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国際経営史 8
国際経営史 8 第8講 ドイツの工業化と企業(1) 1.「ドイツ帝国」と工業化の始まり ①ビスマルク政権 ・オットー・フォン・ビスマルク(在任 1862-90 年) ・関税自由化(関税同盟)を始め,基本的には自由貿易,自由競争 政策をとる ・1870 年,株式会社制度の導入(株式法) ・1870∼73 年に 857 社が設立 ・大量倒産,20 年近く続く不況へ ・1879 年,関税改正(保護関税の導入),自由主義から保護主義へ ・1890 年,ヴィルヘルム 2 世と政治的対立,更迭される 出所) Wikimedia Commons. ②第二次産業革命とドイツの経済発展 a. 鉄鋼業 ̶ 最初期の「混合企業」 ・ドイツにおける大企業の先駆け ・ライン川流域における石炭・鉄鋼企業 ・1835 年以降の鉄道建設で大きく飛躍 ・1812 年,クルップ社設立 ・フェニックス社,グーテンホフヌンク社な ど ・初期から石炭,鉄鋼,機械製作の複数部門を ルール地方 持つ(後進性=社会的分業の未成熟) ・ベッセマー法など最新技術をいち早く導入 ・鉄道向け生産から軍需向け生産,輸出へ b. 電機 ̶ シーメンス(Siemens)と AEG <シーメンス> ・1847 年,ヴェルナー・ジーメンスが機械工ハ ルスケとジーメンス・ハルスケ電信製作所を 設立 ・グッタペルカ絶縁電信線(1847 年頃),発電機(1867 年),電車(1879 年)などを発明した一番手 企業 ・初期からロシア,イギリスなど国外に進出 ・1880 年には発電・送電設備,電動機,電灯,電気鉄道を一貫製造する電機企業へ 1 <AEG> ・1883 年,エミール・ラーテナウがドイツ・エジソン会社を設立(87 年に AEG に社名変更) ・白熱灯の生産から電力供給事業へと進出,電気鉄道にも進出 ・1911 年には国内発電量の 31%を占める →シーメンス,AEG ともに多くの部門を抱えていたため,階層的経営組織を形成した →しかし,経営者は基本的に創業家が占めていた c. 化学 ̶ カルテルから利益共同体へ ・1860 年代から,合成染料の製造企業が勃興する ・バイエル(1863 年),ヘキスト(1863 年),バスフ(BASF, 1865 年)アグファ(1873 年)など ・国際的な価格競争(技術革新と量産効果),カルテル,トラストの模索 ・IG=インテレッセン・ゲマインシャフト:利益共同体の形成(1904 年) ・バイエル,バスフ,アグファによる IG ・ヘキスト,カッセラ,カレによる IG ・独占体制:世界の合成染料の 88.4%を生産,世界の染料総輸出高の 92%を占めた(1913 年) ・1925 年には上記の 6 社を含む 8 社が合併,IG ファルベンが発足 2.第二次産業革命期ドイツ企業の特質 ①カルテル,シンジケートとドイツ企業 a. カルテル ・石炭=鉄鋼:初発から複数部門の「混合企業」,専業企業間ではカルテル ・電機:競争による合併,大規模化,寡占化 ・化学:競争からカルテル,IG の形成,寡占化 ・当時のドイツの最高裁判決では,カルテルは合法 ・当時の風潮:他者を排除するトラストは違法だが,独立な企業の連合(カルテル)は合法 b. シンジケート(主に石炭業) ・カルテルは企業間の協定であるため,不安定 ・カルテルを強化するものとして,協同販売会社を設立(シンジケート) ・1893 年,ライン・ヴェストハーレン石炭シンジケートが設立 ・生産割当,共同購入,販売を一手に引き受ける ・1900 年にはルール地方の石炭生産量の 90%を扱う(ドイツ全体の 50%) c. カルテルと垂直統合 ̶ 石炭=鉄鋼業における「混合企業」 ・ドイツの石炭,鉄鋼,機械工業では,初期から混合企業が成立 ・石炭専業企業,製鉄専業企業,機械専業企業との対立 2 国際経営史 8 ・専業企業間で進んだカルテル→シンジケートの動き →混合企業は専業企業のカルテル価格で購入することになる →混合企業はさらなる垂直統合を進める ②銀行と株式会社 a. 銀行の設立 ・関税同盟から鉄道建設が本格化 石炭 ・資金需要から銀行設立が続く ・1848 年,シャーフハウゼン銀行 ・1850 年,ダルムシュタット銀行 製鉄 ・1870 年,ドイツ銀行 ・1870 年,コメルツ銀行 ・1872 年,ドレスナー銀行 ・合併を通じて 1900 年前後には「ベ 機械 ルリン 6 大銀行」に統合 <ベルリン 6 大銀行> ・ドイツ銀行 ・ディスコントゲゼルシャフト ・ベルリナーハンデルスゲゼルシャフト ・ドレスナー銀行 ・シャーフハウゼン銀行 ・ダルムシュタット銀行 b. 企業との関わり ・多くの企業に長期の貸出 ・株式の引受 ・シンジケート,買収合併等の仲介 ・資金供給先の企業に監査役を派遣 ・株式会社:株主総会,監査役,取締役 ・銀行は監査役を派遣,実質的に企業を支配した(コンツェルン) ③コンツェルン ・ドイツのコンツェルンは,結果として以下の二つ類型が存在 ・石炭=鉄鋼の混合企業が発展したコンツェルン(クルップ,グーテンホフヌンク製鉄所) ・6 大金融グループと密接な関係を持ったコンツェルン(シーメンス,AEG,化学企業など) 3 <これまでの講義資料について> 以下のアドレスで以前の講義資料をダウンロードできます。 http://businesshistory.web.fc2.com/atStudy 最上部の「講義資料」からダウンロードして下さい。 4