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瀬戸内海再生ニュービジネス創出調査事業 報 告 書
平成22年度地域新成長産業創出促進事業 瀬戸内海再生ニュービジネス創出調査事業 報 告 書 平成 23 年 2 月 経済産業省中国経済産業局 目 次 第 1 章 事業概要 ....................................................................................................................................................................... 1-1 1.1 件 名..................................................................................................................................... 1-1 1.2 目 的..................................................................................................................................... 1-1 1.3 事業概要 ................................................................................................................................ 1-3 1.4 フォーラムの設立・開催 ............................................................................................................ 1-4 第 2 章 鉄鋼スラグ等に関する現状把握............................................................................................................................ 2-1 2.1 産業副産物等の海域利用に関する現状把握 ............................................................................. 2-1 2.2 鉄鋼スラグとは ........................................................................................................................ 2-3 2.3 鉄鋼スラグの発生量及び再利用の現状 ..................................................................................... 2-5 2.4 鉄鋼スラグの物理的・化学的特性等 .........................................................................................2-13 2.5 鉄鋼スラグを海域利用する場合に期待される効果、環境への影響の可能性 .................................2-24 2.6 鉄鋼スラグの海域利用に関する適用事例のレビュー ..................................................................2-25 第 3 章 瀬戸内海の環境修復ニーズ調査.......................................................................................................................... 3-1 3.1 調査方法 ................................................................................................................................ 3-1 3.2 調査結果 ................................................................................................................................ 3-5 3.3 瀬戸内海における環境修復ニーズの整理 ................................................................................3-13 3.4 瀬戸内海における環境修復ニーズ(ヒアリング結果)...................................................................3-15 3.5 鉄鋼スラグ等の海域利用に関するニュービジネスに適用可能性のある事業制度...........................3-16 第 4 章 中国地域における海洋修復関連技術シーズ調査........................................................................................... 4-1 4.1 調査方法 ................................................................................................................................ 4-1 4.2 海洋修復関連技術の整理 ........................................................................................................ 4-2 4.3 海洋修復関連技術への鉄鋼スラグ利用可能性..........................................................................4-11 第 5 章 鉄鋼スラグ等を瀬戸内海で利用した場合の CO2 吸収・固定量調査.......................................................... 5-1 5.1 調査方法 ................................................................................................................................ 5-1 5.2 瀬戸内海において環境修復が必要な海域................................................................................. 5-2 5.3 鉄鋼スラグを利用した環境修復事業の実施例 ............................................................................ 5-3 5.4 モデル海域における鉄鋼スラグを利用した環境修復事業等の設定 .............................................. 5-4 5.5 モデル海域における鉄鋼スラグを利用した環境修復事業等による CO2 吸収・固定量の算定 ..........5-11 5.6 瀬戸内海における鉄鋼スラグを利用した環境修復事業等による CO2 吸収・固定量の算定..............5-23 第 6 章 鉄鋼スラグ等を利用した瀬戸内海再生ニュービジネス創出に向けた課題の整理 ............................... 6-1 6.1 課題の整理方針...................................................................................................................... 6-1 6.2 課題の整理............................................................................................................................. 6-2 第 7 章 モデルプロジェクト・ビジネスモデル等の提案及び検討................................................................................ 7-1 7.1 ビジネスモデルの提案 ............................................................................................................. 7-1 7.2 ビジネス化に向けた課題 .........................................................................................................7-12 7.3 ビジネス展開の方法の整理と課題解決に向けた方策、フォーラムの支援機能(案) ........................7-14 7.4 モデルプロジェクト(例) ...........................................................................................................7-20 第 8 章 シンポジウムの開催.................................................................................................................................................. 8-1 8.1 目的と実施内容....................................................................................................................... 8-1 8.2 シンポジウムの開催結果 .......................................................................................................... 8-2 第 9 章 まとめと今後の課題、方向性.................................................................................................................................. 9-1 9.1 本事業で得られた成果の概要 .................................................................................................. 9-3 9.2 ビジネス化に向けた今後の課題等 ............................................................................................ 9-5 9.3 フォーラムの今後の方向性 ....................................................................................................... 9-6 第1章 事業概要 第1章 事業概要 1.1 件 名 平成 22 年度地域新成長産業創出促進事業 「瀬戸内海再生ニュービジネス創出調査事業」 1.2 目 的 瀬戸内海沿岸域においては、藻場・干潟の減少、海底環境の悪化など、環境修復ニーズが大きい。一方で、 地元大学等研究機関において技術シーズが多く蓄積されている。その中で、製鉄所で鉄鋼製品の製造工程 において副産物として発生する鉄鋼スラグは主にセメント用材や土木・港湾工事用材として利用されているが、 近年では、鉄分(二価鉄)が多く含まれていることから、藻類の成長を促進する藻場再生効果があることが実証 されている。藻場は CO2 を吸収するため、海域での藻場の有効利用について検討・実証が進められており、ま た、再生した藻場からアマモ等を回収し、バイオマス原料として利用出来る可能性もあり、高い CO2 削減効果 が期待されている。 中国地域には製鉄所が多く立地しており、藻場再生効果を有する鉄鋼スラグの入手が非常に容易であるこ と、漁業関連製品や海洋修復製品を製作している地元中小企業が多数存在するなど、ニーズとシーズのマッ チングによる事業展開が可能なポテンシャルを有している。 そこで、産学官の有識者による検討の場となる『海の再生ニュービジネス創出プロジェクト推進フォーラム (以下「フォーラム」という)』を設置し、瀬戸内海に鉄鋼スラグ製品の藻場再生効果を適用した場合の CO2 削減 効果の検証や、海洋環境に応じた製品開発等による瀬戸内海再生のニュービジネス創出の方策について調 査・検討することを目的としている。 事業の全体フローは図- 1.1 に示すとおりであり、その詳細ついては「1.3 事業概要」に示した。 1-1 第1章 事業概要 「海の再生ニュービジネス創出プロジェクト推進フォーラム」の設置・運営 ○鉄鋼スラグ等の特性、発生量、有効利用されている量・製品等 ○鉄鋼スラグ等を海域利用する際の特性、課題(問題点)、活用状況等 ○鉄鋼スラグ等を利用した製品の品質、特性、効果の持続性等 ○中国地域の中小企業や大学等研究機関における海洋環境修復技術、藻場再生関連技術、CO2 固定化技術等に係る技術シーズの調査・分析、優位性等の評価 現状把握の結果に基づき、 ①鉄鋼スラグ等を海域で利用する場合の課題(技術 的課題、社会的課題、制度的課題)を整理・抽出す る。 ・海洋環境に応じた製品開発等のモデルプロ ジェクト、新商品開発やニュービジネス創出 の観点からビジネスモデルを複数提案し、実 現可能性の高い事業の方向性等を検討する。 ②鉄鋼スラグ等を利用したニュービジネス創出の可 能性と実現に向けた課題を整理・抽出する。 ○海洋環境の把握・整理、瀬戸内海の藻場・干潟の状況、これまでの海洋修復活動の実施状況 環境修復ニーズの調査・分析・評価 CO2 ○鉄鋼スラグ等を利用した瀬戸内海の藻場・干潟再生、海洋修復に利用した場合のCO2吸 収・固定効果に関する調査・分析・評価 「海の再生ニュービジネス創出プロジェクト推進フォーラム」の継続・拡大(メンバー・機能等) ■鉄鋼スラグ等を利用した新商品開発など、具体的なプロジェクトが稼働するとともに、ニュービジネス創出の基盤が整備され、海の再生ビジネスが広く展開。 ■さらに、環境保全、修復活動も進展。 図- 1.1 事業の全体フロー 1-2 第1章 事業概要 1.3 事業概要 1.3.1 鉄鋼スラグ等に関する現状把握 鉄鋼スラグに関する基本的な知見として、以下のデータを収集・整理するとともに、鉄鋼スラグを海域で利 用する場合の課題抽出・分析を行うものとする。 ・鉄鋼スラグの特性、発生量、有効利用されている量・製品等 ・鉄鋼スラグを海域利用する際の特性、想定される環境への影響、利用状況等 ・鉄鋼スラグ製品の品質、特性、効果の持続性等 なお、課題抽出・分析にあたっては、鉄鋼スラグ以外の副産物と比較した場合の鉄鋼スラグの優位性や適 用可能範囲などについても検討を行うものとする。 1.3.2 中国地域における海洋修復関連技術シーズ調査 中国地域の中小企業や大学等研究機関における海洋環境修復技術、藻場再生関連技術、CO2 固定化技 術等に係る技術シーズの調査・分析、優位性等の評価を行う。 また、技術シーズを幅広く収集するため、中国地域の中小企業の持つ他分野の技術(海洋修復関連技術 に応用可能なもの)や、今後海洋修復関連や CO2 固定化に関する新商品開発や販路開拓を希望する企業 の有無についても調査を行うものとする。 1.3.3 瀬戸内海の環境修復ニーズ調査 海洋環境の把握・整理、瀬戸内海の藻場・干潟の状況、これまでの海洋修復活動の実施状況、環境修復 ニーズの調査・分析・評価を行う。 また、これらの調査結果や法規制、既定計画、海域の利用状況などを踏まえ、今後海洋環境修復事業の 実現性が高いと考えられる場所を複数案抽出するものとする。 1.3.4 鉄鋼スラグを瀬戸内海で利用した場合の CO2 吸収・固定量調査 鉄鋼スラグを利用した瀬戸内海の藻場・干潟再生、海洋修復に利用した場合の CO2 吸収・固定効果に関 して、以下について調査・分析・評価を行う。 ・藻場再生事業等での CO2 吸収・固定量、施工に際しての CO2 排出量 ・瀬戸内海における藻場修復可能面積の算出 ・1.3.3 で抽出した、環境修復事業の実現性が高いと考えられる場所において、藻場等の再生を行った場 合の CO2 吸収・固定効果の評価と費用対効果の分析 1.3.5 モデルプロジェクト・ビジネスモデル等の提案及び検討 地元中小企業、関連団体、大学等研究機関及び行政機関等からなるフォーラムを設置する。フォーラム では、海洋環境に応じた製品開発等のモデルプロジェクト、新商品開発やニュービジネス創出の観点からビ ジネスモデルを複数提案し、実現可能性が高い事業の方向性等を検討する。 (提案、検討例) ・ビジネス展開上の課題(法規制等の制約要件等) 1-3 第1章 事業概要 ・上記課題の具体的な解決策 ・ビジネスモデルの経済性 ・継続的な事業展開に向けた提案 ・中国地域の中小企業の活性化(新商品開発や販路拡大)につながるビジネスモデルの提案 なお、1.3.1~1.3.4 の調査結果等を踏まえてフォーラムに提案することとし、フォーラムの検討に反映す る。 1.3.6 シンポジウムの開催 調査結果を PR するため、100 名程度の規模のシンポジウムを広島市内で 1 回開催する。なお、シンポジ ウムのプログラムにはパネリスト 5 名程度のパネルディスカッションを含めるものとする。また、シンポジウムで は、来場者へアンケートを実施し、その結果を本調査の検討に反映させるものとする。 1.4 フォーラムの設立・開催 中国経済産業局では、中国地域がその強みを発揮し、自立的に発展、成長していくため、2020 年を見据え た目指すべき将来像と地域の関係機関と連携・共創を図りながらその将来像を実現するための具体的工程表 を示した「ど真ん中!中国地域経済活性化プロジェクト 2020」を平成 22 年 6 月に策定・公表した。このなかで は、中国地域における 2020 年の将来像を実現する 17 のプロジェクトの一つとして、低炭素社会形成の一環と して「海の再生ニュービジネス創出プロジェクト」の推進を行うこととしている。 「海の再生ニュービジネス創出プロジェクト」を実施する背景と将来像は図- 1.2 に示すとおりであり、将来、 鉄鋼スラグ等を利用した新商品開発など具体的なプロジェクトが稼働するとともに、ニュービジネス創出の基盤 が整備され、海の再生ビジネスが広く展開し、さらに環境保全、修復活動が進展していることを目指すものであ る。 その一環として、本事業では、産学官の有識者による検討の場となる『海の再生ニュービジネス創出プロジ ェクト推進フォーラム』を設置し、瀬戸内海に鉄鋼スラグ製品の藻場再生効果を適用した場合の CO2 削減効果 の検証や、海洋環境に応じた製品開発等による瀬戸内海再生のニュービジネス創出の方策について検討を 行った。 平成 22 年度のフォーラムは合計 4 回開催し、フォーラムでの検討を踏まえとりまとめを行った。フォーラムの 全体スケジュール及び委員名簿は、図- 1.3 および表- 1.1 に示すとおりである。 1-4 第1章 事業概要 ◆取組の背景 ◆将来像 瀬戸内海等では、干潟・藻場の減少、赤潮や貧酸素水塊の 発生、ヘドロの蓄積等の問題を抱えており、広島湾再生推 進会議が設置されるなど、水環境修復ニーズが強い そのため、産業技術総合研究所中国センター、広島大学、 広島工業大学等においては、水質浄化等技術シーズを多く 保有 ・鉄鋼スラグを活用した新商品開発など具体的 なプロジェクトが稼働するとともに、ニュービジ ネス創出の基盤が整備され、海の再生ビジネ スが広く展開。さらに環境保全、修復活動も 進展 使い捨てカイロを原料とした鉄炭団子に含まれる鉄分(二 価鉄イオン)には、藻場の再生や水質浄化に効果があるこ とが実証されており、NPOや学生らによる鉄炭団子を活 用した海の再生活動の実施 鉄鋼スラグ製品を 活用し、海洋修復 中国地域には鉄鋼メーカーが多く立地し、鉄や鋼の製造工 程において、鉄鋼スラグが発生する。鉄鋼スラグはセメン ト用骨材、土木・港湾工事用材として活用されているが、 鉄炭団子同様に鉄分(二価鉄イオン)が含まれており、藻 場再生効果があることから、海洋修復用途での利用に向け た研究開発の推進 ◆これまでの取組 鉄鋼ス ラグ製品 研究開発・実証事業によるリサイクル及び水質浄化等技 術・ノウハウの蓄積 広島湾再生推進会議、広島湾再生プロジェクト等域内の水 環境改善プロジェクトの連携・協働 アマモからバイオ エタノールを抽出 ★ ★ 緑 の コン ビナート構 想 【 隠岐 の 島町】 海の再生ニュービジネス創出フォーラム 中 海宍 道 湖再生プ ロジェクト 【 N PO自然 再生センター】 山 口県 立 水 産高 校 ( 鉄 炭団 子) ★ NPO 広島 ロ ハス の会 ( 鉄 炭団 子) 岡 山県 水 産バイ オマス研 究 会 ★ 安 芸 津漁 港 ( 鉄 炭団 子) ★▲ ▲★ ★ ▲ 呉地 域 海洋環境プロ ジェ ク ト創出 研究会 【呉市】 有識者 ▲ 地元 中小企業 鉄鋼 メーカー 広島 湾 再生 推進会 議 【中国 地方整 備局、海上保安 庁第 6管区 海上保 安本部、 中国 経 済産 業局、中 国四国 農政局 、近畿 中国森林環境 局、 中 国 四国環境事 務所、 広島県、広島市、山口 県】 産総研 中国センター 地元 自治体 関係省庁 商社 ★海の再生に向けた取組 ▲鉄鋼スラグ活用実績(埋戻し) ●高炉メーカー ●電炉メーカー 先行事例 関係者 ◆今後の課題 ニュービジネスの創出と 海の環境保全・修復活動を 促進 関係省庁・地元自治体との連携による共同プロジェクト の推進 新商品開発の加速化 モデル事業の推進 図- 1.2 「海の再生ニュービジネス創出プロジェクト」の背景と将来像 1-5 第1章 事業概要 第1回フォーラム ・環境修復ニーズ、海洋環境修復関連シーズ等に関するヒアリング ・鉄鋼スラグ等の海域利用に関する事例、課題等に関するヒアリング 第2回フォーラム 第3回フォーラム 第4回フォーラム 図- 1.3 フォーラムの全体スケジュール 1-6 第1章 事業概要 表- 1.1 委員・オブザーバー名簿 氏名 所属1 所属2 委員 磯村 定夫 (社)中国地域ニュービジネス協議 会 委員 ( 副座長) 上嶋 英機 広島工業大学 委員 大月 隆行 ランデス(株) 委員 ( 座長) 岡田 光正 広島大学 委員 黒瀬 芳和 日本鉄鋼連盟(鉄鋼スラグ海域利 用促進WG主査) 委員 高柳 和史 委員 役職 専務理事 大学院工学系研究科 教授 代表取締役社長 大学院工学研究院 教授 (独)水産総合研究センター 瀬戸内海区水産研究所 所長 谷本 照己 (独)産業技術総合研究所 中国センター 地質情報研究部門沿岸海洋研 究グループ長/瀬戸内海沿岸環境 グループ長 技術連携研究体長 委員 友廣 和典 (株)友鉄ランド 取締役社長 委員 宮原 正典 (株)ビジネススタッフ 代表取締役 委員 山口 寿夫 三菱商事(株) 委員 山城 滋 中国新聞社 論説主幹 委員 山元 憲一 (独)水産大学校 校長 委員 山本 民次 広島大学 大学院生物圏科学研究科 オブザーバー 加藤 友久 広島県 農林水産局農水産振興部水産 課長 課 オブザーバー 澁谷 賢司 山口県 農林水産部水産振興課 主査 オブザーバー 髙田 忠宏 中国地方整備局 企画部 技術企画官 オブザーバー 深井 康光 (財)岡山県産業振興財団 技術支援部 部長 オブザーバー 藤井 斉 広島市 経済局農林水産部水産課 課長 オブザーバー 堀越 稔 経済産業省 製造産業局製鉄企画室 課長補佐 オブザーバー 若槻 眞二 島根県 商工労働部産業振興課 調整監 中国支社 業務・開発グループ マネージャー 教授 ※敬称略、50音順 1-7 第2章 鉄鋼スラグ等に関する現状把握 第2章 鉄鋼スラグ等に関する現状把握 2.1 産業副産物等の海域利用に関する現状把握 産業由来の副産物等のうち、現時点において海域環境改善への利用について検討されている代表的な材 料としては、「鉄鋼スラグ」、「石炭灰造粒物」、「カキ殻(焼成したもの)」、「焼却灰溶融スラグ」、「ゼオライト」な どがあり、このほか、最近では主に地域レベルでの取り組みとして、「鉄炭団子(鉄粉等と炭を混ぜ合わせ、繋 ぎに粘土などを入れて団子をつくり、炭に焼いたもの)」を利用した藻場再生などが全国各地で試みられてきて いる。 これらの副産物の海域利用の状況や製品化などの現状を整理すると、表- 2.1 のとおりであり、それぞれ以 下のようにまとめられる。 表- 2.1 産業副産物等の海域利用の状況や製品化などの現状 鉄鋼スラグ 石炭灰造粒物 鉄炭団子 海域利用に向けた 取り組み状況 かなり以前から、各地で大規模な 現地実証事業が行われている。 近年、現地実証事業が行われる ようになってきている。 漁業者やNPOなど、地域レベル で広く実海域において利用され ている。 製品化の状況 鉄鋼スラグを利用した製品(ブロ 効果の検証段階であり、石炭灰 「鉄炭団子」そのものが製品であ ック等)はこれまでに数多く開発 造粒物を利用した製品開発には り、実用化されている。 されている。 至っていない。 効果や安全性に 関する調査研究の 状況 かなり以前から、海域環境改善効 果や材料の安全性に関する研究 が行われており、ある程度知見が 集積している。 近年、海域環境改善効果や材料 環境改善効果の検証など、科学 の安全性に関する研究が行われ 的な研究は他の材料に比べると るようになり、ある程度知見が集 少ない。 積しつつある。 ビジネス化に向けた 現状 海域利用について、ユーザーに 広く受け入れられているとは言い 難く、大規模なビジネスとしては 成立していない。 効果の検証段階であり、ビジネス ユーザーに広く受け入れられて 展開に至るまでにはまだ時間が おり、ビジネス化に向けて先行し かかると考えられる。 ている。 カキ殻(焼成) 焼却灰溶融スラグ ゼオライト 海域利用に向けた 取り組み状況 室内実験、擬似現場実験等で底 質改善効果が確認されており、 瀬野川河口部などで実証実験が 行われている。 カキ殻(焼成)自体は、肥料として 既に製品化されており、そのまま 海域利用に転用可能である。 焼却灰を利用した人工石材の製 造と魚礁としての設置例はある が、ほとんど利用は進んでいな い。 上記の通り、魚礁としての設置例 はあるが、製品化は行われてい ない。 ゼオライト自体は以前から魚礁や 養殖場などで使用されている。 効果や安全性に 関する調査研究の 状況 室内実験、擬似現場実験等で底 質改善効果や材料組成などが研 究されている。 環境改善効果の検証など、科学 的な研究は他の材料に比べると 少ない ゼオライト自体は以前から魚礁や 養殖場などで使用されており、安 全性には特に問題がないと考え られる。 ビジネス化に向けた 現状 カキ殻の処理・加工業者が海域 利用に向けた販路開拓等を検討 している段階であるが、ビジネス 展開に至るまでにはまだ時間が かかると考えられる。 スラグの重金属含有量は、投入 する焼却残渣の成分や溶融方式 に依存するので、安全性の検証 や海域利用するメリットの検討も 含め、現状ではビジネス展開に まで至っていない。 ゼオライトを利用したビジネス化 はある程度進んでいるものの、天 然ゼオライト資源の発生量が限ら れているため、大規模なビジネス として今後発展するかどうかは不 明である。 製品化の状況 2-1 ゼオライトを利用した水質浄化材 などの製品が開発・販売されてい る。 第2章 鉄鋼スラグ等に関する現状把握 「鉄鋼スラグ」 これまでに各地で実証試験や研究が行われており、鉄鋼スラグを利用した様々な製品の開発も行われてお り、今後大規模なビジネスへ発展する可能性は大きいが、現時点でユーザー(漁業関係者等)に広く受け入れ られているとは言い難く、鉄鋼スラグを利用したビジネスの成立には至っていない。 「石炭灰造粒物」 近年、各地で実証試験や研究が行われるようになっており、今後、海域環境改善への利用促進が期待され るが、現状では材料の有効性の検証などの研究開発段階であり、石炭灰造粒物を利用した製品開発や販路 開拓などのビジネス展開に至るまでには、まだ時間がかかると考えられる。 「鉄炭団子」 科学的な効果の検証については課題が残るものの、ユーザー(漁業関係者等)に広く受け入れられており、 実際に海域での利用が盛んに行われている。すなわち、規模は小さいものの一つのビジネスモデルとして先 行している。 「カキ殻(焼成)」 カキ殻(焼成)自体は肥料として既に製品化されており、元々海にあったものであるため安全性には問題な いと考えられ、そのまま海域に転用は可能である。また、室内実験や擬似現場実験、現地実証実験などで底質 改善効果が確認されており、今後の海域環境改善への利用促進が期待されるが、カキ殻を利用した二次製品 の開発や販路開拓などのビジネス展開に至るまでには、まだ時間がかかると考えられる。 「焼却灰溶融スラグ」 現状では、溶融スラグの海域利用はほとんど行われていない。また、スラグの重金属含有量は、投入する焼 却残渣の成分や溶融方式に依存するので、安全性の検証や海域利用するメリットの検討も含め、現状ではビ ジネス展開にまで至っていない。 「ゼオライト」 ゼオライトは昔から水質浄化材や養殖漁場などで使用されており安全性には問題が無いと考えられる。ゼオ ライトを利用したビジネス化はある程度進んでいるものの、天然ゼオライト資源の発生量が限られているため、 大規模なビジネスとして今後発展するかどうかは不明である。 いずれの材料も、今後海域環境改善への利用可能性が高いものであると考えられるが、地場中小企業等に よる瀬戸内海再生ニュービジネスを早い段階で創出するには、効果の検証や製品開発などがある程度進ん でいる「鉄鋼スラグ」の利用について、重点的にビジネス化に向けた検討を行うことが望ましいと考える。 よって、以降の検討では、鉄鋼スラグを利用した瀬戸内海再生ニュービジネス創出の可能性と今後検討す べき課題について整理を行うものとする。 2-2 第2章 鉄鋼スラグ等に関する現状把握 2.2 鉄鋼スラグとは 鉄鋼スラグは、鉄鋼の製造過程で発生する粒状の副産物(高温の溶融スラグが冷えて固化したもの)である。 鉄鋼スラグには、鉄鉱石から銑鉄を生成する際に同時に生成される高炉スラグと、製鋼過程で生成する製鋼 スラグに大別される。 高炉スラグは、冷却の方法により、徐冷スラグと水砕スラグに分けられる。 また、製鋼スラグは、転炉系製鋼スラグ(転炉スラグ、溶鉄予備処理スラグ、二次精練スラグ等)と、電気炉系 製鋼スラグ(酸化スラグ、還元スラグ)に分けられる。 このように、鉄鋼スラグは、炉の種類や冷却方法の違いにより、様々に性状の異なるものが生成されるが、基 本的に 1,200℃以上の高温で溶解されているため、有機物を一切含まない。 図- 2.1 鉄鋼の製造過程で発生するスラグの種類 1) 出典1)JFEスチール株式会社ホームページ http://www.jfe-steel.co.jp/ 2-3 第2章 鉄鋼スラグ等に関する現状把握 表- 2.2 鉄鋼スラグの種類及び概要 高炉スラグ 種類及び概要 徐冷スラグ ・銑鉄を製造する高炉で溶融された鉄鉱石の鉄以 外の成分は、副原料の石灰石やコークス中の灰分 と一緒に高炉スラグとなり分離回収される。 ・高炉スラグは天然の岩石に類似した成分を有し ている。(CaO、SiO2を主成分としてAl2O3、MgO、硫 黄などが含まれる) ・また、冷却の方法により徐冷スラグと水砕スラグ となる。 鉄 鋼 ス ラ グ 主な用途 ・溶融スラグを冷却ヤードに流し込み、自然 ・舗装用材 放冷と適度の散水により冷却したもので、結 ・コンクリート用骨材(粗骨材) 晶質の岩石(塊)状となる。 水砕スラグ ・舗装用材 ・溶融スラグを加圧水により急冷、粒状化 (水砕)したもので、一般にガラス質が主体と ・コンクリート用骨材(細骨材) ・裏込材 なる。 ・軟弱地盤の覆土材 製鋼スラグ 転炉系製鋼スラグ 転炉スラグ ・高炉で製造された溶 鉄やスクラップから、 靱性・加工性のある綱 にする製鋼過程で発 生するスラグであり、 精錬炉の種類により 転炉系製鋼スラグ、電 気炉系製鋼スラグに 分類される。 ・転炉で銑鉄を精錬して靱 性・加工性のある綱を製造 する際同時に生成するスラ グ。 ・CaO、SiO2を主成分として FeO、MgO、MnOなどが含 まれる。 ・舗装用材 ・左に同じ。 ・転炉精錬の前工程で、リンや硫黄等を除 ・地盤改良材 去する溶鉄予備処理工程の普及により減少 ・セメント原料 傾向にある。 電気炉系製鋼スラグ 酸化スラグ ・製鋼過程で発生するスラ グで、電気炉でスクラップを 主原料として綱を製造する 工程で生成するスラグ。 ・電気炉精錬では、炉内雰 囲気を酸化性、還元性に 変えることが可能であり、 それぞれの過程で発生す るスラグを酸化スラグ、還 元スラグという。 ・酸化精練時に生成するスラグ。溶綱中に ・舗装用材 溶かし込んだ酸素と反応して生成された金 ・コンクリート用骨材 属酸化物で構成され、化学的に安定してい る。 (CaO、SiO2、FeO、MgO、MnOなど) ・鉄やマンガンなどの 金属元素が酸化物の 形でスラグ中に取り込 まれたり、遊離石灰と して残るものがある。 このため、比重が大 きく、水と接触した際 に膨張する性質を示 す原因となる。 溶鉄予備処理スラグ ・溶鉄を転炉に挿入する前に、溶鉄の脱硫、 脱珪、脱燐等の処理をする際に生成するス ラグの総称。 還元スラグ ・酸化精練後、酸化スラグを排出し、新たに ・セメント原料 還元剤、石灰等を装入し溶綱中の酸素を除 ・土壌改良材の原料 去する還元精錬により発生するスラグで、成 分中に石灰を多く含む。 ※製鋼スラグにはこのほか、転炉等から出綱した溶綱に脱硫、脱燐、脱ガス等の処理をする場合に生成する「二次精錬スラグ」などがある。 表- 2.3 鉄鋼スラグの種類別・特徴別の利用用途2) 出典 2)鐵鋼スラグ協会ホームページ http://www.slg.jp/ 2-4 第2章 鉄鋼スラグ等に関する現状把握 2.3 鉄鋼スラグの発生量及び再利用の現状 2.3.1 国内の鉄鋼スラグの発生量 鉄鋼生産量と鉄鋼スラグ生産量の推移を見ると、我が国では平成 21 年度現在、年間約 3,318 万tの鉄鋼スラ グが生産されている。このうち、高炉スラグが約 2,168 万t(約 65.3%)で、高炉スラグに占める水砕スラグの割合 は約 81.0%であり、平成19年度をピークに年々上昇傾向にあったが、ここ2年間はやや割合が減少している。 また、製鋼スラグ(約 1,150 万 t)に占める転炉系製鋼スラグの割合は 79.7%であり、平成 13 年度以降は増 加傾向となっている。 表- 2.4 鉄鋼生産量と鉄鋼スラグ生産量の推移3) (単位:千t) 鉄鋼生産量 鉄鋼スラグ生産量 高炉スラグ 年度 粗鋼 銑鉄 水砕スラグ 製鋼スラグ 水砕化率 (%) 計 転炉系スラ グ 転炉系スラ グの割合 (%) 計 合計 1990 (H2) 111,710 80,835 15,234 59.2% 25,748 10,236 78.5% 13,043 38,790 1991 (H3) 105,853 77,830 15,414 62.3% 24,733 9,965 79.3% 12,570 37,303 1992 (H4) 98,937 73,029 15,032 65.7% 22,886 9,564 78.9% 12,129 35,015 1993 (H5) 97,095 72,989 14,457 63.3% 22,853 9,843 79.5% 12,380 35,161 1994 (H6) 101,363 74,726 14,458 62.5% 23,151 9,851 78.7% 12,519 35,670 1995 (H7) 100,023 74,637 14,748 62.8% 23,479 10,439 74.6% 13,988 37,467 1996 (H8) 100,793 75,680 15,771 67.4% 23,408 9,739 72.7% 13,388 36,796 1997 (H9) 102,800 78,312 15,636 66.4% 23,542 10,246 73.5% 13,942 37,481 1998 (H10) 90,979 73,553 15,084 68.5% 22,013 9,617 75.0% 12,829 34,842 1999 (H11) 97,999 76,486 15,889 70.8% 22,440 9,922 71.3% 13,912 35,632 2000 (H12) 106,901 80,704 16,874 71.8% 23,498 10,640 75.4% 14,107 37,605 2001 (H13) 102,064 78,969 17,095 73.4% 23,297 10,508 76.6% 13,722 37,019 2002 (H14) 109,789 81,538 18,321 75.7% 24,205 8,839 72.6% 12,168 36,392 2003 (H15) 110,997 82,755 18,318 75.2% 24,359 8,969 72.9% 12,302 36,661 2004 (H16) 112,897 82,894 19,072 78.1% 24,433 9,380 72.6% 12,922 37,355 2005 (H17) 112,718 82,937 19,830 80.1% 24,758 9,933 74.0% 13,427 38,185 2006 (H18) 117,745 84,919 20,411 82.4% 24,769 10,265 74.0% 13,865 38,634 2007 (H19) 121,511 87,867 21,003 82.6% 25,437 10,631 75.2% 14,138 39,575 2008 (H20) 105,500 78,497 18,784 82.1% 22,877 10,195 77.2% 13,208 36,085 2009 (H21) 96,449 72,526 17,551 81.0% 21,675 9,174 79.7% 11,504 33,179 出典3)鉄鋼スラグ統計年報(平成 21 年度実績):鐵鋼スラグ協会、平成22年7月 に基づき作成 2-5 第2章 鉄鋼スラグ等に関する現状把握 2.3.2 鉄鋼スラグの再利用の現状 (1) 高炉スラグ 高炉スラグの使用量(外販+所内使用)内訳をみると、高炉スラグは全て再利用されており(埋立等=0)、 その主な用途はセメントが最も多く 14,425 千トン(67.6%)、次いで道路(路盤材等)が 3,091 千トン(約 15.3%)、コンクリート骨材が 2,035 千トン(約 9.5%)、土木(港湾工事、土木工事)が 693 千トン(約 3.3%)な どとなっている(図- 2.2)。 使用量の経年変化を見ると、最も使用量の大きいセメント用販売量は、輸出も含めると年々増加傾向にあっ たが、平成 20 年度以降減少しており、平成 21 年度は対前年度比 9.3%の減少となっていた(図- 2.3)。 図- 2.2 高炉スラグ使用量と使用の内訳(平成21年度)3) 図- 2.3 高炉スラグ使用内訳の推移3) 2-6 第2章 鉄鋼スラグ等に関する現状把握 (2) 製鋼スラグ 製鋼スラグの使用量(外販+所内使用)の内訳をみると、転炉スラグでは土木(港湾工事、土木工事)用が 最も多く約 38.5%、電気炉スラグでは道路用が最も多く約 43.4%となっており、製鋼スラグ全体では土木(港 湾工事、土木工事)用が最も多く約 36.6%を占めている(図- 2.4)。 埋立等の割合は製鋼スラグ全体では約 2.3%であり、98%近くが再利用されているが、転炉スラグは埋立 が約 1%であるのに対し、電気炉スラグは約 7.6%と埋立等の割合が多くなっている(図- 2.4)。また、他利 用(肥料、土壌改良材、建築用等)の割合は製鋼スラグ全体で約 3.0%であるが、海域環境再生への利用と いった用途は統計上現れていない。 使用量の経年変化を見ると、土木用の利用は平成 19 年度までは概ね増加傾向となっているが、特に土 木用を中心に、平成 20 年度以降は減少傾向にある。(図- 2.5)。 図- 2.4 製鋼スラグ使用量と使用の内訳(平成21年度)3) 2-7 第2章 鉄鋼スラグ等に関する現状把握 図- 2.5 製鋼スラグ使用内訳推移3) 2-8 第2章 鉄鋼スラグ等に関する現状把握 2.3.3 鉄鋼スラグの利用に関する品質規格等の策定状況 鉄鋼スラグの利用にあたっては、これまでに多くのJIS規格や設計・施工指針が制定されており、その一覧 は表- 2.5 に示すとおりである。 表- 2.5 鉄鋼スラグの規格等一覧2) 2-9 第2章 鉄鋼スラグ等に関する現状把握 2.3.4 鉄鋼スラグを海域利用する場合の法令上の留意事項等 (1) 適用法令等 「港湾・空港等整備におけるリサイクル技術指針:国土交通省港湾局、平成16年5月」3)では、港湾工事等に おいて鉄鋼スラグなどのリサイクル材料を利用する場合の法令上の留意事項についてとりまとめられている。 表- 2.6 リサイクル材料の発生要因、適用法令3) 対象物 発生要因、分類 等 建設発生土 建設工事から発生する土砂で、おおむねそのま まの状態で土質材料として利用できる。 浚渫土砂 港湾、河川等の浚渫に伴って生ずる土砂で、粘 性系のものは大半が軟弱な泥土に該当する。 アスファルト・コ 建 ンクリート塊 設 副 コンクリート塊 産 物 建設発生木材 舗装のはぎ取りあるいは削り取りによって生ずる アスファルトがら 工作物の除去によって生ずるコンクリートの破片 木造家屋解体材、廃木製型枠等 廃棄物処理法 (廃棄物) リサイクル法 (指定副産物) 対象外 該当しない。 指定副産物に該当 産業廃棄物(コンク (年間の建設工事 の施工金額が50億 リートくず、がれき 円以上の建設業)。 特定建設資材に該 類) 当。 産業廃棄物(木く ず) 建設汚泥 シールド工事、場所打ち杭工法等の掘削工事か 産業廃棄物(汚泥) 該当しない。 ら発生する泥土で自硬性、非自硬性汚泥に分類 される。 鉄鋼スラグ 銑鉄を生成する際に発生する高炉スラグと、銑鉄 産業廃棄物(鉱さ やスクラップから鋼を製造する際に発生する製鋼 い) スラグがある。 石炭灰 火力発電所から発生する石炭灰は、炉底に貯ま るクリンカーアッシュと電気集じん機等で集められ 産 るフライアッシュとがある。 業 副 産 非鉄金属スラグ 非鉄金属を精錬する際に発生するスラグで、銅ス ラグやフェロニッケルスラグ等がある。 物 等 建設リサイクル法 (特定建設資材) 産業廃棄物(クリン カーアッシュは燃え 殻、フライアッシュ はばいじん) 食品加工工場で、カキをむき身出荷した際に残 る貝殻 産業廃棄物(動植 物性残さ) 一般廃棄物、 溶融固化物 都市ゴミを焼却した灰を溶融固化したもの 一般廃棄物 下水汚泥、溶 融固化物 下水汚泥を溶融固化したもの 産業廃棄物(汚泥) 該当しない。 再生加熱アスファルト混 合物や再生骨材が該 当。 再生骨材が該当。 バーク堆肥、パーティク ルボード、繊維板が該 当。 建設汚泥処理土が該 当。 該当しない。 高炉スラグ骨材、鉄鋼ス ラグ混入アスファルト混合 物・鉄鋼スラグ路盤材、 高炉セメント、土工用水 砕スラグが該当。 指定副産物に該当 (年間の電力供給 量が1億2000万kW 以上の電気業)。 フライアッシュセメントが 該当。 該当しない。 産業廃棄物(鉱さ い) カキ殻等 該当しない。 グリーン購入法 (特定調達品目) 該当しない。 フェロニッケルスラグ骨 材、銅スラグ骨材が該 当。 該当しない。 汚泥発酵肥料が該当。 ※ 下水道法に規定する下水道から除去した汚泥は、産業廃棄物として取り扱う(S46.10.25課長通知)。 ※ 指定副産物とは、リサイクル法第2条13項に基づき政令第1条で定めるものをいう。 ※ 特定建設資材とは、建設リサイクル法第2条第5項に基づき政令第1条で定めるものをいう。 ※ 特定調達品目とは、グリーン購入法第6条第2項第2号に規定されるもので、同法に基づく基本方針に定められる(2002年度積極的に調達する対象として指定されているもの)。 ※ 海防法における海域等への排出については、浚渫土砂は有害物質を含む割合(水底土砂の判定基準)により排出方法と排出場所が決められ、その他副産物は廃棄物としての排出は 原則禁止されている(廃棄物の処理場所に排出する際はこの限りではない)。 出典3)港湾・空港等整備におけるリサイクル技術指針:国土交通省港湾局、平成16年5月 2-10 第2章 鉄鋼スラグ等に関する現状把握 (2) 適用法令等 リサイクル材料の廃棄物としての取り扱いについては、廃棄物処理法と海防法等における法的規制を受 けるか否かの判断が必要であり、その上でリサイクル材料が廃棄物である場合は、その規定に従い取り扱 うことになる。 リサイクル材料を工事で使用する上での廃棄物処理法及び海防法上の留意事項を示す。(以下は、「港 湾・空港等整備におけるリサイクル技術指針:国土交通省港湾局、平成16年5月」3)に基づき、関連する箇 所を抜粋したものである。) ①廃棄物処理法上の取扱い 同法は、占有者が不要とし、かつ他者に有償で売却できなくなった物を廃棄物とし、その取り扱いについ て規定している。廃棄物の定義については「建設工事等から生ずる廃棄物の適正処理について」(平成13 年6月1日 環廃産276号)で以下のように定義されている。 『廃棄物とは、人間の活動に伴って生じたもので、汚物又は自分で利用したり他人に売却できないために 不要になったすべての液状又は固形状のもの(放射性物質及びこれによって汚染されたものを除く。)をいう。 ただし、土砂及びもっぱら土地造成の目的となる土砂に準ずるもの、港湾、河川等の浚渫に伴って生ずる土 砂その他これに類するものは廃棄物処理法の対象となる廃棄物から除外されている。』 ※建設発生土、浚渫土砂を除く建設副産物及び産業副産物等は、有償で売却可能なものであれば、廃 棄物処理法で規定される廃棄物に該当せず、通常の材料として活用することができる。しかしながら、有 償で売却可能でなければ、廃棄物処理法で規定される廃棄物に該当し、廃棄物処理法に基づいて利用 する必要がある。 ②海洋汚染防止法上の取扱い 海洋汚染防止法は海洋において船舶または海洋施設から廃棄物を排出することを原則禁止しており、例 外的に政令で定める一定の基準に適合する場合においてのみ、船舶または海洋施設から廃棄物を海洋 (埋立地を含む)に排出することを許容することとしている。 海洋工事で産業副産物等の利用を図る際には、以下について整理し、客観的に証明することが望まし い。 ○ 環境保全上の問題がないことの説明 ・ 有害物質、pH等の確認 ○ 積極的に材料として使用することの説明 ・ 用途別の材料基準に合致するかの確認。 ・ 基準がない場合は基準を作成する。 ○ 施工者側における十分な管理体制の説明 ・ 運搬、仮置き、工事施工における管理・配慮が求められる。 ・ 管理マニュアル等があると便利。 ・ 但し、万が一管理不十分のため異物や材料基準に合致しないものの混入が認められた場合は廃棄 物と見なされ海防法の規制を受ける。 2-11 第2章 鉄鋼スラグ等に関する現状把握 (3) 環境保全上の検討事項 リサイクル材を利用する場合は、環境保全上支障を生じないことが前提であり、有害物質の溶出やpH等 の検討を十分に行うことが必要である。 ①有害物質 リサイクル材料の環境安全性の評価基準としては含有量と溶出量による方法があり、含有物の中には 含有はするが溶出はしない成分がある。従って、リサイクル材料を埋立利用する場合は、溶出量及び含 有量を把握した上で、関係法令に基づき適正に扱うこととされたい。(海域に投入する場合は不溶性のも のに限る。) 浚渫土砂を港湾・空港等の埋立工事に利用する場合の有害物質の溶出については「海洋汚染及び海 上災害の防止に関する法律」の水底土砂判定基準を満足するものでなくてはならない。更に一部の自治 体では建設発生土等の受入基準を「土壌の汚染に係る環境基準」を採用しているところもあるため、これ らに係る条例等についても留意する必要がある。 特に産業廃棄物等は有害物質が溶出する場合もあることから、排出事業者から溶出試験結果の提出 を求め安全性を確認する等の配慮が必要である。また、セメント及びセメント系固化材を使用した改良土 (建設発生土、浚渫土砂、建設汚泥)については、六価クロムの溶出が懸念されることから、「セメント及び セメント系固化材の地盤改良への使用及び改良土の再利用に関する当面の措置について(港建第 119 号 平成 12 年 3 月 27 日及び空建第 54 号 平成 12 年 3 月 27 日)」、「セメント及びセメント系固化材を使 用した改良土の六価クロム溶出試験実施要領(案)の一部改定について(港建第 118 号 平成 13 年 4 月 20 日)」によって、その取り扱いの方法が規定されている。 ②その他 有害物質の溶出の他に環境保全上留意する事項として、海域の水質や底泥に関係するものとして次の ような基準があり、これらはリサイクル材料を対象とした基準ではないが、海中や底泥中でリサイクル材料 を利用する場合に工事区域の海域の利用特性を考慮して工事中の監視目標値を定め、その目標値を満 足できるように配慮が必要である。 特に安定処理材料やコンクリート破砕物等の建設副産物および産業副産物等は総じてpHが高いため 計画・設計段階で対策を含め十分な検討が必要である。 ・ 「水質汚濁に係る環境基準」(水質:pH、ノルマルヘキサン抽出物質等) ・ 「水産用水基準(財団法人日本水産資源保護協会)」(水質:SS・着色・油分等、底質:ノルマルヘキ サン抽出物質・硫化物等) 2-12 第2章 鉄鋼スラグ等に関する現状把握 2.4 鉄鋼スラグの物理的・化学的特性等 2.4.1 鉄鋼スラグの物理的・化学的特性 (1) 物理的特性 ①高炉徐冷スラグ4) ・徐冷したスラグの外観は、岩石状で表面は粗面、気孔があり、角張っている。粒子密度は天然砕石よりや や小さい(絶乾密度:2.2~2.6g/cm3)。これは、凝固の過程で発生するガスが逃げ切れずスラグ中に残るた めであり、ゆえに空隙を多く含み吸水率はやや高い。 ・溶融状態のスラグを冷却ヤードなどに放流する際の層厚や散水などによる冷却方法によって密度や吸水 率などの物理特性が変化するため、一定の範囲で製鉄所間、製造ロット間のばらつきが存在する。 ・40-0mm、25-0mm の高炉徐冷スラグ路盤材の単位体積重量は、15.4~18.0kN/m3 の範囲にある。 ②高炉水砕スラグ4)、5) ・高炉水砕スラグの粒子はガラス質であり、形状も凹凸が激しく角張っている。また、密度等の物性はスラグ 温度、冷却水量、水圧をコントロールすることにより、軟質で軽いものと硬質で重いものを造り分けることが できる。(硬質のものはコンクリート用細骨材として用いられるのが一般的であり、土工用には軟質のものが 用いられる。 ・湿潤単位体積重量は天然砂に比べ小さく、製鉄所間で 8~13kN/m3 の範囲の差異が見られ、製鉄所内で は±1kN/m3 程度のばらつきの範囲にある。 ・細粒分が少ないため未固結状態では高い透水性を有するが、固結に伴い透水性は低下する。また、固結 に伴いせん断強度が増加する。また、内部摩擦角は大きい(港湾工事用水砕スラグ利用手引書によると基 準値 35°)。 ・標準的な粒径は 4.75mm 以下の砂状であり、細粒分(0.075mm 以下)は 1~2%程度で極めて少ない。 ③製鋼スラグ4)、6) ・製鋼スラグは、高炉スラグや天然砂利に比べると密度が大きい。また、遊離石灰を含有するため、水と反 応して膨張する性質がある。製鋼スラグは、製鉄所の違いのみならず、製鉄所内においても、製錬工程の 違いにより密度や膨張量などの品質に差異が認められる。 ・出荷される製鋼スラグは、一般に 40mm 以下に破砕・整粒されたものであり製鉄所や種類により異なる。 粒子密度は概ね 3.2~3.6g/cm3 の範囲である。なお、径 5mm 以下の粒子はこれより若干小さくなる傾向にあ る。 ・単位体積重量は締固めの程度により密度が異なる。「港湾工事用製鋼スラグ利用手引書」5)によると、湿潤 単位体積重量について、密な状態で 23.0kN/cm3、ゆるい状態で 21.0kN/cm3 を基準としている。 ・電気炉酸化スラグは、FeO を多く含むため絶乾密度が高く単位体積重量も大きい。 2-13 第2章 鉄鋼スラグ等に関する現状把握 ・内部摩擦角は大きい。(φ=40°) ・転炉系製鋼スラグの透水係数は、経時的に低下する傾向にある。ただし、電気炉酸化スラグは透水係数 の低下はほとんど見られない。 (2) 化学的特性 ①高炉徐冷スラグ4) ・高炉徐冷スラグの化学組成は、一般に石灰(CaO)およびシリカ(SiO2)の2つを主成分としている。特に自 然界の土や石の成分に比べ石灰の含有量が多く、その他には酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化マグネシウ ム(MgO)などが含まれる。 ・スラグが水と接触すると微量の石灰(CaO)やシリカ(SiO2)が溶け出し、スラグ表面に緻密な水和物を形成 し、さらにアルカリ性の雰囲気のもとでは、酸化アルミニウム(Al2O3)が加わった水和物を形成し、これがス ラグ粒子をつなぐ結合材となり固結する(水硬性)。 ②高炉水砕スラグ4)、5) ・高炉水砕スラグの化学組成は、高炉徐冷スラグと同様である。 ・高炉水砕スラグはガラス質であるため、活性が強く、アルカリ性溶液のもとでは水和物を生成して固化す る性質(潜在水硬性)がある。 ③製鋼スラグ2)、4)、6) ・一般に、製鋼スラグは石灰(CaO)とシリカ(SiO2)の 2 つを主成分としている。転炉系製鋼スラグでは、以上 の他に酸化マグネシウム(MgO)、酸化マンガン(MnO)などが含まれている。また、酸化鉄等も多く含むた め、高炉スラグや天然砂利に比べると比重が大きい。 ・化学成分がセメントと類似していることから、高炉徐冷スラグと同様に水硬性があるが、その程度は弱く、 水硬性の発現は一様ではない。 ・吹錬時間が短く石灰含有量が高いため、副原料の石灰の一部が未消化のまま遊離石灰(f-CaO)として残 るものがある。これらは、製鋼スラグの比重が大きいことや、水と接触した際に膨張する性質を示す等の原 因になっている。 →屋外で養生させることで水和反応を促進し、その後の膨張量を減少させる(エージング) ・電気炉酸化スラグは、1550~1600℃の溶鋼中に吹込んだ酸素と反応して生成した金属酸化物で構成され ており化学的に安定した物質である。また、石灰分が少ないためエージング処理は不要とされている。 ・電気炉還元スラグは、スラグ内に残存する遊離石灰等と水が反応する膨張性の性質がある。また、精練 する綱種の違いによる成分格差が大きく、安定した品質が保持しにくいとされている。 2-14 第2章 鉄鋼スラグ等に関する現状把握 鉄鋼スラグの一般的な化学組成は、表- 2.7 に示すとおりである。 表- 2.7 (1) 鉄鋼スラグの化学組成例①2) 単位:% 鉄鋼スラグは 1,200℃以上の高温で溶解されるため、有機物は一切含まない。 表- 2.7(2) 鉄鋼スラグの化学組成例②7)、8) <高炉スラグ7)> <製鋼スラグ(転炉スラグ、電気炉スラグ)8)> <予備処理スラグ7)> 出典4)港湾・空港等整備におけるリサイクル技術指針:国土交通省港湾局、平成16年5月 出典5)港湾・空港における水砕スラグ利用技術マニュアル:(財)沿岸技術研究センター、平成19年12月 出典6)港湾工事用製鋼スラグ利用手引書:(財)沿岸開発技術センター、鐵鋼スラグ協会、平成12年3月 出典7)鐵鋼スラグ協会資料 出典8)鉄鋼スラグを用いた固化体の基礎的性状及び港湾構造物への適用性に関する研究:港湾技研資料 No.990、平成 13 年 6 月 2-15 第2章 鉄鋼スラグ等に関する現状把握 (3) 想定される環境への影響 ①高炉徐冷スラグ9) ■黄濁水の溶出 ・石炭(コークス)その他の原料中に含まれる微量の硫黄(S)により、高炉徐冷スラグ中には1%程度の硫 黄が硫化カルシウム(CaS)の形態で存在する。このため、高炉徐冷スラグを水中に浸漬すると、硫化カ ルシウムが加水分解し、さらに逐次反応が進行して多硫化イオン(Sx2-)を生成することにより、溶液は 黄色を呈し、温泉臭を発するようになる。 ・この黄濁水の溶出を抑制するには、エージングと呼ばれる事前安定化処理(あらかじめスラグ中の硫 黄を溶出させる)を行うことが必要である。 ■pH ・鉄鋼スラグには石灰(CaO)を含有するため、この石灰が水と反応し消石灰(Ca(OH)2)となり、水中では カルシウムイオン(Ca2+)と水酸化イオン(OH-)に分解し pH が上昇する。 ・高炉徐冷スラグのpHは一般に高く、環境省告示の方法で得た検液のpHは 11.3~12.5 である。我が 国の土壌は一般に酸性土壌であるためスラグから溶出したアルカリ成分は土壌に吸着中和される。しか し、スラグに接した水が土壌を介さないで直接水域に流れ込むような場合は、必要に応じ中和等の措 置が必要となる。 ・また、pH上昇に伴うアルカリ化(pH>9.5 が目安)により、海水中に含まれるマグネシウムイオン(Mg2+)と スラグの石灰分溶出に伴い発生した OH-が反応して水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)が生成され、海水 が白濁することがある。(ただし、元々海水中に存在するマグネシウムイオンが引き起こす現象のため 無害) ■有害物質の溶出 ・高炉徐冷スラグを製造している各製鉄所において、表- 2.8 に示す項目について溶出試験を行ってお り9)、これによると、フッ化物を除き全て不検出であり、フッ化物も水底土砂判定基準値を大きく下回って いる。 出典9)高炉スラグ路盤設計施工指針:鐵鋼スラグ協会、昭和57年 2-16 第2章 鉄鋼スラグ等に関する現状把握 表- 2.8 高炉徐冷スラグの溶出試験結果(海洋汚染防止法水底土砂基準)9) ②高炉水砕スラグ4)、5) ■黄濁水の溶出 ・高炉水砕スラグの場合は、1,500℃以上の高温溶融状態のスラグを高圧水にて一気に常温まで冷却 (急冷処理)し製造されるため、スラグ中の硫黄分は、高炉水砕スラグガラス中に分散固定された状態 となっている。そのため、徐冷スラグ中の CaS のように水に溶解せず、黄濁水は発生しないとされてい る。 ■pH ・高炉水砕スラグのpHは、環境省告示 46 号の方法に準じた溶出試験では、イオン交換水の場合 10.4 と、 高炉徐冷スラグに比べpHは低い値であった。また、海水養生の場合には、イオン交換水に比べ約 2 程 度小さい値となる。 ・また、pH上昇に伴うアルカリ化(pH>9.5 が目安)により、海水中に含まれるマグネシウムイオン(Mg2+)と スラグの石灰分溶出に伴い発生した OH-が反応して水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)が生成され、海水 が白濁することがある。(ただし、元々海水中に存在するマグネシウムイオンが引き起こす現象のため 無害) ■有害物質の溶出 ・高炉水砕スラグを製造している各製鉄所において、表- 2.9 に示す項目について溶出試験を行ってお り10)、これによると、フッ化物を除き全て不検出であり、フッ化物も水底土砂判定基準値を大きく下回って いる。 出典10)鐵鋼スラグ協会調べ 2-17 第2章 鉄鋼スラグ等に関する現状把握 表- 2.9 高炉水砕スラグの溶出試験結果(海洋汚染防止法水底土砂基準)9) ③製鋼スラグ2)、4)、6)、11)、12) ■黄濁水の溶出 ・製鋼スラグには硫黄分がほとんど含まれないため、黄濁水の発生はないとされている。ただし、予備 処理工程で発生する、硫化物が多く含まれる可能性のある「脱硫スラグ」については、極端に硫化物が 介在する恐れがあるので、転炉系製鋼スラグの海域利用の手引き11)では利用の対象外としている。 ■pH ・製鋼スラグの石灰(CaO)は、水と反応して消石灰(Ca(OH)2)となり、これが Ca+と OH-として海水中に溶 解してpHは高くなる。環境省告示の方法で得た検液のpHは表- 2.10 に示すとおりである。 ・高炉スラグより CaO が多く含まれるため、その水溶液のpHは一般に高炉スラグよりも高くなる(特に 転炉系スラグ、電気炉系還元スラグ)。 ・pH上昇に伴うアルカリ化(pH>9.5 が目安)により、海水中に含まれるマグネシウムイオン(Mg2+)とスラグ の石灰分溶出に伴い発生した OH-が反応して水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)が生成され、海水が白 濁することがある。(ただし、元々海水中に存在するマグネシウムイオンが引き起こす現象のため無 害) 2-18 第2章 鉄鋼スラグ等に関する現状把握 表- 2.10 製鋼スラグ溶出水のpH12) ■有害物質の溶出 ・海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律による溶出試験を実施した結果6)は表- 2.11 に示すとお りであり、これによるとすべての項目で基準値以下である。 ・しかし、ごく一部の製鋼スラグには、重金属などの溶出量が基準値を超えるものがある。これについ て「港湾工事用製鋼スラグ利用手引書」では、「これら溶出の恐れのあるスラグは、生成条件などが明 らかになっており、製造所において分別して管理がされているので、建設資材として一般に流通するこ とはない。」とされている。 ・環境基本法に基づく水質汚濁に係る環境基準が平成 11 年に、同じく土壌の汚染に係る環境基準が平 成 13 年にそれぞれ改正され、フッ素及びホウ素の基準項目が新たに追加されている。ただし、本基準 に係る中央環境審議会の答申(平成 12 年 12 月 26 日)によると、スラグ等の再利用物への適用に関して 「道路用等の路盤材や土木用地盤改良材等として利用される場合には、再利用物自体は周辺の土壌と 区別できることから(フッ素及びホウ素に関する土壌環境基準は)適用しない」「通常、海域に隣接した地 域で施工されている土木用地盤改良材の利用については軟弱地盤に施工されているスラグのサンドパ イル全体を囲む改良地盤部分を、それぞれ一体としてとらえ、周辺土壌とは区別するものとする」とされ ている。 ・同審議会土壌農薬部会土壌専門委員会における議事のなかで、スラグの中には環境基準を超えるフ ッ素を含有しているものがあること、スラグをサンドパイルに使用する場合、地下水と接して溶出する場 合があり得ること等が指摘されている。このことから特に内陸部等での使用に際しては使用方法及び水 源位置、地下水位等に留意する必要がある。 出典11)転炉系製鋼スラグ 海域利用の手引き:(社)日本鐵鋼連盟、平成20年9月 出典12)リサイクル環境保全ハンドブック、環境庁、平成4年5月 2-19 第2章 鉄鋼スラグ等に関する現状把握 表- 2.11 製鋼スラグの溶出試験結果(海洋汚染防止法水底土砂基準)6) なお、高炉スラグ、製鋼スラグともに、有害物質の溶出については、使用を予定している製鉄所から溶出 試験等の材料試験結果を取り寄せるなどして、安全性を確認することが望ましいとされている4)。 2-20 第2章 鉄鋼スラグ等に関する現状把握 (鉄鋼スラグ製品) 鉄鋼スラグを利用した製品として、鉄鋼スラグ水和固化体(製鋼スラグ、高炉スラグ微粉末及び水を必須材 料とし、これらを練混ぜ、水和反応により固化(硬化)させたもの。副産物を材料として利用し、コンクリートと 同等な強度を得ることが出来る)の溶出試験結果を表- 2.12 に示す。鉄鋼スラグ水和固化体からの有害物 質の溶出は、対象となる全成分について基準値未満または不検出であり、水底土砂に係わる判定基準を 満足している。 表- 2.12 鉄鋼スラグ水和固化体の溶出試験結果の例13) 注)鉄鋼スラグ水和固化体を材齢 28 日まで封緘養生後破砕処理し、水底土砂に係わる判定基準(環告 14 号)により溶出試験を行った結果。 出典13)鉄鋼スラグ水和固化体技術マニュアル-製鋼スラグの有効活用技術-(改訂版)、平成 20 年 2 月、(財)沿岸技術研究センター 2-21 第2章 鉄鋼スラグ等に関する現状把握 (鉄鋼スラグ製品の環境 JIS と環境基準) 鉄鋼スラグ製品は、すでに土木資材利用のための材料として、その品質が JIS 化され有効利用されてい るが、環境安全面での品質基準に係る規格がなかったことから、鐵鋼スラグ協会では、2005 年に制定され た「スラグ類の化学物質試験方法(JIS K 0058-1, -2)」(環境 JIS 法)に準じて、現在鉄鋼スラグ製品 JIS に環 境項目を織り込む追加改正に取り組んでいる。 環境 JIS 法による鉄鋼スラグ製品の溶出試験値と含有量試験値を見ると、いずれの項目も土壌環境基 準や土壌汚染対策法で定める基準値をクリアしていることが明らかになっている14)。 表- 2.13 環境 JIS 法による鉄鋼スラグ製品の溶出試験結果例14) 出典14)環境資材 鉄鋼スラグ:鐵鋼スラグ協会、平成 22 年 8 月 2-22 第2章 鉄鋼スラグ等に関する現状把握 以上の結果より、鉄鋼スラグの物理的・化学的特性、想定される環境への影響をまとめると、表- 2.14 に示 すとおりである。 表- 2.14 鉄鋼スラグの物理的・化学的特性、想定される環境への影響(まとめ) 除 冷 ス ラ グ 高 炉 ス ラ グ 水 砕 ス ラ グ 物理的特性 □岩石状、表面は粗面、気孔があり 角張っている。 □粒子密度は天然岩石よりやや小 3 さい。(絶乾密度2.2~2.6g/cm ) □冷却方法により密度や吸水率など の物理特性が変化するため、一定の 範囲で製鉄所間、製造ロット間のば らつきが存在する。 化学的特性 □石灰(CaO)及びシリカ(SiO2)を主成分 とし自然の岩石に比べると石灰の含有 量が多い。 □水硬性(SiO2やAl2O3の水和物の形 成による) 想定される環境への影響 □原料中に含まれる硫黄により、水中 に浸漬すると黄濁水が発生する。この ため、あらかじめスラグ中の硫黄を溶出 させる事前安定化処理(エージング)が 必要。 □石灰(CaO)を含有するためpHが上昇 する。 □高いpH(pH>9.5)では海水の白濁が 起こる(無害) □各製鉄所における溶出試験結果で は、水底土砂判定基準を下回る。 □ガラス質、形状は凹凸が激しく角 張っている。 □密度等の物性はスラグ温度、冷却 水量、水圧をコントロールすることに より、軟質で軽いものと硬質で硬いも のを造り分けることが出来る。 □湿潤単位体積重量は天然砂に 比べ小さい。(軽量) □未固結状態で透水性が高く、固 結に伴い透水性は低下、固結に伴 いせん断強度は増加 □内部摩擦角大 □標準的な粒径は4.75mm以下の砂 状で、細粒分(0.075mm以下)は1 ~2%程度と極めて少ない。 □化学組成は徐冷スラグと同じ。 □潜在水硬性(ガラス質であるため活 性が強く、アルカリ性水溶液のもとで水 和物を形成し硬化する) □スラグ中の硫黄分は、高炉水砕スラ グ中に分散固定されるため黄濁水は発 生しない。 □pHは上昇するが、徐冷スラグに比 べると低い。 □高いpH(pH>9.5)では海水の白濁が 起こる(無害) □各製鉄所における溶出試験結果で は、水底土砂判定基準を下回る。 □高炉スラグや天然砂利に比べ密 度、単位体積重量が大きい。 □出荷される製鋼スラグは一般に 40mm以下(製鉄所や種類により異 予 なる) 備転 □内部摩擦角大 処炉 □転炉系製鋼スラグの透水係数は 理系 経時的に低下する傾向にある。 ス製 ラ鋼 グス をラ 含グ む ( □石灰(CaO)及びシリカ(SiO2)を主成分 とし、転炉系製鋼スラグでは酸化マグ ネシウム(MgO)、酸化マンガン(MnO) などが含まれる。 □予備処理スラグは、その種類により それぞれ品質が異なる。 □酸化鉄を多く含むため高炉スラグや 天然砂利に比べ比重が大きい。 □高炉徐冷スラグと同様に水硬性があ るが、その程度は弱く発現が一様では ない。 □残存した遊離石灰により、水と接触し た際に膨張する性質がある。このた め、エージング処理が行われる。(エー ジング処理:屋外で養生することで水和 反応を促進し、その後の膨張量を減少 させる) 電 □酸化スラグは、FeOを多く含むため □高炉徐冷スラグと同様に水硬性があ るが、その程度は弱く発現が一様では 気 密度、単位体積重量が大きい。 炉 □電気炉酸化スラグは、透水性の ない。 系 経時的な低下はほとんど見られな □酸化スラグは溶綱中に吹き込んだ酸 素と反応して形成した金属酸化物で構 製 い。 成されるため化学的に安定している。 鋼 □酸化スラグは石灰分が少なく、エージ 元ス ング処理は不要。 スラ □還元スラグは、転炉系スラグと同様、 ラグ 残存した遊離石灰により水と接触した グ 際に膨張する性質がある。 酸 □還元スラグは、精練する工種の違い 化 による成分格差が大きく、安定した品質 ス が保持しにくい。 ラ グ □製鋼スラグには硫黄分がほとんど含 まれないため、黄濁水の発生はないと されている。ただし、予備処理スラグの うち、脱硫スラグについては、硫化物 が介在する恐れがある。 □高炉スラグよりCaOが多く含まれるた め、pHは高炉スラグより高くなる。 □高いpH(pH>9.5)では海水の白濁が 起こる(無害) □各製鉄所における溶出試験結果で は、水底土砂判定基準を下回る。 ) 製 鋼 ス ラ グ ( ) 、 還 2-23 □製鋼スラグには硫黄分がほとんど含 まれないため、黄濁水の発生はないと されている。 □高炉スラグよりCaOが多く含まれるた め、pHは高炉スラグより高くなる。(特 に電気炉系還元スラグ) □高いpH(pH>9.5)では海水の白濁が 起こる(無害) □各製鉄所における溶出試験結果で は、水底土砂判定基準を下回る。 第2章 鉄鋼スラグ等に関する現状把握 2.5 鉄鋼スラグを海域利用する場合に期待される効果、環境への影響の可能性 既往の知見に基づき、鉄鋼スラグを海域利用する場合に期待される環境改善効果と、環境への影響の可能 性を、表- 2.15 に示すとおり整理した。 表- 2.15 鉄鋼スラグの特性、期待される環境改善効果、環境への影響の可能性 種 類 特性 高炉スラ □石灰含有量 グ(水砕 大(pH上昇) スラグ) □SiO2の含有 期待される海域環境改善効果 環境への影響の可能性 □海底泥からの硫化物・リン溶出抑 制(高pH下で顕著) ・高pH下での海水の白濁の可能性 ・高pHによる生物への影響 □SiO2の供給による藻類の繁殖の促 進、藻場育成効果 ・pH上昇によるアンモニア態窒素 の溶出 □砂に類似した □底生生物、アマモなどの生息基盤 形状 造成(砂の代替材;覆砂材料) ・製造時に発生する針状粒子 □潜在水硬性 転炉系 □石灰含有量 製鋼スラ 大(pH上昇) グ (予備処 □SiO2、鉄分の 含有 理スラグ 含む) □無機栄養塩 の溶出(脱燐・ 脱珪スラグ) □スラグ混合による軟弱な浚渫土や ・覆砂時に潜在水硬性が発現する 海底泥の改良(固化)、底泥の巻き上 ことによる固結作用 がり抑制効果など □海底泥からの硫化物・リン溶出抑 制(高pH下で顕著) ・高pHによる生物への影響 □SiO2や二価鉄イオンの供給による 藻類の繁殖の促進、藻場育成効果 □無機栄養塩の供給による底生微 細藻類の増殖、光合成活性化→水 質・底質環境の改善 □砂に類似した □底生生物、アマモなどの生息基盤 形状 造成(砂の代替材;覆砂材料) □潜在水硬性 ・高pH下での海水の白濁の可能性 □スラグ混合による軟弱な浚渫土や 海底泥の改良(固化)、底泥の巻き上 がり抑制効果など ・pH上昇によるアンモニア態窒素 の溶出 ・鉄分の溶出による錆の発生 ・比重が重いことによる底泥中への スラグの沈み込み ・スラグの種類の違い(脱燐・脱珪・ 脱炭スラグ)による底質改善効果 の発現性の違い ※高炉スラグ(徐冷スラグ)及び電気炉製鋼スラグについては、海域での適用事例がほとんど無く、海域利用 に関する調査・研究がほとんど行われていない。 2-24 第2章 鉄鋼スラグ等に関する現状把握 2.6 鉄鋼スラグの海域利用に関する適用事例のレビュー 2.6.1 鉄鋼スラグの海域利用に関する国内での適用事例のレビュー 鉄鋼スラグを海域環境改善のために利用する試み(現地での実証試験等)はこれまでに数多く実施され ている。ここでは、鉄鋼スラグの種類別、用途別に、鉄鋼スラグの海域利用に関する適用事例を表- 2.16 及 び表- 2.17 に整理した。 また、表- 2.16 及び表- 2.17 で整理した事例の中から、公開情報が入手できたものについて、海域利用時 の安全性評価、手続き、効果の評価の状況などを表- 2.18 のとおり整理した。 2-25 第2章 鉄鋼スラグ等に関する現状把握 表- 2.16 鉄鋼スラグの海域利用に関する過去の適用事例(高炉スラグ) 実施主体 種類 用 途 (①公共、②民 間、③大学等) 適用場所 実施時 期 徐冷スラ グ - - - 水砕スラ 海底覆砂 国土交通省中国 中海 グ 材 地方整備局(①) JFEスチール(②) - H13~ H16 概略内容 ■魚礁コンクリートとしての用途のため、ポーラス コンクリート用骨材として利用した事例は散見され るが、海藻の増加効果などを検証した事例や、海 域の環境改善を目的とした研究・施工事例は見あ たらない。 ■海底のヘドロを覆うために、水砕スラグ覆砂材 (マリンベース)による覆砂を実施。(H13~H16、約 165,000t使用、約16ha修復) ※中海浄化覆砂工事;国土交通省中国地方整 備局、NKK(JFEスチール)。 結果 出典 - - ■実海域試験において、高炉水砕スラグ覆 15) 砂材の硫化水素発生抑制効果、ケイ酸塩供 給効果、表面への生物付着効果が確認され ている。(中海での効果に関する資料は見あ たらない) ■中海のほか、三河湾でも高炉水砕スラグを使っ た実証実験を実施し、 アサリの着底状況など良好な結果を得ている。 海底覆砂 大阪市(①) 材 大阪湾奥部 H17 ■大阪湾内で堆積泥層の大きな区域において高 ■覆砂中の間隙水のpH、硫化物の改善、生 16) 炉水砕スラグを層厚60cmで覆砂。 物相の多様化など一定の効果を確認したも のの、覆砂約1年後には浮泥堆積や材料の 潜在水硬性によりその効果が徐々に低下し た。 底質改善 JFEスチール(②) 材 東海大学(③) 静岡市東海 H11 大学臨海実 験場地先海 域 ■海底に、ポリプロピレン製の容器(420L)に高炉 ■夏季の抑制効果、ケイ酸塩供給効果が確 17) 水砕スラグを入れたものを設置する実験を1年間 認されている。(リン吸着についての結果は 実施。 無し) ■水砕スラグ中の底生生物の種類・量は天 然砂と同等以上であった。 底質改善 愛知県水産試験 室内実験 材 場(③) H17~ H18 ■愛知県水産試験場において、高炉水砕スラグ が固結しない浚渫土の混合割合と効率的な混合 方法、アサリを用いて干潟造成材としての適性に 関する試験を実施。 18) ■スラグ50%+浚渫土50%(スラグ割合5 0%以下)では固結しないこと、海水による長 期的な溶出試験(3ヶ月、6ヶ月)では重金属 が検出されなかったこと、スラグ50%+浚渫 土50%の混合材では、アサリ幼生の着底状 況、生残とも海砂と大きな差がなかったこと などが明らかとなった。 ■底開式土運船模型による浚渫土砂とスラ グ混合投入実験では、固結を防止できるほ ど十分混合しなかったこと、予め混合させた 従来の浚渫土処分費に比べ混合工法による 工事費増加分が大きくなるなどの知見が得 られた。 藻場造成 産総研中国センター 広島県三津 H16~ 基盤材 (③) 口湾 H17 JFEスチール(②) 日本鉱滓(②) 広島大学(③) 水産総合研究セン ター(③) 他 ■高炉溶融スラグに炭酸水を噴霧してスラグ表面 を炭酸カルシウム被膜で覆うことで、固結しにくく、 針状物のない天然砂に近い人工砂(エコサンド) を製造し、広島県三津口湾でアマモ場基盤材とし ての実験を行っている。 ■底生生物に関しては天然藻場と同等以上 19) の棲息が確認された。 ■スラグ100%の試験区では天然区に比べ 劣るもののアマモの生育が確認された。 ■浚渫土を混合した基盤材は、天然区以上 のアマモの生育が確認された。 2-26 第2章 鉄鋼スラグ等に関する現状把握 表- 2.17(1) 鉄鋼スラグの海域利用に関する過去の適用事例(製鋼スラグ その1) 実施主体 種類 用 途 (①公共、②民 間、③大学等) 適用場所 実施時 期 概略内容 結果 出典 藻場の生 新日本製鐵(②) 育に必要 な鉄分供 給 北海道寿都 H16~ ■森林土壌中の二価鉄イオンと腐植土中の腐植 町、函館市 酸が結合(キレート化)することで生成 など全国10 される腐植酸鉄を、転炉系製鋼スラグと木材チッ プを発酵させた腐植土等を活用して人 箇所以上 工的に生成した施肥ユニットを使用した実海域で の藻場(コンブ)生育実験の実施。 (新日本製鐵;ビバリーシリーズ) ■施肥ユニットの使用により、海藻の生育が 20) 促進されることが確認されている 藻場造 JFEスチール(②) 成、CO2 固定 広島県因島 H14 など ■広島県因島において、製鋼スラグ潜堤材(粒径 80mm以下、塊状)、高炉水砕スラグ材覆砂材、鉄 鋼スラグ炭酸固化体海藻着底基盤材(マリンブ ロック:粒状の製鋼スラグを成形しCO2を吹き込 み、製鋼スラグと反応・固化させたブロック)による 人工浅場を造成。 (JFEスチール) ■モニタリングを行った結果、潜堤材での付 21) 着珪藻類の着生量が周辺の天然石より多い こと、ホンダワラ類等の海藻が着生すること などが明らかにされている。 藻場造成 JFEスチール(②) 基盤材、 JFEミネラル(②) 底質改善 材 東京湾(川 崎港) ■浚渫土中にキレートをつくるフルボ酸、フミン酸 ■製鋼スラグと浚渫土の混合材による複合 22) が存在する事に着目し、これらの有機酸でスラグ 的効果については、設置による水環境の悪 中の鉄イオンを錯体の形で溶出させる技術。 化は認められず、浚渫土の強度増強効果が 確認され、りん酸イオンの吸着効果と硫化物 ■鉄イオンは植物の光合成に不可欠な微量元素 イオンの捕捉効果が示唆された。また、冬季 であるため、海藻類の生育促進が期待される。ま の試験区で二価鉄が高くなる傾向となり、大 た、製鋼スラグの海底設置により、製鋼スラグ中 型海藻類のアカモクやワカメの生長促進効 のCaがP,S 等を吸着し、H2S の発生抑制が図ら 果が限定的に確認された。 れることが考えられる。 ■製鋼スラグ製品を閉鎖性海域の海底に設 (JFEスチール(株)、JFEミネラル(株)) 置した場合、直上水のpH に影響を及ぼして いないことが確認された。また、水質調査、 溶出試験により、製鋼スラグ製品によるりん 酸イオンの吸着効果と硫化物イオンの捕捉 効果が示唆されたが、明確なDO の低下抑 制効果の確認には至らなかった。 ■北海道増毛町での実験では、実験区海域 の単位面積当たりコンブ生育量が、設置翌 年の調査では対照区の約226 倍となった。 ( 転 炉 系 製 鋼 ス ラ グ ) 予 備 処 理 ス ラ グ を 含 む H21 2-27 第2章 鉄鋼スラグ等に関する現状把握 表- 2.17 (2) 鉄鋼スラグの海域利用に関する過去の適用事例(製鋼スラグ その2) 実施主体 種類 用 途 (①公共、②民 間、③大学等) 適用場所 藻場造 いであ(②) 川崎港 成、CO2 JFEスチール(②) 固定 東京ガス(②) 東京大学(③) 川崎市(①) 国土交通省関東 地方整備局(①) 他 藻場造成 ランデス(②) JFEスチール(②) H21 岡山県瀬戸 H21 内市牛窓港 概略内容 ■川崎市の製鉄所で製造される製鋼スラグと、川 ※調査中 崎港の浚渫土砂を材料として、適切な硬さ、強度 及び優れた藻場造成能を持つ藻場造成材を開発 する。 結果 出典 23) ■この藻場造成材を用いて川崎港において実証 試験を行い、天然材料に比べて混合材料が海藻 類の育成能及びCO2 固定能が優れている事を実 証することを事業目標としたモデル事業を実施。 ■鉄鋼スラグ炭酸固化体及び鉄鋼スラグ水和固 ※調査中 化体を用いた海洋藻場造成ブロック (ランデス(株)、JFEスチール(株)) 24) ■鉄鋼スラグ炭酸固化体と鉄鋼スラグ水和固化 体を組み合わせることで、より高強度で構造安定 性に優れた海洋藻場造成ブロックを製造する技 術。 ( 転 炉 系 製 鋼 ス ラ グ 実施時 期 ) 予 備 処 理 ス ラ グ を 含 む 藻場魚礁 神戸製鋼所(②) 兵庫県家島 H21~ 群島 ■鉄鋼スラグを組み合わせた鋼製藻場魚礁を家 ■現在も調査中であるが、海藻の繁茂や魚 25) の回遊が見られるなど、順調な経過となって 島群島の西島近傍の海域に設置し、海藻の育 成、漁場環境の改善を目的とした調査研究を実 いる。 施。(神戸製鉄所) 2-28 第2章 鉄鋼スラグ等に関する現状把握 表- 2.17 (3) 鉄鋼スラグの海域利用に関する過去の適用事例(製鋼スラグ その3) 実施主体 種類 用 途 (①公共、②民 間、③大学等) 適用場所 実施時 期 概略内容 結果 出典 底質改善 広島大学(③) 材 広島県阿多 H6 田島 ■転炉スラグ(粉体)を対象としたスラグ散布によ ■スラグによるリン吸着効果(高pH・高リン 26) る、リンの抑制効果に関する実験及び現場海底 濃度ではリン酸カルシウムの沈殿物生成に 域(阿多田島)での検討を実施。 伴い海水中のリン濃度が低下)、スラグに吸 着したリンの約8割は海水への再溶出もなく 安定に保持されること、現場実験より、2年 後もリン吸着能があることなどが確認されて いる。 底質改善 JFEスチール(②) 材 広島県江田 H17 島市(江田 島湾) ■広島県江田島湾高田港沖合のカキ筏下の海底 ■スラグ区では底生生物の湿重量が花崗岩 27) に、塊状製鋼スラグを入れた容器と同等粒径の花 区よりも多かった。 崗岩を入れた容器を設置し、カキ筏下の底質改善 ■スラグ区の硫化物濃度は、底層水と中層 状況について調査を実施。(JFEスチール、江田 水において花崗岩区よりも低く、酸化還元電 島湾再生協議会) 位が高い値となった。 ■以上より、塊状製鋼スラグがカキ筏下の 底質悪化を抑制していることが示された。 底質改善 新日本製鐵(②) 材(軟弱浚 JFEスチール(②) 渫土の混 合技術) 東京湾(京 H21 浜運河出口 付近) ■底質浚渫土と転炉系製鋼スラグを混合した混 合土により浅場・干潟を造成 (造成面積は約600 m2、土量1,200m3)。 ※実証試験では、藻場造成基質として鉄鋼スラグ 水和固化体製人工石材、炭酸固化体ブロックを設 置するとともに、鉄分供給用の鋼製ユニット(ビバ リーユニット)を設置し、転炉系製鋼スラグ製品に よる軟弱浚渫土の強度向上効果と鉄分の供給に よる藻場造成技術の複合効果による生物生息環 境を改善することを目的としている。 転 炉 系 製 鋼 ス ラ グ ■2 年の実験後においても浚渫土スラグ混 22) 合マウンドからの溶出物質(重金属類10 成 分)については水底土砂の判定基準を満た していることが確認された。 ■浚渫土の強度増強効果が認められた。ま た、設置による水環境の悪化は認められ ず、りん酸イオンと硫化物イオンの溶出抑制 あるいは吸着機能が確認された。 ( ■閉鎖性海域における転炉系製鋼スラグ製 品による藻場造成技術においては、浚渫土 ※環境省 環境技術実証事業 閉鎖性海域にお スラグ混合マウンドの造成後、基盤の安定 化と共に鉄分の供給が示唆された。マウンド ける水環境改善技術分野の 実証済の技術 (新日本製鐵(株)、JFEスチール 設置後、徐々に周辺海域と類似の生物相へ 遷移したことが確認できた。なお、本海域に (株)) おいては鉄分が豊富に存在したため、鉄分 供給による移植海藻類の生長促進効果は明 確には認められなかった。 ) 予 備 処 理 ス ラ グ を 含 む H17 水質・底質 広島大学(③) 改善材 室内試験 海底覆砂 日本鉄鋼連盟 材、CO2 (②) 固定 大阪府堺市 H17 堺浜 ■製鋼スラグを担体として表面に底生微細藻(珪 藻)を増殖させた環境改善材による、水質、底質 の同時改善技術。 (広島大学山本教授) ■スラグ(脱燐スラグ)の添加により珪藻 28) S.costatumの増加を促進させ、渦鞭毛藻 A.tamarenseの増殖を抑制することなどが実 験的に明らかにされている。 ■迅速炭酸化(転炉系製鋼スラグをミキサにより 攪拌しながらCO2ガスを吸収させ、高pH溶出の原 因となるf-CaOを安定的なCaCO3に変化させる方 法)による安定処理を施した転炉系製鋼スラグ単 体を覆砂材として利用。 ■天然砂、製鋼スラグともに沈降や崩壊によ 29) る顕著な水深変化は見られないこと、製鋼ス ラグ実験区では覆砂内でのPO4-P濃度の低 下などが確認されている。 ■大阪府堺市堺浜で試験施工(天然砂による覆 砂との比較)を実施。 2-29 第2章 鉄鋼スラグ等に関する現状把握 表- 2.17 (4) 鉄鋼スラグの海域利用に関する過去の適用事例(製鋼スラグ その4) 実施主体 種類 用 途 (①公共、②民 間、③大学等) 技術の組 日新製鋼(②) 合せによ る環境改 善 適用場所 実施時 期 広島県呉市 H21 (阿賀マリノ ポリス地区) ■構造物、資源を複合的に組み合わせることによ る生物生息環境の改善 ①構造物A:水平くぼみによる生物多様性向上技 術(五洋建設(株)) →直立護岸の付着生物着生促進 ②構造物B:鉄鋼スラグを用いた生物生息場の 創造技術(日新製鋼(株)) →砂地を必要とする生物の生息環境の創造 (鉄鋼スラグ造粒砂) ③構造物C:リサイクル材を用いた付着生物多様 性向上技術((株)マリンアース) →大型藻類や付着動物の生息環境の創造 ④構造部D:貝殻を用いた生物付着促進技術(海 洋建設(株)) →小型藻類や付着動物、埋在性ベントスの生息 環境の創造 結果 出典 ■試験区の生物量は湿重量、炭素固定量と 22) もに対照区以上であり、また、生物種も対照 区に比べ多様となっていた。各技術を単体で はなく複合的・空間的に配置することで、多 様な生物生息空間を創造すること、また、魚 類や大型ベントスの蝟集効果を高めることが 確認できた。 ( 転 炉 系 製 鋼 ス ラ グ 概略内容 ) 予 備 処 理 ス ラ グ を 含 む 電気炉 系製鋼 スラグ ■電気炉系製鋼スラグについては、基本的に転 炉系製鋼スラグと類似した性質を持つため、海域 利用についても転炉系製鋼スラグと同様の可能 性があると考えられるが、他のスラグのような海 域利用に関する調査・研究事例はほとんど見あた らない。 - - - - ■また、「転炉系製鋼スラグ 海域利用の手引き」 によると、「海水に接する用途に適用する場合は、 適用性が検証されていない電気炉スラグ等につ いては利用の対象外とする」とされており、現状で は海域利用に関する検証がなされていない。 - 出典15) JFEホールディングス(株)HP 出典16)中平・鬼頭・宮崎・矢持:底質環境改善対策の実験的な取り組みについて、平成18年12月、(社)日本水産学会近畿支部 平成18年度後期例会資料 出典17)沼田 哲始、宮田 康人、豊田 恵聖、佐藤 義夫、小田 静、岡本 隆:高炉水砕スラグの底質改善効果:土木学会第 25 回海洋開発シンポジウム 海洋開発論文集,16,345-350(2000) 出典18)愛知県水産試験場:人工干潟・浅場造成材の開発:平成18年度 水産基盤整備調査委託事業報告書、(社)マリノフォーラム21 出典19)高炉スラグを利用した海砂代替砂(エコサンド)製造技術の開発:経済産業省地域コンソーシアム研究開発事業共同研究 成果報告書(2004~2005) 出典20)平成21年度「海の森づくり」シンポジウムⅥ 海洋施肥と海の森づくり 要旨集 2009年5月29日 NPO法人「海の森づくり推進協会」主催、共催: (社)国際海洋科学技術協会、後援:鐵鋼スラグ協会 出典21)宮田ら:藻場造成用鉄鋼スラグブロックへの海藻着生:海洋開発論文集第 20 巻、2004.6 出典22)平成21年度環境技術実証事業 閉鎖性海域における水環境改善技術実証試験結果報告書(環境省 環境技術実証事業HP) 出典23)松山:製鋼スラグを用いた藻場造成によるCO2固定技術開発、(社)日本環境アセスメント協会技術交流会報告、平成21年度 出典24)おかやま新環境技術アセスメントシステム(おかやま Netas)ホームページ 出典25)神戸製鋼HP 出典26)伊藤・西嶋・正藤・岡田:鉄鋼スラグ散布による沿岸海域でのリン除去の基礎的研究-室内実験と長期現場実験-:水環境学会誌第 19 巻第 6 号、 pp.501-507、1996 出典27)宮田・佐藤・清水・小山田:製鋼スラグによる海域の底質改善、JFE技報 No.19、p.1-5、2008. 出典28)鈴木・山本:製鋼スラグの添加が珪藻 Skeletonema costatum 及び渦鞭毛藻 Alexandrium tamarense の増殖に及ぼす影響に:鉄と鋼、91、pp.783-787、2005 など 出典29)転炉系製鋼スラグ 海域利用の手引き:(社)日本鉄鋼連盟、平成20年9月 2-30 - 第2章 鉄鋼スラグ等に関する現状把握 表- 2.18 (1) 鉄鋼スラグの海域利用に関する代表事例(安全性評価、手続き、効果評価の状況など) 事例:転炉系製鋼スラグ製品による沿岸域の環境改善技術 (新日本製鐵株式会社、JFEスチール株式会社) 概 要 ■底質浚渫土と転炉系製鋼スラグを混合した混合土 により浅場・干潟を造成 (造成面積は約 600m2、土量 1,200m3)。 ■実証試験では、藻場造成基質として鉄鋼スラグ水 和固化体製人工石材、炭酸固化体ブロックを設置す るとともに、鉄分供給用の鋼製ユニット(ビバリーユニ ット)を設置し、転炉系製鋼スラグ製品による軟弱浚 渫土の強度向上効果と鉄分の供給による藻場造成 技術の複合効果による生物生息環境を改善することを目的としている。 平成 21 年度 実施年度 ■東京湾(東京都大田区城南島地先) 適用海域 京浜運河の出口に位置する城南大橋の内側に位置する閉鎖性の強い入り江部 海 域 利用 に ■ビバリーシリーズ商品は、海洋汚染防止法に定める水底土砂判定基準に適合した製品として製 あたっての鉄 造されている。 鋼スラグの品 質管理、安全 ■水和固化体ブロックは、「鉄鋼スラグ水和固化体技術マニュアル(平成20年2月、(財)沿岸技術 センター)において、通常のコンクリートと同様、強度、材料の安全性など厳しい基準が設けられ 性の評価 ている。 ■鉄鋼スラグ水和固化体製人工石材のフロンティアストーン、フロンティアロックについては、「港湾 関連民間技術の確認審査・評価委員会((財)沿岸技術センター)」において、①準硬石の天然石 材と同等の品質を有すること、②非液状化材料であること、③海域で使用する場合、周辺海域のp Hへの影響が無いこと、④藻場・緩傾斜護岸において、天然石材と同等の生物付着性を有するこ とのいずれの要件も満足する材料であることが確認されている。 ■本実証試験の実施にあたり、事前に、製鋼スラグ単体(ビバリーユニット用)、鉄鋼スラグ人工石 (水和固化体ブロック、炭酸固化体ブロック)、製鋼スラグ+浚渫土の混合土について、溶出試験を 行い、以下の基準と比較し、安全性に問題が無い材料を使用している。 ①海洋汚染防止法 水底土砂判定基準(総理府令 6 号) ②土壌汚染対策法 土壌環境基準 適用した事業 ■環境省 「環境技術実証事業 閉鎖性海域における水環境改善技術分野」において選定された 制度及 び 手 実証対象技術 (実証対象技術開発者;上記2社、実証機関;(財)港湾空間高度化環境研究センタ ー) 続き →既に適用可能な段階にありながら、環境保全効果等についての客観的な評価が行われていな いために普及が進んでいない先進的環境技術について、その環境保全効果等を第三者が客観的 に実証することにより、環境技術を実証する手法・体制の確立を図るとともに、環境技術の普及を促 進し、環境保全と環境産業の発展を促進することを目的とするもの。 ■本分野では、平成 19 年度から国負担体制として開始し、平成 21 年度から実証申請者に試験手 数料を負担いただく手数料徴収体制にて実証試験を実施している。 ■国負担体制では、対象技術の試験実施場所への持ち込み・設置、現場で実証試験を行う場合の 対象技術の運転、試験終了後の対象技術の撤去・返送に要する費用は実証申請者の負担とし、対 象技術の環境保全効果の測定その他の費用は環境省の負担とする。 ■手数料体制(実証システムが確立した技術分野)では、上記の申請者の負担に加え、実証試験 実施に係る実費(実証機関に発生する測定・分析等の費用、人件費、消耗品費及び旅費)を手数 料として申請者が負担する。 2-31 第2章 鉄鋼スラグ等に関する現状把握 (続 き) 効果の検証 (評価) ①転炉系製鋼スラグ製品による軟弱浚渫土の混合改良技術 [水環境について] ■浚渫土スラグ混合マウンドにおいて、水和反応に伴う pH の上昇や白濁の発生のよる浮遊物質 の発生は認められなかった。 ■夏季の間隙水中で試験区は対照区より低い傾向を示し、りん酸態りんの吸着効果が示唆され た。浚渫土スラグ混合マウンドと天然材マウンドの直上水の水質はほぼ同じ傾向で、かつ周辺水 域の環境レベルを保っており、水質環境の維持が図られた。 [底質環境] ■浚渫土スラグ混合マウンドの底質は天然材マウンドとほぼ同じ傾向で、かつ周辺水域の環境のレ ベルを保っており、底質環境の維持が示唆された。 [溶出速度等試験について] ■浚渫土スラグ混合マウンドを現地採取した試料の疑似現場法による溶出速度試験において、硫 化物とりん酸態りんの抑制あるいは吸着のポテンシャルが認められ、過去の室内試験を裏付ける 結果を得た。 ■浚渫土スラグ混合マウンドからの溶出物質(重金属類10 成分)については水底土砂の判定基準 を満たしており、安全性が確認された。 [強度試験について] ■浚渫土スラグ混合マウンドの強度は昨年と同程度、あるいはそれ以上であり、目視観察において もマウンドの形状が維持されていた。 ②転炉系製鋼スラグ製品による藻場造成技術 [水環境・溶出速度試験について] ■鉄分の供給は鋼製ユニット近傍で二価鉄が相対的に高濃度を示し、スラグ製品による鉄分の供 給効果が示唆された。 [生物生息環境について] ■新たな浚渫土スラグ混合マウンドによる着生基盤の提供により、近傍の自然護岸とほぼ同様の生 物相が形成され、海中部では固化体ブロック、鋼製ユニットにおいて、付着生物量が多く、着生基 盤効果と生物生息環境の安定化が図られた。 ■底生生物は浚渫土スラグ混合マウンドの後背部において、バックグランド及び周辺海域の底生 生物と変わらない状況にあることが考えられた。 ■移植海藻類の内、コンブについては浚渫土スラグ混合マウンドで生残した株数が多かったが、 鋼製ユニットからの鉄分の供給による効果であるかは明確に確認できなかった。 その他 ■「環境技術実証事業」 の流れ(手数料徴収体制)→右図参照 2-32 第2章 鉄鋼スラグ等に関する現状把握 表- 2.18(2) 鉄鋼スラグの海域利用に関する代表事例(安全性評価、手続き、効果評価の状況など) 事例:製鋼スラグを用いた藻場造成・水質改善技術 (JFEスチール株式会社、JFEミネラル株式会社) 概 要 ■製鐵スラグと浚渫土の混合材を浅場造成への基盤としての利用、鉄分等のミネラルの供給及び 硫化水素の溶出抑制効果による DO の回復を通じて、これらの複合効果による生物生息環境を改 善する。 ①製鋼スラグと浚渫土の混合材 による藻場造成(川崎港海底 トンネル東扇島入り江) ②製鋼スラグ製品の海底敷設 (川崎港浅野運河) 適用海域 ■川崎港海底トンネル東扇島入り江(製鋼スラグと浚渫土の混合材による藻場造成) ■川崎港浅野運河(製鋼スラグ製品の海底敷設) 実施年度 平成 21 年度 海 域 利用 に あたっての鉄 鋼スラグの品 質管理、安全 性の評価 ■本実証試験の実施にあたり、事前に、製鋼スラグ単体(京浜脱炭スラグ、京浜NRPスラグ、千葉 転炉スラグ、千葉脱リンスラグ)、鉄鋼スラグ人工石(水和固化体ブロック)、製鋼スラグ+浚渫土の 混合土について、溶出試験を行い、以下の基準と比較し、安全性に問題が無い材料を使用してい る。 ①海洋汚染防止法 水底土砂判定基準(総理府令 6 号) ②土壌汚染対策法 土壌環境基準 適用した事業 ■環境省 「環境技術実証事業 閉鎖性海域における水環境改善技術分野」において選定された 制度及 び 手 実証対象技術 (実証対象技術開発者;上記2社、実証機関;(財)港湾空間高度化環境研究センタ 続き ー) ※表- 2.18 (1)の技術と同じ 2-33 第2章 鉄鋼スラグ等に関する現状把握 (続 き) 効果の検証 (評価) ①製鋼スラグを用いた藻場造成・水質改善技術 鉄イオンの溶出(東扇島入り江) [水環境について] ■スラグ混合材を使用した盛土部の直上水の pH、DO、硫化物は環境基準をほぼ満足し、天然砂 を使用した盛土部(対照区)との比較において、大きな差は認められず、かつ周辺水域の環境の レベルを保っており、水質環境の維持が図られた。スラグ混合材を使用した盛土部においても、pH の上昇は認められなかった。浮遊物質量は試験区と対照区でほとんど差は認められなかった。 ■スラグ混合材を使用した盛土部の二価鉄は天然砂を使用した盛土部(対照区)よりも高い傾向が 認められた。 [溶出速度等試験について] ■現地に設置したスラグ混合材盛土部基材のテストピースを試料とした疑似現場法による溶出速 度試験において、硫化物とりん酸態りんの抑制が認められた。また、鉄分の溶出についてはバック グランドと同じレベルであった。 ■スラグ混合材盛土部基材のテストピースを 5 ケ月後に回収した試料からの溶出物質(重金属類 10 成分)については水底土砂の判定基準を満たしており、安全性が確認された。 [強度試験について] ■スラグ混合材を使用した盛土部の強度は一定レベル以上の基準を満足し、十分な強度を保持し ている事が確認された。 [生物生息環境について] ■スラグ混合材とフロンティアロックで構成される試験区でアカモクが天然砕石の対照区よりも 3.2 倍の生長となった。 ■スラグ混合材とフロンティアロックで構成される試験区でワカメが天然砕石の対照区と同等、ある いはそれ以上の生長となった(海底上 0.8m 層)。 ②製鋼スラグを用いた藻場造成・水質改善技術 DO の低下抑制(浅野運河) [水環境について] ■製鋼スラグ製品の直上水の pH は環境基準を満たし、対照区と同等であった。間隙水中の pH は上昇するが、対照区も同じ傾向であった。間隙水中の pH の上昇は直上水に影響を及ぼさなか った。 ■間隙水のりん酸態りんは夏季に対照区よりも低下し、吸着効果が示唆された。 ■間隙水の浮遊物質量は試験区で季節別、地点間で変動が大きく、対照区が低濃度で推移した のに対して明らかに高値を示した。しかし、直上水に対する影響はなかった。 ■夏季に試験区において DO がやや高い傾向が認められた。 [溶出速度試験] ■施工した製鋼スラグ製品を採取し、溶出試験を行った結果、りん態りんについては吸着、抑制効 果が認められた。硫化物については抑制効果が示唆された。製鋼スラグ製品からの鉄分の供給 効果が示唆された。 ■試験区設置 7 ケ月経過後の製鋼スラグ製品からの溶出物質(重金属類 10 成分)については水 底土砂の判定基準を満たしており、安全性が確認された。 2-34 第2章 鉄鋼スラグ等に関する現状把握 表- 2.18(3) 鉄鋼スラグの海域利用に関する代表事例(安全性評価、手続き、効果評価の状況など) 事例:製鋼スラグを利用した藻場再生実験(ビバリーシリーズ) (新日本製鐵株式会社) 概 要 ■森林土壌中の二価鉄イオンと腐植土 中の腐植酸が結合(キレート化)すること で生成される腐植酸鉄を、転炉系製鋼 スラグと木材チップを発酵させた腐植 土等を活用して人工的に生成した施肥 ユニットを使用した実海域での藻場(コ ンブ等)生育実験を実施。(新日本製鐵 株式会社;ビバリーシリーズ) 適用海域 ■北海道増毛町・寿都町・函館市、東京都三宅島、千葉県館山市、三重県伊勢志摩、和歌山県田 辺市・串本町、福岡県北九州市、長崎県松浦市・西海市 など 実施年度 平成 16 年度~ 海 域 利用 に あたっての鉄 鋼スラグの品 質管理、安全 性の評価 ■製作工程で、道路路盤材の JIS 規格に合うようにしており、品質管理、出荷管理がどこでどのよう にされているかが分かるようになっている。 ■製鋼スラグ、鉄鋼スラグ共に、JIS 規格に沿っており、重金属の溶出検査が義務付けられている 13 項目についてはすべてチェックをして出荷している。 ■スラグを海に入れることの安全性については、環境基準等に従って溶出物質について調査を行 っている。また、実際の生物の成長に及ぼす影響について、生物を使った“バイオアッセイ”という 調査を全国水産技術協会(全漁連関連先)で実施し、マダイ、クロアワビ、クルマエビに対する安全 性を確認している。 適用した事業 ■(増毛町の例)海の緑化に向け産学研究を進めている「海の緑化研究会」の一員として、東京大 制度及 び 手 学、(株)エコグリーン、西松建設(株)とともに、腐植酸鉄溶出ユニットの施肥効果を確認するた め、北海道増毛町の増毛漁業協同組合の協力を得て、2004 年 10 月に磯焼けが深刻な舎熊海岸 続き の汀線(波打ち部の陸側)約 15m にユニットを埋設した 効果の検証 (評価) ■(増毛町の例)過去数年間、石灰藻に覆われて真っ白な砂漠状態であった同海岸で、ユニット設 置部から沖合へ 30 メートルほどの海域にコンブなどが、05 年3 月以降から豊かに生息を始めたこ とを確認している。 ■この成果から、さらにコンブが陸上植物の 3─5 倍と成長速度が速いことから、温暖化ガスの削減 にも有効な技術として期待できるとしている。 その他 ■(漁業者との調整等)現状では、環境基準等の安全性と製品の付加価値を漁協にアピールし、漁 協に事業主体となってもらい、材料費・工事費無料で小規模実証を行っている段階。 2-35 第2章 鉄鋼スラグ等に関する現状把握 表- 2.18(4) 鉄鋼スラグの海域利用に関する代表事例(安全性評価、手続き、効果評価の状況など) 事例:鉄鋼スラグ炭酸固化体及び鉄鋼スラグ水和固化体の組合せによる藻場造成 (JFEスチール株式会社、ランデス株式会社) 概 要 ■鉄鋼スラグ炭酸固化体と鉄鋼スラグ水 和固化体を組み合わせることで、より高 強度で構造安定性に優れた海洋藻場造 成ブロックを製造する技術。 適用海域 ■岡山県 牛窓港(瀬戸内市内)で試験施工実施中(既存製品との比較評価を行うために、同じ箇 所に採択製品と従来型を施工(L=13.85m、N=29 個) 実施年度 平成 21 年度~ 海 域 利用 に ■「鉄鋼スラグ炭酸固化体利用マニュアル」、「鉄鋼スラグ水和固化体技術マニュアル(改訂版)に あたっての鉄 準拠し、原材料及び固化体の品質・安全性を検証している。 鋼スラグの品 質管理、安全 性の評価 適用した事業 ■おかやま新環境技術アセスメントシステム(おかやま Netas)に募集・登録 制度及 び 手 (おかやま Netas) 続き 岡山県内で開発された特徴のあるリサイクル素材・製品や、リサイクル素材を活用した技術等に ついて、ユーザーサイドの「採用実績が無い」「長年使用した素材の方が安心」などから生じる商業 化に向けた課題を克服するため、県が公共工事や各試験場で試験的に利用・評価検証する。 効果の検証 (評価) ※現在、効果の検証中のためデータ等は公表されていない。 2-36 第2章 鉄鋼スラグ等に関する現状把握 表- 2.18(5) 鉄鋼スラグの海域利用に関する代表事例(安全性評価、手続き、効果評価の状況など) 事例:複合的沿岸環境改善技術 (五洋建設(株)、日新製鋼(株)、(株)マリンアース、海洋建設(株)) 概 要 適用海域 ■本実証試験の各種生物生息環境改善技術 は、それぞれ効果のあることが、適用実験や実 証実験により確認されている。各技術は、それ ぞれ機能、ねらいが異なっており、それらを複 合的に配置することにより、各機能が連関し、 相乗的な効果(シナジー効果)が生まれることが 期待されるが、複合的に配置した場合の効果 の評価までは行われていない。そこで本実証 試験では、各技術を複合的に配置し、その効果 を評価することとした。 呉市阿賀マリノポリス地区B-2護岸 実施年度 平成 21 年度 海 域 利用 に あたっての鉄 鋼スラグの品 質管理、安全 性の評価 ■個々の技術のうち、鉄鋼スラグを用いた生物生息場の創出技術(水砕スラグと転炉スラグを混合 した造粒砂)について、溶出試験等の安全性確認は開発者である日新製鋼(株)が実施。 ■個々の技術のうち、リサイクル材を用いた付着生物多様性向上技術(マリンアース混和材;産業 廃棄物をリサイクルし、新素材活性炭化したものに Fe,Al を配合し、磁極を付加したコンクリート混和 剤)は、国土交通省の新技術情報提供システム(NETIS)に登録された製品である。また、海域へ の適用にあたり、環告 13 号「産業廃棄物に含まれる金属等の検定方法」に基づき溶出試験を行 い、全ての項目において基準値以下であることを確認している。 適用した事業 ■環境省 「環境技術実証事業 閉鎖性海域における水環境改善技術分野」において選定された 制度及 び 手 実証対象技術 (実証対象技術開発者;上記4社、実証機関;呉市) 続き ※表- 2.18 (1)の技術と同じ 効果の検証 (評価) ■試験区では、湿重量、炭素固定量ともに対照区以上となっており、目標である「対照区以上の生 物量の確保」が確認できた。また、各技術、設置水深、シーズンごとに異なる生物が付着することが 確認され、各技術を空間的に配置した効果が確認された。 ■各技術を設置した試験区では、魚類や大型ベントスなど食物連鎖の上位捕食者が多く確認で き、各技術を空間的に配置したことにより、蝟集効果が高まったことが考えられる。 ■本実証試験により、各技術を単体ではなく複合的・空間的に配置することで、多様な生物生息空 間を創造すること、また、魚類や大型ベントスの蝟集効果を高めることが確認できた。 その他 ■海域での実証実験前に、関係漁協へ説明を行った。(漁協では、環境再生の取り組みに前向き であり、スラグを利用することについても特に抵抗はなかった) ■実証実験参加者 の責任分掌 2-37 第2章 鉄鋼スラグ等に関する現状把握 2.6.2 鉄鋼スラグの海域利用に関する海外での適用事例のレビュー (1) 高炉水砕スラグ 海外における高炉スラグの利用状況は表- 2.19 に示すとおりである30)。各国ともに高炉スラグは主に徐冷 スラグと水砕スラグに処理されており、水砕スラグの用途については、セメントやコンクリートの利用がほとん どである。また、日本のような土木工事用材料や地盤改良材への利用や海域での利用は、海外では確認さ れなかった。 表- 2.19 日本と海外での高炉水砕スラグの利用状況の比較30) 高炉スラグの 生成量 24.6 百万 t (2004 年データ) 高炉スラグの生成 状況 水砕スラグ 徐冷スラグ ペレットスラグ 水砕 化率 75% 水砕スラグ の用途 セメント 道路 米 国 ? 水砕スラグ 徐冷スラグ 膨張スラグ ? セメント 道路 軽量ブロック ・高炉スラグ生成量、水砕化率などの統計 データは不明 ・2006 年に販売された水砕スラグの 90% 以上はセメント原料として利用 南洋州 2.4 百万t (2007 年データ) 水砕スラグ 徐冷スラグ 30% セメント コンクリート 道路 ・セメントとしての利用価値を高く評価 ・今後、水砕化率を高めセメントを中心に 有効利用 ・水砕スラグの 90%はセメントへの利用 中 国 114.0 百万t (2005 年データ) 水砕スラグ 徐冷スラグ 65% セメント コンクリート ・水砕スラグは 2010 年までに 100%目標 に有効利用の方針(第 11 次5ヶ年計画) ・セメント、生コンへの利用を指向 ・水砕化率の向上がポイント 韓 国 8.2 百万t (2001 年データ) 水砕スラグ 徐冷スラグ 72% セメント ・統計データより、水砕スラグの用途はセメ ントへの利用と推定 日 本 25.4 百万 t (2008 年データ) 水砕スラグ 徐冷スラグ 82.1% セメント コンクリート 道路 土木 地盤改良材 ・水砕スラグの90%はセメント、コンクリート に利用 ・土木用 4.9%、地盤改良材 0.6%に利用 (高炉スラグ全体に対する構成比) ・水砕スラグの土木用・地盤改良材用は裏 込め、覆土、盛土、路床、法面保護、サン ドコンパクションなど幅広く利用 地域・国名 欧 州 (オーストラリ ア、ニュージ ーランド、マ レーシア) 利用状況(今後の動向など) ・ベルギー、イタリア、オランダは水砕スラ グのみ生成 ・今後もセメント需要が見込まれることか ら、フランス、ドイツ、イギリスともに水砕化 率が促進 出典30)高炉水砕スラグの地盤工学的利用促進に関する研究委員会報告書、(社)地盤工学会、平成22年4月 2-38 第2章 鉄鋼スラグ等に関する現状把握 (2) 製鋼スラグ ①韓国での事例31) 鉄鋼スラグの海域利用に関する事例としては、韓国で行われている「海中林造成事業」がある。 韓国では、製鋼スラグは主に道路用骨材でよく活用されており、港湾建設材料でも活発に使われている。 一方、近年地球温暖化などの気象環境の変化により、韓国の沿岸生態系は変化しており、磯焼け現象によ って沿岸海域が砂漠化している。 韓国政府では、これを解決するための様々な努力を行っており、その代表的な事業が「海中林造成事業」 である。一般の海中林造成は、コンクリート、鉄鋼材及びセラミックなどで構造体を製作し、該当海域へ投入 してから海藻類を移植するのが普通であるが、最近、海中林造成において製鋼スラグ(転炉スラグ)を用い る技術が開発され、実際の海域に適用されている。 1988 年度からはじまった研究開発活動及び大型の試験事業を通じて、製鋼スラグに含まれた鉄分によっ て海中林の造成に卓越した効果があることがわかり、2005 年からは実用化に成功して大型事業に適用され ている。 ②欧州での事例11)、32) ドイツでは、1970 年代から川の護岸、浸食川底の充填材、築堤材等の治水工事に、年間約 40 万トンの製 鋼スラグが使用されている。ベルギーでもパイプラインの床敷材として、オランダではアイセル川の拡幅工事 等に数 10 万トンの製鋼スラグが使用された実績がある。 図- 2.6 に、ライン川での堤防工事の概要を示す。 図- 2.6(1) 堤防工事の事例①11) 図- 2.6(2) 堤防工事の事例②11) 2-39 第2章 鉄鋼スラグ等に関する現状把握 ドイツにおける製鋼スラグの使用基準(1996 年 NRW 州)は、以下のとおりである。 (ドイツで、治水工事に製鋼スラグが使用される理由) ・製鋼スラグは比重が大きいため、流水に対する抵抗性が大きく、耐摩耗性に優れている。 ・天然資源の保護 (pH管理) 水域のpHは、9.5 以下を基準として、使用条件を表- 2.20 のように設定している。pH9.5 は、生物の生息 に支障の無い値として、試験的に設定されており、水/スラグ比(W/S)は、pH≦9.5 になるよう設定されて いる。 (製鋼スラグの品質基準) 製鋼スラグの品質基準は、表- 2.21 に示すとおりである。 表- 2.20 製鋼スラグ使用条件(ドイツ)32) 表- 2.21 製鋼スラグの品質基準(ドイツ)32) 出典31)曺俸碩・李勳河・金亨昔・金起弘:韓国における鉄鋼スラグ骨材の利用と技術の現況、コンクリート工学、Vol.48、No.1、2010. 出典32)欧州の鉄鋼スラグの利用と環境問題に関する調査、鐵鋼スラグ協会欧州調査団、1997.9. 2-40 第3章 瀬戸内海の環境修復ニーズ調査 第3章 瀬戸内海の環境修復ニーズ調査 3.1 調査方法 3.1.1 瀬戸内海における海域区分 瀬戸内海環境保全特別措置法によって設定された瀬戸内海の海域区分は図- 3.1 に示すとおりであり、一 般に、瀬戸内海は紀伊水道、大阪湾、播磨灘、備讃瀬戸、備後灘、燧灘、安芸灘、広島湾、伊予灘、周防灘、 豊後水道、響灘の 12 海域に区分される。 本資料ではこれらの海域区分に従い、瀬戸内海における環境修復の必要性等について把握した。 備讃瀬戸 播磨灘 大阪湾 備後灘 響 灘 広島湾 安芸灘 燧 灘 紀伊水道 周防灘 伊予灘 瀬戸内海と関係府県の区域 豊後水道 ・・・瀬戸内海環境保全特別措置法 ・・・瀬戸内海環境保全特別措置法に定める に定める瀬戸内海の範囲 瀬戸内海の範囲 ・・・瀬戸内海環境保全特別措置法 ・・・瀬戸内海環境保全特別措置法による による対象区域境界線 対象区域境界線 ・・・湾灘区分線 ・・・湾灘区分線 図- 3.1 瀬戸内海における海域区分 3-1 第3章 瀬戸内海の環境修復ニーズ調査 3.1.2 瀬戸内海の環境修復ニーズの抽出手順 瀬戸内海の環境修復ニーズの抽出手順は図- 3.2 に示すとおりである。 まず、瀬戸内海において海域環境の状態が良好ではない海域を修復の必要性がある箇所と考え、抽出 を行なった。次に、法的規制や海面の利用状況、過去の修復事業の実施箇所および環境修復計画の策定・ 実施状況を整理した。最後に、これらの情報を重ね合わせ、瀬戸内海における環境修復の必要性等を把握 した。また、港湾、水産行政関係者等へのヒアリングに基づき把握した瀬戸内海における海域環境修復ニー ズと、それぞれのニーズに対する鉄鋼スラグ等の副産物の利用可能性の検討結果を整理した。 ・瀬戸内海の海域環境の現状を既存の海域環境データより把握し、課題(修復の必要性) を抽出。 【収集データ】 底層DO、底質COD、透明度、赤潮の発生件数、干潟・藻場の分布、浅場の消失箇所、 海岸線の状況 ・海域の法的規制や海面の利用状況を既存データより把握。 【収集データ】 国立・国定公園の配置状況、特定海域を有する海岸の配置状況、港湾区域の設定状況、 主要海水浴場の配置状況、保護水面の設定状況、水産利用の状況 ・既存の海域環境修復事業の実施箇所や修復計画の実施状況より、海域環境における 修復ニーズを把握。 【収集データ】 既存の修復事業の実施箇所・内容、修復計画の設定状況 ・1)~3)の情報の重ね合わせより、海域環境が悪化しており、且つ、海面利用上や環境 修復計画上、環境修復の必要性があると考えられる箇所及び修復メニューを整理。 ・港湾、水産行政関係者等へのヒアリングに基づき把握した瀬戸内海における海域環境 修復ニーズと、それぞれのニーズに対する鉄鋼スラグ等の副産物の利用可能性の検討 結果を整理。 図- 3.2 瀬戸内海の環境修復ニーズの抽出手順 3-2 第3章 瀬戸内海の環境修復ニーズ調査 3.1.3 瀬戸内海の環境の現状と課題の抽出 瀬戸内海は、高度経済成長期における赤潮の頻発や貧酸素水塊の発生といった環境悪化を受けて、昭 和 53 年には瀬戸内海環境特別措置法が策定され、陸域負荷削減対策等が進められてきた。しかしながら、 依然として一部の海域では赤潮や貧酸素の発生等が見られ、この要因として底質中に蓄積された有機物の 影響が指摘されている 1)。また、埋め立てによる藻場や干潟消失は海の自浄能力や生物の生息・再生産の 場を消失させ、海洋環境および漁場環境の悪化を招いている。 以上のような点から、瀬戸内海における環境の現状と課題を把握するにあたって表- 3.1 に示す項目を海 洋環境の現状を評価するための指標として選定し、それぞれの指標に環境の状態を示すしきい値を設け、 地図上にマッピングを行ない、各湾灘における海域環境の状況と課題の抽出を行なった。 表- 3.1 瀬戸内海における海域環境の現状と課題を抽出するための指標 項目 夏季底層 DO 注) 赤潮発生状 況 透明度 悪化と判断 する基準 <5mg/L <5 件/10 年 <4m 設定根拠等 ・貧酸素の発生状況を確認するため、夏季底層 DO を選定した。 ・環境省による検討結果によれば、底層 DO に対する生物の耐性は、種や成 長状況によって変化し、最も耐性の低い生物では、DO 5mg/L 以下で悪影響 があるため、5mg/L をしきい値とした。 ・赤潮の発生状況を確認するため、赤潮の発生状況を選定した。 ・年毎の発生海域の重ね合わせより、2 年に 1 度は赤潮が発生する海域を赤潮 頻発海域とした。 ・藻場の生息環境を示す指標として透明度を選定した。 ・環境省による検討結果によれば、海藻が必要とする透明度は種や場所によ って 1~8m まで変化するとされている。 ・底泥の悪化(有機物の蓄積)状況を確認するため、COD 注2)を選定した。 ・水産用水基準に準拠し、COD20mg/g 以上を底質の悪化海域とした。 浅場(藻場・ 昭和 30 年代以 ・浅場(藻場・干潟)の消失箇所を昭和 30 年代以降に埋め立てが行なわれた 干潟) の 消 降の埋め立て 箇所と判断し、昭和 30 年代の海図と現在の海図の比較より浅場の消失箇所を 抽出した。 箇所 失 底質 >20mg/g データ 出典 1) 2) 1) 3) 2) 3.1.4 瀬戸内海の法的規制・海面利用の現状 海域環境修復ニーズを把握するにあたって、各湾灘における社会的な条件として、法的規制や海面利用 状況の把握を行なった。 法的規制については海洋環境修復事業を直接的に禁止する規制はないものの、海域管理者の許可や承 諾が必要になる。また、海面の利用状況については、瀬戸内海に求められる社会的な機能として、水産利 用の状況と海水浴に代表される親水利用の状況について整理を行なった。 注1)DO (Dissolved Oxygen) ・・・・ 海水中に溶けている酸素(溶存酸素)の濃度。DO が低くなると海水中の生物の生息に悪影響を及ぼす。 注2)COD (Chemical Oxygen Demand) ・・・ 水中または底泥中の有機物を酸化するために必要な酸素量。有機汚濁の程度を表す指標。 出典1)閉鎖性海域中長期ビジョン報告書、環境省、平成 22 年 3 月. 出典2)閉鎖性水域の海域別対策調査、中国経済産業局、平成 17 年 3 月. 出典3)平成 21 年度 瀬戸内海の環境保全 資料集、(社)瀬戸内海環境保全協会. 3-3 第3章 瀬戸内海の環境修復ニーズ調査 なお、法的規制については、表- 3.2 に示す規制または管理区域について、また、海面の利用状況に ついては、表- 3.3 に示す水産利用の状況と親水利用(海水浴場)を整理した。 表- 3.2 瀬戸内海における法的規制項目の調査内容 項目 適用される法規制等 国立・国定公園 国立公園計画 保護水面 水産資源保護法 法的規制等の内容等 ・国立・国定公園では、国立公園計画に基づき管理が行なわれてお り、開発等の行為を行なう場合には、国の認可が必要となる。 港湾区域 港湾法 ・港湾区域は港湾法に基づき、各都道府県による管理が行なわれて おり、開発等の行為を行なう場合には港湾管理者の許可が必要とな る。 特定海域を有する 瀬戸内海環境保全特別 ・瀬戸内海環境保全特別措置法で設定された特定海域の海岸では、 海岸 措置法 環境保全に資さない埋め立てを極力回避することが明記されている。 ・保護水面は都道府県知事もしくは農林水産大臣によって管理され、 保護水面における開発行為等には管理者の許可が必要となる。 表- 3.3 海面利用状況の調査内容 項目 主要海水浴場 水産利用状況 設定根拠等 ・親水利用に関わる代表的な項目として、海水浴場の存在状 況を整理した。 漁船漁業漁獲量 魚類養殖漁獲量 のり養殖漁獲量 かき養殖漁獲量 ・各海域における水産利用状況を把握するため、漁獲量の 推移および空間分布を整理した。 ・漁獲量の多い海域の抽出は、瀬戸内海における単位面積 当たりの最大漁獲量の 75%を上回る箇所を漁獲が多い海域 と定義して抽出を行なった。 データ 出典 3) 4)、5) 6) 再生産(産卵、稚仔魚の 生育)場として重要な海 域 3.1.5 環境修復事業等の実施例 環境修復事業については、近年の瀬戸内海における環境修復ニーズを把握するため、過去5年間に実 施された環境修復事業の実施例を整理した7)。また、平成 22 年度時点で各湾灘において策定・実施されて いる修復計画を整理した。 出典4)漁場環境評価メッシュ図-瀬戸内海-,水産庁,平成 11 年 3 月. 同-豊後水道-,水産庁,平成 13 年 3 月. 出典5)瀬戸内海環境情報センターHP【http://seto-eicweb.pa.cgr.mlit.go.jp/env/theme/a_weight2.html#】,2010 年 8 月. 出典6)漁場環境のあり方-瀬戸内海(方法論)-.(社)日本水産資源保護境界.平成 13 年 3 月. 出典7)瀬戸内海環境シンポジウム in 広島 資料,国土交通省中国地方整備局,平成 21 年 12 月. 3-4 第3章 瀬戸内海の環境修復ニーズ調査 3.2 調査結果 3.2.1 瀬戸内海の環境の現状と課題 瀬戸内海の環境の現状と課題について、湾灘ごとに図- 3.3 に示した。広島湾奥部、大阪湾奥部、周防灘 奥部、別府湾等は瀬戸内海の中で赤潮、貧酸素の発生、底質の悪化といった富栄養化に伴う環境悪化や 浅場の消失が顕著に見られる海域であり、貧酸素や赤潮の発生抑制、底質の改善、浅場の再生といった多 面的な対策が望まれる。一方で、備讃瀬戸や備後灘、安芸灘といった瀬戸内海中部付近では赤潮や貧酸 素の発生は見られないものの、浅場の消失箇所が多くみられ、浅場の再生が望まれる。 3.2.2 瀬戸内海の法的規制・海面利用の現状 (1) 瀬戸内海における法的規制の現状 瀬戸内海における法的規制の現状を図- 3.4 に示した。瀬戸内海の各湾灘には港湾区域や国立公園が 存在しており、海洋環境修復事業の実施にあたっては、表- 3.2 に示す管理者の許可や申請が必要となる。 なお、海洋環境修復事業の実施を直接的に禁止する規制はなく、各管理区域の管理者との協議等により、 事業実施の可否が決定される。 (2) 瀬戸内海における海面利用の現状 瀬戸内海における水産利用および親水利用の状況を図- 3.5 に、各湾灘における漁獲量の変遷を図- 3.6 に示した。 瀬戸内海の大阪湾や播磨灘が位置する瀬戸内海東部付近から広島湾までの瀬戸内海中央部付近まで は、漁船漁獲量が高く、水産資源の場として重要である。一方で、備讃瀬戸~周防灘までの海域は水産資 源の再生産の場として重要であり、藻場や干潟といった浅場の存在が重要になると考えられる。特に、備讃 瀬戸・備後灘付近の海域は二枚貝類の漁獲の減少も大きく、浅場の再生が重要と考えられる海域である。ま た、播磨灘・備讃瀬戸ではのり養殖が、広島湾ではかき養殖が盛んに行われており、環境修復事業の実施 にあたってはこれらの水産資源との兼ね合いを勘案する必要がある。 海水浴場は大阪湾や播磨灘といった瀬戸内海東部付近および安芸灘、周防灘、伊予灘等の西部付近に 多く、親水利用の側面からも良好な水質が求められる。なお、環境省の海水浴場の水質基準では海水浴に 適した透明度は 1m以上であり、現時点では、ほとんどの海水浴場が存在する海域でこの基準は満たされて いる。 3-5 3-6 データ出典)夏季底層 DO、透明度:閉鎖性海域中長期ビジョン報告書、環境省、平成 22 年 3 月. 赤潮発生状況:閉鎖性水域の海域別対策調査、中国経済産業局、平成 17 年 3 月. 底質:平成 21 年度 瀬戸内海の環境保全 資料集、(社)瀬戸内海環境保全協会. 浅場の消失箇所:平成 14 年および昭和 30 年 海図をもとに作成. 第3章 瀬戸内海の環境修復ニーズ調査 図- 3.3 瀬戸内海の環境の現状と課題に関する調査結果 3-7 データ出典)港湾区域:各県資料 国立・国定公園、特定海域を有する海岸:平成 21 年度 瀬戸内海の環境保全 資料集、(社)瀬戸内海環境保全協会. 保護水面:漁場環境評価メッシュ図-瀬戸内海-,水産庁,平成 11 年 3 月. 同-豊後水道-,水産庁,平成 13 年 3 月. 第3章 瀬戸内海の環境修復ニーズ調査 図- 3.4 瀬戸内海の法的規制の現状 3-8 データ出典)主要海水浴場:平成 21 年度 瀬戸内海の環境保全 資料集、(社)瀬戸内海環境保全協会. 水産利用状況:漁場環境評価メッシュ図-瀬戸内海-,水産庁,平成 11 年 3 月. 同-豊後水道-,水産庁,平成 13 年 3 月.漁場環境のあり方-瀬戸内海(方法論)-.(社)日本水産資源保護境界.平成 13 年 3 月. 第3章 瀬戸内海の環境修復ニーズ調査 図- 3.5 瀬戸内海の海面利用の現状 3-9 データ出典)瀬戸内海環境情報センターHP【http://seto-eicweb.pa.cgr.mlit.go.jp/env/theme/a_weight2.html#】,2010 年 8 月. 第3章 瀬戸内海の環境修復ニーズ調査 図- 3.6 瀬戸内海における漁獲量の変遷 第3章 瀬戸内海の環境修復ニーズ調査 3.2.3 瀬戸内海における環境修復事業等の実施例 図- 3.7 に瀬戸内海における環境修復活動の実施状況を、表- 3.4 に瀬戸内海における環境修復計画の 概要と実施状況を示した。環境修復事業については、瀬戸内海の東部付近(大阪湾、紀伊水道、播磨灘)で は藻場の再生事業が多く行なわれており、中央部~西部(備讃瀬戸~周防灘)では覆砂や干潟の耕転とい った底質改良に関わる事業が多く実施されている。 また、瀬戸内海全域や各湾灘において、国や県の環境修復計画が策定・実施されており、底質や漁場の 改善、浅場の修復といった事業が計画されている。 3-10 3-11 データ出典)瀬戸内海環境シンポジウム in 広島 資料,国土交通省中国地方整備局,平成 21 年 12 月. 各県および環境修復計画等の HP. 第3章 瀬戸内海の環境修復ニーズ調査 図- 3.7 瀬戸内海における環境修復事業等の実施例 表- 3.4 瀬戸内海における海洋環境修復計画の実施状況 3-12 第3章 瀬戸内海の環境修復ニーズ調査 第3章 瀬戸内海の環境修復ニーズ調査 3.3 瀬戸内海における環境修復ニーズの整理 以上の検討を踏まえ、瀬戸内海における環境修復ニーズ(修復の必要性があると考えられる場所と修復の 内容)を整理すると、図- 3.8 に示すとおりである。 3-13 ⑧周防灘北部沿岸 (海洋環境の現状と課題) ○赤潮の頻発。底質も悪化 ○浅場はほぼ全域で消失。 (法的規制・海面の利用状況) ○港湾区域が設定。 ○過去と比較し、貝類の漁獲は激減。 ○生物の再生産に重要な海域とされてい る。 (環境修復活動の実施状況) ○瀬戸内海環境修復計画の対象海域であ り、藻場の再生事業を実施。 ⑦広島湾奥部 (海洋環境の現状と課題) ○貧酸素・赤潮が頻発。底質も悪化。 ○浅場はほぼ全域で消失。 (法的規制・海面の利用状況) ○港湾区域、特定海域を有する海岸が設定。 ○漁船漁業、かき養殖が盛んに実施。 (環境修復事業の実施状況) ○底質改善事業、干潟の再生事業を実施。 ○広島湾再生行動計画が策定され、各種施策 を展開。 ④備讃瀬戸北部沿岸~安芸灘沿岸 (海洋環境の現状と課題) ○水質、底質は比較的良好。 ○一部の沿岸部で透明度が低下 ○浅場の消失箇所が存在。 (法的規制・海面の利用状況) ○漁船漁業等の漁獲量は多いものの、過去と比較して貝類の漁獲は激減。 (環境修復事業の実施状況) ○備讃瀬戸修復計画により、海砂採取跡地の埋め戻しを実施。 ○瀬戸内海修復計画の対象海域であり、干潟の再生事業を実施。 ○岡山県により水産業の振興計画を策定。 ②播磨灘北部沿岸 (海洋環境の現状と課題) ○赤潮の発生および透明度の低下 ○浅場の消失箇所が多い。 ○漁船漁業やのり養殖の実施。 (法的規制・海面の利用状況) ○一部の沿岸に港湾区域および特定海域を有する海岸が設定。 ○前面海域は、漁船漁業の漁獲が高く好漁場であるが、近年漁獲量は 減少傾向。 ○のり養殖の実施。 ○特に東部の海岸沿いには海水浴場が多く存在。 (環境修復事業の実施状況) ○近年、大規模な藻場の修復事業等は未実施。 ①大阪湾奥部 播磨灘 大阪湾 備讃瀬戸 (海洋環境の現状と課題) ○貧酸素、赤潮が頻発。底質も悪化。 ○浅場はほぼ全域で消失。 (法的規制・海面の利用状況) ○港湾区域に位置しているものの、漁船漁業も活発。 (環境修復活動の実施状況) ○一部海岸で藻場の再生事業、底質の改善事業を実施。 ○大阪湾再生行動計画が策定され、各種施策を展開。 備後灘 安芸灘 燧灘 紀伊水道 3-14 ⑤備讃瀬戸南部沿岸~燧灘南部沿岸 ⑥燧灘南西部沿岸 (海洋環境の現状と課題) ○水質、底質の悪化は顕著ではない。 ○一部の沿岸部で透明度が低下。が見られる。 ○浅場の消失箇所が存在。 (法的規制・海面の利用状況) ○港湾区域および特定海域を有する海岸が設定。 ○漁船漁業等の漁獲量は多いものの、過去と比較し て貝類の漁獲は激減。 (環境修復活動の実施状況) ○愛媛県により水産振興計画が策定。 ⑩伊予灘西部(別府湾) (海洋環境の現状と課題) ○底質が悪化。 ○浅場はほぼ全域で消失。 (法的規制・海面の利用状況) ○自然公園、港湾区域が設定。 ○北部海岸は再生産の場として重要とされている。 (環境修復活動の実施状況) ○漁場環境改善を目的に堆積物除去や海底耕運を実施。 図- 3.8 瀬戸内海における環境修復ニーズの整理 ③播磨灘南部沿岸~紀伊水道北部沿岸 (海洋環境の現状と課題) ○水質、底質の顕著な悪化はないが、浅場の消失箇所が 多い。 (法的規制・海面利用状況の現状) ○魚類の再生産の場として重要とされている。 (環境修復活動の実施状況) ○瀬戸内海修復計画の対象海域であり、藻場の再生事業 を多く実施。 第3章 瀬戸内海の環境修復ニーズ調査 ⑨周防灘奥部 (海洋環境の現状と課題) ○貧酸素、赤潮が頻発。底質も悪化。 ○浅場はほぼ全域で消失。 (法的規制・海面の利用状況) ○港湾区域が多く存在。 ○過去と比較し、貝類の漁獲は激減。 ○生物の再生産に重要な海域とされている。 (環境修復活動の実施状況) ○漁場環境の修復を目的に覆砂を実施。 ○福岡県により水産振興計画が策定。 (海洋環境の現状と課題) ○水質・底質の悪化はほとんどない。 ○浅場が消失。 (法的規制・海面の利用状況) ○漁船漁業等の漁獲量は多いものの、過去と比 較して貝類の漁獲は激減。 (環境修復活動の実施状況) ○瀬戸内海修復計画の対象海域であり、藻場の 再生事業を実施。 ○香川県により水産振興計画が策定。 第3章 瀬戸内海の環境修復ニーズ調査 3.4 瀬戸内海における環境修復ニーズ(ヒアリング結果) 港湾、水産行政関係者等へのヒアリングに基づき把握した瀬戸内海における海域環境修復ニーズと、それ ぞれのニーズに対する鉄鋼スラグ等の副産物の利用可能性の検討結果について、表- 3.5 のとおり整理した。 ヒアリング結果によると、漁業関係者が鉄鋼スラグ等の副産物を海域利用することに対して、抵抗感を持って いるという直接的な例は聞かれなかった。しかし、漁業者の間でも温度差があり、安全性については、漁業者 に対し丁寧に説明していく必要があるとの意見が多かった。 表- 3.5 瀬戸内海における海域環境修復ニーズと、それぞれのニーズに対する鉄鋼スラグ等の 副産物の利用可能性 項 目 養殖漁場環 境の修復 瀬戸内海における海域環境修復 ニーズ ■かき養殖漁場の底質改善(かきの擬 糞が海底に堆積することで、夏季に底 質環境が悪化している) ■アサリや魚類養殖場などの限られた 区画での環境修復(環境修復による収 穫量の増加などの効果が比較的現れ やすい) 鉄鋼スラグ等の副産物 課題等 の利用可能性 ■鉄鋼スラグ等の副産物 ■ランニングコストがかかる技術は漁業者の を利用した底質改善技 受け入れが困難(イニシャルコストに対する補 術・製品の開発 助金が付く可能性があるが、ランニングコスト に対する補助制度は無い)。 ■アサリ漁場(干潟等)に おいて歩留りを向上させ ■底質改善など広範囲の事業は、県・市レベ るための技術・製品の開 ルでの事業実施が困難。 発 ■かき養殖にとって重要な珪藻を供給 ■鉄鋼スラグ等の副産物 できるような技術 を利用した、珪藻供給技 術・製品の開発 ■赤潮被害を受けにくい網や生物の付 着が少ない網の開発など 藻場・干潟等 の 修復、浅 場造成 ■放流稚魚の定着性を向上させるため の藻場の整備 ■鉄鋼スラグ等の副産物 を利用した、藻場生育機 能の高い製品の開発 公共工事(海 域)での環境 修復機能の 付加 ■護岸の災害復旧時に、原状回復だけ ではなく、新たに藻場等の生物生息機 能を付加した護岸が整備できるような補 助制度の創設 ■鉄鋼スラグ等の副産物 を利用して、環境修復機 能を付加したコンクリート 製品等の開発 ■藻場は稚魚が成長する場であって漁獲す る場ではないので、藻場をつくっても、そこの 漁業者が直接メリットを受けない(すぐには効 ■磯焼け対策としての藻場(ガラモ場) 果が出ない)可能性があり、漁業者による投 の修復 ■鉄鋼スラグ等の副産物 資が難しい。したがって、公共事業で実施せ を利用した、低コストの浅 ざるを得ない。 ■鉄鋼スラグ等により浚渫土を改質し 場(藻場・干潟等)の造成 て、浅場造成の材料(中詰材等)へ活 技術の開発 ■これまで公共事業として実施され、漁業者 用 はせいぜい受益者負担程度であったものを、 漁業者自らが実施するような、主客転倒する 事態の受け入れは困難である。 ■沿岸部に立地する企業の民有護岸 改修にあたっての、環境修復機能を付 加した製品の利用(環境に対する付加 価値の高い製品) ■新たな製品が公共工事に採用されるため には、国交省の新技術情報提供システム (NETIS)や水産庁のマニュアル・ガイドライン など、工事に利用するための「お墨付き」を得 る必要がある。(いくら良い製品でも、公的機 関の効果確認結果や安全性評価結果が無い と公共工事には採用されない)。 ■鉄鋼スラグ等を利用した藻場造成等の実 証実験は色々行われているが、その結果を 踏まえたビジネス展開がまだ具体化していな い。 ■海域利用できる鉄鋼スラグ等の量が少ない と、鉄鋼メーカーとしてはビジネスに繋がりに くい。 3-15 第3章 瀬戸内海の環境修復ニーズ調査 3.5 鉄鋼スラグ等の海域利用に関するニュービジネスに適用可能性のある事業制度 ここでは、3.4 で整理した環境修復ニーズに対し、鉄鋼スラグ等の海域利用に関するニュービジネスに適用 できる可能性のある事業制度等を、表- 3.6 のとおり整理した。 事業制度の整理にあたっては、構想・計画段階(新技術、新材料の普及・推進を支援する制度)と、事業実 施段階での支援制度の2つの視点から整理を行った。 3-16 表- 3.6(1) 鉄鋼スラグ等の海域利用に関するニュービジネスに適用できる可能性のある事業制度等 (構想・計画段階・・・国関係) 事業制度 の種類 3-17 事 的 事業概要 適用範囲 経済産業省 地域イノベー 地域において産学官連携による事業 地域において新産業・新事業を創出し、地域経済の活性化を図 【一般型】 ション創出研究 化に直結する実用化技術開発を促進 るため、産学官の研究開発リソースの最適な組み合わせからな 新製品等の開発を目指す実用化技術の研究開発であって、 る研究体を組織し、新製品開発を目指す実用化技術の研究開 新たな需要を開拓し、地域の新産業・新事業の創出に貢献す 開発事業 することにより、新産業の創出を促 るとともに、全国的に広く波及効果が期待され、広域的なイノ し、もって地域経済の活性化を図る。 発を実施する。 ベーションを起こす可能性のある研究開発。 【地域資源活用型】 地域に根ざす技術等(地域資源)を活用した新製品等の開発 を目指す実用化技術の研究開発であって、新たな需要を開拓 し、地域の新産業・新事業の創出に貢献するとともに、都道府 県域を超えてイノベーションを起こす可能性のある研究開発。 ※農林水産物の栽培方法等のみに係る開発、ヒトクローンに 関する研究開発、臨床試験(前臨床試験を除く)を伴う研究開 発、原子力に関する研究開発等は対象とならない。 新事業活動促 進支援補助金 (地域資源活用 売れる商品づく り支援事業) 地域の中小企業等による売れる商品 づくりや地域発のブランド構築の実現 を目指し、地域経済の活性化及び地 域中小企業の振興に寄与する。 地域の優れた資源(農林水産物又は鉱工業品、鉱工業品の生 産に係る技術、観光資源)を活用した新商品・新サービスの開発 や販路開拓に取り組む中小企業者に対し、市場調査、研究開 発に係る調査分析、新商品・ 新役務の開発(試作、 研究開 発、評価等を含む)、展示会等の開催又は展示会等への出 展、知的財産に係る調査等の事業に係る経費について補助 する。 国土交通省 新技術活用シス 新技術の活用のため、新技術に関わ 「新技術活用システム」を中核とする新技術情報の収集と共有 テム る情報の共有及び提供 化、直轄工事等での試行および活用導入の手続き、効果の NETIS 検証・評価、さらなる改良と技術開発という一連の流れを体 系化 環境技術実証 事業 普及が進んでいない先進的環境技 術について、 その環境保全効果等 を第三者機関が客観的に実証(水 質総量規制の着実な推進を図るとと もに、海域そのものを直接浄化する技 術や生物生息環境を改善する技術の 開発と普及を図る。) 水産庁 藻場・干潟等の 保全の取組へ の支援 (環境・生態系 保全活動支援 対策) 水産物の安全供給と公益的機能の維 藻場・干潟の保全活動を行う活動組織に対し、取組内容に応じ 持を図るため、藻場・干潟等の維持・ て交付金を交付する。 管理等の環境・生態系保全活動を 支援 例 採択基準 ○ 地域の試験研究機関(大学、公的研究機関等)と民間 高炉スラグを活用した 自己修復型新規防食 企業等が研究体を構成すること。 ○ 原則として複数の民間企業(中小企業の場合は1社で 塗装材料と工法の開発 も可)を含む研究体であること。 ○ 提案は管理法人が行うこと。 補助対象者は、中小企業による地域産業資源を活用した 事業活動の促進に関する法律(平成19年法律第39号。 以下「中小企業地域資源活用促進法」という。)第6条第1 項に基づく地域産業資源活用事業計画(以下「認定計画」 という。)の認定を受けた同法第2条第1項に規定する中小 企業者 公共工事等における施工実績の有無に関わらず『従来技術より活用の効果が高い技術』または『従来にない画期的な技 術』で実用化されているものを対象とする。 ここで、「活用の効果が高い技術」とは、当該技術が「経済性」「安全性」「耐久性」「品質・出来形」「施工性」「周辺環境に 与える影響」「課題解決への有効性」等の評価項目のいずれかで従来技術より優れている技術を指す。 地場産業を中心とした 取り組みが主 (スラグ関連の実績は 無し) 鉄鋼スラグ水和固化体 製造技術(登録 No.SKK-030001-A) 等が既に登録済み。 転炉系製鋼スラグ製品 による沿岸域の環境改 善技術(実証番号 No.090-0901) 製鋼スラグを用いた藻 場造成・水質改善技術 (実証番号No.0900902) 等が既に実証済み。 平成22年度の対象技術分野 ・小規模事業場向け有機性排水処理技術分野 ・自然地域トイレし尿処理技術分野 ・湖沼等水質浄化技術分野 ・閉鎖性海域における水環境改善技術分野 ・ヒートアイランド対策技術分野(建築物外皮による空調負荷 低減等技術) 本事業が対象としている閉鎖性海域における水環境改善 技術分野の対象となる技術とは、以下のいずれかの効果 を発揮することを主たる目的とする技術全般を指す。 1.水質及び底質を現地で改善する技術 [1] 「水質の改善」は、海域に関する生活環境項目の改 善とする。 [2] 「底質の改善」は、有機物、硫化物などの改善及び窒 素・リンの溶出抑制とする。 2.生物生息環境の改善に資する、海域に直接適用可能な 技術 [1] 藻場・干潟の保全・再生技術 [2] 貧酸素水塊・青潮の発生、赤潮の発生等、生物生息 環境の悪化をもたらす現象を抑制・解消する技術 [3] その他、生物生息環境を改善する技術 【対象者】 漁業者・漁業協同組合・漁業協同組合連合会・漁業集落・漁 業生産組合・水産業協同組合・漁業団体・一般の事業者・ NPO法人 山口県椹野川 補助率:定額 補助金額: 取組内容に応じて交付(活動組織当たり200万 円~1,500万円)程度を想定 (1)市町村と協定を締結し、協定に基づいた保全活動を5ヵ 年実施する活動組織が対象 (2)藻場、干潟、浅場、ヨシ帯、サンゴ礁及びこれらと同様 に公益的機能を有すると都道府県知事が認める資源が対 象 第3章 瀬戸内海の環境修復ニーズ調査 当該年度の「環境技術実証事業実施要領」に基づいて実施さ れ、国負担体制と手数料徴収体制の2種類の体制で運営する。 国負担体制では、対象技術の試験実施場所への持ち込み・設 置、現場で実証試験を行う場合の対象技術の運転、試験終了後 の対象技術の撤去・返送に要する費用は実証申請者の負担と し、対象技術の環境保全効果の測定その他の費用は環境省の 負担とする。 手数料体制(実証システムが確立した技術分野)では、上記の申 請者の負担に加え、実証試験実施に係る実費(実証機関に発生 する測定・分析等の費用、人件費、消耗品費及び旅費)を手数 料として申請者が負担する。 環境省 補助対象事業は、認定計画に基づき補助対象者が行う市場 調査、研究開発に係る調査分析、新商品・新役務の開発(試 作、研究開発、評価等を含む。)、展示会等の開催又は展示 会等への出展(以下「展示会事業」という。)、知的財産に係る 調査等の事業 ) 新 技 術 ・ 新 材 料 の 普 及 ・ 推 進 を 支 援 す る 制 度 : 国 関 係 事業制度 目 ( 構 想 ・ 計 画 段 階 事業の内容 関係機関 表- 3.6 (2) 鉄鋼スラグ等の海域利用に関するニュービジネスに適用できる可能性のある事業制度等 (構想・計画段階・・・自治体・法人関係) 事業制度 の種類 事業の内容 関係機関 事業制度 事 目 広島県 岡山県 事業概要 適用範囲 3-18 登録基準のうち、品目基準が設定されていないもので共通基準 に適合する製品は、広島県登録リサイクル製品(第一種)、共通 基準及び品目基準の両方に適合する製品は、広島県登録リサ イクル製品(第二種)としている。 共通基準:製品又は、その原材料に使用する廃棄物の安全性に 関する基準 品目基準:品目ごとに設定された製品としての品質に関する基 準(23品目) おかやまNetas 新たに開発された特徴のあるリサイ 県内で開発された特徴のあるリサイクル素材・製品や、リサイク おかやま新環 クル素材又は製品、若しくはリサイ ル素材を活用した技術等について、ユーザーサイドの「採用実績 境技術アセスメ クル素材を活用した技術等(以下 が無い」「長年使用した素材の方が安心」などから生じる商業化 ントシステム 「新素材等」という。 )について、 公 に向けた課題を克服するため、公共工事や各試験場で試験的に 共サイドで試験的に利用及び評価 利用・評価検証する。 することにより、 環境ビジネスの拡 大と循環型社会の形成を促進する。 対象製品は、以下の要件を満たす製品である。 鉄鋼スラグ 1. 県内で生産等をされるリサイクル製品であること。 等が既に登録されてい 2. その全部又は、一部に県内で発生する再生資源等を用いて生産等をされるリサイクル製品であること。 る。 3. 申請時において既に県内で販売されているリサイクル製品であること。 4. 当該リサイクル製品の使用又は、購入を推奨することが県内における資源の循環的な利用及び廃棄物の減量化のため に適当であると認められること。 5. 登録基準を満たしていること。 岡山県エコ製品 認定した製品については、価格、用 認定制度 途等を考慮の上、優先して使用する よう努めるなどその利用促進を図 る。 1 応募要件 (1) 県内の産業廃棄物を原料として活用しているもの (2) 機能性又は価格等について、既存の素材、製品又は技術 等と比較して特徴があり、市場性が見込まれるもの (3) 安全性に関する法令基準を満たしていること (4) 地方公共団体の公共工事で利用可能なものであること、 又は岡山県農林水産総合センターで試験可能なものであるこ と (5) 公共分野での受注実績が無い又は少ないこと 2 応募資格者 (1) 県内に主たる事業所を構える者 (2) 新素材等を自ら開発し、かつ県内で生産する者(共同開発 者との共同応募を含む) 鉄鋼スラグ再生路盤材 【判断基準の区分】 等が既に認定されてい ・循環資源使用率 る。 品目の細区分ごとに定める率の循環資源を使用 ・品質に係る基準 JIS規格、県土木工事共通仕様書等公的な規格に適合又 は準拠 ・安全性の基準 特管産廃等を不使用、土壌環境基準に適合等 ・その他 生活環境の保全上十分配慮された事業場で製造された製 品等 対象製品は、以下の要件を満たす製品である。 1. 原則として県内で発生する循環資源を利用し、県内で製造 加工されること。 2. その普及が廃棄物等の発生抑制とリサイクルの推進に効 果を有すると認められること。 3. 生活環境の保全のために必要な措置が講じられている事 業場において製造加工されること。 4. 認定の申請時において既に県内で販売されており、又は申 請から6ケ月以内に県内で販売されることが確実であること。 5. 認定基準に適合していること。 【認定基準】 ・安全性への配慮 次の基準を満たす安全性に配慮したものであること。 ①特別管理(一般・産業)廃棄物を原材料としていないこ と。 ②環境基本法(平成5年法律第91号)に基づく土壌の汚染 に係る環境基準に適合していること。 ・規格等 次のいずれかの規格に適合していること。またはこれに準 じていること。 ①日本工業規格(JIS) ②エコマーク認定基準 ③山口県土木工事共通仕様書(山口県土木建築部) ④その他公的な機関が定める品質等の基準 ・その他 品目ごとに別に定める率の循環資源を、部品その他製品 の一部として使用、または製品の原材料として利用してい ること。 広島県リサイク 県内におけるリサイクル製品の利用 ル製品登録制 促進を通じて、資源の循環的な利 度 用,廃棄物の減量化並びにリサイク ル産業の育成を図る。 ○応募者は自ら提案する素材・技術等を開発・生産し、かつ県内に主たる事業所を有する者に限る。大学等の研究機関や 共同開発企業との共同応募も可能。 ○素材・技術等について、以下の条件をクリアする必要がある。 ・県内の産業廃棄物を活用していること ・機能性又はコスト等に特徴があり、市場性を有すること ・安全性に関する法令基準を満たしていること ・公共分野での受注実績が無いまたは少ないこと 山口県 県内で現に製造・販売されている使用を促進すべき再生品(対 象品目)であって、県が定める認定基準を満たした次の製品で、 認定した製品については、価格、用途等を考慮の上、優先して 使用するよう努めるなどその利用促進を図る。 (1) 紙類 (2) 文具類 (3) 機器類 (4) 制服等 (5) 資材(公共工 事関係資材) (6) その他 全国漁業協 鉄鋼スラグ製品 (1)社団法人全国水産技術者協会(以下、全水技協)の漁場造成・再生用資器材の利用技術認定・登録 申請者が漁場の造成・再生を目的として開発した製品 同組合連合 安全確認認証 申請者が漁場の造成・再生を目的として開発した製品に対し、全水技協の設置した有識者委員会「利 用技術評価委員会」が、その製品の魚介類に対する安全性、生産された魚介類等の食品としての安全 制度 会 性、製品の有用性などについて評価し、妥当であるとの評価を得た製品を全水技協が、全国漁業協同 (関連機関: 組合連合会(以下、全漁連)の製品安全確認認証制度の対象製品として認定・登録する。 社団法人全 (2)全漁連の製品安全確認認証制度 国水産技術 本認証制度は、申請した製品に対する全水技協の認定・登録をもとに、 全漁連が魚介類への安全 者協会) 性、食品安全性を確認し、 より高い安全性を担保しようとするもの。 鉄鋼スラグ水和固化体 を用いた河川根固めブ ロック 鉄鋼スラグ炭酸固化体 および鉄鋼スラグ水和 固化体を用いた海洋藻 場造成ブロック が既に採択済み。 スラグ再生資材(10製 品) 等が既に認定されてい る。 ビバリーブロック(鉄鋼 スラグ水和固化体製ブ ロック) ビバリーロック(鉄鋼ス ラグ水和固化体製人工 石) 等が既に認定されてい る。 第3章 瀬戸内海の環境修復ニーズ調査 リサイクル製品 県内で製造されるリサイクル製品を 認定された製品は 認定普及制度 「山口県認定リサイクル製品」として ・認定マーク「くるりん」の表示ができる 認定し、リサイクル製品の利用推進 ・県のホームページやパンフレットに掲載される や県内リサイクル産業の育成等を 図る。 ) 新 技 術 ・ 新 材 料 の 普 及 ・ 推 進 を 支 援 す る 制 度 : 自 治 体 ・ 法 人 関 係 例 採択基準 ( 構 想 ・ 計 画 段 階 的 表- 3.6 (3) 鉄鋼スラグ等の海域利用に関するニュービジネスに適用できる可能性のある事業制度等 (事業実施段階) 事業制度 の種類 事業の内容 関係機関 事 事業制度 目 的 事業概要 国土交通省 海域環境創造・ 閉鎖性水域における水質・底質の改 港湾区域外の一般海域において、開発保全航路等の浚渫工 自然再生事業 善や多様な生物の生息・生育環境の 事により発生する浚渫土砂を用いた覆砂の実施 (直轄港湾改修 創出 費) 3-19 事 業 実 施 段 階 自然再生事業 水産庁 水域環境保全 創造事業 一般海域(港湾区域外) 港湾区域外の一般海域においては、開発保全航路の整備に より発生した浚渫土砂を活用し、国が直轄事業(国費負担率: 10/10)により覆砂を実施 港湾区域 海水が汚染されヘドロ等の堆積した閉鎖性水域において、航 路・泊地の浚渫事業等で発生する良質な土砂を有効利用し て行う覆砂や多様な生物の生息・生育が可能となる良好な環 境の回復を目的とした海浜等の整備の実施 海域環境創造・ 自然再生等事 業(港湾環境整 備事業) 環境省 適用範囲 過去に失われた自然を積極的に取り 戻すことを通じて生態系の健全性を回 復 効用の低下している漁場の生産力の 回復や水産資源の生息場の環境改 善 国立公園に係る自然再生事業の実施 国立公園に係るもの 汚泥・ヘドロの除去、覆砂、藻場・干潟の整備等の事業及び 漁場、または漁港 漁港区域内における水質の保全等水域の環境保全のために実 施 水産系副産物 活用推進モデ ル事業 (漁港・漁場整 備事業) 貝殻等を実際に覆砂材、地盤改良 材、裏込材やコンクリート骨材等とし て漁港漁場整備事業に活用し、同時 に強度・耐久性や機能の検証を行う モデル事業を実施 1.水産系副産物を漁港施設、魚礁及び増養殖場の材料等として 漁場、または漁港 安定的に供給するために必要な調査を行い、円滑な事業の実施 のための計画の策定 2.水産系副産物を活用した漁港施設、魚礁及び増養殖場の 整備 3.漁港施設、魚礁及び増養殖場の機能上及び構造上必要な条 件を確保するために必要な調査及びこれらの検証に必要なモニ タリング 4.水産系副産物の再生利用のために必要な施設の整備 次に掲げる式により算出した額を超えない範囲において定 香川県津田湾 周防灘 めるものとする。 単年度交付限度額=Σ(Ai+Bi+Ci) Ai:分野iの基幹事業に係る当該年度の国費の額(※1) Bi:分野iの基幹事業に従属する関連社会資本整備事業に 係る当該年度の事業費×国費率(※2) Ci:分野iの基幹事業に従属する効果促進事業に係る当該 広島県広島港 年度の事業費×国費率(※3) i:基幹事業の分野 (※1)算定方法は要素事業ごとに定める。従前の交付金 事業も含め、従前の事業で適用される算定方法が基本。 (※2)1/2(ただし、国の負担又は補助について個別の法 令等に規定がある場合は、当該法令等に規定する負担の 割合又は補助の割合) (※3)1/2(ただし、国の負担又は補助について個別の法 令に規定がある場合は、当該法令に規定する負担の割合 又は補助の割合)(道路事業(従来の地域活力基盤創造 交付金事業)と一体となって実施する場合は、5.5/10(財 政力に応じて最大7/10)) 環境省直轄 ・計画事業費が1事業につき5千万円以上(市町村、漁業 協同組合等が行う場合は1千万円以上)のもの。 高知県足摺宇和海国 立公園海中公園竜串 地区 岡山県井笠地区 特定漁港漁場整備事業又は地域水産物供給基盤整備事 兵庫県丸山漁港 業、広域水産物供給基盤整備事業、漁港漁場機能高度化 事業の実施箇所であること。 漁港施設の整備にあたっては、海水交流の促進、水質の 保全又は周辺環境等への配慮を行う必要があること。 自然調和・活用型技術の集積及び普及を図る上で有効で あること。 施設整備をライフサイクルコストで検証し、経済的であるこ と。 水産系副産物の発生量が多く見込まれ、その処理に積極 大分県別府湾 的な地区又は地区が連なっていること。 本事業を実施することによって、その施設の主たる目的が 阻害されないこと。 本事業による技術の開発及び検証が、全国的な普及を図 る上で有効であること 第3章 瀬戸内海の環境修復ニーズ調査 漁港 自然調和型漁 藻場干潟生態系などの自然環境との 【自然調和型漁港づくり】 港づくり推進事 調和に配慮した構造の漁港施設整備 漁港施設の整備にあたって、良好な漁場環境を保全しつつ沿 業 の推進や、沿岸漂砂等により漁港の 岸域の高度利用を図っていくため、自然環境との調和及び周辺 泊地や航路にたい積した砂を近隣の 環境への影響を緩和するための構造物、工法等の採用、自然環 侵食海岸や貝類増殖場等へ輸送する 境への影響を緩和させる技術の集積・普及を図る。 施設整備、産業副産物の有効利用の 【サンドバイパスによる効率的な漁港整備(漁港内堆積砂活用推 観点から間伐材等を利用した魚礁の 進事業)】 設置など、地域資源を活用した効率 沿岸漂砂等により泊地や航路埋没等の対策に苦慮している漁 的な漁港漁場整備をモデル的に実施 港を対象に、ライフサイクルコストを用いた検討を行い、経済的と 判断された場合、埋没対策として、砂輸送施設(パイプライン、ベ ルトコンベア等)を整備。 【間伐材を活用した効率的な漁場整備(木材活用推進事業)】 水産生物のい蝟集や増産効果を高めるため、旱魃材等木材と 鋼材やコンクリートを組み合わせた構造の漁礁を設置し、そ の蝟集効果や耐久性等についてモニタリングを行いつつその効 果等を検証。 例 採択基準 第4章 中国地域における海洋修復関連技術シーズ調査 第4章 中国地域における海洋修復関連技術シーズ調査 4.1 調査方法 4.1.1 海洋修復関連技術シーズの調査方法 表- 4.1 に示すとおり、企業(大企業、中小企業)や研究機関の持つ技術シーズ等を対象に、文献調査を 行うとともに、必要に応じてヒアリングを行い、具体的な内容について把握した。 表- 4.1 調査対象技術シーズ 分野 調査対象 調査方法 海洋環境修復 既存資料調査及び 大企業、中小企業、研究機関 バイオマス関連 ヒアリング調査 CO2 吸収・固定 4.1.2 海洋修復関連技術シーズの分類 海洋修復関連技術シーズの分類は、図- 4.1 のとおりであり、第 3 章において整理された、“瀬戸内海にお いて環境修復の必要性があると考えられる場所及び修復内容”に対する技術は点線の枠で囲った部分に該 当する。 藻場・干潟の再生 多様な生物生 息環境の創造 生息域の創出 (人工瀬・堆、人工魚礁、浅場、築磯、藻場・海中林) 環境改善 (人工砂浜・干潟) 侵食防止 (人工岬、サンドバイパス) ※干潟の再生によって、貧酸素、赤潮・透明度、底質 の改善も期待される 海 洋 環 境 関 連 技 術 環 境 修 復 水質の改善 バクテリア・生物の利用 (人工ラグーン、リビングフィルター、バクテリア剤、礫間接触酸化) 懸濁物質除去 (ろ過、粘土鉱物の散布、傾斜板、凝集沈降剤、人工竹笹、赤潮の防除) 曝気 (エアレータ、曝気護岸、空気混相流、青潮攪乱施設) 汚濁防止 (汚濁防止膜、エアバブルカーテン、青潮の防除) 海陸の物質循環の回復 (オイルフェンス、アオサの収集・除去、干満差浄化堤、ゴミ回収装置) 構造物設置 (防波堤、突堤、離岸堤、潜堤、湧昇流堤、グチ構造物、導流堤、人工リーフ) その他 (作澪、導水、海水交換、渦流形成、循環流形成、空気潜袋) 貧酸素の改善 赤潮・透明度の改善 海域環境の静穏域化・ 安定化を図るための流 れ・波浪の制御 好気的生物化学反応の促進 (酸素供給剤、ベントスの利用) 底質の改善 資源の活用 資 源 底泥の除去・活用の推進 (汚泥の現位置処理、砕波の利用、圧密、脱水、固化剤、耕耘) 良好な底質の創造 (トレンチ、浚渫、覆砂) バイオ燃料 底質の改善 (バイオエタノールの抽出、ガス燃料の抽出) 海洋バイオマス利用 他分野(医療、水処理等)への利用 (生分解性凝集剤の製造、抗菌剤の製造、水処理剤の製造) 活 用 海藻着生の促進 (鉄鋼スラグ、石炭灰の利用) 物性の改良 (土木資材の製造) 産業副産物利用 図- 4.1 海洋修復関連技術シーズの分類1)、2) 出典1)海域環境創造事典 改訂版、沿岸域環境研究所、1996 年 9 月 出典2)海域・海岸線における環境保全・創造計画立案の指針、特定非営利活動法人大阪湾沿岸域環境創造研究センター、2002 年 2 月 4-1 第4章 中国地域における海洋修復関連技術シーズ調査 4.2 海洋修復関連技術の整理 海洋修復関連技術とその概要は表- 4.2 に示すとおりであり、瀬戸内海において環境修復の必要性があると 考えられる場所に適用可能な技術については、環境修復の内容(藻場・干潟の再生、赤潮・透明度の改善、貧 酸素の改善、底質の改善)を表中に示した。なお、環境修復の内容に直接対応しない技術については、「該当 なし」と表示した。 また、鉄鋼スラグ、石炭灰造粒物等の産業副産物を利用した藻場・干潟造成に関する技術は瀬戸内海の環 境修復内容のうち、「藻場・干潟の再生」に含めた。 表- 4.2 で整理した技術は全部で 89 件であり、そのうち 63 件が瀬戸内海の環境修復に対応可能な技術であ る。残りの 26 件については、海藻からエタノールを抽出する技術などのバイオマス有効利用や、海域環境の 保全に関連する技術である。 瀬戸内海の環境修復に適用可能な 63 件の技術のうち、9 件(No.3、7、8、13、14、15、23、53、56)はスラグ を利用する技術である。技術の用途をみると、9件のうち、7件が「藻場・干潟の再生」、2件が「底質の改善」の2 種類に分類される。また、藻場・干潟の再生に適用される 7 件の技術のうち、6 件は藻場造成基盤材料としての 利用である。 以上より、スラグ製品による海域利用の実績はまだ少なく、その用途は限られていることが分かる。 4-2 第4章 中国地域における海洋修復関連技術シーズ調査 表- 4.2(1) 海洋修復関連技術シーズ一覧表 No 1 2 対応可能な 瀬戸内海の 環境修復メ ニュー 技術分類 企業・機関名 5 6 適用事例 実証 三重県英虞湾 藻場・干潟の 干潟造成 再生 (財)三重県産業 底泥低圧処理土によ 浚渫ヘドロを低圧力で固液分離する低圧脱水処理シ 支援センター る干潟造成 ステムによって作成した脱水ケーキと海岸の砂質土を 混合して資源循環型人工干潟を造成する。 実証 三重県英虞湾 藻場・干潟の 干潟造成 再生 JFEスチール株 式会社 マリンブロック(藻場用 水砕スラグを利用した藻場・干潟用基盤材の製造技 基板)、干潟造成 術。直径80mm以下の製品を「マリンストーン」、それ より大きいものを「マリンロック」と呼んでいる。これら は石代替の鉄鋼スラグ製品である。水砕スラグを利用 した覆砂は「マリンベース」と呼んでおり、海砂の代替 材である。別途、細孔(ミクロポーラス)な海藻着生基 盤を「マリンブロック」と呼んでいる。 実用 広島県因島 藻場・干潟の 藻場造成 再生 藻場再生関連技 ペーパースラッジ焼却 ペーパースラッジ焼却灰により、含水率90%の浚渫土 術 灰を主原料とする底質 から含水率60%の固形物を得ることが可能。アマモ場 造成基盤、浅場・干潟造成基盤材料として利用可能。 安定改良剤 実証 三重県英虞湾 藻場・干潟の 藻場造成 再生 (財)三重県産業 ゾステラマットを用いた アマモの種子をヤシ繊維のマット(ゾステラマット)では 支援センター アマモ場の造成技術 さみ、金枠で固定し、それらをロープで連結し、船上か ら海域に投入し、両端を固定する。 実証 三重県英虞湾 藻場・干潟の 藻場造成 再生 函館工業高等専 炭素材混入モルタル 門学校 田中孝 被覆法 炭素繊維人工藻場 炭素材は炭素繊維、コークス、竹炭、鉄粉を用いて作 られる。炭素繊維は汚泥吸着効果に優れ、炭素繊維 人工藻の活性汚泥は海藻基盤として着生生物を増加 させる。 実証 - 藻場・干潟の 藻場造成 再生 JFEスチール株 式会社 マリンブロック(藻場用 水砕スラグを利用した藻場・干潟用基盤材の製造技 基板)、干潟造成 術。直径80mm以下の製品を「マリンストーン」、それ より大きいものを「マリンロック」と呼んでいる。これら は石代替の鉄鋼スラグ製品である。水砕スラグを利用 した覆砂は「マリンベース」と呼んでおり、海砂の代替 材である。別途、細孔(ミクロポーラス)な海藻着生基 盤を「マリンブロック」と呼んでいる。 実用 広島県因島 藻場・干潟の 藻場造成 再生 JFEスチール株 式会社 大型炭酸固化ブロック 製鋼スラグと排ガスを利用して製造する大型炭酸固 を利用した藻場造成 化ブロックは、サンゴや貝殻の主成分と同じ炭酸カル シウムからできており、海となじみがよく、藻場造成礁 技術 や港湾工事用ブロックへの利用が可能。 実用 石川県珠州市 沖合他 藻場・干潟の 藻場造成 再生 株式会社オー シャンラック 海岸構造物を利用し た藻場造成技術 大型褐藻類のカジメやホンダワラ類を、人為的に合成 木材に種苗生産して、合成木材に発生し、10~30cm に大きくなったものを、海岸構造物、突堤やり眼底の 基盤に固定して、これらを区域を藻場にする技術。 実用 - 株式会社本間組 海藻植付方式藻場造 ブロックに多年生海藻(母藻)を植えつける台を取り付 成ブロック けた藻場造成ブロックの製造技術。 実証 新潟県佐渡、 宮城県 五洋建設(株) アマモを地盤ごと採取し、生息地盤の底質を変化させ ない。地下茎が地盤に根付いている状態であるため、 移植株の流失防止と定着力の保持に威力を発揮。ま た、短期間に大規模な移植が可能であるため、適正 時期に施工可能。さらに、底生生物も一緒に移植でき る。 実用 広島県尾道糸 崎港 他 サカイオーベック 簡易なアカモク藻場造 竹、ロープなど汎用的な漁業資材、漁業手法を応用し ス株式会社 成手法 た簡易なアカモク藻場造成手法。 実証 松島湾内裡島 周辺 ビバリーシリーズは、鉄鋼スラグから溶出する鉄分、 ケイ素などのミネラルにより海藻類などの成長を促進 させることにより、減少が危惧される藻場の再生利用 のために開発されたもの。 実用 - 9 藻場・干潟の 藻場造成 10 再生 藻場・干潟の 藻場造成 再生 アマモ移植施工 11 藻場・干潟の 藻場造成 12 再生 藻場・干潟の 藻場造成 再生 13 技術開発 ステージ (株)あの津技研 ペーパースラッジ焼却 ペーパースラッジ焼却灰により、含水率90%の浚渫土 灰を主原料とする底質 から含水率60%の固形物を得ることが可能。アマモ場 造成基盤、浅場・干潟造成基盤材料として利用可能。 安定改良剤 7 8 技術概要 藻場・干潟の 干潟造成 再生 3 4 適用技術 新日本製鐵株式 ビバリーシリーズ(ビ 会社 バリーユニット、ビバ リーボックス、ビバリー ブロック、ビバリーロッ ク、ビバリーグラベル、 ビバリーサンド) 4-3 第4章 中国地域における海洋修復関連技術シーズ調査 表- 4.2 (2) 海洋修復関連技術シーズ一覧表 No 対応可能な 瀬戸内海の 環境修復メ ニュー 技術開発 ステージ 適用事例 新日本製鐵株式 転炉系製鋼スラグ製 転炉系製鋼スラグ製品による軟弱浚渫土の強度向上 会社、JFEスチー 品による沿岸域の環 効果と鉄分の供給による藻場造成技術の複合効果に ル株式会社 境改善技術 よる生物生息環境の改善。 実証 東京都城南島 藻場・干潟の 藻場造成 再生 新日本製鐵株式 製鋼スラグを用いた藻 製鋼スラグと浚渫土の混合材を浅場造成への基盤と 会社、JFEスチー 場造成・水質改善技 して利用。鉄分等のミネラルの供給及び硫化水素の ル株式会社 術 溶出抑制効果によるDOの回復を通じて、これらの複 合効果による生物生息環境を改善する。 実証 川崎港東扇島 入り江、川崎 港浅野運河 藻場・干潟の 藻場造成 再生 大成建設(株) アマモ場の海底に移植用マットを設置し、マット上にア マモ種子が落下・発芽することによりマットにアマモが 定着し、このマットを移設することでアマモ移植を完了 する。播種・株植が不要なことから既存のアマモ場に ダメージを与えず、かつ、効率的にアマモ移植を実施 する方法 実証 三重県英虞湾 藻場・干潟の 藻場造成 再生 中部電力株式会 株分けによるアマモ種 水温と光条件及び付着物等を管理した陸上水槽にお 社エネルギー応 苗の大量生産と種苗 ける移植用アマモ種苗の育成と生分解性ヤシノミ繊維 用研究所 移植によるアマモ場造 マットを活用したアマモ種苗の移植定着による生物生 成技術 息環境の創造 実証 三重県津市御 殿場海岸 藻場・干潟の 藻場造成 再生 東洋建設(株) アマモ場造成技術播 アマモ種子をヤシマットや生分解性不織布、菱形金網 種シート法 で挟み込んだ「播種シート(アマモシート)」を船上から 一気に投下し、展張する「アマモシートによるアマモ造 成法」 実用 - 藻場・干潟の 藻場造成 再生 東洋建設(株) 岩礁性藻場造成技術 REALブロックとは、大量に発生する貝殻やカキ殻を細 REALブロック かく粉砕し、コンクリートブロックの構成材として活用し た藻礁ブロックであり、ポーラスな表面形状を有するこ とによって、海藻が着定するのに適している。ブロック の形状を工夫することによって、浮泥の溜まりにくい構 造とすることも可能。 実用 大分県別府 湾、熊本県八 代湾築島、宮 城県女川湾 他 藻場・干潟の 藻場造成 再生 東洋建設(株) 炭基盤材海藻育成装 炭生成物の平面基盤を基質として利用し、藻場を造成 置 する。海藻着生基盤材は、ポーラスかつ扱いやすい材 料として炭生成物を使用する。 実証 松島湾内裡島 周辺 藻場・干潟の 藻場造成 再生 石田工業(株) 広域藻場造成工法 大型海藻を対象に、長柱型藻礁を海底に適切配置 し、立体的な海の森を作るもので、かつ種苗生産した 海藻を移植し、高い効果を永続的に発揮する技術 実用 - 藻場・干潟の 藻場造成 再生 (株)新笠戸ドック 鋼製藻礁 設置海域の条件(地形、土質)に合わせ、大きさや高 さも自由に設計可能。特にシルト質の海域を漁場化す ることが可能。鋼製のため鉄イオンによる藻礁効果が 大きい 実用 - 藻場・干潟の 藻場造成 再生 ランデス(株) 高炉スラグと製鋼スラグを主材料にし、必要に応じて フライアッシュなども利用する資源循環型のコンクリー ト代替材料。含有する鉄分により生物付着性に優れ ている。このため、藻場造成、人工漁礁などの環境修 復に適する。 実用 岡山県新見市 神代川、岡山 県牛窓港他 藻場・干潟の その他 再生 海洋建設株式会 人工中層海底 社 海域の底層が貧酸素状態にあっても中層ではある程 度、酸素濃度が高い。その注相ニ貝殻を使用した生 物培養基質を取り付けた人工中層海底を設置するこ とによって、中層域に生物を生息させる。 実用 兵庫県芦屋市 南芦屋浜、広 島県江田島湾 藻場・干潟の その他 再生 海洋建設株式会 貝殻魚礁JFシェル 社 ナース カキ、ホタテ、アコヤなどの貝殻を通水性のケースに 充填してシェルナース基質とする。そのシェルナース 基質をパネル上に組み立てて、魚礁等の構造物(JF シェルナース)として海底に設置する。シェルナース基 質の貝殻の隙間には貝類、多毛類(ゴカイ等)、甲殻 類などの多くの固着・潜入動物が生息するようにな り、海水中の有機懸濁物が分解される。また、シェル ナース基質には海藻も着生する。 実用 - 藻場・干潟の その他 再生 東亜建設工業 (株) 護岸の一部を利用して、人工干潟やタイドプールなど を提供するものであり、小規模であっても多様な生物 の生息空間を作ることが可能。 実用 千葉港葛南中 央地区岸壁 技術分類 藻場・干潟の 藻場造成 14 再生 15 企業・機関名 適用技術 アマモ移植工法 16 17 18 19 20 21 22 鉄鋼スラグ水和固化 体 23 24 25 26 生物共生護岸 技術概要 4-4 第4章 中国地域における海洋修復関連技術シーズ調査 表- 4.2 (3) 海洋修復関連技術シーズ一覧表 No 対応可能な 瀬戸内海の 環境修復メ ニュー 技術分類 企業・機関名 赤潮・透明度 海水交換の 愛媛大学 の改善 促進 適用技術 技術概要 海水交換促進型防波 異吃水2重壁式防波堤に没水平板を設けた工法。本 堤 工法は波動エネルギーを効率的かつ効果的に渦流等 のエネルギーに変換するもので、有意な大きさの沖向 き平均流を生成できる。これにより、港内の水を沖に 排出するとともに、前面垂下版での鉛直混合による底 層への酸素供給も可能となる。 技術開発 ステージ 適用事例 実用 大分県 他 防波堤を一部投下構造とすることで、潮汐により形成 される循環流を制御する工法。 実証 - 赤潮・透明度 海水交換の 株式会社マリン 富栄養化した内湾域 緩やかな噴流による乱流混合によって異なる水深の の改善 促進 技研 における成層解消並 停滞水塊同士を不可逆的に混合させて持続的に3次 びに水産資源の生産 元的な海水循環を促進すると共に、底泥を巻き上げ 性高揚と安定維持の ず、悪臭を海上に発散させることなく、海面下の負荷 29 栄養分を有効利用しつつ、有機汚濁物質の酸化・分 技術 解促進を通じて内湾の水質・底質環境を持続的に改 善させる。 実用 - 赤潮・透明度 海水交換の 五洋建設(株) 30 の改善 促進 スリットケーソン 実用 - 赤潮・透明度 海水交換の 五洋建設(株) 31 の改善 促進 うみすまし(可搬式水 海域の表層の水を底層に吐き出すことにより水域の 流発生装置) 停滞や海底の貧酸素状態を解消する技術。 実証 佐賀県伊万里 東京湾 赤潮・透明度 海水交換の 大成建設(株) 促進 32 の改善 閉鎖性水域の海水交 湾口に突起状の構造物(剥離渦発生構造物)を設置 換工法 することで、湾内に大きな循環流を発生させ、湾内の 海水交換を高める工法。 実用 室内実験 27 赤潮・透明度 海水交換の 株式会社大林組 部分透過型防波堤 28 の改善 促進 赤潮・透明度 水質浄化 の改善 (株)フジタ 汽水域におけるヨシ原 汽水域において減少しつつあるヨシ原を復元、あるい の復元・創造技術 は新たに創出することにより、水辺の生態系の復元・ 創造、景観等のアメニティ向上、水質浄化機能の向上 を図る。 実用 静岡県浜名湖 松見ヶ浦今川 河口 赤潮・透明度 水質浄化 の改善 (株)フジタ カキ殻による閉鎖性 水域浄化工法 カキ殻を有効利用して閉鎖性水域の水質と底質を浄 化する技術。 カキ殻フィルター工法による水質浄化とカキ殻覆砂工 法による底質改善のコンビネーション。 実用 - 赤潮・透明度 水質浄化 の改善 青木マリーン (株) 海水浄化船 水質浄化船による直接浄化。海水中からSSで90%、 CODで30%の汚濁物質を取り出して飽和酸素量に近 い状態で海域に戻す技術。海域の囲い込みが有効な 手段。 実証 - 赤潮・透明度 水質浄化 の改善 鹿児島大学水産 環境保全型複合エコ 学部 養殖 養殖場周辺で海藻や貝類を栽培して水質を浄化し、 生態系のバランスを整えると同時に、その海藻を魚介 類の餌として利用する養殖技法。 複合エコ養殖では、ブリ生簀周辺でワカメ、コンブ、ア オサなどの海藻を周年に亘って栽培し、養殖魚から排 出される糞尿や残餌から溶け出した栄養塩を海藻に よって吸収させる。育った海藻は、アワビ類、ウニ、養 殖魚の餌としてリサイクルする。 実用 - 33 34 35 海水交換性に優れ、水質保全が図れる。集魚性に優 れ、魚礁としての効果が期待できる。 36 赤潮・透明度 水質浄化 37 の改善 株式会社大林組 石堤み浄化堤による 潮の干満、波動によって海水が石堤み浄化堤の礫を 海水浄化システム 通過する際、礫表面に形成された微生物膜により汚 濁物質を付着・ろ過・分解する。 実用 - 赤潮・透明度 水質浄化 38 の改善 (株)イズコン 実用 - 赤潮・透明度 水質浄化 の改善 ミサワ環境技術 水質・ヘドロ浄化剤 (株) 水質・ヘドロ浄化剤「バイオコロニー」。本製品は粉状 の水質浄化剤で、湖沼、港湾、ヘドロの堆積した養殖 漁場などに散布すると、アンモニア、亜硝酸、硫化水 素などをバイオコロニーの微生物が吸収分解して水質 や底質を浄化し、悪臭も除去する。好気嫌気性条件 下で活動可能なため、曝気装置などの設備・維持管 理は不要。 実用 - 赤潮・透明度 水質浄化 の改善 群馬工業高等専 炭素繊維の人工藻場 生物親和性の高い炭素繊維を河川等に設置、あるい 門学校 による水質浄化技術 は浄化施設内で分離取水した水に炭素繊維を浸漬す ることで、炭素繊維に付着する微生物により水中の有 機物を効率的に分解する技術。 実用 - 39 40 環境保全・資源循環 リンを河川水から吸着できる浮島型リン吸着コンク 型コンクリートの開発 リートを開発。湖沼やダム、流れの緩やかな都市河川 などの停滞水域で利用可能 4-5 第4章 中国地域における海洋修復関連技術シーズ調査 表- 4.2 (4) 海洋修復関連技術シーズ一覧表 No 対応可能な 瀬戸内海の 環境修復メ ニュー 技術分類 企業・機関名 適用技術 技術概要 技術開発 ステージ 適用事例 赤潮・透明度 水質浄化 の改善 (株)フジタ 水質浄化護岸・擁壁 護岸・擁壁構造物内に土壌・礫などを充填材とする浄 化部を設け、微生物による懸濁物のろ過、有機物、窒 素・リン等の除去を行うものである。さらに、浄化部に 浄化機能に優れた植栽を施すことで、水辺の生態系 や景観に配慮した施工が可能である。 実用 - 赤潮・透明度 水質浄化 42 の改善 コヨウ(株) エコバイオ・ブロック 納豆菌群を主体とした水質浄化微生物をセメントに封 入したコンクリートブロック。藻場造成用などを開発 中。 実用 - 養殖場周辺で海藻や貝類を栽培して水質を浄化し、 生態系のバランスを整えると同時に、その海藻を魚介 類の餌として利用する養殖技法。複合エコ養殖では、 ブリ生簀周辺でワカメ、コンブ、アオサなどの海藻を周 年に亘って栽培し、養殖魚から排出される糞尿や残 餌から溶け出した栄養塩を海藻によって吸収させる。 育った海藻は、アワビ類、ウニ、養殖魚の餌としてリサ イクルする。 実用 - 貧酸素の改 エアレーショ (株)鴻池組 善 ン 超微細気泡による生 水中設置タイプの単純な装置で、水の中にもともと棲 物接触式水質浄化工 んでいる微生物などの自然の浄化能力を最大限に活 かすことで水質改善を図る。 法 実用 - 貧酸素の改 エアレーショ (株)協和機設 善 ン ナノバブル発生装置 生理活性作用や殺菌作用などの特性を持つナノバブ ルを大量に生成する装置「バヴィタス」を開発。ナノバ ブルは直径100万分の1mmの泡状となった気泡で、水 質・土壌浄化や排水処理、配管洗浄、カキ養殖、さら に医療や健康分野での用途開発が進められている。 バヴィタスは気液混合気体せん断方式を採用し、ナノ バブルとマイクロバブル(100分の1mm)が水中に並存 するマイクロナノバブル水を効率的に大量生成し、毎 分30~120Lを送り込むことが可能である。 実用 - 空気と対象水を混合・圧縮し、微細気泡が混入した混 合水を、対象水域に拡散させることにより、溶存酸素 濃度を向上させる技術。 実証 大阪湾高石漁 港 貧酸素の改 エアレーショ 松江土建(株) 善 ン 効率的に高濃度酸素 酸素を水に効率よく溶解させた高濃度酸素水(水深 を作る気液溶解装置 30m時-溶存酸素濃度55mg/l)を作る装置。貧酸素 状態の湖沼やダム湖などの水域に対して、高濃度酸 (WEP SYSTEM) 素水を対象水域に供給し、自然の浄化作用の促進と 貧酸素水による水質の悪化を防除する。気液溶解装 置とポンプは水中に設置し、水圧を利用するので溶解 効率が向上し、ポンプの消費電力は従来より30%以上 小さくなる。 実用 広島県江田島 湾、ダム湖 貧酸素の改 エアレーショ 横浜国立大学 善 ン 微細気泡もしくは高密 気泡上昇流が発生しない微細気泡を下層に発生さ 度酸素を用いた貧酸 せ、密度成層位置が維持された状態を保つことによ り、下層の貧酸素状態を解消する技術。 素改善技術 実証 旧船橋航路 福井県日向湖 水中に鉛直に配した1本の長いパイプの上下からそれ ぞれ表層水と底層水を同時に取水し、中間で混合して 中間密度の水を全方位に吐き出す。吐き出された水 は、表層と底層の間(吐き出された水と同じ密度層)を 水平方向に広範囲に拡散する(密度流拡散)。 実用 五ヶ所湾、英 虞湾 管中混合固化処理工 浚渫土砂を空気圧送船から圧送管に連続排出する間 法 に、管路始端部において固化材添加装置から、圧縮 空気と固化材スラリーをバランスよく同時・定量的に噴 射注入して、確実な混合・撹拌を可能にした工法であ り、軟弱な浚渫土砂を埋め立て材料としてリサイクル 活用できる。 実用 - 41 赤潮・透明度 水質浄化 の改善 鹿児島大学水産 環境保全型複合エコ 学部 養殖 43 44 45 46 貧酸素の改 エアレーショ 株式会社マイク 直接曝気方式マイク 善 ン ロアクア ロアクアシステム 47 48 貧酸素の改 循環流形成 ナカシマプロペラ 密度流拡散装置 善 株式会社 49 底質の改善 物性の改良 (株)大本組 50 4-6 第4章 中国地域における海洋修復関連技術シーズ調査 表- 4.2 (5) 海洋修復関連技術シーズ一覧表 No 対応可能な 瀬戸内海の 環境修復メ ニュー 技術分類 企業・機関名 底質の改善 物性の改良 (株)五洋建設 51 52 53 適用技術 高含水泥土造粒固化 建設汚泥や浚渫土などの高含水泥土に対して、水溶 処理工法 性ポリマーと固化材の添加し、専用の造粒プラントで 撹拌することにより粒状化(5mm前後)する。改良時 間はプラントへの投入から排出まで2~3分であり、改 良直後に運搬可能な性状となる。 改良後、数日の養生で強固な粒となり、砂の代替材と して盛土材や路床、路盤材などに利用可能である。 技術開発 ステージ 適用事例 実用 - 底質の改善 覆砂・浚渫 大成建設(株)、 底泥置換覆砂工法 京都大学 底泥下に埋もれた砂をジェット水流により揚砂し覆砂 するので、砂の持込を必要としない。 実証 底質の改善 覆砂・浚渫 実用 底質の改善 覆砂・浚渫 JFEスチール株 高炉水砕スラグ 高炉水砕スラグを海底覆砂材として利用。 式会社 財団法人電力中 石炭灰ゼオライト覆砂 石炭灰を水熱合成し、ゼオライト化して得られた人工 央研究所 による底泥からの栄 ゼオライトを利用する覆砂技術。 養塩・有害ガス抑制 技術 長野県諏訪 湖、島根県宍 道湖 中海 実証 室内実験 底質の改善 覆砂・浚渫 中国電力 石炭倍増流物を覆砂材として利用する。二枚貝の食 餌となる珪藻類を増加させ、寸法効果から間隙内へ の浮泥のトラップと圧密抑制による底質の酸化状態の 維持が期待される。 実用 広島県旧太田 川 底質の改善 その他 (株)日本総合科 製鋼スラグと微細藻の 製鋼スラグを担体として表面に底生微細藻(珪藻)を 学 組合せによる底質改 増殖させることにより生態系に配慮した環境改善材を 善技術 開発。スラグから溶出するリン、ケイ素、鉄、カルシウ ム等を栄養源として微細藻が増殖。その光合成によっ て酸素放出を活性化させ、好気性バクテリアによる有 機物分解を促進させるもの。ヘドロ化した底泥を分 解、浄化することによって、生物に悪影響をもたらす貧 酸素層や硫化水素の発生を防止する。 実用 広島県海田湾 底質の改善 その他 ミサワ環境技術 水質・ヘドロ浄化剤 (株) 実用 - 底質の改善 その他 東洋大学 光照射による底質改 光ファイバーを用いて底泥表面に光を照射し、底質中 善 の光合成細菌等を活性化させることにより、底質及び 直上水を酸化し、栄養塩類の溶出を抑制する技術 研究 室内実験 底質の改善 その他 広島大学 浸透柱 実証 広島県旧太田 川 底質の改善 その他 (株)森機械製作 マイクロバブルを用い 底泥へマイクロバブルを噴射し、嫌気的な環境を改善 所 た底質耕耘・曝気 する。汚泥などの微粒子を洗い流し、粒径の改善によ るベントスの生育環境を改善する。 実証 - 底質の改善 その他 海洋建設株式会 貝殻を利用した干潟 社、水産環境研 等の浅場造成技術 究所 カキ、ホタテ、アコヤなどの貝殻を海底表面に敷設す ることで、沿岸域の干潟や浅場及び海砂利採取によ る深掘跡の底質環境の修復・改善を行う技術。 実証 - 底質の改善 その他 (株)フジタ カキ殻による閉鎖性 水域浄化工法 カキ殻を有効利用して閉鎖性水域の水質と底質を浄 化する技術。 カキ殻フィルター工法による水質浄化とカキ殻覆砂工 法による底質改善のコンビネーション。 実用 - 底質の改善 その他 宇部マテリアル ズ(株) マグネシウム化合物 海水から抽出したマグネシウム化合物をヘドロに散布 による底質改善技術 し、海底土壌をアルカリ性に保つことにより、硫化水素 の抑制及びヘドロの分解を促進させ浄化を行う。 実用 - 54 石炭灰造粒物による 覆砂 55 56 57 58 59 60 61 62 63 技術概要 水質・ヘドロ浄化剤「バイオコロニー」。本製品は粉状 の水質浄化剤で、湖沼、港湾、ヘドロの堆積した養殖 漁場などに散布すると、アンモニア、亜硝酸、硫化水 素などをバイオコロニーの微生物が吸収分解して水質 や底質を浄化し、悪臭も除去する。好気嫌気性条件 下で活動可能なため、曝気装置などの設備・維持管 理は不要。 石炭灰造粒物を充填剤として利用した浸透柱を河川 感潮域に設置し、間隙水中の栄養塩、有機物量を改 善する技術。 4-7 第4章 中国地域における海洋修復関連技術シーズ調査 表- 4.2 (6) 海洋修復関連技術シーズ一覧表 No 対応可能な 瀬戸内海の 環境修復メ ニュー 該当なし (資源の活 用) 技術分類 企業・機関名 適用技術 技術概要 技術開発 ステージ 適用事例 バイオマス利 東北大学/東北 海藻からの高効率エ 海洋で最も生産量の多い大型海藻である渇藻類を利 用 電力(株) タノール生産技術 用してバイオ燃料、バイオエタノールを生産することが でき、その工程にはエネルギー消費が大きい乾燥工 程と粉砕微粒化工程を含まず、複雑な成分に合わせ て連続多段階発酵工程で効率よくバイオエタノールを 生産できる。また、褐藻に限らず緑藻、紅藻など海藻 全般に応用可能である。 研究 実験室 バイオマス利 一丸ファルコス 用 株式会社 海藻の組合せにより、化粧品に適した海藻エキスを製 造。 実用 - バイオマス利 川辺コンクリート ホタテ内蔵を利用した 水産廃棄物であるホタテ内臓を用いて、メチル化ホタ 用 株式会社 生分解性凝集剤 テウロタンパク質を調製し、関東ローム水系をモデル 懸濁液とした事件の結果、無機凝集剤の1/5の添加 量で同等の凝集効果が得られた。一般の凝集剤より も性能がよく、生分解性である点において優位性を有 する。 研究 - 該当なし (資源の活 67 用) バイオマス利 鈴鹿国際大学 用 ヘドロ燃料電池は、微生物による有機物の分解作用 を利用して、河川あるいは湾内の海底に堆積している ヘドロから直接電気を取り出して、環境修復とエネル ギーを産出するための技術。 実証 - 該当なし (資源の活 68 用) バイオマス利 東京海洋大学海 ヒトデの有効利用技術 ヒトデに含まれる生理活性物質はカビの発生を抑える 用 洋科学部食品生 効果があり、抗菌剤の代替剤として利用可能。また、 産科学科 抗菌作用の他にもたんぱく質凝集効果がある。 実用 - 該当なし 69 (資源の活 用) バイオマス利 東京ガス株式会 海藻を原料としたメタ 海藻をメタン発酵させてメタンを主成分としたガス燃料 用 社 ン発酵発電システム を取り出し、発電や熱利用する技術。 技術 実証 - バイオマス利 東北大学 用 未利用海藻バイオマ 海岸ゴミとして処理されている自然由来の未利用海藻 スを原料とした高性能 バイオマスや海藻を利用する食品加工工程で生じる 重金属吸着除去剤 人工由来の未利用海藻バイオマスに簡易な化学修 飾を施すことで、市販のイオン交換樹脂に匹敵する高 性能な重金属吸着除去剤を製造可能。ワカメ、アカモ クを吸着剤としてpH3以上の条件下で利用可能である ことを確認している。 研究 - バイオマス利 名古屋大学 用 海洋生物に含まれる 生物活性成分 海洋生物(海綿、渦鞭毛藻等)に含まれる微量成分を 医薬品、または生化学試薬として利用。 研究 - 該当なし (資源の活 用) バイオマス利 福井県立大学海 低利用生物資源又は 魚介類の骨、皮、鱗などをアルカリ溶液や酵素剤等を 用 洋生物資源学科 水産加工残滓からの 用いた抽出を行うことにより、高純度の未変性コラー コラーゲン回収技術 ゲンまたはゼラチンを回収する技術。 実用 - 該当なし 73 (資源の活 用) バイオマス利 浜田協働水産加 魚のアラを利用した肥 魚のアラを利用したミール(肥料、飼料)及び魚油を生 用 工業協同組合 料、飼料を製造 産し、肥料、飼料業者、マーガリン製造業者等へ提供 実用 - 該当なし 74 (資源の活 用) バイオマス利 (有)広島水産加 魚さいを加工し、良質 魚アラの鮮度を低下させない回収システムを確立。処 用 工 な魚粉、魚油を製造 理時に臭気等の2次公害を出さない高品質な再生品 である魚粉、魚油を製造。 実用 - 該当なし (資源の活 75 用) バイオマス利 (株)カンサイ 用 未利用有機資源の炭 未利用有機資源(刈り芝、剪定枝等)を炭化物に、土 化技術 壌病害を抑制する機能性物質及び抗菌微生物を吸着 させた植物活性材「ガード」 実用 - 該当なし (資源の活 76 用) バイオマス利 双葉三共(株) 用 微生物による有機性 廃棄物に含まれる有機物と空気中の酸素を微生物に 廃棄物の発酵処理、 与えて発酵させ、そのとき発生する熱によって廃棄物 肥料化 の水分を蒸発させる。複雑な施設は不要で、エネル ギー消費も少なく経済的。 実用 - 該当なし (資源の活 77 用) バイオマス利 酪農学園大学 用 地域水産物を用いた 富山湾で漁獲されるニギス、シイラなどのうち、大きさ 天然調味料の開発と が不ぞろいで商品価値が低いものから醤油麹を用い その調味料の練り製 て常温で半年間発酵させ、魚醤油を製造する技術。 品への応用 研究 - 64 該当なし 65 (資源の活 用) 該当なし (資源の活 用) 66 該当なし (資源の活 用) 70 該当なし 71 (資源の活 用) 72 海藻から抽出した化 粧品成分の製造 ヘドロ燃料電池 4-8 第4章 中国地域における海洋修復関連技術シーズ調査 表- 4.2 (7) 海洋修復関連技術シーズ一覧表 No 対応可能な 瀬戸内海の 環境修復メ ニュー 技術分類 企業・機関名 技術概要 技術開発 ステージ 適用事例 有機汚泥発酵分解処 有機汚泥処理槽に充填した杉のチップ(バイオコロ 理装置 ニー)に棲息する微生物の働きによって、投入した汚 泥を水、炭酸ガスに分解・消滅する有機汚泥発酵分 解処理装置を開発。バイオコロニーが入った分解処理 槽で汚泥を微生物によって分解するため、このバイオ コロニーが汚泥処理後、肥料として利用でき、さらに 臭いを分解する微生物の力でほとんど臭気がない。 実用 - 該当なし (資源の活 79 用) 産業副産物 荏原環境エンジ 下水汚泥からのMAP マグネシウム源を嫌気性消化汚泥中に含まれる溶解 性リンに添加することで、MAP(リン酸マグネシウムア 利用 ニアリング株式 回収と肥料製造 ンモニウム)として固定化し、物理的操作により汚泥か 会社 らMAP粒子を分離・回収するシステム。 実証 - 該当なし (資源の活 80 用) 産業副産物 株式会社本間組 トゥーリフレッシャーシ 水底に堆積した泥土を拡散させること無く、高濃度で 利用 ステム 浚渫し、浚渫土の土質改良を連続的に行い、リサイク ル材料として利用する技術。 実用 - 該当なし (資源の活 用) 産業副産物 川辺コンクリート 重金属を含む食品加 イカ・タコ内臓などの重金属を含む食品加工廃棄物 利用 株式会社 工廃棄物の藻・魚礁 を、セメントや混和材と混合し型枠に充填後、硬化さ 化技術 せると、セメントのアルカリによりカドミウムなどの重金 属の溶出が起きず、これを藻・魚礁として利用する。 コンクリート製藻・魚礁は、イカ・タコ内臓などに含まれ ている栄養分を藻・魚礁中に蓄え、徐々に海水中に 供給することが可能。 実証 - 該当なし (資源の活 用) 産業副産物 日環特殊(株) 利用 汚泥減量化装置 山口大学との共同研究によって工場などから出る汚 泥を燃料に転換する「汚泥減容燃料化システム」の開 発に成功。汚泥から炭化物、活性炭、メタンガスなど をエネルギー源として抽出する仕組みで、全国への販 路拡大を本格化している。汚泥の容積を小さくしなが ら、汚泥に含まれるエネルギーを逃さず、水を効率よく 飛ばす。高速回転ディスクで汚泥微生物の細胞膜を 破壊、可溶化してたんぱく質や炭水化物、脂肪、水な どに微細化。600度の高温で乾留して作る炭化物は 発電所や焼却場の助燃材にする。 実用 - 該当なし (資源の活 用) 産業副産物 小田建設(株) 利用 石炭灰を利用したセラ 火力発電所で排出される石炭灰(フライアッシュ)を主 ミック板及び基盤材の 原料とした、吸音材料、屋上緑化用苔基盤材を製造。 吸音板は特殊な連続気泡配列により低音域から高音 製造 域までの調音性能に優れ、ノイズをカットする。また、 耐熱性に優れるとともに、結露防止にもなる。屋上緑 化苔基盤材としては、透水性・保水性に優れており、 「環境」「都市景観」「ヒートアイランド現象」の改善に 役立つ。 実用 - 該当なし (資源の活 84 用) 産業副産物 たてぬい県世知 鋳物系副産物(廃砂、 島根県内及び近隣県の鋳物工場より排出される鋳物 利用 事業協働組合 スラグ)の再利用 廃砂・スラグを循環資源として再利用する、リサイクル 土木資材。 実用 - 該当なし (資源の活 用) 産業副産物 (株)エネルギア・ 石炭灰を活用した製 石炭灰・水・セメント等を混合した「Hiビーズ」は、地盤 利用 エコマテリア 品の製造及び再資源 改良に使用する海砂の代替材として開発。高いせん 化 断強度と排水機能を有していることから、SCP、SD工 事に適用可能な材料であり、富栄養化物質・硫化水 素の吸着効果を持っているため、水質・底質改善材と しても活用可能。 実用 - 石炭灰を混入したコン 石炭灰を混入したコンクリート二次製品は、通常のコ クリート二次製品の開 ンクリートと同等の強度、良好なワーカビリティを確保 できる。 発 実用 - 実用 - 該当なし (資源の活 用) 産業副産物 (株)ミシマ 利用 適用技術 78 81 82 83 85 該当なし (資源の活 86 用) 87 該当なし (資源の活 用) 産業副産物 キョクトウ高宮 利用 (株) 産業副産物 (株)アステック入 鉄鋼スラグ資源化、塩 スラグ改良材を用いてスラグの粉化を防止し、スラグ 利用 江 化鉄液リサイクル のリサイクル回収を行っている。また、日本初の塩化 鉄再生処理技術を持ち、塩化鉄廃液から純度の高い ニッケル、銅を回収するとともに、塩化第一鉄、塩化第 二鉄に再生。 4-9 第4章 中国地域における海洋修復関連技術シーズ調査 表- 4.2 (8) 海洋修復関連技術シーズ一覧表 No 88 対応可能な 瀬戸内海の 環境修復メ ニュー 該当なし (資源の活 用) 該当なし (資源の活 89 用) 技術分類 企業・機関名 適用技術 産業副産物 (株)エコアッシュ アッシュリート技術 利用 技術概要 石炭灰(フライアッシュ原粉)を、環境安全性を確保し て有効利用する技術。リサイクル建設資材(盛土材、 路盤材)の販売を行っている。 特許権を有する(株)間組と技術使用契約を結んでい る。 産業副産物 濱田重工株式会 用途に応じた製鋼スラ 製鉄工程で生成される製鋼スラグを路盤材などの建 利用 社 グの製品化 設用材などへ処理する。 4-10 技術開発 ステージ 適用事例 実用 - 実用 - 第4章 中国地域における海洋修復関連技術シーズ調査 4.3 海洋修復関連技術への鉄鋼スラグ利用可能性 前節で整理した海洋修復関連技術の中から、鉄鋼スラグの利用可能性がある技術(表中で網掛けした技術) について表- 4.3 に示すとおり整理した。整理に当たっては、①材料を鉄鋼スラグに置き換える、あるいは鉄鋼 スラグを追加する、②技術の適用場所となる構造物などをスラグ製品に置き換える、という視点で整理した。 なお、整理対象としたのは前章に整理した鉄鋼スラグ利用技術以外の技術とした。 表- 4.3 に示す鉄鋼スラグの利用可能性のある技術について技術分類を行うと、図- 4.2 に示すとおりである。 これより、すでにある技術へ鉄鋼スラグを利用する場合も、主には藻場や干潟の造成、環境共生型護岸の整備 など、生物生息環境の創造において、利用可能性が高くなる。 一方で、実績はあるものの、水質改善、流況制御、底質改善などに対しては実績をもっと増やすことが必要 であり、これらの分野の技術において、鉄鋼スラグ製品の適用を拡大させるための検討が必要と考えられる。 なお、本章で調査した技術の中には、直接海洋環境に関連しない医療、食料など、他分野での技術も含め て整理した。将来的には、これら分野の技術とのコラボレーションも含めて鉄鋼スラグの利用可能性を拡大させ ていくことも考えられる。 20 ス ラグの適用可能性 のある技術数(延べ数) 18 16 14 12 10 8 6 4 2 0 図- 4.2 鉄鋼スラグの利用可能性のある技術数 4-11 第4章 中国地域における海洋修復関連技術シーズ調査 表- 4.3(1) 海洋修復関連技術への鉄鋼スラグ利用可能性 材料の加工と利用方法 No 対応可能な瀬戸 内海の環境修復 メニュー スラグ利用可能性 技術分類 藻場・干潟の再生 干潟造成 1 藻場・干潟の再生 干潟造成 企業・機関名 適用技術 (財)三重県産業 底泥低圧処理土による 支援センター 干潟造成 (財)三重県産業 ゾステラマットを用いた 支援センター アマモ場の造成技術 3 藻場・干潟の再生 藻場造成 4 藻場・干潟の再生 藻場造成 株式会社オー シャンラック 合成木材 株式会社本間組 海藻植付方式藻場造 成ブロック ブロック 藻場・干潟の再生 藻場造成 五洋建設(株) - サカイオーベック 簡易なアカモク藻場造 ス株式会社 成手法 8 藻場・干潟の再生 藻場造成 大成建設(株) 10 藻場・干潟の再生 藻場造成 藻場・干潟の再生 藻場造成 東洋建設(株) 東洋建設(株) 東洋建設(株) 13 藻場・干潟の再生 藻場造成 石田工業(株) 炭基盤材海藻育成装 置 - 汚泥吸着材、 材料の鉄粉をスラグに 海藻基盤 置き換えて利用 海岸構造物(突堤、離 合成木材に種 海岸構造物等 岸堤等)のスラグ製品 苗生産 に固定 利用促進 多年生海藻植 えつけ台を取り 付け 海藻基盤材 アマモを地盤ご アマモの大規 と採取 模移植 ブロックのスラグ利用 - - 海藻基盤材 漁業資材へのスラグ 活用 移植用マット 移植マットを海 底に設置 移植用基盤 移植用マットの強度確 保のためのスラグ活用 移植用基盤 同上 - 移植用基盤 同上 貝殻、カキ殻 コンクリートブ ロック構成材と して混合 藻礁ブロック スラグも混入させて表 面形状の強度確保 炭生成物 - 海藻基盤材 - 長柱型藻礁 海底に設置 立体的な海中 林 - 鋼製藻礁 海域に設置 シルト質の海域 を漁場化 - 広域藻場造成工法 (株)新笠戸ドック 鋼製藻礁 15 ・・・ 同上 岩礁性藻場造成技術 REALブロック 14 藻場・干潟の再生 藻場造成 干潟基盤材 漁業資材(竹、 ロープ) アマモ場造成技術播種 播種シート( ヤシ シート法 マット、生分解性 不織布、菱形 金網) 12 藻場・干潟の再生 藻場造成 - 中部電力株式会 株分けによるアマモ種 社エネルギー応 苗の大量生産と種苗移 用研究所 植によるアマモ場造成 生分解性ヤシノミ アマモ種苗を定 繊維マット 着 技術 11 浚渫土とスラグの混合 による浅場造成基盤と して利用 アマモ移植工法 9 藻場・干潟の再生 藻場造成 浅場基盤材 アマモ移植施工 7 藻場・干潟の再生 藻場造成 利用方法 ヤシ繊維、アマ 金枠で固定して アマモ基盤材 モ種子 連結 海岸構造物を利用した 藻場造成技術 6 注) 浚渫ヘドロ、海 浚渫ヘドロを脱 岸砂 水して砂と混合 函館工業高等専 炭素材混入モルタル被 炭素繊維、コー 門学校 田中孝 覆法 クス、竹炭、鉄 炭素繊維人工藻場 粉 5 藻場・干潟の再生 藻場造成 どのようにして (株)あの津技研 ペーパースラッジ焼却 灰を主原料とする底質 ペーパースラッ 浚渫土の含水 安定改良剤 ジ焼却灰 率を低下 2 藻場・干潟の再生 藻場造成 材料/製品 鉄鋼スラグの利用可能性がある技術 4-12 第4章 中国地域における海洋修復関連技術シーズ調査 表- 4.3 (2) 海洋修復関連技術への鉄鋼スラグ利用可能性 材料の加工と利用方法 No 対応可能な瀬戸 内海の環境修復 メニュー スラグ利用可能性 技術分類 藻場・干潟の再生 その他 16 藻場・干潟の再生 その他 企業・機関名 適用技術 海洋建設株式会 人工中層海底 社 藻場・干潟の再生 その他 東亜建設工業 (株) 赤潮・透明度の改 海水交換の促進 愛媛大学 善 海水交換促進型防波 堤 赤潮・透明度の改 海水交換の促進 株式会社大林組 部分透過型防波堤 20 善 赤潮・透明度の改 海水交換の促進 株式会社マリン 善 技研 21 貝殻 海底に設置 生物生息基 盤、魚礁、海藻 充填材にスラグを活用 着生基盤 既設護岸 一部を利用 人工干潟、態 既設護岸のスラグ製 度プール空間 品への置換 の創出 異吃水2重壁式 防波堤に没水 平板を設ける 波浪エネル ギーを利用 底層に沖向き 流れを作る - 防波堤 一部透過型に する 富栄養化した内湾域に おける成層解消並びに 水産資源の生産性高 揚と安定維持の技術 循環流形成 - - 異なる水深の 停滞水塊同志 を混合 循環流形成 - スリットケーソ ン - 魚礁 ケーソンに高炉セメン トやスラグ製品を利用 うみすまし(可搬式水流 可搬式水流発 表層水を底層 貧酸素水の解 発生装置) 生装置 に輸送 消 赤潮・透明度の改 海水交換の促進 大成建設(株) 赤潮・透明度の改 水質浄化 25 善 (株)フジタ 赤潮・透明度の改 水質浄化 (株)フジタ 26 善 赤潮・透明度の改 水質浄化 27 善 赤潮・透明度の改 水質浄化 善 青木マリーン (株) 閉鎖性水域の海水交 換工法 汽水域におけるヨシ原 の復元・創造技術 カキ殻による閉鎖性水 域浄化工法 赤潮・透明度の改 水質浄化 善 赤潮・透明度の改 水質浄化 善 31 赤潮・透明度の改 水質浄化 32 善 循環流形成 - ヨシ原 復元 水質浄化機能 の向上 - かき殻 - 海水浄化船 海水を浄化して 水質浄化機能 海に戻す の向上 - - 養殖生簀にスラグ製品 生態系に配慮 を利用することで海藻 した養殖技術 の生育を促進 石を人工石材(スラグ 微生物膜によ 製品)に置き換え、海 るろ過、分解 藻による水質浄化を期 待 湖沼、ダム、流 (株)イズコン 環境保全・資源循環型 コンクリートの開発 リン吸着コンク 浮島型構造物 れの緩やかな - 都市河川の浄 リート に加工 化 ミサワ環境技術 水質・ヘドロ浄化剤 (株) 粉状浄化剤(バ 散布(湖沼、港 - - イオコロニー) 湾、養殖場等) 株式会社大林組 石堤み浄化堤による海 水浄化システム 群馬工業高等専 炭素繊維の人工藻場 門学校 による水質浄化技術 (株)フジタ 赤潮・透明度の改 水質浄化 善 貧酸素の改善 エアレーション コヨウ(株) エコバイオ・ブロック (株)鴻池組 超微細気泡による生物 接触式水質浄化工法 ・・・ フィルター材、 カキ殼にスラグを混ぜ 覆砂材 る 鹿児島大学水産 環境保全型複合エコ養 学部 殖 赤潮・透明度の改 水質浄化 善 35 - - - 赤潮・透明度の改 水質浄化 善 生物培養基質へのス ラグ利用 突起状構造物 海水浄化船 28 注) 生物生息基盤 赤潮・透明度の改 海水交換の促進 五洋建設(株) 24 善 34 中層に設置 スリットケーソン 23 善 33 貝殻、生物培 養基質 赤潮・透明度の改 海水交換の促進 五洋建設(株) 22 善 30 利用方法 生物共生護岸 19 29 どのようにして 海洋建設株式会 貝殻魚礁JFシェルナー 社 ス 17 18 材料/製品 石積み - 炭素繊維 河川、浄化施 設内で水中に 浸漬 河川に設置。 微生物による 有機物分解 - 水質浄化護岸・擁壁 土壌・礫 鉄鋼スラグの利用可能性がある技術 4-13 護岸・擁壁構造 有機物、窒素、 材料をスラグに置換 物内の充填材 リン等の除去 納豆菌 セメント封入 基盤材 - 超微細気泡 - 水中で拡散 - 第4章 中国地域における海洋修復関連技術シーズ調査 表- 4.3 (3) 海洋修復関連技術への鉄鋼スラグ利用可能性 材料の加工と利用方法 No 対応可能な瀬戸 内海の環境修復 メニュー 貧酸素の改善 スラグ利用可能性 技術分類 エアレーション 企業・機関名 (株)協和機設 適用技術 貧酸素の改善 エアレーション 貧酸素の改善 エアレーション 38 貧酸素の改善 エアレーション 39 貧酸素の改善 循環流形成 40 底質の改善 物性の改良 - 水中で拡散 - - 水中で拡散 - - 水中で拡散 - - 水中で拡散 - - 水中で拡散 - 横浜国立大学 微細気泡もしくは高密 微細気泡、高 度酸素を用いた貧酸素 密度酸素 改善技術 ナカシマプロペラ 密度流拡散装置 株式会社 密度流拡散装 置 (株)大本組 管中混合固化処理工 法 物性の改良 (株)五洋建設 高含水泥土造粒固化 処理工法 42 底質の改善 覆砂・浚渫 43 底質の改善 覆砂・浚渫 44 底質の改善 覆砂・浚渫 45 底質の改善 その他 大成建設(株)、 底泥置換覆砂工法 京都大学 財団法人電力中 石炭灰ゼオライト覆砂 央研究所 による底泥からの栄養 塩・有害ガス抑制技術 中国電力 石炭灰造粒物による覆 砂 東洋大学 底質の改善 その他 広島大学 底質の改善 その他 (株)森機械製作 マイクロバブルを用い 所 た底質耕耘・曝気 48 底質の改善 その他 49 底質の改善 その他 50 該当なし (資源の活用) バイオマス利用 51 該当なし バイオマス利用 52 (資源の活用) 該当なし (資源の活用) バイオマス利用 海洋建設株式会 社、水産環境研 究所 宇部マテリアル ズ(株) 浸透柱 貝殻を利用した干潟等 の浅場造成技術 バイオマス利用 一丸ファルコス 株式会社 海藻から抽出した化粧 品成分の製造 該当なし バイオマス利用 該当なし (資源の活用) ・・・ バイオマス利用 建設汚泥、浚 水溶性ポリマー スラグそのものを砂の 盛土材、路盤 渫土など高含 と固化剤を添 代替材として利用 材等 水泥土 加し攪拌 (既に実用化) 底泥下の砂 ジェット水流で 揚砂 底泥と置換 - 石炭灰 人工ゼオライト を生成 覆砂材 - 石炭造粒物 二枚貝の食餌 となる珪藻類を 増加 覆砂材 - 光ファイバー 底泥に照射 栄養塩類の溶 出を抑制 - 石炭灰造粒物 浸透柱の充填 河川感潮域の 材 底質改善 - マイクロバブル 底泥の微細粒 ベントス生育環 子を洗浄 境の改善 - 貝殻 海底表面に敷 浅場の改善等 カキ殼とスラグを混合 設 - - 海藻 - 化粧品に適し た海藻エキス の製造 - ホタテ内臓 - 凝集剤 - ヘドロ 直接電気を取 り出し エネルギー産 出 - ヒトデ - 抗菌剤、タンパ ク質凝集剤 - 海藻 メタン発酵 発電、熱利用 - 川辺コンクリート ホタテ内蔵を利用した 株式会社 生分解性凝集剤 鈴鹿国際大学 ヘドロ燃料電池 54 (資源の活用) 55 (資源の活用) 浚渫土とスラグを混合 埋め立て材料 してリサイクル材として 利用 マグネシウム化合物に 硫化水素の抑 マグネシウム 海底土壌をア よる底質改善技術 制、ヘドロ分解 化合物 ルカリ性に保つ 促進剤 東北大学/東北 海藻からの高効率エタ 電力(株) ノール生産技術 バイオエタノー 海藻 - ルの生産 53 該当なし 固化剤と混合 攪拌 光照射による底質改善 46 注) マイクロナノバ ブル 軟弱な浚渫土 底質の改善 56 利用方法 株式会社マイク 直接曝気方式マイクロ 微細気泡混入 ロアクア アクアシステム 水 松江土建(株) 効率的に高濃度酸素 を作る気液溶解装置 (WEP SYSTEM) 高濃度酸素水 41 47 どのようにして ナノバブル発生装置 36 37 材料/製品 東京海洋大学海 ヒトデの有効利用技術 洋科学部食品生 産科学科 東京ガス株式会 海藻を原料としたメタン 社 発酵発電システム技術 鉄鋼スラグの利用可能性がある技術 4-14 第4章 中国地域における海洋修復関連技術シーズ調査 表- 4.3 (4) 海洋修復関連技術への鉄鋼スラグ利用可能性 材料の加工と利用方法 No 対応可能な瀬戸 内海の環境修復 メニュー 該当なし (資源の活用) スラグ利用可能性 技術分類 バイオマス利用 企業・機関名 東北大学 57 該当なし バイオマス利用 名古屋大学 該当なし (資源の活用) バイオマス利用 福井県立大学海 洋生物資源学科 該当なし バイオマス利用 該当なし (資源の活用) 該当なし (資源の活用) 該当なし (資源の活用) バイオマス利用 該当なし (資源の活用) バイオマス利用 該当なし (資源の活用) 産業副産物利用 (株)ミシマ 58 (資源の活用) 59 60 (資源の活用) 61 62 63 64 バイオマス利用 浜田協働水産加 工業協同組合 (有)広島水産加 工 (株)カンサイ バイオマス利用 双葉三共(株) 酪農学園大学 65 66 67 適用技術 未利用海藻バイオマス を原料とした高性能重 金属吸着除去剤 産業副産物利用 荏原環境エンジ 下水汚泥からのMAP 該当なし (資源の活用) 該当なし (資源の活用) 産業副産物利用 株式会社本間組 トゥーリフレッシャーシ 回収と肥料製造 ステム 株式会社 海藻 - 重金属吸着除 去剤 下水汚泥 高含水泥土 産業副産物利用 日環特殊(株) 産業副産物利用 小田建設(株) 石炭灰を利用したセラ ミック板及び基盤材の 製造 石炭灰 70 該当なし (資源の活用) 72 該当なし (資源の活用) エコマテリア 炭化物、活性 炭、メタンガス などをエネル ギー源として抽 出 - 植物活性剤 - 発酵処理、肥 料化 - 魚醤油 - 汚泥処理、肥 料化 - - - 藻・魚礁基盤 - 燃料転化 - 環境、都市景 吸音材料、屋 観、ヒートアイラ 上緑化用苔基 ンド現象の改 盤材に加工 善 - の製造及び再資源化 産業副産物利用 キョクトウ高宮 (株) 石炭灰を混入したコン クリート二次製品の開 発 Hiビーズ - 地盤改良材、 水質・底質改善 剤 - 石炭灰 - コンクリート二 次製品 - (スラグも実用化さ れている) 石炭灰 - 盛土材、路盤 -(スラグも実用化され 材 ている) 産業副産物利用 (株)エコアッシュ アッシュリート技術 73 ・・・ 魚油の生産 - 産業副産物利用 (株)エネルギア・ 石炭灰を活用した製品 71 該当なし (資源の活用) - - 汚泥減量化装置 汚泥 該当なし (資源の活用) - 医薬品、生化 学試薬 未変性コラーゲ ン、ゼラチンの 回収 ミール、魚油の 生産 マグネシウム 源を汚泥中の MAP回収 溶解性リンに 添加 浚渫して土質 リサイクル材と 改良 して利用 工廃棄物の藻・魚礁化 技術 食品加工廃棄 コンクリートブ 物 ロック製造 69 注) 利用方法 産業副産物利用 川辺コンクリート 重金属を含む食品加 68 該当なし (資源の活用) どのようにして 海洋生物に含まれる生 海洋生物 - 物活性成分 低利用生物資源又は 魚介類の骨、 - 水産加工残滓からのコ 川、鱗など ラーゲン回収技術 魚のアラを利用した肥 魚のあら - 料、飼料を製造 魚さいを加工し、良質 魚のあら - な魚粉、魚油を製造 未利用有機資源の炭 刈り芝、剪定枝 炭化物 化技術 微生物による有機性廃 微生物による 棄物の発酵処理、肥料 廃棄物 発酵 化 地域水産物を用いた天 然調味料の開発とその 醤油麹を用い ニギス、シイラ 調味料の練り製品への て発酵 応用 有機汚泥発酵分解処 理装置 有機汚泥発酵 杉のチップ 分解装置の充 填材 該当なし (資源の活用) ニアリング株式 会社 材料/製品 鉄鋼スラグの利用可能性がある技術 4-15 第5章 鉄鋼スラグ等を瀬戸内海で利用した場合の CO2 吸収・固定量調査 第5章 鉄鋼スラグ等を瀬戸内海で利用した場合の CO2 吸収・固定量調査 5.1 調査方法 鉄鋼スラグ等を利用したビジネスモデルの実現性を検討する上での一つの判断材料として、瀬戸内海沿岸 域に鉄鋼スラグを利用した環境修復事業を展開した場合の CO2 の吸収・固定量のポテンシャルの算定を行な った。 算定フローは図- 5.1 示すとおりである。CO2 の吸収・固定量の算定にあたって、まず、瀬戸内海において環 境修復事業が必要と考えられる海域を抽出した(第 3 章)。次に、鉄鋼スラグへの環境修復事業への利用例を 整理し、鉄鋼スラグを利用した場合に想定される環境修復事業のメニューを抽出した(第 4 章)。 これらの結果を踏まえて、広島湾をモデル海域として、実現の可能性がある鉄鋼スラグを利用した環境修復 事業等の実施箇所、事業内容、規模等を検討し、想定される環境修復事業が全て実施された場合の CO2 吸 収・固定量を算定した。最後に、広島湾で得られた算定結果を瀬戸内海沿岸域へ拡大推計し、瀬戸内海にお ける鉄鋼スラグを利用した環境修復事業等による CO2 吸収・固定量のポテンシャルを評価した。 瀬戸内海において環境修復が必要な海域の抽出 (第3章) 鉄鋼スラグの環境修復事業への利用例 (第4章) 広島湾をモデル海域とした 環境修復事業等の想定 広島湾における鉄鋼スラグを利用した環境修復事業等による CO2 吸収・固定量の算定 瀬戸内海沿岸海域に鉄鋼スラグを利用した環境修復事業等を 展開した場合の CO2 吸収・固定量の試算 図- 5.1 鉄鋼スラグ等を瀬戸内海で利用した場合の CO2 の吸収・固定量の算定フロー 5-1 第5章 鉄鋼スラグ等を瀬戸内海で利用した場合の CO2 吸収・固定量調査 5.2 瀬戸内海において環境修復が必要な海域 第 3 章で整理・抽出した瀬戸内海における環境修復ニーズは表- 5.1 および第 3 章 図-3.8 に示すとおりで ある。第 3 章では、瀬戸内海における環境修復が必要な海域として 10 海域が抽出されており、沿岸部や閉鎖 性の強い湾奥部に環境修復の必要性のある海域が集中している。また、環境修復ニーズとしては藻場・干潟 の再生が 10 海域、赤潮・透明度の改善が 9 海域、底質の改善が 5 海域、貧酸素の改善が 3 海域であった。今 回の調査で抽出された環境修復ニーズを有する 10 海域全てにおいて「藻場・干潟の再生」という課題が含ま れており、瀬戸内海沿岸域における環境修復のニーズとして CO2 吸収・固定が期待できる「藻場・干潟の再 生」が重要であることが分かる。 表- 5.1 瀬戸内海における環境修復ニーズ 海 域 藻場・干潟の 再生 環境修復ニーズ 赤潮・透明度の 底質の 改善 改善 ①大阪湾奥部 ● ● ②播磨灘北部沿岸 ● ● ● 貧酸素の 改善 ● ● - - - ● ● - - ● ● - - ⑥燧灘南西部沿岸 ● ● - - ⑦広島湾奥部 ● ● ● ● ⑧周防灘北部沿岸 ● ● ● - ⑨周防灘奥部 ● ● ● ● ⑩伊予灘西部(別府湾) ● ● ● - 10 海域 9 海域 5 海域 3 海域 ③播磨灘南部沿岸 ~紀伊水道北部沿岸 ④備讃瀬戸北部沿岸 ~安芸灘沿岸 ⑤備讃瀬戸南部沿岸 ~燧灘南部沿岸 計 ※具体的な環境修復ニーズの箇所については、第 3 章 図-3.8 に示したとおりである。 5-2 第5章 鉄鋼スラグ等を瀬戸内海で利用した場合の CO2 吸収・固定量調査 5.3 鉄鋼スラグを利用した環境修復事業の実施例 鉄鋼スラグを利用した環境修復事業の実施例を表- 5.2 に整理した(各事例の詳細は第2章に示したとおりで ある)。鉄鋼スラグの主要な種類として除冷スラグ、水砕スラグ、転炉系製綱スラグ、電気炉系製綱スラグがある が、環境改善事業への適用事例があるのは、水砕スラグ(5 件)と転炉系製綱スラグ(10 件)である。水砕スラグ は主に覆砂・底質改善の適用例が多く、底質の改善事業への適用が有望視される。(4 件)。一方で、転炉系製 鋼スラグについては、藻場・干潟の造成基盤としての適用事例が最も多い(6 件)。また、転炉系製鋼スラグに ついては鉄鋼スラグを炭酸化処理することで、材料自体へ CO2 を固定する技術も開発され、実証等が行なわ れている(3 件)。 以上のような点から、鉄鋼スラグを利用した環境修復事業のメニューとしては、材料自体への CO2 固定化技 術を活用しつつ、藻場や干潟の造成基盤として適用していくことが有望であると考えられる。 表- 5.2 鉄鋼スラグを利用した環境修復事業の実施例 用途 実施主体 種類 適用場所 実施時期 (①公共、②民間、③大学等) 水 砕 ス ラ グ 国土交通省中国地方整備局(①) JFEスチール(②) 中海 大阪市(①) CO2固定化 浅場(干潟)造 覆砂・底質改善 (材料へのCO2 成基盤 材 固定) H13~H16 ● 大阪湾奥部 H17 ● JFEスチール(②) 東海大学(③) 静岡市東海大学臨 海実験場地先海域 H11 ● 愛知県水産試験場(③) 室内実験 H17~H18 ● 産総研中国センター(③) JFEスチール(②) 日本鉱滓(②) 広島大学(③) 水産総合研究センター(③) 他 広島県三津口湾 H16~H17 ● 新日本製鐵(②) 北海道寿都町、函 館市など全国10箇 所以上 H16~ ● JFEスチール(②) 広島県因島など H14 ● JFEスチール(②) JFEミネラル(②) 東京湾(川崎港) H21 ● 川崎港 H21 ● ランデス(②) JFEスチール(②) 岡山県瀬戸内市牛 窓港 H21 ● 神戸製鋼所(②) 兵庫県家島群島 H21~ ● 広島大学(③) 広島県阿多田島 H6 ● JFEスチール(②) 広島県江田島市(江 田島湾) H17 ● 新日本製鐵(②) JFEスチール(②) 東京湾(京浜運河出 口付近) H21 日本鉄鋼連盟(②) 大阪府堺市堺浜 H17 いであ(②) JFEスチール(②) 東京ガス(②) 東京大学(③) 川崎市(①) 国土交通省関東地方整備局(①) 他 ● ● ( 転 炉 系 製 鋼 ス ラ グ 藻場造成基盤 ) 予 備 処 理 ス ラ グ を 含 む ● ● ● 水砕スラグ 計 1 0 4 0 転炉系製鋼スラグ 計 6 1 3 3 総計 7 1 7 3 5-3 第5章 鉄鋼スラグ等を瀬戸内海で利用した場合の CO2 吸収・固定量調査 5.4 モデル海域における鉄鋼スラグを利用した環境修復事業等の設定 5.4.1 モデル海域の選定 瀬戸内海全域を対象に鉄鋼スラグを利用した環境修復事業を想定し、CO2 吸収・固定量を算定することは 困難である。そこで、環境修復ニーズを有する海域からモデル海域を選定し、鉄鋼スラグを用いた環境修復 事業等を想定し、CO2 吸収・固定量のポテンシャルの算定を行った。 モデル海域は、中国地方でのビジネス展開を念頭に中国地方における海域から選定した。また、実現性 の観点から、潜在的に環境修復ニーズが強い海域を選定した。以上のような点から、中国地方に位置してお り、水質・底質の悪化が顕著で、かつ、海面の利用(かき養殖)も盛んであり、健全な海域環境の保全・再生 が望まれるモデル海域として広島湾を選定した(第 3 章 図-3.8 参照)。 5.4.2 広島湾における鉄鋼スラグを利用した環境修復事業メニューの抽出 第 3 章で分析したように、広島湾における環境修復ニーズとしては、以下の 4 つが挙げられる。 ①貧酸素の改善 ②赤潮・透明度の改善 ③底質の改善 ④藻場・干潟の再生 これら 4 つのニーズのうち③底質の改善、④藻場・干潟の再生については、鉄鋼スラグを用いた環境修復 事業の実施例が既に存在しており、今後も広島湾での適用が可能と考えられる。また、瀬戸内海全域への 展開も視野にいれる場合には、④藻場・干潟の再生のニーズが最も多いので、より多くの CO2 の吸収・固定 も期待できる。 一方、鉄鋼スラグによる底質の改善事例については、まだ実施例が少なく、③底質の改善については開 発途上と判断される。 以上のような点から、広島湾における鉄鋼スラグを用いた環境修復メニューとして、良好な結果が多く報告 されている(表- 5.2 参照)、鉄鋼スラグを用いた藻場・干潟の再生を取り上げ、藻場・干潟の整備による CO2 の吸収・固定量に関する評価を行った。 5-4 第5章 鉄鋼スラグ等を瀬戸内海で利用した場合の CO2 吸収・固定量調査 (参 考) 直接的な環境修復事業ではないが、近年、我が国の港湾構造物の老朽化が問題となっている。1951 年以 降の 5 年間隔の期間で整理された、整備済みの防波堤と岸壁の長さ(km)は図- 5.2 に示すとおりであり1)、 1960 年代以降に急激に整備量が増大していることがわかる。建設後数十年を経過したこれらの施設では、 今後老朽化に伴う施設の更新需要への対応が緊急の課題となっている。 これらの施設の更新にあたっては、砂やコンクリートなど大量の土木資材の調達が不可欠となるが、構造 物の中詰材、地盤改良材、捨石などに鉄鋼スラグを用いることが出来れば、資源のリサイクルが促進される だけではなく、CO2 を固定した材料を用いることによる CO2 の削減効果も期待される。また、海藻類が付着し やすいという鉄鋼スラグの特性から、鉄鋼スラグを用いることで、結果として岸壁や防波堤に藻場と同等の機 能を持たせることも可能であると考えられる。 以上のような点から、ここでは前述の藻場・干潟の整備による CO2 の吸収・固定量の評価に加え、港湾構造 物の改修に伴う CO2 削減量の評価もあわせて行った。 図- 5.2 年代別の整備済み港湾施設(防波堤、岸壁)の長さ(km)1) 出典1)住宅・社会資本の管理運営技術の開発、国土技術政策総合研究所プロジェクト研究報告 No.4、国土技術政策総合研究所、2006 年 1 月. 5-5 第5章 鉄鋼スラグ等を瀬戸内海で利用した場合の CO2 吸収・固定量調査 5.4.3 広島湾における鉄鋼スラグを利用した環境修復事業の実施箇所・規模の設定 (1) 藻場・干潟の造成 ①実施箇所の設定 広島湾奥部において、藻場・干潟再生事業の実現性が高い箇所を以下の 3 つの視点から抽出した ・物理的条件:波浪および潮流等が強い箇所は消波施設の設置等が必要となり造成基盤の流出リスクも高 いことから、静穏な海域を選定することが望ましい( 図- 5.3(1) )。 ・環境修復事業の必要性:水質や底質の悪化が著しい箇所ほど事業効果(ニーズ)が高い海域であり、環 境の悪化箇所を選定することが望ましい(図- 5.3 (2) )。 ・藻場・干潟造成の実現性:既存の藻場・干潟の存在する近辺は、藻場・干潟が成立する条件を揃えてい る可能性が高く、可能な限り現存する藻場・干潟の近辺を選定することが望ましい(図- 5.3(3) )。 湾奥の沿岸部付近では潮流が遅く静 湾奥部の多くの沿岸付近では水質の 穏な物理環境にある。 悪化が見られる。 10km 0 10km 0 20.0cm/s 10.0cm/s 5.0cm/s (1) 広島湾における恒流図 (2) 夏季の貧酸素の発生箇所 宮島、江田島沿岸部に藻場・干潟は多い。湾の最奥沿岸部にも小規模な藻場・干潟が 見られるが多くは埋め立て等で消失している。 藻場の現存箇所 干潟の現存箇所 1.7 干潟タイプ凡例 2.6 type による個別値 9 .4 3 アマモ ガラモ アオサ・ア オノリ アマモ・ガ ラモ アマモ・アオサ・アオノリ ガラモ・アラメ ガラモ・アオサ・アオノリ アマモ・ガ ラモ・ア ラメ アマモ・ガ ラモ・ワカメ アマモ・ガ ラモ・テングサ アマモ・アラ メ・その他 ガラモ・アラメ・ワカメ ガラモ・アラメ・テングサ ガラモ・ワカメ・テングサ ガ ラモ・テングサ・アオサ・アオノリ そ の他 ア マモ・アオサ・アオノリ・その他 ガ ラモ・その他 ア マモ・ガ ラモ・アオサ・アオノリ ア マモ・ガ ラモ・そ の他 ガ ラモ・アラメ・アオサ・アオノリ ガ ラモ・アラメ・その他 ガ ラモ・テングサ・その 他 ガ ラモ・アオサ・アオノリ・その他 4.7 1.6 1.6 1.9 6 前浜干潟 河口干潟 人工干潟 前浜・河口干潟 1 .6 1.6 29 5 7 3.9 4.2 5.5 6 1.9 宮島 1.1 1 .4 1.8 1 3.3 1 .6 3.6 9.1 2 5.2 2 17 9 7 宮島 5 6.6 3 4 1 6 江田島 4 4 5.2 2 6 6.3 1.6 1.2 8 4 24 1 4 .5 2.7 2 2 17 1.4 1 1 .7 1.4 3 1 4 1.2 4 .2 2 .1 3 3 3 2 2.8 1 11 7 6 2 .3 2.3 1.2 10.7 1.1 2.4 3 2 2 3 江田島 2 3 11 1.2 3.4 2.8 1.2 3.2 3.2 1.3 5 10 2 1.1 1.2 1.2 1.5 4.8 3.3 46 1.2 5 2 1.1 3 .8 35 3.1 4 000 60 00 m N 1 2.1 4.1 1 .4 1.2 22 2.4 3.5 14 4 3 1 9 2 2 2 7 29 5 5 6 6 1 .2 20 00 0 1 00 0 2 00 0 4 00 0 1 2 4 2 35 88 8 8 1.1 1.4 1.9 1.5 2 00 0 1 1 1.2 1 00 0 1 5 2 4 33 33 1.4 1.6 1.4 4.3 1 0 3 3 1 .1 1.3 1.1 1.9 1.1 1.1 1 2 33 15 2 20 00 2 1.2 5.2 46 22 2 2 1.6 1.5 1.1 2 6 00 0m 2 1 2.3 1.1 1 1.21 .7 2.5 (3) 天然藻場・干潟の現存箇所 図- 5.3 藻場・干潟造成事業の実現性が高い場所の選定に関する基礎データ2) 出典2)平成 19 年度産業公害防止対策調査閉鎖性水域の海域別調査(瀬戸内海)報告書.中国経済産業局.平成 20 年 3 月. 5-6 2 3 第5章 鉄鋼スラグ等を瀬戸内海で利用した場合の CO2 吸収・固定量調査 以上のような視点から、広島湾奥部において鉄鋼スラグを用いた藻場・干潟の造成事業の実現性のある箇 所として、図- 5.4 に示す 6 ヶ所を選定した。これらの箇所は、付近に現存の藻場・干潟が存在し、潮流も緩いこ とから、藻場・干潟の造成が物理的に可能と考えられる。また、水質の悪化が見られることから、環境修復ニー ズも強いものと考えられる。 なお、ここで選定した 6 箇所については、実際に藻場・干潟の造成等が計画されているわけではなく、あくま で机上で検討した結果を示している。 1 広島市 元宇品地区 3 厳島 大黒岩地区 2 広島市 似島地区 6 江田島 中央地区 4 厳島 腰細浦地区 5 江田島 美能地区 5000m 0 5km 10km 図- 5.4 広島湾における藻場・干潟造成事業の実現性が高い箇所注) 注) ここで選定した 6 箇所はあくまで机上での検討結果であり、実際に藻場・干潟造成事業が計画されているわけではない。 5-7 第5章 鉄鋼スラグ等を瀬戸内海で利用した場合の CO2 吸収・固定量調査 ②施設規模の想定 環境修復事業実施候補 6 地区の施設規模は、以下の前提条件に基づき表- 5.3 に示すとおり設定した。 (施設規模設定に係る前提条件) ・造成する藻場・干潟の構造については、事業想定箇所における水深や地形から浅場型(藻場・干潟造 成)と藻場型(藻場造成)の 2 つを想定した(図- 5.5)。 ・浅場型(藻場・干潟造成)については既存の造成事例等を参照し、干潟面を C.D.L.+1.0m、浅場先端部 を C.D.L.-1.5m とし、潜堤天端は C.D.L.-1.0m とした。 ※この場合、造成面積の 35%は藻場として 65%が干潟として機能するものと想定する。 ・藻場型は藻礁の設置を想定し、既存事例や水深等を勘案し、施設規模を想定した。 200m 干潟 130m 藻場 70m C.D.L+1.0m C.D.L±0.0m 覆砂厚1m C.D.L-1.0m 浚渫土砂 勾配i=1/30 (a) 浅場型 (b) 藻場型 図- 5.5 藻場・干潟の造成事業の想定断面 5-8 第5章 鉄鋼スラグ等を瀬戸内海で利用した場合の CO2 吸収・固定量調査 表- 5.3 広島湾における環境修復事業の施設規模の想定 候補地区 1 広島市 元宇品地 区 2 広島市 似島地区 3 厳島 大黒岩地区 環境修復事業の 施設規模 設定した事業メニュー 藻場 ( ア マモ 場)・干潟の整 備 藻場 ( ア マモ 場)および干 潟の整備 藻場 ( ア マモ 場)およびア サリなどを対 象と し た干潟 の整備 面積 (ha) 幅 (m) 長さ (m) 浚渫土容量 (万 m3) 概算事業費 (億円) ※参考値 既設の小さな砂浜を拡張 整備し、人との触れあい に配慮した藻場(アマモ 場)および干潟を創出 5 200 250 20 9 アサリなどを対象とした干 潟および藻場の創出 15 250 600 50 26 アサリなどを対象とした干 潟および藻場(アマモ場) の創出 12 200 600 10 13 3 50 500 - 3 4 厳島 腰細浦地区 藻場( ガ ラモ 場)の整備 広島県絶滅危惧種の海岸 植物イワタイゲキの保全を 目的とした潜提等を自然 調和型構造物として整備 し、藻場(ガラモ場)を創 出 5 江田島 美能地区 藻場( ガ ラモ 場)の整備 生物の生息・生産機能に 配慮した藻場の創出 3 50 500 - 3 6 江田島 中央地区 藻場 ( ア マモ 場)の整備 生物の生息・生産機能に 配慮した藻場の創出 10 200 500 10 4 干 潟 21 - 2,950 90 58 藻 場 27 - - 合 計 注) 概算工事費は、既存事例である広島港五日市地区人工干潟、尾道糸崎港百島地区・海老地区・灘地区の 3 地区、大阪堺港エコポート 事業および名古屋港(鍋田地区)の 6 地区の単位面積当たりの事業費の中から最小と最大を除いた 4 地区の平均値(1.4 億円/ha))を ベースに、構造物の設置位置付近の水深を考慮して算出した。 5-9 第5章 鉄鋼スラグ等を瀬戸内海で利用した場合の CO2 吸収・固定量調査 (2) 港湾構造物の改修 ①実施箇所の設定 広島湾内の港湾(重要港湾以上;広島港、岩国港、呉港)の海岸線の長さ(自然海岸は除く)は、約 141km である3)。これらの海岸線のうち、既に港湾構造物の改修が行われた場所も存在するが、ここでは 便宜的に、全ての海岸線(自然海岸は除く)において、今後、鉄鋼スラグを用いて港湾構造物の改修が行 われるものと仮定した。 ②施設規模の想定 港湾構造物(岸壁、防波堤等)の施設形状、規模は、その場所での利用条件や気象・海象条件、地盤条 件等によって様々であるため、本来は一律に設定することはできないが、港湾構造物として図- 5.6 に示す 形状・規模のケーソン式係船岸を対象として、鉄鋼スラグを利用した場合の CO2 削減効果の試算が行われ ている事例が存在することから4)、ここでは図- 5.6 に示す形状・規模の構造物が、①に示す港湾海岸線の長 さ 141km に対し今後適用されていくものと仮定した。 図- 5.6 港湾構造物(ケーソン式係船岸)の想定断面図4) 出典3)平成 11 年度 瀬戸内海港湾・海域環境創造計画調査報告書、平成12年3月、運輸省第三港湾建設局、(財)港湾空間高度化環境研究 センター 出典4)(社)日本鉄鋼連盟資料 5-10 第5章 鉄鋼スラグ等を瀬戸内海で利用した場合の CO2 吸収・固定量調査 5.5 モデル海域における鉄鋼スラグを利用した環境修復事業等による CO2 吸収・固定量の算定 5.5.1 鉄鋼スラグを利用した環境修復事業等による CO2 吸収・固定量の評価プロセス CO2 吸収・固定量を評価する上で、原料の製造や施工等全ての工程を積算していく手法(LCA 的評価)と 主要なプロセスのみを抽出し、評価を行なう手法がある。現時点では、鉄鋼スラグを用いた環境修復事業に は不確実な部分が多く、LCA 的に CO2 吸収・固定量を評価するのは非常に困難である。よって、ここでは主 要な CO2 吸収・固定量を評価するプロセスとして以下の(1)~(3)を抽出し、評価を行なった。 (1) 藻場造成による CO2 の吸収・固定量の評価プロセス 藻場造成による CO2 の吸収・固定プロセスとしては、以下の 2 つを想定した。 ・造成藻場でアマモやガラモが繁茂することで、藻(草)体として CO2 が吸収・固定されるプロセス。 ・藻場付着基盤や潜堤に鉄鋼スラグ炭酸固化体等を利用することによる CO2 固定プロセス。 ここで、既存の報告事例5)より、藻場造成事業への鉄鋼スラグの利用方法として、以下の内容を想定した (図- 5.7 参照)。 ①浅場型: 潜堤材として鉄鋼スラグ炭酸固化体の利用を想定し、鉄鋼スラグ炭酸固化体自体への CO2 固定量を評 価した。また、鉄鋼スラグの潜堤材はガラモ等の付着基盤として機能することが報告されていることから、潜 堤部にガラモ場が形成されるものと考え、ガラモによる CO2 の吸収・固定量を評価した。また、浅場を造成 することにより、水面より下にはアマモ場が形成されるものと考え、アマモによる CO2 の吸収・固定量を評価 した。 ②藻場型: 鉄鋼スラグ炭酸固化体による藻礁の設置を想定し、炭酸固化スラグ自体への CO2 固定量を評価した。ま た、鉄鋼スラグ炭酸固化体による付着基盤にガラモ場が形成されるものと考え、ガラモによる CO2 の吸収・ 固定量を評価した。 出典5)宮田康人・佐藤義夫・清水悟・小山田久美(2008)製鋼スラグによる海域の底質改善.JFE 技報 No. 19. 5-11 第5章 鉄鋼スラグ等を瀬戸内海で利用した場合の CO2 吸収・固定量調査 ・藻(草)体としての CO2 の吸収・固定 アマモ場 ガラモ場 中詰材(浚渫土+鉄鋼スラグ) 製綱スラグ潜堤材 潜堤(鉄鋼スラグ炭酸固化体)への CO2 固定 (a)浅場型のケース ・藻(草)体としての CO2 の吸収・固定 藻礁(鉄鋼スラグ炭酸固化体)への CO2 固定 (b)藻場型のケース 炭酸固化スラグ付着基盤 図- 5.7 藻場造成への鉄鋼スラグの利用方法の設定と CO2 吸収・固定量の評価プロセス (2) 干潟造成による CO2 の吸収・固定量の評価プロセス 干潟造成による CO2 の吸収・固定プロセスとしては、以下の 2 つを想定した。 ・造成した干潟に生息する生物により CO2 が吸収・固定されるプロセス。 ・干潟の中詰材として鉄鋼スラグを利用することによる CO2 固定プロセス。 ここで、干潟造成事業への鉄鋼スラグの利用方法として、以下の内容を想定した(図- 5.8 参照)。 5-12 第5章 鉄鋼スラグ等を瀬戸内海で利用した場合の CO2 吸収・固定量調査 干潟の中詰材として鉄鋼スラグを利用す ・干潟に生息する生物による CO2 の吸収・固定 ることによる CO2 固定 中詰材(浚渫土+鉄鋼スラグ) 製綱スラグ潜堤材 図- 5.8 干潟造成への鉄鋼スラグの利用方法の設定と CO2 吸収・固定量の評価プロセス ここで、干潟に生息する生物による CO2 の吸収・固定プロセスは非常に複雑であり、正確な評価は難しい。 一度生物として固定された CO2 もいずれ生物が死ぬことで分解され、再び大気中へ CO2 として大気中へと 放出されるため、CO2 の固定とはみなされない。 一方で、分解されずに干潟の堆積物中に埋没したり、魚等によって干潟の生物が捕食され、系外に持ち 出された後に海底堆積物として固定されたりする炭素もあり、これらについては吸収・固定量とみなすことが できる。しかしながら、干潟堆積物への CO2 の埋没量等について定量的に研究された事例は少なく、現時 点では、これらの値を評価することが難しい。 そこで、今回の計算では、干潟が造成されることで新たに増加する底生生物の現存量分のみを CO2 の 固定量の評価対象とみなし、堆積物等に固定される CO2 については評価の対象外とした。 図- 5.9 干潟に生息する生物によるCO2 吸収・固定に関する詳細なプロセス(イメージ) 5-13 第5章 鉄鋼スラグ等を瀬戸内海で利用した場合の CO2 吸収・固定量調査 (3) 港湾構造物の改修による CO2 の削減量の評価プロセス 港湾構造物の改修による CO2 の削減プロセスとしては、以下を想定した。 ・港湾構造物の中詰材、地盤改良材、捨石等に鉄鋼スラグ(水和固化体)を用いることによる CO2 削減 プロセス。 ここで、港湾構造物の改修への鉄鋼スラグの利用方法として、以下の内容を想定した(図- 5.10 参照)。 港湾構造物に鉄鋼スラグ水和固化体を利用することによる CO2 削減 ・基礎捨石、裏込石 → 石材の代わりに鉄鋼スラグ水和固化体を利用 ・ケーソン本体、上部工 → コンクリートの代わりに鉄鋼スラグ水和固化体を利用 ・中詰砂 → 砂の代わりに鉄鋼スラグ水和固化体を利用 ・地盤改良(SCP) → 砂の代わりに鉄鋼スラグ水和固化体を利用 図- 5.10 港湾構造物の改修における鉄鋼スラグの利用方法の設定と CO2 削減量の評価プロセス 5-14 第5章 鉄鋼スラグ等を瀬戸内海で利用した場合の CO2 吸収・固定量調査 5.5.2 鉄鋼スラグを利用した環境修復事業等による CO2 吸収・固定量の算定結果 (1) 藻場造成による CO2 吸収・固定量の算定 ①藻(草)体への CO2 吸収・固定量 (算定方法) 藻場における CO2 吸収・固定プロセスは、干潟と同様に非常に複雑であるため、現状では精度の高い算 定が困難である。ただし、簡易な算定手法として、図- 5.11 のようなプロセスを考慮した報告例があり6)、広島 湾での環境修復事業においては、アマモ場とガラモ場が該当する。アマモ場においては、生育場所が砂泥 質地盤であり、年間の繁茂と枯死のプロセスが繰り返される中で、特に地下茎が地中に残され、これが二酸 化炭素の吸収要素となっている。一方、ガラモ場はアマモ場のような地下茎の堆積による固定要素はないが、 流れ藻の漂流中の生長が要素として考慮されている。 ガラモ場及びアマモ場の CO2 吸収・固定原単位は、表- 5.4 に示すとおりであり、アマモ場では 0.1kg- C/m2/年、ガラモ場では 0.68kg-C/m2/年を利用した6)。 図- 5.11 考慮した海藻草類による二酸化炭素固定プロセス6) 表- 5.4 藻場における長期的な炭素固定量の試算結果6) 出典6)伊藤靖:藻場における炭素固定機能について、(財)漁港漁場漁村技術研究所、調査研究報告 No.19、平成 18 年度. 5-15 第5章 鉄鋼スラグ等を瀬戸内海で利用した場合の CO2 吸収・固定量調査 (算定結果) 藻場による CO2 吸収量原単位をもとに、広島湾の環境修復事業候補地(図- 5.4 参照)で 10 年間に固定・ 吸収される CO2 量は、3,010 トン/10 年と試算された。 No 事業候補地 (図- 5.4 参照) 1 広島市元宇品地区 2 広島市似島地区 表- 5.5 藻場による二酸化炭素吸収量の試算 事業 藻場による CO2 藻場造成 対象 面積 吸収量原単位6) 注) 面積 (ha) 藻場 (ha) (kg-CO2/m2/年) アマモ ガラモ 5 アマモ 15 ガラモ 3 厳島大黒岩地区 アマモ 12 ガラモ CO2 固定・吸収量 (トン/10 年) 1.75 0.37 65 0.50 2.49 125 5.25 0.37 194 1.20 2.49 299 4.20 0.37 155 1.20 2.49 299 4 厳島腰細浦地区 ガラモ 3 3.00 2.49 747 5 江田島美能地区 ガラモ 3 3.00 2.49 747 3.50 0.37 130 1.00 2.49 249 6 江田島中央地区 アマモ ガラモ 10 合計 3,010 注)No.1、2、3 については干潟も合わせた整備を想定しているので、事業面積の 35%をアマモ生育面積として想定。また潜 堤部分は藻場として機能する横断幅を 20mと想定。 ②藻場付着基盤や潜堤に鉄鋼スラグ炭酸固化体を利用することによる CO2 固定量 (算定方法) 鉄鋼スラグ炭酸固化体(藻場の付着基盤)の作成時には、CO2 を吹き込むプロセスがあり、CO2 の固定と みなすことができる。この過程で固定される CO2 量は 0.063 トン-CO2/トンであることが報告されている7)。 図- 5.12 鉄鋼スラグ炭酸固化体の製造プロセスにおける CO2 の固定7) 出典7)鉄鋼スラグ炭酸固化体利用マニュアル-藻場・サンゴ礁の再生に向けて、(財)港湾空間高度化環境研究センター 藻場着生基盤技術 研究会、平成 16 年 3 月. 5-16 第5章 鉄鋼スラグ等を瀬戸内海で利用した場合の CO2 吸収・固定量調査 また、鉄鋼スラグ炭酸固化体の藻場造成材としての利用実績をもとに、図- 5.13 に示す近似式を作成し、 鉄鋼ス ラグ炭酸固化体使用量(ton) 藻場面積に応じた鉄鋼スラグ炭酸固化体の利用量を推定した。 鉄鋼スラグ炭酸固化体の藻場造成材料としての 適用実績8) 300 y = 106.63x - 1.0319 R² = 1 250 施工年 因島 瀬戸内海(広島) 長崎 天草 相模湾(静岡) 高知 響灘 伊勢湾 相模湾(神奈川) 200 150 100 50 3ha→319ton 0 0 0.5 1 1.5 2 2001~2002 1999 2003~2004 2003~2004 2001 2003 2002 2002 2001 藻場造成 面積(ha) 2.26 0.15 0.15 0.2 0.15 0.05 0.2 0.1 0.1 スラグ使用 量(トン) 240 15 15 20 15 5 20 9 10 2.5 藻場面積(ha) 図- 5.13 適用実績8)から推定した藻場面積に対する鉄鋼スラグ炭酸固化体利用量 (算定結果) 広島湾の環境修復事業候補地(図- 5.4 参照)における鉄鋼スラグ炭酸固化体による CO2 固定量の算定結 果は表- 5.6に示すとおりである。藻場造成に鉄鋼スラグ炭酸固化体を利用した場合、26,682トンの CO2 固定 量が望めると考えられる。 表- 5.6 藻場付着基盤や潜堤に鉄鋼スラグ炭酸固化体を利用することによる CO2 固定量の算定結果 鉄鋼スラグ 事業 CO2 固定 藻場 鉄鋼スラグ 炭酸固化体 対象 面積 原単位7) 炭酸固化体による No 候補地区 面積 藻場 使用量 (トン-CO2/ton) CO2 固定量(トン) (ha) (ha) (トン) 1 広島市元宇品地区 0.063 6,193 注1) - - 98,300 注2) 2 広島市似島地区 3 厳島大黒岩地区 注1) 注1) - - - 236,000 注2) 0.063 14,868 - 25,300 注2) 0.063 1,594 21,100 注2) 0.063 1,349 0.063 1,349 0.063 1,329 4 厳島腰細浦地区 ガラモ 3 3 5 江田島美能地区 ガラモ 3 3 6 江田島中央地区 注1) 319 注3) 21,100 注2) 319 注3) 21,100 注2) 計 26,682 注1) No.1、2、3 及び No.6 については、潜堤に鉄鋼スラグ炭酸固化体を利用する場合の CO2 固定量のみを算定。 注2) 潜堤における必要な捨石量(m3)を試算し、その結果に表-5.3 に示した施設延長(m)を乗ずることで鉄鋼スラグ炭酸固化 体の使用量を算定。 注3) 鉄鋼スラグ炭酸固化体を藻場造成基盤材に使用すると仮定し、図-5.13 より必要な量を算定。 出典8)転炉系鉄鋼スラグ海域利用の手引き 社団法人日本鉄鋼連盟、平成 20 年 9 月 5-17 第5章 鉄鋼スラグ等を瀬戸内海で利用した場合の CO2 吸収・固定量調査 (2) 干潟造成による CO2 吸収・固定量の算定 ①造成した干潟に生息する生物による CO2 吸収・固定量 (算定方法) 干潟における生物の現存量は、広島湾奥部の干潟における生物の現存量の調査結果より、平均的な湿 重量を設定した9)。底生生物現存量の CO2 吸収・固定量への換算は、既存の研究事例から底生生物の炭素 量を求め、CO2 吸収・固定量へと換算した。また、底生微細藻類の現存量は、広島湾の干潟における調査例 から、5g-C/m2 とし、CO2 吸収・固定量へと換算を行なった。 10) 表- 5.7 造成した干潟に生息する生物による CO2 吸収・固定量 平均現存量注) 乾燥重量/湿重量9) 炭素含有量10) CO2 吸収・固定量 (g-wet/m /年) (g-dry/g-wet) (g-C/-dry) (kg-CO2/m2/年) 二枚貝 752 0.65 0.429 0.77 二枚貝以外 159 0.30 0.301 0.05 - - - 0.04 - - - 0.86 種 2 底生微細藻類 計 注)広島湾奥部に存在する 19 箇所の干潟における調査結果の平均値。 (算定結果) 干潟による CO2 吸収・固定量の算定結果は表- 5.8 に示すとおりである。干潟(浅場)の造成が想定される 4 区域における CO2 吸収・固定量の合計は 235 トン/年であった。なお、この数値は底生生物の体として、 造成された干潟で新たに吸収・固定される CO2 のみを示したものであり、実際には堆積物への埋没等によっ て固定される CO2 も見込めるため、過少評価値と考えられる。 表- 5.8 干潟の造成によって底生生物に固定される CO2 吸収・固定量 No 候補地区 想定事業面積(ha) 広島市元宇 品地区 広島市似島 2 地区 厳島大黒岩 3 地区 江田島中央 6 地区 1 干潟面積注) (ha) 干潟を造成することによる CO2 固定量(トン/年) 5 3.25 28 15 9.75 84 12 7.8 67 10 6.5 56 合計 注)藻場も合わせた整備を想定しているので、事業面積の 65%を干潟面積として算定。 出典9)広島県の干潟情報、広島県、オンライン【http://www.pref.hiroshima.lg.jp/eco/c/higata/tokusei/index.htm#2-2.】 出典10)沿岸の環境圏,フジテクノシステム. 5-18 235 第5章 鉄鋼スラグ等を瀬戸内海で利用した場合の CO2 吸収・固定量調査 ②干潟の中詰材として鉄鋼スラグを利用することによる CO2 固定量 図- 5.5(a)では、干潟造成時の中詰材として浚渫土砂を使用することを想定しているが、これを浚渫土砂と 製鋼スラグを混合した材料に置き換えるとした場合の CO2 固定効果について考える。 既存の研究成果11)によると、製鋼スラグと浚渫土砂の混合比率は、製鋼スラグ:浚渫土砂= 3:7(体積比)で ある。 一方、表- 5.3 に示す環境修復事業候補地のうち、干潟造成を想定している地区(No.1、2、3)について、中 詰材として必要な浚渫土砂の量を試算すると、それぞれ約 20 万 m3、約 50 万 m3、約 10 万 m3 となる。 ここで、浚渫土砂と混合するスラグとして、鉄鋼スラグ炭酸固化体を仮定した場合、その CO2 固定量は前述 のとおり 0.063 トン-CO2/トンである(なお、既存の研究成果 11)によると、浚渫土砂と今後する鉄鋼スラグとして、 鉄鋼スラグ炭酸固化体が想定されているわけではないが、ここでは、仮に鉄鋼スラグ炭酸固化体と浚渫土砂 を混合するものと仮定した。) 以上の仮定に基づき、広島湾で干潟を造成する場合において、干潟の中詰材として鉄鋼スラグを利用す ることによる CO2 固定量は、 表- 5.9 のとおり算定される。 表- 5.9 干潟の中詰材として鉄鋼スラグを利用することによる CO2 固定量の算定結果 No 候補地区 浚渫土の容量 (m3) 鉄鋼スラグ 炭酸固化体 使用量(m3) CO2 固定 原単位7) (トン-CO2/ton) 鉄鋼スラグ 炭酸固化体による CO2 固定量(トン) 1 広島市元宇品地区 200,000 60,000 0.063 10,206 2 広島市似島地区 500,000 150,000 0.063 25,515 3 厳島大黒岩地区 100,000 30,000 0.063 5,103 計 40,824 3 注)鉄鋼スラグ炭酸固化体の比重を 2.7t/m と仮定して計算。 ③潜堤に鉄鋼スラグ炭酸固化体を利用することによる CO2 固定量 表- 5.6 において潜堤に鉄鋼スラグ炭酸固化体を利用した場合の CO2 固定量を既に評価しているため、 ここでは考慮しない。 出典11)平成 20 年度 低炭素化社会に向けた技術シーズ発掘・社会システム実証モデル事業「製鋼スラグを用いた藻場造成による CO2 固定化技 術開発と川崎市における実証モデル事業」事業報告書、平成 22 年 3 月、経済産業省関東経済産業局. 5-19 第5章 鉄鋼スラグ等を瀬戸内海で利用した場合の CO2 吸収・固定量調査 (3) 港湾構造物の改修による CO2 削減量の算定 図- 5.6 に示す港湾構造物(ケーソン式係船岸)を対象に、中詰材、地盤改良材、捨石等に鉄鋼スラグ水和 固化体を用いた場合の CO2 削減効果は、以下のように試算されており12)、普通コンクリートを利用する場合 と比較して、鉄鋼スラグ水和固化体を利用する場合の CO2 の削減量は、5,301kg-CO2/m となっている。 表- 5.10 係船岸構造断面図(図-5.6)の CO2 排出量の試算値12) CO2 削減量:5,301kg-CO2 /m 前述のとおり、広島湾内の港湾(重要港湾以上;広島港、岩国港、呉港)の港湾海岸線の長さ(自然海岸 は除く)は、約 141km なので、係船岸 1m あたりの CO2 削減量にこの長さを乗ずると、広島湾内の港湾構造 物改修に伴う CO2 削減量は、747,441 トンと算定された。 出典12)(社)日本鉄鋼連盟資料. 5-20 第5章 鉄鋼スラグ等を瀬戸内海で利用した場合の CO2 吸収・固定量調査 5.5.3 モデル海域(広島湾)における CO2 吸収・固定量の評価(まとめ) 以上の算定結果より、モデル海域である広島湾において、鉄鋼スラグを利用した環境修復事業等を実施し た場合の CO2 吸収・固定量は、表- 5.11、図- 5.14 のようにまとめられ、10 年間では合計約 82 万トンの CO2 が 削減されるものと見積もられた。 日本の家庭からの CO2 排出量は約 5.04 トン-CO2/世帯/年と試算されており13)、広島県全体の世帯数は 1,184,606 世帯(平成 22 年)である14)ので、上記 CO2 削減量は、広島県内の全世帯が 1 年間に排出する CO2 の約 1.4%に相当する。 なお、その内訳としては図- 5.15 に示すように、港湾構造物の改修による CO2 の削減量が最も大きく、全体 の 9 割以上を占めていた。このことから、CO2 の削減効果に着目した場合、港湾構造物の改修における鉄鋼ス ラグの利用促進が最も効果的であり、次いで干潟造成時において中詰材に鉄鋼スラグを利用することが効果 的であると考えられる。 表- 5.11 モデル海域(広島湾)における CO2 吸収・固定量の算定結果 (1)藻場造成による CO 2の吸収・固定量 ①藻(草)体へのCO2吸収・固定量(トン/10年) ②藻場付着基盤や潜堤に鉄鋼スラグ炭酸固化体を利用す る場合のCO2固定量(トン) (2)干潟造成による CO 2の吸収・固定量 ①造成した干潟に生息する生物によるCO2吸収・固定量(ト ン/10年) ②干潟の中詰材として鉄鋼スラグを利用することによるCO2 固定量(トン) (3)港湾構造物の改修による CO 2の削減量 3,010 26,682 2,350 40,824 ①港湾構造物の中詰材、地盤改良材、捨石等に鉄鋼スラグ 水和固化体を用いた場合のCO2削減量(トン) 747,441 CO 2吸収・固定・削減量合計(ト ン/10年) 820,307 造成した干潟に生息する生物による CO2吸収・固定量(トン/10年) 26,682 40,824 藻(草)体へのCO2吸収・固定量(トン /10年) 747,441 820,307 3,010 2,350 0 200,000 400,000 600,000 800,000 1,000,000 CO2吸収・固定量(トン-CO2 /10年) 藻場付着基盤や潜堤に鉄鋼スラグ 炭酸固化体を利用する場合のCO2固 定量(トン) 干潟の中詰材として鉄鋼スラグを利 用することによるCO2固定量(トン) 港湾構造物の中詰材、地盤改良材、 捨石等に鉄鋼スラグ水和固化体を用 いた場合のCO2削減量(トン) 図- 5.14 モデル海域(広島湾)における CO2 削減量の算定結果 出典13)(独)国立環境研究所 温室効果ガスインベントリオフィスホームページ http://www-gio.nies.go.jp/aboutghg/nir/nir-j.html 出典14)国勢調査 平成 22 年(速報) 全国都道府県別人口・世帯数、広島県ホームページ http://toukei.pref.hiroshima.lg.jp/ 5-21 第5章 鉄鋼スラグ等を瀬戸内海で利用した場合の CO2 吸収・固定量調査 0.4% 0.3% 3.3% ①造成した干潟に生息する生物による CO2吸収・固定量(トン/10年) 5.0% 藻(草)体へのCO2吸収・固定量(トン/10 年) 藻場付着基盤や潜堤に鉄鋼スラグ炭酸 固化体を利用する場合のC O2固定量(ト ン) 干潟の中詰材として鉄鋼スラグを利用 することによるCO2固定量(トン) 91.1% 港湾構造物の中詰材、地盤改良材、捨 石等に鉄鋼スラグ水和固化体を用いた 場合のCO2削減量(トン) 図- 5.15 モデル海域(広島湾)における CO2 削減量の内訳 5-22 第5章 鉄鋼スラグ等を瀬戸内海で利用した場合の CO2 吸収・固定量調査 5.6 瀬戸内海における鉄鋼スラグを利用した環境修復事業等による CO2 吸収・固定量の算定 瀬戸内海では、既定計画として「瀬戸内海環境修復計画」が平成 17 年 1 月に国土交通省と水産庁の連携に よって策定されており、その中で瀬戸内海沿岸において 600ha の藻場・干潟を修復することを目標値として掲 げている。 モデル海域(広島湾)における藻場・干潟造成による CO2 吸収・固定量の合計は表- 5.11(1)、(2)より 72,866 ト ン/10 年、造成面積は表- 5.3 より 48ha なので、瀬戸内海全体で鉄鋼スラグを利用した藻場・干潟造成を 600ha 実施した場合の CO2 吸収・固定量を算定すると、約 91 万トン/10 年となる。 また、瀬戸内海の港湾(重要港湾以上)の港湾海岸線の長さ(自然海岸は除く)は、約 1,871km である3)。港 湾構造物を 1m 改修した場合の CO2 削減量は表- 5.10 より 5,301kg-CO2 /m なので、瀬戸内海の港湾全体の港 湾構造物を改修した場合の CO2 削減量は約 992 万トンとなる。 両者を合計すると、瀬戸内海において鉄鋼スラグを利用した環境修復事業等による CO2 削減量は約 1,083 万トン/10 年となる。 日本の家庭からの CO2 排出量は約 5.04 トン-CO2/世帯/年)であり、瀬戸内海流域の府県全体の世帯数は 12,427,948 世帯14)であるので注)、上記 CO2 削減量は、瀬戸内海流域府県の全世帯が 1 年間に排出する CO2 の約 1.7%に相当する。 今回の試算では、瀬戸内海において鉄鋼スラグを利用することによる CO2 削減効果は上記のとおり効果が 大きいと考えられるので、今後、瀬戸内海沿岸域で環境修復事業を展開する際に、CO2 削減効果を持つ構造 物等の適用を推進していくことが望まれる。また、リサイクル材を活用することによる資源循環型社会の構築や、 環境修復による漁獲量増加といった経済効果など、他の効果も組み合わせて鉄鋼スラグの海域利用を展開し ていくべきである。 また、今回の試算においては鉄鋼スラグのみを対象としたが、リサイクル材料としてはこれに類する鉄イオン 供給製品、石炭灰造粒物といった材料も物理化学的な特徴を把握したうえで、積極的な活用が望まれる。 なお、今回の試算では、干潟の中詰材として浚渫土砂と混合する鉄鋼スラグに炭酸固化体を仮定しており、 また、藻場による CO2 固定量も現時点では未解明の部分も多いことなどから、鉄鋼スラグを利用することによる CO2 吸収・固定量の評価については、今後さらに詳細な検討を行う必要がある。 注)瀬戸内海流域の府県全体の世帯数・・・瀬戸内海の流域に位置する大阪府、京都府、奈良県、和歌山県、兵庫県、岡山県、広島県、山口県、大 分県、愛媛県、香川県、徳島県の全世帯数を対象に集計。一部、瀬戸内海流域外の区域にある世帯も含まれるが、今回の試算では流域界による 世帯数の区分は考慮していない。また、福岡県は、大部分が瀬戸内海流域外に位置するので、今回の試算では除外した。 5-23 第6章 鉄鋼スラグ等を利用した瀬戸内海再生ニュービジネス創出に向けた課題の整理 第6章 鉄鋼スラグ等を利用した瀬戸内海再生ニュービジネス創出に向けた課題の整理 6.1 課題の整理方針 ここでは、第 2 章~第 5 章に整理した内容や、第 1 回~第 4 回フォーラムで頂いたご意見、行政機関や鉄 鋼メーカー等へヒアリングを行った結果などを踏まえ、瀬戸内海再生ニュービジネス創出に向けた課題のとりま とめを行った。 なお、課題については、大きく以下の2つの視点から整理した。 ①鉄鋼スラグ等の海域利用に関する課題(安全・安心、効果・有効性) ・・・ 表- 6.1 鉄鋼スラグ等の副産物を海域利用する場合に考慮すべき、材料そのものに対する安心面や他の材料と比 較した場合の優位性(効果、有効性)などの課題について整理した。 ②鉄鋼スラグ等を海域利用したビジネス化に向けた課題 (市場・ニーズ、製品開発・流通製品販売・ PR、採算性) ・・・ 表- 6.2 ①により、材料としての鉄鋼スラグ等の安心面が認知され、有効性が確認されたとして、次に具体的な海 の再生ニュービジネスに繋げていくための課題について整理した。 6-1 第6章 鉄鋼スラグ等を利用した瀬戸内海再生ニュービジネス創出に向けた課題の整理 6.2 課題の整理 6.2.1 視点①:鉄鋼スラグ等の海域利用に関する課題 「安全・安心」、「効果・有効性」の面から、鉄鋼スラグ等の海域利用に関する現状と課題について整理した。 なお、海域利用の現状については、現状において既にある程度解決済みと考えられる項目と、今後さらなる 検討が必要と考えられる項目に分けて整理を行った。 表- 6.1(1) 鉄鋼スラグ等の海域利用に関する課題のまとめ 項 目 安全・ 安心 安全性に関 する評価基 準、品質管 理 鉄鋼スラグ 等を利用す る場合の環 境への影響 (生態系等) 海域利用の現状 海域利用に関する課題 ・鉄鋼スラグ等を利用する場合の 安全性については、鐵鋼スラグ 協会などにより、基準化やマニュ アル化が進められており、今後環 境 JIS 化などの一歩進んだ取組 や、現在までの検証結果を総合 ◎重金属等の溶出の恐れがある鉄 的に開示するなどの以下のような 鋼スラグの生成条件はわかっている 対応が必要であると考えられる。 ので、そのような鉄鋼スラグは製造 ①海域利用の用途に応じた鉄鋼 所において分別・管理されている。 スラグ等の環境 JIS 化の推進 (鉄鋼スラグ製品) ◎鉄鋼スラグを利用した製品につい ②各機関や企業により行われて ては、「鉄鋼スラグ水和固化体技術 きた様々な実証結果や検証結果 マニュアル」、「鉄鋼スラグ炭酸固化 を総合化・体系化し、分かり易い 体技術マニュアル」などに準拠し、原 形(パンフレット製作やシンポジ 材料及び固化体の品質・安全性を検 ウム開催など)で市民への浸透 証している。 を図る。 (原材料としての鉄鋼スラグ) ◎海洋汚染防止法に定める水底土 砂判定基準に基づく溶出試験を行 い、基準をクリアした鉄鋼スラグが用 いられている。 ◎生物を使った“バイオアッセイ”と いう調査を全国水産技術協会(全漁 連関連先)で実施し、マダイ、クロア ワビ、クルマエビに対する安全性を 確認している。(新日本製鐵株式会 社;ビバリーシリーズ) ・安全性を検証する場合、海域の 状態を考慮した試験の実施が必 要。(嫌気状態下での溶出試験な ど) ◎環境省の環境技術実証事業(閉鎖 性海域における水環境改善技術分 野)などにおいて、鉄鋼スラグ(鉄鋼 スラグ製品)を海域に設置した後の 水質調査や溶出試験などが行われ ており、周辺環境への影響がほとん どないことが示されている。 ・鉄鋼スラグ等を海域利用する場 合の環境への影響については、 これまでに数多くのモニタリング が実施されており、これらの事例 の集約・整理が必要である。 (凡例) ◎・・・既に、ある程度解決済みと考えられる項目 △・・・今後さらなる検討が必要と考えられる項目 6-2 (参考) 陸域利用の現状 ・鉄鋼スラグをコンクリー ト原材料や路盤材等とし て使用する場合はJIS規 格が設けられており、品 質管理、安全管理のた めの基準化は相当進ん でいる。 ・公共工事に利用する 場合の手引やマニュア ルの整備も進んでおり、 それに準拠することで品 質や安全性が担保でき るようになっている。 ・これまで公共工事(コ ンクリート製品、道路・港 湾整備等)の材料に数 多く使用されているが、 周辺環境への悪影響が 報告された事例はほと んどない。 第6章 鉄鋼スラグ等を利用した瀬戸内海再生ニュービジネス創出に向けた課題の整理 表- 6.1 (2) 鉄鋼スラグ等の海域利用に関する課題のまとめ(続き) 項 目 海域利用の現状 海域利用に関する課題 安全・ 安心( 続き) 安全性に △行政関係者へのヒアリングによると、 ・これまでの海域での適用事例をわか 関す る 市 鉄鋼スラグを海域に利用することに対 りやすく整理した一般向けのPR資料 民の理解 する漁業関係者の抵抗感は少なくなっ (パンフレットなど)の充実と、市民・漁 てきているものの、地域によっては温 業者等への普及活動の推進(シンポジ 度差があると考えられる。(全ての漁 ウムなど)が必要である。 業者に対し受け入れられているわけで なない) ・地場の漁協と協働でモデル事業を実 施するようなスキームで、実証を積み △鉄鋼スラグの中には、その生成条件 上げていくことが必要である。 から海域への適用が困難なもの(脱硫 スラグなど)も一部存在するが、市民か ら見ると「鉄鋼スラグ」全体が安全では ないものとしてとらえられるケースも多 い。(鉄鋼スラグの特性が十分理解さ れていない) 効果・ 有効性 鉄鋼スラ グ等を海 域利用す ることのメ リットの検 証 △鉄鋼スラグを用いたプレキャストコン クリート製品など、天然石と同等または それ以上の海藻付着効果が確認され ているものも多い。 (参考) 陸域利用の現状 ・公共工事や肥料 などで普通に鉄鋼 スラグが利用され ており、陸上で使 用することに対し て市民が抵抗感を 持っているというこ とはほとんど無いと 考えられる。 ・鉄鋼スラグ等を海域利用することのメ リットについて、その成果を関係者間で 共有し、体系化した状態で市民にアピ ールしていく必要がある。 △鉄鋼スラグを海域に敷設すること ・現場での適用前に、小規模なフラス で、リン酸態リンの吸着など、従来の材 コ実験、擬似現場実験などによる効果 料(砂)には見られない環境改善効果 の検証が必要である。 が認められている。 ・海外も含めた効果検証データの収 集・整理が必要である。 - ・現地での実証試験では、対照区を設 けるなど、鉄鋼スラグ等の効果や影響 を特定できるような試験方法の検討が 必要である。 効果の持 △鉄鋼スラグを海域利用する場合の環 続性の検 境改善効果について、数年~数十年 単位での検証(モニタリング等)が行わ 証 れていないため、効果の持続性につ いては十分解明されていない。 施工方法 などの技 術的な 課 題への対 応 ・色々な技術の組合せなども含めて、 鉄鋼スラグ等を利用することの優位性 を検討していくことが必要。 ・効果の持続性については、現場レベ ルでの実証例がほとんど無いため、 今後さらに検証を進めていく必要があ る。 (例:製鋼スラグからの鉄分の供給期間 と費用対効果の整理など) ◎鉄鋼スラグを用いたプレキャストコン クリート製品などによる藻場造成につ いては、従来の施工方法がほぼ準用 できるため、施工面での技術的な課題 は少ない。 - ・こ れまで公共工 事(コンクリート製 品、道路・港湾整 備等)の材料に数 多く使用されてお ・特に、干潟造成(覆砂材、中詰材)、 り、施工面での課 △鉄鋼スラグを海域利用する場合のそ 底質改善(覆砂材、浚渫土砂との混合 題は少ない。 の他用途(干潟造成、底質改善など) 等)に用いる場合は、施工方法の確立 については、施工方法などが十分確 とマニュアル(技術指針)化が必要で 立されていない。 ある。 (凡例) ◎・・・既に、ある程度解決済みと考えられる項目 △・・・今後さらなる検討が必要と考えられる項目 6-3 第6章 鉄鋼スラグ等を利用した瀬戸内海再生ニュービジネス創出に向けた課題の整理 6.2.2 視点②:鉄鋼スラグ等を海域利用したビジネス化に向けた課題のまとめ 「市場・ニーズ」、「製品開発・流通」、「製品販売・PR」、「採算性」の面から、鉄鋼スラグ等を海域利用した ビジネスの現状と課題について整理した。なお、海域利用の現状については、現状において、既にある程 度解決済みと考えられる項目と、今後さらなる検討が必要と考えられる項目に分けて整理を行った。 市場・ ニーズ 表- 6.2(1) 鉄鋼スラグ等を海域利用したビジネス化に向けた課題のまとめ 鉄鋼スラグ等を利用した海域における 海域利用に関するビジネスの 項 目 ニュービジネス創出 現状 の課題 鉄鋼スラグ等 △現在、鉄鋼スラグ等の海域利 ・工事に鉄鋼スラグ製品が採用されるた を海域利用で 用に関して需要が高いのは鉄 めには、環境省の環境技術実証事業、 きる可能性が 鋼スラグ製品を用いた藻場造 国交省のNETIS、おかやま Netas、水産 ある場所や、 成であるが、公共工事としての 庁のマニュアル・ガイドラインなど、工事 地域の環境修 利用がほとんどである。 に利用するためには公的機関の「お墨 復ニーズの有 付き」を得る必要がある。 無 △海面養殖業(魚類養殖、貝類 養殖等)についての環境修復 ・藻場造成など、効果がすぐに現れにく ニーズが高い。また、養殖業は い事業は公共事業に頼らざるを得ず、漁 漁業者が直接効果を実感しや 業者自ら投資するには、低コストで効果 すいというメリットがある。 がすぐに現れる(養殖業など)製品でな いと難しい。 鉄鋼スラグ等 を海域利用す るための補助 制度等 △鉄鋼スラグそのものを利用す るための補助制度はないが、水 産庁の水産基盤整備事業な ど、漁場環境修復を目的とした 事業の一環で鉄鋼スラグ製品 を利用できる可能性はある。 ・鉄鋼スラグ等の産業副産物を積極的に 海域利用することに対するインセンティ ブを付加する、または利用を義務付けす るような制度の創設が望まれる。 ・海域環境修復を目的とした事業に鉄鋼 スラグ等を利用するには、鉄鋼スラグを △港湾関連事業では、環境修 利用することによる費用対効果を定量的 復を目的とした補助事業はほと に評価できることが必要である。 んど無い。 ただし、既存護岸の改修時等 ・公共事業に採用してもらえるような規制 に、鉄鋼スラグによる環境改善 緩和や環境負荷の低い製品利用の義務 機能を付加した製品を利用でき 化も含め、省庁連携や官民一体となった る可能性はある。 モデル事業展開が必要である。 (参考) 陸域利用に関する ビジネスの現状 ・セメント需要や公共 工事に使用する製 品など、鉄鋼スラグ に関する市場がある 程度成熟していると 考えられる。 ・鉄鋼スラグ製品の 多くは、2001 年に施 行された、いわゆる グリーン購入法の公 共工事における特定 調達品目(環境負荷 低減に資する製品 等)に指定されてお り、グリーン購入法に よって、国や地方自 治体による積極的な 調達が図られ、土木 資材として全国各地 で有効利用が進展し ていている。 ・海の再生に関する基金や、ビジネスを 実施している企業への認証制度の創設 など、これからのビジネスのあり方の検 討も必要である。 製品開発・ 流通 鉄鋼スラグ等 を海域利用す るための製品 開発 △鉄鋼スラグを利用したプレキ ャストンクリート製品(ランデス (株))、鉄鋼スラグを利用した鉄 分補給ユニット(新日鐵(株);ビ バリーシリーズ)、鉄炭団子を利 用した製品((株)友鉄ランド)な ど、これまでに様々な製品が開 発されている。 ・鉄鋼スラグ等の利用を促進するには、 従来型の製品に比べ低コスト(または同 等のコスト)で、環境改善効果の高い、 付加価値のある製品の開発が必要であ る。 ・漁業者が自ら導入できるような、低コス トでランニングコストが不要な製品の開 発が必要である。 ・地域の実態に合った製品開発が必要 である。(地域特有の海藻を付着させる 製品など) (凡例) ◎・・・既に、ある程度解決済みと考えられる項目 △・・・今後さらなる検討が必要と考えられる項目 6-4 ・陸上におけるセメ ント需要や公共工事 に対応する製品は、 数多く製作されてい る。 第6章 鉄鋼スラグ等を利用した瀬戸内海再生ニュービジネス創出に向けた課題の整理 表- 6.2 (2) 鉄鋼スラグ等を海域利用したビジネス化に向けた課題のまとめ(続き) 項 目 海域利用に関するビジネスの 鉄鋼スラグ等を利用した海域に (参考) おけるニュービジネス創出 陸域利用に関する 現状 製品開発・ 流通( 続き) の課題 製品開発のた ◎鉄鋼メーカーでは、自社製鉄所 ・中小企業の場合、鉄鋼スラグ製 め の 設 備 投 内で鉄鋼スラグの加工、製品開発 品の製作のための新たな設備投 資 などを行っていることが多い。 資は困難であり、従来の設備ま たは一部改良した設備の中で製 △ランデス(株)のように、大手鉄鋼 作できるような製品が望まれる。 メーカー製鉄所敷地内に工場を有 し、鉄鋼スラグ製品を開発・製造し ・今後、鉄鋼スラグを大量かつ安 ているケースもある。 定的に海域利用できる製品があ れば、製鉄所内に工場などの設 備投資を行うことも考えられる。 ビジネスの現状 ・大手鉄鋼メーカーで は、自社製鉄所内で鉄 鋼スラグの加工、製品開 発などを行っていること が多い。 ・ランデス(株)のように、 大手鉄鋼メーカー製鉄 所敷地内に 工場 を 有 し、鉄鋼スラグ製品を開 発・製造しているケース もある。 鉄鋼スラグの ◎鉄鋼メーカーでは、自社製鉄所 ・中小企業の場合、ある程度コン ・鉄鋼メーカー敷地内岸 供給・輸送体 内で鉄鋼スラグの加工などを行っ パクトで輸送コストがかからない 壁からの海上輸送や、ト ラック等による輸送が行 ていることが多く、敷地内の岸壁か 製品の開発が望まれる。 制 われている。 ら海上輸送したり、またはトラック 等で輸送するケースが多い。 製品販売・ PR 製品販売方法 ◎鉄鋼メーカーでは、鉄鋼スラグ ・中小企業の場合、行政がある程 ・鉄鋼メーカーでは、鉄 製品の販売を行う子会社(代理店) 度販路開拓などの支援を行うこと 鋼スラグ製品の販売を 行う子会社を設置し、子 を設置し、子会社を通して全国に も必要である。 会社を通して全国に営 営業・販売を行っているケースが 業・販売を行っているケ 多い。 ースが多い。 製品販売に関 ◎鐵鋼スラグ協会や鉄鋼メーカー ・PR用の冊子・パンフレット製作 ・鐵鋼スラグ協会や鉄鋼 各社が鉄鋼スラグ(鉄鋼スラグ製 のほか、現地での適用事例を増 メーカー各社が鉄鋼スラ するPR 品)のPR用の冊子・パンフレットを やすことで、漁業者等の口コミで グ(鉄鋼スラグ製品)のP 製作している。 販路を拡大していくことも考えら R用の冊子・パンフレット を製作し、主に行政機 れる。 関や建設会社等へのP △冊子・パンフレットは、主に行政 機関(公共工事発注者)や建設会 ・モデル事業を実施し、成果が出 Rが行われている。 社等にPRされるケースが多い。 ればそれを広げていく方法が望 採算性 まれる。 鉄鋼スラグ製 △鉄鋼スラグ製品が海域における ・中小企業の場合、製品開発や 品等の採算性 公共工事に採用される例も増加し 現地での実証実験の費用の一部 ているが、最近の公共工事の減少 を行政が支援するなどの対策が などにより、海域利用に関し毎年安 必要である。 定した収益を得るまでには至って ・地方行政機関や漁業関係者等 いない。 のニーズを把握・分析し、市場規 △鉄鋼スラグ(鉄鋼スラグ製品)の 模の予測から採算性の検討まで 海域利用については、実証実験段 を行うフィージビリティスタディの 階のものが多く、現状では鉄鋼メー 手法を確立する必要がある。 カーなどが事業費を負担している ・公共事業に採用してもらえるよう ケースが多い。 な規制緩和や環境負荷の低い製 △鉄鋼スラグ(鉄鋼スラグ製品)の 品利用の義務化も含め、省庁連 供給先までの距離によっては、輸 携や官民一体となったモデル事 送コストが莫大になることもある。 業展開が必要である。 (凡例) ◎・・・既に、ある程度解決済みと考えられる項目 △・・・今後さらなる検討が必要と考えられる項目 6-5 ・鉄鋼スラグ(鉄鋼スラグ 製品)の販売価格、販売 条件はある程度一般化 され、ビジネスとしても成 立している。 第7章 モデルプロジェクト・ビジネスモデル等の提案及び検討 第7章 モデルプロジェクト・ビジネスモデル等の提案及び検討 7.1 ビジネスモデルの提案 海域における鉄鋼スラグ等を利用したビジネスを活性化するため、以下ではフォーラムが関与するビジネス の範囲を明確にし、具体的なビジネスメニューを提示した。図- 7.1 では海域の環境修復を広く包含するニュー ビジネスの種類を示し、図- 7.2 ではそれらのビジネスが事業規模及び官民事業のどのあたりに位置しそうな事 業かを概念的に示した。図- 7.2 については、フォーラムでの議論・検討を踏まえ、以下のとおりニュービジネス の分類と位置付けを行った。 ・想定されるニュービジネスの分野を、事業規模と官民事業の軸で4つの象限に分類。 ・ビジネスメニューによっては、将来的に事業規模の拡大や民間事業へシフトしていくものと、現在の象限 (分野)の中でビジネスを成熟させていくパターンを考慮。 現在、事業規模の大きいものは公共事業に偏っているが、今後の公共事業の縮小傾向を踏まえると、今後、 第 1~第 4 の各象限でいかにビジネスを創出していくかが課題となる。 また、個別のビジネスモデル(案)は、表- 7.1 に示すとおりである。 ニュービジネスのカテゴリー 海域におけるニュービジネスの種類(案) A:港湾・海岸・漁港整備事業 ◆新たな技術や技術の組合 せにより新たな製品を提供 B:水産資源の保護・培養 C:水底質環境改善 D:生物生息・生育基盤創出 ◆既存の業種・業態の枠組 みを超えた特色のあるサービ スの提供 E:低炭素社会への寄与 F:観光振興 G:その他 図- 7.1 想定されるニュービジネスの種類 7-1 第7章 モデルプロジェクト・ビジネスモデル等の提案及び検討 7-2 図- 7.2 ニュービジネスの各分野の位置付け 第7章 モデルプロジェクト・ビジネスモデル等の提案及び検討 表- 7.1(1) フォーラムが提案する新商品開発・ニュービジネス創出の観点からのビジネスモデル(案) 分 野 A.港湾・海岸・漁港整備事業 ビジネス メニュー ビジネスの概 要 A-1 海洋構造物の新築・改修時に鉄 鋼スラグ固化体製品を適用 A-2 流出防止を目的とした鉄鋼スラ グによる養浜事業 A-3 既設構造物の耐震化に鉄鋼 スラグを適用 ■通常のコンクリート製品と同様の強 度を有し、二酸化炭素発生量も少な い鉄鋼スラグ固化体を護岸や防波堤 などの構造物に利用する。 ■自然砂より比重の重い、高炉水砕 スラグを砂代替材として利用すること により、侵食が続く海岸線を防御す る。 ■高炉水砕スラグを港湾構造物の 耐震化(液状化対策)を目的として 地盤改良材に適用する。 鉄鋼メーカー(製鉄所) 鉄鋼メーカー(製鉄所) 鉄鋼スラグ 提供・販売 材料費 材料費 地場中小企業等 地場中小企業等 スラグ粒状砂の製品 ビジネススキ ームのパター ン 製品購入費 鉄鋼スラグ地盤改良材 高炉水砕スラグ 製品販売 製品購入費 設計 施工 国、地方自治体 委託 請負 鉄鋼スラグ 提供・販売 ゼネコン コンサルタント 高炉水砕スラグ 製品販売 設計 施工 国、地方自治体 委託 請負 ゼネコン コンサルタント ■現状では大部分が公共事業 ■一部民有護岸所有者 ■現状では大部分が公共事業 ■現状では大部分が公共事業 ■一部民有護岸所有者 港湾・漁港及び自然海岸以外の海岸 侵食の著しい海岸 大 大 港湾・漁港及び自然海岸以外の海 岸 中 事業件数 多 少 中 展開方法 既存製品の活用 既存製品の活用 既存製品の活用 海外展開性 有 有 有 側面的効果 鉄鋼スラグ固化体による CO2 の固定 山砂の利用縮減 - ■[水産庁]水産基盤整備事業 (公共) ■[国交省]津波・高潮対策 ■[国交省]国土保全のための海岸浸 食対策 - - ■[水産庁]水産基盤整備事業 (公共) ■[国交省]国土保全のための海岸 浸食対策 - 想定される 顧客 ビジネスの特徴 適用場所 事業当りの 使用規模 適用可能事業 適用事例等 7-3 第7章 モデルプロジェクト・ビジネスモデル等の提案及び検討 表- 7.1(2) フォーラムが提案する新商品開発・ニュービジネス創出の観点からのビジネスモデル(案)(続き) 分 野 B.水産資源の保護・培養 ビジネス メニュー ビジネスの概 要 B-1 鉄鋼スラグ固化体・粒状砂による養殖アサリ場の造成 ■地形が安定した干潟を鉄鋼スラグ固化体・粒状砂で低コストに整備する。造成干潟は鉄鋼スラグによる効果で底生 微細藻類が増殖しやすい環境となる。これより、アサリ定着性と成長速度が高まり、付加価値がつく。 鉄鋼メーカー(製鉄所) 鉄鋼メーカー(製鉄所) 材料費 鉄鋼スラグ 提供・販売 地場中小企業等 鉄鋼スラグ固体化製品の製造 鉄鋼スラグ固化体 製品販売 ビジネススキ ームのパター ン 製品購入費 地場中小企業等 鉄鋼スラグ固体化製品の製造 鉄鋼スラグ 粒状砂製品 販売 鉄鋼スラグ 提供・販売 材料費 地場中小企業等 地場中小企業等 スラグ加工砂の製造 鉄鋼スラグ粒状砂の製造 鉄鋼スラグ 提供・販売 材料費 鉄鋼スラグ 提供・販売 材料費 鉄鋼スラグ粒状砂の製造 スラグ加工砂の製造 鉄鋼スラグ固化体 製品販売 製品購入費 製品購入費 製品購入費 設計 施工 補助金 国 地方自治体 委託 請負 支援 ゼネコン コンサルタント 国 交付金 企業体(地域協議会) NPO 漁協 ■現状では大部分が公共事業 ■企業体(地域協議会)など 沿岸域の浅海部 沿岸域の浅海部 中 中 少 中 海外展開性 固化体:既存製品の活用 粒状砂:新製品の開発 有 固化体:既存製品の活用 粒状砂:新製品の開発 有 側面的効果 鉄鋼スラグ固化体による CO2 の固定 鉄鋼スラグ固化体による CO2 の固定 ■[水産庁]水産基盤整備事業(公共) ■[水産庁]水産基盤整備事業(公共) - - ビジネスの特徴 適用場所 事業当りの 使用規模 事業件数 展開方法 適用可能事業 適用事例等 ゼネコン 釣り場や潮干狩り場の造成運営 地 協定締結 方 自 治 体 想定される 顧客 鉄鋼スラグ 粒状砂製品 販売 7-4 第7章 モデルプロジェクト・ビジネスモデル等の提案及び検討 表- 7.1(3) フォーラムが提案する新商品開発・ニュービジネス創出の観点からのビジネスモデル(案)(続き) 分 野 B.水産資源の保護・培養 B-2 かき筏への珪藻供給商品 B-3 人工海底マウンドによる水産基盤整備 ■かきの餌となる珪藻類が増殖できる環境を創出 し、かきの身肉重量を大きくすることでブランド化を 目指す。 ■鉄鋼スラグ製品を利用した人工海底マウンド設置による栄 養塩の湧昇と珪藻供給の相乗効果による基礎生産の増加や 漁獲増加を目指す。 ■水産事業者 ■現状では大部分が公共事業 かき養殖筏 潮流の速い大水深海域 小 大 事業件数 多 少 展開方法 新製品の開発 既存製品の活用 海外展開性 無 有 側面的効果 - 鉄鋼スラグ固化体による CO2 の固定 - ■[水産庁]水産基盤整備事業(公共) - - ビジネス メニュー ビジネスの概 要 ビジネススキ ームのパター ン 想定される 顧客 ビジネスの特徴 適用場所 事業当りの 使用規模 適用可能事業 適用事例等 7-5 第7章 モデルプロジェクト・ビジネスモデル等の提案及び検討 表- 7.1(4) フォーラムが提案する新商品開発・ニュービジネス創出の観点からのビジネスモデル(案)(続き) 分 野 B.水産資源の保護・培養 C.水底質環境改善 ビジネス メニュー ビジネスの概 要 B-4 B-1~B-3 の技術を融合化した海洋牧場事業 C-1 高炉水砕スラグによる覆砂 ■鉄鋼スラグ製品の多面的利用により水産資源の 保護・培養を一歩進め、計画的な漁獲量の確保を 目的とした海洋牧場を整備する。 ■海底泥からの硫化物、リン溶出を抑制する効果、底泥の巻 きあがり抑制効果等による水底質環境の改善とともに、生物多 様性の確保を目指す。 鉄鋼メーカー(製鉄所) 鉄鋼スラグ 提供・販売 材料費 鉄鋼スラグ 提供・販売 材料費 地場中小企業等 地場中小企業等 鉄鋼スラグ固体化製品の製造 スラグ加工砂の製造 鉄鋼スラグ粒状砂の製造 鉄鋼スラグ固化体 製品販売 ビジネススキ ームのパター ン 製品購入費 鉄鋼スラグ 粒状砂製品 販売 製品購入費 支援 国 交付金 企業体(地域協議会) NPO 漁協 ゼネコン 釣り場や潮干狩り場の造成運営 地 協定締結 方 自 治 体 ■企業体(地域協議会)など ■現状では大部分が公共事業 沿岸域全体 閉鎖性海域の底質悪化地域 大 中 少 中 既存製品の活用 海外展開性 固化体:既存製品の活用 粒状砂:新製品の開発 有 側面的効果 鉄鋼スラグ固化体による CO2 の固定 山砂の利用縮減 ■[水産庁]漁場環境保全・被害対策事業 ■[国交省]海域環境自然再生事業 - ■中海 想定される 顧客 ビジネスの特徴 適用場所 事業当りの 使用規模 事業件数 展開方法 有 適用可能事業 適用事例等 7-6 第7章 モデルプロジェクト・ビジネスモデル等の提案及び検討 表- 7.1(5) フォーラムが提案する新商品開発・ニュービジネス創出の観点からのビジネスモデル(案)(続き) 分 野 D.生物生息・生育基盤創出 E.低炭素化社会への寄与 D-1 鉄鋼スラグ製品による藻場・干潟の造成 E-1 鉄鋼スラグ固化体等の利用により削減された CO2 の排出 権化 ■二価鉄イオンや SiO2 の供給による藻類の増殖促 進によって、生物生育基盤となる藻場や干潟にお ける餌場環境が整備され、生物生育場としての整 備を目指す。 ■鉄鋼スラグ製品の製造過程における CO2 削減量を排出権化 し、製品に付与して販促を図る。 ■現状では大部分が公共事業 ■排出権の販売先はほとんどが民間 沿岸域の浅海部 - 大 小 中 多 既存製品の活用 海外展開性 固化体:既存製品の活用 粒状砂:新製品の開発 有 側面的効果 鉄鋼スラグ固化体による CO2 の固定 - ■[水産庁]水産基盤整備事業(公共) ■[経済産業省、環境省] 排出量取引の国内統合市場の試行的実施 ■広島県因島、岡山県新見市、岡山県牛窓港、東 京都城南島、川崎港東扇島、川崎港浅野運河 他 ■1ha の藻場造成を想定した場合、水和固化体で代替すること によって 538 トン-CO2/ha 削減できると試算されている。(水 産庁資料より) ビジネス メニュー ビジネスの概 要 ビジネススキ ームのパター ン 想定される 顧客 ビジネスの特徴 適用場所 事業当りの 使用規模 事業件数 展開方法 有(CDM として) 適用可能事業 適用事例等 7-7 第7章 モデルプロジェクト・ビジネスモデル等の提案及び検討 表- 7.1(6) フォーラムが提案する新商品開発・ニュービジネス創出の観点からのビジネスモデル(案)(続き) 分 野 E.低炭素化社会への寄与 E-2 育成した藻類を燃料化することによる CO2 削減 事業 E-3 アマモ場造成により吸収される CO2 の排出権化 ■海藻類を刈り取り、バイオエタノールなどへ転換 し、エネルギーとして販売する。 ■砂泥質の地盤にアマモ場を造成し、光合成によりアマモ草 体に取り込まれる二酸化炭素量を新たな排出権として取引す る。 ■漁協や水産事業者 ■排出権市場 沿岸域の浅海部 沿岸域の浅海部 中 中 事業件数 少 少 展開方法 新製品の開発 新製品の開発 海外展開性 有 有 側面的効果 化石燃料利用の縮減 - ■[経済産業省、環境省] 排出量取引の国内統合市場の試行的実施 ■[経済産業省、環境省] 排出量取引の国内統合市場の試行的実施 ■東北大学の研究チームによりバイオエタノール の抽出技術が研究されている。 - ビジネス メニュー ビジネスの概 要 ビジネススキ ームのパター ン 想定される 顧客 ビジネスの特徴 適用場所 事業当りの 使用規模 適用可能事業 適用事例等 7-8 第7章 モデルプロジェクト・ビジネスモデル等の提案及び検討 表- 7.1(7) フォーラムが提案する新商品開発・ニュービジネス創出の観点からのビジネスモデル(案)(続き) 分 野 F.観光振興 ビジネス メニュー ビジネスの概 要 F-1 管理釣り場や潮干狩り場の造成・運営 F-2 漁業体験型グリーンツーリズムの運営 ■民間企業、漁協等による企業体が計画、設計、 施工、管理・運営まで一貫して実施し、新たなレジ ャー施設として経営を目指す。 ■魚礁設置や藻場・干潟造成などによる水産基盤の整備によ り、漁業体験も可能な場を提供し、これを観光資源としてビジ ネス化する。 鉄鋼メーカー(製鉄所) 鉄鋼メーカー(製鉄所) 鉄鋼スラグ 提供・販売 材料費 材料費 鉄鋼スラグ 提供・販売 材料費 鉄鋼スラグ 提供・販売 地場中小企業等 地場中小企業等 地場中小企業等 鉄鋼スラグ固体化製品の製造 製品購入費 ビジネススキ ームのパター ン 製品販売 製品購入費 地場中小企業等 鉄鋼スラグ固体化製品の製造 鉄鋼スラグ粒状砂の製造 スラグ加工砂の製造 鉄鋼スラグ 提供・販売 材料費 鉄鋼スラグ粒状砂の製造 スラグ加工砂の製造 鉄鋼スラグ 固化体製品販売 鉄鋼スラグ粒状砂 製品販売 製品購入費 製品販売 製品購入費 企業体 観光会社 漁協 企業体 ゼネコン 観光会社 釣り場や潮干狩り場の造成運営 漁協 旅館 漁場・干潟・藻場の整備・運営・水揚げ 漁業体験型グリーンツーリズム 参加 ・観光客 参加費 ■企業体、漁協や観光会社などの単独企業 ■一部公共事業 ■企業体、漁協や観光会社などの単独企業 ■一部公共事業 沿岸域の浅海部 漁村など 大 中 中 中 海外展開性 固化体:既存製品の活用 粒状砂:新製品の開発 有(製品・ノウハウのパッケージ) 固化体:既存製品の活用 粒状砂:新製品の開発 有(製品・ノウハウのパッケージ) 側面的効果 鉄鋼スラグ固化体による CO2 の固定 鉄鋼スラグ固化体による CO2 の固定 ■[水産庁]漁場環境保全・被害対策事業 ■[観光庁]観光地域づくりプラットフォーム支援事 業 ■[水産庁]漁場環境保全・被害対策事業 ■[水産庁]水産基盤整備事業(公共) ■[観光庁]観光地域づくりプラットフォーム支援事業 - - 想定される 顧客 ビジネスの特徴 適用場所 事業当りの 使用規模 事業件数 展開方法 適用可能事業 適用事例等 7-9 第7章 モデルプロジェクト・ビジネスモデル等の提案及び検討 表- 7.1(8) フォーラムが提案する新商品開発・ニュービジネス創出の観点からのビジネスモデル(案)(続き) 分 野 G.その他 ビジネス メニュー ビジネスの概 要 G-1 ため池の水質・底質浄化製品の製造・販売 G-2 一般家庭向け消臭材の製造・販売 ■鉄鋼スラグの持つリン吸着機能や多孔質な性質 を活用し、ため池に流入する汚水のろ過装置を製 造・販売する。 ■鉄鋼スラグの持つ硫化水素吸着機能などを活用し、自宅周 辺の排水路や、ゴミ保管場所での消臭を目的とした製品を製 造・販売する。(ホームセンターで販売している肥料のように、 10L程度の袋詰めで販売する) ■鉄鋼スラグの持つリン吸着機能や硫化水素吸着 機能などを活用し、ため池の底質改善を目的とした 製品を製造・販売する。 購入費 ビジネススキ ームのパター ン ■ゴルフ場 ■公園等の管理者 ■ため池管理者(土地改良区等) ■一般家庭(個人) ■リゾート施設(快適な空間づくりが求められる施設) ゴルフ場や公園の修景池や農業用ため池など 民家周辺排水路など 中 小 事業件数 多 多 展開方法 新製品の開発 新製品の開発 海外展開性 有 有 側面的効果 - - ■[農林水産省]土地改良事業(ため池) ■[NEDO]イノベーション推進事業 ■ため池水質浄化対策としては、これまで様々な 技術が適用されている。 ■類似製品として、人工ゼオライトを用いた消臭剤が販売さ れている。 想定される 顧客 ビジネスの特徴 適用場所 事業当りの 使用規模 適用可能事業 適用事例等 7-10 第7章 モデルプロジェクト・ビジネスモデル等の提案及び検討 表- 7.1(9) フォーラムが提案する新商品開発・ニュービジネス創出の観点からのビジネスモデル(案)(続き) 分 野 G.その他 ビジネス メニュー ビジネスの概 要 G-3 水槽向けのろ過装置・ろ材の製造・販売 G-4 健康製品の製造・販売 ■熱帯魚飼育水槽や活魚いけすに設置する、水質 浄化効果の高いろ過装置(フィルター)またはろ材 を製造・販売する。(鉄鋼スラグの持つリンなどの吸 着機能、多孔質な性質を活用) ■鉄鋼スラグ製品で藻場を造成し、育成した海藻類を刈り取 り、健康製品を販売する。 ■水草(淡水)飼育水槽向けに、鉄鋼スラグの鉄イ オン溶出機能を活用した、水草育成効果の高いろ 過装置(フィルター)またはろ材を製造・販売する。 購入費 ビジネススキ ームのパター ン ■一般家庭(個人) ■飲食店(活魚いけす) ■熱帯魚店、養鯉場、インテリア水槽販売・管理会 社 ■活魚輸送車製造メーカー 家庭用水槽など ■一般家庭(個人) ■リゾート施設(タラソテラピーでの活用) 小 小 事業件数 多 多 展開方法 新製品の開発 新製品の開発 海外展開性 有 有 側面的効果 - - ■[NEDO]イノベーション推進事業 ■[NEDO]イノベーション推進事業 ■類似製品として、ゼオライトや活性炭、多孔質の 石を利用した熱帯魚水槽向けのろ材が販売されて いる。 - 想定される 顧客 ビジネスの特徴 適用場所 事業当りの 使用規模 家庭やリゾート施設など 適用可能事業 適用事例等 7-11 第7章 モデルプロジェクト・ビジネスモデル等の提案及び検討 7.2 ビジネス化に向けた課題 7.1 の検討結果に基づき、今後の各ビジネスメニューのビジネス化に向けた課題を整理すると、表- 7.2 のと おりである。 表- 7.2(1) ビジネス化に向けた課題 分野 ビジネスメニュー ビジネスの概要 ビジネス化に向けた課題 ■通常のコンクリート製品と同様の強度を 有し、二酸化炭素発生量も少ない鉄鋼ス ラグ固化体を護岸や防波堤などの構造物 に利用する。 □省庁横断的な製品の広報・PR □公的機関によるガイドライン化 □公共事業へのリサイクル製品の一定量以上 の利用義務付けの推進 A-2 ■自然砂より比重の重い、高炉水砕スラ 流出防止を目的とした グを砂代替材として利用することにより、 鉄鋼スラグによる養浜 侵食が続く 海岸線を防御する。 事業 □養浜工事における算定 □公的機関による効果の確認とガイドライン化 □公共事業へのリサイクル製品の一定量以上 の利用義務付けの推進 A . 港湾 ・ A-1 海岸・漁港 海洋構造物の新築・改 整備事業 修時に鉄鋼スラグ固化 体製品を適用 B.水産資 源の保護・ 培養 A-3 既設構造物の耐震化に 鉄鋼スラグを適用 ■高炉水砕スラグを港湾構造物の耐震化 □耐震工事における慣用対効果の算定 (液状化対策)を目的として地盤改良材に □公的機関による効果の確認とガイドライン化 適用する。 □公共事業へのリサイクル製品の一定量以上 の利用義務付けの推進 B-1 鉄鋼スラグ固化体・粒状 砂による養殖アサリ場 の造成 ■地形が安定した干潟を鉄鋼スラグ固化 □養殖アサリの大型化の実証及び広報 体・粒状砂で低コストに整備する。造成干 □公的機関によるガイドライン化 潟は鉄鋼スラグによる効果で底生微細藻 類が増殖しやすい環境となる。これより、 アサリ定着性と成長速度が高まり、付加価 値が付く。 ■かきの餌となる珪藻類が増殖できる環 □ブランド化のための実証データ整備と広報 境を創出し、かきの身肉重量を大きくする ことでブランド化を目指す。 B-2 かき筏への珪藻供給商 品 B-3 人工海底マウンドによる 水産基盤整備 ■鉄鋼スラグ製品を利用した人工海底マ □鉄鋼スラグ製品効果の定量化(栄養塩濃度 ウンド設置による栄養塩の湧昇と珪藻供 や珪藻量及び漁獲量など) 給の相乗効果による基礎生産の増加や □公的機関によるガイドライン化 漁獲増加を目指す。 B-4 B-1~B-3 の技術を 融合化した海洋牧場事 業 ■鉄鋼スラグ製品の多面的利用により水 □養殖アサリの大型化の実証及び広報 産資源の保護・培養を一歩進め、計画的 □鉄鋼スラグ製品の効果の定量化(栄養塩濃度 な漁獲量の確保を目的とした海洋牧場を や珪藻量及び漁獲量など) 整備する。 C.水底質 C-1 環境改善 高炉水砕スラグによる 覆砂 ■海底泥からの硫化物、リン溶出を抑制 する効果、底泥の巻きあがり抑制効果等 による水底質環境の改善とともに、生物多 様性の確保を目指す。 □鉄鋼スラグ製品の効果の定量化(溶出抑制、 吸着巻きあがり抑制、生物生息など) □公的機関によるガイドライン化 □公共事業へのリサイクル製品の一定量以上 の利用義務付けの推進 D.生物生 D-1 息・生育基 鉄鋼スラグ製品による 盤創出 藻場・干潟の造成 ■二価鉄イオンや SiO2 の供給による藻類 の増殖促進によって、生物生育基盤とな る藻場や干潟における餌場環境が整備さ れ、生物生育場としての整備を目指す。 □産官学連携による鉄鋼スラグを利用した藻 場・干潟における生物生息環境の評価と広報 の実施 □公共事業へのリサイクル製品の一定量以上 の利用義務付けの推進 7-12 第7章 モデルプロジェクト・ビジネスモデル等の提案及び検討 表- 7.2 (2) ビジネス化に向けた課題(続き) 分野 E.低炭素 化社会へ の寄与 ビジネスメニュー E-1 鉄鋼スラグ固化体等の 利用により削減された CO2 の排出権化 ビジネスの概要 ビジネス化に向けた課題 ■鉄鋼スラグ製品の製造過程における CO2 削減量を排出権化し、製品に付与し て販促を図る。 □鉄鋼スラグ製品による CO2 削減量の定量化 □確実な排出権の認証 E-2 ■海藻類を刈り取り、バイオエタノールな 育成した藻類を燃料化 どへ転換し、エネルギーとして販売する。 することによる CO2 削減 事業 E-3 アマモ場造成により吸 収される CO2 の排出権 化 F.観光振 F-1 興 管理釣り場や潮干狩り 場の造成・運営 F-2 漁業体験型グリーンツ ーリズムの運営 G.その他 □収量や収率の予測による F/S の実施 □転換技術の確立・汎用化 ■砂泥質の地盤にアマモを造成し、光合 □アマモによる定量的な CO2 固定量評価方法 成によりアマモ草体に取り込まれる二酸 の確立 化炭素量を新たな排出権として取引す □確実な排出権の認証 る。 ■民間企業、漁協等による企業体が計 □需要予測に基づく F/S の実施 画、設計、施工、管理・運営まで一貫して □ローコストな運営管理体制の確立 実施し、新たなレジャー施設として経営を 目指す。 ■魚礁設置や藻場・干潟造成などによる 水産基盤の整備により、漁業体験も可能 な場を提供し、これを観光資源としてビジ ネス化する。 □需要予測に基づく F/S の実施 □漁業体験場所のウリ、ターゲットの明確化 G-1 ■鉄鋼スラグの持つリン吸着機能や多孔 □需要予測に基づく F/S の実施 ため池の水質・底質浄 質な性質を活用し、ため池に流入する汚 □効果の検証・流通・販売ルートの確立 化製品の製造・販売 水のろ過装置を製造・販売する。 ■鉄鋼スラグの持つリン吸着機能や硫化 水素吸着機能などを活用し、ため池の底 質改善を目的とした製品を製造・販売す る。 G-2 ■鉄鋼スラグの持つ硫化水素吸着機能 □需要予測に基づく F/S の実施 一般家庭向け消臭材の などを活用し、自宅周辺の排水路や、ゴミ □効果の検証・流通・販売ルートの確立 製造・販売 保管場所での消臭を目的とした製品を製 造・販売する。(ホームセンターで販売し ている肥料のように、10L程度の袋詰めで 販売する) G-3 水槽向けのろ過装置・ ろ材の製造・販売 ■熱帯魚飼育水槽や活魚いけすに設置 □需要予測に基づく F/S の実施 する、水質浄化効果の高いろ過装置(フィ □ろ過効果の検証及び pH の上昇抑制 ルター)またはろ材を製造・販売する。(鉄 □流通・販売ルートの確立 鋼スラグの持つリンなどの吸着機能、多 孔質な性質を活用) ■水草(淡水)飼育水槽向けに、鉄鋼スラ グの鉄イオン溶出機能を活用した、水草 育成効果の高いろ過装置(フィルター)ま たはろ材を製造・販売する。 G-4 健康製品の製造・販売 ■鉄鋼スラグ製品で藻場を造成し、育成 □需要予測に基づく F/S の実施 した海藻類を刈り取り、健康製品を販売 □流通・販売ルートの確立 する。 7-13 第7章 モデルプロジェクト・ビジネスモデル等の提案及び検討 7.3 ビジネス展開の方法の整理と課題解決に向けた方策、フォーラムの支援機能(案) 7.3.1 ビジネス展開の方法の整理 鉄鋼スラグ等を利用して新たな製品を開発し、展開していくため、現状で採られている方法を各企業等へ の聞きとり調査に基づき整理した。 試作~製品化段階、製品化~販売段階での従来のビジネス展開の方法は、表- 7.3 に示すとおりである。 表- 7.3(1) ビジネス展開の方法 分 類 展開方法 試作~製品化段階 《基本型》 《公的実証活用型》 ◆製品化のための基礎研究から開始し、試作、 ◆公的機関の実証事業を活用し、製品の効果や 室内試験、結果の公表、現地実証を経て本格 環境影響を第三者に確認してもらう方法。 的な販売へと展開する方法。 展開 スキーム 長短所 □オーソドックスな手法であり、対外的な理解は □第三者認証が得られれば、対外的なアピール 得やすい。 □:長所 ■:短所 備 考 度が増し、製品価値の向上につながる。 ■製品化まで時間・コスト・手間がかかり、費用対 効果に劣る。 - ・環境分野では環境省の環境技術実証事業の 例がある。 7-14 第7章 モデルプロジェクト・ビジネスモデル等の提案及び検討 表- 7.3 (2) ビジネス展開の方法(続き) 分 類 展開方法 試作~製品化段階(続き) 《小型実証積み上げ型》 《自社敷地活用型》 ◆開発者が独自に実証先と調整し、試作品を低 ◆自社敷地やその前面海域を活用して、実事業 価格または無償で提供し、その効果を独自に 規模に近い事業を行い、開発者自ら長期モニ 収集して製品化に展開する方法。 タリングを行う方法。 展開 開発者 スキーム 試作 社会的認知や製品知 名度を上げる方法 室内試験 試作品提供 モニタリング 実証先 (漁協等) 製品化 長短所 □最終ユーザーである漁協の協力のもとに実 際の漁場での効果が確認できる点が効果大 □:長所 ■:短所 □実スケールのショールームと位置付けられ、利 用者に対する説得力がある。 ■モニタリングも開発者自身が行う場合が多く、 である。 ■モニタリングも開発者自身が行う場合が多く、 評価の客観性に欠ける。 ■製品化までのコストがかかり、製品化までの企 評価の客観性に欠ける。 ■製品化までのコストがかかり、企業体力を要す 業体力を要する。 る。 備 考 - - 7-15 第7章 モデルプロジェクト・ビジネスモデル等の提案及び検討 表- 7.3 (3) ビジネス展開の方法(続き) 分 類 展開方法 製品化~販売段階 《お墨付き型》 《技術協会設立型》 ◆国交省の NETIS や全漁連の安全確認認証制 ◆当該製品を共同開発した企業連合や製造可 度等を活用して、第三者による製品の保証を 能な企業連合が集結し、技術協会を設立し 行ってもらい、販売を加速化させる。 て、販売展開を行う。 展開 スキーム 長短所 □第三者機関によるお墨付きで製品の客観的な □団体行動により、客観性や情報発信力が 効果等が保証され、PR 材料として活用できる。 増す。 □:長所 ■制度そのものの知名度が低く、PR 材料となら ■時間・コスト・手間がかかり、企業体力を要す ■:短所 ない場合もある。 備 考 ・国交省の新技術情報提供システム(NETIS) る。 ・全漁連の製品安全確認認証制度 ・スラグ関係ではハレーサルト工業会やカルシア 改良土研究会等がある。 7-16 第7章 モデルプロジェクト・ビジネスモデル等の提案及び検討 表- 7.3 (4) ビジネス展開の方法(続き) 分 類 展開方法 製品化~販売段階(続き) 《廉価販売型》 《プレゼン型》 ◆社会に広く浸透するまでは、採算を度外視し ◆発注者、設計者、利用者などへ直接製品アピ た廉価により販売し、実証を積み上げていく方 ールを行ったり、展示会や見本市へ積極的に 法。 出展することにより製品の社会認知を高めて いく方法。 展開 スキーム 長短所 □クチコミでの展開が期待できる。 ■地道な取り組みが必要で、効果は急に現れな ■廉価販売のため製造・販売者に企業体力が必 □:長所 要となる。 ■時間・コスト・手間がかかり、企業体力を要す ■:短所 備 考 い。 る。 - - 7-17 第7章 モデルプロジェクト・ビジネスモデル等の提案及び検討 7.3.2 課題解決に向けた方策と、フォーラムの支援機能(案) 「7.3.1 ビジネス展開の方法の整理」で示したビジネス展開の段階毎に現状での課題を抽出し、課題解決 方策を整理すると図- 7.3 のとおりとなり、フォーラムの支援機能(案)としては、「コーディネート機能」、「情報 発信機能」の2つに集約される。 7-18 第7章 モデルプロジェクト・ビジネスモデル等の提案及び検討 7-19 図- 7.3 課題解決のために求められるフォーラムの支援機能 第7章 モデルプロジェクト・ビジネスモデル等の提案及び検討 7.4 モデルプロジェクト(例) ビジネスを加速していくためのフォーラムの大きな役割として、モデルプロジェクトの企画・実施が考えられる が、モデルプロジェクトの内容は個々のモデルプロジェクトに参画する企業が指向する製品により異なることと なる。ここでは、現状で想定されるモデルプロジェクトとそのステップを例示する。 表- 7.4(1) ビジネス加速化のためのモデルプロジェクト(例) プロジェクト No. 概 要 No.1:アサリ養殖干潟への鉄鋼スラグ製品の利用 アサリ養殖干潟の外周潜堤へ固化体、干潟材料に粒状体を利用してアサリ養殖用 の人工干潟を造成し、実際にアサリを育成する。また、自然石+山砂で造成した対 象干潟との比較を行う。 モデルプロジェクトの 干潟の形状維持のみならず、アサリの生育、個体数、底生生物活性、捨石への藻 目的 の付着等の付加価値を確認し、製品の有用性を確認する。 実施イメージ 平面図 モデルプロジェクトの ステップ 適用可能な補助スキ 【水産庁】漁場環境保全・被害対策事業 ーム 7-20 第7章 モデルプロジェクト・ビジネスモデル等の提案及び検討 表- 7.4 (2) ビジネス加速化のためのモデルプロジェクト(例) プロジェクト No. 概 要 No.2:鉄鋼スラグ製品により造成した藻場を排出権化し魚類へ付加してブランド化 鉄鋼スラグ固化体や粒状砂でアマモ場を造成し、通常のコンクリート二次製品や鋼 製藻場との製造に係る二酸化炭素の排出量の差を排出権化し、そのエリアで漁獲 された魚類に付加して、排出権付き魚介類としてプランド化販売する。 モデルプロジェクトの 鉄鋼スラグ製品の一次的機能にプラスアルファの機能が加われば、他の製品との 目的 差別化が可能となるが、プラスアルファの機能が社会的に活用でき、また、認知さ れるかを実証する。 実施イメージ モデルプロジェクトの ステップ 適用可能な補助スキ 【水産庁】水産基盤整備事業(公共) ーム 7-21 第7章 モデルプロジェクト・ビジネスモデル等の提案及び検討 表- 7.4 (3) ビジネス加速化のためのモデルプロジェクト(例) プロジェクト No. 概 要 No.3:かき養殖周辺への複合的利用による養殖場再生 かき筏下の劣化した底質を改善するとともに、かきの生育に適した養殖場環境を再 生する。 モデルプロジェクトの 鉄鋼スラグをかき筏下の底質改善材料として利用した場合の効果を確認する。ま 目的 た、かきの生育状況について確認し、かき個体の付加価値を確認する。 実施イメージ モデルプロジェクトの ステップ 適用可能な補助スキ 【水産庁】漁場環境保全・被害対策事業 ーム 7-22 第8章 シンポジウムの開催 第8章 シンポジウムの開催 8.1 目的と実施内容 中国経済産業局では低炭素社会プロジェクトの一つとして、鉄鋼スラグ等を利用した海の再生ニュービジネ ス創出に向けて、平成 22 年 9 月より地域の産学官・他省庁との連携のもと、推進フォーラムを立ち上げ、調査・ 検討を行った。 フォーラムの取り組み概要についての報告、並びにビジネスの具体化、ネットワークの更なる拡大を目的とし て平成 23 年 2 月 16 日に「海の再生ニュービジネス創出シンポジウム」を開催した。 【シンポジウムの概要】 名 称:海の再生ニュービジネス創出シンポジウム 主 催:経済産業省中国経済産業局 協 力:(社)日本鉄鋼連盟、(社)中国地域ニュービジネス協議会 開催日時:平成 23 年 2 月 16 日(水) 14:00~17:00(開場 13:30) 会 場:八丁堀シャンテ 3階 鯉城(梅) 広島市中区上八丁堀 8-28 一般参加者:81名 【講演者及びパネリスト】 参加区分 所属・役職 氏 名 基調講演者/コーディネータ 広島工業大学 大学院 環境学部 教授 特別講演者/パネリスト パネリスト 上嶋 英機 氏 株式会社船井総合研究所 第一経営支援部 下川 譲 氏 ランデス株式会社 代表取締役社長 大月 隆行 氏 社団法人日本鉄鋼連盟 鉄鋼スラグ海域利用促進WG委員 松本 剛 株式会社ビジネススタッフ 代表取締役社長 宮原 正典 氏 中国経済産業局 地域経済課 課長 村上 英夫 氏 氏 【プログラム】 14:00 主催者挨拶 中国経済産業局 地域経済部長 湯浅 憲義 【第一部】 講演 14:05~14:45 基調講演 『海の再生に向けた取り組みの現状と課題』 広島工業大学 大学院 環境学部 教授 14:45~15:25 特別講演 上嶋 英機 氏 『環境ビジネス最前線 ~環境ビジネスを新規に立ち上げる方法~ 』 株式会社船井総合研究所 第一経営支援部 下川 譲 氏 15:25~15:40 休憩 【第二部】 パネルディスカッション 15:40~17:00 『海の再生ニュービジネス創出に向けた課題と展望』 8-1 第8章 シンポジウムの開催 8.2 シンポジウムの開催結果 8.2.1 基調講演要旨 (1) 瀬戸内海の環境の現状 過去から現在に至る瀬戸内海の赤潮の発生状況や貧酸素水塊の 発生状況、干潟や藻場の減少傾向などを数値的に指摘した。 (2) 環境修復に向けた取り組みの状況 政策面での取り組みとして、瀬戸内海における水環境関連の施策 概要を述べ、産業副産物であるスラグの環境修復資材としての利用 の可能性を提示した。 次に、これまで瀬戸内海各地で実施されてきた環境修復に関する 実証事業について、大阪湾尼崎地区、備讃瀬戸味野湾、呉港阿賀地 区の順に、その事業概要や得られた成果の紹介がなされた。 (3) 海の再生を加速化していくために 海の再生を加速化していくための課題を、「技術的な課題」と「ビジネス化に向けた課題」に分類し、技術 的課題として、効果の持続性や環境への安全性に関する検証、空間配置技術の確立の重要性を、またビジ ネス化に向けた課題として、データの見える化や実証の積み重ね、成功事例の創出の重要性を指摘し、課 題解決のヒントをつかみ取る”場”の創出が必要であることを提示した。 8.2.2 特別講演要旨 環境ビジネス全般に対する現状認識を整理した後、各環境ビジネス が、導入~成長~成熟~移行~安定のどの時期にあるのかを示唆。さ らに中期的な環境ビジネスのマーケット推移を提示した。 次に環境ビジネスの特性を整理したうえで、新規開発に向けてのステ ップフローや参入手法及び商品の売り方等について解説した後、商品・ サービスの展開の具体例を示した。 8.2.3 パネルディスカッション要旨 (1) パネラーによる取り組みの紹介等 ①【復建調査設計㈱ 山本 裕規】 パネラーによる取り組み紹介に先立ち、平成 22 年 9 月より 4 回にわたって開催された「海の再生ニュービ ジネス創出プロジェクト推進フォーラム」の概要と得られた成果、ビジネス化に向けた課題、フォーラムの今 後の方向性について報告がなされた。 ②【ランデス㈱ 代表取締役社長 大月 隆行 氏】 ■会社概要 プレキャストコンクリート等のコンクリート 2 次製品の開発と製造販売を事業としてきた。これからは、従来の 商品に加えて、自然を育むあらゆる技術とサービスの提供を行っていきたい。 8-2 第8章 シンポジウムの開催 ■鉄鋼スラグを利用した製品製造業者の立場からの事例提供 鉄鋼スラグ水和固化体を細骨材や粗骨材に使用した生コンの製造 は、中国経済産業局の平成14・15 年度 新規産業創造技術開発費補 助金事業の適用をうけている。(ランデス倉敷工場「JFE スチール株式 会社西日本製鉄所倉敷地区内」) 鉄鋼スラグ水和固化体を細骨材・粗骨材に使用したコンクリート二 次製品は、コンクリートと同等の強度を持ちながら、高密度で高磨り減 り抵抗性があり、アルカリ度が低く材料製造時の CO2 排出量を低減で きるなどの特徴を持つ。 岡山県内では普通コンクリートと同等の価格で製品を供給可能である。これまでに、プレキャスト製品 11,709tと生コン 5,772 m3 の実績がある。 適用事例としては、岡山県エコ製品の登録を受けた「河川根固めブロック」「海洋藻場造成ブロック」などが ある。 現在、高炉スラグを用いた新製品として、耐硫酸性コンクリート「ハレーサルト」を提供している。高炉スラグ の使用割合が高い、高強度である、硫酸塩に強い、CO2排出量の削減が可能、塩害に強い等の特徴を持っ ている。海洋分野への取り組みとして、鉄鋼スラグ水和固化体と共に、ハレーサルトも利用量拡大を目指し 展開している。 ③【(社)日本鉄鋼連盟 松本 剛 氏】 ■環境資材としての海域利用(日本鉄鋼連盟の活動内容) 鉄鋼スラグの海域利用により期待される効果として、未利用資源の 有効活用、海域環境の修復、水産基礎生産力の向上、CO2 排出量削 減への寄与があげられる。また、海域環境修復の効用として、藻場・ 潜堤・離岸堤に使用することで、二価鉄(Fe2+)、珪酸(SiO2)、炭酸固 化体 (CaCO3)などによる藻類育成効果がある。さらに藻場ができる ことで水産基礎生産力の向上と収穫した海藻での CO2 固定、バイオ マスエネルギーへの転換も可能である。 別の用途として干潟・浅場・覆砂・深掘れ埋戻しにスラグ製品単体 または軟弱浚渫土と混合して利用することで、赤潮抑制(Ca によるリンの吸着)や青潮抑制(高pH、鉄分によ る H2S 抑制)が期待できる。 以上の効果を利用し、鉄鋼スラグ製品によって、貧酸素・ヘドロ・磯焼けの海を、自己浄化機能をもち魚介 類の「ゆりかご」となる藻場・浅場・干潟に変えていきたいと考えている。 また、社団法人日本鉄鋼連盟の取り組みの一つとして、製鋼スラグを海域で安全に利用するための条件 検討と実海域実験を踏まえた効果の検証を目的とした研究開発を行い、成果の一つとして「海域利用の手 引き」を作成している。 用途開発、安全性環境改善効果、実海域試験による適用、海域利用の方法などを記載した「転炉系製鋼 スラグ 海域利用の手引き」を紹介した。 ■各社技術の紹介 鉄鋼スラグ水和固化体の新製品として「フロンティアストーン」、「フロンティアロック」がある。これは準硬石 相当の天然石材代替材であり、低アルカリで海域へのpHの影響もない。(財)沿岸技術研究センター港湾 関連民間技術の確認審査・評価証を平成 19 年 11 月に取得している。 8-3 第8章 シンポジウムの開催 フロンティアストーンの用途としては、砂岩ズリ代替材・非液状化埋立・床掘置換等がある。フロンティアロ ックについては、割ぐり石代替材として緩傾斜護岸、裏込、藻場、被覆石等への利用が考えられる。 鉄鋼スラグ水和固化体の基準類については、(財)沿岸技術研究センターから「鉄鋼スラグ水和固化体技 術マニュアル-製鋼スラグの有効利用技術-(平成 20 年 2 月)」が発行されている。 その他、サンゴ造成礁、藻場造成礁として使用できる「マリンブロック」(JFE スチール)や、新日本製鐵の 「ビバリーシリーズ」 (鉄分供給ユニット:藻場造成材)などがある。 上記の効果を利用し、環境資材の海域事業への拡大を図ることで、水産振興による食料自給率向上、海 藻繁茂による CO2 の固定、漁業者がかかえる磯焼け等の問題に対しての対策メニュー拡大、軟弱な浚渫土 の有効利用の促進並びに海域環境の改善を目指している。 ④【㈱ビジネススタッフ 代表取締役社長 宮原 正典 氏】 ■水産業におけるビジネスのあり方 わが国はこれまで、製造業などの動脈産業中心であったが、 今後、動脈産業と静脈産業のバランスが重要になってくると考え ており、ここにビジネスチャンスが生まれるはずである。事業や 商品の評価方法として、製品重量単位あるいは製品製造時間単 位で見ていく方法がある。水産物を例に取るとタコであれば約 1.6 円/g。これが明石のタコだと約 3.2 円/g、東京湾のタコは約 4.5 円/g である。どこで獲れるか、どのように加工するか、どこへ 運ぶかなどで大きく単価が違うことがわかる。海に関するビジネ スも、このような考え方に立って、進め方、運び方を考えていけば、ビジネスチャンスにつながっていくと考え ている。 日本の漁獲高はピーク時(1980 年代)に約 1400 万tあったものが、現在 500 万tを切っている。水産資源の 確保はこれからの大きな課題となる。付加価値をつけた(静脈産業を活用した)水産資源にこれからのビジネ スチャンスが潜んでいると思う。 ⑤【中国経済産業局 地域経済部地域経済課 村上課長】 ■中国経済産業局の取り組み概要 中国経済産業局では、2010 年 2 月 9 日に開催した「中国地域 産業活性化戦略会議」を経て、2010 年 5 月 31 日に「ど真ん中! 中国地域経済活性化プロジェクト 2020」を策定した。本計画は、 中国地域がその強みを発揮し、自立的に発展・成長していくた め、2020 年を見据えた目指すべき将来像と地域の関係機関と連 携・共創を図りながらその将来像を実現するための具体的工程 表を示したものである。この中で示した4つの将来像のうち、「低 炭素社会形成」に一つに【海の再生ニュービジネス創出プロジェクト】が位置付けられている。 海の再生ニュービジネス創出プロジェクトに取り組むこととなった背景には、瀬戸内海等における藻場・干 潟の減少やヘドロの蓄積等に対応する水環境修復ニーズと産業技術総合研究所中国センターや広島大学、 広島工業大学等が持つ水質浄化等の技術シーズがある。 今後の将来像として、鉄鋼スラグ等を利用した新商品の開発など、具体的なプロジェクトが稼働するととも に、ニュービジネス創出の基盤が整備され、海の再生ビジネスが広く展開することを期待している。 2010 年度の活動成果として、海の再生ニュービジネス創出プロジェクト推進フォーラムを設立し、公開方式で 8-4 第8章 シンポジウムの開催 計 4 回のフォーラムを開催して、スラグ等の海域利用における各種情報・データの整理・分析、ビジネスモデ ルやモデルプロジェクトの提案などが行われた。 ⑥【経済産業省 製造産業局 堀越課長補佐】(フォーラムオブザーバー) 鉄鋼スラグを有効利用していく上で、法律の規制などの色々なハードルがあるので、省庁連携してやって いくことが大事である。まずは経済産業省が中心となり、関係省庁である国土交通省、環境省、農林水産省 と連携して鉄鋼スラグに関する規制などの問題点をクリアしていくことが必要である。 本シンポジウムのような地方での動きが継続されることを願う一方で、今後ともスラグの有効利用に取り組 まれていくことを期待したい。 (2) 鉄鋼スラグ等を使用する中での課題や事業化への基本的な考え方について ①【広島工業大学 大学院 環境学部 教授 上嶋 英機 氏】 松本様から(社)日本鉄鋼連盟の色々な取り組みについて話があったが、海域において鉄鋼スラグを使用 する上で苦労した点と事業化に持っていくための方法の二点について伺いたい。 ②【(社)日本鉄鋼連盟 松本 剛 氏】 海域利用に関しては関係者が多いことから、これらの関係者の理解を得て進めていかなければならない ことが、苦労した点であり、事業推進のポイントでもある。理解を得ていくためには、(社)日本鉄鋼連盟として も本フォーラムやシンポジウムの場で、情報発信をしっかりと行っていく必要がある。 今後の展開であるが、今まで鉄鋼スラグは砂・石・セメントなどの骨材と同じであると説明してきたが、今後 は環境資材という観点で、藻場基質材、底質改善材、海の肥料としての新たな活用も考えていきたい。いず れにしてもシーズありきではなく、ニーズをしっかりとくみ取った展開にしていきたいと考えている。 取り組みから 10~15 年かけて、最近環境資材としての話ができるようになってきたところである。 ③【広島工業大学 大学院 環境学部 教授 上嶋 英機 氏】 大月さんは、商品価値を向上させ、ニーズにあった製品を具体的に作っていかないといけないが、それ に向けた課題や苦労があれば、紹介いただきたい。 ④【ランデス㈱ 代表取締役社長 大月 隆行 氏】 素材としての強度や耐久性などの信頼度や安心度は、実験データなどできちんと納得してもらうことが可 能だが、環境復元に関しては、例えば植生遷移が 5年かかって落ち着くなど、確認までに非常に時間を要し、 実証をするのに時間と労力がどうしてもかかるため、中小企業においては大変難儀である。かといってそれ をバックアップしてくれる仕組みもまだあまりない。 本フォーラムで製品を実証できるような場を共有し、フォーラムメンバーからいろいろな知恵を出してもら いながら、一つの成果を証明していくことができれば、非常にありがたい。 また、「ハレーサルト」のように細骨材を全部鉄鋼スラグに置き換えて作る製品については、全国的に同業 者と協力して一緒に展開していきたい。 8-5 第8章 シンポジウムの開催 (3) 鉄鋼スラグ等を使用できる市場性 ①【広島工業大学 大学院 環境学部 教授 上嶋 英機 氏】 ビジネスを展開していくためにどこに焦点をあててやっていけばいいのか、あるいは販売にあたっての視 点をどこに置くべきかについて、宮原さんの考えをお聞きしたい。 ②【㈱ビジネススタッフ 代表取締役社長 宮原 正典 氏】 鉄鋼スラグのもつ機能として、未知の部分がたくさんある。しかし、わかるまで待っていたら時間がかかる。 時代には「旬」があり、松下幸之助が言う「ときたま」というものがある。産業副産物を利用した海の修復はまさ に時代の旬を迎えている感じがする。 フォーラムでもいろいろなビジネスモデルを検討した。これを見てみなさんが「チャンスに変えていこう」と 考えていただければいいのではないか。 ③【広島工業大学 大学院 環境学部 教授 上嶋 英機 氏】 パッケージ化ということを考えたらどうなるか?ビジネスとしてどのような組合せが良いか? ④【㈱ビジネススタッフ 代表取締役社長 宮原 正典 氏】 単独の企業が単独で行うような、今までの動脈産業の様な考え方ではなく、静脈産業はいろいろなコラボ レーションが大事である。今後「微生物」は一つのキーワードであると考えている。 (4) フォーラムが目指すところ、今後の展開 ①【広島工業大学 大学院 環境学部 教授 上嶋 英機 氏】 このフォーラムが目指すところ、今後の展開についてはどうか。 ②【中国経済産業局 地域経済部地域経済課 村上課長】 大事なのはニュービジネスを生み出す活動の持続である。当面は今年度の活動を受けて、当局中心に動 いていかないといけないであろうと考えているが、将来的には、自由に参加でき、フォーラム自身が自立でき る形が望ましい。2020 年を目指しながら、このフォーラムの活動を活性化していきたいと考えている。 8-6 第8章 シンポジウムの開催 (5) 会場からの質疑応答 ①【会場からの質問①】 色々な法律も改正されて、この十数年で色々な機関や企業が努力しているが、環境ビジネスは下り勾配 になっていると感じる。今後このフォーラムに何を期待したらいいか。 ②【中国経済産業局 地域経済部 地域経済課 村上課長】 確かに今まではなかなかビジネスの芽は出なかった。しかし特別講演の中にあった 2015 年という環境ビ ジネスの転機については、今からきっちり準備をしていかないと乗り遅れることとなる。中国地域の企業の方 にビジネスの視点でいろいろとお知恵を拝借しながら進めていきたい。これまで出来なかったことをどのよう にしていけばやれるのかを考えるためにフォーラムを立ち上げた。 ③【㈱船井総合研究所 第一経営支援部 下川 譲 氏】 儲かっていないイメージが環境ビジネスにおいてはあるが、実際には儲かっているところもある。全体の 傾向として多いのは、特定の技術とか原料を使うことだけに留まっていること。つまりシーズ優先で、入口と 出口のバランスが悪い。市場にマッチして臨機応変に対応を考えていくことが必要であり、いろいろな主体 が一緒になってやっていく、協力関係を構築していくことが、成功への道だと考えている。 ④【広島工業大学 大学院 環境学部 教授 上嶋 英機 氏】 製品を作ってもそれが使われないとビジネスにつながらない。スラグ製品を海域に利用する立場からの意 見もうかがいたい。 ⑤【会場からの意見②】 環境修復の場を作る努力は、今後ともしていきたいと思う。 複合的技術には製品を沢山並べる複合技術もあるが、業種が集まってそれぞれの得意とするところを融 合させるのも複合技術である。それぞれの得意な分野を融合させて技術を複合化させれば、ビジネスを創っ ていけるのではないかと感じている。 (6) コーディネーターまとめ 【広島工業大学 大学院 環境学部 教授 上嶋 英機 氏】 まずは製品をどう創っていくかということが大きな問題である。そのためには、来年度以降も本フォーラム を継続し、継続するのみではなく、そのネットワークを広げて、機能を定着させていくことが、重要なことだと 思う。その中でニーズにつながる議論を行い、具体的なビジネスや新たなプロジェクトの展開へ結びつけて いけばいいのではないか。 さらに、それらの事例によって得られた成果をうまく「見える化」し、次のビジネスにつなげ、みなさんに提 供していくのも、フォーラムの大きな役割といえる。 来年度以降は、このプロジェクトをより繁栄させていくために、本日の参加者のみなさんの参加をお願いし たい。いろいろな企業の方々が一緒にやることが、新しいビジネスをつくる大きなチャンスになると考えられ る。 以上 8-7 第8章 シンポジウムの開催 8.2.4 アンケート結果 シンポジウム参加者は、一般参加が 81名であった。また、参加者に対してシンポジウムに関するアンケートを 配布し、35 名からアンケートを回収できた。 アンケートの内容は以下に示す。また、それぞれの問いに対する回答は、表- 8-1(1)~表- 8-1(4)に示すと おりである。 シンポジウムアンケート表 表面 裏面 8-8 第8章 シンポジウムの開催 シンポジウムの内容について「1.非常によかった」と回答したのは全体の 69%で、「2.よかった」と回答したの は 37%、「3.あまりよくなかった」と回答したのは 0%、「4.よくなかった」と回答したのは 3%であった。 表- 8.1(1) シンポジウムの内容についてのアンケート結果 3.あまりよくなかった 0% 2.よかった 37% No. 選択し た評価 1 2 2 3 2 2 4 4 6 8 10 11 2 1 1 2 12 1 15 16 18 19 1 1 2 2 20 2 22 24 26 28 29 32 34 36 2 1 1 2 1 2 2 2 4.よくなかった 3% 回答数35人 1.非常によかった 69% 選択したシンポジウムの評価に対する理由 ・水産関係者より、鉄鋼スラグを使用した藻場再生について、問い合わせがあった為、回答の参 考になった ・海洋工事での自然材に変わるリサイクル材として期待 ・下川氏の視点が参考になった ・フォーラムの意義が不明 ・スラグ業界で費用負担すべき内容 ・環境ビジネスに関して、様々な職業の方の話を聞けたのは良かった ・海に限らず再生に関して非常に参考になった ・スラグの活用を含め、ビジネスの有り方についても学べた ・具体的事例紹介が有り、解り易かった ・海の再生の手法として、様々な方法があることがわかった ・また、そこにビジネスチャンスがあることが再確認できた ・情報の共有ができる場があること ・鉄鋼スラグ活用技術の概要が簡潔に理解できた ・上嶋先生の結論が、解り易くよかった ・状況が見えた ・下川氏の環境ビジネスの展開に関する話は、当たり前ではあったが、解り易かった ・海洋土木工事に伴い、環境項目の提案を行っているが、スラグ利用がヒントになった ・もう少し時間をかけて具体的に聞きたい ・ビジネス講演がよかった ・ビジネス化に向けての手順のヒントがあった ・製品化に向けてどう考えたらよいのかが、とても参考になった ・たくさん鉄鋼スラグを利用した商品を出して、情報提供をしてほしい ・色々な情報が得られた ・環境ビジネスの難しさがわかった ・海の再生に向けた具体的な試みがおぼろげながら見えた ・講演での具体的事例の説明があった為 8-9 第8章 シンポジウムの開催 鉄鋼スラグ等を活用した海の再生ニュービジネスの創出に向けた意見・提案についての回答は、以下のと おりである。 表- 8.1(2) 海の再生ニュービジネスの創出に向けた意見・提案についてのアンケート結果 No. 1 2 4 5 6 14 19 20 24 27 28 30 32 34 鉄鋼スラグ等を活用した海の再生ニュービジネスの創出に向けた意見・提案へのアンケート結果 ・瀬戸内海を対象にするとしたら、四国との連携は考えられますか? ・漁業者の要望(改善したい)の把握→協同で実験→モニタリング→本格事業 ・1 つの業界に限定して進めることは、余り良くない ・良いことだけ説明があったが、悪いことも公開してほしい ・森林の腐葉土から作り出されるフルボ酸鉄と鉄鋼スラグから供給される鉄は、本質的に異なるのでは? ・そんな事が一寸頭にひっかかっている。〈安心・安全?〉 ・漁業者が魅力を感じる情報を発信してほしい ・鉄鋼スラグ以外にも注目してほしい ・排出されるスラグに何らかの付加価値をつけて製品化すること ・利用用途は海域に限らず広く考える ・カキガラを使う場合に比べ、スラグ利用は有害物質含有(例:ヒ素等)に対する消費者の対応上の危険 があります。この点へのコメントがほしかった ・鉄とスラグとの二価鉄排出量の比較を明確にしてほしい ・希少元素等(Li,Au 等)のトラップ材に使用できないか? 有機スズ? ・河川への利用の場合、Pd の上昇はないのか? ・経時的に栄養分は、排出できるのか?(5 年や 10 年後) ・コンクリートと同等の強度とあるが単体で考えた場合、圧密沈下はあるか?(変形等はあるのか?) ・「鉄」分が自然の海域において有効であるという「効果を検証」し、データ化する様な実験を行ってほ しい ・できれば石炭灰も考えてもらいたい ・構造的に壊れた後も、環境中で水域利用上、問題とならないような性能を有してはどうか? 8-10 第8章 シンポジウムの開催 フォーラムに期待する事についてのアンケート回答は以下のとおりとなった。 表- 8.1(3) フォーラムに期待する事についてのアンケート結果 No. 4 フォーラムに期待する事についてのアンケート結果 ・多くの副産物がある中で、なぜスラグだけなのか説明を UP して欲しい ・植物プランクトンや動物プランクトンの密度(ppm)が必要では?(鉄鋼スラグを使用していることによっ 5 て…) ・使用しているところとしていないところの比較等 16 ・漁業現場の方々(川下分野の)の参加を求め、広く見識ある議論が展開されることを期待 17 ・公共域の中での海域利用者、受益者、管理者の意見 ・まだ研究レベルでやるべきことが多いので、課題研究を設けて大学等の優秀な研究者にやってもら 19 う ・これまでのような、いきなり現場試験はダメ 20 ・他地域から参加したので、日常的な参加は困難 ・今回のような、成果発表の重点開催は良かった 24 ・地元企業のどの様な力を活用できるか、欲しているか、もう少し具体性を示して欲しい 28 ・Web 上にて記載 今後、開催されるフォーラムへの参加希望について「是非参加したい」と回答したのは全体の29%で、「機会 があれば参加したい」と回答したのは 66%、「参加する予定はない」と回答したのは 3%、「その他」と回答した のは 3%であった。 表- 8.1(4) 開催されるフォーラムへの参加希望についてのアンケート結果 参加する予定はない 3% 機会があれば参 加したい (66%) No. 4 その他 3% 是非参加したい 29% 回答数35人 その他、記載欄のアンケート結果 公平性が保たれれば参加したい 8-11 第9章 まとめと今後の課題、方向性 第9章 まとめと今後の課題、方向性 本事業では、瀬戸内海に鉄鋼スラグ製品の藻場再生効果を適用した場合の CO2 削減効果の検証や、海洋 環境に応じた製品開発等による瀬戸内海再生のニュービジネス創出の方策について調査・検討を行った。検 討にあたっては、産学官の有識者による検討の場となる「海の再生ニュービジネス創出プロジェクト推進フォー ラム」を設置し、4 回のフォーラムを開催し討議を行った。また、2 月 16 日には、フォーラムの取り組み概要につ いて報告を行うととともに、ビジネスの具体化やネットワークのさらなる拡大を目的とした「海の再生ニュービジ ネス創出シンポジウム」を開催した。 本事業で得られた成果と、今後の課題等については図- 9.1 に示すとおりである。 9-1 第9章 まとめと今後の課題、方向性 検討内容 得られた成果 第1回フォーラム(H22.9.14) (1)鉄鋼スラグ等に関する現状把握 (2)瀬戸内海における環境修復の必要性等 (3)瀬戸内海再生ニュービジネス創出に向けた検 討課題(案) 第2回フォーラム(H22.10.22) 〔事例発表〕(4例) (社)日本鉄鋼連盟 ランデス(株) (株)友鉄ランド (財)しまね産業振興財団 9-2 (1)鉄鋼スラグ等に関する現状把握 (2)瀬戸内海における環境修復の必要性、修復ニ ーズ等 (3)瀬戸内海再生ニュービジネス創出に向けた課 題のまとめ (4)瀬戸内海再生ニュービジネスのイメージ ビジネス化に向けた今後の課題等 ビジネス・製品の方向性 既往知見に基づき、鉄鋼スラグの特性を踏まえ、海底泥からの 硫化物やリンの溶出抑制や藻類の繁殖の促進効果等を指摘す るとともに想定される環境への影響を整理・検討。 鉄鋼スラグの海域利用に関する過去の実証実験等の事例整理 や実証実験実施者へのヒアリングにより、スラグ種類毎の効果や 利用における検討課題を明確化。 瀬戸内海における環境修復の必要性を、10湾灘毎に現状と課題 を踏まえて整理・検討。また、海域環境修復ニーズ毎に鉄鋼スラ グの利用可能性と課題、適用可能な事業制度を提示。 鉄鋼スラグの海域利用を促進し、瀬戸内海再生ニュービジネスを 創出するための検討課題を4つの要因毎(安全・安心,効果・有効 性,市場性,その他)に整理・検討 ◎プロジェクトの立上げと推進 ■環境面を含めた様々な技術や付加価値の組合せでビジネ ス化を目指すことが望まれる。 ■スラグの持つ特性や海外を含めた環境修復ニーズから製 品メニューを抽出していくことが望まれる。 事例発表により鉄鋼スラグ製品の全国的な利用状況や取り組 み、中国地方における中小企業のスラグ等の製品化の状況と課 題を把握。 第3回フォーラム(H22.12.20) ビジネス化までのステップ ■モデルプロジェクトでスラグならではのメリットを見いだし、う まくアピールする必要あり。 ■まずは小規模な現地実験などで実証データを積み重ね、そ の後ビジネス化へ進むことが期待される。 ■ビジネス化を促進させるためには、新たなニーズの掘り起こ しが必須である。 ■最も理想的なモデルプロジェクトを優先的に推進していくこ とが望まれる。 (1)平成22年度フォーラムのまとめ (2)鉄鋼スラグを瀬戸内海で利用した場合のCO2 の吸収・固定量 (3)フォーラムが提案するビジネスモデル(案) (4)平成22年度フォーラム成果のとりまとめ方針 本フォーラムが提案するビジネスモデルとして、A~Gの7分類18 種類のビジネスモデルをビジネススキームとともに提示し、ビジネ スに向けた課題を整理・検討。 ■産学官連携や省庁の垣根を超えた連携により、ビジネス初 期の動き出しを作っていくことが大事。 ■最終消費者の要望を製品開発にフィードバックできる連携 が重要。 フォーラムの役割 ■情報発信機能やコーディネート機能を持ったフォーラムの構 築と機能の拡充。 鉄鋼スラグの特性/安全・安心 これまでの鉄鋼スラグ等の製品化パターンを整理し、その課題を 整理することで、フォーラムが持つべき支援機能を明確化。 ■スラグ製品のビジネス化においては、スラグの安全を検証 し、安心をアピールしていくことが求められる。様々なデータを 収集し、わかりやすい形で最終消費者へ伝える必要がある。 鉄鋼スラグを瀬戸内海で利用した場合のCO2の吸収・固定量を 試算。 図- 9.1 本事業で得られた成果のまとめ 製品開発を担う中小企業を中心に、原材 料供給企業、コーディネートを担う民間企 業、国・地方公共団体、公設試、大学の 他、最終消費者である漁業関係者など、 幅広い主体が集結し、拡大しながら機能 強化を図っていく。 フォーラムの機能(案) □フォーラム会員からの研究、現地適用事 例、特許情報や展示会開催情報などの情報 収集・データベース化 □ホームページによる、データベース化した 情報の発信 □国内の関連機関(鉄鋼連盟等)とのリンク による、情報の相互発信 □フォーラム会員の製品紹介チラシの作成・ 漁協等への配布 □シンポジウムやセミナーの開催 □製品開発希望者に対する共同研究コーデ ィネート □外部機関との情報交換会の開催 □製品開発希望者に対する技術相談会の開 催 □産学マッチング交流会の開催 □ビジネスマッチング交流会の開催 □国内外展示会支援 □売り込みを希望する会員に対する顧客紹 介などの売り込み支援 □モデルプロジェクトの企画と、メンバー調 整、申請手続きの支援、必要に応じ運営管理 の実施 □製品開発者に対する各種補助制度の紹 介、必要に応じ事業費の一部を支援 □フォーラム会員の開発した製品に対する簡 便な認証制度の適用 第9章 まとめと今後の課題、方向性 第4回フォーラム(H23.2.7) ニュービジネス創出の検討課題を海域利用に関する課題とビジ ネス化に向けた課題の視点で再整理するとともに、想定されるビ ジネスの方向性やスキームを提示。 ビジネス化を促進するため、産学官・省 庁連携によりモデルプロジェクトを立ち上 げて推進していく。 ◎フォーラム機能の拡充 連携のあり方 (1)フォーラムが提案するビジネスモデル (2)ビジネス推進のための方策とフォーラムの役 割 フォーラムの今後の方向性 第9章 まとめと今後の課題、方向性 9.1 本事業で得られた成果の概要 鉄鋼スラグ等の特性・効果・影響検討 既往知見に基づき、鉄鋼スラグの特性を踏まえ、海底泥からの硫化物やリンの溶出抑制や藻類の繁殖の促 進効果等を指摘するとともに想定される環境への影響を整理・検討した。(第2章) 鉄鋼スラグ等の海域利用における検討課題 鉄鋼スラグの海域利用に関する過去の実証実験等の事例整理や実証実験実施者へのヒアリングにより、鉄 鋼スラグの種類毎の効果や利用における検討課題を明確化した。(第2章) 環境修復の必要性と鉄鋼スラグの利用可能性 瀬戸内海の 10 湾灘毎に環境の現状と課題を整理し、海域環境修復ニーズを整理した。また、海域環境修復 ニーズ毎に鉄鋼スラグの利用可能性と課題、適用可能な事業制度を提示した。(第3章) ニュービジネス創出の検討課題 鉄鋼スラグの海域利用を促進し、瀬戸内海再生ニュービジネスを創出するための検討課題を 4 つの要因毎 (安全・安心,効果・有効性,市場性,その他)に整理・検討した。(第6章) 製品開発・各種取り組みの動向把握 鉄鋼スラグ製品の全国的な利用状況や取り組み、中国地方における中小企業の鉄鋼スラグ等の製品化の 状況と課題を把握した。(第2章、第4章) ニュービジネスの方向性 ニュービジネス創出の検討課題を海域利用に関する課題とビジネス化に向けた課題の視点で再整理すると ともに、想定されるビジネスの方向性やスキームを提示した。(第7章) ビジネスモデルの提示 本フォーラムが提案するビジネスモデルとして、A~G の 7 分類 18 種類のビジネスモデルをビジネススキー ムとともに提示し、ビジネスに向けた課題を整理・検討した。(第7章) 9-3 第9章 まとめと今後の課題、方向性 フォーラムの支援機能の提示 これまでの鉄鋼スラグ等の製品化パターンを整理し、その課題を整理することで、フォーラムが持つべき支 援機能を明確化した。(第7章) CO2 吸収・固定量の試算 鉄鋼スラグを瀬戸内海で利用した場合の CO2 の吸収・固定量を試算した。(第5章) 9-4 第9章 まとめと今後の課題、方向性 9.2 ビジネス化に向けた今後の課題等 本事業での検討結果に基づき、今後海の再生ニュービジネスを具体的なビジネス化に向けて展開していく ための課題を、以下のとおり整理した。 ビジネス・製品の方向性 ・環境面を含めた様々な技術や付加価値の組合せでビジネス化を目指すことが望まれる。 ・スラグの持つ特性や海外を含めた環境修復ニーズから製品メニューを抽出していくことが望まれる。 ビジネス化までのステップ ・モデルプロジェクトで鉄鋼スラグならではのメリットを見いだし、うまくアピールする必要がある。 ・まずは小規模な現地実験などで実証データを積み重ね、その後ビジネス化へ進むことが期待される。 ・ビジネス化を促進させるためには、新たなニーズの掘り起こしが必須である。 ・最も理想的なモデルプロジェクトを優先的に推進していくことが望まれる。 連携のあり方 ・産学官連携や省庁の垣根を超えた連携により、ビジネス初期の動き出しを作っていくことが重要である。 ・最終消費者の要望を製品開発にフィードバックできる仕組み・連携が重要である。 フォーラムの役割 ・情報発信機能やコーディネート機能を持ったフォーラムの構築と機能の拡充が必要である。 鉄鋼スラグの特性/安全・安心 ・スラグ製品のビジネス化においては、鉄鋼スラグの安全性を検証し、安全・安心をアピールしていくことが 求められる。また、様々なデータを収集し、わかりやすい形で最終消費者へ伝える必要がある。 9-5 第9章 まとめと今後の課題、方向性 9.3 フォーラムの今後の方向性 フォーラムは、平成 23 年度以降も引き続き開催していく予定であるが、今後のフォーラムの方向性(案)を、 以下のとおり提案した。 フォーラムの方向性(案) フォーラム機能の拡充 プロジェクトの立ち上げと推進 漁業関係者 大学・ 研究機関 国・地方公 共団体 産学官・省庁連携等による モデルプロジェクトの立ち上げ・推進 中小企業 (製品開発) 原材料 供給企業 コーディネ ート企業 幅広い主体が集結し、拡大しながら 機能強化を図る フォーラム機能(案) 〇フォーラム会員からの情報(研究、現地適用事例、展示会開催情報など)のDB化 〇ホームページによる情報発信、シンポジウムやセミナーの開催 〇国内の関連機関(鉄鋼連盟等)とのリンクによる情報の相互発信 〇フォーラム会員への製品紹介チラシの作成、漁協等への配布 など 〇製品開発希望者に対する共同研究コーディネート、技術相談会の開催 展示会支援、各種補助制度の紹介 〇外部機関との情報交換会の開催 〇売り込みを希望する会員に対する顧客紹介などの売り込み支援 〇モデルプロジェクトの企画、メンバー調整、申請手続きの支援 (必要に応じ運営管理の実施) 〇フォーラム会員の開発した製品に対する簡便な認証制度の適用 図- 9.2 フォーラムの今後の方向性(案) 9-6 など