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!3 ダイオキシンは脳の発達を阻害する !4 ヒ素はガン細胞における遺伝子
Poster Session !3 ダイオキシンは脳の発達を阻害する 子どもの脳は柔軟に物事を吸収し学習することができる反面、感受性が高いためにダイオキシンなどの環境汚染物質の影響 も受けやすいと考えられます。私たちは実験動物モデルを用いることで、ヒトにおいて影響があらわれる前に、どのような化 学物質がどのような影響を持ちうるのかを明らかにしたいと考え、ダイオキシンの影響について調べながら実験モデルの構築 を行っています。 妊娠中の母ラットに低用量のダイオキ シンを曝露し、生まれてきた仔の性行動 とその際の脳内の遺伝子発現について調 べてみました。その結果、これまでダイ オキシンは脳の性分化に影響を及ぼすと 考えられてきましたが、解剖学的にも脳 の雌雄差には影響は認められず、むしろ 記憶・学習に関わるNMDA受容体サブユ ニットという遺伝子の発現に影響があわ れていることを明らかにしました。さら に、大脳新皮質の刺激応答性遺伝子発現 に障害があるために性行動が変化するこ とを発見しました。また、雌ラットでは 早熟化が起きていることも明らかにしま した。 !4 ヒ素はガン細胞における遺伝子発現に どのような影響を及ぼすか? ヒ素はヒトの健康を脅かす環境汚染物質の一種であり ながら、近年白血病治療効果が確認され、特に薬剤耐性 になった難治性の急性前骨髄性白血病に三酸化ヒ素(亜 癌細胞 ヒ酸)が有効であることが報告されています。 癌細胞においては、DNAの4塩基中のシトシンが異 常なメチル基(-CH3)修飾を受けることによって癌抑 制遺伝子やDNA修復遺伝子の機能が妨げられています。 肝癌細胞に低濃度ヒ素を投与した場合、肝癌細胞の DNAの異常なメチル基が取除かれ、遺伝子機能が回復 遺伝子が部位特異的にメチル 基修飾を受け、機能喪失 することができました。これは、ヒ素による新たな抗癌 作用のメカニズムとして考えられます。したがって、低 濃度ヒ素は、環境有害物質としてヒトの健康障害を起こ ヒ素 す一方で、発現抑制された癌抑制遺伝子の復活剤として 癌治療に利用できる可能性があります。 遺伝子の異常なメチル基が取除かれ 遺伝子機能が復帰し、 ヒ素は抗癌作用を発揮