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夢内容の記憶保持に関する研究

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夢内容の記憶保持に関する研究
夢内容の記憶保持に関する研究
甲斐里穂(指導教員:浅岡章一
准教授)
キーワード:夢、REM 睡眠、記憶、夢特性、性差
問題・目的
Schredl & Reinhard (2008) の論文では、夢に対する価値
観の違いが夢の保持力に影響し性差が生れている可能性が高
いと指摘されているが、実際に夢内容の記憶の保持を測定し、
主観的な夢見頻度との関連を検討した研究は見当たらない。
従って本研究では、夢内容の記憶保持に影響する要因につい
て検討する。
が夢の価値 (r = -.491, p < .05) と、夢への態度 (r = -.472 , p
< .05) と有意な相関を示し、得点が高い人ほど REM 覚醒時
には夢の内容をより印象が薄いと評価していた。
また主観的変数と実験で得られた変数について性差を検討
したところ、夕方の夢報告数でのみ有意差が得られ (t (19) =
-2.90, p < .01) 、女性の報告数が男性の報告数よりも多いこ
とが示された。しかし、主観的変数や、正しい想起の割合に
おいての性差は認められなかった。
方法
大学生 21 名 (男性 13 名, 女性 8 名) を対象とした。対象
者の平均年齢は 20.2 歳 (SD= 1.34) であった。入眠をスムー
ズにするため、参加者には実験の 4 日前から就寝を 23 時、
起床を 7 時とし睡眠時間を統制してもらった。
実験当日には、睡眠段階を判定するための電極を装着後、
25 時に消灯し、参加者にはシールドルーム内のベッドで就寝
してもらった。実験者は睡眠ポリグラフを PC 画面上で確認
し、REM 睡眠中に実験参加者を覚醒させた。その後、実験
者がシールドルームに入室し、実験参加者には夢の内容を口
頭で報告させ、夢の特性に関する質問紙 (夢特性評定尺度)
に記入を求めた。質問紙への記入が終わったら実験者は退
室・消灯し参加者を再び就寝させた。以上の手続きを朝 9 時
まで繰り返した。また夢の保持状態を調べる為、REM 睡眠
からの覚醒直後に実施した質問紙とほぼ同様のものを報告し
た夢の回数分持ち帰らせ、起床 7 時間後の 16 時に回答させ
た。質問紙に回答するまでの間の仮眠を禁止すると共に、意
図的に夢を覚えていようと努力することを防ぐため、質問紙
は封筒に入れた状態で渡し、指定された回答時刻になるまで
中身を見ないよう指示した。
実験後、夢の内容について REM 覚醒時に報告されたもの
とその日の夕方に報告されたものとの間での対応を確認する
ため、実験者 3 名が各々に、夕方に報告されたそれぞれの夢
の内容が REM 覚醒時に報告されたどの夢と対応しているか
について判定した。その後、実験者 3 名による評価を比較し、
全員一致で対応していると判断した夢、評価者によって判断
が分かれた夢、どの夢にも対応していない又は対応の有無が
判別できない夢の 3 つに分類した。またこれらの夢の 3 つの
個数を実験中に夢を報告した回数で除し、それぞれの割合を
算出した。
考察
先行研究では夢への態度の積極性が夢の記憶の保持力に影
響し、主観的報告の場合に性差が生れていると報告されてい
た。しかし本研究では、夢の価値や夢への態度が影響して夢
の保持力が高まるとの結論は得られなかった。寧ろ夢の内容
に価値を見出している参加者は、REM 睡眠からの覚醒直後
では印象の薄い夢でも、REM 睡眠時覚醒法では夢見体験の
報告が出来るなど、REM 睡眠からの覚醒直後における報告
において特徴がみられた。更に「男性に比べて女性の方が夢
への態度が積極的である」との知見とも異なり、夢の価値や
夢への態度の得点に関して男女間での有意差は認められな
かった。今回このような結果を得た理由として、実験参加者
を希望で募った為に、男女に関係なく元々夢に興味や関心の
ある学生が集まったのではと考えられる。
文献
Schredl, M. & Reinhard, I. (2008). Gender differences in
dream recall: a meta-analysis. Sleep Res, 17,
125-131.
表 主観的変数と、実験よって得られた変数の相関
結果
REM 睡眠から覚醒させた回数は合計 81 回であった。その
うち夢見の報告を得られたのは 72 回 (89%) であった。REM
覚醒時に報告された夢のうち、夕方に正しく想起された夢の
割合は平均 46%であった。
高い頻度で夢をみると答えた参加者は、夢の価値の点数も
有意に高く (r = .672, p < .01)、夢への態度の点数も有意に高
かった (r = .742, p < .01)。主観的に高い頻度で夢を見ると報
告した参加者では、実験中の夢の報告数も有意に多かった (r
= .705, p < .01)。しかし、主観的な夢の頻度は、夕方の想起
率との間に負の相関を示し(r = -.536, p < .05)、正しく夕方に
想起できた夢の割合との間にも有意な相関を示さなかった
(r = -.291, n.s.)。更に夜の夢における夢特性評価と主観的変
数の相関を求めたところ「印象の薄い-強烈な」という項目
10
主観的な
夢想起頻度
夢の価値
夢への態度
夕方に正しく
想起された割合
-
-
-
夕方に想起されたか
判定が一致
しなかった割合
-
-
-
夕方には報告
されなかった割合
-
-
-
REM 覚醒時の報告数
.705 **
.381 ✝
.414 ✝
夕方の報告数
-
-
-
想起率
-.536 *
-
-
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