8月の海氷(平均からの差)
14
海洋貯熱量の変化
過去60年間海洋は暖かくなっている。
→ 「自然変動」として地表に熱を与えていない
15
人工衛星などの観測による近年の上層大気の気温変化
成層圏では気温低下 → CO2増加による → 太陽光強化を否定
下部成層圏
対流圏中層
対流圏下層
地表
16
CO2の増加による放射強制力
赤色はCO2を2倍にした時の大気上端での放射
もとの放射より3.7Wm-2少なく、その分冷却か減少し大気と地面を加熱する。
これを放射強制力と呼ぶ
17
温室効果ガス増加による加熱(放射強制力)と
日射強度変化の比較
松野、科学(岩波書店)2007年7月号より
18
地球温暖化メカニズム基礎理論のまとめ
「温室効果」は、気体分子の赤外線放射に関する最も基本的物理法則の結果であり、
理論、室内実験、野外観測により確立している。


温室効果」は惑星の地表面高温を生み出し維持している鍵である。
温室効果により、地表温度は大気がなかった場合より33℃高温になっているが、CO2
の温室効果への寄与は20~25%程度に上る。

地球全体を対象とし、物理法則にもとづき大気温度の鉛直分布を扱った Manabe
and Stricklerの理論(1964年)は、現実に観測される大気の温度構造をみごとに説明し
ている。

その延長であるCO2濃度が2倍/半分の場合の大気温度についての Manabe and
Wetheraldの理論(1967年)は同じように確実な基礎に立つものである。

近年の太陽光が強くなっているという論に直接の証拠はない。1979年以降の人工衛
星観測では、30年間に0.01%程度の変化しかしてない。

もしも太陽光が強まったとするなら、成層圏の気温は上昇するはずなのに、現実には
この40年余りはっきり下降傾向を示している。これはCO2増加およびCFCによるO3減少
の効果として説明される。

19
スベンスマルクの主張
雲量と太陽活動相関
「新しい地球学」より
上層雲
中層雲
下層雲
・・・・
20
太陽活動の雲への影響
太陽活動強(弱)→太陽風強(弱)→磁気圏収縮(膨張)
→地球磁場強(弱)→銀河宇宙線侵入難(易)→雲量小(大)
磁気圏
21
銀河宇宙線がイオンを作り雲核となる?
「新しい地球学」より
C) 銀河宇宙線による雲生成のメカニズム
一般に雲粒は、硫酸塩粒子などの微粒子が核となって超微小核としての
エアロゾルが形成され、これに過飽和状態の水蒸気が凝縮してできる凝
結核がさらに10μm程度に成長して作られる。銀河宇宙線による雲生成に
関する有名なメカニズムとして、以下の2つが考えられている。
1)イオンによる凝結核生成モデル:雲生成過程に電荷が含まれると、
核をつくる障壁が低くなり、小さな粒子は凝結して大きくなるため、雲
の生成が促進される。銀河宇宙線が大気中につくるイオンがこの役
目をしていれば、宇宙線強度と雲量が正相関することになる。大気
中の電離効率(=宇宙線強度)をパラメータとする雲生成のモデル
計算では、3nm以上の大きさの凝結核密度は高度3-4km付近で最
大となる。
2)地球大気電流モデル:省略
しかし半径10nm以下の吸湿性粒子は既存エアロゾ
ルとの競争で雲粒に成長困難
22
Svensmarkメカニズムの各ステップでの疑問
宇宙線強度が増大したとして雲量は増えるか?
 H2SO4ガスのクラスター化の促進(Turco, 1998)
気体分子 → 30nm程度までは可能性あり(理論計算)
しかし既存の大粒径エアロゾルとの競争に勝って雲粒になる事は困難
 類似メカニズムでイオンのかわりに有機物を介在させた実験(Berndt,
2005)は成功
 Svensmark自身による宇宙線+放射性物質(γ線)を用いた実験は期待
を否定(Svensmark et al. 2007)
宇宙線強度は長期的に増加しているか?
否。短期的変動(黒点11年サイクル)も含め昨年は史上最低
雲量は減っているか?
23
近年の雲量の変化(IPCC AR4, Dai et al. 2006)
24
懐疑論の誤りの主要ポイント
温暖化の理論的基礎に全く反論していない

CO2の増加は観測事実

分子の赤外放射特性は物理法則の直接的帰結―「温室効果」は惑星大
気の温度を決める
→Manabe and Wetheraldはじめ論文の誤りを指摘すべき
温室効果強化(CO2増による放射強制力=加熱効果)は物理法則により否定で
きない。太陽活動活発化など、他の原因の有無には無関係に仂いている。もし
他の原因で観測された温度が説明可能なら、CO2の分はどうなる?
太陽活動原因論はCO2からの赤外線放射増加(物理法則とその量的見積もり)
を否定することになるが、それにまったく言及していない
→論理的にそうなる事に気付いていない
25
懐疑論の立場・物の見方
温暖化「理論」ではなく温暖化「説」としての扱い
 全球平均温度の上昇(変化曲線)を何で説明するか
 関係のありそうな物理量(例:黒点周期長)との並行性のみ
想定する昇温機構に直結する観測データなし
 「温暖化」を離れ気象、地球に関する別の問題に移行(極めて薄弱な結び
つけ)(例:宇宙線と雲)
異分野科学者が自分たちの物の見方で議論
 固体地球科学
 物理法則から「厳密科学的」に演繹は不可
 超大層大気・宇宙空間科学
 太陽の影響は大きいはず
 関係ある量との変化(グラフの曲線)の類似性は因果関係を示す。(比較
的単純なシステムでは成り立つ)
科学的理解の総体性(多くの事実が相互に矛盾なく説明される)を無視、わか
りやすい個別事象で異論提出 → 一般受け
26
II. 気候変化の現状と予測
気候モデルとは
27
気象(数値天気予報)のモデル
大気・海洋・陸面を3次元の
格子に切る(離散化)
各格子点での物理量の変化を
流体の方程式に従い計算する
U, V, p, T, q, …
各格子で物理量を定義
28
気候システム
「気象」の平均である「気候」には、大気
に加え海洋、陸域の変動が影響する
29
気候モデルで演繹的に求められた海表面温度
海水面温度
(観測値)
気候モデルに
よる計算値
差
30
パラメタリゼーション(対流雲)
これまでの天気予報・気候モデル 格子間隔~100km
温帯低気圧や前線の雲・雨は直接計算
 格子より小さな対流雲(入道雲)
安定度=T(上層)-T(下層)
から対流雲の発生・雨量決定
→パラメタリゼーション
[天気予報]
上空に寒気が入って大気が不安定となり、
所により強い雨が降るでしょう

全球雲解像モデル(将来)

熱帯域の対流雲とその集団を格子を用
いて直接表現 Δ×≦5km
地球シミュレータを用いて初めて可能に
NICAM 2005年に完成 世界唯一
31
パラメタリゼーション

層状性の雲の特性
雲量、水か氷か、雨への成長、etc
→日射の反射
大気境界層(高さ1km程度)内での熱・水の輸送
 海洋モデルにおける海氷生成と動き
 植生を介した地表面からの蒸散
 ------ ------物理法則の大筋と観測をもとにモデル作成者が計算式
を案出→モデルに「個性」が生じる

→結果がばらつく
32
33
IPCC第4次報告書
WGI報告書の要点

観測された変化

温暖化の原因
-20世紀気候変化再現実験

将来の気候の予測
34
気温、海面水位及び北半球積雪面積の変化
気候システムの温暖化には疑う余
地がない。このことは、大気や海
洋の世界平均温度の上昇、雪氷の
広範囲にわたる融解、世界平均海
面水位の上昇が観測されているこ
とから今や明白である。
AR4 SPM-3
気象庁訳 p.6
35
地域的変化・極端現象の変化
 60年代以降南北両半球で中緯度の偏西風強まる
 70年代以降、熱帯・亜熱帯で干魃強まる
 多くの陸域で強い雨の頻度増加
 過去50年間世界各地で寒冷日、降霜日が減少、一
方、猛暑日・熱帯夜が増え熱波が頻発
 70年代以降、北大西洋で強い熱帯低気圧の活動度
増加。他地域は可能性あるもデータ不十分。
36
過去(20世紀)の気候変化の原因
モデル実験による分析
自然および人的要因
20 世紀半ば以降に観測された世界平均気
温の上昇の大部分は、人為起源の温室効果
ガスの観測された増加によってもたらされた
可能性が非常に高い。これは、第3次評価報告
自然要因のみ
書での「過去50 年にわたる、観測された昇温の大
部分が温室効果ガス濃度の上昇によるものであっ
た可能性が高い」との結論を進展させるものである。
37
SRES排出シナリオをもとに計算された温度上昇
38
2100年での
CO2濃度
気温変化(℃)
海水位上昇(m)
モデルによる推定の
可能性の
幅:ただし急速な氷床
ある予測幅
流動の可能性含まず
Bernモデルに
よる
最良の
推定
2000年濃度
一定
370
0.6
0.3-0.9
データ無し
B1シナリオ
540
1.8
1.1-2.9
0.18-0.38
A1Tシナリオ
575
2.4
1.4-3.8
0.20-0.45
B2シナリオ
611
2.4
1.4-3.8
0.20-0.43
A1Bシナリオ
703
2.8
1.7-4.4
0.21-0.48
A2シナリオ
836
3.4
2.0-5.4
0.23-0.51
A1F1シナリオ
958
4.0
2.4-6.4
0.26-0.59
39
地表気温変化の地理的分布
40
季節平均降水量変化の分布
41
地球シミュレータを用いた
日本での温暖化予測研究
― 人・自然・地球共生プロジェクト
「日本モデル」ミッション
(2002-2006年度実施)
42
気候モデルで計算された無降水日、弱雨日、
強雨日の日数の変化(1900-2100年)
43
降水強度クラス別に見た出現頻度の変化(100年間)
51地点平均
Precipitation frequencies(/yr)
≧200mm/day +39%/100yr
≧50mm/day
≧10mm/day
-8.7%/100yr
≧100mm/day +22%/100yr
≧20mm/day
≧1mm/day
Intense
precipitations
: increase
Weak
precipitations
: decrease
-15.4%/100yr
(Fujibe, 2008, JDR)
日本各地での強雨日数、乾燥日数の変化傾向
強雨日(100mm/日以上)
20 %/(100年)
8 %/(100年)
4 %/(100年)
+ 4 %未満
.
大雨の増加は
西南日本で増加
西日本で顕著
乾燥日(1mm/日以下)
10 %/(100年)
4 %/(100年)
2 %/(100年)
+ 2 %未満
.
無降水日数の
日本全域で増加
増加は全国的
(Fujibe, 2006, JMSJ)
熱帯低気圧の経路
DL
EQ
観測
83.7
現在気候
78.3
28%減少
温暖化気候
54.8
46
シミュレーションによる現在気候(左)と温暖化
気候(右)のもとで発生した全熱帯低気圧の中心気圧
- 最大風速関係
温暖化気候では、これまでにない強い熱帯低気圧が発生する
47
21世紀気候変動予測革新プログラム
2007~2011年度
48
AR4(2007年)後の気候変動予測プロジェクトの方向性
地球温暖化・気候変化の進行とそれをめぐる社会の必要に応じ
る、次の(IPCC第5次報告書を含む)ステップ
1. 安定化レベル選定への基礎情報→安定化後を含む
長期気候変化・環境変化予測が必要(複数シナリオ)
AR4では2100年までの予測→一部「つぎはぎ」の安定化実験
しかしWGIIIの新しい安定化向け排出シナリオには対応していない
2. 避けられない気候変化への対応策立案の基礎情報


当面20~30年間はシナリオに余りよらない
→自然変動をも含めた20~30年気候予報(prediction)
詳細な地域的変化、極端現象の変化の予測
3. 2.の予測情報を遅滞なく対応策立案に活用する
49
3主要モデル開発と予測実験(2009年度より追加)
チーム
1
1,2
2
略称
長期
主目的
モデル種別
解像度
大気
海洋
地球システムモデル
280km
異なる安定化シナリオによ
(中層大気・炭素 上端
る300~500年予測
循環・化学)
80km
100km 海洋研究開発機構
国立環境研
東大気候センター
不確定性定量化:簡略モデル多数実験から不確定幅推定
21世紀 2100年までの気候変化
大気・海洋・陸面
結合モデル
2030年までの近未来(シ (気候モデル)
ナリオによる差なし) の詳
近未来 しい予報
140km
100km
50km
20km
不確定性定量化:アンサンブルデータ同化による初期値設定
大気・陸面モデル
(海面温度指定)
3
極端
現象
担当機関
21世紀中葉と末期にお
ける極端な気象(台風な
同上日本周辺
ど)の変化予測
同上西南日本
東大気候センター
国立環境研
海洋研究開発機構
20km
5km
2km
-
気象庁・気象研
海洋研究開発機構
不確定性定量化:複数SST,複数モデルによる比較実験
50
温暖化は止まった?
木本昌秀
東京大学気候システム研究センター
革新プログラム 近未来気候予測チーム
寒冷化?
江守(2009) 日経エコロミー(web)
自然変動予測の必要性と可能性(2007 – 8年の特徴)
自然変動第1モード=PDO正
気候値からの偏差
温暖化トレンドを除いた残差
太平洋の負偏差により、全球平均低め
類似(赤青逆転)
<地球温暖化近未来予測>
PDO-Index
観測 予測
2007年の北太平洋の特徴=PDO負
2005年7月からの予測で
2007年以降のPDO負
初期調整無し予測の誤差
*PDO時系列=温暖化成分からの偏差
PDO負のために、全球平均が長期トレンドよりも低くなった & 予測可能性あり
革新プログラムの特色
ヨーロッパ中心でなくアジア、熱帯での気象変化を重視
熱帯域や日本(東アジア)の夏の対流性降雨を
高解像度モデルで直接計算 → 第一原理に近い
極端現象チーム
NICAMチーム
CReSSチーム
日本周辺
西南日本
全球
台風進路
5km
2km
7km
2km
夏季5カ月
25年分(予定)
(詳細未定)
約30例
対流性降雨(熱帯気象)の変化の信頼度高い予測
世界で唯一
54
21世紀末における河川流量の変化(相対値、%)
IPCC第4次報告 統合報告書(2007)
高緯度で
増加
乾燥域で
減少
低緯度(モンスーン
域など)では変化は
信頼度低い
砂漠域での変化は
不確か
55
超高解像度(5km、2km)地域モデルを20km
メッシュ全球モデルに埋め込み対流雲を
直接計算する先端的試み
革新プログラム極端現象チーム(気象研究所)
今、革新プログラム チーム極端現象
領域グループでは...
全球20kmモデル
準雲解像5kmモデル
より強い降水の表現
雲解像2kmモデル
より精緻で現実に
即した現象の表現
雨量分布の比較
アメダス観測
年平均
20kmメッシュモデル
年平均
AMeDAS 1684.25mm
AGCM
1695.24mm
月降水量の分布の相関
1月
8月
1月
8月
20kmメッシュモデルと5kmメッシュモデル
(対流雲直接計算)の比較
雨量強度別出現頻度
(Wakazuki et al., 2007)
: Obs
Obs
20kmメッシュでは集中した強い雨を捕
えられない。
5kmメッシュなら実際に近い。
AGCM20km
NHM5km
温暖化実験で得られた日本陸上の降水の変化
100
2
1.5
1
1
0
50
100
150
200
250
300
(mm/day)
0.1
現在
温暖化
増分
0.01
弱い雨の頻度は減少
温暖化/現在
10
0.5
0
強い雨の頻度は増加
世界初の全球雲(システム)解像モデル
Non-hydrostatic ICosahedral Atmosphere
Model (NICAM)
地球環境フロンティアの挑戦
61
全球雲解像モデル
これまでの天気予報・気候モデル 格子間隔~100km
温帯低気圧や前線の雲・雨は直接計算

格子より小さな対流雲(入道雲)
安定度T(上層)-T(下層)から対流雲の
発生・雨量決定
→パラメタリゼーション
[天気予報]
上空に寒気が入って大気が不安定となり、
所により強い雨が降るでしょう

全球雲解像モデル

熱帯域の対流雲とその集団を格子を用
いて直接表現 Δ×≦5km
地球シミュレータを用いて初めて可能に
62
熱帯域のクラウドクラスターの構造
温帯低気圧・前線等と同様にモデルで直接計算
63
衛星(MTSAT)画像で見る熱帯の対流と(南半球)中緯度
の温帯低気圧・前線(大規模システム)の対照
21:00 JST
28 JUNE 2009
64
Madden Julian Oscillation
15:00 JST
21 NOV 2009
65
Simulation of MJO as an initial
value approach
15 December 2006 – 15 January 2007
SST weekly observed distribution linearly
interpolated in-between
66
Geo-stationary satellite
(MTSAT-1R) Infrared image
NICAM 3.5km-grid mesh
Simulation
Outgoing Longwave Radiation
(OLR)
67
Twin cyclones
A pair of cyclones on opposite sides of equator over western Indian Ocean.
BONDO
Satellite IR TBB (K)
BONDO
NICAM OLR (W/m2)
68
Isobel : Obs. vs Sim.
Green: OBS(JTWC)
Red: NICAM
Java Island
NICAM simulated the overall lifecycle of
Isobel more than two weeks in advance.
29 Dec
14-days
2 Jan
integration
4 Jan
Category TS
4 Jan
Large-scale environment condition around
the Maritime Continent was characterized by
the onset of MJO (Miura et al. 2007).
Australia
GMS-IR
MJO provided the conditions favorable for
the genesis of Isobel.
NICAM-OLR
MJO
MJO
TS Isobel
TS Isobel
69
地球システム統合モデルによる
長期気候変動予測実験
海洋研究開発機構
東京大学気候システム研究センター
国立環境研究所
70
地球環境システムの概念図
71
これまでの温暖化予測
地球環境システム統合モデル
簡略炭素循環モデル
植生・海洋
吸収
大気残存
(CO2濃度)
気候変化
気候モデル
CO2
排出
気候変化・
炭素循環結合モデル
CO2
排出
植生・海洋
吸収
大気残存
(CO2濃度)
気候変化
(温度・雨量・日射・・・
海流)
72
550ppm安定化実験
実験で与えた二酸化炭素濃度変化 SP550
陸域の吸収(SP550)
人為排出量(SP550)
海洋の吸収(SP550)
73
安定化(濃度一定)をめぐる不思議
 濃度を一定にする(もう増えないようにする)
→ 放出を0にしなければいけない。
 CO2は自然の中で循環している。人間が放出した
CO2の約半分は海や陸域生態系に吸収される。
→ 放出量を1/2にすれば濃度一定となる。
→ 放出量を1/2にすれば吸収量もその半分になり、
濃度増加速度が半分になる。
以上のどれでもない!!
74
安定化のメカニズム
海洋による吸収
75
南極
北極
風神
冷却
冷却
風成循環
塩分
塩分
10〜20年
1000年
熱塩循環
湧昇流
深層水
底層水
76
人為的に排出されたCO2の大気海洋中での流れ
77
人間活動で放出されたCO2の大気海洋系中での移動(3段水槽モデル)
78
総合的対応の試み
- COP15を越えて
79
2009年12月 コペンハーゲンでのCOP15
(京都議定書締約国会議)不成功
当然の結果
 世界(先進国と新興国・途上国)で共有できる目標の欠如
(事前の検討なし)
 気候安定化=GHG排出削減問題の基本
エネルギー使用( CO2排出)の利益
バランス
気候変動による負の影響
エネルギーが必要なのは新興国・途上国
 1990年代以降EU中心に先進国による一方的目標設定
2007、2008年G8サミット宣言
2050年に世界でGHG50%削減
(90年代EUによる昇温2℃以下を受ける)
80
科学との関わりに関する問題点
先進国(EU)は科学による目標設定(一方的)が可能と思い違いした
のではないか?
科学のみで一方的に決まったケース
オゾン層保護条約(ウィーン条約、1985年)
1987年 モントリオール議定書
特定フロン(CFC11, ・・・・)50%削減
→ オゾン数%減少で定常状態と予想(科学による)
1985年 南極オゾンホール出現発見
→ 科学的基礎の見直し
1987年 PSC(極域成層圏雲)粒子による異相(液体と気体)反応確認
89年 科学評価会合
1990年 ロンドン改訂議定書
特定フロンに加えメチルクロロホルム(CH3CCl3)四塩化炭素(CCl4)全廃
ある温度を境とした決定的変化・現象がない場合には明確な基準なし
81
世界で共有できる(CO2排出削減)目標の探索
科学
削減策(シナリオ)
連携が必要
具体的には
(1)新興国・途上国の必要をみたす排出量 → 気候変化の検討
(2)濃度安定化概念の再検討
• 現在のIPCC WGIIIによる将来シナリオはすべて「安定化」を前提
• 目標濃度の低い(カテゴリー I, II)いくつかのシナリオではマイナス排出!
• 2℃安定化(450ppm eq, CO2のみでは400ppm)の場合
RCP 2.6
2100年にほとんどゼロ
RCP 3 PD
2080年頃ゼロ、以後マイナス
2050年にはCO2排出、2000年の1/3(2/3削減!)
82
AR5向けRCPシナリオ(安定化を想定)の問題点と
ゼロ・エミッション シナリオZ650の提案
松野 太郎
丸山 康樹
筒井 純一
(JAMSTEC)
(電力中央研)
(電力中央研)
83
AR5での気候変動予測のためのRCPシナリオ(2100年まで)
太線で示す4段階
放射強制力
CO2排出量
84
昇温2℃以下にするには2050年CO2排出50%減では不十分
RCP2.6の2050年CO2排出は2000年の約1/3!
AR4 WGIIIのまとめ(下図茶色の帯)は不完全
→ 適切な研究なし(当面の増加考えず)
Z520
RCP2.6
Range of Category I
85
RCPシナリオ 2100年以降への延長
W/m2
GHG
濃度
(ppm
CO2eq)
1380
860
650
450
86
濃度安定化 vs ゼロ・エミッション安定化
(
△T
3℃
CO2
ppm
実線)
(
破線)
 濃度一定の前提
→ 遠い未来の温度のため当面の排出小
 0エミッション(2150年頃)達成可なら
→ 当面の排出大、数100年後温度下がる
CO2排出
GtC
500
-20
2℃
400
-10
1℃
300
0
0℃
2000年
2100年
2200年
2300年
87
海水位 (m)
海水位 (m)
海水位
温度上昇 (℃)
CO2濃度
温度上昇 (℃)
温度上昇
CO 2濃度 (ppm)
CO 2排出量(GtC)
Z650 (a) と E450 (b) との長期間(1000年)にわたる特色の比較
CO2 排出量
濃度(ppm)
CO 2濃度
CO 2排出量(GtC)
温度上昇
CO2濃度
海水位
CO2 排出量
88
AR5用RCP排出パス群と提案するZ650の排出パス
Z650
RCP4.5
RCP2.6
RCP3-PD
(Source) RCP Database (version1.0)
IIASA Homepage (http://www.iiasa.ac.at/web-apps/tnt/RcpDb)
提案するZ650シナリオによる21世紀中CO2排出パスを他のRCPシナリオと比べる。
Z650は21世紀中の総排出量が650GtC、RCP2.6は420GtCぐらい。
89
温度上昇ピークが2℃を少し越えるZ650シナリオ
(他のGHGを含む場合)
CO2 排出量
CO2 濃度
Z650
Z650
2016:2%
全温室効果ガス濃度
Z650
全球平均温度上昇
Z650
90
Z650におけるCO2排出パスの社会・経済的意義
(新興国・途上国での排出量を大きくできる)
91
500~1000年にわたる危険要因の検討
海面水位上昇についての検討
ゼロ・エミッションの場合は高温期間が有限(数世紀)
グリンランド氷床融解の既存研究(Abe-Ouchi and Saito,
2007)に基づき概算
→ Z650なら1000年後1m程度(グリンランドのみ)?
92
Global Warming Experiment on Greenland
MIROC mid → IcIES 20km (off line)
IPCC AR4 run result
Input on ice sheet model
Set up
Summer Temp. over
Greenland
Contribution to sea level rise
Volume change
Present Siml.
Steady-states
A1B Tfix
A1B Sfix
93
94
95
メタン・カタストロフ
メタンの人為的削減方法探索
→ CO2削減緩和、同時に将来のカタストロフに備える
一方法の検討
紫外線(195nm)照射によりH2OからOH基生成
局所的に自然状態の100倍のOH濃度を作りCH4分解
96
RCP2.6、RCP4.5シナリオにおける各長寿
命GHGの等価CO2濃度への寄与
放射強制力
W/m2
等価CO2濃度
(ppm)
計60~80ppmCO2に相当
6.0
660
CFC
620
N2 O
4.0
RCP4.5
CH4
540
CFC
CH4
580
500
460
N2 O
RCP2.6
420
2.0
380
CO2
2000
2050
2100
97
O2
20%=6x1018/cm
[2x10-23cm2]
Concentration ratio
15
1
Absorption cross section ratio
1
15
195nm
3
ℎν
107
Photons/cm3s
ℎν
107
Photons/cm3s
O2
O2
O2
O3 Production
2x107/cm 3s
H2O concentration
HO2 Production
107/cm 3s
H2O
1.5~3.0%
=4.5~9x1017/cm3
[3x10-22cm2]
H
OH Production
107/cm 3s
O,O
H
2ppm
CH4
6x1013/cm3
HO2
1x1010/cm3
O3
1.5x1012/cm3
(50ppb)
Total O3 loss
2.0x107/cm 3s
CO2
20℃ 23.4 70%es~1.5%
27℃ 35.7 80%es~3.0%
NET1.0x107/cm 3s
OH
6.7x107
CH3O
2x107/cm 3s
0.5%ℎν
Photons/cm3s
NO
CO
5x1010(1.5ppb)
[5x10-20cm2]
N2 O
0.3ppm
~1x1013/cm3
0.1ppm
3x1012/cm3
Background
Source
=5x105/cm3s
未完
誤りあり
Bonus GHG sink (N2O)
0.5% hv for N2O dissociation
(10xCH4rad.forcing)
→ 5%CH4eq. in rad.forc.
Life time N2O - 100y
CH4 - 10y
98
→ 50% CH4 eq in GWP
CO2ゼロ・エミッションの可能性検討
超々長期的エネルギー見通し
・
(Club of Sugita)
GtOE=GtC
・
20
新興国・途上国
人口増と経済テイクオフ
持続可能な世界?
90億から人口漸減[1.5tOE/人]
10
自然エネルギー+核(分裂+融合)
化石燃料
CCS
CO2放出
CO2放出
純放出
2100
CO2吸収
2200
2300
• CO2の大気への放出を避けられない用途と量
強力・軽便なエネルギーを必要とするもの → 航空機ほか、1.5GtC?
• CCSの限界容量は? 1000GtC?
• CO のゼロ放出と吸収の可能性 → バイオ燃料、化石燃料とバイオCCS
99
まとめ
長期的、総合的視点での検討が必要
将来エネルギー計画
来世紀中に正味でCO2ゼロ・エミッションを目指す
(現在のEU主唱の削減より現実的)
→
新しい主エネルギーと移行プロセス
不可避のCO2放出(essential use)と大気からの吸収(技術と量)
気候変動科学・影響評価
→
ゼロ・エミッション安定化に伴う気候と海水位変化
昇温ピーク時の気候とそのリスク
最終平衡状態での気候と海水位とそのリスク
(2500年に1.5℃、1.5mならよい?)
完新世(Holocene)から人新世(Anthropocene)へ
100
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