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総合気象計測システムの構築

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総合気象計測システムの構築
総合気象計測システムの構築
〜トライトンブイデータ取得率向上に向けた技術開発〜
C onstruction ofintegrated w eatherm easurem entsystem
〜Technologicaldevelopm entforim provem entofdata acquisition rate atTR ITO N buoy system 〜
(1)
(1)
(1)
(2)
○松本健寛 ・石原靖久 ・安藤健太郎 ・長濱徹哉
(1)海洋研究開発機構
(2)㈱マリン・ワーク・ジャパン
1.目的
1999 年より西部太平洋赤道域および東部インド洋赤道域において、
海洋研究開発機構(JAM STEC )では、
海洋観測ブイ(トライトンブイ)を展開しており、現在 16 基のトライトンブイを展開中である。トライトン
ブイでは、気象観測(風向風速・短波放射・雨量・大気圧・温湿度)および水中観測(水温・塩分・圧力・流
向流速)を行っており、リアルタイム伝送によって、観測データを AR G O S 衛星に送信している。5種類
の気象センサおよび水中部で使用しているセンサは全て外国製品であり、気象センサは1台あたり·70 万
〜·200 万、水中センサは·170 万〜·430 万と高価である。これらのセンサが老朽化およびバンダリズム
により、毎年修理および補充が欠かせない状態である。また、2年前よりデータの取得率低下が目立つよ
うになり、データ取得率向上対策も兼ねた代替センサを用意する必要があった。特に気象センサはバンダ
リズムによる被害が著しく大きく、補充センサの低価格化、壊れにくいセンサの開発が急務であった。そ
こで、コストを低く抑えることを最優先とし、同時に測定精度を維持もしくは向上させることを目指して
システムの開発を行った。また、m -TR ITO N ブイの開発においても、装備するセンサのコストを下げるこ
とが命題となっていたので、m -TR ITO N ブイへの実装を視野に入れ、気象計測システムの開発を行った。
2.開発内容
各計測システムは、計測部、A/D 処理、通信部とに分けられ、計測部は全てアナログ出力としている。
デジタル出力の計測器は、計測機器内部でアンプを通り、デジタル変換されたものが多く存在しているが、
それでは、機器が持つ測定精度を上回る精度をデータで得られない。デジタル変換した時点で、アンプを
経由した時の分解能に左右されるからである。そこで、今回は全てアナログ出力の計測部を選定し、A/D
処理部でのデジタル変換を行う過程で、検定係数等を含んだ物理変換式を導入し、A/D 基板が持つ分解能
を最大限にいかすようにした。
そのための基板を開発し(図 1 参照)
、各計測機器とアッセンブリしユニットとすることにした。
開発した A/D 基盤では、内部演算処理、制御機能を盛り込んでおり、観測現場での使い勝手の良さを追
求した。マイコンには、Texas Instrum ents の M SP430(16bitΣΔ)を使用し、アナログ検出部のアンプは外
付けとした。ファームウェアーは C 言語で構成しており、ファームウェアーの載せ換えと、アンプ部分の
ゲインの調整で 5 種類の計測機器へ使えるようにした。
アンプ部分で検出したアナログ値は、風向風速計では、計測機器(Young5106M ,85000)から出力される
値を 3 次式で計算し、それに磁気コンパスの出力値を加算し、真風向としている。風速に関しても 3 次式
で計算している。これらの真風向と風速を用い、ベクトル演算し、平均化しものを風向と風速に戻し、出
力およびメモリーする。温度・湿度・短波放射・雨量に関しても、それぞれのアナログ出力を 3 次式で計
算し、物理量に変換している。変換した値を同様に出力し、メモリーする。基板の基本的な機能としては、
・ 計測機器の給電(D C 12V レギュレート)
・ 計測機器の出力を A/D 変換
・ 計測機器の出力から計算し、物量量に変換
・ 計算式中に検定係数を反映できるように、3 次式を
用いた
・ 内部メモリーとして SD カードを搭載した。
・ R S485 で外部機器と接続を可能とした。
図 1.A/D 基板(気象センサ用マルチ A/D
・ 2つの観測モードに対応
ボード)
・ 消費電力(基板単体)を 3m A(D C 15V)とした。
これらの処理を自動観測モード、リアルタイムモードの2モードで制御できるようにしており(図 2 参
照)
、PC やデータロガー等の外部機器と接続して行う場合には、独立電源(バッテリーパック・システム
電源)等を持たし、外部からの制御で計測を繰り返すように指示するリアルタイムモードで行う。システ
ムに依存しないバッテリーパック等の接続により、外部からの制御に頼らず、自立して任意の時刻、イン
ターバルで計測を行う場合には、自動観測各モードで行う。各モードの切り替えは、PC からのコマンド
で行う。PC とは R S485 のシリアルインターフェースを用いているため、リアルタイムモード時は、外部
機器との接続距離を長く出きる他、1つのチャンネルで数種類のセンサをバス接続することも可能である。
データ処理フロー図
3.結果
自動観測モード
リアルタイムモード
一例として、構築したシステムのう
(オート計測)
(マニュアル計測)
ち、温湿度計の検定結果を取り上げる。
自動計測の場合は、
計測開始時刻の10秒前に
開発したシステムを、むつ研にある温
電源投入
基板電源
基板電源
供給開始
供給開始
度検定装置および湿度検定装置を用い
10秒後
10秒後
て、検定した結果を記す。個々のセン
サンプリング
開始
サンプリング
開始
バッファ
内は最新
サーに対する検定係数で補正せずメー
バッファ
内は任意
1分間のデータを
のサンプル数の
記憶する
データを記憶する
カ推奨の平均的な係数で処理した場合、
バッファ
にサンプル
バッファ
にサンプル
1次保存
1次保存
温度センサーは、検定ポイント内で、
計測部が平均して 1℃程度ずれていた。
これを検定結果を用いた A/D 基板上で
内部時計
バッファ
バッファ
外部データ要求
プロトコル
受信
3次式による処理によって、0.02℃以
内の精度まで高めることができた。湿
物理量計算処理
物理量計算処理
および
および
内部時計
平均化
平均化
度センサーは、メーカー推奨の平均的
な係数で処理すると、乾燥した状態で
誤差が 2% 、湿潤になると 0.3% 程度と
SDカードに
SDカードに
データ保存
データ保存
なるが、温度と同じようにむつ研での
検定結果から係数を用いた処理により、
乾燥状態から湿潤状態まで 0.5% 程度直
基板電源
外部データ
供給遮断
送信
線性を持った安定した出力を得られる
ようなった(図 3 参照)
。
供給電源が遮断されるまで
供給電源が遮断されるまで
サンプリング
を継続し
サンプリング
を継続し
なお、2006 年 10 月末から約 1 ヶ月
バッファ
に保存
バッファ
に保存
行った「みらい」による集中観測にお
図 2. 各モードのサンプル処理過程
いて、実際に使用したが、良好な結果
を得た。
(a)
(b)
図 3..温湿度の検定結果 (a)温度、(b)湿度 ともに横軸が準器で縦軸が準器との差 Before は計測部
出力 Afterは基板の係数処理を実施した出力
このシステムを M ISM O (「みらい」による集中観測 時期:2006/10/27〜11/22)で構築したブイ網に使
用しており、無事に計測データを取得することができた。これにより、陸域よりも過酷な環境である実海
域で観測を終えた。また、このシステムを用いたブイがインド洋にて、1 年間の長期係留にトライアルし
ている際中である。詳細はポスターにて報告する。
4.謝辞
開発にあたり、的確な助言等を頂いた㈱九州共販、パナソニック FS エンジニアリング㈱、㈱ソフトプ
ラネットのエンジニアの皆様に深く感謝する。
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