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閉会の辞全文

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閉会の辞全文
閉会の辞
はじめに、昨日で1年を迎えたニュージーランド地震で犠牲になられた方々に
哀悼の意を 表するとともに、被災された方々に謹んでお悔やみを申し上げます。
また、我が国も震災から間もなく1年を迎えようとしておりますが、ここにい
らっしゃる皆様の国から頂いたご支援により、被災地の復興も徐々に進んでい
るところです。この場を借りて改めて感謝申し上げます。
それでは、ここからは、本セミナーの主催者として、ここにいる将来のスマー
テスト・アドミラル に対してお話をさせていただきます。
まず、3日間に亘るパネルディスカッションでは、各参加者からの素晴らしい
発表と積極的な議論への参加に対し、心から敬意を表します。ディスカッショ
ンを通じて、セミナーの目的である相互理解が進み、参加された皆様がそれぞ
れ多大な成果を得ることができたのではないかと考えております。改めて、セ
ミナー成功の原動力である各国参加者の皆様、他省庁及び関係機関からの参加
者の皆様、海上自衛隊幹部学校のスタッフに対し、厚く御礼申し上げます。
今回のセミナーでは「海洋秩序維持のための協力」をテーマとして、様々な側
面から議論して参りました。
長島総理補佐官が一昨日の基調講演で述べられたとおり、また、3日間のセミ
ナーの中でも度々議論されたように、平時における海洋安全保障の問題解決は、
事態の烈度が低くなればなるほど複雑性を増し、解決が困難で長期化するとい
うことです。
確かにアジア・太平洋地域の政治的・経済的特色として、民族や宗教の多様性、
異なる価値観や政治体制の並存、活発な経済活動や新興国の台頭による世界に
おけるGNPの占有率の増加等が挙げられます。このような多様性の存在は厳
然とした事実であり、我々がセミナーで討議を重ねてきた各国海軍間の「海洋
秩序維持のための協力」も、国益や国情に影響を受け易く、特に主権に関わる
問題については、各国の協調を進めるための敷居は、必ずしも低くはないと思
えるかもしれません。
国家間の関係というのはとても難しいものです。私は、これは私と妻の関係に
似ていると思います。
皆様、最も重要なこととして、アイスブレーカーで紹介した私の妻の名前を覚
えていますか?そうです。私の妻の名前はミキです。そして今日、この会場に
来ております。アイスブレーカーの時にミキから皆様にお渡ししたスモールギ
フトの裏には、私とミキの写真を貼っておきました。その写真のように「今、
私とミキの関係は極めて良好です。」 と、少なくとも私は思っています。私と
ミキは結婚して30年になります。30年のほとんどを上手くやってきたと思
っています。それでも日頃のケアを怠ると、ときには冷戦に入り、ちょっとし
たことがきっかけで紛争になります。ほとんどの原因は私にあり、したがって、
いつも負けるのは、決まって私ですが・・・。非常にデリケートな関係だから
こそ、私たちは常に話をし、互いを理解し、信頼を維持する努力を続けていま
す。
海洋安全保障の問題もこれと同じです。国家間の関係は確かに難しいかもしれ
ません。しかし、我々海軍軍人は、国、人種、思想が違えども“海との共存”
という船乗りの共通の価値観があり、国家間の関係を乗り越えて互いを理解で
きると確信しています。例えば、我々海軍は、例え敵対する国同士であっても、
船が嵐に遭遇することが予測されたら敵国の軍艦であっても自国の港に入港さ
せるということを、大航海時代から共有してきたではありませんか。
こうした共通の価値観を有する我々が対話を重ね、相互理解のための取組を深
化、発展させていくことが、国家間の様々な課題を解決し、紛争や戦争の発生
を防ぐことに繋がるものと信じています。
500年前のマゼランが感じた「平和の海」という言葉とは裏腹に、この地域
には紛争が絶えませんでした。我々にはこうした不幸な過去を変えることはで
きません。しかし、我々は未来を作っていくことはできます。
私の高校の恩師が、私に教えてくれた言葉があります。
「夢なき者に目標なし。目標なき者に計画なし。計画なき者に行動なし。行動
なき者に成果なし。」もし、皆さんが、500年前のマゼランの言葉どおり、太
平洋を「平和の海」、すなわち、アジア太平洋地域の海洋安全保障を確立したい
という夢を持つならば、その夢に向かって目標を定め、計画し、行動しようで
はありませんか。海洋を挟んだ我ら隣国の海軍同士が、そのための努力を始め
ようではありませんか。これは、北極海でも同じことでしょう。
海軍軍人は、政治家でも外交官でもありません。我々は、これまでも、その行
動をもって国に奉仕し、国民の期待に応えてきました。
諸官!将来、各国のスマーテスト・アドミラルになる諸官に、これからの海の
平和を託します。
最後に、明日の部隊研修、文化研修をもって本セミナーを終了することになり
ますが、各研修が皆さんの実り多きものとなるよう、そして我が国が誇る温泉
で疲れを癒し、胸を張って帰国の途についていただきたい。
I wish you fair winds and following seas.
I won’t say good-bye, see you again!
平成24年2月23日
海上自衛隊幹部学校幹部学校
学校長
海将
吉田正紀
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