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フィー基準に関する解釈ガイダンス
採 択 日:2003 年 12 月 1 日 改訂発効日:2006 年 1 月 1 日 遡 及 適 用:なし 公開コメント期間:2001 年 12 月~2002 年6月 フィー基準に関する解釈ガイダンス GIPS 基準の目的は、リターンの比較可能性と投資家に提供される情報の透明性を高めるようなパ フォーマンス提示を行うことである。すべての状況を想定して基準を規定することは不可能であるが、 GIPS 基準は、さまざまな異なる状況に適用することが可能な一般的なフレームワークを提供してい る。公正な表示と完全な開示という、この基準の基本原則に留意することが重要である。 グローバルな投資業界では、フィーは多様な方法で課されており、さまざまな用語が使用されてい る。比較可能性を高めるためには、世界中の運用会社がフィーを一貫した比較可能な方法で取り扱う ことが重要である。使用されている用語が事態をかなり混乱させているおそれがある。世界のあると ころでは、フィー控除後リターンがスタート地点であり、これに運用報酬を足し戻してフィー控除前 リターンが算出されている。また、あるところでは、これが逆になっており、フィー控除前リターン からフィーを減額してフィー控除後リターンが算出されている。ある地域では、「フィー」、「デュー ティ」 、 「コスト」、 「チャージ」、 「エクスペンス」という用語はそれぞれ異なる意味を持っており、他 の地域では、これらの用語は互いに同じ意味で使用することができる。こうしたことから、共通の定 義が必要であることは明らかであり、それらは GIPS 用語集に含まれている。 ポートフォリオを維持する際に顧客が負担するコストないしフィーにはさまざまなタイプがある。 一般に、フィーないしコストには大きく3種類ある。すなわち、運用報酬、ブローカー手数料、管理 報酬である。管理報酬にはカストディ・フィーが含まれ、また、会計事務報酬、コンサルティング費 用、法務費用、パフォーマンス計測費用、その他の関連費用を含むこともある。多くの場合、会社が コントロールできるフィーは、運用報酬と取引費用(すなわち、資産を売買する際の直接のコスト) だけである。したがって、運用報酬と取引費用のみが、会社のリターンに影響を与えるべきである。 カストディ・フィーはポートフォリオを所有するための必要な追加的コストではあるが、多くの運用 会社は、カストディアンの選定やカストディ・フィーの交渉に関与していない。したがって、比較可 能性を向上させるためには、カストディ・フィーは会社のリターンに反映させる(すなわち、リター ンから控除される)べきではない。 GIPS 基準は、既存顧客に対する個々のポートフォリオ・リターンの提示よりもむしろ、見込顧客 に対するコンポジット・パフォーマンスの提示に関するものである。しかしながら、会社は、個別の ポートフォリオ・リターンをポートフォリオの所有にかかる(管理報酬を含む)すべてのフィー控除 後で提示することが、既存顧客にとって有益であるかどうかを検討すべきである。この顧客リターン (フィー控除後リターンからすべての管理報酬を控除したもの)は、取得した実際のリターンおよび 課されたフィーの全額を十分に理解するうえで、見込顧客および既存顧客にとって有益であるかもし れない。しかしながら、管理報酬は、通常、運用会社のコントロール外にあり、したがって、会社の フィー控除前リターンまたはフィー控除後リターンから控除すべきではない。 本資料は、GIPS Executive Committee (前身は IPC) が採択した GIPS の 「フィー基準に関する解釈ガイダンス (Interpretive Guidance for Fees Provisions)」全文(英語)の日本語訳である。翻訳は、日本における GIPS カントリー・スポンサーである(社)日本 証券アナリスト協会が行った。本ガイダンス・ステートメントの日本語訳と原文である英語版との間に矛盾があるときは、英語版を正本と する。本翻訳物の著作権は、(社)日本証券アナリスト協会に属する。 -1- フィー控除前リターンは、資産リターンから取引費用を控除したものと定義される。フィー控除前 リターンは、評価期間にかかる還付請求不可能な源泉税も控除すべきである。フィー控除前リターン は、資産のリターンとそれら資産の売買コストのみを反映したものであるため、会社の運用能力を測 定する最良の尺度であり、「投資リターン(investment return)」であると考えることができる。さ らに、フィーはしばしば交渉で決定されるため、フィー控除前リターンの提示は、会社または顧客の 交渉力の影響を排除した、会社の資産運用能力を示すことになる。したがって、会社は、フィー控除 前リターンを提示することが勧奨される。しかしながら、見込顧客は、パフォーマンスへのフィーの 影響についても検討しなければならない。見込顧客が運用会社を評価および比較するので、最も一般 的な比較ポイントは、フィー控除前リターンから見込顧客が支払う予定の運用報酬を減額したもので ある。したがって、会社は、各コンポジットの提示において、当該提示に適用されるフィー一覧表を 開示することが必須とされる。 フィー一覧表は、現行のものであり、当該コンポジット提示に対応するものとすべきである。現行 のフィー一覧表は、見込顧客が過去のパフォーマンスを解釈するうえで助けにならないかもしれない が、最も重要なものである。会社は、会社のフィーに関する追加的な情報についても開示すべきであ る(例えば、成功報酬制があるのかどうか、サブアドバイザーまたはファンド・オブ・ファンズによ りその他のフィーが課されるのかどうか)。 フィー控除後リターンは、フィー控除前リターンから運用報酬を控除したものと定義される。フィ ー控除後リターンが2つの明確な構成要素、すなわち、フィー控除前リターンと運用報酬の影響から 成っていることを認識することは重要である(フィーの例のシナリオ A 参照)。会社は、フィー控除 後リターンを提示することも奨励されている。フィー控除後リターンを最も正確なものとするために、 フィーおよび費用は、可能な場合には、発生主義で認識すべきである。 GIPS 基準は、実際の取引費用を控除してリターンを計算することを必須としている。取引費用は、 次のいずれかであると考えられる。 • 直接費用:各取引にかかるブローカー手数料およびその他の規制上のフィー、デューティもし くは税金(例えば、印税、SEC の定めるフィー等)等 • 間接費用:ビッド/アスク・スプレッド(bid/ask spread)等 GIPS 基準の目的上、会社は、フィー控除前リターンとフィー控除後リターンの両方において、証 券の売買にかかる取引費用を控除しなければならない。これらのコストは、投資戦略を実行するため に負担されなければならないものであり、したがって、控除されなければならない。推定された取引 費用を使用することはできない。 場合によっては(特に、初めて「基準準拠の」トラック・レコードを取りまとめる場合には)、各 投資一任運用ポートフォリオに課される実際のフィーが入手できないことがある。フィー控除後リタ ーンを提示したい会社は、フィー控除前リターンから減額する運用報酬として、コンポジット内のポ ートフォリオに課される運用報酬のうちの最高値を使用することができる。 しかしながら、フィー控除前リターンを算出するために、運用報酬の最高値をフィー控除後リター ンに足し戻すことはできない。フィーの最高値を足し戻すことにより、フィー控除前リターンが実際 -2- よりも高くなるからである。フィー控除後リターンからフィー控除前リターンを算出する場合には、 会社は、実際のフィーもしくは当該コンポジットの資産額加重されたフィーを使用しなければならない。 多くのカストディ銀行では、カストディ・フィーの一部を、取引の回数およびタイプに基づき課し ている。これらのフィーは、取引ごとに課されている場合であっても、カストディ・フィーの一部で あり、取引費用に含めるべきではない。 バンドル・フィー 会社は、いくつかのフィーを束ねて1つのバンドル・フィー(Bundled Fee)にすることがある。 バンドル・フィーは、取引費用、運用報酬、カストディ・フィー、その他のフィーの任意の組み合わ せからなる。バンドル・フィーには、 「オール・イン・フィー」のように顧客に固有なものや、 「ラッ プフィー」のように特定のプロダクトに固有なものがある。バンドル・フィーによっては、さまざま な構成要素に分離することが可能なものがある(例えば、会社はフィーを「分解(un-bundle) 」して、 バンドル・フィーを構成する各セグメントを特定することができる。フィーの例のシナリオ C 参照) 。 他方で、バンドル・フィーの一部しか分離できない場合もある(例えば、運用報酬の部分は特定して 分別できるが、カストディ・フィーと取引費用は分別できない場合。フィーの例のシナリオ D 参照)。 会社は、コンポジットにバンドル・フィーが適用されるポートフォリオを組み入れている場合は、コ ンポジットにバンドル・フィーが適用されるポートフォリオを含んでいることを開示しなければなら ない。会社は、バンドル・フィーに含まれるフィーの種類を開示することが必須とされる。 取引費用がバンドル・フィーから特定、分離できない場合には、バンドル・フィーの全体またはバ ンドル・フィーのうち取引費用を含む部分を、フィー控除前リターンおよびフィー控除後リターンか ら控除しなければならない(フィーの例のシナリオ B、C 参照)。この場合、カストディ・フィーそ の他の管理報酬もフィー控除前リターンおよびフィー控除後リターンから控除されているかもしれ ない。会社は、また、フィー控除前リターンがフィー控除後リターンと同じになることが分かるかも しれない。会社は、見込顧客がフィー控除前リターンから控除されているフィーをよりよく理解でき るように、バンドル・フィーに取引費用に加えてその他のフィーが含まれている場合にはその旨を開 示しなければならない。会社は、フィー控除後リターンを提示する場合には、運用報酬および取引費 用に加えてその他のフィーを控除しているときはその旨を開示しなければならない。 いくつかの投資プロダクトのリターンは、通常、その他のフィー(例えば、カストディ・フィーそ の他の管理報酬)を控除して計算されている。これらのポートフォリオを GIPS 基準におけるフィー 控除前およびフィー控除後の定義に合致するように取り扱うため、会社は、取引費用を除くすべての フィーと費用(例えば、運用報酬、カストディ・フィー、名義書換手数料、名義登録料、マーケティ ング費、法務費)を足し戻すことが許容される。会社は、フィー控除後リターンを計算する際に、会 社が取引費用および運用報酬を除くすべてのフィーと費用を特定できる場合には、それらのフィーを 足し戻すことが許容される。推定されたフィーを使用することはできない。 サブアドバイザー、プールド・ファンド、ファンド・オブ・ファンズ 会社が、大きなポートフォリオの一部をプールド・ファンドに投資したり、サブアドバイザーを使 ったり、あるいはファンド・オブ・ファンズを組成しており、このため、追加的なフィーが投資先の ファンドにより課されたり、サブアドバイザーに支払われたりすることがある。このような場合には、 すべての投資家はこれらのフィーを支払わなければならないため、すべてのフィー(管理報酬を含む) を控除したリターンを提示することが最も適切である。 -3- しかしながら、フィー控除後リターンは、取引費用と運用報酬を控除したものでなければならず、 これらのフィー(サブアドバイザーや投資先のファンドに支払われるフィー<underlying fees>を含 む)は、フィー控除後リターンを計算するために足し戻してはならない。 いかなる場合にも、会社は、各コンポジットの提示において当該コンポジットに適用される現行の フィー一覧表を開示しなければならない。 -4- フィーの例 これらの例では、便宜上、取引費用は、期首時価に対する割合(%)で示されている。実際には、 取引費用は、通常、証券の簿価に計上されるため、資産リターンに反映される。これらの例は、GIPS 基準のフィー規定の考え方を具体的に示すために挙げられており、フィーは期首に控除されるものと 仮定する。実際のリターンの計算は、フィーがいつポートフォリオから控除されるか、また、計算で 使用されるポートフォリオの価値(例えば、期首資産額、期末資産額、期中の資産額平残等)によっ て異なるであろう。 シナリオ A: 説 明: 資産リターン 8.00% シナリオ A は、各フィーを明確に 取引費用 0.20% 特定することが可能な、典型的なフ 運用報酬 1.00% ィー構造を示す。 管理報酬(カストディ・フィーを含む) 0.50% シナリオ B:バンドル・フィー1 説 明: 資産リターン 8.00% シナリオ B は、分離できないバン バンドル・フィー:取引費用、運用報酬、管理 1.70% ドル・フィー構造を示す。 報酬(カストディ・フィーを含む) シナリオ C:バンドル・フィー2 説 明: 資産リターン 8.00% シナリオ C は、分離可能なバンド バンドル・フィー:取引費用、運用報酬、管理 1.70% ル・フィー構造を示す。 報酬が含まれ、次のように分離可能。 取引費用 0.20% 運用報酬 1.00% 管理報酬 0.50% シナリオ D:バンドル・フィー3 説 明: 資産リターン 8.00% シナリオ D は、運用報酬のみ分離 バンドル・フィー:取引費用、運用報酬、管理 1.70% 可能なバンドル・フィー構造を示 報酬(カストディ・フィーを含む)が含まれ、 す。 次のように分離可能。 運用報酬 1.00% 取引費用と管理報酬 0.70% 説 シナリオ E:バンドル・フィー4 明: 資産リターン 8.00% シナリオ E は、取引費用のみ分離 バンドル・フィー:取引費用、運用報酬、管理 1.70% 可能なバンドル・フィー構造を示 報酬(カストディ・フィーを含む)が含まれ、 す。 次のように分離可能。 取引費用 0.20% 運用報酬と管理報酬 1.50% -5- シナリオ 資産リターン -取引費用 フィー控除前リターン -運用報酬 フィー控除後リターン -管理報酬 顧客リターン* A B C D E 8.00% 8.00% 8.00% 8.00% 8.00% 0.20% 1.70% 0.20% 0.70% 0.20% 7.80% 6.30% 7.80% 7.30% 7.80% 1.00% n/a 1.00% 1.00% 1.50% 6.80% 6.30% 6.80% 6.30% 6.30% 0.50% n/a 0.50% n/a n/a 6.30% 6.30% 6.30% 6.30% 6.30% * 顧客リターンは GIPS 基準では必須ではなく、ここでは、既存顧客に有益であると考えられる追加 的な情報として提示されている。 -6-