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供用中軟岩トンネルの近接施工に伴う影響予測と合理的対策に関する研究

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供用中軟岩トンネルの近接施工に伴う影響予測と合理的対策に関する研究
NAOSITE: Nagasaki University's Academic Output SITE
Title
供用中軟岩トンネルの近接施工に伴う影響予測と合理的対策に関す
る研究
Author(s)
米田, 裕樹
Citation
(2004-09-16)
Issue Date
2004-09-16
URL
http://hdl.handle.net/10069/6905
Right
This document is downloaded at: 2017-03-31T06:42:52Z
http://naosite.lb.nagasaki-u.ac.jp
第4章 近接施工現場の概要と三次元解析モデリングの検討
4.1 現場の概要
最近の近接工事は,従来のものと比較して,工事規模が大きくなったことと,既設構造
物との離隔が著しく小さくなったことが特徴であり,このため影響予測や対策工の設計等
の技術的な検討に,より高い精度が求められるようになってきている1).本研究で対象とす
る,現在施工中の新設トンネルにおいても,図4−1∼図4−3に示すようヒ,特にトンネル交
差部において人道トンネルとの最小離隔距離が58cmと著しく近接しており,新設トンネル
掘削に伴う相互影響が懸念される.よって,施工中,完成後の新設トンネルおよび人道ト
ンネルの保護,あるいは補強対策のあり方が問題となる.また,車道トンネルに対しては,
応力検討を行ない,圧縮,引張りの両面からの補強対策の検討が必要になる.
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ヨ
図4−2新設トンネルと人道トンネルの離隔
37
尋鉛直方向
←
側面
(b)鉛直方向(トンネル坑口側:紙面下側)
側
掘進方向
新設トンネル
(a)実地盤
人道トノ不ル
/
人’首 ’
/
車道トンネノレ/
(c)掘進方向(トンネル坑口側:紙面手前)
(d)側面(トンネル坑口側:紙面左側)
図4−3 トンネル位置関係
本研究で対象とする実地盤は,既設トンネルと新設トンネルが交差する過程の中で,ト
ンネル坑口より交差部までは既設トンネルの上方を新設トンネルが横断し,交差部近傍で
はおよそ併設に近いものとなり,交差部以降は既設トンネルの下方を新設トンネルが横断
するという特徴を有する(図4−4)こと,その構造がrトンネルの交差,トンネルの併設」に分
類される.
38
, FHニ284,66E
(0.0,0、0)
一一一一1一一一一
新設トン’
’一「7『『
1
N口,0+7,0
人道トンネル
FH=268,400
(一3a、000,一16,265)
口,0+8、0
= 、60
(一39,000,一a1.105)
車道トンネル
(i) トンネル坑口(トンネル起点)
ド
1
ロ
1
ロ
1
ロ ロ ド ゴ ロハ ロ しハロ ゴヨド ロ ロ ぺ ド ド ド ロ ぼ ぼハサ l FH=283,ア00
ゴ
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1
ヨ
1
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人道トンネル l
N□,i+18,0
「H=874、700
(一8,000、一9,965)
口,2+∼,0
濤265.090
(一13、000、一19,575)
車道トンネル
(ii) トンネル坑口より20m
図4−4トンネルの位置関係 (続き)
39
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FH=a83100 1
(0。000、一1.565 ’
1 (0,0、0.0)
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_一_一_一__一____._噛_._._._.↓希_、_、_E肚a璽鯉、_、一_、_←、_._
甲 (4、000、一6、565)
1
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ロ
1 ロ.2+17.o
ニ265、765
(0,000,一18,900)
車道トンネル
(hi)トンネル坑口より30m
:
1 )
}
1 「H=282・560
(OIO・α0) 1 (O.OOO、一2,105)
一冨一!一τ一一’『’膚一 丁 』一一r『一㎜帽}’一,一−}一’一−一
壬几 1、・
一蟹一」†7一一
人道トンネル
ロ ど
i N口避8、0
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1
1
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1 □,3+12、Q
l =266.44〔〕
(孟1,000、一18,εε5)
i
車道トンネル
(拉)トンネル坑口より39m
図4−4 トンネルの位置関係 (続き)
40
1
I
I
サヘロ ロ ユ ヨ めゆサハやム ぴ ナ ぺ り し ハ ナ じ ラ ロ り ド ロ マ て ヘヤ ロ サ ド ロ
1
騨 「H=e81、30D
l
一 (O.000,一3.355)
(0,0、O,0)
一一一一 一、ユマ椴 ・ _人道トンネル。__.
』L一十一一
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「H=a83,0自O
l (46・000・辱1石65)
ロ
1
一一一一一一一一一一一一一十・一一一一一・一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一¶一景一一一一一一一一一一一一一一一一
コ
l
l 巳、5+8・o
ヨ コおらおげロもロ
1 (3免000〆1
、ら05)
i
車道トンネル
(v) トンネル坑口より60m(トンネル終点)
測点No.
注釈
施工基面高(FH:fbrmationheight)
地盤座標(トンネル坑口における
FH=283,000
(46,000,一1、665)
新設トンネルを基準)
図4−4トンネルの位置関係
4.2 事前調査
4.2.1地質状況
ここでは,新設トンネルと近接して交差する既設トンネル内で実施し,覆工背面の状況
や車道トンネルと新設トンネル間の地質状況を調査し,解析に必要な物性値などの資料を
得ることを目的とする.ボーリングは車道トンネルから実施し,各ボーリングの位置は,
新設トンネルとの交差部で天端より上向きに3箇所,舗装面より下向きに2箇所実施した.
各ボーリングの位置を図.4−5に,新設トンネルとの位置関係を図4−6に示す.ボーリング
調査により得られた,既設トンネル,および新設トンネル周辺地山の地質構成を図4−7に示
す,これより,周辺地山には盛土(B),崖錐堆積物(Dt),阿蘇皿火砕流堆積物(Aso皿),阿蘇
IV火砕流堆積物(AsoIV),上部凝灰岩(Tf2),下部凝灰岩(Tf1),今市火砕流堆積物(lwt)の各
地層が分布する.このうち,盛土と崖錐堆積物は地表付近に薄く分布するだけで,新設ト
ンネル掘削にあたっては特に問題ないと判断される.また,車道トンネル覆工の背後には,
阿蘇皿火砕流堆積物が分布することが確認された.阿蘇皿火砕流堆積物は,黒褐色でφ4cm
41
以下の安山岩片が混入する多孔質の溶結凝灰岩である.溶結度により高(∼中)溶結部をAso
皿1,低溶結部をAso皿2,非溶結部をAso皿3と区分される.ただ,これらはそれぞれの境
界で明確に区分されるのではなく,境界付近で徐々に変化している,
既存の調査結果と今回のボーリング調査および人道トンネルの現況調査より,トンネル
交差部では,車道トンネル付近から上方に向けて溶結度が低下していることが判明した(車
道トンネル付近=高溶結(Aso皿1),新設トンネル付近:低溶結(AsoIE2),新設トンネル上方
付近:非溶結(Aso皿3))(表4−1)、これらの境界は新設トンネル起点側および車道トンネル終
点側へ向かって急傾斜で下がっていて,新設トンネル終点側および車道トンネル起点側へ
向かって緩傾斜で上がっていると推定される,
阿蘇皿火砕流堆積物の高溶結部(Aso皿1)は,ボーリングコアでは短∼中柱状コアでコア肌
は粗く,ハンマーの強撃で崩れる程度の堅さである.低溶結部(Aso皿2)は,ボーリングコア
では短柱状コアで一部岩片∼礫状コアである.コア肌は非常に粗く,ハンマーの軽打で容
易に崩れる程度の堅さである,
ここで,表4−2に解析上考慮すべき地質的性質を記す.
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図4−5 ボーリング位置平面図
42
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ハ
辮麟.鐙
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撞織、 餐
墓絨.響撫紅
“ 訓 燗
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一四唖7鍵「四 一{凝二
図4−6 各ボーリング箇所と新設トンネルとの位置関係
43
地質名
崖錐堆積物
阿蘇IV
火砕流
堆積物
新設トンネル起点側:紙面奥方向
新設トンネル終点側:紙面手前方向
桑
A蹴四喜
∼¥鞭
僻卜
”ヤ:
起点側
固結粘土
阿蘇皿
非溶結
火砕流
低溶結
堆積物
高溶結
下部凝灰岩
固結粘土
人道トンネル
▲ω四・
卿餓、
人道トンネル
上部凝灰岩
終点側
車道トンネル
終点側
車道トンネル
起点側
図4’7トンネル交差部周辺地山地質構成図
表4・1 トンネル交差部の地質構成
地質領域
地質
既設車道トンネル以深
低溶結(Aso皿2)
既設車道トンネル付近
高溶結(Aso皿・)
既設歩道トンネル付近
高溶結(Aso皿1),低溶結(Aso皿2)
新設トンネル底盤,側壁付近
低溶結(Aso皿2),非溶結(Aso皿3)
新設トンネル天端付近
非溶結(Aso皿3)
表4−2 解析上考慮すべき地質的性質
地質名
地質的性質
最も広く分布する.堆積時の自熱で溶結することが特徴である.溶結度
阿蘇火砕流堆積物
は高溶結,低溶結,非溶結に区分されるが,これらの境界は漸移的であり
決してシャープなものではない.従って,物性値も漸移的と判断される.
黒褐色でφ4cm以下の安山岩片が混入する多孔質の溶結凝灰岩であり,
溶結度により高(∼中)溶結部,低溶結部,非溶結部に区分される.
阿蘇皿火砕流堆積物
(Aso皿)
高溶結は,ボーリングコアでは短∼柱状コアでコア肌は粗く,ハンマー
の強撃で崩れる程度の堅さである.低溶結は,ボーリングコアでは短柱状
コアで一部岩片∼礫状コアである.コア肌は非常に粗く,ハンマーの軽打
で容易に崩れる程度の堅さである.
一般に阿蘇皿火砕流堆積物に比べ溶結度が高い.両者では同じ高溶結で
あってもその溶結度は大きく異なる.
阿蘇IV火砕流堆積物
(AsoIV)
特に阿蘇IVについて言えることであるが,高溶結部には冷却時に形成さ
れた割れ目が多く発達し,かつ開口性のものが多いため透水性が大きい.
これに対し,低溶結部や非溶結部には割れ目が少なく,かつ密着している
ため透水性が小さい.従って,一般的には低∼非溶結部を不透水層とし,
高溶結部が地下水の通り道になっていることが多い.
一般に間隙堆積物と呼ばれるもので,阿蘇火砕流の休止期に堆積した火
上部凝灰岩,下部凝灰岩
(Tf2,Tf1)
山灰や砂,粘土の水中堆積物から構成される.分布は連続性にかける傾向
があり,層厚も変化するのが一般的である.また,風化して粘土化してい
ることが多いため透水性が低く,水理的に不透水層ないしは難透水層とな
り,この地層の上部から湧水が見られることが多い.
今市火砕流堆積物
(lwt)
久戸谷トンネルの地下部において下部凝灰岩の下方に分布している可能
性が強いと推定される.
45
4.2.2地盤調査
近接施工を計画するにあたり,的確な影響予測,対策工,安全監視の検討に資するもの
として,資料調査,地盤調査等により,当該地域の地盤性状を十分に把握する必要がある.
地盤調査は近接度の区分に応じて行われるが,対象地山は制限範囲(要注意範囲)に属する
ため,既存の資料により調査し,さらに中間地盤,既設トンネル周辺地盤についても必要
な地盤調査を行なうこととなる.
新たに実施した岩石試験結果と既往の資料より得られた試験結果を整理したものを表
4−3に示す.また,既往の資料も含め調査地で実施された孔内水平載荷試験の結果を整理し
たものを表4−4に示す.
以上の岩石試験結果や孔内水平載荷試験の結果等より,解析に必要な各地層の物性値を
検討し表4−5に整理した.既往資料においても同様の提案がなされているが,圧縮強度が5
倍程度異なる地層に対し,伺じ物性値が採用されているなどの点があり,全体的に再検討
した.なお,試験データめないものに関しては,総合的及び経験的に判断している.
ここで,解析上最も重要となるのはトンネル交差部付近に分布している阿蘇皿火砕流堆
積物であるが,これは強度的にいわゆる軟岩に分類されるもので,割れ目の影響をそれほ
ど受けず,岩石試験の結果がそのまま岩盤強度に近い結果を示す.
46
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Aso EI 2
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AsolV2
Tf 2
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AsoE13
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( k m/sec)
;
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(M:Pa)
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E=0
(M:Pa)
3.49-3.61
17.23
4. 88
4. 94
17.21
6.45 6.57
17.06
7 .04- 7. 10
17.24
44.00-44.22
17.52
9.61-9.73
17.12
9.85-9.91
16.08
1 7.20- 1 7. 40
17.20
1.13
0.58
0.330
28.40-28.60
16.95
1 . 50
5.82
0.320
28.78 28.92
17.54
1.31
4.86
32.32 32.48
16.56
0.88
2.01
39.55 39.68
16.98
0.93
4.08
21.21-21.37
17.03
1 . 32
1.22
1350
0.310
3.00-3.20
19.30
1.78
13.68
3730
O. 190
7.70-8.00
21.86
3.32
30.70
9.00-9.25
21.87
3.62
39.69
14700
0.290
12.05- 12.22
21.71
2.93
31.48
10100
0.210
16.50-16.85
20.77
2.93
32.90
24.25 24.42
22.10
3.21
33.36
14500
0.300
39.07-39.28
21.63
3.29
44.90
1 6900
0.350
4.50-4.65
16.84
1.47
2.70
8. 40- 8. 60
18.54
1 . 83
11.28
5000
O. 150
15.35-15.50
19.16
2.02
18.16
5330
O. 160
21.05-21.23
19.83
2.21
25.41
6270
O. 130
22.30-22.48
17.93
1.30
8.29
2530
0.230
8.35-8.50
16.26
1.09
1.38
47
1 . 62
6.70
3020
0.242
5 . 60
2480
0.179
7.61
4170
0.200
3.70
1570
0.280
0.320
0.290
0.330
0.310
表4−4 孔内水平載荷試験結果
地質名
Aso皿1
溶結度
深度
変形係数E
(m)
(MPa)
343.2
6.70
7.5
667.4
5.60
高溶結
低溶結
高溶結
1320.0
7.61
49.0
503.0
10.5
335.5
3.70
29.0
565.0
4.86
34.0
210.0
2.01
39.0
AsoIV1
σc(MPa)
4.2
44.0
Aso皿2
近くの岩石の
一軸圧縮強度
1270.0
14.0
4.08
121.0
表4−5 各地層の提案物性値
単位体
地質名
記号
岩相
積重量
γ
粘着力
c(MPa)
伝Nlm3)
崖錐堆積物
dt
土砂
17
阿蘇IV
AsoIV3
非溶結
火砕流
AsoIV2
堆積物
AsolV1
上部凝灰岩
Tf2
内部
変形
摩擦角
係数
φ
(度)
E
一軸圧縮
ボアソン比
ソ
(MPa)
強度
岩盤
σc
分類
(MPa)
25
50
0.4
『
『
17
0.2
30
100
0.3
3∼8
CL下
低溶結
19
1.5
40
900
0.2
10∼30
高溶結
22
2.0
45
2000
0.3
30∼45
CM中
CM上
固結粘土
16
0.2
30
50
0.4
1.4
0.4
35
100
0.05
一
阿蘇皿
Aso皿3
非溶結
16.5
0.35
(1以下)
火砕流
Aso皿2
低溶結
17
0.6
40
300
0.32
2.5
CL下
Aso皿1
高溶結
17
1.0
40
900
0.25
6∼7
CL下
固結粘土
16
α2“
30
50
0.4
≒Tf2
19
0.6
35
900
0.3
(10)
堆積物
下部凝灰岩
今市火砕流
堆積物
Tf1
IWt
低∼高
溶結
48
D上
一
(CM下)
4.2.3 トンネルの概要
人道トンネルは,明治3年に人力掘削で施工された無普請のトンネルであり,縦断方向
が新設トンネル計画線付近まで約21%の急勾配で施工され,それ以降はレベル区問となっ
ている・人道トンネル側壁には人工物である樋の跡が見られ(写真4−2参照),本トンネルは,
通行用というよりもむしろ近隣住民の文化財としての側面が大きく,新設トンネルによる
影響を最小限に軽減するための対策検討が望まれる.
車道トンネルは,明治41年に1車線道路として建設され,昭和41年に交通量の増加に
伴い,2車線道路として改築された(写真4・1参照〉、縦断勾配はトンネル起点側より一様
に4.5%の勾配を持っ、
新設トンネルは,当初,縦断勾配4%で計画されていたが,人道トンネルを直接掘削する
ことになるため・新設トンネルの縦断勾配と人道トンネルとの位置関係を整理する必要が
ある.ここで,新設トンネルの縦断勾配決定にあたっては,
①人道トンネルとの離隔距離を考慮すれば縦断勾配が急であればあるほど離隔がとれ,
補強対策も少なくて済む,
②特に4%以下の勾配では,車道トンネルとしての巻厚不足から20cmの覆エコンクリー
トを打設することになるので,不経済であり車道建築限界を侵すことになる.
③当該地域が冬季に凍結することが多いため急勾配は避ける必要がある.
④縦断勾配6%以上のトンネル実績が大分県にないため採用されにくい
以ヒのことから,6%程度の縦断勾配が望ましいと判断された.
写真4−1車道トンネル
写真4−2人道トンネル
4、2.4既設トンネル構造調査
既設トンネルについては構造調査,主に覆二面の変状調査を行った,ここでは,車道ト
ンネルの全線について・現在覆■面に生じている開口亀裂などの変状を詳細に把握するた
め,スケッチによる観察を行った、また,人道トンネルについても,新設されるトンネル
49
工事による要対策範囲を把握するため、現在の状況をスケッチによる観察で行った.なお,
人道トンネルは素掘りであるため,壁面は凹凸があり場所により内空断面は異なる.この
ため便宜上2m×2搬の内空断面に投影するものとした.ここで,スケッチ作業は目視観察
により実施し,表4・6に示した項目および観察の着目点に重点をおいて行った.以下,車道
トンネルと入道トンネルについての特徴を記述する.
表4−6トンネルスケッチの対象項目および着目点
観察対象項目
亀裂の開讐幅
表面の剥離剥落
漏水状況。
溶脱物の付着
観察の着目点
車道トンネルの場合,開日糎を1鵜鵜未満,1mm∼5m搬
未満,5mm以上に分類して掘握した.
剥離・剥落の位置・規模を把握した,
亀裂からの漏水範露を,観察当時に湿っていた部分,漏水
痕に分けて把握した.
溶脱によって覆工表面に付着したコンクリートの石灰分
等の位置,付着範囲を把握した.
(寂)車道トンネル状涜
開口亀裂は,ほとんどのものが施工継ぎ目に見られ,トンネル横断方向に約3m問隔で,
トンネル縦断方向ではスプリングライン上およびトンネル天端から左右3m程度までに良
く発達する.開口量は,概して0、5mm以下で最大のものは5mmである.また,開口亀裂
の起点側はトンネルの内側に数1n搬程度追り出している部分が所々ある。
新設トンネルとの交差部(測点No、2+5m∼No,3+10m付近〉は,特に顕著な亀裂等は見ら
れない,
湧水は,測点No,4+10m付近と測点No.5∼No.6間が顕著で,この部分に溶脱物の付着
も多い.人道トンネルの状況から測点No.4+10m付近が阿蘇皿と阿蘇IVの地質境界に相当
し,測点No、5∼No.6間は阿蘇IV火砕流堆積物の高溶結部に相当すると推定される.終点側
の測点No.7付近には天端からの流水の跡が見られる.
覆工コンクリートの状況を調査するため,天端付近の2箇所において,覆工コンクリー
トの厚さとその背面の状況をボーリングにより観察した.その結果,覆工コンクリートは,
約35∼50cmの厚さが確認された.背面に関しては,いずれも約20emの空洞が確認され
た.このとき,掘削場所が天端から約1mずれていたが,天端付近にも当然ながら空洞があ
るものと推定される.
舗装下についても調査したところ,アスファルトの下に約20cmのコンクリートが確認さ
れた.これは舗装の直下であることから以前のコンクリート舗装の可能性が強い.なお,
この下には阿蘇皿が確認され,インバートコンクリートはないと判断される.
50
(b)人道トンネルの状況
起点側坑口の東側側壁には車道トンネル掘削による崩壊跡があり,車道トンネル天端付
近に向かって奥行き3m以上の空洞が見られる、
起点側は阿蘇皿火砕流堆積物からなり,測点No,2+10m付近より起点側にトンネル掘削
時に生じたと思われる剥離状の割れ目が目立つ.終点側に向かうにつれ溶結度が高くなり,
それに伴い開口亀裂走)多くなる.開口亀裂は主に柱状節理で,傾斜は70。以上のものが多
い、
測点No、3+5m付近で地質境界があり,これより起点側が阿蘇皿火砕流堆積物,終点側
が阿蘇IV火砕流堆積物で,境界部には褐色で粘土状の問隙堆積物(Tf2)が見られる.この問
隙堆積物は不透水層となっていて上部の阿蘇IV火砕流堆積物から湧水があり,浸食により
05∼LOm程度えぐれている(写真4−3参照〉、測点No.3+5m∼No.4間の東側側壁には人
工物である樋の跡が見られる.
阿蘇IV火砕流堆積物は,阿蘇皿火砕流堆積物に比べ溶結度が高く開口亀裂も多い、特に
測点N o.4∼N o・4+15m間は高溶結し壁面が角張っていて,開口亀裂が発達している、こ
の区間の開口亀裂の開口幅は数cm程度で,測点No.4+8m付近には開口幅約7cmの亀裂
が見られる.またこの区間は開口亀裂が水みちとなっているため湧水も多い.測点No,4+
15m付近から終点側へ溶結度は低下し,開口亀裂も減少する.
新設トンネルとの交差部(測点No.2∼No.2+17m付近)は,阿蘇皿火砕流堆積物であり、
特に顕著な亀裂等は見られない.
以上により,車道トンネル,人道トンネルともに新設トンネル交差部に特に顕著な亀裂
等が見られないことから(図4−8参照),新設トンネルの施工に伴う既設トンネル覆工面へ
の影響は考慮しなくても良いと思われる.
写真4・3人道トンネルのクラック
51
一。一麓.
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1苫
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」
仁
図4−8人道トンネルのクラック展開図
4.3新設トンネル断面形状
4.3.1 断面形状の相違による地山挙
動評価
道路トンネルの断面は,昨今の社会
情勢へ対応した土木技術の進歩の結
果,着実に大型化してきた.社会情勢
の変化により,第二東名,名神高速道
1﹁■﹃
路におけるトンネルをはじめ,掘削断
面積が200m2を越える3車線断面の
道路トンネルが計画される例も多く
なっており,大断面トンネルの技術的,
経済的対応が強く迫られている.道路
罰
トンネルの場合,車線数や幅員が変化
しても必要な高さは変わらないので,
掘削断面積を出来るだけ小さなアー
U
チ状断面とするためには,大断面トン
訓
ネルは横長の扁平断面となる.大断面
扁平トンネルでは,掘削断面積が大き
いため,従来の2車線トンネルと比較
して,特に側壁部での大きな応力集中
が生じると予想される.また,切羽面
はその前方の地山の塑性化によって押
lla) !(bl 』』一iilc)
Displacemenヒ。昌・11ml区le・おdc2 國繭czo轟e
図4−9
52
掘削に伴うトンネルスプリングライン部の
変位ベクトルと塑性領域の進展状況
し出されて,崩壊に至る可能性が高いため,切羽面の安定性の評価と適切な対応が求めら
れている2).
そこで,掘削に伴う道路トンネルの周辺地山および切羽面の変形挙動と安定性にっいて,
円形断面および2車線標準断面,大断面扁平トンネルを比較した.
掘削に伴うトンネル周辺地山の変形と塑性領域の発生状況の三次元解析結果を図4−9に
示す3).この図には,トンネルスプリングラインに沿った水平面上における,変位ベクトル
と塑性領域の進展状況を3つの断面形状についてそれぞれ示されている.いずれの断面形
状でも,切羽面から離れるにつれて内空変位が増大し,切羽面から1.2Dぐ一1.3D(Dはスプリ
ングラインでのトンネル幅)以上に離れると一定量に近づいている.一方,無支保工の状態
においてトンネルの周りに生じた塑性領域も切羽面から離れるにつれて側方の奥部に広が
り,円形と標準断面の場合では変位収束よりやや遅れて塑性領域の幅が最大となるのに対
して,大断面の場合では,切羽面から約0.6D後方から塑性領域の側方への広がりが最大と
なってい1る.切羽面のトンネル内空への変位は3つの断面形状ともに中心対称軸線付近で
最大となり,最終内空変位の約112である.また,他の2つの断面形状に比べて大断面の場
合の最終内空変位は約2倍と増大している.いずれの場合でも切羽面前方の地山の塑性破
壊が見られ,特に大断面形の場合には切羽面より前方行きの塑性領域の広がりが円形や標
準断面の場合よりも2倍程度に拡大している.以上のように,標準断面と円形断面に比べ
て,大断面扁平トンネルの場合においては内空変位や塑性領域の地山自重によるゆるみ荷
重が大きく発生するなど全体的に安定性が 1£ 96
●
低下し,特に切羽面前方の地山の塑性破壊 1.5
に伴う押し出しで,切羽面全体が不安定に
■
なりやすいことが分かる. 駅L4 座
Kニ0.5
億
e
大断面扁平トンネルにおいて,扁平度が大 宍L3 3
× 3
きくなれば無支保で自立するためには大き j L2 72貸
な地山強度比を必要とし,また,扁平度が碁 峯
超1・1 鱗
増すに従って大きな支保工を必要とする. e 郭
基準点
扁平率について覆工の天端部に発生する曲 護LO 60
κ:=1.0
げモーメントの大きさで検討するため,骨 αg
●
組み解析が行われた4).図4−10に示すよう
に扁平にすることによって曲げモーメントα§・ 85 9・ 95 甜
真円率(%)
が大きくなる.同時に側圧係数によっても
63・3 65.8 68.3 7α8 73.3
大きく影響される.土被りの小さいトンネ 縦横比(%)
ルでは側圧係数が1より小さいことが多 図4−10トンネル天端に発生する曲げモーメントの比
く,トンネルの安定にとって不利な要素 (側圧係数K=1.0,真円率88.2%の場合を1
である.これより,扁平にして掘削断面 とする)
を減少させる効果と,不安定さを増し,支保工や覆工が大規模になることのバランスを考
53
慮する必要がある.
4.3.2 断面形状の選定
新設トンネル断面形状の選定にあたり,昨今の社会情勢を受けての建設コスト削減の機
運,近接施工に伴う空間確保の困難さから,扁平断面を採択することとした.
ここで,扁平トンネルでは掘削断面積が大きいため,従来の2車線トンネルと比較して
特に側壁部での大きな応力集中が生じると予想される.よって新設トンネル断面の設計に
あたっては,断面形状を5心円で作成することで覆工の曲率が急激に変化しないようにし,
側壁とインバートを滑らかに連結させて側壁部での大きな応力集中に耐力を持たせること
とした.新設トンネル標準断面図を図4−11に示す.また,新設トンネル標準断面図に付随
して,既設トンネル標準断面図を図4−12に示す.
∼蓋
屡酪76
無■Y 聞
−
1626
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一
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… 露 ∼_
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一
∼
11
評
隅羽 一→1
畷、,
図4−11 新設トンネル標準断面図(単位:mm)
“
“
』
も
¢畿
’
先
o
000
400
I oo
“, 5鈍
15◎◎
マ 1
(a)人道トンネル (b)車道トンネル
図4−12 既設トンネル標準断面図(単位:mm)
54
5勃 “,
4.4 新設トンネル掘削工法
あ
4.4.1 掘削工法の相違による地山挙動評価
①
トンネル掘削に伴い,切羽面はその前方の
SL 一““革『工一幽“一 SL
地山の塑性化によって押し出され,崩壊に至
’一℃「L..②一._①
①
4
る可能性が高いため』切羽面の安定性の評価
と適切な対策が求められている.特に大断面
上半先進工法
側鷺導坑先進工法
トンネルの施工においては,切羽面の安定性
が用いられる3).
愈
① ④一
大断面道路トンネルの施工法には,図4−13
蝕慧畿τ蚕iii
』
SL
②
のようなものが選定されている.上半先進工
法が最も多く,大部分の地山条件のトンネル
中壁分割工法(CD工法)
③皿④
を保っために,先進導坑や断面分割工法など
①
一
②
瞭冨’
.中燈分割工法(DD工法)
で採用されている.また,地耐力の不足する
坑口部では側壁導坑先進工法が採用されて
図4・13 大断面道路トンネルの掘削工法
曹B =:一: 一 軌
議→f 毛
∵ 鴛 ﹂⋮⋮⋮ 卍.= ・蒼三器
罫塁熱蝦綿一ヘ 一
、∫、“道︷、総凝㌣...一、..一一4申二﹃..許嵐一.
“︸一・轟塑・“三二
マ 、 亀⋮ ︷轟、 尋
厩弐聴ア ゑ一 一
→﹃ ・﹃斗阜 一
を・讃哩 ン“h﹄勲 一
一
状況と変位ベクトルの分布を示す. こ
一
B▲﹂し
置での横断面における,塑性領域の発生
=
興雛 露 .
後発切羽面よりそれぞれ10m離れた位
卓− 一日 ↑;=
3.1m上方の水平面および先行切羽面と
︸
A41し
4−14は,トンネルスプリングラインより
..凝虻毛.幽 心蚕︷
後発の切羽との間隔を25mとする.図
事 ・﹃ ﹄=竃=一
+ 7 £ 耳丁一二二翼謡.甲 一
討が行われた3).なお,先行する切羽と
t ’二・
A▲1﹂ B
進工法と中壁分割工法について,比較検
塗
二:=
⋮A..’.
も三一C⋮一うず’
の安定化効果を考察するために,上半先
〆ψ﹂’ 叉なA 牟
切羽面を分割掘削する場合の切羽面
ヲ’・ 荊,車ζ諏℃轟
蔓瀞・∼、t,,識、証鳩誰A−A
筆・ 慮函ζ‘﹄
投入することを検討する必要がある2).
、徳欝槻、、
大きな加背を確保し,大型の機械設備を
賦誘ヶ 鴇..臓’.ムよ
りZ い”譜’〃!
速度を落とさないためにも,従来以上に
翼 灘灘㎜。
翻・卜‘‘3.〆∼
﹂“腿込⋮輩∵ζ、
、ボ︾’一窪落∼罪袴識薦弧
たりの施工数量が大きくなるので,施工
滋 いる.このような大断面の施工法は,延長あ
れより,切羽面とトンネル側壁面との接
合部付近では,相互の拘束効果によって
変位量も少なく,塑性化していない箇所
‘a》
く ン
Disp■acement二 。』3’2側囹;1:凝圭:::段ε
が残っている,また,切羽面の変位量を
プロットすると,中央が膨らんだおわん
(a)上半先進工法
(b)中壁分割工法
状になっている.これは,トンネルの断
面積が大きく,側壁面による
図4−14 掘削工法によるトンネル周辺地山挙動の比較
55
拘束効果が切羽面の中心まで及ばず,切羽面の中心部で塑性領域が発達しやすくなってい
るため,および塑性領域のダイレーション挙動に応じて切羽面の変形が発生しているため
と考えられる.上半先進工法を用いた場合,先行断面が非常に扁平な形状となっているた
め,隅部から下向きに塑性領域が進展していること,また,後発の切羽が通過したのち,
さらに隅部の塑性化が進展していることなどから,トンネル隅部の安定について,特に注
意する必要があると考えられる.中壁分割工法を用いた場合,先行切羽の前方地山に発生
する塑性領域の大きさと内空への変位がある程度抑制されており,切羽面の安定性は向上
している.しかし,後発切羽側の周辺地山が大きな領域で塑性化しており,また,相互影
響により後発の切羽面に近づくに従って内空変位量が大きくなっていることから,後発の
切羽面や分割面に対する補強が必要である.
以上のように,断面を上下に分割した場合には,先行切羽の前方の地山に対して塑性領
域の発生をある程度抑える効果があったが,逆にトンネル隅部など不安定になる箇所が発
生した.また,左右に分割した場合には,先行切羽の変位量を抑える効果が見られるもの
の,断面の分割面と後発の切羽面が不安定になりやすい.合わせて,大型機械の使用や施
工過程の煩雑さを考えると,切羽面の安定性を保つために分割掘削工法を用いることは場
合によって必ずしも有利ではないと考えられる.
4.4.2 掘削工法の選定
新設トンネル掘削にあたっては,地山が有する支保機能を最大限に活用するため,周辺
地山を適度に緩めるよう配慮した上で,できるだけ大きな加背による掘削工法としなけれ
ばならない.当該地域においては新設トンネルと人道トンネルとの離隔が最短で58cmと非
常に小さいため,新設トンネル掘削による人道トンネルとの相互影響が懸念されることか
ら,切羽面の安定性とともに周辺地山の塑性化,強いては緩み荷重の増大による人道トン
ネルヘの応力集中に対して,細心の配慮を払わなければならない.よって,新設トンネル
の掘削工法としては,全断面掘削による急激な応力変化を避けるために分割掘削工法を採
用し,その施工効率を落とさないためにより加背の大きな上半先進工法を用いるものとし
た.なお,上半先進工法の施工にあたっては,トンネル隅部の安定について,特に注意を
要する必要がある.
4.5新設トンネルの掘削過程
4.5.1掘削過程の相違による地山挙動評価
実際のトンネル工事では内空面は発破と共にほぼ瞬間的に除荷され,その後ある時間は無
支保のままで自立し,かなりの時間をおいてから,支保工や二次覆工が施工される.この
間地山が自立するのは,一部は切羽による3次元ドーム効果によるが,大部分は地山の長
期強度よりも短期強度がかなり高いためと考えられる.支保工を入れた後,荷重状態は単
純な除荷とは違う方向へ,内空面には切羽の進行や地山の遅れ変形に伴い一旦ゼロになっ
56
た反力を再び受ける方向へと変化する.地山はこの様な載荷・除荷の両過程を経て,ひず
み軟化やひずみ硬化(強度の低下や回復)という非可逆変化をする.塑性変形の特色の一っは
非可逆変化であることは理念としては広く理解されているが,この掘削過程に伴う非可逆
過程は今までの解析には考慮されていない.
このような実際の地山の性質,現実に起こっている施工順序に伴う非可逆的な挙動を計
算に取り入れることで,地山挙動をより忠実に再現できる解析を行い,トンネル掘削に伴
う問題点を明確にする試みがなされてきた5).
掘削過程を考慮しない場合(一括掘削)および考慮する場合(段階掘削)の地山変位を図4−15
示す6).一括掘削の天端部の地山最終変位吻.は,段階掘削のそれより5割程度にとどまっ
ており,変位分布に相違が見られる.また,側壁部の地山変位は,一括掘削では地山に押
し出す方向に作用しているが,段階掘削では,内空部への方向に変位している.これは,
一括掘削は応力配分による変位が側方に押し戻される結果を示しており,掘削過程を考慮
するか,しないかで明らかに異なった挙動を示すことが判明した.また,掘削過程を考慮
しない場合,変位が過小評価されることがわかった.
■…一括掘削
・30 −20 ・10 0 10 20 30 ●…段階掘削
色
go 、週燃肝煮
go .週慰魍無
1
0 .20 −10−1
1
2
ハ ゆ ゆ
切羽面10m20m30m
…士3
萄幕
10
全
トンネル掘進方向
切羽面からの距離,m
切羽面からの距離 m
(a) 天端部における地山鉛直変位
(b) 側壁部における地山水平変位
図4−15施工過程による地山変位の相違(円形断面の場合)
掘削過程による塑性領域の広がりの分布を比較した図を,切羽面から5mごとに示し,正
面から見た場合を図4−16に示す7).これらの比較により,一括掘削では正面から見た場合
において,切羽面から遠ざかるにつれて側壁部分の塑性領域が減少しているのに対し,段
階掘削では増加しているという,全く逆の結果を示している.この原因としては,掘削過
程を考慮しない場合,切羽面での応力集中が生じ,支保工の打設効果が現れないことから
生じた結果であると思われる.従って,掘削過程を考慮しない場合では,塑性領域の分布
にも間違った評価をする恐れがある.
また,大断面トンネルの塑性領域の広がりを比較すると,図4−17より,塑性領域の広が
りに大きな違いが見られ,掘削過程を考慮していない解析では,全掘削長を一度に取り除
くと同時に支保工を入れたため二次覆工が破壊するなど,覆工に過大な荷重がかかってい
57
□弾性領域
■引張破壊
Eコせん断破墳
□弾性領域
−引張破壊
巨コせん断破壊
切羽から5m
切羽近傍
切羽近傍
切羽から5m
切羽から10m 切羽から15m
切羽から10m
切羽から15m
切羽から20m
切羽から30m
切羽から20m
切羽から30m
ト掘
編
(a) 一括掘削 (b) 段階掘削
図4−16 施工過程による塑性領域の広がり(円形断面の場合)
ることがわかる8).以上により,掘削過程の忠実な再現の重
要性が示された、また,掘削過程を考慮するか否かによる解
析結果の相違は,掘削に伴う周辺地山の応力変化を正しく解
析できているかどうかによると考えられる、
A−A
A−A
4.5.2 掘削過程の選定
掘削過程の忠実な再現にあたり,新設トンネルの標準一掘
削長は日本道路公団の標準支保パターン(表4−7)9)に準じる
ものとした.ここで,図4−7より新設トンネル施工により最
も影響が懸念されるトンネル交差部周辺地山には阿蘇皿火
この地層の地山物性値(表44,4−5)をもとに表4−81D)を参考
A十﹂
A→
砕流堆積物(Aso皿2)が広く分布していることが理解できる.
にして,新設トンネル周辺地山の地山等級はD Iクラスを想
定する.これより,新設トンネルの標準一掘削長を1.Omと
EコelaSt[c加ne 國P[ast・c却no
した.
(a)段階掘削 (b)一括掘削
図4−17横断面およびスプリング
ライン部の塑性領域の進展
58
また,支保パターンもD Iクラスに準じ, 表4−7標準支保パターン
延長方向1.Omごとに鋼製支保工(H−125)
を含めた吹付けコンクリート(15cm厚)を
ロツクボルト
榊一
地山
仕半1
ω
長さ
ω
周方向
ω
標準
上半鶴
下半都
げ厚
脇間隔ω
(SD30−D29)を円周方向1.2m,延長方向
吹付
掘進長
(血)
アーチ
イン
・倒聖
パート
揮
蔀
下半邸
上半部
細削工法
等級
難紺量㈹
覆工厚
紅間隔
触方向㈲
設置し,長さ4mのロックボルト
爾アーチ支保工
イン
バート
1.Omの間隔で打設するものとする.なお,
補助ペンチ
二次覆工に関してはその効果を化粧巻き
B
付き全断面
乳o
3.0
1.5
3.o
L5
工法
2.o
なし
なし
1.5
なし
なし
一
5
30
o
1 o
o
10
3D
o
o o
0
o
o 0
0
o o
0
(上半工怯1
程度と考え,インバートは掘削時の活荷重
禰ベンチ
C1
による既設トンネルヘの影響を低減させ
付き全断面
工法上半
1」5
一
工法
、
補助ベンチ
付き全断面
Cロ
工法
期と
L2
L5
&0
L2
してな
H・125
しなし
る目的で,ともにトンネル掘削後に延長方
ω・2D
上半工法
向にわたって施工するものとし,解析モデ
1.2
10
30
1.0
15
詠o
1.0
20
釦
㈱いン
チ付き全断
1)1
ルの中でも同じ再現法を取った.つまり本
面工濁
1.0
4.0
1.2
1.O
H・125
H・125
(U・21)
qロ・21〕
45
上半工法
儲助ペン
解析においては両者を解析に取り入れる
チ付き全獅
Dコ
1.0
面工淘
ことを省略した.
生0
12
1.0
E・150
(u劒
H・1闘
〔u・鋤
50
上半工法
10
lo
10
新設トンネル施工過程の表現について,
上半先進工法の逐次掘削過程を再現するため,実際の施工手順に基づき1掘削ステップ長
(1.Om)毎に上半を掘削し,20m掘削後,下半を上半に追随する形で順次掘削するものとす
る.また,支保工は上半,下半ともに1ステップ分遅らせてロックボルトと鋼製支保工を
含めた吹付けコンクリートの打設を行う.
ここで,新設トンネル各支保部材について,吹付けコンクリートの物性値を表4−9に,鋼
製支保工の物性値を表4−10に,鋼製支保工を含めた換算吹付けコンクリートの物性値を表
4−11に,ロックボルトの物性値を表4−12にそれぞれ示す.また,新設トンネルに付随して,
車道トンネル覆工の物性値を表4−13に示す.
表4−8 各岩盤等級から予想される物理定数の範囲
岩盤
等級
CM
CL
D
(MPa)
(MPa)
5,000
8,000
以上
以上
5,000∼
8フ000∼
2,000
4,000
2,000∼
4,000∼
500
1,500
500
1,500
以下
以下
岩盤の
粘着力
(MPa)
上
岩盤の
内部
摩擦角
(。)
岩盤の
弾性波
速度
(kmlsec)
55∼65
テスト
反発度
孔内載荷試験による
変形
接線弾性
係数
係数
(MPa)
(MPa)
36
5,000
10,000
以上
以上
以上
以上
36∼27
4∼2
40∼55
3.7∼3
2∼1
30∼45
3∼1.5
15∼38
59
ロック
ハンマー
3.7
1以下
CH
岩盤の
静弾性
係数
4以
A∼B
岩盤の
変形
係数
27∼15
6,000∼
15,000∼
1,500
6,000
2,000∼
6,000∼
300
1,000
1.5
15
600
1,500
以下
以下
以下
以下
0
o
0
表4・9 吹付けコンクリートの物性値(新設トンネル)
ヤング率E(MPa)
2.20×104
ポアソン比ソ
0.20
単位体積重量γ,(kN/m3)
23.5
粘着力c(MPa)
5,016
〔
内部摩擦角φ(。)
35
ダイレイタンシー角ψ(。)
0
引張強度σt(MPa)
1,580
表4−10鋼製支保工の物性値(新設トンネル)
ヤング率E(MPa)
2.061×105
ポアソン比ソ
0,485
単位体積重量γ,(kN/m3)
78
表4・11 換算吹付けコンクリートの物性値(新設トンネル)
ヤング率E(MPa)
2.76×104
ポアソン比ソ
0.20
単位体積重量γ,(kNlm3)
23.5
粘着力c(MPa)
9.2071
内部摩擦角φ(。)
35
ダイレイタンシー角ψ(。)
0
引張強度σt(MPa)
35,374
表4−12ロックボルトの物性値(新設トンネル)
ヤング率E(MPa)
2.061×105
単位体積重量γ,(kN/m3)
78.5
グラウト粘着力Cg(MPa)
0.1742
グラウト剛性kg(MPa/m)
1.7×104
グラウト周辺長Pg(m)
0.125664
ロックボルトの断面積A(m2)
642.4×10−6
引張降伏強度Ft(MPa)
0.1765
60
表4−13 覆工の物性値(車道トンネル)
ヤング率E(MPa)
2.20×104
ポアソン比ソ
0,20一
単位体積重量γ,(kN/m3)
23.5
粘着力c(MPa)
5.1065
内部摩擦鱗(。)
35
ダイレイタンシー角ψ(。)
0
引張強度σt(MPa)
1,580
4.6三次元掘削解析モデルの検討11)
’新設トンネル施工に伴う相互影響評価にあたっては,施工時の周辺地山挙動の変化を正
しく予測し,それを実際の設計施工に反映させる解析手法の確立が必要であり,実地盤お
よび施工過程を最大限忠実に再現したモデリングが不可欠となる.本研究では,軟岩の力
学的挙動を取り扱える大変形差分解析法(FLAC3D)を用いて,実地盤および施工過程を忠実
に再現した三次元掘削解析モデルを開発した(図4−18).
以下,モデル開発における着目点を略述する.
4.6.1実地盤の表現
(a)モデル境界
解析モデル外形は,新設トンネルを基準に,新設トンネル掘進方向を奥行き軸方向にと
り,各トンネルが図4−3に示す位置関係を満足するものとして作成した.そのモデル境界は,
新設トンネル掘削に伴う周辺地山への影響が及ばない程度を想定し,鉛直上方が地表面の
忠実な再現,鉛直下方が車道トンネル底盤より2H’(H’は車道トンネル内空高),水平方向に
っいては新設トンネル壁面よりそれぞれ3.5D(Dは新設トンネル内空幅),新設トンネル掘
進方向はトンネル交差部よりそれぞれ2、5Dとして,モデル境界の固定が解析結果に何ら支
障をきたさないよう配慮した(図4−18(3以
(b)地層分布
トンネル施工に伴う周辺地山挙動を忠実に解明し,合理的な設計を図るためには,地盤
状況を忠実に解析モデルに反映させなければならない.本研究においても,地層分布の忠
実な再現が望ましいが,モデル形状の複雑さ,あるいはトンネルの位置関係の忠実な再現(図
4−18(b))に重きを置いたことによるメッシュの整合性上,各層を忠実に再現することは困難
である.
そこで,本解析では特にトンネル交差部の安定性が問題となることから,トンネル交差
部を基準に,新設トンネルおよび人道トンネル周辺地山に広く分布する阿蘇皿火砕流堆積
61
物一低溶結部(Aso皿2),車道トンネル周辺地山に広く分布する阿蘇皿火砕流堆積物一高溶結
部(Aso皿1),トンネル上方に広く分布し,顕著な特徴を有する阿蘇IV火砕流堆積物一高溶結
部(AsoIV1)の3層に相対的に分類し,モデル化した.これは必ずしも地層分布の忠実な再現
とは言い難いが,対象地山の地層分布はそれぞれの境界で明確に区分されるのではなく,
境界付近で徐々に変化していることを踏まえると,十分実地盤の再現に資するものと思わ
れる.
〇 10m
・−−♂、
一
覇験
藝霧一
,』“ 型」遇
8.074m
” !’
’
’,
’
8.475m
テ’. 〆’
∼ ! ’ 、
2.Om
’ ,・ / ’
∬ノ
2∬’
∼
2・50 ∼’
2.5」ワ
26.78m
11,69m
3.5刀
トンネル交差部
刀
A
3.5刀
トンネル坑口部
A
(a)モデルメッシュ外形(0=12.753m、F=5.960m)
8.074m
トンネル
3.11m
!トンネル
2.Om
∬ノ
」o
11.69m
(b) トンネルメッシュ図(A−A方向)
図4−18
三次元掘削解析モデル(トンネル坑口:紙面手前、
、0:新設トンネル内空幅、17’:車道トンネル内空高)
62
ここで,三次元解析における地層分布を図4−19に,解析に用いる各地層の地山物性値を
表4−14に示す・このとき,表4−14において提案した各物性値を図4・7と比較すると,地層
Aso皿2において多少の差異が確認できる、これは,新設トンネルおよび人道トンネル周辺
地山において,新設トンネル上半部に地層Aso皿2よりも物性の低い地層Aso皿1が分布する
ことから,物性の高い地層AsoIE2の単一的な採用が解析結果の過大な安定評価を招くこと
を配慮したものである、
目
AsoIV
Aso皿2
Aso皿1
図4−19三次元解析における地層分布(トンネル坑口より28m地点,
図中空洞は上方より順に新設,人道,車道トンネルを表す)
表4−14 三次元解析における各地層の地山物性値
地山等級
C且∼D I
単位体積重量 r(kN/m3)
変形係数E(MPa)
ホアソン比 ン
17
17
C I∼C亙
22
900
160
2000
D I
0.25
塑性流動開始時の塑性せん断ひずみερ
0.0068
粘着力c(MPa)
1.0
残留粘着力‘一(MPa)
AsoW
AsoHI2
地質名 Aso皿1
0.4462
0.32
0.0062
0.64
0.3616
O.30
0.0424
2.0
0.6215
40
25
45
残留内音1;摩擦角φ’(。)
38.1170
23.8961
37.8960
ダイレイタンシー角ψ(。)
24.5861
20.3431
30.8485
残留ダイレイタンシー角ψず)
U.6390
10.4787
13.4175
内部摩擦角φ(。)
引張強度σ、(MPa)
O.65
0.20
4.o
残留引張強度σ!嗣Pa)
0.29
O.11
1,243
63
4.6.2 軟岩の力学的挙動の考慮
トンネル周辺地山の変形挙動は,それを構成する周辺地山の応カーひずみ特性,特にピ
ーク強度以降の特性に大きく支配される.本研究で対象とする軟岩は図3−2のようなひずみ
軟化挙動を示すものとして取り扱い,軟岩の力学的特性を正しく評価するために,軟岩特
有の特性であるひずみ軟化特性とダイレイタンシー特性のモデル化を行った、
軟岩の強度特性は線形的Mohr−Coulomb降伏規準に従うものとした.残留強度はその状
態での粘着力と内部摩擦角で定められるものとし,一軸圧縮強度と各物性値との相関性(式
(3.9))により導いた(表4・14に記載).
4.6.3施工時の設計修正への対応
新設トンネルは,断面形状を扁平断面とし,掘削工法は上半先進工法が計画されている.
しかしながら,施工時の現場計測のデータからトンネルの実態に即応して解析にフィー
ドバックさせ設計修正がなされることは多々あり,その場合にも容易に対応できるような
モデルの開発が望まれる、そこで,トンネルの性状を決定する各種パラメータの変換によ
り自動的に設計修正へ対応できるプログラムを作成することでモデルに多様性を持たせ,
合理的,経済的な設計施工の実現を図っていく.図4−20にトンネル断面形状を決定する際
に入力するパラメータを,図4・21,22に本プログラムにより設計可能な断面形状,掘削工法
の一例を示す・ □吹付けコン列一ト(巻厚七1)
□覆工(巻厚t2)
圏 インハ㌧ト(巻厚t3)
、 =
−一
第 健
上半断面
「 1
「凧 1一コ
’ 劇
f
Tl
{ζ
’ヒー 会
妊
の 八
鋼ロ匡 ⊥
一、
Rヤ
区一昏
ノ 一
幅員w
トンネル内空幅D
本解析では,s=1.40m,H=7.85m,w=12.20m,
D=12.90m,
図4−20 新設トンネル断面形状決定パラメータ
64
(a)3心円偏平率0.67)
(b)5心円(扁平率0.55)
(c)5心円偏平率0.57)
図4−21
自動プログラムによる新設トンネル断面形状の一例
(a)全断面掘削工法
(b)上半先進工法
(c)中壁分割工法
図4−22
自動プログラムによる新設トンネル掘削工法の一例
65
4.6.4施工過程の再現
トンネルの安定性,支保工の効果は本来三次元的なものであり,掘削に沿って進められ
ていくため,(i)ステップごとの掘削作業,(ii)H型鋼の打設作業,(五i)コンクリートあ吹
付け作業,(iv)ロックボルトの打設作業といった現場でのr連の流れを最大限忠実に再現す
る掘削解析モデルにより,地山の挙動を定量的に評価していくことが求められている.
ここで,解析を行う際には実際の施工手順に基づき,1掘削ステップ長(1.Om)ごとの上半
掘削,上半20m掘削後,下半を上半に追随する形で順次掘削,支保工は上半,下半ともに
1ステップ分遅らせて施工という一連の流れを忠実に再現することが望ましいが,この再現
には新設トンネル掘削終了までに計81ステップ(上半60ステップ+上半20m掘削後に下
半掘削開始のため上半掘削終了時の残り下半20m分20ステップ+下半支保工1ステップ
二計81ステップ〉必要とし,解析に多大な時間と労力が伴うものとなる.よって,新設トン
ネル掘削により特に影響が懸念されるトンネル交差部は最大限忠実に再現するものとし,
トンネル交差部に比べ影響が緩和されると思われるトンネル坑口および終点部は1掘削長
を長く取ることで解析ステップ数の集約(計24ステッカを図った.ここで,解析ステップ
の表現を表4−15に,解析手順を図4−23に示す.
66
表4・15解析ステツプの表現
(上半掘削距離,m)
0
10
20 25 28 29 30 31 32 33 34 35 36
37 38 45 60
上半支保
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
上半掘削
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
21
22
23
22
23
24
雪
下半掘削
3
4
5 6 7 8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
下半支保
4
5 6 7 8 9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
0 5 10 111213 14 15 16 17 18 19 20 25 28
20
19
30
32
21
34
36 38 45 60
(下半掘削距離,m)
Step4
StepO
上半28m掘削,25m支保工
掘削前
下半10m掘削,5m支保1二
Step5
上半29m掘削,28m支保工
Step1
下半11m掘肖rL10m支保工
OG
上半10m掘削
c
S七ep6
上半30m掘削,29m支保工
下半12m掘削,11m支保工
S七ep2
上半20m掘削,10m支保工
S七ep7
上半31m掘肖[L30m支保工
Step3
下半13m掘削,12m支保工
上半25m掘削,20m支保工
下半5m擬削
図4−23 解析手順(STEPO∼STEP7)(続き)
S七ep8
S七ep12
h半32m掘肖IL31m支保工
上半36m掘削,35m支保工
下半14m掘削,13m支保工
下半18m掘肖IL17m支保工
Step13
S七ep9
ヒ半37m掘削,36m支保工
上半33m掘肖IL32m支保工
下半19m掘削,18m支保工
ド半15m掘削,14m支保工
①¢
Step14
S七ep10
上半38m掘削,37m支保工
ヒ半34m掘肖IL33m支保工
下半20m掘削,19m支保工
下半16m掘削,15m支保工
S七ep15
Step11
上半45m掘削,38m支保工
上半35m掘削,34m支保工
下半25m掘肖1」,20m支保工
下半17m掘削,16m支保工
図4−23 解析手順(STEP8∼STEP15)(続き)
S七ep16
S七ep19
上半掘削終了、45m支保工
下半34m掘肖IL32m支保工
下半28n1掘削,25m支保工
↓O
S七ep20
Step17
下半36n1掘削,34m支保工
上半支保工終了
下半30m掘削,28m支保工
Step21
下半38m掘削,36m支保工
Step18
下半32m掘肖rL30m支保工
図4−23解析手順(STEP16∼STEP21)(続き)
S七ep22
下半45m掘削、38m支保工
S七ep23
ド半掘削終了、45m支保工
S七ep24
下半支保工終了(全工程終了)
図4−23(4)解析手順(STEP22∼STEP24)
4.7まとめ
本章では,近接施工にあたっての的確な影響予測,対策工,安全監視の検討に資するも
のとなる既設トンネル,新設トンネルの構造,地盤性状,周辺および中間地山の物理的,
力学的特性を提示した.
近接度の分類において,当該地域はr制限範囲(要注意範囲)」に分類される.よって,新設
トンネル施工時,および完成後の影響予測の的確な評価,補強対策の決定への十分な検討
が必要となる.
地盤調査を行なった結果,解析上最も重要となるトンネル交差部付近には阿蘇皿火砕流
堆積物が分布しており,これは強度的にはいわゆる軟岩に分類されるもので,割れ目の影
響をそれほど受けず,岩石試験の結果がそのまま岩盤強度に近い結果となることを示した.
71
トンネル構造調査を行いトンネル形状およびトンネル内空壁面の変状を把握した.人道
トンネル側壁には人工物である樋の跡が見られ,新設トンネルによる相互影響を最小限に
軽減することが望まれる.トンネルの変状において,人道トンネル,車道トンネルともに
開口亀裂が見られた.しかしながら,新設トンネルとの交差部には特に顕著な亀裂が見ら
れず,新設トンネル施工に伴う既設トンネルの変状の影響は考慮しなくても良いことを示
した.新設トンネル掘削に伴う相互影響を的確に評価し,トンネルの安定性の確保や支保
工の合理的設計を図るためには,掘削に伴う周辺地山挙動の変化を正しく予測し,それを
実際の設計施工に反映させる解析手法の確立が必要となる.そのため,その確立を成すた
め,軟岩g力学的挙動を取り扱える大変形差分解析法を用いて,支保工の効果,段階掘削
の逐次再現をも考慮できる三次元数値解析モデルを検討した.特に,地盤状況の忠実な再
現,軟岩の力学的挙動のモデル化,施工時の設計修正への対応,施工過程の忠実な再現,
に着目し,解析モデルに多様性をもたせることで,本研究で対象とする実地盤のみに止ま
らず,今後さらに増大するであろう軟岩地山中への近接施工に随所に取り入れることがで
きるモデルの構築を目指した.本解析モデルを用いることで,近接トンネルの合理的かつ
経済的な設計施工の具現化が実現することができる.
72
参考文献
1)働鉄道総合技術研究所:既設トンネル近接施工対策マニュアル,1996.9.
2)三浦 克:大断面道路トンネルと山岳トンネル工法の現状と課題,土木学会論文集,
No.5161VI−27,pp.1−13,1995.
3)蒋 宇静,江崎哲郎,末松史郎,田中陽子:大断面扁平トンネルの力学的挙動について,
第28回岩盤力学シンポジウム論文集,pp.393−397,1997.
ジオフロンテ研究会:高強度吹き付けコンクリートの開発報告書,p.77,1985.
4) 日本トンネル技術協会:大断面トンネルの設計・施工法に関する調査研究(その3)報告
書〈山岳部編〉,1994.3.
5)福島啓一,江崎哲郎:施工過程を考えたトンネル掘削のFEM解析,第28回岩盤力学シ
ンポジウム論文集,pp.85−91,1997.
6)矢口晃見,棚橋由彦,蒋 宇静,米田裕樹:施工過程を考慮したトンネルの三次元挙動
評価法の提案とその適用,第35回地盤工学研究発表会講演概要集,pp.2067・2068,
2000.6.
7)米田裕樹,蒋 宇静,棚橋由彦,茂山史憲:掘削過程を考慮したトンネル支保効果の三
次元的評価について,第10回トンネル工学研究論文・報告集,第10巻,pp.39−46,2000.11.
8)蒋 宇静,吉田昌史,江崎哲郎:施工過程を考慮した軟岩トンネルの力学的挙動の評価
について,トンネル工学研究論文・報告集,第8巻,pp.1−8,1998.11.
9) 日本道路公団:設計要領,第三集,第9編トンネル,pp.16,1985.
10)吉中竜之進,他:岩盤分類とその適用,土木工学社,1989.
11)米田裕樹,蒋 宇静,棚橋由彦,持田拓児:三次元数値解析に基づく軟岩地山トンネ
ルの近接施工による相互影響評価に関する研究、土木構造・材料論文集,第18号,
pp.127−129, 2002.12.
73
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