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〔
論 文〕
弘前大学経済研究第 2
8号
1
23
2頁
2
0
0
5年 1
2月 2
7日
住宅解体材リサイクルの現状と課題
高
橋
秀
直
在する。
建設廃棄物 は
, 表 3のように分類される。最
は じ め に一一 ゴ ミ 問 題 と 住 宅 解 体
も不法に処理 ・投棄 されているのは再資源化率
ゴミ問題といえば産廃問題,産廃問題といえ
が依然、として 低 い廃木 材や混 合廃棄物 である
ば不法投棄,不法投棄といえば建設業,という
が
, 新築廃材であれば木材のみならず石膏ボー
捉え 方が一般化し ている。実際,環境省調査に
ドも環境会計対応もあ って “ゼロ・エ ミッショ
よると, 2002年度では,家庭ゴミ主体の一般廃
ン”を目指す建材メーカーや住宅メーカーのリ
棄物(一廃)排出 量約 5千万トンに対して産廃
サイクノレが進み,工務店の建築現場でもリサ イ
は約 4億ト ンと 8倍も多く,こ の倍率は 1990年
。建設系不法投棄の排
クjレが試みられている 2)
以降変わっていない。 リサイ クルされずに焼却
出源は,概ね木造住宅の建築と解体,とりわけ
0
0
0年 ま
または埋め立てられる 最終処分量は, 2
解体である 。言い換えれば,不法投棄の最大の
では一廃も産廃もほぼ同じ 4500万ト ン程度だっ
発生源はいまでは解体木造住宅なのである。
たが,その後一廃の縮減が容器包装リサ イクル
などの推進に よって進み, 2003年度 にはー廃 845
表 1産業廃棄物の業種別排出量
万トンに対し て産廃 3
0
4
4万トンと産廃の方が
建設業
排出量
(
千t
)
3
.
6倍も 多
し
、!
)
。
割合
(
%
)
産廃総量
(
千t
)
産廃排出量を業種別に見ると,表 lのように
1
9
7
5年度
3
3
,
8
7
1
1
4
.
3
2
3
6
,
4
4
2
建設廃棄物は叩年代以降は 7千万ト ン台,割合
1
9
8
0年度
3
0,
41
6
1
0
.
4
2
9
2
,
3
1
1
で 2割程度で農業と電気 ・ガス ・水道業の 23%
1
9
8
5年度
5
7,
4
8
1
1
8
.
4
3
1
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7
1
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3
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1
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2
1
.
2
4
0
3
,
4
8
0
3
9
6,
8
6
9
前後より少ない。 しかし,不法投棄問題からみ
ると,廃棄物問題 における建設業の様相は異な
る。2002年度の全国の不法投棄件数 に占める建
1
9
9
3年度
81
,
6
0
5
2
0.
6
設系の割合は 7割,投棄量にして 6∼ 7割に達
卯4
年度
l
7
6,
9
31
1
9.
0
4
0
5,
4
5
5
。
) 環境省「産業廃棄物不法投棄状況
する(表 2
1
9
9
5年度
鈎6年度
l
7
5
,
2
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1
7
71
3
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1
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l
1
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1
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3
,
8
1
2
4
0
4
,
6
0
2
調査」が不法投棄に占める建設系の数値を特に
掲げざるをえない状況が,建設業については存
l
)環境省 「
一般廃棄物の排 出及び処理状況等 (
2
0
0
3年度
実績)
」「
産業廃 棄物 の排出及び処理状 況等 (
2
0
0
3年度 実
績)
」 参照。
2
)例えば椎野潤 『
生きて いる地球 と共生する建設生産』
(日刊建設工業新聞社 2
0
C
5年)
1
9
9
7年度
7
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4
2
1
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的 9年度
l
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6
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2
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1
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3
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3,
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1
8
.
7
3
9
3
,
2
3
4
[資料]環境省 「
産業廃棄物排出 ・処理状況調
査報告書」各年により作成
ク
ム
ー
住宅解体材リサイクルの現状と課題
表 2 不法投棄に占める建設廃棄物
件数
重量
件 ・%) 総数
建設系
総数 建設系 (
5
9
.
8
6
7
.3
2
41
1
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7
6
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1
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1
.
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.
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2
4
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01年度
1
15
0
6
0.
8
6
9.
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2年度
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4
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3
4
9
.
6
1
7
8
1
17
2
0
0
3年度
8
9
3
[
資料]環境省 「
産業廃棄物不法投棄状況調査j各年版により作成
0
0
3年度は,比較のため岐阜県で発覚した l件 (
567万ト ン
)
(
註)2
を除いている。
表 3 建設廃棄物の種類別排出量( 2
0
0
0年度)
排出量
(
万 t・%)
アスフアルト ・コンクリート 塊
コンクリー卜塊
建設汚泥
建設混合廃棄物
建設発生木材
その他 (
廃プラスチック ・紙く
ず\金属〈ず)
最終処分量
(
万 t・%
)
3
,
0
0
0
3
,
5
0
0
3
5
4
2
8
0
0
9
5
0
0
5
0
0
6
6
2
0
0
2
5
0
1
3
0
4
8
0
判。
4
1
0
3
8
3
4
8
0
6
1
0
0
8
再資源化率 (
%
)
2
0
0
0年 1
9
9
5年
9
8
81
9
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6
5
6
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7
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4
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,
2
8
0 1
8
,
5
0
0
1
0 1
00%
81
%
言
十
[
資料]国土交通省 「
建設副産物実態調査結果報告」各年版により作成
57%
建設業のこの現状への対策として 「
建設工事
書が多く 3)
,研究文献はリサイクルに 関わ る 文
に 係 わ る 資 材 の 再 資 源 化 等 に 関 す る 法 律」(
建
献の膨大さに比べれば数える程である。研究
設リサイク jレ法)が 2000年に施行され, 2002年
は,廃棄原単位の確定や発生量の推計,分別解
5月から完全施行されている 。 同法は,建築物
体工法の研究,解 体材 の再生や用途開発などの
卜
,
解体業の登録,アスファ jレ
コンク リート,
工 学 的 研 究 と 再 生 解 体 材 リ サ イ ク jレの環境負
木材を使用した 一定規模以上での建設物の分別
荷 ・化学評価などが中心で,解体工法別コス ト
解 体,それらのリサ イクjレを義務づけている。
比較などはあるものの事業構造や経営視点から
リサイクノレの取り組みは,容器包装リサイクル
の分析的研究は未だない。
99
7年 4月)を は じ め と し て 各 種 の リ
法(
施行 1
本稿は,建設リサイクル法完全実施後の住宅
サイク jレ法に促されて進んできたが,法律を作
解体 ・解体材に絞って,そのリサイクルをめぐ
れば問題が解決する訳ではない。 とりわけ木造
る実態から住宅解体材リサイクルのための課題
住宅解体 は,不法投棄の最大の発生源だけに問
を明らかにすることを意図している 。実態把握
題,課題が多い。
は
, 2004年 6月から本稿執筆まで住宅解体材が
住宅解体材リサ イクルに関する書は,建設リ
発生する 川 上 (
住 宅 所 有 者)か ら 解 体 工 事 業 者
サイクノレ法施行から 日が浅いためもあって実務
を経て川下の処理業者 ・再 生 品利用者まで現場
観察と当事者や経営者 ・責任者,青森県の行政
担当者への聞き取りによる 。調査地は,弘前市
3
)
包括的な実務書としては やや古いが本多淳裕 ・山回
周辺を中心に 青森県内と秋田県であるが,得ら
優『
建設副産物 ・廃棄物のリサイク ル
』
(省エネ ルギー セン
的4
年)が有用である。技術書としては建設リサイ ク
ター l
ルハンドブ ッ
ク 編纂研究会 『
建設リサイ クルハン ドブッ
0
0
4年
) などがある
。
ク』(大成出版 2
れた事柄は全国共通と見なしうる 。全国展開の
住宅メーカーや住宅フランチャイズの存在に象
内ィd
徴されるように,本稿が対象とする戸建ての木
で,それらの混合物や合板や繊維板のような加
造住宅には地域性が乏しく,解体材やその処理
工品も含まれる 。対象工事は以下の規模以上の
方法に地域性はないと見てよいからである 。
建築物の新築 ・修繕 ・解体を指す。
予め本稿の独自性を述べておけば,住宅解体
建築物の解体/床面積の合計 80m
'(
床と
①
材リサイクルのための課題を発生場所から最終
は構造耐力上主要な部分の意味)
処理 ・利用点ま で全過程の実態によ って明らか
② 建 築 物 の 新 築 ・増築/床面積の合計 5
0
0
にしていること,住宅解体工事をめぐる事業構
ぱ 以上
造と 価格形成の特殊性を析出し,これを軸に課
@ 建 築 物 の 修 繕 ・模 様 替 え (リフォーム
等)/請負金額 l億円 (
税込)以上
題に迫っている点にある 。
④ 建築物以外のものの解体 ・新築等 (
土木
I
. 建設リサイクル法と排出者の対応
0
0万円 (
税込)以上
工事等)/請負金額 5
(
1
)住宅所有者・住み手の建設リサイクル対応
0
0
m
'
(
l
5
2坪弱)以上の新
住宅の場合,床面積 5
築 ・増 築 , 請 負 金 額 1億円(税込)以 上 の 修
知らされていない建設リサイクル法
繕 ・模様替え (リフォーム等)は,滅多にない。
1
2
0
m
'(
3
6坪)の住宅を解体して同じ場所に 1
2
0
住宅を所有し居住する個人は,住宅や住宅建
築についての知識,理解が甚だ乏しい。建築に
ぱの住宅を新築する場合は,解体のみ建設リサ
せよ解体にせよ,発注者である住宅所有者の多
イクル法対象建設工事となり,新築工事から排
くは,工事を請け負う工務店や住宅メーカーに
出される木材等の端材はリサイクノレを義務づけ
“すべてお任せ”する 。建設重機で丸ごと破砕
られない。建設リサイク jレ法は,住宅工事につ
するミンチ解体が 当たり 前だった l
的7
年に ,建
いては事実上解体のみを対象にしていることに
て替えた住宅所有者に解体材の処理について開
なる 。
き取り調査した。 “お任せ”の範囲には不要と
建設リサイクル法では,住宅所有者も住宅解
見なされた家具,衣料から寝具の始末まで含ま
体工事発注者として責任を負う。工務店などの
れ,木材から断熱材のウレタン,内装材のど
解体工事業者は,解体工事契約を結ぶに当た っ
こールクロス ,畳,塩ビ管,衣類, 家具,寝具
て,分別解体方法 と工事計画,特定建築資材の
に至るまで, なにもかにも 一緒に野焼き同然で
再資源化方法等について発注者に文書で説明
焼却されていることを知っている者はいなかっ
し,排出物の処理 ・再資源化完了後に文書で報
た。知識,理解の乏しさが当然視され,発注者
告しなければならない。解体工事には都道府県
になんらの法的義務もなかったので“お任せし
知事への届け出が必要であるが,届け出義務者
た,知らない”で済んでいた。
は発注者である 。解体工事計画に不適切な点が
建設リサイク jレ法は.「特定の建設資材を用
あれば,都道府県知事は発注者に変更を命ずる
いた 一定規模以上の建築物その他の工作物に関
ことができる。これらの書類を作成し,届け出
する建設工事」に
。 一定の技術基準に従い現場
て,変更命令があれば対応するのは,実際には
で分別解体するこ とと,分別解体に伴 って生じ
解体工事請負業者だが,いずれも排出者責任を
た特定の建設資材廃棄物について再資源化する
問う措置であって,一般市民であ っても“お任
ことなどを住宅所有者と工事業者とに義務づけ
せした,知らなかった ”では済まなくなった。
ている 。「特定の建設資材」とは,コンクリー
最近自宅を建て替えた弘前市内の住宅所有者
ト,アスフアルト,木材を原料とする建設資材
2名に聞き取り調査した。解体工事の元請け
1
4
住宅解体材リサイクルの現状 と課題
図 1 あ る 住宅 メー カ ー の解 体工 事 費見積もり
は,個人経営の大工と全国的 な住宅メーカーで
ある 。前者では大工自らが解体工事を行い,後
!切 り 優 し 解 体 費 用 お 見 積 書
者は解体工事業者に下請け させたと見られる。
i
いずれも 簡単な解体工事見積も りはあるもの
様邸
の,建設 リサ イクル法に定められている解体手
続きについての説明を受けていないし関係書
項目
項
類も存在しないと答えている 。元請けに“すべ
自
..
2
てをお任せ”が慣行になっている住宅建築であ
恥
ヨ
ヨ
.
.
•
うという姿勢が建築 関係者 にないことが分か
5
る。
R
翼拘
置・費
"
住宅解体の届け出状況
ず
の
ブ ロ フヲ 膚 極 量 畳 分
.
‘’
園
金 .
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600
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29,
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4
4
,000
文 置 車 恒用
〈
ン ク リ ー ト
+
6
L
切 り圃 し1
・升.置仕よげモルヲ"
"胃工 邑内毘 唱ー豆含む
コ
7
,
, "
.
切
.
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ず
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の
そ
3
ガ
.
’.
'
"
制叩
ず
〈
ン ヲ リ ー ト
るから住宅所有者 に建設リサイク jレ法の知識が
ないのは不思議でないが, この状況を打開しよ
..
ヱ
=‘
露 呈 属 鹿 ・ 姐 持 費
ガ ラ
他
処理費用込み
’
E
司
息
床面積 8
0m
'
以上 の建築物の解体は.所有者の
届け出が必要である。所有者の上記のような認
害1
.
識状況からは栢当程度の無届けの存在が予想さ
合
針
陸’
企2
0,000
¥2,186,867
れる 。建設リ サイ クjレ法に基づく建築物解体届
出件数は,青森県全体で 2
0
03年度 2
,
4
31件
, 2
0
0
4
家の解体費でも 6
0万円程度だった。
先の建て替え住宅所有者 に解体工事費用を聞
年度 2,
5
3
9件 とな って いる (青森県建築企画課調
べ)
。 これをデー タが揃う 2
003年度について検
いた。個人経営の大工が自ら解体した住宅は,
証すると ,建築基準法に基づく建築物除去 (
解
床面積 2
8
0m
'
(
約8
5坪)の総 2階の住宅で解体費
体)申請は 1
8
3
4件,うち床面積 8
0m
'以上のもの
見積もりは“解体工 事 一 式 1
8
0万円”で工事内
l
,
日4件で,建設リサイクル法に基づく届け出件
容は示されていない。坪当たりで計算すると約
数の方が多い。 日本では全国的に新設住宅のお
21
,
0
0
0円となり,ほぼ弘前市の相場であるから
よそ 3害I
]
が建て替えと見られている 。2
0
0
3年度
坪単価から積算したものと推定される 。解体工
の新設住宅着工戸数は 9
,
3
41戸とな っているが,
事を観察し続けることができたが,築後 7
0年近
解体届出件数 2
,
4
3
1件はその 26%になる 。これら
い間仕切り壁が殆どない伝統構法の土壁 ・漆喰
の 数 値 か ら 所 有 者 の問題認識に拘わ らず,所
仕上げの建物で解体材は木材 ・壁土 ・土台石程
有者に代わって手続きをしている工務店や解体
度,処理費用は通常の住宅解体に比べてかなり
業者は, 概ね届け出 ていると思われる べ
少ないと思われる 。
受け入れ られている 解体費用
ら入手した解体工事見積書である 。住宅メー
図 lは,もうひとりの建て替え住宅所有者か
ミンチ解体感行時には,住宅解体費用は ,坪
カーが元請けで解体床面積は 37坪,総領を単純
l万 2∼ 3千 円程度であ ったから床面積 5
0坪 の
に坪単価に換算すると 5万 9千円に もなる 。単
位も算出根拠も不明で理解し難い。 それにも拘
わらずこれほどの金額を文句なしで支払ってい
4
)
『青森県建設リサイクル推進指針』
(2
0
0
2年 5月)に 「
本
'以上の捕捉 率は 9
2.
7%である 」と
県における延床面積 80m
の記述がある
。 2
0
0
3年度について見 ると 82%. 件数も建設
リサ イク ル法による届出数よりかなり 少な い
。
る。解体費用の増大に対する建て主の反応、を調
査工務店に聞いたが.建て主から解体費の減額
﹁吋d
要求はないという 。 “捨てればいいという時代
び住所,施工場所,着工年月日及び竣工年月日,
でない”との認識を持っていることを理由とし
工事請負金頒,技術管理者の氏名等を記載した
て挙げている。建て主は解体費の増大を受け入
記録を作成し, 1年間保存しなければならない。
れていると言えるが,それにしても後者は過大
建設リサイク jレ法に基づくのでないが,廃棄物
な見積もりで,住宅所有者の環境意識を新たな
として処理施設に運搬する場合は,廃棄物運送
利得手段にしているようにさえ見える。
の許可が必要であり廃棄物には産廃管理票
(
マニュフェスト )を添えることが義務づけら
(
2)建設リサイクル法に対する工務店の対応
れている 。
建設リサイク jレ法施行後は,業務として建物
解体工事分離発注でリスク回避
の解体を行う場合には解体業登録が必要となっ
建設リサイク jレ法後の住宅解体と解体材処理
た。ただし建設業者の殆どは解体業登録を要
について,弘前市内の地場工務店 3社で聞き取
しない。もともと建築物の解体は建設業務の一
,
り調査した。 いずれも年間新築戸数 3∼ 5戸
部であるから,土木工事業,建築工事業,と
代目
雇用者 5名程度の有限会社で,経営者は l
び ・土工工事業のいずれかの許可を得ていれば
が大工棟梁, 2代目が大工経験がないという点
解体業を営むことができる 。た だ し l件の工
でも平均的な地場工務店である 5)
。
事請負代金が 5
0
0万円以下であれば建設業許可
工務店が既存住宅 l棟の解体工事のみを請け
を要しないので,請負額が坪 l万 2∼ 3千円程
負うことはない。殆どの場合は建て 替えのため
度だったミンチ解体時代には解体工事のみであ
の解体である。その場合でも,解体工事を工務
れば法的規制を受けることなく,だれにでも可
店自身が行うことは,規模の大きな工務店か建
能だった。そのため処理設備を有せず。資力も
設会社以外では少ない。ミンチ解体の場合はパ
ない建築業者が解体を請け負い,解体材を不法
ワーショベ jレやブルドーザーのような重機が必
処理する事例が多いと見られていた。
要であり,分別解体でも内装やサッシを撤去し
解体業登録には営業上の資質と一定の資格を
た後に重機を使うが,小規模な工務店は重機を
有する「技術管理者」を置くことが必要であり .
所有していないし,操作資格者もいない。工務
5年ごとに更新される。 「
技術管理者」になる
店は,住宅解体を解体業者に発注するのが通例
には,土木工学や建築学の履修を内容とする学
である 。
歴資格を有するか,業界団体の技術検定試験に
建て替えのための住宅解体工事を解体業者が
合格して 一定年数の実務経験を有することが必
行う場合,通常は工務店が建て主から全工事を
要である 。
一括して請け負い,元請けとして解体業者に下
工務店などの解体工事請負業者は,解体計
請けさせる 。建て主と工務店との関係を特徴付
画,再生資源、化計画,廃棄物処理計画等を作成
けるのは,相互信頼のうえに成り立っている
し,分別解体の方法.再資源化施設名と所在,
「
一括請負」である 。建て替え前提の解体工事
解体費用と再資源化費用とを明記した契約を発
は住宅新築の一環であるから, ミンチ解体時代
注者と結ばなければならない。工事を下請けさ
には解体を含めて 一括請負するのが通例であ
せる場合は, 同様の契約を下請け業者と結ぶ必
り現在も解体を含めて一括請負を維持するこ
要がある 。
工事完了後は,発注者に書面で報告するとと
もに,各営業所ごとに注文者の氏名又は名称及
- 1
6
5
)工務店の経営実態については 住宅保証機構『工務店
経営実態調査報告書』(
2
0
0
0年度)が詳しい。年間新築戸数
4戸以下。常用雇用 2名以下が過半を占める。
住宅解体材リサイクルの現状 と課題
うな視点で処理業者を選択しているのだろう
とを経営方針としている工務店は多い。
しかし建設リサイクル法施行後は,解体工
か。処理業者は,工務店からの見積もり依頼件
事を分離し工務店が解体業者を紹介して ,分
数の 2∼ 3割程度の受注と述べている 。工務店
離発注で建て主に契約させる傾向が窺われる 。
側が相見積もりを取 って 比較するな ど委託価格
工務店は,その理由として解体材処理に関わる
を重視していることが分かる 。 し か し 多 くの
.解体費用を
義務とリスクを回避したいこと 6)
工務店が安ければよいとのみ考えているわけで
一括請負額に含めて見積額全体を膨らませて建
ない。建設リサイク jレ法では違法な処理では元
築費を圧迫する事態を回避したいことを挙げて
請けの責任も問われる 。連座して刑事責任を問
いる 。解体工事請負業者も,契約相手に工務店,
われる事態になれば,社会的信用を失いかねな
不動産屋の他に住宅所有者も見られるように
い。狭い地域に存在するだけに経営の痛手とな
なったと述べている。
る。建設リサイク/レ法が.以前と異な って,危
ない業者かどうか,確かな処理をする業者かど
うかとの意識を工務店側 に生じさせている 。
経営リスク回避に止まる適正処理志向
とはいえ ,部分的な改修 (リフォーム)に伴
他方で,処理が適切でないことに 気付いてい
う解体は,工務店自身が行わざるを得ない。改
ながら価格の安さで解体工事や廃材処理を委託
修の場合は.解体工事と改修工事とが並行する
している工務店も少なくないことは.跡を絶た
ので解体を解体業者に委ねると作業効率が低下
ない建設廃棄物の違法処理 ・不法投棄が示して
する 。そのうえ解体材の量が少ないので解体業
いる 。
者への委託は割高になる 。改修工事の多くは水
“
すべてお任せ”の住宅所有者に廃棄物発生
'以下,建設リサ
回りなどが多く ,床面積は 80m
者意識を形成させるうえで工務店や住宅メー
イク jレ法の対象外であり,
したが って改修に伴
カーの役割は重要である 。建設リサイク jレ法の
う解体材処理に分別解体やリサイクルの義務は
厳正な手続きもそれを通して関係者の責任の自
負わないが. 処理は法的基準に従わなければな
覚を促していると思われるが,工務店側も煩墳
にん〈
らない。 解体費用は,人工費.収集運搬費,品
な手続きとして回避し勝ちか,「
書類がどこに
目と性状とによって異なる処理費とからなる
記録がない Jなど空洞化し
あるか分からない J「
が,解体してみなければ人工と品目性状,量
ているように思われる 。工務店が不法処理リス
を確定できないので工事前の解体費の正確な見
クを視野に解体工業者を選択する方向が強ま っ
積もりは難しい。さらに ,水回りなどの改修で
ていることは確かだが, 自己の法的リスク回
少量多品目の廃材が出る場合,その都度処理業
避,経営 リスク 回避に止まっており ,環境リス
者に運搬し委託処理していたのではコスト高に
ク低減,そのためのリサイクル推進という意識
なる 。保管場所を確保できる業者は一定量にな
は薄いと見られる 。
るまで一時的にストックするが,それが結果的
に不法投棄になる場合もある。
建設リサイクル法施行後.住宅解体に対して
住宅所有者の費用 負担意識と工務店等の処理コ
廃棄物が発生する限り,工務店と解体材処理
業者との関係はなくならない。工務店はどのよ
スト意識は高ま ったが,解体材処理について
は,モノと 書類とによる双方 向の関係は形成さ
れておらず,住宅所有者は工務店等に,工務店
6
)建設 リサイクル法後工務店が解体工事資任の回避傾
向を示していることは。桑原一男 「これからの建設解体と
リサイクル J(
rINDUST
』2
0
0
1年 日月号。3頁)も指摘して
いる。
等は解体 ・処理業者に“お任せ”する 実態は変
わっていない。住宅解体に建設リサイク/レ法が
求める課題は,川下すなわち解体業者や処理業
- 1
7-
者に流されていることになる 。
のような重機と呼ばれる大型の建設機械とそれ
らの操作者が必要である。建設業者は既にそれ
1 住宅解体・処理の事業構造と
2
0
0強の建設業者
らを有している。青森県には 7
0
0
4年度
が存在する(『青森県社会経済白書』 2
リサイクル実態
版)が,解体工事は元来建設業務の一部である
(
1)解体工事業の事業構造と「坪単価」見積もり
から,この多大な数の建設業者にとって解体業
に参入障壁はない。
業者が多く専業が存在しない
さらに,一部の産廃処理業者や土木資材の販
解体工事業の看板を掲げている青森県内業者
売業者.運輸業者も建設重機を所有する 。解体
4業者ほどになるが,その殆
を電話帳で拾うと 8
業も営む産廃処理業者の殆どは,建設業者の兼
どは土木建設関係か産廃処理企業の兼営であ
営である 。建設重機を所有し,解体工事の管理
る。各都道府県に解体工事業の団体,解体工事
者を置くことができれば,解体工事業に参入で
業協会があり青森県の協会には 78業者が会員
きる 。多くの建設関連業者が存在し参入障壁
となっているが,殆どが建設会社である 。電話
が極めて低いことが,解体工業者が広範囲に存
5
,解体工
帳で拾った解体工業者との重複分は 1
在し,業者数が多い理由である 。
事業の看板を掲げていなくても建設会社として
建設業は繁閑の差が大きい。積雪地帯という
積極的に解体工事に関わっていることが分か
季節的要因の他に公共工事依存度が高いので受
る。
注時期が集中する。解体から処理まで兼営すれ
建設業者の他に解体登録業者が存在する 。青
ば,建設工事の閑散期に設備と雇用者とを遊ば
5年 1
0月
森県に登録されている解体業者数は, 0
せないで済む。産廃処理業を兼営すれば,処理
現在県外の 3業者を含めて 61業者である 。建設
業にとっての原料を処理費付きで確保できるこ
業許可業者は解体業登録を必要としないから,
とになる 。 このような利点があるので解体業は
その全部が建設業等の許可業者以外となる 。企
土木建設業が処理業と合わせて営んでいる場合
業名が 2
7,個人名が 3
4で個人が多い。企業名の
が多い。
ものは,産廃処理業者や砂利などの建材の販売
解体工事を請け負う業者のなかから弘前市を
業者やそれらの運輸業者が多く,小規模な便利
中心に 8社を選び,作業現場の観察と経営者ま
屋的住宅改修業者の登録もある 。個人名のもの
たは経営責任者への面談による聞き取りによっ
は,個人営業の砂利などの土木資材の販売業者
て調査した。調査企業の選定では,調査に協力
やそれらの運輸業者が多い。
が得られることを優先した。解体工事業者の経
3つの名簿掲載の業者の重複は少ない。以上
から ,解体工事業は業者が広範囲に存在し,
し
営内容,実態が公表資料からは得られないので
標本性を確定し難いこともあるが,本稿の課題
かも数が多いことが分かる。業者数は多いのに
が,標本調査でなく,住宅解体材のリサイ クjレ
解体専業が存在しないことも際だった特徴であ
をめぐる現状と課題を明らかにすることにある
る。われわれの調査でも解体専業は見出されな
ことが理由である 。
調査企業 8社の概要を表 4に示した。F社と
かったし,青森県内の解体工事の業者団体も解
体専業は存在しないと答えている 。
G社とは建設会社が住宅解体 ・処理部門参入で
解体工業者が多いのに専業が存在しないとい
設立した子会社である。 H 社以外は建設業から
う特徴は,解体工事業の事業構造に由来する。
スター卜して解体から中間処理へと業態を拡げ
建築物の解体にはブ jレドーザやパ ワー シ ョベ jレ
ているが, H社は建設リサイクル法を契機に解
。
。
ー
住宅解体材リサイクルの現状と課題
表 4 調査企業の概要
資本
従業員 売り上げ
営業分野
企業組織
切 O万円
4
8名
1
0億円
A 土木建設 ・産廃処理 ・再生材販売 株式会社 4
1
0億円
4
8名
B 土木建設 ・中間処理 ・再生材販売 株式会社 2000万円
3億円
c 土木建設 ・中間処理 ・再生材販売 株式会社 *)670万円 30名
おO万円
1
0名
5千万円
D 土木建設 ・中間処理 ・再生材販売 有限会社
3億円
お0万円
2
0名
E 土木建設 ・中間処理 ・再生材販売 有限会社
l億円
おO万円
1
3名
有限会社
F 解体 ・中間処理 ・再生材販売
*)8
0
0万円
4名 *
有限会社
まぬ万円
G 木くず処理 ・再生材販売
0
0
0万円
1
2名
2億円
H 解体 ・中間処理 ・再生材販売
株式会社 1
*
)株式会社なので資本金は 1
0
0
0万円以上であるべきだが、公表資料による。
*
*
)調査時は開業して l年未満である。
呼称
体 ・処理業に新規参入したもので建設部門を持
の建築物解体工事に図 2の標識を貼ることを推
たない。いずれも地域の中小企業で、零細経営が
奨 し て い る が , 解 体 現 場 で 目に し た こ と は な
い。定められている届出内容 ・業者名を掲示し
多いこの事業分野の姿を表わしている 。
ていない現場も珍しくない。
いまでも ミンチ解体も自にすることがある 。
住宅解体請負と 「
坪単価」
建設リサイク jレ法では認められていないが 7)’
分 別 解 体 で は , 最 初 に 建 具 や 設 備. ア jレ
ミ
サッシの窓を撤去,次いでモルタルなどの外装
解体現場が住宅密集地や交通量が多いのに道路
を 剥 が し 天 井,壁,床の合板や石膏ボードな
が狭いなどで現場を短期日で引き上げる必要に
どを撤去,その後に電線,上下水道配管を撤去
迫られるよ うな場合, ミンチ解体した廃材を自
して柱や梁など木質系材と屋根トタ ンやア ル ミ
社敷地に運んで分別する 。 しかし,従来通 りの
の窓枠などの金属のみ の状態にしたところでグ
ミンチ解体のみで処理し てい る解体業者も存在
ラップ jレと呼ばれる手のようなアタ ッチメント
する 。個人営業の零細業者に多い ようだ。 その
(
掴み機)を装着 し た 油 圧 ショベルなどの建設
ような業者は自前の処理施設を有しないので,
重機を用いて破砕 ・解体する 。
ミンチ解体材 を引き 受 けて いる処理業者が存在
解体工事に は技術管理者を置 き,営業所と 解
しなければ成り立たない。
体工事現場ごとに代表者の氏名 ・登録年月 日 ・
リサイ クルさ れる解体材以外は産業廃棄物と
技術管理者の氏名等を記載した標識を掲げるこ
して処理されるので処理費が発生する。従っ
とが義務づけられている。青森県は,届出済み
て,解体費用は,解体工事費,解体材運搬費,
中間処理 ・焼却 ・埋め立てなどの処理費,利潤
図 2 青森県の解体届出済証
などの積算から成り立ち,それらによ って見積
もられるはずであるが,現実には,殆どの業者
は,前 に 見 た よ う に 費 用 の 区 別 を 唆 昧 に し た
「
坪単価」に床面積を掛けて見積も っている 。
「
坪単価」という見積り方は,住宅建築業界の
永い慣行である。それは,工務店が建て 主から
7
)国土交通省建設業諜 『
建設リサイ
(
案)
』
(2
刷 年 l月) QS参照。
クル法質疑応答集
n
w
d
l
住宅建築に関わる全工事を材工 (
材料費と工
景でさえある。住宅解体工事請負は,必要な各
賃)込みで一括的に請負って建築費を裁量的に
費用の積算による請負額によって経営されてい
配分する 「
一括請負」と表裏一体の見積もり方
るのでなく,坪単価によって見積もられる解体
式である。住宅が現在のように重装備でなく建
請負額から解体工事費と解体材処理費を支出し
築費用が床面積におおよそ比例し ていた時代
て残額があるかどうかによって成り立ってい
に,建て主が「一括請負」させ ることができ,棟
る。解体請負額は競争的 ・他律的 に形成される
梁が建て主のさまざまな注文を受容して「坪単
から業者は解体工事費と解体材処理費との圧
価」という大雑把な見積もりのなかで建築費を
縮に注力せざるを得ない。その圧縮の究極の手
塩梅できるという,大工と建て主との信頼関係
法が不法投棄であり,後に見るように解体材リ
を象徴するものだったと言ってよい。 しかし,
サイク/レも処理業者と受け手との間の解体材処
台所 ・便所 ・洗面風呂などのいわゆる水回りを
理費をめぐる駆け引きに左右されている 。「坪
中心に重装備化した今日の住宅建築では,住宅
単価」による見積もりこそは,住宅解体材問題
建築費は床面積に比例しないので坪単価は実態
を象徴しているといってよい。
に基づかない見積もり方法となっており,工務
店に対する建て主の不信の源にさえなってい
る8
。
)
「坪単価」が招く価格競争
住宅 l練の解体から出る建物本体の廃棄重量
6∼ 4
0坪の家で 1
5
をB社は標準的な建坪である 3
坪単価による解体工事請負もこの慣行に乗っ
たものと見られるが, ミンチ解体と野焼きのも
∼1
6トンと見積もっているが 9)
’廃棄量,処理
とでは,解体工事費と処理費との区別の必要度
費は床面積に比例しない。住宅の大小に拘わら
も低く,両者を混然一体化 させた坪単価もそれ
ず台所 ・便所 ・洗面風呂などを l個所は必要と
なりの存在根拠を有していたといえる。しか
するが,これらの個所から出る廃棄物が種類 ・
し分別解体が求められ,解体材の適正処理に
量ともに最も多い。床面積に比例するのは居室
多額の費用を要する現在では.
の広さであるが,居室から出る解体材は,石膏
坪単価による
解体工事費見積もりも不合理な方法となってい
ボードなどの下地材や天井材,
る。
のような内装材,合板程度で,これらは面積に
それにも拘わらず,坪単価による解体工事請
ビニールクロス
比例して増えるが,石膏ボードを除いて処理費
負が支配的であるのは,解体工事業;が解体工事
は最も小さい。解体工事費が坪単価で見積もら
から解体材処理までを 一体的に経営することで
れる仕組みのもとでは, 小住宅の解体ほど業者
辛うじて成り立っている事業構造を反映してい
の費用負担が大きくなり,床面積が大きいほど
る。住宅解体工事業のこのような事業構造を端
0
)
。
費用負担は少なくなって旨みがある 1
的に表現しているのが,解体工事費と解体材処
解体工事費と処理費とが床面積に比例しない
理費とを 一体的に混合させた“坪い くら ”での
以上,坪単価は明らかに不合理な見積もり方法
解体請負方式なのである。
である 。 この不合理さが, 一方で価格競争を招
この請負方式は,住宅解体材をめぐる不法投
棄,進まないリサイクルなどの問題 ・課題の背
9
)全国解体工事業連合会は 全国 2
0棟の住宅解体から
3
.
4坪で 4
7トン うち基礎などのがれき類 47%
平均床面積.3
強と試算している。前掲桑原一男 「これからの建設解体と
6頁参照。
リサイクル J4
I
O
)見積もりを坪単価でせず建物を現認し たうえで部材
0坪程度の住宅なら坪単価換
別に見積もるという A社は。 3
算で 4万円を超えると述べている。
l
8
)例えば岡田憲治 『
住宅のお値段 ・原価 の秘密』 (
エー
ル 出 版 日間年)末吉正浩 『
住宅 リフォー ム原 価のから く
り』
(エール出版.1
9
9
8年)などは白坪単価
” を問題にしてい
る。
- 2
0
住宅解体材リサイクルの現状 と課題
さ 他 方 で 不 法 処 理 ・不法投棄を誘発する土壌
設立した子会社で。住宅解体と解体木材のチッ
になっている 。
プ販売を営業種目としている 。事業所は五所川
建設リサイク jレ法施行直後は坪 3万円台だっ
原,青森,弘前 3市へほぼ等距離地点にあるが,
0
0
4年には 2万
た解体工事請負額は,調査時の 2
営業範囲は主に弘前市でセールスマ ンが工務店
5∼ 7千円, 2
0
0
5年には 2万∼ 2万 1千円に下
や不動産屋を回って受注している 。年間受注棟
がっている。住宅不況にダイオキシン対策強化
0∼印,請負は坪単価で新規参入のため既
数は 5
に伴う処理施設の改修 ・大型化による投資増な
存企業の請負価格より 2千円程度安いが,解体
どが重なって受注獲得競争が激しくなっている
工事の迅速さときれいさで F社に委託した工務
ためであるが,解体工事請負額が解体工事費や
店の評価は高い。戸建て平屋と 2階建てアパー
処理費などの諸費用の積算によって形成される
トの解体現場 2個所を観察したが,手際よく解
場合には,費用が低下しない限り解体工事請負
体された解体材は現場で徹底分別されて直ちに
額の低下は容易には起こらない。ところが「坪
搬出されるため,解体現場はよく整理され,撤
単価 jという“どんぶり勘定”の見積もりは価
去後の跡地に解体の痕跡もなく文字通りの更地
格低下に対する抵抗力がない。
にな っていた。
A 社のように解体工事費,運搬費,処理費の
解体材の うち自社処理は木材のみ,他は処理
それぞれについて処理業の経験をベースに解体
業者に委託している 。焼却炉は有せず,解体木
請負額を見積もっている解体 ・処理業者も存在
材は破砕してチップにし,秋田県能代市のボ←
する。このような業者は, コスト計算をしてい
ドメーカーに出荷している。出荷価格は 2円 /
k
g、
だ
るので価格競争に巻き込まれて赤字受注になる
が,輸送費を賄えるかどうかという程度で事実
ことを避けようとする意識が強いが,見積もり
上無償である 。解体材処理の殆どを他業者に委
依頼の 3割以下の受注という 。工務店側から見
託している F社の場合,収益源は解体工事のみ
ると坪単価での見積もりより高めになる,工務
となる 。経営責任者は,コストダウンの手法と
店が融通無碍の 「
坪単価Jに慣れている,など
して解体工事の工程管理と現場分別の徹底とを
の理由で受注競争下では不利に働いている。
挙げている 11)
。建築業界には,
解体工事の習熟と人工短縮傾向
分別は煩雑である 。住宅によって異なる解体手
ミンチ解体の経
験しかない。多種のうえに少量の解体材の現場
解体工事費そのものは労務費と機械費とが主
順,現場分別の徹底度,ムダのない搬出,現場
であるが,その費用は建築工法にも左右され
の整理整頓,これらの違いが人工を左右する 。
る。解体の手聞が少ないのは柱梁を仕口継ぎ手
価格競争下で事業と して の解体工事の存否は,
で組んだ伝統構法の住宅,次いで軸組に金物に
技術的 ・経営的な工程管理にかかる ことが分か
よる耐震補強を加えた公庫仕様と呼ばれる工法
る。F社以外の解体工事の観察でも l年前に比
の住宅,最も手間取るのが合板と接着剤で箱を
べてさえ工期短縮が感じられる 。
作るツーパイ工法や住宅メーカー工法の住宅で
とはいえ, F社も経営が自立するには至って
3
6∼ 4
0
ある 。ある業者は,平均的な住宅面積 (
いない。経営が自立しなくても営業可能なの
にん〈
坪)で 4∼ 5人 で 5∼ 6日 (
2
0∼ 3
0人工)を 要
すると答えているが,価格競争下で人工は短縮
I
I
)杉岡清博他 「
建設廃棄物 の リサイクル推進に資する
分別解体の ノウ ハ ウと コスト 分析につ いて」(
『土木学会第
57回年 次講 概 要 集』¥
l
l
[
1
0
4
. 207∼208頁
, 2002年)は,徹
底した分別解体がコ ス トダウ ンの方法であることを実証し
ている 。
傾向にある 。
F社は,土木建設企業が建設業 の不況対策と
して住宅解体工事に新規参入するため 3年前に
門ノム
−
は,親会社の雇用者や設備を遊ばせないで済む
る6
6業者のうち,伐採木や建築解体木材の破
からであろう 。
9業者, 4
7業者
砕,切断。選別のみを行うのは 1
解体工事業には参入障壁が事実上存在せず,
がそれらに加えて焼却も行 っている 。
競争相手が多く,住宅解体請負価格は価格競争
6
6業者のうち先の表 4の企業 8社に,産廃処
J
. Kの 2社を加えて調査した。J
に曝されて。建設リサイクル法完全実施直後の
理のみを行う
2
0
0
2年に比べて 6害l
j
近くまで下が っている 。他
社は青森市の建設業と中間処理業の 1
0社が出
方,解体材処理費は焼却処理以外は下が ってい
資する協同組合で安定型と管理型の埋立処分場
ないので,価格競争は解体工事費にしわ寄せさ
1
0万円,従業員
のみを経営している。 出資金 3
れる 。費用の逃げ場がない解体工事業が専業で
5名
,2
0
0
4年度に売り上げ 1
.
4億円とな っている 。
成り立つのは困難で,解体工事業が建設業や産
K社は,中間処理から最終処理までを業として
廃処理業との一体的経営で存在し得ている理由
安定型と管理型の埋立処分場の他 にガス 化溶融
である 。
炉を有し,東日本トップクラスの産廃処理会社
0
0億円, 従
に急成長した企業である 。資本金 1
(
2)中間処理業者の解体材処理とリサイクルへ
,2
0
0
4年度の売り上げは 9
8
0億円 と
業員はおO名
の対応
なっている 。
住宅解体と産廃処理事業
解体材処理業の非自立性
住宅解体材は,処理施設に運ばれて破砕や圧
解体工事が建設業の繁閑への対応策である場
縮された後にリサイク jレ・焼却 ・埋め立てのい
合は経営自立性を閑却することも可能だが,解
ずれかにたどりつく 。解体材の殆どは産業廃棄
体材処理では否応なく費用が発生する 。表 5に
物に指定されているので,営業処理できるのは
協同組
住宅解体材の中間処理料金を,表 6に J
2)
。
産廃処理許可業者である 1
合の埋立処分料金を示した。J社の① は材料別
青森県の産廃処理業登録数は,県外業者を含
に処理しているので料金が細かいが, K社の②
めて 2
0
0を超える 。そのうち,住宅解体に関わ
は金属と不燃物以外はガス化溶融炉で焼却して
りが大きいのは,木 くず処理施設を有する処理
いるので,溶融炉で焼却するもの,前処理が必
業者である 。産廃処理業登録業者のうち,青森
要なもの,埋め立てるものに分けた大まかな料
県内に木くずの破砕,切断,選別,発酵,焼却
金にな っている 。重量単価の大小は,そのまま
0
0
4年
のいずれかの施設を有して いる業者は,2
実際の処理費の大小にはならない。例えば,グ
3月作成の青森県のデータでは県外業者 4を含
ラスウール ・ロックウー jレなどの断熱材の処理
めて 7
7業者となっている 。連絡が取れず事業を
費が最も高額に見 えるが,綿状で嵩張 っても重
停止して いると見られるものが数社あるが,電
量は小さい。
話による聞き取り調査で分類すると,林業廃材
B社は解体工事費と処理費とは半 々と見てい
のみ を利用している業者が県外業者 4を含めて
るが,請負額か ら解体工事費と解体材処理費を
支出して残金があるかど うかによって成り立 っ
7,住宅解体木材を扱 っていないものが 4,残
ている住宅解体工事業は,解体材処理を全量外
部委託し ていた のでは経営が成り立たない。 ど
1
2
)解体業者が 自社請負の解体材のみを処理するのであ
れば産廃処理業の許可を必要としな い。不適切処理!な どで
産廃処理業許可を取 り消されても自 社分の処理は可能であ
る。 とはいえ !処理施設を有する業者 は 営業運転を 目指
す し そうでなければ経営が成 り立たない。
れだけ自社処理できるか.処理費をいかに外部
に流出 させ ないかが経営を左右する 。
再資源化が義務づけられているコ ンクリート
2
2
住宅解体材リサイクルの現状と課題
表 5 住宅解体材の処理料金
処理料金①
31
,
0
0
0円 I
t
4
6,
0
0
0円/ t
2
2
,
0
0
0円/ t
8
,
0
0
0円/ t
2
0
,
0
0
0円/ t
2,
6
0
0円/ t
4
,
0
0
0円/ t
6
,
0
0
0円/ t
4
0
,
0
0
0円/ t
1
0
0,
0
0
0円/ t
1
5
0
,
0
0
0円/ t
6
1,
0
0
0円/ t
畳などの繊維屑
8
,
0
0
0円/ t
ガラス屑 ・陶器屑
4
0,
0
0
0円/ t
紙で被覆された石膏ボード ・ラスボード
6
1
,
0
0
0円/ t
合成樹脂 ・FRPなど
1
5
0,
0
0
0円/ t
塩ビ管 ・Pタイ jレ等の塩ビ製品
住宅解体材
土砂 ・不燃物が混入していない選別済み木くず
土砂 ・不燃物が混入していて選別が必要な木くず
チップ材としてリサイクル可能な木くず
ワイヤーラス付きモルタル ・煉瓦 ・AL
Cなど
防水紙が付着したモルタル
3
0
cm以下の無筋コンクリート塊
50cm以下の無筋 コンクリート塊
有筋または前処理が必要なコンクリ ー ト塊
サイディング等 (
繊維 ・セメント系パネル)
発泡スチロール等を鉄板で被覆したサイディング
断熱材 (
グラスウール ・ロ ックウー ルな ど
)
処理料金②
3
5
,
0
0
0円 I
t
切
,
(
)
(
)
(
)
円/ t
3
5
,
0
0
0円/ t
3
5,
0
0
0円/ t
3
5
,
0
0
0円/ t
5
0
,
0
0
0円/ t
6
5
,
0
0
0円/ t
3
5
,
0
0
0円/ t
3
5
,
0
0
0円/ t
(
註)聞き取り調査に基づいて作成①は J
協同組合出資企業の処理料金、②は K社の処理
料金。これらに消費税と産廃税トン l万円が課税される。
表 6 埋立処分処理料金
住宅解体材
安
足
{
型
ロ
Eロ
ヨ
日
管
理
型
口
E口
J
目
ガラス屑 ・コンクリート屑 ・陶磁器屑
がれき類 (
50cm以下)
がれき類 (
50cm以上)
がれき類 (
混合物で分別が必要なもの)
サイディング等
廃プラスチック類
FRP・塩化ビニール
発泡スチロー jレ・ウレタンボード
蛍光管
燃えがら
庭石膏ボード
煤塵
廃プラスチック類
ガラス屑 ・陶器屑
グラスウール ・ロックウール
アスベスト (
固形化)
アスベスト (
袋詰め)
処理料金
6
,
0
0
0円/ t
6
,
0
0
0円/ t
8
,
0
0
0円/ t
2
0
,
0
0
0円/ t
4
0
,
0
0
0門/ t
8
5
,
0
0
0円/ t
1
0
0,
0
0
0円/ t
お0
,
0
0
0円/ t
3
0,
0
0
0円/ t
4
0
,
0
0
0円/ t
4
0
,
0
0
0円/ t
印,
(
)
(
)
(
)
円/ t
8
5
,
0
0
0円/ t
2
0
0
,
0
0
0円/ t
2
0
0
,
0
0
0円/ t
3
0
,
0
0
0円/ t
2
0
0
,
0
0
0円/ t
(
註)J
協同組合の処理料金表から作成。これらに消費税と産廃税
トン l万円が課税される 。
は , 基 礎土台, 玄 関三 和 土 , 風 呂 場 な ど か ら ,
コンクリー 卜
モ jレ タ ル は 外 壁 や 風 巴 場 の タ イ ル 壁 な ど か ら 排
処 理 し て 骨 材 と し て 販 売 す る 。 公 共工 事で の 再
,
出 さ れ る 。 ア ス フ ァ jレトの排出は敷地の一 部
生 資 源 の 使 用 が 義 務化 さ れ て い る こ と が 奏 功 し
E
アスフアルトなどは自社で再生
駐車スペースなどに限られている。解体工事業
て 路 盤 材 な ど に ほ ぼ 再 利用 さ れ て お り 処 理 業
レ
は 土 木 建 設 業 者 の 兼 営 が 多 い の で , モ jレタ j,
者 が 不 足 気 味 と い う ほ ど リ サ イ ク jレ化が進んで
-2
3-
いる。
埋めなければならない。
屋根トタン.構造補強用金物。クギなどの鉄
中間処理業者の多くは焼却炉を有するが埋立
や電線,ア/レミサッシなどの金属は,種類別に
処分場は有しないので,石陶磁器や FRPやプラ
分別されて破砕 ・圧縮され.中国での需要拡大
スチック類の廃棄物,廃石膏ボードなど最終処
もあって有償または無償で金属古物商などに引
理が埋め立ての廃材や焼却灰は,埋立業者に委
き取られている。ビニール被覆電線は廃プラス
託せざるを得ない。 A社は.安定型埋立処分場
チック扱いになる。
を有するので,石陶磁器屑などの安定型廃棄物
処理費が最も大きいと工務店 ・解体業者が異
の他に管理型廃棄物の石膏ボードも破砕して被
口同音に訴えているのは内装下地材に多用され
覆紙を除去することでこれらの処理費の全額を
ている石膏ボードで.サブロク板と呼ばれる 3
自社に留めることができる。土木建設業を土台
尺 x6尺,厚さ 9.
5m mの石膏ボード l枚の重量
に解体 ・処理,再生品販売を営む点で他の調査
0kgを超えるから②の処理費では l枚で 6
5
0
は1
企業と異な らないが,安定型埋立処分場所有が
円以上になる。 6畳 l聞の解体か ら 1
8枚程度は
経営安定の大きな要因になっている 。坪単価で
排出されるので排出重量は木くずに次いで多く
なく解体工事費と処理費との積算で見積もるこ
処理費も高い。成型被覆紙付きならば管理型埋
とで安値受注を回避していること,処理業の事
立処分場に埋めなければな らないが.破砕して
務所というより“オフイス”という感じの社内
被覆紙を取り除けば安定型廃棄物になり, kg当
の雰閤気も.その安定性の表れと思われる 。
たり 6
5円の処理費を 4
0∼ 45円に下げることが
H社は,建設リサイクル法施行を商機とみて
できるので処理業者は破砕除去に注力してい
る 13)。
建設業との関わりなしに新規参入した解体 ・中
ガラス,タイ jレ,瓦,衛生器具や食器などの
材による製紙用チ ップ生産である 。山裾にある
間処理業者である 。営業の主力は解体と解体木
陶磁器は,破砕されて安定型埋立処分場に埋め
処理場敷地には 2万トンという木材チップが傾
られる。上下水道配管に使われている塩化ビ
斜を埋めるほど堆積されており,さらに数千枚
塩ビ管),ユニットパスなどの FRP,
ニー jレ管 (
と推定される 畳
, 山成す石膏ボー ドが積み上げ
プラスチック製品は, K社のように ガス 化溶融
られて処理場は解体材の集積場の感がある 14)
。
炉の燃料になる場合もあるが,大部分は埋め立
コンクリー卜の破砕機と木くずとプラスチック
てられている。
の焼却炉も設置しているが,いずれも他の業者
畳や衣類などの繊維系廃棄物は焼却されてい
の設備性能に比べて見劣りがする。年間受注解
る。最も排出量が多い木くずは,以下に詳論す
0
0戸から 200戸 といい,住宅解体 ・処
体戸数は 1
るように破砕機を設置してチップにするか,焼
理はいいビジネスと経営者は述べているが,実
却炉を設置して焼却するが,焼却が圧倒的に多
態は解体材を放置することで処理費を浮かせ.
い。焼却されたものは,焼却灰になる。焼却灰
それでどうにか存続しているという印象を拭え
は特別管理廃棄物であり管理型埋立処分場に
ない。建設業など関連業種の補完なしに解体 ・
処理業が経営的に自立することの困難性を示す
1
3
)ただし 一部メーカーの特定工場が 1
9
7
3年から 1
9
9
7
までに生産した石膏ボ ー ドはヒ素を含有するとされ.特別l
管理廃楽物に指定されている。厚生省生活術生局通知 「
廃
石膏ボードの処理について」 (
1鈎 7年 6月 1
3日)参照。最近
のアスベスト問題は石膏ボードのアスベス ト含有問題も 浮
上させているが。石膏ボード破砕による飛散が懸念され
る。
事例と思われる 。
1
4
)このような場合 監視役の行政が黙認または放位し
ているとの批判が起こるが。倒産させると処理費が県民負
担になりかねず。行政側にも悩みがある。
-2
4ー
住宅解体材リサイクルの現状と課題
設置にいかに大きな費用を要するかを示してい
行き詰まりつつある焼却処理
多くの解体 ・中間処理業者は,焼却炉を設置
して解体木材を焼却している 。 し か し 住 宅 解
る。焼却炉に対する規制は強化される 一方で,
そのたびに設備投資がかさむ, 5年くらい規制
体材処理の主流と 言え る焼却路線が,焼却炉維
が変わらなければ息がつけるのだが,と多くの
持費用に耐えられず,行き詰まりつつある 。 な
経営者は述懐している。
ランニングコストも無視できない。助燃に重
2月からダイオキシン対策で
によりも, 2002年 1
「
破棄物処理法」が強化され,焼却炉に以下の
油を使うが
1
石油価格高騰で燃料代が重くのし
基準が求められるようにな ったこ とが大きい。
かかっている 。煙突からの排気に焼却灰や不燃
① 空気取入口と煙突の先端以外に焼却炉内
物を混入させないためとダイオキシン類に関す
部と外気が接することのない構造であるこ
る排出基準に対応するためのパ グフィル ターの
と
取り付けとその処理が必要である。ダイオキシ
空気供給装置を備えるなど燃焼に必要な
ン類の測定も義務づけられている 。 さらに高温
量の空気の通風が行われるものであること
で焼却するために灰がコークス状に固まったク
②
二重扉などにより外気と遮断された状態
リンカを炉から掻き出さなければならない。A
で定量ずつ廃棄物を燃焼室へ投入できるこ
社では,焼却炉の維持だけに年間切O万円は掛
と
かると述べている。最後に特別管理廃棄物に指
③
燃焼室発生ガスが 8
0
0
℃以上となるよう
④
定さ れている焼却灰の処理がある 。焼却灰の処
理は kg当たり 4
5∼ 5
0円で最終処理業者に委託
に廃棄物を焼却できる燃焼室であること
⑤
燃焼室の燃焼ガス温度を測定する装置が
する以外にない。
調査企業のなかに焼却灰を不法投棄して逮捕
設けられていること
@
燃焼ガスの温度を保つため二次バーナー
などの助然、装置が設けられていること
された経営者がいたが,逮捕前の聞き取りでは
クリンカや焼却灰の処理費に対する悩み を語 っ
1
5)
B:
t
土は,既存焼却炉のダイオキシン対応改修
ている 。住宅解体材の不法埋立で中間処理の営
に l億円以上を要したと述べている。 C社の真
業許可を取り消された D社は,自社解体材の処
新しい焼却炉は,調査企業のなかでも優れて環
理のみしているが,木材についてはチップ生産
境対応的であることを実感させるものである
のみとして焼却処理か らの 撤退を検討してい
が,その新設に 2億 5千万円を要している 。
る。
G社は,公共工事が主力の建設会社の子会社
G社と土木建設が本業の E社とは,解体木材
で解体工事は親会社が行い,解体木材の中間処
をチップにしているが焼却はしていない。両社
理のみを行うために設立された。設立時には焼
はその理由に焼却炉はコストとリスクが大きい
却処理が計画され, 6千万円で焼却炉を新設し
ことを挙げ, Eネ土はドイ ツでのエコメッセなど
たが,完成直後にダイオキシン対策で焼却炉基
に参加して世界の趨勢は焼却でなくチップ化と
準が強化され,基準に適合させるためにはさら
感じたことを挙げている 。
に 5∼ 6千万円の投資が必要となったため,焼
建設リサイクル法は焼却を廃棄物の縮減と見
却炉は一度も稼働することなく新品状態で放置
なしてリサイクル目標に含めているが,埋立処
されている 。
分場の延命策にはなってもリサイクルとは言い
いずれの例も,法の基準に適合する焼却炉の
難く ,費用的にも行き詰まりつつある 。
1
5
)青森県環境政策謀による 。
-2
5-
リサイクルへのインセンティブ
の商品価値は低いと思われる 。販路を確保でき
処理業者はリサイク/レに大きな関心を持って
ているのは,養鶏業者に納入されている敷料程
いる。 C社はクリンカを破砕して路盤材として
度とみられる。
リサイクルすることを試みたが焼却炉から出た
多くの処理業者は焼却以外の木材を破砕して
ものは特別管理廃棄物と主張する行政から認め
チップにしている 。行政がリサイク jレ推進のた
られなかったと述べている。処理費が大きい廃
めに奨励していることもあるが,チップにすれ
石膏ボードを土壌改良材や肥料にリサイクルす
ば廃棄物でなくなるので H社のよ うに野積み状
ることに期待をつないでいる業者は多いが, ヒ
態でも規制に触れない。チップ生産はほぼ自動
素を含有するとされる一部メーカーの石膏ボー
化されている 。解体された状態の柱 ・梁 ・板か
ドを解体現場で選別分離するのは容易でない。
らボルトのような構造補強金物だけを手作業で
土壌改良材としてのリサイク jレを認めている県
除き,グラップ/レ (
掴 み 機)を 装 着 し た 油 圧
もあるという業者もあるが確認できない。 B社
ショベ jレで破砕機に投入すると,クギのよ うな
は国土交通省の補助金を得て廃石膏ボードのリ
金物とサイズ別のチップとに分けられて排出さ
サイク jレ実験に取り組んだことがあるという 。
れてくる 。要員は l名ないし 2名程度である 。
廃石膏ボードのリサイクルの推進組織はできて
チップ化された木くずは,畜産用敷料,道路
も対象は新築系のみで,解体廃石膏ボードのリ
法面の緑化用土壌改良材,堆肥,燃料,製紙用。
サイクル率は全国的に見ても 1%程度で無きに
ボード用などの利用が全国的に試みられている
等しい。解体系では被覆紙に多様な内装材が付
が,調査企業でも試みられている 。
着しており, 不純物 として石膏に混入するため
道路法面の緑化周土壌改良材としての用途
である。不純物除去を状況に受け入れる企業が
は,伐採木では可能であるが防腐処理が施され
漸く出てきたが,用途は再生石菅原料などに限
ている可能性が大きい住宅解体材で、は難しい。
。
られると思われる 16)
H社が大量のチップを野積みせざるを得なく
排出量が大きい廃木材については,
リサイク
なったのは,経営者の話によるとこの用途での
土はとりわ
ルがさまざまに試みられている 。B {
期待が外れたためである 。
け熱心で,解体木材や道路工事で出る伐採木を
堆肥化を模索している業者は 多い。焼却と
破砕してチップにし,養鶏舎用数料,土嬢改良
チ ップ化とを併用している業者の多くは,合板
材,堆肥,植織機を使ったマット生産などのリ
や集成材を焼却し無垢材をチップ化してい
サイク jレを試みている。ユニークなのは,木炭
る。G祉はチッ プにして 希望農家に無償で渡し
と木酢液の生産で,原料が解体木材の木炭はト
ているが,観察では無垢材も合板もボードも区
0リット jレ剖O円で
ン l万円,伐採木の木炭は 4
別されずに破砕されている 。接着剤を多量に含
販売している 。解体木材原料の木炭は.在庫が
む合板やボードは,有機化合物を含むうえに容
1年分と 述べているようにかなりの量が野積み
易に腐食しないので農業用地の土嬢改良材や堆
されている。雨晒しになっており燃料 として
肥には明らかに不向きである 。無垢材であ って
も 次節で詳論するように防腐剤や防蟻剤で薬
1
6
)大手建材商社や石膏ボードメ ーカーなどの新築廃石
』
膏ボードリサイクルの取り組みについては 『⑪IDUST
2
0
0
1年 l月号。 2
0
0
2年 Il月 号 2
0
0
3年 1月号に紹介されて
いる。産廃処理企業と ゼネコン 石管ボードメーカーなど
9社が設立した 「
ギプロ Jは。解体系も受け入れる廃石膏
ボードリサイクル専門の企業である。同社ホームページ参
照。
- 2
6
剤処理された解体木材は重金属や有機物質が残
存しており,その混入は非処理材をも汚染す
る。今後の住宅解体材は木片を接着した集成材
が支配的になるので,解体木材の堆肥化は問題
が多く,将来性は見出せない。
住宅解体材リサイクルの現状 と課題
設リサイク jレ法下の住宅解体の実態を表現して
0製紙に出荷している と述べている H社の製
いる 。
紙用チップの出荷価格は青森埠頭までの運賃込
.5門 店
(gという。ボード用チップを生産し
みで 1
f
:
土で
, 能代のボード生産企
ているのは DEFの 3
(
3)建設リサイクル法が震終処理事業者にもた
業に出荷している 。D社は産廃処理の営業許可
らしたもの
を取り消されているが,出荷用のチップは汚れ
減った埋立量,苦しい埋立処分場経営
もなく大きさも揃っており,製紙用と称してい
る H社に比べても格段に品質がよい。価格 は能
最終処理専業の J協同組合は,埋立処分場を
代市まで輸送して kg2円,4トンダ ンプで運ん
0社が埋
有しない青森市などの中間処理企業 1
, 8千円にしかならない。燃料代にもなら
で7
め立て処分を主 目的に設立した協同組合で,管
ないというのは誇張でない。製紙用にもボード
理型最終埋立処分場を経営していた企業から現
用にもならない低品質のチップは,燃料用 とし
0
0
4年 4月から埋
在地の埋立処分場を買取り, 2
て八戸市の製紙メーカーに出荷される 。価格 は
め立てを再開している 。同処分場の埋め立て許
8万 8千立米で\埋立処分場としては
可容量は 2
ゼロまたは逆有償である 。
8万 1千立米を埋め立てた時点
小規模である 。1
建設 リサ イク jレ法は,建設副産物 の リサイ ク
0万 7
で 買 い 取 り 嵩 上 げ 許 可 を取得 していた 1
ルを求めている 。その努力をしているのは.住
宅所有者でも工務店でも解体工業者でもなく,
千立米が残容量である 。J社の営業は 0
4年 4月
中間処理業者である。その処理業者がリサイク
からだが,前企業から引き継いでいるので埋立
jレの努力をするのは
処分場にはすでに相当量の廃棄物が堆積してい
T
環境問題対応のためでは
なく,処理費用を削減しなければ経営が成り立
る。
たないからである 。 リサイクル品が事実上無償
持ち込まれる廃棄物は,管理型の埋め立てな
であっても,焼却に 比べれば,環境規制対策費
ので,コストが高いこともあり最終中間処理
も掛からず埋立も必要なく焼却灰も出ず,処理
で消滅またはリサイク/レできない石膏ボード,
費を限りなく削減でき,解体請負費の残り分が
サイディング,焼却灰,汚泥などに限られてい
多くなる。
5年にはアスベス ト問題でア スベスト含有
る。0
他方,解体材をマテリ アル ・
リ サイク jレ品ま
が疑われる 廃石膏ボードなどの持ち込みが増え
たはサ ーマル ・リサイク jレ品として受け入れる
ているが,埋め立て計画量よりも持ち込み量が
業者もまた,この実態を踏まえて受け入れ価格
少ないので終了が 2∼ 4年ほど延びる見込みと
を設定する 。端的に言えば“タダでも処理費が
いう 。持ち込み量が少なくなったのは,焼却な
かからない分利益があるはず”という論理であ
どによる減量化が進んだためである 。建設リサ
イク jレ法は焼却も視野に置く 埋立処分場延命策
る。
住宅解体 ・処理業の経営は,そして リサイク
jレさえも,
でもあるが,効果を発揮していることになる 。
「
解体請負額 +再生有価物販売額 一
他の埋立処分場でも計画搬入量を下回る状況
処理費」で成り立っているのではなく, 「
解体
とのことで,処分場がセールスや値下げで廃棄
請負額一廃棄処理費」で動いている 。 この構造
物を取り合う状況ではないが青森 ・岩手 ・秋田
が,不法投棄を生む。不法投棄は廃棄処理費を
3県ではト ン当 たり 1
0
0
0円の産廃税が課せら
ゼロにする最も簡便な手段だからである 。坪単
れるので,焼却灰をトン 2万 5,6千円で宮城
価で見積もられて「解体請負額一廃棄処理費」
県まで運んでいる中間処理業者もあるという 。
で規定されている解体 ・処理の論理こそは,建
因みに K社の焼却灰の埋立料は産廃税込みで卜
2
7
ン4
3,
0
0
0円である 。
を飲んでみたが,蒸留水のように無味無臭であ
搬入廃棄物のうち焼却灰についてはマニュ
る。
フェス卜の関係で重金属な ど 5種の分析結果表
埋立処分場は 「
産廃ドリームのゴール」17)と
0万円
を添付しなければならないが,分析には 3
言われたような状況に現在はないという 。中間
ほどの費用が掛かるので,実際には 1年ごとの
処理施設での焼却による減量化やリサイクルが
契約時に分析表の写しを添付させている。新規
埋立処分場への搬入量を目に見えて減少させて
業者や少量の持ち込みの場合に分析表がなく搬
いること,それが埋立処分場の延命につながっ
入を断る場合があるという。そのような少量の
ているが,他方で埋立処分場の経営を厳しくし
0万円もの費用を握手けて分析して処
廃棄物に 3
ている。J社の事業をみる限りでは処分場単独
分場に持ち込まれているとは思えないので,不
の経営もまた厳しいことが分かる 。
法に投棄される可能性が大きい。
厳しくなる 一方の廃棄物処理規制だが,埋立
建設リサイクル法の矛盾
処分場はひとたび埋め立てが始まれば新たな規
廃処理専業の K 社は,廃車処理が主力だ った
制に対応するのは困難である 。 したがって新た
が,シュレッ ダーダスト処理のため 1
9
9
6年にガ
な規制強化への対応を求められることはないよ
0年代以降のリサ
ス化溶融炉を設置し, これで 9
うに思われるが,後になって排気筒の増設を求
イクル政策に乗ることができて急速に事業拡
められるなどするという。
大,いまや東日本トップクラスの産廃処理企業
処分場の経営は,維持費を確保するだけでな
として知られている。ガス化溶融炉と埋立処分
く閉鎖後の管理費も積み立てなければならな
場を有しているが,処理の中心はガス化溶融炉
い。 このような経営環境のなかでの経営は,開
による焼却である 。通常は埋め立て以外にない
設時の借入金の元利返済負担次第だという 。初
汚泥や焼却灰もガス化溶融炉に投入して金属回
期投資の金利負担されなければ,経営コストは
収と無害化を図ると同時に発電し,工場電力と
売り上げのなかで可能とい うことだろう。
7
,
加OKw/時
して利用している 。発電能力は 1
8
,
0
0
0世帯の l日の消費電力に相
で
. 一般家庭 1
埋立処分場の見学を申し込んだところ.すぐ
当するという。
に了承が得られた。住民の理解を得るためにも
処分場の見学を含めて全面公開を基本政策にし
前掲表 5に見るように引き取り価格が可燃物
ているという 。隣接地に他企業の中間処理施設
k
g
3
5円,埋め立て kg50円,前処理が必要なもの
や K社の埋立処分場があるが,いずれも関係者
k
g
6
5円と大まかなのは,処理方法が破砕 ・焼却
社の施
以外立ち入り禁止などの掲示があるが, J
による金属回収とサーマ jレ・リサイ ク/レが主力
設にはない。オープンな姿勢が感じられる。
で付加的に埋め立て,とシンプ jレなためであろ
つ
。
主に焼却灰を埋め立てている管理型処分場に
立ち入って観察したが,焼却灰特有の臭いはし
住宅解体材も受け入れているが,解体材は溶
ない。埋め立て全面公開姿勢は,飲めるまでに
融炉で混合されるので,そもそも分別の必要が
浄化されている浸出水の処理にも表れている 。
ない。K社の場合,分別は無駄な手間と 言 え
管理型処分場であるから浸出水の処理が必要で
る。現に,処理場には,解体木材に畳,衣類。
ある 。J社は。微生物による生物処理をした後
塩ビ管。電線などが混入し, ミンチ解体と恩わ
に 6千万円を投じた“ RO処理装置”の特殊なフ
ィルターで浸出水を穏過する。浸出水と糖、過水
との違いは一目瞭然で,促されて滅過された水
-2
8ー
1
7
)石渡正佳『産廃コネクション』
( WAVE出版 2
0
0
2年)
1
5
8頁以下参照。
住宅解体材リサイ クルの現状 と課題
れる住宅解体が積み上げられていた。持ち込み
多い解体木材のリサイクルが課題である。
事業者には分別するよ うにと 言っ ていると述べ
物質循環であるリサイク jレは,その経路が長
ているが,工務店側も K 社は分別にうるさくな
いほど好ましい。梁,柱,板をその形態を保持
いと認識している 。
しての再利用が日本では古来から行われてきた
K:
t
土の処理に分別は不要だが,処理価格は他
ことは,例えば法隆寺創建での解体材使用で知
の中間処理事業者と同様に分別処理を前提にし
られる 。解体木材のリサイクルとしては,この
ているから,処理実態から見れば割高に見え
ような再利用が最も望ましい。近年は,いわゆ
る。処理価格が高くても,処理施設を有しない
る“古民家再生”が知られている 。解体材とし
解体工事業者は分別コストがかからないミンチ
て再利用されるばかりでなく,建物自体を再生
解体なら対応できる。建設リサイク/レ法の矛盾
することにも大きな関心が持たれている 。 と
が見えてくる。
いっても ,実際には解体材としてさえ再利用 さ
工務店や中間処理事業者の K社評価は,適法
れない古民家の方が圧倒的に多いのであるが。
処理だが価格が高いことで知られている 。最終
まして建物にも解体材にもなんらの歴史的価値
処理事業者は限られているので, K社に委託せ
も見出されない一般住宅解体木材の再利用は顧
ざるを得ない廃棄物は多い。 K社に最終処分を
みられなくなった。理由は,両端などに柄穴が
委託している 中間処理業者の多くは,
リサイク
あり長さを詰めざるを得ないなど利用が限られ
K社の独り勝ち”をもたらしたと感じ
ル法が “
ること,隠れた釘まで抜かなければ道具を傷め
ているが,K社の急成長がこのような処理シス
ること,捻れなど“暴れ”が大きいため合板や
テムとリサイク jレ法に乗った価格設定とに無縁
集成材のように工業的に作られた素直な建材に
でないだろう。
慣れている職人の手に余ること,そしてなによ
とはいえ, K社の処理方法を建設リサイク jレ
りも現在の住宅建築ではコスト削減のため人工
法に背くと批判することはできない。分別され
節減が重視されること,などにある 。再利用率
た解体材を縮減と称してただ焼却させているだ
’こ
を高めるための解体工法の研究もあるが 18)
けの処理に比べれば,熱を回収しているだけリ
れらの理由で建築材として再利用の道を拓くこ
サイク jレしているとも言える 。 ガス化溶融炉で
とは,現状では難しい。
発電燃料にすることが認められるのなら ,分別
解体は無駄な手間である 。問題が.
再利用以外の用途としては形態変更による原
リサイクル
料化があり調査事例にも見られたように,破
のために分別させながらリサイクルの道がない
砕したうえで炭化する,チップ化して畜産用敷
建設リサイクル法にあることは明らかだろう。
料 ・堆肥 ・ボード ・製紙の原料とする ,燃料に
「どこがリサイクルなのか」と言っ た C社経営
者の批判が思い出される 。
してサーマルリサイクルする ,などが全国的に
も試みられている 。た だ し 燃 料 以 外 の 用 途 に
適するのは無垢材で,接着剤が使用されている
I
l
l
. 住宅解体材リサイクルの課題と方向
合板や集成材,はぎ材は適しない。 これらは合
板 ・集成材として再利用できるが,近年のよう
解体木材の用途
住宅解体材は,木質系,金属, プラスチック
系, コンクリート ・ガラス ・陶器などの窯業系
に分けられる 。金属とコンクリート以外のリサ
イク jレは進んでいない。 なかでも最も排出量が
1
8)宮崎博文 他 「
住宅解体廃木材の有効利用 をめ ざし た
手駿し解体工法の提案」(『廃棄物学会論文誌』第 1
4巻 4号,
3
74
5頁 2
0
0
3年
) は
. 全工程 の手作業解体によって解体木
材の破損が少なく な り 処分量 ・処分費用が減少する こと
を実証 している。ただ し 再利用可能 な解体木材が増えて
も販売さ れな ければ解体材の堆積に終わ ることにな る。
2
9-
に建築物構造への取り 付けに接着剤が使われて
ボード用チ ップ化の将来性
いる場合には解体時に破損するので,燃料など
用途が限られる 。
薬剤処理材の徹底除去を前提とした解体無垢
材の用途としては,製紙用チップと建材,家具
炭化での用途には,燃料としての木炭以外に
建具,電機器などに使われるボード用チップと
水質浄化剤や土壌改良材,調湿材がある。いず
がある 。ただし製紙用チップはボード用より
れも自然、素材として関心が広がっているが,伐
上質であること,製紙メ ーカーによっては処理
採木の炭化に 比べて解体材利用では炭化時の有
業者に普及している破砕でなく切削を要求する
水質浄化剤や土壌
ので,解体木材リサ イクjレとしてはボード用
害物質排出が懸念される
1
9
)0
改良材木炭の調湿性能は低く,性能維持には塩
チップが実際的である。
。効
化カ jレシウムなどの含浸が効果的とい う20)
秋田県能代市のボードメーカ− AK社には,
果の持続性という点から見ても水質浄化剤や土
調査企業 DEFの 3社が解体木材チ ップを 出荷し
壌改良材 としての利用が有望であるが。環境負
ている。 AK社を尋ね,同社社長に面談し調査
街対策を施した炭化設備に 巨額の資金を必要と
した。AK社は,硬質木質繊維のハード ・ボー
することと販路の確保が課題である。
ドと軟質木質繊維のインシュレーション ・ボー
ドを生産しており ,資本金 2千万円,従業員 33
調査事例にも見られたように,解体木材のリ
サイク jレ用途はボードや製紙の原料,燃料用の
∼4
0名,年間売上高 9億円ほ どである 。
チップ化であるが,燃料よりはマテリア/レ ・リ
解体木材チ ップは 2年前 から使用し. 2
0∼
サイク jレの方が好ましい。ただし解体木材は
30%は地元のものである 。林業と製材は能代市
無垢材であっても土台などにクレオソートやク
の主要産業なので製材残材チップも受け入れて
銅 ・クロム ・ヒ素)防腐剤が
ロjレデン, CCA (
5mm
おり.割合は半々。解体木材チップは, 2
塗さ れていたものが多いなど有害物質を含有す
メッシュ, 5mmアンダー不可で受け入れてい
1
)’伐採木に比べて用途
る可能性が大きいので 2
る。受け入れ時の計量から水分重量を検査して
が限られる。解体木材チップの堆肥化を模索し
差し引くが,加工過程で、水分を含ませて繊維に
ている処理業者は多いが,薬剤処理材が現場分
分解するので、
合水率は 30%あっても構わない。
別されていない現状では疑問が残る 22)
。同じ理
搬入チ ップが敷地内に覆いなしで堆積されてい
由で家畜敷料としての用途や家畜排池物との混
るのは水分を含ませるためでもある。チップの
合での堆肥化は問題が多い。
大きさが違うと製品の粒度が違ってくるので,
解体木材チ ップとパージン材 とは分けて使いた
1
9
)解体材炭化は 調査でも見られたように環境に対し
てオープンな装置で行われている。柴田晃は.解体木材の
炭化に「循環クローズド炭化 ・液化 ・分留システム Jの設
計概念を提示している。同「建築リサイクル法と木質系廃
立命館大学政策科学部『政策科学』第 8
棄物の有効利用 J(
巻第 2号 5
5
f
i
l頁 2
0
0
1年)参照。
2
0)中西亜貴夫他「木質系廃棄物由来木炭 ・鉄複合材料
による屋内の調湿能について」(『廃棄物学会論文誌』第 1
4
巻 2号 6
9
∼7
4頁 2
0
0
3年) 同「木質系廃棄物を利用した強
化型調混炭に関する研究」
(
『廃棄物学会論文誌』第 1
6巻 l
号1
3
∼1
9頁. 2
0
0
5年)など参照。
2
1)CCA処理材は薬剤l
反応によ って判定できるので 解
体現場での分別は技術的には可能である。渡辺洋ー らは処
迎施設のチップからカドミウム 鉛 ヒ索などの重金属が
倹出されることを検証している。渡辺洋一他 「埼玉 県にお
3回廃楽物
ける廃木材破砕チップ化施設実態調査」 ,(
『
第1
学会研究発表会講演論文集』4
7
3
∼4
7
5頁.2
0
0
2年
)
I
- 3
0
いと述べている。ボー ド用に最適な樹種はラワ
ンで,解体木材に 多い ヒパや松,杉などの針葉
樹は年輪部分が硬 いため木繊維をすりつぶす際
にクリアランスを小さくすると繊維が短くな
2
2)倉田泰人らは中間処理施設経由のチップには解体
系 ・非解体系を問わず有機系防腐剤 ・防蟻剤が含まれるこ
処理材が混入するだけで
とを.坂本広美らは少量の薬剤j
チップ材全体から有筈物質が検出されることを測定してい
3
る。倉田泰人他「建設廃木材中の化学物質(第 2報)」『第 1
回廃棄物学会研究発表会講演論文集』 4
7
6
4
7
8頁
, 2
0
0
2年),
坂本広美他 「
建設発生木材のリサイクルにおける安全性管
5回廃棄物学会研究発表会講演
理手法に関す る研究」
(
『第 1
論文集』 7
似∼7
0
6頁 2
0
0
4年)など参照。
住宅解体材リサイクルの現状と課題
る。首都圏からの持ち込みのように販路を広域
り,ボード原料としては難点があるという。
解体木材チップは,品質によってキロ 2∼3
にすれば,有価物としてのリサイクルにならな
円で受け入れている。解体材チップをキロ 1
0∼
い。その限り住宅解体材処理は「解体請負額
1
1円で受け入れていたこともある 。ボー ドも国
一処理費」の構造から抜けられない。
際競争に曝されており,パー ジンチップで間に
燃料以外に見いだせない解体木材リサイクル
合っていたが,ボード価格の低下で安い原料と
して解体木材チップを使わざるを得なくなった
サーマル ・リサイクルは,熱利用にせよ,発
もので,解体木材チップ受け入れ動機は価格対
電にせよ。自家消費も売電も可能である。多く
応で環境対応ではない。解体材チ ップは無償に
の事業者が住宅解体材リサイク jレを模索してバ
したいくらい,という 。実際,千葉や川崎も含
イオマス ・エネルギーとしての利用にたどり着
めて首都圏では解体木材チップが余っており,
。
く理由であるお)
処理業者は破砕チップを搬出しなければ解体材
住宅解体木材によるバイオ発電の試みやプラ
を受け入れることができないので,首都圏の解
ント建設が各地から伝えられている 。省エネや
体木材チップを能代港まで運ばせて無償であ
発電を事業とするサミット明星パワーが糸魚川
4年は 7
0
0トン積んで 1
0回入港.使用量の
る
。 0
に開設したバイオマス発電所は l日お0トンの
3害J
lを受け入れている。
廃木材を燃やして出力 5万 kw,国内最大規模
製紙用を含めて木材チップの園内生産量年
という 。同 じ く 省 エ ネ や 発 電 を 事 業 と す る
3
0
0
0万トンのうち解体木材と製材残材から作ら
ファーストエスコ社は,山口県岩国市,福島県
印O
万 トン,製紙用は古紙に変わ
れるチップは 1
大信村,大分県日田市などと共同でバイオ発電
りつつあり,ボード用は全体の 1割
' 3
0
0万トン
。
事業を計画と伝えられる鈎)
に達する。ボードではパーチク jレ・ボードが最
化石燃料消費と温暖化ガス削減対策として
)が解体木材を使って
も多く 90万トン。その 7害I
2
0
0
3年 8月に 「揮発油等の品質の確保等に関す
いる。ハード ・ボードとインシュレーション ・
る法律」が改正され,ガソリンに 3%までエタ
ボードを合わせて 35万トン, 50%が解体木材を
ノールを混合することが可能にな った。混合率
原料としている。
を高めるにはエンジンの改良が必要だが,経産
現状では,住宅解体材のマテリア jレ・リサイ
0% 混合を目標とし
省 ・環境省は近い将来に 1
クルとしてはボード用チップ以外に用途がな
ている 。 これに呼応して大成建設 ・丸紅 ・サッ
い。経営者は,解体木材チップも無垢材が少な
ポロビー/レと建材メーカー ・処理事業者とがプ
くなるので将来的には足りなくなる可能性が大
ラン卜を建設するなど,解体材からエタノー jレ
きく間伐材の利用が必要になると見ている 。い
を取り出す事業も広がろうとしている 。 これも
ずれにしてもボードの国際価格に左右される状
サーマル ・リサイク/レである 。
況であるが,加えて解体木材経由の重金属 ・有
能代市の AK社の敷地には。バイオマス発電
機物質のボード含有が知られるようになれば解
5億円のう
の巨大な施設が銭えている。設備費 1
体木材チップの使用は思避される可能性があ
23
)~l\垢材であ っても 解体木材は薬剤l 処理材が分別され
ずにチップ化されているためにボードからも高濃度の化学
物質が検出される現状から 解体木材の有効利用法 として
レ・リサイク/レが提起されている。 倉田泰人他前掲
サーマ l
論 文 酒 井 二「環境保全策の費用 ・損失余命分析
建
設発生木材リサイク jレを例に」(『環境経済 ・政策学会 2
0
0
5
年大会報告要旨』 2
0
0
5年)参照。
2
4)ファースト エスコ社ホームペー ジ参照。
る。有価物といっても輸送費が賄えるかどうか
0キロ圏が限度である。
の価格では,納入圏は 8
I
n
同社への納入業者が青森県では弘前市に集中し
ている現状を説明しているが,同時に価格問題
が広域の販路確保を難しくしていることが分か
1
9d
ち林業資源活用施設として園祭市から 1
0億円
本来のリサイクルに繋がるためには,再生品
の補助を得たものなので杉樹皮 ・製材対A
f材など
価格が 「
解体請負額一処理費」構造から抜け出
を燃料 としており 解体材は燃やさない。 03年
す必要がある。マテ リアjレ・リサイ クjレが「解
2月から稼働して年間 5
4千トンの樹皮 ・端材
体請負額一処理費」構造から抜け出すことがで
を燃やし,3000Kw/hの発電量と蒸気 24トン /h
きない現状では,サーマ/レ ・リサイク jレは,物
を生産している。発電量の 22%,6叩Kw/hは発
質循環経路の観点からは望ましいとは言えない
電用自消費分,残り 2おOKw/hの大部分は 7
.
5円
が現実的な選択肢と言わざるを得ない 2
6
)
。しか
/Kwで A K社が,余剰分は 3
.
8円/
Kwで東北電
しバイオマス発電にせよ,エタノール生産に
力に販売している。発生蒸気 2
4トン/ hのうち 4
せよ ー装置産業であって巨額の投資を必要とす
トン/ hは発電用蒸気に, 2
0トン/ hは叩O円/ト
るから,小規模な処理事業者が個々分散的に取
ンで A K社が購入してボ ード生産に使ってい
り組むのは困難である。政府や自治体の廃棄物
る。バイオマス発電には, 0
4年 4月から RPS
政策は,ゴミ処理 ・対策の域を出ず,廃棄物の
法お)が施行されたことも視野に入れている。
リサイ クjレは民間任せ,事業者任せの憾みがあ
2
0
0
5年 2月に青森県解体工事業協会が解体材
’住宅は私有物とはいえ家電や自動車と
るが 27)
の燃焼プラントを建設して農業用ハウスに暖房
違って社会資本でもあり,その処理への税金投
0
0
5年 7月 8日
供給することを計画していると 2
入は住民に均需する。青森県には K 社のサーマ
付け日本経済新聞東北版が報じた。その後の展
ル ・リサイク jレ施設もあるが, 一私営利企業に
開を問い合わせたところ,まだ話に出ている段
情報の透明性を含めて公益性,公共性を付託す
:
土も解体材による発電を検討中と
階という 。Bf
るのは適切と言えない。 A K社のバ イオ 発電の
聞いていたが,発電設備設置に焼却炉設置と同
ように,政府 ・自治体援助,住宅解体関連事業
程度の資金が必要と分かり進んでいないとい
者の出資によるサーマ jレ・リサイクル施設の設
う。小規模な焼却炉を有する処理事業者向けの
置が.社会資本としての住宅に対する公共関与
発電設備の開発も見られる。例えば,中外炉工
の視点から検討されるべきである。 28)
業では発電能力 180kw, 日量 5 トン程度の廃材
チップを燃焼させるガス化タイプの発電炉を開
発し実証設備で試験中と伝えられる (日本経済
新聞
2
0
0
5年 7月 8日)。最近注目されている
81
6年に原理が発明さ
小規模分散電源向けに, 1
れたスターリング ・エンジンを使 った発電機が
注目されている。しかし,住宅解体木材による
発電は,林業廃材などによる発電と異なってダ
イオキシン類などの処理が必要になる。日量 4
∼ 5トン程度の解体木材処理に技術的 ・価格的
に見合う発電設備はまだ現れていない。
2
5)Renewabl
e
sPo
1
t
f
ol
i
oS
t
a
n
d剖 d(
再生可能エネルギ一
利用書J
l合基準)の略。正式名称は 「
電気事業者による新エ
ネルギ一等の利用に関する特別措置法」
。 電力 会社に対し
て一定の割合で風力や太陽光などの新エネルギーの導入を
0
1
0年までに全販売電力の I
お%に当た
義務付けた法律。 2
2
2億 kWh/年を達成することを目標にしている。
る1
2
6
)リサイクル策の検討には リサイクルに要するエネ
ルギー ・コストや温暖化ガス削減効果も必要である。温暖
化ガス削減効果は P 排出権取引に関連して解体材リサイク
ルのインセンティプになりうる。温暖化ガス削減効果これ
らについては.高偉俊他 「
住宅解体材の再生エネルギー消
費量の計算に関する研究」(『日本建築学会計画系論文集』
第 51
6号 1
0
1∼ 1
0
6頁
, 1
9
9
9年)橋本征二他 「
解体木くずリ
(『土木学会論文集』第臼3
巻
サイク jレの環底面からの評価」
V
I
I1
4号 、3
748頁 2
0
0
0年)小林謙介他「住宅解体後の廃棄
2回廃棄物学会研究
物処理の現状と環境負荷の検討」
(『
第1
2
5∼ 1
2
7頁
, 2
0
01年)参照。
発表会講演論文集』 1
2
7
)処理業者には。 リサイクルを民間の自助努力任せに
しているという行政批判が多い。
28
)建設廃棄物のリサイクルにおける公共関与について
は 細田衛士 「
建設廃楽物リサイ クルの経済的側面J『廃
(
棄物学会誌』第 l
l
巻2号 3
∼1
4頁 2
ぽ旧年)も論じている。
- 3
2-
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