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インフォメーション・ステートメント

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インフォメーション・ステートメント
インフォメーション・ステートメント
国際金融公社
国際金融公社(以下「IFC」または「公社」といいます。)は、ノート、ボンド、仕組債その他の負債証券(以下「証
券」といいます。
)を、販売時の市場動向に適した期間および条件を設定して随時発行しています。証券はディーラー
および引受会社に対して販売され、そこから一般公募・再販されますが、IFC が直接または代理人を通して販売する
場合もあります。
IFC が発行する証券については、元本総額、満期、金利、金利の決定方式、利息支払日、償還プレミアム(もしあ
れば)、IFC に対して支払う証券購入価格、償還条項あるいはその他の特別条項、証券の形式および額面額、証券取引
市場への上場に関する情報、ならびにディーラー、引受会社、代理人の名称およびその他の関連情報を、発行に関す
る目論見書、オファリング・サーキュラー、インフォメーションメモランダム、その他募集関連書類に掲載していま
す。
特段の指定がない限り、本インフォメーション・ステートメントでは(1)金額はすべて、連結財務諸表に対する注
記 A-重要な会計方針の要約の「外貨建て取引の再測定」で示されたとおり、米ドル換算にて表示されており、また(2)
すべて 2015 年 6 月 30 日現在の情報に基づいています。
情報の提供について
IFC ではご要望に応じて本インフォメーション・ステートメントのコピーを無料で提供いたします。ご希望の方は
書面か電話で IFC 本部財務部宛てにご連絡ください(住所: 2121 Pennsylvania Avenue, N.W., Washington, D.C.,
20433, Attention: Treasury Department、電話:+1 (202) 458-9230)
。IFC の連結財務諸表その他、米国証券取引委
員会(以下「委員会」といいます。
)に提出された書類は、委員会の事務所(Room 1580, 100 F Street, N.E., Washington,
D.C. 20549)で閲覧できるほか、同所にある委員会の公開閲覧課(Public Reference section)では所定の料金でコ
ピーの入手が可能です。
インフォメーション・ステートメントは IFC のウェブサイト http://www.ifc.org/investors でも閲覧可能です。な
お、IFC ウェブサイト上のその他の記事は本インフォメーション・ステートメントの一部を構成するものではありま
せん。
本インフォメーション・ステートメントは今後、証券の発行目論見書、オファリング・サーキュラー、インフォメ
ーションメモランダムその他募集関連書類をお読みになる際に、IFC の事業内容や財務状況を理解する参考資料とし
てお役立てください。
2015 年 10 月 21 日
1
概 要
(別段の表示がない限り、以下のデータはすべて 2015 年 6 月 30 日現在)
IFC は、民間セクターの開発を促進することにより開発途上加盟国の経済的成長を促すために 1956 年に設立
された国際機関である。IFC は世界銀行グループのメンバーであるが、国際復興開発銀行(以下「IBRD」とい
う。)
、国際開発協会(以下「IDA」という。
)
、多数国間投資保証機関(以下「MIGA」という。
)および投資紛争
解決国際センター(以下「ICSID」という。)とは法律的に別個の独立した法人であり、独自の設立協定、株式
資本、財務構造、経営陣および職員を有している。IFC への加盟は IBRD の加盟国に限定されている。IFC の債
務は、IBRD またはいずれの政府の債務でもなく、また IBRD またはいずれの政府による保証も受けていない。
IFC は、IFC の加盟国である開発途上国の民間セクターに資金および財務サービスを提供している経験豊富
な国際機関である。IFC は国際開発金融機関の特徴と民間金融機関の特徴を合わせ持っている。2015 年 6 月 30
日現在、IFC の株式資本のすべては 184 カ国の加盟国により保有されている。2015 年 6 月 30 日現在、経済協
力開発機構(OECD)の加盟国が IFC の議決権の 65.28%を保有している。IFC の 184 カ国の株主のうちの上位 5
位は、アメリカ合衆国(合計議決権の 20.99%)、日本(6.01%)、ドイツ(4.77%)、英国(4.48%)およびフ
ランス(4.48%)である。概して IFC は、貸出金については市場金利を課しており、持分投資および負債証券
への投資については市場収益を目指している。他の多くの国際機関と異なり、IFC は融資の際にその国の政府
保証を受けない。IFC の財務体質の強さは主に投資ポートフォリオの質、多額の払込資本金および利益剰余金、
低い負債比率、流動資産ポートフォリオの規模、多様な収益源および収益性によるものである。
IFC の連結財務諸表作成基準 IFC の会計方針は、米国で一般に公正妥当と認められる会計原則(以下「GAAP」
という。
)に準拠している。IFC の会計方針については、重要な会計方針の項および 2015 年 6 月 30 日終了年度
(以下「15 年度」という。
)の IFC 連結財務諸表(以下「15 年度連結財務諸表」という。
)の注記 A に詳細が
記載されている。
投資商品
2015 年 6 月 30 日現在、IFC の貸出金、持分投資、負債証券投資などの投融資ポートフォリオの
実行済残高(以下「実行済投資ポートフォリオ」という。
)は 364 億米ドル(以下「ドル」または「$」とす
る。
)であった。内訳は貸出金が 63.9%、持分投資が 29.1%、負債証券投資が 7.0%であった。実行済投資ポ
ートフォリオは国、地域、産業、セクター、プロジェクトの種類において分散されている。IFC は通常、プロ
ジェクトコストの 25%を超える貸出を自己勘定で提供しないため、信用リスクは他の民間セクターの投資家と
分け合っている。IFC の投資ポートフォリオは理事会に承認された多くの重要な財務方針に従っている。
流動資産
2015 年 6 月 30 日現在、IFC の流動資産ポートフォリオの公正価値残高(関連するデリバティブ
商品および有価証券貸借取引を控除後)は、2014 年 6 月 30 日現在の 337 億ドルから 395 億ドルへと増加した。
この流動資産残高と IBRD からの未引出借入金の合計は、IFC の未実行貸出金および持分投資約定の総額を十分
賄える金額となる。IFC では、流動性について外部調達した資金で最低限の水準を維持するという方針に基づ
き、(i)約定済み未実行無担保優先貸付の 100%、(ⅱ)約定済み保証の 30%、(ⅲ)約定済み顧客リスク管理商
品の 30%を合計した額の少なくとも 65%をカバーすることとしている。IFC では流動資産ポートフォリオを政
府、政府機関、国際機関、優良企業等が発行または無条件保証している高格付の利付証券に投資しており、そ
れらの投資対象には資産担保証券(以下「ABS」という。
)や不動産担保証券(以下「MBS」という。)
、定期預
2
金およびその他の銀行・金融機関による無条件の支払義務のある証券も含んでいる。これは、投資を多元分散
することで有利なリスク・リターン特性を確保するためである。IFC ではこれらの証券に伴う市場リスクを、
通貨スワップ、金利スワップおよび金融先物を中心としたデリバティブ商品を含む各種のヘッジ手段によって
管理している。
借入金
IFC は貸出金、持分投資、負債証券投資の資金のほぼ全額を国際資本市場で発行する債務証券によ
って調達しており、IBRD にはわずかな借入枠を有するのみである。IFC は借入れの通貨、国、資金源、返済期
間などを分散することによって、柔軟性とコスト効率を確保している。2015 年 6 月 30 日現在、IFC の借入残
高は、公正価値調整後で総額 513 億ドルである。さらに、IFC は市場からの借入金をドル建ての変動金利債務
に変換するために、多くの通貨スワップおよび金利スワップ取引を行っている。
エンタープライズリスク管理 持続可能な民間セクター開発業務を遂行していくうえで IFC はさまざまなリスク
を負っている。これらのリスクの積極的な管理は、IFC が財務上の安定を維持し開発効果を達成するうえでき
わめて重要である。
14 年度にエンタープライズリスク管理(以下「ERM」という。
)枠組みを採用することで、IFC は 15 年度に
おいてリスク管理実務を改善した。かかる努力には、IFC がその使命を達成する上でのリスク選好の明示、関
連する評価基準の特定、リスクエクスポージャーを監視し、必要な場合にはリスク軽減のために迅速な対応を
行うための基準値の設定が含まれる。IFC が 14 年度に採用した ERM 枠組みは業界における標準と概ね合致し、
以下を定義することにより IFC のリスク対応を支持するよう設計されている。すなわち、IFC の中核リスク管
理原則、異なるリスクの側面を管理する責任を共有する組織のさまざまな部署にわたってリスク管理の取組み
が調和し連携するように、組織全体にわたって使用される共通リスク分類法、組織の異なる部署が全体的なリ
スク管理にどのように貢献するかを区分し明確化するための、リスク管理に係る役割および責任の標準的な分
類、積極的なリスク管理を実践するために必要な構造、プロセスおよび方法である。
資本合計
2015 年 6 月 30 日現在、IFC の資本合計は 244 億ドルであった。資本合計のうち 206 億ドルが利
益剰余金で、そのうち 2 億ドルについては特定目的のために指定された剰余金である。IFC が報告する適正資
本とは「展開可能戦略資本」のことであり、これは、公社理事会の承認したリスクベース経済資本に基づいて
いる。2015 年 6 月 30 日現在、利用可能総資源に対する展開可能戦略資本の比率は 5.4%であった。利用可能
総資源とは、払込資本金、特定目的のために指定された利益剰余金を除く利益剰余金、および一般・個別貸倒
引当金の総額をいう。協定では、IFC に IBRD からの借入残高がある限り、負債(借入残高と保証残高の合計)
対自己資本(応募済み資本金と利益剰余金の合計)の比率で測定した IFC のレバレッジは 4.0 対 1 を超えては
ならないことになっている。2015 年 6 月 30 日現在、この比率は 2.6 対 1 であった。
上記に関する詳細は別のページに掲載されている補足情報
ならびに連結財務諸表および注記をご参照ください。
3
主な財務データ
下記の表は直近 5 会計年度の財務諸表から抜粋した財務データである(別段の記載のない限り金額単位はすべて百
万ドル)
。
6 月 30 日現在および 6 月 30 日終了年度
2015
2014
2013
2012
2011
$1,123
$1,065
$ 996
$ 993
$ 802
連結損益計算書抜粋:
貸出金および保証による収益、貸出金および関連デリバティブに係る実現損益
貸出金および保証による損失引当金(繰入)戻入 ···························
(171)
(88)
(243)
(117)
40
持分投資および関連デリバティブによる収益 ·····························
427
1,289
732
1,548
1,601
負債証券による収益ならびに負債証券および関連デリバティブに係る実現損益
132
89
69
71
67
流動資産のトレーディング取引による収益 ·······························
467
599
500
313
529
借入費用·····························································
(258)
(196)
(220)
(181)
(140)
その他収益 ···························································
その他費用 ···························································
非トレーディング取引による為替差(損)益 ·····························
505
(1,423)
53
公正価値で評価される非トレーディング金融商品に係る未実現純損益および
IDA 拠出金控除前利益 ·················································
855
公正価値で評価される非トレーディング金融商品に係る未実現純利益(損失)
(106)
IDA 拠出金控除前利益 ·················································
749
IDA 拠出金 ···························································
(340)
純利益·······························································
409
前項より減算:非支配会社持分に帰すべき純損失(利益) ·················
36
IFC に帰すべき純利益 ················································
$445
資産合計·····························································
関連デリバティブ控除後流動資産 ·······································
投資·································································
461
(1,418)
(19)
1,782
(43)
1,739
(251)
1,488
441
(1,401)
448
(1,207)
222
(981)
35
145
(33)
909
2,013
2,107
441
1,350
(340)
(355)
1,658
(330)
72
2,179
(600)
1,010
1,328
8
-
-
$1,483
$1,018
$1,328
$1,579
$87,548
$84,130
$77,525
$75,761
$68,490
39,475
33,738
31,237
29,721
24,517
37,578
38,176
34,677
31,438
29,934
(5)
1,579
連結貸借対照表抜粋:
実行済借入金残高(公正価値調整を含む) ·······························
51,265
49,481
44,869
44,665
38,211
資本合計·····························································
$24,426
$23,990
$22,275
$20,580
$20,279
未処分繰越利益剰余金 ·········································
$20,457
$20,002
$18,435
$17,373
$16,032
特定目的のために指定された利益剰余金 ·························
184
194
278
322
335
資本金 ·······················································
2,566
2,502
2,403
2,372
2,369
累積的その他包括利益(以下「AOCI」という。
) ··················
1,197
1,239
1,121
513
1,543
非支配会社持分 ···············································
22
53
38
-
-
平均資産利益率 (GAAP)b ···············································
0.5%
1.8%
1.3%
1.8%
2.4%
平均資産利益率 (非 GAAP)c ·············································
1.3%
1.8%
0.9%
2.8%
1.8%
平均資本利益率 (GAAP)d ···············································
1.8%
6.4%
4.8%
6.5%
8.2%
平均資本利益率 (非 GAAP) ·············································
4.6%
6.5%
3.1%
9.9%
6.0%
総流動性比率 f························································
81%
78%
77%
77%
83%
外部調達資金の流動性レベル ···········································
494%
359%
309%
327%
266%
負債比率 g ···························································
2.6:1
2.7:1
2.6:1
2.7:1
2.6:1
実行済貸出金ポートフォリオ総額に対する貸倒引当金総額比率 h ············
7.5%
6.9%
7.2%
6.6%
6.6%
内訳:
a
財務比率 :
e
4
資本測定:
必要総資源(単位:10 億ドル)i ········································
19.2
18.0
16.8
15.5
14.4
利用可能総資源(単位:10 億ドル)j ····································
22.6
21.6
20.5
19.2
17.9
戦略資本
k
···························································
3.4
3.6
3.8
3.7
3.6
展開可能戦略資本 l ····················································
1.1
1.4
1.7
1.8
1.8
利用可能総資源に対する展開可能戦略資本の比率 ·························
5%
7%
8%
9%
10%
a.
b.
c.
d.
e.
f.
g.
h.
i.
j.
k.
l.
以下のうち特定の財務比率については、投資に係る未実現損益、その他非トレーディング金融商品、AOCI
および連結した変動持分事業体(VIEs)による影響を除外して計算している。
当年度末と前年度末の総資産の平均に対する当年度の純利益の割合。
平均資産利益率とは、純利益(公正価値で評価される投資による未実現損益、連結した VIE に係る利益
および非トレーディング金融投資による純損益を除く。)の、実行済貸出金および持分投資(引当金控除
後)、
レポ取引控除後の流動資産ならびにその他の資産の当年度および前年度の平均の合計に対する割合
をいう。
当年度末と前年度末の資本合計(資本金の払込未済額を除く。
)の平均に対する当年度の純利益の割合。
平均資本利益率とは、年換算された純利益(公正価値で評価される投資による未実現損益、連結した VIE
に係る利益および非トレーディング金融投資による純損益を除く。)の、当年度および前年度の平均の払
込資本金および未処分利益剰余金(特定の未実現損益控除前、支出前の累積的指定部分を除く。)に対す
る割合をいう。
総流動性方針によれば、IFC は常に最低水準の流動性および IBRD からの契約済み未引出借入金を維持し、
これにより翌 3 年間の資金需要予測の少なくとも 45%(目標とする範囲は 65-95%である。)をカバーす
ることとしている。
レバレッジ比率(負債比率)とは、借入残高および保証残高の合計額と、払込資本金および未処分利益
剰余金の合計額(特定の目的のために指定された利益剰余金および一定の未実現損益を控除後)との比
率を意味する。
実行済貸出金ポートフォリオ総額に対する貸倒引当金総額比率とは、年度末の実行済貸出金ポートフォ
リオ総額に対する貸倒引当金の割合をいう。
IFC の AAA 格付を維持するために必要な最低資本。公社を横断する各アセットクラスそれぞれに関して
算定する要リスクベース経済資本の総計。
払込資本金、利益剰余金(特定目的のために指定された利益剰余金を除く。
)および一般・個別貸倒引当
金の合計。これが、IFC のリスクベース経済資本の枠組みの下で得られる利用可能な財源のレベルとな
る。
利用可能総資源から必要総資源を減じた額。
利用可能総資源の 90%から必要総資源を減じた額。
5
手取金の使途
「債券」の販売による純手取金は、通常、設立協定に従って IFC の業務全般に使用される。
IFC の財務構造
2015 年 6 月 30 日現在の総資産は 875 億ドル(2014 年 6 月 30 日現在は 841 億ドル)であるが、そのうち、流動資産
(関連のデリバティブ控除後)が 395 億ドル(2014 年 6 月 30 日現在は 337 億ドル)、投資ポートフォリオ(公正価値
その他の調整分を含み、貸倒引当金を控除後)が 376 億ドル(2014 年 6 月 30 日現在は 382 億ドル)であった。総資
産にはデリバティブ資産(公正価値)33 億ドルも含まれている(2014 年 6 月 30 日現在は 29 億ドル)
。
6
経営陣の討議と分析
2015 年 6 月 30 日現在および 6 月 30 日終了年度
エグゼクティブ・サマリー
国際金融公社(以下「IFC」または「公社」という。
)は、開発途上国の民間セクターに焦点を合わせた世界最大の
開発金融機関である。IFC は 1956 年に設立され、184 カ国の加盟国により所有されており、そのグループが共同で IFC
の方針を決定している。IFC は世界銀行グループ(以下「WBG」という。
)のメンバーである1が、IBRD、IDA、MIGA お
よび ICSID とは法律的に別個の独立した法人であり、独自の設立協定、株式資本、財務構造、経営陣および職員を有
している。IFC への加盟は IBRD の加盟国に限定されている。
WBG は、その活動の指針となるべき下記の 2 つの目標を立て、2013 年 4 月に総務会の承認を受けた。
・ 極度の貧困の根絶 – 1 日 1.25 ドル未満で生活する人々の割合を 2030 年までに 3%まで減少させる
・ 繁栄の共有の促進 – 各開発途上国における人口の 40%の最貧層の収入の増加を促す
IFC の全体的な戦略は、引き続き WBG の戦略および目標に寄与することに重点を置いている。
IFC は開発途上国の持続可能な成長を援助すべく、民間セクターへの投資、国際通貨市場における資本動員、およ
び企業・政府へのアドバイザリーサービスを実施している。IFC の主な投資商品は貸出金および持分投資、ならびに
少額の負債証券および信用保証のポートフォリオである。また、IFC は、さまざまな手段により、他の投資家および
貸手からの追加資金動員も積極的かつ直接的に行っている。その主な手段には、ローンパーティシペーション、パラ
レルローン、貸出債権売却、ストラクチャードファイナンスの IFC 以外の部分で中核資金動員の要件を満たすもの、
契約済 IFC イニシアティブの IFC 以外の部分、および IFC の完全子会社 IFC Asset Management Company LLC(以下「AMC」
という。
)が一括運用する契約済の資金の IFC の投資以外の部分などがある(以下総称して「中核資金動員」という。
)。
他の開発金融機関と異なり、IFC はそのエクスポージャーについて、受け入れ国政府による保証を受けていない。IFC
はその融資活動の資金のほぼすべてを、国際資本市場で発行する債務証券によって調達し、IBRD からの借入枠を小額
にとどめている。持分投資は資本(または自己資本)から調達される。
IFC は資本および資産・負債を、持分投資を除いて基本的にドル建てで表示し、またはドル建てにスワップしてい
るが、ドル以外の通貨建ての債務発行が増加しており、その手取金は同一通貨建てで投資されている。全般的に、IFC
は、各種通貨建てによる資産については、特徴を同じくする負債の通貨および金利と緊密に一致させることによって、
貸出金および流動資産から生じる為替リスクおよび金利リスクの最小化を図っている。また IFC では、非持分投資や
特定の融資に係る通貨および金利の残余リスクを、通常、通貨スワップおよび金利スワップならびにその他のデリバ
ティブ商品を利用して管理している。経営者の討議と分析には「~と予想する」、
「~と思われる」、
「~と期待する」
、
「~するつもりである」、
「~を計画している」といった将来に向けての表現が使われている。これらは現在の予測に
基づいた仮定や見積りを数多く含んでおり、そこにあるリスクや不確実性は IFC が制御できるものではない。したが
って、将来の実際の結果は、現時点の予測と大きく異なる可能性がある。
1
世界銀行グループの他の機関は、国際復興開発銀行(以下「IBRD」という。
)
、国際開発協会(以下「IDA」という。)
、多数国間
投資保証機関(以下「MIGA」という。
)および投資紛争解決国際センター(以下「ICSID」という。
)である。
7
IFC の連結財務諸表作成基準
IFC の会計方針は、米国で一般に公正妥当と認められる会計原則(以下「GAAP」という。
)に準拠している。IFC の
会計方針については、第 6 項「重要な会計方針」および 2015 年 6 月 30 日終了年度の IFC 連結財務諸表(以下「15 年
度連結財務諸表」という。
)の注記 A に詳細が記載されている。
経営陣は特定目的指定の対象となる収入(以下「割当利益」という。
)(非 GAAP 測定指標による)を、利益剰余金
の指定の基礎として利用している。一般的に割当利益は、純利益から持分投資に係る未実現純損益および公正価値で
評価される非トレーディング金融商品に係る未実現純損益を控除した金額、AMC を除く連結法人からの利益、ならび
に過年度の指定に関して純利益に計上された費用から構成される。
財務状況の概略
毎年度、IFC の純利益は、業績の変動をもたらしうる多数の要素に影響される。2015 年 6 月 30 日終了年度(15 年
度)において新興国の株式市場は世界的に不安定であったが、15 年度を通じて全般的に下落した。ヨーロッパおよび
中央アジアや中南米およびカリブ海諸国のいくつかの国における経済状況の悪化、IFC が投資したほとんどの通貨の
IFC の機能通貨であるドルに対する値下がり、ならびに原油価格の低下トレンドも、15 年度の財務成績、とりわけ IFC
の持分投資ポートフォリオに悪影響を及ぼした。
新興市場のマクロ環境および投資に係る推移の複合的原因により、IFC は一時的でない持分投資および負債証券の
減損の増加、持分投資に係る未実現損失の増加ならびに貸倒引当金の増加を計上し、これらが流動資産からの収益の
減少と相まって、2014 年 6 月 30 日終了年度(以下「14 年度」という。)と比較して 15 年度における IFC の財務成績
の主原因となった。しかし、IFC は数少ない持分処分案件において実現利益を増加させることができた。これらは 15
年度の第 1 四半期の間に集中して行われた 2 件の処分により実現したものである。
15 年度の公正価値で評価される非トレーディング金融商品に係る未実現純損益および IDA 拠出金控除前の利益は
855 百万ドルであったが、これに対して 14 年度は 1,782 百万ドル、2013 年 6 月 30 日終了年度(以下「13 年度」とい
う。
)は 909 百万ドルであった。
割当利益は 1,327 百万ドルであったが、これは 14 年度の額(1,614 百万ドル)より 18%少ない額であった。
公正価値で評価される非トレーディング金融商品に係る未実現純損益および IDA 拠出金控除前の利益が 13 年度から
14 年度、15 年度へと 2 期間連続して減少している主な理由は以下のとおりである。
(単位:百万ドル)
増(減)
15 年度対 14 年度比較
持分投資および負債証券に係る一時的でない減損の増加··········································· $
(484)
持分投資および関連デリバティブに係る利益の減少(純額) ·······································
(383)
流動資産のトレーディング取引による収益の減少 ················································
(132)
貸出金、保証およびその他未収金による損失引当金繰入の増加 ·····································
(83)
貸出金および保証による収益、貸出金および関連デリバティブに係る実現損益の増加 ·················
58
非トレーディング取引による為替差益の増加 ····················································
72
その他(純額) ··············································································
25
公正価値で評価される非トレーディング金融商品に係る未実現純損益および
$
IDA拠出金控除前の利益の差引合計 ···························································
8
(927)
増(減)
14 年度対 13 年度比較
持分投資および関連デリバティブに係る利益の増加(純額) ······································· $
336
持分投資および負債証券に係る一時的でない減損の減少···········································
206
貸出金、保証およびその他未収金による損失引当金繰入の減少 ·····································
155
流動資産のトレーディング取引による収益の増加
99
その他(純額)
77
公正価値で評価される非トレーディング金融商品に係る未実現純損益および
$
IDA拠出金控除前の利益の差引合計 ···························································
873
公正価値で評価される非トレーディング金融商品に係る未実現純損失は、15 年度は 106 百万ドル(14 年度は 43 百
万ドルの未実現純損失、13 年度は 441 百万ドルの純利益)となり、IDA 拠出金控除前の利益は、15 年度は 749 百万ド
ルとなった(14 年度は 1,739 百万ドル、13 年度は 1,350 百万ドル)。IDA 拠出金は、15 年度は 340 百万ドル(14 年
度は 251 百万ドル、13 年度は 340 百万ドル)となった。非支配会社持分に帰すべき純損失は、15 年度は 36 百万ドル
(14 年度は 5 百万ドルの利益、13 年度は 8 百万ドルの損失)であった。
その結果、IFC に帰すべき純利益は、15 年度は合計 445 百万ドルとなった(14 年度は 1,483 百万ドル、13 年度は
1,018 百万ドル)。
財務状況の詳細については第 7 項「経営成績」の項で述べる。
顧客関連業務
事業の概要
IFC では開発途上国における持続可能な経済発展を促すべく、国際金融市場の資本を動員して途上国の民間セクタ
ー向けに資金を提供するとともに、民間企業および政府に対する助言業務も行っている。
すべての新規投資プロジェクトに対して、IFC では持続可能な開発において予測される影響を明確化し、また、IFC
はプロジェクトが進行するに従って、開発により実現した利益の質的評価を行っている。
IFC の戦略課題は世界銀行グループが取り組む世界的優先課題と一致している。
IFC は、開発途上国の顧客に対して投資業務、助言業務およびアセットマネジメントサービスを提供している。
投資業務
IFC の投資活動は通常、開発途上加盟国が対象である。設立協定では IFC の投資先は生産的な民間企業であること
が要件となっている。ただし、部分的に公共セクターに所有されている場合でも、当該企業が現地の商法および会社
法の下で設立されており、受入れ国政府のコントロールを受けずに市場ベースの収益性を基準とした運営が行われて
いる、あるいは部分的または全面的な民営化が予定されている企業であれば適格な投資対象となる。
IFC は顧客にさまざまな金融商品および金融サービスを提供することによって、持続可能な事業の促進、起業の奨
励および IFC にしかできない資源動員を行っている。IFC の金融商品は各プロジェクトのニーズに適合するように調
整されている。投資商品には、貸出金、持分投資、貿易金融、ローンパーティシペーション、ストラクチャードファ
イナンス、顧客向けリスク管理サービス、混合融資などがある。
9
IFC の投資プロジェクトのサイクルは、次の段階に大別される。
 事業開発
 構想調査
 評価(デューデリジェンス)
 投資審査
 交渉
 公示
 理事会による審査・承認
 契約
 融資の実行
 プロジェクトの監督および開発の結果を記録
 評価
 クロージング
IFC はプロジェクトの成果、契約義務および IFC の内部方針・手続の遵守状況について慎重に監督、監視を行って
いる。
投資商品
貸出金 ― IFC は、プロジェクトや企業に対して融資を行っており、その期間は通常 7~12 年である。また、仲介
銀行、リース会社およびその他の貸出業務を行う金融機関に対する融資も行っている。IFC の貸出金は、従来は主要
国通貨で占めていたが、現地通貨による商品構成に重点をおくようになった。IFC は、長期的な現地通貨ソリューシ
ョンを提供し、IFC の現地通貨による貸出金、顧客が既存または新規の外貨による負債を顧客の現地通貨に変換する
ヘッジを可能にするデリバティブ、および顧客がその他の資金源から現地通貨により借り入れることを可能にするス
トラクチャードファイナンスを通じて、会社の現地資本市場への参入を助けている。まとめると、現地通貨による融
資はデリバティブ市場の存在によって可能となっている。現地通貨とドルの長期のスワップ市場の存在が、IFC がそ
の現地通貨による貸出金を経済的にヘッジして、現地通貨に結びついたリスク管理商品を提供することを可能として
いる。
貸出金は主に次のような形をとっている。
 期間 ― 通常は期間 7 年から 12 年までの割賦返済であるが、20 年満期のものもある。
 通貨 ― 主要な交換可能通貨が主で、ドルが最も多く、ユーロがこれに続くが、現地通貨建て貸出金ポートフォ
リオが増加傾向にある。
 金利 ― 通常は変動金利(または固定金利と変動金利へのスワップ)
。
 プライシング ― 市場環境、カントリーリスク、プロジェクトリスクなどの要素を反映する。
IFC の貸出金は従来から主要通貨で組まれてきた。これは顧客の要請もあるが、IFC としても、主要通貨であれば通
貨スワップや先物為替予約などによるヘッジを経済的に行えるからである。固定利付貸出金やドル以外の通貨による
貸出金は通常、通貨スワップか金利スワップ、またはその両方を用いてドル建ての変動利付貸出金に変換することに
より、経済的にヘッジされている。
10
持分投資 ― IFC は持分投資により、民間企業が必要とする発展的支援および長期的に拡大する資本を提供してい
る。持分投資は株式の直接保有およびプライベート・エクイティファンドを通じて行っている。持分投資における IFC
の持分は通常 5~20%である。IFC の持分投資は一般的に、普通株式または、発行者による強制償還もしくは IFC から
発行者に強制的に売り戻すことができない優先株式の形で行い、通常は投資先の国の通貨建てである。また、IFC で
は持分投資の管理において、プットオプションやコールオプション、利益参加型融資、株式転換型融資、ワラント債
その他さまざまな金融商品も利用している。
負債証券 ―一般的に、無記名式または記名式で発行する債券、証券化した債務(たとえば資産担保証券(以下「ABS」
という。
)、不動産担保証券(以下「MBS」という。)およびその他の債務担保証券)および、発行者による強制償還ま
たは IFC から発行者への強制的な売り戻しが可能な優先株式の形をとっている。
保証および部分信用保証 ― IFC は、顧客の債券および/または貸出金に対する債務をリスク分担により部分的に
信用保証することも行っている。保証の対象は顧客の債券と貿易債務で、商業リスクおよび非商業リスクも保証して
いる。現地通貨による保証も行っているが、保証を履行する際には顧客は IFC に対する弁済を、通常ドルで行わねば
ならないこととなっている。
顧客向けリスク管理サービス ― IFC は開発途上国の顧客向けに、長期のリスク管理商品を提供している。IFC は顧
客に対し、金利、為替、コモディティ価格のエクスポージャーをヘッジするデリバティブ商品を提供している。また、
開発途上国の顧客がリスク管理商品を利用できるよう、デリバティブ商品のマーケットメーカーへの取次ぎを行い、
顧客と市場の信用ギャップを埋めるようにしている。
貸付金資金動員 ― IFC は、開発途上加盟国の民間セクターへの融資を動員することにより開発を促す。IFC は、ロ
ーンパーティシペーション・プログラム、パラレルローン、および、14 年度からは管理共同貸付ポートフォリオ・プ
ログラム(以下「MCPP」という。)により資金を動員している。
ローンパーティシペーション: 「B ローン・プログラム」によって、IFC は商業銀行およびその他金融機関に対し
て IFC の融資プロジェクトに貸付を行う機会を提供している。これら貸付が、開発途上国における民間セクターの追
加的な資金を動員して、これにより公社の開発における影響を拡大しようという、IFC の取組みの重要な部分である。
B ローン・プログラムによって、IFC が名義上は貸付人に留まりつつ、金融機関がプロジェクトにおける商業上の信用
リスクを完全に共有する。IFC が B ローンに参加する場合、IFC は常に自己勘定分(以下「A ローン」という。
)を維
持している。A ローン・パーティシペーション(以下「ALP」という。
)は、IFC が顧客、国またはセクターに対するリ
スクエクスポージャーを縮減するために用いるエクスポージャー管理ツールである。ALP は、IFC の A ローンを商業銀
行またはその他金融機関に部分的に売却することで設定し、B ローンと大部分同じ方法で管理される。IFC が名義上は
貸付人に留まり、ALP の参加者は一切のプロジェクトリスクを IFC と共有する。
パラレルローン: IFC は、既存の動員プラットフォーム、ディール組成の専門知識および世界規模の存在感を活か
してアレンジャーとして行為し(また、事務代理人としても行為することができる。)
、パラレル・レンダーと協力し
ながら、投資機会を発掘し、デュー・デリジェンスを実施し、貸付関連書類について交渉を行う。
MCPP: MCPP は機関投資家に対し、IFC の将来の貸出金ポートフォリオに受動的に参加する機会を提供する。投資家
はポートフォリオベースで資金を提供し、IFC はこれを IFC の戦略および手続に従って個別の投資に展開することが
できる。MCPP により、IFC はその共同貸付パートナーの基盤を拡大し、
「ディール・バイ・ディール」ベースでは投資
を行うことができない投資家をこれに含めることができる。
11
貿易およびサプライチェーン金融 ― IFC では、承認済み金融機関の貿易関連支払義務を保証するグローバル・ト
レード・ファイナンス・プログラム(以下「GTFP」という。
)を実施している。これとは別に、開発途上国における貿
易に対して流動性支援を行う世界貿易流動性プログラム(以下「GTLP」という。)および重要コモディティ金融プログ
ラム(以下「CCFP」という。)を実施している。IFC ではこのほかにも、世界貿易サプライヤー金融(以下「GTSF」と
いう。)、世界倉庫金融プログラム、運転資金およびシステミック・ソリューションならびに世界貿易仕組型取引な
ど、数多くの貿易およびサプライチェーン金融関連プログラムを開始している。
ストラクチャードファイナンス ― IFC は、他の方法による融資が難しい顧客に対してはストラクチャード商品や
証券化商品を利用することによって資金調達の多様化、返済期限の延長および特定通貨による資金調達を援助してい
る。こうした商品には部分信用保証、仕組型の流動性ファシリティ、ポートフォリオリスクの移転、証券化、イスラ
ム金融などがある。
混合融資 ― IFC では、譲許的融資(主に提携ドナーによる)と IFC の資源とを組み合わせて、一定のプロジェク
トに対する資金援助を行っている。
投資プログラム
投資契約
15 年度において、長期資金融資は 14 年度の 9,967 百万ドルに対して 10,539 百万ドルとなり、中核資金動員は 14
年度の 5,143 百万ドルに対して 7,133 百万ドルとなり、合計で 17%増加した。加えて、短期資金融資の残高平均は、
2015 年 6 月 30 日現在では 2,837 百万ドル、2014 年 6 月 30 日現在では 3,017 百万ドルであった。
中核資金動員
中核資金動員とは、IFC が直接関与することにより、顧客が IFC 以外の事業体からの資金調達を可能にすることで
ある。IFC 自体はどのプロジェクトにおいても通常、コストの 25%までという一部のみの資金提供を行うため、IFC
の金融プロジェクトにはすべて、他の融資協力者が必要となる。そのため、IFC では、民間セクター向けの資金調達
をさまざまな方法(下記の表に概要を記載する。
)を通じて、他の事業体から資金を動員している。
15 年度および 14 年度の長期資金融資および中核資金動員 (単位:百万ドル)
15 年度
長期資金融資および中核資金動員合計2 ·······················································
長期資金融資
貸出金 ··················································································
持分投資 ················································································
保証 ····················································································
顧客リスク管理 ·······································································
長期資金融資合計 ············································································
中核資金動員
ローンパーティシペーション、パラレルローンおよびその他の資金動員
ローンパーティシペーション ·····························································
パラレルローン·········································································
協調融資運用ポートフォリオ・プログラム ·················································
その他の資金動員·······································································
ローンパーティシペーション、パラレルローンおよびその他の資金動員合計···················
2
負債証券の契約は、その主たる特徴に応じて貸出金または持分投資に分類されている。
12
14 年度
$ 17,672
$ 15,110
$
7,019
3,187
273
60
$ 10,539
$
$
$
$
1,853
1,522
818
881
5,074
$
$
7,327
2,324
286
30
9,967
2,043
730
320
606
3,699
AMC
劣後債資本増強ファンド ·································································
ALAC ファンド ·········································································
カタリストファンド·····································································
株式資本増強ファンド ···································································
ロシア銀行資本増強ファンド ·····························································
グローバル・インフラストラクチャー・ファンド ···········································
GIF 共同投資 ···········································································
AMC 合計 ·············································································
その他のイニシアティブ
世界貿易流動性プログラムおよびクリティカル・コモディティ・ファイナンスプログラム ·······
官民パートナーシップ ···································································
その他のイニシアティブ合計 ······························································
中核資金動員合計 ············································································
$
$
$
$
$
150
86
66
3
—
226
230
761
$
750
548
1,298
7,133
$
$
$
$
516
84
75
7
2
146
—
830
500
114
614
5,143
投資実行額
15 年度において IFC は、9,258 百万ドル(14 年度は 8,899 百万ドル)を自己勘定により実行しており、その内訳は
貸出金が 6,359 百万ドル(14 年度は 6,702 百万ドル)
、持分投資が 2,299 百万ドル(14 年度は 1,528 百万ドル)
、負債
証券が 600 百万ドル(14 年度は 669 百万ドル)である。
実行済投資ポートフォリオ
2015 年 6 月 30 日現在における IFC の実行済投資ポートフォリオ(非 GAAP の実績による測定)は、合計 36,401 百
万ドル(2014 年 6 月 30 日現在は 36,622 百万ドル)であり、その内訳は実行済貸出金ポートフォリオが 23,252 百万
ドル(2014 年 6 月 30 日現在は 24,407 百万ドル)、実行済持分投資ポートフォリオが 10,581 百万ドル(2014 年 6 月
30 日現在は 9,741 百万ドル)、実行済負債証券ポートフォリオが 2,568 百万ドル(2014 年 6 月 30 日現在は 2,474 百万
ドル)である。
IFC の実行済投資ポートフォリオは、産業別および地域別に分散している。
IFC の投資ポートフォリオの簿価の構成は次のとおりである:
(i)実行済投資ポートフォリオ、(ii)貸倒引当金、
(iii)未償却の正味繰延ローン取組手数料等、(iv)その他の資産またはデリバティブ資産に別途分類されている関連金
融商品として計上された実行済金額、(v)連結されている変動持分事業体による持分投資に係る未実現損益、(vi)公正
価値で売却可能資産に分類された投資に係る未実現損益、および(vii)投資に係る未実現損益。
13
下の図は 2015 年 6 月 30 日現在および 2014 年 6 月 30 日現在における実行済投資ポートフォリオの地域別および産
業別分布を示している。
実行済投資ポートフォリオ地域別分布
15 年度
14 年度
中南米・カリブ海諸国
中南米・カリブ海諸国
欧州・中央アジア
欧州・中央アジア
アジア
アジア
中東・北アフリカ
中東・北アフリカ
サハラ以南アフリカ
サハラ以南アフリカ
その他の地域
その他の地域
実行済投資ポートフォリオ産業別分布
金融・保険
電力
集団投資ビークル
運輸・倉庫
化学品
石油・ガス・鉱業
農業・林業
情報
非金属鉱業製品製造
一般民生用工業製品
食料・飲料
健康・医療
建築・不動産
教育
卸・小売業
公共事業
宿泊・観光業
地金製品
紙・パルプ
繊維・アパレル・皮革
その他
14 年度
15 年度
貸出金
2015 年 6 月 30 日現在、貸出金は、実行済投資ポートフォリオの 64%(2014 年 6 月 30 日現在は 67%)を占め、投
資ポートフォリオの簿価の 57%(2014 年 6 月 30 日現在は 59%)を占めている。
IFC の実行済貸出金ポートフォリオは、2015 年 6 月 30 日現在で合計 23,252 百万ドル
(2014 年 6 月 30 日現在は 24,407
百万ドル)であった。2015 年 6 月 30 日現在の IFC 連結貸借対照表における貸出金ポートフォリオの簿価(実行済貸
出金ポートフォリオに IFC の 15 年度連結財務諸表の注記 D の調整額を加えたもの)は、5.5%減少して 21,336 百万ド
ル(2014 年 6 月 30 日現在は 22,589 百万ドル)となった。
14
貸出金は従来、先進工業国の通貨によるものが一般的であったが、IFC では現地通貨建て商品が増えつつある。IFC
は、現地通貨建て貸出金のキャッシュフローをスワップ市場を通じてドル建てに変換するヘッジが経済的に行える場
合、または現地の債券市場での資金調達が可能な場合には、通常、現地通貨建て商品を他の通貨で提供している。2015
年 6 月 30 日現在の実行済貸出金ポートフォリオのうち 3,121 百万ドルは中国人民元、インドルピー、メキシコペソ、
ブラジルレアル、ロシアルーブル、南アフリカランド、フィリピンペソ、インドネシアルピア、ペルーヌエボ・ソル、
コロンビアペソ、カザフスタンテンゲ、トルコリラおよびルーマニアレイによる貸出金である(2014 年 6 月 30 日現
在は 2,970 百万ドル)
。IFC では他にも、チュニジアディナール、パラグアイグアラニー、ルワンダフラン、ザンビア
クワチャなど数多くのフロンティア市場の通貨による貸出を行っている。2015 年 6 月 30 日現在の IFC の実行済貸出
金ポートフォリオの 75%(2014 年 6 月 30 日現在は 74%)がドル建てである。
2015 年 6 月 30 日現在および 2014 年 6 月 30 日現在における実行済貸出金ポートフォリオの通貨ポジションは次の
とおりである。
実行済貸出金ポートフォリオの通貨ポジション(単位:百万ドル)
ドル
ユーロ
中国人民元
インドルピー
ブラジルレアル
インドネシアルピア
メキシコペソ
ロシアループル
フィリピンペソ
南アフリカランド
ペルーヌエボ・ソル
コロンピアペソ
カザフスタンテンゲ
その他
14 年度
15 年度
持分投資
IFC の実行済持分投資ポートフォリオは 2015 年 6 月 30 日現在で合計 10,581 百万ドルで、2014 年 6 月 30 日現在の
9,741 百万ドルから 9%増加している。
2015 年 6 月 30 日現在、持分投資は、IFC の実行済投資ポートフォリオの 29%(2014 年 6 月 30 日現在は 27%)、お
よび投資ポートフォリオの簿価の 36%(2014 年 6 月 30 日現在は 34%)を占めている。
IFC の持分投資ポートフォリオの 2015 年 6 月 30 日現在における簿価(実行済持分投資ポートフォリオに IFC の 15
年度連結財務諸表の注記 D の調整額を加えたもの)は 13,503 百万ドルで、2014 年 6 月 30 日現在の 12,988 百万ドル
から 4%増加している。
15
IFC の持分投資ポートフォリオ3の公正価値は 2015 年 6 月 30 日現在で 15,721 百万ドルであった(2014 年 6 月 30 日
現在は 15,985 百万ドル)
。
負債証券
IFC の実行済負債証券ポートフォリオは 2015 年 6 月 30 日現在で 2,568 百万ドルであった(2014 年 6 月 30 日現在は
2,474 百万ドル)。
2015 年 6 月 30 日現在、負債証券は、IFC の実行済投資ポートフォリオの 7%(2014 年 6 月 30 日現在も 7%)、およ
び投資ポートフォリオの簿価の 7%(2014 年 6 月 30 日現在も 7%)を占めている。
IFC の負債証券ポートフォリオの 2015 年 6 月 30 日現在における簿価(実行済負債証券ポートフォリオに IFC の 15
年度連結財務諸表の注記 D の調整額を加えたもの)は 2,739 百万ドルであった(2014 年 6 月 30 日現在は 2,599 百万
ドル)。
2015 年 6 月 30 日終了年度および 2014 年 6 月 30 日終了年度の IFC の投資ポートフォリオに関する追加情報は IFC の
15 年度連結財務諸表の注記 B、D、E、F、G、H、P、R を参照のこと。
保証および部分信用保証
IFC は、顧客の債券および/または貸出金に対する債務をリスク分担により部分的に信用保証することも行ってい
る。保証の対象は顧客の債券と貿易債務で、商業リスクおよび非商業リスクも保証している。現地通貨による保証も
行っているが、保証を履行する際には顧客は IFC に対する弁済を、通常ドルで行わねばならないこととなっている。
保証料は IFC の貸出金利方針に準じている。
保証残高(未履行)は 2015 年 6 月 30 日現在で 3,168 百万ドルであった(2014 年 6 月 30 日現在は 3,679 百万ドル)。
助言業務
持続的な発展を遂げるためには融資以上のものが必要となる。IFC の実績から、助言が民間セクターによる投資を
開放し、事業の拡大と雇用の創出を支援し、これにより世界銀行グループによる貧困の廃絶と繁栄の共有の促進への
尽力を高める上で強力な役割を演じることができることは明らかである。IFC が助言活動を強化し続ける理由がここ
にある。本年度において、IFC が IFC および世界銀行のその他の分野と助言業務をより緊密に連携する措置をとった
ことにより、IFC の顧客は世界銀行グループを通じて最大限利用できる能力から恩恵を受けることができる。助言活
動は、IFC が顧客に提供する幅広いソリューションとしてますます取り入れられる。
15 年度中、IFC は発展において欠くことのできない数多くの分野において助言を行っている。
金融部門:IFC は、個人ならびにマイクロ企業、小規模企業および中規模企業向けの、金融サービスの利用可能性
および価格設定の改善を支援する。IFC は金融機関と連携して、それらの機関のリスク管理を強化し、SME(中小企業)
、
住宅金融および持続可能なエネルギーといった分野の商品を多様化する。ファイナンス・アンド・マーケッツ・グロ
ーバル・プラクティスにおいて世界銀行グループの統合チームの一端として、IFC は、金融への普遍的なアクセスを
促進し、資本市場を強化し、かつ、雇用の創出と持続的な成長をもたらす新しい方法を会社に提供する信用調査機関
および担保登記所を設置することにより、金融市場の発展も支援する。
3
IFC の連結貸借対照表上負債証券に分類される「持分に類似した」証券および持分関連オプションを含む。
16
投資環境:貿易・競争力に関するグローバル・プラクティスにおける世界銀行グループの統合チームの一端として、
IFC は、中央および地方政府が事業環境を改善し、投資を招致および維持し、成長、競争市場および雇用の創出を促
進するような改革を実施することを支援する。
官民パートナーシップ:IFC は、各国政府に対し、インフラ整備や基礎的公共事業における官民パートナーシップの
設計および実施を支援する。IFC の助言は、電力、水、健康および教育の一般への開放を拡大するものである。
農業関連ビジネス:IFC は、農業関連ビジネスにおける顧客の生産性および水準を向上させる支援を行っている。IFC
は効率の良いバリューチェーンの設計および食料安全保障の促進に注力しており、これによってすべてのステークホ
ルダーに価値の高い社会的、経済的および環境的利益を提供している。
エネルギーおよび資源効率:IFC は、顧客がバリューチェーンにおいてクリーンで手頃であり、競争力があり、かつ、
高品質なエネルギー・ソリューションを展開できるように支援する。IFC は、再生可能エネルギーの生産を増やし、
人々が最新のエネルギー・サービスをさらに享受できるように、商業市場の発展を加速させる。
また、IFC は、複数の産業をまたいで展開できる助言ソリューションを提供する。これには、企業に対するコーポ
レートガバナンス改善への支援、ならびに顧客による現地サプライヤーおよび資源の一層の活用を支援する一方で、
大手企業のサプライチェーンとして営業している小規模企業の稼働力を確立することで現地での機会を増やすことが
含まれている。IFC の助言活動の中心は、今後の成長が期待される特定の顧客セグメント、従業員、企業のリーダー
または起業家およびサプライヤーとして、女性が生み出しうる価値を顧客に認識させて投資させることにより、確固
たる包括的な事業パフォーマンスを構築できるように顧客を支援することである。
2015 年 6 月 30 日現在、IFC の助言業務ポートフォリオ4は合計で 1,203 百万ドルである。15 年度の顧客に対するプ
ログラム支出は 202.1 百万ドルとなり、IDA(65%)および FCS(20%)といった戦略上の重点分野に特に集中してい
た。このような特定分野への集中は翌年以降も継続される予定である。
IFC 助言業務ポートフォリオ-2015 年 6 月 30 日終了年度の地域別プログラム支出
地域別 IFC 助言業務プログラム
4
百万ドル
%
サハラ以南アフリカ .......................................................................................................................................
$
53.6
27
東アジアおよび太平洋 ................................................................................................................................... 38.5
19
ヨーロッパおよび中央アジア........................................................................................................................ 33.7
17
南アジア ........................................................................................................................................................... 22.9
11
中南米およびカリブ海諸国 ........................................................................................................................... 21.8
11
中東および北アフリカ ................................................................................................................................... 20.5
10
グローバル ....................................................................................................................................................... 11.1
5
支出合計 ................................................................................................................................................................
$
202.1
100
IFC 助言業務ポートフォリオは、現行の助言プロジェクトにより IFC が運用する資金の合計である。
17
IFC 助言業務ポートフォリオ-2015 年 6 月 30 日終了年度の分野別プログラム支出
分野別 IFC 助言業務プログラム
百万ドル
%
金融部門 ............................................................................................................................................................
$
64.0
32
投資環境 ............................................................................................................................................................ 50.5
25
官民パートナーシップ .................................................................................................................................... 30.9
15
エネルギーおよび資源効率 ............................................................................................................................ 16.9
8
農業関連ビジネス ............................................................................................................................................ 11.9
6
産業横断分野 .................................................................................................................................................... 27.9
14
支出合計 .................................................................................................................................................................
$
202.1
100
15 年度のプログラムの成果はプラスであった。プロジェクトの開発効果に対する評価は 77%の成功率に達し、顧客
満足度は 91%に達した。
アセットマネジメント会社
AMC は IFC の完全子会社である。同社は発展途上市場およびフロンティア市場に第三者資金および IFC の資金を投
下し、IFC の専門知識・技術によって強力な投資収益を達成する。これにより、外部投資家には利益がもたらされ、
投資対象国には発展に向けてのプラスの効果がもたらされる。AMC が運用管理するこうしたファンドの資金提供元に
は、政府系投資ファンド、国民年金基金、国際開発機関(多国間および 2 国間)
、政府系開発機関および国際金融機関
などがある。AMC により、開発途上国の生産的な民間企業のために IFC が動員する資本原資はさらに拡大する。
2015 年 6 月 30 日現在、AMC が運用中のファンドは、
 IFC Capitalization (Equity) Fund, L.P.(以下「株式資本増強ファンド」という。
)
 IFC Capitalization (Subordinated Debt) Fund, L.P.(以下「劣後債資本増強ファンド」という。)
 IFC African, Latin American and Caribbean Fund, LP (以下「ALAC ファンド」という。
)
 Africa Capitalization Fund, Ltd.(以下「アフリカ資本増強ファンド」という。)
 IFC Russian Bank Capitalization Fund, LP(以下「ロシア銀行資本増強ファンド」という。)
 IFC Catalyst Fund, LP、IFC Catalyst Fund (UK), LP および IFC Catalyst Fund (Japan), LP(以下、この 3
つのファンドを「カタリストファンド」と総称する。
)
 IFC Global Infrastructure Fund, LP(以下「グローバル・インフラストラクチャー・ファンド」
)という。
)
 China-Mexico Fund, LP(以下「チャイナ・メキシコファンド」という。)
 IFC Financial Institutions Growth Fund, LP(以下「FIG ファンド」という。
)
 IFC Global Emerging Markets Fund of Funds, LP および IFC Global Emerging Markets Fund of Funds (Japan
Parallel), LP(以下、この 2 つのファンドを「GEM FOF」と総称する。
)
の 10 種類で、運用資産総額は 85 億ドルであった(2014 年 6 月 30 日現在は、7 種類、64 億ドル)
。
上記のうち、株式資本増強ファンドおよび劣後債資本増強ファンドについては「グローバル資本増強ファンド」と
総称している。
グローバル資本増強ファンドはいずれも 2009 年 6 月 30 日終了年度の創設で、新興市場における主要銀行を計画的
に強化することを支援している。
18
ALAC ファンドは 10 年度の創設で、サハラ以南アフリカ、中南米、カリブ海諸国におけるさまざまなセクターを対
象とした持分投資を行っている。
アフリカ資本増強ファンドは 10 年度の創設で、北アフリカおよびサハラ以南アフリカにおける主要商業銀行に対し
計画的に出資していくためのものである。
ロシア銀行資本増強ファンドは 12 年度の創設で、ロシアにおいて(i)民間で所有され管理されていること、(ii)国
が所有していること、または(iii)国の管理下にあり将来民営化が確実であることのいずれかを満たす、中規模の商業
銀行に対して投資を行うものである。
カタリストファンドは 13 年度の創設で、新興市場における環境・資源効率重視型のプライベート・エクイティファ
ンドから投資対象先を選別している。
グローバル・インフラストラクチャー・ファンドは 13 年度の創設で、世界中の新興市場において、インフラストラ
クチャー部門への持分および持分関連投資を重点的に行っている。
3 つの新ファンドは 15 年度に創設された。チャイナ・メキシコファンドは、メキシコにおいてすべての部門で持分
および持分関連投資を中心に行うために 2014 年 12 月に創設された。FIG ファンドは、世界中の新興市場で金融機関
の持分および持分関連投資で運用するために 2015 年 3 月に創設された。GEM FOF は、世界中の新興市場において主に
投資ファンドのポートフォリオに投資するために 2015 年 6 月に創設された。
2015 年 6 月 30 日現在および 2014 年 6 月 30 日現在の AMC が運用する資金の状況は次のとおりである(別段の表示
がない限り金額単位は百万ドル)。
2015 年 6 月 30 日現在
2015 年 6 月 30 日終了年度
投資家から
ファンドへの払込
運用資産総額
IFC からの
資産
合計
$
775
その他の投資
家からの資産
$
500
ファンドによる
払込
IFC からの
資金
その他の投資
家からの資金
$
$
株式資本増強ファンド ................ $
1,275
6
劣後債資本増強ファンド ..............
1,725
225
1,500
29
ALAC ファンド .......................
1,000
200
800
29
アフリカ資本増強ファンド ............
182
—
182
ロシア銀行資本増強ファンド ..........
550
250
300
カタリストファンド ..................
418
75
4
$
ファンドによる
払込(件数)*
8
1
196
254
4
112
94
7
—
3
—
—
5
5
—
—
343
9
41
36
46
グローバル・インフラストラクチャー・
ファンド**......................
1,430
200
1,230
27
298
293
7
チャイナ・メキシコファンド .........
1,200
—
1,200
—
6
—
—
FIG ファンド .......................
344
150
194
—
—
—
—
GEM FOF ...........................
406
81
325
—
—
—
—
685
65
合計 ................................ $
8,530
$
1,956
$
6,574
19
$
105
$
665
$
2014 年 6 月 30 日現在
2014 年 6 月 30 日終了年度
投資家から
ファンドへの払込
運用資産総額
IFC からの
資産
合計
株式資本増強ファンド ...............
$
1,275
$
775
その他の投資
家からの資産
$
500
ファンドによる
払込
IFC からの
資金
その他の投資
家からの資金
$
$
8
5
$
ファンドによる
払込(件数)*
21
3
劣後債資本増強ファンド .............
1,725
225
1,500
77
514
544
8
ALAC ファンド ......................
1,000
200
800
21
83
89
9
アフリカ資本増強ファンド ...........
182
—
182
—
3
—
—
ロシア銀行資本増強ファンド .........
550
250
300
9
10
4
2
カタリストファンド .................
418
75
343
3
15
12
17
ファンド .......................
1,200
200
1,000
32
165
172
6
チャイナ・メキシコファンド .........
—
—
—
—
—
—
—
FIG ファンド .......................
—
—
—
—
—
—
—
GEM FOF ...........................
—
—
—
—
—
—
—
842
45
グローバル・インフラストラクチャー・
合計 ...............................
*
**
$
6,350
$
1,725
$
4,625
$
150
$
795
$
払込件数には、投資先会社またはファンド 1 つに対する複数の払込が含まれている可能性がある。
ファンド・リミテッドパートナーシップに代わって AMC が運用する共同投資ファンドを含む。
流動資産
流動資産の運用はすべて理事会が認めた投資権限に基づき、IFC のコーポレートリスク委員会(IFC マネジメントチ
ームの小委員会)による流動資産投資指針に従って行われている。
通常、IFC では流動資産を政府、政府機関、国際機関、優良企業が発行または無条件保証している高格付の固定お
よび変動利付証券に投資しており、資産担保証券や不動産担保証券、定期預金、その他の銀行・金融機関の無条件の
支払い義務のある証券も含んでいる。これは、投資を多元分散することで有利なリスク・リターン特性を確保するため
である。IFC では流動資産ポートフォリオを運用するうえで、一定のリスクパラメーター範囲内のベンチマークを参
照することでポートフォリオベースの投資を行うという柔軟な方法を採っている。このポートフォリオ単位の運用戦
略の実施においては、主に通貨スワップや金利スワップ、先物やオプションなどのデリバティブ商品を利用し、さま
ざまな業種や国でのポジションを取っている。
IFC の流動資産は、トレーディング・ポートフォリオとして計上されている。2015 年 6 月 30 日現在の流動資産ポー
トフォリオの正味資産価格は 395 億ドルであった(2014 年 6 月 30 日現在は 337 億ドル)。15 年度の流動資産は、投
資の実行による減少で一部は相殺されたものの、市場からの借入の純手取金を投資したことでポートフォリオがかな
り増額されたことと投資ポートフォリオからの収益により増加した。
IFC は流動資産を 2 つの資金源、市場からの借入(以下「調達流動性」という。
)および自己資本から調達している。
流動資産はこれら資金源に関連した複数のポートフォリオにおいて管理されている。
20
調達流動性
IFC の流動資産の第一の資金源は市場からの借入である。市場からの借入による手取金で、直ちに貸出金および貸
出金に類似した負債証券に充てられないもの(以下「調達流動性」という。
)はマネーマーケットのベンチマークを参
照して内部的に運用される。調達流動性の少額部分は、内部的に運用されているものと同じベンチマークにより、第
三者が運用している。
伝統的に、IFC の市場からの借入は一般的にドル建ての変動金利債務に変換されてきた(そのような借入のうち、
2013 年 6 月 30 日現在では 1%および 2014 年 6 月 30 日現在では 5%が変換されなかった)
。IFC は、ドルに変換できな
い現地通貨による借入を通じて、発展途上市場およびフロンティア市場における資本市場の発展を目指している。加
えて IFC は、時には市場からの借入をドル建て債務に変換するという伝統的な手法を行わず、投資された借入の手取
金を調達流動性と同じ現地通貨のままにする方法を採り、デリバティブに関連する費用を最小化することを目指して
いる。結果的に、2015 年 6 月 30 日における市場からの借入で変換されなかったものは全体の 6%を占めた。
運用自己資本
流動資産の第二の資金源は、株式および株式に類似した商品に投資されていない IFC の自己資本部分(以下「運用
自己資本」という。)であり、米国財務省の短期証券指標銘柄を参照して運用されている。これらの資産の一部は、内
部的に運用されているのと同じベンチマークにより、第三者が運用している。
15 年度において、調達流動性による流動資産のトレーディング活動の収益5は合計 384 百万ドルであり、運用自己資
本による流動資産のトレーディング活動の収益は 83 百万ドルであった。
資金調達原資
2015 年 6 月 30 日現在および 2014 年 6 月 30 日現在における IFC の資金調達原資(借入金、資本金、利益剰余金)
は下図のとおりである。
IFC の資金調達原資
15 年度
14 年度
市場からの借入
市場からの借入
短期割引債プログラムお
よびその他の短期借入
欧州・中央アジア
IDA からの借入
短期割引債プログ
ラ
ムおよびその他
欧州・中央アジア
の短期借入
IBRD からの借入
IBRD からの借入
払込資本金
払込資本金
利益剰余金
利益剰余金
5
計上された総借入コストで、非トレーディング活動の為替差損益において流動資産のトレーディング活動の収益とは別に計上さ
れる現地通貨の調達流動性に係る為替差損益および特定の通貨における市場借入金と調達流動性との過去のスワップに係る内部
取引の効果控除後のもの。
21
借入金
IFC の借入金は大部分が国際資本市場からのものである。設立協定上、IFC がその加盟国の一般市場から借入を行え
るのは、当該加盟国および当該借入に係る通貨を発行する加盟国の承認を得た場合に限られる。
2014 年 7 月 1 日より、IFC は、翌年度に係る借入プログラムの規模について公社の理事会から年間承認を要するこ
となく、IFC がリスク方針の上限以内の借入を行うことを承認する一般資金調達承認が与えられている。
IFC の 15 年度中の借入額(借入に係るデリバティブ効果を考慮後)は 148 億ドルであった(14 年度は 153 億ドル、
13 年度は 128 億ドル)
。なお、IFC の借入の流動性を高めるための発行済み債券の買戻しおよび/または償還について、
理事会で承認されたことにより、15 年度には未償還債券 14 億ドル分の買戻しおよび回収を行い(14 年度は 14 億ドル、
13 年度は 4 億ドル)、15 年度に 2 百万ドルの買戻差益が発生した(14 年度は 3 百万ドル、13 年度は 11 百万ドル)。
IFC は、新興市場およびフロンティア市場における資本市場の発展を促進させるツールとして、借入発行の利用を
増やしている。貸出金に充てられないこれらの発行による手取金は、主に発行通貨の関連する政府および政府機関の
証券に投資されている。さらに、IFC は、14 年度において外国通貨建ての発行の一部の手取金(主に、オーストラリ
アドル(以下「豪ドル」という。
)およびポンド(以下「英ポンド」という。
))を、同一通貨の流動資産に投資すること
により、デリバティブ取引コストを最小限に抑えようとした。
IFC は借入れの通貨、国、資金源、返済期間などを分散することによって、柔軟性とコスト効率を確保している。
15 年度において、IFC は 20 種類の通貨を 1 年から 30 年の返済期間で借り入れている。残存期間は、2015 年 6 月 30
日現在における契約上の残存期間を加重平均すると 3.3 年になる(2014 年 6 月 30 日現在では 3.9 年)
。IFC の借入の
一部については、繰上償還条項の存在により実際の満期が契約上の満期と異なる場合もある。
市場からの借入金は通常、スワップによりドル建ての変動金利債務に変換される。2015 年 6 月 30 日現在、借入金
関連の通貨スワップ 196 億ドル(2014 年 6 月 30 日現在では 183 億ドル)および想定元本 352 億ドル(2014 年 6 月 30
日現在では 361 億ドル)の金利スワップによる債務総額を有していた。これらのデリバティブ効果を考慮すると、2015
年 6 月 30 日現在では市場からの借入金の 94%が変動金利によるドル通貨建てとなっている(2014 年 6 月 30 日現在は
95%)。2015 年 6 月 30 日現在、
市場からの借入の加重平均コストは、
通貨スワップおよび金利スワップの取引後で 0.5%
であった(2014 年 6 月 30 日現在は 0.4%)。
国内資本市場の発展を援助するという IFC の使命は結果的に現地通貨建ての資金調達につながる。2015 年 6 月 30
日現在、ドル建て以外の市場借入残高 25 億ドルは、アルメニアドラム、コスタリカコロン、中国人民元、ドミニカペ
ソ、ジョージアラリ、インドルピー、ナイジェリアナイラ、ロシアルーブル、ルワンダフランおよびザンビアクワチ
ャによるものであり、その手取金は現地通貨建て投資、顧客への貸付および/または一部はドルとのスワップに使用
された。
IFC では、13 年度より前は特定の貿易金融やサプライチェーン・イニシアティブの追加資金調達や流動性管理ツー
ルとしてドル建て短期割引債プログラムを利用していたが、13 年度から中国人民元(以下「CNY」という。
)建て短期
割引債プログラムを立ち上げてドル建てプログラムを補完し、また、2015 年 6 月にはトルコリラ(以下「TRY」とい
う。)建て短期割引債プログラムを立ち上げてドルおよび CNY 建てプログラムを補完するとともに、TRY 圏における民
間企業が現地通貨建て短期融資をより多く利用できるようにした。この割引債プログラムはオーバーナイト物から一
年物までさまざまな満期をそろえている。2015 年 6 月 30 日現在、短期割引債プログラムの発行済債券の未償還額は、
ドル建てが 1,289 百万ドル(2014 年 6 月 30 日現在は 1,029 百万ドル)
、TRY 建てが 37 百万ドル(2014 年 6 月 30 日現
在は 0 ドル)、CNY 建てが 0 ドル(2014 年 6 月 30 日現在は 288 百万ドル)である。
22
資本金および利益剰余金
2015 年 6 月 30 日現在、IFC の授権資本は 25.8 億ドル(2014 年 6 月 30 日現在も 25.8 億ドル)である。2015 年 6 月
30 日現在および 2014 年 6 月 30 日現在の資本合計額の内訳は以下のとおりである。
IFC 資本(百万ドル)
2015 年
6 月 30 日
2014 年
6 月 30 日
資本
引受済および払込済資本金 ..........................................................
$ 2,566
$
2,502
累積的その他包括利益 ..............................................................1,197
1,239
利益剰余金 ........................................................................
20,641
20,196
IFC 資本合計 .........................................................................
24,404
23,937
非支配会社持分 ....................................................................
22
53
資本合計 ............................................................................
$ 24,426
$ 23,990
選択的増資(以下「SCI」という。)
2010 年 7 月 20 日、IFC 理事会は、IFC 総務会に対して 200 百万ドルの株式発行(このうち 70 百万ドルを未割当て
とする。
)を通じて IFC の授権資本を 130 百万ドル増額して 2,580 百万ドルにすることを承認するよう提案した。
また、
理事会は総務会に対して、IFC の設立協定の改訂を必要とする、開発途上国・経済移行国の発言力および関与を高め
ることを目的とした基礎票の増加の承認を提案した。
理事会が提案した決議は 2012 年 3 月 9 日に総務会で採択された(IFC 決議第 256 号「設立協定の改訂および 2010
年選択的増資」
)。それを受けて、設立協定の改訂と授権資本の増額が 2012 年 6 月 27 日付で実施され、同日付で、適
格加盟国はそれぞれに割り当てられた IFC 株式の引受を承認された。
株式引受期間は 2014 年 6 月 27 日に終了し、加盟国は発行済株式 200 百万ドルのうち 196.355 百万ドル(98.18%)
を引き受け、3.645 百万ドル(1.82%)の非引受株式は、決議の条件に従ってその他の加盟国に再割当された。加盟
国による当該再割当株式の応募証書の提出期間は 2014 年 12 月 27 日に終了し、当該日において、加盟国は再割当株式
3.645 百万ドルのうち 3.287 百万ドル(3,287 株)を引き受ける書面を提出した。
2014 年 12 月 27 日現在、発行済株式総額 200 百万ドルのうち 199.642 百万ドルを加盟国が引き受けており、残りの
0.358 百万ドルは、2014 年 12 月 28 日に IFC の未割当て授権資本の一部となった。
引受株式の払込は 2015 年 6 月 27 日までに完了しなければならなかった。2015 年 6 月 27 日現在、IFC は SCI に係る
支払を合計 194.303 百万ドル受領しており、残り 5.339 百万ドルも 2015 年 6 月 28 日に IFC の未割当て授権資本の一
部となった。
特定目的のために指定された利益剰余金
IFC は 2004 年 6 月 30 日終了年度より、助言業務の支援を拡大するために特定目的のために指定された利益剰余金
を設定した。これに続いて、成果基準助成金(以下「PBG」という。
)
(2005 年 6 月 30 日終了年度。
)、IDA 拠出金(2006
23
年 6 月 30 日終了年度。)
、世界インフラプロジェクト開発基金(2008 年 6 月 30 日終了年度。以下「08 年度」という。
)、
および IDA 加盟国のための IFC SME(中小企業)ベンチャー支援(08 年度)のための特定目的のために指定された利
益剰余金が設定された。利益剰余金の金額および目的の指定は、理事会が承認した基本方針に基づいて行われる。こ
の方針は、毎年 IFC の資金力を評価し、利益剰余金の指定の上限額を決定するために適用される。
特定目的のために指定可能な金額は、理事会が承認した利益基準による算式、および 08 年度からは、基本方針に基
づいて理事会が承認した財務配分方針に従って決定され、理事会に承認されている。
IFC は、利益剰余金の助言業務への指定は理事会が承認したときに正式に承認し、また、IDA 拠出金への指定は総務
会が了承したときに正式に承認される。承認済のさまざまな目的のために指定された支出は、発生年度の IFC の連結
損益計算書に費用として計上され、その影響として特定目的のために指定された利益剰余金が減算される。
14 年度利益剰余金の特定目的指定
2014 年 8 月 7 日、IFC 理事会は IFC の利益剰余金から IDA への拠出金 340 百万ドルの指定を承認した。これらの指
定は 2014 年 10 月 10 日に IFC の総務会の了承を経て正式決定された。IFC は IDA との間の拠出金契約の締結に従って、
2015 年 1 月 16 日付で 340 百万ドルの利益剰余金の IDA 拠出金への指定に対する支出を正式に承認した。
2015 年
6 月 30 日
IFC の利益剰余金と特定目的指定(単位:百万ドル)
未処分繰越利益剰余金 ........................................................................... $
20,457
2014 年
6 月 30 日
$
20,002
特定目的のために指定された利益剰余金:
助言業務 ....................................................................................
137
131
成果基準助成金 ..............................................................................
16
21
IDA 加盟国のための IFC SME(中小企業)ベンチャー支援および世界インフラプロジェクト開発基金 ....
31
42
特定目的のために指定された利益剰余金合計 ....................................................... $
184
$
194
利益剰余金合計 ................................................................................. $
20,641
$
20,196
15 年度利益剰余金の特定目的指定
特定目的指定の対象となる 15 年度の収入(非 GAAP 測定指標による)6は総額 1,327 百万ドルであった。最大指定可
能金額は、理事会承認済の分配方針に基づき 344 百万ドルであった。2015 年 8 月 6 日に理事会は、IFC の利益剰余金
のうち 330 百万ドルを IDA 拠出金に、14 百万ドルをアドバイザリーサービスに指定することを承認した。これらの指
定は総務会の了承を経て 16 年度に正式決定される予定である。
展開可能戦略資本
IFC の展開可能戦略資本(以下「DSC」という。
)の比率は 2014 年 6 月 30 日現在の 7.0%から 2015 年 6 月 30 日現在
の 5.4%へと減少した。15 年度における DSC の減少は、持分および財務ポートフォリオに係る経済資本の増加を主因
とした必要総資源(以下「TRR」という。
)の増加によるものである。15 年度中に利用可能総資源(以下「TRA」とい
6
一般に、特定目的指定の対象となる収入は、純利益(投資に係る未実現損益およびその他非トレーディング金融商品に係る未実
現損益、連結した VIE に係る利益ならびに前年の特定目的指定に関連する純利益に反映された費用を除く。
)をいう。
24
う。
)が増加したが、これは主に上半期における 10 億ドルを超える実現キャピタルゲインを主因とする利益剰余金の
増加によるものであった。TRA は払込資本金の増加による恩恵も受けた。
リスク管理
エンタープライズリスク管理
持続可能な民間セクター開発業務を遂行していくうえで IFC はさまざまな種類のリスクを負っている。これらのリ
スクを積極的に管理していくことは、IFC が財務上の安定を維持しかつ開発効果を達成するうえできわめて重要であ
る。
15 年度の IFC の再編で新設されたコーポレートリスクおよび持続可能性担当副総裁職は、企業レベルおよびプロジ
ェクトレベルの両方でリスク管理を合理化かつ強化し、IFC の外部顧客への支援を向上させるために、IFC の財務およ
び非財務リスク部門のすべてを統合する。より透明性のある内部の説明責任を果たすことが再編の目標の 1 つであっ
た。IFC は、取引レベルおよび企業のレベルの両方で財務および非財務リスクの集中的な監視を可能にすることによ
って初めて、単一組織の下でリスク管理活動のすべてを調整することができる。
ERM 枠組み
14 年度にエンタープライズリスク管理(以下「ERM」という。
)枠組みを採用することで、IFC は 15 年度においてリ
スク管理実務を改善した。かかる努力には、IFC がその使命を達成する上でのリスク選好の明示、関連する評価基準
の特定、リスクエクスポージャーを監視し、必要な場合にはリスク軽減のために迅速な対応を行うための基準値の設
定が含まれる。
IFC が 14 年度に採用した ERM 枠組みは業界における標準と概ね合致し、以下を定義することにより IFC のリスク対
応を支持するよう設計されている。
 IFC の中核リスク管理原則
 異なるリスクの側面を管理する責任を共有する組織のさまざまな部署にわたってリスク管理の取組みが調和し連
携するように、組織全体にわたって使用される共通リスク分類法
 組織の異なる部署が全体的なリスク管理にどのように貢献するかを区分し明確化するための、リスク管理に係る
役割および責任の標準的な分類
 積極的なリスク管理を実践するために必要な構造、プロセスおよび方法
重要なリスク管理原則
IFC の ERM 枠組みにおける重要原則は以下のとおりである。
 財務的持続可能性を維持しながら、開発効果を最大化すること。
 事業の決断はリスクを十分に理解したうえで行い、リスクとリターンが適切にバランスしていること。
 IFC の評価に重大な悪影響を与える可能性のある活動の選択は慎重に行うこと。
 リスク管理に対し公社全体を横断して責任を分担すること。
25
ERM 枠組みは、いくつかの構成要素から成り、それぞれ枠組み内で特定の問題に取り組んでいる。これらの構成要
素は、本質的に動的であり、IFC のリスク管理の展開が持続的、反復的かつ相互関連的な取組みであることを反映し
ている。
当該枠組みは下記のようなものである。
IFC のエンタープライズリスク管理枠組み
他に何が悪くなる可能性がある
か。また IFC が直面するリスクは
どう関連しあっているか。
IFC の事業戦略および業務に対
するすべてのリスクは何か。
ストレス
テスト
カバレッジ
IFC はリスクにどう
対応しているか。
IFC はどの程度のリス
クを進んで引き受け
るか。
対応
リスク選好
リスク
カルチャー
ガバナンス
および方針
統制環境
IFC はどれぐらい適切
にリスク負担を監督
しているか。
IFC はどれだけ適切にリ
スクを管理しているか。
測定および評価
リスクデータ
およびインフラ
IFC はリスクの規模および範囲
をどのように決定しているか。
IFC はリスクプロファイルを管
理するために、どのように正し
い情報を得ることを確保してい
るか。
リスク・カルチャー ―IFC のマネジメントチームを始め、正しいリスク・カルチャーを構築することは、ERM を成
功させるために不可欠な行動を浸透させる。
リスク・カバレッジ ―IFC のリスクプロファイルは、5 つの種類のリスクに分類される。即ち、信用リスク、市場
リスク、オペレーショナルリスク、流動性リスクおよび事業リスクである。これらの各リスクは以下の段落で言及さ
れている。
リスク選好 ― 包括的な一連の明示的リスク選好度ステートメントは、関連評価指標と共に、IFC のリスクエクス
ポージャーを監視しつつ、IFC のリスクプロファイルに影響を与える決定を行い、リスク許容度を超えた場合に対処
するために一貫した統合的基準を提供する。
リスクガバナンスおよび方針 ― IFC のリスクガバナンスの仕組みは、「3 つの防衛線」という業界標準の原則に基
づいている。
 IFC の第一の防衛線は、個別プロジェクトおよび取引についての現場の意思決定者で構成されるライン管理であ
る。第二の防衛線は、マネジメントチーム、その委員会および IFC の独立リスク管理機能の総体である。独立監
視機関は、理事会と共に、第三の防衛線の役割を果たしている。これらの独立監視機関とは、以下のものをいう。
26
 独立評価グループ(IFC がクライアントと共に行う投資および助言プロジェクトの事業の計画と実際の成果と
の整合性を査定する。
)
 コンプライアンス・アドバイザー/オンブスマン(IFC のステークホルダーのための独立の救済メカニズムで
あり、現場における社会的および環境的な成果を上げるために、プロジェクトの影響を受けたコミュニティか
らの苦情に対応する。
)
 世界銀行グループの内部監査担当副総裁職(組織のガバナンス、リスク管理および統制プロセスの有効性を評
価する。
)
 インテグリティ担当副総裁職(世界銀行グループの融資活動における不正・汚職の申立てを調査し、これに関
連する制裁を実行する。
)
 IFC のリスク管理方針は、理事会から委託された権限を通じてマネジメントチームが引き受けることのできるリ
スクの種類と量を定義している。
リスクデータおよびインフラ ― 公社における意思決定を補助するためにソースデータが収集、統合、分析される。
測定および評価 ― IFC は、リスクプロファイルを管理するために、量的指標および質的指標の組み合わせを使用
している。各リスク分類の主要な指標は、本書後半において検討されている。
統制環境 ― 内在するリスクのレベルを許容できるレベルまで引き下げるために、経営陣は COSO 枠組みをモデルと
する内部統制に依拠している。
リスク対応 ― リスクは IFC のリスク監視部が分析・監視し、コーポレートリスク委員会はエンタープライズレベ
ルのリスク問題を協議し決定するために頻繁に会合を開く。
ストレステスト ― 半年に 1 回、IFC 全体で行われるストレステストは、経営陣に対し、資本管理および意思決定
に役立つ追加的なツールを提供している。当該テストは、ベースケースおよびストレスのかかったマクロ経済シナリ
オに基づく IFC の業績および適正資本について複数年の見通しについて行われる。
エンタープライズレベルのリスク選好
エンタープライズレベルのリスク選好は、極度の貧困への取組みと繁栄の共有の促進という世界銀行グループの 2
つの目標に焦点をあて IFC の開発の効果を最大化する一方で、財務的持続可能性を維持し、そのブランドを保護する
という IFC の目的から示されている。
IFC は、戦略的なレベルで、以下のリスク選好度ステートメントを採用した。
 開発の効果:IFC は、極度の貧困への取組みと繁栄の共有の促進という世界銀行グループの 2 つの目標に焦点を
あて IFC の開発の効果を最大化する一方で、財務的持続可能性を維持し、そのブランドを保護する。
 財務的持続可能性:IFC は、潤沢な財源を創出かつ維持し、その事業を行い、また、トリプル A 格付の水準に見
合ったリスクを管理する。
 ブランド保護:どの取組みおよび活動を実行するかを決定するに際し、IFC は、潜在的な開発の影響が、評判へ
の潜在的な悪影響と釣り合っているか評価する。
財務的持続可能性の観点から、トリプル A 格付の維持に必要な資本は、IFC の財務リスク管理の基礎をなす経済資
本の枠組みを用いて評価されている。経済資本は組織全体にわたって「リスクの共通通貨」の役割を果たし、すべて
の事業分野、商品、地域およびセクターにわたって一貫して適用できる、客観的なリスクの定量化が可能な基準を IFC
に提供している。IFC は、信用リスク、市場リスクおよびオペレーショナルリスクのために経済資本を保有している。
27
適正資本の主な基準は DSC である。これは、現在のポートフォリオを超えて将来の契約を支える利用可能な資本であ
り、利用可能総資源(以下「TRA」という。)7が、(a)必要総資源(以下「TRR」という。
)8と(b)保全バッファー9を上
回る額として計算され、TRA に対する割合として示されている。
IFC には、次のとおり理事会が承認する多くの重要な財務方針が存在する。
 適正資本方針 ― IFC が維持を求められる総資源の最低水準(払込資本金、損失引当金総額、特定目的のために
指定された剰余金控除後の利益剰余金など)は、トリプル A 格付の維持と一致するレベルで見積られた、すべて
のオンバランス、オフバランスのエクスポージャー総額と同額である。
 レバレッジ方針 ― IFC の未払い負債に保有する保証金を加えた額はその自己資本の 4 倍を超えてはならない。
 流動性方針 ― 最低流動性(流動資産および IBRD からの契約済み未引出借入金)は常に、翌 3 年間の資金需要予
測の少なくとも 45%をカバーするものでなくてはならない。
 外部資金調達方針 ― IFC は外部調達資金からなる流動性の最低水準を、次の 3 つの合計額の少なくとも 65%を
カバーするレベルで維持する。(i) 契約済み未実行無担保優先貸付の 100%、(ⅱ) 契約済み保証の 30%、(ⅲ) 契
約済み顧客リスク管理商品の 30%。
 マッチドファンディング方針 ― 貸出金のための資金調達は、金利基準、通貨および借入期間の特徴が類似の負
債によるものでなくてはならない。但し理事会が承認した資産・負債のミスマッチを含む新商品についてはこの
限りでない。
ステークホルダーや一般社会による IFC に対する否定的な認識は IFC が事業を効果的に遂行する能力を低下させか
ねないので、IFC は、ブランド保護のために評判への潜在的な悪影響に細心の注意を払っている。どの取組みおよび
活動を実行するかを決定するに際し、IFC は、潜在的な開発の影響や財務的な見返りが、評判への潜在的な悪影響と
釣り合っているか評価している。
評判への影響を管理するために IFC が使う重要なツールの 1 つは効果的なコミュニケーションである。コミュニケ
ーション活動は世界銀行グループの外部およびコーポレートリレーション担当副総裁職が調整している。当該部署は、
戦略的および危機対応に関するアドバイスを、公社レベルおよびプロジェクトレベルの両方における評判による潜在
的および実際の影響を管理するためにプロジェクトサイクル全般にわたって行っている。この部署はまた、内部・外
部の情報交換、キャンペーン、市民社会の取組み、ブランドマーケティングならびにウェブメディア、ソーシャルメ
ディアおよびその他のメディアも担当している。IFC ブランドを強化する効果的なコミュニケーション戦略の策定お
よび実施のために、IFC および世界銀行グループの全部署と協力している。
信用リスク管理
信用リスクの定義および範囲
IFC では信用リスクを、債務不履行もしくは信用格付の格下げまたはその他財務上の損失をもたらす契約義務の不
履行などの信用事由による、元本損失または期待した収益の喪失のリスクと定義している。IFC は、貸出金ポートフ
7
利用可能総資源(TRA)は公社の総資本であり、
(i)払込資本金、
(ii)指定および一部の未実現損益を除く利益剰余金、
(iii)
総貸倒引当金で構成される。TRA は利益剰余金(利益から配当を差し引く)および準備金の増加に基づいて増加する。
8
必要総資源(TRR)は、IFC のポートフォリオにおける予想損失および予想外損失をカバーするのに必要な最低資本であり、IFC
のトリプル A 格付を維持するために調整されている。TRR は、IFC の異なる資産に係る必要経済資本の合計であり、契約済みポー
トフォリオの絶対規模、商品構成(持分、貸出金、短期金融および財務ポートフォリオ資産)
、ならびにオペレーショナルリスク
およびその他のリスクによって決定される。
9
保全バッファーは、事前に決定される TRA に対する割合で設定される。その目的は、IFC のポートフォリオの変動しやすい特性
から生じる TRR および TRA の短期変動を吸収することである。
28
ォリオにおいて信用リスクに晒されており、また財務ポートフォリオにおいてもカウンターパーティー信用リスクの
形で晒されている。
投資業務
投資プロジェクトにおける信用リスクは、プロジェクトのライフサイクルにわたって積極的に管理されている。投
資チームは、プロジェクトの財務的実現可能性を検証するために、またプロジェクト承認手続において確定した段階
で信用リスク格付(以下「CRR」という。)を付与するために、クライアントからの必要な情報の収集を担当している。
CRR、投資規模および商品の種類によって、取引の決裁権限者をどのレベルにするかが決まる。すべてのプロジェクト
は、プロジェクト承認プロセスに参加する、独立リスク監視機能内の信用担当役員による独立した信用評価の対象で
ある。プロジェクトは、コーポレートリスク委員会が承認するさまざまなオペレーショナルおよびプルーデンシャル
な制限を参照して承認される。これには、単一プロジェクトまたはクライアントへのエクスポージャー、単一国への
エクスポージャー、および特定セクターへの集中などに係る制限が含まれ、詳細は以下のとおりである。
 IFC の一国に対する総エクスポージャーは、当該国への投資ポートフォリオに要する経済資本の額で測定される。
エクスポージャーの限度額は各国の経済規模およびリスク格付に応じて設定する。同一国内においても、特定の
セクターへのエクスポージャーについては個別の限度額が適用される。
 IFC の単一のクライアントまたはクライアントグループへのエクスポージャーは、クライアントの CRR に応じて
定められた経済資本限度額および名目限度額を超えてはならない。
 個別投資限度額は過度な集中を防ぐために個別プロジェクトまたはクライアントレベルにおいて適用される。
 一国に対する優先的債務エクスポージャーは、その国の中期および長期の対外債務総額を参照することにより制
限されている。
 IFC の株式エクスポージャーおよび準株式エクスポージャー(特定の準備金を除いた未払いエクスポージャー)
の総額は、IFC の自己資本を超えてはならない。
IFC の投資プロジェクトの品質は、契約後に積極的に監視される。CRR はプロジェクト毎に定期的に見直され、必要
に応じて修正されている。さらに独立したコーポレート・ポートフォリオ・チームは、起こりうるリスクに対するエ
クスポージャーのストレステストを含めてポートフォリオの健全性を監視し、評価している。プロジェクトが困難に
陥った際は、早期の対応が回復するための重要な要素である。IFC の特殊業務部の熟練専門家は、より高度な対応お
よび再構築を要するポートフォリオプロジェクトに注力している。
貸出金の信用リスクに関しては、債務不履行の確率、債務不履行時の損失、および信用供与額について定量化する。
これらのリスク要因は、適正資本、資本配分、内部リスク管理を目的としたリスクベースの経済資本の決定に用いら
れるほか、一般貸倒引当金および与信限度額の設定に用いられる。
財務運用
IFC は、金融取引のカウンターパーティーが契約義務の履行を怠った場合の潜在的損失を軽減するため、財務運用
におけるカウンターパーティーに対するエクスポージャーを管理している。保守的なカウンターパーティーの適格基
準は、理事会の認可および IFC 上級経営陣が承認した指示書に規定されている。適格カウンターパーティーは主に、
国際的な大手信用格付会社から高い信用格付を付与されている銀行および金融機関である。適用される財務方針およ
びガイドラインの詳細は、以下のとおりである。
29
 カウンターパーティーは、預金および買戻契約については期間の制限を設けた上で標準的な適格基準に基づいて
選定される。
 デリバティブ商品のカウンターパーティーは、国際的な大手信用格付機関による信用格付の高い銀行および金融
機関に限定しているが、現地通貨による貸出金の資金調達に限り、適格範囲を中央銀行および優良な現地銀行ま
で拡大している。
 個別のカウンターパーティーに対するエクスポージャーはエクスポージャー限度額の対象となる。デリバティブ
についてエクスポージャーは、再構築コストに基づく潜在的エクスポージャーの合計で測定される。
 IFC は、値洗い後のネット・エクスポージャーが所定の閾値を超えたときにカウンターパーティーが担保を差し
出す旨の担保契約をカウンターパーティーと締結する。
 取引所取引証券の場合は、承認済みの取引所、契約およびディーラーに取引を制限すること、ならびに各契約に
おける IFC のポジションに制限を課すことにより、信用リスクは限定されている。
15 年度の信用リスクに関する注釈
投資業務
IFC の貸出金ポートフォリオにおける信用リスクエクスポージャーの主要な指標と不良債権の過去 5 年間の推移は
以下のとおりである。
IFC 貸出金ポートフォリオの信用リスク指標
2015 年
6 月 30 日
指標
10
2014 年
6 月 30 日
変動
実行済貸出金ポートフォリオに対する不良債権の割合10 ·······
6.2%
5.1%
1.1%の増加
不良債権の未払元本残高 ··································
1,578 百万ドル
1,342 百万ドル
236 百万ドルの増加
貸倒引当金総額 ··········································
1,743 百万ドル
1,686 百万ドル
57 百万ドルの増加
実行済貸出金ポートフォリオに対する貸倒引当金総額の割合 ··
7.5%
6.9%
0.6%の増加
保証の損失引当金総額 ····································
20 百万ドル
22 百万ドル
2 百万ドルの減少
貸出金に類似した負債証券を含む、非 GAAP 測定指標。
30
実行済貸出金ポートフォリオに対する不良債権の割合
(百万ドル)
実行済貸出金に対する%
金額(百万ドル)
11 年度
12 年度
13 年度
14 年度
(%)
15 年度
貸出金に係る CRR の加重平均は、2014 年 6 月 30 日から 2015 年 6 月 30 日までの間は比較的小幅な変動を維持した
が、貸出金ポートフォリオ全体が広範囲にわたって悪化したというよりも、IFC の少数の貸出金プロジェクトの信用
悪化を主因として、不良債権および貸倒引当金両方の絶対額および比率は増加した。貸出金に係る CRR の加重平均は、
過去 3 年間概ね安定している。
財務運用
財務運用のカウンターパーティーは、業種別および地域別の多様化が十分に保たれている。カウンターパーティー
との合意に従い、IFC は 2015 年 6 月 30 日現在でオープントレードの時価評価エクスポージャーの変動に係る担保と
して 237 百万ドルの現金および 756 百万ドルの有価証券を保有している(2014 年 6 月 30 日現在では 120 百万ドルの
現金および 925 百万ドルの有価証券)
。
市場リスク管理
市場リスクの定義および範囲
IFC では、市場リスクを市場価格の変動によるポジションの損失リスクと定義している。IFC の市場リスクに対する
エクスポージャーは、そのマッチドファンディング方針により大幅に緩和されている。これにより、IFC はデリバテ
ィブ商品を用いて市場借入で原資を調達した貸出金および市場借入金そのものを、ほぼ同期間の変動金利ドル資産・
負債に変換させている。同様に、顧客のリスク管理を促進するために行う顧客とのデリバティブ取引の結果生じる市
場リスクは、通常、高格付のカウンターパーティーとの間で相殺ポジションを締結することにより軽減されている。
IFC の市場リスクに対する残存エクスポージャーは、主にその新興市場の上場・非上場持分投資、財務流動資産ポー
トフォリオ、また総資産・負債管理ポジションからも生じている。
持分投資
IFC の新興市場における持分投資の価値の損失リスクは、主に、貸出業務についての上記の制限枠組み、意思決定
プロセスおよびポートフォリオ管理と同様の方法を適用することで軽減されている。持分投資、ポートフォリオ管理、
31
資産配分における IFC の戦略の全般的な指針は、マネジメントチームの小委員会であるコーポレートエクイティ委員
会により定められている。IFC は持分投資について長期保有期間を設定しており、大きくなる可能性があるこれらの
投資の短期価格変動を引き受けている。
流動資産ポートフォリオ
IFC の流動資産ポートフォリオにおける市場リスクは、相対為替先渡取引、金利および通貨スワップ、取引所で取
引される金利先物およびオプションなどのデリバティブおよびその他の金融商品を用いて、各ポートフォリオのベン
チマークの選択されたリスクプロファイルで管理されている。全般的な市場リスクのエクスポージャーは、コーポレ
ートリスク委員会が承認する指示書に基づき日次的な監視の対象にもなっており、金利およびスプレッドリスク、外
国為替エクスポージャーならびにバリュー・アット・リスクを制限している。
資産・負債管理
IFC のマッチドファンディング方針は、ほとんどの為替リスクおよび金利リスクを軽減しているが、それでも IFC
は貸借対照表上の市場借入に係る部分における残存市場リスクにさらされている。残存為替リスクは、ドル以外の通
貨の貸出金に対する貸倒引当金の規模の変化などの要因から生じる。このリスクは、貸付通貨毎の全体的なポジショ
ンを日次で監視することにより、±5 百万ドル相当の範囲内に抑えるよう管理している。残存金利リスクが生じるの
は、資産と負債で金利更改日が異なる場合、または当初に完全にマッチドファンディングされた資産であったが、時
間の経過とともに評価減、早期償還、リスケジューリングなどによりミスマッチが発生した場合である。こうした残
存金利リスクは、金利 1 べーシスポイントの変動に対する資産および負債の現在価値での感応度を通貨毎に測定し、
エクスポージャーを日次で±50,000 ドル以内の潜在的な価値の変動に収まるようにすることで管理している。
15 年度の市場リスクに関する注釈
IFC の流動資産ポートフォリオの金利リスクがわずかであるのは、ベンチマークの期間が短く、またこれらのベン
チマークからの偏差が小さいためである。15 年度の IFC の財務運用における市場リスクは全体的にやや増加したが、
これはポートフォリオ規模の拡大、クレジットスプレッドエクスポージャーの拡大、およびより変動の大きいアセッ
トクラスに対するエクスポージャーによるものであった。金利リスク、為替リスクおよびスプレッドリスクはすべて、
15 年度において遵守している限度システムを用いて日次で慎重に統制されている。
15 年度は「にもかかわらず」が多く、かつ、大きな出来事のあった年であった。フラッシュ・クラッシュおよび 2014
年第 4 四半期から 2015 年第 1 四半期における米国経済の鈍化にもかかわらず、米国債の短期金利は上昇し、長期金利
はほんのわずかしか下落しなかった。
「グレグジット」
(ギリシャのユーロ圏離脱)の懸念が生じたにもかかわらず、
ヨーロッパの株価は上昇した。中国では GDP が鈍化したにもかかわらず、中国 A 株式は 15 年度末に大幅に下落するま
で最高値を更新した。コモディティ価格の下落や多くの新興市場(以下「EM」という。)通貨の下落にもかかわらず、
EM の株価はドルベースでゆるやかに下落しただけであった(バンガード EM EFT の評価で 5.2%)。米国連邦準備制度
理事会は量的金融緩和政策を終了し、金融引締政策へと移行したが、欧州中央銀行(以下「ECB」という。
)は過去最
大の量的金融緩和政策を開始し、ブンド利回りは過去に経験したことのないレベルまで下落した。ドイツ国債の利回
りは、急激に上昇する前に一時的に 7 年満期でマイナスとなった。また、中国人民銀行も積極的に金融緩和政策をと
り、中国規制当局は統制をいくぶん緩和して、オンショアとオフショアの株式取引の連携を開始した。スイス国立銀
行は 1 月にスイスフラン/ユーロ為替レートの上限を撤廃して市場を驚かせ、自国通貨を大幅に上昇させた。
32
流動資産ポートフォリオは、かかる環境から恩恵を受けたが、キャピタルゲインはここ数年に比して少なかった。
これは、過去のスプレッドの縮小で利益が増加する可能性が下がったためであり、意外なことではなかった。中国政
府の措置によって助長されたオンショア人民元(以下「RMB」という。)とオフショア RMB 間の利回りの圧縮は、成果
を牽引したより重要な要因の 1 つであった。また、中国以外の複数通貨ベースの変動も、IFC の新興国債券の保有に
よる成果の一助となった。ECB による欧州の資産担保証券(以下「ABS」という。
)への支援は ABS 購入計画を通じて
行われ、IFC の国際的な証券化商品に好業績をもたらした。さらに、仕組預金も超過収益に大きく貢献した。米国住
宅市場が堅調を維持したことでレガシー・ポートフォリオが複数年にわたり回復を続けたが、米国証券化商品は過去
の利益をいくぶん帳消しにした。流動資産は効果的な形で各地域に分散され、適格な利付投資商品分野の適格な部門
を通じて保有されている。
新興市場の持分は 15 年度中に激しく変動し、米国市場での収益を大幅に減少させた。新興市場は 15 年度上半期中
に下落したが、その後の 12 月から 4 月の間は著しい上昇に転じ、その後再び下落して、当該年度の収益合計はマイナ
スとなった。新興市場への投資家の投資意欲は、かかる市場から資金が流出したことで多くが減退した。多数の市場
で経済成長率が低下し、かかる環境下で市場が収益増加を達成することは困難であった。例外が中国であり、中国市
場は活況を取り戻した。特に 15 年度上半期において、多くの新興市場通貨に対して大幅なドル高が進んだことを主因
として、ドル・ベースでの投資家の収益がマイナスとなった。このような非常に厳しい環境の中、IFC の持分投資ポ
ートフォリオは、相対的にみて十分な利益を生み出し、MSCI エマージング・マーケッツ・インデックスをベンチマー
クとする全体的な市場収益を再び上回った。IFC は、引き続きポートフォリオの組成を特に慎重に行い、厳重な監視、
ポートフォリオのレビューおよび監督を通じてポートフォリオの積極的な管理を行った。こうした積極的な管理によ
って、公社は、15 年度において十分にポートフォリオを運用することが可能となり、大きな実現利益を獲得する市場
機会を活用することができた。
流動性リスク管理
IFC では流動性リスクを、契約義務を履行するために予定期間内に金融資産を資金化できない、または追加調達で
きないことによる財務損失リスクと定義している。IFC は、その中核となる開発金融活動において流動性リスクに直
面するが、これは IFC の投資の多くが、資本流入が不十分で、取引頻度が低く、また多くの新興市場において価格透
明性が欠如しているため、本質的に非流動的であるからである。こうしたリスクを埋め合わせるため、IFC は市場借
入で調達した十分な流動資産ポートフォリオを維持している。
流動資産ポートフォリオ
流動資産ポートフォリオにおける流動性リスクに対しては、コーポレートリスク委員会が承認した指示書に定義さ
れる厳格な適格基準で取り組んでいる。例として債券発行規模の最低水準、ならびに単一債券への集中制限および IFC
が保有する債券の総債券発行額に対する比率制限などが含まれる。その結果、流動資産ポートフォリオの相当部分が、
優良な政府系発行、政府保証付きおよび国際機関発行の固定利付商品や、マネーマーケット・ミューチュアルファン
ドのような短期投資など、流動性の高い証券に投資されている。IFC は、流動性危機においても、必要に応じて引き
続きこれらの流動資産を換金して IFC の資金需要に対応することができる見通しである。
資金調達
33
IFC の資金調達業務では、IFC が貸出業務に必要な資金があり、トリプル A 格付の保持および IFC として反循環的な
役割を果たすための十分な流動性を確保している。IFC はドルベンチマーク市場、豪ドル市場および日本のリテール
市場など、さまざまな調達市場にアクセスすることができる。IFC の割引債プログラムは、調達流動性に敏速にアク
セスできるように IFC の従来の資金調達源を補完している。IFC のトリプル A 格付は、公社が低資金コストを維持す
るために非常に重要である。さまざまな市場において定期的に発行を行うことは、投資家の信頼を維持し、多様な投
資家基盤を維持する役割を果たしている。
15 年度の流動性リスクに関する注釈
2015 年 6 月 30 日現在、IFC の流動資産ポートフォリオは 395 億ドルであった(2014 年 6 月 30 日現在は 337 億ドル)。
外部調達流動性比率は、最低要件の 65%を上回る 494%であり、公社の全体的な流動性の今後 3 年間で必要な正味現
金の見積りにおける割合は、最低要件の 45%を上回る 81%であった。15 年度には IFC は、デリバティブ控除後で正
味 148 億ドルを市場からの借入で調達した(14 年度は 153 億ドル)
。短期割引債プログラムの残高は 2015 年 6 月 30
日現在で 13 億ドルである(2014 年 6 月 30 日現在も 13 億ドル)
。
オペレーショナルリスク管理
IFC では、バーゼルフレームワークに則り、オペレーショナルリスクを不適切または機能不全に陥った内部プロセ
ス、人およびシステムの結果、あるいは外部事象による損失のリスクと定義している。
IFC のオペレーショナルリスク管理(以下「ORM」という。)プログラムは 10 年度にコーポレートリスク委員会が承
認した指示書に基づいて設けられたものである。この指示書には公社におけるオペレーショナルリスク管理の手法、
役割、責任が規定されている。IFC の ORM は、オペレーショナルリスクを確実に特定、評価、処理し、悪影響の発生
を最小限にするように設計されており、また、上級経営陣に対しては、IFC がどのリスクを負うか、軽減するか、ま
たは移転するかなどの決定を可能にするものである。IFC は包括的な一連のプロセスおよび内部統制を維持すること
により主要なリスクの軽減を目指している。
低頻度で深刻度の高いオペレーショナルリスクの軽減については、保険などによるリスク移転の仕組みをプロジェ
クト単位および公社レベルで利用している。IFC では、プロジェクト単位および公社レベルのいずれにおいても、リ
スクの特定および評価、利用可能なリスク移管契約や保険オプションの決定、最適な方法の実施、および長期にわた
る有効性の追跡を行っている。また、IFC の資産および事業の甚大な損害に備え、可能な限り付保を行っている。
15 年度のオペレーショナルリスクに関する注釈
IFC は、主要業務におけるオペレーショナルリスクの特定、測定、監視および管理の強化方法の開発および実施を
継続している。IFC は、過去 3 年度は部門レベルでオペレーショナルリスクを評価したのに対して、15 年度はエンタ
ープライズレベルでオペレーショナルリスクを評価する方法を採用した。かかる方法の修正は、IFC における全体的
なリスク管理に今まで以上に合わせるために行われた。この方法に基づいて、IFC は、IFC の主力事業、つまり株式、
負債および財務を支援する過程で生じるオペレーショナルリスクを評価する。したがって、15 年度の評価は株式売却
過程における重要なオペレーショナルリスクに焦点をあてた。また IFC は、通常の業務の混乱を招きかねない緊急事
態への即応態勢にも継続的な注意を払っている。
34
事業リスク管理
事業リスクの定義および範囲
事業リスクとは、IFC の任務および戦略を踏まえた IFC に特有のリスクであり、他のリスク範囲ではカバーされて
いないリスクである。当該リスクには、講じられた特定のリスク軽減措置とあわせて次の各段落で説明される以下の
要素(即ち環境・社会リスク、コーポレートガバナンスリスク、誠実性リスク、利益相反リスクおよび外部資金調達
リスク)が含まれている。
環境・社会リスク
環境・社会リスクとは、環境と社会の持続可能性に関するパフォーマンス基準の要件を満たすよう IFC が顧客に効
果的に働きかけられないリスクであり、人または環境に害を及ぼす可能性がある。パフォーマンス基準は IFC の持続
可能性に関する枠組みの一部を構成し、公社の持続可能な開発への戦略的コミットメントを明示している。
 パフォーマンス基準は、環境・社会的評価などの分析的作業、ステークホルダーの関与やプロジェクトレベルの
活動に関わる顧客の情報開示義務を通じた継続的なリスクの特定および管理など、顧客が持続可能な事業活動を
行えるようにするための一助となっている。
 環境と社会の持続可能性に関する政策とは、環境と社会の持続可能性に対する IFC のコミットメント、役割およ
び責任を詳述したものである。
 IFC の情報公開政策とは、透明性と良好なガバナンスの確保に向けた IFC のコミットメントを反映したもので、
IFC が機関として果たすべき開示義務について概説している。
IFC では、公社の事業活動が開発目標の達成に向けて集中できるよう、他の戦略、政策およびイニシアティブとと
もにこの持続可能性に関する枠組みを用いている。プロジェクトチームはすべて、標準指標を用いて予測開発成果お
よび期限付き目標を記録することになっている。これらの指標は追跡され、プロジェクト期間を通じてその実績が年
次で評価される。
コーポレートガバナンスリスク
コーポレートガバナンスリスクとは、IFC の顧客が不十分または非効率的な企業統治慣行を行うリスクであり、IFC
の評判または財務の悪影響へとつながるものである。IFC は企業統治リスクを、主に投資プロジェクトごとに下記の 5
つの分野を含む構造的な評価を実施することで管理している。
 理事会の有効性
 内部統制、監査、リスク管理および法令遵守の十分性
 財務情報開示の妥当性
 株主の権利の妥当性
 質の高い企業統治方針および慣行を実行する顧客のコミットメントの実証
これらの評価から得られる所見は、プロジェクトを進めるか否かを決定する際に考慮されている。
誠実性リスク
誠実性リスクとは、IFC の評判および/または財務に悪影響をもたらす可能性のある経歴を持つ、または活動を行
う外部機関または外部の者と関係を持つリスクである。IFC は、投資業務においても助言業務においても、多国籍企
35
業から零細企業、また政府機関から非政府組織まで幅広いパートナーと連携して業務を行っている。したがって、各
取引またはサービス機会はそれぞれ固有の誠実性リスクを示すものであり、取組みの構造や期間などさまざまな要因
の影響を受けている。IFC では、以下を目的として行われるインテグリティ・デューデリジェンス(以下「IDD」とい
う。
)の手続を定めている。
 プロジェクトまたは取組みならびに関与する機関および人に係る誠実性リスクの問題を明らかにするため。
 リスクを軽減するか受け入れるかを決定し、IFC の上級経営陣または理事会の承認が含まれる可能性のある次の
ステップを決定することを含めて、誠実性リスクを見積り評価するため。
 結果を文書化し、適切に文書を分類するため。
 誠実性リスクを監視し、プロジェクトまたは取組みの存続期間を通じて文書を更新するため。
利益相反リスク
利益相反リスクは、ある立場における IFC の意思決定や行為が、他の立場において IFC が有する可能性のある利害
に左右されるか、または当該利害と両立しない可能性があるリスクのことである。IFC の開発使命の遂行において顧
客に提供する商品およびサービスの内容または範囲、ならびに世界銀行グループのその他のメンバー機関が担う異な
る役割によっては、通常活動において実際のまたは予想される利益相反が発生する場合がある。そうした利益相反が
処理されない場合には IFC の評判または顧客関係その他に悪影響が生じかねない。IFC は、こうした利益相反を処理
するために、具体的状況に合わせた手段を用いることにより、かかる利益相反の特定および緩和を目的とするプロセ
スを実施した。
外部資金調達リスク
IFC は、顧客への投資および助言のために自らの財源を利用するだけでなく、公共および民間セクターの投資家、
貸付人ならびにドナーからも異なる複数の仕組みを通じて追加の資金調達を行う。外部資金調達リスクは、IFC がか
かる調達資金の監視を任される場合に、関連する第三者の最善の利益のために IFC が行為しないリスクのことである。
このようなリスクを緩和するため、IFC は、第三者に対する IFC の責任および義務を定めている合意に基づく枠組
み内で機能する。例えば、顧客への融資が B ローンや MCPP により動員される場合、シンジケーションの専門部署は、
定められた手続に従い、共同投資家を特定し、ストラクチャーについて助言し、かつ投資契約の遵守について監視す
る。第三者(ドナーを含む。)による融資の場合には、信託基金を通じて管理されることもある。IFC 内部の別個の部
門は、IFC のすべての信託基金に係る計画や契約を承認し、IFC の信託基金のポートフォリオを監督するための予め定
められた手続に従う。最後に AMC であるが、これは子会社として設立され、AMC が管理するファンドの投資家のため
に意思決定を行う独立したガバナンス・プロセスを提供することを目的としている。
15 年度のビジネスリスクに関する注釈
15 年度において、IFC はその制度と手順をさらに修正し、取引を行う前に経営陣から承認を得て投資業務でのイン
テグリティ・デューデリジェンスを実施する際の一貫性と説明責任を大幅に向上させた。前年と同じく、誠実性リス
クの専門知識を有する中央部門が、特定の誠実性に係る問題を有するプロジェクトのすべてについて義務化された照
会を取り扱った。また、当該部門は誠実性リスクの評価について職員の指導を継続し、本部および各営業所の投資業
務および助言業務の職員に対する IDD 手順に係る訓練を行った。
36
重要な会計方針
IFC の 15 年度連結財務諸表の注記 A には、最近採用された会計基準ならびに会計および財務報告の今後の展開とと
もに IFC の重要な会計方針の要約が記載されている。いくつかの会計方針が IFC の財務状態および経営成績を説明す
るうえで「重要」とされているのは、それらの会計方針は経営陣に対して困難、複雑、または主観的な判断、中には
本質的に不確実な事項に対する判断を求めているからである。
これらの方針とは以下を含んでいる。
 貸出金ポートフォリオに対する損失引当金水準の決定
 公正価値で計上され、公正価値の変動による差異がその他包括利益(以下「OCI」という。
)に計上される持分投
資および負債証券、ならびに減損控除後の原価(減損額は公正価値を基に算定される。)で計上される持分投資に
係る減損額および内容の決定
 市場価格が存在せず、公正価値で評価される特定の持分投資、負債証券、貸出金、流動資産、借入金およびデリ
バティブの公正価値の決定
 金融市場の金利、過去の実績、ならびに将来の給付金コストの変動および経済状況に関する経営陣の最善の見積
りに基づいて年金数理計算を用いた将来の年金および退職後給付に係る費用および債務の決定
IFC の金融商品の多くは、公正価値の測定および開示に関して会計基準で定められた公正価値階層に従って分類さ
れているが、ここで公正価値および減損は、重要な観察不能インプットを用いて内部開発されたモデルまたは手法に
基づき見積もられている。
貸倒引当金
IFC では貸出金について、現在の情報や事象に基づき貸付契約条項に従って支払われるべき金額の全額回収が不能
であるとされた場合に当該貸出金が減損していると考える。減損貸出金に対する貸倒引当金は、貸出金の実効利率で
割引かれた期待される将来のキャッシュフローの現在価値とする経営陣の判断を表している。貸倒引当金は、ポート
フォリオに損失が内包されているにもかかわらず特定不能で発生可能性の高い損失の見積りを含んでいる。貸倒引当
金は貸倒引当金繰入の形式で定期的な費用処理を通して設定される。貸倒損失および償却後の回収は貸倒引当金を通
して計上される。
貸倒引当金の妥当性の評価は、借主の財力、地理的集中、産業、地域、およびマクロ経済の状況ならびに過去の傾
向といった要素を経営陣がどのように判断するかに大きく依存している。特定の見積り手法には固有の限界があるた
め、経営陣はキャピタル・プライシングやリスクフレームワークを用いて、ポートフォリオに内包されているにもか
かわらず特定不能な損失予想額を見積もる。この理事会が承認したフレームワークは、過去の貸倒損失実績を用いて
おり、貸倒引当金フレームワークを IFC の適正資本フレームワークと整合させるものである。
貸倒引当金は連結貸借対照表において総貸出金の減少額として別区分で表示される。引当金額の増減は損益計算書
の貸出金および保証による損失引当金繰入または戻入れとして報告されている。IFC において貸倒引当金は投資業務
部門のみに関連するものである(IFC の事業セグメントについては 15 年度連結財務諸表の注記 S を参照のこと。)
。
37
持分投資および負債証券の一時的でない減損
IFC では、OCI を通じて公正価値で評価される持分投資のすべて、および減損控除後の原価で計上される持分投資の
すべてについて、四半期ごとに減損を評価している。減損が認められ、それが一時的でない減損とみなされた場合は、
持分投資額はその減損額について評価減され、当該持分投資の新しい原価となる。IFC では通常、減損はすべて一時
的でないものとみなしている。減損控除後の原価で計上された持分投資の減損損失は、後に価値が回復しても、当該
株式が売却されるまでは戻入れすることができない。OCI を通じて公正価値で計上される、一時的でない減損を行っ
た持分投資の戻入れは、売却されるまでその他包括利益に計上される。
IFC では、OCI を通じて公正価値で評価される負債証券のすべてについて四半期ごとに減損評価を行っている。減損
が認められ、特定の条件(IFC の 15 年度連結財務諸表の注記 A に詳述)を満たした場合、減損の全額が純利益で認識
される。ただし、IFC に当該負債証券を売却する意図がなく、かつ、IFC が負債証券の売却を要求される可能性が 50%
超ではないものの、当該負債証券に信用損失が発生している場合には、かかる信用関連の減損が純利益で認識され、
信用関連以外の減損については OCI で認識される。
市場価格相場の存在しない金融商品の評価
IFC は全デリバティブ商品、流動資産のすべての売却目的有価証券および一部の借入金、貸出金、持分投資および
負債証券を公正価値で計上している。投資契約の中にはデリバティブが組み込まれたもの、またはスタンドアローン
のデリバティブがあり、それらは会計上、デリバティブ資産または負債として区分して会計処理されている。ここに
は、プット、キャップ、フロア、先渡し契約が含まれる。IFC は公正価値で評価されるすべての金融商品を、公正価
値の測定および開示の会計基準で設定されている公正価値階層に従って分類している。これについては IFC の 15 年度
連結財務諸表の注記 A および R に詳述してある。
公正価値で評価される IFC の金融商品は、多くの場合、市場における未調整の市場価格相場に基づいて評価されて
いるか、または重要な仮定やインプットが市場で観察可能な価格モデルを使用しているかによって分類されている。
金融商品の公正価値が、市場で観察不能な重要な仮定やインプットを含むモデルを用いたものである場合は、その公
正価値は通常、将来のキャッシュフロー予測の正味現在価値などの複雑な価格決定モデルを用いて見積られたもので
ある。経営陣は価格モデルを策定するにあたり、カウンターパーティーの財務状態の評価および見通し、適切な割引
率、金利、関連するボラティリティおよび為替レートの変動予測など数多くの仮定を行う。仮定の変更は、資産およ
び負債として報告される金額ならびに関連の損益計算書およびその他包括利益計算書に計上される未実現損益に重大
な影響を及ぼすことがある。公正価値の算定は、IFC の投資業務および財務セグメントの両方に影響を及ぼす(IFC の
15 年度連結財務諸表の注記 S を参照のこと。)
。
年金およびその他の退職後給付
IFC は IBRD、MIGA とともに、ほぼすべてのスタッフを十分カバーする年金および退職後給付制度に加入している。
制度に係る費用、資産、負債はすべて IBRD、IFC、MIGA の間で、加入従業員数に応じた割合で配分している。制度に
係る予測給付債務、年金資産の公正価値、積立状況などの算定に用いられる基本的な数理計算上の仮定は、金融市場
の金利、過去の実績、将来の給付金コストの変動および経済状況に関する経営陣の最善の見積りに基づいて行われる。
詳しくは IFC の 15 年度連結財務諸表の注記 V を参照のこと。
38
経営成績
概要
市場環境は IFC の業績に重要な影響を与える。
IFC の当期純利益および包括利益の主な構成要素、ならびに各年における純利益および包括利益の金額および変動
に影響を与える要素は以下のとおりである。
利益の構成要素
重要な影響
純利益:
有利子資産に係る運用益
スプレッド幅、競争などの市場状況。未収利息不計上および以前に未収利息不計上とされ
た貸出金の利息回収、個別貸出金に係るパーティシペーション・ノートによる収益なども
貸出金による収益に含まれる。
流動資産収益
流動資産ポートフォリオに係る実現・未実現損益。これらには金利環境などの外的要因の
ほか、流動資産ポートフォリオ内の特定の種類の資産の流動性による影響も含まれる。
持分投資ポートフォリオによる収益
世界的な新興市場株式の動向、通貨市場や商品市場の変動、持分投資における各社の業績。
持分ポートフォリオのパフォーマンス(主に実現キャピタルゲイン、配当、減損、非貨幣
性取引に係る利益ならびに持分投資の未実現利益および損失)
。
貸出金および保証損失引当金
借主についてのリスク評価、ならびに債務不履行および債務不履行時の損失の可能性。
その他の収益および費用
IFC から顧客へのアドバイザリーサービスの水準、退職その他の給付制度の費用水準、お
よび管理費用その他の予算承認額。
公正価値で評価されるその他非トレーデ
主として、借入金(IFC のクレジットスプレッドを含む。)および関連デリバティブ商品
ィング金融商品の損益
の公正価値の変動、ならびに投資ポートフォリオ(世界的な新興市場の動向によって一部
影響を受けるプット、ワラント、ストックオプションを含む。)に係る未実現利益との差
額。これらの有価証券は、観察可能または観察不能なインプットを利用して、内部的に開
発したモデルや手法を用いて評価する。
IDA 拠出金
総務会が承認する IDA 拠出金の水準。
その他包括利益:
売却可能として会計処理された上場株式
世界的な新興市場株式の動向、通貨市場や商品市場の変動および各社の業績。上場株式は
および負債証券に係る未実現損益
市場価格(無調整)を用いて評価され、負債証券は内部的に開発した価格モデルまたは手
法(市場での観察が可能または観察不能なインプットを用いる。
)を使用して評価される。
給付制度に係る未認識の数理計算上の損
年金制度資産の運用収益、および予測給付債務を計算するための主な仮定(金融市場の金
益(純額)および未認識の過去勤務費用
利、人件費、過去の実績、将来の給付コストの変動や経済状況に対する経営陣の最善の見
積りを含む。
)
。
39
IFC の 2015 年 6 月 30 日終了年度までの過去 5 期間の純利益は以下のとおりである。
(単位:百万ドル)
2011 年度から 2015 年度までの IFC の純利益
(単位:百万ドル)
6 月 30 日終了年度
以下、IFC の 15 年度連結財務諸表に含まれている期間である 15 年度と 14 年度、および 14 年度と 13 年度の間の重
要な変動について詳述する。14 年度と 13 年度の一部の金額は、当年度の表示に合わせるために再分類されている。
以下のパラグラフでは必要に応じて、再分類された過年度の比較情報を反映している。それらの再分類による純利益
および総資産への影響はない。
15 年度と 14 年度の比較
純利益
IFC の 15 年度の利益は、公正価値で評価される非トレーディング金融商品に係る未実現純損益および IDA 拠出金を
考慮する前で 855 百万ドルであった(14 年度は 1,782 百万ドル)
。
増(減)
15 年度対 14 年度比較
14 年度と比較した 15 年度の純利益の変動(単位:百万ドル)
持分投資および負債証券に係る一時的でない減損の増加 .................................................................................................
$
(484)
持分投資および関連デリバティブに係る利益の減少(純額) ..........................................................................................
(383)
流動資産のトレーディング取引による収益の減少 ............................................................................................................
(132)
貸出金、保証およびその他未収金による損失引当金繰入の増加 ......................................................................................
(83)
貸出金および保証による収益、貸出金および関連デリバティブに係る実現損益の増加 ...................................................
58
非トレーディング取引に係る為替差益の増加 ...................................................................................................................
72
その他(純額) .................................................................................................................................................................
25
公正価値で評価される非トレーディング金融商品に係る未実現純損益および
$
IDA 拠出金控除前利益の差引合計 .................................................................................................................................
40
(927)
15 年度
公正価値で評価される非トレーディング金融商品に係る未実現純損益および IDA 拠出金控除前利益.....................
$ 855
14 年度
$
1,782
公正価値で評価される非トレーディング金融商品に係る未実現純(損失)利益 ............................................(106)
(43)
IDA 拠出金控除前利益 ...............................................................................................................................................749
1,739
IDA 拠出金 ........................................................................................................................................................(340)
(251)
非支配会社持分に帰すべき純損失(利益) ..................................................................................................... 36
IFC に帰すべき純利益 ...............................................................................................................................................
$ 445
(5)
$
1,483
IFC の純利益の構成要素に関するより詳細な分析は以下のとおりである。
貸出金および保証による収益、貸出金および関連デリバティブに係る実現損益
IFC の主な有利子運用資産は貸出金ポートフォリオである。15 年度における貸出金および保証による収益、貸出金
および関連デリバティブに係る実現損益は合計 1,123 百万ドルで、14 年度の 1,065 百万ドルから 58 百万ドル増加し
た。
実行済貸出金ポートフォリオは 2014 年 6 月 30 日現在の 24,407 百万ドルから 1,155 百万ドル減少し、2015 年 6 月
30 日現在では 23,252 百万ドルとなった。
15 年度において新規の貸出金は返済額を上回った。貸出金残高の合計額が減少したのは、IFC の報告通貨であるド
ルの為替変動が原因であり、15 年度においてドルは IFC の殆どの貸付通貨に対して大幅に上昇した。15 年度の貸出金
残高は為替変動により 1,076 百万ドル減少した。IFC は貸出金ポートフォリオの大部分で為替リスクを経済的にヘッ
ジするために、為替変動によって大幅に相殺される融資関連デリバティブからの利益も計上した。
15 年度における貸出金および保証による収益、貸出金および関連デリバティブに係る実現損益の変動(単位:百万ドル)
14 年度における貸出金および保証による収益、貸出金および関連デリバティブに係る実現損益 ................................................
$
1,065
貸出金ポートフォリオおよび金利環境の変化による増加 .....................................................................................................................
94
貸出金、保証および関連デリバティブに係る実現利益の増加による増加 .........................................................................................
48
未収利息不計上貸出金に係る利息の回収額の減少による減少(純額) ............................................................................................. (25)
コミットメントフィーおよび金融サービス報酬の減少による減少 ..................................................................................................... (11)
パーティシペーション・ノートからの収益およびその他の収益の減少による減少 ......................................................................... (48)
$
貸出金および保証による収益、貸出金および関連デリバティブに係る実現損益の変動 .................................................................
58
15 年度における貸出金および保証による収益、貸出金および関連デリバティブに係る実現損益 ................................................
$
1,123
2015 年 6 月 30 日現在における貸出金の加重平均約定金利は 4.9%で、2014 年 6 月 30 日現在の 4.5%から上昇した。
かかる上昇は、固定金利付きの現地通貨建て貸出金が増加したことと、IFC の貸出金の多くが US$ LIBOR を基準とし
て定期的な金利改定を行っており、US$ 6 ヶ月 LIBOR が 2014 年 6 月 30 日現在では 0.33%であったが 2015 年 6 月 30
41
日現在では 0.44%に上昇したことが原因であった。これらの要因が重なり、15 年度の受取利息は 14 年度より 94 百万
ドル増加した。15 年度の貸出金の実現利益は大幅に増加したが、これは 1 件の貸出金の処理に成功して 19 百万ドル
の利益が発生したことと、1 件の貸出金を被投資会社の株式と交換することで 16 百万ドルの利益が発生したことが主
因であった。
持分投資および関連デリバティブによる収益
15 年度における関連デリバティブを含む持分投資ポートフォリオによる収益は、14 年度における収益 1,289 百万ド
ルを 862 百万ドル下回る 427 百万ドルであった。
IFC は、その開発段階の役割が完了した持分投資および所定の売却トリガー水準に達した持分投資ならびに必要に
応じて、ロックアップ期間が終了した持分投資を売却している。持分投資および関連デリバティブによる利益には、
実現利益および未実現利益が含まれる。
IFC は、持分投資および関連デリバティブによる利益を現金および非金銭的対価の形で計上し、15 年度の当該利益
は 14 年度の 1,013 百万ドルから 275 百万ドル増加して 1,288 百万ドルとなったが、実現利益の殆どが 2014 年 12 月
31 日に終了した 6 ヶ月間に計上されたものであった。持分投資および関連デリバティブによる実現利益は一時期に集
中する。15 年度においては、個別のキャピタルゲインが 20 百万ドルを超える投資案件が 12 件あり、それらの合計は
920 百万ドル(15 年度の実現利益の 71%)であった。14 年度においては、個別のキャピタルゲインが 20 百万ドルを
超える投資案件が 13 件あり、それらの合計は 733 百万ドル(14 年度の実現利益の 72%)であった。
15 年度の配当収益は合計 272 百万ドルで、14 年度の 274 百万ドルからほぼ横ばいであった。配当収益には石油・ガ
ス・鉱業セクターにおける非法人型合弁事業(以下「UJV」という。
)に係る収益(原価回収基準)が含まれており、
15 年度は 4 件分の合計 23 百万ドル、14 年度は 4 件分の合計 19 百万ドルであった。
持分投資に係る一時的でない減損は、15 年度は合計 732 百万ドル(売却可能として会計処理された持分投資に係る
減損が 381 百万ドル、減損控除後の原価で計上される持分投資に係る減損が 351 百万ドル)で、14 年度の合計 268 百
万ドル(売却可能として会計処理された持分投資に係る減損が 161 百万ドル、減損控除後の原価で計上される持分投
資に係る減損が 107 百万ドル)から 464 百万ドル増加した。15 年度の持分投資に係る一時的でない減損は、東ヨーロ
ッパおよび中央アジアや中南米およびカリブ海諸国のいくつかの国における経済状況の悪化、原油価格の低下および
IFC が持分投資した通貨の多くのドルに対する値下がり、ならびにプロジェクト固有の悪影響を反映している。15 年
度の持分投資に係る一時的でない減損のうち、305 百万ドル(42%)はヨーロッパおよび中央アジア、205 百万ドル
(28%)は中南米およびカリブ海諸国のものであった。15 年度においては、一時的でない減損が 20 百万ドルを超過
した投資案件が 4 件(合計 234 百万ドル)あった。14 年度においては、一時的でない減損が 20 百万ドルを超過した
投資案件が 1 件(合計 34 百万ドル)あった。
持分投資および関連デリバティブに係る未実現純損失は、402 百万ドル(14 年度は 256 百万ドルの未実現純利益)
であった。これは主に、2014 年 6 月 30 日現在の IFC の貸借対照表において報告されたプットオプションの価値の買
戻しに関連する未実現利益 235 百万ドルの戻し入れと、全体的に低迷している新興市場株式の情勢が純利益の公正価
値で評価される多くの IFC の持分投資の価値にマイナスの影響を与えていることによる。15 年度においては、未実現
利益のうち 58 百万ドルが 1 件の投資によるものであり、未実現損失のうち 179 百万ドルがエクイティファンドへの 9
件の投資によるものであった。14 年度においては、未実現利益のうち 181 百万ドルが 1 件の投資によるものであり、
42
未実現損失のうち 31 百万ドルがエクイティファンドへの 6 件の投資によるものであった。それらのファンドに対する
個々の投資は、未実現損益の重要な構成要素となっている。
負債証券による収益ならびに負債証券および関連デリバティブに係る実現損益
15 年度の負債証券による収益ならびに負債証券および関連デリバティブに係る実現損益は 132 百万ドルで、14 年度
の 89 百万ドルから 43 百万ドル増加した。15 年度におけるこの増加の最大要因は、受取利息(45 百万ドル)ならびに
負債証券および関連デリバティブに係る実現利益(17 百万ドル)であり、14 年度に比べて増加している。
貸出金、保証およびその他未収金による損失引当金繰入
15 年度における貸出金ポートフォリオの質は、平均カントリーリスクおよび平均信用リスク格付による評価では、
僅かに悪化した。実行済貸出金ポートフォリオのうち不良債権は、2014 年 6 月 30 日現在の 1,342 百万ドルから 236
百万ドル増加し、2015 年 6 月 30 日現在は 1,578 百万ドルであった。増加した 236 百万ドルの構成は、貸出金および
貸出金に類似した負債証券で不良債権となった 587 百万ドル、不良債権ではなくなった 278 百万ドル、ならびに返済
額および為替換算調整額として減額された 73 百万ドルであった。
15 年度において IFC は、貸出金、保証およびその他未収金による損失引当金 171 百万ドル(個別貸倒引当金 199 百
万ドル、一般貸倒引当金の戻入れ 30 百万ドル、保証損失引当金の戻入れ 2 百万ドル、その他未収金損失引当金 4 百万
ドル)を計上し、14 年度においては、貸出金、保証およびその他未収金による損失引当金 88 百万ドル(個別貸倒引
当金 127 百万ドル、一般貸倒引当金の戻入れ 44 百万ドル、保証その他未収金損失引当金 5 百万ドル)を計上した。15
年度における個別貸倒引当金のうち、2 つの貸出金に係るプロジェクト固有の影響によるものは 92 百万ドルであった。
2015 年 6 月 30 日現在における IFC の貸倒引当金残高合計は、実行済貸出金ポートフォリオの 7.5%(2014 年 6 月
30 日現在は 6.9%)であり、57 百万ドル増加している。貸倒引当金残高の増加は 169 百万ドルの引当金によるものだ
が、これは、ドル建て以外の貸出金に対する引当金および IFC の貸付通貨の殆どに対するドルの上昇に関連する為替
差益 80 百万ドルや、貸倒償却(回収額控除後)およびその他調整額 32 百万ドルによって、部分的に相殺されている。
2015 年 6 月 30 日現在の個別貸倒引当金残高 962 百万ドル(2014 年 6 月 30 日現在は 838 百万ドル)は、減損貸出金
1,722 百万ドル(2014 年 6 月 30 日現在は 1,725 百万ドル)に対して保有されており、引当率は 56%である(2014 年
6 月 30 日現在は 49%)。
流動資産のトレーディング取引による収益
デリバティブおよび有価証券貸借取引控除後の流動資産ポートフォリオは 2014 年 6 月 30 日現在の 337 億ドルから
2015 年 6 月 30 日現在では 395 億ドルへと増加した。流動資産のトレーディング取引による総収益は 15 年度は 467 百
万ドルであった(14 年度は 599 百万ドル)
。
15 年度は、受取利息合計 614 百万ドルのほか、ABS および MBS ポートフォリオに係る損失を公正価値にして 38 百万
ドル計上した。一方、その他の商品における保有(米国債、各国政府発行債、優良企業債およびデリバティブを含む。)
については 109 百万ドル損失が発生し、15 年度は純損失が 147 百万ドルとなった。
15 年度の収益の主な要因は、当年度に獲得した利息 614 百万ドル(14 年度は 533 百万ドル)であった。14 年度と
比べて、スプレッドの縮小により利益は減少し、ドル高の影響で外貨建て流動資産の利益は減少した。流動資産に係
43
る純為替差損は、為替ヘッジの利益、とりわけ関連通貨によるデリバティブ商品および債務発行によって相殺されて
いる。
15 年度および 14 年度において、内部的に運用されている流動資産ポートフォリオによる収益はそれぞれのベンチ
マークを超えた。
2015 年 6 月 30 日現在、売却目的有価証券は公正価値にして 86 百万ドルで、レベル 3 の有価証券に分類されている
(2014 年 6 月 30 日現在は 188 百万ドル)
。
借入費用
15 年度の IFC の借入費用は、14 年度の 196 百万ドル(借入返済による利益 3 百万ドルを控除後)を 62 百万ドル上
回る 258 百万ドル(借入返済による利益 2 百万ドルを控除後)であった。これは、資本市場発展のための取り組みと
して発行された、固定利付の現地通貨建て債券に係る支払利息が増加したことを反映している。
(全体としてより高金
利の現地通貨建て資産に投資されている。
)
借入金に係るデリバティブによる効果考慮後(市場その他から調達した短期借入を除く。
)の市場から調達した IFC
の借入金の加重平均割合は、2014 年 6 月 30 日現在の 0.4%から僅かに増加して、2015 年 6 月 30 日現在は 0.5%であ
った。2015 年 6 月 30 日現在、借入金に係るデリバティブによる効果を考慮後で、公正価値調整前の借入金ポートフ
ォリオ(短期借入を除く。
)の規模は、2014 年 6 月 30 日現在の 478 億ドルを 39 億ドル上回り、517 億ドルであった。
その他収益
15 年度におけるその他の収益は、14 年度の 461 百万ドルを 44 百万ドル上回る 505 百万ドルであった。これは主に、
14 年度と比べて 15 年度に資金動員が活発であったことに伴う手数料収入によるものである。15 年度のその他収益に
は IFC の連結子会社である AMC からの管理報酬およびサービス報酬の払戻金 59 百万ドル(14 年度は 57 百万ドル)な
らびに助言業務に係る収益 244 百万ドル(14 年度は 254 百万ドル)も含まれている。15 年度の助言業務に係る収益に
は、ドナー資金の利用による 197 百万ドル(14 年度は 216 百万ドル)のほか、顧客からの報酬およびドナーからの管
理費 47 百万ドル(14 年度は 38 百万ドル)が含まれている。
その他費用
15 年度のその他費用は、1,418 百万ドルから僅かに 5 百万ドル増加し、1,423 百万ドルであった。その他費用は、
勤務費用および利息費用の増加(年金制度資産の期待運用収益の増加によって一部相殺された。
)によって年金その他
退職給付金に係る費用が増加したことや、AMC の運用する資金および資産の増加によって AMC による費用が増加した
ことを反映している。
15 年度の助言業務に係る費用は、一連の助言業務の改革および新しい組織構造への移行を反映して助言業務が減少
したことにより、総額 285 百万ドル(14 年度は 324 百万ドル)であった。
さらに、一連の支出統制に従い、管理費用は、人員の減少とその結果生じる職員の給与および給付金に対する影響、
コンサルタント費用の減少および旅費の減少によって好影響を受けたが、これは共通業務の増加によって IBRD に支払
うサービス報酬およびサポート費用が増加したことによって、部分的に相殺された。最後に、管理費用は、費用がド
ル以外の通貨で支払われたことによっても減少した。
44
非トレーディング取引による為替差損益
15 年度に純利益に計上された為替差益は 53 百万ドル(14 年度は 19 百万ドルの為替差損)であった。15 年度にお
いて、売却可能として会計処理された負債証券による為替差損は 115 百万ドル(14 年度は 8 百万ドルの為替差損)で
あり、その他包括利益に計上されるが、かかる負債証券を経済的にヘッジするデリバティブによる損益は純利益に計
上される。
IFC はヘッジされていないドル建て以外の貸出金および負債証券をほとんど所有していないこと、また、かかる通
貨に対してドル高になっていることを主因として、IFC は 15 年度に、純利益およびその他包括利益の両方で全体とし
て 62 百万ドルの為替関連損失(14 年度は 27 百万ドルの損失)を計上した。
非トレーディング金融商品に係る未実現純損益
15 年度連結財務諸表の注記 A により詳しく記載されているとおり、IFC では特定の金融商品を公正価値で計上し、
それらの金融商品の未実現損益を当期純利益に計上している。すなわち、(ⅰ) 経済的にヘッジされている市場借入
金のすべて、および(ⅱ) 特定の貸出金、負債証券および関連デリバティブに係る未実現損益、(ⅲ) 実質的に市場借
入金のすべて、ならびに(ⅳ) IDA からの借入金、である。
以下は、15 年度および 14 年度の純利益に対する、これらの非トレーディング金融商品の公正価値評価による影響
を要約したものである。
14 年度と比較した 15 年度の非トレーディング金融商品に係る未実現純損益(単位:百万ドル)
15 年度
貸出金、負債証券および関連デリバティブに係る未実現利益(損失) ............................ $
(54)
市場借入金、IDA および関連デリバティブに係る未実現利益(損失)
(純額) .....................
(52)
公正価値で評価されるその他非トレーディング金融商品に係る未実現利益(損失)
(純額) ......... $ (106)
14 年度
$
31
(74)
$
(43)
IFC の市場借入金、IDA および関連デリバティブの公正価値の変動(純額)には、US$ LIBOR に対して測定した場合
の IFC のクレジットスプレッドの変動の影響が含まれている。クレジットスプレッドが拡大するにつれて、未実現利
益が計上され、クレジットスプレッドが縮小するにつれて、未実現損失が計上される(リスクフリー金利および為替
レートの変動等、その他の要因による影響は関係しない。)
。規模および方向(利益または損失)は期間ごとに変動す
る可能性があるが、キャッシュフローは変動しない。通常、市場借入金のキャッシュフローの通貨、金額および時期
と、同時に締結した関連デリバティブのキャッシュフローの通貨、金額および時期を一致させることが IFC の方針で
ある。
15 年度には、資金調達通貨ポートフォリオ全体にわたり、スワップ後の市場借入金残高に僅かな未実現損失が生じ
た。15 年度末は 14 年度末と比べて、ドル建て借入金および豪ドル建て借入金の経済的ヘッジに係るスワップ後コス
トがベンチマークに対してほぼ横ばいであった。15 年度末において、日本円建て借入金の経済的ヘッジに係るコスト
は 14 年度末に比べて微減したが、ニュージーランドドル建て借入金の公正価値のヘッジコストは 15 年度末に増加し
た。結果的に、IFC は 15 年度の借入金および関連デリバティブについて 52 百万ドルの未実現純損失を計上すること
になった(14 年度は 74 百万ドルの未実現純損失を計上)
。
45
IFC は 15 年度において、貸出金、負債証券および関連デリバティブ(主として転換社債、ワラントおよび金利/為
替スワップなど固定金利および/またはドル建て以外の貸出金ポートフォリオの経済的ヘッジに利用)に係る 54 百万
ドルの未実現純損失を計上した(14 年度は 31 百万ドルの未実現純利益を計上)
。
IDA への拠出金
IFC は、IDA への拠出金を 14 年度においては 251 百万ドル計上していたのに対し、15 年度には 340 百万ドル計上し
ている。
その他包括利益
持分投資および負債証券に係る未実現損益
公正価値が容易に入手可能な市場で上場している IFC の負債証券投資および持分投資は、売却可能として分類され
ている。これらの投資の未実現損益は、実現するまでその他包括利益(以下「OCI」という。)に計上され、実現される
際に純利益に振替えられる。OCI に計上される持分投資および負債証券の未実現損益の変動に大きな影響を及ぼす要
因は、(i) 新興市場における株式の世界的動向および(ⅱ) 持分投資や負債証券を売却した際の利益の実現である。
以下は、OCI における持分投資および負債証券に係る未実現利益および損失の変動(純額)の要約である。
その他包括利益の変動 ― 14 年度と比較した 15 年度の持分投資および負債証券に係る未実現損益(単位:百万ドル)
15 年度
14 年度
年度中に生じた持分投資の未実現利益および損失(純額)
未実現利益········································································
$ 1,067
$
未実現損失········································································
(799)
純利益に含まれる実現利益および一時的でない減損に関する再分類調整額 ················
(393)
持分投資に係る未実現利益および損失(純額) ·········································
$
(125)
882
(228)
$
(312)
342
年度中に生じた負債証券の未実現利益および損失(純額)
未実現利益········································································
$
110
$
未実現損失········································································
(182)
154
(93)
純利益に認識された実現利益、減損の非信用関連部分の評価減および純利益に含まれ
る一時的でない減損の評価減に関する再分類調整額 ·······································
(7)
負債証券の未実現利益および損失(純額) ··············································
$
(79)
$
(16)
45
持分投資および負債証券に係る未実現利益および損失合計 ································
$
(204)
$
387
15 年度の持分投資に係る未実現純利益は 268 百万ドルであった。この利益は、15 年度を通じて新興市場株式の情勢
は全体的に低迷していたにもかかわらず、売却可能として会計処理されるアジアの数少ない金融機関投資の価値が、
15 年度後半におけるかかる地域のボラティリティの大きさをよそに 15 年度に上昇したことによって、達成された。
給付制度に係る未認識の数理計算上の損益(純額)、および未認識の過去勤務費用
年金およびその他退職後給付制度の積立状況の変動は、当年度の期間給付費用として純利益に認識されないものに
ついては、OCI に認識される。
15 年度において、IFC は 162 百万ドルの利益を計上した。これは主として、給付債務の見積りに使用する割引率が
上昇したことによって生じた未認識数理計算上の利益(純額)156 百万ドルによるものである。割引率については、
職員退職給付制度、および退職後給付制度に係る給付債務の見積りにおいて使用される割引率の仮定が、2014 年 6 月
46
30 日現在の 4.2%から 2015 年 6 月 30 日現在には 4.3%、また 2014 年 6 月 30 日現在の 4.3%から 2015 年 6 月 30 日現
在には 4.4%にそれぞれ上昇した。
14 年度と 13 年度の比較
純利益
IFC の 14 年度の利益は、公正価値で評価される非トレーディング金融商品に係る未実現純損益および IDA 拠出金を
考慮する前で 1,782 百万ドルであった(13 年度は 909 百万ドル)
。
13 年度と比較した 14 年度の純利益の変動(単位:百万ドル)
増(減)
14 年度対 13 年度比較
$
持分投資および関連デリバティブに係る利益の増加(純額) ..........................................................................................
336
持分投資および負債証券に係る一時的でない減損の減少 .................................................................................................
206
貸出金、保証およびその他未収金による損失引当金繰入の減少 ......................................................................................
155
流動資産のトレーディング取引による収益の増加 ............................................................................................................
99
その他(純額) .................................................................................................................................................................
77
差引合計 ............................................................................................................................................................................
$
873
14 年度
公正価値で評価される非トレーディング金融商品に係る未実現純損益および IDA 拠出金控除前利益 .....................
$ 1,782
公正価値で評価される非トレーディング金融商品に係る未実現純(損失)利益 ............................................ (43)
IDA 拠出金控除前利益 ...............................................................................................................................................
1,739
IDA 拠出金 ........................................................................................................................................................(251)
非支配会社持分に帰すべき純(利益)損失 ..................................................................................................... (5)
IFC に帰すべき純利益 ...............................................................................................................................................
$ 1,483
13 年度
$
909
441
1,350
(340)
8
$ 1,018
IFC の純利益の構成要素に関するより詳細な分析は以下のとおりである。
貸出金および保証による収益、貸出金および関連デリバティブに係る実現損益
IFC の主な有利子運用資産は貸出金ポートフォリオである。14 年度における貸出金および保証による収益は 1,065
百万ドルで、13 年度の 996 百万ドルを 69 百万ドル上回った。
実行済貸出金ポートフォリオは 2013 年 6 月 30 日現在の 22,606 百万ドルから 1,801 百万ドル増加し、2014 年 6 月
30 日現在においては 24,407 百万ドルとなった。2014 年 6 月 30 日現在における貸出金の加重平均約定金利は 4.5%で、
2013 年 6 月 30 日から横ばいであった。これらの要因が重なり、受取利息は 13 年度を 70 百万ドル上回る結果となっ
た。また、コミットメントフィーおよび金融サービス報酬は 13 年度を 5 百万ドル下回った。未収利息不計上の状態か
ら戻された貸出金の未収利息回収額については、未収利息不計上に認定された貸出金に係る収益の戻入れ控除後で、
47
13 年度を 33 百万ドル下回った。貸出債権売却に係る非金融利益は、13 年度を 11 百万ドル下回った。上記の最低約定
利息を上回る IFC のパーティシペーション・ノートに係る収益およびその他の収益は、13 年度を 20 百万ドル上回っ
た。貸出金および関連デリバティブに係る実現利益は、13 年度を 28 百万ドル上回った。
持分投資および関連デリバティブによる収益
14 年度における関連デリバティブを含む持分投資ポートフォリオによる収益は、13 年度における収益 732 百万ドル
を 557 百万ドル上回る 1,289 百万ドルであった。
14 年度における IFC の持分投資および関連デリバティブに係る実現利益は 1,013 百万ドルで、13 年度の 967 百万ド
ルに比べ、46 百万ドルの増加であった。IFC は、その開発段階の役割が完了した持分投資および所定の売却トリガー
水準に達した持分投資ならびに必要に応じて、ロックアップ期間が終了した持分投資を売却している。
14 年度の持分投資による実現利益は集中的で、個別のキャピタルゲインが 20 百万ドルを超える投資案件が 13 件あ
り、それらの合計は 733 百万ドル(14 年度の実現利益の 72%に相当)であった。13 年度においては、個別のキャピ
タルゲインが 20 百万ドルを超える投資案件は 10 件あり、それらの合計は 562 百万ドル(13 年度の実現利益の 58%に
相当)であった。
配当収益は合計 274 百万ドルで、13 年度の 248 百万ドルに比べ 26 百万ドルの増収となった。配当収益には石油・
ガス・鉱業セクターにおける非法人型合弁事業(以下「UJV」という。)に係る収益(原価回収基準)が含まれており、
14 年度は 4 件分の合計 19 百万ドル、13 年度は 4 件分の合計 36 百万ドルであった。
持分投資に係る一時的でない減損は、14 年度は 268 百万ドル(売却可能として会計処理された持分投資に係る減損
が 161 百万ドル、減損控除後の原価で計上される持分投資に係る減損が 107 百万ドル)で、13 年度は 441 百万ドル(売
却可能として会計処理された持分投資に係る減損が 289 百万ドル、減損控除後の原価で計上される持分投資に係る減
損が 152 百万ドル)であった。14 年度においては、一時的でない減損が 20 百万ドルを超過した投資案件が 1 件(合
計 34 百万ドル)あった。13 年度においては、一時的でない減損が 20 百万ドルを超過した投資案件が 3 件(合計 90
百万ドル)あった。14 年度の減損は 13 年度に比べて減少しているが、これは、13 年度の下半期に市場が調整された
ことにより当該半期に 297 百万ドルというかなり大きな減損が生じた後、14 年度に入り主要な新興株式市場が回復し
たことを反映している。
持分投資および関連デリバティブに係る未実現純利益は、14 年度は 256 百万ドルの純利益で、13 年度は 34 百万ド
ルの純損失であった。14 年度においては、未実現利益のうち 181 百万ドルおよび 2014 年 6 月 30 日に終了した 3 ヶ月
間(14 年度第 4 四半期)の 145 百万ドルが 1 件の投資によるものであり、未実現損失のうち 31 百万ドルがエクイテ
ィファンドへの 6 件の投資によるものであった。13 年度においては、未実現利益のうち 217 百万ドルが 1 件の投資に
よるものであり、未実現損失のうち 162 百万ドルがエクイティファンドへの 7 件の投資によるものであった。それら
のファンドに対する個々の投資は、未実現損益の重要な構成要素となっている。
負債証券による収益ならびに負債証券および関連デリバティブに係る実現損益
14 年度の負債証券による収益ならびに負債証券および関連デリバティブに係る実現損益は 89 百万ドルで、13 年度
の 69 百万ドルから 20 百万ドル増加した。14 年度におけるこの増加の最大要因は、一時的でない減損(33 百万ドル)
であり、13 年度に比べて減少している。負債証券に係る実現利益は、14 年度は 13 年度に比べ 13 百万ドル減少した。
48
貸出金、保証およびその他未収金による損失引当金繰入
14 年度における IFC の貸出金ポートフォリオの質は、平均カントリーリスクおよび平均信用リスク格付による評価
では、大幅な変動はなかった。別の評価方法として、実行済貸出金ポートフォリオのうち不良債権は、2013 年 6 月 30
日現在の 1,272 百万ドルから増加し、2014 年 6 月 30 日現在は 1,342 百万ドルであった。14 年度において IFC は、貸
出金、保証およびその他未収金による損失引当金 88 百万ドル(個別貸倒引当金 127 百万ドル、一般貸倒引当金の戻入
れ 44 百万ドル、保証その他未収金損失引当金 5 百万ドル)を計上し、13 年度においては、貸出金、保証およびその
他未収金による損失引当金 243 百万ドル(個別貸倒引当金 298 百万ドル、一般貸倒引当金の戻入れ 49 百万ドル、保証
その他未収金損失引当金の戻入れ 6 百万ドル)を計上した。
2014 年 6 月 30 日現在における IFC の貸倒引当金残高合計は、実行済貸出金ポートフォリオの 6.9%(2013 年 6 月
30 日現在は 7.2%)であった。
2014 年 6 月 30 日現在の個別貸倒引当金残高 838 百万ドル(2013 年 6 月 30 日現在は 741 百万ドル)は、減損貸出金
1,725 百万ドル(2013 年 6 月 30 日現在は 1,403 百万ドル)に対して保有されており、引当率は 49%である(2013 年
6 月 30 日現在は 53%)。
流動資産のトレーディング取引による収益
デリバティブおよび有価証券貸借取引控除後の流動資産ポートフォリオは 2013 年 6 月 30 日現在の 312 億ドルから
2014 年 6 月 30 日現在では 337 億ドルへと増加した。流動資産のトレーディング取引による収益は 14 年度は 599 百万
ドルであった(13 年度は 500 百万ドル)。14 年度および 13 年度において、流動資産ポートフォリオによる収益はそ
れぞれのベンチマークを超えた。
14 年度は、受取利息合計 533 百万ドルのほか、ABS および MBS ポートフォリオに係る利益を公正価値にして 67 百万
ドル計上した。一方、その他の商品における保有(米国債、各国政府発行債、優良企業債およびデリバティブを含む。)
については 1 百万ドル損失が発生し、14 年度は純利益が 66 百万ドルとなった。
2014 年 6 月 30 日現在、売却目的有価証券は公正価値にして 188 百万ドルで、レベル 3 の有価証券に分類されてい
る(2013 年 6 月 30 日現在は 85 百万ドル)。
借入費用
14 年度の IFC の借入費用は、13 年度の 220 百万ドルを 24 百万ドル下回る 196 百万ドルであった。これは、14 年度
は 13 年度に比べてドル金利環境が低下したものの、借入額が増加したことによってある程度相殺されたことを反映し
ている。14 年度に IFC は、市場借入のうち 14 億ドルを買い戻し、消却している(13 年度は 4 億ドル)
。14 年度の借
入費用 196 百万ドル(13 年度は 220 百万ドル)は、買戻しによる利益 3 百万ドル(13 年度は 11 百万ドル)を控除し
た後の金額で計上されている。
借入金に係るデリバティブによる効果考慮後(市場その他から調達した短期借入を除く。
)の市場から調達した IFC
の借入金の加重平均割合は、2013 年 6 月 30 日現在の 0.4%から変動はなく、2014 年 6 月 30 日現在も 0.4%であった。
2014 年 6 月 30 日現在、借入金に係るデリバティブによる効果を考慮後で、公正価値調整前の借入金ポートフォリオ
(短期借入を除く。)の規模は、2013 年 6 月 30 日現在の 439 億ドルを 39 億ドル上回り、478 億ドルであった。
49
その他収益
14 年度におけるその他の収益は、13 年度の 441 百万ドルを 20 百万ドル上回る 461 百万ドルであった。14 年度のそ
の他収益には IFC の連結子会社である AMC からの管理報酬およびサービス報酬の払戻金 57 百万ドル(13 年度は 40 百
万ドル)ならびに助言業務に係る収益 254 百万ドル(13 年度は 239 百万ドル)が含まれている。14 年度の助言業務に
係る収益には、ドナー資金の利用による 216 百万ドル(13 年度は 210 百万ドル)のほか、顧客からの報酬およびドナ
ーからの管理費 38 百万ドル(13 年度は 29 百万ドル)が含まれている。
その他費用
14 年度の管理費用(その他費用の主要な構成要素)は、13 年度の 845 百万ドルから 43 百万ドル増加し、888 百万
ドルであった。管理費用の増加は、主として管理費用に含まれる助言業務に係る費用の 21 百万ドルの増加、職員の昇
給および職員の増員によるものであった。管理費用には、IFC の払戻可能プログラムに起因する特定の収益および費
用ならびに債務整理の状況(ジェパディ・プロジェクト)で生じる費用のグロスアップ効果が含まれている(14 年度
は 13 年度から変動はなく 26 百万ドルであった。)
。
IFC は、年金およびその他の退職後給付制度による費用として、13 年度に 173 百万ドル、14 年度も 173 百万ドルを
計上した。
14 年度の助言業務に係る費用は総額 324 百万ドル(13 年度は 351 百万ドル)であった。助言業務に係る費用の減少
は、主に助言業務に係る費用が主流化されたためであり、助言業務に関連する管理費用は、現在では管理費用に反映
されている。14 年度の助言業務に係る費用には、助言業務の引当金に利用された、ドナーから提供された資金 216 百
万ドル(13 年度は 210 百万ドル)が含まれている。
非トレーディング金融商品に係る未実現純損益
14 年度連結財務諸表の注記 A により詳しく記載されているとおり、IFC では特定の金融商品を公正価値で計上し、
それらの金融商品の未実現損益を当期純利益に計上している。すなわち、(i) スワップ取引が行われる市場借入金の
すべて、および(ⅱ) 特定の貸出金、負債証券および関連デリバティブに係る未実現損益、ならびに(ⅲ) 実質的に市
場借入金のすべて、である。
以下は、14 年度および 13 年度の純利益に対する、これらの非トレーディング金融商品の公正価値評価による影響
を要約したものである。
13 年度と比較した 14 年度の非トレーディング金融商品に係る未実現純損益(単位:百万ドル)
14 年度
貸出金、負債証券および関連デリバティブに係る未実現利益(損失) ............................
$
31
13 年度
$ 409
市場借入金および関連デリバティブに係る未実現利益(損失)
(純額) ...........................
(74)
32
公正価値で評価されるその他非トレーディング金融商品に係る未実現利益(損失)
(純額) .........
$ (43)
$ 441
IFC の市場借入金および関連デリバティブの公正価値の変動(純額)には、US$ LIBOR に対して測定した場合の IFC
のクレジットスプレッドの変動の影響が含まれている。クレジットスプレッドが拡大するにつれて、未実現利益が計
上され、クレジットスプレッドが縮小するにつれて、未実現損失が計上される(リスクフリー金利および為替レート
の変動等、その他の要因による影響は関係しない。)
。規模および方向(利益または損失)は期間ごとに変動する可能
50
性があるが、キャッシュフローは変動しない。通常、市場借入金のキャッシュフローの通貨、金額および時期と、同
時に締結した関連デリバティブのキャッシュフローの通貨、金額および時期を一致させることが IFC の方針である。
13 年度は、第 1~第 3 四半期は金利水準は引き続き安定し、第 4 四半期は米国の経済活動の加速の兆しの中で債券
市場は流動性の低下観測から弱含んだ。13 年度の最後の 3 ヶ月間において、ドル建て 5 年物金利のベンチマークは約
50 ベーシスポイントも急騰し、IFC の中長期借入ポートフォリオに大きな再評価益をもたらしたが、関連デリバティ
ブの損失により相殺された。ベンチマークとなる IFC のドル建て発行のクレジットスプレッドは 13 年度に約 10 ベー
シスポイント悪化し、市場借入金および関連デリバティブについて 32 百万ドルの全体的な未実現利益を生じさせた。
14 年度には、関連する経済的ヘッジの利益による相殺が不完全な資金調達通貨ポートフォリオ全体にわたり、市場
借入金残高に僅かな再評価損が生じた。14 年度は 13 年度と比べて、ドル建て借入金の経済的ヘッジに係るスワップ
後コストがドルベンチマークに対してほぼ横ばいであった。14 年度において、日本円建て借入金および豪ドル建て借
入金の経済的ヘッジに係るコストは 13 年度に比べてやや上昇したが、ニュージーランドドル建て借入金の公正価値の
ヘッジコストは 14 年度に低下した。結果的に、IFC は 14 年度の市場借入金および関連デリバティブについて 74 百万
ドルの未実現純損失を計上することになった(13 年度同期は 32 百万ドルの未実現利益を計上)
。
IFC は 14 年度において、貸出金、負債証券および関連デリバティブ(主として転換社債、ワラントおよび金利/為
替スワップなど固定金利および/またはドル建て以外の貸出金ポートフォリオの経済的ヘッジに利用)に係る未実現
純利益 31 百万ドルを計上した(13 年度は 409 百万ドル)
。
IDA への拠出金
IFC は、IDA への拠出金を 13 年度においては 340 百万ドル計上していたのに対し、14 年度には 251 百万ドル計上し
ている。
その他包括利益
持分投資および負債証券に係る未実現損益
公正価値が容易に入手可能な市場で上場している IFC の負債証券投資および持分投資は、売却可能として分類され
ている。これらの投資の未実現損益は、実現するまでその他包括利益(以下「OCI」という。)に計上され、実現される
際に純利益に振替えられる。OCI に計上される持分投資および負債証券の未実現損益の変動に大きな影響を及ぼす要
因は、(i) 新興市場における株式の世界的動向および(ⅱ) 持分投資や負債証券を売却した際の利益の実現である。
51
以下は、OCI における持分投資および負債証券に係る未実現利益および損失の変動(純額)である。
その他包括利益の変動 ― 13 年度と比較した 14 年度の持分投資および負債証券に係る未実現損益(単位:百万ドル)
14 年度
13 年度
年度中に生じた持分投資の未実現利益および損失(純額)
未実現利益········································································
$
882
$
未実現損失········································································
(228)
純利益に含まれる実現利益および一時的でない減損に関する再分類調整額 ················
(312)
$
342
持分投資に係る未実現利益および損失(純額) ··········································
757
(396)
$
24
385
年度中に生じた負債証券の未実現利益および損失(純額)
未実現利益········································································
$
154
$
未実現損失········································································
(93)
194
(201)
純利益に認識された実現利益、減損の非信用関連部分の評価減および純利益に含まれ
る一時的でない減損の評価減に関する再分類調整額 ·······································
(16)
負債証券の未実現利益および損失(純額) ···············································
$
45
$
29
22
持分投資および負債証券に係る未実現利益および損失合計 ································
$
387
$
407
給付制度に係る未認識の数理計算上の損益(純額)、および未認識の過去勤務費用
年金およびその他退職後給付制度の積立状況の変動は、当年度の期間給付費用として純利益に認識されないものに
ついては、OCI に認識される。
14 年度において、IFC は 269 百万ドルの損失を計上した。これは主として、給付債務の見積りに使用する割引率が
低下したことによって生じた未認識数理計算上の損失(純額)244 百万ドルによるものである。割引率については、
職員退職給付制度、および退職後給付制度に係る給付債務の見積りにおいて使用される割引率の仮定が、2013 年 6 月
30 日現在の 4.6%から 2014 年 6 月 30 日現在には 4.2%、また 2013 年 6 月 30 日現在の 4.5%から 2014 年 6 月 30 日現
在には 4.3%にそれぞれ低下した。
ガバナンスおよび管理
ガバナンス全般
IFC の意思決定体制は、総務会、理事会、総裁、長官兼 CEO、経営陣および職員により構成されている。総務会は、
最高意思決定機関である。総務会メンバーは各加盟国政府より任命される。任期は 5 年間だが留任が可能である。総
務会は、国際金融公社協定により総務会に留保されている権利を除き、理事会に、そのすべての権利を行使する権限
を委任できる。
役員の状況
国際金融公社協定に従い、理事会メンバーは、2 年に一度、加盟国政府より任命または選任されている。現在、理
事会は 25 名の理事で構成されている。各理事は IFC の役員でも職員でもない。理事会の中では唯一、総裁だけが経営
陣に属しており、投票権のない理事として理事会会長を務める。
理事会は、以下のようないくつかの委員会を設定している。
 監査委員会
 予算委員会
52
 開発有効性委員会
 ガバナンスおよび執行理事による経営管理事項に関する委員会
 倫理委員会
 人事委員会
理事会および委員会は、ワシントン D.C.の IBRD の本部において必要事項を継続的に協議している。各委員会の権
限により、その役割および責任が設定されている。各委員会は協議事項に関する投票を行わないため、その役割は主
として理事会のメンバーとしての責任を果たすことにある。
理事会は、IFC の純利益の使途、すなわち利益剰余金とその特定目的の指定、および IFC の経営全般に影響を与え
るその他の方針に関する総裁の提言を検討する責任を負う。各理事は総務会および年次総会に出席する義務があり、
監査済み財務諸表、管理予算、および経営成績、方針ならびにその他の事項に関する年次報告書についての責任を有
する。
監査委員会
メンバー
監査委員会は、理事会の 8 名のメンバーより構成される。監査委員会のメンバーは、理事と非公式に事前協議を行
った後、理事会議長の指名に基づき、理事会が決定する。
主な責務
監査委員会は、IFC の財務、会計、リスク管理、内部統制および組織の完全性の監督において、理事会を補佐する
ことを主な目的として理事会により任命されており、具体的には以下に対する責任を担っている。
・IFC の財務諸表の完全性を監督すること
・外部監査人の任命、適格性、独立性および業績
・内部監査部のパフォーマンス
・IFC の事業および調達活動における、財務、会計および方針と、詐欺や不正を阻止・制裁する内部統制およびメ
カニズムの妥当性ならびに有効性
・IFC の財務、信認、法令遵守の効果的な管理
・IFC 全体におけるリスク管理の制度設計およびプロセスを監督すること
監査委員会はその職務を遂行するにあたり、経営陣、外部監査人および内部監査人と、IFC の財政状態や適正資本
に影響を与える財政上の課題および方針について討議する。監査委員会は、理事会に監査済み年次財務諸表の承認を
求める。監査委員会は継続的にコーポレートガバナンスの進展および自身の役割を監視および見直している。
執行委員会
監査委員会は、監査委員会の権限に基づき、経営陣の出席を伴わない場合でも、随時、執行委員会を招集すること
ができる。監査委員会は、外部監査人および内部監査人とは別々に執行委員会を開催する。
53
外部専門家および経営陣との連絡
監査委員会は年間を通して、監査の実施に必要な大量の情報を入手する。監査委員会は、年間を通して関連事項に
関して公式・非公式の協議を行う。監査委員会は経営陣と自由に連絡を取ることができ、その権限において、検討さ
れた経営上の課題についてレビューおよび協議を行う。
監査委員会は、必要な場合には、外部の法務、会計その他の助言者に助言や支援を求めることができる。
業務遂行
WBG は職員がその倫理的義務を理解することに資する労働環境を提供している。こうしたコミットメントの裏付け
として、当機関には行動規範集が制定されている。WBG には倫理ヘルプラインおよび詐欺・不正ホットラインの両方
があり、これは第三者サービスであり、世界中とコミュニケーションができるようさまざまな方法を提供している。
通報手段には、電話、郵便、E メールまたはウェブサイトを経由して内密に通報することも可能である。
IFC には、経理、内部統制および監査手続き中に特定された業務遂行に関する提言および懸念を受領、留保および
処理するための手続きが制定されている。
WBG の職員規則は、詐欺、不正またはその他の WBG の運営またはガバナンスを脅かす可能性のある不正行為を報告
する場合の職員の報告義務を明確化および体系化したものである。これらの諸規則は報復から保護することについて
も定めてある。
監査人の独立性
IFC の外部監査人の任命については、理事会が承認した一連の原則によって管理されている。それらの原則には以
下が含まれる。
 外部監査人がすべての非監査関連業務を提供することを禁止する。
 すべての監査関連業務は、監査委員会の提言に基づき理事会が適宜、事前承認しなければならない。
 外部監査契約は 5 年とし、5 年ごとに入札により再募集する。2 期連続を限度とし、その後は交代を義務付けられ
る。但し、監査委員会は例外的に現職の監査法人が再募集の入札に参加することを許可するように奨めることが
できる。
外部監査人は 5 年の任期で任命される。監査委員会の推薦に基づき、理事会の決定で承認され、毎年再任される。
14 年度には KPMG LLP が IFC の外部監査人として 5 年任期の第 2 期目を務めはじめた。
外部監査人と監査委員会とのコミュニケーションは、いずれか一方の当事者が必要と考える頻度で、継続的に行わ
れる。監査委員会は外部監査人と定期的に会議を行い、各監査委員は外部監査人と連絡を取り合う独立した権限を有
している。また、IFC の外部監査人は、米国で一般に公正妥当と認められる監査基準に基づき、監査委員会とのコミ
ュニケーション規定を遵守している。
内部統制
財務報告に係る内部統制
2013 年 5 月、トレッドウェイ委員会組織委員会(以下「COSO」という。)は、最新版「内部統制の統合的枠組み(2013
年度)」を発行した。COSO の 2013 年度枠組みは、内部統制の設計、実施および実行ならびにその有効性の評価のため
54
の指針を提供するものであり、1992 年度に公表された COSO の当初枠組みを更新している。2015 年 6 月 30 日現在、IFC
は財務報告に係る内部統制の有効性を評価するにあたり、2013 年度枠組みを使用している。
同時に、IFC の外部監査人は、外部財務報告に係る内部統制の有効性についての経営陣の意見書がすべての重要な
点において適正に表示されている旨を示す証明書を発行している。
「外部財務報告に係る内部統制に関する経営陣によ
る報告書」を参照されたい。
経営陣は毎年度、財務報告書の対象年度中に行われた内部統制の変更が、外部財務報告に係る IFC の内部統制に重
要な影響を与えているか、または重要な影響を与える合理的な可能性があるかを判断することを目的として、外部財
務報告に係る内部統制の評価を行っている。2015 年 6 月 30 日現在、かかる内部統制は有効であると判断された。
開示の統制および手続
開示の統制および手続は、IFC が、開示が要求されている情報を収集し、経営陣に伝達し、必要に応じて、適時に
要求された開示に関する決定を下すことができるようにするために整備されている。経営陣は、こうした統制および
手続の有効性の評価を行い、常務取締役および世界銀行グループ最高財務責任者による指摘の通り、総裁、
長官兼 CEO、
副総裁、世界銀行グループ統括者および IFC の最高総務責任者は、2015 年 6 月 30 日現在、これらの統制および手続
きが有効であると結論づけた。
監査報酬
15 年度および 14 年度については、KPMG が IFC の独立外部監査人を務めた。15 年度および 14 年度に KPMG が IFC に
提供した専門的業務に対する報酬合計(回収可能な費用を含む)は、以下のとおりである。IFC、AMC および AMC が管
理するファンドに対する監査および監査関連業務に関して KPMG が稼得した報酬は、
合計 2.97 百万ドル(14 年度は 2.97
百万ドル)で、内訳は監査業務が 2.76 百万ドル(14 年度は 2.60 百万ドル)および監査関連業務が 0.21 百万ドル(14
年度は 0.37 百万ドル)である。KPMG が実施した監査関連業務は監査業務と密接に関係しており、多くの場合、IFC の
独立外部監査人のみが提供可能な業務であった。それらの監査関連業務には、会計コンサルティング、財務諸表の翻
訳業務、コンフォートレターおよび IFC の借入活動を支援するその他の報告、ならびに合意された手続き等の特定の
証明業務が含まれている。
55
IFC の組織および管理
加盟国
IFC は 1956 年に当初 56 の加盟国をもって設立された。2015 年 6 月 30 日現在、加盟国は 184 カ国に増加している。
IBRD の加盟国のみが、IFC が規定する条件に従って IFC の加盟国になることができる。
加盟国は、書面で通知することによって IFC から脱退することが可能であるが、加盟国でなくなったとしても当該
加盟国政府の IFC に対するすべての債務が免除されることはない。脱退の際に IFC は、当該加盟国政府の株式資本の
買戻しを手配する。また、加盟国が IFC に対する何らかの義務を履行出来なかった場合には、IFC の総投票権の過半
数を行使する、総務会の過半数の決定によって当該加盟国の資格を停止する場合がある。
管理体制
IFC の管理体制は、総務会、理事会、総裁、長官兼 CEO、その他の役員および職員より構成されている。
IFC の全権限は総務会に委ねられている。総務会は IFC の各加盟国から 1 名ずつ任命された総務(および各 1 名の
総務代理)で構成されている。各加盟国の議決権は、当該加盟国の保有する基本議決権および持分議決権の合計に等
しいものとする。各加盟国の基本議決権は、全加盟国の議決権の総計の 5.55 パーセントが均等に配分された数の議決
権とするが、端数基本議決権はないものとする。各加盟国の持分議決権は、保有する株式 1 株につき 1 票を割り当て
た数の議決権とする。国際金融公社協定に特に記載がない限り、IFC に関する事項はすべて多数決により過半数の獲
得で決定される。総務会は年 1 回、定例会議を開催しているが、当該協定に基づき総務会の専権事項と定められてい
るものを除き、IFC に関するすべての権利を行使する権限を理事会に委譲している。
理事会は、IFC の運営全般を実行する責任がある。理事会は(i)IFC 加盟国でもある IBRD 加盟国から任命されたか、
または(ii)IFC 加盟国でもある IBRD 加盟国の少なくとも 1 加盟国の票を獲得したことによって選出された IBRD 執行
役員より構成されている。各理事は、それぞれが任命された加盟国の票数、または選出された加盟国(または国々)
の票数を投票する権利がある。理事会は現在、25 名の理事で構成されている。5 名の理事は、各加盟国より任命され、
残りの 20 名は、他の加盟国を代表する総務により選出されている。IBRD 総裁は職務上、IFC の理事会議長を兼任して
いる。
総裁は IFC の運営スタッフの最高責任者であり、理事会で任命される。理事会の指示および管理に基づき、総裁は
組織ならびに役員および職員の任命および解任を行う責任がある。IFC の通常業務を遂行する権限は長官に委ねられ
ている。
14 年度に、IFC は、IFC の組織構造を簡素化し、IFC の WBG との関わりを深化させるための一連の手順を公表した。
それに伴い、各地域担当副総裁職、リスク管理およびポートフォリオ担当副総裁職、ならびにビジネス助言業務担当
副総裁職は、2014 年 10 月 1 日付で以下のとおり 3 つの新たな副総裁部門(以下「VPU」という。)に再編された。
投資業務、助言業務および顧客関係業務を統括する新しいグローバルクライアントサービス担当 VPU は、Dimitris
Tsitsiragos および Jean Philippe Prosper に率いられ、クライアントソリューショングループおよびクライアント
カバレッジグループによって構成される。
IFC の取引推進サービス(transaction-enabling services)を統合させた新しいコーポレートリスクおよび持続可
能性担当 VPU は、James Scriven および Ethiopis Tafara に率いられ、3 つの新たな部門、すなわち取引リスクソリュ
56
ーションズグループ、コーポレートリスク管理グループ、およびコーポレート法務によって構成される。Ethiopis
Tafara は、引き続き IFC の法務担当に従事する。
グローバルパートナーシップ担当 VPU は、WBG における同職責部門との円滑な交流を促進し、民間セクターとの強
固な関わりを確保する。グローバルパートナーシップ担当 VPU は、Karin Finkelston および Nena Stoiljkovic に率
いられ、2 つの核となる部門である、プログラムズグループおよびパートナーカバレッジグループを通じて機能を果
たす。
以下は、2015 年 10 月 1 日現在の IFC の主要役員の一覧である。
総裁 .....................................................................................
Dr. Jim Yong Kim
長官兼 CEO ...............................................................................
Jin-Yong Cai
副総裁、グローバルクライアントサービス担当 ...............................................
Dimitris Tsitsiragos
副総裁、グローバルクライアントサービス担当 ...............................................
Jean Philippe Prosper
副総裁、グローバルパートナーシップ担当 ...................................................
Karin Finkelston
副総裁、グローバルパートナーシップ担当 ...................................................
Nena Stoiljkovic
副総裁、コーポレートリスクおよび持続可能性兼法務担当 .....................................
Ethiopis Tafara
副総裁、コーポレートリスクおよび持続可能性担当 ...........................................
James Scriven*
副総裁、財務・シンジケーション担当 .......................................................
Jingdong Hua
CEO、IFC Asset Management Company LLC (IFC の完全所有子会社) ..............................
Gavin E.R. Wilson
IFC は IBRD とは別個の法人である。IFC の資金は分別保管されており、IBRD の資金とは別個のものであり、IFC の
債務は IBRD の債務ではなく、また IBRD によって保証されてもいない。
* James Scriven は、2015 年 10 月 31 日付で IFC を退社する意思を公表している。
設立協定
設立協定は IFC の管理憲章である。設立協定は IFC の目的、資本構成および組織を規定しており、IFC が従事する
可能性のある業務を承認し、それらの業務の遂行に関する制約を規定し、加盟国における IFC の地位、特権および免
責を制定している。また協定には新規加盟国の加盟に関する規定、IFC の授権資本の増加に関する規定、IFC が資金を
投資する際の条件、IFC の純利益の加盟国への分配、加盟国の脱退、資格停止、および IFC の業務停止についての規
定が含まれている。
当該設立協定の規定に基づき、設立協定は、総投票権の 85%を行使する総務の 5 分の 3 の賛成票を得た場合のみ改
定することができる(全総務の賛成票を改定の要件とする特定の条項を除く。)
。
当該協定はさらに、加盟国および IFC、
または IFC の加盟国間で協定の条項の解釈に関して疑義が生じた場合には理事会が決定すると規定している。加盟国
は理事会の決定を総務会に付託することができ、総務会の決定が最終的なものとなる。この付託による結論が出るま
では、IFC は理事会の決定に基づいて行動することができる。
設立協定の全文はワシントン D.C.の IFC 本部で閲覧およびコピーの取得が可能であり、www.ifc.org より入手可能
である。
57
法的地位、免責および特権
当該協定には、IFC の各加盟国の領土内における法的地位、特定の免責事項および特権に係る条項が含まれており、
その要約は以下のとおりである。
IFC は完全な法人格を有し、契約を締結し、資産を取得および処分し、訴訟を提起する能力を有しており、また訴
訟を提起される可能性がある。IFC に対する訴訟は、IFC が事務所を有し、訴訟に係る送達を受け取る代理人を有して
いる加盟国または IFC が証券の発行もしくは保証を行った加盟国の領域内に管轄権を有する裁判所においてのみ提起
することができる。ただし、加盟国または加盟国を代理する者、または加盟国から請求権を取得した者は IFC に訴訟
を提起することはできない。
IFC の総務、理事、その代理ならびに役員および従業員は、彼らがその正式な職権の下で行った行為については法
的手続きを免除される。
IFC の公文書は不可侵とし、IFC の財産および資産は IFC に対する最終判決が下るまでは押収、差押えまたは強制執
行を免除される。IFC の財産および資産はまた、捜索、徴用、没収、徴収その他、あらゆる形式の強制処分または法
的措置を免除される。
IFC、IFC の資産、財産、収益および協定で認められた運用および取引は、加盟国によって課されるすべての租税お
よび関税を免除される。また、IFC はいかなる租税および関税の徴収義務からも免除される。
当該協定に基づき、IFC が発行もしくは保証した証券およびその利息もしくは配当金は、(a) IFC が発行もしくは保
証したことのみを理由としてかかる証券を差別する、または(b)それらの証券が発行される、支払いが行われる、もし
くは支払いが行われる可能性のある場所もしくは通貨、または IFC が維持する事務所もしくは事業所の所在地を課税
上の唯一の管轄基準とする場合、課税対象となることはない。
IFC は自己の裁量において、当該協定に基づいて与えられた特権および免責の一部を、IFC が決定する条件において
放棄することがある。
58
インフォメーション・ステートメント
国際金融公社
何人も、このインフォメーション・ステートメント、または目論見書、プログラム資料、募集要項、その他募集関
連書類に記載されていない情報を伝えたり表示したりすることはいっさい認められていません。ここに記載されてい
ない情報または表示を、IFC、ディーラー、引受人または IFC の代理人が認めたものであると信用してはいけません。
また、このインフォメーション・ステートメントのほか目論見書、プログラム資料、募集要項、その他募集関連書類
は、いかなる法域においてもいかなる人に対しても、証券の募集や勧誘が違法である法域における証券販売の募集を
するものでも証券購入の募集を推奨するものでもありません。
________________
別段の指定がない限り、このインフォメーション・ステートメントでは(1)金額はすべて、連結財務諸表に対する
注記 A-会計およびそれに関連する重要な方針の要約中にある「通貨の換算」に示すとおりドルに換算して表示してあ
り、また(2)すべて 2015 年 6 月 30 日現在の情報に基づいています。
________________
目 次
ページ
情報の提供について………………………………………………………………………………………
1
概要…………………………………………………………………………………………………………
2
主な財務データ ……………………………………………………………………………………………
4
手取金の使途………………………………………………………………………………………………
6
IFC の財務構造 ……………………………………………………………………………………………
6
経営陣の討議と分析 (2015 年 6 月 30 日現在および 6 月 30 日終了年度)
…………………………
7
IFC の組織および管理 ……………………………………………………………………………………
57
連結財務諸表および内部統制報告書索引(2015 年 6 月 30 日現在および 6 月 30 日終了年度)
59
…
(英語版 参照)
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