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第83回防衛調達審議会議事要旨(たたき台)
契約制度研究会(第10回)議事要旨 1 日 時 平成23年3月29日(火)10時00分~11時00分 2 場 所 防衛省A棟B1階統幕第2大会議室 3 出席者 (委 員):小林会長、上原会長代理、有川委員、落合委員、尾畑委員、加賀谷委員、 神﨑委員、髙橋委員 (防衛省):経理装備局長、大臣官房審議官(総合取得改革担当)、装備政策課長、防 衛計画課長、装備政策課開発・調達企画室長、装備政策課補給・管理企画室 長、装備政策課担当部員 統合幕僚監部首席後方補給官付後方補給室長、陸上幕僚監部装備部副部長、 海上幕僚監部総務部経理課契約班長、航空幕僚監部装備部装備課調達室長、 技術研究本部総務部会計課経理室長、装備施設本部調達企画課長 4 議 事 (1)PBLに関する欧州、米国における取組について(海外事例の調査概要)の報告 (2)第2回中間報告「防衛装備品に関する契約制度の改善方策について」 (案)について (3)事業継続リスク等に対応した契約条項の検討及び検討部会の緊急起ち上げ、部会長 の選任等について (4)今後の開催予定 5 議事概要 議事に先立ち、東日本大震災が発生し、数多くの貴い人命が失われたことに鑑み、 犠牲となられた方々への哀悼の意を表して、1分間の黙祷を捧げた。 (1)PBLに関する欧州、米国における取組について(海外事例の調査概要)の報告 ア 防衛省側から概要次のとおり説明した。 【英国】 有事体制であるので、兵站面における支援は24時間体制、地球規模ですべてサ ○ プライチェーンネットワークを構築した体制を組んでいる。その中で、PBLは重 要な要素を占めており、特に英国では、低コストで可動率を向上させるインセンテ ィブを企業に与えるものであり、官民の間でのパートナーシップに基づく契約であ 1 るという認識で行っていた。PBL契約の基本は稼動率で、部品のサプライチェー ンから、修理や保全、更に運用そのものと、機種や部品の種類によってPBLの深 度が異なっている。 ○ PBLを実現するためには、軍、メーカー、政府との間の密接な連携が作られて いて、どういうことをやればいいかということも含めて、一つの契約を行うのに、 大体2年くらい議論してチームを組んでやっている。また、行政改革の中で軍隊自 体の組織も縮小するなど、予算のないことが考え方を変えたとのことであった。 会計検査に関しては、英国検査院もバリューフォーマネーという考え方を持って ○ いるので、PBLに関して特段問題は生じていない。なお、ペナルティについては、 法律でパフォーマンスに対するペナルティを予め決めておくということが出来ない ようで、パフォーマンスが達成されなかった場合にはその都度、契約交渉を行い、 その比率に応じて契約金額を減らすというのが基本とのことであった。 【仏国】 予算の削減というのが一つの推進力になっており、日本と同じように、整備費や ○ 維持費が増大していって、正面装備に充てられる予算が減ってしまったため、どの ように整備費や維持費を下げるかといったところがきっかけとなった。 PBLで民間へ委託するにあたって、基本的にこれまで紹介した考え方と同じよ ○ うに行っており、委託段階は4段階あって、1段階は在庫数量を決められた水準で 保証。2段階が修理期間を決められた条件の中で実施。第3段階が与えられた条件 において、システムの能力が発揮できるようにする。第4段階が全てオペレーショ ンも民間でやってもらうというものである。 ペナルティについては、何%という規定ではなく、例えば、部品の供給が遅れた ○ 場合、一日あたりどの機種のどの部品についてはいくらというのが、契約ごとに決 められているとのことであった。 英国も仏国も競争等との関係で防衛産業も統合が進んでおり、競争して入札する ○ ということが非常に難しくなっているため、PBLのような考え方でコストを下げ るという方式になっているのではないかという印象を持った。 【米国】 競争入札の比率が63%と、基本的に競争が原則ではあるものの、PBLも重要 ○ であるとのことであった。契約の種類は、固定価格型とコスト弁済型、労働時間材 料型の3種類くらいがあり、最近はPBLの典型である固定価格型が非常に増えて いて、労働時間材料型というのは非常に減っている。特に、労働時間材料型はコス ト削減のためのインセンティブが働かないので、選択肢としては望ましくないとの ことであった。PBLについては、ライフサイクルコストと装備品の即応性のバラ ンスで、どうやってベストパフォーマンスを導き出すかという考え方で行っており、 その点では各国とも一緒である。 2 ○ 従来の考え方である部品を売れば売るほど利益が出るという考え方から発想を転 換してもらって、国防省側が達成するパフォーマンスを徹底して、供給サイドに対 し、逆にそういう品物は少なければ少ないほど良いという発想に転換させている。 ○ 国内の約14万人の調達、運用、補修等の担当者にPBLの理解をしてもらうた め、国防調達大学を作って、年間数万人規模で徹底的に教育している。 PBLは米国も英国も2000年頃のほぼ同じくらいの時期に開始しており、民間で ○ 行われている航空機の契約をそのまま軍の方にもってきたというのが始まりであっ た。それによって、パフォーマンスが向上し、この成功例が部品などに広がってき た。 ○ 契約期間については、5年間を基準にしていて、最初は企業の初期投資から始ま り、5年間くらいで損が利益に変わって、平均するとそれなりの適正な利益になる とのことである。ただし、次の5年間も同じ契約を行うと更に利益が出てしまうの で、5年ごとに見直しをして契約金額を下げている。 ○ 他方で、会計検査院との関係で苦労をしており、大きく利益を出している部分ば かりを、何故このような契約を認めているのかということで指摘されてしまう。そ のため、これまでのコストとPBLによるコストを比較して説明をしているとのこ とであった。 ペナルティについては、仏国と同じように、例えば稼動率が下がった場合に1件 ○ につき、例えば、部品の供給が遅れればいくらという形で規定をしており、部品ご とで異なるとのことであった。 各国政府とも、やはりPBLなどで努力をしてコスト削減をした部分は他の装備 ○ 品、正面装備品とか必要なオペレーションに回せるというような保証がないと一生 懸命やってくれないということで、そういった保証を財政当局から取ることも成功 のための一つの鍵と言える。米国も財政赤字が厳しく、議会と交渉をしないといけ ない中で、ゲイツ長官がこのPBLによる削減額のうち、3分の2相当を国防省に 残して使えるようにしたとのことであった。ただし、これは政治力がないとできな いので、日本もよくこういうことを考えてやった方がいいのではないかとのことで あった。 イ 主に概要以下のやりとりがあった。 (委)日本の場合、会計検査院の考え方をどう切り替えてもらうかがポイントと思うが、 その辺の見通しについてはどうか。 (防)会計検査院にも事前にしっかり説明して、理解していただく必要がある。ただ、 そうは言っても、これまで積み上げてきた考え方をそう簡単に変えられないので、 時間は掛かるが、成功例を作ることも非常に重要なのでしっかりやっていきたい。 3 (委)日本で行うとしたら、プロセス管理からパフォーマンス管理に移るわけであり、 かなりデータベースを準備しないといけないが、本当にできるのか。 (防)米国でも行われたような、民間で使っているものと同じ機体から入り、徐々に他 の防衛装備品の分野に広げていくことを考えている。米国のレイセオンでは、20 ミリ機関砲について完全なパフォーマンスPBLとして、民間の契約をプロトタイ プにして取り入れて、ロジスティクスから修理、補修までを全部やっている。また、 世界規模で展開をしている海軍に対して、部品供給も行っている。その鍵としては、 民間の輸送会社であるUPSを使って世界中に部品を運ばせている、UPSは米国 だと3日くらいで日本に届く、あのロジスティクスを使っているとのことであった。 海軍がやろうとしてもとてもできない。特別な倉庫を作ってもらい、全てバーコー ド化して部品をチェックして、紛失経路も分かるようにシステム管理している。そ のために、民間の輸送会社に数億円の投資をやってもらい、基本的に長期契約の中 でトータルでペイしているとのことであった。この成功が他の国に繋がったという ことで、必ずしも戦闘機とかエンジンとか飛行機だけではなく、他のシステムにも 充分適応できるのではないか。 (委)性能発注のような考え方に切り替えるのは大事だと思う。実際、似たようなこと を下水道などでも、数年前から包括委託という考え方でやっているが、なかなか上 手くいっていないケースが多く、性能発注ではなく仕様発注を単に束ねて、相手方 に下請けを叩かせる仕事にすり替わっている事例も起こっている。そのあたりは、 発注者がどういう指標で物事を頼むのかという考え方も変えていかないと、どうし ても問題が起こる。また、それなりに効果を出していくには、初期投資が必要で、 そのためにはある程度、事業の規模感を出していかないといけない。規定装備品の ペナルティに関して、確かに英米系では、日本で言っている損害賠償額というもの については否定的な考え方が強く、固定の違約金という取り方はあまりしていない。 日本のPFIもオペレーションに入っていくとペナルティポイントみたいなものを 付して、パフォーマンスや段階に応じて行うなど、比較的、いろんなやり方が出来 るのではないか。 (防)各国とも共通しているのは、民間に全部を任せてコストを下げさせるようなアウ トソーシングではなくて、パートナーシップとして、共同でパフォーマンスを上げ ながら、コストを下げる知恵を出して努力をしていくということが非常に重要であ るとのことであった。最近、防衛省もまとめ買いで大体、何年先までこれくらい買 うというのが分かるようになってきているので、それと併せてやっていくというこ 4 とで、コストダウンが出来るのではないか。 (委)コストを下げるということだけでなく、いかにパートナーシップやPBLの教育 を進めていくかということが重要であると感じた。日本で行う場合は製造、物流や サービスがPBLに合うのではないかという印象がある。日本の技術やシステムで も結構進んでいる部分があると思うので、ソリューション、アイテム、パーツベー スで、その辺を上手くマッチングさせると成功する可能性があるのではないか。 (2)第2回中間報告「防衛装備品に関する契約制度の改善方策について」(案)について 防衛省側から、報告書(案)に沿って説明を実施し、研究会の了承を得た。 (3)事業継続リスク等に対応した契約条項の検討及び検討部会の緊急起ち上げ、部会長 の選任等について 今般の東北地方太平洋沖地震を受けて、契約品の納入について、相当な混乱が出て おり、細部もまだ把握しきれていない事情を踏まえて、事業継続リスク等に対応した 契約条項の検討について、リスクマネジメント作業部会において検討を進めていくた め、会長の専任事項として、加賀谷委員が作業部会長に指名され、了承された。 (4)今後の開催予定 23年度からの開催予定について、毎月第3木曜日を基本に、事務局より後日調整 ということで、研究会の了承を得た。 (以上) 5