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タバココナジラミ及びトマト黄化葉巻病の まん延防止対策
タバココナジラミ及びトマト黄化葉巻病の まん延防止対策 発行:(社)福島県植物防疫協会 編集:福島県農業総合センター 1 2 3 1:トマト黄化葉巻病の症状 2:トマト黄化葉巻病に関する特殊報の発表状況(赤が発生都府県 4 H20 年 4 月現在) 3:福島県におけるタバココナジラミバイオタイプ Q の発生状況(H20 年 4 月現在)4:タバココナジラミの寄生状況 トマト黄化葉巻病はタバココナジラミ(害虫)が媒介する植物のウイルス 病です。平成 19 年 11 月、福島県内でも発生が確認されました。 トマトやミニトマトが本病にかかると減収が著しく、収穫が皆無になるこ とがあります。トマト主産地で発生すると、甚大な被害が予想されます。 トマト黄化葉巻病は、タバココナジラミが媒介する植物ウイルス病です(病原:トマト黄化葉巻ウイルス -TYLCV)。したがって、本病の発生を防止するには、保毒したコナジラミの侵入と増殖を防ぐことが重要で す。なお、芽かき作業や土壌・種子による伝染はしません(接木伝染はする)。 ☆トマト黄化葉巻病の症状 発病初期は生長点付近が黄化、葉が巻き込み ます(口絵1参照)。その後、次第に葉が小型化し、一見ジャガイモの葉 のようになります。本病の発生が確認されたほ場では、発病した株を出来 るだけ早く抜き取って、適切に処分して下さい。 TYLCV の症状(葉の小型化) ☆トマト黄化葉巻病ウイルスのタバココナジラミを介した主要な伝染環は 『越冬型施設栽培トマト 夏秋トマト栽培・露地トマト』と考えられてい ます。また、野良生えトマトを介しての伝染もあるので、ほ場周囲から取り 除いて下さい。本病のまん延防止のため、地域ぐるみで取り組みましょう。 野良生えトマト ☆媒介昆虫の形態 媒介昆虫のタバココナジラミ成虫は 0.8mm ほどの白い小さな虫で、オンシツコナジラ ミとよく似ています。成虫での判別は難しいので、ルーペなどで幼虫の体色と刺毛の有無を確認すると良 いでしょう。なお、オンシツコナジラミは本病を媒介しません。また、タバココナジラミには外見では区 別できませんが、生理的、遺伝的に異なる系統(バイオタイプ)があります。 刺毛 タバココナジラミ成虫 タバココナジラミ幼虫 オンシツコナジラミ成虫 オンシツコナジラミ幼虫 (オンシツコナジラミよりやや小さく、 翅が重ならない) (体色は黄色、やや細い楕円 形で刺毛はほとんど無い。 ) (タバココナジラミよりやや大きく、 翅が重なる。) (体色は白、厚みのある楕円 形で長い刺毛がある。) ☆媒介昆虫の生態及び被害 タバココナジラミは野菜や 花き類、花木等、様々な植物に寄生します。東北地方で は、露地では越冬出来ないと考えられており、越冬場所 タバココナジラミによる 果実の着色異常 は加温栽培施設に限定されると思われます。通常、越冬 型の栽培では、冬期間のタバココナジラミの寄生密度は 低く、4月以降に急増します。虫の寄生密度が高くなる と、トマトでは果実に着色異常が生じ(ウイルスによる ものではない)、虫の排泄物(甘露)が葉や果実を汚しま すので、早期発見・早期防除に努めて下さい。 タバココナジラミの甘露による 果実汚れの発生状況 ○侵入防止対策 タバココナジラミ成虫をほ場内に侵入させないためには、苗と共に施設内に持ち込ま ないこと、ほ場外からの飛来を防ぐことが重要です。飛来を防ぐには、トマト栽培施設の開口部に 0.4mm 以下の目合いの防虫ネットを展張することが有効な方法です。また、施設内の高温が心配される場合は、 換気扇や遮光資材等の対策を講じて下さい。その他、UV カットフィルム、黄色粘着板、光反射資材など を、組み合わせて利用すると効果的です。 防虫ネット設置状況 ○薬剤による防除 黄色粘着板設置状況 本県で優占しているタバココナジラミはバイオタイプ Q です。本種は薬剤感受性が 低く、有効な薬剤が限られています(表1)。そこで、薬剤抵抗性が発達しにくい、糸状菌製剤(マイコ タール、プリファード等)や気門封鎖剤(サンクリスタル乳剤、サンヨール等)を組み合わせ、化学農 薬だけに頼らない防除を行いましょう。 表1 福島県で発生したタバココナジラミ バイオタイプ Q 幼虫に対する 薬剤の効果(2006 年度トマトポット試験) 薬剤名 希釈倍率 サンマイトフロアブル (×1,500) コロマイト乳剤 (×1,500) モスピラン水溶剤 (×2,000) ハチハチ乳剤 ベストガード水溶剤 (×1,000) (×2,000) (×1,000) (×2,000) アルバリン顆粒水和剤 (×3,000) ダントツ水溶剤 (×2,000) (×4,000) ノーモルト乳剤 (×2,000) アプロード水和剤 (×2,000) チェス顆粒水和剤 (×5,000) ○栽培終了時の蒸し込み処理 個体群 A B A B A B A B A B A B A B A B A B A 効果 ○ ◎ ○ ◎ ◎ ◎ ◎ ○ ○ ○ ○ ○ ○ △ × △ △ × △ 注)トマトのコナジラミ類に登録の ある剤で、本県防除指針で採用して いるものを中心に試験している。 ※効果は◎:よく効く、○:効く、 △:劣る、×:効かないとしました。 ※効果は薬剤散布9~10 日後に判 定しました。 (この他、タバココナジラミの発生 ほ場を見るとラノーテープの効果が 劣るようです。) タバココナジラミを絶食状態にして死滅させるために、栽培終了時には 蒸し込み処理をして下さい。処理の方法は、トマトを地際部から切断し、施設内の植物が全て枯れるよ うにしたのち、施設を密閉します。温度が低いと生存するので日中ハウス内が 40℃以上の高温になるこ とを確認して下さい。蒸し込み期間はトマト等の植物体が枯れるまでの期間を含め10日以上が目安で す。 トマト黄化葉巻病の多発を防ぐには 1 ① 入れない!! z 育苗・定植期にウイルス感染やタバココナジラミの寄生が無い苗 チェック欄 であることを確認して下さい。……………………………… □ z 施設開口部に 0.4mm 以下の目合いのネットを展張し、コナジラミ チェック欄 類の侵入を防いで下さい。…………………………………… □ ② 増やさない!! z タバココナジラミをほ場内にまん延させないよう、 防除を徹底し チェック欄 て下さい。……………………………………………………… □ z 発病株を発見したら、すぐに抜き取り、ゴミ袋等に詰め込んで枯 チェック欄 らした後、土壌中に埋め込んで下さい。…………………… □ ③ 出さない!! z 施設内や周辺の雑草や野良生えトマトを徹底的に除去して下さ チェック欄 い。……………………………………………………………… □ z 栽培終了時には株を切断・抜根して、枯死させると同時に、施設 チェック欄 を密閉して蒸し込み処理をして下さい。…………………… □ 問い合わせ先 福島県農業総合センター 安全農業推進部(病害虫防除所)発生予察課 〃 生産環境部作物保護科 または、最寄りの農林事務所農業振興普及部・普及所へご連絡下さい。 発行:(社)福島県植物防疫協会 編集:福島県農業総合センター 安全農業推進部 (病害虫防除所) 024-958-1709 024-958-1716