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第 60 回応用物理学会春季学術 講演会参加報告
特集 学生の研究活動報告−国内学会大会・国際会議参加記 18 ッションタイプの二種類の積層構造の素子を作製し 第 60 回応用物理学会春季学術 講演会参加報告 野 中 俊 た.構造は「縦型電界構造」となる.また,電界シ ミュレーターを用いて電界分布を調査し,さらに作 宏 Toshihiro NONAKA 電子情報学専攻修士課程 製した素子の上部電極と下部電極間に交流電圧 (1.8 kHz)を印加して輝度特性を調査した. 2012 年度修了 4.実験結果 1.はじめに くし型電極に交流電圧 100 V を印加した時の電 2013 年 3 月 27 日(水)から 3 月 30 日(土)に 界分布を図 1 に示す.その結果,電界はくし型電極 かけて神奈川県にある神奈川工科大学にて開催され の端部に集中していることが分かった.輝度の測定 た第 60 回応用物理学会春季学術講演会に参加し, 結果を図 2 に示す.Au 電極を用いた素子は蛍光層 口頭講演を行った.発表テーマは「ストライプ構造 側から観察することで輝度の減衰なく光を取り出せ 型電極を用いた無機 EL の輝度特性」である. ることが分かった. 下部電極に WG 型電極を用いた素子の電界分布 2.研究内容 を図 3 に示す.図 3(b)の L/S=5 μ m の場合は電 分散型無機 EL は塗布型の工程を用いることで低 界が不均一であったが,図 3(a)の下部電極に WG コストの生産が可能である.しかし,近年 ITO に 型電極を用いた場合と,一面に成膜された Al 金属 使われているインジウムの枯渇・値段の高騰が問題 薄膜を用いた場合では電界強度と電界分布に大きな になっている.本研究では,ITO を使わず金属電極 差は見られなかった.したがって,図 4(a)の輝 で発光する素子の開発を行った.ストライプ構造の 度測定の結果,トップエミッション構造では下部電 一種である「くし型」と「ワイヤーグリッド 極に WG 型電極を用いた場合と金属薄膜を用いた (WG)型」電極に金属材料を用いることで,均一 場合で差は見られなかった.また,図 2(c)で Au 電極で均一な面光源が得られたが,輝度は約 100 cd な発光源を得ることを目的とした. /m2 であった.しかし図 4(b)で積層構造の下部電 3.実験方法 極に WG 型電極を用いると,全面均一に発光し, ガラス基板に,くし型電極を成膜する.ZnS 蛍光 体に樹脂を一定の割合で混合した蛍光層をスピンコ ートで成膜し,乾燥させる.最終的な構造は「蛍光 輝度は 300 cd/m2 以上になった. 5.まとめ Au のくし型電極を用いた素子は蛍光層側から観 層/くし型電極/基板」となり,「横型電界構造」 となる.SILVACO 社の電界シミュレーターを用い 察することで,全面で均一に発光した.WG 型電極 て電界分布の調査を行った.Line and Space(以下 L/S)は 5, 10 μ m の 2 種類である.くし型を用いた 無機 EL の輝度も評価した.L/S の条件は 10, 50 μ m の二種類,電極の材料は ITO と Au の二種類を用 いて素子の基板側と蛍光層側の両面から輝度を測定 した. ガラス基板に下部電極として WG(L/S=60 nm) を成膜し,トップエミッションタイプとボトムエミ ― 75 ― 図1 くし型電極を用いた無機 EL の電界分布 図3 WG 型電極を用いた無機 EL の電界分布 図4 WG 型電極を用いた無機 EL の輝度特性 ができた.質疑応答では,予め用意していた補助資 料のデータを活用しながら答えた. 7.謝辞 この度の学会発表という貴重な機会を与えて頂い た指導教官の山本伸一教授に深く感謝致します. また,共同研究でお世話になった,奈良先端科学 図2 くし型電極を用いた無機 EL の輝度特性 技術大学院大学の浦岡行治教授,有限会社イメージ を積層構造の無機 EL の下部電極に用いることで 2 テックの田口信義さんに深く感謝致します.そし て,日頃の研究においてご協力して頂きました山本 300 cd/m 以上の均一な発光源を得た. 研究室の方々にお礼申し上げます. 6.感想 事前に練習を行ったことで冷静に発表を行うこと ― 76 ―