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土を知るー生命を育む土ー(河野憲治)

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土を知るー生命を育む土ー(河野憲治)
学問の散歩道 V:H26-9
TSS 文化大学一般教養講座
平成 27 年 3 月 17 日 10:00∼
於 TSS 新館 9 階スタジオ
土を知るー生命を育む土―
河
野
憲
治
(広島大学名誉教授)
はじめに
2013年12月20日の国連総会で,12 月 5 日を世界土壌デーと定め,2015年を
国際土壌年とすることが採択され決議されました.これは国際土壌科学連合(IUSS:
International Union of Soil Sciences)と国際連合食糧農業機関(FAO: Food and
Agriculture Organization of the United Nations)が国際的に土壌の重要性を啓発するた
めに協力して取り組んできたものです.主たる目的は,持続的な食糧生産や地球環境の保全
に土壌が重要な役割を果たしていることを周知徹底することにあります.
そこで,今回の講演では1.土(土壌)とはどんなもの?2.土はどのようにして出来る?
3.土はどんな働きをする?4.土の働きの主役は何?と言った疑問に答える形で土につい
て紹介をすることにいたしました.
TSS 文化大学で講演する著者
1.土(土壌)とはどんなもの?
土は,専門的には土壌と呼びます.
「土壌とは,地球の陸地表層または浅い水の下にあり,
岩石の風化や水,風による堆積作用と生物の活動によりできた有機物と無機物からなる粒状
物質であり,植物をはじめとする生物を養い,物質の保持や循環などの機能を持つ.土は土
壌とほぼ同義であるが,上記の成分や機能に関する条件を欠いても土に含め,惑星や衛星の
表層に存在する粒状物質などをさす.」これは,日本土壌肥料学会における土壌の定義です.
しかし,ここでは地表下わずか 20-30cm の粘土・有機物・微生物を含む,黒っぽくて,やわ
らかいもの、としてイメージしてみて下さい.
写真は,広島県安芸太田町温井ダム周辺林地ですが,付け替え道路切土面の白っぽい部分
は風化した花崗岩,地表の黒っぽい部分が土壌です.そこに生育する樹齢約 50 年のコナラ
の木の根を掘り起こしたものです.地表下わずか 30cm 程度の土壌に 90%以上の根が分布し,
生育に必要な養分の大部分はそこで賄われています.
「黒っぽくてやわらかい」など身近な土を表現する場合によく用いられるのが土の色と手
触りです.土の色や手触りは何で決まるのでしょうか.土色の原因となる物質は腐植,鉄化
合物,マンガン化合物,水分などが挙げられますが,主として腐植と鉄化合物です.黒っぽ
いのは腐植の色,赤っぽいのは酸化鉄,緑・青っぽいのは二価鉄の色です.
「やわらかい」などの土の感触は,砂,シルト,粘土の割合と固相,液相,気相の割合(土
壌三相と言います)で決まります.土のふかふか感は空気です.ちなみに土壌分野では,直
径 2mm 以下が土壌の対象で,2 ∼ 0.2mm を粗砂,0.2 ∼ 0.02mm を細砂,0.02 ∼ 0.002mm
をシルト,0.002mm 以下を粘土と呼びます.そして砂・シルト・粘土の割合で砂土,砂壌土,
壌土,埴壌土,埴土などに区分しています.
2
2.土は
はどのよう
うにして出
出来る?(土の生成
成)
岩を細か
かく砕けば
ば土壌になる
る訳ではあ
ありません.土壌の生成
成には時間
間のかかる変
変身が必要
要
なのです.まず,1)岩石の風
風化:岩石が
が砂や粘土のような細
細粒の物質(レゴリス
ス)となり,
さらに岩石
石をつくっていた鉱物
物から構成
成元素の流出
出や再結晶
晶などにより
り,新たな鉱物「粘土
土
鉱物」が生
生成します.これには
は数千から数
数百万年を
を要します.そして2
2)植物の作
作用:植物
物
根の脱落や
や根からの分泌物など
どの有機物
物が供給され
れ,3)微生
生物の作用
用:微生物が
が有機物を
を
分解して土
土壌特有の物質である
る,「腐植」が数千∼
∼数百年かけ
けて生成・蓄積します
す.さらに
に
数百∼数十
十年かけて,微生物の
の働きで粘土
土と腐植が
がくっつき粘
粘土−腐植
植複合化合物
物を形成し
し
土壌団粒が
が発達し,そして種々
そ
々の土壌化作
作用を経て
て様々な機能
能を有する
る土壌が形成
成されてい
い
きます.
すなわち
ち,土は,ながーい歳
歳月をかけ
けて出来た多
多機能物質
質であり,貴
貴重な資源
源なのです.
.
大切なこと
とは,粘土鉱
鉱物や腐植
植と言った土壌特有の
の物質が新たに出来る
ることです
す.また,レ
レ
ゴリスが土
土壌に変化
化するために
には生物の働きが不可
可欠であることから,
「地球は土
土壌の惑星」
」
と言われて
ています.
図は地表
表の黒っぽ
ぽい部分であ
ある表土の土壌団粒を
を模式化し
したものです
す.
個々の団粒
粒の中には
は粘土,有機
機物の他,水,
空気,土壌
壌微生物,土壌動物が
が含まれ,土壌
団粒が形成
成されると,その中に
に雨水を蓄える
ことが出来
来るし,余剰
剰の雨水は
は団粒間を通っ
て流れます
す.つまり,保水性が
が良く,透水性
も良い土壌
壌になります.こうし
して,土壌が水
を含み,通
通気しているからこそ
そ生物を養える
のです.
これまで
でに登場し
した聞き慣
慣れない単 語に
ついてもう
う少し説明いたします
す.
2‐1
粘
粘土鉱物の
生成
粘土鉱物
物は土壌中の造岩鉱物
物(一次鉱
鉱物)が風
化作用を受
受けて二次
次的に生成さ
されるもので,二次
鉱物とも呼
呼びます.粘土鉱物の
の多くは層状ケイ酸
塩鉱物で,その基本
本構造(最小
小構成単位
位)は,ケ
イ素(Si)を4つの
の酸素(O)がとり囲んだシリ
3
カ四面体と
とアルミニウム(Al)を 6 個の
の O または OH 基が囲ん
んだアルミ
ミナ八面体で
です。これ
れ
らがシート
ト状に連結
結した,四面
面体シートと八面体シ
シートが重
重なって,11 : 1 型粘土
土鉱物,2 :
1 型粘土鉱
鉱物などが生
生成します
す.
ちなみに
に,風化作用
用とは,自
自然界の物理
理的,化学
学的作用によ
よって岩石
石が細分化される作用
用
のことで,温熱,空気
気,水,生
生物などによ
よる力が岩
岩石に加わり,岩石を
を崩壊させる
る物理的風
風
化作用と環
環境中の酸
酸素ガス,炭
炭酸ガス,水
水などによ
よって岩石が
が溶解した
たり,分解して細分化
化
される化学
学的風化作
作用がありま
ます.
地殻と土
土壌の元素
素組成は大
大きくは
異なりませ
せんが,風化
化作用の過
過程で造
岩鉱物に含
含まれる カ
カルシウム(Ca),
ナトリウム
ム(Na),カ
カリウム(KK)など
は溶出・溶
溶脱して減
減少し,Si, Al, 鉄
(Fe)など
どの元素は相
相対的にや
やや増加
します.
土は主に
に O, Si, Al,
A Fe で出
出来てい
て,これら
らが土壌の元素組成の
の 90%以
上を占めま
ます.
2−2
腐
腐植の生成
成
地表面に
に堆積した落葉や地中
中の枯死根
根,生物遺体
体等はミミズ
ズや昆虫な
などによって
て土壌母材
材
と混合した
たり,微生物
物によって
て分解されます.そし
して微生物分
分解産物は
は,さらに化
化学反応に
に
より重縮合
合したり変
変成して,腐
腐植(暗色で
で高分子化
化合物群)と
と呼ばれる
る土壌に特有
有な難分解
解
性物質が生
生成します
す.
2−3
土
土壌微生物
物
土壌中の微
微生物は,細菌,放線
線菌,糸状
状菌,原生動
動物の 4 種類に大別さ
種
されます.
1)細菌(bacteria)
)は,単細
細胞で堅い細
細胞壁を有
有する原核生
生物で,細
細胞分裂によ
より増殖し
し
ます.基本
本形態は球
球状,桿状、らせん状
状で,それぞ
ぞれ球菌,桿菌、らせ
せん菌と呼
呼ばれます.
.
グラム陽性
性細菌とグ
グラム陰性細
細菌に大別
別され,肥沃
沃な表土に
には土壌 1 g あたり数
数十億の細
細
菌が生息し
します.有機
機物の分解
解,窒素固定
定や硝化,脱窒作用さ
脱
さらに窒素(N),イオウ
ウ(S),鉄,
マンガン(Mn)など無
無機元素の酸
酸化・還元反
反応に関与
与し,土壌の
の物質循環
環の重要な担
担い手とな
な
っています
す.
2)放線菌
菌(actinoomycetes)は,菌糸状
状の形態を
をとる細菌の
の総称で,グラム陽性
性細菌と糸
糸
4
状菌の中間
間的な性質
質を持つもの
ので,多様な有機物を
を栄養源にして生育し
し,キチンや
やセルロー
ー
スなどの高
高分子有機
機物の分解能
能力や抗生
生物質を生産
産する能力
力を有し,土
土壌伝染性病
病原菌の制
制
御に役立っ
っているものと考えら
られています.
3)糸状菌
菌(fungi)は,真菌
菌門のうち栄
栄養繁殖期
期に菌糸状を
をなす接合
合菌類,子嚢
嚢菌類,担
担
子菌類など
どの総称で
で,細胞核や
やミトコンドリアを有
有する真核生物です.肥沃な土壌
壌では菌糸
糸
長が土壌 1 g あたり数 100m にも達します
に
す.細菌に
に比べて耐酸
酸性が強く,特に酸性
性土壌中で
で
分解において重要な役
役割を担っています.また,土壌
壌中におけ
けるリグニン
ンの分解は
は
の有機物分
おもに糸状
状菌によってなされ,森林土壌表層の落葉
葉落枝(リター)の分
分解も主に糸
糸状菌によ
よ
って行われ
れます.
4)原生動
動物(prottozoa)は,単細胞動
動物の総称で
で,真核生
生物です.土
土壌中の原
原生動物は,
,
アメーバ,繊毛虫,鞭
鞭毛虫など
どからなり,
,多くは動
動植物遺体や
や各種微生
生物を食べて
て生きてい
い
ます.
2−4
土
土壌化作用
土壌化作
作用とは,土壌の母材
土
材に働きかけ
けて土
壌断面に特
特徴を与え,土壌特有
有の構造と機
機能と
を与える作
作用のことで,土壌母
母材は土壌化
化作用
を経て初め
めて土壌となります.具体的には
は,生
物が関与す
する腐植集
集積作用,溶脱作用,
溶
集
集積作
用などで層
層位の分化
化を生じます
す.
写真の土壌
壌断面のように,地表
表から黒色,
,黄赤
色,黄色と
と地表面に平行な層が
が認められ
れます.
これを土壌
壌層位とよび上から A 層,B 層,
,C 層と呼
呼びます.
集積作用
1)腐植集
腐植の集積
積量は,生
生物遺体など
どの材料供
供給速
度と有機物
物や腐植の分解速度に
に依存しますが,
腐植含量が
が特に高い土壌として
て,a)春の
の温暖
多雨条件下
下で有機物
物供給量が増
増大するが
が,夏
期の乾燥,秋冬期の低温により
り微生物の
の有機
抑えられ,腐植が集積
積しやすい
いチェ
物分解が抑
ルノーゼム
ム,b)有機
機物や生成し
した腐植物
物質が
火山灰土壌
壌に豊富なアルミニウ
ウムと結合
合し,
5
微生物分解
解への抵抗
抗性が大きい
い難分解性
性有機物に変
変化する黒
黒ボク土,c))湛水により大気から
ら
の酸素ガス
ス供給が絶
絶たれ,有機
機物の酸化分
分解が抑制
制されて生成
成する泥炭
炭土が知られ
れています
す.
泥炭土は日
日本では北
北海道の一部
部に見られ
れますが,ウ
ウイスキー
ーの香り付け
けにも用い
いられます.
.
2)溶脱作
作用
降水量が
が多い地域
域の土壌では
は,土壌を通
通過する水
水によって土壌中の物
物質が溶解したり,懸
懸
濁して下層
層へ移動す
することを溶
溶脱作用(leaching)と呼びます
す.移動し
した物質は B 層(集積
積
層)へ蓄積
積したり,さらに下層
層の C 層以下
へ流去しま
ます.この溶
溶脱作用の
の結果,土壌
壌
断面の水平
平方向に連
連続した土壌
壌層(層位
位)
が形成され
れます.溶脱
脱作用は降
降水量が多い
地域に生じ
じますが,一
一般に降水
水量の多い高
緯度地帯で
ではポドゾル化作用,温帯では酸
酸
性化作用,熱帯ではラテライト
ト化作用が卓
卓
越し,亜寒
寒帯地域のポドソル性
性土,温帯地
域の塩基溶
溶脱型酸性
性土(例:マ
マサ土),熱
熱
帯・亜熱帯
帯地域の赤色土(例:
:鉄アルミナ
質土)など
どが発達します
3)集積作
作用
水の土壌
壌表層への
の移動や海水
水などから
らの塩類の供
供給により
り土壌中に
に塩類が集積
積する場合
合
があります
すが,土壌中
中に塩類を
を蓄積させる
る作用を塩
塩類集積作用
用あるいは
は塩類化作用
用といいま
ま
す.乾燥地
地帯では一般に Na 塩類が
塩
Ca や Mg 塩類よ
よりも多量に
に集積する
る場合が多く、半乾燥
燥
や乾燥地帯
帯では炭酸
酸カルシウ ムが集積す
する
場合があり
り、この作用
用を石灰集
集積作用と呼
呼び
ます。
4)グライ
イ化作用
水田のよ
ような湛水条件下では
は,土壌の還
還元
化が進み,土壌中の鉄
鉄の一部は
は還元されて
て青
灰色の2価
価鉄イオンと
として存在
在し,
灰色や緑灰
土色も青灰
灰色を呈します.この
のような土壌
壌を
グライ土((Gley soil)と呼び,この土壌を
を生
6
成する作用
用をグライ化作用と呼
呼びます.
こうした
た土壌化作
作用の結果,性状が異なる多種の
の土壌が生成され,ま
また,土壌化
化作用によ
よ
り土壌母材
材には無か
かった土層の
の分化が生
生じ,二次的
的な構造が形
形成され,土壌特有の
の機能を持
持
つようにな
なります.
3.土は
はどんな働
働きをする
る?
土壌は,1)植物の支持と植物
物への酸素・水分・養
養分の供給
化に対する緩衝作用
3)土壌 pH などの変化
4)土壌微
微生物の住家
家となり,炭
炭素(C), 窒素(N),
リン(P),イオウ(
(S)などの
の物質循環の
の要
質の分解
7)水や空
空気の浄化
2)土壌中
中の養分の吸
吸着・保持
持
5)水
水の涵養(天
天然のダム
ム)6)農薬な
など有害物
物
8)水の蒸
蒸散による温
温度調節な
など実に様々
々な働きを
をします.そ
かを紹介します.
のいくつか
1)植物生
生産機能
土は,植
植物の生育に必要な条
条件である,光,水,空気,温度
度,養分,有害物質が
が無いこと
と
の内,光以
以外の条件
件を全て整え
え,植物を育むことが
が出来ます
す.
2)土壌微
微生物の住
住家
土壌は,a)水分の
の多い下層土
土では地温
温の日較差は小さく,温熱環境
境が安定して
ている.b))
土壌空気は
は水蒸気で
で飽和されて
ており,乾燥
燥に弱い多
多くの微生物
物にとって
て好適な水分
分環境とな
な
っている. c)化学的
的変化に対す
する緩衝能
能が大きいため,土壌
壌 pH などの
の化学的環境
境が変化し
し
有機物が多
多くの土壌微
微生物のエ
エネルギー源
源や養分源
源となる.e
e)微生物に
に
にくい.d))土壌中の有
とって有害
害な太陽光
光線が遮断さ
される.な
などで,土壌
壌微生物の
の住家として
て最適な環
環境です.
3)C,
N,,
P,
S などの物質
な
質循環の要
ここでは
は N の循環
環について
て紹介しま
す.動植物
物から供給された有機
機物(有機
体 N)は土
土壌中の大部
部分の有機
機栄養微生
物によって
て無機化さ
されアンモ ニア態 N
に変化し,さらに亜硝
硝酸菌や硝
硝酸菌によ
って硝酸態
態 N に変化
化し植物に
に吸収され
ます.硝酸
酸態 N の一部
部は雨水と共に流出
したり,脱窒細菌によ
脱
よって窒素
素ガス(N2O,
7
N2)となり
り大気中に放
放出されま
ます.一方で,根粒菌
菌などの窒素固定細菌
菌が大気中の窒素(N2)
を有機態 N に固定します.また
た,多くの有
有機栄養微
微生物は無機
機 N を吸収
収し有機態 N へと同化
化
します.こ
これら土壌中における
る N の形態変化は全て
て土壌微生
生物によって
て行われ,N の物質循
循
環の要とな
なっています.
4)水や空
空気の浄化
化
土壌層を
を通過させ
せることによ
よって,大
大気中の NOx
x,浮遊粒子
子,一酸化
化炭素などの
の汚染物質
質
は 90%以上
上除去できる
ること,ま
また,汚水中
中の BOD, COD, リンの 60%以上
上,農薬,環
環境ホルモ
モ
ン活性物質
質の 95%以上
上を除去で
できることが
が知られて
ています.
4.土の
の働きの主
主役は何?
?
土の働
働きの主役
役は,主とし
して粘土鉱
鉱物,有機物
物(腐植),土壌微生
生物です.
1)粘土鉱
鉱物の働き
土壌粘土
土鉱物は粒
粒子表面の
の正負の荷
荷電
(同形置換
換による荷
荷電,水酸基
基のプロト
トン
の解離や付
付加による荷電)を介
介して,有機
機,
無機の陽,陰イオン
ンの吸着,固
固定,交換
換,
反応の触媒
媒などを行
行います.大
大切なのは
は荷
電を帯びて
ていることです.一般
般に負に帯
帯電
していて,Ca, Mg, K などの植物
物に必要な
な養
分(陽イオ
オン)を保
保持し,供給
給すること
とが
出来るので
です.
8
有機物(腐
腐植)の働き
き
2)土壌有
有機物(腐植)は,以下のよ
ように土壌
壌の物理性,化学性お
および生物性
性を改善し
します.
の効果
a) 土壌の物理性への
糸状菌の菌糸や土壌
壌微生物が
が分泌する多
多糖類およ
よび腐植物質
質などは土
土壌の団粒形
形成を促進
進
し,土壌の
の通気性,排水性,保
保水性を改
改善します.
b) 土壌の化学性への
の効果
土壌有機
機物は養分
分を含み,分
分解に伴って徐々に養
養分を供給し,腐植物
物質は負荷電
電をもった
た
官能基,疎
疎水性構造などを有し
し,養分保持
持能(陽イ
イオン交換容
容量)およ
よび緩衝能を
を向上させ
せ
ます.また
た,有害な金属や有機
機化合物と結合し不活
活性化します.
c) 土壌の生物性への
の効果
栄養源と
として土壌
壌微生物の生
生育を促進
進し,植物へ
への養分の
の供給や物質
質循環に貢
貢献します.
.
3)土壌微
微生物の働
働き
土壌微生
生物は,有機
機物の分解
解・無機化や
や,硝化・脱
脱窒など窒素
素の形態変
変化に関わる
ると共に,
窒素,リン
ンなどの無機
機養分を微
微生物体内(微生物バ
バイオマス)
)に貯蔵し
して必要に応
応じて供給
給
することで
で,養分の貯
貯蔵・供給
給源として働
働きます.そして団粒
粒構造の形
形成を通じて
て土壌物理
理
性の改善,さらに農薬
薬などの有
有害物質や水,大気汚
汚染物質の分
分解を司り
り,大気・汚
汚水浄化な
な
どの中心的
的役割を担
担います.
土の中に
には,わず
ずか 1g の土
土壌に細菌や
や糸状菌が
が 1∼10 億個
個生息し,その重量は
は畑 10a 当
たりで 7000kg に相当します.土
土壌中の微生
生物数では
はなく,土壌
壌微生物菌
菌体総量ある
るいは微生
生
物体に含ま
まれる元素
素の現存量
量を
土壌微生物
物バイオマスと呼び,土
壌微生物総
総量の定量
量的指標や,作
物の可給態
態養分量の
の指標など
どと
して用いら
られます.例えば,11ha
当たりの微
微生物バイオマス N, P
量は各々約
約 110kg, 80kg に相当
当し,
トウモロコ
コシの生育
育に必要な
な量
150kgN, 25kgP の 700%以上に匹
匹敵
への養分供給
給源として
て大
し,植物へ
きく寄与し
します.
9
最後に,土壌が生成するには長い年月を要しますが,適切な利用・管理がなされなければ
非常に短期間で失われてしまいます.土壌は決して無限な資源ではなく,土壌の植物生産や
環境保全に果たす役割を良く理解し,土壌資源を有効に利用し,かつ適切に保全することが
必要と思います.土壌についての理解を深める一助として頂ければ幸です.
参考資料
土壌サイエンス入門
三枝正彦
編(文永堂出版)
最新土壌学
久馬一剛
編
(朝倉書店)
土壌生化学
木村真人
他著(朝倉書店)
日本の土壌
岡崎正規
他著(朝倉書店)
(本稿は 2015 年 3 月 17 日に行われた TSS 文化大学における講演の概要です)
10
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