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保険業法逐条解説(XXXX)300条1項8号及び同条2項 関西保険業法
生命保険論集第 188 号 保険業法逐条解説(XXXX) 関西保険業法研究会 目次 第1条~5条(125号) 第6条~16条(126号) 第17条~25条(第2条第5項を含む)(127号) 第26条~33条(128号) 第34条~41条(129号) 第42条~50条(130号) 第51条~53条(131号) 第54条~59条(132号) 第60条~67条(133号) 第68条~76条(134号) 第77条~84条(135号) 第85条~89条(136号) 第90条~96条(137号) 第97条~100条(138号) 第101条~105条(139号) 第106条~119条(140号) 第120条~127条(142号) 第128条~134条(143号) 第135条~143条(144号) ―131― 保険業法逐条解説(XXXX) 第144条~158条(145号) 第159条~173条(146号) 第174条~184条(147号) 第185条~218条(148号) 第275条(172号) 第276条~278条(173号) 第279条~280条(174号) 第281条~282条(175号) 第283条~285条(176号) 第286条~第289条(177号) 第290条~第293条(178号) 第294条~第296条(179号) 第297条~第299条(180号) 第299条の2(181号) 第300条1項1号(182号) 第300条1項2号3号(183号) 第300条1項4号(184号) 第300条1項5号(185号) 第300条1項6号(186号) 第300条1項7号・第300条1項9号(187号) 第300条1項8号・第300条2項 村田 敏一(立命館大学教授) (保険契約の締結又は保険募集に関する禁止行為) 第三百条一項 保険会社等若しくは外国保険会社等、 これらの役員 (保 険募集人である者を除く。 ) 、保険募集人又は保険仲立人若しくはそ の役員若しくは使用人は、保険契約の締結又は保険募集に関して、 次に掲げる行為(次条に規定する特定保険契約の締結又はその代理 ―132― 生命保険論集第 188 号 若しくは媒介に関しては、第一号に規定する保険契約の契約条項の うち重要な事項を告げない行為及び第九号に掲げる行為を除く。) をしてはならない。 八 保険契約者又は被保険者に対して、当該保険契約者又は被保険 者に当該保険会社等又は外国保険会社等の特定関係者(第百条の 三(第二百七十二条の十三第二項において準用する場合を含む。 第三百一条において同じ。)に規定する特定関係者及び第百九十 四条に規定する特殊関係者のうち、当該保険会社等又は外国保険 会社等を子会社とする保険持株会社及び少額短期保険持株会社 (以下この条及び第三百一条の二において「保険持株会社等」と いう。 ) 、当該保険持株会社等の子会社(保険会社等及び外国保険 会社等を除く。 )並びに保険業を行う者以外の者をいう。 )が特別 の利益の供与を約し、又は提供していることを知りながら、当該 保険契約の申込みをさせる行為 Ⅰ 趣旨 保険業法第300条第1項第5号の潜脱行為を防止するために、同項 柱書が名宛人とする者(保険会社等1))以外の者(保険会社等の特定 関係者2))により、特別な利益提供が約束されたり行われたりする場 合について、そうした行為を当該名宛人が知りながら、保険契約の申 込みをさせる行為を(名宛人に対して)禁じるものである。保険会社 等の名宛人は、常には特定関係者の特別利益提供等行為を知るもので はないため、そのような行為を現に知りながら申込みをさせた場合の みを規制対象としたものである。 1)保険会社等若しくは外国保険会社等、これらの役員(保険募集人である者 を除く。 ) 、保険募集人又は保険仲立人若しくはその役員若しくは使用人。 2)保険会社等又は外国保険会社等の特定関係者(一部を除く) 。 ―133― 保険業法逐条解説(XXXX) Ⅱ 沿革 旧保険募集の取締に関する法律には、本号に相当する規律はなく、 また平成7年改正保険業法でも本号に相当する規律は導入されていな かった。平成12年12月に施行された、いわゆる「金融システム改革法」 (金融システム改革のための関係法律の整備等に関する法律、平成10 年6月15日法律107号)によって、広く金融機関や保険会社の子会社等 特定関係者に関する規律の整備が図られる中、その一環として、8号 として新設されたものである。その後、保険持株会社や、少額短期保 険業者、 少額短期保険持株会社に関する規律が導入・整備される都度、 本号は整備・改正され、現在の規定振りに至ったものである。 Ⅲ 解説 本条本項柱書の名宛人である保険会社等は、本号に規定する保険会 社等の特定関係者とは密接な資本等関係を有するものであるが、一方 で両者は独立した別個の法的人格・主体であることから、柱書の名宛 人が常に特定関係者の行為を把握しているものではないし、またその 把握までを義務付けることは酷である。従って、本号は名宛人が、現 に特定関係者の当該行為を知っている場合のみを規制対象とする。従 って、名宛人が、特定関係者の行為を知り得べきであった場合は、規 制対象にはならない。かつ、本号適用の要件としては、柱書の名宛人 が、当該契約者等に対し、申込みをさせる行為が必要である。申込み をさせる行為とは、保険募集行為の一環として行われる契約申込みの 誘因をなす行為である。 名宛人が特定関係者の当該行為を知り、 かつ、 その上で申込みをさせれば、本号の要件を充たし、両行為間の因果関 係や名宛人と特定関係者の通謀等は不要である。本号の特定関係者と は基本的に、保険会社等の特定関係者(法第100条の3、法第272条の ―134― 生命保険論集第 188 号 13第2項)または、外国保険会社等の特殊関係者(法第194条)を指す (法第100条等での特定関係者と本号での特定関係者の範囲が一致し ないことに留意を要する) 。ただし、この中で、当該保険会社等または 外国保険会社等を子会社とする保険持株会社等、当該保険持株会社等 の子会社及び保険業を行うものについては、直接、特別な利益の提供 等を禁止する規定が別にあるため(法第301条、法第301条の2、保険 業法施行規則第235条、保険業法施行規則第235条の2) 、本号の規制対 象からは除外されている3)。 本号違反の効果につき、刑事罰の定めはなく、行政処分の対象とな るだけである(根拠条文は法第132条1項、法第306条、法第307条) 。 第三百条二項 前項第五号の規定は、保険会社等又は外国保険会社等 が第四条第二項各号、第百八十七条第三項各号又は第二百七十二条 の二第二項各号に掲げる書類に基づいて行う場合には、適用しない。 Ⅰ 趣旨 仮に、形式的に、本条第1項第5号の禁止行為(特別の利益の提供) に抵触したとしても、主務大臣の認可等を得た、基礎書類に基づく行 為は禁止対象の行為とならないことを明確化したものである。主務大 臣の認可等は、当然のことながら、契約者等の保護の観点から、契約 者間の公平性等や保険業、保険募集制度の健全性確保の観点も踏まえ て行われる訳であるから、こうした監督当局の審査をパスした行為に ついては、そもそも、5号の保護法益の侵害が観念されないと考えら れるためである。 3)安居孝啓『最新保険業法の解説【改定版】 』 (大成出版社,2010年)993頁。 ―135― 保険業法逐条解説(XXXX) Ⅱ 沿革 旧保険募集の取締に関する法律は、その16条2項で同様の規律を設 けていた。本項は、保険業法が、その規律内容を実質的に変更せず、 引き継いだものである。なお、基礎書類の認可制度については、漸次、 その対象の一部につき、届出制への移行が行われているが、当該届出 は審査を伴うものであり、届出対象商品についても、本項の効果は、 認可対象のものと同様に及ぶ。 Ⅲ 解説 本項に規定する書類とは、定款、事業方法書、普通保険約款、保険 料及び責任準備金の算出方法書(以上、法第4条第2項各号) 、外国保 険業者に関する、 日本における事業の方法書等 (法第187条第3項各号) 、 少額短期保険業者に関する、 事業方法書等 (法第272条の2第2項各号) である。 各々、 行政手続として認可によるか届出によるかを問わない。 本項の適用される典型例としては、生命保険の優良体割引・ポイント 制割引、団体保険における高額割引、自動車保険の示談代行、各種損 害保険における保険料の無事故戻・優良割引、が挙げられる。 なお、平成18年内閣府令3号(平成18年4月1日施行)により、算 出方法書の付加保険料に関し、係数によらず定性的な表現の記載で足 りるようになったことを根拠に、付加保険料の割引は逐一の認可を受 けずに行えるようになった4)。 4)安居・前掲注3)992頁。 ―136―