...

Vol3(平成27年4月)

by user

on
Category: Documents
4

views

Report

Comments

Transcript

Vol3(平成27年4月)
CREST BIODYNAMICS
News
Letter
第 3 号
2015 年 4 月
Contents
挨拶 / 研究総括 山本雅
エッセー / 領域アドバイザー 本多久夫
領域活動報告
突撃インタビュー / 「npj Systems Biology and Applications」創刊について~北野宏明先生~
海外情報
各チームの研究成果
研究室の紹介 / 栗原裕基グループ、武田洋幸グループ、月田早智子グループ
各チームの活動情報
領域参加者リスト
編集後記
1
挨拶:
Biodynamics 熟成中
研究総括
2012 年に CREST Biodynamics が発足した。忽ち
にしてこの秋には初年度に採択された研究チームの
中間評価がある。初年度採択チームは、
「神経系まる
ごと観測」「遺伝子発現の振動動態」「時間情報コー
ド」
「遺伝子ネットワークの多次元構造」
「形を操る」
などのキーワードで、生物学と数学・数理科学の世
界をあやなしながら研究を進めている。本プログラ
ムには、高い力量の、個性に富む研究者が集結し、
彼らが全知全能を傾けて研究を進めており、研究期
間が終了する頃には、新しい考え方、新しい概念が
提案されると期待できる。今まさに熟成中に違いな
い。従って基本的には、途中で脇からああだ、こう
だということも無いが、各メンバーにとっての発表
の準備は、新たな idea を湧きたてて研究の推進力を
高めて行くための時間となり、場となると期待でき
る。年度毎の領域会議で、研究のベクトル量に不安
を感ずることがあれば、早めのサイトビジットで、
軌道修正、出力修正のための討論の場を作っている
ことから、成果発表の場は楽しみである。
さらにまた、この評価会の日程に合わせて、CREST
「Biodynamics」
と兄弟領域の PRESTO
「細胞構成」、
そして研究分野が近い CREST・PRESTO「構造生命
科学」の 4 研究領域が合同して、国内外からの top
class の研究者による生命科学研究の最前線を議論
する国際シンポジウムを予定している。Global な視
点で、様々な方法論にもとづく最近の生命科学の進
展を、存分に味わうことができるものと期待できる。
最近ある高名な物理学者から、”Quantum Theory of
山本 雅(沖縄科学技術大学院大学
教授)
DNA - An Approach to Electron Transfer in DNA”
という題で著わされた小論文を見せて頂いた。
Interdisciplinary に推進される近年の生命科学の進
展は、生命の秘密のベールを剥いでいく楽しみを味
わう特権は生物学者だけのものではないということ
を私(たち)に教えてくれている。秋のシンポジウ
ムや評価会を通して、更にその感を深めることにな
るのではないかと、わくわく、なかばドキドキして
いる。
2015 年 3 月
恩納村の丘から
山本雅
表紙について:
(写真左から)
1.培養上皮細胞アピカル面の微小管格子を示す蛍光抗体像。赤は、タイトジャンクションのマーカーとしての ZO-1。青は核。
スケール棒;10μm(月田グループ)
2.インスリンシグナルによる代謝制御のトランスオミクスネットワーク / Yugi,K. et al, Cell Rep.8,1-13,2014(黒田グループ)
3.海馬の培養細胞を染色した写真。青・樹状突起(微小管関連蛋白質の抗体染色)赤・シナプス前部構造(シナプス前部蛋白質の抗体染
色)緑・シナプス後部構造(シナプス後部蛋白質の GFP 融合蛋白質)(岡部グループ)
(ロゴマークのコンセプト)
生命現象の非線形性や階層性を近似・表現し、延いては生命現象を自在に制御・設計を目指す「生命動態」領域をイメージして
います。無数の細胞から形成された個体(たとえば「ヒト」
)と、それを取り巻く環境(たとえば「植物」や「微生物」を含め
た環境、そして地球)を大きな円で表現し、躍動感のある「近似記号」と融合する姿をシンボライズしています。
2
エッセー:
ゲノムが形態形成を指図する道筋
領域アドバイザー
本多 久夫(神戸大学大学院医学研究科
客員教授)
生物の形はおもにゲノムが決めていると考えられているが、その具体的な道筋の解明
は生物学の残された大きな問題であった。最近その道筋の一つが辿れるようになった。
そこではこれまでの分子生物学や細胞生物学に加えて数理モデルが必須の役割を果たし
ている。生物学における数理の寄与がしばしば議論される中、参考になるかも知れない
ことを述べる。また、このようなやり方ではお手上げの例も。
■細胞の数理モデルの出番
ゲノムから多細胞生物の形態形成への道筋のひとつは、
ゲノム→素材とシグナル伝達関連分子の合成→細胞極性→
異方的な力 → 構成要素の変形 → 形態形成
のように書ける。ここで記す細胞極性には平面内細胞極性
(Planar cell polarity, PCP)と呼ばれるものも含まれてい
る。例えば、上皮シートのアピカル面が多角形細胞であっ
て、しかも頭尾軸が決まっている時、上皮細胞の多角形の
辺の中で頭尾軸に垂直な辺にだけ PCP 関連タンパク質が局
在していることがある。このタンパク質の局在がシグナル
伝達系を介してこの辺に活性化されたミオシンを集結さ
■細胞の数理モデル
多細胞生物は細胞と細胞由来の物質から出来ている。こ
こでの数理モデルの適用にあたり、数理的手法が貢献して
大きく進歩した物理学を見てみよう。対象としている物質
は原子や分子などの粒子から成ると考え、この粒子につい
ての運動方程式が確立されたことで今日のような物質に
ついて理解できるようになった。多細胞生物についても細
胞についての運動方程式ができれば形態形成の研究は大
きく発展するに違いない。そこで細胞についての数理モデ
ルをいろいろ構築してきた。現在はバーテックス・ダイナ
ミクスとよばれる力学系を使っている。これは細胞の頂点
の動きについての運動方程式である。ここに至った過程を
述べよう(詳しくは最近著した Review があるので興味あ
る方は見てほしい。Honda & Nagai, J. Biochemistry 157,
No. 3, 129-138, 2015)
。
多細胞生物は細胞の集まりであるから、その形態形成は
細胞集合体の形の変化である。細胞集合体の形を記述しそ
の時間的な変化を追う必要がある。空間に詰まった細胞は
一般に多角形や多面体を呈している。はじめに気が付いた
のは、この多面体の集まりは粘土でつくった球をたくさん
詰め込んだものと似ている。隣り合った2つの球がつくる
境界は 2 つの球の中心を結んだ線分の垂直二等分面であり、
ひとつの球はこれを取り囲むいくつかの球との境界によ
って多角形や多面体になる。これは G. L. Dirichlet が二次
元空間で(1850)、G. Voronoi が三次元空間で(1908)提出し
た。今日ではボロノイ多面体の名前で広まっている。私は
1978 年にこれを生物細胞に適用した。個体発生の初期、
せ、もともとそこにある
アクチンと作用して頭尾
軸に垂直な方向に強い収
縮がおこる。細胞のこの
異方的収縮が形態形成を
もたらす。この例では脊
椎動物の神経管形成につながるのであるが(Nishimura et.
al, Cell 149, 1084-1097)、収縮から形態形成のつながりは
これまでの細胞生物学の手法では役立たない。数理的な細
胞モデルをつくり、細胞が異方的収縮により変形したらそ
の集合である組織はどんな形になるかを調べる必要があ
る。細胞の数理モデルの出番である。
胞胚形成前の胚にはこのモデルがよく適応し、さらに細胞
分裂、細胞消滅、秩序ある配置形成などをこのモデルによ
りうまく記述できた。
細胞が上皮細胞に分化すると多角形細胞の辺に沿って
収縮能のあるアクトミオシンの存在することが明らかに
なり、モデルに辺や頂点の位置が重要であることがわかっ
てきた。そこで細胞集合を辺と頂点を使って記述するバー
テックス細胞モデルをつくった(1980)。その後、物理学
(物性理論)の長井達三先生(九州共立大学)と共同で微分
方程式を導入して洗練されたバーテックス・ダイナミクス
をつくり(2001)、さらにはこれの三次元版をつくった
(2004)
。
このダイナミックスにより細胞集合の安定な形を計算
で求めることができ、また与えられた形を安定な形へ変形
させることができる。細胞集合体が表面張力により球形に
なることや、細胞集合の中で細胞が液を分泌して胞胚のよ
うな袋をつくること、異方的な力を発揮することで細胞の
インターカレーション(割込み)が起こり、組織全体が細
長く変形することなど示すことができた。適切な条件を与
えれば、細胞達は自分達でかたちを形成することを示して
いる。これを細胞の自己構築とよんでいる(このような現
象には自己組織化という語がしばしば使われるが、模様の
ようなパターンではなくて具体的な材料が組み立てられ
てできる建造物であるからあえて自己構築という語を使
っている)
。
3
■逐次的自己構築
ゲノムから形態形成への道筋にもどる。前項で述べた細
胞の自己構築は細胞の表面張力、細胞同士の接着力、細胞
の体積が維持されること、細胞の特定の方向の面や辺が特
に強く収縮するなどの仮定の下になされている。細胞のこ
れらの性質はゲノムの発現によってなされている。細胞の
行う自己構築は、細胞がゲノムによって指示された性質を
発揮すると、後は細胞の集合がひとりでに行うものといえ
る。球形、袋の形成やその伸長など単純な形態形成はこう
して行われるのだろう。それでは発生過程で見られる見事
な驚くべき形態形成はどのように理解できるだろうか。こ
れは自己構築が逐次的に次々と起こることでなされるの
でないかと考えている。ゲノムによって細胞の性質が決ま
る。この性質に基づいて細胞は自己構築を行う。そして次
のステージに入る。細胞はゲノムの新たな働きにより別の
性質をもつようになり、これに基づいてまた自己構築を行
う。これの繰り返しで複雑な形態形成が可能となるだろう。
細胞が増殖して細胞塊ができ、これが細胞の表面張力によ
り球形になり、細胞が分泌液を出すことで袋ができ、細胞
のしめす PCP により異方的な力が生じてインターカレーシ
ョンがおこり細胞集合体は細長く変形する・・・というよ
うな逐次的自己構築の過程である。
■カイメンが突きつける問題
昨年秋の数理デザイン道場(沖縄科学技術大学院大学
2014/10/30)で船山典子さん(京都大学大学院理学研究
科)が、カイメンが骨格を組み合わせて構造体を構築する
話をした。カワカイメンとよばれるカイメンの細胞が鉱物
のロッド(骨片)をつくり、そのロッドを運んでほぼ周状
に配置し、各々を垂直に立て、さらにはその上部にもロッ
ドを横げたのように配置して個体(多細胞体)の形をつく
る。これがカイメンという、多細胞動物の中ではいちばん
単純なものに属すると思われている生き物が行う自己構
築である。運動方程式などを持ち出して多細胞生物の形態
形成理解の方法の大筋ができつつあると思っていた私に
は放っておけない事実である。これは宿題として胸に刻ん
でおかなくてはならない。
不思議なことに出会ったらまず手持ちの知識の組み合
わせで説明できそうかどうか考える。ここで数理生物学
(理論生物学という方が適切だろう)が役立つ。出来そう
になかったら自分の守備範囲でないからと避けてしまわ
ずに、何か新しいことができるチャンスと捉えるとしたい
のだが。
4
領域活動報告
CREST「生命動態」第 3 回領域会議および第 3 回数理デザイン道場
開催日: 2014 年 10 月 28-29 日(領域会議)、30 日(数理道場)
於
: 沖縄科学技術大学院大学 セミナールーム(領域会議)、シーサイドハウス(数理道場)
平成 26 年度採択の 4 チームが加わり、初めて全
15 チームが顔を合わせた第 3 回領域会議。
今回は、澄み渡った青い空がどこまでも広がる山
本研究総括のお膝元、沖縄科学技術大学院大学で10
月28日~29日に開催しました。
領域会議では、研究計画・進捗の発表に加え、若
手研究者によるショートプレゼンテーション、特別
ゲストによるナイトセミナーを行いました。
参加者は、山本研究総括、特別ゲストとしてお迎
えした中西重忠先生(公益財団法人大阪バイオサイ
エンス研究所 所長、 CREST/さきがけ「生命シ
ステムの動作原理と基盤技術」研究領域 研究総括)、
領域アドバイザー9名、全15チームの研究代表者・
グループリーダー・研究員等に加え、同じ戦略目標
を分かつ兄弟領域、さきがけ「細胞機能の構成的な
理解と制御(上田泰己研究総括 東京大学 教授)
」か
ら研究者4名が参加し、総勢130名近くによる百家争
鳴、寸暇を惜しんで熱い議論を繰り広げました。
5
研究進捗発表では、研究代表者による発表に加え、
グループリーダーに途中交替して補足発表を頂く等、
非常に密度の濃い発表と議論が繰り広げられました。
また、クロマチン構造、血管や組織構築、色素パタ
ーン・骨格、生物時計から記憶など幅広い生命現象
をターゲットにし、それを千差万別の数理的手法で
巧妙に再構築、近似・処理するチームがそろう本領
域ならでは、生命現象の階層を超えた多様性のある
コメントや質疑が多数出されました。
また、領域会議の途中、比較的若い各チームの研
究参加者 20 名より、2.5 分間のショートプレゼンテ
ーションが熱く繰り広げられました。短時間の発表
にもかかわらず、(1)スライド(美しい・見やすい・
インパクトがある、説明なしでも要点が理解できる
流れと構成)、(2)研究内容(解析方法の妥当性、結
論の妥当性、データの質や量)、(3)発表技術(説明
が良い(理解度と熱意も)、発表時間厳守)という
審査基準を高い水準で満たしつつ、ポイントを突い
たインパクトのある発表ばかりで、「生命動態」研
究を支える優秀な人材が育っていることが伺えまし
た。
非常に盛り上がっ
たショートプレゼン
テーションは、研究
総括、中西先生、領
域アドバイザーによ
る審査を経て、Best
of short- presenters
の 3 名に対し、ささ
やかな表彰をしまし
た。
恒例のナイトセミナー兼交流会では、三品昌美ア
か、記憶と絡めてお話し頂きました。また、中西先
ドバイザーより、「全 15 チームが揃い、今後は成果
生は、平成 23 年度に終了した CREST/さきがけ
を出していく段階に進んだ。」と、激励とご挨拶を
「生命システムの動作原理と基盤技術」研究領域の
頂きました。ナイトセミナーでは、特別ゲストとし
ご経験等から、「ショートプレゼンテーションを非常
てお迎えした中西先生より「行動選択の情報処理機
に楽しく拝見した。若手が元気で頼もしい。」という
構」と題した特別講演を頂きました。中西先生から
主旨の、領域会議に対する感想も併せて頂戴しまし
は、大脳基底核の神経回路が、運動制御、報酬行動、
た。
忌避行動にどのような重要な役割を果たしているの
6
10 月 30 日は、第 3 回数理デザイン道場を当大学
シーサイドハウスで開催しました。今回の道場は、
郡宏道場長(お茶の水女子大学
准教授; 影山チー
長の仕切りで、実験研究者も質問しやすいような雰
囲気づくりが心掛けられました。
数理デザイン道場の途中、ポスター発表時間を設
ム)の仕切りにて、4 名の道場師範(話題提供者)
け、若手研究者等 54 名からチームの課題を支える研
がそれぞれ研究対象として扱う生命原理・生命現象
究の詳細について発表を頂きました。他チームの研
を十分な実験データの提示と共に説明し、実験の場
究代表者やグループリーダーから変化球的なアイデ
で解釈の出来ない結果等の課題を紹介されました。
ィアを頂いたり、若手研究者同士で情報交換をして
その上で、数理モデルを使う目的と仮説を踏まえた
交流を深めたりと、発表終了時間を超えてもなかな
上で、扱う/扱いたいモデルの説明を頂きました。
か議論が尽きず、非常に充実した時間になりました。
今回は、実験研究者の参加が多かったため、郡道場
※数理デザイン道場 HP: http://www.jst.go.jp/kisoken/crest/mathdojo/mathdojo.html
7
突撃インタビュー
新オープンアクセス・ジャーナル npj Systems Biology and Applications
~編集長 北野宏明先生に聞く~
2015 年度、新たなジャーナルが、満を持して Nature のパートナー誌として発行される。その名も、
「npj Systems Biology
and Applications」。このパートナー誌シリーズは、特定の研究テーマに照準を合わせたオンライン限定のジャーナルで構
成され、研究機関、財団、学術団体等と Nature Publishing Group(NPG)とがタッグを組んだ「パートナー構築」による、
共同オープンアクセス出版である。
本誌創刊にあたって、システムバイオロジー研究を提唱・牽引し続け、この新しいジャーナルの Editor-in-Chief を務め
られる北野宏明先生(株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所 代表取締役社長、沖縄科学技術大学院大学 教授、
特定非営利活動法人 システム・バイオロジー研究機構 代表)にジャーナル設立の経緯とジャーナルの意図についてお話
を伺った。(JST 田中、東)
ジャーナル創刊にいたるまで
以前、NPG にはシステムバイオロジー研究を扱うジャー
ナルがあった。
それは、
NPG が European Molecular Biology
Organization(EMBO)と共同で、2005 年にオンライン
版として創刊した Molecular Systems Biology (MSB)であ
る。
しかしながら、2013 年に EMBO press が単独で取り扱
うことになり、それが Elsevier に移管された。そのため、
NPG では、システムバイオロジー研究を扱うジャーナルが
なくなってしまった。システムバイオロジーのコミュニテ
ィーから見ると、MSB を始め様々なジャーナルに、シス
テムバイオロジー研究の成果が出ているが、その多くはオ
ミクス研究であり、より数理的な研究も含めて幅広くシス
テムバイオロジーの成果を発表できる場の必要性が議論
ジャーナル編集委員は多様な専門分野
Associate editor や編集委員は、専門、地域、ジェンダ
ーを配慮して選定した。経緯でもお話したとおり、オミク
ス研究や医学研究のみならず、数理モデルや合成生物学や
それを利用したバイオ燃料などの環境分野なども含めて、
幅広いテーマを扱う方針とした。
Associate editor として、
日本からは、上田泰己先生が参加されている。また、実際
に論文の査読や色々なアドバイスなどで、編集長をサポー
トする Editorial Board members にも、CREST「生命動態」
の黒田真也先生や理化学研究所の岡田眞里子先生が入っ
ている。論文査読者には、対象とする分野の背後のシステ
ムや、数理モデルの理論的な部分をも評価して、質の高い
論文をアクセプトすることを意識いただいている。ちなみ
に、MSB がなり得なかった、数理モデルやソフトウエア
など情報基盤関連の研究成果を発表するハイプロファイ
ルな場となることも目指している。また、このジャーナル
されていた。
世界的にもシステムバイオロジー研究は確立された分
野であることから、NPG は新たなオンラインジャーナル、
それもインパクトファクターが高く、数理モデルから臨床
応用まで、幅広くシステムバイオロジーを取り上げたハイ
プロファイルのジャーナルを必要に感じていたと思う。そ
のため、NPG から、私に共同設立の話が舞い込んできた。
私自身が会長を務める国際システムバイオロジー 学会
(International Society for Systems Biology)の理事会も
含めての検討の結果、特定非営利活動法人 システム・バ
イオロジー研究機構(SBI)と NPG とで共同設立すること
になり、私が編集長を務めることとなった。
のタイトルに「Application」を付けている。Application
の意味は、システムバイオロジー研究が実社会にインパク
トを与えるような研究であるというサクセスストーリー
をより多くの方に知って頂くためでもある。創薬応用、バ
イオテクノロジー、デジタルヘルス、パーソナル医療など
の分野への、システムバイオロジーの展開に関する成果を
期待している。
CREST「生命動態」研究領域の研究者は、我が国を代表す
る方々ばかりなので、ぜひ npj Systems Biology and
Applications へ積極的に投稿頂けると嬉しいです。2014 年
11 月から論文のサブミッションが始まっており、2015 年の
夏頃迄には第 1 号が創刊される予定です。
詳細はジャーナルのホームページ、ならびに
SBI ホームページをご覧下さい。
8
海外情報
The 3rd Annual Winter Q-bio meeting 出張報告
(平成27年2月16日~2月21日@Maui,Hawaii)
参加者:影山T影山G/磯村 彰宏、郡G/郡 宏・川口 喬吾
■この国際会議は米国の Q-bio (Quantitative Biology、定
量生物学)分野のもので、毎年2月にハワイで行われており、
今年で3回目です。カルフォルニア州やボストンの大学の
研究者と学生が多く参加しています。日本からも、毎年1
0名以上の参加者がいます。招待講演者は毎年たいへん豪
華で、昨年は近藤滋さんが招待講演者となっていました。
今年も、Uri Alon 氏 (Weizmann Institute)や Michael
Elowitz 氏(Caltech)などの、この分野の創始者たちともい
える、そうそうたる顔ぶれでした。
ま ず 、 本 ミ ー テ ィ ン グ の ウ エ ブ サ イ ト
( http://w-qbio.org/ )にある、この分野の主旨の一部を抜
粋します。ここに Q-bio という分野の目的がはっきりと書
かれています。
These two emerging areas (著者注:Systems Biology
と Synthetic Biology のこと)have catalyzed the growth
of Quantitative Biology, whereby the central goal is the
deduction of quantitative principles that can be used to
construct predictive models for biological phenomena.
つまり、予言能力のあるモデルの構築を可能にする「定
量的原理」を引き出すことが目的となっています。これは
実験物理学の目的と一致します。実際、この会議には、講
演者も参加者も物理学にバックグラウンドを持つ人が相
当数おり(たとえば Uri Alon 氏も物理学出身である)、私の
ような物理学出身の研究者にとっては、研究目的や哲学に
共感をもてます。また、自分が CREST の研究を行ってい
く上で、このことを目標としてしっかり意識することが重
要だと感じています。
さて、今回の会議の特徴を少し紹介します。まず特筆す
べきことは、招待講演者15名中8名が女性研究者だった
ことです。
このことは今回のオーガナイザーであった Galit
Lahav 氏が、冒頭で女性の招待講演者が年々増えており、
■ハワイのマウイ島というただでさえ楽しい環境の中、
Q-bio の分野を作り、けん引してきた講演者の方々の質の
高いプレゼンテーションを多く聞くことができると同時
に、たくさんの若手研究者の人柄や研究姿勢に触れる機会
もあり、恵まれた4日間を過ごすことができました。
数理・物理のアイディアも取り込んで定量的に生物学を
やる、ということにはいくつか目的があると思いますが、
とりわけ僕が興味を持っているのは、
「たぶんこうだろう」
と漠然としたコンセンサスがあるような生命現象に対し
て、だれもが納得できる言葉を肉付けしていくような試み
この調子だと 2016 年には、W Q-Bio (Winter Q-bio)は
Women Q-Bio になると、笑いを誘っていました。また、
私がもう一点傾向として感じたのは、このような原理を探
求するメンタリティを持つ研究者の集いの場ではあるの
ですが、それでも招待講演者たちのほとんどは、少なくて
もイントロでは、がんや肥満といった医学応用について触
れていたことでした。
圧倒的なレベルのプレゼンを幾つか見ることができま
した。また、プレゼンの中の謝辞についても学ぶことがあ
りました。研究室の学生やポスドクだけでなく、共同研究
者もしっかりハイライトします。今、私は、実験と理論の
共同研究を手がけていますが、物理学や数学分野の会議で
話すときに、実験研究者がどういった貢献をしてくれてい
るかについては、この会議でみたものに比べるとあまり紹
介できてなかったように思います。しっかりとした謝辞を
することによって、共同研究者が新たな共同研究者を見つ
けることに貢献でき、また共同研究者との信頼関係も深ま
るものだと感じました。
本会議に参加するのは3回目になりますが、毎回大変有
意義です。この季節にハワイ、というのもたいへん素晴ら
しいです。いつかここで招待講演ができるように精進した
いと思います。
(郡)
です。
例えば、今回の会議では M. Elowitz さんが、クロマチン
制御のダイナミクスについての最近の実験結果について
発表されていました。転写因子による制御と比較して、ク
ロマチン制御は間欠的で ON/OFF の時間スケールが長く、
記憶効果があることなどは良く知られていますが、彼らは
その特徴をより具体的に抽出すべく、酵素の発現に伴う制
御 ON や記憶形成までの過程にどのくらいの時間がかかる
のかを、一細胞単位で測定しました。結果として、細胞単
位のメチル化・アセチル化状態には、OFF 状態、可逆な
9
ON 状態、不可逆な ON 状態(酵素の発現をなくしても元
に戻らない)の三つがあり、酵素の発現下で細胞がこれら
の状態間を確率的に遷移していると仮定すると、ダイナミ
クスが良く説明できるということがわかりました。ヒスト
ン・DNA のメチル化酵素、DNA の脱アセチル化酵素の計
4種類について、三つの状態を行き来する時間当たりの確
率を算出することで、同じヒストンメチル化酵素でも EED
と KRAB で時間スケールが 2 倍以上違うこと、DNMT3B
による DNA メチル化は顕著に不可逆性が高いことなどが
紹介されていました。
グループと生産性の高い実験グループが(多少強引でも)
協同する、というのは大変ユニークな企画であり、Q-bio
が生物学において当たり前になりつつあるアメリカの研
究環境とは違う展開が期待できるのではないかと感じて
います。
(川口)
(写真)招待講演者の Uri Alon 氏によるナイトセッション
このようないわゆる現象論的アプローチは、僕たちのよ
うな物理学者にとっては非常に気持ちの良いもので、より
具体的な分子レベル制御の記述をいきなり与えられた場
合に比べて、不可逆性の起源はどこか、酵素や制御法の違
いのメカニズムや細胞にとっての意義はなんであろうか、
といった俯瞰的な問いへの答えに向かって、より近道を走
れているような印象を受けます。
Q-bio 研究のもう一つの方向性として、生命現象に触発
された新しいものの見方を提出する、ということもありま
す。こうした向きで仕事をされているのは U. Alon さんで、
彼はかつて motif によるネットワークの分類やフィードバ
ックループの普遍的な役割を論じ、教科書『システム生物
学入門』などを通じて広範な分野の研究者・学生に影響を
与えてきました。理論的興味に基づいて新コンセプトを打
ち出すような研究は残念ながら最近では下火気味なよう
で、Alon さんが講演で話された Pareto front の仕事のほ
かには、目立った話題はありませんでした。
"love and fear in the lab:a guitar discussion on the emotional
sides of doing science"。
Alon 氏が、科学の方向性や動機付けにおいて、研究者の感情がと
ても大きな役割を果たしているということや、どのように動機を
得るのかということについて、ギターによる弾き語りをときより
交えながら1時間半ほど話した。
「自己啓発ワークショップ」のよ
うなもので、Alon 氏と会場との対話がたいへんに盛り上がった。
実験結果を説明する理論を考えているうちにより普遍
的な構造を発見するに至ってしまう、というこの研究スタ
イルは、理論物理学者が理想とするところですが、しばし
ば妄想が暴走し、実験から乖離した方向に突進してしまう
危険もはらんでいます。物理学の分野では、経験に基づい
て(主に実験研究者の寛容の上に!)バランスが保たれて
おり、時に理論屋の妄想が具現化して大きな飛躍を生むこ
ともありました。とはいえ、今回の会議のように、人材や
予算の豊富なアメリカの研究室を集めてみても、2000 年
前後の Q-bio 勃興時のような勢いでアイディアが噴出し
ていないことが見て取れ、新しい理論的コンセプトが噴き
出すのはレアなことで、また時間もかかることなのかと、
改めて実感させられました。
本 CREST は、生物学分野でも物理学と同様な実験と理
論の蜜月的な関係が発展していくための大きなきっかけ
になるものと思いますが、とりわけ理論分野の側から有意
義な課題が提供出来るかどうかが、僕にとっての一番の課
題であり、面白みです。一つのラボで定量生物学をやりき
るのではなく、もともと別々な興味を持った個性的な理論
(写真)会議2日目の夜にあった reception でのパフォーマンス。
ハワイだけでなく、ポリネシアの様々な踊りが繰り広げられた
10
研究成果
黒田チーム
A statistical method of identifying interactions in neuron-glia systems based on functional multicell Ca2+ imaging.
Nakae, K., Ikegaya, Y., Ishikawa, T., Oba, S., Urakubo, H., Koyama, M. & Ishii, S.2014. PLoS Computational
Biology, 10(11)
Crosstalk between neurons and glia may constitute a
significant part of information processing in the brain. We
present a novel method of statistically identifying interactions
in a neuron–glia network. We attempted to identify neuron–glia
interactions from neuronal and glial activities via
maximum-a-posteriori (MAP)-based parameter estimation by
developing a generalized linear model (GLM) of a neuron–glia
network. The interactions in our interest included functional
connectivity and response functions. We evaluated the
cross-validated likelihood of GLMs that resulted from the
addition or removal of connections to confirm the existence of
specific neuron-to-glia or glia-to-neuron connections. We only
accepted addition or removal when the modification improved
the cross-validated likelihood. We applied the method to a
high-throughput, multicellular in vitro Ca2+ imaging dataset
obtained from the CA3 region of a rat hippocampus, and then
evaluated the reliability of connectivity estimates using a
statistical test based on a surrogate method. Our findings
based on the estimated connectivity were in good agreement
with currently available physiological knowledge, suggesting
our method can elucidate undiscovered functions of neuron–
glia systems.
武田チーム(森下グループ)
A linear time algorithm for detecting long genomic regions enriched with a specific combination of epigenetic states
Kazuki Ichikawa, Shinichi Morishita BMC Genomics 2015, 16(Suppl 2):S8
Epigenetic modifications are essential for controlling gene
expression. Recent studies have shown that not only single
epigenetic modifications but also combinations of multiple
epigenetic modifications play vital roles in gene regulation. A
striking example is the long hypomethylated regions enriched
with modified H3K27me3 (called, "K27HMD" regions), which
are exposed to suppress the expression of key developmental
genes relevant to cellular development and differentiation
during embryonic stages in vertebrates. It is thus a biologically
important issue to develop an effective optimization algorithm
for detecting long DNA regions (e.g., >4 kbp in size) that
harbor a specific combination of epigenetic modifications (e.g.,
K27HMD regions). However, to date, optimization algorithms
for these purposes have received little attention, and available
methods are still heuristic and ad hoc.
In this paper, we propose a linear time algorithm for
calculating a set of non-overlapping regions that maximizes the
sum of similarities between the vector of focal epigenetic
states and the vectors of raw epigenetic states at DNA
positions in the set of regions. The average elapsed time to
process the epigenetic data of any of human chromosomes was
less than 2 seconds on an Intel Xeon CPU. To demonstrate the
effectiveness of the algorithm, we estimated large K27HMD
regions in the medaka and human genomes using our method,
ChromHMM, and a heuristic method.
We confirmed that the advantages of our method over those
of the two other methods. Our method is flexible enough to
handle other types of epigenetic combinations. The program
that implements the method is called "CSMinfinder" and is
made available at:
http://mlab.cb.k.u-tokyo.ac.jp/~ichikawa/Segmentation/
11
研究室紹介
栗原研究室 (東京大学)
<研究室の風景
>
<ラボの雰囲気>
生命科学、臨床医学、物理学など、さまざまな専門
領域を背景にした研究者が所属し、それぞれの興味を
持って研究を進めています。メンバーはそれぞれの主
題の下、日々実験にいそしみ、お互いの得意分野を基
に情報交換しています
チームリーダーからの一言
本 CREST チーム(栗原、時弘、安田、和田)は、
血管新生や心臓形成原理の解明とともに、東京大
学の『生物医学と数学の融合拠点(iBMath)
』と
連携して融合領域における若手研究者の育成に取
り組んでいます。
<研究室の 1 週間>
ラボの始業時間は 9 時前後
各個人の実験スケジュールにより変動
基本的にそれぞれのペースに任せています
<研究成果>
18 時より
勉強会やセミナーがある時がある
月
火
院生はこの時間帯
に大学院講義を取
ることが多い
水
木
金
土
日
18 時より
ジャーナ
ルクラブ
血管新生のライブイメージングによる動態解析の結
果が写真左、細胞動態の数理モデルによるシミュレー
ション図が写真右となる。
生体内で実際に起こっている血管新生の細胞動態
が、細胞間相互作用をベースにした数理モデルにより
再現された。
ライブイメージング
(栗原 G)
シミュレーション
(時弘 G)
10 時より
1 時間程度
研究室の掃除
10 時より
プログレス報告会
月に 1 回
CREST ミーティング
ミニ数理道場
<栗原チームの先生方>
2014 年 6 月 27 日 講演会
2014 年12 月26 日 CREST ミーティング
月に 1 回行われる CREST ミーテ
ィングおよびミニ数理道場では、
これらの写真のように、様々な分
野の先生方や学部学生の発表を聞
く機会に恵まれ、非常に貴重な経
験をしています。
(文責:櫛山)
2014 年 5 月 29 日 ミニ数理道場
12
武田研究室(東京大学)
総勢 24 名(学生16名、スタッフ8名)のメンバーが自由な雰囲
気の中で日夜研究を行っています。メンバーの興味は発生過程にお
ける器官の形成機構や遺伝子発現のエピジェネティック制御メカニ
ズム、進化発生、ゲノム進化、巨大トランスポゾン etc と多様です。
材料はメダカとゼブラフィッシュを主に用いますが、研究の方向性
によりその他多様な生物を扱います。実験と大規模データ解析の両
方を行うメンバーも増えています。
ラボの1週間
毎週木曜日のセミナーは英語で行われ、なぜその研究を行うのかとい
う Question に重きを置いています。研究の方向性や手法について厳
しい意見が飛び交う真剣勝負です。その他グループミーティング、1
対 1 のディスカッションも週に1度行い、多様な視点をもつメンバー
同士が議論をする機会を多く作るようにしています。
リーダーの様子
教育に大学運営に多忙ですが教授室
の扉は常にオープン。ディスカッシ
ョンの際にはボスの趣味である美味
しい中国茶が振舞われることも。ま
たテニスの腕前は学会でもトップク
ラスだとか。
左:メダカ、ゼブラフィッシュ飼
育室。約 1,000 匹を飼育して
います。8時起床10時消灯。
右:HiSeq1500(専攻共通機
器)。サンプル調整したその日に
ランできる体制です。
近年の一押し研究成果
未分化胚において発生のキーとなる転写因子をコードするゲノム
領域は広範囲にわたり DNA 低メチル化状態であるが、ヒストン
H3 の 27 番目リジンのメチル化(抑制型の修飾)を強力に受け
ており、その抑制の程度はドメインサイズと相関していることを
発見しました。ヒト ES 細胞との比較解析からこの巨大なドメイ
ンの多くは両種間で保存されていました。修飾の種類だけでなく、
修飾領域の大きさも転写制御に重要であるということを見出しま
した。
Nakamura et al. 2014 Development
リーダーの CREST 研究にかける想い
メダカゲノムプロジェクトが開始された 2000 年より続いている生物情報の森下研究室との共同研究がまた
新しいステージを迎えています。DNA 接触情報やエピジェネティック修飾パターンからクロマチンの 3 次元
構造を予測するプロジェクトです。
月一回の打合せでは、英語・日本語
が混ざって活発な議論が展開されて
います。簡単な意思疎通でも苦労し
ていた 10 年前の状況とは隔世の感
があります。各種情報が出揃う平成
27 年度はプロジェ
ク ト の 山 場
を迎えます。二つの
グループの力を結
集して、成果をあげ
たいと思っていま
す。
CREST チームミーティング
月に1度、森下研と成果を持ち寄りミーティングしています。時に
はカフェに集まりディスカッションするなど密にコミュニケーシ
ョンをとっています。
(文:熊谷・中村)
13
大阪大学大学院 生命機能研究科・医学系研究科
分子生体情報学 執筆者:月田 早智子
プロジェクト概要
細胞が相互に接着して集団を形成し、細胞内・細胞間に構造的秩序が生まれる時、多細胞生体システムが構築される。
上皮細胞は互いに接着して細胞シートを形成する。その細胞間がタイトジャンクション(TJ)でシールされた時、上皮細胞
シートは生体機能を構築する機能的バリアとして働く。同時に、上皮細胞は極性を示し、その細胞膜は上皮細胞シートの生
体内外腔に面したアピカル膜、細胞間接着部の膜、および側面・基底側膜に分化し、上皮バリア機能を支える。本プロジェ
クトでは、TJを起点とした上皮細胞シートシステムの秩序形成について、実験と理論の両面からの新しい理解を目指す。
機能と構造を意識した分子細胞生物学を軸に、アピカル微小管格子、TJよりなるアピカル複合体に注目し、新しい手法や
若い研究者の柔軟な思考を取り入れ、進化していきたいと考え、日々チャレンジしている。
繊毛基部(模式図)
@上皮細胞アピカル面
超解像
蛍光抗体光顕像
超高圧電顕像
上皮細胞シート
のアピカル膜の
秩序形成に注目
し、詳細な観察・
解析による細胞
生物学的な理解
黒丸: Basal Body
と数学的な理解
G:Basal body
G:Basal body
G:Microtubules
の融合を目指し
Bar, 0.05 μm
気管上皮アピカル基底小体の整列メカニズムを
ている。
解く鍵は、TJを起点としたアピカル骨格にある!
(Kunimoto et al., Cell 2012;Tatteishi et al, J.Cell Biol, 2013; Yano et al. J.Cell Biol. 2013)
夕
食
▶︎
実
験
19 20
▶︎
昼
食
▶︎
登 実
校 験
▶︎
12 13
▶︎
8-9
実
験
仕事の細かい進行で、リーダーとやり取りすることも多い。
火曜日:午前 ジャーナルゼミ、午後 仕事ゼミ
とあるラボの一日
CREST月田チームキックオフシンポジウム
研究室の目玉装置②
超解像顕微鏡
(新たに作成)
研究室の目玉装置①
電子顕微鏡
TJ分子クローディンの分子
構造(左)とTJストランド(中
央)、超薄切片像(右)
Suzuki et al., Science 2014
(共同研究による成果)
FreezeFracture像
リーダーからのひとこと
超薄切片像
Bar, 0.1 μm
一般上皮細胞の
アピカル骨格
G:Microtubules
P:Keratin
Bar, 1 μm
既存の知識の上に自分たちの知見を踏まえ、とことん考え続けることで初めて生まれてくるようなサイエンスを目指してい
るが、理想と現実のギャップに四苦八苦することも多い。そうした中で、メンバーとのふとした会話からの発想や、実験の頑
張りが、窮地からの脱出を助けてくれたりする。本CREST研究では、大阪・東京・神戸・京都・奈良のグループの参加で進ん
でいる。背景は、それぞれ異なるが最終的に目指していることは、「上皮細胞の細胞間接着・骨格の秩序形成メカニズムの
解明と上皮バリア操作技術の開発」であるという点で一致している。これらのグループが、頻繁に連携を取りながら、研究を
進めることでブレイクスルーを生み出す可能性と、その手応えを感じている。
14
各チームの活動報告
受賞情報
■望月グループ(望月チーム)
・2014 年 12 月 19 日に、望月敦史が第 11 回(平成 26 年度)日本学術振興会賞を受賞しました。
■第 3 回領域会議でのショートプレゼンテーション賞 (五十音順)
・野本真順 (富山大学大学院医学薬学研究部 特命助教・井ノ口チーム・井ノ口グループ)
・藤井雅史 (東京大学大学院理学系研究科 特任助教・黒田チーム・黒田グループ)
・前多裕介 (京都大学 白眉センター 特定助教・さきがけ「細胞構成」研究領域)
イベントスケジュール (~2015 年 9 月 30 日)
チーム
黒田 T
黒田 T
「生命
動態」
領域後
援
月日
3/4~7
3/6~8
3/16~17
イベント名
第 2 回 制御部門マルチシン
ポジウム
~多様性と融合で拓くシステ
ムと制御の新世界~
システム神経生物学スプリン
グスクール 分子から回路にわ
たる脳・神経系の「構造」
SNSS2015 - SYSTEMS
NEUROBIOLOGY SPRING
SCHOOL 2015 -
「生命動態の分子生物メカニ
ズムと数理」
生命動態システム科学四拠・
CREST・PRESTO 合同シンポ
ジウム
黒田 T
9/13~15
第 53 回日本生物物理学会年会
The 53rd Annual Meeting of
the Biophysical Society of
Japan
栗原 T
3/12
第 8 回ミニ数理デザイン道場
岡部 T
岡部 T
3/2~4
The
15th
International
Membrane Research Forum
3/11
ワークショップ 「異なるスケ
ールをつなぐ解析技術とその
応用」
会場
東京電機大学
Tokyo Denki
University
コープイン京都
京都大学
芝蘭会館
ホール
稲盛
Kyoto University
主催など
計測自動制御学会
The Control Division
of the Society of
Instrument and
Control Engineers
•日本神経回路学会
•科研費 新学術領域
研究 「メゾスコピッ
ク神経回路から探る
脳の情報処理基盤」
•科学技術振興機構
CREST
•生命動態システム
科学推進拠点事業
京都大学
定員
その他
要事前参加登録
100 名
http://www.sice.jp/info
/info_news/event_201
50304.html
http://mscs2015.sice-c
trl.jp/
要事前参加登録
100 名
文部科学省「生命動態
システム科学促進拠
点事業」
300 名
金沢大学 角間
キャンパス自然
科学本館
Kanazawa
University
日本生物物理学会
The
biophysical
society of Japan
100 名
東京大学
栗原 Team
30~40
名
京都大学物質―
細胞統合システ
ム拠点(iCeMS)
京都大学 物質―細
胞統合システム拠点、
国 際 細 胞 膜研 究 フ ォ
ーラム実行委員会、
CREST 生命動態岡部
チーム、など
100 名
程
東京大学
本郷キャンパス
日 本 顕 微 鏡学 会 分
子・細胞動態イメージ
ング研究部会
CREST「生命動態」
領域
60 名程
http://ishiilab.jp/
SNSS/SNSS201
5/jp/
入場無料
事前参加登録不要
http://www.systemsbiol
ogy.lif.kyoto-u.ac.jp/sy
mpo2015.html
要事前参加登録
http://www.aepla
n.co.jp/jbp2015/
参加費無料
参加費無料
http://www.nanob
io.frontier.kyotou.ac.jp/news/201
5/03/15.html
参加費無料
15
Spirits/京都大学
岡村 T
3/27
4th International Symposium
on Molecular Clock 2015
“Epigenetic Landscape in
Biological Rhythms”
紫蘭会館(京都
大学)
Shiran-kaikan,
Kyoto
University
参加料無料
要事前連絡
100 名
(Molecular Clock
事
務
局
:
mrtakada@pharm
.kyoto-u.ac.jp)
その他
■黒田チーム
・国際学会発表
「The 18th International Conference on Miniaturized Systems for Chemistry and Life Sciences (MicroTAS 2014)」
年月日:2014 年 10 月 26―30 日(2014 年 10 月 27 日発表)
場所:Henry B. Gonzalez Convention Center, San Antonio, USA
講演題目:Microfluidic cell culture system for dynamic cell signaling study
著者:大久保 智樹,木下 晴之,前川敏郎,木村 啓志,黒田 真也,藤井 輝夫
予稿集:Proceedings of MicroTAS 2014, pp.536-338
発表形式:ポスター発表
・招待講演
「University of Washington and Kobe University International Joint Symposium」
年月日:2014 年 12 月 15-16 日(2014 年 12 月 15 日発表)
場所:神戸ポートピアホテル
タイトル:Temporal coding of insulin action (黒田真也 Keynotespeaker)
「GIW/ISCB-Asia2014」
年月日:2014 年 12 月 15-17 日(2014 年 12 月 17 日発表)
場所:東京国際交流館 プラザ平成
タイトル:Temporal coding of insulin action (黒田真也 Keynotespeaker)
豊田理化学研究所・特定課題研究
「制御・情報理論による生物システムのロバストネス解析と設計」第 2 回講演会
年月日:2015 年 1 月 15 日
場所:東京大学本郷キャンパス 工学部 6 号館 3Fセミナー室AD
タイトル:細胞内シグナル伝達の情報処理 (黒田真也)
■上村チーム
・JST ニュース 2015 年 1 月号「さきがける科学人」で上村想太郎研究代表者が紹介されました。
16
参加メンバーリスト(ご所属機関に、研究室等へのリンクを張っています)
研究総括
山本
雅
沖縄科学技術大学院大学
教授
領域アドバイザー(五十音順)
秋山
徹
東京大学
分子細胞生物学研究所
所長/教授
浅井
潔
東京大学
大学院新領域創成科学研究科
巖佐
庸
九州大学
大学院理学研究院
教授
加藤
毅
京都大学
大学院理学研究科
教授
鈴木
貴
大阪大学
大学院基礎工学研究科
高田
彰二
京都大学
大学院理学研究科
竹縄
忠臣
神戸大学
バイオシグナル研究センター
豊柴
博義
武田薬品工業株式会社
中野
明彦
東京大学
西川
伸一
JT 生命誌研究館
深見
希代子
東京薬科大学
本多
久夫
兵庫大学
三品
昌美
立命館大学
吉田
佳一
(株)島津製作所
教授
教授
教授
客員教授
医薬研究本部 基盤技術研究所
大学院理学系研究科
主席研究員
教授/(独)理化学研究所光量子工学研究領域
チームリーダー
顧問/オール・アバウト・サイエンス・ジャパン(AASJ) 代表理事
生命科学部
学部長/教授
名誉教授/神戸大学大学院医学研究科
総合科学技術研究機構
客員教授
教授
常務執行役員/基盤技術研究所所長
研究チーム(採択年度および五十音順)
チーム名
飯野チーム
H24 年度
影山チーム
H24 年度
黒田チーム
H24 年度
洪チーム
H24 年度
近藤チーム
H24 年度
研究課題名およびグループリーダー(★研究代表者)
神経系まるごとの観測データに基づく神経回路の動作特性の解明
飯野 雄一 (東京大学 大学院理学系研究科 教授)★
石原 健
(九州大学 大学院理学研究院 教授)
岩崎 唯史 (茨城大学 工学部 講師)
吉田 亮
(統計数理研究所 モデリング研究系 准教授)
細胞増殖と分化における遺伝子発現振動の動態解明と制御
影山 龍一郎 (京都大学 ウイルス研究所 教授)★
郡 宏
(お茶の水女子大学 大学院人間文化創成科学研究科 准教授)
時間情報コードによる細胞制御システムの解明
黒田 真也 (東京大学 大学院理学系研究科 教授)★
石井 信
(京都大学 大学院情報学研究科 教授)
小澤 岳昌 (東京大学 大学院理学系研究科 教授)
藤井 輝夫 (東京大学 生産技術研究所 教授)
動的遺伝子ネットワークの多次元構造解析による高精度な細胞分化制御技術の開発
洪 実
(慶應義塾大学 医学部 教授)★
阿久津 英憲 (独立行政法人国立成育医療研究センター再生医療センター生殖・細胞医療研究部 室長)
小原 收
(財団法人かずさDNA研究所ヒトゲノム研究部 研究部長、副所長)
西村 邦裕 (株式会社テンクー 代表取締役社長)
的場 亮
(株式会社DNAチップ研究所 代表取締役社長)
動物の形態形成の分子メカニズムの探求と形を操る技術の創出
近藤 滋
(大阪大学 大学院生命機能研究科 教授)★
17
小椋
井ノ口チー
ム
H25 年度
栗原チーム
H25 年度
武田チーム
H25 年度
月田チーム
H25 年度
濱田チーム
H25 年度
望月チーム
H25 年度
上村チーム
H26 年度
岡部チーム
H26 年度
岡村チーム
H26 年度
三浦チーム
H26 年度
利彦
(東北大学 加齢医学研究所 教授)
細胞集団の活動動態解析と回路モデルに基づいた記憶統合プロセスの解明
井ノ口 馨 (富山大学 大学院医学薬学研究部 教授)★
久恒 辰博 (東京大学 大学院新領域創成科学研究科 准教授)
深井 朋樹 (理化学研究所 脳科学総合研究センター チームリーダー)
細胞動態の多様性・不均一性に基づく組織構築原理の解明
栗原 裕基 (東京大学 大学院医学系研究科 教授)★
時弘 哲治 (東京大学 大学院数理科学研究科 教授)
安田 賢二 (東京医科歯科大学 生体材料工学研究所 教授)
和田 洋一郎 (東京大学 アイソトープ゚総合センター 教授)
DNA3 次元クロマチン動態の理解と予測
武田 洋幸 (東京大学 大学院理学系研究科 教授) ★
森下 真一 (東京大学 大学院新領域創成科学研究科 教授)
細胞間接着・骨格の秩序形成メカニズムの解明と上皮バリア操作技術の開発
月田 早智子(大阪大学 大学院生命機能研究科/医学系研究科 教授) ★
石原 秀至 (明治大学 理工学部 物理学科 准教授)
大岩 和弘 (情報通信研究機構 未来 ICT 研究所 主管研究員)
米村 重信 (理化学研究所 発生・再生科学総合研究センター 室長)
流れをつくり流れを感じる繊毛の力学動態の解明
濱田 博司 (大阪大学 大学院生命機能研究科 教授) ★
石川 拓司 (東北大学 大学院工学研究科 教授)
高松 敦子 (早稲田大学 理工学術院 教授)
ネットワーク構造とダイナミクスを結ぶ理論に基づく生命システムの解明
望月 敦史 (理化学研究所 望月理論生物学研究室 主任研究員) ★
佐藤 ゆたか (京都大学 大学院理学研究科 准教授)
白根 道子 (九州大学 生体防御医学研究所 准教授)
廣島 通夫 (理化学研究所 佐甲細胞情報研究室 研究員)
革新的1分子計測技術による RNA サイレンシング機構の可視化: 基盤作出と応用展開
上村 想太郎 (東京大学 大学院理学系研究科 教授)★
塩見 美喜子 (東京大学 大学院理学系研究科 教授)
ナノ形態解析によるシナプス動態制御システムの解明
岡部 繁男 (東京大学 大学院医学系研究科 教授)★
楠見 明弘 (京都大学 物質-細胞統合システム拠点 教授)
井上 康博 (京都大学 再生医科学研究所 准教授)
クロノメタボリズム:時間相の生物学
岡村 均
(京都大学 大学院薬学研究科 教授)★
今西 未来 (京都大学 化学研究所 助教)
黒澤 元
(理化学研究所 望月理論生物学研究室 研究員)
からだの外でかたちを育てる
三浦 岳
(九州大学 大学院医学研究院 教授)★
西山 功一 (熊本大学 循環器予防医学先端医療寄附講座
横川 隆司 (京都大学 大学院工学研究科 准教授)
講師)
18
関連・連携プロジェクト
さきがけ「細胞機能の構成的な理解と制御」研究領域 (上田泰己研究総括:東京大学大学院医学系研究科 教授)
CREST「ライフサイエンスの革新を目指した構造生命科学と先端的基盤技術(田中啓二研究総括(東京都医学総合
研究所 所長)
)
さきがけ「ライフサイエンスの革新を目指した構造生命科学と先端的基盤技術」研究総括: 若槻 壮市(米国 SLAC
国立加速器研究所 光科学部門 教授/スタンフォード大学 医学部 構造生物学 教授)
理化学研究所生命システム研究センター(QBiC) (柳田敏雄センター長)
文部科学省「生命動態システム科学推進拠点事業」
多次元定量イメージングに基づく数理モデルを用いた動的生命システムの革新的研究体系の開発・教育拠点(代表研
究者:京都大学 松田道行)
転写の機構解明のための動態システム生物医学数理解析拠点(代表研究者:東京大学 井原茂男)
複雑生命システム動態研究教育拠点(代表研究者:東京大学 金子邦彦)
核内クロマチン・ライブダイナミクスの数理研究拠点形成(代表研究者:広島大学 楯真一)
編集後記
最近のマイブームといえば、“TED”そうです、あの破天荒なおやじクマ TED。今夏 TED2 が日本でも上映されるそう
で今から楽しみ~…違う、それはそれで凄く楽しみですが、そうではなく。あっちです。世界の叡智が講演を行う“TED
conference” のプレゼンの模様を見ることです。あのリズミカルな話の展開とウイットに富んだ話術には惚れ惚れします。
つい先頃、番組ナビゲータ伊藤穰一氏とスペシャルゲストの山中伸弥教授の対談中「革新的な事をしたいなら、今を生き
よう!Want to innovation? Become a“now-ist”
」というフレーズにずきゅん。大人になればなるほどリスクを恐れて臆
病になりがち。でもそれでは何も生まれない。考えるより行動に移せ!私の壊れ気味のやる気スイッチ、所在もままなら
なかったが先日ようやく見付けて電源 ON。新年度、次の目標に向かって前進あるのみです!(JST 田中)
春の足音が大きくなってきましたね。我が家の住民、カブトムシとクワガタの幼虫達と、柚の木を丸裸にし悠々と越冬
したアゲハチョウの蛹達は、それぞれ春の到来を指折り数えて動き出しているようです。中でもニジイロクワガタの幼虫
は食欲旺盛で、オオヒラタケの菌床を食べ尽くしたあげく、バリバリと音を立てて住処だった発泡スチロールの容器をあ
っという間にかみ切り、うっかり人間界に飛び出してきます(ケチらず、ちゃんとした容器を買えば良いのですが。。。)。
虫達の中の時計は、人間よりも敏感に、光や温度変化と共に春の訪れを数えているのかもしれませんね。2015 年度も(は)
、
満開の桜を目に焼き付け、ほころんだ顔で虫に劣らぬ感覚で過ごしていきたいです。
(JST 東)
19
Copyright:
JST CREST-BIODYNAMICS(写真は各提供者による)
2015 年 4 月 1 日発行
(独)科学技術振興機構(JST) CREST「生命動態」研究領域
〒 102-0076 東 京 都 千 代 田 区 五 番 町 7 K's 五 番 町
TEL:03-3512-3524, FAX:03-3222-2064 E-mail:[email protected]
20
Fly UP