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3調査内容及び調査結果
3. 調査内容及び調査結果 3.1 道内の⽯炭資源に関する資料等の保存状況調査 本調査は、道内産炭地の⾃治体、⽯炭企業、関係機関(試験研究機関、図書館、資料館 など)に保管されている「道内⽯炭資源の賦存状況や資源量の推定に活⽤可能な資料」に ついて調査・抽出し、保管場所、資料名、資料の内容、保管状況(公開の可否)等の情報 を簡易データベースに整理するものである。さらに整理された情報のうち、試すい柱状図 や地質図などの将来未利⽤⽯炭資源の開発に際して有効活⽤が期待できる地質関係資料の データベース化の具体的な内容についても検討・提案する。 3.1.1 調査概要 調査対象は、道内産炭地⾃治体 19 団体、⽯炭企業 8 社のほか博物館 3 館に対して⽯炭資 料に関するアンケート調査を⾏い、該当する資料を保管している団体企業から資料⽬録等 を収集、その資料の内容について必要に応じて現地調査を⾏った。さらに道⽴図書館、北 海道⽴総合研究機構地質研究所などに保管されている⽯炭資源に関係する⽂献、試すい報 告書などの資料調査も合わせて実施した。 各団体企業が保管している炭鉱関係資料から、 「道内⽯炭資源の賦存状況や資源量の推定 に活⽤可能な資料」を保管組織毎に、表 3-1-1 データシート構成表に基づいて抽出し、可 能な範囲で情報を補⾜し、絞込み検索可能な簡易データベースを作成した。 また抽出した資料は、その特性から表 3-1-2 のデータ分類基準に沿って仕分けした。 表 3-1-1 データシート構成表 ⼤分類 ⼩分類 地質図 断⾯図 柱状図 地質 炭鉱 ⽂献・書籍 炭層柱状図 その他図⾯ 報告書他 資料形態 炭⽥ 地域 報⽂ 図表 天北 留萌 北空知 中空知 書籍 ⽯狩 南空知 その他 釧路 ⽻幌町 その他 芦別市 歌志内市 炭量・炭質 ⾚平市 その他資料 上砂川市 坑内図 その他図⾯ 美唄市 三笠市 炭量・炭質 栗⼭町 鉱区関係 ⼣張市 その他資料 釧路市 炭鉱名 地質調査 その他資料 18 タイトル 発⾏者 作成⽇ 保管組織 識別番号 表 3-1-2 データ分類基準 大分類 小分類 地質図 断面図 柱状図 炭層柱状図 地質 その他図面 報告書他 炭量・炭質 その他資料 坑内図 その他図面 炭量・炭質 炭鉱 鉱区関係 その他資料 地質文献 文献・書籍 その他資料 具体的内容 地質図 断面図、○○断面図(地質、試すい、柱状、炭層、断層) 試すい柱状図、柱状図、○○柱状図(地質、対比) 炭層柱状図、炭層対比柱状図、炭柱図など 炭層等深線図、試すい関係図、試すい位置図、ルートマップ、炭層調査図、 露頭調査図、地質関係図、位置図 その他複数の図面が混在している資料 試すい報告書、地質調査報告書、石炭資源調査報告書、試すい日報 炭量計算図 地質資料、試すい関係資料、開発計画調査資料 坑内図、坑内現況図、坑内実測図、坑道図、古洞図、保安図 採掘計画図、採掘計画に関する図面、炭鉱説明添付図 炭量計算表、鉱量算出表、炭量計算関連資料、埋蔵炭量炭質統計調査表 鉱区台帳、鉱区位置図、鉱区図、区域図、鉱床図 鉱区出願登録関係(石炭、可燃性天然ガス試掘権・採掘権) 新鉱区開発計画添付資料 採掘計画図、採掘計画に関する図面、炭鉱説明添付図 石炭資源に関する書籍、論文、調査報文 炭鉱史、炭鉱概況、統計資料 3.1.2 調査結果 アンケート結果(表 3-1-3)から、⽯炭関係資料を保管している組織団体は調査対象 30 団体のうち⾃治体が 6 団体、博物館等 2 施設、⽯炭企業7社であった。その後電話での聞 取り調査、現地調査を⾏った結果、「道内⽯炭資源の賦存状況や資源量の推定に活⽤可能な 資料」を保管していたのは、⾃治体では芦別市、⾚平市、美唄市、⼣張市の 4 市だけであ った。博物館等では、開拓記念館と釧路市博物館が保管していたが、釧路市博物館保管の 雄別炭鉱の地質資料は現在未整理の状態であったため調査対象から除外した。⽯炭企業が 保管している資料は、数が少なくかつそのほとんどが社外秘扱いのもので内容を確認する ことができなかったが、釧路コールマインからは別途提出された資料⽬録から、海上試す い柱状図など 13 件(公開不可)を対象資料として抽出した。アンケート調査以外では、北 海道⽴総合研究機構地質研究所に保管されている NEDO が実施した道内⽯炭資源調査関係 資料と道⽴図書館に保管されている⽯炭資源に関する書籍、⽂献を対象資料とした。今回 収集した資料の⼤半は⼣張市と⾚平市および北海道開拓記念館が保管しており総資料の 95%以上を占めている。 各⾃治体等の資料保管状況は以下の通りであり、抽出したデータ数は表 3-1-4 に⽰す。 イ) 芦別市 芦別市が保有している資料はすべて「星の降る⾥百年記念館」に整理保管されている。 19 資料総数は 872 件で、そのほとんどは町史や社史などの歴史的資料であり、対象となる資 料は 53 件となった。三井芦別炭鉱の資料が⽬⽴った。 ロ) ⾚平市 ⾚平市が保有している資料のほとんどは住友⾚平炭鉱が所有保管していたもので、⾚平 炭鉱閉⼭後⾚平市に寄贈され、住友⾚平⼩学校の空教室を利⽤した炭鉱資料館に収蔵され ている。現在、地元在住の元炭鉱マンが資料を整理し⽬録を作成中である。今回、現地調 査を⾏いその資料⽬録を閲覧し、対象資料を抽出した。資料は⾚平地区が属する⽯狩炭⽥ のみならず、天北、留萌、釧路の各炭⽥に関する地質調査資料も多数保管されている。 ハ) 美唄市 美唄市が保有している資料は、⼤正から昭和初期にかけて北海道の炭鉱開発に深く関わ った⽯倉新という元炭鉱経営者が収集した炭⽥地質調査資料で、 「美唄市郷⼟史料館」に⽯ 倉新関係資料として⽬録にまとめられ保管されていた。その⽬録を閲覧し、対象資料を抽 出した。 ニ) ⼣張市 ⼣張市が保有している資料は、⼣張市が旧北炭資料を独⾃に分類整理した 3,090 件のデ ータが「旧北炭資料整理表」という⽬録にまとめられ、市役所内に公開資料として保管さ れているものと、⼣張⽯炭の歴史村に保管されている平成 22 年 2 ⽉に実施した「緊急雇⽤ 創出推進事業による道内⽯炭資源等に関する調査業務」で分類・整理、エクセルデータ化 された約 2 万件に及ぶ資料とがある。これらの資料⽬録とエクセルデータから対象資料を 抽出した。これらの資料の中には⽯狩炭⽥地域における⽯炭調査ボーリング関係の資料が 多数含まれており、⽯炭の賦存状況や地質構造を把握する上で貴重な資料が保管されてい ることがわかった。 ホ) 北海道開拓記念館 北海道開拓記念館には、北星コンサルタントから寄贈された炭鉱関係資料が約 100 件保 管されており、その⽬録も作成されている。その中には⼤正から昭和初期かけての⽯狩炭 ⽥に関する地質図⾯等が数多く含まれている。また昭和 20 年代から 30 年代にかけて⽯狩 炭⽥周辺を踏査したと思われるルートマップが多数(約 70 枚)保管されている。 ヘ) 道⽴図書館 道⽴図書館にある資料から、北海道内⽯炭探鉱資料や旧札幌通商産業局が取りまとめた 鉱区⼀覧など報⽂・書籍など 72 件を抽出した。 ト) 地質研究所 20 地質研究所には、昭和 50 年から平成 3 年にかけて⽯狩、天北、釧路の各炭⽥地域で NEDO などが実施した道内⽯炭資源開発調査報告書が 89 件保管されている。⾚平市、⼣張市、釧 路コールマインにも同じ資料がいくつか保管されているが、重複を避けるためここに資料 データを集約した。 チ) 釧路コールマイン 海上ボーリング資料を含む⾮公開地質関係資料が 13 件保管されている。 表 3-1-3 アンケート結果 組織・団体 <自治体> 猿払村 苫前町 小平町 留萌市 増毛町 芦別市 赤平市 歌志内市 上砂川町 奈井江町 美唄市 岩見沢市 三笠市 夕張市 釧路市 釧路町 白糠町 厚岸町 浦幌町 <博物館等> 三笠市博物館 釧路市博物館 開拓記念館 <石炭産業> 吉住炭鉱 釧路コールマイン 北菱産業埠頭 芦別炭鉱 三美鉱業 平野重機埠頭 空知炭鉱 砂子組 分類 炭鉱 地質 × × × × × ○ ○ × × × ○ × × ○ × × × × × × ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ × ○ ○ 300 不明 不明 調査中 70 多数 2 多数 不明 5 不明 多数 1 × × × × × ○ ○ × × × ○ × × ○ ○ × ○ × × × ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ × ○ ○ 保管場所 文献 1000 不明 不明 調査中 若干 若干 100 多数 2 多数 不明 5 不明 多数 1 × × ○ × × ○ ○ × × × ○ × × ○ ○ × × × × × ○ ○ ○ ○ ○ × ○ × ○ ○ 21 5 役場総務課 町史のみ 200 星の降る里百年記念館 不明 炭鉱資料館 郷土館 炭鉱館(休館) 文書資料なし 〃 不明 郷土史料館 石倉新資料 市立博物館、市役所 調査中 市役所内、石炭博物館 若干 市役所内 役場内 館内、館外保管室 2200 地域史料室分室、博物館内 多数 展示室、収蔵庫ほか 情報サービス室 2 多数 不明 不明 未整理 多数 1 文書資料なし 一部公開 政策関連 史料のみ 文書資料なし 未整理 一部公開 非公開 一部公開 非公開 非公開 一部公開 非公開 公開 表 3-1-4 抽出データ総括表 大分類 小分類 総件数 地質図 断面図 柱状図 地質 炭層柱状図 その他図面 報告書他 炭量・炭質 その他資料 小計 坑内図 その他図面 炭鉱 炭量・炭質 鉱区関係 その他資料 小計 文献・書 地質文献 籍 その他資料 小計 計 2.夕張市 6.開拓記 8.地質研 9.道立図 3.芦別市 4.赤平市 5.美唄市 7.釧路CM 役所 念館 究所 書館 19,506 3,090 872 270 666 20 90 383 10 6 24 9 29 1 0 263 73 0 3 1 5 1 0 226 21 18 10 30 7 0 134 16 0 9 2 2 2 0 446 70 4 54 19 78 1 0 446 259 3 71 4 89 81 2 1 129 10 1 34 1 0 2,108 461 32 205 36 145 12 89 0 103 1 6 5 0 86 5 1 15 1 1 0 52 1 7 5 27 2,859 3 23 26 1 1 3 0 3,126 8 17 49 4 27 1 0 0 83 0 1 3 0 0 0 45 9 0 3 0 0 4 0 27 92 0 4 3 0 4 0 0 72 5,326 469 53 257 40 176 13 89 72 1.夕張DB 合計 3.1.3 調査結果のデータベース化についての提案 本業務では、 「道内⽯炭資源の賦存状況や資源量の推定に活⽤可能な資料」として各⾃治 体が保管している資料から抽出した約 6,500 件の情報を EXCEL シートに整理分類し、 EXCEL-VBA プログラムにより簡易データベース化を⾏った。簡易データベースについては 別途 CD-ROM にて本報告書の添付資料として提出する。 今回の調査では、以下のことが明らかとなった: 1) ⼣張市、⾚平市、開拓記念館に対象となる資料が集中的に多数保管されている。 2) 地質図、地質断⾯図、試すい柱状図、炭層柱状図、ルートマップ、炭量計算図など炭 層賦存状況や地質構造の把握に重要な資料が多数保管されている。 3) ⼿書き・⻘焼き資料は品質劣化の懸念がある他、作成年⽉、保存状況、紙質などから 判断して品質劣化の懸念がある資料も多数存在する。 4) 資料の管理⽅法が明確になっていないケースが⾒受けられ、死蔵および散逸の可能性 も懸念される。 以上のことを踏まえて、将来的に貴重な資料の半永久保存および活⽤を⽬的とした電 ⼦ファイル化を基本とするデータベース化を提案する。その概念図を図 3-1-1 に⽰す。 22 462 346 312 165 672 872 84 175 3,088 115 109 92 2,885 31 3,232 132 43 175 6,495 簡易データベース 対象データ抽出 【分類】 ■地質図データ :地質図、地質断⾯図、ルートマップ ■試すいデータ :試すい柱状図、試すい断⾯図、⽇報 ■炭量データ :炭量計算図、炭層柱状図 ■炭鉱データ :坑内図、古洞図、採掘計画図 リンク 位置情報付加 【電⼦化】 ■PDF化、CADによるトレース ■ボーリング柱状図 図 3-1-1 データベース化概念図 今回作成した簡易データベースから以下の分類で電⼦ファイル化するデータを抽出する。 1) 地質図データ: 既存の地質図として地質調査所、北海道開発庁、道⽴地下資源調査所 の3機関が分担して作成した 5 万分の 1 地質図がある。データベース化の対象とする 地質関係図⾯は、資源調査という⽬的で作られたことから、縮尺五千分の⼀、⼀万分の ⼀などより精度の⾼い地質図が数多く残されている。これら貴重な地質資料に位置情報 を付加して電⼦ファイル化する。また重要な図⾯で不鮮明なものは CAD によるトレー ス図⾯化を⾏う。CAD とレースの参考図として、図 3-1-2 に地質断⾯図の原図を、図 3-1-3 に CAD トレース後の地質断⾯図を⽰す。 2) 試すいデータ: 昭和初期から末期にかけて⽯炭資源探査を⽬的に多数のボーリング調 査が実施されている。それらのボーリング柱状図、試すい断⾯図、⽇報などを位置情報 を付加して PDF で電⼦ファイル化する。 3) 炭層データ: 炭層の賦存状況、発達状況を把握する上で重要な炭量計算図、炭層柱状 図を PDF で電⼦ファイル化する。 4) 炭鉱データ: 採掘跡、未採掘区域を把握する上で重要となる坑内図、古洞図、採掘計 画図に位置情報を付加して PDF で電⼦ファイル化する。 上記分類で抽出し電⼦化した画像データを、簡易データベースから検索できるようにする。 概算の資料数から判断し、作業期間は 1 年程度を⾒込む。 23 図 3-1-2 地質断⾯図原図 図 3-1-3 CAD トレースによる地質断⾯図 24 3.2 道内の⽯炭資源の需要動向調査 本調査は、これまで北海道が道内の⽯炭ユーザーを対象に毎年実施している「道内の⽯炭 需要動向調査」の調査票に、本調査に必要な質問項⽬を追加してアンケート調査を実施した 結果をとりまとめたものである。 3.2.1 調査概要 (1) 調査⽬的 最近の円⾼や資源⾼のなかで、道内における⽯炭の需要動向を調査することにより、エネ ルギー需給の参考とするため、調査を実施するもの。 (2) 調査対象 道内⽯炭需要先 18 事業所(電⼒、鉄鋼、紙・パルプ、セメント、製糖⼯場など) (3) 調査⽅法 郵送調査、実施期間は平成 22 年 7 ⽉ 16 ⽇〜8 ⽉ 6 ⽇ 3.2.2 調査項⽬(調査票) (1) ⽯炭の使⽤状況について 年度 国内炭 海外炭 平成 21 年度 平成 22 年度 中期計画 (5 年後) ⻑期計画 (10 年後) 合計 備考 (海外炭産出地に✓を) □オーストラリア □インドネシア □中国 □ロシア(⼤陸) □ロシア(サハリン) □その他( ) (2) ⽯炭使⽤動向について (⽯炭の使⽤割合について) ① ⽯炭の占める燃料別割合は過去 5 年間でどう変化していますか。 (□増加している □減少している □変わらない) ② ⽯炭の占める燃料別割合は中期計画(5 年間)ではどう変化しますか。 (□増加する □減少する □変わらない) ③ ⽯炭の占める燃料別割合は⻑期計画(10 年間)ではどう変化しますか。 (□増加する □減少する □変わらない) ④ ⽯炭の⼆酸化炭素排出量が他の燃料より多いことは今後の⽯炭使⽤に影響しますか。 (□⼤いに影響する □多少影響する □さほど影響しない) 25 (国内炭・海外炭について) ⑤ 海外炭の調達は今後どのようになると予想しますか。 (□難しくなる □容易になる □問題ない) ⑥ 海外炭の価格は今後どのようになると予想しますか。 (□上昇する □低下する □変わらない) ⑦ これまでの海外炭の価格上昇により経営に影響が出ていますか。 (□影響が出てきている □今後悪影響が出ることが懸念される □影響はない) ⑧ 国内炭の使⽤量は過去 5 年間でどう変化していますか。 (□増加している □減少している □変わらない) ⑨ 国内炭の使⽤を今後増やすあるいは新規に使⽤することを検討していますか。 (□検討している □検討していない □海外炭の価格次第では検討する) ⑩ 道内の⽯炭⽣産企業との連携を深めたいと考えていますか。 (□考えている □考えていない) その他、国内炭・海外炭に関連してご意⾒があれば以下に記載してください (3) クリーン・コール・テクノロジー(CCT)について ① これまでに取り組んだことのある CCT があれば以下に記載してください。 ② 今後導⼊を計画している、あるいは開発予定の CCT があれば以下に記載してください。 ③ 北海道に適した、あるいは北海道で推進すべき CCT があれば以下に記載してください。 (4) ⽯炭資源の有効活⽤の可能性について ① ⽯炭を採掘して燃焼させる従来の利⽤⽅法以外で、道内⽯炭資源(⽯炭に含まれるメ タンガスを含む)を有効活⽤する⽅法として検討されている事があれば以下に記載して ください。 (5) その他 各種の排出権取引の活⽤の可能性や、道などに対するご要望などがございましたら、お聞 かせ下さい。 26 3.2.3 調査結果 (1) ⽯炭の使⽤状況について 2009 年度使⽤実績によれば、道内⽯炭需要先 18 事業所のうち、国内炭と海外炭の両⽅ を購⼊している事業所は9箇所、海外炭のみを購⼊している事業所は9箇所となっている。 図 3-2-1 に道内需要先の⽯炭購⼊量の推移を⽰すが、2009 年度の全事業所での国内炭購 ⼊量は 115 万トン、海外炭購⼊量は 740 万トンで、合計購⼊量は 855 万トンである。2007 年度、2008 年度は海外炭の価格が⾼騰した影響もあり、⽯炭購⼊量ならびに国内炭購⼊量 が増加していたが、2009 年度には減少している。また、2010 年度は、海外炭ならびに国 内炭購⼊量はそれぞれ 10 万トン及び 29 万トン減少する計画となっている。 国内炭構成⽐(図3-2-2)は、2007 年度に約 13%、2008 年度には約 16%にまで増加 したが、 2009 年度には約 14%に減少し、 2010 年度計画では 2006 年度以前の構成⽐ 10% 近くにまで減少する。 ⽯炭の輸⼊先(図3-2-3)では、北海道の地理的条件を反映してロシア(サハリンを含む) が最も多く、次いでオーストラリア、インドネシア、中国となっている。2008 年度の回答 と⽐較すると、中国から購⼊している事業所が半減していることが特徴的である。 12,000 購入量(千t) 10,000 8,000 海外炭 国内炭 6,000 4,000 2,000 0 2004 2005 2006 2007 2008 年度(2010は計画) 2009 2010 図3-2-1 道内需要先の⽯炭購⼊量の推移 国内炭構成比(%) 16.0 14.0 12.0 10.0 8.0 6.0 2004 2005 2006 2007 2008 年度(2010は計画) 2009 図3-2-2 道内需要先の国内炭構成⽐ 27 2010 2008 2009 その他 ロシア(サハリン) ロシア 中国 インドネシア オーストラリア 0 5 10 購入事業所数 15 図3-2-3 道内需要先の海外炭輸⼊先 (2) ⽯炭使⽤動向について アンケート設問①〜⑩の回答集計を以下に⽰す。 (⽯炭の使⽤割合について) ⽯炭の使⽤割合は、過去 5 年間では海外炭価格の⾼騰の影響もあり「増加している」と 回答した事業所が 4 箇所、 「減少している」とした事業所も 5 箇所あった。中⻑期計画では、 「増加する」と回答した事業所はなく、約 7 割の事業所が「変わらない」としている。 ⽯炭燃焼による⼆酸化炭素排出の影響については、 「⼤いに影響する」と「多少影響する」 を併せて約 6 割を占めている。 ①〜③ ⽯炭の占める燃料割合は、[過去 5 年間、中期計画、⻑期計画]でどのように変化 していますか。 長期計画 変わらない 中期計画 減少する 変わらない 過去5年 増加している 0 2 減少する 変わらない 4 6 NA 8 NA 減少している 10 12 14 16 18 ④ ⽯炭の⼆酸化炭素排出量が他の燃料より多いことは今後の⽯炭使⽤に影響しますか。 大いに影響 0 2 多少影響 4 6 さほど影響なし 8 10 28 12 14 NA 16 18 (国内炭・海外炭について) 海外炭の調達については、「容易になる」の回答はなく、「難しくなる」が約 6 割を占め ている。また、価格については「低下する」の回答はなく、8 割以上が「上昇する」と予想し ており、経営への影響は「影響が出ている」と「今後悪影響が出ることが懸念される」を併 せて 9 割の事業所が影響を懸念している。 過去 5 年間の国内炭の使⽤量については、約 8 割の事業所が「変わらない」と回答して いるが、今後国内炭の使⽤を増やすあるいは新規に使⽤することについては、「検討してい る」と「海外炭の価格次第では検討する」が併せて 6 割を超えている。また、半数以上の事 業所が道内⽯炭企業との連携を深めたいと考えている。 ⑤ 海外炭の調達は今後どのようになると予想しますか。 難しくなる 0 2 4 6 問題ない 8 10 12 14 NA 16 18 ⑥ 海外炭の価格は今後どのようになると予想しますか。 変わら ない NA 上昇する 0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 ⑦ これまでの海外炭の価格上昇により経営に影響が出ていますか。 今後懸念 影響が出ている 0 2 4 6 8 NA 影響なし 10 12 14 16 18 ⑧ 国内炭の使⽤量は過去 5 年間でどう変化していますか。 減少 増加 0 2 NA 変わらない 4 6 8 10 12 14 16 18 ⑨ 国内炭の使⽤を今後増やすあるいは新規に使⽤することを検討していますか。 検討 している 0 2 検討していない 4 6 NA 海外炭価格次第 8 10 29 12 14 16 18 ⑩ 道内の⽯炭⽣産企業との連携を深めたいと考えていますか。 考えている 0 2 4 考えていない 6 8 10 12 14 NA 16 18 (3) クリーン・コール・テクノロジー(CCT)について これまでに取り組んだことのある CCT として、以下の技術が挙げられた: ・ RPF や⽊質チップの混焼 ・ 古紙粕の混焼 ・ ⽯炭灰の有効活⽤(融雪剤、路盤材) ・ 嫌気性廃⽔処理装置から発⽣するメタンガスの乾燥装置補助燃料としての利⽤ また、今後導⼊を計画している、あるいは開発予定の CCT として以下の回答があった: ・ ボイラ更新に伴う、⽊質バイオマスの混焼の可能性について さらに、北海道に適した、あるいは北海道で推進すべき CCT としては、次のような技術が 挙げられていた: ・ 海岸漂着及び河川流⽊の燃料化、林地残材(間伐材)の利⽤度向上 (4) ⽯炭資源の有効活⽤の可能性について 特に記載なし 3.3 道内の⽯炭資源の供給動向調査 本調査は、北海道における⽯炭⽣産の現状、⽯炭資源の開発に伴う諸問題、⽯炭⽣産の 継続に影響を及ぼす要因、ならびに⽯炭資源の有効活⽤などについての⽯炭⽣産事業所(炭 鉱)に対するアンケート調査の結果をとりまとめたものである。 尚、本アンケート調査は、⽯炭や炭鉱に係る資料の保管状況についてのアンケート調査 と併せて実施した。 3.3.1 調査概要 (1) 調査⽬的 最近の円⾼や資源⾼のなかで、道内における⽯炭の供給(⽣産)動向を調査することによ り、エネルギー需給の参考とするため、調査を実施する。 (2) 調査対象 道内で⽯炭を⽣産している8炭鉱(露天掘炭鉱7炭鉱、坑内掘炭鉱1炭鉱) (3) 調査⽅法 30 郵送調査、実施期間は平成 22 年 7 ⽉ 16 ⽇〜8 ⽉6⽇ 3.3.2 調査項⽬(調査票) (1) ⽯炭⽣産の現状と中⻑期の計画等について ① 2009 年度⽣産実績、2010 年度計画、ならびに中⻑期計画 平成 21 年度 平成 22 年度 中期計画 ⻑期計画 (5 年間) (10 年間) ⽣産量 (千トン) (2) ⽯炭需給および新規鉱区開発について ① 中⻑期の⽯炭供給先は既に確保していますか。 (□確保している □中期は確保、⻑期は確保していない □確保していない) ② 今後道内での国内炭の需要はどのようになると予想しますか。 (□増加する □減少する □変わらない □海外炭の価格次第) ③ 今後海外炭の価格は今後どのようになると予想しますか。 (□上昇する □低下する □変わらない) ④ 新規鉱区を開発する計画はありますか。 (□ある □ない □需要次第では検討する) ⑤ 新規鉱区を開発する上で課題となることを以下に記載してください。 (3) ⽯炭⽣産の継続に影響を与える要因のうち、その影響が⼤きいと考えられるもの三つ を次の中から選んでください。 □海外炭の価格 □現在の販売先への継続供給 □新規販売先の開拓 □道内でのクリーン・コール・テクノロジーの開発・普及 □新規鉱区の開発 □技術者の確保・技術レベルの維持 □環境問題への対応 □新しい採掘技術の開発 □その他( ) (4) ⽯炭資源の有効活⽤の可能性について ⽯炭を採掘して燃焼させる従来の利⽤⽅法以外で、地元の⽯炭資源(⽯炭に含まれるメ タンガスを含む)を有効活⽤する⽅法として検討されている事、あるいはアイデアがあれ ば記載して下さい。 31 3.3.3 調査結果 (1) ⽯炭⽣産の現状と中⻑期の計画等 2004 年度以降の道内⽯炭⽣産量の推移ならびにアンケート調査による中期(5 年)・⻑ 期(10 年)計画⽣産量を図 3-2-4 に⽰す(2010 年はアンケート調査に基づく計画値) 。 2008 年度までは概ね年産 130 万 t 前後で推移してきたが、2009 年度、2010 年度(計画) では年産 120 万を下回る⽣産量となっている。2007 年度と 2008 年度の露天炭鉱の⽣産 量が若⼲増加しているが、これは海外炭価格の⾼騰により、道内⽯炭の需要が⾼まった影 1400 1200 1000 800 600 400 200 0 露天掘 坑内掘 20 04 20 05 20 06 20 07 20 08 20 09 20 中 10 期 長 5年 期 10 年 生産量(千t) 響と思われる。中⻑期的には 2010 年の⽣産計画をほぼ延⻑する⽣産量となっている。 年度 図 3-3-1 道内の⽯炭⽣産と中・⻑期計画 (2) ⽯炭需給および新規鉱区開発 中期までの⽯炭供給先を確保していると 7 炭鉱が回答している⼀⽅で、⻑期的には 6 炭 鉱が供給先を確保していない。今後の道内での国内炭の需要は増加すると回答したのは 2 炭鉱のみで、変わらないあるいは海外炭の価格次第という回答が最多の 5 件。1炭鉱は内 陸部の⽕⼒発電所の存続次第と回答している。また、今後の海外炭の価格については、全 ての炭鉱が上昇すると回答している。これらを考え合わせると、半数以上の炭鉱が今後の 国内炭の需要は増加すると考えていることになる。 新規鉱区の開発については、5 炭鉱が開発計画有りと回答しているが、新規鉱区を開発す る上で過⼤となることとして、7炭鉱が保安林解除や開発⾏為の認可という許認可の難し さを挙げている。続いて技術者の確保・育成が課題として挙げられている。 ① 中⻑期の⽯炭供給先は既に確保していますか。 32 中期は確保・長 期は未確保 確保している 0 1 2 3 4 5 確保していない 6 7 8 ② 今後道内での国内炭の需要はどのようになると予想しますか。 増加する 0 1 変わらない 2 海外炭価格次第 3 4 5 火力発電所次第 6 7 8 7 8 ③ 今後海外炭の価格は今後どのようになると予想しますか。 上昇する 0 1 2 3 4 5 6 ④ 新規鉱区を開発する計画はありますか。 有り 0 1 2 需要次第 3 4 5 6 7 8 ⑤ 新規鉱区を開発する上で課題となること(複数回答) 技術者の確保・ 開発費用 育成 保安林解除等の 申請認可 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 (3) ⽯炭⽣産の継続に影響を与える要因のうち、影響が⼤きいと考えられるもの ⽯炭⽣産の継続に影響を与える要因のうち、影響が⼤きいと考えられるものとしては、 次の4つがほぼ同数挙げられている: ・ 海外炭の価格 ・ 現在の販売先への継続供給 ・ 新規鉱区の開発 ・ 技術者の確保 33 販売先継続確保 新規鉱区開発 海外炭価格 0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 技術者確保 20 22 24 (4) ⽯炭資源の有効活⽤の可能性 ⽯炭を採掘して燃焼させる従来の利⽤⽅法以外で、地元の⽯炭資源(⽯炭に含まれるメ タンガスを含む)を有効活⽤する⽅法として検討している事、あるいはアイデアとして、 以下の事項が挙げられている: ・ 採掘に伴い⽯炭層から湧出するメタンガスのうち濃度が低いために利⽤されずに⼤ 気放流されているメタンガスの利⽤、ならびに未採掘区域の未回収メタンガスのク リーンエネルギーとしての活⽤。 ・ 低位品位炭、未利⽤炭活⽤調査 - ⾼効率に褐炭等を乾燥するシステム開発(⾼効率発電利⽤) - 褐炭等の改質転換により、重油代替、天然ガス代替を図るための技術開発、実 証事業 - 炭層メタンガス(CBM)及び炭鉱メタンガス(CMM)の回収、有効活⽤、実 証事業 ・ バイオマス混合成型燃料製造実証事業 - 間伐材、林地残材、伐根の有効利⽤事業 ・ ⽊質バイオマスと⽯炭の混焼による CO2 排出削減 尚、資源活⽤に関して以下の事項も挙げられた: ・ 露天掘り、坑内掘り⽯炭採掘可能性調査(資源量の把握)を⾏い、中⻑期の⾒通し を得る。地上権益、とりわけ保安林指定状況も併せて調査。 (5) 今後の道内⽯炭⽣産について 我が国の⽯炭輸⼊量は既に 1 億 8,000 万トンを超え、⽯炭の国内⾃給率は僅か 0.7%に 過ぎない。しかしながら、道内の⽯炭需要先ならびに⽯炭⽣産事業者へのアンケート調査 の結果からは、北海道内では年間の⽯炭需要量約800 万トン(2010 年計画)に対して約 10%以上が道内事業者から供給されおり、エネルギー資源の乏しい我が国にあっては貴重 な国産エネルギーとしての役割を果たしていることが明らかである。道内需要先の国内炭 構成⽐は⽯炭の価格動向に⼤きく左右され、2008 年の⽯炭価格の⼀時的な上昇時にはこの 割合は 15%を超えていた。今後も輸⼊⽯炭の価格次第という状況は否めないものの、少量 ではあっても価格的に安定した国産⽯炭の果す役割は今後増していくと考えられる。⽯炭 の利⽤には環境⾯での制約はあるものの、CCT の積極的な導⼊・普及と併せて炭層メタン など未利⽤資源の活⽤をも含めて、エネルギーマイレージ⾯でも有利な「エネルギーの地 産地消」の持続的な発展を検討していくことが重要である。 北海道には、今⽇まで⻑年に亘って⽯炭を採掘してきた歴史があり、いまだに豊富な資 34 源量を有している。しかしながら、今後の継続的な⽣産を考えた場合には、技術者の育成、 技術の継承が問題となることも既に指摘されている。我が国全体では、エネルギー資源や 鉱物資源の海外からの安定的確保のためには資源系の⼈材育成が⽋かせないという観点か ら、幾つかの⼈材育成プログラムがスタートしているが、このようなプログラムとリンク した教育の場としての⽣産現場の活⽤と、併せて道内での⽣産継続に必要な⼈材育成にも 取り組んでいくことが必要であると考えられる。 エネルギー⾃給という観点以外にも、道内⽯炭⽣産事業者は地域に根ざした企業として 貴重な雇⽤の場を⽣み出し、地域の活性化にも寄与しているということも重要な視点であ る。 35 3.4 CCT の開発動向調査 温室効果ガス排出抑制の観点からは、化⽯エネルギーの中でも⽯油、天然ガスと⽐べて 燃焼時の単位熱量当たりの⼆酸化炭素排出量の⼤きい⽯炭利⽤の効率化が国内ならびに国 際的にも課題となっている。我が国では、経済性、供給安定性に優れた⽯炭を⽯油代替エ ネルギーの柱の⼀つとして位置づけ、その利⽤促進に努めてきているとともに、環境に適 合した⽯炭利⽤技術(CCT)の開発・利⽤に取り組んでいる。 以下には CCT の技術体系毎の各技術の概要、開発・利⽤状況を取りまとめるとともに、 北海道内でこれまで実施された CCT に関連する技術開発や諸外国での CCT 開発動向につい ての概要を⽰す。 3.4.1 CCT の分類と技術体系 CCT は様々な体系で分類できる。⽯炭の⽣産から利⽤、後処理に⾄るコールフローによ る分類、改質・加⼯、液化・ガス化、⾼効率燃焼、排ガス処理などの個別要素技術による 分類、あるいは発電、製鉄、セメント、環境など関連する産業別の分類である(図 3-4-1 参照) 。 ►コールフローによる分類 採炭・粉砕・選炭 改質 転換 燃焼 後処理 ►技術体系 選炭 脱灰・改質・加⼯ ハンドリング 液化・ガス化 ⾼効率燃焼 排ガス処理 灰処理 CO2分離・回収・固定 熱分解 ►産業体系 ⽯炭採掘・輸送 発電・製鉄・セメント ⽯炭化学 環境 灰利⽤ (建設・⼟⽊・ 農業) 図 3-4-1 CCT の各種体系による分類 経済産業省の資料で⽤いられている技術体系 1) (図 3-4-2)では、CCT を⽯炭発電の低 炭素化、⽯炭からの低炭素原燃料製造、製鉄・セメント製造の低炭素化、環境負荷低減(⼆ 酸化炭素を除く)、及び⼆酸化炭素の回収・貯留(CCS)の 5 つの⼤分類に区分しているが、 本調査事業報告書では、この技術体系の中分類毎に各々の個別要素技術の開発・利⽤状況 の概要を⽰す。 36 (⼤分類) (中分類) ⽯炭発電の 低炭素化 ⽯炭燃焼技術 (個別要素技術) 超々臨界圧発電技術(USC, A-USC) 酸素燃焼発電技術(Oxy-fuel) 発電効率の向上 及びCCSによる ⼆酸化炭素削減 加圧流動床発電技術(PFBC, A-PFBC) ⽯炭ガス化発電技術 空気吹⽯炭ガス化複合発電(IGCC) 酸素吹⽯炭ガス化複合発電(IGCC) ⽯炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC) ⽯炭からの 低炭素原燃料製造 ⽯炭ガス化利⽤技術 ⽯炭部分⽔素化熱分解技術(ECOPRO) SNG製造技術 熱量当たり炭素の 少ない原料・燃料を 製造し⼆酸化炭素削減 ⽣成ガスの利⽤技術 DME製造技術(直説法) ⽯炭間接液化技術(FT合成)(⽯油代替燃料) ⽯炭液化技術 ⽯炭改質 ハンドリング技術 ⽯炭直接液化技術(NEDOL,BCL)(⽯油代替燃料) 褐炭改質技術(UBC)[発電・ガス化] ブリケット製造技術 [発電・ガス化] 褐炭スラリー化技術(HWT)[発電・ガス化] 製鉄・セメント 製造の低炭素化 製鉄技術 セメント製造技術 無灰化技術(Hyper-Coal) ⾰新製鉄技術(COURSE 50) 製鉄・セメント製造 における⼆酸化炭素削減 COG改質技術 ⽯炭利⽤CO2回収型⽔素製造技術(HyPr-RING) 流動床セメント焼成技術 環境負荷低減 (⼆酸化炭素を除く) ⽯炭灰有効利⽤技術 セメント分野での利⽤ ⼟⽊・建築分野での利⽤ ⼆酸化炭素以外の、SOx, NOx, 煤塵の除去 ゼオライト製造技術 ⽯炭燃焼排ガス 処理技術 SOx, NOx処理技術 ⾼度⽯炭燃焼ガス集塵技術 CCS ⼆酸化炭素分離回収技術 Pre Combustion: 化学吸収, 物理吸収, 吸着, 膜 Post Combustion: 化学吸収, 吸着 ⼆酸化炭素の回収・貯留 ⼆酸化炭素貯留技術 CO2-EOR, 帯⽔層, 炭層固定 図 3-4-2 CCT の技術体系 2) 3.4.2 技術体系別 CCT 開発動向 (1) ⽯炭発電の低炭素化 a. ⽯炭燃焼技術 ⽯炭焚発電プラントは、⽯油や LNG 発電に⽐べて CO2、SOx(硫⻩酸化物)、NOx(窒素酸 化物)の排出量が多い上、環境対策設備による所内動⼒の増⼤を招き、他燃料と⽐較して単 37 位熱量当りのエネルギー効率が低くなる傾向があり、環境負荷低減に向けた⼀層の⾼効率 発電技術への要求が⼤きくなってきた。このような中、図 3-4-3 に⽰すように、超臨界圧 プラントの蒸気圧⼒ 24.1MPa、蒸気温度 566℃(超臨界状態は、⽔の場合 22.1MPa, 374℃ の臨界点以上における圧⼒・温度の状態)を超える超々臨界圧化(USC、⼀般的に蒸気圧 ⼒ 24.1MPa、蒸気温度 593℃以上)に向けた技術開発が 1980 年代から開始、段階的に⾼ 温・⾼圧化が図られ、現在までに数々の超々臨界圧プラントが導⼊されてきた。図 3-4-4 には USC に⾄る上記条件の変遷を⽰す。蒸気圧⼒においては中部電⼒(株)川越⽕⼒(LNG 焚き)の 31MPa が、蒸気温度においては電源開発(株)橘湾⽕⼒および磯⼦の 600℃/610℃ が最⾼レベルにある 3)。 現在、更なる⾼効率化と経済性、運⽤性の観点から 700℃級超々臨界圧(A-USC)の技 術開発に向けて、新たな⾼温材料や実規模プラント要素の製造技術の開発が進められてい る。A-USC の技術開発は欧州が先⾏しており、また 700℃以上の⾼温のため、新規の⾼温 耐熱材料や耐熱鋼など⾼温強度に優れた材料の開発、加⼯・溶接・検査などの製造技術の 開発が課題となっている。 図 3-4-3 発電⾼効率化の変遷と将来⾒通し 4) 図 3-4-4 USC に⾄る蒸気条件の変遷 5) 38 加圧流動床燃焼技術(PFBC)及び⾼度加圧流動床燃焼技術(A-PFBC)5)は、加圧流動床 燃焼条件を利⽤した複合発電で、発電端効率 43%を達成している。PFBC は燃焼性能が優 れているので様々な燃料が使え、環境問題の原因となる硫⻩酸化物(SOx)や窒素酸化物 (NOx)の排出量を⾮常に少なくすることができる。また、ボイラのコンパクト化や脱硫設備 が不要となるため、プラント設置スペースをより⼩さくすることができる。この PFBC の 技術をさらに発展させた A-PFBC は、⽯炭を⼀部ガス化することによって可燃性ガスを作 り出し、ガスタービンで燃焼させてより⾼効率でガスタービン発電機をまわし、その熱を 回収することにより⾼温の蒸気を作り出し蒸気タービン発電機を回すという⾼効率的な複 合発電システムである。 酸素燃焼技術(Oxy-fuel)は、⽯炭を酸素で燃焼させて排ガスを CO2 として回収する⽅ 法で、既存の微粉炭⽕⼒の改造により対応可能であると⾔われている。酸素燃焼といえど も、純酸素で⽯炭を燃焼させると⽕炎濃度が極端に⾼くなり、現在の微粉炭⽕⼒と温度条 件が⼤きく異なってしまうので、実際には排ガスを循環させて酸素と結合し、酸素濃度を 空気中の濃度とほぼ等しくして燃焼させる。この⽅式では、⾼濃度の CO2 の回収の他、NOx や SOx の抑制効果も期待されている。現在、豪州クインズランド州のカライド A 発電所に おいて 30MW 微粉炭⽕⼒発電設備に酸素燃焼技術を適⽤し、CO2 回収から CO2 貯留までの ⼀貫システムを実証する⽇豪国際プロジェクトが実施されている(2008~2016 年) 。 最先端の技術開発とは別に、電⼒業界ではカーボンニュートラルであるバイオマスを微 粉炭焚ボイラで燃焼することが広く⾏われており、経済産業省の「林地残材バイオマス⽯ 炭混焼発電実証事業」では年間 10 万トン以上のバイオマスが使⽤されている。⼀般にバイ オマスの混⼊率は 2~3%である。電気事業⽤の⼤型ボイラはほとんどが微粉炭焚ボイラで あるが、近年セメントや製紙業界を中⼼に、バイオマスや廃棄物との混焼が容易な中⼩規 模の循環流動床ボイラも建設されている。 (三井物産プレスリリース資料) 図 3-4-5 カライドプロジェクト概念図 39 b. ⽯炭ガス化発電技術 ⽯炭ガス化複合発電(IGCC)は、⽯炭を燃料とした⾼効率で環境性に優れた⽕⼒発電技 術として開発が進められてきた。IGCC は、⽯炭をガス化して得られた燃料の燃焼エネルギ ーでガスタービンにより発電し、さらに排熱から得た蒸気による蒸気タービン発電を組み 合わせた複合発電⽅式である(図 3-4-6 参照)。パイロット試験を経て、福島県いわき市(常 磐共同⽕⼒(株)勿来発電所構内)において、平成 19 年から出⼒ 250MW の IGCC 実証機の 試験が⾏われており、既に⻑期間連続運転試験も終了している。この実証機は空気でガス 化を⾏う「空気吹き」であり、酸素製造を伴う「酸素吹き」に対し世界最⾼の送電端効率 が得られる。この実証機では、1,200℃級ガスタービンと湿式ガス⽣成が採⽤され、設計熱 効率は 40.5%(送電端、HHV 基準)となっているが、1,500℃級ガスタービンと乾式ガス 精製を⽤いる 600MW 級商⽤機では 48%(同)が期待されている 2)。 ⽯炭ガス化燃料電池複合発電(IGCF)は、更にガス中の⽔素で燃料電池による発電を組 み合わせたトリプル複合発電⽅式で(図 3-4-6 参照)、実現すれば 55%以上の送電端効率 が可能となり、CO2 排出量も既存微紛炭⽕⼒に⽐べて約 30%低減することが⾒込まれる。 IGCF の燃料ガスとしても利⽤可能な多⽬的⽯炭ガス製造技術(EAGLE、酸素吹き)は、既 にパイロットプラント(電源開発技術センター若松研究所構内)での試験を終えているが、 IGFC の商⽤化には安価で⾼効率な燃料電池の開発など、まだ開発すべき課題は多い。 近年開発が進められている次世代⾼効率⽯炭ガス化発電プロセス(A-IGCC/A-IGFC)は、 部分酸化ガス化炉と燃料電池、ガスタービン、蒸気タービンを縦続接続した従来のカスケ ード利⽤(多段階利⽤)型 IGCC/IGFC に対して、吸熱反応である⽔蒸気改質ガス化炉にガス タービンあるいは燃料電池の排熱をリサイクルするエクセルギー(exergy:ある系から⼒ 学的な仕事として取り出せるエネルギー)再⽣型の次世代 IGCC/IGFC である。エクセルギ ー再⽣によって、1700℃級ガスタービンを使⽤した場合の A-IGCC では 57%、燃料電池 を使⽤した A-IGFC では 65%もの⾼い発電効率が期待され、システムの⾶躍的な⾼効率化 により将来のエネルギー資源の確保と CO2 の低減を図ることが可能な技術として期待され ている5)。 図 3-4-6 ⽯炭利⽤⾼効率発電技術の⽐較(JPOWER 資料) 40 図 3-4-7 には IGCC/IGFC 及び A-IGCC/IGFC の効率と実⽤化年度の⾒通しを⽰す。 (経済産業省資料:CoolEarth50-エネルギー⾰新技術系計画より作成) 図 3-4-7 IGCC/IGFC 及び A-IGCC/IGFC の開発ロードマップ (2) ⽯炭からの低炭素原燃料製造 ⽯炭は天然ガスや原油に⽐べて⽔素/炭素⽐(H/C)が低いので、燃焼するとこれらの燃 料に⽐べて多くの⼆酸化炭素を発⽣する。気体であるメタンや天然ガスでは H/C が⾼く、 燃焼時の⼆酸化炭素発⽣が少ない。⼀⽅、⽯油および代替⽯油などは、重量当りの熱量が ⾼く運輸⽤燃料として最適であり、現代社会において必須の燃料である。また、メタノー ルや DME のように酸素を含む液体燃料は、従来、基礎化学品として利⽤されてきた。酸素 を含むことから重量当りの熱量が低いものの、クリーン燃料としての⽤途が広く、また、 製造技術が確⽴しており、⼤量⽣産に適している。 これら燃料や原料の熱量当りの炭素排出係数を図 3-4-8 に⽰す。図 3-4-9 には⽯炭から メタノールや DME、メタンなどを製造する様々なルートを⽰しているが、このように⽯炭 からガス化や液化を経て新たな原燃料を製造することは、原油よりも炭素排出係数が⼩さ い、いわゆる低炭素原燃料を製造したことになる。 図 3-4-8 各種原料、燃料の熱量当りの炭素排出係数 6) 41 図 3-4-9 化⽯資源からのクリーン原燃料製造のルート 6) a. ⽯炭ガス化利⽤技術 2) ⽯炭をガス化してできる合成ガスは、IGCC や IGFC の燃料として利⽤できる他、⽔素や メタンの製造、メタノールやジメチルエーテル(DME)の製造、FT 合成(フィッシャー・ トロプシュ合成とは⼀酸化炭素と⽔素から触媒反応を⽤いて液体炭化⽔素を合成する⼀連 の過程で、触媒としては鉄やコバルトの化合物が⼀般的。この⽅法の主な⽬的は、⽯油の 代替品となる合成油や合成燃料を作り出すこと)などによる油の製造なども可能である。 IGCC など発電⽤のガス化炉以外の⼯業⽤⽯炭ガス化炉は、既に海外で開発され、実証・ 商⽤プラントとして普及しているものが多く、流動床型、固定床型、噴流床型に⼤別でき る。我が国では、HYCOL 炉(⾼温・⾼圧下で、微粉炭に酸素を反応させ、⽔素と⼀酸化炭 素に富む中カロリーのガスを得る噴流層ガス化技術)の開発が⾏われ、1994 年まで⽯炭処 理量 50t/⽇のパイロットプラント試験が実施された。この技術は、150t/⽇の処理量の多 ⽬的⽯炭ガス製造技術である EAGLE プロジェクトに活⽤された。⼀⽅、空気吹きの IGC 炉は、処理量 1,700t/⽇の IGCC 実証機に適⽤され、運転中である。 ⽯炭部分⽔素化熱分解技術(ECOPRO)5)は、⾼圧(2〜3MPa)かつ適度な⽔素雰囲気 下で微粉炭を瞬時に反応させ、化学原料および燃料としての軽質オイルを併産しつつ、⽯炭 ガス化複合発電(IGCC) 、間接液化(GTL)や化学原料等への展開が容易な合成ガスを⼀つ の炉から⾼効率に得る技術である。 図 3-4-10 にこのプロセスの全体フローを⽰す。 ⽯炭ガス化による⽣成ガスから代替天然ガス(SNG: Substitute Natural Gas )を製 造することができる。 我が国においては、 天然ガスは 2008 年度の⼀次エネルギーの 18.6% を占め、そのうち 96.4%は LNG として輸⼊されている 7)。天然ガスは、⽯炭や⽯油に⽐べ て熱量当たりの CO2 排出量が少なく、また、硫⻩分を除去したクリーンな燃料として評価 されており、今後も天然ガスの消費量は増⼤すると予想されている。SNG を製造するには、 ガス化により得られたガスを CO シフト反応(有機⼯業化学の反応の⼀つで、⼀酸化炭素と 42 ⽔蒸気から⼆酸化炭素と⽔素を⽣成する反応)で CO と H2 の⽐を調整し、次にメタネーシ ョン反応(シフト反応の過程で H2 と CO2 から逆にメタンが⽣成する副反応)でメタンを製 造する、いわゆる間接法が実⽤化されている。⼀⽅で、⼀段階でメタンを製造する直説法 も開発されてきた。⽯炭ガス化においてガス化剤に⽔素を⽤いることで反応平衡から⾼濃 度のメタンを⽣成する技術である。ガス化により⽣成される⽔素を分離して循環するプロ セスは、⽯炭⽔素添加ガス化技術と呼ばれている。現在、都市ガス原料として輸⼊するた めに、海外の⽯炭、特に低品位炭を⽤いた SNG 製造の可能性が検討されている 8)。 図 3-4-10 ⽯炭部分⽔素化熱分解技術(ECOPRO)のプロセスフロー5) さらに、⽯炭ガス化⽣成ガスの利⽤技術の⼀つに DME 製造技術が挙げられる。DME は、 常温・常圧では気体の物質であるが、加圧により容易に液化できる(25℃でプロパン 9.1 気圧に対し DME 6.1 気圧)ことや、燃焼時に硫⻩酸化物やススの発⽣がない環境負荷の少 ないクリーンエネルギーであることから、輸送燃料、発電⽤燃料、家庭・業務⽤ LPG 代替、 あるいは⼯業⽤ LPG 代替などの⽤途が考えられる。DME の合成には、合成ガスから直接 DME を合成するプロセス(直説法)と、合成ガスからまずメタノールを合成し、さらに脱 ⽔反応により DME を合成するプロセス(間接法)がある。 直説法は、我が国独⾃の技術であり、経済産業省の補助事業「環境負荷低減型燃料転換 技術研究開発」として開発が進められ、製品 100t/⽇の実証プラントが釧路に建設され、 2006 年にその運転が終了している 9) 。この技術開発の詳細については、 「3.3.2 道内にお ける CCT 開発」で述べる。⼀⽅、2008 年には間接法による年産 8 万 t の装置が新潟に完 成している。DME は新燃料の⼀つではあるが、DME 市場を構築するには、安定な製造・供 給体制の確⽴、流通⾯のリスク低減、設備の⼤型化による製造コストの低減などの課題に 対応する必要があると⾔われている。 その他、⽯炭ガス化⽣成ガスから間接的に液体原燃料を製造する技術として FT 合成が挙 43 げられる。FT 合成は 1920 年にドイツで開発された技術で、我が国にも 1940 年に⽯炭か ら合成油を⽣産する向上が九州三池に完成した経緯がある。FT 合成は⽔素と⼀酸化炭素を 原料として、様々な直鎖の脂肪族化合物を製造するが、低温 FT 合成と⾼温 FT 合成では製 品の選択率が⼤きく異なる。(表 3-4-1) 表 3-4-1 低温及び⾼温 FT 合成における製品⽐較 製 品 低温 FT 合成 (%) ⾼温 FT 合成 (%) メタン 4 7 C2-C4 オレフィン 4 24 C2-C4 パラフィン 4 6 ガソリン 18 36 ディーゼル 19 12 重質油とワックス 48 9 3 6 ⽔溶性含酸素化合物 現時点では、国内に⽯炭ガス化ガスを原料とする FT 合成プラントはないが、天然ガスを 起源とする GTL(Gas to Liquids)製造の技術開発が進められている。2001 年から 2004 年には北海道勇払に 7 バーレル/⽇の⽣産量の試験プラントが建設され、⼆酸化炭素を多く 含む天然ガス対応の触媒やプロセスの開発が⾏われた。その後、⽇量 500 バーレル規模の GTL 実証プラントが 2009 年に新潟で竣⼯している 10)。間接⽯炭液化技術は、その製品が GTL と同様⽯油の流通システムに容易に参⼊できることが最⼤の特徴であり、今後の原油 の⾼騰や、環境規制強化による硫⻩分を含まない軽油の需要により、その競争⼒が増すこ とが考えられる。 b. ⽯炭直接液化技術 ⽯炭液化技術は 1910 年代のドイツにおける研究から始まる。その後、1970 年代の⽯油 危機以降、⽶国、ドイツ、イギリスなどで積極的に⽯炭液化の技術開発が進められてきた。 世界の主要な⽯炭直接液化技術には、直接⽔添液化法、溶剤抽出液化法、ソルボリシス液 化法などがある。我が国では、上記3つの⽅法による瀝⻘炭の液化法の開発がサンシャイ ン計画の中で進められたが、1984 年にそれぞれの⻑所を集めた瀝⻘炭液化技術(NEDOL 法、図 3-4-11 参照)に統合され、最終的には 150t/⽇のパイロットプラントが茨城県⿅島 に建設された。1999 年 12 ⽉ 22 ⽇の産業技術審議会評価部会瀝⻘炭液化技術開発評価委 員会において、NEDOL プロセスは技術的に世界最⾼⽔準にあり、国際的展開も期待できる 段階に到達していると⾼く評価された 5)。 44 図 3-4-11 瀝⻘炭液化技術(NEDOL 法)5) NEDOL 法と平⾏して、埋蔵量は豊富なものの、⽔分を多く含み乾燥すると⾃然発⽕を起 こしやすいことや、低品位であることから利⽤が進んでいない褐炭を液化して活⽤するた めの褐炭液化技術(BCL)の開発がオーストラリアとの国際プロジェクトとして進められた。 オーストラリアのビクトリア州の褐炭に適したプロセスを開発し、50t/⽇のパイロットプ ラントを運転し、1993 年に終了した。その後もわが国において活性の⾼い触媒の探索や反 応条件の改善が⾏われ、改良 BCL プロセスが確⽴されている。 これら NEDOL 法や改良 BCL 法は、近年の原油価格⾼騰の流れの中で特に中国やインド ネシアなどのアジア諸国で注⽬されており、中国やインドネシアに対する⽇本の液化技術 の協⼒が期待されている。 c. ⽯炭改質ハンドリング技術 1), 2) 炭化度の⾼い無煙炭や瀝⻘炭に⽐べて⽔分量が多い褐炭等の低品位炭は、発熱量が低く 輸送費が⾼くなる。また、乾燥させ脱⽔したものは⾃然発⽕の危険性が⾼まり、取扱が難し いために、産炭地の近くで発電⽤に利⽤されるか、あるいは未利⽤のまま残されている場 合が多い。⼀⽅で、硫⻩分や灰分が少ないものも多く、燃焼や環境⾯では有利な特徴を有 している。近年、他の化⽯燃料である⽯油や天然ガスの資源制約が顕在化しつつあり、豊富 に存在する⽯炭、特に未利⽤の低品位炭を液化やガス化によって国内のエネルギー需給緩 和を図ろうとする動きが活発化している。また、これら産炭国の未利⽤低品位炭を改質あ るいはハンドリング性を⾼めることで、海上輸送に適切な品質とすることで、我が国への ⽯炭安定供給確保に貢献する可能性もある。このような背景の下、様々な改質技術やハン ドリング技術が開発されてきている。 ⽯炭化度の低い低品質炭を利⽤するには、⽔分を少なくして発熱量を増加させるととも に、最吸湿や保存中に空気中の酸素との反応による⾃然発⽕を防⽌することが必要となる。 45 古くから、ドイツや東欧などでは、褐炭を上記間接加熱により乾燥して発熱量を上げた後、 プランジャ式成形機で成形し、ボイラ⽤燃料として使われてきた。その後、様々な改質技 術が開発されているが、⼀般的に改質プロセスには、蒸発法と⾮蒸発法がある。 我が国で開発された低⽯炭化度改質技術である褐炭改質技術(UBC: Upgraded Brown Coal)は、蒸発法の⼀種で、⽐較的低い温度と圧⼒で重質油(アスファルト)を混合した 軽質油中で加熱脱⽔し、⽯炭の細孔内に重質油を選択的に吸着させ、製品炭に撥⽔性の発 現と⾃然発⽕性の低減を可能にしたものである。また、発⽣した蒸気を加圧して熱源とし て⽤いることでエネルギー消費量を削減している。さらに、ブリケットにして、⾼密度化 し、表⾯積を低減して、空気中での安定性とハンドリング性を⾼めている。図 3-4-1 に UBC プロセスの簡易フローと、改質された UBC ブリケットの外観を⽰す。現在、インドネシア のカリマンタン島で 600t/⽇の UBC ⼤型パイロットプラントが稼動中で、2010 年以降の 商業化(⽯炭処理量 3,000〜5,000t/⽇)を⽬指している。 図 3-4-12 UBC プロセスの簡易フローと UBC ブリケット 11) また、⽔分の多い⽯炭を⽔蒸気の多いガス中で乾燥後、ブリケット製造装置で⾼圧整形 することで、空隙の潰れた強いブリケットが得られる技術として BCB(Binderless Coal Briquetting)がある。この技術は、⻄オーストラリアの亜瀝⻘炭を処理する⽬的で開発さ れたプロセスであるが、他からの不活性ガス、油など特別な媒体を使わないことから経済 的なプロセスと考えられている。 瀝⻘炭を原料とする⽯炭スラリー燃料としては、⽯炭と重油の混合スラリーである COM (Coal Oil Mixture)や⽯炭と⽔を混合する CWM(Coal Water Mixture)がある。COM は国内で実証製造が⾏われたが、重油を使⽤することが問題となり普及には⾄らなかった。 ⼀⽅、CWM は⽔との混合物であり、⽯炭濃度 60〜70%(重量パーセント)である。⾼濃 度の CWM は添加剤の開発により加える⽔を少なくしても流動性と安定性が保たれ、脱⽔ 46 することなく直接燃焼することが可能である。CWM は既に商業化されているが、瀝⻘炭を 使⽤することから経済的な課題もある。 安価ではあるが⽔分の多い亜瀝⻘炭や褐炭は、⽯炭濃度の⾼い⽯炭スラリーの製造がで きなかったが、熱⽔改質(HWT: Hot Water Treating)の開発によりそれが可能となった。 この技術では、300℃、120 気圧の熱⽔中で低品位炭内部の⽔分を蒸発させずに外部に抽出 し、再吸湿を防ぐものであり、原料に含まれる⽔分を活⽤して⾼濃度スラリーを製造でき る。また、⼀部脱⽔することで発熱量を⾼くすることも可能となる。この技術は国内での パイロットプラント段階を終え、産炭国で未利⽤となっている低品位炭の利⽤につながる 技術として期待されている。 産炭地では、灰分や硫⻩分などを多く含む劣質炭を選炭することなくそのまま発電ボイ ラ⽤、あるいは⺠⽣⽤燃料として使⽤されているケースがある。このような劣質炭は、燃 焼時に多くの煤塵、SO2 が発⽣して環境を汚染し、また燃焼性が良くないために、過度の燃 焼空気が必要になり、灰の中に多くの未燃物が残ることから熱効率を低くしている。揮発 分の少ない無煙炭もそのまま燃焼している場合もあり、この場合もやはり灰中に多くの未 燃物が残り、ボイラ効率を低くしている。このような問題を解決する簡単な技術として、 バイオマス粉とわずかな脱硫剤(Ca(OH)2)を劣質炭に混合して煤塵、SO2 の発⽣を少な くし、かつ未燃物を少なくするバイオマス・⽯炭複合ブリケット(バイオブリケット) (CBC: Coal/Biomass Composite Briquettes)がある。この技術は、1960 年代の⽯油ショック の後、⽯油代替燃料への⽯炭利⽤技術として⽇本で開発されたが、その後はバイオマスの 有効利⽤技術として、あるいは劣質炭を使⽤している産炭地の環境改善を⽬的とした技術 協⼒の⾯で注⽬されている。 図 3-4-13 に CBC 製造のフローを⽰す。 約 3mm 以下の⽯炭粉とバイオマス粉を混合し、 圧⼒をかけて成型してブリケットを製造する。バイオマスには、トウモロコシ茎、稲藁、 バガス(サトウキビ搾汁後の残渣)などの農産物廃棄物や、⼭林残廃材、住宅解体廃棄物 などが⽤いられ、⽯炭の揮発分や灰分に応じて 10〜20%(Wet)が混合される。脱硫剤 (Ca(OH)2)は、⽯炭の硫⻩分に対してモル(mol: 国際単位系(SI)における物質量の単位) ⽐で1(S):1.5〜2.0(Ca)の割合で添加する。CBC の場合、⽯炭粒⼦と繊維状の植物質が 強く絡み合い密着しており、燃焼時にも分離せずに着⽕温度の低い植物質と⽯炭が複合燃 焼するために、着⽕性、燃焼性が良く、煤塵がほとんど発⽣せず、燃焼灰は砂状になって クリンカ(炉壁などに付着する灰やかす)をつくらないなどの特徴がある 5)。また、脱硫剤 が⽯炭粒⼦と密着していることから、⽯炭中の硫⻩と効果的に反応してその 60〜80%を灰 中に固定することができる 5)。 47 (http://j-net21.smrj.go.jp/well/shitauke/subcon_e/instance/0101hokkai/index.html) 図 3-4-13 CBC 製造のフロー ⽯炭中に含まれる灰分などの夾雑物を取り除くために、⽯炭粉に溶剤を混合し、温度 360 〜400℃、圧⼒数 MPa 以下の穏和な条件下で有機物だけを溶解、抽出して製品として回収 する技術がハイパーコール技術であり、このハイパーコールを直接ガスタービン燃料とす るなど、⾼効率な複合発電システムの開発が⾏われている。図 3-4-14 にハイパーコール利 ⽤⾼効率発電システムのプロセスフローを⽰す。 粗脱灰炭 (灰分 5%以下) ハイパーコール製造プラント セトラー スプレー ドライヤー 混合機 ハイパー コール イオン交換塔 回収率 60~70wt% ハイパー コール微紛 ⽯炭(固形) 可溶分+溶剤 スプレー ドライヤー ⽯炭+溶剤 溶剤循環ライン 残渣炭 図 3-4-14 ハイパーコール利⽤⾼効率発電システムのプロセスフロー5) ハイパーコールの特徴は次のようである 5): ・ 灰分は 200ppm 以下、アルカリ⾦属類(Na,K)は 0.5ppm まで削減 48 ・ 発熱量は原炭より 10〜20%程度⾼くなる ・ 無機イオウ分は完全除去 ・ 固体状の微量重⾦属は⼤幅減少(1/100 以下) ・ 製造過程で 30〜40%程度発⽣する残渣は、⼀般炭として利⽤可能 ・ 製造コストはおおよそ 1 トンあたり 950〜1,200 円と安い ・ 着⽕性、燃えきり性に優れている ・ 流動性が⾼く、直接還元鉄や⾮鉄⾦属精錬⽤の炭材としても優れている ハイパーコール利⽤⾼効率発電システムの中核をなすガスタービンへの適⽤に関しては、 事後評価では「実証に⻑期間を要すること、その間の IGCC など他の⽯炭利⽤技術の進捗 などを考えると、⻑期間の技術開発投資をしても市場がかなり限定されたものとなること が懸念される。 」と否定的な結論付けとなっているのに反して、低品質炭の改質という観点 からは、 「コークス⽤炭材利⽤については、低品位炭活⽤が可能であることを⽰した。適性 に優れ、価格⾼傾向の原料炭代替として良好な経済性を有しており、鉄鋼業界での応⽤が 期待されている。」と結論付けられている 12) 。従って、図 3-4-2 の CCT の技術体系では、 ハイパーコールは無灰技術として製鉄技術に分類されている。 (3) 製鉄・セメント製造の低炭素化 1),2) a. 製鉄技術 製鉄技術分野では、⽯炭を効率的に利⽤するため、省エネ対策やコークス製造における 低品位炭の利⽤が可能となる技術等の研究が進められてきた。 ⾼炉の主要還元材はコークスであるが、1960 年代以降の⾼炉操業では、⽻⼝から重油を 補助燃料として吹き込むことでコークス消費を減らす⽅法が採⽤されてきた。しかし、2 度 にわたるオイルショックの後、重油に代わる安価な補助燃料の導⼊が切望されていた。そ の結果、⾼炉微粉炭吹込み技術(PCI)が導⼊され、近年では全国平均⾼炉燃料⽐ 510〜 530kg/t のうち微粉炭吹込み量は 130〜140kg/t に達しており、コークスの⽐率はそれに 応じて低下してきている。また、PCI 技術は、⾼炉⽻⼝からの廃プラスチックやバイオマス などの還元材や還元鉱⽯などとの複合吹込みの可能性を含んでおり、今後⾼炉の中核的技 術として発展していくことが期待されている。 ⽯炭直接利⽤溶融還元製鉄技術(DIOS)は、安価な⼀般炭と紛状のままの鉄鉱⽯を炉内 で溶融し、銑鉄を作り出す製鉄法である。鉄鋼業界が実験を推進している。現在、主流の ⾼炉法では原料炭の⼀種である粘結炭をコークスに変える⼀⽅、鉄鉱⽯を焼き固めて焼結 鉱化する、という事前処理が必要で、原料投⼊から銑鉄を作りだすまでに数⽇間かかるが、 この製鉄法はわずか数時間で済む。原材料費も安上がりで、⾼炉法には不可⽋なコークス 炉、焼結炉などの設備が要らず、⽣産コストも低減できる。⼆酸化炭素などの発⽣量も少 なく環境対策にも有効とされている。⾼炉は⼀度操業を開始すると 10 年以上連続稼働させ るのに対し、溶融還元法では⼀次停⽌、再稼働が容易なため、需要に応じた弾⼒的な⽣産 49 が可能。 ⼀⽅で、様々なコークス製造に関係する技術開発も進められてきた。⽯炭⾼度転換コー ク ス 製 造 技 術 ( SCOPE21: Super Coke Oven for Productive and Environmental enhancement toward the 21st century)は、省エネ型の次世代コークス炉を開発するた めのプロジェクトで、既に実⽤化(⼤分に年産 100 万 t の商業炉第 1 号機が 2008 年に竣 ⼯)されている。図 3-4-15 にこのプロセスの概要を⽰すが、この技術では、次のような⽯ 炭資源の有効活⽤、⾼⽣産性、省エネ、環境改善が達成されている: ・ ⽯炭資源の有効利⽤:⾮微粘結炭の使⽤割合が 20%から 50%に増加 ・ ⾼⽣産性:⽣産性が 2.4 倍 ・ 省エネ:コークス製造エネルギーを 21%削減 ・ 環境改善:NOx を 30%低減、発煙・発塵の防⽌ 連続式成型コークス製造技術は、⾮粘結炭を主原料として粘結炭を少量配合して結合材 (バインダ)を⽤いて成形炭を製造し、これを竪型炉でその形状のまま乾留してコークス とする⽅法で、原料処理、成形、乾留及び冷却の⼀連の⼯程から成り⽴っている。パイロ ットプラントの運転では、通常⾮粘結炭 70%、粘結炭 30%の配合で操業、⾮粘結炭 100% の操業実績も残した。300t/⽇の⽣産が可能であることが確認できているが、⾼炉への装 ⼊率が限定されるとして商業炉はまだ建設に⾄っていない。 図 3-4-15 次世代コークス炉プロセスの概要 13) COURSE50 ( CO2 Ultimate Reduction in Steel making process by innovative technology for cool Earth 50)は、CO2 排出の抑制と、CO2 の分離・回収により、CO2 排出量を約 30%削減する技術を開発するというもので、2030 年頃までに技術を確⽴し、 2050 年までの実⽤化・普及を⽬指している⼤型プロジェクトで、そのステップ 1(2008 50 〜2012 年度)は、NEDO の研究開発プロジェクト「環境調和型製鉄プロセス技術開発」と して進められている。図 3-4-16 に COURSE50 の概念図を⽰す。COURSE50 では、コー クス炉ガスを改質することで得られる⽔素を還元材として利⽤することでコークス使⽤量 を削減し、更には⾼炉ガスから CO2 を分離回収することで⼤幅な CO2 排出削減を達成する 計画である。 図 3-4-16 COURSE50 概念図(⽇本鉄鋼連盟資料) b. セメント製造技術 セメント製造に於いて⽯炭は焼成⼯程で使⽤されるが、エネルギー効率の⾼いキルン(主 にセメント製造などの窯業に使⽤される窯)を普及させることにより省エネを進めてきて おり、現在では世界でもトップクラスのエネルギー効率が達成されている。我が国の全て のセメント⼯場は、廃棄物の処理施設としての許可を取得し、廃棄物を燃料として処理す ることでエネルギーコストの削減と循環型社会の構築に寄与している。⽯炭利⽤に関して は、低品位炭を効率よく燃焼可能な流動床セメントキルンシステム(FAKS)が開発され、 国内では 200t/⽇の実証プラントの試験が終了し、 NEDO の国際⽯炭利⽤対策事業として、 中国で 1,000t/⽇規模の共同実証事業が実施されている。FAKS は、流動床プロセス固有の 燃焼性能、熱伝達性能、粒⼦拡散および造粒特性を利⽤することにより、低品位炭を効率 よく燃焼すること、NOx 排出を顕著に低減すること、プロセスから排出される物およびガ スからの熱回収効率を向上させること、これらにより、ひいては地球環境保全、省エネル ギーおよび多品種特殊セメント需要に対応することが可能である 5)。図 3-4-17 には FAKS のプロセス概念図を⽰す。 51 図 3-4-17 FAKS のプロセス概念図 5) (4) 環境負荷低減技術(⼆酸化炭素を除く)1), 2) a. ⽯炭灰有効利⽤技術 ⽇本で発⽣する⽯炭灰の量は約 1,200 万 t(2007 年度)で、⼀般炭使⽤量(約 1 億 t) の 10%強である。従来は産業廃棄物として埋め⽴て処分されていたが、近年は「資源有効 利⽤促進法」における指定副産物として位置付けられ、その有効利⽤率は 2007 年度で 97% に達している。⽯炭灰の主成分は、シリカ、アルミナであり、⼤半はセメントや⾻材とし て利⽤されているが、今後の⽤途開発に向けた技術開発が続けられている。表 3-4-2 には 代表的な有効利⽤分野とその利⽤⽐率を、また、図 3-4-18(その1, その 2)には代表的 な有効利⽤事例を⽰している。 表 3-4-2 ⽯炭灰の有効利⽤分野と利⽤⽐率(2007 年度)1) 分野 利⽤⽐率 ⽤ 途 セメント・コンクリート ⼟⽊ 建築 農林⽔産 その他 66 % 14 % 4 % 1 % 15 % セメント製造原料⼯程で 道路路盤材、 建 材 ボ ー ド 肥料原料と ⽔質浄化材 の粘⼟代替材。仕上げで 地盤改良材 の原料とし して少量安 や⼈⼯ゼオ の コ ン ク リ ート 混 和材 で増加傾向 て安定的な 定供給 ライト (フライアッシュ) 特徴、課題 需要 ⽔ 和 熱 抑 制 効果 ( ダム 粒状加⼯⼯ ⽔分保持能 灰に含まれ リン、窒素、 ⽤) 。 フライアッシュ中の 程でのコス ⼒の⾼い材 る珪酸を利 重⾦属の吸 料の原料 ⽤した肥料 着納を利⽤ 未燃炭素低減(凍害防⽌) ト低減 52 図 3-4-18 ⽯炭灰の有効利⽤の事例-その1(電気事業連合会 HP) 53 図 3-4-18 ⽯炭灰の有効利⽤の事例-その 2(電気事業連合会 HP) 我が国で有効利⽤される⽯炭灰の 66%(2007 年度)は、セメント原材料としての利⽤ に頼っているのが実態である。これまで、年々増加している⽯炭灰は、セメント会社が⽯ 炭灰の引き取り量を増やして有効活⽤されてきたが、セメント原材料としての利⽤にも限 界があり、セメント分野以外への有効利⽤先を早急に開拓することが喫緊の課題となって いる。しかしながら、多くの研究にも拘らず、セメント分野以外の利⽤は進展していないの が実情である。⽇本における⽯炭灰有効利⽤における課題は次のようである: ・ 様々な炭種の⼀般炭を輸⼊して使⽤しており、発⽣する⽯炭灰の品質が変化する 54 ・ 発電⽤ボイラの容量の違いや、昼・夜間の発電電⼒量の変化によって、発⽣する⽯ 炭灰の品質がボイラごとに異なる ・ ⽯炭⽕⼒発電所の定期検査に伴う設備停⽌や稼働率の変動により⽯炭灰の発⽣量が 変動する これらの課題の解決策として、次のような対策が挙げられる: ・ 分級や粉砕等による粒径や形状の統⼀ ・ ブレンディング(混合)による化学的性状の均質化 ・ 発⽣源(電⼒・鉄鋼)の全国的な連携 今後、開発が進められる噴流層⽯炭ガス化複合発電では、発⽣する灰分は溶融してスラ グとして排出される。このスラグは、⽯炭灰がガラスのように溶けて固まったもので、そ の体積は⽯炭灰の半分となる。また、⽯炭灰中の微量重⾦属なども無害化できるため、⼟ ⽊や建築の分野での有効利⽤が容易になると考えられる。しかしながら、これらのスラグ は針状にとがったものであるため、利⽤に適した丸みを帯びた形状にすることで、⽤途が 増えることが⾒込まれる。 b. ⽯炭燃焼排ガス処理技術 ⽯炭は、⽯油や天然ガスに⽐べ、燃焼排ガス中の SOx, NOx, 煤塵の排出量が多く、これ らの排煙処理装置の導⼊が必須である。我が国では、深刻な⼤気汚染を改善するために、 1968 年の「⼤気汚染防⽌法」施⾏以降、SOx, NOx, 煤塵の排出が厳しく制限された。これ を受け、1970 年代に排煙脱硫装置が、その後、排煙脱硝装置が⽕⼒発電所に設置されるよ うになり、現在では世界でも極めて低い排出量となっている(図 3-4-19 参照) 。 (電気事業連合会, 原⼦⼒・エネルギー図⾯集 2010) 図 3-4-19 世界各国の NOx, Sox 排出量⽐較 55 微粉炭⽕⼒では⽯灰⽯-⽯膏法による⾼性能で信頼性の⾼い湿式脱硫装置が主流であり、 既設の発電所設備の 90%以上に設置されている(図 3-4-20)。この⽅法は、⽔と混ぜた⽯ 灰⽯スラリーと排ガス中の SOx を反応させ、硫⻩分を⽯膏(CaSO4・2H2O)として回収す る⽅法であり、脱流効率は 90%以上である。SOx との反応で⽣成された⽯膏スラリーは脱 ⽔され、建築資材として販売される。脱⽔後の⽔は、脱硫装置に戻されるとともに⽯灰⽯ スラリーの製造に再利⽤されるが、循環利⽤により排ガス中のハロゲンや重⾦属など様々 な成分が蓄積し、脱硫性能の低下を招くために、⼀部は抜き出して排⽔処理される。 図 3-4-20 ⽯灰⽯-⽯膏脱硫装置における吸収塔⽅式の概要 2) また、廃⽔処理が不要な乾式脱硫法、さらには脱硫と脱硝を同時に⾏う同時脱硫脱硝技 術の開発が進められている。このうち、⽯炭灰利⽤乾式脱硫法は、⽯炭灰の有効利⽤の⼀ 環として開発された技術で、⽯炭灰、消⽯灰(⽔酸化カルシウム:Ca(OH)2)および使⽤ 済みの吸収剤から新規に吸収剤を製造して、この吸収剤で排ガス中の SOx を除去する⽅式 である。脱硫効率は排ガス温度 100〜200℃で 90%以上となる。また、集塵および脱硝能 ⼒もあり、集塵率 96%、脱硝率 20%以上が得られている。現在、北海道電⼒㈱の苫東厚 真⽕⼒発電所 2 号機排ガスの 50%を処理する脱硫装置として設置されている。 スプレードライヤー法 5)は、半乾式法とよばれる⽅法で、⽣⽯灰に⽔を加えて消⽯灰スラ リーを作り、スプレードライヤー内に噴霧して排ガス中の SOx を除去する⽅式である。こ の⽅式では良質の⽯膏が得られないので、脱硫後の粒⼦は廃棄物として処理される。 「グリ ーンエイドプラン(途上国、特にアジア諸国における急速な⼯業化に伴う環境保全と開発 の両⽴を⽬的として、⽇本の経験に基づく産業公害分野及び省エネルギー分野における技 56 術移転・普及を⾏なうもの。通商産業省(現・経済産業省)が 1992 年から実施している。) 」 の⼀環として中国の発電所において脱硫率 70%の実証試験が⾏われた。 炉内脱硫法 5)は、流動床ボイラに⽤いられる脱硫法である。脱硫⽤の⽯灰⽯は⽯炭と混合 し、⽯炭と同時に供給され、SO2 を CaSO3 として除去する。現在、国内数箇所の発電所の 流動床ボイラで採⽤されている。 微粉炭⽕⼒における NOx のほとんどが⽯炭中の窒素分に起因するもので、すでに様々な 低 NOx 燃焼技術が開発されているが、この技術のみでは排出規制の厳しい地域の規制値を クリアすることは困難であり、排ガス中の NOx を取り除く排煙脱硝装置が必要となる。現 在主流となっている脱硝技術は、排ガス中にアンモニアを吹き込み、触媒上で NOx と反応 させて窒素と⽔に分解する選択接触触媒還元法(SCR 法:Selective Catalytic Reduction) である。そのほかの技術としては、触媒を使わずにアンモニアを炉内に吹き込んで、NOx を分解する炉内脱硝技術があるが、脱硝効率が 30〜50%程度であり、環境規制の厳しい我 が国においては有効な脱硝⽅式とはなっていない。吸収液を使う湿式脱硝法もあるが、現 時点では SCR 法と競合できる技術はない。 活性炭吸着法は、脱硫と脱硝の両⽅が可能な⽅式である(図 3-4-21 参照)。脱硫塔では、 排ガス中に吹き込まれたアンモニア(NH3)が活性誕⽣で SOx と反応し、硫酸⽔素アンモ ニウム(NH4HSO4)や硫酸アンモニウム((NH4)2SO4)の携帯に変換して SOx を吸着・除 去する。脱硝塔では吹き込まれたアンモニアと活性炭の触媒作⽤により NOx が窒素と⽔に 分解される。この⽅法では脱硫効率 97%以上、脱硝率 80%以上を達成している。離脱塔 では、活性炭を加熱することで吸着した硫酸⽔素アンモニウムなどをアンモニアと SO2 に 分解して離脱させる。放出した SO2 は硫酸や単体硫⻩として回収される。現在、電源開発 ㈱磯⼦⽕⼒発電所 1 号機の脱硫装置および⽵原⽕⼒発電所 2 号機の脱硝装置として設置さ れている。 図 3-4-21 活性炭吸着法プロセスの概要 5) 活性炭素繊維脱硫脱硝法は、活性炭素繊維の室温での SO2, NO の酸化能⼒を活⽤して硫 酸あるいは硝酸として連続除去するプロセスで、技術の実証、実⽤化が進められている。 ⼤容量⽕⼒⽤集塵装置として、我が国では圧⼒損失が低く、メンテナンスが容易な電気 57 集塵装置(ESP: Electrostatic Precipitator)が設置されている。ESP は、図 3-4-22 に⽰ すような構造であり、放電極におけるコロナ放電によりマイナスに帯電した煤塵が、プラ ス極の集塵電極に付着する原理を利⽤して排ガス中の煤塵を除去する。電極に付着した煤 塵は、槌打ち装置で電極に振動を与え、剥離落下させる。 図 3-4-22 電気集塵装置の概要 5) 集塵⽅式としては、上記の ESP 以外にダストの重⼒場での沈降を利⽤した重⼒沈降室、 重⼒場よりも⼤きな加速度の働く遠⼼⼒場を利⽤したサイクロン、気流の⽅向変換時の慣 性⼒を利⽤する慣性式集塵器、⽔滴などによりダストを分離する湿式集塵器、ならびに濾 過によりダストを分離するバグフィルタなどがあるが、バグフィルタ以外はいずれも ESP に⽐べて集塵効率が低いこと、湿式装置では⼤量の⽔処理を伴うなどの問題もあり、我が 国の⽕⼒発電所では⽤いられていない。 (5) CCS(⼆酸化炭素の分離・回収・貯留) 世界中で温室効果ガス排出削減への様々な取組がなされている中で、近年、CO2 の回収・ 貯留技術(CCS:Carbon Dioxide Capture and Storage)が有効な対策として注⽬を集め ている。この技術は、⽕⼒発電所や化学プラントなどの⼤規模排出源で CO2 を分離・回収 し、その CO2 を地中や海底下などの貯留に適した場所まで輸送して、⻑期間にわたり貯留・ 隔離することで、⼤気中への CO2 の放出を抑制する技術である。CO2 の分離・回収につい ては、化学プラントや⽯油・天然ガス産業の分野で開発が進み、既に実⽤化されている技 術も存在する。CO2 の輸送に関しては、パイプラインやタンクローリー等による輸送技術 が適⽤できる。貯留に関しては、地中貯留と海洋貯留が検討されているが、実⽤化に向け ては地中貯留(海底下の地層を含む)が先⾏しており、パイロット試験が世界各国で実施 されている。地中貯留の対象場所としては、枯渇した油⽥や天然ガス⽥、帯⽔層、増進回 収⼿段として CO2 を使⽤する油⽥や天然ガス⽥、あるいは将来採掘しない⽯炭層などが有 58 望視されている。ちなみに気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の特別報告書 14) では、 地中貯留のポテンシャルは全世界で約 2 兆 t(世界の CO2 排出量の 80 年分)と⾒積もられ ている。IPCC 第4次評価報告書第3作業部会報告書(気候変動の緩和策)15)では、CCS は 2030 年までに気候変動の緩和に重要な貢献をする可能性のある新しい技術として位置 づけられている。⻑期的な緩和シナリオ(2031 年以降)においても、温室効果ガスの濃度 を低濃度で安定化させるためには CCS の利⽤に重点が置かれると評価している。 a. CO2 分離回収技術 2) ⽯炭⽕⼒発電所において CO2 を回収する技術としては、図 3-4-23 に⽰すように燃焼後 回収技術(Post Combustion) 、酸素燃焼技術(Oxi-fuel Combustion)および燃焼前回収 技術(Pre Combustion)が挙げられる。 図 3-4-23 ⽯炭⽕⼒からの CO2 回収法 6) - 燃焼後回収技術:燃焼排ガスから CO2 を分離・回収する技術で、吸収液に CO2 を吸収 させる吸収法、固体の吸着剤に CO2 を吸着させる吸着法、膜を⽤いて CO2 を分離する 膜分離法などがある。現時点では吸収液として有機物質の⽔溶液を⽤いて CO2 を分離・ 回収する化学吸収法が実⽤化されている。化学吸収法を⽤いた CO2 分離プロセスを図 3-4-24 に⽰す。この⽅法では、有機物質として主にアルカノールアミンが使⽤され、 吸収塔で CO2 とアルカノールアミンを化学反応させて液に吸収させ、排ガスから CO2 を分離する。CO2 を吸収した液は離脱塔に送られ、減圧あるいは蒸気で過熱することに より CO2 を放出させ、回収する。この技術はすでに商⽤化されており、様々なプロセス が開発されているが、エネルギー消費やコスト⾯での課題解決に向けての研究開発が進 められている。 - 酸素燃焼技術:⽯炭を酸素で燃焼させて排ガスを CO2 として回収する⽅法(図 3-4-25 59 参照)で、既存の微粉炭⽕⼒の改造により対応可能であると⾔われている。酸素燃焼と いえども、純酸素で⽯炭を燃焼させると⽕炎濃度が極端に⾼くなり、現在の微粉炭⽕⼒ と温度条件が⼤きく異なってしまうので、実際には排ガスを循環させて酸素と結合し、 酸素濃度を空気中の濃度とほぼ等しくして燃焼させる。この⽅式では、⾼濃度の CO2 の回収の他、NOx や SOx の抑制効果も期待されている。このプロセスでは、燃焼排ガス を電気集塵装置で処理した後に、燃焼排ガスを直接圧縮して CO2 を液化して回収する。 現在、豪州クインズランド州のカライド A 発電所において 30MW 微粉炭⽕⼒発電設備 に酸素燃焼技術を適⽤し、 CO2 回収から CO2 貯留までの⼀貫システムを実証する⽇豪国 際プロジェクトが実施(2008~2016 年)されている。 (千代⽥化⼯建設株式会社 HP:http://www.chiyoda-corp.com/technology/future/ccs.html) 図 3-4-24 化学吸収法による CO2 の分離・回収プロセス (JCOAL, World Coal Report Vol.1) 図 3-4-25 酸素燃焼技術のプロセス - 燃焼前回収技術:図 3-4-26 に⽰すように、⽯炭ガス化炉から発⽣したガスを⽔性シフト 反応(CO+H2O→H2+CO2)により CO2 と⽔素に改質し、CO2 を分離・回収する。CO2 を 回収した後の⽔素主体のガスはタービンに送られ、発電に利⽤される。CO2 の分離・回収 60 には、吸収法、吸着法および膜分離法のいずれの⽅法も適⽤可能である。⽯炭ガス化の場 合には、ガスが加圧されているため、物理吸着法も利⽤できる。⽶国の FutureGen プロジ ェクト、オーストラリアの ZeroGen プロジェクト、ドイツの RWE 社プロジェクトなど、 様々な実証プラント計画が進⾏中である。⽇本では EAGLE プロジェクトが期間延⻑となり、 CO2 分離・回収の検証を⾏う予定である。 (JPOWER HP: http://www.jpower.co.jp/company_info/rd/index.html) 図 3-4-26 CO2 回収型 IGCC 発電システム概念図 b. ⼆酸化炭素貯留技術 回収された CO2 を貯留する技術として、地中貯留と海洋貯留技術が挙げられる。図 3-4-27 に CO2 貯留技術の概要を⽰す。地中貯留技術は、CO2 を貯留する貯留層は、⽯油・ ガス⽥、帯⽔層、炭層に分けられる。IPCC の推定 14)では、それぞれの貯留層毎の推定貯留 容量は表 3-4-3 のようである。 表 3-4-3 貯留層のタイプ別貯留容量推定値 14) 貯留層 ⽯油・ガス⽥ 炭層(ECBM) 帯⽔層 推定値(下限) (億 t-CO2) 6,750 30〜150 10,000 推定値(上限) (億 t-CO2) 9,000 2,000 100,000(不確実) ここで、油⽥・ガス⽥は、枯渇した油⽥・ガス⽥への貯留の他、主に⽯油やガスを増産 する⽬的で CO2 を注⼊・貯留する場合(EOR/EGR: Enhanced Oil/Gas Recovery)がある。 また、炭層への注⼊は、将来採掘の可能性がない炭層が対象で、⼀般的に炭層メタン(CBM: Coal Bed Methane)の⽣産・増産(ECBM: Enhanced Coal Bed Methane Recovery) 61 を伴う。 油⽥における EOR や帯⽔層への CO2 の貯留は既に実⽤化されている。例えば、ノルウェ ーの北海スライプナー(Sleipner)天然ガス⽥では、⽣産される天然ガスの精製時に分離・ 回収された CO2 を 1996 年から帯⽔層に貯留しており、2005 年までに既に 700 万トン以 上の CO2 が貯留されている 14)。また、⽶国ノースダコタ州の⽯炭ガス化プラントで回収さ れた⽇量 3,000〜5,000t の CO2 をパイプラインでカナダのサスカチュワン州ワイバーン (Weyburn)にある油⽥に送り(輸送距離 325km)、貯留するプロジェクト(EOR)も商 業ベースで始まっている 14)。さらには、アルジェリアのイン・サラ(In Salah)でも、10% 程度の CO2 を含む天然ガスから CO2 を分離・回収し、年間 100 万 t の CO2 を地下 1,800m の帯⽔層に注⼊する商業プロジェクトが 2004 年から始まっている。我が国では、新潟県⻑ 岡で帯⽔層への CO2 貯留実証試験が 2000 年〜2007 年に実施され、合計約 10 万トンの CO2 が貯留された。現在は、安全性の検証のためのモニタリングが⾏われている。 ⽯炭層への貯留は、CO2 が⽯炭層に吸着固定される点と、CO2 の⽯炭への吸着に伴い、 それまで⽯炭に吸着されていたメタンと置換するために炭層メタンが回収できる点で、油 ⽥や帯⽔層への貯留とは異なる技術である。⼀般に⽯炭はメタンより CO2 を吸着しやすく、 メタンの 2 倍程度の CO2 を吸着すると⾔われている 16)。我が国では、2002 年から 2007 年に北海道⼣張の炭層において、CO2 炭層固定のパイロット試験が実施され、様々な知⾒ が得られている 16)。海外では、アメリカ、カナダ、EU、中国、オーストラリアなどで数多 くの実証試験が実施あるいは計画されている。また、クリーン開発と気候に関するアジア 太平洋パートナーシップ(APP) ・クリーンな化⽯エネルギー分野タスクフォースの「⼆酸 化炭素注⼊による炭層メタン増進回収研究 CO2-ECBM」プロジェクトが、オーストラリア、 中国および⽇本の 3 カ国の共同研究として始まっている(2009 年 12 ⽉に「ECBM 技術共 同枠組み」に合意)17)。このプロジェクトは、中国⼭⻄省のオルドス炭⽥で実施される予 定である 17)。 (地球環境研究センターHP:http://www-cger.nies.go.jp/qa/10/10-1/qa_10-1-j.html) 図 3-4-27 CO2 貯留技術の概要 62 3.4.3 道内における CCT 開発動向 CCT 開発は、プラントメーカーや電⼒会社などの主導で⾏われる事例が多く、北海道で 実施された CCT 開発の事例は多くはない。以下に、それらの代表的な事例を⽰す。 (1) 排煙脱硫技術(SOx 処理技術)5) 排煙脱硫装置が必要とされる分野は、化⽯燃料等を燃焼する施設であり、⽕⼒発電所、 紙・セメント製造⼯場、廃棄物焼却炉等が挙げられるが、最も⼤きな処理量を求められる のは⽕⼒発電所向けの排煙脱硫装置である。国内では既に様々なタイプの排煙脱硫技術が 開発されている。 その中で、⽯炭灰利⽤法は、⽯炭灰の有効利⽤の⼀環として開発された技術で、⽯炭灰 と⽔酸化カルシウム、使⽤済みの吸収剤から新規に吸収剤を製造し、この吸収剤を⽤いて 排ガス中の SOx を除去する⽅式である(図 3-4-28) 。3 つの原料を混練してペレットを造 粒し、これらを吸収塔に充填して排ガス中の SOx と接触させて SO2 の固定化を⾏う。⽯炭 灰は直接 SO2 を吸収するわけではないが、脱硫率向上に効果がある。また、脱硝、集じん 効果もある。⽯炭⽕⼒発電の⽐率の⾼い北海道で研究が進められ、道内の発電所(苫東厚 真発電所 1 号機, 35 万 kW)で、排ガスの半量を処理する設備として設置され稼動してい る。 図 3-4-28 ⽯炭灰利⽤乾式脱硫法の概要 5) 炉内脱硫法は、流動床ボイラの流動媒体に⽯灰⽯を使⽤することにより炉内で脱硫する ⽅法であり、設備を⼤幅に簡略化できる経済的な⼿法である。脱硫⽤の⽯灰⽯は⽯炭と混 合し、炉内温度 760〜860℃で SO2 の除去を⾏う。炉内脱硫法は、⼀時期、加圧流動床複 合発電プラントとしてセラミックフィルタを精密集塵装置に世界で始めて採⽤した苫東厚 真発電所で採⽤されていたが、加圧流動床ボイラの廃炉により現在は使われていない。 (2) DME 製造技術 9) 63 ⽯炭ガス化⽣成ガスあるいは炭層メタンの利⽤技術の⼀つに DME 製造技術が挙げられる。 DME は、常温・常圧では気体の物質であるが、加圧により容易に液化できる(25℃でプロ パン 9.1 気圧に対し DME 6.1 気圧)ことや、燃焼時に硫⻩酸化物やススの発⽣がない環境 負荷の少ないクリーンエネルギーであることから、輸送燃料、発電⽤燃料、家庭・業務⽤ LPG 代替、あるいは⼯業⽤ LPG 代替などの⽤途が考えられる。DME の合成には、合成ガス から直接 DME を合成するプロセス(直説法)と、合成ガスからまずメタノールを合成し、 さらに脱⽔反応により DME を合成するプロセス(間接法)があるが、直説法は我が国独⾃ の技術である。DME の直接合成では、合成ガスの組成が H2/CO=1 で反応率が最⼤となる ので、⽯炭ガス化ガス(H2/CO=0.5〜1.0)を原料とするのに適している。 1997 年から 2001 年まで、経済産業省の補助事業として太平洋炭礦㈱釧路鉱業所に建設 された 5t/⽇の⼤型連続装置(⼤型ベンチプラント)を⽤いて、2002 年から 2006 年には 経済産業省の補助事業「環境負荷低減型燃料転換技術研究開発」として北海道釧路市⽩糠 町に建設された 100t/⽇の実証プラント(2003 年 11 ⽉竣⼯)により技術開発が進められ た。前者は、JFE(旧⽇本鋼管)が中⼼となり実施した事業で、そのベンチプラントのプロ セスフローを図 3-4-29 に⽰す。このベンチプラントでは、炭層メタンの改質ガスあるいは ⽯炭ガス化の模擬ガス(本プラントでは LP ガスから製造)を原料として,スラリー床反応 器の⼀段の反応操作で効率良く DME を製造できる。最終的には 2 ヶ⽉の⻑期安定運転も 達成している。また、本プラントで成功した炭層メタンからの DME 直接合成は世界初の技 術でもある。 図 3-4-29 ⽯炭を原料とした DME 直接合成プラントのプロセスフロー5) ⼀⽅、後者の補助事業は有限会社 ディーエムイー開発が実施した。当社は、JFE(旧⽇本 鋼管)が⻑年培った関連基礎技術(5t/⽇ DME ⼤型ベンチプラント試験事業)を発展させ、 64 DME 直接合成法の商⽤化技術の確⽴を⽬的に、国内外のエネルギー関連⼤⼿企業 10 社の 出資により設⽴された研究開発法⼈である。この実証プラントは、LNG を原料とする合成 ガスから DME を直説法により製造するもので、プロセスフローは先に実施された⼤型ベン チプラント(5t/⽇)と同じである。この実証プラントにより、合成ガス総合転化率 96%、 DME 製品選択率 94%、DME 純度 99. 8%が達成され、また 5 ヶ⽉連続安定運転も達成さ れている。併せて、⽯炭(⽯炭ガス化ガス)を原料とするプロセス(図 3-4-30 参照)の FS も実施され、良好な経済性を有していることが⽰されている。しかしながら、評価意⾒ の中には「⽯炭からの DME 合成の フィージビリティスタディ(FS)において、⽯炭ガス 化との統合システムとしてのもう少し踏み込んだ検討を含めてほしかった。 」とあるように、 天然ガスを原料とするプロセスに重点が置かれ、CCT としての位置づけが不⼗分であった とする意⾒もある。 現在、新潟に新たな DME 製造プラント(年産 8 万 t)が竣⼯しているが、これは初期投 資の少ない天然ガスを原料として計画されており、間接法プロセス(メタノール合成とメ タノール脱⽔法)によるものである。ボイラや発電機、⾃動⾞などへの DME の普及を図る とともに、将来の商業化を⽬指す取組が進められている。 図 3-4-30 ⽯炭(⽯炭ガス化ガス)を原料とする DME 製造プロセス 9) (3) ⽯炭灰有効利⽤技術 18) 北海道における⽯炭灰有効利⽤技術は、⽯炭灰の最⼤排出企業である北海道電⼒を中⼼ として進められている。図 3-4-31 は、平成 10 年度から20年度の⽯炭灰の発⽣量(使⽤ 済脱硫剤含む)と有効利⽤率を⽰している。平成 17 年以降、埋⽴処分量が減少し、有効利 ⽤率が 97%以上に増加している。有効利⽤の内訳(平成 20 年度)は、図 3-4-32 に⽰す ように、復元材(砂利採取跡地復元材含む)が 65%程度を占め、続いてセメント原料 65 (19.3%)、地盤改良材(6.1%)、路盤材(3.5%)、フライアッシュ(FA)コンクリート (2.2%)などとなっている。 図 3-4-31 ⽯炭灰の発⽣量と有効利⽤率(北海道電⼒)18) 図 3-4-32 ⽯炭灰有効利⽤量の内訳(北海道電⼒・平成 20 年度)18) 66 ⽯炭灰の多くは、コンクリート、スラリー材などの⼟⽊・建築分野や、建設汚泥の⽔分 調整材や農業⽤資材などに利⽤され、益々その利⽤拡⼤が進んでいる(図 3-4-33)。北海 道電⼒では、不良⼟の改良に関する研究、バイオガス含有不純物の除去技術開発、⽯炭灰 混合煉⽡の開発、フライアッシュのプレキャストコンクリートへの適⽤に関する研究など、 様々な⽯炭灰利⽤技術の研究開発を進めている。 図 3-4-33 ⽯炭灰の有効利⽤技術(北海道電⼒)18) (4) CCS 技術 a. CO2 炭層固定技術 16) CCS の⼀つの選択肢である炭層への貯留に関しては、2002 年度から 2007 年度まで、北 海道の⼣張で「CO2 炭層固定化技術開発予備実験」 (経産省経済産業省の補助事業)として 67 ⽯炭層への CO2 の圧⼊並びに CBM の回収試験が実施されている。試験現場は、1) 地質情 報が豊富で炭層の深度がある程度深く、かつ炭層の上部に厚い不透層が存在すること、2) 炭層のガス包蔵量が多いこと、3)炭層の浸透率が⾼いこと等を考慮して決定された。対象 となった炭層は、北海道⽯狩炭⽥南部区域の新⽣代古第三紀の⽯狩層群に属する⼣張層で、 かつてこの地域には多くの坑内掘炭鉱が操業していたが、現在は全て閉⼭している。 図 3-4-34 に試験現場の地質概要図を⽰す。試験現場領域は東⻄両側が断層により分断さ れ、南北⽅向にも⼩断層の存在が確認されている。また、上位の幌内層は層厚が 600m を 超える泥岩と⾴岩の互層からなり、注⼊した CO2 の上⽅への移動を妨げるキャップロック (帽岩ともいわれ、貯留層を覆っている⾴岩やで泥岩などの緻密な地層のことで⽔、空気 を透さない遮断性を有する)の役割を果すものと考えられた。図には CO2 圧⼊井(右)と CBM ⽣産井(左)も⽰されているが、CO2 が圧⼊される炭層内での坑井間隔は 67m であった。 CO2 の圧⼊、CBM の回収試験に先⽴ち、炭層のガス包蔵量の測定及び包蔵ガス組成分析 が⾏われている。原位置ガス包蔵量の測定は、圧⼊井掘削時に回収した⽯炭のコア試料を ⽤い、現在最も普及している⽶国鉱⼭局の⽅法(直接法)により⾏われた。その結果、⼣張層 のガス包蔵量は 17m3/t から 24 m3/t と多少バラツキはあるものの、諸外国の CBM 開発が ⾏われている炭層のガス包蔵量 10〜15 m3/t に⽐べて⾼い値を⽰した。また、CBM 中のメ タン濃度はいずれも 94%以上で、CO2 が 3%以下、その他エタン等の低級炭化⽔素ガスで 構成されていることも明らかとなった。 図 3-4-34 試験現場の地質概要 16) 68 図 3-4-35 CO2 の⽯炭層への圧⼊試験の状況 16) 図 3-4-35 に CO2 圧⼊試験の状況を⽰す。CO2 はタンクローリーで現場まで運ばれ、⼀ 旦液化 CO2 としてタンクに貯蔵され、昇圧ポンプにより昇圧後、気化器によって気化され CO2 圧⼊井へと送られた。CBM 回収井には PC ポンプが設置されており、炭層内のクリー トや⻲裂に存在する⽔を汲み上げ、同時に CBM を⽣産する。圧⼊井においては CO2 圧⼊量、 圧⼊圧、温度等を計測し、⽣産井においては⽔・ガス⽣産量の計測およびガス成分の分析 等が⾏われた。 延べ 4 年間に及ぶ現場試験の期間中、炭層の CO2 貯留特性の評価や圧⼊効率の改善など、 様々な試験が実施されたが、ここでは⼀例として 2007 年度の CO2 の圧⼊量の変化と、そ れに伴う CBM 回収量の変化についてのみ、その概要を紹介する。 図 3-4-36 に現場試験実施期間中(2007 年 4 ⽉〜10 ⽉)の 1 ⽇毎の CO2 圧⼊量(棒グ ラフ)と CBM の回収量(折線グラフ)の変化を⽰す。CO2 の圧⼊量は 1 ⽇ 2t 前後から徐々 に増加している。これは、注⼊開始当初は坑井周辺の炭層の⽔飽和率が⾼いために、ガス の相対浸透率が低くガスの移動が制約されて圧⼊量が少ないが、圧⼊が進むと坑井周辺の ⽔飽和率が減少してガスが移動しやすくなるために、圧⼊量が増加したとものと考えられ る。⼀⽅、回収井での CBM の回収量は、CO2 の圧⼊が進むに連れて増加する傾向が認めら れ、CO2 圧⼊による CBM 増産効果が確認できた。 この場合 CBM 回収量は当初の 100m3/day から 5 倍の 500m3/day にまで増加している。 CO2 の圧⼊は、⼀般に炭層や周辺岩盤の破壊を防ぐために、ステップレート試験(多段 階昇圧試験)等により求めるクリート(⻲裂)開⼝圧以下(この試験では 15.8MPa)で⾏ われるが、現場試験の最終段階で圧⼊圧⼒を⼀時的ではあるが 19 MPa まで増加させた結 69 果、10 t/day の圧⼊が可能でることが確認できた。周辺岩盤が強固であれば、より⾼圧の 圧⼊が可能で、CO2 圧⼊量の増加が期待できる。この⼣張での全試験期間を通しての合計 CO2 圧⼊量は 884t であり、 当初の⽬的 1,000t にほぼ近い量の CO2 圧⼊が達成されている。 図 3-4-36 ⼣張現場試験の CO2 注⼊と CBM 回収の結果(2007 年 4 ⽉〜10 ⽉)16) 油⽥やガス⽥、あるいは帯⽔層などに貯留する他の CCS 技術でも同じであるが、CO2 が ⻑期間漏れ出すことなく貯留されていることを確認する”モニタリング”が重要である。この ため、周辺の地上でのガスサンプリングや地下⽔の調査の他、3 次元地震探査や⾼精度傾斜 計による地盤の挙動観測など、様々な⽅法が検討、試験されている。⼣張の試験において もこの種の多くのモニタリングが実施されたが、現時点で圧⼊した CO2 が漏れ出すことを ⽰唆するデータは得られていない。 現場試験と平⾏して、圧⼊した CO2 の炭層内での挙動や、CBM の回収量の予測等を⾏う ⽬的でシミュレーションモデルの開発も⾏われた。数値計算には Advanced Resources International (ARI)社製の COMET3 が使⽤されたが、現場試験の結果をフィードバックす ることで、より信頼性の⾼いモデルが構築されている。この種のシミュレーションモデル は、今後新たな現場で同様の試験を⾏う場合や、商業ベースでの CO2-ECBM の実施にむけ た FS のための有効な⼿段になると考えられる。 b. CCS 実証試験候補地選定調査 19) 経済産業省の「⼆酸化炭素削減技術実証試験委託費」により、⽇本 CCS 調査株式会社が CO2 の回収・貯留⼤規模実証試験の候補地選定のための調査作業を⽇本各地で 2008 年度 より実施している。北海道では、苫⼩牧港沖合で 2009 年度に 3 次元弾性波探査による地 質構造調査(東⻄約 2.7km、南北約 3km)が実施され、また、2010 年度にも 3 次元弾性 70 波探査(東⻄約 5km、南北約 6km の区域)と調査井の掘削(掘削⻑約 3,700m、垂直深 度 3,050m)が⾏われる。CCS 実証試験地については、昨年度実施済みの3次元弾性波探 査、今年度実施予定の追加3次元弾性波探査、ならびに今回の調査井によって取得される 地質・物性データ等を総合的に評価し、経済産業省が選定する予定となっている。 図 3-4-37 CCS 実証試験候補地選定調査位置図(苫⼩牧沖)19) 3.4.4 海外における CCT 開発動向 1), 20) 以下には、⽯炭利⽤の中でも最もその割合が⼤きい⽯炭⽕⼒発電に係る主要各国での CCT 開発動向についてとりまとめる。図 3-4-38 に世界の電源構成の現状と⾒通しを⽰す が、世界の電源構成に占める⽯炭の割合は 4 割程度と⾼い値で推移する⾒通しである。従 って、世界各国では⽯炭⽕⼒発電の低炭素化に向けて、CCS や IGCC 等の技術開発に取り 組んでおり、その中でも CCS の優先順位は⾼くなっている。EU では⽯炭⽕⼒発電所の新 設に対し、CCS-ready(適切な CO2 貯留地点、CO2 輸送や CCS 設備の実現可能性(環境⾯、 技術⾯、経済⾯)についてあらかじめ調査を実施した上で、CCS 設備設置のためのスペー スを確保すること)を義務化するなど、⽯炭⽕⼒の CO2 排出削減に向けて規制強化の気運 が⾼まっている。 - EU: 欧州議会において、 エネルギー・気候変動政策パッケージが最終合意に⾄っている。 CCS の法的枠組みが設定され、定格出⼒ 300MW 以上の化⽯燃料プラントの新設を対 象に、CCS-ready が義務化された。さらに、⾰新的な CCS 技術への資⾦供給を実施し 71 ている。2020 年までに商業的に実現可能な CCS 技術を保持することを⽬指したゼロ エ ミ ッ シ ョ ン 化 ⽯ 燃 料 発 電 プ ラ ン ト に 関 す る EU 技 術 プ ラ ッ ト フ ォ ー ム ( EU Technology Platform for Zero Emissions Fossil Fuel Power Plant)が創設された。 技術開発動向に関しては、科学分野における研究活動計画「欧州研究開発フレームワー ク計画(Framework Programme: FP)」の第7次計画(FP7:2007〜2013 年)に CCT が採⽤された。具体的技術は、A-USC、IGCC、流動床炉、⽯炭液化・⽯炭ガス化 と CCS との組合せ等となっている。 (World Energy Outlook 2008) 図 3-4-38 世界の電源構成の現状と⾒通し 1) - ドイツ:ドイツでの⽯炭⽕⼒が発電電⼒量に占める割合は、1970 年代の約 70%から近 年は約 50%まで減少しており、発電電⼒量は 1980 年頃から 3 億 kWh(30 万 GWh) 前後で横ばいとなっている。増加する電⼒需要は、1980 年代などは主に原⼦⼒によっ て賄われてきたが、近年は減少傾向となっている。代わって天然ガス⽕⼒や地熱・太陽 光・⾵⼒などの再⽣可能エネルギーが増加している。CCT 技術開発に関しては、連邦経 済技術省(BMWI)による⽕⼒発電所の CO2 削減技術開発プロジェクト「COORETEC (CO2 Reduktions Technologien an fossil befeuerten Kraftwerken) 」において、⽕ ⼒発電所の CO2 削減技術開発研究が実施されている。COORETEC で作成された⽕⼒ 発電の技術開発に関するロードマップでは、発電効率の向上が技術開発の基本となって いる。IGCC の発電効率⽬標は、CCS なしの場合、2010 年 50〜52%、2020 年 54 〜57%、2025 年 57〜62%となっている。⼤⼿電⼒会社 RWE Power は、CCS を組 72 み合わせた IGCC プラントの 2014 年操業開始を予定しており、基礎技術開発、CO2 貯 留候補地(内陸部地下)の調査等を実施中である。⼤⼿電⼒会社 Vattenfall Europe 社 は、世界初の試みとなる、CO2 完全回収型⽕⼒発電所のパイロットプラントの操業を開 始した(表 3-4-4) 。回収された CO2 は、発電施設の地下 1,000 メートルにある岩⽯層 に液化した状態で貯留される。 表 3-4-4 イギリス、ドイツで計画中の IGCC(+CCS)プロジェクト 1) - イギリス: ⽯炭⽕⼒が発電電⼒量に占める割合は 1970 年代の約 60%から近年は約 35%まで減少しており、 発電電⼒量は⼤幅に減少した後、近年横ばい傾向となっている。 増加する電⼒消費量は、天然ガス⽕⼒・原⼦⼒によって賄われてきたが、原⼦⼒は近年 やや減少している。さらに、地熱・太陽光・⾵⼒などの再⽣可能エネルギーが増加して いる。2007 年 5 ⽉発表のエネルギー⽩書では、⽯炭⽕⼒発電における CO2 削減⼿段と して CCS を特に重要視している。2007 年 6 ⽉には、貿易産業省(現:ビジネス・企 業・規制改⾰(BERR) )が CO2 削減技術を専⾨にするアドバイザリー委員会を発⾜さ せた。本委員会は CCS 分野における専⾨的知⾒の強化を⽬指している。また、2008 年 11 ⽉にエネルギー法(Energy Act 2008)が成⽴した。この中で、CCS プロジェクト への⺠間投資を活性化することを⽬的に、CCS の許認可に関する法的枠組み(ライセン ス基準、違反時の罰則等)を創設した。EU への対応として、新設される⽯炭⽕⼒プラ ントについて CCS の追加設置が可能となるよう⼟地・スペースを確保する等、 CCS-ready を義務化する⽅向である。将来的にはすべての化⽯燃料種の⽕⼒プラント に CCS-ready を義務付けることを検討する⽅針である。このように、イギリスは CCS を地球温暖化対策における重要な柱としており、欧州での規制等のフレームワーク作り において主導的な動きを⾒せている。北海に有望な貯留地が確保されていることが第⼀ 73 の理由である。また、CCS 産業の育成による経済効果も理由の⼀つと考えられる。国内 では3つの代表的な IGCC(+CCS)プロジェクトを実施している(表 3-4-4)。イギリ スと中国は、2007 年に、CCS 技術を導⼊して中国の⽯炭⽕⼒発電所からの排出をほぼ ゼロにすることを⽬指す NZEC イニシアティブ(Near Zero Emissions Coal Initiative) を共同事業として開始した。また、イギリス政府はノルウェーとの間で、産官による「北 海盆タスクフォース」 (North Sea Basin Task Force)を設⽴。2007 年 7 ⽉には共同 で CO2 を北海に輸送・貯留するための調査を実施した。 - アメリカ: ⽯炭⽕⼒は全体の約 50%を占める主要電源であり、電⼒需要の増加に伴い 発電電⼒量も増加している。近年は、ガス⽕⼒・原⼦⼒の発電電⼒量が⼤幅に増加する ⼀⽅、⽯油⽕⼒は⼤幅に減少している。再⽣可能エネルギーによる電⼒も増加傾向にあ る。オバマ政権は CCS プロジェクトに 24 億ドルの予算を計上した。⽶国エネルギー 省は、以下に⽰す CCS 関連の 4 つのイニシアティブに取り組んでいる: ・ 炭素隔離リーダーシップフォーラム(Carbon Sequestration Leadership Forum: CSLF):⽶国が炭素隔離技術の開発と応⽤を促進するための国際協⼒を推進する場 として提案した組織。CO2 の回収、地中貯留等に関する多数のプロジェクトに対し て⽀援を実施。 ・ 地 域 的 炭 素 隔 離 パ ー ト ナ ー シ ッ プ ( Regional Carbon Sequestration Partnerships) :カナダを含む 7 つの地域から構成される炭素隔離技術開発に関す る産官学共同のパートナーシップ。現在、第三期(2008〜2017 年)として、異な る地層において⼤規模 CO2 圧⼊テストを計画中(図 3-4-39) 。 ・ FutureGen クリーンコール・プロジェクト(FutureGen Clean Coal Projects):⽯ 炭をガス化燃焼し、得られた⽔素で発電するとともに、CO2 を分離回収して地中隔 離するプロジェクト。300MW 以上の商業規模の複数の IGCC 他において、最新の CCS 技術を実証。約 90%CO2 回収、100 万 t/y 以上を貯留。 ・ 炭素隔離中核プログラム(Carbon Sequestration Core Program) :エネルギー⽣ 産によって発⽣した CO2 を対象とした、⾰新的な回収⼿法や再利⽤・貯留技術の開 発プログラム。 また、CCT 技術開発について、DOE(Department of Energy)や CURC(Coal Utilization Research Council) 、EPRI(Electric Power Research Institute)が各種ロ ードマップを発表している: ・ 「Clean Coal Technology Roadmap」(DOE, CURC, EPRI, 2001 年) ・ 「Strategic Plan」 (DOE, 2006 年) ・ 「CURC/EPRI Clean Coal Technology Roadmap」 (CURC, EPRI, 2007 年) 74 図 3-4-39 RCSP で計画中の 7 箇所の⼤規模 CO2 圧⼊試験パートナーシップ 1) - オーストラリア: 現在電⼒供給の約8割を⽯炭⽕⼒発電が占める。⽯炭は今後 40 年に わたり、オーストラリア及び世界で重要なエネルギー源であると想定されている。天然 ガス埋蔵量も多く、労働党政権はマニフェストにおいて、再⽣可能エネルギーや CCS が広範に利⽤可能になるまでは、増⼤する電⼒需要への対応としてガス発電の促進を掲 げている。オーストラリア政府は CO2CRC (Cooperative Research Centre for Greenhouse Gas Technologies)を設⽴した。CO2VRC(Ventilatory responses of CO2)は、CCS 等に関する研究機関で、国内企業・⼤学、国際機関や政府研究機関等 が参加している。政府/州政府のプログラムや参加団体等からの資⾦によって運営され ている。現在進められている主なプロジェクトは以下のとおり: ・ Otway Project; 2008 年4⽉から開始。オーストラリア初の CCS の実証試験であ り、CO2 圧⼊が開始されている。今後 5〜10 万トンの CO2 を圧⼊する計画。 ・ Callide Oxyfuel Project; クインズランド州の⽯炭⽕⼒発電所において、① 酸素 燃焼と CO2 の分離・回収、② 地中深層部での CO2 の⻑期貯留(地中隔離) 、の実 証試験を⾏う。2010 年後半から CO2 圧⼊を開始予定。⽇豪6社が参加し、両国政 府等から資⾦提供を受領。 また、COAL21 は、2003 年に創設された⽯炭⽕⼒発電起因の温室効果ガス排出削減 を⽬的とした、⽯炭・電⼒事業者、政府/州政府、研究機関等のパートナーシップであ る。事務局はオーストラリア⽯炭協会(ACA;Australian Coal Association)が務め る。2004 年 3 ⽉、発電燃料としての⽯炭についての低炭素技術開発の実際的な⽅法を 記した「COAL21 National Action Plan」を発表し、技術開発に注⼒すべき優先技術 を選定している(表 3-4-7) 。 75 表 3-4-5 CCT 関連の予算概要(2008.7.1〜2009.6.30)20) 表 3-4-6 オーストラリア政府出資の CCS プロジェクト(単位百万豪ドル)20) 76 表 3-4-7 COAL21 が選定した優先技術 20) 3.5 クリーンな⽯炭利⽤にかかる国の提⾔-今後の CCT の⽅向性 3.5.1 低炭素社会づくり⾏動計画(2008 年 7 ⽉、地球温暖化対策推進本部) 2008 年 7 ⽉に策定された「低炭素社会づくり⾏動計画」において、⾰新的技術開発のロ ードマップの着実な実⾏が提⾔されており、⽯炭利⽤の⾼度化については、以下のような ロードマップが明確に⽰されている: - クリーン燃料技術:以下を⽬指すために必要な技術開発、実証試験を進める: ・IGCC 発電効率:2015 年頃 48%、⻑期的に 57%達成 ・IGCF 発電効率:2025 年頃 55%、⻑期的に 65%達成 - CCS ・分離・回収コスト:2015 年頃にトン当たり 2,000 円台、2020 年代に 1,000 円台に 低減することを⽬指して技術開発を進める ・2009 年度以降早期に⼤規模実証に着⼿、2020 年までの実⽤化を⽬指す ・環境影響評価及びモニタリングの⾼度化、法令等の整備、社会受容性の確保などの課 題解決を図る - これらの技術を併せ、最終的には⼆酸化炭素の排出をほぼゼロにするために、⽯炭⽕⼒発 電等からの⼆酸化炭素を分離し、回収し、輸送、貯留する⼀貫したシステムの本格実証 実験を実施し、ゼロミッション⽯炭⽕⼒発電の実現を⽬指す。 3.5.2 Cool Earth – エネルギー⾰新技術計画(2008 年 3 ⽉、経済産業省) 低炭素社会の実現に向けて、 「低炭素社会づくり⾏動計画」に盛り込まれた施策を実施す 77 るため、経済産業省は 2008 年に「Cool Earth – エネルギー⾰新技術計画」をとりまとめ た。この中で、重点的に取り組むべき 21 のエネルギー⾰新を選定しているが、CCT 関連で は「⾼効率⽯炭⽕⼒発電」と「⼆酸化炭素回収・貯留(CCS)」が含まれる(図 3-4-40 参 照)。この⼆つの技術による、2050 年世界の⼆酸化炭素半減に⾄る削減へのエネルギー⾰ 新技術別の寄与度は 12%を占めると⾒込まれている。 (Cool Earth – エネルギー⾰新技術計画) 図 3-4-40 重点的に取り組むべきエネルギー⾰新技術 a. ⾼効率⽯炭⽕⼒発電 【技術開発ロードマップ】 - 先進的超々臨界圧発電:700℃級の A-USC を開発し、2015 年頃に発電効率 46%、2020 年頃に 48%の達成を⽬指す。 - ⽯炭ガス化複合発電:2010 年頃に発電効率 46%、2015 年頃に 48%を⽬指す。さらに、 1700℃級タービンの開発により 2025 年に発電効率 50%、2030 年以降に発電効率 57%の達成を⽬指す。 - ⽯炭ガス化燃料電池複合発電:2025 年に発電効率 55%、さらに⻑期的に 65%の達成 を⽬指す。 【技術の効果】 - ⼆酸化炭素排出量は、発電効率が 57%まで向上すれば約 3 割、65%で約 4 割の削減。 さらに、CCS と組み合わせることでゼロエミッション化が可能。 【効果的な技術開発と普及に向けた取組み】 - CCS と組み合わせた⼤型実証試験の実施、材料や触媒等の基礎研究の強化が必要。 78 b. ⼆酸化炭素回収・貯留(CCS) 【技術開発ロードマップ】 - 分離・回収コストを 2015 年頃に 2,000 円台、2020 年代に 1,000 円台に提⾔させるこ とを⽬指し、分離膜等の要素技術を開発する。 - ⼆酸化炭素挙動予測技術等の開発を進め、国内での⼤規模実証に早期に着⼿し、2020 年までに実⽤化の⽬途をつけることを⽬指す。 【技術の効果】 - ⽯炭⽕⼒発電所等の⼤規模排出源との組合せによりゼロエミッション化が可能。 【効果的な技術開発と普及に向けた取組み】 - 国際パートナーシップにおける連携強化、海外の⼤型プロジェクトへの酸化を通じた技 術・ノウハウの蓄積等、実証に向けた取り組みを推進。 - 技術の導⼊に向け、環境影響評価、法令等の整備、社会受容性の確保が課題であり、国際 的な連携の下、検討を進めることが必要。 3.5.3 総合資源エネルギー調査会クリーンコール部会報告書(我が国クリーンコール政策 の新たな展開 2009)(2009 年 6 ⽉、経済産業省) この部会では、世界的なエネルギー需給と⽯炭利⽤の状況や気候変動問題解決に向けた 国際的な化⽯燃料のクリーン利⽤の必要性に係る議論を踏まえつつ、我が国のエネルギー 政策における⽯炭利⽤の意義、実績をレビューするとともに、将来に向けた世界的な気候 変動問題の制約下での我が国の⽯炭利⽤分野における役割や⽅向性に関して議論された。 また、⽯炭輸⼊⼤国として⽯炭の安定的経済的な確保に向けた対応のあり⽅についても議 論され、⽯炭の利⽤・開発両⾯における我が国のとるべき対応の⽅向と官⺠の役割につい て提⾔がなされている。主なポイントは以下のようである: 世界的に需要が拡⼤する⽯炭のクリーン利⽤に関する技術開発を協⼒に推進する(Cool Gen 計画)。また、我が国の優れた⽯炭利⽤技術を海外に普及し、地球温暖化問題に貢献す る(Clean Coal for the Earth 計画) 。 - 世界は経済成⻑のため⽯炭利⽤を拡⼤ - 我が国の⽯炭利⽤と3E 達成 - 環境配慮した⽯炭利⽤技術は⽇本が No.1 - 我が国の対応の⽅向性 Cool Gen 計画の推進:IGCC と CCS によるゼロエミッション⽯炭⽕⼒の実現 Clean Coal for the Earth 計画の推進:⽇本から世界へクリーンコール技術の普及 産炭国との重層的な関係強化 我が国のクリーンな⽯炭利⽤に関する情報発信と⼈材育成・確保 79 3.5.4 技術戦略マップ(2010 年 6 ⽉、経済産業省) 経済産業省がとりまとめた技術戦略マップ 2010 は、国家的に重要な産業技術のロードマ ップを俯瞰したもので、31 の技術分野について記載されている。エネルギー分野において は、「化⽯燃料の安定供給確保と有効かつクリーンな利⽤」を政策⽬標の⼀つとして設定し ており、CCT に関する項⽬が含まれている。図 3-4-41 に CCT に関連する技術マップを⽰ す。 中分類 ⽯油・天然ガス・⽯炭の 探鉱・開発・⽣産技術 ⽯炭のクリーン利⽤技術 エネルギー技術 個別技術 ⽯炭開発技術 ⽯炭⾼度⽣産・選炭技術 (難条件⽯炭開発技術等) 2013年頃 省エネ型 産業プロセス 次世代コークス製造法 (省エネ型コークス製造等) 2011年頃 製鉄プロセス (省エネ型製鉄技術等) 実⽤化中 バイオマス 燃料製造 ⽯炭付加バイオマス燃料製造技術 (⽯炭・バイオマスブリケット製造技術等) 2017年頃 ⽔素製造 ガス化⽔素製造 (⽯炭ガス化ガスからの⽔素製造技術等) 2020年頃 ⽯炭⽕⼒発電 先進超々臨界圧⽕⼒発電(A-USC) (ボイラ・タービンの新合⾦開発等) 2015年頃 ⽯炭ガス化複合発電(IGCC) (⽯炭ガス化技術、多炭種対応技術等) 2015年頃 ⽯炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC) (⽯炭ガス化技術、⼤容量燃料電池開発等) 2024年頃 微量物質排出削減技術 (微量物質の挙動把握、捕集技術等) 2015年頃 次世代⽯炭粉砕技術 (超微粉砕技術等) 2014年頃 ⽯炭液化技術(CTL) (褐炭液化技術等) 2012年頃 ⽯炭⽔素熱分解技術 (コプロダクション技術等) 2016年頃 ⽯炭ガス化多⽬的利⽤技術 (代替天然ガス製造技術) 2021年頃 ⽯炭灰の⾼度利⽤技術 (⽯炭灰の有効利⽤技術等) 2014年頃 ⽯炭無灰化技術 (ハイパーコール製造技術等) 2014年頃 低品位炭改質・利⽤技術 (褐炭改質技術等) 2011年頃 ⽯炭乾留ガス改質・有効利⽤技術 (無触媒COG合成ガス製造技術等) 2016年頃 ⾼効率⽯炭転換技術 (プラズマ⽯炭ガス化技術等) 2026年頃 ⼆酸化炭素分離回収技術 (化学吸収法、膜分離法等) 2016年頃 ⼆酸化炭素地中貯留 (⽯油・ガス増進回収技術等) 2015年頃 ⽯炭利⽤技術 その他・共通技術 ⼆酸化炭素 回収貯留 実⽤化 (技術戦略マップ 2010, 経済産業省より作成) 図 3-4-41 CCT 関係技術戦略マップ 80 3.5.5 エネルギー基本計画(2010 年6⽉) 2010 年 6 ⽉に策定されたエネルギー基本計画においては、 「⽯炭は化⽯燃料の中で CO2 排出は⼤きいものの、コスト・供給安定性の⾯で優れたエネルギー源である。CCS(CO2 回 収・貯留)や IGCC(⽯炭ガス化複合発電)等地球環境と調和した⽯炭利⽤技術を確⽴し、 今後も適切に活⽤していく。また、世界最⾼⽔準にある我が国の⽯炭利⽤技術の競争⼒を 維持し、世界各国に普及させていく。」としている。 また、⽯炭の安定供給確保のために、 - ⽯炭資源の探鉱・開発やインフラ整備に対する協⼒に加え、我が国のクリーンコール技 術の技術移転を推進し、産炭国における⽯炭の利⽤効率を向上させ、産炭国における⽯ 炭需給の緩和や⽯炭埋蔵量の維持に貢献 - 未利⽤資源である亜瀝⻘炭・褐炭等の低品位炭を、地球環境に配慮しながら有効に利⽤ していくことが、世界的な資源エネルギー需給の安定に不可⽋であり、産炭国において 未利⽤な低品位炭について、我が国の優れた⽯炭ガス化技術や改質技術等による有効利 ⽤を進め、産炭国におけるエネルギー需給の緩和に貢献 - 炭鉱メタンガス(CMM)の回収やコールベッドメタン(CBM)など⽯炭資源に関連し た⾮在来型エネルギーの開発も、産炭国と協⼒しつつ積極的に取り組む としている。 化⽯燃料の⾼度利⽤に関しては、 - ⽯炭⽕⼒発電については単位発電量当たりの CO2 を低減させるため、現在運転中の⽯ 炭⽕⼒における効率改善やバイオマス混焼及び⽼朽⽯炭⽕⼒のリプレース等による最 新設備の導⼊を推進することにより、⾼効率化・低炭素化を進める - 当⾯新増設⼜は更新される⽯炭⽕⼒発電については、原則として IGCC 並みの CO2 排出量に抑制 - 我が国が有する世界最⾼⽔準の⽯炭⽕⼒発電技術をさらに⾰新していくことが重要で、 IGCC・A-USC(先進的超々臨界圧発電)等について、更なる⾼効率化や早期の実⽤化 を⽬指して、官⺠協⼒して開発・実証を推進 - このような⾼効率⽯炭⽕⼒の開発・実証・導⼊を国内で進めつつ、将来に向けてゼロエ ミッション⽯炭⽕⼒発電の実現を⽬指す - その実現のため、2020 年頃の CCS の商⽤化を⽬指した技術開発の加速化を図るとと もに、今後計画される⽯炭⽕⼒の新増設に当たっては、CCS Ready30 の導⼊を検討 - また、商⽤化を前提に、2030 年までに⽯炭⽕⼒に CCS を導⼊することを検討 としている。 ⽯炭の⾼度利⽤については、 - IGCC 等の⾼効率化と CCS の技術開発を推進するとともに、これらの技術を合わせ、 ⽯炭⽕⼒発電等からの CO2 を分離・回収・輸送・貯留するゼロエミッション⽯炭⽕⼒ 発電の実現を⽬指す 81 - また、国内⽯炭⽕⼒最新鋭技術の実証の場として位置づけ、これを基盤として海外展開 を進める - 海外でも多数の CCS の技術開発や実証事業が実施・計画されていることから、国内で のゼロエミッション⽯炭⽕⼒発電の実現を図る上で、これら海外との共同研究等により、 効率的に技術開発を実施 - ⽯炭⽕⼒発電等のシステムの海外展開に対しては、⾦融⾯から⽀援するため、JBIC の 先進国向け投資⾦融の対象の拡充や NEXI の貿易保険の拡充等を実施 - ⾼効率⽯炭⽕⼒発電の海外での新設に当たって、我が国技術の現場適応化を⽀援すべく、 プロジェクトの⽴案段階から⽇本企業が参画できるよう実現可能性調査や⼈材育成等 の多様な⽀援策を講じる - 海外の効率の悪い⽯炭⽕⼒発電に対して、設備改修による効率向上のための設備診断事 業や運転管理⾯での改善による効率低下の防⽌のためのコンサルタント事業を実施す るとともに、我が国企業の貢献を適切に評価する新たなメカニズムの構築を図る - 加えて、国内の中⼩規模の⽯炭焚きボイラについても、燃焼効率改善の診断事業を実施 するともに、必要な設備改修を⽀援する としている。 (参考資料) 1) 経済産業省資源エネルギー庁資源・燃料部⽯炭課;「地球を救うクリーンコール(我が 国クリーンコール政策の新たな展開 2009)」, エネルギーフォーラム, 2009 年 12 ⽉ 2) 持⽥勲 他; 「図解クリーン・コール・テクノロジー」, ⼯業調査会, 2008 年 8 ⽉ 3) (株)エネルギーフォーラム;電気事業事典, 電気事業講座 2008 別巻 4) 株式会社東芝; 「A-USC の技術の開発及び CCS 技術への取組み」, JCOAL-CCT ワーク ショップ講演資料, 2009 年 8 ⽉ 5) NEDO, JCOAL;「⽇本のクリーン・コール・テクノロジー(⽯炭分野における技術⾰新 を⽬指して) 」, NEDO, JCOAL, 2006 年 3 ⽉ 6) 経済産業省:クリーンコール技術開発研究会報告「⾼効率⽯炭発電と⽯炭多⽤途利⽤の 今後の技術体系と研究開発の⽅向」, 2009 年 6 ⽉ 7) 経済産業省:エネルギー⽩書 2010 年版, 2010 年 8) 経済産業省:「平成 21 年度天然ガス化導⼊促進基盤調査(⽯炭からの代替天然ガス (SNG)製造技術に関する調査)」仕様書, 2009 9) ⽯炭利⽤技術評価委員会; 「環境負荷低減型燃料転換技術研究開発」プロジェクト評価 (事後)報告書, 2007 年 3 ⽉ 10) ⽇本 GTL 技術研究組合;http://www.nippon-gtl.or.jp 資料(2010) 82 11) 重久卓夫; 「UBC ⼤型実証プロジェクト」, JCOAL Journal Vol.5, 2006 年 9 ⽉ 12) NEDO 研究評価委員会; 「ハイパーコール利⽤⾼効率燃焼技術の開発」事後評価報告書, 2009 年 3 ⽉ 13) ⽯炭利⽤技術評価委員会; 「⽯炭⾼度転換コークス製造技術の開発」SCOPE21 事後評 価報告書, 2005 年 2 ⽉ 14) Working Group Ⅲ, IPCC; “Special Report on Carbon Dioxide Capture and Storage”, Cambridge University Press, 2005. 15) Working Group Ⅲ, IPCC; “Contribution of Working Group III to the Fourth Assessment Report of the Intergovernmental Panel on Climate Change 2007, Cambridge University Press, 2007 16) 株式会社環境総合テクノス;⼆酸化炭素固定化・有効技術等対策事業補助⾦「⼆酸化 炭素炭層固定化技術開発 総括報告書」, 2008 年 3 ⽉ 17) (財)⽯炭エネルギーセンター;JCOAL Magazine, No.44, 2009 年 12 ⽉ 18) 北海道電⼒資料;北海道電⼒ホームページ・環境への取組・⽯炭灰の有効利⽤, http://www.hepco.co.jp/ato_env_ene/environment/coal_ash/index.html 19) CCS 調査株式会社資料;http://www.japanccs.com/, ニュース&トピックス 20) 環境省, 低炭素社会づくりのためのエネルギーの低炭素化検討会; 「低炭素社会づくり のためのエネルギーの低炭素化に向けた提⾔, 第 4 章」, 2010 年 3 ⽉ 83