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高速点火液体壁レーザー核融合炉 KOYO-F
(2) 秋の大会:核融合工学部会企画セッション 「レーザー核融合炉工学に関する最近の研究の現状と課題」 高速点火液体壁レーザー核融合炉 KOYO-F 大阪大学レーザーエネルギー学研究センター 本年の原子力学会の2006年秋の大会 乗松孝好 を受けてスタートしたいきさつがある。 (於北海道大学、9月27日から29日)で同 企画セッションは炉設計委員会副議長であ 核融合工学部会の企画セッションとしてレー る小職による「高速点火液体壁レーザー核融合 ザー核融合炉設計委員会が行った高速点火核 炉 KOYO-F」の報告、東京大学小川雄一先生に 融合炉KOYO−F(図1参照)の報告を行い、 よる「高速点火固体壁炉の概念」の報告、両者 好評を得たので報告する。 に共通するレーザー技術としてレーザーエネ ルギー学研究センター河仲準二助教授による 「炉用レーザーの新展開」の各30分の講演と、 液体金属研究者である大阪大学堀池寛教授に よる「液体金属流についてのコメント」、九州 大学の深田智教授による「トリチウム燃料系」 についてのコメント、京都大学小西哲之教授に よる「炉システム」に対する各15分のコメン トで構成された。 KOYO-F の紹介では最新のシミュレーショ ンコードで球対称性を損なうコーンが付いて 図1 いても高密度圧縮が可能であること、実験結果 高速点火核融合炉KOYO−Fの概要 に基づく加熱効率で、炉を経済的に運転するの 本委員会はIFEフォーラムの支援の元に、 に必要な100を超える160の核融合利得 レーザーエネルギー学研究センターとの共催 が得られたこと、高繰り返しの信頼性を高める の形で、平成16年3月から17年9月にかけ 蒸発金属ガスの澱み点のない炉構造、液体金属 て開催し、最近研究が進展している高速点火方 カスケード(小さな滝が連続した物)方式によ 式を導入することにより、レーザー核融合炉が る表面保護の概念(図2参照)、大量生産に適 どのように変わるかを明らかにするために概 した燃料充填法などが紹介された。高速点火固 念設計を行ったものである。この委員会は「レ 体壁炉の概念では比較的少ない核融合出力で ーザー核融合エネルギー開発ロードマップワ 炉を構成することのできる高速点火を生かし、 ーキング委員会」 (2002 年 1 月∼2003 年 10 月) 爆縮レーザー:300kJ、加熱レーザー:1 の成果と、同委員会で高速点火方式によるレー 00kJ、Gain=100、核融合出力=40MJ、 ザー核融合炉概念設計を実施すべきとの指摘 繰り返し30Hz を前提に、電気出力=400 - 31 - MW を目標としている。この方式ではコーン 技術の基礎研究をスタートする必要があるこ は用いず、プリパルスによるホールボーリング とが指摘された。第一壁を傾斜させ、蒸発ガス 効果で加熱レーザーを爆縮されたコアまで導 の澱み点をなくすことに関しては、蒸発ガスの く方法が採用されている。炉用レーザーの新展 横方向成分の影響を評価すべきとの指摘があ 開では冷却 Yb:YAG セラミックレーザーを用 った。 いることにより、必要な電気からレーザーへの 変換効率を確保し、圧縮レーザーはもとより、 点火レーザーも建設可能であることが示され た。また、量子効率が高く、蛍光寿命が長いこ とにより、レーザー核融合炉建設コストの大半 を占めると考えられていたレーザーダイオー ドの個数が1/3に低減できることが示され た。 図2 液体金属カスケード方式による表面保 護の概念 これらの報告に対し、堀池教授からは諸外 国の液体金属研究の現状、京都大学の功刀助教 授と共同で進めている自由界面を伴う流れの シミュレーションの評価結果が報告され、流量 制御の必要性が示された。深田教授からは液体 金属・気相、液体金属、固体壁間のトリチウム の移動係数に関するデーターの蓄積が必要で あることが指摘された。小西教授からは炉とし てのレーザー核融合の優位性が指摘され、炉に 関しては成立性を議論する時代から信頼性を 議論する時代に変わったこと、本格的な炉要素 - 32 -