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バイオ接着剤の開発 - 京都工芸繊維大学 研究戦略推進本部産学連携室

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バイオ接着剤の開発 - 京都工芸繊維大学 研究戦略推進本部産学連携室
平成22年度共同研究成果報告
バイオ接着剤の開発
太陽精機株式会社
木下典彦
京都工芸繊維大学
バイオベースマテリアル研究センター
小林憲司
小原研究室
[研究目的]
近年、世界では排出される炭酸ガスの増加に伴う地球温暖化や人口の増加による廃棄物の増加等
の様々な環境問題を抱えており、この原因の一つに過度な化石資源の消費が挙げられる。特に様々
な分野に使用されているプラスチック等の樹脂は、物性が安定であり、軽くて丈夫、成形加工が容
易等の様々な利点を有することからあらゆる分野で使用されている。しかし、この優れた利点は廃
棄の際、焼却時の炭酸ガスやダイオキシンの発生や、埋立てで長期間環境中に残存するといった様々
な問題を引き起こす。この問題を解決する手段として化石資源の使用量を抑えることが挙げられ、
そのためには新たに環境に調和した資源の開発が急務であり、注目を集めているのが再生可能資源
である。
再生可能資源は、今までの有限な資源とは異なり、植物等の再生可能なバイオマスを資源として
用いている。植物由来であるため、使用後は環境中へ残存することもなく、また燃焼時に有害ガス
を発生することも無い。バイオマスを資源としたプラスチック(バイオプラスチック)も数多く報
告されている。しかし、バイオプラスチックは一般的に硬く、脆い、結晶化速度が低い等の問題点
があり、使用に際してはこれらを考慮する必要があった。
また現状は接着剤についても化石資源由来の樹脂を主原料にしたものが多く、環境への負荷を考
えると接着剤についても再生可能資源を主原料に置き換える必要があると考えられる。
そこでバイオマスから得られる原料を使用した結晶性及び非結晶性ポリオールを使用した樹脂を
合成し、その樹脂の末端に化学的に架橋する官能基を配置する事で、基材への塗布性と硬化後の物
性の両立した接着剤の開発を目的として研究を進めている。
[研究プロセス]
バイオマス由来の原料に置き換えが可能な市販の結晶性及び非結晶性ポリオールを使用し、末端
基が化学的に架橋する樹脂を合成し、それを接着剤として評価を行った。
評価方法は接着剤の物性を引張試験、DSC 測定等で評価し、接着性については紙を基材としてせ
ん断強度を測定する事で評価を行った。
[結果及び考察]
様々なポリオールを選択し、配合調整を行った結果、バイオマス由来の非結晶性ポリエステルポ
リオールを一定量配合する事で柔軟で良い物性の樹脂が得られることが分った。配合例を表 1 に示
す。また引張り試験の結果を図 1 に示す。A の樹脂は基礎配合となる 2 つのポリエステルポリオー
ルから合成された樹脂である。最大応力は大きくなったが弾性率が 158.9MPa と高くなり硬い樹脂
になった。B の樹脂は A の配合にポリエーテルポリオールを加えたものである。弾性率が 82.0MPa
と低くなり柔らかい樹脂が出来た。
平成22年度共同研究成果報告
C の樹脂はさらにバイオマス由来の非結晶性ポリエステルポリオールを配合したものである。弾
性率が 58.7MPa とさらに低くなった。またひずみ量が大幅に増加した。接着力もある程度維持しつ
つ柔軟な樹脂が出来た。
[結言及び今後の方針]
あるバイオマス由来の非結晶性ポリエステルポリオールを一定量配合する事で、柔軟で適切な物
性を持つ樹脂を合成することができた。今後は最適な物性と強い接着強度を得られるように配合を
コントロールし、またこれら以外のポリオールについても検討していく。
表 1.配合例
結晶性ポリエステルポリオール
非結晶性ポリエステルポリオール
非結晶性ポリエーテルポリオール
バイオマス由来の
非結晶性ポリエステルポリオール
溶融粘度 (120℃)
弾性率 (MPa)
紙の接着強度(N/cm)
A
100 部
100 部
B
100 部
100 部
50 部
C
100 部
100 部
40 部
30 部
8800
158.9
8.0
6675
82.0
7.3
4225
58.7
6.6
40
35
A
応力(MPa)
30
B
25
C
20
15
10
5
0
0
200
400
600
800
ひずみ(%)
1000
図 1.合成樹脂の引張試験
1200
1400
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