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高速道路無料化等に伴う CO2 排出量変化の試算

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高速道路無料化等に伴う CO2 排出量変化の試算
別紙1
2009 年 11 月 16 日
(株)三菱総合研究所
高速道路無料化等に伴う CO2 排出量変化の試算
高速道路の無料化によって、鉄道、航空等から高速道路に交通が転換し、さらに新たな
交通が誘発されると考えられる。これらの交通状況の変化に伴う自動車や交通機関に由来
する CO2 排出量総量の変化を検討した。
検討の結果、国内幹線旅客交通に由来する CO2 排出量は年間 510 万~910 万 t-CO2(+
19~27%)増加すると試算された。
検討の範囲、前提条件等は以下の通り。
1.検討範囲
1)国内幹線旅客交通を対象とする。幹線旅客交通とは、大都市圏の境界あるいは県境
を越えて移動する旅客交通で、通勤・通学目的を除く交通(業務、観光、私用・帰
省)。
2)交通機関は、乗用車(タクシーを含む)、幹線バス(都市間、高速)、鉄道(新幹線、
JR 特急、一部の長距離民鉄)、航空機(国内定期航空)。
3)無料化の対象は、首都高速道路、阪神高速道路を除く高速道路。
2.前提条件
1)最新の交通データが得られている 2005 年の交通状況(交通量、交通ネットワーク)
について計算する。
2)「高速無料化なし」、「高速無料化あり」、オプションとしてガソリン税の暫定税率を
廃止した「高速無料化あり+暫定税率なし」の3ケースについて、交通機関毎の交
通量(旅客人キロ)を算出し、これを CO2 排出量に換算する。
3)交通量は四段階推計法に則した需要予測モデルにより計算する。(参考資料1、2
参照)
4)CO2 排出量への換算は、交通機関別人キロ当たり CO2 排出原単位1を使用した。な
お、乗用車については、対象が幹線旅客交通であることを踏まえ、走行速度の高さ
に対応する CO2 排出原単位 2を用いたケースも追加した。(参考資料3参照)
5)交通量の変化に伴う交通サービス供給量の変化(例えば鉄道旅客の減少による列車
運行本数の減少、休止)や道路渋滞等の変化は考慮せずに、現在の所要時間最短経
路を利用するものとする。すなわち、公共交通サービス供給量の減少に伴う CO2
排出量減少や高速道路利用への更なる転換、道路渋滞発生・解消に伴う変化は考慮
していない。
6)簡便試算のため、空港等へのアクセス・イグレス交通の高速無料化及び CO2 排出量
変化は対象としない。
1
2
国土交通省 HP:http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/environment/sosei_environment_tk_000006.html
「道路投資の評価に関する指針(案)」(平成 10 年 6 月、道路投資の評価に関する指針検討委員会)P.77
-1-
3.試算結果
○ 国内幹線旅客交通に由来する CO2 排出量は年間約 2650~3410 万 t-CO2(運輸部門全
体の 2 億 5671 万 t-CO2 の約 10~13%、旅客関連の 1 億 5605 万 t-CO2 約 17~22%)
と推計される。
○ これが、高速無料化によって約 510 万~910 万 t-CO2 増加(+19~27%)すると試算
された。これは運輸部門全体の CO2 排出量を約 2~4%、旅客関連の CO2 排出量を
約 3~6%押し上げることに相当する。
0
500
交通量[億人km/年]
1,500 2,000 2,500
1,000
3,000
3,500
4,000
3,233
高速無料化なし
高速無料化あり
3,558
高速無料化あり
+暫定税率なし
3,587
航空
鉄道
<交通機関別人キロ当たりCO2排出原単位を使用>
0
CO2排出量[百万t-CO2/年]
10
20
30
40
高速無料化あり
+暫定税率なし
鉄道
幹線バス
CO2排出量[百万t-CO2/年]
10
20
30
40
高速無料化あり
31.6
高速無料化あり
+暫定税率なし
32.2
乗用車
50
26.5
高速無料化なし
43.2
航空
0
50
42.3
高速無料化あり
乗用車
<乗用車は走行速度の高さに対応するCO2排出原単位を使用>
34.1
高速無料化なし
幹線バス
航空
鉄道
幹線バス
乗用車
注1)
「高速無料化なし」の交通量は、2005 年度の代表交通機関別ゾーン間旅客数に、交通機関別所要時間最
短経路のゾーン間距離を乗じて推計。
注2)CO2 排出量への換算は、前記の交通機関別人キロ当たり CO2 排出原単位を使用した。なお、乗用車に
ついては、対象が幹線旅客交通であることを踏まえ、走行速度の高さに対応する CO2 排出原単位を用
いたケースも追加した。
注3)交通量の変化に伴う交通サービス供給量の変化(例えば鉄道旅客の減少による列車運行本数の減少、休
止)や道路渋滞等の変化は考慮せずに、現在の所要時間最短経路を利用するものとする。
注4)簡便試算のため、空港等へのアクセス・イグレス交通の高速無料化及び CO2 排出量変化は対象として
いない。
注5)独立行政法人国立環境研究所資料によれば、2005 年運輸部門全体の CO2 排出量は 2 億 5671 万 t-CO2、
うち旅客関連は 1 億 5605 万 t-CO2。
図
国内幹線旅客交通機関別の交通量(旅客人キロ)と CO2 排出量の変化[2005 年度]
《本件に関するお問い合わせ先》
株式会社三菱総合研究所
〒100-8141 東京都千代田区大手町二丁目 3 番 6 号
社会システム研究本部 交通・環境政策研究チーム 電話:03-3277-0705 FAX:03-3277-3462
-2-
(参考資料1)需要予測モデルの概要
今回の試算で参考とした需要予測モデルの概要は以下の通り。
表
需要予測モデルの概要
項目
対象流動
概要
大都市圏又は県を超える幹線旅客流動
注)大都市圏内及び県内の旅客流動、すべての貨物流動は対象外。
対象交通機関
旅行目的区分
・乗用車
(自家用車、タクシー等)
・鉄道
(新幹線、JR 特急列車及び一部長距離民鉄線等)
・幹線バス
(都市間バス、高速バス)
・航空
(国内定期航空路線)
業務、観光、私用・帰省の3区分
注)通勤・通学目的を除く。
ゾーン数
全国 413 ゾーン
注)「全国幹線旅客純流動調査」の 207 生活圏をベースに大都市圏等を細分化。
モデル構造
四段階推計法
①全国生成交通量の予測、地域別発生交通量の予測
②地域間交通量の予測
③交通機関別分担交通量の予測
④鉄道経路及び航空経路別需要量の予測
基礎データ
「第 4 回(2005 年)全国幹線旅客純流動調査」
-3-
(参考資料2)需要予測モデルの全体構造
需要予測モデルは、四段階推計法に則し、「生成・発生→OD(分布)→交通機関分担→
経路分担」の順に予測を行う。各サブモデル(経路・アクセス選択モデル、交通機関選択
モデルなど)は、その下位レベルのサブモデルから算定されるアクセシビリティ(交通利
便性)指標を1つの説明変数として適用される点に特徴がある。
また、旅行目的の違いによる交通行動パターンの変化を的確に捉えるために、基本的に
は「業務」、「観光」、「私用」の3つの旅客目的別にサブモデルが推定されている。
各サブモデルのうち生成モデル、発生モデルは、幹線旅客の流動量を予測するためのモ
デル(「ボリューム予測モデル」)であり、旅行先選択モデル、交通機関選択モデル等は複
数の選択肢(代替案)の選択確率を予測するためのモデル(「選択率予測モデル」)である。
選択率予測モデルの各サブモデルは、階層構造を有するネスティッド型非集計ロジット
モデルである。
生成モデル
生成量
ボリューム
予測モデル
旅行先選択モデルから
計算されるアクセシビリティ指標
発生モデル
発生量
旅行先選択モデル
交通機関選択モデルから
計算されるアクセシビリティ指標
OD量
選択率
予測モデル
交通機関選択モデル
交通機関別
OD量
経路・アクセス選択モデルから
計算されるアクセシビリティ指標
経路・アクセス
選択モデル
経路別需要量
START
END
図
需要予測モデルの全体構造
-4-
(参考資料3)運輸部門における CO2 排出原単位
出典)国土交通省 HP:http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/environment/sosei_environment_tk_000006.html
図
表
交通機関別人キロ当たり CO2 排出原単位(2007 年度)
自動車の走行速度別の CO2 排出量算定式及び CO2 排出原単位
走行速度
CO2 排出量算定式
CO2 排出原単位
(km/時)
(g-C/km/日)
(g-CO2/人 km)
10
(99a1+237a2)Q
242.0
20
(67a1+182a2)Q
163.8
30
(54a1+155a2)Q
132.0
40
(46a1+137a2)Q
112.4
50
(42a1+127a2)Q
102.7
60
(40a1+122a2)Q
97.8
70
(39a1+123a2)Q
95.3
80
(40a1+129a2)Q
97.8
a1:小型車混入率 a2:大型車混入率(a1+a2=1.0) Q:交通量(台/日)
注)本試算では、a1=1.0、a2=0.0、平均乗車人員 1.5 人/台と設定。g-C と g-CO2 は 44/12 を乗じて換算。
資料)
「道路投資の評価に関する指針(案)」
(平成 10 年 6 月、道路投資の評価に関する指針検討委員会)をも
とに作成。
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