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電力 力節 節減対 対策 策の進 進め め方
ガイ イドブッ ック 製造 造業が「ものづ づくり革 革新」と共に見 見直す 電力 力節 節減対 対策 策の進 進め め方 この書は 3・11 と共にク クローズア アップした「電力対策 策をモノづく くりの基本 本を見 直し しながら系統 統的に進め めたい」とい いう JMA に関与する に メーカーか からのご要 要求を 受け け、セミナー ーで実施し してきた内容 容です。加 加えて、電力事情の変 変化と『創 創電力 対策 策』を加え、 、製造業の の皆様のガイ イドとして ていただきたく、対策 策をまとめ めまし た。是非、多く くの企業で でのご活用を を願う次第 第です。 2012 年 年冬・吉日 日 (有)QC CD 革新研究 究所 代表 表取締役所長 長 中村 茂弘 茂 (JMA:一 一般社団法人日本能率協会 会・専任講師 師担当) はじめに 電力対策に対する筆者の体験は、1980 年のオイルショック時代に日立金属㈱ で省資源・省力対策本部を担当し、①工場に設置された電気炉の遮蔽にカオー ルという断熱材が大きな役割を果たしたこと、②省資源・エネルギー対策 MAP が広く産業界では活用され、③各社のノウハウ交換と共に大きなエネルギー対 策を果たしていったことを思い出す程度である。以降、正面から、この面の対 策を手がけることはなかった。このため、3・11 と共に起きた電力問題に対して 「日本メーカーの電力対策は限界まで行ってきた」という程度の認識だった。 だが、3・11(東日本大震災)に端を発った福島・第一原発事故に伴う巨大な電 力不足は、製造業に停止を迫るほど大きな問題を投げかけた。 このような時、JMA・関西のある企業から、 「系統的、徹底した電力対策をス ピーディーに進めたいので支援して欲しい」というご要求が筆者にあり、悩ん だ結果まとめた資料がお役にたった。それが、本書の題名にした「モノづくり 革新と共に電力対策を進める」対策である。また、 「モノづくり技術革新は企業 本来の取り組みです。是非、その進め方を紹介願いたい」という評価をいただ いた。そこで、JMA で産業界に対策法を問いかける形でセミナーを開催、同時 に、URL:qcd.jp を通して、当面の電力対策法を無料紹介の形で公開してきた。 その結果、多くの企業でご活用がなされたわけだが、セミナー終了に併せ、こ こに、その総てを無料公開することにした。 本書に記載した取り組みは、①LED 置き換え~各種を進め、当面の電力対策 を早急に進める(省電力チェックリストのフル活用) 。②モノづくりを進めるレ イアウトの改善を図り電力の大幅削減を図る。③製品製造・製作技術を革新し て革新的に電力を使わない生産具体化を図るという 3 ステップで電力低減を進 める方式であり、個々の電力使用機器の対策はその一部である。 現在、電力使用は電力会社が中央統括する形態から、分散型に移行しつつあ る。電力の自給自足~創電力ビジネスの時代に入った。そこで、セミナーでは れていなかった『創電力対策』を加えた。 読者の皆様には、是非この変化をビジネスチャンスととらえ、 「モノづくり革 新を図りながら電力低減、否、高々度の電力利用効率化をどのように進めるか」 という一助になれば幸いです。 2012 年元旦 (有)QCD 革新研究所 所長 中村 茂弘 (JMA・専任講師担当) 目 次 第1章 電力対策を科学的に進める必要性 1-1 マクロ、政治的観点でとらえると判断を誤る 1-2 工場の省電力対策に必要な科学的分析の条件 1-3 力率など、基本的に知っておくべきムダな電力発掘法 1 7 11 第2章 既知技術の転用で進める緊急的な省電力対策 2-1 ソフト的対策 2-2 ハード的対策 2-3 小規模発電を含む自家発電対策 16 29 35 第3章 モノづくりの基本の見直して進める省電力対策(ホップ) 3-1 レイアウト改善モデルでつかむ電力低減対策 3-2 レイアウト改善からレイアウト革新の技術 (ステップへの準備) 3-3 レイアウト改善に関与する有効な電力低減技術 39 51 56 第4章 モノづくり革新と省電力対策(ステップ) 4-1 筆者が関与したモノづくり革新による電力利用革新モデル 63 4-2 多くの企業で行われてきた 70 モノづくり革新による電力利用革新モデル 第 5 章 自給へ向けた『創電力対策』(ジャンプ) 5-1 大手企業が取り組みを開始した『創電力対策』とビジネス 5-2 企業が取り組み成功しつつある『創電力対策』 79 84 第1章 電力対策を科学的に進める必要性 1-1 電力問題をマクロ、政治的観点でとらえると判断を誤る! 3・11・東日本大震災と共にクローズアップした電力問題は、工場に大きな危 機を与えた。だが、その後の電力対策はマクロ的、政治的な憶測による対策提 案が多く、産業関係者には対策の評価ができない。そこで、以下、物理量を把 握~対策へ向けることが必要な電力低減対策に対し、科学的アプローチの必要 性と、企業が電力対策を進める要件を整理することにする。 (1)今も疑問だらけの発電種毎のコスト比較 原子力村と電力会社は「原発は安価」としてきた。 『総括原価方式』という奇 妙な算定である。信じられないことに下に示した理由と共に、この方式は、ど んぶり勘定で電力会社にかかった費用を計算し、利益を上乗せして電気料金を 決める方式である。このため、現在「原発による発電はコストが安い!」とさ れても誰も信用しない状況である。 原発建設地への補助金、税で払われる各種人件費と電力コスト 原発は、日本の国策として米国のマークⅠを導入して進めてきた。このため、 多くの税金が投入されてきた。だが、この費用は原価に入れていない。電力会 社は、原発建設費と現在の通常ランニングだけを電力 1KW あたりコストで比 較した内容を出して、火力、水力などのコスト比較をしてきたため、原発は安 価となる。加えて、近年、ようやく開発費、原発を抱える地域への補助金、原 子力村の維持に関する政治家や機関、学者?などの人件費は全て税金で賄われ てきたことが報道されたが、そのコストは膨大だが、ここに含まれない。 数億年に渡る放射能廃棄物コスト 「トイレの無いマンション問題」の言で知られるように、六ヶ所村に満杯に なった放射能廃棄物と維持コストは後世に付けを回す形で維持・処理費が支払 われてゆく。かつて、もんじゅの実現に期待を持たせた。だが、もんじゅは実 現不可能なことが判ったため、正に、原子力廃棄太の維持、管理コストは後世 に付けを回す状況である。ちなみに、この費用は、数億年に渡れ、税金で支払 われる。また、その額は国が税金で支払い、電力代に加算していない。 福島・第一原発の影響コスト~将来の原発リスク関連のコスト 福島・第一原発では、信じられない量の放射能が飛散した。今後、影響が出 ないことを祈るわけだが、本書を書く時点で 16 万人もの方々がかつて住居し た地を離れた生活を強いられている。地域によっては、数十年は戻れない状況 である。加えて、福島県を中心に、風評を含めた農作物や魚などの食品を中心 とする被害、福島からかなり離れた地であっても、シイタケなど、キノコの類 1 が放射能汚染で全く出荷できないという被害が出ている。このため、農家は自 費で農作物の出荷に際しての自主検査の負担を始めた。漁業においても、放射 能汚染で出荷ができない対象が続く状況である。さらに、間接的な被害として、 観光地の客数が低下した問題。さらには、放射線汚染地や家屋の洗浄対策、 ・・・、 転地や長期の転地暮らしに伴う就業チャンスを失う状況。また、このための精 神的な負担など、金額換算できない対象を、もし、コスト算定した場合、原発 コストはどのような金額になるのであろうか?誰が考えても想像を絶する高 額になるはずだが、この種の金額の多くは原発コストに含めてない。 以上、企業であれば、当然コスト計算の際、その中身を明確にして審議~ 評価、対策をする。だが、この種の内容(原価の詳細な中身)を明確化にした 原発の電力コストを算定した例を筆者はまだ見たことがない。ご関係者の皆様 には、是非、この種の内容の早期公開した後で原発コストを他の発電コストと 比較した内容を我々に示して欲しい状況である。 以上、マクロ的な電力コスト比較(結果のみ公表された内容)が各種電力コ ストを比較して、政治的に「原発は安価!」としてきた無意味な現象を整理し た。3・11 以降、原子炉は人類には制御不可能であることが明白となり、原発に 代わる発電方式の開発を早急に進めなければならない段階に入った。そうなる と、「これから原発対策に投じる資金を、どれだけ他の発電技術に回せるか?」 が、日本における今後の電力対策の要件となる。なお、この対処は、国による 取り組みを待つ分野であり、とても、筆者や企業では手が及ばない領域である ため、ここでは、問題の提起だけに留めた。 (2)企業が考慮すべきマクロ的な電力対策の方向 現在、電力使用状況の詳細がほとんど公開されない状況である。そこで、電 力使用量に関し、マクロではあるが、公開されたデータを用いて製造業が対処 すべき電力対策法を探ることにしたい。 ① 電力利用者カーブの解析から見る電力使用の面の仕分け対策の必要性 まず、図1-1をご覧願いたい。これは、昨今報道された例だが、電力使用状況 の時間推移を3区分に分けて示したカーブである。このデータは関西電力管内だ が、一般家庭で使用する電力が30%、オフィス関連が41.7%、企業(工場)関連 28.4%だった。電力問題が問いただされるのは、①ピーク対策だけである。②製 造業で問題となる溶解炉や各種電気炉などは、100Vをはるかにこえた高電圧と 電力量が対象であり、一般家庭やオフィスなどで使用する電力と質が大きく異 なる。これに対し、③家庭やオフィスの電力は分散して大量に使うが、電力の ピークが問題になる時、簡単な蓄電器を利用した機器でカバー可能な対象であ 2 る。 そうなると、まず、企業が考えるべきことは、次のような提言となる。 【提言1】他(家庭とオフィス部門)への働きかけの必要性 「図1-1が示す内容は、製造業の電力使用は全体の28.8%であるという点であ る。歴史を経て電力低減努力を図ってきた製造業に対し、さらに投資や技術開 発を伴う電力低減技術の投入を願い、更なる電力提言努力を願うことには、今 後も続くだろう。だが、電力問題は日本全体で考えるべき問題である。また、 製造業だけに電力低減を集中することで、日本全体の電力低減を進めることに は難が多く、電力全体を低減する上で貢献度の面で少ない。そこで、対策だが、 2012年4月23日報道ステーション 並びに 日刊工業新聞 特徴:変動部はオフィスと家庭、しかもピーク時だけが問題 「14:00~16:00頃までの対策に集中すべき」となるが、 この時間帯と電力ならば、蓄電や太陽光などの利用は大きいことが判る。 産業用:28.3% 1700万KW 業務用:41.7% 2500万KW 家庭用30% 1800万KW ピーク 6,000万KW 図1‐1 電力利用の3層構造(東電管内の場合) 従業員には家族がお られる。また、近隣 の住民や製造業以外 にオフィスやビルを 構えて仕事される 方々とも深い関連を 持つが、ここで使用 する電力は71.1%で あり、大半が100V or 200Vである。この電 力は数時間なら蓄積 可能な電力である。 そうなると、近隣の 家庭やビル、オフィス関連部門に働きかけてピーク時の電力を下げる策を展開 することは、極めて実務的な対策となる。特に、この種の電力は、ガスで温水 を沸かすと同時に発電する。夜間電力や太陽光、風力発電を用いて蓄電活用す る対策が適用できるためである。ここに、昨今、開発が大きく進む温水利用、 小規模流水発電など、各種の小規模発電で電力を充当する対策を地域の協力を 得ながら進める策が付加される(昨今、このビジネスが広がっている)。 以上、最産業をとりまく家庭やオフィスなどで使用する71.1%大量な電力分 野に対し、製造業の家庭や近隣の支援を得て低減して行く対策の必要性を記載 した。 ② 電力ピーク時の実態と対策 2012年夏、関西電力管内では、10%の電力不足を訴え、大飯原発の再稼働を 進めた。だが、この管内の方々の努力が大きく、2012年歴史的な猛暑にもかか 3 この種のピーク時に 使うことは低減に ピークの貢献する わらず、再稼働の必要が全く無い状況で電力問題は乗り越えることができた。 当然、猛暑を過ぎた後、電力不足は全くない。また、活断層が活動する心配が ある。だが、その後も、政治判断と称し、関西電力は活断層の懸念がある大飯 原発の稼働を続けると同時に、余剰電力をムダな状況で空中に捨てている。こ の実情を科学的解析の立場で見ると『不可思議な対処』ということになる。 では、図1-2をご覧願い、“電力問題”という問題の実態を紹介することにし たい。電力問題が問い 夜間に空きが 本日のピーク時 ただされるのは、ピー 発生している 供給力4,000万KW 状況 ク時だけである。しか も、その対象は、全電 力使用時間の5%程度 である(猛暑と冬場の バッテリー (2次電池)に 一部に限定される)。 蓄積~活用 それ以外はムダに電 4月27日当日の実績 気を捨てているとい URL :東京電力提供 http://www.tepco.co.jp/forecast/index‐j.html う状況になるわけだ 電力不足:「メーカーは、一般論ではなく問題の本質を見ることが重要!」 電力不足はビジネスチャンス! が、これが交流発電方 ①風力発電、②地熱発電、③農業用水発電・・・(n)地下の冷気クーラー 式の持つ宿命であり、 図1‐2 電力の需要:供給カーブ 一括・大電力発電所が 提供~管理方式する電力の形態である。 【提言2】全電力使用時間の5%程度の電力ピーク時の対策 電力会社の説明は、常に、「①大規模発電は使用量を見て、急に動かしたり 止めたりできない。②万一、火力発電が停止した場合のバックアップが、電力 供給保障上、必要である。③原発の全く停止は雇用問題、地域への補助金の関 係、技術維持(伝承など)の上からしたくない」といった説明を繰り返してき た。だが、電力会社間の電力の融通対策、日本の西/東で異なる50/60サイクル 変換設備の充実、揚水発電や地熱発電の開発が進んでいる状況を知るなら、こ の種の説明は意味を失いつつある。このように科学的な分析をすると、(1)ピ ークを超える懸念が出た場合、電力会社が警告を出し、管内の電力使用を制限 願うことによってしのぐ策を進めるべきこと、(2)揚水発電など、電力会社が 持つ緊急対応発電や、優先度を事前に定めた電力をデマンド方式で止めてしの ぐ対策の充実。 (3) 工場では連絡を受け、先の提言1に加え、補助発電機を稼働 させる等の緊急対策を発動する、といった対策を実施すれば、ピーク対策は十 分にカバーできるはずである。 4 ③ 災害対策と結合して蓄電対策の普及について 既に解説したように、ホームセンターや通信販売でも100Vの交流を直流化~ 蓄電し、使用時に蓄電池から交流電流を出す装置が一般化してきた。問題は、 蓄電容量を大きくすると、価格は増し、重量も増すという点がある。このため、 電力ピーク対策だけにしぼって家庭やオフィスに普及するには難が多い。だが、 単なる蓄電に限定せず、南海トラフ、駿河湾先にたまった地殻変動エネルギー による大震災が迫る状況を考えると、被災時のエネルギーインフラ対策の効果 的な備えとして設置の意義は大きくなる。このため、EVの電池を活用する対策 がPRされている。日産リーフやPHVでは、既にこの備えをPRの一部にしてい るが、1家庭の3日分程度の電力はEVで提供可能である。加えて、ここに、水を 高地のため池にためて発電に使う揚水発電、ばねや重量物を吊り上げ降ろす際 のエネルギーを発電に使うなどの方式を加えると、蓄電開発の幅は広くなる。 【提言3】緊急時の蓄電活用と発電対策 (1)と(2)は電力会社の事情で左右される。だが、工場も近隣企業と連携して、 発電機の設置と緊急時の稼働対応を図る策を準備する策は重要な対策である。 筆者のつたない体験談で恐縮だが、日立金属㈱勤務の時代、筆者は米国工場 の建設~赴任となった時、電力問題を考え、米国オハイオ州に建設する工場に かなり大きいUPS:Uninterruptible Power Supply(無停電電源装置)を設置し た。このような状況で工場の操業が始まり、雷の猛襲で度々停電したが、重要 機器や設備はスタビライザーで停電時に影響は皆無だった。 3・11後、太陽光発電に注目が集まる中、UPSの専門販売企業が筆者に連絡を してきたが、その内容は、「過去、工場用に販売してきたUPSを日常的に用い て、太陽光発電の蓄電に使う。緊急時にはUPSが得意とする機能をそのまま、 災害時の電力補給に使って被災時のエネルギーインフラに対応させる策を一般 家庭に普及中!」というものだった。この時、筆者の体験談を思い出したわけ だが、この策も日本における工場生産に適用すべき方策に一例である。 ④ 電力のスマート化に伴う電力利用法の変化 【電力発電・利用構造の変革展望に対する展望】 3・11に発した日本の電力危機は発電・送電・利用に対する構造変化を大きく 進める起点となった。代表例はスマートグリッド化の取り組みである。この対 策は、現在、個人の電力自給と地球環境問題対策の在り方として、また、自治 体や企業、大学や専門機関などを中心に各地でモデル的な対策が強化されつつ ある(詳細と成果は、スマートグリッドの事例を紹介したURL取り組みをご覧 願うことになる)。現在、送電と発電の分離が検討され、すでに、一部では発 5 電メーカーの参入がなされている。加えて、工場やビル等が発電で余った電力 を他に提供する例が出てきた、このように、電力事情が変革の段階に入りつつ ある。特に、スマートハウスなどは、電力会社から電力供給なしで活動する方 向で活動する例を具体化させつつある。この状況を図1-3の右下に示したが、 今後、このよう 2011年8月27日NHKスペシャルで電力問題を取り上げたが、1時間毎に使用電力を並べ、パレート 分析した結果、昨年のデーターでは使用制限電力を越える時間は95時間:全体の5%程度だった な変化は進むと (環境エネルギー問題研究所・所長・飯田哲也氏の説明)。 ① このために原子炉を再稼働させるべきか? 考える。対象は ② 火力など大がかりな発電で電力供給レベルを増加させるべきか? ③ 逆に、ピーク時にどのような効果的な対策(例:ピーク前に大口需要者に報せ使用を制限など) 異なるが、似に の対策だった。だが、対策は、①国ベース(大枠)、②交流電力は蓄積出来ない。③安定供給の ためには風力、太陽光発電を加え、大量発電による余力が必要という前提の対話だった。 あった。インタ ピーク対策の前提を変更すれば NHKスペシャルY11‐8‐27において ーネットを用い 集中方式から 対策は見つかる! 飯田氏が示した電力使用の実績 分散方式へ ① 交流対策 → 交・直両用対策 たコンピュータ ② 大規模処理 → 小型分散対策 ③ 連続使用対策 → 時差、蓄積使用 の変化である。 情報通信は、か ・・・・・・・・・・・ この対策は大投資! 小型蓄電器による つて、大型コン 全体の5%:95時間がピークを 交流→直流→蓄電 越えるという状況であり、交流 →直流→交流利用 ピュータ設備を 使用と安定供給の状況では、 ・一種の小規模スマート この対策が重要としていた。 グリッド方式でピーク 中心とした中央 カット(非ピーク時蓄電) 統制する方式だ 図1‐3 電力対策手段の変化 った。だが、 現在、インターネットの利用で分散型であり、利用料は無料である。スマート ハウス化が進むと、電力供給も、これに似た例となるはずである。適用は100V ~200Vという弱電域に限った話だが、電力のスマート化で、自給・分散型対策 が進む状況である。余った電力を電力会社に売る手法もある。だが、無料で地 域が共同で電気使用を進めるスマートグリッド化が進んだ場合、スマートハウ ス・グループ集団が分散型で蓄積活用し、電力会社に頼らないという方式が実 現するはずである。確かに、この集団に、投資金額やメンテナンス費用程度を 電力使用量に従って相互に費用分担をする問題は残る。また、万一、電力ピー ク問題が発生した場合、緊急時のために用意したグループ内に設けられた小型 発電機の稼働をすればよい。 以上、この種の対策が進めば、日本においては、インターネットの普及と同 様に、分散型の発電・送電・電力使用システムの普及となり、現在は問題とな っている大手電力会社が訴えるピーク時の問題は別枠となる対策を記載した。 事実、電力会社の値上げは、確実にこの種の対策を加速しつつある。 6 1-2 工場の省電力対策に必要な科学的分析の条件 電力対策に政治的判断なるものを駆使する行為は、例えば、水が上から下へ 落ちるのを見て、永久エネルギーを考えるような努力に過ぎず、科学的意味を なさない。この種のアイデアは、たとえ絵や動画は描けても実現不可能なため である。科学が持つ特質は、①原因と結果のメカニズムを図や数式、数値と共 に示すから万人に判りやすく示す点にある。また、②定量的である。このため、 ③繰り返し性(再現性)に確実性が保証されるので万人信頼されるのである。 言うまでもなく、物理量が作用する電力対策は科学的解析を基とすべき対象 である。そこで、以下、読者の皆様には恐縮だが、学生時代に戻った積りにな り、科学的に電力を解析する要件を整理することにする。 (1)産業における科学的アプローチの種類と活用 図1-4はEVの配線では注意を要する事項の例だが、ある電力使用機器に所定の 電力供給がなされないメカニズムを示した例である。図で示したように、この 例では、電球に 必要部に必要な電力を得られない 規定の電力(W0) 状況(問題)の解析内容示した を供給したいわ 原理図の例 R0 けだが、マイナ 電力:W ス部分に接触抵 W0=i02・R0:初期状態 抗があり、そこ で、電力が消費 Wn =in2・(R0+R1・・・ R1 R2 :接触抵抗部分が増えた状態 されたために、 Wo>In2・R0の このため、必要部分(W0)に Rn 状態となり、得 十分な電力が得られない例 たい場所に十分 2 W0 > in ・R0 な電力が得られ ない状況を示し 図1‐4 直流利用における電力活用メカニズム ている。これは、 無駄に電気が、多種存在する接触抵抗に奪われる例を示したものである。この 例は接触抵抗による使用電力の低下である。電気回路において、これ以外にも、 電力低下の要因がある。例えば、銅線の温度が上がった場合電気抵抗は増加す る。また、配線経路が長く細い場合や、銅線の老化で同線が細くなった場合な ど、電気抵抗が増すため、この種の事項は、工場における各種設備や機器など の設置や配線、利用の際、注意すべき基本事項である。 工場の電力対策における科学的解析のアプローチは①仮説の設定、すなわち、 「無駄に使われている電力はないか?」という考えで電力使用の理想状況から 7 現状を見直し、理想-現状=ムダの可能性を予測することが出発点とすべきで ある。その後、②分析:電力利用状況の詳細な分析を行った後、③総合:全体 と個々のデータを見て、図化や表などを用いて、最適の対策を見つける、『見 える化』という環境整備を行い、④評価:最適な対策を数件抽出する、という 手順で進める(このアプローチが代表的な科学的アプローチである)。 なお、科学的アプローチは上に示した1種類だけではない。図1-6にその例を 示したが、GEの前会長・ウエルチ氏が就任時に進めた6シグマで投入した科学 的アプローチは 代表的科学的アプローチ 考古学で用いる科学的アプローチ お客様の製品ニ 1、仮説の設定 1、観察 ーズ(期待)と、 2、分析(VEはアイデア発想~抽出) 五感の全てを駆使して変化を明らかにしつつ 3、総合 観察を行い、その対象と特質を明らかにする 製品使用状況を 4、評価 2、分類 十分調査した後、 対象とその特質を整理した後、目的との関連 において構成要素を分類、定義する シックスシグマが用いる 製品開発を行う 3、測定:必要·重点項目の定量化を量る 顧客志向解析アプローチ 4、収集して組織化 ものである。考 1、定義:顧客と要求を定義する データを収集、記録を行いつつパターンの類似性、 特徴などを比較、分類、明確化する処理を行う 古学の場合、現 2、測定:問題となっているキーを 5、予測し、推論する 確定して、データ収集する 代人が現在の生 6、変数を明確にする 3、分析:今まで達成していなかった 根本原因を明らかにする 推論に基づく仮説を立て、仮説を実証する方法 活環境で物事を 4、改善:改善案をつくりテストする を考える. 考えても実態把 5、統制:具体化へ向け、開発~実行 7、まとめあげる:現物や図面で具体化する. するが、このための文書化も行う. 握に間違えを犯 図1‐5 異なる科学的アプローチの例 す危険が多大と なる。そこで、発掘した生活用具や食用後のゴミなども集め、小さな小片と情 報をジグソパズル的にならべ、全体を構成して行く中から、古代の生活環境を 探る対策を基本に古代人の生活や活動を探るアプローチを図る。このように、6 シグマでは、メーカー発想から離れ、顧客志向で真の顧客ニーズを探る対策に、 考古学による科学的アプローチを用い、大きな成果を挙げたことが産業界で有 名な取り組である。この種、いくつか存在する科学的アプローチは、それなり の目的を持つ。だが、電力使用効率化と省電力対策は、先に示した、仮説→分 析→総合→評価という手法が中心となる。 (2)電力対策にも有効な、3大改善手法の紹介 基本的な科学的アプローチは仮説→分析→総合→評価である。だが、製造現 場では時と対象を変え、3種の科学的アプローチに編成しなおして使ってきた。 そこで、以下、簡単にその種類を示し、電力対策に用いる利用法を解説するこ とにする。 図1-6は現場や製品改善の基本手法と呼ばれるものである。 QC手法は品質改善の手法として有名だが、問題が起きた場合、事実を分析して 8 技術の高さ 原因と結果の関係を明確にした上で問題の原因となる要因を除去する対策を図 る。先の図1-4はその例だが、電球に必要な光度が得られない原因がマイナス(ア ース)側の接触抵抗だったことが判ったとすると、マイナス側の電池と電球の 回路を別回線で 直結すればよい QC手法 VE手法 IE手法 という策が選ば テーマ選定 問題発掘 現状分析 れ、結線の結果、 問題解決すれば 機能分析 事実分析 時間分析 問題発生メカニ ズム上、問題解 創案・テスト 創案・テスト 創案・テスト 決が果たされた、 とする方式であ 標準化・歯止め 技術改善・標準化 製品原価革新 る。この種の問 QC手法: Quality Control 主に品質改善や設備故障などの対策に使う手法 題解決対象は品 IE手法: Industrial Engineering 主に作業分析と改善に時計や頻度などの解析を行う手法 VE手法: Value Engineering 主に製品の原価低減に異分野からもアイデアを求める手法 質問題だけでは ない。設備故障 図1-6 製造現場改善に有効な3種の科学的アプローチ や環境問題、 ケガや事故など、事実とメカニズム分析により原因を除去する対象に対し、同 種の解析が適用可能である。 次のIE手法は、ビデオなどを用いて作業や設備の動作プロセスなどを時間や 頻度などと共に追い、時間がかかるところや、発生頻度が多い個所を問題と とらえて改善を モノづくり、生産・製造技術 模索する手法であ 仕事のやり方を変えて、 根本的な電力低減へ る。改善の結果、 短時間で同じ仕事 電力使用は仕事の影である。 改善対象は①技術向上と が完了する構成が ②仕事や製品の改善です。 確立すれば標準化 ムダ 電力低減 という形で定め、 ムリ 成果 ムダ 守る努力を図るわ ムラ ムダ けだが、電力低減 においては、図1-7 結果として に示したように、 得られる電力使用量 電力使用量は結果 図1‐7 IE手法の応用で解析すべき代表的な要件 なので、影、要因 は技術の高さと 仕事のしかた(電力設備や機器の使用の方法)を見直して、低減策を図ったり、 9 時間毎の電力の変化、製造工程を電力負荷(使用量)などと共に把握して、低 減策を練るという対策を図る時に有効な手法である。最後のVE手法は、製品や、 物事、仕事の手 V= F / Cは100 VEの質問 順などを「名詞+ 手 VEの質問 例 現状 動詞」でとらえ、 順 ネクタイピンである 1 それは何か? 名詞+動詞で 「目的が同じであ ネクタイとシャツを固定する 2 それは何をす 真の要求を把握 れば何でも歓迎!」 る? 10,000円/個である 3 その値段は? という考えでアイ 徹底的、異分野 バネとギザギザが本来の 4 その価値は? デアを見つける手 価値、100円程度だよ! からもアイデア収集 法である。特に、 5 他にその働きをす のりづけ、ピン止め、洗 るものはないか? 濯ばさみ、クリップ、・・・・・ 全く異分野の技術 クリップ1円、洗濯バサミ・・・ 6 その値段は? 最良案抽出 や発想の異なる分 クリップ改造で100円でOk. 7 要求を満たす VE か? 野からアイデアを クリップ改造型ネクタイピン 集める対策を特徴 図1‐8 スピードVE手順によるネクタイピン創出の例 とする。解析手順 の中で最も簡単な 紙の持つ機能を活かす 教養としての活用 解析手順は図1-8 ・字体の見本 ・図やグラフの切り取り ・新聞 再生紙として利用 防音特性の 防音特性の利用 記事の切り抜き ・外国人の日本語勉強教材 ・ちり紙交換 ・やけど防止 ・過去に遡って勉強 ・天声人語を集める 利用 ・段ボール材料 のようになるが、 ・腹巻き ・かみ切りの練習 ・教養をひからかすために ・雀卓のマット ・服の中に入れ 持ち歩く 代わり ・トイレットペーパー 保温 ・口ふさぎ、 この例では、ネク の代わりに使う ・死体をつつむ 特性を利用した活用 耳栓 芸術品への利用 ・バッテリーの保温 ・大工道具の包み紙 ・紙粘土の材料 光を遮断 ・布団の代用 (さび防止、ケガ防止) 他の紙への転用 タイピンに対して、 ・ダルマのはりぼて ・電灯のかさ ・魚をつつみ ・紙コップ ・油をしみ込 ・花瓶のまわり材 ・果実のおおい いたみの防止 ませ包丁をまく 建材の一部 ・型紙 ・日焼け防止 ・ドライアイスを ・壁紙 同じ機能(目的) ・日よけ つつみ保温 梱包の代用 情報の記録 ・障子の補修 ・行燈の紙 ・八百屋の包装紙 ・ヒマつぶしに読む ・紙テープ 花見のシート ・干物の包み紙 ・過去の天気の調査 ・しおり に対し、安価な対 ・弁当の包み紙 ・連載小説を切り抜き ・玉入れの 機械的特性の利用 ・メモ用紙 ・貼り合わせ袋 本にまとめ ボール ・ブックカバー ・花火の型 ・折り紙 策を図った例であ 板の代用 板の代用 吸着紙の活用 ・・・・その他 ・団扇の代わり ・団扇の代わり その他 ・ちり取り 〃 ・ちり取り 〃 ・野球の 液吸収能力 ゴミ吸着 る。電力対策にVE ・割れガラスの ・割れガラスの ベース ・汚れた風呂の の活用 補修 補修 ・紙飛行機 表面のアカとり ・おむつカバー ・固めて下敷き ・固めて下敷き 燃料の転用 ・落とし穴 ・メガネふき ・鳥かご下敷き を使う、まず第一 (クリップボード) (クリップボード) ・のろし ・火付けの材料 のカバー ・窓ふき紙 ・湿ったクツの ・学園祭の部屋 ・学園祭の部屋 ・きざみたばこのまわりに巻く ・ニセ札の ・クツの敷紙 吸湿 の仕切り の仕切り ・火薬の芯 材料 ・キセルの掃除 ・鼻血止め 番目の目的は、既 ・ポストに ・ぬれ新聞で割れ ・エプロン 棒の代用 入れ居留 たガラスの吸着 ・習字の練習紙 ・ゴキブリ退治、 ・丸めてメガホン ・灰にして肥料 守用 ・お茶がらの代用 ・鼻紙代用 ・こよりにして耳掃除、 ・バットの に頭の中に蓄積さ ・・・・ 代用 ・バーベルの代わり ・天ぷら下敷き やはり紙として転用 物差し 11 れた情報の引き出 図1‐9 「古新聞紙の使い方」アイデア創出結果をまとめた例 しである。図1-9は 古新聞紙の活用法をブレーンストーミングで創出した結果をまとめた例である。 突然、「この種のアイデアや例を列挙願いたい」という要請を出しても、一般 に、これほど多くのアイデアは出ないと考える。だが、読者の皆様が記載され た項目を見て、知らないものは無いのではないだろうか?このように、各種対 策に当たって、気づかない発想やアイデアは既に頭の中に隠れている。したが って、電力対策に当たっても、個々の対策目的を定め、討論や調査を重ねる中 で、有効な対策に巡り合うチャンスを増すため、VE手法の活用が必要になる。 10 以上、電力低減・効率化対策に当たって活用する上で、効果的にアイデアを求 める科学的手順を例示した。 1-3 力率など、基本的に知っておくべきムダな電力発掘法 電気には、直流と交流がある。ここまで、話を判り易くするため、主に直流 の考えで電力事情と対策に関する内容を解説してきた。だが、交流は直流に無 い持つ特性がある。そこで、交流活用に伴う電力のムダ発生原理を紹介するこ とにする。 (1)力率改善 直流回路では負荷は抵抗負荷だけである。だが、交流回路では、抵抗負荷の 他に誘導性負荷と容量性負荷が作用する。このため、図1-10に示したように、 送ったすべての電 図1‐10 力率 力が有効に使われ コイルのインダクタンス(L)正弦波電源を加え V=√2Vsinωt ① コイルの場合 ると、電磁誘導作用が発生する。その現象は るということが無 電流の流れを妨げるような方向だが、同時に 逆起電力が発生する。このためこの時の磁束 い。このため、力 L をφとすると、逆起電力 VLは、 V VL=‐Δφ/Δt=‐LΔIL/Δtとなり、VLはILより90° 位相の遅れた正弦波電圧となる。 率という定義がさ √2V sin(ωt‐ 1 ) I = 2 ωL れているが、力率 ② コンデンサの場合 V=√2Vsinωt コンデンサCの場合は、電荷[q]を蓄えたり、 が0.8ということ 放出したりする働きがあり、流れる電流はC に加わる電圧の時間的変化の割合に比例 C V するため、IC=Δq/Δt=CΔV/Δtとなる。この は送り出した電力 ため、ICは電源電圧Vより90°位相の進んだ 1 √2V sin(ωt‐ ) 正弦波電流となる。 (皮相電流)のう I = 2 ωL ③ 皮相電力、有効電力、無効電力の関係 ちの8割が有効な 以上、交流の場合、コイルやコンデンサの作用の結果、 仕事をすることを 力率という投入されたエネルギーが有効に使われた率は、 次のようになる。 S: 皮相電力 S=√P +Q 意味する。残りを P 力率= =cosƟ S 無効電力と言うが、 P:有効電力 この電力は、有効 な仕事はせず、電源とコイル、コンデンサとの間を行ったり来たりする(充・ 放電を繰り返している)波になる。したがって、交流を活用した生産が遂行さ れる中では力率の改善は常に課題となる。日刊工業新聞社発行「工場の節電テ クニック」によると、受電設備に進相コンデンサを適用する例などが出ている が。この対策によって、契約電力500KWの力率を95%→100%にした場合、コ ンデンサ容量=500√1-0.952/0.95=165kVA、コンデンサの費用約70万円は 契約電力の変更で得た利益により、1.5年で回収できる試算が例示されている(電 気料金の値上げがあれば、さらに、回収期間は短くなる)。 L L Q: 無効電力 2 2 11 税込 か月の 電気料金体系 (2)契約電力の見直し 電力低減対策は使い方の工夫(消費電力による効率化・料金の低下)と、電 力使用環境の改善(電気料金体系)の2種類がある。そこで、モノづくりのプロ セスを徹底的に見直し、使い方の工夫を図る前に、電気料金体系を見て、「電 力使用環境面からどのように節電を進めるか?」という内容を紹介することに する。図1-11をご覧願うと、電力会社が提示してきた電気料金の支払いの構成 が判る。また、マクロ的だが電力を利用する費用と低減の在り方が想定される。 火力発電には 図1‐11 電気料金体系と改善の工夫 石油を使うが、 電気料金メニュー毎に定められた基本料金 基本料金単価 この値上げや の単価。したがって安価な電力会社や自家 (税込) 発電などが安価なら切り替える対象 値下げに伴っ 実質制契約により最大需要電力の発生毎に 基本料金 て費用の増減 契約電力 増大更新ずる。したがって、改善やデマンド (税込) 管理などで下げる工夫が有効な対象 がある燃料調 進相コンデンサーなどの利用で改善 (185-力率)/100 できれば、契約電力や使用電力の 整額は、電力 1 低減に有効に作用する対象 電気料金メニュー毎に定められた電力 を購入して利 料金単価(税込) 量当たりの単価。夜間電力の利用や 休日に生産をシフトしたりする対策等 用する各社で 電力量料金 電力利用効率化の対象 使用電力量 は手をつけら (税込) 原油・LNG(液化天然ガス)・石炭の燃料 + れない対象で 価格(実績)の変動に応じて、電力会社 燃料費調整額 が毎月自動的に電気料金を調整する ある。だが、 制度によるもの。3か月ごとの平均燃料 価格(実績)にもとづき算定する。 ①契約料金面 この項目は買う工場側では改善できない 対象となる。 の改善、②力 率の改善、③ 夜間や休日を利用した、電力時間帯による電気単価を見た利用法、④各種の改 善による使用電力の改善という項目は改善の対象とすべき項目である。②は解 説済み、また、③と⑤は後で詳しく解説する関係上、ここでは、①の契約料金 の低減という項目を対象に電力低減の対策法を例示することにする。 【契約電力低減に有効な対策】 ① 電力測定装置を用いた総量と個々の電力使用の実態把握 2011年9月にガイヤの夜明けでTV放送された日本テクノの取り組みでは、 養鶏の工場に電力『見える化』モニターをつけ、電力の使用実態を分析した 結果、1470KWの契約電力であり、フル生産状況でも1350KWで抑えられる 実情を示していた。早速、東京電力と交渉、見える化システムの使用量は月 9.5万円だが、年間371.34万円の低減した(差引250万円を低減)例を報じた。 ② 契約電力を超えた時の対策 契約電力の契約は瞬間ピークが対象外となる。そうなると、ピークを超え る危険性の高い時や、超えた瞬間に電気使用優先度の低いものからスイッチ 12 を切る策が選定される(予め、止めてよい設備などの優先度設定が必要)。 ③ デマンドコントロールの活用 IT電力管理システムを利用し、契約電力より5%程度低めにアラームライ ンを設定しておき、もし、危険域に入る場合、警報を出すとともに、力率、 電気使用量、製品生産の重要度などを決めておいて、自動的に優先度の低い 設備や機器のスイッチを切る処置を行う。 (3)受電設備における電力損失把握と対策 ① 受電設備の見直し要件 受電設備の設置は、工場の規模や生産の状況に応じた検討を経て設置される ので、この検討は電気関係の専門家の検討にゆだねられることになる。一般に、 受電設備の設置は、最大需要電力を計算して、下に示した算式を基に計算され、 必要供給容量値の1.5~2.5倍とする例が多い。 必要供給容量(kVA)=需要電力(kW)/負荷力率 そうなると、この前に検討する負荷(需要電力)の山積の値を製造レイアウ ト設計と共に、できるだけ低く保つモノづくり上の改善が必要になる。したが って、設置後は見直しとなるが、電力負荷に対し、電気回路面では、配線によ る電力損失の低減が、その主な対象となる。電圧をV、電流をI、配電回路で送 る電力をPとすると、電力損失Wは以下のような算式となる。 P=1.732VIcosφ W=rLI2=rL(P/1.732Vcosφ)2 ただし、r:単位長当たり線路抵抗、L:線路長 である。この式でわかるとおり、配電回路の電力損失は電圧の2乗および負荷 力率の2乗に反比例し、配線経路に比例し、電流の2乗に比例していることが判 る。そうなると、省エネルギー化のためには、Vを大きくしてIを小さくする策 か?を選択することになる。これは、一般に送電線が高電圧で遠地へ電力供給 する策がとられる理由と同じである。 ② 配電の方式による省エネルギー対策 負荷となる設備や機器の配線方法により、電力損失が大きくことなる例が ある。単相3線式配線は単相2線式に比較して1/4になることが知られているが、 この種の対策も電気技術者の方々の事前チェック項目となっている。 ④ パワーエレクトロニクス装置による節電 電気設備はスイッチの切り替えがあるが、スイッチでの電力損失は電圧降 下と流れる電流の掛け算なので、理想的なスイッチにおいては電力損失が起 きないはずである。だが、現実にはONの時に若干の抵抗が生じ、OFFの時 13 に若干の漏れ電流が発生する。このため、ON/OFFの時には電力損失が多い ためパワーエレクトロニクス装置を用いたスイッチング対策が適用されて いる。ちなみに従来型MOS-FET(縦型構造)とSJ構造MOS-FET(横型構 造)と比較すると1:20という状況である(後者のスイッチングに変更すれ ば、80%が低減される)。 ⑤ トランス:変圧器の電力損 変圧器は負荷が無い場合でも無負荷損(鉄損)が発生するため電力が消費 されている。よく、PCを止めても(OFFにした状態でも)電力が使われるた め、待機(休眠)電力低減の対象とされる例は、このような実情を示す例で ある。この場合、コンセントから切り離す必要から、最近では、コンセント 自体にスイッチ付きのものが販売されるようになった。この種のものは、差 し込みを抜かない状況で、コンセントを抜き、変圧器で使用する電力をOFF する必要が無い方式である。 さらに、工場においては旧型の変圧器を長年使用する例がある。これを高 効率変圧器に変更すると、工場として大きな節電になる例がある。この種の 要件は、この道の専門家の検討を願うことになるが、歴史を持つ工場操業を 行ってきたところは、チェックをお願いしたい事項の例である。 ⑥ エアーコンプレッサーの制御方式による節電効果の差 コンプレッサーにはロード/アンロード運転方式とインバーター制御方 式があるが、設定圧力条件の全てにおいて、インバーター制御運転方式の方 が優れるという状況である。この種、技術の改善や、使用状態により電力使 用に差が出る電気機器や部品については、個々に、利用特性を研究した設備 の利用が基本となる。 ⑦ 照明装置の設置、節電対策 光は光源から離れる距離の2乗に反比例する形で照度が低下する。このた め、光源をLEDに変更する以外に、仕事を進める照度の確保を前提に、光源 の設置方法や位置の検討が必要になる。 ・精密な作業 300ルックス以上 ・普通の作業 150ルックス以上 ・粗な作業 70ルックス以上 以上、物理現象として使用される電力について、基本的な内容を記載した。 ここに電気機器すべてへあてはめた解析はその道のベテランにお任せするこ とにして、省電力対策に最低限チェック願いたい事項と理由をまとめた。 14 第2章 既知技術の転用で進める緊急的な省電力対策 3・11 以降、東京電力管内では夏に向けて 15%の電力低減が要請され、緊急 避難的に電力対策が進められた。過去の知見の総合的な活用と、LED を始めと する新技術活用に加え、2011 年の夏には、全国に節電要請がなされ、国民は無 理をして電力ピークをしのぐ対策を進めた。筆者も、この面の対処と支援のた め、電力低減対策セミナーや講演会、また、URL:qcd.jp を利用して省電力技 術をチェックリスト化して公表、微力ながら産業界の皆様にお役に立つべく、 努力をしてきた。多くの皆様が同様な努力をされたわけだったが、その成果で、 2011 年、2012 年とも、原発が止まる中で、日本では電力問題は何とかしのぎ、 その後の努力と共に、原発不要の方向と共に、発想電分離の議論が開始され、 電力買い取り制度の施行、スマートハウスやスマートグリッド、 ・・・電力自由 化を始め、多くの選択肢の検討と共に、電力使用の変革時代に入るスピードが 加速した。そこで、以下、URL:qcd.jp やセミナーで紹介してきた「当面の電 力対策 15%程度をしのぐ対策」をまとめることにする。ここにまとめた資料は 全て公開されてきた資料に基づく事例であり、多分、製造業ではこの種の対策 は既にお済みの内容と考える。しかし、もし、今後、積み残しや省電力化のチ ェックする中で、読者の皆様には、何らかのアイデアやヒント、さらには、技 術開発の一助になれば幸いである。 なお、電力対策に当たり、単に事例の列挙だけでは活用の幅が広がらない。 そこで、IE 手法の概念を利用して、以下に示した『改善の 6 つ視点』と共に、 事例を紹介しながら、コメントを記載する方式とした。 ① E= Eliminate : 省略の原則(ムダなので、止めることができないか?) ② C=Combine : 結合の法則(A と B を結合、集合、同時化ができないか? ③ R= Re-Arrange : 置き換えの法則(他の方法に置きかえられないか?) ④ D= Divide : 分割の法則(出来ないか?他に移せないか?) ⑤ P= Parallel : 平行の原則(平行的、または、同時に進める策は無いか?) ⑥ S= Simplify : 単純化の法則(構造や仕事のやり方の単純化は?) このような見方は、多分、節電例を見て何らかのアイデアを生むと考える。 そこで、以下に例示する事例を記載して表の欄に、E-C-E-D-P-S の記号を付記 させていただき、必要に応じてコメントさせていただくことにした。 では、ソフト的な対策から節電対策の方法と事例を紹介させていただくこと にする。ソフト的対策の代表例は、例えば、夏場に電力使用がピークになる時 点の電力活用を避けるため、休日や夜間利用を図る対策などの対策である。こ れに対し、ハード的対策は、白熱電球を LED に変更する。夏場の送風環境を改 善してクーラー使用を少なくするという手法などである。 15 2-1 ソフト的対策 ソフト的対策には多くの事例があるが、事例を、① 生産管理と顧客対応 ② 個人に関与する主な電力対応努力の促進対策、③ 見える化対策、④ 夜間電 力蓄電→ピーク時利用、⑤ 空調対策(電気料金節減機器)、⑥ 太陽熱の影響を 遮蔽対策、⑦ 個別設備の節電対策(報道例)を挙げた、この中の⑥などは、屋 根に遮熱ペイントや空き缶などを置くため、正確な分類ではソフト対策とハー ド対策が混在した内容になる。だが、簡単な対策でクーラー使用を節電できる 対策につながるため、ソフト対策に分類した。 区分: ① 生産管理と顧客対応 対策事項 解説と事例 記号とコメン ト 1 クールビズの強化 ネクタイ、制服着用を止める E:過去の制度や 報道:三井住友銀行(朝日・Y11-6-26) 習慣の見直しに 有効 2 生 産 拠 点 を 海 外 に 報道:伊藤鋳造(茨城県)ベトナムを強化 分散 D・R:分散生産 (日刊工業・Y11-6-21) により電力不足 2011 年 7 月 9 日・日本経済新聞「電力危機で の補充 空洞化懸念」として特集、①日本電気硝子② NOK,③三井金属,④JX 日鉱日石金属,⑤日 立金属,⑥関西ペイント,⑦テルモ,⑧東レ, ⑨ソフトバンクの例を紹介 3 国内工場各地で 分散生産 玉川精機(長野県)、日プラ(香川県)、清水電 No.2と同じ 設(兵庫県) (日刊工業・Y11-6-21) 信越化学工業(朝日・Y11-6-20) 4 休日をずらす 輪番休業の実施 日立製作所:平日に分散(朝日・Y11-6-26) R:置き換え ニチレイの節電対策 http://www.nikkei.com/news/category/article/g=96958A9 C93819696E0E1E293978DE0E1E2E4E0E2E3E38698E 3E2E2E2;at=ALL 5 同上 自動車関連は土・日操業:木・金休日 大阪商工会議所経済産業部他 16 同上 区分: ① 生産管理と顧客対応(つづき) 対策事項 6 操業時間の変更 (サマータイム 解説と事例 東急電鉄(朝日・Y11-6-20) ニチレイの節電対策(出典:同上) 記号とコメント 同上 溶解炉を持つ鋳 など、勤務時間変 ソニー、キヤノン、リコー、森精機、日産自動 物・鉄鋼工場の 更などによる、ピ 車、キリンホールディングス、味の素、森永乳 多くは夜間電力 ーク回避) 業・・・日本製紙 G、住友金属工業、武田薬品 利用を行い、昼/ 工業(日刊工業・Y11-6-25) 夜を変更した勤 アルプス電気輪番操業(日刊工業・Y11-6-24) 務を実施中 7 生産設備・事業所 製品の見直し、統合、不採算製品の製造中止な E:省略→製品製 などの一部操業停 どによる操業の停止 止 造を断念 大阪商工会議所経済産業部他 上表をご覧になってお判りの通り、個人的にはクールビズ(冬場は寒さ対策)、 海外や国内の電力問題の少ない地への生産移転、操業時間の変更~生産の見直 しまで多くの事項がある。事実、筆者も夏場に水を含ませた布状のグッズを購 入して活用したが、例年なら、クーラーが効く喫茶店に逃げていたが、2012 年 の猛暑の中でも、扇風機程度、クーラー無しの状態でも、机上で行う仕事に支 障がなかった。また、冬場には湯たんぽを購入してこたつに入れ、手首には温 熱対策を施したサポーターをつけて仕事をしたが、従来に比較して暖房の使用 を大幅に低減しながら仕事を進めることができた。 通販のカタログを見ると、2012 年の冬には、寒さ防止の肌着を始め、各種の 防寒対策グッズがオンパレードの状況で商戦を競っている。この意味では、こ の分野はビジネスチャンスであり、製造現場においても、多くの対策が活用で きる環境が整備されつつある。これに対し、2011 年に、緊急避難的に休日への 操業を大幅に変更した例が大手各社で実施された。だが、翌年は、関連企業と の関連、従業員の方々の家族との関連など多くの点で支障が出たため、特別な 例を除いて、実施されなかった。これも、今後、 「長く続けられる電力低減対策 への参画」という視点を与える内容となった。 さらに、電力問題と共に、海外への生産移転が問いただされるが、中長期に 見て、緊急の生産見直しで行う例はあっても、アルミ生産のように大電力を長 期的に活用する企業を見て判るように、コスト面で海外生産が必要になる。売 れる市場に近い地に生産拠点を移す戦略、自然災害に対する回避策として各地 に分散して生産する BCP(企業存続計画)上の都合、税負担や少子高齢化、人 件費などの問題で海外移転する例もあり、電力問題だけが海外移転の要因では 無いことに注意を払うべきである。 17 区分: ② 個人に関与する主な電力対応努力の促進対策 対策事項 解説と事例 記号とコメント 1 一 部 屋 に 集 ま り 仕 夏至の午後最大ピーク時を休養、分散してい C:分散→結合(集 事(集中化) た事務作業者は一部屋に集める策を提唱 合)により冷房の :各社報道と日刊工業・Y11-6-23 効率化 2 冷 房 温 度 の 引 き 上 既に電力会社、国がクーラーは 28℃以上の E:省略(人的対応 げ 3 残業(定時退勤) 制限など 4 スーパー クールビズ 設定をガイド、JMA でも実施中 温度超はムダとし 日本マクドナルド:日刊工業・Y11-6-20 て排除) 業務のスピードアップ要請による電力使用 E:省略→定時操業 の減:大阪商工会議所経済産業部他 以外の電力カット ポロシャツ利用、氷枕、首筋を冷やす帯の利 R:電力使用を他の 用等、個人的に冷却・暖房面の工夫による省 方法に置き換えて 電力対策 電力低減へ :新人物社文庫「節電・節約生活の方法 150」 5 扇風機利用 冷房の代替に打ち水や扇風機利用 R:省電力型の冷却 新人物社文庫「節電・節約生活の方法 150」 方式に置き換えて :だいわ文庫「かしこい節約生活」 6 節電タイマー 対策 使用予定時間を決め、消灯やムダ使用を制限 D:ムダな時刻を過 する:NHK テレビテキスト「夏の節電対策」 ぎた使用の制限 7 エコワット コンセントに差し込み、簡易・定量デジタル E・D:ムダな電力の で 1 時間当たりの使用電力把握とムダな待 把握~使用停止ま 8 契約電力見直し 機電力使用の把握~使用停止対策 たは、省電力機器 :文献は同上 への置き換え 経費節減とムダな利用制限をブレーカーと E:ムダに余力を持 (含むデマンド・コ 共に適用 ントロール) 9 つ契約の変更によ :新人物社文庫「節電・節約生活の方法 150」 る節電 個 人的冷暖房 機器 湯たんぽ、アイスバッグ、空調服、冷却リス R:全体の人的環境 (装置)の利用 トバンド、各種快適着衣、など温冷グッズを 対策を個々人対策 利用して、広域対策をスポット対策へ向ける :KK ベストセラーズ「夏の節電特集」等 10 遮光・断熱対策~ カーテン、すだれ、青物を窓などの太陽熱遮 D・R:仲介物によ 夏 の通風(冬 の遮 蔽~断熱により冷房費の節減 風)対策 11 清掃方式の改善 る温度流入制御 :新人物社文庫「節電・節約生活の方法 150」 掃除機のモーター使用の代わりにホウキと R:節電効果が大き チリトリ、流水処理、5S 発生源対策などに く有効な方式に置 よるエネルギー使用の減:文献は同上 18 き換え 区分: ② 個人に関与する主な電力対応努力の促進対策(つづき) 対策事項 解説と事例 記号とコメント 12 LED への照明切り 一般電球や蛍光灯の本数減の後、白熱電球の R:同上 替 え~光度調 整機 1/10~1/8 電力消費の LED へ変更する。 器 の設置~必 要部 NHK テレビ Y11-7-3 おはよう日本では中小企 に応じた JIT 照明 業が 12 個の家庭用 LED をアルミ板に装着、 の検討(照明機器の 工業用 LED の代替として活用効果を挙げた 位置、高さ、利用場 例を紹介。その他:NHK テレビテキスト「夏 所に応じた利用) の節電対策」に効果は詳説 13 現 場の温水ポ ット 沸騰保温式ポットから湯を保温する魔法瓶タ E:一種の待機電 の見直し イプへ変更:文献は同上 力の低減 14 自 販機数の減 ~見 食品・飲料自働販売機の数の制限と、夜間充 E:同上 直し 電式への変更:日刊工業新聞 Y11-7-15、その 他、コカコーラがテレビで対策を紹介 15 乾電池の見直し 乾電池を頻繁に使う保全や夜勤で設備メンテナ R::節電効果が ンスや物流担当職場では 1000 回繰り返し使用 大きく有効な方 の乾電池に変更(夜間充電)または、充電可能 式に置き換え LED 式・手回し地震対策用発電 LED 式ライト など(日本通販販売)に変更 日刊工業新聞 Y11-7-11~12 宣伝広告内容 16 ト イ レ 、 通 路 照 人感知センサーの利用により、トイレ(含む自 E:不使用時の電 明、食堂のテレビ 働洗浄・保温タイプの便器の蓋しめなど)や、 力使用を止める など 通路など、使用していない時の消灯対策~トイ レの送風乾燥機の停止など :だいわ文庫「かしこい節約生活」 17 保 温 冷 却 装 置 の 弁当など福利的な措置で使用の冷蔵庫、保温設 E:個々に最適使 見直し 備、風呂、暖冷房の利用方法見直し 用内容を分析~ (個別機器の電力改善は後の表で解説) 対策してムダ排 :KK ベストセラーズ「夏の節電特集」、NHK 除へ テレビテキスト「夏の節電対策」等 18 PC,事務機など、 電力から太陽電池利用、ガス、石油、木片チッ R:節電効果があ 冷 暖 房 機 器 の エ プ、ゴミ発電~夜間充電電力に昼間利用などの る 方 式 を 見 つ ネ ル ギ ー 対 象 の 対策:NHK テレビ Y11-7-14 の 7:00 ニュースで け、職場に合わ 見直し 中小企業対応事例紹介 19 せて置き換え 区分: ② 個人に関与する主な電力対応努力の促進対策(つづき) 対策事項 解説と事例 記号とコメント 19 エ レ ベ ー タ ー の エレベーターの間引き運転~特別な移動を除 E・R:必要時の 不 使 用 ~ 歩 行 へ き、階段の利用の呼びかけ~切り替え の変更 : (株)日本ビジネス出版「環境ビジネス」誌“節 人の電力使用以 電超入門”など 20 従業員参画 み必要対象物と 外はカットする 細かい節電を塵も積もれば山式に求める(外部 E・C・R・S 全 電 力 低 減 提 案 対 診断を含めて):下記 URL は各社で行う電力診 てを含む 策 断の案内を PR した URL http://www.google.co.jp/search?sourceid=navclient&hl =ja&ie=UTF-8&rlz=1T4SKPB_jaJP304JP305&q= %e9%9b%bb%e5%8a%9b%e8%a8%ba%e 6%96%ad 工場運動と共に、個人的な参画を得て節電対策を進める対策は日本における 小集団活用面で極めて大きい。(1)塵も積もれば式で多くの小改善が大きな電 力低減につながる可能性を高めるからである。また、(2)上の表にまとめたよ うな項目と共に、ひとつ一つは小さい電力低減だが、多くの見方で電力のムダ 発掘アイデアをあつめるきっかけとなるかれらである。さらに、(3)社内で得 た工夫や知恵が他社や業界に広がり、やがて、地域の省エネ・省資源に広がり、 省電力化へのチャンネルを広げるきっかけになるためである。 筆者が仕事で通う JMA では 3・11 以降 2~3 階程度の移動にエレベーターを 全く使わない方が増えた。異口同音に「健康促進やダイエットに有効!」とい う方が多い。その結果、省電力効果を得ているわけだが、災害時にエレベータ ーへの閉じ込め事故を考えると、東京では重要な対策を節電対策と共に進めて いる内容となる。工場においては、人と荷物(資材や中間製品など)の移動が ある。ここでは、自動化と関連させる形で、かつて湯水のように電力を使う対 策が図れてきた。しかし、簡単なものは、人が関連する職場であれば台車を利 用する。重力利用で運搬目的を果たすといった工夫が工場運動のひとつとして 進む可能性がある。この種の対策は、過去も進めてきた対象である。3・11 以前 に自動車部品を製造するアイシンが「江戸の匠の知恵と技量を現在に生かす」 という中でドリーム・キャリーと名がつくモーター無の自動運搬装置を作った。 この方式は、 『茶運び人形』の原理を利用して、物が持つ重量を利用して、移動 時にバネに落下エネルギーをため、部品の受け渡し後はバネにたまったエネル ギーで戻るというものだった。モーター・ゼロの搬送設備である。このように、 「小さな知恵を生かす対策の中には技術開発の芽がある」という視点で上表を 20 ご覧願うと、単なる省電力対策の応用だけでは無い活用になるのではないだろ うか? 区分: ③ 見える化対策 対策事項 1 節電警報 一斉メール 解説と事例 記号とコメント 工場の電力使用制限と現状~危険域の警告 S:制限電力の状況 の参考として「荒川区など予行演習:節電警 をつかみ、各部門、 報一斉メール」~自治体に参加呼びかけ 個人が優先度の低 :朝日新聞 Y11-6-21 に準備状況を掲載 い電力停止へ協力 2 地 域 節 電 所 参 画 と 北九州市の官営八幡製鉄跡地での試み、個々 S:同上 使用量の見える化 の利用者の電力使用状況と地域全体の状況 を1つの管理システムで統括~見える化 :朝日新聞 Y11-7-3 に 2004 年の企画を紹介 3 デマンド・コントロ 契約最大電力の引き下げや制限内利用を目 S:同上 ール 的に設置使用するコントローラーの利用 URL:デマンドコントローラーで各社の事例 入手可能 4 電気バスターズ 見回り制度 デンマーク大使館の事例、職員 5 名が担当と S:同上 なりチェックリストを活用、例えば帰宅時 PC の消し忘れにイエローカードにて指導 :朝日 Y11-7-12 5 節電効果の 数値管理 東京都地球温暖化防止活動推進センター(ク S::同上 ールネット)に診断の依頼が殺到(月 40 件 程度が 100 件)診断~改善指導と同時に省 エネポイントを示し、数値管理を指導 :日刊工業新聞 Y11-6-20 6 技あり仕事快適 左記の表題で空調には管理者を置く、在宅勤 S:同上 務を促すなどと共に、家庭の電気使用をイラ スト・MAP 化、節電対策をシリーズで紹介 :朝日 Y11-7-12~掲載開始 7 LAN による 25KW 野田工場における 588KW の見える化・デマ S:同上 節電対策 ンドによる節電対策と効果を URL 上で紹介 http://www.sanpo-pub.co.jp/topnews /2011/0609010633.html 21 区分: ③ 見える化対策 対策事項 8 NEC~経団連の 解説と事例 記号とコメント 環境メルマガで NEC 他、各社の取り組みと S:同上 電力見える化の 経団連の電力削減実績見える化の内容を 取り組みを紹介 URL で紹介:http://www.kankyo-business.jp/ mailmag2011/20110426.html 9 社員の OC に表示 日刊工業 Y12-7-2 企業の複数のフロアや節電状況を PC で可視 S:同上 化して従業員の節電意識高揚に役立てる消 費電力インジケーター発表。販売開始 省電力対策は『問題の見える化』が前提となる。先に P.12 で、日本テクノの 取り組みを紹介したが、現在は IT 活用と共に『電力使用の見える化』を図る手 段には多くの手法がある。家庭用ではコンセントの前に差し込んで電力の使用 状況が見える小型 液晶表示のもの(商 品名:エコワット ¥3,000 以下) から、 図 2-1 に例示したよ うに電力管理システ ムという形で提供す る例が多数販売され ている。この種の内 容は工場の電力を見 える化管理してゆく http://www.esco‐co.jp/d_moni_control/ 内容と、規模や構成 図2‐1 電力の見える化管理の例(エスコ(ESCO)がURLで紹介中の例) は異なるが、基本的 な機能はほぼ同じような機能である。 ここからは筆者の体験談だが、1980 年頃に対処した例である。30 年以上も前 なので、当然だが上図のような素晴らしい装置は無い。このため、休日に工場 へ関係者が出て、設備照明、事務機などをすべて止め、工場の入電側に電力計 をつけ、1 件づつ、数 10 分づつ稼働しながら稼働内容と電力の使用状況をメモ して電力使用実態の把握を行ったことがあった。極めて地味な活動ではあった が、これで現状把握ができたため、その後、各グループに分かれ改善策を検討 した。その結果、40%もの電力低減を果たした。この対策前に個々に、各職場 で電力対策を進めてきたわけだが、生産の都合や設備間の比較、設備が持つ電 力使用実態が時間と総量の関係までは把握することはなかった。だが、この取 22 り組みで実態が見えるようになったので、的確な対策となったわけである。当 時、全社的に、エネルギー使用半減運動が展開されていた。このため、この取 り組みは日立金属㈱の他の工場でも適用され効果を挙げた対策の一例となった わけだったが、この時、省資源・省エネルギー対策本部で各種の改善を支援し ていた筆者は、現状把握の大切さを改めて理解する内容だった。だが、現在、 常時、この種の解析とデマンド管理が IT 化と共に進められる時代になった。現 状把握と理想-現状=問題発掘という科学的手段は、時代が変わっても、その 本質は何も変わらないわけだが、見える化対策はこのような対策に精度とスピ ードを加算した手法という解釈となる。 同種対策は 1998 年~2000 年に赴任した米国 AAP 社におけるコンプレッサ ー・エアー対策でも役立った。操業開始と共に、エアー漏れと容量制限が問題 となった事例である。工場計画では十分にゆとりがあるはずのエアーが足りな いわけである。エアー配線の経路には限られた計測器が設置されているだけで あり、問題の実態が判らない。そこで、入口側のメーターを基に、全バルブを 閉めたのち、エアー経路図に従ってひとつづつ開けながら、エアーの状況をチ ェックしていった。この対策で、エアー漏れや圧力低下などの状況がつかめ、 漏れは対策する。圧力低下はアキュムレータータンクを設ける対策を進めた。 その結果、安価な費用でエアーの問題は対策が進んだ。この例も、石油プラン トなどで見る中央統括する管理版があれば一括管理は出来た内容だったかもし れない。だが、当然、このような投資はメリットが無く、常に利用するわけで はない。そうなると、ここに紹介した、旧式ではあるが、実務的な手法の適用 が有効な例である。 テーマは異なるが、筆者の弟は、最近まで大手鉄鋼メーカーの下請けで仕事 をしていた。自慢は、「管理者として仕事をしていた時、関係者と共に、必ず、 現場を見回り設備の状況を手に触れ、音を聞き、・・という現状把握を行って いた」というものだった。定年退職の後 4 年ほど経ったとき、この会社が管理 する設備が爆発事故を起こし、大事になったことがあった。定年後、関係者の 仕事はセンサーを設備につけ、PC のモニターリング・データを見て会議を繰り 返す形態に変えた、とのことだった。要は、現場の実態を五感で感知すること を止めたそうだが、事故は「現場をよく見ていれば判るはず!」という内容を 後で聞いたそうである。 現在、多くの企業が便利な見える化技術でカバーされ、確かに対策の精度と スピードはあがっている。だが、現状把握をこの手法だけに頼る方式や、カタ ログ・エンジニアの悪評にあるように、人に聞いた話や業者の売込みだけで意 思決定するだけでは、電力使用実態を科学的に解析する眼を断つことがあるの で、ご注意願いたい。事実、最近、ある飲料生産メーカーの改善支援の際、飲 23 料を冷却する工場の装置の新設に「使用エネルギー(ランニングコスト)が 3 倍も違うが、投資金額が半分なので、どうしようか?」という相談を受けた。 そこで、「冷却水が何度でどの程度のカロリーを缶つめされた飲料品に渡し、 何度まで、何分で上がるか?」という計算結果を問いかけたわけだが、答えに 困っていた。そこで、この企業の専門家にお願いして試算願った結果、投資金 額半分の設備を改造すれば1/3 以下のランニングコスト安になることが判った。 当然、電力低減も可能になる構成となり、この計算結果を実現する設備を導入 した。この例は、設備導入を担当する関係者が業者比較にとどまったことが問 題だったという例である。電力対策に当たっては、このように、科学的評価能 力を身に着けた方が具体策を練らないと、IT を駆使した見える化機器がお飾り になる例があるため(やたら高価な買い物になる危険があることにご注意願い たく)、ここに体験談を例示した。 区分: ④ 夜間電力蓄電→ピーク時利用 対策事項 解説と事例 記号とコメント 1 大 容 量 リ チ ウ ム イ 事業所・家庭用に伊藤忠エネクス、ソニーを R・D:電力不足の オン電池(蓄電) モデルに被災地用、太陽電池からの充電も可 ピーク時に充電電 能な対策の紹介:日刊工業新聞 Y11-6-30 2 ミニ太陽電池 /充電式ランタン 力の蓄積~活用 Panasonic 商品強化の一例、小型太陽で充電 R:自然エネルギー した電力をソーラーライトの形で市販、海外 の蓄積利用 で電力事情の悪い国も視野に製品開発・販売 :朝日 Y11-7-7、同日各局のテレビでも放映 3 蓄電システム 横浜・コンチネンタルは非常用や節電対策を R・D:電力不足の 輸入販売 視野にインド・ジェネレーター製の輸入販売 ピーク時に充電電 開始、大型は 1 万 6000W で出力 100V 交流 力の蓄積~活用 6 時間程度:84 万円~販売開始 :日刊工業新聞 Y11-7-13 4 停電時 8 時間涼風 日本直販は LED36 個搭載の扇風機などを通 R・D:同上 信販売広告:朝日新聞 Y11-7~適宜 5 各種の蓄電装置 URL にて各社が競って広告 R・D:同上 :URL キーワード蓄電システムで検索多数 図 2-2 に例示したように、電力利用は時間帯により料金が異なる。したがっ て、電力を多量に使う操業時間帯を安価な電力料金帯にシフトする策や、上の 表に記載したように、一部を蓄電装置に切り替えて電力使用を図るといった対 策がある。過去、工場で使用する溶解炉や熱処理炉、大型設備は大容量の電力 24 を使うものと、100V/200V という比較的低電圧電源を混在させた利用だった。 だが、環境問題や水不足があった工場では、中水と上水を分けているように、 場合によっては、 東京電力管内における時間帯別電気料金(2012年12月公表の内容) 電源を 2 系列にする 昼間時間 毎日午前10時から午後5時まで 方が電力使用面で有 朝晩時間 毎日午前7時から午前10時までと毎日午後5時から午後11時まで 夜間時間 毎日午後11時から翌朝の午前7時まで 効に作用する例があ http://www.tepco.co.jp/e‐rates/individual/menu/home/home01‐j.html る。そのような場合、 蓄電による対策を 時間帯区分 100V/200V 域 に し ぼって安価な電力を ためて使う工夫も電 力活用のひとつの選 択肢となる。特に、 今後は工場の屋根や 図2‐2 時間帯別電気料金 駐車場の屋根を使っ た太陽光発電、小型 風力発電、さらには、高温や振動を持つ設備から、工場内の流水や近隣の小川 を使った小規模発電で得た電力を蓄電しておいて、ピークや緊急時に適用する 技術が拡大してくる時代に入る。そうなると、工場水利用における中水と上水 利用と同じように、電力利用の 2 系列化もひとつの策となって行く可能性が高 くなって行くことが想定される。なお、小型分散型電機器には多くの種類が ある。筆者宅でも防 節電グッズの事例(家庭用) 犯用に太陽光発電を 使い、電池に蓄え、 人感センサーとライ ト付きで 3,700 円の キットを購入して使 っている。工場では 常夜灯に LED を使 い夜通し明かりをつ けておくべき場所も あるが、人が近づい たときだけ灯すもの であれば、市販品で 十分役を果たすものが多い。さらに、個々に独立した光源や扇風機などは、左 下に示したような宣伝が新聞や通販で盛んになされる状況である。この種の対 25 象は、ものによって、大量生産され安価であるという例もあり、工場で利用で きる対象はご利用をお勧めしたい分散蓄電利用方式の例である。 区分: ⑤ 空調対策(電気料金節減機器) 対策事項 1 消費電力 1/3 大型送風機 解説と事例 記号とコメント フルタ電気(名古屋)による省エネタイプを R:省電力方式に置 PR、製造現場の暑熱対策や製品冷却用 き換え :日刊工業新聞 Y11-6-30 2 電力消費 15%削減 星野化成(愛知県)では射出成型機の更新や R:創意工夫と共に め ど に 射 出 成 型 機 空調の工夫を重ね従来型の 40%節電成功を 省エネ方式改善と 対策 3 250W で強風扇 ベースに展開:日刊工業新聞 Y11-7-6 フルタ電気(株)による省エネタイプ強風機 R:省電力方式に置 の広告:日刊工業新聞 Y11-6-30 4 屋外設置専用 空冷チラー投入 投資の推進 き換え オリオン機械(長野県)は外気圧との熱交換 R:省電力方式に置 で水を冷却する省エネタイプのチラー機を き換え PR、従来型の 65%削減可能 :日刊工業新聞 Y11-7-13 空調対策は個々の空調設備の改善、例えば、夏場/冬場に設定温度を調整する。 フィルターの清掃でムダな電力使用を防ぐ事例が、3・11 以降、節電対策ガイド として盛んに報じられてきた。この種の対策は、後に詳しく紹介することにし て、前ページの対策はそれ以外の対策である。昨今、スマートハウスでは、大 和ハウスが緑化+空気の流れの改善で快適な生活環境を確保する策が紹介され ているが、筆者が支援した海外生産企業でも、かつらを製造する企業では、空 調を使わず木の木陰で手作業の仕事を円滑に進める企業があった。赤道直下の 地での手仕事を進める企業である。ここでは、 「空調は高価、職場の快適性が無 く閉塞感のある職場となる」ということだった。近隣で空調設置をステータス にする企業に比較して生産性も定着率もはるかに高い企業の状況をお聞きした わけだったが(定着率は 98%とのことであり)、筆者の考えの方が「文明社会に 毒されていた」と反省した次第である。快適職場となると、工場ではスポット クーラーや空調室をつくり、暑さをしのぐため逃げ場を作る例が多い。だが、 空気流通の良い作業衣や、天井採光の工夫、断熱対策などと共に、表に記載し た職場の空気の流れを検討願うと、電力使用などに貢献する対策が選択可能な 例があるのではないだろうか? 筆者の経験では、米国のアルミホイール工場・AAP 社建設の時、建設会社に お願いして工場の空気の流れを工夫してもらった例がある。その前に、過去、 常識的になっていた「鋳物工場は煙や粉塵で 10m 先が霞んで見えない」という 26 工場環境が 1980 年代には常識だった。だが、名古屋の桑部の継手生産ラインの 増設・一貫ライン化の時、鹿島建設にお願いして快適職場づくりのため、空気 の流れを改善願ったことがあった。建設後、数 10m が見通せる工場が建設~操 業となった。このため、見学に来られた方が「鋳物工場の革命!」という評価 を得た。要は、見通せる工場という以外に、働きやすい職場と共に、暑熱対策 も回避できたわけだが、米国の AAP 社でも同様の対策を図れた。 区分: ⑥ 太陽熱の影響を遮蔽対策 対策事項 解説と事例 記号とコメント 1 温度上昇 20℃抑制 三州ペイント(福岡市)は住宅用高機能塗料 P:遮蔽塗料で入熱 ペイント 2 遮熱塗料に 各社が注目 開発内容を紹介:日刊工業新聞 Y11-6-21 を削減 夏の節電対策に室温上昇に各社が遮熱ペイ P:遮蔽塗料で入熱 ント購入増加と、塗料各社の取り組み(関西 を削減 ペイント、日本ペイントなど)を報道、ちな みに太陽熱の影響の 4~5 割削減を PR :日刊工業新聞 Y11-6-23 3 高層ビルの節電術 遮蔽フィルム、ブラインドの活用など窓を開 P:遮蔽機器・資材 けられない高層ビル対策:朝日 Y11-6-20 4 屋根遮熱タイル 活用で入熱を削減 TOTO、オーニング(文化シャッター子会社) P:遮蔽タイル、日 等、屋根からの昇温対策法を総合的に報道、 よけ、カーテンな 従来の保水タイプより性能が良い新製品の どの利用で入熱の 紹介:日刊工業新聞 Y11-6-28 削減 5 緑 の カ ー テ ン に よ ゴーヤ、朝顔などを遮熱対策に進める学校な る遮熱対策 どの活動を報道:朝日 Y11-7-2 かつて「工場の緑化対策は地球環境の改善や景観だけでなく、緑が地下水を 木の高さまであげるので、遮蔽だけでなく涼風効果や人の精神活動面で大きな 効果がある」と学んだことがあったが、この対策は 3・11 以降、夏場のクーラー 利用の軽減に大きく役立った。加えて、いままで注目を浴びなかった遮熱ペイ ントが大きく注目され、屋根の痛風などと共に多くの場で PR され、販売を伸ば した。上の表はその一例である。冬場の太陽は人に暖かさを与えるため、天井 採光を兼ねて工場内に取り入れが盛んだが、夏場の太陽の熱は室内温度を簡単 に高めるため、多くの工夫が必要である。3・11 では、被災者の方々が住む仮設 住宅では、多くの地で、屋根からの熱は耐え難い状況が報告された。このよう な時、空き缶を縦につないで屋根に置くだけで数度も温度を下げるという遮熱 効果が紹介されていた。また、大きなカーテン上の遮熱布を提供する例など、 27 この分野は今後の省エネ対策につながる技術という見方で注目すべき対策が多 い。 区分: ⑦ 個別設備の節電対策(報道例) 対策事項 解説と事例 記号とコメント 1 節 電 に つ な が サンドビッグ(神戸市)は節電ツールプログラムを作 S:従来の加工 る工具の提案 成して全国の製造業に訴求 法の改善によ :日刊工業新聞 Y11-6-23 り短時間加工 の実現 2 油圧サーボ電力 不二越は省電力型 AC サーボユ駆動ニットを PR、必 D:必要な油圧 使用量の 80% 要 時 だ け 油 圧 ポ ン プ を 駆 動 す る 方 式 ( 出 力 5.5 、 作動時だけを を削減 7.5KW の 2 タイプ) 把握して油圧 :日刊工業新聞 Y11-7-13 ポンプを作動 制御 3 ユーティリティ YAHOO で機器の空転防止、断熱、コンプレッサーの E:最適運転に 設 備 使 用 電 力 供給圧力の見直し、吸気温度低減対策、インバーター よるムダ排除 の低減 機能を持つファンの運転方法の対策を紹介 http://event.yahoo.co.jp/setsuden_guide/biz_list/factory.html 4 必 達 マ イナ ス 15% キューピー・五霞工場で型破りの窓利用~荒川樹脂・ E・C・R・D・ 攻めの節電 つくば工場で射出成型機の断熱対策など紹介 P・S 各方面か 守りの節電 :「日経ものづくり」誌 2011 年 6 月号 らの改善集 上表は、少ない例であり、次の個別改善で解説する省電力対策と一部ダブル 内容だが、工場におけるインフラやユーティリティや装置、製造方法を見直す ヒントにご活用願いたく実際に適用しているとされる例を紹介した内容である。 1980 年のオイルショック時、この種の対策がチェックリストの形で出され各社 が『省資源・省エネルギーMAP 手法』の名と共に活用したことがあった。筆者 も活用したが、上の表に加える形で操業方法、例えば、(1)材料の切り取り方 を工夫して効率向上と共にムダなエネルギー減を図る。(2)設備の空運転(自 動車の場合はアイドリング)対策を図り、ムダな使用エネルギーを減らせない か?(3)製品の貯蔵・保管状況を JIT 対策と共に進めて倉庫にかかるエネルギ ーや電力、運搬などのムダ排除ができないか?といった多くの改善案を積みあ げる策を展開する方式である。しかし、この種の対策は、日刊工業新聞社が 2011 年 11 月号で特集していること、また、後述する製造レイアウト改善で検討~対 策する課題であり、ここでは、詳しく例を挙げ、解説することを省略させてい ただくことにした。 28 2-2 ハード的対策 以下、ハード的対策は、個々の電力使用設備を定めて見直し、最適化を図る と経過で省電力を図る対策である。すでに、家電メーカー各社は右下の図のよ うになる。この図に示したイメージのように、ソフト対策で全体の省電力対策 を済ませると、 2012年夏対応、各社PRの例 今度は、個々の 設備(ハード設 備)に対し、チ ェックリスト的 に問題の有無を 問い、見直しを 願う形で、設備 運用(運転やメ ンテナンスなど) 最適化と共に省 電力対策を図る わけである。そ こで、ここでは、 既に、個々の設備や装置に対する多くのチェックリストが公開されているので、 それをまとめる形でチェックリストを羅列させていただくことにする。なお、 ここに記載した内容は、下記の文献を参考にまとめたものである。 参考文献:だいわ文庫「かしこい節電生活」、NHK テレビテキスト「夏の節電対策」、 日本ビジネス出版・環境ビジネス誌 2011 年 6 月号「節電メニュー大特集」 日経 BP 社・日経ものづくり誌 2011 年 6 月号「特集・攻めの節電/守りの節電」 自治体の節電対策:http://criepi.denken.or.jp/jp/serc/discussion/download/11014dp.pdf 中部電力の節電ガイド:http://www.chuden.co.jp/bizene/setsuden/factory/index.html その他:企業から提供の節電対策チェックリストを総合的にまとめリスト化 ① 空調設備 空調設備は夏場と冬場に家庭で最も電力を消費する対象となっている。この 考えと対策は製造現場における人が関係する職場でも同じ対策が必要となる。 以下、ハード機器の見直しの形で理想的な状態と活用を目的にチェックリスト 化したので、ご参考願えれば幸いである。なお、②の照明設備以降の機器の電 力対策における見直しも、同様の形態なので、個々の解説は省略することにし、 チェックリストのみの羅列をさせていただくことにした。 29 空調設備の電力対策チェックリスト 見直し対象項目 チェック欄~対策記入欄 01 設定温度の適正化(28℃)と室温の見える化 02 使用しない時間、機器の OFF 化(責任者選定~タイマー利用) 03 始業開始時の冷房使用禁止(窓あけ空気入れ替え対策の利用) 04 ドライモードの利用によるクーラー機能使用の減 05 扇風機の併用によるトータル電力の節減 06 空転運転の停止(人感知センサーの併用を含む) 07 間仕切り利用による冷却域の制限(空冷・暖房面積の縮減) 余熱利用による機器停止(会議や作業終了時前に停止処置) 08 09 空調フルターの定期清掃 10 空調効率向上のための補完対策(遮光、壁など断熱・・など) 11 屋外・廊下(隙間、出入り口の開放部)への冷気流出の防止 12 待機電力のカット(電源接続部前段から停止時に切断する) 13 空調効率向上対策(熱反射ガラス、遮光対策、談津ブラインド、 屋上緑化、ハイブリッドファン、サーキュレーターなど効率向上のあ らゆる策を施す) 14 置き場と風向きの最適化(空冷流気シミュレーション) 15 天井部の高熱・冷却部との遮蔽対策 16 運転休止時の蓄熱・蓄電対策との併用 17 会議室など部屋の移動、使用時間のシフト(運転負荷軽減) 18 風量モードを自働設定活用(微風運転は設定温度に近づける作用 のためコンプレッサーの作動が増加するためムダが発生) 19 送風モードでカビ防止(湿気、ほこり除去対策に有効) 20 ランニングが安価で省エネタイプにリプレース 21 不要変電機、有休設備への電力遮断(含む、付近の照明等) 注釈:以降、個々の設備・機器の運用は個別対策の視点でチェックリスト化します。また、 設備・機器が異なるが空調設備に似た対策は、これを代表する形で記載を省略しま す(例:待機時間の OFF、置き場や省エネタイプとリプレースなど)。 30 ② 照明器具(以降、作業レイアウト改善、時差・在宅勤務変更などはダブル項目を省略) 見直し対象項目 01 チェック欄~対策記入欄 間引き照明と不要箇所の照明撤去(トイレ、給湯室、喫煙室、 倉庫、資材置き場、資料室、自動販売機、食堂、会議・ミーティング 室、昼間は窓からの採光で済む室内、休憩時間の消灯など) 02 自働点灯システム(各所に太陽光蓄電式+人感センサーの利用) 03 個別作業・職場毎に調光システムの利用 04 LED ライトの利用と台数の減(家庭用 LED の工夫利用を含む) 05 LED ハンドライト・ヘッドライト使用による全体照明の減 06 広告・ネオン・ディスプレイなどへ自然エネ+蓄電の利用 07 自然採光の活用 08 天井照明ライト位置ダウン(個人別スイッチ化) 09 昼休み、オーバー残業時等・タイマー利用自働消灯 注釈:LED は白熱電灯の 1/5~1/6 と言われる。しかも、下に示したように使用 寿命が格段にすぐれるため、家庭では置き換えが盛んである。このため、生産 分野での技術改善と量産効果が手伝って、価格低下も盛んである。このような 環境を利用して、市販の安価な LED を数個使った光源の製作を自社で手作りし て省電力+経費節減効果をあげる例がある。以下、その種の公開情報を例示す ることにさせていただくことにする。 LEDの効果 白熱電球の1/5 電灯型蛍光灯 の91.7% 蛍光灯は明るくなる まで時間が掛かるため、 筆者宅ではLEDに交換した。 節電グッズの事例(家庭用) 31 LED販売状況 Y12:4月 神谷町TUTAYAにて LDEの伸び 11 12 13 14年 企業向け蛍光灯器具は国内に3億台あり、 内、インバーター非対応は1.8億台であり交換期にある 地下鉄神谷町のLED化 32 日刊工業新聞 2012年2月24日 ③ 生産ライン・生産・搬送設備 見直し対象項目 チェック欄~対策記入欄 01 休日、ライン停止時、非常時の設備電源オール OFF 対策 02 人感センサー+スポット送風・空調による節電 03 集塵ファン、廃棄ダクトの効率化(動力低減) 04 水量供給ポンプ→重力利用などのポンプ作動供給法の改善 05 ベルトコンベアの短縮、不搬送時停止による節電 06 各種設備に対し過剰な冷却・送風・加熱対策の見直し 07 製品冷却システムに対する断熱・熱収支チェック~改善 08 自然エネルギー、雨水~近隣の農業用水発電など(可能性 の研究)による断続的利用対策 09 加熱設備、冷却設備の断熱効果向上対策 10 熱処理炉内の温度分布、収支見直し(廃熱利用を含む) 11 アイドル運転、生産時の空転などムダな運転の低減 12 コンプレッサーの配管エア漏れ、ムダ使用の廃止対策 13 設備、ライン集約生産による非効率設備・ラインの停止 14 精密加工室の全体均一空調を必要部の部分鈞熱に変更 15 ベアリング、シャフトなど老朽過剰負荷運転の改善 16 クリーンルーム気流循環の見直し(シミュレーションを含む) ④ OA・自働制御機器 見直し対象項目 チェック欄~対策記入欄 01 不要時、人感センサーの利用によるディスプレイの消灯 02 コピーマシン、プリンターなど OA 機器の待機電力節減 03 PC、CAD などブラウン管ディスプレイの液晶化 04 ノート PC の電力を太陽光パネル蓄電方式へ変更 05 事務機の電源を夜間蓄電で吸収対策 06 PC 不使用時に対し、省エネモード(ソフト)の利用 07 スクリーンセーバーは省エネ効果が少ないため No.01 対策 08 省エネ・節電型 PC・サーバーへの変更 33 ⑤ 冷凍・冷蔵・保温設備 見直し対象項目 チェック欄~対策記入欄 01 冷蔵・冷凍・保温温度設定の見直し 02 冷蔵・保温保管方法位置の見直し(隙間拡大対策が必要) 03 冷凍庫の保管方法見直し( 急速均一冷却には物と物の隙間が必 要:すっきり式、逆に家庭の冷凍庫のように保管が目的の場合隙間を つくらない保冷が節電上有効:ぎっしり式) 04 保管容器類の熱損失対策(製品:容器、内部カーテン対策等) 05 試験室など冷蔵庫の保管期限、量、設置位置(放熱部の隙 間拡大対策)など対策 06 ピーク電力時に蓄電の活用(タイマー式スケジュール管理など) 07 ガス利用など電気以外の冷却・加熱・保温方式と比較検討 08 コンプレッサーからインバーター方式へ変更 09 氷蓄熱式 10 地熱、雪・温泉熱利用など自然熱利用 ⑥ その他、工場関連の設備と機器など 見直し対象項目 チェック欄~対策記入欄 01 物流機器、梱包機器の待機電力対策 02 排水処理施設運転を連続~間欠へ 03 エレベーター、コンベアーなどの不使用時停止と待機電力 対策など 04 工作機械のインバーター化(クーラント類が 40%使用) 05 作業のムダ排除による時間短縮に伴う使用電力時間の低減 表中 No.04 は菱越電機(株)が対策を紹介 URL:http://www.ryoetsu.co.jp/pr/pr_6.html 工作機械の電力使用~対策は次ページ URL に事例数件(作動状況と電力使用解析~評価) http://www.google.co.jp/search?sourceid=navclient&hl=ja&ie=UTF-8&rlz=1T4SKPB_jaJP304JP305& q=%e5%b7%a5%e4%bd%9c%e6%a9%9f%e6%a2%b0%e3%81%ae%e4%bd%bf%e7%94%a8%e9%9b%bb %e5%8a%9b 34 2-3 小規模発電を含む自家発電対策 工場においては、電力停止が操業停止となるため、UPS や非常電源の設備が 設けられてきた例が多い。加えて、3・11 以降、自家発電を付加して電力対策と 緊急時の停止被害を逃れる対策などが盛んである。ちなみに、溶解炉を持つ 企業では、電力 各所で盛んに進められている発電対策(事例) が停止すると、材 料が固まり、電気 炉自体の復旧に膨 大な費用と時間が かかる例や、時に は、電気炉自体が 復旧困難になる例 もある。このため、 電力会社の負荷軽 減を含め、右下の 図は経済産業省も 支援する形で電力 対策を進める例と、 発電設備を製作・販売する企業の活動の例である。企業によっては、節電と並 行させながら発電対策を進める必要がある例もあり、以下、小規模発電対策を 含めて例を紹介することにした。 区分: ① 自然エネルギー発電 対策事項 解説と事例 記号とコメント 1 PC 用太陽発電~蓄 オー・ジーは持ち運びできる太陽光発電+蓄 D・R:大手電力回線 電ユニット 電ユニットを販売(21 万円前後)60W モバ から切り離して利 イル PC で 2 時間、DC5V、AC100V 接続が 用可能にする対策 可能:日刊工業新聞 Y11-7-14 2 農業・売電対策 半農・半電という新語でドイツ最北端フリー D・R・P:独立し スランド 70 世帯 165 名の村では風車 14 基 た発電を売電 を作動~売電:朝日 Y11-7-2 3 荒 れ た 田 畑 を 太 陽 ソフトバンクの孫社長の活動「電・田プロジ D・R・P:同上 光発電 4 原発並み 太陽光発電 ェクト:朝日 Y11-7-4 日射量の多いサウジで東京大学やシャープ などが大規模発電実験 100 万 KW 規模を 5 年で実現をめざす:朝日 Y11-7-12 35 同上 区分: ① 自然エネルギー発電 対策事項 5 解説と事例 記号とコメント 工 場敷地内の 余地 トヨタ・英ブリティシュ・ガス社と協同でト 同上:空き地利用 利用・太陽光発電 ヨタ英国工場内に太陽発電パネル 17,000 枚 を設置(サッカーコート 4.5 面相当)年間 460 万 KW 発電:日刊工業新聞 Y11-6-20 6 群馬で小水力発電 上下水道の小さな水の落差を利用した発電 同上:近隣の流水 1000KW 以下を近隣の農業用水などを利用 利用 して発電、既に 6 カ所で 10KW 以下が稼働 :日刊工業新聞 Y11-7-15 7 小 規模水力発 電シ 山崎(堺市)はコレアス型発電機を流水利用 ステムの販売 で回転~発電するマイクロ発電装置を開発、 平均流速 1.3mの弱い水流で 420W :日刊工業新聞 Y11-7-13 8 水力・風力発電 荻野製作所(群馬)は水力・風力発電部品を強 化して自動車部品の減産対応: 日刊工業新聞 Y11-7-8 9 地熱発電 立地手続きの複雑さ、国有林に有用な地熱利 同上 用が限定されるなどの問題があるが火山国 の日本で緩和を探る動きを報道 日刊工業新聞 Y11-7-12 10 大 容量太陽パ ネル 群馬県大田区では企業融資と共に空き地に 同上の基地発電は 発電(メガソーラー) 巨大な太陽光発電基地をつくり発電と販売 東日本の被災地で を開始(2012 年 7 月)年 1600 万円の利益 も拡大中 その他:小型風力発電メーカーとして有名なゼファー社の発電は家庭用、工場事務所の電 力を補う対策に多くの企業が導入~活用な実用技術である(テレビ報道も盛ん) URL: http://www.zephyreco.co.jp/ 36 区分: ② 自家発電(石油・ガス・木質チップ) 対策事項 1 木質チップ発電 解説と事例 記号とコメント 群馬県・上野村は森林が 93%だが間伐材な R:熱源の代替 どをペレット化熱源代替化して電力低減に 貢献する活動を進めている:NHK テレビ Y11-7 おはよう日本、並びに、URL:上野村 木片チップで活動が検索可能 2 発電機購入使用 日立建機 3 億円を投じ自家発電を常陸那珂 同上 工場に導入 Y11-7 月に設置 5000W を確保 :http://www.nikkan.co.jp/news/ nkx0120110610 aaag.html 3 経産省、自家発電導 中小企業にも補助金を出し「2011 年度自家 入後押し 同上 発電設備導入促進補助金」の採択企業名を紹 介(東北電力管内 19 社、東京電力管内 49 社)1 社 500KW 以上の装置・1 日 8 時間以 上の稼働が条件:日刊工業新聞 Y11-6-30 区分: ③ その他:コージェネレーション 対策事項 解説と事例 記号とコメント 1 コ ー ジ ェ ネ レ ー シ 「投資ゼロでコージェネ大改造」と題して対 R・D:廃熱・排ガ ョン・システムの大 策を紹介。この対策は発電の際発生する熱を スの利用により電 改造 有効利用する対策は食品工場などで普及が 力使用を代替 進んでいる。アスモ本社工場では①廃ガスボ イラーからの高圧蒸気、②排ガスの熱→圧縮 空気を製造~冷暖房への活用。ライン 1/N 化 と共に進めた内容を紹介。 :日経 BP 社・日経ものづくり Y11-6 月号「マ イナス 15%攻めの節電、守りの節電 37 区分: ③ その他:電力対策基本技術 対策事項 1 力率向上対策 解説と事例 記号とコメント 工場ではモーターなど巻き線(コイル)使用 S:原理利用による 機器が多いが、コイルに交流電圧を印加と仕 ムダ電力の低減 事をする有効電力と皮相を流れ仕事に寄与 しない負荷(無効)電力が発生する(誘導リア クタンスによる遅れ)。対策は進相コンデン サーの挿入で改善を図る策が取られる。 パ ワ ー エ レ ク ト ロ 理想的には ON/OFF で電圧上昇で規定値、 同上 2 ニ ク ス 装 置 に よ る 降下時はゼロになるはずが、現実には電圧降 節電 下×電流となり電気損失が生まれるが項耐 圧半導体で短時間に規定値化しロスを軽減 する 3 変電器の効率化 電力ロスの少ない方式に変更する対策 同上 以上、ここまで 3 項に渡り、 「当面対策する省電力と発電対策」に対する対策 を公開された事例を基に紹介してきた。現在、電力買い取り制度の施行と共に、 メガソーラーを始め、企業の屋根を発電所として借りて発電した電力を電力会 社に売り、利得の一部をシェアーする形で屋根を貸した企業に支払う方式など も登場している。この種の対策を含め、電力対策の適用は投資対効果の関連で 評価されることになるが、技術知見と事例があるということは、その道の先駆 者や専門家が既におられることを意味する。また、そうなると、もし、この中 から効果的な対策がありそうなら、その対策法を情報公開する関係者にお聞き するか?ご相談される対策が望ましい内容となる。また、第 3 章では、モノづ くりの基本である。製造ライン改善の視点でこれらの対策を組み入れて、中期 的に大きな電力使用の低減を図る策を練る対策に移ることにする。 38 第3章 モノづくりの基本の見直して進める省電力対策(ホップ) 先に図 1-7 で示したように、製造業における電力使用の大半は製品製造とい うモノづくりに直結したものである。そこで、電力使用の根幹をなすモノづく りに対し、レイアウトを徹底見直して見直し、結果として電力低減を得る対策 法を紹介することにする。 3-1 レイアウト改善モデルでつかむ電力低減対策 (1)ユニット・セル(ミニ・レイアウト)における電力低減対策 図 3-1 は 2012 年夏場対策に向けて、家庭とオフィスに対し政府が出した節電 対策のガイドである。 この種のガイドに示 された項目と数値は 日本国民への節電対策ガイド 朝日新聞2012年5月19日 国民に節電意識を強 対 策 項 目 低減効果% く持っていただき、 10 家 ◆ エアコンの温度を28度に設定 庭 ◆ 冷蔵庫に食品を詰め込みすぎず、扉の開け閉めを減らす 2 向 ムダな電力使用や重 け ◆ 昼間使わない照明を消しておく 5 点的に数値の多い電 ◆ テレビを省エネモードにし、画面の明るさも下げる 2 ◆ 電気製品は本体の主電源で切り、待機電力を減らす 2 力使用対象機器から 13 オ ◆ 事務所の照明を半分程度に減らす フ 対策を進めていただ ◆ 使わない会議室や廊下の照明を必ず消す 3 ィ ◆ 使っていない場所のエアコンを止める 2 ス くことを促す対策で 向 ◆ 席を長時間離れる時は、パソコンなどの電源を切る 3 け ある。工場でも全員 ◆ ブラインドやひさしで、日差しを和らげる 3 参画で多くの機器の 図3-1 政府が打ち出した節電メニューの内容 点検や管理では、ど こにどの程度の電力 工程を見直す視点 ○(マル):正味、付加価値を生む仕事、売れるモノづくりへつながるお金を意味する。旋盤 を使い、何がムダに 作業であれば、材料を世界最良・最高スピードで研削する内容を示す。 □(シカク):検査、工程内で良品をつくれば、検査不要という判断をする。検査は出来るだけ なるかを示すことに モノづくりの段階で行う工程内検査保証(自己完結型)生産を狙う。 ▽(サンカク):人の場合は手待ち、材料は仕掛かり、情報は保管・ファイルなどを意味する。 より、 「ちりも積も積 工程の流れのスムーズ化、ネック工程対策、JITによる対策が有効。 →(ヤジルシ):移動、運搬、搬送、情報の伝達という内容が、この対象となる。どうしても移 動が必要な場合、太く短くを基本に近接を考える。 もれば山にする」と いう活動を促すとい 改善の進め方 う対策の面では参考 理想 改善の質問 E(Eliminate)省略? - 現実 にすべき内容である。 ムダは 改善ギャップ C(Combine)結合? R(Rearrange)置き換え? 発掘 清掃へ このため、このよう ムダと見る S(Simplify)単純化→自動化? な個々の設備や使用 機器に対する見直し 図3-2 電力低減対策に必要なレイアウト改善法の視点 を第 2 章で紹介した。 39 改善の視点 だが、先に解説したように、この種の対策は電力低減対策の前段である。ここ では、このような設備や機器が必要か否か?を問うのがレイアウト改善による 視点だが、具体的な対策は図 3-2 の視点で行う必要がある。工程分析の視点は 第 2 章の始めに E/C/R/D/P/S の記号と解説で説明したがレイアウト改善でも同 じ問いかけをして改善を進める(図 3-2 ではそのオリジナルである E/C/R/S の みを記載した)。では、早速、ユニット・セルという、ある仕事を進める職場を 取り上げ、レイアウト改善を図った後、この職場の電力使用がどのような結果 になるか?といった内容を国際的に有名、また、IE 手法の習得の初段で学ぶ「シ ールド板組立作業」を例に試みることにする。 では、左側にケー 設問 工程分析 シールド板組立作業演習 ス・スタディ(演習問 呼び名が示す通り「セル=細胞」は、全体最適をSLPのような手法で解析~検討の後、その一部である 題)の形で示した、シ 各ユニットをそれぞれ詳細分析して最適化を図ることにより、全体最適と部分最適をバランスよく最適化 へ導くことが要点となる。では、全体最適の検討がレイアウト設計法により終了し、次に示すような工程 の部分最適を図る、という仮定で、最も基本的とされる1つの工程の改善を進めて下さい。 ールド板組立作業に なお、ここでも、制約条件無し、という仮定で解析~改善案創出を図って下さい。 記載欄 ついて解説すること 現状作業(改善前) 次工程置き場 銅版 にする。ここで、工程 作業台 黄銅版 分析の前に「シールド 作業者 板とは何か?」を解説 ○:正味(付加価値を生む仕事) ◇:検査(工程で品質を造り込めば不要) しておく必要がある →:移動は無駄、出来るだけ省略、短縮 ▽:待ち、停滞(仕掛)は無駄! わけだが、この板は薄 改善はE,C,R,Sで E(省略) い銅版と黄銅板を各 1 C(結合・統合) R(置き換え) 枚、相互に張り合わせ S(単純化→自動化) た製品製造を意味す る。この板の使用目的 シールド板組立作業の内容(改善前の状況) は回路の筐体につか ベテランの作業者Aの作業を紹介することにする。彼は、右手2m先にある、大きさA5版の銅板 (煉瓦色の用紙を使う)を取りに行く。12枚取れば充分なのだが、目分量で20枚程度を取り上 げた。その後、2m歩き、作業台に戻り、検査しながら机の上に3×4=12枚並べる。 うためのものであり、 その後、手元に残った銅板を、先の銅板置き場まで2m歩いて戻す。次はA5サイズの黄銅版 (青い用紙を使う)置き場に1m移動し、先の銅板同様に20枚ほどを取り上げる。黄銅版置き 銅と黄銅の接合によ 場から作業台までは2mであるが、取り上げた黄銅版をA氏は作業台へ持ち込んだ後、先の銅板 の上に黄銅版を検査しながら並べる作業を行う。ここで、また、黄銅版は必ず残るので、黄銅 版置き場へ2m歩き、戻した後、2m歩いて作業台に戻ってくる。 り、外部からノイズが ここからが組立作業である。まず、A氏は2枚ずつ重なった板を1組づつとりあげ、机の角に 十文字に重ねてゆく、これは後で取り扱いをやり易くする前準備である。それが終わると、眼 入ってきても材料が 鏡をかけ、0.1mmという誤差以内に納めるように重ね、鋲打ち機(ホッチキス)で4角を止め る。止めた後、鋲打ち機を机に置き、今度はスタンプの近くに置いてある印を押す。この目的 持つ特性(誘導電気抵 は上下を間違えないように次工程に指示するためのものである。このような手順で12枚の鋲打 ちが終わると、次工程にあるボックスへ12枚(ワンセット)を運ぶ、移動距離は2mだが、終わ ると、概ね作業台付近に2m戻る形で、先の銅板へと向かうが、ここからは、先の仕事の繰り返 抗の差)でノイズをカ しとなる。 条件:①最初から組立てられた製品を買ってくる、または、一行で「改善案は自動化・ロボ ットしてくれるとい ット化する」という案は却下します。あくまで、この板をつくる企業として改善案を つくって下さい。 う性質を利用した部 ②現在12枚ワンセットにしていますが、この制約はありません。 なお、現在、1日の生産量は800枚、不良が10%もある状況です。 ③レイアウトなど変更は自由です。徹底的にムダ排除をして下さい。 材である。 演習問題の解析の ご実施は読者の皆様 にお願いすることに 40 して、早速、その解析 内容と改善結果を右 No. 作 業 手 順 距離 正味 移動 手待 検査 問題点と改善内容 m ○ → ▽ □ 側に示し、簡単な改善 1 銅版置き場へ行く 2 移動はムダ 内容の後、「電力低減 2 銅版を取り上げる すりキズ発生 3 作業台へ戻る 2 移動はムダ にどのような関連を 4 簡単な方法はないか? 検査しながら並べる3×4=12枚 5 銅版置き場へ行く 2 移動はムダ 持つか?」という内容 6 黄銅版置き場へ行く 1 移動はムダ の解説に入ることに 7 黄銅版を取り上げる するキズ発生 8 作業台へ戻る 2 移動はムダ したい。 9 検査しながら並べる 簡単な方法はないか? 10 黄銅版を戻しに行く 2 移動はムダ この分析でわかる 11 作業台へ戻る 2 同上 12 ことは、まず、「付加 十文字にならべ四隅を揃え、鋲 四隅に並べる時と鋲打 打ち・スタンプ打ちをする ち時にズレ不良となる 価値を生む仕事の対 13 次の作業台へ運ぶ 2 移動はムダ 14 作業台へ戻る 2 同上 象である正味率がた 生産数800枚/日 工程分析数の合計 17 5 9 0 2 正味以外は総てムダと 見ると37%だけが正味 37% 加えて、現状は不良率10%と問題! っ 37%だけである。 また、不良を 10%も 生産している!」とい う問題があり、電力低 改善後のユニットセル No. 作 業 手 順 距離 正味 移動 手待 検査 問題点と改善内容 減対策の前に仕事そ m ○ → ▽ □ 1 両手で銅・黄銅版を取り上げる 0 千円刷の束から1枚と のものを改善すべき る時のようにずらす置 き方をする となる。そこで、右図 2 治工具に入れる 0 型枠(治具)に入れる 3 0 鋲打ち機は4台とする 四隅の鋲打ちとスタンプ打ちを の下は改善を進めた 行う 4 0 ワンタッチ取り出し式 治具から取り出す ものだが、改善前/後 合計2,400枚・不良ゼロ 0 4 0 0 0 (例)改善されたセルは下図となる を比較すると、同じ要 改善後のレイアウト例 求を持った製品製造 改善した結果が に対して、工程数は 最適セルとなる 14→5、生産数量は 3 倍(800→2,400 枚)、 不良率は 10%→0 化 となる。 では、ここで、本書が提示する、 「モノづくりがあって電力使用となる」という 視点から電力低減対策内容を整理することにする。 (イ) 不良低減は材料生産に使用するムダな電力低減となる。 (ロ) 1 日 8 時間の作業で 3 倍の生産となると、同じような職場があり、同種 の仕事をしていた場合、製造ライン数が 3 ヶ所→1 ヶ所で作業ができる ため、作業現場で使用する電源も 1/3 化となる。 (ハ) 改善前に移動が多い職場(歩く→座るの繰り返し)が、1 ヶ所で座った 作業となり、作業時には、広い職場の照明が仕事場だけの照明となる。 シールド版組立作業の工程分析結果(現状) 黄銅版 品置き場 銅版 セット機械 治具と鋲打ち+スタンプ打ち 41 以 以上、このケ ケース・スタ タディでは は、 「工程分析 析による改 改善を進め た結果、現在、 現 組立 立産業などで で導入・改 改善が盛んな なユニット ト・セル化の実現が果 果たされた た」と いう例であり、これは「レイアウト ト改善の結果 果、電力低 低減を体化さ させるモデ デル」 の一 一例を示した た。 (2)工場全体 体レイアウ ウト改善で得 得る省電力 力対策 ユ ユニット・セ セルの改善 善は人を中心 心に仕事を を分析して改善した結 結果、省電 電力対 策を を得る方式で である。ま また、先のモ モデルは研 研修などで、この種の の基本的ア アプロ ーチ チを知ってい いただくた ため用いて きた例だが が、現在、この方式は は多くの現 現場で 利用 用されている る対策であ ある。だが、「個々の電 電力は工場 場全体の低減 減にどの程 程度の 寄与 与をしたか? ?」がテー ーマとなる。 。その理由 由は、部分最適が全体 体最適にな ならな い例 例、また、ユ ユニット・セルが関与 与する職場 場や、製造プロセス前 前後関係で で見直 しが が必要なため めである。そこで、先 先のユニッ ット・セル対策がボト トムアップ プ改善 方式 式とするなら ら、次に、トップダ ウン方式に に当たる工場全体のモ モノづくりのプ ロセ セスを追って て製造工程 程のムダ排除 除の結果、電力低減を効果的に に得る手法 法を紹 介す することにす する。 ① 単 単品生産を を例とした現 現状の製造 造プロセスの の解析 で では、ある加 加工品の多 多種製品生産 産工程を単 単品に集約したモデル ル化を例に に、工 程分 分析による現 現状把握か から電力低減 減対策を進 進めることに にする。 42 ② 現 現状分析と電力使用状 状況 こ この製品の の製造プロセ セスと、製 製品工程分析 析は表 3-1 のようにな なる。 43 また た、1つの製 製品工程を を追い、工場 場のレイア アウトに流れ れ図で示す すと図 3-3 のよ うに になり、この の工場で使用する電力 力は 9600W W と仮定す することにす する。この の仮定 するという意味 味だが、例 例えば、加工 工機一例を をとっても、稼働状況 況により電 電力が 大きく変化する るためであ ある。そこで で、この例 例では、通常の生産に において、最大 電力 力を配慮して て定めた値 値をモデル とした(照 照明などは、使用電力 力のままだ だが、 製造 造設備などは は、平均値に 1.3 程度 度を掛けた値 値をモデル ルに用いる ことにした た。こ の種 種の算定には は図 3-3 の下に示した の たような算 算定基準を参 参考にした た)。 44 では、電力低減対策をどのように進めるか?という内容に入ることにする。 ここまで何度も解説してきたように、モノづくりそのものを改善すれば、電力 使用はモノづくりの影のような形で低減する。今回の目的は製品の設計や製造 方法(処理機能)は変えないで、製造レイアウトを徹底して改善する点にある。 そのためには図 3-2 で示した工程分析結果を基に、ECRS を活用する。また、 表 3-2 を用いたレイアウト改善と評価が必要である。 表 3-2 工場レイアウトの評価項目と評価式の例(基準設定は自由) № 1 評価項目 順 行 率 評 価 の 例 と 評 価 式 ・右図の様なプロセスで生産が進む例の ① ①→②、②→③、②→④等を順行とす ると、③→②、④→②は逆行です。こ の程度を評価し、改善を考えます。 ④ ③ ⑤ ⑥ 順行回数 順効率= ・施策例:逆行不要の技術を確立する。 ② 全流れ回数 (距離×回数) ②、③、④工程を同じ設備等で集約加 工する。逆行する仕事をその工程で済ますようにする等々 2 動線近接率 ・物流を個数×回数等で表現すると図の 様になります。直結工場とそれ以外( 1m以内は直結とする)の工程を区分 ⑤ ① ② し、近接度の面より検討を加えます。 ③ ⑦ ④ ⑥ ・施策例:①-②を同工程で行う。1m 以内で行う様につなぐ。⑤の様な動線 近接率= の少ない仕事は無くす改善を行なう。 ⑧ 近接の動線の数 全体の動線の数 (距離×回数) ある工程の能力を向上させ、能力不足により発生する動線を無くす。 3 建屋有効利用法 ・建屋の高さを、面積で評価する。 上、下に活用できる場合は(中2 階等)これも面積率と考え算式に 入れる。 ・生産に関連する面積には、生産設 備、事務所、工具室を含める。中 間仕掛、発送場の仕掛にも必要に 応じ含める(改善対象として考え る対象は全て含める) 。 45 斜線部分はスペース 面積率= 生産に関連する面積 全体の面積 払い出し 投入 場合 表 3-2 つづき № 4 評価項目 工程の同期率 評 価 の 例 と 評 価 式 ・図の様な工程で製品性物流がある ①→△→②→③→△→④ 時、前後工程の同期性、フットの △は中間仕掛 まとめ(段取替等によりまとめて 加工が必要な時)による影響、設 備のトラブル、品質等の影響によ 仕掛時間= 〔仕掛個数〕 ×〔後工程時間〕 月生産数 り、工程間に仕掛が必ず発生しま す。 近接率= ・原因別に対策を考える。 5 仕掛品面積 全体面積-生産関連 面積 建屋の将来利用面 ・建屋内で将来走行利用できる比率と 積 S 既生産スペース 面積、拡張性がある場合、下記で算 定する。 A 利用率 A+B A B 現状のスペース 、 A+S A+S 建屋増加によるスペース ・現状の設備の小型化技術革新による設備の減、ある設備を能力up・機能up して台数減を図る等の改 善をする。 6 生産面積縮小化率 ・過去のある時期、他社のモデルを参考として(あるモデル時期をモデルとして、 同規模生産との比較をみる)算定する。 ・生産倍率は生産向上による倍率とする。 縮小化率= 計画(現状の面積) 基準生産面積-生産倍率 ・施策例:各工程の機能、効率、スピード アップ、設備の小型化、立体化、工程省略を考える。 7 管理容易化率 ・連絡指示回数を、算式のベースとする。 (1~2歩の歩行で必要情報が得られる 縮小化率= 時はカウントしない) 。 ・連絡内容は設備故障の連絡、治工具、 容易ポイント数 管理ポイント数 対象人員×必須情報項目の数 段取のための連絡、作業計画量の指示/ 実績、品質上の必須事項の連絡等である。容易化を考える。 ・手段、通路、見通しの改善、指示盤・ 電話等の設置、放送連絡設備の設置等、 事務所との密着度等を考える。 46 表 3-2 つづき № 8 評価項目 リ・レイアウト性 評 価 の 例 と 評 価 式 ・設備配置換が1日程度(電気、配管前後の処理装置等を含む)であり、リ・レイアウトが 安価に行える(基準内で変更可能な)設備の台数をカウントする。 ・リ・レイアウトが予想されるものは事前対策で余地を残しておく等の施策をつくると同 時に、移動不可能なものは明確化し、慎重な事前検討対策を進める(ピット、クレーン、 重量大型設備等) 。 リ・レイアウト率= 基準内で移動可能な設備台数) 全設備台数 リ・レイアウト不可対象率= 移設が不可能という制約がある設備 全設備台数 ・リ・レイアウト性はリ・レイアウトできない制約の明確化が必要である。 9 職場の安全性 (1)通路の見通し、仕掛置き場の高さを評点とする。 (2)危険余地の評点、通路の凹凸も評点とする。 (3)安全棚、安全の表示、安全管理の明示、危険物の表示、危険区域の表示も含め指摘件数 による評価を評点とする。 10 5 (1)物の置き方と区分 S (2)治工具、金型等の取扱 (3)清掃点検、保全の容易性 (4)粉ジン等の発生源 対策性について、5段階評点を定め評価する。 11 作業環境性 (1)建屋内空気流通性、空気回転率 (2) 冷風他設置、拡張性 (3)騒音・熱・ニオイ等の遮断性、指摘件数評点とする。 12 保 全 性 (1)部品の取扱性、検索性、保管管理の信頼性 (2) 設備の整備、故障時のやり易さ(含む、各種条件との干渉) (3)異常アラームの取付け、活用性等に評点を定め判定する。 13 福 利 性 (1)小グループ等討論のし易さ (2)食堂・トイレ・飲食品入手等への配慮、近接性 (3)工場環境(運動、いこいの場等)に評点を定め判定する。 14 環境公害対策性 (1)環境基準に対する各種規制上の対策 (2)環境公害対策設備のメンテナンス容易性 ※評点を定め判定する 47 表 3-2 つづき № 15 評価項目 省エネルギー対策 (1)省エネルギー対策性 性 16 評 価 の 例 と 評 価 式 (2)再熱利用の容易性 リターン材廃却物 (1)リターン材の搬送、保管、管理のし易さ 取扱性 (2)廃却物類の保管、払出し、管理の容易性等 ※評点を定め判定する。 梱包資材 また、この表を用いたレイアウト改善に当たっては、(1)一度、制約条件無で徹 底的に理想状態のレイアウト考える。したがって、この例では 2 階建ての工場 を平屋に集約(または、移設)する。(2)表 3-2 に記載された設備の機能や製造 時間、ロットなどは変更可能とする。(3)高額な設備や革新技術で無い限り、投 入可能として改善案を策定した後、VE 手法を使って安価な設備化案を追及する 道を了承する、といった内容を示して改善案の模索に入ることが重要である。 レイアウト設計に当たって、重要なことは、実現不可能かも知れない理想案を 作り、その後、実務的な条件を制約や評価基準という形で適用しないと、重箱 の隅をつつくような改善も効果も小さい案にとどまることが多いためである。 特に、企業生活が長い方は歴史を重視する。古いが使い慣れたレイアウト構成 になれてきたため、自然に変化を嫌う傾向が出るためである。では、ここまで 記載してきた内容を基に、図 3-3 の現状をどのように改善したか?という例を 示すことにしたい。 このモデルを用いた演習の結果、いつも思うことだが、上に記載した改善の 視点で検討願うと、どの方がレイアウト案を策定しても、概ね、図 3-4 に似た 改善策になる現 検査 洗浄 無人搬送車投入 象だった。この 脱脂 材料置場 加工機グループ ことは、ある意 味、 「同じような 防錆 入材 技術と情報を持 現場事務所 つ技術者がレイ 乾燥 出荷 アウト改善を行 現場管理者 検査、梱包 空き地 (付帯作業を含む) うと最終案は同 じようになる」 発送場 自動検査・梱包機を投入する という内容を示 【改善の成果の見積り】 現場人員 11名 → 5名 (55%減) し、どの産業に 人の移動距離 32m→ 6m(81%減) おいても、この 種の条件と情報 図3‐4 レイアウト改善検討結果の例 48 を得 得てレイアウ ウト改善を を図ると、向 向かうべき き最終点は同じような な結果にな なって 行くことを意味 味する。そ そうなると、 、早く、そ その種の到達点に達し した企業が が他の 企業 業に先行する る形でメリットを得 るという自 自然原理を意味する。 電力対策 策も然 りで である。「レ レイアウト改 改善技術を を使わず苦労して時間 間を掛けて て到達する点 点が、 レイアウト改善 善技術を使 使って、早 く到達する ることができるのでれ れば、レイアウ ト改 改善技術を使 使った方が が良い」とい いう内容を を意味する。では、こ このような な結論 に至 至る効果から ら離れ、こ このようなレ レイアウト ト改善の結果 果、先の図 図 3-3 の右 右に記 載された電力使 使用がどの のようになっ ったか?に について、表 表 3-3 に改 改善例を示 示すこ とに にする。 改 改善結果とし して、例え えば、表 3-3 3 の左側の の No.2、3、 、6 は不要 要になる。ま また、 1 階に生産を集 集約した結果、エレベ ベーターの使 使用は不要 要、その他、 、レイアウ ウト改 善と共に、設備 備改善を図 図れば、個々 々の電力使 使用の低減が図られる る。さらに に、白 色電 電球を LED D に変更するといった た対策を追加 加した結果 果、この例で では 38.4% %の電 力使 使用の低減と となった。この例が示 示すように に、レイアウト改善は は、工場に におけ る電 電力低減効果 果を進める る有用な対策 策であるこ ことを示した(なお、 ここに示 示した モデ デルは簡単な なものだが が、複雑な製 製品製造に におけるレイアウト改 改善に当た たって はU URL:qcd.jp p に掲載した た工場レイ イアウト設計 計法をご利 利用下さい) )。 49 3-2 レイアウト改善からレイアウト革新の技術(ステップへの準備) レイアウト設計法は現状のモノづくりに対する制約をできるだけ外して徹底 した改善を図る対策であり、ある条件と改善情報を準備すると、関係者の改善 策がほぼ同じような内容になる例を示した。このことは、現状のレイアウト改 善に大きな方向を示すものである。だが、この段階に早く到達した関係者は更 なる電力低減に進むチャンスと段階となる。 「改善は永遠なり」の言にあるよう に、科学技術の進化と人の知恵の駆使を、産業界が競争社会であるという環境 が後押しする。そこで、次に、レイアウト全体をモノづくりの機能という視点 でとらえ、電力革新につなげる対策に進むことにする。 (1)工程機能分析 製造工程の機能はインプットをアウトプットに変換する対策である。そうな ると、VE 手法に示されてきた「1つの目的には多くの手段がある」という視点 でモノづくりの工程を見直す必要がある。そこで、表 3-1 の個々の工程を「何 のために行っているのか?」また、製品実現のため「何のため必要か?」とい う問いかけを行い機能系統図化する必要がある。では、その解析結果を図 3-5 に示し、改善案を追及した結果、電力使用がどのような状態になるか?という 解析結果を例示することにしたい。すでに各種の書で紹介してきたが、過去、 工程を機能で 見る解析法は 材料を成形する なかった。そ 加工品Aを得る こで、工程機 材料を防錆する 能分析という 名をつけたわ 現状を分析 けだが、各製 加工仕様を満足 造工程はモノ する づくりに対す 加工品を梱包する る目的を持っ ている。そこ 工程機能分析より得られること ◎要は:寸法通り加工され(仕様を満足し) で、VE におけ サビない様な表面処理がなされていれば製品仕様は満足する る機能系統図 図3‐5 工程機能分析 化して、その 役割(機能)を把握し、上位の目的で有効な対策や技術があれば、その種の手段に 置き換えるというアプローチが工程機能分析図を利用した対策である。先のレ イアウト改善では、どうしてもレイアウトそのものが改善の対象となる。この ため、例えば、金属製品の加工後、一貫ライン化して脱脂→洗浄→防錆→乾燥 材料を 加工する 加工機へ運搬する 規定寸法を 守る 〔条件〕 ・防錆品である こと ・梱包済である こと 材料を 清掃する 材料を洗う 材料を脱脂する 材料を乾燥する 材料を液につける 防錆材を 材料につける 材料を乾燥する 材料を運ぶ 検査基準を 守る 検査品を梱包工程へ送 る 新しい手法、見方を加える 50 処理を行うアイデアで満足してしまう例が多い。この場合、制約条件では無い にもかかわらず、改善策は製品をひとまとめにした処理(ロット生産・処理) となる例が多い。ところが、加工設備で仕上げた製品は、加工工程の出口で脱 脂→洗浄→防錆→乾燥という処理、すなわち、防錆処理が終わらせれば、一貫 ラインやロットまとめの処理はいらない。そのように機能を捉えると、例えば、 「家庭で使っている小型洗濯・乾燥機や皿洗い機などがこの役を果たすので、 同じ機能なので適用できないか?」という発想となる。しかも、ロット処理の 場合の時間は 4 台の加工設備に分散して行うため、処理時間が 4 倍となる。さ らに、この種の一貫ラインで製品同士がぶつかり不良の基になる打痕キズを発 生する処理は 1 個流しで行えば無くす工夫もできる。要は、加工設備 1 台に 1 セットの小型の洗浄~乾燥設備をつける対策となり、加工機毎にユニット・セ ルで処理する方式を適用する対策が可能になるはずである。また、ここで、大 幅に電力を削減した小型処理機を投入すれば、省電力対策の面で効果が出るは ずである。 さらに、脱脂→洗浄→防錆→乾燥の機能を上位で考えると、その目的(機能) は、 「製品の錆を防ぐ」となる。また、この視点で製品処理を考えると気化性防 錆剤の適用もひとつの対策案となる。具体的な対策として、切削液で加工済の 製品を完全に洗浄した後、寸法検査はポカヨケで加工後に保障~確保すれば、 予め気化性防錆剤を入れた袋に加工済製品を投入~梱包すれば、目的とする製 品製作~検査・梱包・出荷準備というユニット・セルになる。昨今、製造元で 品質保証体制を行う体制が望まれる時代だが、この種の策は図 3-5 を用いた機 能分析を利用すれば、早期に創出可能な案が作成できる環境を技術者の皆様に 提供することに 対策1:「洗浄+乾燥+防錆」を機能で見ると「付着するゴミを除去+乾燥する」 → 洗濯+乾燥機、皿洗い器 → 4倍の時間を使い各加工機に小型設備化へ なる。では、こ 対策2: 「何のための洗浄?」 → 「材料の錆を防ぐ+洗浄する」 → 気化性妨錆剤+加工時に完全洗浄 → 錆びない素材を選定加工など のような改善案 対策2: ▲690W (55.2%減へ) が得られた段階 レイアウト改善に伴う節電効果の算定 JIT購入で、クレーン利用なし の無錆+軽量小型金属材料の で電力をどの程 購入(カセット式台車+手運び 程度)の加工機への投入で 度低下させるこ 更に下記120Wを30W(照明程度 を残す)、その他600w減で とができるか?」 対策1:小型洗浄機を を試算すること 各加工機の最終 にする。図 3-6 へ分散装着 (作業位置縮小化を含む) ① 洗浄時間は4倍利用可能 がその状況だが、 ② 電力低減は1030W →30W×4基=120W化へ この例では先の (5910-1030+120)=5000 は9600Wに対し48%(約半減) 38.4%を超える 図3‐6 工程機能分析による革新技術の適用結果の例 形で半減という 結果となった。 改善前の状況 電力W レイアウト改善対策後 改善後電力W 1 自動加工機(NC)5台:実稼働4台 (含む、切り粉処理など付帯設備) 4,000 加工スケジュールの見直し~ダライ粉排出 付帯設備の節電対策で10%節電 4,000 → 3,600 2 天井1階照明 2本組蛍光灯 20w×10組 200 ★レイアウトを1階に集約 により撤去 200 → 0 3 発送場電動フォーク1台 200 ★コンベアで省略 200 → 0 4 材料置き場用電動台車 200 そのまま利用 200 5 1階天井クレーン1台 ★移動距離減 500 → 400 6 エレベーター1基 1,000 ★2階を1階集約で撤去 1,000 → 0 7 洗浄設備 300 洗浄設備 ★一貫ライン化コンベア増設 300+100 500 200 ★各種節電対策の積み上げ 200 →150 9 防錆設備 200 ★防錆設備 200 →150 10 乾燥設備(ヒーターとファン付き) 700 ★廃熱利用などの改善 700→500 8 脱脂設備 11 電動台車2台 400 ★移動距離減で1台使用へ 400→200 12 梱包設備 100 ★駆動方法と梱包改善で電力使用減へ 100→ 80 13 天井照明 No.2と同じ 200 天井照明はLEDへ変更 200 → 50 14 事務所PC,コピー機、電話など 500 ★個々に節電対策適用 500 → 100 15 外部照明 6か所×100W 600 ★外部照明 LEDと人感センサー対策 600 → 50 16 トイレ、洗面所他(工場外に設置) 300 ★同上 300 → 30 9600 改善後の低減予想(▲38.4%) 9600→5910 合 計 51 以上 上、技術革新 新と、その のアイデアや や技術開発 発を誘発するために必 必要な工程 程機能 分析 析の進め方を を例示した た。 (2)工程機能 能分析の適 適用事例 過 過去の取り組 組みではあ あるが、公開 開可能な段 段階になった改善例と として、筆 筆者が 関与 与したフェラ ライトを加 加工して製作 作する磁気 気ヘッド部品のレイア アウト改善 善~工 程機 機能分析の適 適用例を紹 紹介すること とにする。 対 対象は図 3--7 左上にコ コイル装着 着前の磁気ヘ ヘッド部品 品(完成図)を を例示した たが、 5.6m mm の小さい部品であ ある。また た、製造プロ ロセスは右 右図であり、 、工程分析 析の 結果 果(状況)は図 図 3-7 の右の のような内 内容だった。 。なお、製 製品工程はこ この種の分 分析シ ートが 4 枚にな なるわけだ だが、平ら なフェライ イト材を加工して 2 枚 枚接合する る。接 合し したものをガ ガラスで磁 磁気的に離す す形で接合 合剤としては はさんだ後 後、さらに加 加工、 ラップという研 研磨で最終 終製品に仕上 上げて行く くという製品製造プロ ロセスだっ った。 この の工程の改善 善は、当初 初、自動化 を担当する る部門に依頼された。 だが、工 工程が 多く高額の投資 資を要する ること、人の の技量に製 製品加工が大きく左右 右されるこ ことな どの の理由で IE 改善を追及 及し尽くし した後、設備 備投資案の の策定をすべ べきとなり り、筆 者へ への依頼がな なされた。 そ そこで、工程 程分析結果 果を用いて、 、現状製品 品の流れを追 追い、図 33-8 の左側 側の上 52 部に にあるような な流れ図を を作成した。 。また、現 現状分析の結果、すぐ ぐに実施可 可能な 対策 策案を一次改 改善の結果 果という形で で図 3-8 の右下のよう の うな図で示 示し、改善し した。 その の結果、総加 加工時間で で 24%を削 削減、製品の の移動距離 離も 55%削 削減した。だ だが、 これ れは第一段の の改善であ ある。そこで で、数段階 階の改善を進め、最終 終的に、図 図 3-9 に示 示したような な工程機能 能分析図の作 作成を進め めた。また、この図を を用いた改 改善を 進め めた結果、磁 磁気ヘッド製作に当た たり、過去、1 製品づ づつ丁寧に定 定められた た各工 程で で行う処理を を止め、加 加工や接着精 精度をあげ げ、棒状に仕上げた部 部材を最終 終工程 でスライスする る『ブロッ ック加工』 と呼ばれる る加工法に切り替えた た。このよ ような 対策 策は品質機能 能系統図の の図化の後 1 年足らず ずで実現化 化の運びとな なったわけ けだっ たが が、ある時、この製品 品の加工で日 日本 1 とい いう企業の の情報を得る る機会を得 得た。 すると、「そこ こでは、半年 年前からブ ブロック加工をしてい いた」とい いう状況だっ った。 製造 造ノウハウの の関係から らこの種の情 情報を企業 業が得ることは非常に に稀である る。こ のた ため、この時 時、先に記 記載した「 レイアウト トを極限までつめると と、同じよ ような 工夫 夫や技術情報 報を持つ環 環境で活動す する方は、同じような な製造技術 術にたどりつ つく」 とい いうことを実 実感したわ わけだった。この時、 「では、ブ ブロック加工 工を先行し して進 めて てきた N 社が、なぜ情 社 情報公開し したのであろ ろうか?」という話を をした。筆 筆者達 は「 「多分、次世 世代の部品 品製作手段 を極秘に開 開発しているのではな ないか?」と考 えた たためだった た。そこで で、品質機能 能系統図を を用い、特許調査を開 開始した。する と、未来の技術 術は蒸着技 技術を用いて て、超小型 型の磁気ヘッド製作と という技術 術予測 53 とな なった。その の後、数年 年、この技術 術がコンピ ピュータの記憶容量の の飛躍的増 増大の ため め、磁気ヘッ ッド製作の の主力技術 となった。この経過から、品質 質機能系統 統図の 作成 成と活用は、 、この種の の製品製造 を革新して て行く上で効果的な環 環境を与え える手 法の のひとつであ あると考え える。なお、 、残念なこ ことに、当時、筆者は は電力に関 関する 現状 状調査と改善 善までは行 行っていなか かったため め、ここに改 改善前/後の の状況を例 例示す ることができな ない。だが が、数分の 1 程度の電 電力で同じ じ製品実現が が果たされ れるこ とは は、読者の皆 皆様には容 容易にご理解 解願える内 内容ではない いか?と考 考える。 そ その後、数は は少ないが が、この種の の改善から ら革新に至る例を筆者 者は数件経 経験し てきた。線材加 加工工場に における酸洗 洗い省略、ノジュラーマレブル ルの熱処理 理工程 の省 省略、継手工 工場の酸洗 洗い~錆止め め合金の塗 塗膜、 ・・・ソフトフェ ェライトの のバリ 処理 理省略などで である。こ この種の改善 善はレイア アウト革新結果だが、 ここに記 記載し た手 手順と、ほぼ ぼ同じような攻め方で で具体化へ持 持ち込んだ だ例ばかり である。もし、 も この の種の事例の の詳細と多 多種少量生産 産に関する るレイアウト設計対策 策にご関心 心をお 持ち ちの読者の皆 皆様は、す すでに、UR RL:qcd.jp p に工場レイ イアウト設 設計法が SL LP: Systtem Layou ut Planning 手法の活 活用と実践の の形で紹介 介しているの ので、そち ちらを ご覧 覧願えると幸 幸いである。 54 3-3 レイアウト改善に関与する有効な電力低減技術 レイアウト改善・設計には特徴的な電力低減対策がある。そこで、先の 2 章 で紹介した対策とダブル例があるが、あえて、筆者が関与した体験の中から、 有効な対策を挙げ、対策法を紹介させていただくことにする。 (1)建屋内の通風 夏場だけでなく、快適な職場を確保するために工場内の空気循環は極めて重 要である。筆者が日立金属㈱在勤時、1970 年頃の鋳物工場は水蒸気と粉塵で 10m 先が霞んでいるという状況が常識的だった。だが、継手生産を行う名古屋 地区に位置する桑部分工場一貫ライン化のプロジェクトを進める中で、建屋の 建造を担当した鹿島建設にお願いして空気循環係数工場を願ったことがあった。 この対策と評価はシミュレーション・システムを用いた検証だったが、建設か ら操業に入ると従来に無い空気清浄度を得た。要は、50m ほどもある工場の端 から端まで見通せる建屋の中での操業となったからだった。当然、快適職場が 実現、多くの見学者と共に、当時は注目される工場となった。 その後、筆者は米国オハイオ工場に赴任した。この時、工場建設前に、アル ミホイール生産の鋳物工場で図 3-10 のような工夫を進めた。その結果、夏は猛 暑の上に溶解・鋳造という生産ラインを持つ工場だったが、通常の暑熱対策で 生産 十分だった。一 般に、工場にお ける暑熱対策 というと、別途、 特別な装置や 通風対策を付 け焼刃的に進 める例がある。 だが、レイアウ ト設計と共に、 この種の検討 を進めると小 規模の痛風、空 図3‐10 建屋における通風対策の例 気循環システ ムで快適な職 場環境を得る例があるため、レイアウト設計・評価やリフォームの際、ご検討 願いたく、ここに体験談と技術手段を紹介した。なお、現在、この種のシミュ レーションは一般化している。図 3-11 はその一例であり、クーラー設置と風向 55 きの の温度変化な などがサー ーモグラフ ィーで提出 出される方式である。 そのような意 味合 合いから、是 是非、快適 適職場の具体 体化に当た たっては建屋の構造や や設備の設 設置位 置と空気の流通 通などの状 状況の検証に にお役立て ていただきた たく、解析 析法を紹介し した。 (2)地熱利用 用の冷暖房 房対策 図 3-12 は地 地熱利用冷暖 暖房対策の の例である。 。自然エネ ネルギーの利 利用はこれ れだけ でな なく多くの事 事例がある る。例えば ば、地下水 利用の冷暖 暖房、温泉 泉地におい いては 湯を を利用した余 余熱、流水 水を利用した た冷却装置 置などがある る。 なお お、法規制で で温度など どに制限があ ある地域や や場所があるが、制限 限無いであ あり、 コストや管理が が容易であ あれば、電力 力利用の代 代替として活用可能な な対象であ ある。 56 また、図 3-13 に示したような三住友建設が PR する建屋の構成は、工場建設や レイアウ変更等で適用可能な企業では継続的に電力量の使用低減となる手法で ある。なお、この原理を図化すると、図 3-13 の右下のようになる。筆者の体験 談で居祝だが、米国で工場の中央にある熱処理炉が暑熱対策の課題だったこと があった。 この時、業者の勧めで、薄いステンレス容器の構成で図の右下の構成で炉を囲 ったところ、床から上へ暖炉形式で熱が放出され、暑熱対策は全く不要になっ た。この種の対策は物理現象の応用である。そこで、表 3-4 と 5 に、各種対策 を例示させていただくことにする。 表 3-4 地下熱・雪・霧冷房など利用システム 対策事項 解説と事例 1 家屋・施設建設時 ㈱ジオパワー: 「夢の扉」で放映、2 重パイプ式を に空調冷却に地 利用して地下熱循環を図る方式 下熱利用 http://www.google.co.jp/search?sourceid=navclient&aq= 冷房電力 1/3 化 t&hl=ja&ie=UTF-8&rlz=1T4ADBR_jaJP326JP327&q= %e5%9c%b0%e4%b8%8b%e7%86%b1%e7%a9%ba%e8% aa%bf%e3%82%b7%e3%82%b9%e3%83%86%e 3%83%a0 2 地下熱空調によ スミコホームズ㈱:地下埋設配管で空気循環式 る冷房 http://www.sumiko.co.jp/category/1216998.html 3 15℃程度井戸水 JFE エンジニアリング製地下熱+ヒートポンプ 利用冷却 式スカイツリーでは冷房の消費電力1/3化に貢 献 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a =20110619-00000002-fsi-bus_all 57 記号とコメント 表 3-4 地下熱・雪・霧冷房など利用システム 対策事項 4 地下熱利用 冷蔵庫 解説と事例 記号とコメント 九州・宮崎県で企業勤務から農業へ転職した R:電気冷蔵庫を地 杉山経昌氏の努力、8 畳間位の広さで地下 5 下熱利用倉庫へ置 メーター天井上の土層の厚さ 1 メートル確保 き換え し約 120 万円で作り冷蔵庫代軽減:築地書館 発行「農で起業する」 5 雪室利用冷房 2008 年、G8 洞爺湖サミットでは雪を貯蔵し、 R:冬に嫌われるや 夏の間 24 戸の冷房をまかなった。以降、北日 っかいな雪を保熱 本の寒冷各地で導入。 し夏に利用 :岩田地崎建設(株)が内容を公開 http://www.iwata-gr.co.jp/technical/snow.html 6 霧噴射で工場冷却 ヤマトプロテック(港区)はミスト冷却システ S:水のミスト:気 ム 17 マイクロメートルの水粒子で気温を 2~ 化熱を利用して温 3℃低減する装置を工場や倉庫~屋外冷房に 度低下に利用 販売(学校などで既に利用。URL: http://www.yamatoprotec.co.jp/index.php?id=167 表 3-5 快適送風・断熱対策 対策事項 1 工場建屋 通風循環強化 解説と事例 記号とコメント フルタ電気(名古屋)は 70w で速度 1m の S:体温を奪う快適 風を 20m 先まで飛ばす(52dB)ファンを販 通風で暑熱軽減 売:日刊工業新聞 Y11-7-6 2 ハウス栽培建屋内 ビニールハウスの消音防止に、天井カーテン 高温空気排除送風 と北-南側建設を加え、ハウス天井付近の高 同上 さに差をつけ廃熱(農業試験所にてテスト) :NHK テレビ Y11-7-3 おはよう日本 3 夏 場 の 工 場 屋 根 な ハヤックは遮熱断熱塗装などを販売する企 E:太陽熱が工場建 どへガラスコート 業だが、ガラスコートで消費電力 20%低減 屋内への侵入防止 を PR:日刊工業新聞 Y11-7-6 http://www.hayashi-tosou.com 4 電気使わず 工場ヒンヤリ 三井住友建設開発による自然換気システム R:クーラーなど冷 工場に水を噴射、よろい窓から空気を取り込 風対策の代替 み工場内に流し冷却エリアを設け、温度上昇 した空気を排気する建屋構造を提示 :日本経済 Y11-6-25 58 (3)太陽光照 照明 工 工場の昼間の の照明には は、既に多 くの工場で で天井採光が用いられ れてきた。その ほとんどは、天 天井のスレ レートの一部 部をプラス スチック製の波板を用 用いて行う方式 や側 側面の天井や や壁に窓な などを設け る対策であ ある。したがって、こ ことさら自然採 光を を記載する必 必要が無い いわけだが、 、2 階以上の の建物、クリーンルー ームのように無 窓建 建築となると と、その種 種の手法は使 使えないた ため、特殊な工夫が必 必要となる る。こ のた ため、電力不 不足と共に に注目され普 普及が進み みつつある採光法を例 例示するこ ことに する。下の写真 真はその一 一例である。 集光した た太陽光をダ ダクトで必 必要個所へ引 引き 込 込む方式だが が、図 3-14 4 にはダク トを工夫し して行う方 方式とグラス スファイバ バーへ 集め め、配管する る形態で各 各所の照明へ へ光を持ち ち込む手段を例示した た。また、新聞 など どに紹介され れてきた各 各種の太陽光 光利用照明 明と適用例を を表 3-6 に にまとめた。 。 表 3-6 太陽 陽光直接利 利用による照 照明 対策事項 項 解 解説と事例 1 太 陽 の 自 然 光 を そ (株)スカイ ( ライトチューブにて販売 売 の のまま照明へ へ利用 ゼロエネルギー ゼ ーの太陽光照 照明システム ム 記号とコメント R R:置き換え→ →電気 不 不要、集光し した光 ①採光、②伝 ① 導、③散光の の3つの構成 成で太陽 を を照明に利用 用 光をそのまま、 光 、部屋へ導き き活用する方式 式 htttp://www.sk kylighttube e.co.jp/ 59 表 3-6 太陽 陽光直接利 利用による照 照明(つづ づき) 対策事項 項 2 同上 解 解説と事例 太陽光採光シ 太 システムひまわり名で販売 売 記号とコメント 同 同上 ラフォーレエ ラ エンジニアリング(株) レンズで集光 レ 光した光を光 光ファイバー ーで収光 して部屋へ配 し 配分する方式 htttp://www.h himawari-ne et.co.jp/ 3 同上 商品名光ダク 商 クト 沖縄県 県庁、全日空 空で仕様 同 同上 20 010 年 12 月「夢の扉」で で事例紹介。鏡とダ クトの組み合 ク 合わせで天井空間を利用して、太 陽光を取り込 陽 込み部屋に持ち込みする方 方式 (株)マテリ ( アルハウス製 htttp://www.m materialhouse.jp/ (4)工場内物 物流や移動 動装置などの の無電力エ エネルギー対 対策 時 時代の進展と と共に自動 動化が進むに に従い、移 移動装置やドアーなど どはモータ ターを 活用 用したものが が多くなっている。こ このような な対策に例え えば、図 4 -15 に示し した例 は江 江戸時代のか からくり人 人形の研究か から重力を を利用したアイシン・ ・エィ・ダ ダブリ ュ( (株)の無電 電力搬送機 機を具体化さ させた例で である。 60 似 似た原理を応 応用した対 対象に、東洋 洋ゼンマイ イ長谷川・光一社長の のバネ利用 用によ る、人力を効果 果的にドア アーの開閉 を無エネル ルギーで行う製品があ ある。一般 般に、 電力 力エネルギー ーが安価で であった時代 代に、この種 種の対策は は、人感セン ンサーと共 共に、 電気 気を供給した たモーター ーを回転させ せて構成機 機器類を作動させる方 方式が一般 般的だ った た。だが、工 工場の引き き戸開閉や車 車両などの のつなぎのドアーなど どは、既に に、バ ネを を使った方式 式の開閉ド ドアーが活用 用されてい いる。原理は、人がド ドアーを開 開ける 際に に蓄積したバ バネのエネ ネルギーを利 利用して自 自動で閉まるドアーで である。長 長谷川 氏は はバネにエネ ネルギーを を蓄積~解放 放を繰り返 返す小水発電も具体化 化させてい いるこ とで で有名な方だ だが、バネ ネも蓄電方式 式も、電力 力を使用しないで各種 種の機器や や搬送 装置 置などを無エ エネルギー ーで作動させ せる方式の のひとつであ ある。 現 現在、省電力 力化は各社 社が注目す る技術であ ある。このため、特許 許提案も盛 盛んだ が、バネ以外に にも図 3-16 6 のような な知恵がある るので、ご ご参考願いた たい。日本 本には 資源 源が無い国だ だが、戦後 後、知恵で伸 伸びてきた たため経済大国になっ った。その のよう なことを考える ると、電力 力不足は今後 後の若者育 育成に対しても、知恵 恵を駆使し して地 球環 環境にやさし しいモノづ づくりと共に に、日本産 産業を伸ばす格好な時 時代の要請 請とと らえ えるべきであ ある。そう うなると、ま まだ、緒に に着き始めたこの種の の技術育成 成を日 本の のお家芸とし して育てて て行くこと と共に省電 電力に関する技術開発 発を進める る対策 は重 重要の度を増 増すと考え える。 61 第4章 モノづくり革新と省電力対策(ステップ) これは産業の取り組みの全てに対する見解ではないが、日本におけるモノづ くりは、技術の進展と共に、欧米の技術を駆使した設備に電力エネルギーを投 入した自動化を柱に生産性向上を進めてきたという局面が多い。エネルギーを ふんだんに使うことが産業の進化に大きく関与した経緯があるからである。事 実、自動化の中身を見ると、モーターと機械部品、油圧や空圧などを電気エネ ルギーで駆動させて生産する形態が主体的だった。このため、工場に入ると、 大きい受電装置と各種スイッチや自動制御機がそのシンボルとなっていた。 だが、徹底的にモノづくりの原理を追うと、大電力や大きな機械装置群を駆 使しなくても、必要とするモノの生産が可能になる例がある。例えば、携帯電 話の金型の生産に、かつて、匠の手作業と加工機を駆使して 400 工程ものプロ セスを経て 40 日以上も要してきたプロセスを、山田真次郎氏は、大手企業を離 れインクスという会社を設立革新した。山田氏は、技術者を定年過ぎの巧みに 密着させ、技能を解析した。ここでは、例えば、職人用語で金型の押し出しピ ンの仕上げ程度を「しっくりだという内容が 3 ミクロンである」というような 軽量化を進めたわけだったが、この種の解析結果をデジタル化した。さらに、IT 化の進展にリンクする形で加工プロセスの革新に努力され、2002 年に 10 日、 翌年には 3 日という革新的な金型生産プロセスを確立させた。この快挙の影に は、IT+デジタル技術+加工のスピード化があった。 その後、金型生産は、 「金型の材料を削るという発想を止め、同じ機能の製品 を得る」という発想活用した結果、2007 年には金属粉末にレザー光線を照射し て、光造形で金型生産を登場させた。以上、携帯電話の金型生産に、モーター を使った NC や MC は不要になるモノづくりを例示し、電力使用量も革新的技 術が進化すれば、大幅な削減となる例を紹介した。 対象は異なるが、他にも同じような形態がある。例えば、かつてコンピュー タが大電力で回路の温度上昇にクーラーまで使っていた方式は、現在、PC で代 用されるように、機能向上と小型化により電力使用は破格的な低減となった。 家庭にあるテレビも、かつて、ブラウン管と膨大な電気回路を必要としていた が、液晶から有機 EL に変わり、小型テレビは想像できない電力使用となった。 先に紹介いた白熱電球も然りである。ELD の利用で1/5程度になった、とい う例である。このように、モノづくりそのものが変革した結果、革命的な省電 力化を実現させてきた例は多い。そこで、ここでは、そのような局面から、工 場におけるモノづくりの在り方を見直し、電力低減にながる策を探ることにす る。 62 4-1 筆者 者が関与し したモノづく くり革新に による電力利 利用革新モ モデル 「 「温故知新」 」という言 言があるが、 、筆者が関 関与したモノづくりの のプロセス スその もの のを革新した た事例を追 追い、そこで で学んだ取 取り組みへの切り口を を整理する ること にす する。 (1)日立金属 属㈱・桑部 部分工場にお おける継手 手生産、酸洗 洗い工程の の革新 古 古い話で恐縮 縮だが、19 980 年代の の初期に、中 中期計画と共に実現さ させた鋳物 物+加 工+仕上げ一貫 貫ライン化 化の事例と、 、そこで学 学んだ工程省略への切 切り込みの の入れ 方を を紹介するこ ことにする。 工 工程革新を図 図る前、桑 桑部分工場は は名古屋に に位置する日立金属㈱ ㈱桑名工場 場のグ ルー ープに属し、 、管継手量 量産を分担す する鋳物加 加工工場だった。筆者 者はこの工 工場の 革新 新プロジェク クトにリー ーダーの一員 員として参 参画した。当時の生産 産内容は、量産 品だ だった小型の の管継手を を、鋳物の生 生産後(鋳造 造、仕上げ げ、熱処理後 後)、後工程 程で、 マレ レブル(鋳物))継手の表面 面をスズメ メッキで覆う前処理の のため、名古 古屋へ大量 量輸送 して ていた。酸洗 洗処理のた ためだった。 。この処理 理の後、再度、桑名工 工場へ戻し し、メ ッキ キ~加工、検 検査の後、お客様へ配 配送すると というプロセスで継手 手を製作す する方 式で である。この のため、① ①物流費が嵩 嵩む。②ま まとめて輸送するため め仕掛・在 在庫の 増加 加を許し、生 生産リード ドタイムが長 長い。③当 当時、公害問題が社会 会問題とな なって いて て、酸洗いは はこの対象 象だった。当 当時、公害 害対策のための投資は は膨大にな なる状 況が が関与し、製 製品原価増 増も増大とな なっていっ った。このため、製品 品競争力に にも重 大な な影響が懸念 念される状 状況であり、 、何として ても酸洗いを省略した たメッキ手 手法の 確立 立が必要だっ った。そこ こで、図 4- 1 に示した た、当時としては理想 想案の実現((酸洗 い→ →ショットブ ブラストという表面処 処理を行い い、工程内で で処理を済 済ませる対策 策)を 進め める策が練ら られた。 63 具 具体策として て、桑部プ プロジェク トでは、図 図 4-2 に記 記載したよう うな中期・設備 投資 資施策を明確 確化して、酸洗い工程 程の省略と共に、鋳造 造~加工+仕 仕上げ+検 検査・ 出荷 荷までを一貫 貫ライン化 化させ大幅な な合理化を を図ることに になった。この計画で では、 桑名工場側で 100 余名の の省力化とな なる。だが が、 「リストラによる首 首切りはし しない で新 新製品分野に に人を向け ける」とい う方針が定 定められ、生産リード ドタイムの の大幅 な縮 縮減と共に原 原価低減を を計画したわ わけだった た。 64 また、この技 技術改善の の内容は図 4-3 の通り りとなった((本資料は、 、その後、活動 が産 産業界に評価 価され、JM MA におけ ける総合生産 産性優勝賞 賞の受賞と共 共に、JMA 発 行の の機関紙に掲 掲載された た図表をその のまま、転 転載したもの のである)。 詳 詳細はともか かく、当時 時、革新技術 術+目標達 達成を図ると というプロ ロジェクト X 的 な苦 苦労と共に桑 桑部一貫ラインプロジ ジェクトは は 1981 年に に完成し、表 4-1 に示 示した 計画 画内容はすべ べて実現し した(詳細は は既に公開済 済のため、ここでは、記載を省略 略)。 で では、このよ ような活動 動で得た要点 点を、以下 下、本書のテ テーマであ ある、 「今後 後、各 社で で省電力対策 策を革新す するために」 」という視 視点でまとめ めることに にする。 ① 技術革新 新思想の明確 確化: 大きな な工程省略は は省電力対 対策を大きく く革新する る可能性が高 高い。そうなる と、歴史 史ある製造プ プロセスや や協力会社に に一部工程 程を依頼して てきたつな ながり に対し、いったん、その構成 成をリセットし、歴史 史を変えて産 産業界に貢 貢献す る(内部指 指向から外 外部志向的な な見方)で、高い経営 営判断で中期 期的なモノづく り革新に に当たるべき きである( (桑部分工場 場の例は、当時の経営 営トップが が自ら 指揮を執 執るプロジェ ェクトだっ った点が成否 否を大きく左右した、 、という感 感と思 い出は、筆者や関係 係者が今も も大切にして てきた内容 容である)。 ② 人・技術 術・時間の集 集中的な投 投入: 当時、激しいライ イバル競争 争の中でプロジェクト トが開催・ 運営となっ った。 ショットブラストで で表面処理 理を行った後 後、無酸メッキという う対策は品 品質維 持から業 業界ではタブ ブーに近か かった技術だった。だ だが、「この の技術を具 具体化 65 させなければ明日は無い」という状況に対し、全社の総知が結集されると 同時に、専従で技術実現に当たる人材の投入と資金の投入は、革新技術の 革新を大きく早める状況だった(このプロジェクトの筆者とは別部隊が取 り組んだが、脇で見ていて、経営トップの人・技術・時間の集中的な投入 には注目すべき多くの点を感じた)。 ③ あるべきあらゆる技術の収集と整理: 桑部分工場における一貫ラインの実現には、酸洗い省略以外に、筆者が 関与した、加工設備の稼働率を最良にさせた後、桑部に持ち込む対策(TPM の要件を短期実現させる対策)から、IT と各種自動化設備を有機的に制御 するシステム化、小ロット切り替え生産に手間と時間を要さない改善など 多くの技術開発与件の早期実現が必要だった。ここに、プロジェクト・マ ネジメント面の強化も含め、テーマ毎に分かれた各チームリーダーに対し 「活動開始の前に、世界の技術を地図化して最良の技術を選定駆使せよ!」 という命令をトップ指示願ったが、ここにパテント MAP 手法が大きく役 立った(パテント MAP については、筆者著、発明協会発行「攻めの特許 とパテント MAP」をご参考ください)。 省電力化~工場規模で行う創電力対策に当たっても、多くの技術開発が 盛んになった今、将来技術の開発の早期化に、パテント MAP 手法の活用 は重要な条件になると考える。 表 4-2 筆者が関与したモノづくり工程革新の例 工程革新事例 簡単な解説 1 ソフトフェライト製造 粉末焼成したソフトフェライトにコイルを外注 ~部品生産工程革新 作業で巻き製品化に対し、外注作業の自動化、製 品評価を自動化、23 日の工程を 3 日化した。 2 磨き棒鋼の酸洗い省略 後工程のセンターレス工程の砥石の構成を業者 と研究~変更して、線材引き抜きの前処理に行う 酸洗いを省略。 3 マレブル鋳物熱処理の 特許調査、並びに、大幅な原価・工程期間短縮提 省略(ノジュラーマレブ 案を図り、研究所で専門的な開発が開始され、自 ルの開発) 動車鋳物の熱処理省略が実現 4 家電品、PC 等の 部材省略 リサイクル対策研究会による提案で、電気回路を 構成して部品構成する多くの部品を IT ソフトに 置き換えて省略(発明協会から著書として発行) 5 TV オンライン教育 JMA における海外、遠地研修をオンライン化、移 動コスト~研修・教育関連電力・費用を革新 66 以上、筆者が日立金属㈱在勤時代に体験した製造プロセス革新に参画した一員 として、学んだモノづくり革新事例と工程省略の例を例示した。また、その後、 経験した同種内容を表 4-2 に記載することにする。なお、ここで得た点は、経 験と共に得た技術革新対策で得た①~③に示した内容と見事に一致し、繰り返 しという内容だった。 (2)鍛造工場の製造プロセス革新 日立金属㈱在勤時代に、グループ会社支援の中から、新潟の鍛造工場の技術 革新対策を紹介することにする。この企業は、当時、自動車メーカー向けの鍛 造品の部品生産を受け持つ 60 名ほどの企業だったが、問題は、納期と品質問題 がある上に赤字だったため、やがて、操業を止める危機に面していた。筆者は、 そのテコ入れのためプロジェクト・リーダーの任を受けたわけだったが、工場 運動をお手伝いする中で、従業員の皆様の力量発揮と共に、4 か月で黒字化が実 現した。しかし、品質問題を根底から解決しない限り、やがて、再度の赤字転 落となる。そこで、鍛造品質の向上と共に、製造プロセスを革新する必要をク ローズアップした。鍛造品はどうしてもバリが発生していたためである。良品 にするためには、全鍛造品を協力会社に全量送り、バリを取る。また、全量持 ち帰り、熱処理をして仕上げ~検査を図るという内容に決めた。要は、鍛造品 のバリがゼロであれば、この種の仕事は不要になり、2 建屋に分かれて製造した 製品も 1 工場建屋で製造可能になる状況だった。そこで、従来は「だましなが ら生産する」というバリ発生を許す生産方式からバリ無し生産を進めることと した。具体的な方策は、①シングル(10 分以内)段取りで問題が発生した金型 は、バリ問題の無い金型に切り替える対策をする。このために、②新潟から東 京へ金型の修正のため送っていた処置を、工場建屋内で行うため、放電加工機 を購入する。③新潟の工場には金型加工~修正を行う人材がいないので、東京 の工場にいる方を転勤願うという策を進めた。いくつかの障害はあったが、こ の策は半年で終了した結果、(1)品質、納期問題は皆無となり、自動車メーカー が行っている評価はワースト 3 からベスト 1 となった。(2)原価低減は大幅に進 み、黒字化の継続が確保した。(3)2 つの建屋の生産が 1 建屋で済むようになっ た。また、従業員の省力化も進んだため、支援開始から 2.5 年の後、未知の技術 だった IC 関係の生産開始と共に、付加価値の高い製品製造を付加する企業に変 革した。当初、ここでは、IC 関連製品の新製品に着手することなどは全く計画 になかったわけだったが、導入と同時に製造革新を進めた点に、鍛造製品のプ ロセス革新が大きく関与した。 以上、1985 年頃の古い筆者談だが、製造技術の神髄を攻めることが、今まで 当たり前に行ってきた製造プロセスを変革させ、ムダなエネルギー使用を大き 67 く削減する例を示した。特に、この例は、①不良とバリ取りという手直しにム ダに活用されてきた電力の減、②手直し外注のため輸送に関係するエネルギー の減、③建屋有効活用による新製品生産エネルギーとコスト低減(他で生産して いた製品を移管することによる工場集約効果)を示す例なので、ここに記載した。 その後、JMA で企業支援を進める中で、ビデオデッキや PC などを生産する 組立工場の支援を要請されたことがあった。ここでも、組立技術の向上+組立 ラインの生産性向上を図った結果、30%の生産性向上と共に、①10 ラインあっ た製造ラインは 7 ラインに集約、②外部に製造委託していたキー部品を内製化、 さらに、③部品精度向上により、簡易ロボット利用による生産自動化(スピード アップも併せ対策)が図られた結果、20%もの電力低減効果を得た。この例も、 対象は、鍛造という製造技術に対し、組立という技術の差はあるが、キー技術 徹底的に攻めた結果、電力低減を得た例なので、ここに紹介した。 (3)自動車金型生産プロセスの革新 先に紹介した携帯電話生産で革新的なモノづくりを果たしたインクスの例を 紹介したが、インクスは 2008 年のリーマンショックのあおりを受けて倒産した。 倒産の理由はリーマンショックによるものだけではなく、事業拡大と、金型各 社に製造期間短縮ノウハウを提供した結果、大手企業が金型生産の短納期力を つけ、それと戦う形でインクスの製品を出していたが、競争力を失ったためと されている。この詳細はともかく、山田社長が紹介した携帯電話製造ノウハウ のプロセス解析はノウハウのノウ・ホアイ化であり、かつては暗黙知とされて きた匠のノウハウをデジタル化したという意義が大きかった。この内容を 2002 年に「ノウハウの解析法」ということで、NHK が『IT 革命の衝撃』という名 の放送番組で紹介した 3 年前、筆者は表 4-3 の形態で自動車金型を製造する企 業を支援していた。また、当時、インクスほどではないが、35%以上の工程プ ロセス革新を得ていた(その後、この企業の支援は終了したので、また、ノウ ハウが高い製作プロセスなので、その内容は紹介できない。また、この企業の その後の経過は追っていないので、インクスとの比較は記載を省略させていた だくことにした)。 山田氏がテレビで紹介した資料は、技術者 1 名を専従させ、縦軸に製造プロ セス、横軸に製造に要する時間、このように作成されたマトリックス上に製作 過程の要点を記載して地図化したものを生産期間の短縮の管理に活用して、 個々の技術改善を鳥瞰的に管理する方式だった。これに対し、筆者達は、自動 車金型の生産革新のため、表 4-3 を作成して対策を進めていた。この表の右側 は製造プロセスと金型生産に対する工程と当時に処理内容とチェック内容であ る。また、右側は、対策すべき課題を表にして対策を進めつつある要件をフォ 68 ロー ーする表であ ある。した たがって、イ インクスの の金型生産の革新に取 取り組む図 図とは 表現 現方法は異な なる。だが が、全く、機 機能は同じ じ解析である る。 「 「同じニーズ ズを持ち、同じ時代に に、同種技 技術知見を持 持つ者はペ ペニシリンや や i-P 細胞 胞の発見に見 見るように に、同じよ うな結果を を生む」ということが が、技術開 開発や 発見 見、発明の通 通説だが、ある意味、 、インクス スの取り組みと筆者達 達の取り組 組みは 同じ じだった。イ インクス・山田氏と筆 筆者は同じ じ頃に、鉄鋼産業で革 革命的な歴 歴史と なっている、溶 溶鉱炉の自 自動制御や厚 厚板の圧延 延制御を見てきた。そ そこで、学 学んだ 解析 析内容は、 「 「製造工程を をプロセス スに従って詳 詳細に分析 析する。その の上で、ノウハ ウの のノウ・ホア アイ化を図 図り、定量、 、デジタル ル化と共に科学的に適 適用可能な な裁量 手段 段を投入して て技術革新 新を具体化 させる」と という方式である。金 金型生産は はこの 解析 析思想の実践 践の程度と、信頼性の の高い既知 知技術の早早 早期適用が がキーとなる るが、 イン ンクスは、見 見事にこの の理論を実現 現させ産業 業界に示した代表例だ だった。以 以上、 筆者 者の経験談と とインクス スの解析を紹 紹介した(電力使用面での革新 新について ては、 その の改善前後で で革命的な な値となる ことは、も もはや、言及するまで でもない内 内容で あると考える)。 69 4-2 多くの の企業で行 行われてきた た モ モノづくり 革新による る電力利用 用革新モデル ル 先 先のインクス スの例にもあったよう うに、また、 、IC~LSI の発展史に に見るように、 技術 術革新がモノ ノづくりを を革新した例 例は多く、この種の技術革新の の進展は加 加速状 態に にある。昨今 今、身のま まわりに見 る製品を見 見ても、既にキーボー ードやブラ ラウン 管を を持たないタ タブレットという IT T 端末などが がある。そ そこで、筆者 者の体験談 談に加 える形で産業界 界がお手本 本にしてきた た代表的な な製品や製造革新の例 例を紹介し し、モ ノづ づくり革新が が省電力の の関係を例示 示することにしたい。 (1)セイコー ーエプソン ンの製造ライ イン革新事 事例 この種、革新 新を急がれ れる対象には は多くの対 対象と種類があるが、 その一例 例とし て、工場革新に に関与する るプリンター ー開発にお おける工場革新内容を をセイコー ーエプ ソン ンにおける努 努力で例示 示させていた ただいた後 後、この種、時代の先 先端をゆく技術 革新 新の中から、製造業がモ モノづくり り上、注意す すべき視点 点を例示する ることにす する。 ちな なみに、セイ イコーエプ プソンによる る取り組み みは図 4-4 のようにな の なる。 この対策の目 目的は環境 境対策であ る。だが、昼休みに電燈を消す すという一 一般的 に企 企業が行って てきた省エ エネ対策を徹 徹底する活 活動の後、ここまで紹 紹介してき きた例 に似 似た形で、生 生産設備の の改善に対策 策を移して て、大きな CO2削減に に活動を移 移して きた た。だが、そ その後、モ モノづくりそ そのものを を進める対策が、CO 2削減を大 大きく 進め めることに気 気いた。こ この発想で、 、電子回路 路の製造革 革新を進めた た結果、図 図 4-5 70 に示 示した、電子 子回路を形 形成する際、 、基盤に材 材料をメッキしたもの のを次のプ プロセ ス( (エッチング グ工程)で で不要部分 を溶剤に溶 溶かいて除去するとい いう過程を を繰り 返え えして、基盤 盤上に目的 的とする電子 子回路を製 製作するという対策が が一般的な な電子 回路 路整形プロセ セスとなっ った。この回 回路はセイ イコーエプソンがプリ リンターに に使う ため めの部材にな なる。だが が、よく見れ れば判るが が、機能という形でこ この回路を を見る と、インクジェ ェットで印 印刷したもの のに似てい いる。そこで、セイコ コーエプソ ソン関 係者 者はプリンタ ターで活用 用している 「印刷の方 方式を回路形成に利用 用したわけ けだっ た。また、セイ イコーエプソンが目ざ ざす CO2削減は 削 60% %という革命 命的な目標 標値だ った たが、この技 技術の完成 成で達成の実 実現に至っ った」という事例であ ある。また た、こ の例 例で参考にす すべき点は は、技術革新 新に対し、既に社内にある信頼 頼性の高い い技術 を結 結集して大き きな技術革 革新を図った た点にある る。そのような視点で で見ると、読者 の皆 皆様には、社 社内で当た たり前のよ うに使って てきた技術が省電力化 化に適用で できな いか か?という見 見直しが必 必要になる。 ットコスト ト・アプロー ーチに見る る、シャープのビデオ オ・プリン ンター (2)ターゲッ と、スズ ズキのチョイノリ(オ オートバイ)開発 写 写真は、かつ つて撮影(フィルムに に画像を焼 焼き付け)したフィル ルムを写真 真店に 持ち ち込み、専用 用の機械で で印紙に焼 き付けたも ものを入手するという う手続きが が長く 続い いた。だが、現在は、 現 家庭 庭でカメラ ラや PC より り印刷機を を用いて写真 真を印刷す する。 また たは、筆者の のように、紙という媒 媒体に出さず、PC のファイルか の から、必要 要なも 71 のだ だけを必要な な時に見る る。友人に送 送る際もメ メールに添付するだけ けで済ませ せると いう時代になっ った。要は は、写真とい いう画像の の取得~保管方法が大 大きく変革 革した 結果 果、個々のプ プロセスで で活用して きた資材や や薬品から電力までが が革命的に に不要 にな なってしまっ った例であ ある。 このような時 時代に入る る前、プリ クラという う個人で写真を撮りア アルバムつ つくり をす するブームと と共に、ビ ビデオの一 コマを家庭 庭で写真の印画紙に取 取りたいという ニー ーズがあり、 、ビデオ・プリンター ーという名 名で家庭用の印刷機が が販売され れたこ とが があった。特 特に筆者の のような仕事 事では、製 製造現場を分析~改善 善して改善 善前後 を写 写真で示す。5S(整理・ ・整頓・清 掃・清潔・ ・躾)改善の の場合、ビデ デオの一コ コマか ら改 改善点を抜き き出し、白 白い紙に写真 真を置き、皆で改善点を記入し しながら改 改善の 資料 料作成を図る る、といっ った仕事上、 、盛んにビ ビデオ・プリンターの の利用を行 行って きた た。ビデオ・ ・プリンターは実に役 役立つ機器 器だった。だ だが、当初 初 15 万円という 高価 価なものだっ った。この のため、便利 利な製品だ だが普及が限られるた ためシャー ープは 図 4--6 に示した たプロジェットを開始 始、見事に に達成した例 例である。 この事例は 2003 年・JMA の生 生産革新大会 会で筆者が が事例発表会 会の司会を を担当 する際に発表さ されたもの のだが、プ ロジェクト トのリーダーを経理部 部長が担当 当され 「私 私は値段を下 下げる仕事 事です。お客 客様の調査 査でターゲッ ット・プラ ライスが 5 万円 なの ので、技術者 者の方には は、 「出来な ない理由は聞 聞かない。言い訳より り対策案を をお願 いし します」とい いうことで でプロジェク クトを運営 営した結果で です。 ・・」 」というお お話し 72 だった。 その後、スズキが「チョイノリ」というオートバイを販売した。 「自動車が 1CC 1,000 円なのに、オートバイは 2 倍の 2,000 円と高い、50cc で 6 万円を切った オートバイを出せ!」という鈴木会長の命でプロジェクトが編成された。当初、 プロジェクトチームは「エンジンを取れ!」とまで言われ苦悩したそうだが、6 万円近くまで下げたオートバイを実現させた。このオートバイは、当時の 1/3 程度の値段だったが、さらに、鈴木会長は「部品はいくつあるのか?1 円 1 グラ ム下げよ!」と、追加要求をされたそうだが、F1 技術を駆使して 6 万円を切る オートバイは実現、販売を伸ばした。なお、チョイノリは、従来のオートバイ 生産で 40 工程 113mだったものを 8 工程 15.7mまで縮減させた。 この 2 つの事例は製品革新に当たって、関係者が予想もつかない程の高い目 標を経営トップから与えられ、知恵を絞った結果、既存技術の終結で製品実現 と共に目標達成を果たした例である。ここには、「5%や 10%の目標なら、適当 に改善を積み上げるが、数倍の目標となると、根本から今までのモノづくりの 枠を外して製品のアイデアを編集しなければならない。これが、数分の 1 の価 格で製品化を実現させるプロジェクトの成功を招く」という通説を具体化させ た例である。特に、日本が未来に大きく発展し、科学技術と地球環境先進国と しての地位をさらに推し進めるためには、ここに記載した事例にある考えで電 力利用法を新たな課題とした対策が必要になるため、ここにターゲット・コス ト(電力低減)方式を紹介した。 (3)根来産業に見るリサイクル対策と日々改善による製造プロセス革新 ターゲット・コスト対策の進め方は、トップダウンで破格ともいえる低減目 標を立て、プロジェクトチームが専従の形で徹底的な VE 手法を活用した対策 を図る方式に、その特徴があった。この意味で、先の例は大手企業を中心とし た対策手法ということになる。だが、中小企業が、高い目標を定め、日々改善 の積み上げで大きい目標を達成して行く技術開発例も多い。そこで、その中か ら、1993 年頃「リサイクル対策は儲からない!」という通説を破って使用済ペ ット・ボトルをデポジット回収して、カーペット生産で収益を挙げ、リサイク ルの先駆けをつくった根来産業におけるプロセス革新努力を紹介することにす る。なお、根来産業の特徴を経営的に見ると、図 4-6 の右側に示した付加価値 向上対策という特徴を如実に示した例である。 根来産業は回収した使用済ペット・ボトルを砕き、チップにした材料処理か らカーペット生産の全工程を社内で行っている。このため、例えば、昭和 47 年 大阪市・貝塚に設立した根来産業は、カーペット生産が盛んなこの地で、当初、 ウールやアクリルを使ってカーペット生産を行ってきた。だが、安くて良いも 73 のを を求める時代 代に、ポリエ エステルに に変化したわ わけだが、①昭和 59 年(1984 年) 年 、 産業 業廃棄物の利 利用を手掛 掛け成功させ せた。また た、②他社が回収ペッ ットから繊 繊維を つくり、外注に に依頼して て染色した糸 糸をつくる るプロセスを、繊維に にする過程 程で染 料を を投入して、 、一気に色 色のついた糸 糸に仕上げ げるプロセスを具体化 化させてき きた。 また た、③糸を生 生産する際 際、糸によ りを掛けな なければできないが、 よりを掛 掛けず に糸 糸を生産する るとともに に、④糸の生 生産を、カ カイコがマユづくりの の際に糸を を出す 状況 況を研究して て、ポリエ エステルのペ ペレットか から直接糸を生産する るプロセス ス(製 糸プ プラント)を を完成させ せ、従来 25 工程だった た製造工程 程をたった 1 工程での の生産 を可 可能にさせた た。さらに に、⑤繊維 を製造して て糸に巻き取る設備は は、通常 4,000 4 ~5,000 回転が が最高とされる状態を を 1993 年には 30,00 00 回転とい いう回転数 数で仕 上げ げる設備の改 改善を果た たした。また た、この種 種の努力を進め、⑥カ カーペット ト生産 にベ ベテランの方 方々を多数 数要する工程 程に対し、ノウハウを蓄積した たローコス スト自 動機 機で対応可能 能にした。当然、この の種の技術 術は多くの特許出願で でカバーさ されて いるが、この種 種の改善は は、総て、 「 「製造現場こ こそが改善 善の研究所で である」という 思想 想で、従業員 員が一丸となって小改 改善を積み み上げた成果 果である。 以 以上、根来産 産業の取り組みを紹介 介したが、この状況は は図 4-7 の の右側に示 示した ように、(1)材料 料~製品化 化までの全 全体を受け持 持つという、付加価値 値の高いモ モノづ くりにしたため め、改善の の自由度が増 増す。(2)従 従来工程で では、外注な などを介し したし がらみの中で個 個々の原価 価低減を図 るだけだっ ったが、トータル工程 程を見直し して、 74 最良の形態に仕上げる。(3)日々改善の積み上げで成功した技術と段階を見て次 の技術革新に着手するという地道で、確実な取り組みの成果がなされてきたこ とが判る。計算してみれば判るが、0.1%の小改善の日々努力は 3 年で 2 倍の生 産性向上を生む。 (0.1%/日)×(25 日/日)×(12 か月/年)×3 年>2倍となる。 当然、0.1%を 0.2%にすれば、2 倍の生産性は 1.5 年の達成となり、0.3%/年な ら、1 年で目標達成となるわけだが、この計算から、日々改善の重要性が判る。 もはや、ここで、数倍もの生産性を達成させたプロセス革新が電力使用の大幅 節減につながることは、言及するまでも無い。 筆者体験だが、日立金属㈱時代、自動車鋳物を製造する栃木県の真岡工場と、 先に紹介した桑部工場はでは TPM(全員参加の設備生産保全活動)の結果、3 年で 2 倍、また、筆者が在籍したバー材を生産する磨鋼工場でも小改善により 3 年間で 2 倍の生産性を実現させてきた。このような事例から、根来産業におけ るご努力が理解できるが、いかに小改善的な日々改善努力が大きいかという内 容と共に、 「日本のお家芸である小集団活動を今後の電力対策に適用を!」願う 次第である。 ご参考:2012 年 12 月 29 日朝、NHK を見ていると、米国の電力対策コンサ ルタント、エイモリー・ロビンス氏が日本を訪れ、 「エネルギーシフトへの挑戦」 という番組の中で、高層ビルが 2.8%の勢いで、日本の電力消費を増加させてき た状況と対策指導内容の紹介を行っていた。そこでは、ハンディー式のサーモ グラフィを手に、ビル内で使っている機器を検査してムダな電力使用を無くす。 ビルの採光を工夫して省電力化を図る。テーブルタップには使用時にランプが つくものを使用して待機電力状態の PC や機器の電源を切る。・・・という小改 善の積み上げで、ビルの電力使用を 1/10 化した指導例を紹介していた。番組で は、この種ムダ排除だけでなく、風力、地熱、太陽光発電対策を日本全土で適 用した場合の電力シミュレーション結果を例示していた。その結果は、原子炉 の再稼働を全くしない状況でも、将来の日本産業の発展に使用する電力は十分 であるというものだった。この対策は国家的な対策が関与する。だが、前者の ビルの電力対策は、個々の機器の電力量の使用を正しくつんで評価~対策すべ き対策を示唆する内容である。小さな電力使用のムダが「塵を積もらせ山をつ くる」ことを知るならば、工場を含め、事務所~従業員の家族を含めた電力使 用のムダ低減に役立つ対策ではないか?と考え、ここに紹介した。 (4)ダイキン工業に見る業務用エアコン・モーター使用電力革新 2000 年頃、バブル崩壊と共に日本を襲った不況に悩む企業が多い中、図 4-7 に示したように、ダイキン工業は V 字回復した。その状況は、2002 年にテレビ や業界紙などで盛んに紹介されたが、業務用エアコンの電力使用を 60%も下げ、 75 お客 客様が求める るランニン ング・コス ト低減を果 果たした。 筆 筆者などが、 、過去思っ っていた内容 容は「モー ーターというものは改 改善し、尽 尽くさ れて てきた」とい いうものだ だった。だが が、ダイキ キン工業では は、何と 1 年で 60% %もの 省エ エネを果たし した。この のご努力に陰 陰には、技 技術者の実力の高さと と共に、昨 昨今、 活用 用が可能な CAE(Com C mputer Aiided Engin neering)の の利用があ あった(CA AE は 製品 品設計時に最 最適の構成 成を科学的に にシミュレ レーションす する手法で である)。 ダ ダイキン工業 業における V 字回復 復に見られる る内容は、①ランニン ング・コス ストの 改善 善(低減)要 要求は「費 費用と共に、 、地球環境 境対策の上からムダを を省くべき き」と いう高い顧客ニ ニーズと、②CAE な など、省電力 力対策に当 当たっては、 、あらゆる る技術 知見 見を集め、③ ③最適設計 計がなされた た結果であ ある。このた ため、20000 年には、バブ ル崩 崩壊前の売上 上高に戻し したという ことは、お お客様志向と電力対策 策を総合的 的に対 策し した成果であ ある。また た、読者の方 方々には、現在、多くの製造現 現場で行わ われて いる。設備は徹 徹底的に、同種内容が が残存して ていないか?を探るべ べきとなる る。現 在、千葉県・佐 佐倉のフジ ジクラで将来 来の新幹線 線走行に対して、開発 発中の超電 電導モ ーターは、イッ ットリウム入りの超電 電導線を活 活用したモー ーターであ ある。 「この のモー ター ーを EV に使 使用すれば ば重量は1//2~1/3、馬 馬力は 3 倍という性能 倍 能になる」とし てい いた。この例 例を見ても、工場で多 多数使用す するモーター ーなどは、「電力の使 使用は 限界 界」考えるべ べきではな なく、時代の の進化に併 併せて変更などを頭に に入れた活 活動を して て行く必要が がある。 76 (5)アキュラ ラホームに に見る、家屋 屋建設費の の革新 本 本書では、工 工場だけで で省電力を進 進めるだけ けでなく、地域社会や や家庭を巻 巻き込 んだ だ対策の必要 要性を訴え えてきた。そ その理由は は、先の図 1-1 で示し したように に、工 場に における使用 用率と電力 力低減過程 を見ると、ここだけに頼った電 電力低減だ だけで は、今 今後の電力 力需給問題の解決にな ならないからである。この視点で で、もう一 一点、 モノづくりの枠 枠を広げ、住居とい う建築物の の価格低減を大きく進 進めたアキ キュラ ホー ームの取り組 組みを例示 示し、これ を広げる形 形で電力低減にご参考 考願いたい い内容 を紹 紹介すること とにする。 既 既に、ユニッ ットハウス スを製造す る各社とも も、断熱や空気流通を を快適化さ させる 対策 策と共に、図 図 4-8 に示 示したよう なスマートハウスの の取り組みと と開発を精 精力的 進め めてきた。当 当然、アキ キュラホーム ムでも天井 井に太陽光パネル、ま また、小型 型風力 発電 電を使うなど どして、電 電力の購入ゼ ゼロの実験 験を進めている。その のような状 状況は 時々刻々伝えら られる報道 道をご覧願 うことにし して、不況の中でダン ントツに伸 伸びて きた た商品名「新 新住まい 55」の場合 合、550 万円 円で 1 戸建 建ての一般家 家庭を具体 体化さ せて てきたが、大 大幅に原価 価低減してき きた内容か か?を解説す することに にする。 ア アキュラホー ームの社長 長、宮沢俊哉 哉氏は大工 工さん出身者である。 当初、中 中卒で 大工 工さんの見習 習いに会社 社へ入り仕事 事をしてい いたが、 「大 大工仕事に、 、大工さん ん本来 の仕 仕事が極めて て少ない」という問題 題意識を持 持ち、何と、 、1978 年 19 歳で自 自分の 建設 設会社、アキ キュラホー ームの前進 「都興建設 設」を創設した。その の後、各種 種の原 77 価低 低減策がお客 客様に歓迎 迎され、販売 売を伸ばし した結果、激安家屋を を建設した た努力 で、2008 年時 時点で年商は は 287 億円 円となった。 。この時期 期、低迷を続 続ける 1 兆数千 兆 億円 円の年商を持 持つ他の大 大手ハウスメ メーカーに にはとても及 及ばないが が、図 4-9 に示 した たように、他 他のハウス スメーカーが が不況で売 売上を落とす中で右肩 肩上がりの の成長 を遂 遂げている。このため めには、自分 分の家をモ モデルにして て、改造す する中から、 、 「品 質は は維持して、 、どのよう うにしたら安 安くつくれ れるか?」を工夫して てお客様に に提供 することを繰り り返した結 結果である。 この事例で参 参考にすべ べき点は、① ①ムダな仕 仕事の減が、省電力と と省資源に になる 点だ だけでなく、 、②業界で で従来、当た たり前とな なっていたことを改善 善した点、さら に、拡大解釈す すると、電 電力対策に当 当たって、③電力量という高さ さだけでな なく、 時間 間の長さとい いう概念に に目を向け るべきこと とや、トータルで仕事 事を見た場 場合、 例え えば、熱を使 使う仕事に に電力を使っ っているケ ケースでは、他の熱源 源と共に電 電力を 効果 果的に使うと といったト トータル的な な見方で安 安価で効果的な対策を を探すとい いう利 用を を促す事例と と見るべき利用法であ ある。 以 以上、モノづ づくりその のものを見直 直し、製造 造方法や機能を根本か から見直し して改 善や や技術・製造 造革新を進 進めた結果、 、電力低減 減を得る事例を紹介し した。現在 在、電 力不 不足を海外へ への工場移 移転の要因 としている る評論家が多い。だが が、日本の のモノ づくりを発展、 、強化、育 育成強化して てゆくべき きことを考えると、こ ここに記載 載した 取り組みは、単 単に省電力 力対策だけの のアプロー ーチだけにと とどまらな ない。 78 第5章 自給へ向けた『創電力対策』(ジャンプ) 前章まで、製造業における省電力対策を中心に対策内容を紹介してきた。だ が、現在、企業の中には、原発問題と電力危機を回避するため、将来を見据え た電力自給化対策を進める例が増加しつつある。そこで、最終章として、本書 を記載する 2012 年末の時点で調査した、国や大手企業が戦略的に進める電力対 策(スマート・シティ構想を含む)と、中小企業などを中心に創電力開発を進 める新技術などをまとめることにする。なお、この分野は原発ゼロ、さらには、 国際的にグリーンビジネスを中心に新たな雇用を創出する可能性が高い分野 (新産業)という局面があり、多くの方々のご参入を願う対象である。 5-1 大手企業が取り組みを開始した『創電力対策』とビジネス 現在、電力対策は大きなビジネス・チャンスである。このため、盛んに展示 会、著書、新聞、テレビ、業界誌などで、新たな取り組みが紹介されてきた。 なお、その具体策は、ご専門の方々にコンタクト願うことにして、以下、下に 示したような項目の中から、本書が目的とする製造業に関連する『創電力対策』 を抽出して、解説することにする。 A スマート・シティ対策関連技術と未来に発展する巨大な市場について (i) エネルギー供給システム EV、HEV 用配電・急速充電器、ワンタッチ・バッテリー交換技術、 水素エンジン用供給インフラ、車載充・発電機、地域電力・エネルギ ーマネジメントシステム (ii) 蓄電システム 各種蓄電器:NSA 電池、鉛蓄電池、ニッケル水素電池、リチウムイ オン電池、リチウムポリマー二次電池、空気二次電池。金属リチウム 二次電池)、燃料電池、インバータ、コンバータ、キャパシタ、コンデ ンサー、など。 (iii) インフラやシステムを支えるデバイス CPU・キャパシタ、各種ソフトウエア、パワー半導体、省電力デバ イス、システム LSI、ネットワーク製品各種 (iv) スマートハウスやスマートビルの構成技術 スマートハウス、エコオフィス、スマート家電製品(エアコン、テ レビ、照明、冷蔵庫、有機 EL 照明など)、ホームネットワーク、光ダ イレクトシステム、屋上緑化対策など B 発・送電技術 (i) 分散型電源システム 79 太陽 陽光発電( (住宅用、メ メガソーラー)、風力発電(陸上、 、洋上、港 港湾や 湖上の の浮体式)、ガス発電 電、海洋温度 度差発電、波力発電、 、潮流発電 電、水 力(含 含む小水力 力)発電、温 温水発電、地熱バイナ ナリー発電 電 (ii) 熱 熱エネルギー ー利用技術 術 太陽 陽熱利用、太 太陽温水利 利用、水式集 集熱器、自 自然循環型 ・強制循環 環型・ 空気式 式ソーラーシ システム(空 空気集熱器 器)。雪氷熱 熱、温度差熱 熱、地熱利 利用、 地中熱 熱利用空調シ システム、コージェネ ネレーション、熱供給 給・輸送シ システ ムなど ど(高温水な などの輸送 送、液体燃料 料の輸送)など (iii) 制御・IT・送 制 送配電技術 術 スマ マートメー ーター、各種 種センサー ー、制御・デマンド管 管理システ テム、 各種エ エネルギー ー総合管理シ システム、エネルギー利用の見 見える化、ピー ク予告 告、カットシステム、超電導ケーブル、50/60 サイク クル変換器 器など C バ バイオマス ス、などの関連技術 バイオマ マス発電~バ バイオマス ス熱利用、バ バイオマス ス燃料製造、 、バイオ燃 燃料利 用によるディーゼル ル発電、そ その他(藻か から石油精 精製など) ( (1)スマー ート・ハウ ウス~シティ ィ対策につ ついて スマートハウ ウスを中心 心に EV な などの物流、移動手段 段を含めたシ シティ化の のイメ ージ ジを図 5-1 に例示した に た。 80 この種の構想の具体化は「低炭素街づくり構想」という形で国や自治体や大 手企業が補助金や資金援助をして、特に、実証実験が行われている地として、 横浜市、豊田市、けいはんな学研都市、 北九州市各所が注目されている(詳し くは URL で検索願うことにしたい)。 :日経 BP クリーンテック研究所が発行し た「世界スマート・シティ総覧 2012」によると、世界市場は 4000 兆円にもな るとのことだが、この市場がいかに今後の期待が大きいかが判る。 (2)太陽光発電 太陽光発電は 2012 年 7 月に再生エネルギーの全量買い取り制度導入と共に盛 んになった。そこで、大手企業のメガソーラーに関する投資を含め一例を表 5-1 に、その例を整理した。 表 5-1 太陽光発電の事例 対策事項 解説と事例 記号とコメント 1 PC 用太陽発電~蓄 オー・ジーは持ち運びできる太陽光発電+蓄 D・R:大手電力回線 電ユニット 電ユニットを販売(21 万円前後)60W モバ から切り離して利 イル PC で 2 時間、DC5V、AC100V 接続が 用可能にする対策 可能:日刊工業新聞 Y11-7-14 2 荒 れ た 田 畑 を 太 陽 ソフトバンクの孫社長の活動「電・田プロジ D・R:同上 光発電 3 原発並み 太陽光発電 ェクト:朝日 Y11-7-4 日射量の多いサウジで東京大学やシャープ 同上 などが大規模発電実験 100 万 KW 規模を 5 年で実現をめざす:朝日 Y11-7-12 4 自然光発電、世界で 国会議員らに再生エネ法の成立を訴えた記 R:田畑の有効利用 は成長産業 事、その後、被災地に 100 億円の自費を投 じてかつての「田んぼから電田プロジェク ト」の推進を開始:朝日 Y11-7-4 5 本 社 屋 上 に 太 陽 光 3000 万円で電力ピーク抑制に有効な太陽パ パネル ネルを推奨、蓄電で電気代 200 万円削減: 日刊工業新聞 Y12-10-25 6 太陽光売電開始 文化シヤツター東日本事業本部・小山工場で は工場敷地内 5 万 4050KW の太陽光発電を 開始~販売を開始:日刊工業新聞 Y12-10-25 7 ビル窓発電 三菱ケミカルホールディングスはゼネコン へ向けて、有機薄膜太陽電池のサンプルを出 荷した:日刊工業新聞 Y12-12-24 81 同上 ザ・ビジネスモール(http://www.b-mall.ne.jp/PrDetail-48958.aspx)などで は、すでに、条件を満たせば借地にメガソーラーを設置して借料を払い売電す る制度の運用を開始している。過去、都内の空き地は駐車場に貸す例が多い状 況だったが、放棄農地や休耕田だけでなく、不要になったサッカーコートなど を含め、工場跡地、工場の屋根、駐車場の空間、ビルの屋上などを貸す企業が 増加中である。 (3)風力発電 昨今、海岸や風通しの良い山岳地帯を見ると、大型の風力発電機が次々と建 造され、発電を行っている。再生エネルギー買い取り制度が運用され太陽光発 電とセットで拡大を見せているわけだが、地域によって、騒音問題があり、今 後は人里離れた海岸や海上建設が進む状況である。この種の巨大な発電システ ムは、国や自治体、大手企業の投資対象であり、戦略的な展開となる。そこで、 表 5-2 に、中小企業で取り組みや連携が可能な小型風力発電事例をまとめた。 表 5-2 風力発電 対策事項 1 小型風力 解説と事例 記号とコメント 工 場 や リコユースが市販地に適した小型風力発電 S:小型高性能発電 病院に をリースする内容:日刊工業新聞 Y12-3-28 2 小 型 風 力 発 電 の 開 栃木県・グローバルエナージーが軽量小型の 発放送 機の開発~改良 同上 各種風力発電システムを紹介: テレビ東京 「ガイヤの夜明け」12-3-13 放映 3 レンズ風車開発 九州大学教授・大屋裕二教授が湖上や海上の 同上 ブイに高効率の小型風力発電を乗せた実験 内容を特集:TBS「夢の扉」Y12-1-15 放映 4 ゼ フ ァ ー の 小 型 風 小型風力発電で有名な伊藤瞭介社長の努力 同上 力 発 電 機 の 改 良 過 は太陽光発電の 8 倍の発電可能な小型風力 程を紹介 発電機が台風や微風でも発電可能な内容を 紹介した:YBS「夢の扉」Y11-5 月 (3)地熱発電 地熱発電は水力発電に似た安定した発電だが、発電候補地が温泉や国立公園 の観光地に隣接する例が多いため、に地域産業や景観との共存が問題となって いた。だが、2012 年 3 月に環境省がガイドラインを出し、従来、規制された一 部が改訂された。従来、縦堀だったが、斜め横から地熱発生部分に穴を掘る許 可:http://www.env.go.jp/nature/onsen/docs/chinetu_guideline.pdf が出た点が 82 注目される環境の中、電力料金値上げと、自然エネルギー買い取り制度が後押 ししたため、各社の参入が盛んになった。その背景には、コストが太陽光発電 の 1/5~1/3 である上に、天候に左右されず安定した発電が可能とされるためで ある。また、現在、18 ヶ所で行っている地熱発電は推定される総量 2,357KW のたった 2%程度(53.4 万 KW)に過ぎなかったためである。今後、原子炉停 止の代替としてこの分野へ投資して行くことは、クリーンエネルギー対策上、 重要な策となる。特に、3・11:東日本大震災で被災した地、東北に候補地が 4 割を占める(朝日新聞 2012 年 1 月 29 日号)実情を考えると、被災地の復興と、 雇用対策に対し、地熱発電は大きなビジネス・チャンスを与える市場である。 (4)その他の発電方式:潮流発電~海流、波力発電、バイオマス発電、ゴミ 発電など なお、現時点の URL に理論的埋蔵量が紹介されているので、下に添付させ ていただいた。 表 5-3 URL に紹介中の再生可能エネルギーと推定量 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%86%8D%E7%94%9F%E5%8F%AF%E8%8 3%BD%E3%82%A8%E3%83%8D%E3%83%AB%E3%82%AE%E3%83%BC 日本における再生可能エネルギーの資源量[81] 水力発電 技術的資源量 理論的資源量 - 136,009GWh/年 太陽光発電 102~202 GWp(ギガワットピーク) 7984 GWp 地熱発電[82] 38 GW 6000 GW 風力発電[83] 3~30 TWh(陸上) 200GWp (280TWh) (洋上) バイオマス 2,903 万 kl(原油換算) 4,022 万 kl 太陽熱利用 約 810~約 1,621 万 kl(原油換算) 約 3,242 万 kl 風力発電 1~9 GWp(ギガワットピーク) 63 GWp 参考:日本の年間発電量は約 1000TWh[84]、最大電力消費量は約 180GW[85]である。 83 5-2 企業が取り組み成功しつつある『創電力対策』 3・11 に端を発した日本における電力問題は日本産業に余りにも大きな影響を 及ぼした。このため、古くて新しい、電力開発を中心としたエネルギー対策へ の期待は、急進展が望まれる時代に入った。ここで、もし我々が電力問題を受 け身としてとらえ、海外への生産移転だけに集中すると、もはや今後の日本産 業の発展は困難になるため、 「電力危機を抜けきる技術開発を進めることが、エ コ対策や雇用対策にも、最も有効なビジネス・チャンスであり、『創電力対策』 がその主役である」と、とらえるべきである。そこで、以下、まだ、数は少な いが、今後の展開が期待される『創電力対策技術の事例』を紹介することにし た。事例紹介の意図は、微力な筆者の活動範囲ではあるが、以下に紹介するよ うな技術対策が、国、自治体、各種機関や大手企業などのご支援を得て『創電 力対策』として更なるご進展を願うためである。さらに、同時に、本書をお読 みになる各社で、記載内容を参考に、更なる『創電力対策の開発』が大きく進 む期待を願う点にある。資源が少ない日本で、過去、日本産業は今まで知恵を 駆使して経済発展してきた。是非、ご関係の皆様には、発停止に対応するニー ズ昨今、その方向を、今度は環境面や創エネルギーに集中願い、世界をリード する形で、自然エネルギーのスピーディー有効開発を、とお願いしたい。 (1)小型風力発電対策 筆者は、両毛地区で EV 開発プロジェクトを座長の形で担当していた(図 5-2 また、活動の詳細は URL: qcd.jp に掲載) 。この時、渡良瀬川がこの地区を 通っているが、川面にはいつも風が吹いていることや、足利工業大学が風力発 電の研究で有名なことから興味を持つ中で風力発電に関する調査をした。ここ で判ったことは、よく、目にする、海岸、山、大きな平地に塔が立って大型の プロペラ風の風力発電設備があるが、この種の対象は大手メーカーが既に技術 開発を済ませていること、大型投資を伴う。そこで、以下、中小企業でも取り 組みや連携が可能な小型風力発電を中心に調査した結果をまとめることにする。 【事例1】栃木県・岩舟市の㈱グローバルエナジーの活動 グローバルエナジーはわずか 7 名の従業員だが、 「風をつかむ職人」の名で知 られる同社の会長・鈴木政彦氏は、10 年以上前から手づくりで小型風力発電の 研究を続けてきた小型風車業界では世界を相手にしている有名な方のお一人で ある。2012 年 3 月頃の活動を紹介すると、 縦型の小型風力発電の開発があるが、 大型の風力発電機・プロペラ式は風が止まると回転が止まるが、入力側の風が 止まっても回転が止まらない方式を具体化させた努力がテレビなどで盛んに紹 介された。原理は、風車は外から羽に作用する風が止まっても、羽の周りに弱 84 い風 風の流れが残 残っているので、この の作用を利用 用した方式 式である(風 風が止まる ると、 次に に動くために に膨大な初 初動エネルギ ギーが必要 要になるが、この方式 式はその問 問題を 見事 事に解決して ている)。グ グローバル ルエナジーは はもともと、自動車の の強化プラ ラスチ ックバンパーな などを製作 作する二次下 下請け業を を進めてきた企業だっ った。しか かし、 10 年 年前、独自の製品をつ つくり企業 業経営を進め める方針を を立て、下請 請けを止め めて、 小型 型風力発電に に集中した た企業である る。 鈴 鈴木氏による ると、小型 型風力発電に に決めた(産業変換の)理由は は、常に自動車 会社 社から強いら られるコス ストダウンで ではやがて て企業がやって行けな なくなるこ こと、 当時 時(2000 年) 年 、国が風 風力発電に 力を入れ始 始め、販売 売可能になる るという状 状況を 知ったこと、さ さらに、各 各種の風力発 発電を見る ると、自社の知恵を生 生かした小 小型風 力発 発電装置が開 開発可能で であると目 した点にあ ある。このような動機 機で、独学 学で小 型風 風力発電を手 手掛けた結 結果、目した た性能を得 得るようにな なるまで 3 年を費や やした そうである。開発は苦難の 開 の連続だっ った。2006 年に製作し 年 した実機は強 強い風で破 破壊、 親族 族からの借金 金を含め、 累積赤字 累 3 億円と約 4,000 4 枚もの羽の試作 作を繰り返 返し、 とに にかく、考案 案したあら らゆる方式 を作成して ていった結果、現在、 発砲スチ チロー ル上 上にグラスフ ファイバー ーをカバー して、軽く くて理想的な羽根を具 具体化させ せた。 また た、この風力 力発電装置を を東京・八 丈島町の NPO N 法人が が購入(1 基 250 万円 円)。 ここでは、EV の電源確保 保と共に、レンタカー ーとして観 観光客に貸し し出すシス ステム 運用 用中である。 。また、他 他の自然エネ ネルギーと と共に整備し、余剰電 電力は八丈 丈島内 85 で使 使うプロジェ ェクトを進 進めている。 。狙いは八 八丈島の電力を自己完 完結型にし して行 く計 計画の一部へ へ風力発電 電を組み入れ れて行く計 計画だが、風力発電で では世界的 的に有 名な な足利工業大 大学の牛山 山泉教授が支 支援中であ ある。風車 1 基当たり りの平均出 出力は 一般 般家庭が消費 費する電力 力 20KWH に相当する る性能を示 示していたが が、高い評 評価を 得て ていた。なお お、鈴木氏 氏は図 5-3 に各種の風 風力発電装 装置を示した たが、①の のタイ プだ だけではなく く、③の特 特殊方の開発 発も手掛け けている。また、鈴木 木氏が実証 証しつ つあ あるように、 、風力発電 電の方式の開 開発はまだ だ発展途上にあり、進 進化する町 町工場 の取 取り組みと共 共に、多くのニュータ タイプの風 風力発電機の の開発が期 期待されてい いる。 【事 事例2】東京 京・新宿区 区に本社をお おくゼファ ァー㈱の活動 動 ゼ ゼファー㈱の の小型風力 力発電機は、 、図 5-3 の②のタイ の プが極端に に進化した た方式 型だ だが、頭部を をプロペラ ラとすると、 、ボディー ーの後方は鳥が尾を下 下げたような形 をし していて、工 工場やビル ルの広告塔の の周辺、道 道路に面した工場の柱 柱などに設 設置を 多く見かける方 方式である。この方式 式を、当初 初、ゼファー ーは 1977 年 年に米国の のサウ スウエスト・ウ ウインド・パワー社よ より OEM M として生 生産委託の形 形で締結~ ~小型 発電 電機を導入し した。だが が、その後、 、独自の改 改良を加え、現在、目 目に見る大 大幅な 高性 性能化を実現 現させてき きた。その結 結果、現在 在、このタイプでは先 先端的な発 発電機 とし して、高い性 性能と品質 質評価を受 ける状況で である。特に、このタ タイプに対 対し、 過去 去、 「大型で でないと発電 電量が不十 十分」という う常識があ あった。だが が、この通 通説を 全く覆したこと とでも世界 界で注目され れる。ちな なみに、ゼファー㈱の の伊藤瞭介 介社長 86 (71 歳)が 2010 年 5 月に一般公開した取り組みを紹介すると、家庭用の小型 風力発電機において、海外から多くの見学(年間 1 千人以上)と、2004 年 10 月には NEDO の補助金を受け開発を促進する状況である。このタイプは、騒音 低下が課題となる。だが、伊藤氏はフクロウの羽根の構造を研究~プロペラ部 に工夫を加えた結果、騒音を 1/50 化させた。このタイプは、風速 4m で初めて プロペラの回転が開始するが、2m 以下の微風でも電力をモーターに提供してプ ロペラを回すパワーアシスト機構を搭載して、微風発電が可能である。このた め、住宅密集地に取り付けることまで可能にしているわけだが、プロペラタイ プは、台風など強風になると、プロペラの回転が増し火災になるため風速 12m になると止めるタイプが多いが、この問題に対しても、ゼファーでは、適宜ブ レーキを掛けながら回転を止めずに発電を続けるという画期的な方式を開発し た(40Km の風速でも問題無いことを実証した)。 普及への当面の課題は、1 基 100 万円程度で一般家庭電力の 1/3 程度を補う性 能で、太陽光発電より多少高価な点である。太陽光発電の普及も同種の問題を 抱えが、普及と量産により今後の展開が期待されている。なお、この方式は、 通常の日照状態で発電量は太陽光の約 8 倍であり、屋根面積が少ない家屋や工 場に最適であることや、カラス被害で対策が必要なビルへの設置に有効であり、 今後の波及を待つ状況にある。 【事例3】九州大学・大屋裕二教授によるレンズ風車 プロペラ型風車の周りを覆うように風を集める輪を設けると小型風力発電の 能力が増すという現象は既に知られていた。大屋教授(59 歳)はこの研究を徹 底して進め、中型の風車応用、レンズ風車を蜂の巣上に形成したいかだを湖上 や洋上に浮かべ、風車群を構成して、風力発電を具体化させた取り組みを 2012 年 1 月 15 日に発表した。レンズ風車の発電量は従来型の 3 倍、原理は紙コップ の中にプロペラを置くイメージだが、大屋教授は、人工的に風の流れを台風の ような気圧差と風の渦をつくり、風のスピードを早くするという原理を構成さ せた方式を具体化させた。一般の構成と大きく異なる点は、コップの下側の狭 い方を風の入口、出口側をラッパのようにした構成であり、今まであった風車 の構成だった常識と、全く逆の構成を作った点にある。この効果は風洞実験で 検証しつつ、その構成と形状を九州大学で研究しっていったが、先に解説した 洋上や湖上に設置可能な方式を実現へ向けた結果、海岸や山地や平原などでみ る大型風車のように、プロペラを巨大にして高い塔の上に立てる構造を不要に した。さらに、ラッパのような筒は極端に短いが高性能のプロペラ回転が可能 な風の構成を実現させた。さらに、このリムという筒状の輪がプロペラの風切 音を大幅に低減させ、風力発電が抱えていた問題も見事に解決した。また、台 87 風並みの風に耐える構成に対しては、実機をシルクロードに設置、砂漠の強風 に耐える構造に改善していった。加えて、日本は海上に面する地が風力発電に 向くが、デンマークの海上に網の目のように遠浅の海中から塔を立てて発電す る方式(着床式)の建造をする地が少ない。海中にポールを建造する方式は海 面から海底までが 50m 以内という制限があるためである。そこで、風車を海に 浮かべる発想で、海洋工学のエキスパート経塚雄策教授(61 歳)と組んで開発を 進めた。その結果、先に紹介した蜂の巣状のいかだをつくり、2011 年に博多湾 で実証実験用の大型筏をつくり、風力発電実験が行われた。この実験では、浮 体である筏の直径は 18m、風車は 2 台を設置、総量 160 トン、6 画の隅には円 筒形の筒を設置したブイ上の筒(鉄の筒に発泡スチロールを埋めた筒)を桟橋 状の構造物でつなぐ方式の筏だった。プロジェクトには 30 社が参加したが、風 車の軽量化や強度確保、価格低減に町工場の技と知恵を生かす取り組みが追加 され、大屋教授と町工場の技術が結実する実験だった。この結果は 2011 年 11 月に公開され、成功、今後、風力発電だけでなく、潮流や波力発電と太陽光発 電も付加した発電ユニット形成の夢の実現を示し、この構成で小型の原子力発 電所に匹敵する構成を持った自然エネルギーをフル活用した発電を目指す内容 だった。なお、漁業関係者がこの筏を見れば、6 画で構成された蜂の巣状のいか だの中央は網を入れて魚を育成する構成を持っていることがわかる。この意味 で、筆者は、すでにハマチなどの人口飼育に見る漁業の展開も併せ持つ可能性 を持った発電ユニットではないか?と期待している。 (2)ユニークな蓄電方式の開発 小さい例で恐縮だが、筆者宅でも、市販で 3,500 円程度の昼夜灯を使用中だ が、太陽光発電+人感センサー+蓄電池+ライト 3 個がついたものを使ってい る。当然、家庭用電源とは独立している。極めてこれはささやかな例だが、自 然エネルギー利用による発電の利用は、中央集中提供から分散型に移行する時 代に入りつつある。 表面:7 ㎝×12 ㎝程度の太陽光発電 と、蓄電池 ボックス (裏面) 88 人感センサー とライト 2011 年より電力買い取り制度が開始された。また、ここに大手電力会社によ る値上げが相次ため、自然エネルギーを利用した自家発電~自給的な利用は増 加した。電気をつくった後の利用方式には、売電する方式と、蓄えて自給・自 足する方式がある。後者の場合、必ず問題になるのが、蓄電器である。このた め、ガス発電や EV とセットで行う蓄電方式の併用があるが、自然エネルギー を蓄えるという観点で、有名な鉛式二次電気や、リチウムイオン電池と異なる。 そこで、つぎに、電池や蓄電方式を例示することにしたい。 【事例1】石油に代わるマグネシウム燃料電池 2012 年末に福島から電動三輪車で 100Km の走行を果たした電池はマグネシ ウム燃料電池(以降、『Mg-電池』と省略)だった。開発と走行は東北大学・ 小濱泰昭教授・67 歳だった。小濱教授はエアロトレインという飛行式の列車を 開発中の方だが、この研究中にエアロトレインのボディーに利用していたマグネ シウム合金と海水を線でつなぐという簡単な構造だった。マグネシウムは地球 上に 8 番目、海中だけでも 1800 兆トンもあるという金属であり、1 グラムで単 三電池 1 本分の発電力を持ち、 リチウムイオン電池の 5 倍以上の起電力を持つ。 原理は、マグネシウムと海水が触れると電気が発生し、触媒側に流れるが、こ の時に触媒は酸素を取り組むという構成である。このため、燃料電池と言う名 がつけられているわけだが、この電池の欠点は、マグネシウムが海水(電解液) に触れると溶けてぼろぼろに崩れるという特性がある。だが、小濱教授はエア ロトレインのボディーに使用していた難燃性マグネシウムを電池として使用し たことで問題対策のきっかけをつくった。材料を塩水につけ、つないだ回路の 中間にモーターをつけて小型のファンを回す構成で放置していたところ 3 週間 経っても回っていたためだった。この偶然ともいえる実験装置が Mg-電池の開 発のきっかけである。図 5-4 に示したように、マグネシウムは再溶解して再生 すれば電極として使用可能である。小濱教授は、 「これは世界を変えるクリーン エネルギーになるかも知れない!」という発想で研究を続けたが、すでに、三 鷹光器㈱社長・中村勝重氏は太陽光を効率よく集めて高熱を蓄積~タービンを 回転させる発電方式を研究中だった。そこで、この集光型太陽光発電機の鏡部 分を使い、太陽光が豊富に得られる砂漠を持つ国にマグネシウムの再生をお願 いするプロジェクトを開始した。同時に、古川電池で Mg-電池を製作、電動三 輪車に搭載、いわき~仙台間 100Km を走行したが、これも成功させ、EV への 適用、さらには、永久的なリサイクルシステムを産業界に提示したわけである。 小濱泰昭教授は「ひょうたんからコマの発見」とお話しされていたが、この例 は、未開発の自然エネルギー発掘自然エネルギーの代表的な技術を具体化させ た例である。 89 【事 事例2】 藻から石油 藻 油製造 現 現在、米国で ではシェー ール・ガス、シェール ル・石油ブー ームに沸き き、 「第二の のゴー ルド ド・ラッシュ ュ時代を迎 迎えた!」状 状況である る。岩盤に蓄積された た石油やガ ガスを 取り出す技術が がこの種の の産業を進展 展させるき きっかけになった例で である(日本で も秋 秋田県の一部 部で掘削~ ~回収実験が が成功して ている)。こ これに似た形 形で、日本 本近海 には は、現在のエ エネルギー ー使用量で換 換算すると 100 年以 以上もの保有 有量がある るとさ れるメタン・ハ ハイドライ イドの掘削研 研究が開始 始されている。両社と とも化石エ エネル ギー ーだが、今後 後の世界の のエネルギー ー利用を大 大きく期待す する対象で である。 加 加えて、 「で では石油やガ ガスはなぜ ぜ地球上でつ つくられた たのであろう うか?」という 研究 究から、現在 在、藻から ら石油をつ くる技術が が開発されている筑波 波大学の渡 渡邉信 先生 生による「オ オーランチ チキトリウム ム」という う藻が注目されている る。ちなみ みに、 この の対策が進め めば、300 兆円と言わ 兆 われる石油市 市場を今後 後大きく変革 革する可能 能性を 持つ つ。さらに、もう一例 例、デンソー ーでは 200 08 年から「シュード ドコリシスチ チン」 とい いう種類の藻 藻を用いた た石油開発 を進めてき きた。この技術ででき きた油はデ ディー ゼル ルエンジンに に向く軽油 油に似た油で であり、現 現在、各社の の注目を得 得ている。 【事 事例3】ゴミ ミからバイオエタノー ール 電 電力対策に当 当たって重 重要な対策に に利用可能 能エネルギーの確保と という局面 面があ る。そこで、人 人が生活す するゴミか らエタノー ールを得る研究施設が が既に京都 都市・ 西京 京区の取り組 組みを紹介 介することに にしたい。ここでは『都市油田 田発掘プロ ロジェ 90 クト実証試験プラント』で進められているためである。このプロジェクトは京 都市役所・技術職員の山田一男氏(49 歳)の方が中心になり、日立造船エンジ ニアリングの富山茂雄氏(40 歳)が実務を受け持つ形で進めてきた内容だが、 山田氏は、ごみ処理一筋で 29 年間公務員として活動する中で、各種のリサイク ル対策を熱心に進められてきたご努力の一例である。京都市ではすでにゴミ発 電を行ってきた。だが、ここで紹介する取り組みは、 「紙の原料は木材でありバ イオエタノールとして使えないか?」という発想だった。そこで、生ごみと紙 ごみを反応槽に入れ発行させ水と酵素とスペシャル酵母で糖化発行させる原理 を用いたシステム化を具体化させた、 『都市ごみ油田開発』という取り組みだっ た。この開発で使われたスペシャル酵母の利用は、熊本大学・発酵学の権威者・ 木田健次工学博士による研究成果だった。また、この酵母はひとつにまとまり やすく回収可能という特性を持つ(なお、一般のバイオエタノール製造は、ト ウモロコシやサトウキビを膨大な土地で栽培したものを利用して製造する方式 である)。既に、2012 年 4 月に実証実験が開始されたが、京都市で年間発生す る 50 万トンの回収ゴミの 40 万トンから生産できるバイオエタノールは約 2400 万リットルと目されているが、ガソリン換算で普通乗用車 50 万台をガソリン満 タンにするほどの量に相当するとされる膨大な量となる。この例は、正に資源 は足元にあるという道を開いた事例である。 この他、間伐材を利用した木質ペレットを燃料として使用することにより暖 房の熱源に使い、電力使用を減らすといった例なども、個々には小さい取り組 みではあるが、足元にある資源の有効活用の一例であり、今後、各社での開発 が期待される対象の例である。 (3)小水力発電 昨今、工場用水や地方の農地をめぐる用水や小川などを利用した小水力発電 が注目を浴びている。一例を表 5-4 に例示したが、水車を利用した方式から、 シーソー式など、現在、大きなダムを必要とせず、発電可能な多くの小型水力 発電装置が各所で開発中である。この種の一例として、東洋ゼンマイがバネに 利用と共に開発した小水力発電の内容を紹介することにする。 東洋ゼンマイは、病院から地下鉄の列車などに用いられている無電力開閉ド アーなどの生産・販売で有名な会社だが、長谷川光一社長(59 歳)は、筒内に ラセン水車を設置して水流により回転したエネルギーをバネに蓄え発電する方 式を実現させた。製作は南林正氏が担当したが、南林氏はもと大手自動車会社 でエンジンの開発を担当した方である。この方式には 2 か所にゼンマイ回転装 置を備え、まず、片方のバネユニットに水力回転エネルギーを貯めて解放する。 解放中に、もう一方のバネユニットに水力回転エネルギーを貯めるという構成 91 だが、ここにカムシャフトの機構を応用された。特徴は、高低差があまり無い 小さな水流でもバネ利用による発電が可能な方式を具体化させた点にあるが、 ローテクの組み合わせで新時代のニーズという小水力発電機を登場させた例で ある。発電機機の最初のものは、ハンドルでバネを回し、バネにエネルギーを ためるタイプだった。子供の力でハンドルを回したエネルギーをバネの解放時 に発電してスピーカーから音声を出すという簡単な音声ガイド装置である。こ れはこれで販売されたが、 「小川を流れる水を見て長谷川氏は小水力発電を手掛 けることのした」ということが、この小水力発電機開発の動機だった。 【余談として】知っていますか?オランダの風車の役目! ちなみにラセン水車はオランダの風車に装着され、海面より低い地に降る雨 水を次々と地上へ持ち上げ排水してきたことで知られる装置である。オランダ の風車はこの地方の風物史となっているが、幸い、オランダを通過する風を利 用して電力とポンプによる排水無し、しかも、歴史を経て海面下の地で人々の 生活を支えてきたことを考えると、ローテクも無視できない技術である。 表 5-4 小水力発電の例 対策事項 1 群馬で小水力発電 解説と事例 記号とコメント 上下水道の小さな水の落差を利用した発電 同上:近隣の流水 1000KW 以下を近隣の農業用水などを利用 利用 して発電、既に 6 カ所で 10KW 以下が稼働 :日刊工業新聞 Y11-7-15 2 小 規 模 水 力 発 電 シ 山崎(堺市)はコレアス型発電機を流水利用 ステムの販売 で回転~発電するマイクロ発電装置を開発、 平均流速 1.3mの弱い水流で 420W :日刊工業新聞 Y11-7-13 3 水力・風力発電 荻野製作所(群馬)は水力・風力発電部品を強 化して自動車部品の減産対応: 日刊工業新聞 Y11-7-8 (4)排熱利用発電 熱海市では、慶応大学・武藤佳恭教授が中心となり温泉の廃熱を利用した発 電が 2012 年 10 月から行われつつある。この方式はゼーベック効果を利用して 100℃の温泉水と 20℃の水道水の温度差を利用して 15W 程度の電力を発生させ る装置を数層にしたものである。やがて、箱根市全体を温泉熱利用発電でカバ 92 ーしようという計画の一端であり、多くの温泉地から、この取り組みに期待が 寄せられている。 もう一件、2012 年 7 月に発表されたアルバック理工・石井芳一氏(65 歳)に よる、65℃以上の工場排水を利用して発電を実用化させている方式を紹介する ことにしたい。この方式は従来のお湯を沸騰させてタービンを回転させる方式 で実現できなかった問題を解決した方式であり、水の代わりにフロンを用い、 低温沸騰~タービン回転を行うことで。65℃以上で排熱利用の発電を実現させ た方式である。ラセン型の配管構成で発電機を回す構成は企業ノウハウの塊だ が、 『超小型低温排熱発電装置』名で技術は確立しており、九州・鹿児島の国分 酒造で稼働中である。ここでは、焼酎製造に排熱となる 80℃の湯を冷やしなが ら近隣の河川に排出してきたが、この湯温を利用して、1 基で 3.5KW の発電を 得て、工場に設置した 10 数個の白熱電球と、消費電力 2.7KW の家庭用エアコ ンも排熱でカバーできる環境を実現させていた(家庭 1 件分の電力をカバーす る性能を発揮している)。 (5)ナノ・バブル活用燃焼装置への期待 Li-イオン電池の利用は EV の進化と共に急進展中である。10 年程度の利用で 性能が低下した EV の使用は、EV における使用を終えた後、70%程度の蓄電容 量を持つとされ、風力や太陽光発電でつくった電力を蓄積~活用する方針で各 所のスマート・シティ構想では利用を推進中である。同時に、電池のコスト、 並びに、重量減のニーズから Li-イオン電池の性能アップと Li-イオン電池に変 わるより高性能の電池開発が各社で盛んにおこなわれている。研究室的の例つ ぃて、例えば、臭化トリトリキソドアンキュレンを大阪大学・森田靖準教授と 大阪市立大学・工位武治特任教授らはコバルトの代わりに使ったところ、従来 の 2 倍近い電力を蓄えることができる Li-イオン電池ができる実験結果を発表し た。この分野における開発の進展を例示する内容である。 このように、電池を広義に解釈すると、ゴミや排油を燃料に使って発電する ものから、鋳物工場においては、鋳造した中間財を自然冷却する際の放熱を利 用して温水発電を行うといった対象まで多くの内容が対象となるはずである。 そこで、このように電池という対象を広義に解釈し、理論的なメカニズムの解 析はまだ、科学的メスが入れられていないため不明だが、ナノ・バブルを活用 した燃料装置の開発から発電を願って、特殊電池への期待を例示することする。 例は、大田区・日本テクノの大政龍晋社長(73 歳)が 2012 年 12 月に発表し た、オオマサガスというご自身の名前をつけたガスの応用である。その技術は、 単に水を基にナノ・バブルの製造を繰り返す中から生まれる水素+酸素のガス の利用だが、大政氏はナノ・バブルを極限まで追い込んだ結果、水素と酸素の 93 ガス化させた。通常の場合、水素の近くに酸素が存在すると爆発する。だが、 このガスは爆発しない。驚くべきことは、この状態でバーナーに噴出させた混 合気体に火をつけると、水素ガス溶接の炎となる。高温度バーナーである。当 然、バーナーで燃やされたガスは水蒸気にもどるため、無公害である。さらに、 このガスをプロパンガスで走る車の燃料(プロパンガス中)に半分程度混ぜて 走るとプロパンガスでは 5Km/L が 7KM/L に向上する。だが、ここに記載した 理由は不明であり、専門家の解析待ちの状況である。しかし、性能が優れるた め、オオマサガス発表後、諸海外からの訪問者が絶えない状況である。そこで、 太陽光や風力、小水力発電など自然エネルギーだけでなく、電力会社の夜間に 余剰となって消えてします電力を利用して、このオオマサガスを製造する。ま た、必要な時に燃焼させて発電に使うとした場合、これは形が異なるが、とて つもない発電原料を自然界から得る代替電池の機能を果たす対象となる。 以上、 『創電力』ということで、新時代の電力開拓手法を紹介した。ここに記 載した内容は、筆者の微弱な情報網を駆使して集めた、ごく一例に過ぎない。 だが、読者の皆様には、これをヒントにビジネス・チャンスとして、今後の対 策や技術開発の展開の一助になれば幸いである。 終わりに 本書に記載した内容は、3・11:東日本大震災と共に起きた日本の電力危機問 題に対し、 「モノづくりの基本から電力問題の系統的対策法を見直したい」とい う JMA 関連企業の皆様のご要求に対して、セミナーで紹介した内容をまとめた ものです。幸い、2012 年にこの仕事は高い評価を得て、終わりました。このた め、ここにセミナー内容を著書化し、無料公開としました。 電力対策まとめた結果、最終章などは、製造業向けに記載した内容ですが、 原発対策に使われる資金の一部でもこちらへ回していただければ、早期にトイ レの無いマンションと言われる原発問題のゼロ化につながると思う内容ばかり です。筆者はこの種の仕事には全く関連を持ちません。そこで、ご関係者の方 が、この書の内容をご参考に、今後の展開を期待することにしました。 2013 年元旦 (有)QCD 革新研究所 中村 茂弘 (JMA・専任講師担当) 94