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技 術 報 告 49 Development of Recovered Uranium Conversion Techniques 資 料 番 号 : 4−5 − Transport Experience of Recovered Uranium − Osamu TAKANOBU Facility Management Division、Ningyou-Toge Environmental Engineering Center 人形峠環境技術センターの製錬転換施設では、東海再処理工場で回収されたウランをUF6に転換する 技術開発を進めてきた。試験規模を拡大した平成 6(1994) 年 6 月以降、東海再処理工場から岡山県人形 峠環境技術センター 製錬転換施設までの回収ウランの輸送は、国内で初めて認可を受けたIP-2型核分裂 性輸送物として実施した。 The conversion facility at Ningyo Toge Environmental Engineering Center has been carrying out the development of UF6 conversion techniques using recovered uranium as a raw material from Tokai Reprocessing Plant. Transport of recovered uranium from Tokai Reprocessing Plant to conversion plant at Ningyo Toge Environmental Engineering Center has used type IP-2(F), Japan's first licensed package, since June 1994, when the conversion test scale was extended. キーワード 回収ウラン、輸送、輸送容器、IP-2 (F) 型、A2値、低比放射性物質 Recovered Uranium, Transport, Package, IP-2(F), Type Package, A2 value, Low Specific Activity. 1.はじめに した。輸送にあたっては、発地側(東海事業所) 使用済燃料中には資源として有用なウランが残 に輸送実施本部を設け、輸送隊、本社(東京:平 存している。ウランの有効利用方策の検討の一つ 成11年 2 月15日以降茨城県東海村に移転)及び着 として、核燃料サイクル開発機構(以下、サイク 地側(人形峠環境技術センター)とは通信衛星等 ル機構)は、人形峠環境技術センターの製錬転換 を用いた常時連絡体制をとるとともに輸送隊には 施設において、回収ウランのUF6への転換技術開 核燃料物質取扱等にかかわる経験者を同行させ安 発を進めてきた。転換技術開発に使用した回収ウ 全の確保を図った。回収ウランのUF6への転換の ランは、サイクル機構の東海再処理工場で回収し 規模の拡大を図った平成 6(1994)年6月から現在 たものであり、形態は三酸化ウラン(UO 3)であ (1999年 5 月)までの回収ウランの輸送回数は、 る。本稿は、東海再処理工場から人形峠環境技術 40回であり、輸送した回収ウランの量は、約300 センター製錬転換施設までの回収ウランの輸送に tUである。 ついて取りまとめたものである。 回収ウランの輸送に用いた容器は、核分裂性輸 茨城県の東海再処理工場から岡山県の人形峠環 送 物 の 要 件 で あ る 落 下 試 験 ( 9 m)、 耐 火 試 験 境技術センター製錬転換施設までの回収ウランの (800℃×30分)でも健全性を有するものであり、 輸送は、トラックあるいはトレーラーで行った。 IAEA輸送規則の1985年版を取り入れた国内法の 輸送経路は、道路強度、交通量、橋梁、連絡不感 施行(1991年 1 月 1 日)後、国内で初めて承認を 場所の有無等を事前に十分に調査したうえで選定 受けたIP−2(F)型である。直径約1.3m、高さ約 サイクル機構技報 No.4 1999. 9 50 技術報告 表1 回収ウラン組成計算条件例 1.6mの円筒型であり、重量は約1,300 kgである。 初期濃縮度 IP−2(F)型輸送物による回収ウランの輸送は、 入念な準備と輸送実施本部、受入側及び本社との 燃焼度 緊密な協力体制のもと実施され、これまで事故は 冷却 4 (%) 38,000 1 (MWD/T) 180 (日)1 なくすべて満足できるものであった。また、輸送 実施体制、連絡通報システムも当初の想定どおり機 表2 回収ウラン組成(設定値) 能することが確認され、回収ウランに限らず今後の 核 種 放射性物質の輸送に適用できるものと考えられる。 濃 度 U-232 2 (ppb/U)以下 2.輸送物の概要 U-234 0.03 (wt%)以下 2.1 IP型輸送物の適用性検討 U-235 1.6 (wt%)以下 回収ウランにはU-232、U-236等の天然ウラン U-236 0.5 (wt%)以下 には含まれていない同位体や微量ながら超ウラン U-238 元素(以下、TRU)及び核分裂生成物(以下、 F.P)が含まれている。回収ウランをA型輸送物 残り TRU(α) 2 2.5×10 (Bq/U)以下 Ru-106 1.9×104 (Bq/U)以下 として輸送する場合の収納限度を試算すると数十 kgとなるため、A型輸送物は実用規模で行うUF6 転換試験に対する輸送手段とはなりにくい。 示 別表第五」に基づき、数量(A2値)の限度を 平成 3(1991)年 1 月 1 日にIAEA輸送規則の 求めた後、放射能濃度がLSA-Ⅱの条件であるA2 1985年版を取り入れた国内法が施行され、従来の 値の1/10,000以下を満足するかしないかについて 量による輸送物区分の他に濃度の概念を取り入れ 検討した。その結果、回収ウランは低比放射性物 たIP型輸送物が新設された。回収ウランのIP型輸 質の条件を満足するものであることが判った。回 送物としての整合性を検討したところ、回収ウラ 収ウラン組成計算条件の一例を表 1 に示す。計算 ン(固体)は低比放射性物質(LSA-Ⅱ)の要件 組成等を参考にして設定した回収ウランの組成を (A2値の1/10,000以下)を満足することが判った 表 2 に示す。表 2 ではRu-106をF.Pの代表核種と ため、回収ウランの輸送は新設されたIP型で行う している。 A 2値に対する影響の大きい核種は、ウランの こととした。 同位体であるU-234、U-236である。この 2 核種 2.2 回収ウランの低比放射性物質(LSA物質) としての該当性 だけで回収ウラン全体の約 9 割を占める。TRU、 F.P及びウラン娘核種のA2値への影響は数%程度 輸送対象の回収ウランは、国内軽水炉の使用済 である。この傾向は、回収ウラン組成計算条件を 燃料をJNCの東海再処理工場でピューレックス法 変えても大きくは変わらない。なお、実際の輸送 により、化学的に回収されたものであり、回収さ に際しては、事前に核種組成を分析している。 れるウランの形態は固体(粉体)の三酸化ウラン 2.3 輸送容器 (UO3)である。 回収ウランの輸送に用いた輸送容器は、これま 低比放射性物質としての該当性の検討手順は以 下のとおりである。 でA(F)型として設計承認及び容器承認を受け ① 回収ウラン組成の設定 ていたものを、IP-2(F)型輸送物の技術基準に ② A2値及び放射能濃度の導出 基づき設計変更を行い、新たにUOX/C(F)型と ③ LSA-Ⅱ条件(放射能濃度はA2値の1/10,000 して承認を受けたものである。 本容器は、核分裂性輸送物の要件である落下試 以下)との比較 検討のための回収ウラン組成は、東海再処理工 験( 9 m) 、耐火試験(800℃×30分間)等でも健 場の使用済燃料受入条件を参考にして、計算コー 全性を有するものであり、日本国内で初めて認可 ド(ORIGEN②使用)を用い、初期濃縮度、燃焼 を受けたIP-2(F)型輸送容器である。輸送容器 度、冷却期間等をパラメータにして求めた。それ の外観図を図 1 に示す。輸送容器は二重構造を持 ぞれの計算組成について、「原子炉等規制法」の ち、直径約1.3m、高さ約1.6mの円筒状である。 「核燃料物質等の工場又は事業所の外における運 重量は約1,300kgである。輸送容器の主な仕様を 搬に関する技術上の基準に係る細目等を定める告 表 3 に示す。 サイクル機構技報 No.4 1999. 9 技 術 報 告 51 部の温度及び特別の試験条件における耐火性につ いてTRUMPコードを用いて解析・評価した。耐 火試験については原型容器による実験も行い耐熱 構造設計の妥当性を確認した。 ⑶ 密封解析 構造解析及び熱解析の結果から、密封装置であ る内容器の密封性が維持できることを解析により 評価した。 ⑷ 遮蔽解析 通常の輸送条件及び一般の試験条件下における 輸送物表面の線量当量率は、構造解析及び熱解析 結果を考慮した計算モデルを用いQAD-CGGP2コ ードで解析した。収納物以外の構造材の遮蔽効果 を無視した場合の 3 mの位置における線量当量率 の評価値は、3.23μSv/h(基準:10 mSv/h) 、一 般の試験条件下での表面線量当量率評価値は、 80.8μSv/h(基準:2mSv/h)であり、技術基準 図1 UOX/C型輸送容器外観 を満足する。 ⑸ 非損傷輸送物及び損傷輸送物について、構造解 表3 輸送容器の主な仕様 輸送容器の名称 外形寸法及び重量 直径 高さ 重量 核燃料輸送物の種類 輸送制限個数 収納する核燃料物質等 重量 ウラン-235 主要な放射性物質含有量 U−2321 U−2341 U−2351 U−2361 U−2381 TRU(α) Ru-1061 臨界解析 析結果及び熱解析結果を考慮した計算モデルを用 UOX/C型 いKENO-Ⅳコードで解析した。収納物のU-235 約1.3 m 約1.6 m 約1300 kg 濃縮度は1.6w/%とし、形態はUO 3よりも金属密 度が高くなるUO2で評価した。非損傷輸送物の実 IP-2型核分裂性輸送物 効増倍率は孤立系、配列系においても0.45( 3σ 任意 を含む) 、損傷輸送物の実効増倍率は孤立系、配 LSA-「 (ウラン酸化物(UO2,U3O8,UO3)粉末) ウラン酸化物 260 kg・U以下 4,160 g 以下 列系においても0.94( 3σを含む)以下である。 2.4 固縛装置 2.0 0.03 1.6 0.5 (ppb/U)以下 (wt%/U)以下 (wt%/U)以下 (wt%/U)以下 残り 2 2.5×10 (Bq/gU)以下 4 1.9×10 (Bq/gU)以下 輸送容器を輸送車両(トラック、あるいはトレ ーラー)に固定するための固縛装置は、前後 2 G、 上下 2 G、前方10Gの衝撃に耐えられるように設 計・製作されている。 3.安全確保 発地である茨城県のサイクル機構東海再処理工 IP-2(F)型輸送物としての安全解析の概要は、 以下に示すとおりである。 場から着地である岡山県のサイクル機構人形峠環 ⑴ 境技術センター 製錬転換施設までの距離は、約 構造解析 通常の輸送条件における化学的及び電気的反 900kmである。輸送経路の選定にあたっては、道 応、吊上装置及び固縛装置の強度、及び輸送中の 路の強度、交通量、時間帯、橋梁、トンネル、連絡不感 振動による輸送物の健全性を解析により評価し 場所の有無等について十分な事前調査を行った。 た。IP型輸送物及び核分裂性輸送物としての一般 調査結果を考慮して、休憩時間を考慮した走行 の試験条件、核分裂性輸送物としての特別の試験 計画、積載車両の前後に伴走車を配した輸送隊の 条件における輸送物の健全性について、また、臨 構成、通信連絡システム構築、輸送隊の運行を管 界解析に影響する形状変化等について解析により 理する輸送本部等支援体制の整備を図った。 また、 評価した。 走行計画、通信連絡、緊急時対応等を含む輸送計 ⑵ 画を作成し、作成した輸送計画について関係者間 熱解析 一般の試験条件における定常状態での輸送物各 (輸送業者、発地側、受入側及び本社)で情報を共 サイクル機構技報 No.4 1999. 9 52 技術報告 有し、回収ウラン輸送に係る安全確保を図った。 た輸送車両の前後に、輸送隊を指揮する運行責任 者、放射線管理者、JNCの同行専門家等が乗車す 4.輸送実績 る伴走車を配した隊列を編成した。輸送隊は万一 回収ウランの輸送は、前後に伴走車を配した 1 の事故の発生に備え、放射線測定器、除染機材等 隊列により実施した。輸送開始からの 3 回は道路 の放射線管理資機材及び信号灯等の後続車の追突 事情の確認、受入側の対応性等を考慮し、トラッ 防止機材等初期対応に必要な資機材を携行した。 クにて輸送したことにより、1 輸送当たりの輸送 主な携行資機材を表 4 に示す。また、輸送隊列を 量は約 6 tであった。その後、トレーラーにより、 図 3 に示す。一般的な輸送隊列を図 4 に示す。 1 輸送当たり約 8 tの輸送を行なった。ただし、 ⑵ 連絡体制 平成 7(1995)年 1 月に発生した阪神大震災の影 回収ウランの輸送中、輸送実施本部(東海事業 響により大型トレーラーの通行制限があったた 所)と輸送隊との間は常に連絡可能な状態を維持 め、平成 7 年度輸送11回のうちの 5 回はトラック した。輸送隊からは定期的に輸送隊の位置、道路 輸送となった。 状況が報告され、輸送隊の状況は常に把握できる 状態に置かれていた。また、輸送隊の情報は、本 4.1 輸送手続き 社及び着地側である人形峠環境技術センターにも 回収ウランの輸送に際しては、通過各県警との ただちに送られるシステムを整えた。 事前調整結果を参考にし、輸送日時は輸送日の 1 か月前に決定した後、国内法令及び地元安全協定 4.4 到着 受入側は輸送隊の到着に先立ち、輸送隊車両の 等に基づく手続きを行った。輸送手続きの種類と 輸送日を関連させて図 2 に示す。 4.2 輸送準備 表4 携行資機材の例 輸送直前においては、輸送実施本部が輸送直前 における道路状況、天候情報、輸送障害の有無等 を勘案した車両への輸送物の積付可否判断及び発 ・放射線測定器(α、β・γ) ・消火器 ・標識 ・オーバーオール ・夜間信号用ランプ ・ビニールシート、ビニール袋 ・パーキングスタンド ・汚染除去剤 送前検査によるIP-2型輸送物基準との整合性確 ・ゼブラロープ 認、さらに、輸送当日における再度の道路状況、天候 ・無線機 その他 情報、輸送障害の有無等を勘案した輸送隊出発の 可否についての判断を行うことで、輸送に係る安全 の確保に万全を期すこととした。また、輸送関係 者間では、行動計画、休憩地による駐車方法、緊急 時の対応等輸送中の安全対処について再確認を行 ない、情報不足による不安全要因の排除を図った。 4.3 輸送 ⑴ 輸送隊列 回収ウランの輸送においては、輸送物を積載し 図3 輸送隊列 図4 一般的な輸送隊列 図2 輸送手続き サイクル機構技報 No.4 1999. 9 技 術 報 告 53 人形峠環境技術センター構内への誘導、輸送隊車 の最大値は3.3μSv/hであった。この値はIP-2型 両駐車場所表示等の準備作業を行うとともに輸送 輸送物の技術基準(車両表面: 2 mSv/hを超えな 隊到着後の線量当量率等を測定し、安全性に係る いこと、車両表面から 1 m:100μSv/hを超えな 異常のないことを確認した。なお、受入側におい いこと)を十分満足するものであった。 ては、輸送実施本部及び輸送隊から入る輸送隊の 位置等の情報により、輸送隊受入準備作業を効率 5.おわりに 的に行うことができた。 国内初のIP-2(F)型輸送物による回収ウラン の40回の輸送は、入念な準備と輸送実施本部(東 4.5 異常事態等 海) 、受入側(人形)及び本社(東京:平成11年 交通渋滞による到着の遅れ、及び平成 7 年 1 月 2 月まで、以降東海)との緊密な協力体制の下で に起こった阪神大地震の影響による大型トレーラ 実施され、これまで事故はなくすべて安全上満足 ーの通行制限等があったが、当該輸送隊にかかわ できるものであった。また、輸送実施体制、連絡 る事故等の異常事態の発生はなく、回収ウランの 通報システムも当初の想定どおり機能することが 輸送はすべて安全に行なうことができた。 確認され、回収ウランに限らず今後の放射性物質 の輸送に適用できるものと考えられる。 4.6 輸送回数、輸送量、線量当量率等 平成 6 年 8 月から開始した実用規模によるUF6 謝辞 転換試験に使用する回収ウランの輸送は、平成11 回収ウランを用いた実用規模によるUF6転換試 (1999)年 5 月に40回を数え、輸送量は、約300t 験は、電気事業者の協力を得て実施した。試験に Uとなった。輸送開始開始から 3 回目までの輸送 使用する回収ウランの輸送は、ATS(株)を始め、 及び阪神大震災が発生した平成 7 年度の 5 回の輸 東海事業所、本社、人形峠環境技術センター、他 送はトラックで行ない、それ以外はトレーラーで 多くの関係者の協力と御尽力をにより、安全に成 行なった。 し遂げることができた。ここに回収ウラン転換試 車両表面の線量当量率最大値は14μSv/hであ り、車両表面から 1 mの位置における線量当量率 験及び回収ウラン輸送に関係した皆様に感謝の意 を表します。 サイクル機構技報 No.4 1999. 9