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素案 - 会津若松市
会津若松市議会議員政治倫理条例(素案)について (前文) 会津若松市議会が目指している市民参加を礎とした新たな議会づくりは、我々議員に対する 市民の揺るぎない信頼があって初めて実現できるものである。 そのためには、議員は公職者としての高い倫理観と深い見識により、自ら考える明確な政治倫 理基準に基づき、誇りと自信をもって市政を担いつつ、説明責任を果たしていくことが必要であ る。 ここに、市議会は、議員と市民との信頼関係を築く基盤として、会津若松市議会議員政治倫理 条例を制定する。 【基本的考え方】 市民との信頼関係の確立、説明責任の明確化などの観点から、個人の倫理基準ではなく、市議会議員 という公職者に求められる行為基準を明らかにしようとするものである。 (目的) 第1条 この条例は、議会を構成する議員が、市民全体の代表者として、また、市民全体の奉仕 者として議員活動を行う際に遵守すべき行動基準(以下「政治倫理基準」という。)について定 めるとともに、市民が議員活動について説明を求める機会を保障することにより、議員が市民か ら信頼を得る基盤を創り、もって公正で民主的な市政の発展に寄与することを目的とする。 【基本的考え方】 条例の中心的な柱である政治倫理基準を定めるとともに、条例の実効性を担保する機関 としての審査会設置を図ることで、議員が市民から信頼を得る基盤づくりと市政発展へ寄与していくこ とを目的規定としようとするものである。 (議員の責務) 第2条 議員は、市政にかかわる権能と責務を深く自覚し、第4条に規定する政治倫理基準を遵 守して活動しなければならない。 2 議員は、自ら研さんを積み、資質を高めるとともに、市民の信頼に値する倫理性を自覚し、その 品位の保持に努めなければならない。 3 議員は、法令及び条例を遵守し、公正な職務執行を妨げるいかなる不当な要求にも屈しない。 4 議員は、市民からの求めの有無にかかわらず、自ら率先して説明責任を果たさなければならな い。 【基本的考え方】 市民全体の代表者として要請される基本姿勢、二元代表制の一翼を担う議会を構成する一員として 求められる資質などの観点から、市議会議員という公職者に求められる基本的な責務について、明示し ようとするものである。 (市民の役割) 第3条 市民は、議員の活動及び政治姿勢に注目し、必要があれば、議員が説明責任を果たす ことを求めるものとする。 【基本的考え方】 市民と議員の信頼関係確立のためには、議員自らが公職者としての責務を果たすとともに、議員を 選出した市民もまた、議員との関係から生じうる役割について認識することが望ましいことから、その ための基本事項について明示しようとするものである。 (政治倫理基準) 第4条 議員は、市長及び市の職員並びに市が資本金、基本金その他これに準ずるものを出資し、 又は拠出している公益法人(以下「出資団体」という。)及び指定管理者(会津若松市公の施設 の指定管理者の指定手続等に関する条例(平成 17 年会津若松市条例第 10 号)第5条の規定 により指定されたものをいう。)の役職員(以下「職員等」という。)に対し、その権限又は地位を 利用することにより、次に掲げる行為によって、公正な職務の執行を妨げ、又は妨げるような働 きかけをしてはならない。 ⑴ 公共工事の請負等のあっせん ⑵ 公共施設の入居に関しての推薦 ⑶ 職員等の採用、異動、昇任その他の人事への関与 ⑷ 許認可、補助金その他の給付の決定への関与 ⑸ 前4号に掲げるもののほか公正な職務執行を妨げる行為 2 議員は、その地位を利用して、いかなる金品も受領してはならない。 3 議員は、その地位を利用して、嫌がらせをし、強制し、又は圧力をかける行為をしてはならない。 また、いかなる場合であっても、セクシャル・ハラスメント(他の者が不快に感じる性的な言動、行 為をいう。)その他人権侵害のおそれのある行為をしてはならない。 4 議員は、飲食の供与等社会通念上疑惑を持たれるおそれのある行為をしてはならない。 【基本的考え方】 第1項は、市長等の職務に対して、その執行を妨げる行為、いわゆる口利き行為を禁じようとするも のであり、利得の取得を要件としないものである。第2項は、たとえ職務権限には関係なくても、議員 の地位を利用した金品の授受を禁じようとするものである。第3項は、議員の地位利用により圧力をか ける行為等を禁止するとともに、議員の地位とは無関係に、人権侵害行為を禁じようとするものである。 第4項は、市民や職員との飲食などを通じた利益供与を排除しようとするものである。 (就業等の報告義務) 第5条 議員は、自ら事業を営んでいる場合又は次の各号のいずれかに該当する法人その他の 団体(出資団体を除く。以下「法人等」という。)の無限責任社員、取締役、執行役若しくは監査 役若しくはこれらに準ずべき者、支配人及び清算人に就いている場合は、速やかに議長に報 告しなければならない。事業を休止したとき又は職を辞したときも同様とする。 ⑴ 収益事業を営む法人等 ⑵ 市の許認可が必要な事業を営む法人等 ⑶ 市から補助金等を受け、又は受けようとする法人等 【基本的考え方】 自己の就業等の内容を議長に報告することで、議員が一定の説明責任を果たすことを趣旨として規定 しようとするものである。 (議員の依頼等に対する記録) 第6条 議長は、議員が行う職員等に対する口頭による要請に対して、日時、要請内容、対応等 を記録した文書を作成することを当該職員等の代表者に求めるものとする。 【基本的考え方】 議員が職員等に何らかの依頼を行った場合において、その事実内容を、職員サイドで記録すること を要請する制度として規定しようとするものである。 (職務関連犯罪による逮捕後の説明会) 第7条 議員は、刑法(明治 40 年法律第 45 号)第 197 条から第 197 条の 4 までの各条及び第 198 条に定める贈収賄罪並びに公職にある者等のあっせん行為による利得等の処罰に関する 法律(平成 12 年法律第 130 号)第1条の罪(以下「職務関連犯罪」という。)による逮捕後、なお 引き続きその職にとどまろうとするときは、議長に、市民に対する説明会の開催を求めることがで きる。 【基本的考え方】 問責制度は、万が一、不祥事が起きてしまった場合に、事後的に対処するための制度である。贈収賄 などの容疑を受けた議員が説明会を開き、市民にとってはその責任を追及する機会となるが、一方で議 員にとっては、身に覚えのない容疑をかけられた場合に、自らの正当性を説明し、自らの身を守る機会 ともなる制度である。なお、逮捕の段階では、起訴されるか否かは不明のため、説明会は、容疑を受け た本人の申し出による開催のみを認めようとするものである。 (職務関連犯罪容疑による起訴後の説明会) 第8条 議員は、職務関連犯罪により起訴され、なお引き続きその職にとどまろうとするときは、議 長に、市民に対する説明会の開催を求めることができる。この場合、当該議員は説明会に出席 し、釈明しなければならない。 2 市民は前項の規定による説明会が開催されないときは、起訴の日から 30 日以内に当該議員 に説明会の開催を請求することができる。 【基本的考え方】 起訴後の説明会は、本人の申し出に加え、市民要請(市民一人で可)による開催を認めようとする ものである。 (職務関連犯罪の有罪判決後の説明会) 第9条 議員が職務関連犯罪の罪により有罪判決の宣告を受け、なお引き続きその職にとどまろう とするときの説明会の開催等については、前条の規定を準用する。ただし、開催請求の期間は、 判決の日から 14 日を経過した日以後 20 日以内とする。 【基本的考え方】 説明会開催の基本要件は、第8条と同様であるが、請求期間を「判決の日から 14 日を経過した日 以後 20 日以内」としているのは、14 日間の控訴期間を考慮したものである。 (職務関連犯罪の有罪確定後の措置) 第 10 条 議員は、前条の有罪判決の宣告を受け、その刑が確定したときは、公職選挙法(昭和 25 年法律第 100 号)第 11 条第 1 項の規定により失職する場合を除き、市民全体の代表者とし ての品位と名誉を守り、市政に対する市民の信頼を回復するため、辞職手続きをとるものとす る。 【基本的考え方】 「辞職手続きをとるものとする」とは、責任への自覚と自らの辞職を促すことを趣旨として、規定 しようとするものである。 (審査の請求) 第 11 条 市民は、議員に政治倫理基準の規定又は法令若しくは条例(以下「政治倫理基準等」と いう。)に違反する行為があると認めるときは、当該違反する行為を証する書類を添え、有権者 の 100 人以上の者の連署とともに、議長に対し審査の請求をすることができる。 【基本的考え方】 審査請求については、市民が 100 人以上の連署とともに行うことを要件にしようとするものであ る。 (政治倫理審査会) 第 12 条 議会に、会津若松市政治倫理審査会(以下「審査会」という。)を置く。 2 審査会は、前条に規定する審査の請求があった場合において、議長の求めに応じ、当該請求 の事案を調査審議し、その結果を報告する。 3 審査会は、前項の調査審議を行うほか、政治倫理に関して議長に意見を述べることができる。 【基本的考え方】 審査会は、議会基本条例第7条に基づき、議会が設置する附属機関であり、審査請求があった場合に、議 長の求めに応じて審議する旨規定しようとするものである。 第 13 条 審査会は、議長が委嘱する委員5人以内をもって組織する。 2 議長は、必要があると認めるときは、議員を委員として委嘱することができる。 3 委員の任期は、審査会が結論を出す日までとする。 4 委員は、職務上知りえた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も同様とする。 【基本的考え方】 委員5人以内とは、例えば、学識経験者3名(弁護士等1名、大学教授等1名、教職員等1名)、市民2 名(各種団体の長2名)の合計5名を想定するものである。また、審査会は、審査請求があった場合に、 議長の求めに応じて開催するものであるため、委員についても審査の必要に応じて委嘱し、審査会の結論 とともに任期を終えるものである。 第 14 条 審査会に委員長及び副委員長を置き、委員の互選により定める。 2 委員長は、会務を総理し、審査会を代表する。 3 副委員長は、委員長を補佐し、委員長に事故あるとき又は委員長が欠けたときは、その職務を 代理する。 【基本的考え方】 審査会構成の基本事項を規定しようとするものである。 第 15 条 審査会は、委員長が招集する。 2 審査会は、委員の半数以上の出席がなければ、会議を開くことができない。 3 審査会の議事は、出席委員の過半数で決し、可否同数のときは、委員長の決するところによる。 【基本的考え方】 審査会運営の基本事項を規定しようとするものである。 第 16 条 審査会は、調査審議を行うに当たり、審査の請求の対象とされた議員(以下「被請求議 員」という。)又は関係人に対し、事情聴取、資料の請求等の必要な行為をすることができる。 【基本的考え方】 審査会の職務を行うため、事情聴取等などの調査権を付与しようとするものである。なお、この調 査権には強制力はなく、基本的には当事者や関係人の協力に拠るものである。 (被請求議員等の義務) 第 17 条 被請求議員及び関係人は、審査会から、資料の提供や審査会への出席を求められたと きは、これに応じなければならない。 2 被請求議員及び関係人は、審査会において、口頭又は文書により意見を述べることができる。 【基本的考え方】 審査会の実質的な審査を担保するため、被請求議員等の義務を規定するとともに、あわせて被請求議 員等の陳述等の権利を付与しようとするものである。 (結果の報告) 第 18 条 議長は、第 12 条第2項の規定による結果の報告を受けたときは、審査の請求をした者 及び被請求議員に対し、その内容を文書で通知するとともに、その概要を公表するものとする。 この場合において、次項の弁明書の提出があったときは、当該弁明書と併せて公表するものと する。 2 被請求議員は、前項の文書を受け取った日から 14 日以内に限り、弁明書を議長に提出するこ とができる。 【基本的考え方】 審査会は、条例に反した行為を市民がチェックする仕組みを制度化したものであることから、審査結 果についても市民に公開しようとするものである。また、このような公開制度との制度的均衡から、被 請求議員への弁明権を付与しようとするものである。 (議会の措置) 第 19 条 議会は、審査会の報告を尊重するものとする。 2 議会は、被請求議員が政治倫理基準等に違反したものと認められるときは、市民の信頼を回 復するために必要な措置を講ずるものとする。 【基本的考え方】 条例の実効性を確保するためには、議会が、審査会の報告を尊重する必要があるため、その旨を明文 化しようとするものである。また、かかる趣旨を貫き、市民の信頼回復を図るため、報告後における適 切な措置を議会に要請しようとするものである。 附 則 この条例は、公布の日から施行する。