...

Newsletter

by user

on
Category: Documents
18

views

Report

Comments

Transcript

Newsletter
vol.
67
2014.7.31
Newsletter
本号の記事
pp.2-13
日本移民学会 第 24 回年次大会報告
p.17
2014 年度 総会議事録
pp.13-14
2014 年度 第 1 回運営委員会議事録
p.18
新入会員一覧、寄贈図書一覧
p.15 2014 年度 第 2 回運営委員会議事録
p.18
共同研究推進委員会からのお知らせ
p.16
2014 年度 第 3 回運営委員会議事録
p.19
事務局からのお知らせ
p.16-17
2014 年度 第 4 回運営委員会議事録
http://www.gssm.musashi.ac.jp/research/imin/
2 2014.7.31
vol.67
代においても四世や五
世 の 若 者 は、 日 常 場 面
で繰り返し発せられる
「どこの出身ですか」と
いう質問によって、「人
■ 日本移民学会 第 24 回年次大会報告
2014 年 6 月 28 日、6 月 29 日の両日、和歌山大学を会場
に日本移民学会第 24 回年次大会が開催されました。大会の
開催をお引き受けいただき、運営の全般にわたってご尽力
いただきました和歌山大学関係者の皆様に対しまして、心
よりお礼申し上げます。
種化された他者」や「外
国人」として見なされ
る経験を持っている。さらに、日系アメリカ人社会が、冷
戦時代から日米経済摩擦の時代に到るまで、それぞれの時
代状況に応じて、「日本」を肯定的にも否定的にも、さまざ
まなかたちで解釈し、自らのアイデンティティの一部とし
てきたことが、南カリフォルニアのジャパニーズ・ビレッ
ジで働いた若者の語りや、日本製品を示す「メイド・イン・
◆基調講演・AAAS 招聘研究者講演
Erika Lee, Chasing Dreams: Local and Global Histories of Asian
Immigration to the Americas and Back
Dana Y. Nakano, Spectre of the Foreign: Race and Japan in the
Ethnic Identity and Community Formation of Later Generation
Japanese Americans
エ リ カ・ リ ー 氏 に よ
る 基 調 講 演 は、16 世 紀
から現代までのアジア
とアメリカ大陸のあい
だの移民現象を、コミュ
ニ テ ィ、 ロ ー カ ル、 ナ
ショナルから、リージョナル、グローバルなどの多層的な
変化のなかに描き出した。講演では、複数の移動の歴史が、
比較史、トランスナショナル史、ボーダーランド史、グロー
バル史などを経て、ナショナル、帝国的、国際的な文脈な
どにおける移動の歴史が、いかに相互に重なり合い、絡ま
り合っているかを記述する entangled history の方法へと展開
する過程が説明された。そして、その事例として、19 世紀
後半以降に、中国系移民に対する排斥政策が北米から南米
にかけて連鎖的に成立したことや、アメリカ大陸に定住し
たと言われていたアジア系の人々の一部が出身地へと帰還
しつつあることが紹介された。以上のような移動は、アジ
ア系の人々の移動が、一国単位・一集団単位の視点ではなく、
複数レベルの変化の絡み合いとして把握することの重要性
を示すものであるとされた。
アジア系アメリカ研究学会招聘研究者として参加したデ
イナ・ナカノ氏は、日系アメリカ人四世や五世の若者のア
イデンティティやコミュニティが、人種や日本との結びつ
きを通して、どのように構築されているのかを議論した。現
ジャパン」に対するイメージの変化などを通して議論され
た。そして、三世や四世の若者にとって、
「永続的な外国人」
としての人種化の経験が、実質的な内容を伴わない「日本」
に対する紐帯の感覚を導くと示された。
以上の報告を踏まえた質疑応答では、絡み合う移民史と
いう視点の有効性、各地域における「人種」概念の影響、
日本における人種主義や、東アジアの国際関係を反映した
アジア系集団内での対立などをめぐって議論が深められた。
◆大会企画シンポジウム
「移民の比較研究から何が見えるのか」
白水繁彦
「移民・エスニック集団『比較』研究のマトリクス:ひとつ
の作業仮説」
樽本英樹
「移民研究における比較的方法の可能性:移民市民権政策の
視点から」
佐々木剛二
「ブラジルの日本移民と日本のブラジル移民:比較の限界と
可能性」
【司会】南川文里
【コメント】園田節子
移民研究はほとんどの場合、何らかの事例を扱う実証研
究としての性格を有する。移民研究においては、単一の研
究対象について詳細に調査するものだけでなく、複数の事
例を扱って比較検討するものもある。「比較」という方法は、
複数事例間を横断する要素を可視化する力があるのと同時
に、その方法設定や解釈によって理解を歪めてしまう危険
性もある。本シンポジウムでは、これまで比較研究や複数
2014.7.31 vol.67 3
Newsletter
の事例を扱った研究に従事してきた研究者に、自身の「比較」
におけるブラジルにおける日本移民と、1985 年以降の日本
をめぐる方法論とその実践について語ってもらい、その可
のブラジル移民を比較し、その客観的な相違点や共通点に
能性や限界について議論した。
ついて議論した。そのなかでは、移住の原因、規模、労働、
白水報告では、比較研究においては「目的と基準」を設
移動の性質、イデオロギー、帰国の意味、集団の語りなど
定することを基本スタンスとした上で、場所・ヒト・時間
が比較の対象となった。一方で、知識生産の主体としての
の三つの相を重ね合わせたマトリクスのなかで比較の文脈
移民という観点から、移民が現実に対する主体的な働きか
を位置づける手法が提案された。そして、報告者が従事し
けの方法としての「比較β」という手法が提案された。比
てきた比較研究のなかから、地域内・集団内・経時的研究
較βにおいては、移民自身が、自分が置かれた異質な状況
の例としてハワイの日本語新聞についての研究、地域内・
を把握し、自らが望む状況を形成するための方法としての
集団間比較研究の例として、ハワイにおけるエスニック集
比較の事例に注目し、日本とブラジル、日本人とブラジル
団の文化創生をめぐる共同研究、地域間・集団内比較研究
人、第一世と第二世、日系とドイツ系、移民とデカセギなど、
の例として、海外日系新聞の共同研究や南北米・ハワイ・
さまざまな比較が行われていることが示された。以上から
日本のエスニック・メディアの総合的研究、そして地域間・
報告者は比較という報告を、人の移動を「飼い慣らす」方
集団間比較研究として、シンガポール、マレーシアにおけ
法として働いていることを指摘した。
るエスニック集団間の日系宗教の普及・採用過程の相違を
以上の報告に対し、園田節子氏は、複数の地域の研究が
めぐる研究が紹介された。以上の議論にもとづき、基準設
必ずしも比較研究となるわけではないことを指摘し、比較
定における「顕微鏡の倍率」設定の重要性や、共同研究に
研究が求めるものは何かという観点から各報告にコメント
おけるメンバー間での概念化をめぐる議論の必要性などが
した。白水報告には、多文化社会における集団間比較を行
強調された。
う際の「主流」のとらえ方について、樽本報告には、政策
樽本報告では、市民権政策をめぐる比較研究の研究状況
比較の結果、どのような帰着点を見出すのかという点につ
をふまえ、政策研究における比較的手法の重要性や可能性
いて、佐々木報告には、人の移動性を「飼い慣らす」こと、
が議論された。報告では、フランス・ドイツの市民権につ
サステイナブルな移動といった概念のねらいについて質問
いての分類的比較研究を古典的研究として、市民権概念を
した。コメントに対する報告者の返答とフロアとの質疑応
めぐる相違を「見える化」する一方で、分類基準の設置や
答を通して、主流社会のとらえ方自体が、移民当事者の置
同一類型内での差異の扱い方などの問題点が指摘された。
かれている文脈によって異なっていることや、政策の有効
多くの研究は、理論仮説の精緻化や対象国の増加などでこ
性を議論するうえでも、移民研究の議論を精緻化するため
の問題点に対処しているが、報告者は比較の社会単位に西
にも、「比較」の可能性と限界を認識し、適切な方法論を探
洋諸国だけでなく、アジアも対象に含めるべきであり、ま
る努力をすることが欠かすことができないのであるという
た、数値化が進む流れのなかで特定の市民権政策を生み出
ことが確認された。
す因果メカニズムを探求すべきであると提案した。そして、
アジア諸国を含めた因果メカニズムの研究として、報告者
◆自由論題報告 A 会場
による日本・韓国・台湾の市民権政策の比較研究や、日本
【報告者】ジョハンナ・ズルエタ(創価大学)
における市民権政策の変化をめぐる考察などが紹介された。
「沖縄人女性帰還移民の死生観」
以上の議論をふまえ、市民権政策研究における比較研究の
本報告では、フィリピンから沖縄へ帰還した女性移民に
意義は、移民に対する政策の包摂的・排他的側面を「見え
おける「墓に入ること」の意味が、主に「home(故郷)」と
る化」すること、因果的メカニズムの探求を可能にする点
の関係のなかで検討された。米軍占領下の沖縄で軍属とし
が強調された。
て働いていたフィリピン人男性と結婚し、フィリピンでの
佐々木報告では、ブラジルへ移住した日本移民と、その
長い生活を経て帰還した彼女たちは、厳格な父系原理に阻
子孫として日本へと移動したブラジル移民の時代と地域を
まれて生家の「門中墓」へ入ることはできないため、所属
異にする事例を題材に、比較し得ないものの比較、比較の
するカトリック教会の納骨堂を購入する。報告者は、そこ
多元性という観点からその方法についての議論が展開され
から自らの home を主体的に構築しようとする彼女たちの意
た。まず、現実を客観的に「把握」する方法としての「比
志を読み取っていく。会場からは、移民の死・死者儀礼・
較α」という手法にもとづき、戦前・戦後それぞれの時代
埋葬という大きな枠組みのなかで他地域の事例と比較研究
4 2014.7.31
vol.67
することの重要性が指摘されるなど、多くの質問やコメン
本報告は、アルゼンチンの沖縄系下位世代が 2000 年に結
トがあった。
成した三線(沖縄の弦楽器)と島うたのグループ Ryukyu
参加者 21 名(文責:岡野宣勝)
Sapukai(サプカイは「叫び」
「表現」を意味する)による「文
化継承」の形に注目し、それが単に一世との連続性のなか
【報告者】野入直美(琉球大学)
で捉えられるものではなく、メンバーの沖縄留学、
「沖縄ブー
「沖縄・先島地域で暮らすフィリピン女性たち ―台湾系住
ム」、日本への出稼ぎ、
「世界のウチナーンチュ大会」といっ
民との比較を中心に」
た「沖縄体験」やアルゼンチン社会の変化により、アルゼ
本発表は、沖縄・先島地域におけるフィリピン人女性に
ンチン人として生きてきた下位世代のなかに生じた「沖縄
関する共同研究の中間報告である。本報告のユニークなと
系」としての新たな意識形成に基づいていることが考察さ
ころは、これまでの在日フィリピン人研究において受け入
れた。会場からは、
「アルゼンチン人」
「日系」
「沖縄系」といっ
れられてきた「都市集住型」/「農村散住型」の二類型に
た複数のアイデンティティ間の関係や、下位世代による文
加えて、「離島散住型」の存在を提起している点である。こ
化以外の社会活動への広がり等に関する質問があった。
の概念を軸に、「島嶼と女性の移動」という研究領域を開こ
参加者 25 名(文責:岡野宣勝)
うとしている。この報告での議論の要は、台湾系住民との
比較にあり、それによるフィリピン女性の特徴は、来島と
定住の経緯に加えて、信仰を介したネットワークが沖縄本
島、県外、そして海外にも広がっている点にある。会場では、
提起された概念などに関して質疑応答がなされ、今後の研
究の発展にとっても有意義な報告会となった。
参加者 22 名(文責:木下昭)
◆自由論題報告 B 会場
【報告者】パイチャゼ・スヴェトラナ(北海道大学)
玄武岩(北海道大学)
「サハリン『本国帰国者』のトランスナショナルな特性」
まず玄会員が、サハリン「本国帰国者」に関する研究動向
の経緯を概説し、本問題に対して、ジェンダーを分析の基底
【報告者】高畑幸(静岡県立大学)
において、民族・階級・ジェンダーの関係性を考察する理
「沖縄・先島地域で暮らすフィリピン女性たち (1) 本土都市
論的立場を提示した。続いて、スヴェトラナ会員が、植民
圏在住者との比較を中心に」
地としての樺太の特徴、戦前・戦後の「サハリン残留日本人」
本発表は、野入報告と同じ研究プロジェクトの中間報告
女性を軸にした日韓家族構成、現在の帰国政策と当該家族
である。沖縄・石垣島でおこなわれた調査によると、1980
の現状について、インタビュー等をもとに報告した。そして、
年代後半以降に移動してきた当地のフィリピン人は、女性
新たな「離散家族」の問題を提起した。報告後、会場から
に極端に偏り、結婚移住以外の往来経路がほぼ無く、定住
コリアンアイデンティティとは何か、戦前と戦後では違い
後沖縄独特の生活習慣を実践している、といった特徴があ
があるのではないか、「離散家族」の意味合いは、戦後と現
る。また、フィリピンとの文化的類似性や地理的近接性か
在とは質的に異なるのではないか、などの質問が出された。
ら、フィリピン女性にとって、石垣は居住しやすい場になっ
活発な質疑の応答があったが、時間で終了となった。
ている。これらは彼女たちが、1970 年代以前の沖縄―フィ
参加者 30 名 (文責:粂井輝子)
リピン間の移動と性格を異にし、また本土都市圏ならびに
農村部への結婚移民とも違うことを示している。会場では、
【報告者】中山大将(北海道大学)
移民したフィリピン女性だけでなくその子弟を含めて、彼
「サハリン帰国者と日本:冷戦期・ポスト冷戦期における樺
らと祖国との関係などについて、活発な質疑応答がなされ
太残留邦人帰還問題」 た。
本報告は、敗戦直後の樺太からの引揚実施後もコリア系
参加者 20 名(文責:木下昭)
の人びとと結婚したことによって残留した 1400 名の邦人に
着目し、冷戦の開始から日ソ国交正常化、日韓条約締結、
【報告者】月野楓子(法政大学大学院)
ポスト冷戦と時代が移る中で、日本への帰国がどのように
「 ア ル ゼ ン チ ン の 沖 縄 系 下 位 世 代 に よ る『 文 化 継 承 』 ―
推移していくかに関して、日本政府の動向に焦点をあわせ
Ryukyu Sapukai を事例に―」
つつ論じたものである。緻密な資料に基づき、日本の外交
政策の縮図というべきものとして位置づけた報告は高く評
2014.7.31 vol.67 5
Newsletter
価されたが、ソ連側の意向を含めてとらえること、中国残
し、数量分析の手法に基づいて経年的な動態を分析するこ
留孤児問題などとのすりあわせを行う必要があるのではな
とで、各国リーグの特質を明らかにした。その結果、1995
どの意見が出された。
年のボスマン判決で EU 国籍保持者は外国人枠から外された
参加者 35 名(文責:木村健二)
ため域内移動の激増が予想されたが、実際には微増にとど
まり、制度を形成するルールよりも、市場勢力の方が重要
【報告者】 中山寛子(法政大学)
であるという結論が得られた。質疑応答では、外国人選手
「日本の海外移住に関する一考察- 1920 年代以降の移住の
の移入とチーム成績の相関性(正の関係が認められる)や
国策化と『集団移住』-」 選手の国籍変更の有無などをめぐり活発な討論が行われた。
1920 年代以降の日本の海外移住を、国策による集団移住
参加者 16 名(文責:北村暁夫)
と捉え、それが戦前期のブラジル・満洲移民、そして戦後
の南米移住にも継承されたこと、そのうち満洲移民に関し
【報告者】具美善(一橋大学・院)
ては軍の関与があり、戦後の南米移住においては経済貢献
「韓国における結婚移住女性の国籍変更をめぐる経験と意
が主眼であったことを指摘され、集団移住という形態をとっ
味」
た点については、自作農創設政策の延長にあったこと、集
韓国の農村への海外からの結婚移住女性の滞在資格をめ
団による自助努力に結びついたこと、募集・準備・管理に
ぐっては、帰化要件を厳しくすべきという主張と、簡素化
おいて利便性があったことなどを指摘された。集団移住は
させるべきという主張があるが、いずれも彼女たちの帰化
日本独特のものであるのか、集団移住の定義をさらに明確
が当然視されている。本発表は、そのような「上から」の視
化すべきではないのか、受入側の状況についても考慮すべ
点ではなく「下から」の視点から、当事者である女性たち
きではないのかなどの意見が出され、修了後も活発な討議
へのインタビューにより、結婚移住女性たちは韓国社会の
が行われた。
一員となる道として、また「母として」国籍変更をすること、
参加者 30 名(文責:木村健二)
永住権取得ではなく国籍変更を選択するのは永住権につい
ての知識がないことなどの実態を浮き彫りにした。フロアー
からは、子どもへの言語教育や、日本の農村の外国人花嫁
◆自由論題報告 C 会場 【報告者】山根美奈(京都大学・院)
との違いについてなど、数多くの質問が出され、関心の高
さが窺われた。
参加数 18 名(文責:柳澤幾美)
「イタリアの移民 -法による受容と拒絶」
イタリアは 19 世紀末から移民 emigration の送り出し国で
あったが、1970 年代から移民 immigration の受け入れ国に転
じた。本報告では、1980 年代以降のイタリアの移民政策を
概観することにより、労働力を必要としていたイタリア政
府が不法移民を合法化する政策をとる一方で、絶え間ない
◆ラウンドテーブル A 会場
「移民・海外渡航者と船上生活体験」
流入に対して「公共の安全」を掲げて厳格な規制策をとる
【司会】根川幸男(国際日本文化研究センター / テュービ
に至った経緯を明らかにすることで、「必要としているのに
ンゲン大学同志社日本研究センター / 和歌山大学観光学部客
規制する」という移民政策のパラドックスを指摘した。質
員フェロー)
疑応答では、イタリアにおける移民政策の制定過程や EU 加
「趣旨説明」
盟の他国と比較したときのイタリアの特質などについて活
本研究は、戦前期の移民・海外渡航者の船上生活におけ
発なやりとりが行われた。
る体験に焦点を当て、日本から遠隔地に渡る人々の比較研
参加者 16 名(文責:北村暁夫)
究を行い、将来的に移民船をめぐる記憶と体験の歴史的意
味をグローバルな文脈から問う研究へと展開することを目
【報告者】陶山宣明(帝京平成大学)
的とした基礎研究である。従来ほとんど関心が向けられて
「ヨーロッパにおけるプロサッカー選手の国際的移動」
こなかった船という移動空間における(移民)船客の生活
本報告は、サッカーを生業とする世界中のアスリートが
について研究し、船上生活が異文化世界への接触の準備期
高い報酬を求めて欧州の 5 大リーグに移動する現象に着目
間として様々な活動が繰り拡げられた独自の空間であった
6 2014.7.31
vol.67
ことを明らかにしたい。
本ラウンドテーブルは、
そうした課題への資料
面からのアプローチの
試みである。
◆ラウンドテーブル B 会場
「地域の視点からみた移民受け入れ実現に向けての取り組み
と課題」
【報告者】毛受敏浩(公益財団法人日本国際交流センター執
行役員)
日本は少子高齢化ともに人口減少時代を迎えている。2040
年には年間 100 万人が減ると予測されている。地方が衰退す
【報告者】東 悦子(和歌山大学)
る中で、もはや日本人だけでは内閣府の提唱する人口 1 億
「「渡航案内」「船内新聞」にみる船旅と異文化適応の準備」
人の維持は不可能に近い。この問題の解決のためには、外
移民が渡航先の情報を得る手段の一つとして、
「渡航案内」
国人(移民)の定住も認め、日本全体の活性化を図らなけ
「船内新聞」があった。こうした資料には、例えば、船上で
ればならない。
の裸体、授乳や乳児を背負う行為を禁ずる項目などが繰り
具体的には、外国人受け入れ特区を設けるなどして、実
返し現れ、移民を西洋基準の「一等国民」として文明化す
験的な取り組みを早急に開始し、外国人と日本人の賃金格
るという意図が看取される。現在のように世界の情報を容
差を解消するなど、多文
易に得ることのできなかった時代に渡航先の異文化に適応
化共生社会を形成する
する準備をいかに整えることができたのか、否か。「渡航案
必要があろう。外国人の
内」「船内新聞」という資料を通して、これまであまり取り
持つ異質なエネルギー
あげられることの無かった渡航前ならびに渡航中の船上生
や能力は日本人を刺激
活に焦点を当て、異文化適応という視点から移民・海外渡
することになり、日本社
航者を捉えることが可能ではないだろうか。
会の活性化につながる。
【報告者】石川 肇(国際日本文化研究センター)
「戦前期の文学にみる船旅」
【報告者】楠本政幸(公益財団法人大阪府国際交流財団評議
員)
近代日本の移民・海外渡航者は、前田河広一郎「三等船客」、
全国自治体の「人口激減」への対応を見ると、高齢者の
舟橋聖一「バンガロオの秘密」、石川達三「蒼氓」などによっ
活用、女性のさらなる社会進出には熱心であるが、外国人
て鮮やかに表象されてきた。例えば、数少ない女性船客へ
(移民)の受け入れ拡大に対しては、約 9 割は消極的である。
の男達の淫靡なまなざし、恋愛、暴力、不義など、閉鎖さ
その理由としては治安の悪化、日本人の失業者の増加、日
れた空間ゆえに起こりうる非日常的できごと。また、外国
本文化の継承への支障などが考えられる。しかしグローバ
航路の船が洋装とともにモダニズムのツールであった点な
ル化時代には鎖国は不可能である。積極的な外国人の受け
ど、文学作品には、(移民)船客たちのなまなましい生態と
入れは多文化パワー社会への第一歩を踏み出し、日本経済
ともに当時の流行の最先端が二重写しになっているのであ
の活性化につながる。とくに日本をチャンスと魅力の宝庫
る。「移民船」という閉ざされた空間を、文学者の目にかなっ
と考える外国人留学生のハングリー精神と多様な価値観は、
たフィクションから追究することによって、よりリアルな
日本開国の担い手になる。大阪府では海外留学生の受け入
人間の実態を明らかにすることが可能なはずである。
れ拡大を図っている。
参加者 28 名(司会・報告者含む)、(文責:根川幸男)
二つの報告に対して、ダウンサイジングという日本の都
合だけで、外国人を受け入れるというのはおかしい。外国
人(移民)受け入れを前提とした‘べき論’ではなく、現
状分析を慎重に行う必要がある。名古屋市、和歌山市での
実態は報告事例とはかなり異なる。外国人に対してどこま
で権利を付与うるのか。などの意見や質問が数多く出され
た。移民受け入れについて、多角的かつ白熱した討論を行
うことができた。
参加者 10 名 (文責 木村昌人)
2014.7.31 vol.67 7
Newsletter
◆ラウンドテーブル C 会場
「マイノリティと名指されること / 名乗ること」
本人」と「日系人」の関係が、その名乗りと名指しをめぐっ
て、時折緊張をはらむものであることが、いくつかの事例
を通して紹介された。二つの集団が、お互いを通して互い
【話題提供者】菅(七戸)美弥(東京学芸大学)「米国セン
を差異化し合うことで、自らのアイデンティティを補強し
サスにおけるマイノリティへの調査実態」
ていることも散見された。しかしながら、そうした対立を
本 報 告 は、 合 衆 国 セ
強調するのではなく、お互いを通して学び合い、特に、日
ンサスにおける本来記
本人が日系コミュニティを通じて、マイノリティとして生
載すべき項目への記録
きることを理解することの必要性が指摘された。
省略と名前の表記の慣
行からマイノリティへ
の名指しと名乗りを検
以上のように、本ラウンドテーブルは、米国センサス、ハ
証 す る も の で あ っ た。
ワイでの踊り、日系コミュニティを通して、マイノリティ
具体的には、以下の二つの問いを挙げており、まず一つ目
としての名指しと名乗りにおける抵抗や緊張を分析するも
は、「肌の色」や「人種」による公式分類名がない状況下で
のであった。活発な質疑応答が行われ、参加者の多さから
「その他」としてひとくくりにされる人々に対する調査の実
も関心の高さが感じられた。
態はどのようなものだったかというものであった。また二
参加者約 30 名(文責:佐原彩子)
つ目は、センサスを通してのマイノリティの移動への管理
とそれに対するマイノリティ側の対抗はどのようなもので
あったかというものであった。センサスを丹念に読み解く
ことで、奴隷との差別化としての自由黒人の名乗りがあっ
たのではないかと指摘した。
◆ラウンドテーブル D 会場
「アジア・オセアニアのフィリピン人移民の現在」
“Contemporary Situations of Filipino Migrants in Asia and
【話題提供者】李里香(多摩美術大学)「戦前のハワイにお
Oceania”(日英両語セッション)
けるコリア系 2 世のアイデンティティ諸相」(代読)
【司会】永田貴聖(立命館大学 衣笠総合研究機構)
本報告は、コリア系はハワイでなぜ踊りなどの「伝統文化」
【報告者】原 めぐみ(大阪大学大学院人間科学研究科博士課
を見せるようになったのかという問いに答えるため、コリ
程)「日比を往来する子どもたち:トランスナショナルな葛
ア系が踊りを始めた 1920 年代後半から 30 年代に注目し、
藤と実践」※日本語報告
この背景を検証するものであった。YWCA をはじめとする
在日フィリピン人は
団体が移民に「旧世界」の文化を祝う祭りを開催するよう
80 年代から急激に増え、
促したことで、当時のコリア系が踊りを踊ることを通して、
その多くがエンターテ
ハワイのエスニック集団をめぐる「名乗り」の場に参加す
イナーとして就労もし
ることとなった。しかしながら、それはエスニック集団の
くは日本人男性と結婚
境界線を固定化し、名づけられた者に対して否定的な心理
するために来日した女
状態を生み出すだけでなく、当時問題となっていた民族間
性 で あ っ た。 現 在 は こ
関係の理解や解決にはつながらなかったという問題もあっ
うした女性たちが定住傾向にあり、また 2 世の子どもたち
たと指摘された。
や連れ子の増加傾向が見られる。本発表は、トランスナショ
ナルな家庭環境で育つフィリピン系の子ども移民の葛藤と
【話題提供者】佃陽子(成城大学)
「現代の在米日本人と『移
困難を乗り越える生活実践を明らかにすることであった。
民』」
ナラティブアプローチを用い、在日フィリピン人研究の中
本報告は、戦前の日本人移民とその子孫の名乗りと戦後
でこれまで焦点化されてこなかった子ども・若者たちの主
の日本人移民の名乗りの齟齬とそこから照射される問題を
体性に注目し、「ポジション」であり「プロセス」である若
指摘するものであった。特に、日系コミュニティ内での「日
年層のトランスナショナルな実践を紹介した。
8 2014.7.31
vol.67
【報告者】Johanna O. Zulueta(創価大学)"The Filipinos of
女性たちであった。90 年代に入ると、代わって家族型移民
Okinawa: Capital, Networks, Mobilities"(沖縄県のフィリピ
が増えた。その一部は 80 年代に反マルコス運動に参加して
ン人・フィリピン系-資本、ネットワーク、モビリティ)
いた男性たちであったことから、オーストラリアにみられ
※英語報告
るフィリピン系移民の組織化も 90 年頃を境に変化した。本
本研究では沖縄県におけるフィリピン人・フィリピン系の
報告では、フィリピン系移民の集住地であるシドニー郊外
人々の多様性を取り上げ、移動のプロセスにおける資本と
都市を事例に、かれらの組織化と質の変容が、オーストラ
ネットワークの役割を考察した。特に、本研究では終戦後
リア型多文化主義に向き合う態度の違いも生み出している
沖縄の米軍基地で働いていたフィリピン人男性と沖縄人女
ことが示唆された。フィリピン系移民の組織化は多様 化し
性の間に生まれた人々に注目している。これらの人々は、
「二
つつある。(295 文字)
世」と呼ばれ、彼ら/彼女らは主に 基地内の仕事に就いて
いる場合もあれば、他の職業を持つ二世もいる。日本国籍
参加者 13 名(文責:永田貴聖 ※報告者各自に報告部分の
を持ち、高等教育をうけ、英語能力を持つこれらの二世た
概要を記述してもらい永田貴聖が集約 )
ちは身につける「資本」を活用し、沖縄に「帰還」した際、
より良い職業や生活を送るようになった。本研究ではまた、
これらの二世たちが身につける「文化的・社会的資本」を
どのように自らの「利益」につなげているのかを今後の課
題として紹介した。
◆ラウンドテーブル E 会場
「北米における移民・同化・強制収容政策をめぐる抵抗と葛
藤」
【報告者】デイ多佳子(北イリノイ大学)
「疑惑の『連帯』―戦前シカゴの日本人コミュニティとアフ
【報告者】永田貴聖(立命館大学 衣笠総合研究機構)「ソ
ウル特別市および近郊に住むフィリピン人移住者の社会関
リカ系コミュニティの接点」
第二次世界大戦以前のシカゴにおける日本人コミュニ
係について」
ティとアフリカ系コ
※日本語報告
ミュニティの接点につ
フィリピンから韓国(主にソウル近郊)に移住した人々
いて報告がなされた。太
が経験する社会空間の様相についての考察を報告した。具
平 洋 戦 争 の 開 戦 後、 敵
体的には、日曜日に近郊からソウル特別市地下鉄ヘファ駅
性外国人の拘束がはじ
近くにあるタガログ語ミサが行われるカトリック教会付近
ま り、 シ カ ゴ で も 1944
に集まる状況である。本報告では、近郊で働き居住するフィ
年夏まで 10 人あまりの
リピン人たちが近隣にもフィリピン人コミュニティがある
日本人が逮捕された。逮捕者のなかに、二度逮捕された人
にもかかわらず、長時間かけ近郊の居住地からヘファに集
がいたのは、アメリカ政府が 20 世紀初頭から見張っていた
まるという現象、集まるにも関わらず、教会でのフィリピ
ブラックインターナショナリストと日本、とりわけ黒龍会
ン語ミサに参列するわけでもなく、付近のフィリピン料理
の活動とその思想へのアメリカ政府の警戒感に由来してい
露店やビアホールなどに集まる現象を、「都市―近郊」「非
たと発表者は考えた。本発表は、国立公文書館で入手した
日常―日常」という、自助組織や教会など周囲に発生する
柳の逮捕記録をもとに、シカゴの日本人コミュニティのあ
インフォーマルな連続する社会空間の一つとして注目して
る断面を、有色人種の連帯というグローバルな思想がロー
いる。
カルな形で現れた一例と考えるユニークな報告であった。
【報告者】阿部亮吾(愛知教育大学)「シドニー大都市圏郊
外におけるフィリピン系移民の組織化と多様性- 2000 年代
【報告者】庭山雄吉(成城大学、武蔵大学)
「駒形丸事件(1914 年)についての一考察―インドからの
の新しい動向に着目して-」
移住希望者の挑戦―」
※日本語報告
本発表は、1914 年にカナダのヴァンクーヴァ沖で発生し
1980 年代以降、オーストラリアを目指すフィリピン系移
た駒形丸をめぐる事件についてである。駒形丸事件とはイ
民が増加した。その多くはオーストラリア人男性との結婚
ンド出身の移住希望者を乗せたチャーター船、駒形丸がヴァ
移住をともなう、メール・オーダー・ブライドと呼ばれる
ンクーヴァ沖合で接岸を拒否され停泊した後、最終的にイ
2014.7.31 vol.67 9
Newsletter
ンドへの帰航を余儀なくされた事件を示す。カナダは駒形
の参加者からのコメント等で示唆に富む議論が展開された。
丸が連続的航路規定に違反するとし、港への接岸を断固と
議論のなかでは、とくに複雑に絡み合う社会的な要因(年
して許可しなかった。カナダ側は最終的に軍艦を出動させ、
代、地域の文化・経済状況、国家や行政の影響、ジェンダー
駒形丸の接岸を断念させた。結果として、ごく一部の乗客
や階層等)や非合法(記録の存在しない)移民が少なから
は上陸を許可されたが残る大多数の乗客はインドへ戻らざ
ず存在したことを考慮する観点が強調され、建設的な意見
るを得なかった。本発表では、主に駒形丸が停泊した期間
交換が行われた。
に焦点をあて、対峙するカナダ側、陸上のインド系団体を
参加者 8 名(文責:小澤智子)
も視座に置き、いかにして乗客達が上陸を試みようとした
のかが論じられた。
【報告者】Laura Sachiko Fugikawa(イリノイ大学シカゴ校)
“Community Dispersal: Japanese Americans, Native
◆ 開催校企画シンポジウム
「移民と和歌山 ―移民母県の取組―」 Americans and Assimilation Programs”
【コーディネーター】東悦子 ( 和歌山大学 )
本発表は、日系アメリカ人を対象とした戦時転住局によ
【パネリスト】(発表順・敬称略)
る 1940 年代の転住計画とネイティヴ・アメリカンを対象と
吉村旭輝(和歌山大学紀州経済史文化史研究所 特任准教授)
したインディアン局による 1940 年代後半から 1980 年代に
梅田律子(那賀移民史懇話会 事務局長)
かけての転住計画についての比較研究である。様々な公的
櫻井敬人(太地町歴史資料室 学芸員・ニューベッドフォー
出版物を分析したうえで、どのように同化政策が変化を遂
ド捕鯨博物館 顧問学芸員)
げ運営に至ったのかについて報告がなされ、転住計画をめ
迫間 脩(和歌山県中南米交流協会 代表)
ぐる連邦政府の思惑が指摘された。日系アメリカ人とネイ
亀井勝博(公益財団法人和歌山県国際交流協会 事務局次長)
ティヴ・アメリカンは背景は異なるが共に強制的移動を強
中谷智樹(和歌山市民図書館 副事務長)
いられた共通項があり、その点について着目した非常に刺
激的な発表であった。
(文責:庭山雄吉)
◆ラウンドテーブル F 会場
English Roundtable: Migration from Wakayama(英語セッ
ション)
【話題提供】今野裕子(上智大学)
“Wakayama Emigration
in Context: A Local Response to Global Forces”
【ディスカッサント】Erika Lee(ミネソタ大学)
本報告は、20 世紀転換期の和歌山県から海を渡った「移
住者」
・
「出稼ぎ者」の経
験を細かい統計データ
とともに質的な分析を
加えて歴史的にたどる
研究成果の一部であっ
た。 当 時、 県 よ り 発 行
されていたパスポート
の丹念な調査に基づき、人びと(おもに男性・農業従事者・
漁師)の移動(上海、オーストラリア、ハワイや北アメリカ、
南米などへ)について論じられた。報告の後、リーやほか
和歌山県は全国有数の移民輩出県である。アメリカ、カ
ナダ、オーストラリア、ブラジルなどの世界各地に移民を
輩出し、何か所もの「移民母村」と呼ばれる地域を有する。
本県では現在でも、親族や知人のだれかしらが移民してい
たという話を耳にすることは稀ではないが、このような先
人の記憶や遺物が世代交代と共に消失しつつあるのも現状
である。 このような背景を踏まえ、2009 年、和歌山県の移民の歴
史に光を当て、次世代へと継承する試みとして、和歌山大学
では「移民」をテーマとしたシンポジウムや展示を開催し
た。その際「移民・移住」に関係する機関・団体の多大な
る協力を得、それを契機に相互のネットワークが構築され
始めた。それから 5 年の時を経て、新たな組織の設立や調
査の発展、交流の深化が進みつつある。2014 年 6 月、日本
10 2014.7.31
vol.67
移民学会が和歌山県で開催される機会に各機関・団体が一
イドでは、地域から集まった移民資料の一部が紹介された。
堂に会し、それぞれの取り組みの一端を報告し合い、本県
今後も情報の収集と整理に努め、それを発信していくと締
の先人の足跡を振り返るとともに、移民をわが故郷の歴史
めくくられた。
遺産として、現在に生きるわたくしたちが、いかに過去と
向き合い、新たな絆を紡ぎ、次世代へと継承していけるのか。
3.櫻井敬人氏「海を越える太地 ―海外出稼ぎの歴史調査と
情報の共有とともに課題を共有し、会場の皆様との意見交
現在の国際交流」
換の場となることを願い、開催校シンポジウムを企画した。
太地町では小学校や公民館に、あるいは個人宅にも移民
以下、発表順に報告の概要をまとめる。
に関する歴史資料が残り、若い人に伝えることが行われて
いた。それを受け継ぐ形で、太地町歴史資料室は資料の保
1.吉村旭輝氏「アメリカ村カナダ移民資料館所蔵資料のデ
存に取り組み、2008 年からはアメリカ調査も実施している。
ジタル化・目録化プロジェクト」
2015 年、
アメリカで太地人会が百周年を祝う。
同じく
“Chicken
和歌山県日高郡美浜町三尾は、工野儀兵衛を先駆者として
of the Sea”(ツナ缶詰ブランドの一つ)も百周年を祝う。こ
カナダのスティブストンを中心に多くの移民を輩出してい
れは偶然ではない。当時、ターミナル島の缶詰工場で働い
る。その三尾にアメリカ村カナダ移民資料館がある。1978 年、
ていた多くの人は太地をはじめとする南紀州出身者であっ
小山茂春氏を初代館長として、小山氏の資料を中心にアメ
た。アメリカだけでなく、カナダへ渡った人もいて、現在
リカ村資料館として開館。その後、西浜久計氏が館長とな
帰郷のたびに交流を続けている。またオーストラリアへは、
り展示の充実を進めつつ、三尾のカナダ移民の歴史を伝え
ダイバーとして渡る人が多く、その歴史を背景とし、1981
てきた。和歌山大学では、2011 年企画展で資料を借用しご
年に太地とブルームは姉妹都市提携を結び、その後、青少
教示を受けた。2013 年に西浜氏が逝去され、資料の整理を
年交流が始まった。過去には捕鯨をめぐる国際的な問題が
進めたいという遺志を継ぐ形で、和歌山大学の全学的プロ
影をなげかけ、青少年交流が中断したこともあるが、姉妹
ジェクトの一つとして紀州経済史文化史研究所が資料の目
都市交流は別物、違いがあるからこそ理解する努力を続け
録化・デジタル化に取り組んだ。学生ボランティアを動員
るべきとの声があがり、議会の決議もくつがえされた。相
し資料整理にあたり、現地踏査も行った。今後の予定として、
互交流がもたらすものの重要性を示した。
2014 年度中にデジタル化・目録化の完成を目指す。また学
芸員の立場から、移民資料全体として歴史学、民俗学、社
4.迫間脩氏「和歌山県中南米交流協会の設立経緯と在伯和
会学などの要素を総合した目録化が必要ではないかと課題
歌山県人会連合会設立 60 周年記念式典に参加して」
が提起された。
和歌山県中南米交流協会は、2008 年に設立された。会報
の発行や中南米諸国にある県人会との交流などを行ってい
2.梅田律子氏「アメリカ移民と那賀地方 ―米国移民発祥の
る。2014 年、在伯和歌山県人会連合会は 60 周年を迎え、
地からの報告」
2016 年には、パラグアイとペルーの和歌山県人会が 50 周年
祖父の遺品から、パスポート、人名録、米国での暮らし
を迎える。さて歴史的背景として、和歌山からブラジルへ
のメモ等が見つかった。また近隣の家庭からも第二次世界
の移住は、1916 年(大正 5)に始まり、戦前戦後を通じて
大戦時の収容所での日記等が見つかった。こういったもの
5800 人程が移住している。1954 年、竹中儀助を初代会長と
を那賀地方としてまとめてはどうかという助言を得て、2014
して和歌山県人会が設立され、本県出身者の親睦を目的と
年、紀の川市での企画展「アメリカ移民と那賀地方」の開催
し移民の受け皿となった。また戦後の移住再開では、松原
と講演会の実施へと展開した。さらに展示開催中の 2014 年
安太郎が当時のヴァルガス大統領と交渉し、南マットグロッ
3 月には那賀移民史懇話会を発足した。那賀地方は、移民の
ソ州・ドラードス近郊に和歌山県民の受け皿として松原移
先駆けとして明治 5 年に渡米した伊達多仲がいる。江戸末
住地を開いた。また 1957 年、和歌山不動産が設立され、ク
期から明治中期頃に私塾が 8 か所もあり、本多和一郎の共
ルパイに第二の和歌山村をつくろうと移住地が開かれる。4
修学舎は渡米相談所を設け海外雄飛を勧めた。米国では伊
月 27 日に開催された 60 周年記念式典には、和歌山県知事
達多仲らが活躍し、基督青年会が日本から渡った学生に英
はじめ多くの県民がブラジルを訪れ、県人会会員と交流を
語の授業を行い部屋や食事を提供した。米国と那賀地方の
深めた様子が報告された。
双方の組織の存在が同地の渡米者が多い背景にある。スラ
2014.7.31 vol.67 11
Newsletter
5.亀井勝博氏「ブラジル移民映像記録編集 ―教育用 DVD
ペティションというユニークな事例なども紹介された。パ
作成について」
ネリストにとっても参加者にとっても新たな情報を得る機
和歌山県国際交流協会は、移住地の子弟との交流や移住者
会になったと考える。
支援に力を注いできた。この度、次世代への継承とテーマ
今回のシンポジウムは、他府県から参加された方々に、
を絞り、和歌山県下の小学生や中学生向けのブラジル移民
できるだけ多くの和歌山県下の取組を知っていただきたい
の記録映像(DVD)の制作に着手した。編集委員会を立ち上げ、
という想いから、司会、趣旨説明者、パネリスト、コメンテー
在伯和歌山県人会連合会の 60 周年を祝うブラジル訪問に際
ターという例年の形式をあえて逸脱し、コーディネーターと
しては、テレビ和歌山のアナウンサーとカメラマンに同行
6 人のパネリストでシンポジウムを構成した。各パネリスト
を依頼。DVD の完成後は国際理解教育のための発展的なワー
には、簡潔でありながら、各機関・団体の取り組みをわか
クシートも追加して出張講座も企画する。次にブラジル訪問
りやすく報告していただけた。シンポジウム後には、「他県
時の映像資料の紹介があった。クルパイに入植した男性は
でもこのような地域全体の取組を紹介してもらいたい」「和
「子どもから急に大人になった。農業に従事し夜学でブラジ
歌山県で移民に関係する方々の層の厚さと情熱をうかがい
ル語を勉強した。学生時代の思い出がない」
「成功するため
知ることができました」などの嬉しいことばをいただいた。
仕事が中心。読書が好きだったが夜しか読めない。その習
このことは、パネリストの方々の熱意と所属機関・団体の
慣がリタイアした今もぬぐえない。・・・父が亡くなっては
継続的な、あるいは意欲的な取組の成果によるものである。
じめてわたしの移民は終わったと思った」短いインタビュー
記して感謝の意を表したい。
の中にも、当時の御苦労や努力が拝察され心に響く。最後に、
移民した一人ひとりに光を当て、次世代へ継承していきた
いとの想いを述べられた。
6.中谷智樹氏「和歌山市民図書館移民資料室 ―移民研究の
更なる前進と教育現場への還元に向けて」
和歌山市民図書館移民資料室は、1984 年に開室された。
国内資料約八千点、海外で発行された邦字新聞等のマイク
ロフィルムやヘンリー杉本の収容所の記録絵画などを所蔵
している。また 1991 年に日本移民学会が創立された時の資
料も保存している。その中から何点か移民資料室所蔵の貴
重資料が紹介された。明治時代のハワイのダイアモンドヘッ
ドの前に田んぼが広がる写真、さとうきび労働のストライ
キの写真、ヘンリー杉本の収容所の絵画、ブラジル移住の
啓発ポスターなどともに、時代背景なども解説された。次
に教育という点から、教科書に移民がほとんど取り上げら
れていない事実や大学における移民に関する講義のリスト
などを示しつつ、多文化共生を考えるうえでも、移民の歴
史を学ぶことが基礎であり重要であるとし、現在、教育へ還
元するための活動として、小学校や大学、一般を対象とし
ての出張講義を行っていることが紹介された。最後に、移
民と和歌山というテーマから、録音資料・三尾の「移民創
出の歌」が公開され、長唄調の朗々とした歌声が会場に響
きわたり、移民資料室の多様な所蔵資料の一つが示された。
以上、パネリストの報告後は活発な意見交換が行われ、
海外における移民資料保存の一環として、映像記録のコン
参加者 70 名程度(文責:東悦子)
12 2014.7.31
vol.67
太地ツアー参加記 ておきたかった。確かに、ご本人がおっしゃっ
JICA 横浜 海外移住資料館 小嶋 茂
たように、展示図録には詳細かつ豊富な情報が
満載されている。それを読めば分かる。しかし、
担当学芸員から話を聞いていく展示の楽しみと
いうものがあることがよく理解できたひと時で
あった。
そして舞台は「くじらの博物館」へと続いた。
こちらでも、太地町とくじらの関係、そして現
在にまでおよぶ捕鯨を取り巻く国際関係と国際
文化交流まで、櫻井節は続きたいへん心地よかっ
た。太地町内名所めぐりも、個人で来ては到底
知り得ない場所を、短時間で効率よく周ること
ができて、参加者は十二分に満足して太地をあ
関東から来ると、同じ和歌山とはいえ紀勢本
とにした。心残りは訪問するはずだった串本潮
線をぐるりと周り、JR 太地駅到着まではさすが
岬の新設展示オープンが延期になって、訪問で
に長く感じられた。しかし途中海岸線を走った
きなかったことである。ぜひまたおいでなさい
車窓からは、風光明媚な景色が広がり、新鮮な
というメッセージなのかもしれない。
魅力も感じられた。駅に到着すると、手際よく
櫻井敬人太地町歴史資料室学芸員がバスで出迎
えにやってきた。そして、本ツアー集合場所で
ある町立石垣記念館へと移動。石垣記念館すぐ
前の広場には、刃刺像や巨大な捕鯨船、くじら
のシッポのモニュメントなどが設置されており、
くじらの博物館も向こうに見える。近くのレス
トランではランチメニューに「くじら丼」もあっ
た。昔から捕鯨で全国的に知られた町であり、
古式捕鯨発祥の地「太地町」が一望のもとに満
喫できる場所に案内されていたのだ。
石垣記念館とは、移民としてアメリカに渡り
和歌山大学紀州経済史文化史研究所 特別展「移
美術学校で学び、のちにアメリカ画壇で活躍し
民と和歌山-先人の軌跡をたどって」見学記 た画家、石垣栄太郎の作品を展示している記念
JICA 横浜 海外移住資料館 小嶋 茂
館である。絵はブラジル人画家ポルチナリの画
風を思わせる作品があり、思わず見入った。そ
今大会の開催校企画シンポジウムと直結した
してツアーは、その一室に所狭しとばかりに資
本展示は、シンポジウムでの関係者発表と重ね
料が広がる、太地町歴史資料室特別展「海を越
合わせて見学すると、非常に興味深く、一つひ
える太地」から始まった。アメリカ、カナダ、オー
とつの資料が生き生きと訴えてくるかのようで
ストラリアへと渡った太地町出身移民にまつわ
あった。ダイバーヘルメットしかり、紀ノ国屋
る資料は、豊富で一つひとつに情報が詰まって
ホテルのステッカーが貼られたトランクしかり
いる。そして櫻井研究員の該博な知識と想いの
である。具体的なイメージが伝わってきて、相
こもった解説から、参加者は次々とその案内に
乗効果があった。予算の制約やその多くが借用
引き込まれていった。今にして思えば、録画し
2014.7.31 vol.67 13
Newsletter
■ 2014 年度 第 1 回 運営委員会議事録
資料であることから、借用元パネルの関係のな
い番号が残ったままになっている不都合も見ら
2014 年 4 月 26 日(土)14 時 45 分~ 17 時
れたが、それは裏方の苦労を物語っているだけ
にすぎない。移民・移住研究の様々なパターン
【場所】JICA 横浜 1 階 会議室 3
【出席者】浅香、朝日、河原、木村、小嶋、坂口、菅、竹沢、野入、
南川、森茂、森本、吉田、鴛海、東(事務局)
がそこに潜んでいて、一つの県に関する展示で、
(文中敬称略)
移民研究の全容がいわば凝縮されているような
かたちで見ることができた。移民研究の切り口
として、移住先国・移住理由・地域的特性・特
定の個人など、それぞれをテーマとして捉える
ことができるが、そのすべてが小さなスペース
にあふれている。
シンポジウムと合わせての感想は、ぜひこの
ような取り組みを、今後ほかの県でも行ってい
ただきたいということである。広島や沖縄、福
島や福岡などの県でも、できないだろうか。県
単位での総括は、出会いや交流の機会を生み、
関係者間の情報交換や埋もれた歴史への意識の
運営委員会前におこなわれた JICA 横浜・日本移民学会共
同開催公開講座の第 1 回講義について、限られた時間での準
備だったにもかかわらず、盛況に終わったことが森本会長より
報告された。新四役、新事務局長、新運営委員が森本会長よ
り紹介され、各新メンバーから挨拶があった。
第一回運営委員会の出席状況について、出席者 15 名(事
務局2名含む)、欠席者6名であることが確認された。
《報告事項》
1. 各種委員会
(1)大会企画委員会
南川大会企画委員長より大会プログラムおよび準備進捗
状況について下記の報告があった。
・大会プログラム、基調講演、派遣研究者講演、一日目
大会企画の決定
・自由論題は 3 会場で 10 報告を予定、および各会場司
会者の決定
・ラウンドテーブル用に議論を活発におこなえるような
教室を準備
覚醒を促す。那賀移民史懇話会が新しく生まれ
て、資料の発掘が進んでいること、アメリカ村
資料館の資料デジタル化が進んでいる事実は、
こうした取り組みの賜物である。関係者のご尽
力に敬意を表するとともに、今回の取り組みと
その成果が広く伝えられ、他県においても同様
の機会が訪れることを願ってやまない。
・開催校シンポジウム内容および映画上映の予定
・大学図書館での移民展など和歌山の移民の歴史につい
て学ぶことが出来るプログラムを準備
(2)編集委員会
浅香編集委員長より委員会活動について下記のとおり報
告があった。
・移民研究年報第 20 号については終了
・第 21 号については、これまで5件の投稿
・高木前編集委員長より広告料についての申し送り
事項があった。
(3)共同研究推進委員会
坂口共同研究推進委員長より下記の報告があった。
・高橋新委員の参加とワークショップ企画案
JICA 横浜・日本移民学会共同開催公開講座シリーズ
「日本人と海外移住」の趣旨および概要について、公開
講座プロジェクト代表の森茂委員より説明があった。
14 2014.7.31
vol.67
(4)広報・研究交流委員会
じて上限枠は考慮
欠席のイシ広報・研究委員長に代わり、小嶋委員より下
また、ラウンドテーブルが昼食時のため、昼食をとり
記報告があった。
ながらの参加となりうること、ラウンドテーブルでは活
・ニューズレターとホームページの内容変更について検
発なディスカッションがなされるための配慮を各テーブ
討し、ニューズレターでの運営委員会についての紙幅を
ルの司会者に促すことが確認された。
減らす。
・ホームページでは日本語のほか、ポルトガル語、英語、
スペイン語を準備する。
(5)学会ディベロップメント委員会
吉田学会ディベロップメント委員長より倫理規定等の策
定を検討している旨報告があった。
(6)学会奨励賞委員会
森本会長より 2013 年度も該当受賞者なしとの報告があり、
今後、奨励賞を見直していく可能性についても言及があっ
た。
(3)2014 年度予算について
四役が各委員会の計画・要望等を聞き検討したうえで、
予算案を作成することが確認された。大会企画に関し
て、委員会とは別に打合せ等がある場合には、その交
通費も支給されることが望ましいとの提案があった。
各委員への交通費支給について検討中である旨、森本会
長より説明があった。
(4)各種委員会構成(案)について
公開講座プロジェクト委員も委員メンバーとして記載す
ることが提案され、承認された。金ミンコン委員に広
(7)その他
報委員を兼任してもらうことが菅委員より提案され、
森本会長より 2014 年度予算案について6月の総会に間に
承認された。竹沢委員が奨励賞副委員長となることが
合わせるよう作成する予定であると報告があった。
承認された。
(5)会則改定(案)について
2. 事務局
木村会則改定検討委員長より、会則改定案作成の進捗状
朝日事務局長より、事務局の移動に伴い学会郵便口座の
況および内容が説明され、以下のような点が指摘され
異動も手続き中であることが報告された。坂口旧事務局長
た。
より、継続業務として4月 6 日にニューズレター発行と住
・会計および監査関連の役職名
所不明のための返送郵便の対応をおこなったこと、経費精
・理事会開催
算後新事務局へ引き継ぐことが報告された。
・四役の定義および四役選任プロセスの不透明性
鴛海事務局次長より 2013 年度収支決算報告がなされた。
・会員資格
これらについてのしかるべき内容を、会則改定案に反
《審議事項》
映させていくことが確認された。
(1)会員動態
会則改定検討委員会を第 24 回年次大会前に開催し、
入会希望5件
大会期間中の運営委員会にて再審議、総会にて提案を目
退会希望7件のうち、一人が4年間会費未納入であるた、
指すことが確認された。
その対応について審議された。
除籍についての規定がないことが確認された。除籍の規
定については会則改定と関わるため、継続審議とすること
が確認された。
(2)第 24 回年次大会・総会関係
学会員以外の研究者招聘にともなう学会の経費負担につ
いて審議され、下記事項が確認された。
・移民学会からの謝金支払いについては年次大会予算か
らの支出が基本
・課税対象とならないように招聘研究者への支払い方法
の検討
・上限5万円(目安)の実費精算が慣例だが、実態に応
(6)その他
次回運営委員会を 6 月 28 日 10 時に変更することが確認
された。
以上
2014.7.31 vol.67 15
Newsletter
■ 2014 年度 第 2 回 運営委員会議事録
ることが確認された。
(4)広報・研究交流委員会
2014 年 6 月 28 日(土)10 時 30 分~ 11 時 30 分
【場所】和歌山大学 E201 教室
【出席者】浅香、河原、小嶋、坂口、菅、園田、野入、南川、森茂、
森本、吉田、鴛海、東(事務局)
(文中敬称略)
欠席のイシ広報・研究交流委員長に代わり、小嶋委員よ
り報告された。
・7 月 20 日ニューズレター発行予定
・太地ツアーや第 24 回年次大会について掲載予定
・運営委員会の詳細報告よりも「よみもの」的なものに
変更
≪報告事項≫
・「広報・国際交流委員会」へ名称変更
1. 各種委員会
・ホームページ多言語化へのとりくみ
(1)大会企画委員会
南川大会企画委員長より下記の報告があった。
・今年度についても同様に海外講演者招聘
論文アブストラクトのホームページ掲載は、移民研究
年報最新号よりすすめることとする。
(5)事務局体制について
・AAAs 研究者交流プログラムのもと、研究者招聘
事務局体制について、朝日事務局長の辞任および早稲田
・大会校企画、ラウンドテーブル、自由論題発表など例
大学人間科学学術院森本研究室への事務局設置、坂口副会
年どおり実施予定
長の事務局長就任が報告された。
さらに、ラウンドテーブルを会員研究交流の場となるよ
鴛海事務局次長より、2013 年度決算報告として収支総括
うに工夫を施しており、今年度の結果に注目したいとの報
および収入内訳、支出内訳が報告された。
告があった。
(2)編集委員会
浅香編集委員長より下記の報告があった。
・第 24 回年次大会中、委員会を 2 回開催予定
・投稿希望者数 27 のうち、16 の原稿を受領
・第 21 号のボリュームは目安の 180 ページ以上となる
可能性あり(年次大会と連動した論文等を研究年報のな
かにもりこむとすると超える可能性はさらに高い)。
(3)共同研究推進委員会
≪審議事項≫
(1)最新会員動態について
入会・退会希望者からの申請書が回覧され、3 名の入会と
2 名の退会が承認された。
(2)マイグレーション研究会の書籍展示・販売願いについ
て
第 24 回年次大会での展示・販売が承認された。
(3)総会議事項目について
坂口共同研究推進委員長より、ワークショップ企画につ
総会議長については、のちほど依頼する予定である旨森
いて、速報版を第 24 回年次大会にて配布、例年と開催時期
本会長より説明があった。活動報告の内容について坂口事
が異なるが、告知等で会員からの参加を促すとの報告があっ
務局長より説明があり、内容に問題ないことが確認された。
た。
会計監査報告について、監査役2人が欠席のため、総会で
JICA 横浜・日本移民学会共同開催公開講座プロジェクト
の説明を森本会長が代行することが確認された。
について森茂プロジェクト代表委員より下記報告があった。
総会の各議事項目内容について承認された。
・学会成果を一般市民の方々へ還元するという本プロ
2014 年度予算案およびその内訳について鴛海事務局次長
ジェクトの趣旨
より説明があり、下記の指摘および質問があった。
・今後のスケジュール
大会企画委員会の活動費に海外からの招聘者への謝礼が
・第一回講義参加者数 57 名、第二回講義参加者数 59 名
含まれていないことが確認され、活動費として足りない可
・海外移住資料館のホームページを通して情報発信、資
能性があることが南川委員より指摘された。
料公開
現代資料出版の年報販売および売り上げについて質問が
・撮影ビデオ公開についても検討
あり、売り上げは日本移民学会に還元されていることが坂
関連する諸団体との共同研究等促進を考慮し、日本移民
学会主催以外の企画でも、日本移民学会ホームページなど
をとおして広報する際には、情報発信者の明示が必要であ
口事務局長より説明された。
(4)その他
会則改定、各種委員会構成については第 3 回運営委員会
16 2014.7.31
vol.67
にて検討されることが説明された。
≪報告事項≫
次回年次大会開催校については、重ねて検討していく予
1. 各種委員会
定であることが説明された。
1)第 24 回年次大会について
以上
南川大会企画委員長より下記報告があった。
・各プログラムは盛況に終わった。
・大会企画シンポジウムは今までにない新しい視点のもの
■ 2014 年度 第 3 回 運営委員会議事録
だったが、ポジティブな評価のコメントが寄せられた。
2014 年 6 月 29 日(日)8 時~ 9 時
・ラウンドテーブルは各会場によって異なっていた。有意義
【場所】和歌山大学 E201 教室室
な議論ができるラウンドテーブルとなった会場と、人数が
【出席者】浅香、河原、木村、粂井、坂口、菅、高木、竹沢、野入、
南川、森本、鴛海、東(事務局)
(文中敬称略)
多く自由論題と同様の雰囲気となった会場に分かれたよう
だ。
・開催校企画のシンポジウムについても、地域に密着した研
究ということで、和歌山で開催される意義というものを参
≪報告事項≫
加者にも伝わるような大会となった。
(1)会則改定
木村会則改定検討委員長より、会則改定検討委員会での作
業経過と検討事項について説明さ、会則改定のおもな争点が
下記のとおりであることが指摘された。
大会参加者数について坂口事務局長より下記報告があっ
た。
・28 日の参加者 100 名、29 日 121 名。
2)編集委員会について
・会長選出について
浅香編集委員長欠席のため、代わりに森本会長より下記
・理事選出について
報告があった。
・事務局設置場所について
運営委員選出、翌日に会長選出というこれまでの選出方法
が、スケジュール的に早急すぎることから、早い時期での運
営委員選出の検討が確認された。
理事および会長の選出について、下記のようなスケジュー
ルとなりうることが確認された。
委員解任時期について、編集委員会は年次大会での入れ替
えが難しい旨指摘があった。そのうえで、委員会の交代時期
について議論され、下記のような案も検討の可能性があるこ
とが確認された。
・4月選挙、6月の総会にて承認、翌年の年次大会より
新人事とする。
・年報発行時期も変更し、編集委員会も年次大会で交代
する。
会計年度以外は6月交代の方向で抜本的にスケジュールを
見直すことが提案され、検討していくことが確認された。 以上
・17 の論文投稿があったが、会費未納者がいるため、納
入を督促する。
3)共同研究推進委員会について
坂口共同研究推進委員長より下記報告があった。
・ワークショップ企画は配布チラシのとおり予定
JICA 横浜・日本移民学会共同開催公開講座プロジェクト
については森本会長より下記報告があった。
・2年の公開講座プロジェクトをもとに、移民研究入門のテ
キストを作成・出版する。
4)その他
ホームページへの論文アブストラクト掲載については、
投稿規定等にその旨を記し、事後承認ではなく事前承認が
できるような方向を検討することが確認された。
≪審議事項≫
1)大会企画委員
今後の課題について南川委員長より下記指摘があった。
・大会企画委員会6名となっているが、人数が少ない。
■ 2014 年度 第 4 回 運営委員会議事録
2014 年 6 月 29 日(日)
16 時 40 分~ 17 時 30 分
【場所】和歌山大学 E201 教室
【出席者】河原、木村、坂口、園田、南川、東(大会開催校)、森本、
鴛海、東(事務局)
・大会企画委員のもつリソースを有効活用するためにも
打合せ時の交通費を支給し、打合せに積極的に参加して
もらう必要あり。
・海外とのアウトリーチ活動を近年おこなっているが、
北米に比重を置いた学会という印象を与えている可能性
2014.7.31 vol.67 17
Newsletter
が指摘され、翌年以降はアジア研究者招聘等を視野に入
があること、会員メーリングリスト等を使って告知する可
れることを検討。
能性について指摘された。
・海外からの招聘のみではなく、学会員の海外での発表
奨励賞委員会の委員長副委員長について次回運営委員会
等に対する支援等も今後検討する可能性あり。
で検討されることが確認された。 ・大会開催校の負担軽減の必要性がある。大会企画委員
以上
のなかで開催校担当を決め、開催校負担を減らすことも
検討する。
上記について、次回運営委員会までに大会企画委員内で話
■ 2014 年度 日本移民学会総会 議事録
を進めていくことが確認された。
2014 年 6 月 28 日 17 時 30 分~ 18 時 15 分
太地町での関連企画も含め、盛況に終わった旨森本会長
【場所】和歌山大学 経済学部棟 E101 教室
より運営委員会を代表して東悦子第 24 回年次大会実行委員
長へ謝意が述べられた。
議長選出
東委員長より大会参加申込受付集約の煩雑さについて報
会長推薦により、議長には飯田耕二郎会員が選出され、
告がなされ、ホームページを利用しての申込受付および自
賛成多数により承認された。
動返信について検討することが確認された。さらに、宿泊
2013 年度活動報告について坂口副会長・事務局長より報
や交通手段等、細かな質問が大会開催校宛にあったことが
告があり、拍手によりその内容が承認された。
報告された。
2013 年度会計報告について鴛海事務局次長より報告が
事務局宛にプログラム記載の交通案内情報が最新でな
あった。
かったという連絡が来ていた旨坂口事務局長より報告が
大会会場での年会費支払いについての質問があり、坂口
あった。
副会長・事務局長より近年大会会場での支払をおこなって
次回開催校候補については、正式決定後に運営委員に連
おらず、郵便振替での払込を利用していただきたい旨説明
絡すること、25 周年記念大会であることも念頭に企画して
がなされた。
いくことが確認された。
また、退職した会員の年会費負担軽減について会場より
(2)会則改定
提案があり、坂口副会長・事務局長より年齢別の学会費値
会則改定についてのスケジュールについて木村会則改定
段設定等についても検討していく旨説明があった。
検討委員長より説明があり、第5回運営委員会で議論する
会計監査について、木村監査人、島田監査人が欠席のため、
ため、それ以前に会則改定検討委員会を開催し、改定案を
代わりに森本会長より報告があった。
まとめる予定であることが確認された。
2013 年度会計報告および監査について、拍手により承認
会則改定に向け、下記スケジュールで進められることが
された。
確認された。
・10 月発行のニューズレターにて会則改定について告知
2014 年度活動方針案について森本会長より説明があった。
し、11 月 8 日、9 日ワークショップ開催時に、会則改定
ワークショップの「多文化共生」とは何をさすのかと会
についての説明を行う。
場より質問があった。
・会則改定の最終決定は来年度大会の総会にて行なう。
ワークショップについては最新の進捗状況のご説明であ
また、第5回運営委員会の前に開催する検討委員会開催
り提案段階である旨坂口副会長・事務局長より説明があっ
日程については、運営委員会同日 (9 月 20 日 ) に開催するこ
た。それに対し、移民学会は「多文化共生」という用語を
とが提案された。開催時間については委員の都合に合わせ
きちんと定義したうえで、研究を発信していくべきである
て後日決定する。
ことが指摘された。貴重な意見として検討していく旨森本
選挙時期については、従来よりも早期におこなうことが
会長より回答があった。
望ましいことをふまえ、引き続き検討していくことが確認
活動方針について拍手を持って承認された。
された。
2014 年予算案について鴛海事務局次長より説明があった。
(3)その他
奨励賞の件について告知が十分になされていない可能性
予算案について拍手により内容が承認された。
その他として、坂口副会長・事務局長より東悦子 2014 年
18 2014.7.31
vol.67
度年次大会実行委員長、ならびに学生スタッフへ謝意が述
『立教大学ラテンアメリカ研究所報』第 42 号、2014 年 3
■
べられた。
月
森本会長より次回大会開催校が未定であるが、開催日程
は同様に6月末ごろである旨説明があった。
■
北米エスニシティ研究会編『北米の小さな博物館 3―「知」
の世界遺産』 彩流社、2014 年 1 月
議長挨拶および拍手をもって閉会された。
(以上、すべての文責は坂口満宏)
■ 新入会員一覧
■ 共同研究推進委員会からのお知らせ
2014 年度ワークショップ企画
移民と向き合う宗教
★李 東勲(いー どんふん)
―「多文化共生」を実践する信仰者たち―
東京大学大学院総合文化研究科
共催:「宗教と社会」学会「現代社会における移民と宗教」
博士課程
プロジェクト
歴史社会学
近代朝鮮半島に移住した日本人の社会史(1895 〜 1925 年)
【ワークショップ趣旨】
難民・移住者・移動者たちを広義の「移民」と見なした場合、
日本国内のそうした人びとへの支援は「多文化共生」とい
★管 紀子(かん のりこ)
う言葉で語られてきた。しかしながら、行政による公的サ
松山大学
ポートは、今なおごく限定されたものであることは周知の
非常勤講師
通りである。そのような制度の狭間に置かれがちな移民た
移民史、英学史、アジア系アメリカ文学、日本近代文学
ちを、物心の両面から支えてきた重要なアクターの 1 つが、
夏目漱石とそのライバルでもある重見周吉、ハワイ日系移
宗教組織もしくは宗教者たちであった。本ワークショップ
民とその後身の軌跡
では日本において移民と向き合ってきた宗教の「現場」の
声を聞き、その成果と課題を学ぶことによって、今後の研
★山ノ内 裕子(やまのうち ゆうこ)
究者たちとの協働の可能性を模索してみたい。
関西大学
准教授
日 時:2014 年 11 月 8 日(土)・9 日(日)
教育人類学
会 場:東洋大学白山キャンパス
ブラジル日系人の教育とエスニシティに関する研究
(最寄駅:都営地下鉄三田線白山駅、東京メトロ南北線本駒
込駅)
■ 寄贈図書一覧
■
■
■
■
桜井祥行『静岡と世界―静岡県国際化事始め』羽衣出版、
○プログラム
2014 年 3 月
11 月 8 日 14:00-17:30
河上幸子『在米コリアンのサンフランシスコ日本街―境界
第 1 部 シンポジウム「宗教と「多文化共生」の実践」
領域の人類学』お茶の水書房、2014 年 3 月
登壇者:仏教やキリスト教の関連組織の方々
宮崎幸江編『日本に住む多文化の子どもと教育―ことばと
コメンテータ:白波瀬達也(関西学院大学)
文化のはざまで生きる』上智大学出版、2014 年 1 月
司会:高橋典史(東洋大学)
田中慎二 『移民画家 半田知雄—その生涯』 ブラジル日
*第 1 部終了後に懇親会を予定しています
本移民百周年記念『人文研研究叢書』第 9 号 サンパウロ
■
■
■
人文科学研究所、2013 年3月
11 月 9 日 10:00-13:00
日比嘉高 『ジャパニーズ・アメリカ―移民文学・出版文化・
第 2 部「研究者による動向紹介とディスカッション」
収容所』新曜社、2014 年2月
登壇者および発表内容:
吉原和男編『現代における人の国際移動―アジアの中の日
野上恵美(神戸大学大学院)「在日ベトナム人と宗教」
本』慶應義塾大学出版会、2013 年 3 月
永田貴聖(立命館大学)「在日フィリピン人と宗教」
水野剛也『「自由の国」の報道統制―大戦下の日系ジャー
星野壮(大正大学)「デカセギと宗教」
ナリズム』吉川弘文館、2014 年 7 月
川﨑のぞみ(筑波大学大学院)「日本のムスリム」
2014.7.31 vol.67 19
Newsletter
コメンテータ:荻野剛史(東洋大学)
司会:高橋典史(東洋大学)
■ 日本移民学会事務局からのお知らせ
● 2014 年 6 月 事務局、移転しました
新しい事務局の連絡先は、以下の通りです。
11 月 9 日 15:00-17:00 ごろ 第 3 部 見学会(近隣の宗教施設
〒 359-1192 所沢市三ヶ島 2-579-15
など)
早稲田大学人間科学学術院 森本研究室気付 ○参加方法:要事前申込
日本移民学会事務局
(電話/ FAX)04-2947-6789 【お問い合わせ先】高橋典史(東洋大学社会学部)
E-mail: [email protected]
■ JICA 横浜・日本移民学会共同開催公開講座
(E-mail)[email protected]
(郵便振替口座)00960-5-95922
e メールアドレスと郵便振替口座はこれまで通りです。
シリーズ「日本人と海外移住」のご案内
● 移民学会のホームページが刷新されました
本講座は 2014 ~ 15 年度にかけて全 12 回、JICA 横浜の施設
日本移民学会のホームページがより見やすく、カラフルに
を利用して行います。講座への参加は無料です。また、会
なりました。
員に限らず、大学生と学校教員等を含む一般市民に広く開
http://www.gssm.musashi.ac.jp/research/imin/index.html
放しています。
講座では、北中南米、ハワイ、アジア、大洋州、満州、朝
● 年会費納入のお願い
鮮半島・台湾等を、国別・地域別に概観します。公開講座
2014 年度分までの年会費を下記郵便振替口座へお振込くだ
スケジュール及び講義概要は、事前に JICA 横浜のホームペー
さい。
ジ等を利用して広報します。
通信欄には
2014 年度第 3 回以降のスケジュールは以下の通りです。
①会費の該当年度
奮ってご参加ください。
②会員区分(一般または学生)
③会員名
第 3 回「アメリカ合衆国への移民」坂口満宏(京都女子大
をご記入の上、お振込みください。
学教授)
2014 年 9 月 20 日(土)13:00-14:30 JICA 横浜 4F かもめ
日本移民学会 郵便振替口座:00960-5-95922
一般会員:8,000 円 第 4 回「カナダへの移民」河原典史(立命館大学教授)
学生会員:4,000 円 2014 年 10 月 25 日(土)13:00-14:30 JICA 横浜 4F かも
め
● 所属先や住所、メールアドレスに変更のある方は、ホー
ムページ上の「一般の方へ / 入会の案内」 から「住所変更
第 5 回「ブラジルへの移民」三田千代子(元上智大学教授)
届ダウンロード」をご利用のうえ、事務局までご連絡くだ
さい。
2014 年 12 月 27 日(土)13:00-14:30 JICA 横浜 4F かも
〒 359-1192 所沢市三ヶ島 2-579-15
め
早稲田大学人間科学学術院 森本研究室気付 日本移民学会事務局
第 6 回「中南米への移民」石川友紀(琉球大学名誉教授)
[ 電話 /FAX] 04-2947-6789
2015 年 2 月 28 日(土)13:00-14:30 JICA 横浜 4F かもめ
[E-mail] [email protected]
日本移民学会ニューズレター 第 67 号
2014 年 7 月 31 日
[発行]広報・国際交流委員会 アンジェロ・イシ
[編集]アンジェロ・イシ、小嶋茂
[編集デザイン]
金ミンコン(広報・国際交流委員)、日髙華
日本移民学会ホームページ
http://www.gssm.musashi.ac.jp/research/imin/
Fly UP