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3
特許・実用新案紹介
感温液晶を用いる温度計測方法
温度領域の拡大と精度向上を図る目的で開発した
も の で あ る。 出願番号:特願2002−142489
出 願 日:平成14年5月17日
2.技術の概要
特許番号:特許第3553048号
図1に温度計測システムの概略構成図(例)を
登 録 日:平成16年5月14日
示す。ここで被測定対象は,主配管(10)を流れ
特許権者:核燃料サイクル開発機構
る流体の温度が異なっており,枝配管(12)から
流れ込む流体の温度分布を観察することで,その
本発明は感温液晶が温度に応じて色を変える全
流動状況を把握することもできる。図2は流動状
温度領域を,感温液晶の3原色の輝度値と温度の
況を模式的に表すもので,A は枝配管(1
2)から
関係が単調増加関数あるいは単調減少関数となる
の流速が大きく主配管(10)の上側に達している
連続した多数の温度領域に区分し,各温度領域に
状況を,B は枝配管(12)からの流速が小さく主
おける3原色の輝度値範囲をそれぞれ求めてお
配管(10)の下側を流動する状況を,それぞれ表
き,感温液晶で実際に得られた3原色の各輝度値
している。A のような場合には,シート状の感温
を,各温度領域における3原色の輝度値範囲と対
液晶(14)を主配管(10)の下半面に貼着するこ
比して,3原色共に完全に対応し,1対1の関係
とによって(図2),温度分布を色分布に変換する。
にある特定温度領域を決定し,その特定温度領域
この感温液晶(14)に蛍光灯(16)で照明をあて,
内で輝度値からの線形補間によって直接的に温度
カメラ(18)で撮影する。そして,その画像情報
を算出するもので,流体の温度分布を観察する場
を信号変換カード(20)等のインターフェース介
合等に有用である。
してパソコン(22)に取り込み,3原色(R(赤),
G(緑),B(青))の各輝度値として数値データ化
1.目的
するようにシステムを構成する。
感温液晶の色から温度を求めるには,液晶の色
感温液晶の各輝度値と温度の関係を,実際に使
を3原色の輝度として数値化した後,これらをま
用するシステムで,温度が既知の流体を流し,そ
ず色相に変換し,あらかじめ求めていた色相と温
のときの感温液晶の色を計測し,あらかじめ求め
度の関係により,色相を温度に変換する方法が採
ておく。典型的な感温液晶における各輝度値と温
られていた。しかし,色相と温度の関係は,感温
度との関係の例を図3に示す。この例では,感温
液晶が温度によりその色を変える全温度領域につ
液晶は30℃から40℃の範囲で各輝度値が変化して
いてみると,(必ずしも一対一に対応しないため)
いる。しかし,図3のように R と G については輝
単調増加関数あるいは単調減少関数とはならない
度値が温度に対して単調な増加関数とならず,あ
ため,感温液晶がその色を変える温度領域を部分
る輝度値に対して対応する温度が2点ある範囲が
的にしか利用できなかった。また,高温領域では
存在する。このため各輝度値から温度を単純に求
変換精度が低下する傾向があった。このため,液
めることはできない。
晶が温度により色を変える全温度領域で,3原色
このため,感温液晶が温度に応じて色を変える
の各輝度から温度を直接求めることができ,計測
全温度領域を,感温液晶の3原色の輝度値と温度
サイクル機構技報 No.24 2
004.9
活
動
報
告
1
1
4
の関係が単調増加関数あるいは単調減少関数とな
る連続した多数の温度領域に区分し,各温度領域
における3原色の輝度値範囲をそれぞれ求めてお
き,感温液晶で実際に得られた3原色の各輝度値
を,各温度領域における3原色の輝度値範囲と対
比して,3原色共に完全に対応し1対1の関係に
ある特定温度領域を決定する。最後に,その特定
温度領域内で輝度値からの線形補間によって直接
的に温度を演算する。
従って,温度計測システム(ハードウェア)と
しては,感温液晶を用いる従来方法と同様で良い
が,手法(ソフトウェア)としては異なっている。
以下に輝度値から直接温度を求める場合につい
て説明する。
図3に示した輝度と温度の関係から,測定して
図1 温度計測システムの一例
いる温度が含まれる領域として,輝度と温度が1
【符号の説明】
対1の関係にある領域を求めるために,全温度計
10 主配管 1
2 枝配管 14 シート状の感温液晶
測範囲を各輝度値が単調増加あるいは単調減少と
16 蛍光灯 1
8 カメラ 20 信号変換カード
なるように適当な数の領域に分割する。ここでは
22 パソコン
例として0.
5℃の幅を持つ2
2の領域に分割し,各温
度領域と3原色の輝度値範囲を求めておく(表1
参照)。
温度測定箇所に置かれた感温液晶から3原色の
各輝度値を求める。この求めた3原色 RGB の輝度
値が各温度領域におけるそれぞれの輝度値範囲に
入っていれば,表1の当該原色の「あてはめ結果」
活
動
報
告
欄に「1」を,入っていなければ「0」を入れる。
測定している温度が3
2.
6℃の時の例を表1に網掛
で示す。測定した3原色 RGB 輝度値が R =83,G
=106,B =69となったとき,R の輝度値からは該
当する温度領域が2箇所(表1中の領域番号4と
領域番号7),G の輝度値からは該当する温度領域
が2箇所(表1中の領域番号7と領域番号10),B
図2 測定対象の例
の輝度値からは該当する温度領域が4箇所(表1
中の領域番号4∼領域番号7)候補となる。3原
色毎の当てはめ結果から測定温度は温度領域7に
含まれていることが分かる。各利用域では3原色
の輝度値は温度に対して単調増加あるいは単調減
少関数であることから,線形補間により輝度値か
ら温度を求めることができ,測定の信頼性向上に
資する。
図3 感温液晶の輝度と温度の関係
サイクル機構技報 No.24 2004.9
11
5
表1 輝度値の当てはめ表
領 域
温度範囲
1
輝
度
範
囲
当
て
は
め
結
果
R
G
B
R
G
B
29.
5∼30.
0
54∼62
65∼68
57∼63
0
0
0
2
30.
0∼30.
5
59∼68
67∼72
59∼65
0
0
0
3
30.
5∼31.
0
65∼78
69∼75
63∼67
0
0
0
4
31.
0∼31.
5
76∼92
72∼87
64∼71
1
0
1
5
31.
5∼32.
0
87∼92
84∼96
68∼71
0
0
1
6
32.
0∼32.
5
80∼81
93∼107
69∼72
0
0
1
7
32.
5∼33.
0
67∼83
105∼112
69∼73
1
1
1
8
33.
0∼33.
5
58∼70
109∼114
70∼74
0
0
0
9
33.
5∼34.
0
49∼60
107∼114
71∼75
0
0
0
10
34.
0∼34.
5
45∼52
100∼109
72∼76
0
1
0
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
22
40.
0∼40.
5
(0)
0
0
(0∼3)
53∼67
102∼106
(本社:技術展開部)
活
動
報
告
サイクル機構技報 No.24 2
004.9
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