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講演資料
ブラックホールと宇宙ジェット 松元亮治(千葉大理) 地球シミュレータプロジェクト 「宇宙の構造形成とダイナミックス」 銀河形成 太陽活動 ブラックホールと 宇宙ジェット ブラックホールを探る 「すざく」 打上 (2005.7.10) ブラックホールと宇宙ジェット © JAXA ブラックホール • 重力が強いために光さえも逃げ出せなくなっ た天体 アインシュタインの発想 • 重力は空間の性質 – 質量を持つ物質は空間をゆがませる 一般相対論から予測されること • 重力によって光が曲がる – 重力レンズ • 水星の近日点移動 – 楕円軌道からのずれを説明 • 重力による時間の遅れ – GPSで利用 • 宇宙膨張 • ブラックホール ブラックホールはなぜ見える? M. Makita and T. Matsuda ブラックホールに落下する物質 が作る回転円盤:降着円盤 回転物質がゆっくり落下することにより、 重力エネルギーを輻射などのエネルギー に変換:宇宙重力発電所 ブラックホールはこう見える J. Fukue 1988 ブラックホール候補天体白鳥座X-1 電波天体 故 小田 稔 博士 X線強度が ミリ秒で変動 Negoro 1995 白鳥座X-1がブラックホールである証拠 • M > 中性子星の質量の上限値 M 伴星の吸収線の時間変化 V R i r m 銀河系中心の巨大ブラックホール 宇宙ジェットと降着円盤 活動銀河中心から噴出するジェット 原始星近傍から噴出する ジェット(Burrows 1995) 宇宙ジェットのふたつのモデル 開いた磁力線に沿う 磁気遠心力加速 閉じた磁気ループの膨張 による磁気タワージェット Blandford & Payne (1982)、 内田・柴田 (1985) Lynden-Bell & Boily (1994) 加藤・林・松元 (2004) シミュレーションコード:CANS,ARPS • • • • • ACT-JSTプロジェクト で開発した天体電磁 流体シミュレーション 用の統合コード 3次元電磁流体コード のプラットフォーム+ さまざまな物理過程、 シミュレーションモデ ルのモジュールに よって構成 CANSは宇宙シミュ レーションネットラボ ラトリーシステムの一 部として公開中 ベクトル並列計算機 向きに最適化 MPIを用いて並列化 電磁流体方程式の差分化 基礎方程式 ∂ρ + ∇( ρv ) = 0 ∂t ρ (∇× B) × B ∂v + ρ( v •∇) v = -∇P + + ρg ∂t 4π ∂B = ∇× ( v × B) + η∇2 B ∂t ∂ρ ε + ∇( ρ ε v ) + P∇v = QJ + Qvis-Qrad ∂t 格子点(カー テシアン座標 の場合) 領域 分割 シミュレーション結果 準定常ジェットの形成 at z = 3 Mass Flux Angular Momentum Flux Density distribution at t = 25 Time Kuwabara et al. (2005) ジェットは安定に存在できるか? 3次元シミュレーション (Kigure et al. 2005) 磁場が弱い場合のシミュレーション結果: 非軸対称不安定性の成長 Kuwabara et al. (2005) Rm=150 t = 38 高速回転によるジェットの安定化 安定 領域 磁力線の 捻れが大 きい領域 超音速 領域 回転速度 磁気タワージェットのシミュレーション 磁気タワージェットの形成 Kato, Hayashi, Matsumoto (2004) 降着円盤の大局的3次元 磁気流体シミュレーション 初期条件 10回転後 β = Pgas/Pmag=100 200*64*240 grid points Matsumoto 1999 降着円盤モデル最大の課題: 角運動量輸送機構 角運動量 磁気回転不安定性 (Balbus and Hawley 1991) ブラックホール降着円盤の 散逸性磁気流体シミュレーション (Machida and Matsumoto 2003 ApJ ) 重力ポテンシャル : φ= - GM/(r-rg) 角運動量 : 初期に一定 初期磁場 : 方位角磁場 Pgas/Pmag = β= 100 at 50r_g 異常電気抵抗 η= (1/Rm) max [(J/ρ) /vc– 1, 0.0] 2 250*64*192mesh 降着円盤の形成 初期状態 t=26350 unit time t0=rg/c 磁気エネルギーと角運動量輸送率の 時間変化 磁気エネルギー <BrBφ/4πP0> α~0.1 β= Pgas/Pmag ~ 10 time TIME 形成された降着円盤の激しい時間変化 (Machida and Matsumoto 2003) ジュール加熱 T=30590 電流密度 磁気エネルギー T=30610 電流密度分布(カラー)と磁力線(白線) 降着率 T=30630 time 白鳥座X-1の時間変動 シミュレーション結果との比較 時間変動スペクトルの再現に成功! PSD f -0.9 -1.5 f 1Hz 100Hz 白鳥座X-1の観測結果 frequency シミュレーションから求めた時 間変動のパワースペクトル 最近の結果:クールな円盤の進化 密度分布 方位角 磁場分布 By T ρ 降着円盤の鋸歯状振動の発見 (Machida and Matsumoto 2005) 降着率 ジュール加熱率 ブラックホール候補天体で観測される振動 McClintock and Remillard 2004 LFQPO HFQPO ブラックホール候補天体の進化の解明: ブラックホールのロゼッタストーンGRS1915+105 光 度 赤外線 電波 X線、赤外、電波の時間変動 (Mirabel and Rodriguez 1998) 超高速電波ジェットの噴出 (Mirabel et al.1994) ブラックホール候補天体の 状態遷移の謎に迫る Remillard 2005 光度 Hard state Soft state 10 10 100 KeV 光学的に厚く 冷たい円盤 色 100 KeV 光学的に薄く 暑い円盤 従来の降着円盤モデルの問題点 ハードステート円盤は暗すぎる! Abramowicz et al. 1995 降着率 Slim Advection Radiation ADAF SADM 表面密度 光学的に 薄い 光学的 に厚い 状態遷移のシミュレーション結果 密度 温度 方位角磁場 磁気圧で支えられた円盤の形成 黄色い領域で磁気圧が優勢になっている 状態遷移前 状態遷移後 状態遷移過程における磁気圧優勢 円盤の形成 輻射冷却 β=ガス圧/磁気圧~10 ガス圧で支えられた光学 的に薄い高温円盤 冷却 β< 1 磁気圧で支えられた光学的に 薄いクールな円盤 光学的に薄い円盤の新たな熱平衡解の発見 (Matsumoto and Machida 2005) 降着率 磁気圧で支えら れた円盤 Slim Radiation ADAF SADM 表面密度 光学的に 薄い 光学的 に厚い マイクロクェーサーGRS1915+105の新モデル 光学的に薄 い高温円盤 冷却 Low β disk プラズモ イド噴出 まとめと今後の課題 • 3次元のグローバルな磁気流体シミュレーションにより、降着 円盤の形成と降着円盤からのジェットの形成過程を再現した。 • 磁気タワー形成に伴うジェット形成機構をシミュレートし、回 転軸方向に絞られたジェットが形成されることを示した。 • ブラックホール候補天体で観測される1/fノイズ的な激しい時 間変動とバースト的なフレア現象を再現した。 • クールな降着円盤で鋸歯状振動が励起されることを示し、観 測される低振動数と高振動数の準周期振動を再現した。 • シミュレーション結果にヒントを得て、磁気圧に支えられ、光 学的に薄く明るい状態にある円盤の熱平衡解をみつけた。 これにより、降着円盤の進化過程におけるハードステートと ソフトステートの間のミッシングリンクを埋めることができた。 • 今後の課題:解像度依存性のチェック、一般相対論化、シン クロトロン放射、コンプトン散乱などの輻射過程、光学的に厚 い輻射輸送の組み込み、「すざく」による輝線観測との比較