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講義資料 - 経済産業省・資源エネルギー庁
札幌エルプラザホール 2013年2月10日 共に語ろう 高レベル放射性廃棄物 ~もう、無関心ではいられない~ 高レベル放射性廃棄物の各国の 最終処分計画の現状 -スイス、フランス、フインランドの事例から- 北海道大学 名誉教授 杉山 憲一郎 エネルギーベストミックスと地球環境 豊かな暮らしには大量のエネルギーが必要:地球規模での異 常気象(気候変動)が発生し、大型台風、大雪、豪雨、渇水 (飲料水不足・農産物発育不良)、熱波のため経済損失、死 亡者が増えている。 世界の1次エネルギーの約90%が化石燃料で二酸化炭素と (水蒸気)を大量に放出し異常気象(気候変動)に大きく寄与 している。 再生可能エネルギーの拡大は進めるべきだが、量の確保、経 済性、安定性でまだまだ課題がある。 原子力発電は大規模な発電が可能で二酸化炭素を放出しな いが、小量の高レベル放射性廃棄物を長期間かけて処分し なければならない。 使用済み燃料の再処理による高レベル放射性廃棄 物(ガラス固化体として地層処分)の分離 日本では使用済み燃料の再処理により、 どのくらいの数のガラス固化体が出てくるのか? これまでの原子力発電による予想発生数: 約24,100本(2010末) 海外で再処理され六ヶ所村の施設で貯蔵保管中: 1,414本(2012年3月末) 国内分125本・東海分247本を含むと、合計1786本 これからの発生を含めた累積合計: 約40,000本(2021年頃) 地層処分に必要な地下面積: 約3.5 km x 1.5km ・火山の影響域は限られている(第4紀火山の中心から半径15kmの範 囲を除く)。 ・地震の影響は地層内では限られている(関東大震災:関東ローム層 4 の厚い地域で被害、火災による被害が大)。 高レベル放射性廃棄物を溶解凝固させた ガラス固化体の地層処分のイメージ 高レベル放射性廃棄物の放射能の減衰時間 日本・フランス・アメリカの共同研究:Na冷却高速炉による核種改変技術の開発 6 高レベル放射性廃棄物を含む ガラス固化体の作り方 「原子力・エネルギー」図面集http//www.fepc.or.jp ガラスは放射性物質を良く溶かし 安定した物質 日本原燃HP http://www.jnfl.co.jp/ 地表から300メートル 以深の安定した地層 内に安定したガラス 固化体として処分 (1万年以上) ・地層内は酸素が 尐ないため金属 容器の腐食は進ま ない。 ・緩衝材の粘土 層は水を通し にくい。 原子力発電環境整備機構HP http://www.numo.or.jp/ 西川津遺跡(島根県松江市)の古代遺跡の例 松江市 宍道湖 Google map 松江港 島根県教育庁埋蔵文化財調査センターHP http://www.pref.shimane.lg.jp/maizobunkazai/ 島根県教育庁埋蔵文化財調査センターHP http://www.pref.shimane.lg.jp/maizobunkazai/ 永世中立国スイスの 電気エネルギーと処分計画 水力発電開発の頭打ち 1950年代末から1960年代にかけて、水力発電開発の適地 が頭打ちとなり、水力以外の大型電源導入の検討が開始さ れた。現在、総発電電力量の50%が水力発電による。 大型火力発電の導入抑制 周囲が大国で化石燃料の輸送ができないことが起こり得ることと、 外貨を稼ぐ観光立国として大気汚染等環境問題への配慮から、 大型火力発電の導入を抑制している。 原子力発電の導入 原子力は水力と並んで重要なエネルギー源と位置付けられ、現 在は原子炉5基(335.2万kW、総発電電力量の45%)が稼動して いる。原子力発電に着手したのは、工業技術水準が高かったこ とに加えて、永世中立国の根幹である確実な防衛・確実なエネ 13 ルギー確保を含めた強い平和立国意識による。 スイス住民の選択:70年代石油危機後の 自治体住民と連邦研究所 Klein Dottingen (PSI)の専門家との対話 による原子力地域 Beznau NPP with Filtered Vent 熱供給の実現 11 Communities in Switzerland Utilizing Nuclear District Heating “REFUNA” after Oil Crisis PSI Villigen Inhabitants : about 20,000 Main Pipe Lines : 35km REFUNAパンフレット 14 ベツナウ原子力発電所を利用した地域熱供給: 約2万人のユーザーの8割が一般住宅 暖房用 旧型熱交換器 給湯タンク ベツナウ原子力発電所パンフレット、Refuna株式会社HP他 自動調節器 15 高レベル廃棄物地層処分候補地の一つは、ベツナウ原子 力発電所からの熱供給地域(赤下線の地域)を含んでいる。 nagraパンフレット 16 スイス: 処分候補地の地表 の利用形態と多数 のコミュニティー (人々が生活する 地域社会) および処分層(粘土 岩層)を含む 地層図 nagraパンフレット 17 スイス・モンテリ地下研究所での検証試験 スイスからフランスに抜ける高速トンネルを利用 1億年以上前に海底であった 粘土岩層とアンモナイトの化石 Mont Terri Rock Laboratory パンフレット スイス、フランス、ベルギーの処分場計画 のコミニケーション:処分場予定地層の化石が残る 粘土岩石小片で学校教育から出来る。 地下研の粘土石片 元海底であった粘土岩層は水を通さないため、アンモナイト などの珍しい化石が発見される 。→学校教育の「地層の単 元」で化石が出来る原理を学ぶことができれば、高レベル放 19 射性廃棄物処分の原理が理解できる。 自給率8%のフランス 再処理ガラス固化体地層処分場計画 2025年操業予定 2010年視察時撮影 ビュール地下研究所 高レベル放射性廃棄物処予定地層(粘土岩層)での 検証用坑道掘削作業現場: 1万年以上かかる処分の原理が理解でき、現場をビデオ見 20 学し納得すれば、処分場計画に反対する理由はなくなる。 2010年視察時撮影 高レベル放射性廃棄物処分予定地層内に準備された ガラス固化体の定置法を実証する試験区域 模擬高レベルガラス固化体定置試験用パイプ 地上展示場の ガラス固化体自動押し込みロボット 模擬ガラス固化体 自走ガラス固化体 押込みロボット 模擬横置ガラス固化体定置パイプ 2010年視察時撮影 22 フィンランド最終処分場計画 フィンランドは、ロシアか らのエネルギー輸入量を 適切なレベルに維持する 政策。 日本の面積の8割 諸外国における高レベル放射性廃棄物の処分について、資源エネルギー庁、2010年2月 23 フィンランド: 既存原子力発電所 スウェーデン 製2基、 ロシア製 2 基、建設中 1 基、新設予定 2基 北緯60度以上、人口は530万人(北海道とほぼ同じ) 24 低・中廃棄物地層処分場 TVO社パンフレット 低レベル廃棄物の減量処分 TVO社パンフレット 中低レベル廃棄物処分の具体的なイメージ TVO社パンフレット 27 フインランドの結晶岩 層処分場のイメージ: 坑道掘削による検証 作業を終了、建設許可 申請(12年12月28日)、 2020年操業予定 (直接処分) 28 参考:気候変動(温暖化)に影響を与える 各国一人当たりの二酸化炭素排出量 スウェーデン : 5.1 フランス : 5.5 スイス : 5.6 北海道 : 7.4 デンマーク : 8.5 日本 : 9.0 ドイツ : 9.3 フィンランド : 11.7 米国 : 17.3 トン(原子力 47%,脱原子力撤回) トン(原子力 75%,新規建設中) トン(原子力42%,脱原子力宣言) トン (原子力29%, 停止中) トン(原子力 0 %, 北海油田先細り) トン(原子力29%, 2基以外停止中) トン(原子力23%, 脱原子力宣言) トン(原子力28% ,新規建設中) トン (原子力20%, 新規建設中) IEA, Key World Energy Statistics 2012、他 29 電源別発電コストの比較から原子力の位置付けが分かる (先進国の研究成果をIAEAがまとめた) IAEAパンフレット(2006) 30 電源別外部(健康・環境)コストの比較から福 島事故の位置付けが分かる IAEAパンフレット(2006) 31