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Title Author(s) ハクサイ(Brassica rapa subsp. pekinensis)の半数体育種に関する 研究 佐藤, 正紀 Editor(s) Citation Issue Date URL 大阪府立大学, 2009, 博士論文. 2009 http://hdl.handle.net/10466/6470 Rights http://repository.osakafu-u.ac.jp/dspace/ 大 阪 府 立 大 学 博 士 (応 用 生 命 科 学 )学 位 論 文 ハクサイ( Brassica rapa subsp. pekinensis )の 半 数 体 育 種 に関 する研 究 佐藤 正紀 2009 年 目次 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3 第 1章 緒言 第 2章 葯 および小 胞 子 培 養 による倍 加 半 数 体 の作 出 第 1節 ・・・・・・・・・・・・・・・・14 小 胞 子 培 養 における不 定 胚 形 成 率 に対 する材 料 蕾 あるいは花 序 の 低温前処理効果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15 第 1項 共 通 の方 法 第 2項 花 序 あるいは蕾 の低 温 前 処 理 の効 果 第 3項 蕾 の 0, 3, 7, 10, 15 および 20 日 間 の低 温 前 処 理 の効 果 ・・・20 第 4項 考察 第 2節 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・23 蕾 低 温 処 理 が小 胞 子 の発 達 におよぼす影 響 ・・・・・・・・・・・・・・・24 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24 第 1項 共 通 の方 法 第 2項 同 一 蕾 中 の 6 葯 の中 の小 胞 子 の発 達 ステージ ・・・・・・・・・・・25 第 3項 低 温 処 理 中 の小 胞 子 の発 達 第 4項 考察 第 3節 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・25 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・28 1 個 体 の材 料 植 物 から得 られる倍 加 半 数 体 数 の推 定 第 1項 材 料 植 物 1 個 体 からの小 胞 子 培 養 第 2項 考察 第 4節 ・・・・・・・・・29 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・31 葯 および小 胞 子 培 養 由 来 の不 定 胚 からの再 分 化 植 物 の作 出 と 倍 数 性 の検 討 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・33 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・34 第 1項 共 通 の方 法 第 2項 培 養 法 が再 分 化 植 物 の倍 数 性 に与 える影 響 第 3項 品 種 ・系 統 が小 胞 子 培 養 由 来 の再 分 化 植 物 の倍 数 性 に与 える 影響 ・・・・・・・・・・・・36 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・37 第 4項 不 定 胚 の倍 数 性 調 査 による自 然 倍 加 の発 生 時 期 の推 定 第 5項 考察 ・・・39 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・41 -1- 第 3章 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・48 優 良 倍 加 半 数 体 系 統 の育 成 第 1節 交 配 に利 用 するための成 熟 花 粉 の保 存 に関 する検 討 第 1項 in vitro での花 粉 発 芽 法 の検 討 ・・・・・・・・48 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・49 1. 共 通 の材 料 および方 法 2. 培 地 の pH の影 響 3. 湿 度 前 処 理 の in vitro 花 粉 発 芽 への影 響 4. 湿 度 前 処 理 が花 粉 の形 態 に与 える影 響 5. 花 粉 発 芽 率 の品 種 ・系 統 間 差 異 第 2項 花 粉 の保 存 条 件 の検 討 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・58 1. 花 粉 保 存 時 の湿 度 の影 響 2. 花 粉 保 存 時 の温 度 の影 響 第 3項 長 期 保 存 花 粉 の受 精 能 力 と自 家 不 和 合 性 第 4項 考察 第 2節 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・65 葯 および小 胞 子 培 養 による優 良 倍 加 半 数 体 系 統 の作 出 と 品種育成 第 4章 摘要 ・・・・・・・・・・・・・・60 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・71 第 1項 F 1 品 種 からの倍 加 半 数 体 の作 出 と育 種 母 本 の育 成 第 2項 圃 場 選 抜 個 体 からの倍 加 半 数 体 の育 成 第 3項 考察 総合考察 ・・・・・・・71 ・・・・・・・・・・・・・・・・76 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・78 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・81 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・88 Summary ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・93 謝辞 引用文献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・100 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・101 -2- 第 1章 緒 言 ハクサイは,地 中 海 沿 岸 を起 源 とし,中 国 に伝 わって栽 培 され,品 種 が分 化 した と考 えられている(水 島 と角 田 1969).現 在 では,主 に中 国 ,朝 鮮 半 島 および日 本 等 の極 東 アジア地 域 で栽 培 されている.日 本 へは 1866 年 (慶 応 2 年 )にはじめ て渡 来 したといわれ,本 格 的 に導 入 されたのは 1875 年 (明 治 8 年 )で,その後 , 愛 知 県 や宮 城 県 で育 種 や採 種 が行 われるようになり普 及 していった.そして,葉 菜 類 の少 ない冬 期 間 の重 要 な野 菜 として生 産 量 も伸 び続 けた. 現 在 では,ハクサイは最 も身 近 で重 要 な野 菜 のひとつとして,鍋 物 ,煮 物 ,加 工 品 (漬 物 ,浅 漬 ,キムチ)およびサラダ用 として幅 広 く利 用 されている.作 付 面 積 は, 野 菜 の中 でダイコン,キャベツ,スイートコーン,タマネギ,ホウレンソウ,ネギ,レタス に次 いで第 8 位 ,収 穫 量 はダイコン,キャベツ,タマネギに次 ぐ第 4 位 (2002~ 2 0 0 7 年 ) で あ る . し か し , 近 年 の 作 付 面 積 は 減 少 傾 向 に あ り ( Ta b l e 1 - 1 ) , 2 0 0 5 年 以 降 20,000 ha を下 回 り,収 穫 量 は 2003 年 以 降 1,000,000 t 以 下 で推 移 している.作 付 面 積 や収 穫 量 の減 少 は,現 代 の食 生 活 の多 様 化 が原 因 の一 つと 考 えられる. ハクサイは,同 一 産 地 での周 年 栽 培 は成 り立 たないので,全 国 の北 から南 まで の各 産 地 で異 なる作 型 で栽 培 されている.すなわちハクサイの周 年 供 給 は,収 穫 季 節 の違 い,品 種 の早 晩 性 ,育 苗 や加 温 といった栽 培 技 術 の組 み合 わせによっ て 成 立 し て い る . し か し , 市 場 へ の 入 荷 状 況 は , 11 月 か ら 2 月 に ピ ー ク が 現 れ , 5 月 から 8 月 は激 減 している(由 比 1993).これは,ハクサイの抽 苔 特 性 により高 温 期 の栽 培 が困 難 であること,冬 季 の鍋 物 への利 用 といった消 費 者 側 の利 用 頻 度 や,浅 漬 けやキムチの業 務 ・加 工 用 に出 荷 されているといった市 場 動 向 によるもの と考 えられる. ハクサイが日 本 に導 入 され,栽 培 が普 及 した当 初 は,その種 子 が遺 伝 的 に雑 駁 -3- Table 1-1. Cutivation area and harvest amount par year of Brassica rapa subsp. pekinensis L. (Chinese cabbage) in Japan. Cultivation Year 3 Harvest 3 1998 1999 area (×10 ha) 23.7 23.5 amount (×10 t) 989.9 1,079.0 2000 2001 2002 2003 2004 22.7 22.0 21.4 20.7 20.2 1,036.0 1,038.0 1,005.0 964.5 887.6 2005 2006 2007 19.8 19.3 18.7 924.3 942.3 917.5 Extract from Agriculture-and-forestry fishery statistics information synthesis database. -4- であったので,結 球 しないものが多 かった.したがって,いかにして種 子 の純 度 を高 めて結 球 率 の高 い品 種 を育 成 するかが当 初 の育 種 目 標 であった.中 国 から導 入 した種 子 を対 象 にして,集 団 選 抜 ,純 系 分 離 ,母 系 淘 汰 に交 配 固 定 の手 法 も 組 み入 れられ,現 在 の品 種 の育 種 素 材 となる多 くの品 種 が育 成 された(渡 辺 1989).このようにして種 子 の実 用 的 純 度 が向 上 し,栽 培 が安 定 して各 地 に産 地 が形 成 され市 場 出 荷 されるようになってからは,市 場 の意 向 を反 映 して結 球 形 態 , 熟 期 ,輸 送 性 に着 目 した品 種 改 良 が行 われるようになった.更 に 1930 年 代 中 頃 からは,耐 病 性 の付 与 が求 められるようになり,軟 腐 病 ,ウイルス病 の抵 抗 性 育 種 が進 められた.このように,ハクサイ栽 培 の普 及 ,拡 大 とともに育 種 目 標 は細 分 化 されて多 岐 にわたり,結 球 形 態 ,生 理 ・生 態 特 性 ,作 型 ,栽 培 適 地 ,耐 病 性 ,生 理 障 害 耐 性 といった多 数 の形 質 について選 抜 され,育 種 が行 われてきた.現 在 では,作 型 も多 様 化 し,葉 質 の硬 軟 ,耐 暑 性 ,耐 寒 性 ,貯 蔵 性 ,輸 送 性 ,利 用 適 性 (浅 漬 け用 ,煮 物 用 ,キムチ用 ),収 量 ,耐 病 性 ,といった多 くの要 望 に応 え るために,各 種 苗 会 社 で新 品 種 の開 発 が続 けられている. 営 利 栽 培 を行 う上 では耐 病 性 は非 常 に重 要 な形 質 である.中 でも土 壌 伝 染 性 病 害 の根 こぶ病 は,世 界 的 な重 要 病 害 の一 つとして抵 抗 性 品 種 の育 成 が求 めら れている.根 こぶ病 は,ダイコン以 外 のアブラナ科 植 物 に特 異 的 に発 生 する病 害 で , そ の 病 原 菌 は P l a s m o d i o p h o r a b r a s s i c a e Wo r. で あ る . 根 に こ ぶ が 着 生 , 肥 大 して,導 水 性 が損 なわれて枯 死 に至 り収 穫 不 能 となる.日 本 でも 1970 年 代 初 期 に全 国 的 な発 生 が認 められ(吉 川 1975),産 地 で大 きな被 害 をもたらした. PCNB 剤 を用 いた土 壌 消 毒 による防 除 が行 われてきたが,連 作 による菌 密 度 の 増 加 によると考 えられる防 除 効 果 の低 下 が問 題 が顕 在 化 してきた.被 害 面 積 が 増 大 する中 で,根 こぶ病 抵 抗 性 の品 種 育 成 が始 まり,1982 年 に野 菜 ・茶 業 試 験 場 でヨーロッパの飼 料 用 カブの根 こぶ病 抵 抗 性 (CR:Clubroot Resistance) 遺 伝 子 を導 入 したハクサイの根 こぶ病 抵 抗 性 系 統 が育 成 された(吉 川 -5- 1993). その後 ,‘空 海 65’(タキイ種 苗 (株 ),京 都 ),‘ストロング CR75’((株 )渡 辺 採 種 場 , 宮 城 )といった CR 品 種 が育 成 され,現 在 ではハクサイ,カブ,ツケナ,キャベツ,ブ ロッコリーで多 数 の CR 品 種 が市 販 されている.CR 品 種 は育 成 当 初 ,高 い抵 抗 性 を示 し,根 こぶ病 が多 発 する圃 場 でも栽 培 が可 能 になった.しかし,1980 年 代 後 半 には,根 こぶ病 菌 のレース分 化 が原 因 と考 えられる CR 品 種 の罹 病 化 が認 められるようになった.同 一 の CR 品 種 でも栽 培 地 域 により罹 病 程 度 が異 なるよう になったので,様 々な CR 品 種 の育 成 と栽 培 が試 みられた.新 品 種 の育 成 には, CR 遺 伝 子 の導 入 が必 須 となり,多 数 の CR 品 種 が育 成 販 売 されるに至 った. 一 方 ,消 費 者 ニーズの観 点 からは,近 年 の健 康 志 向 による緑 黄 色 野 菜 への関 心 が高 まり,ハクサイでも球 内 色 が黄 色 のものが好 まれるようになってきた.更 に量 販 店 においては,1/2,1/4 といったカット包 装 した形 態 での販 売 が一 般 的 になり, ハクサイの球 内 の外 観 形 質 も重 要 になった.また加 工 用 (浅 漬 け)としても同 様 に, 球 内 色 が黄 色 であることが求 められるようになった.こうしたことから,球 内 色 が黄 色 の黄 芯 系 ハクサイが現 在 の品 種 の主 流 となっている. 雑 種 強 勢 を利 用 した一 代 雑 種 育 種 法 は,多 くの他 殖 性 作 物 種 に適 用 され,現 在 では,野 菜 の販 売 品 種 のほとんどが一 代 雑 種 (F 1 )品 種 となっている.ハクサイ を含 むアブラナ科 作 物 も同 様 にF 1 品 種 が主 流 である.自 殖 弱 勢 を示 すアブラナ 科 作 物 では,実 用 的 に支 障 のない程 度 に雑 種 性 をもたせて育 成 した固 定 種 の 品 種 が利 用 されたが,近 年 ではほとんどの品 種 がF 1 品 種 に替 わっている.F 1 品 種 は固 定 種 と比 較 して,雑 種 強 勢 による生 産 性 の向 上 と生 産 物 の斉 一 性 が高 いという長 所 がある.F 1 品 種 育 成 のためには,その両 親 となる遺 伝 的 に固 定 した 純 系 が必 要 で,純 系 の育 成 (固 定 化 )には一 般 に 7~8 世 代 ,あるいはそれ以 上 の自 殖 が必 要 となる.例 えば,2 つの育 種 素 材 のそれぞれから 2 つの目 的 形 質 を 導 入 した新 品 種 を育 成 する場 合 には,両 者 を交 雑 したF 1 の自 殖 後 代 の中 から 2 -6- つの目 的 形 質 を併 せもつものを選 抜 しながら世 代 を進 めて固 定 度 を高 めていくこ とになる.この場 合 には,純 系 の育 成 には 7~8 年 以 上 を要 する.この後 ,試 験 交 配 によるF 1 組 合 せ検 定 能 力 試 験 を行 って有 望 なF 1 組 合 せを選 定 し,産 地 適 応 性 試 験 を経 て新 品 種 に至 る.つまり,このような交 雑 育 種 によるF 1 品 種 の育 成 に は 10 年 以 上 の長 い年 月 を要 することになる. 一 方 ,半 数 体 植 物 は,コルヒチンを用 いた薬 剤 処 理 により染 色 体 を人 為 的 に倍 加 すると,直 ちにゲノム全 体 が遺 伝 的 に同 型 接 合 の純 系 である倍 加 半 数 体 (二 倍 体 ,2n)になる.すなわち,2 つの育 種 素 材 の交 雑 F 1 もしくはその後 代 の選 抜 植 物 から十 分 量 の倍 加 半 数 体 (純 系 ,2n)を作 成 して目 的 形 質 をもつ純 系 を選 抜 すれば,短 期 間 に異 型 接 合 個 体 を遺 伝 的 に固 定 できるので,育 種 年 限 の大 幅 な短 縮 が可 能 になる.また,染 色 体 セットを 1 組 しか持 たない半 数 体 (n)は,遺 伝 解 析 や突 然 変 異 の選 抜 にも有 効 利 用 できる. 半 数 体 は,半 数 性 の細 胞 である減 数 分 裂 後 の雌 性 あるいは雄 性 配 偶 子 を再 分 化 させて作 出 する.半 数 体 を得 るための主 要 な手 法 としては,雄 性 配 偶 子 側 からは葯 培 養 と,未 成 熟 な花 粉 である小 胞 子 のみを単 離 して培 養 する小 胞 子 培 養 があり,雌 性 配 偶 子 側 からは,未 受 精 胚 珠 培 養 ,放 射 線 により不 活 化 した花 粉 を交 配 した後 に胚 珠 を培 養 する偽 受 精 胚 珠 培 養 や,オオムギにおいて,遠 縁 種 (Hordeum bulsum)の花 粉 を交 配 した後 に胚 珠 を培 養 するバルボサッム法 が ある.これらのうち多 くの作 物 種 で成 功 例 が報 告 されているのは葯 培 養 である. 葯 培 養 は,Guha and Maheshwari (1964, 1966)により初 めて報 告 された. 彼 らは,チョウセンアサガオ (Datura innoxia) の葯 培 養 を試 み,小 胞 子 の一 部 が細 胞 分 裂 を開 始 して不 定 胚 に発 達 し,やがて半 数 体 が得 られることを報 告 し た.続 けて,タバコ(Nicoitiana tabacum) と Nicoitiana sylvestris の葯 培 養 においても小 胞 子 から不 定 胚 を形 成 させて半 数 性 の植 物 体 を得 ,この倍 加 に よって同 型 接 合 体 が得 られることが確 認 された(Bourgin and Nitsch, 1967).こ -7- うして,葯 培 養 による小 胞 子 からの半 数 体 作 出 が確 実 なものとなり,多 くの有 用 作 物 において葯 培 養 に関 する研 究 が行 われるようになった. さらに,葯 培 養 から進 展 して葯 の中 の小 胞 子 を単 離 して培 養 する小 胞 子 培 養 技 術 が,タバコ(N. tabacum) と Nicoitiana rustica (Imamura et al. 1982),西 洋 ナタネ(Brassica napus; Lichter 1982),トウモロコシ(Zea mays; Coumans et al. 1989, Pescitclli et al. 1989) およびオオムギ(Hordeum vulgare; Hoekstra et al. 1993) で開 発 されている. 小 胞 子 培 養 は,葯 培 養 と比 較 して以 下 のような長 所 がある.(1)培 養 操 作 の簡 易 性 :材 料 となる蕾 のサイズが小 さい場 合 (ハクサイのでは長 さ 2~3 mm),葯 培 養 では,実 体 顕 微 鏡 下 でピンセットを用 いて,蕾 の中 から葯 のみを摘 出 する細 か い操 作 が必 要 である.一 方 ,小 胞 子 培 養 では蕾 を培 養 液 中 で押 しつぶして小 胞 子 を遊 離 させる.したがって,葯 培 養 のような煩 雑 な操 作 を必 要 としないので,作 業 性 と培 養 処 理 能 力 が格 段 に向 上 する.(2)葯 壁 の体 細 胞 由 来 の組 織 から再 分 化 植 物 が混 入 する危 険 性 を排 除 できる.(3)葯 組 織 内 に,不 定 胚 形 成 に対 す る阻 害 物 質 がある場 合 には,これを排 除 でき,また培 地 成 分 を直 接 作 用 させるこ とが可 能 になる.(4)小 胞 子 を直 接 培 養 するので観 察 が容 易 で,不 定 胚 形 成 機 構 に関 与 する要 因 の研 究 に有 効 である.一 方 ,小 胞 子 培 養 には次 のような短 所 もある.(1)一 般 的 に葯 培 養 に比 べて成 功 例 が少 ない.(2)葯 壁 に保 護 されていな いので,外 的 な環 境 要 因 の影 響 を直 接 受 ける.したがって,単 離 操 作 や培 養 の 環 境 条 件 に高 い精 度 が要 求 される.(3)一 度 に大 量 の材 料 の培 養 が可 能 だが, コンタミネーションが生 じた場 合 には,同 一 の培 養 集 団 の全 てが無 駄 になる危 険 性 がある. アブラナ属 (Brassica)植 物 においても,半 数 体 作 出 に関 して多 くの研 究 が行 わ れた.雌 性 配 偶 子 からのアプローチとして,偽 受 精 胚 珠 培 養 による半 数 体 作 出 が -8- キャベツ(Brassica oleracea)で報 告 されている(Dorë 1989)が,雄 性 配 偶 子 か らのアプローチである葯 培 養 や小 胞 子 培 養 に関 する報 告 が大 多 数 である. 葯 培 養 による半 数 体 の作 出 が,キャベツ(Brassica oleracea)で最 初 に報 告 さ れた(Kameya and Hinata 1970)後 ,西 洋 ナタネ (B. nupus; Thomas and We n z e l , 1 9 7 5 , B . c a m p e s t r i s ; K e l l e r e t a l . 1 9 7 5 ) で 報 告 さ れ た . さ ら に , 葯 培 養 において培 養 初 期 の高 温 処 理 (35℃,1~3 日 )が不 定 胚 形 成 を著 しく促 進 することが報 告 (Keller and Armstrong 1979)されて以 来 ,西 洋 ナタネを中 心 にして,葯 培 養 による半 数 体 作 出 における,品 種 ・系 統 間 差 ,供 試 材 料 の生 理 的 条 件 ,培 地 ・培 養 条 件 に関 する研 究 が盛 んに行 われた.西 洋 ナタネ以 外 で は,ケール(Brassica oleracea; Keller and Armstrong 1981),キャベツ (Dore and Boulidard 1988),ハクサイ(B. rapa; Sato et al. 1989a),ブロッ コリー(B. oleracea; Keller and Armstrong 1983, Orton and Browers 1985),カリフラワー(B. oleracea;Phippen and Ockendon 1990),コモチカン ラン(B. oleracea;Ockendon 1984),クロガラシ(B. nigra; Govil et al. 1986) や,カラシナ(B. juncea; George and Rao 1982)について検 討 ・報 告 された. 小 胞 子 培 養 については, Lichter (1982)が西 洋 ナタネ(B. napus)で最 初 に 報 告 して以 来 ,不 定 胚 形 成 の効 率 向 上 が検 討 された(Gland et al. 1988, Pechan and Keller 1988, Kott et al. 1988).西 洋 ナタネ以 外 でも,ハクサイ (Sato et al. 1989b),キャベツ(Lichter 1989, Cao et al. 1990),ブロッコリー ( Ta k a h a t a a n d K e l l e r 1 9 9 1 ) や , ラ フ ァ ナ ス 属 ( R a p h a n u s ) 植 物 の ダ イ コ ン ( R a p h a n u s s a t i v u s ; L i c h t e r 1 9 8 9 , Ta k a h a t a e t a l . 1 9 9 6 ) で 報 告 さ れ , 半 数 体 作 出 技 術 は葯 培 養 から小 胞 子 培 養 へと進 展 した. 一 方 ,ハクサイでは,半 数 体 作 出 に関 する報 告 はナタネに比 べて少 ない.松 本 と長 瀬 (1984)は,ハクサイの葯 培 養 による半 数 体 作 出 について報 告 したが,そ の不 定 胚 形 成 効 率 は非 常 に低 かった.その後 ,Sato ら(1989a)は,南 方 型 の捲 -9- 心 群 の中 に高 い不 定 胚 形 成 能 をもつ品 種 があることを見 出 したが,不 定 胚 からの 植 物 体 再 分 化 の効 率 が低 かった.さらに,佐 藤 ら(1989c)は,再 分 化 条 件 の改 良 について報 告 した.また,Hamaoka らは,ハクサイの葯 培 養 における不 定 胚 形 成 過 程 の小 胞 子 の分 裂 様 式 (1991a)および再 分 化 植 物 の倍 数 性 の簡 易 な識 別 方 法 ( 1991b)について報 告 している. ハクサイの小 胞 子 培 養 については,Sato ら(1989b)が最 初 に報 告 し,その中 で 葯 培 養 と同 様 に高 い不 定 胚 形 成 能 力 を持 つ品 種 を見 出 したが,不 定 胚 からの 植 物 体 再 分 化 効 率 が低 く,半 数 体 の作 出 効 率 は低 かった.その後 ,Kuginuki ら(1997)は,不 定 胚 形 成 率 と不 定 胚 からの植 物 体 再 分 化 率 の両 方 に品 種 間 差 があることを報 告 している. 半 数 体 育 種 は,Nakamura ら(1974)が,タバコで最 初 に葯 培 養 により実 用 品 種 を育 成 し,同 グループはその後 も,5 つの品 種 を育 成 した(角 谷 ,神 代 1985). その中 の1品 種 である‘つくば 1 号 ’は現 在 でも関 東 地 方 を中 心 として栽 培 されて いる.コムギ(De Buyser and Henry 1986)やイネ(藤 田 1987)およびオオムギ ( F o r o u g h i - We h r a n d F r i e d t 1 9 8 2 ) で も 半 数 体 育 種 法 に よ る 新 品 種 ・ 系 統 の 育 成 が報 告 されている.中 国 でもイネおよびコムギの半 数 体 育 種 が盛 んに行 われ, 葯 培 養 により多 くの品 種 が育 成 ・栽 培 されている(島 田 1991). アブラナ属 (Brassica)植 物 においても,倍 加 半 数 体 を利 用 した育 種 が盛 んに 行 われており,西 洋 ナタネ(Charne and Beversdorf 1988)やブロッコリー (Farnham et al. 1998),ハクサイ(湊 ら 1988)で品 種 育 成 の可 能 性 が示 され た. このように半 数 体 育 種 法 は,実 用 が可 能 で育 種 の固 定 操 作 の期 間 短 縮 の点 で は非 常 に優 れた技 術 である.しかし,いくつかの大 きな問 題 点 があり,その普 及 を 困 難 にしている.葯 培 養 や小 胞 子 培 養 の実 用 化 を妨 げている最 大 の要 因 は,小 - 10 - 胞 子 からの不 定 胚 形 成 率 の低 さである.タバコでは高 い頻 度 で小 胞 子 由 来 の不 定 胚 が得 られ,通 常 の栽 培 品 種 ・系 統 間 でも不 定 胚 形 成 率 に極 端 な差 は認 め られないが,他 の多 くの作 物 では非 常 に低 い頻 度 でしか不 定 胚 は得 られず,作 業 効 率 も低 い(Sangwan and Sangwan-Norrel 1990). また,同 一 作 物 でも小 胞 子 からの不 定 胚 形 成 には品 種 や系 統 間 で著 しい差 が生 じ,同 一 品 種 でも材 料 植 物 の生 育 環 境 や生 理 状 態 により変 動 すること(Keller et al. 1987)が問 題 である.他 にも小 胞 子 から不 定 胚 やカルスからの植 物 体 再 分 化 が困 難 であること (Keller et al. 1984),異 数 体 が出 現 すること(Chen 1986),アルビノや小 型 化 といった,好 ましくない形 質 の突 然 変 異 が生 じる場 合 があること(Oinuma and Yo s h i d a 1 9 7 4 , B u r k a n d M a t z i n g e r 1 9 7 6 ) , 遺 伝 的 に 純 系 で あ る は ず の 倍 加 半 数 体 系 統 の中 で変 異 が生 じる場 合 があること(Kumashiro and Oinuma 1985)も実 用 化 を妨 げている要 因 である. このように,半 数 体 育 種 法 を実 用 化 するためには,小 胞 子 からの不 定 胚 形 成 頻 度 を向 上 させることが最 大 の課 題 となる.西 洋 ナタネの場 合 ,小 胞 子 培 養 による 不 定 胚 形 成 は,不 定 胚 形 成 能 の高 い品 種 ・系 統 を材 料 にすること(Chuong et al. 1988),培 地 組 成 の改 良 (Charne and Beversdorf 1988),および培 養 に 適 した発 達 ステージの小 胞 子 を含 む蕾 を正 確 に選 定 (Kott and Beversdorf 1988)することにより大 幅 に改 善 され,実 用 的 な技 術 レベルに達 していると思 われ る.しかし,ハクサイでは,西 洋 ナタネに比 べて小 胞 子 からの不 定 胚 形 成 率 が低 い といった問 題 が残 されている.不 定 胚 が全 く得 られない品 種 が供 試 25 品 種 中 12 品 種 であった(Kuginuki et al. 1997)という事 実 から,不 定 胚 形 成 には著 しい品 種 ・系 統 間 差 が存 在 することも問 題 である.一 部 には不 定 胚 形 成 率 が非 常 に高 いハクサイ品 種 が見 出 されているものの,日 本 で主 に栽 培 されている品 種 群 とは 生 理 的 ,形 態 的 特 性 が大 きく異 なるので,品 種 育 成 に直 接 利 用 することはできな い.ハクサイの葯 培 養 を用 いた新 品 種 育 成 が報 告 された(湊 ら 1988)中 でも,不 - 11 - 定 胚 形 成 率 は低 く(葯 当 たりの不 定 胚 形 成 率 0~7%),育 種 方 法 のひとつとして 一 般 的 に利 用 できる段 階 にはまだ達 していない. 本 研 究 では,ハクサイの半 数 体 育 種 法 の効 率 化 を目 的 として,1.葯 ・小 胞 子 培 養 を用 いた倍 加 半 数 体 作 出 効 率 の向 上 ,2.交 配 育 種 を行 う上 で必 要 となる 成 熟 花 粉 の保 存 技 術 について検 討 ,3.倍 加 半 数 体 を用 いた半 数 体 育 種 法 の 実 用 性 を検 証 するため,目 的 の形 質 をもつ選 抜 系 統 から優 良 品 種 の育 成 を行 っ た.育 種 目 標 は,根 こぶ病 抵 抗 性 (CR)を有 し球 内 色 が既 存 品 種 よりも黄 色 が強 く,鮮 やかに拡 がるという特 性 をもつ品 種 の育 成 である.倍 加 半 数 体 作 出 の過 程 は,1)小 胞 子 からの不 定 胚 形 成 ,2)不 定 胚 からの再 分 化 ,3)発 根 ,4)順 化 ,5) 倍 数 性 確 認 と倍 加 処 理 ,および 6)自 殖 による採 種 と主 要 な 6 つの段 階 からなる. 本 章 (緒 言 )に続 く第 2章 では,葯 ・小 胞 子 培 養 による倍 加 半 数 体 の作 出 につ いて検 討 した.第 1節 では,小 胞 子 培 養 における不 定 胚 形 成 率 に対 する材 料 蕾 あるいは花 序 の低 温 前 処 理 の効 果 を検 討 し,第 2節 で蕾 の低 温 処 理 中 の蕾 の 中 に含 まれる小 胞 子 の発 達 について調 査 することにより,低 温 前 処 理 の効 果 発 現 メカニズムを検 討 した.第 3節 では,品 種 育 成 途 中 の選 抜 個 体 から倍 加 半 数 体 獲 得 を目 指 す場 合 を想 定 し,温 室 で栽 培 した 1 個 体 の材 料 植 物 から,獲 得 で きる不 定 胚 数 を確 認 した.第 4節 では,葯 ・小 胞 子 培 養 により得 られる再 分 化 植 物 体 の倍 数 性 を調 査 し,培 養 法 や品 種 ・系 統 によって自 然 倍 加 頻 度 が異 なるこ とを明 らかにするとともに,自 然 倍 加 の発 生 時 期 を探 った. 第 3章 では,優 良 倍 加 半 数 体 系 統 の育 成 について検 討 した.第 1 節 では半 数 体 育 種 の実 用 場 面 での技 術 として,花 粉 の保 存 に関 する検 討 を行 った.これは, 開 花 期 の異 なる系 統 間 の交 配 を可 能 にする技 術 であり,葯 ・小 胞 子 培 養 によっ て得 られる再 分 化 植 物 の開 花 時 期 が個 体 ごとに非 常 に変 動 するので,これらの 間 で交 配 を試 みる場 合 には必 要 な技 術 である.第 1項 では in vitro での花 粉 発 - 12 - 芽 能 を指 標 とする花 粉 の活 性 検 定 法 を確 立 し,第 2項 ではこの検 定 法 を用 いて 花 粉 の保 存 条 件 について検 討 した.また,第 3項 において保 存 花 粉 の受 精 能 力 と自 家 不 和 合 性 の保 持 について確 認 した. そして第 2節 では,開 発 した半 数 体 育 種 の実 用 化 について検 討 するために,材 料 植 物 の選 定 から倍 加 半 数 体 の作 出 と選 抜 ,そして選 抜 された倍 加 半 数 体 系 統 を用 いた品 種 育 成 を試 みた.第 1項 では市 販 F 1 品 種 を材 料 にした葯 培 養 によ る倍 加 半 数 体 の作 出 とF 1 新 品 種 の育 成 を行 い,第 2項 ではF 1 品 種 の自 殖 後 代 (F 2 )を栽 培 して目 的 形 質 をもつ個 体 を選 抜 し,この選 抜 個 体 を材 料 にした倍 加 半 数 体 を作 出 してF 1 新 品 種 を育 成 した. 最 後 に第 4章 において本 研 究 の結 果 を科 学 性 ,実 用 性 ,将 来 性 の面 から総 合 的 に考 察 した. - 13 - 第 2章 葯 および小 胞 子 培 養 による倍 加 半 数 体 の作 出 第 1節 小 胞 子 培 養 における不 定 胚 形 成 率 に対 する材 料 蕾 あるいは花 序 の 低温前処理効果 半 数 体 育 種 では,倍 加 半 数 体 をできるだけ効 率 よく多 数 獲 得 できることが望 ま しい.倍 加 半 数 体 の獲 得 において最 も不 確 定 で困 難 な過 程 は葯 ・小 胞 子 培 養 における不 定 胚 形 成 である.不 定 胚 形 成 は,材 料 植 物 の遺 伝 子 型 ,生 育 条 件 , 小 胞 子 の発 達 ステージ,培 養 する培 地 の組 成 ,培 養 条 件 などの多 数 の要 因 によ り影 響 を受 ける.アブラナ属 (Brassica) 植 物 では,培 養 開 始 時 に 30~35℃で 1~3 日 間 ヒートショック処 理 後 ,25℃に移 して培 養 すると,不 定 胚 形 成 が著 しく 促 進 されることが報 告 されている (Keller and Armstrong 1979, 1883, Constantine et al. 1996, Takahata 1997).ハクサイ(Brassica rapa subsp. pekinensis L.)における葯 ・小 胞 子 培 養 中 のヒートショック処 理 は,一 般 的 な標 準 法 になっている (Sato et al. 1989a, Kuginuki et al. 1997, Zhang a n d Ta k a h a t a 1 9 9 9 ) . 一 方 , 培 養 前 の 植 物 体 , 花 序 や 蕾 に 対 す る 各 種 の 前 処 理 もまた,不 定 胚 形 成 に影 響 を与 えることが知 られている.アブラナ属 (Brassica) 植 物 では,培 養 前 の蕾 への減 圧 処 理 (Klimaszewka and Keller 1983),低 線 量 のガンマ線 処 理 (MacDonald et al. 1988),コルヒチン 処 理 (Zeki and Dickinson 1991)およびエタノール処 理 (Pechan and Keller 1989) 等 が,不 定 胚 形 成 に効 果 があると報 告 されている.採 取 した穂 へ の低 温 前 処 理 は,オオムギやコムギの葯 ・小 胞 子 培 養 では一 般 的 に用 いられてい る (Constantine et al. 1996) が,アブラナ属 (Brassica) 植 物 では,その 効 果 は明 確 ではなく,ナタネやハクサイでは一 般 的 には用 いられていない(Keller 1984).そこで本 節 では,ハクサイの小 胞 子 培 養 における,不 定 胚 形 成 率 に対 す る材 料 蕾 あるいは花 序 の低 温 前 処 理 の効 果 について調 査 した. - 14 - 第 1項 共 通 の方 法 材 料 植 物 の栽 培 播 種 約 2 週 間 後 の実 生 を 4℃の低 温 室 に移 し,連 続 照 明 下 (白 色 蛍 光 灯 ,約 20 μmol m- 2 s- 1 )で,約 30 日 間 の春 化 処 理 を行 った.その後 ,1/2000 ワグ ネルポットに移 植 し,昼 温 23℃,夜 温 17℃の温 室 内 で栽 培 した.抽 台 開 花 後 の 植 物 体 から花 序 を順 次 採 取 して供 試 した. 小胞子培養 採 取 した花 序 から,幅 1.5~2.0 mm の蕾 を集 め,蕾 内 の葯 長 と花 弁 長 の比 が, 0.5~0.7 の蕾 (Figure 2-1.)を選 定 した.これらの蕾 の中 に含 まれる小 胞 子 の発 達 ステージは主 に一 細 胞 期 後 期 であるが,材 料 植 物 の生 育 状 態 によって大 きさ の異 なる栄 養 細 胞 と生 殖 細 胞 の 2 つからなる二 細 胞 期 前 期 の小 胞 子 が含 まれる こともある(Figure 2-2.).予 備 的 な試 験 から,一 細 胞 期 後 期 のステージの小 胞 子 が高 い不 定 胚 形 成 能 を持 つことを確 認 した. 小 胞 子 培 養 は Sato ら(1989c)の方 法 に若 干 の変 更 を加 えて行 った.培 養 に用 いたすべての培 地 は,0.22μm メッシュの滅 菌 フィルターでろ過 した.選 定 した蕾 は 0.1%塩 化 ベンザニルコウニウム(オスバン)液 に 30 秒 間 浸 漬 後 ,1%サラシ粉 溶 液 に 15 分 間 浸 漬 して表 面 殺 菌 し,その後 ,滅 菌 水 で 3 回 洗 浄 した.殺 菌 した 蕾 を,13%ショ糖 を含 み,L-グルタミン,L-セリンと植 物 成 長 調 節 物 質 を含 まない 修 正 B5 培 地 (Keller and Armstrong 1979)に置 床 した.以 下 mB5-13 培 地 ( Ta b l e 2 - 1 ) と 称 し , 滅 菌 シ ャ ー レ ( 径 6 c m , 高 さ 1 . 5 c m ) に 5 m l ず つ 分 注 し た.注 射 筒 の内 筒 を用 い,蕾 をゆっくりと押 しつぶして小 胞 子 を遊 離 させた後 ,40 μm のナイロンメッシュでろ過 して残 渣 を除 いた.小 胞 子 懸 濁 液 は,120 g,3 分 間 の遠 心 分 離 後 ,沈 殿 した小 胞 子 を mB5-13 培 地 に再 懸 濁 して洗 浄 する操 作 を 3 回 繰 り 返 し た . 小 胞 子 は , N L N - 1 3 培 地 ( L i c h t e r 1 9 8 2 ; Ta b l e 2 - 1 の - 15 - Figure 2-1. Flower buds of Brassica rapa subsp. pekinensis L. of which petal and anther length ratio (P/A) is about 0.5. Whole bud (top right), removed calyx (top left) and six anthers from the same bud (bottom). - 16 - Figure 2-2. Microspores of Brassica rapa subsp. pekinensis at a late unicellular stage (1CL, left) and a bicellular stage (2CU, right). - 17 - Table 2-1. Composition of culture media for microspore culture (mg/l). Component KNO3 mB5-13 2500 NaH2PO4・H2O 150 (NH4)2SO4 134 MgSO4・7H2O 250 CaCl2・2H2O 750 Ca(NO3)・4H2O NLN-13 125 125 500 MnSO4・H2O 10 25 ZnSO4・7H2O 2 10 CuSO4・5H2O 0.025 0.025 CoCl2・6H2O 0.025 0.025 KI H3BO3 0.75 3 0.75 10 Na2MoO4・2H2O 0.25 0.25 FeSO4・7H2O 27.8 27.85 Na2-EDTA 37.3 37.25 Inositol 100 100 Nicotinic acid 1 5 Prydoxin-HCl 1 0.5 Thiamine-HCl 10 0.5 Folic acid 0.5 Glycine 2 Biotin 0.05 Glutamine 800 Serine Glutathione 100 30 Sucrose 130,000 6-benzyladenine (BA) 130,000 0.3 The medium was adjusted to pH 6.0 and sterilized by filteration. - 18 - NLN培 地 を基 本 としたもの) に,5×10 4 / mlの密 度 になるように調 整 し,滅 菌 シ ャーレ(径 6 cm,高 さ 1.5 cm)に 2 mlずつ分 注 した.これを暗 黒 下 33℃のインキ ュベーター内 で 24 時 間 静 置 した(高 温 処 理 )後 ,25℃暗 黒 下 で培 養 した.培 養 を開 始 してから約 4 週 間 後 に不 定 胚 の発 生 数 を調 査 した.各 処 理 区 25 蕾 以 上 から小 胞 子 を単 離 し,5 シャーレに分 けて培 養 し,それらの結 果 を平 均 値 で示 し た. 低温前処理 花 序 の前 処 理 : 材 料 植 物 から採 取 した花 序 を長 さ 10 cm 程 度 に切 り揃 え, 蒸 留 水 を約 3 cm の深 さに入 れたビーカーに花 茎 を挿 し,0,3 もしくは 10 日 間 , 4℃暗 黒 下 に静 置 した.その後 ,花 序 から幅 1.5~2.0 mm,花 弁 長 /葯 長 が 0.5 ~0.7 の蕾 を集 めて小 胞 子 培 養 に供 試 した. 蕾 の前 処 理 : 材 料 植 物 から,幅 1.5~2.0mm,花 弁 長 /葯 長 が 0.5~0.7 の蕾 を集 め,前 述 の通 り表 面 殺 菌 後 5 ml のmB5-13 培 地 を含 む滅 菌 シャーレに入 れ,0,3,7,10,15 もしくは 20 日 間 ,4℃暗 黒 下 に静 置 した.その後 ,小 胞 子 培 養 に供 試 した. 第 2項 花 序 あるいは蕾 の低 温 前 処 理 の効 果 材 料 および方 法 品 種 ‘つばめ’((株 )トーホク)を実 験 材 料 に供 試 し,花 序 あるいは蕾 を 0, 3 およ び 10 日 間 低 温 前 処 理 後 に小 胞 子 培 養 を行 い,不 定 胚 形 成 を調 査 した.また, 品 種 間 に よ る 差 異 を 調 査 す る た め , 品 種 ‘ W 111 6 ’ ( ( 株 ) 渡 辺 採 種 場 ) , ‘ 春 さ か り’ ((株 )渡 辺 採 種 場 ),‘CR-歓 呼 ’((株 )日 本 農 林 社 )および‘春 楽 ’((株 )日 本 農 林 社 )を実 験 材 料 とし,花 序 あるいは蕾 を低 温 前 処 理 した後 に小 胞 子 培 養 を行 い,不 定 胚 形 成 を調 査 した. - 19 - 結果 品 種 ‘つばめ’の花 序 と蕾 の 0 日 ,3 日 および 10 日 間 の低 温 前 処 理 の結 果 を 示 し た ( Ta b l e 2 - 2 ) . 花 序 , 蕾 と も に 低 温 前 処 理 期 間 が 長 い ほ ど , 小 胞 子 か ら の 不 定 胚 形 成 率 が向 上 した.花 序 の 10 日 間 処 理 と蕾 の 3 日 間 および 10 日 間 処 理 において,無 処 理 区 と有 意 な差 が認 められた.花 序 の処 理 よりも蕾 の処 理 の方 が低 温 前 処 理 による不 定 胚 形 成 率 の向 上 効 果 は大 きかった.低 温 前 処 理 は, 他 の 品 種 , ‘ W 111 6 ’ , ‘ は る さ か り ’ , ‘ C R 歓 呼 ’ お よ び ‘ 春 楽 ’ で も 不 定 胚 形 成 に 効 果 があることを確 認 した(データ省 略 ). 第 3項 蕾 の 0, 3, 7, 10, 15 および 20 日 間 の低 温 前 処 理 の効 果 材 料 および方 法 品 種 ‘つばめ’を供 試 し,花 序 あるいは蕾 を 0, 3, 7, 10, 15 もしくは 20 日 間 低 温 前 処 理 した後 に小 胞 子 培 養 を行 い,不 定 胚 形 成 を調 査 した. 結果 蕾 の低 温 前 処 理 の期 間 の長 さの影 響 について調 査 した結 果 ,7 日 間 以 上 の低 温 前 処 理 に よ っ て , 不 定 胚 形 成 率 が 向 上 し た ( Ta b l e 2 - 3 ) . 低 温 前 処 理 を し な い 場 合 に は , 不 定 胚 形 成 率 は 実 験 ご と に 大 き く 変 動 し た が ( Ta b l e 2 - 2 , 3 ) , い ず れの場 合 でも,低 温 前 処 理 により不 定 胚 形 成 率 の向 上 効 果 が認 められた. 以 上 の結 果 から,ハクサイの小 胞 子 培 養 における,蕾 あるいは花 序 の低 温 前 処 理 は,いずれも不 定 胚 形 成 率 を向 上 させたが,その効 果 は蕾 処 理 の方 が大 きく, 複 数 の品 種 でも同 様 の効 果 が認 められた.蕾 処 理 では,7~20 日 間 の前 処 理 効 果 が最 も大 きかった. - 20 - Table 2-2. Effect of low temperature (4℃) pretreatment of buds or inflorescence on embryo formation in microspore culture of B. rapa subsp. pekinensis L. (Chinese cabbage) cv.' Tsubame' Duration of 4℃ pretreatment (days) Treated organ No. of embryos / petri dish No treatment 0 2.0 a Inflorescence 3 10 3.2 a 6.2 b Bud 3 10 8.2 b 31.5 c 1) In each treatment, microspores were cultured in five petri dishes 5 at a density of 5 × 10 / ml. 1) Values followed by the same letters are not significantly different at 5% level by multiple range test. - 21 - Table 2-3. Effect of duration of low temperature (4℃) pretreatment for flower buds on embryo formation in microspore culture of B. rapa subsp. pekinensis L. (Chinese cabbage) cv. 'Tsubame' Duration of 4℃ pretreatment (days) No. of embryo / petri dish 0 3 7 10 15 20 14.8 14.5 30.3 20.4 37.5 32.5 1) 1) a a b ab c c Values followed by the same letters are not significantly different at 5% level by multiple range test. - 22 - 第 4項 考察 ハクサイの小 胞 子 培 養 において,蕾 または花 序 の低 温 前 処 理 は小 胞 子 からの 不 定 胚 形 成 の効 率 を向 上 させた.アブラナ属 (Brasica ) 植 物 の葯 ・小 胞 子 培 養 における,蕾 または花 序 の低 温 前 処 理 の効 果 は,これまでの報 告 では,相 反 する結 果 が示 されている. B. napus (ナタネ,Lichter (1982),B. juncea (カ ラシナ,George and Rao 1982) および B. oleracea (キャベツ, Oslink et al. 1993) では,低 温 前 処 理 が小 胞 子 からの胚 形 成 を促 進 すると報 告 された. しかし,B. rapa (Keller et al. 1982)と B. napus (Dunwell et al. 1985) では,蕾 の低 温 前 処 理 が小 胞 子 からの不 定 胚 形 成 に阻 害 的 であることも報 告 さ れている.このような矛 盾 する結 果 は,低 温 処 理 の方 法 に起 因 すると推 察 される. 阻 害 的 であった報 告 では,前 処 理 中 の蕾 は密 封 瓶 の中 (Dunwell et al. 1985),あるいはビニール袋 に入 れられていた (Keller et al. 1982).一 方 ,促 進 効 果 を示 した報 告 では前 処 理 中 の蕾 は湿 らせた綿 の上 (Oslink et al. 1993),あるいは液 体 培 地 中 (Lichter 1982)に置 かれていた.本 節 の実 験 では, 蕾 は液 体 培 地 に浮 遊 した状 態 で処 理 したので,蕾 に水 分 が補 給 されて,小 胞 子 の活 性 が保 持 されたと考 えられる. 小 胞 子 培 養 における不 定 胚 形 成 率 は,蕾 の低 温 前 処 理 を 20 日 間 まで延 長 し ても高 く保 持 された.これは,蕾 を 3 週 間 程 度 ,保 存 できることを示 唆 している.材 料 の保 存 は,小 胞 子 培 養 を利 用 した半 数 体 育 種 では極 めて有 用 である.育 種 の 実 際 場 面 おいて,培 養 に供 試 する材 料 植 物 は,同 時 期 に一 斉 に抽 苔 開 花 して くる場 合 が多 い.その一 方 で,小 胞 子 培 養 を行 う作 業 量 と培 養 施 設 には制 限 が あるので,同 時 にできる材 料 蕾 の処 理 数 は限 定 される.このような場 合 ,材 料 の保 存 が可 能 であれば,作 業 の平 準 化 が可 能 になり,培 養 作 業 の効 率 が向 上 するこ とになる.このような観 点 からも,低 温 前 処 理 は有 効 な技 術 と判 断 される.実 際 , 後 述 する品 種 育 成 のための倍 加 半 数 体 の作 出 過 程 において,この処 理 が日 常 - 23 - 的 に利 用 された. 第 2節 蕾 低 温 処 理 が小 胞 子 の発 達 におよぼす影 響 前 節 では,ハクサイ小 胞 子 培 養 の供 試 蕾 を,4℃の低 温 で 3 週 間 程 度 の保 存 することが可 能 なうえ,不 定 胚 形 成 率 が向 上 することを明 らかにした.各 種 のショッ ク処 理 が小 胞 子 の発 達 に及 ぼす影 響 のひとつとして,高 温 処 理 は注 目 されてい て,ハクサイの葯 培 養 (Hamaoka et al. 1991a) とナタネの小 胞 子 培 養 (Fan et al. 1988, Simmonds et al. 1999) で報 告 されている.しかし,ハクサイでは, 低 温 処 理 下 で小 胞 子 がどのように発 達 するかを報 告 した例 はない.そこで本 節 で は,低 温 前 処 理 が不 定 胚 形 成 の向 上 効 果 をもたらすメカニズムを解 明 するために, 低 温 処 理 中 の小 胞 子 の発 達 を組 織 学 的 に観 察 した. 第 1項 共 通 の方 法 材料 品 種 ‘つばめ’を供 試 した. 小 胞 子 の細 胞 学 的 観 察 低 温 処 理 の小 胞 子 の発 達 に及 ぼす影 響 を調 査 するため,Fan ら (1988) と Hamaoka ら (1991a) の方 法 に従 い,小 胞 子 の発 達 ステージを観 察 した.低 温 処 理 を,0, 7, 9, 14, 22 または 29 日 行 った蕾 から葯 を取 り出 し,固 定 液 (エタ ノール:酢 酸 =3:1,v/v)に浸 漬 して固 定 後 , 56 mM クエン酸 と 88 mM リン酸 からなる緩 衝 液 (pH4.4)に浸 漬 して平 衡 化 した. この葯 をスライドガラスの上 に 置 き,4,6-diamino-2-phenylindol (DAPI)溶 液 (同 緩 衝 液 中 ,0.25 mg/l)を 10μl 滴 下 し,ピンセットを用 いて葯 を押 しつぶして小 胞 子 を遊 離 させた後 ,葯 残 渣 を除 き,カバーグラスをかけて落 射 蛍 光 顕 微 鏡 (オリンパス BH-2,UV)で観 察 した.それぞれの葯 について 100 以 上 の小 胞 子 を観 察 した. - 24 - 第 2項 同 一 蕾 中 の 6 葯 の中 の小 胞 子 の発 達 ステージ 方法 小 胞 子 培 養 に用 いる材 料 10 蕾 について,蕾 内 の葯 長 と花 弁 長 の比 が 0.5~ 0.7 の 1 つの蕾 内 の 6 葯 に含 まれる小 胞 子 の発 達 ステージを調 査 した. 結果 1 つの蕾 内 の 6 葯 中 に含 まれる小 胞 子 の発 達 ステージはすべて一 細 胞 期 後 期 で非 常 に良 く同 調 していた(データ省 略 ). 第 3項 低 温 処 理 中 の小 胞 子 の発 達 方法 蕾 を 0,7,9,14,22 および 29 日 間 処 理 した後 の,蕾 中 の小 胞 子 の各 発 達 ステ ージを観 察 した. 結果 蕾 を 0 から 29 日 間 低 温 処 理 した後 の,小 胞 子 の各 発 達 ステージを観 察 した ( Ta b l e 2 - 4 ) . 低 温 処 理 前 の 小 胞 子 の 発 達 ス テ ー ジ は , す べ て 一 細 胞 期 後 期 (1CL)の発 達 ステージであったが,7~29 日 間 の低 温 処 理 期 間 中 に 1CL の小 胞 子 の割 合 は減 少 し,小 胞 子 第 一 分 裂 によって生 じた,大 きさの異 なる生 殖 核 と栄 養 核 をもつ,二 細 胞 期 の小 胞 子 (2CU)の割 合 が増 加 した.また,低 温 処 理 区 に おいて,わずかではあるが均 等 な大 きさの,2 つの核 をもつ二 細 胞 期 の小 胞 子 (2CE,Figure 2-3)が観 察 された.低 温 処 理 29 日 間 では,生 殖 細 胞 がさらに分 裂 して,2 つの生 殖 細 胞 と 1 つの栄 養 細 胞 からなる三 細 胞 期 の小 胞 子 (3C;成 熟 花 粉 ,Figure 2-3)も観 察 された.低 温 処 理 前 後 の花 弁 の長 さと葯 の長 さの比 (P/A)は,処 理 前 が 0.5~0.7 であったの対 し,処 理 29 日 後 には 0.9~1.0 に増 大 した. - 25 - Table 2-4. Percentage of developmental stage of microspores before and after low temperature pretreatment of buds in B. rapa subsp. pekinensis L. (Chinese cabbage) cv. 'Tsubame' Duration of 4℃ treatment (days) 0 7 9 14 22 29 Developmental stage of microspores (%) 2) 3) 2CE 1CL 2CU 1) 100.0 86.9 54.4 59.1 63.8 29.6 ± 0 ± 9.1 ± 22 ± 23.9 ± 9.0 ± 4.1 10.6 44.5 40.4 30.5 56.3 ± 7.0 ± 22.0 ± 23.6 ± 8.2 ± 3.8 1) unicellular late stage microspore. 2) bicellular stage microspore with two unequal size nuclei. 3) bicellular stage microspore with two equal size nuclei. 4) 2.5 1.0 0.5 5.7 9.2 ± ± ± ± ± 2.1 0.5 0.4 1.2 0.6 3C 0 0 0 0 4.9 ± 3.0 tricellular stage microspore with two generative cells and one vegetative cell. Each value represents mean ± SE of 10 anthers. - 26 - 4) Figure 2-3. bicellular Microspores of Brassica rapa subsp. pekinensis at a stage with two equal size tricellular stage (3C, right). - 27 - nuclei (2CE, left) and a 第 4項 考察 4℃の低 温 下 において,蕾 の中 の小 胞 子 は,不 均 等 な大 きさの核 を持 つ二 細 胞 期 (2CU)と均 等 な大 きさの核 を持 つ二 細 胞 期 (2CE)の,2 種 類 の異 なる発 達 過 程 が観 察 された.アブラナ属 (Brassica)植 物 では,一 細 胞 期 後 期 の小 胞 子 は小 胞 子 不 均 等 サイズ二 分 裂 をして,栄 養 細 胞 とこれより小 さな生 殖 細 胞 からなる二 細 胞 期 の小 胞 子 となる.生 殖 核 は更 に分 裂 して 2 つになり,三 細 胞 期 の成 熟 花 粉 になる.一 方 ,小 胞 子 からの不 定 胚 形 成 では,一 細 胞 期 後 期 の小 胞 子 は均 等 サイズ二 分 裂 をし,同 じ大 きさの 2 つの核 からなる二 細 胞 期 の小 胞 子 となり,そ の後 も分 裂 を続 けて不 定 胚 形 成 へと向 かうことが知 られている(Fan et al. 1988, Hamaoka et al. 1991a).低 温 処 理 期 間 の進 行 とともに,一 細 胞 期 の小 胞 子 は減 少 し,その減 少 分 の大 部 分 は,大 きさの異 なる 2 つの核 からなる二 細 胞 期 の 小 胞 子 に発 達 した.しかし,僅 かではあるが,同 じ大 きさの 2 つの核 からなる二 細 胞 期 の 小 胞 子 へ 発 達 す る も の も 観 察 さ れ た ( Ta b l e 2 - 3 ) . つ ま り , 低 温 処 理 中 に , 小 胞 子 はゆっくりと成 熟 花 粉 へと三 つの不 均 等 サイズの細 胞 を発 達 させると同 時 に,ごく一 部 の小 胞 子 からは脱 分 化 した均 等 サイズの二 細 胞 が形 成 され不 定 胚 形 成 に向 かうと推 察 される.これが,低 温 前 処 理 が不 定 胚 形 成 を促 進 する一 因 と 考 えられる. 低 温 処 理 により通 常 の小 胞 子 発 達 から逸 脱 し,栄 養 細 胞 と生 殖 細 胞 の区 別 が なくなり均 等 サイズ二 分 裂 を行 うメカニズムは現 段 階 では不 明 であるが,以 下 のよ うな仮 説 が考 えられている.Zhao et al. (1996a) は,ナタネの小 胞 子 培 養 にお いて,25μM のコルヒチン処 理 が不 定 胚 形 成 に有 効 であることから,コルヒチン処 理 により,小 胞 子 内 の微 小 管 が脱 重 合 した結 果 ,細 胞 骨 格 が崩 壊 して,初 期 分 裂 が不 均 等 サイズ二 分 裂 から均 等 サイズ二 分 裂 へと変 化 すると推 定 している.ま た , タ バ コ の B Y- 2 培 養 細 胞 で は , 低 温 処 理 に よ っ て 微 小 管 が 崩 壊 す る こ と が 報 告 されており(Hasezawa et al. 1997),ハクサイの小 胞 子 培 養 でも,低 温 前 処 - 28 - 理 が 1 細 胞 期 後 期 の小 胞 子 の微 小 管 を崩 壊 させて不 均 等 サイズ二 分 裂 から均 等 サイズ二 分 裂 に変 化 した可 能 性 が考 えられる. 前 節 において,花 序 は蕾 に比 べて低 温 前 処 理 による不 定 胚 形 成 の向 上 効 果 は低 かった.この原 因 のひとつとして,小 胞 子 培 養 に用 いた蕾 の選 定 時 期 の違 い が考 えられる.蕾 処 理 では,選 定 した蕾 を低 温 処 理 後 そのまま培 養 するのに対 し, 花 序 処 理 では,処 理 後 の花 序 から選 定 した蕾 を培 養 した.選 定 の際 の P/A の割 合 は,その蕾 中 の小 胞 子 の発 達 ステージの指 標 の 1 つとして用 いており,P/A が 0.5~0.7 の無 処 理 の蕾 は,その大 部 分 は不 定 胚 形 成 能 が高 い一 細 胞 期 後 期 の小 胞 子 であることを確 認 している.一 方 ,蕾 の低 温 処 理 29 日 には,P/A の割 合 が 0.5~0.7 から 0.9~1.0 へ増 大 していた.これは,低 温 処 理 中 に,小 胞 子 が成 熟 花 粉 に向 かって徐 々に発 達 したことを示 す.実 際 に,蕾 の処 理 を更 に続 けると, シャーレの中 で開 花 することを確 認 した.花 序 の低 温 処 理 後 に,P/A が 0.5~0.7 を指 標 にして蕾 を選 定 したので,高 い胚 発 生 能 力 をもつ小 胞 子 を含 む蕾 を選 定 できなかった可 能 性 がある.また,蕾 処 理 では,蕾 が培 養 液 中 にあり,養 分 供 給 が可 能 であるのに対 し,花 序 処 理 では,水 差 しの状 態 にあり,養 分 は供 給 されな いという養 分 条 件 の違 いがあった. これらの理 由 から,低 温 処 理 は花 序 よりも蕾 で,不 定 胚 の形 成 効 果 が高 かったと考 えられる. 第 3節 1 個 体 の材 料 植 物 から得 られる倍 加 半 数 体 数 の推 定 半 数 体 育 種 では,育 種 目 標 に合 致 する遺 伝 子 型 の個 体 を選 抜 ・獲 得 できる か否 かが育 種 の成 否 を決 定 する.例 えば,ヘテロ性 の高 いF 1 品 種 を材 料 とすると, n個 の遺 伝 子 座 について,それぞれ,対 立 遺 伝 子 を共 通 セットで有 する半 数 体 が 出 現 する確 率 は,材 料 植 物 がn個 の遺 伝 子 座 のすべてがヘテロの場 合 ,(1/2) n となる.したがって,目 的 とする遺 伝 子 型 を有 する半 数 体 を確 実 に 1 個 体 以 上 獲 得 するためには莫 大 な数 の半 数 体 を作 出 しなければならない.これが半 数 体 育 種 - 29 - 上 の一 つの問 題 点 である.一 方 ,F 2 分 離 世 代 で一 度 個 体 選 抜 したものを材 料 と すると,ホモ化 に必 要 な個 体 数 はF 1 植 物 の場 合 と比 べて大 幅 に減 少 する.しかし, この場 合 でも複 数 の遺 伝 子 座 について導 入 したい対 立 遺 伝 子 を共 通 セットで有 する個 体 を確 実 に得 るためには,F 2 世 代 で選 抜 した特 定 1 個 体 から出 来 るだけ 多 数 の倍 加 半 数 体 を効 率 的 に作 出 することが必 要 となる.本 節 では,圃 場 で選 抜 した 1 個 体 の材 料 から倍 加 半 数 体 を作 出 する場 合 を想 定 し,温 室 で栽 培 した 1 個 体 から開 花 期 間 中 に得 られる材 料 蕾 の数 や倍 加 半 数 体 数 の検 討 を行 っ た. 第 1項 材 料 植 物 1 個 体 からの小 胞 子 培 養 材 料 および方 法 植物材料 ハ ク サ イ F 1 品 種 ‘ W 111 6 ’ を 植 物 材 料 と し て 用 い , 第 1 節 と 同 様 に 栽 培 し た . 抽 苔 開 花 した植 物 体 から任 意 に 1 個 体 を選 定 し,開 花 期 間 中 にこの個 体 から得 られるすべての花 序 を採 集 し,一 細 胞 期 後 期 の小 胞 子 を含 む蕾 を選 定 して小 胞 子 培 養 に供 試 した. なお,ここでは,低 温 前 処 理 を実 施 しなかった. 小胞子培養 小 胞 子 培 養 は第 1節 の方 法 に若 干 の変 更 を加 えて行 った.花 序 を採 取 して, 共 通 の方 法 と同 様 に蕾 を選 定 し,小 胞 子 を単 離 して収 量 を調 査 後 ,培 養 密 度 は 1×10 5 / mlになるように調 整 し,滅 菌 シャーレ(径 6cm,高 さ 1.5cm)に 1.6ml ずつ分 注 して培 養 した.培 地 の 6-benzyladenine(BA) 濃 度 を 0.1, 0.5, また は 1.0mg/l とし,濃 度 ごとに 3 シャーレ,合 計 9 シャーレの培 養 を行 った.4 週 間 後 に形 成 した不 定 胚 数 (魚 雷 型 胚 および子 葉 型 胚 )の調 査 を行 った. - 30 - 結果 培 養 開 始 からの日 数 ,採 取 花 序 数 ,培 養 蕾 数 ,単 離 小 胞 子 の収 量 ,1 蕾 当 た り の 小 胞 子 数 , 形 成 し た 不 定 胚 数 を 調 査 し た ( Ta b l e 2 - 5 ) . 1 個 体 か ら 抽 苔 開 花 以 降 ,1 月 14 日 から 6 月 7 日 までの 143 日 間 に 27 回 にわたって花 序 を採 取 することができ,1,135 蕾 から 621×10 5 個 の小 胞 子 を培 養 に供 試 した.これ以 降 は植 物 体 が消 耗 し,培 養 に供 試 可 能 な蕾 は採 取 できなかった.合 計 243 シャー レの小 胞 子 培 養 により 559 の不 定 胚 を得 た. 単 離 したすべての小 胞 子 を培 養 し た場 合 に得 られる推 定 獲 得 不 定 胚 数 は 970 で,培 養 蕾 当 たりの平 均 不 定 胚 形 成 数 は 0.85 個 であった.ただし,1 蕾 当 たりに含 まれる小 胞 子 の数 は,材 料 採 集 の後 期 において減 少 する傾 向 にあった. 第 2項 考察 品 種 ‘ W 111 6 ’ の 1 個 体 の 実 生 か ら , 可 能 な 限 り 蕾 を 採 取 し た と こ ろ , 材 料 蕾 は 4 ヶ月 以 上 に渡 り採 取 可 能 で,それらを小 胞 子 培 養 することにより約 1000 程 度 の 不 定 胚 が得 られることがわかった.始 めの 6 回 の約 1 ヶ月 間 の培 養 で約 280 の不 定 胚 , 続 く 9 回 の 約 1 ヶ 月 間 の 培 養 で 6 0 0 の 不 定 胚 , そ の 後 の 11 回 約 3 ヶ 月 の培 養 で約 90 の不 定 胚 が得 られたことは,2 ヶ月 までは,不 定 胚 発 生 効 率 が比 較 的 高 く,2 ヶ月 を越 えると発 生 率 が低 下 することを示 唆 している.また,この試 験 においては BA 濃 度 の異 なる 3 種 類 の培 地 を用 いて小 胞 子 培 養 を行 ったが,最 適 な濃 度 は培 養 日 により異 なり,一 定 の傾 向 は認 められなかったことから,培 地 よ りも植 物 材 料 の影 響 が大 きいものと考 えられた.実 際 に育 種 に利 用 する際 には, 培 地 の BA 濃 度 を 3 段 階 程 度 にすれば,材 料 植 物 の影 響 を回 避 できる可 能 性 が 示 唆 された. 不 定 胚 から倍 加 半 数 体 を得 るまでには,不 定 胚 からの幼 植 物 (シュート)再 分 化 , 発 根 ,順 化 ,半 数 体 の倍 加 処 理 ,自 殖 種 子 の採 種 といった段 階 がある(詳 細 な - 31 - - 32 143 - - 27 Total Average 4 23 781 28.9 27 28 1135 42.0 22 9.1 620.6 23.0 10.0 35 - 54.9 45 No. of Yield of No. of No. of Microspores Microspores Inflorescence Buds 5 3 (×10 ) per Bud (×10 ) 5 20 14.4 72 5 20 16.0 80 10 39 27.6 70 16 48 33.6 70 20 50 32.5 65 20 50 39.2 78 20 47 31.7 67 22 59 43.0 73 20 57 32.0 56 25 50 29.7 59 30 52 21.6 41 30 44 21.6 49 40 50 25.2 50 33 45 24.0 53 30 37 18.4 55 20 31 22.4 72 40 55 27.2 49 40 40 20.0 50 50 40 16.0 40 60 45 18.0 40 35 33 14.4 44 35 48 20.8 43 45 49 19.2 39 50 35 14.5 41 30 41 18.5 45 * Microspore density of 5×10 /ml on microspore culture. 132 days from started culture 0 6 11 17 20 25 27 33 35 40 45 49 52 55 59 62 67 73 79 82 86 94 102 115 128 26 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 No. of Culture 1 195 7.2 16 1 185 6.9 11 0 179 6.6 13 2 559 20.7 40 Yield of Embryo BA (mg/l) Total 0.1 0.5 1.0 13 17 14 44 14 8 3 25 13 12 7 32 0 0 0 0 3 3 7 13 6 7 4 17 8 11 13 32 14 18 7 39 40 33 37 110 18 12 12 42 5 3 3 11 3 3 5 11 0 4 4 8 10 8 20 38 6 4 6 16 3 6 5 14 0 0 0 0 2 2 7 11 3 5 1 9 5 6 2 13 3 0 2 5 0 0 1 1 2 3 1 6 7 8 5 20 0 0 0 0 0.2 - 2.3 4.4 4.9 2.8 3.6 0.0 1.4 1.9 3.6 4.3 12.2 4.7 1.2 1.2 0.9 4.2 1.8 1.6 0.0 1.2 1.0 1.4 0.6 0.1 0.7 2.2 0.0 No. of embryo per petri dish Table 2-5. Production of embryos by microspore culture from one mother plant in B. rapa subsp. pekinensis L. (Chinese cabbage) 0.6 970 35.9 13.9 Estimate Yeild of Embryos 44.0 27.8 61.3 0.0 29.3 46.3 70.4 116.5 244.4 86.6 16.5 16.5 14.0 63.3 20.4 21.8 0.0 15.3 10.0 16.3 5.0 1.4 8.0 20.1 0.0 * * 方 法 については本 章 第 4節 に記 載 ).実 際 には不 定 胚 から倍 加 半 数 体 の種 子 を 得 る ま で の 生 存 効 率 は 5 0 % 以 下 に な る の で , 品 種 ‘ W 111 6 ’ の 小 胞 子 培 養 か ら 約 4 0 0 の 倍 加 半 数 体 の 作 出 が 予 測 で き る . 第 3 節 の 結 果 は 品 種 ‘ W 111 6 ’ の 1 個 体 に基 づく事 例 ではあるが,半 数 体 育 種 の実 行 計 画 の策 定 の際 には,材 料 植 物 の数 ,培 養 の作 業 量 およびコストといった考 慮 すべき事 項 を示 唆 している. 第 4節 葯 および小 胞 子 培 養 由 来 の不 定 胚 からの再 分 化 植 物 の作 出 と 倍 数 性 の検 討 葯 ・小 胞 子 培 養 により得 られた半 数 性 植 物 から同 型 接 合 体 すなわち倍 加 半 数 体 を獲 得 するためには,再 分 化 した半 数 性 植 物 にコルヒチン処 理 を行 うことにより 染 色 体 を倍 加 する必 要 がある. この処 理 は煩 雑 であり,処 理 後 新 たに倍 加 した シュートが生 育 するまでには 2 ヶ月 以 上 を必 要 とし,倍 加 成 功 率 は 50%程 度 であ る. 一 方 ,葯 ・小 胞 子 培 養 により得 られる再 分 化 植 物 体 には,半 数 体 の他 に自 然 倍 加 した二 倍 体 ,まれに四 倍 体 ,八 倍 体 といった高 次 倍 数 体 も出 現 することが 知 ら れ て い る ( K e l l e r 1 9 7 5 , Ta k a h a t a 1 9 9 7 ) . ア ブ ラ ナ 属 (Brassica) 植 物 においては,再 分 化 植 物 における半 数 体 ,二 倍 体 および高 次 倍 数 体 の割 合 は 品 種 ・ 系 統 に よ っ て 異 な る こ と が 報 告 さ れ て い る ( Ta k a h a t a 1 9 9 7 , F a r n h a n 1998). B. napus (ナタネ) では,葯 培 養 と小 胞 子 培 養 間 で種 々倍 数 体 の発 生 割 合 が異 なり,自 然 倍 加 (二 倍 体 )頻 度 は葯 培 養 の方 が高 いことが報 告 されている (Lichter et al. 1988).四 倍 体 を含 む高 次 倍 数 体 は,通 常 ,育 種 母 本 に利 用 することはできない.しかし,自 然 倍 加 二 倍 体 は,倍 加 処 理 を必 要 としないので, 直 ちに開 花 誘 導 を行 って,自 殖 種 子 を得 ることが可 能 である.葯 ・小 胞 子 培 養 を 利 用 した半 数 体 育 種 では,自 然 倍 加 二 倍 体 の出 現 割 合 が増 加 すると倍 加 処 理 の作 業 量 が減 少 するので,倍 加 半 数 体 獲 得 までの期 間 が短 縮 して育 種 の効 率 - 33 - が向 上 する.第 1項 では,二 倍 体 の割 合 を増 加 させるための手 法 開 発 に役 立 つ 基 礎 的 なデータを得 るために,ハクサイの葯 培 養 と小 胞 子 培 養 により得 られた再 分 化 植 物 における,半 数 体 ,二 倍 体 ,高 次 倍 数 体 の割 合 を調 査 した. また,自 然 倍 加 に関 して,意 図 的 な操 作 を可 能 にするためには,先 ず自 然 倍 加 が発 生 する時 期 を特 定 する必 要 がある.そのため,小 胞 子 培 養 により得 られた 不 定 胚 について,その倍 数 性 を調 査 した(第 2項 ). 第 1項 共 通 の方 法 葯培養 葯 培 養 は,Hamaoka ら (1991a) の方 法 に従 った.採 取 した花 序 から,幅 1.5~2.0mm の蕾 を集 め,1%サラシ粉 溶 液 の上 清 に 15 分 間 浸 漬 して表 面 殺 菌 した後 ,滅 菌 水 で 3 回 洗 浄 した.蕾 を実 体 顕 微 鏡 下 でピンセットを用 いて解 剖 し, 花 弁 長 と葯 長 の比 が 0.5~0.7 の蕾 を選 定 した.これらの蕾 から葯 を摘 出 し,修 正 B5 培 地 ( K e l l e r a n d A r m s t r o n g 1 9 7 9 , Ta b l e 2 - 6 ) に 置 床 し た . こ れ ら の 葯 は,35℃の暗 黒 条 件 下 で 24 時 間 静 置 する高 温 処 理 を行 った後 ,25℃の暗 黒 条 件 下 で培 養 した. 小胞子培養 小 胞 子 培 養 は第 1 節 と同 様 の方 法 で行 い,必 要 に応 じて蕾 の低 温 前 処 理 を 実 施 した. 不 定 胚 からの植 物 体 再 分 化 葯 培 養 により得 られた不 定 胚 (魚 雷 型 胚 および子 葉 型 胚 ) は,再 分 化 培 地 と して 2%ショ糖 ,0.5mg/l kinetin,0.02mg/l NAAおよび 0.8%寒 天 を含 むB5 培 地 ( Ta b l e 2 - 6 , G a m b o r g e t a l . 1 9 6 8 ) に 移 植 し , 2 5 ℃ , 1 2 時 間 照 明 (白 色 蛍 光 灯 ,約 30 μmol m- 2 s- 1 )-12 時 間 暗 黒 の光 周 期 下 で培 養 した. 一 方 ,小 胞 子 培 養 によって得 られた不 定 胚 は, 最 初 に再 分 化 培 地 の寒 天 を - 34 - Table 2-6. Composition of culture media on anthr culture (mg/l). Component B5 mB5 KNO3 2500 2500 NaH2PO4・H2O 150 150 (NH4)2SO4 134 134 MgSO4・7H2O 250 250 CaCl2・2H2O 150 750 MnSO4・H2O 10 10 ZnSO4・7H2O 2 2 CuSO4・5H2O 0.025 0.025 CoCl2・6H2O 0.025 0.025 KI H3BO3 0.75 3 0.75 3 Na2MoO4・2H2O 0.25 0.25 FeSO4・7H2O 27.8 27.8 Na2-EDTA 37.3 37.3 Inositol 100 100 Nicotinic acid 1 1 Prydoxin-HCl 1 1 Thiamine-HCl 10 10 Glutamine 800 Serine 100 1-Naphtalene acetic acid (NAA) 0.1 2,4-dichlorophenoxyacetic acid (2,4-D) 0.1 Sucrose Agar 20,000 100,000 8,000 8,000 The medium was adjusted to pH 5.8 and sterilized by autoclaving. - 35 - 1%ゲランガム (和 光 純 薬 工 業 (株 )) に置 き換 え,0.2%の活 性 炭 を加 えた培 地 (修 正 再 分 化 培 地 )で 2 週 間 培 養 した後 ,前 述 の再 分 化 培 地 で培 養 するという 2 段 階 法 により再 分 化 を促 した.なお,培 養 温 度 および光 条 件 は前 述 と同 様 であっ た. 発 根 を誘 導 するため,不 定 胚 から再 分 化 したシュート (幼 苗 ) を,2%ショ糖 と 0.8%寒 天 を含 む B5 培 地 に移 植 した.発 根 した幼 植 物 体 は,培 地 から取 り出 し てピートモス(主 原 料 ),バーミキュライトおよび元 肥 料 を含 む市 販 の培 養 土 であるメ トロミックス 350 (サングロー社 , カナダ) を入 れた直 径 約 6 cm のビニールポット に移 植 し,相 対 湿 度 90%以 上 に制 御 した温 室 内 に 2 週 間 置 いて順 化 した.その 後 は,赤 玉 中 粒 :堆 肥 :原 野 土 が 2:5:3 で,肥 料 分 としてバーレーS625 (8 g/l; N:P:K=16:12:15,清 和 肥 料 工 業 (株 ),大 阪 ),過 リン酸 石 灰 (2.2 g/l),苦 土 石 灰 (1.6 g/l)を加 えた培 養 土 を入 れた直 径 約 15 cm の鉢 に移 植 し,温 室 内 で栽 培 した. 葯 ・小 胞 子 培 養 により得 られた植 物 体 の倍 数 性 の調 査 再 分 化 植 物 の倍 数 性 は,Hamaoka ら (1991b) の方 法 に従 い,葉 の孔 辺 細 胞 の葉 緑 体 数 によって判 定 した.順 化 終 了 後 の再 分 化 植 物 体 から充 分 展 開 し た葉 を採 取 し,ピンセットを用 いて葉 の裏 側 の表 皮 を剥 がしとり,スライドグラス上 に 滴 下 した 1 滴 の蒸 留 水 上 にマウントして,カバーグラスを載 せて,蛍 光 顕 微 鏡 (オ リンパス BH2-PKF,BP490 と DM515 フィルターの組 合 せ) で赤 色 の自 家 蛍 光 を発 する葉 緑 体 の数 を観 察 した. 第 2項 培 養 法 が再 分 化 植 物 の倍 数 性 に与 える影 響 材 料 および方 法 品 種 , ‘ W 111 6 ’ お よ び ‘ 信 玄 ’ ( ( 株 ) 渡 辺 採 種 場 ) を 用 い , 抽 苔 開 花 後 の 花 序 を採 取 して実 験 に供 試 した. 葯 培 養 と小 胞 子 培 養 を行 い,各 々から得 られた不 - 36 - 定 胚 から再 分 化 植 物 を作 出 し,その倍 数 性 を比 較 調 査 した.それらの結 果 の有 意 差 は,2×3 分 割 表 を用 いて 5%水 準 で行 った. 結果 両 品 種 とも葯 培 養 と小 胞 子 培 養 により再 分 化 植 物 が得 られた.不 定 胚 からの 植 物 体 再 分 化 率 は約 70%,発 根 率 と順 化 率 はともに 90%以 上 で,培 養 法 の違 いによる差 はなかった(データ省 略 ).蕾 あたりの再 分 化 植 物 体 獲 得 率 は,‘信 玄 ’ よりも‘W1116’のほうが高 く,両 品 種 とも葯 培 養 より小 胞 子 培 養 の方 が高 かった ( Ta b l e 2 - 7 ) . 培 養 法 の 違 い が 自 然 倍 加 頻 度 に 及 ぼ す 影 響 を 比 較 し た ( Ta b l e 2 - 7 ) . 両 品 種 共 に,葯 培 養 でも小 胞 子 培 養 でも半 数 体 ,二 倍 体 および四 倍 体 の植 物 が得 ら れた.葯 培 養 の場 合 ,再 分 化 植 物 の約 60~80%が半 数 体 であり,二 倍 体 の割 合 は 20~30%であった.それとは対 照 的 に小 胞 子 培 養 の場 合 には,両 品 種 とも, 半 数 体 の割 合 は 30%以 下 と低 く,65%程 度 が二 倍 体 であった.四 倍 体 の割 合 は小 胞 子 培 養 の方 が葯 培 養 より高 かった. 供 試 した 2 品 種 から再 分 化 植 物 が得 られ,その獲 得 効 率 は葯 培 養 よりも小 胞 子 培 養 の方 が高 かった.また,両 培 養 方 法 においても,再 分 化 植 物 の獲 得 効 率 は 2 品 種 間 で著 しい違 いが認 められた.再 分 化 植 物 体 の自 然 倍 加 頻 度 について も,培 養 法 と品 種 による違 いが認 められた. 第 3項 品 種 ・系 統 が小 胞 子 培 養 由 来 の再 分 化 植 物 の倍 数 性 に与 える影 響 材 料 および方 法 ‘春 楽 ’((株 )日 本 農 林 社 ),‘北 洋 ’(柿 沼 育 種 センター),‘CR あっぱれ’(石 井 育 種 場 (株 )),‘桜 大 福 ’((株 )トーホク)および‘CR 王 手 ’(カネコ種 苗 (株 ))の 5 品 種 ,および日 本 たばこ産 業 (株 )の育 成 系 統 である‘63-6’,‘30-45’, - 37 - - 38 - Microspore culture Microspore culture Anther culture Anther culture Origin 9.6 6.4 54.3 29.8 48 35 114 100 % of plant regenerations No. of plants per cultured bud examined 1) 25.0 68.6 28.9 78.0 64.6 28.6 64.9 20.0 10.4 2.9 6.1 2.0 % of regenerated plants with each ploidy Diploids Haploids Tetraploids The differences in the frequency of the regenerants for each ploidy between the two culture methods in each cultivar were tested by 2×3 contingency table at 5% level. 1) Singen W1116 Cultivars Table 2-7. Frequency distributions of haploids, diploids and tetraploids in the regenerated plants obtained by anther or microspore culture of B. rapa subsp. pekinensis L. (Chinese cabbage) ‘60-32’,‘YF2-57’,‘YF2-121’,‘KG13’および‘JN191’の7系 統 を用 いた. 抽 苔 開 花 後 の花 序 を採 取 して小 胞 子 培 養 に供 試 した.得 られた不 定 胚 から再 分 化 植 物 を作 出 し,その倍 数 性 を調 査 した. 結果 12品 種 ・系 統 を供 試 して小 胞 子 培 養 を行 った結 果 ,各 々から得 られた再 分 化 植 物 の 植 物 体 数 と そ の 倍 数 性 を 調 査 し た ( Ta b l e 2 - 8 ) . 1 2 品 種 の す べ て で 再 分 化 植 物 が得 られた.蕾 あたりの再 分 化 植 物 体 獲 得 率 は,品 種 ・系 統 により 5.6% ~205.3% と著 しく変 動 した.再 分 化 植 物 の倍 数 性 は,10 の品 種 ・系 統 では, 二 倍 体 の割 合 が 50%以 上 で多 数 を占 めた.‘CR 王 手 ’と‘YF2-57’では,半 数 体 の割 合 の方 が多 かったが,二 倍 体 の割 合 は,実 験 1で葯 培 養 により得 られた再 分 化 植 物 の場 合 より高 く,約 40%であった. 12品 種 ・系 統 の小 胞 子 培 養 を行 い,すべての品 種 ・系 統 から再 分 化 植 物 を得 たが,その獲 得 効 率 は品 種 ・系 統 により著 しく変 動 した.自 然 倍 加 の頻 度 も品 種 ・系 統 により変 動 した. 第 4項 不 定 胚 の倍 数 性 調 査 による自 然 倍 加 の発 生 時 期 の推 定 材 料 及 び方 法 小 胞 子 培 養 により得 られた不 定 胚 の倍 数 性 の調 査 品 種 ‘ W 111 6 ’ を 用 い て 小 胞 子 培 養 を 行 っ た . 小 胞 子 培 養 を 開 始 し て 約 4 週 間 後 に,生 成 した 100 個 の不 定 胚 (魚 雷 型 胚 および子 葉 型 胚 ) について 1 個 ずつ倍 数 性 を調 査 した. 不 定 胚 の倍 数 性 の確 認 は,フローサイトメーター ( P a r t e c PA 1 , ( 株 ) チ ヨ ダ サ イ エ ン ス , 東 京 ) を 用 い て , 細 胞 核 当 た り の 相 対 D N A 量 を調 査 することにより行 った. 1 ml の抽 出 溶 液 ( 1 0 m M Tr i s - H C l ( p H 7 . 0 ) , 100 mM NaCl,10 mM 2Na-ethylenediamine tetra acetate および - 39 - - 40 - Cultivars or lines Sakuradaifuku Shunraku CR Appare Hokuyo CR Ote 30-45 63-6 JN19-1 YF2-121 KG13 60-32 YF2-57 No. of % of plant regenerations experiments per cultured bud 6 7.7 5 205.3 6 9.3 3 313.1 7 12.7 18 18.5 16 32.5 9 5.6 7 11.7 29 15.8 17 22.6 20 25.7 No. of plants examined 25 364 20 310 31 126 197 19 26 184 136 186 % of regenerated plants with each ploidy Tetraploids Haploids Diploids 16.0 64.0 20.0 19.8 69.9 10.4 30.0 60.9 10.1 38.4 53.2 8.4 51.6 41.9 6.5 9.5 81.0 9.5 9.6 85.3 5.1 36.8 57.9 5.3 38.5 61.5 0 39.1 54.9 6.0 47.8 50.0 2.2 60.2 38.2 1.6 Table 2-8. Percentages of haploids, diploids and tetraploids in the regenerated plants obtained by microspore culture of five cultivars and 7 lines of B. rapa subsp. pekinensis L. (Chinese cabbage) 0 . 1 % Tr i t o n X - 1 0 0 ) を 入 れ た 直 径 6 c m の プ ラ ス チ ッ ク シ ャ ー レ に 1 個 の 不 定 胚 を入 れ,鋭 利 な片 刃 メス (フェザー,FAS-10) で刻 んで細 胞 核 を遊 離 させた. 50μm のナイロンメッシュでろ過 して残 渣 を除 いた後 ,終 濃 度 が 0.2 mg/l になるよ うに DAPI 染 色 液 を加 えて染 色 した.この溶 液 をフローサイトメーターにより分 析 し た. 結果 自 然 倍 加 の 発 生 時 期 を 推 定 す る た め , 品 種 ‘ W 111 6 ’ の 小 胞 子 培 養 に よ っ て 得 られた不 定 胚 100 個 の倍 数 性 を調 査 した結 果 ,70%が二 倍 性 で,30%が半 数 性 で あ っ た ( Ta b l e 2 - 1 0 , F i g u r e 2 - 4 ) . 1 C , 2 C お よ び 4 C の ピ ー ク は , そ れ ぞ れ n , 2n,4nの蛍 光 強 度 を示 し,1 番 目 のピークは細 胞 周 期 のG 0 + G 1 期 に,2 番 目 の ピークはG 2 + M期 に相 当 する.調 査 した 100 個 の胚 では,四 倍 体 以 上 の高 次 倍 数 体 や倍 数 性 キメラの不 定 胚 を確 認 することはできなかった. 第 5項 考察 葯 培 養 と小 胞 子 培 養 の間 で再 分 化 植 物 の半 数 体 ,二 倍 体 ,四 倍 体 の構 成 割 合 が大 きく異 なったことは,培 養 法 の違 いが自 然 倍 加 発 生 に大 きな影 響 を与 える こ と を 示 唆 し て い る . B . o l e r a c e a ( ブ ロ ッ コ リ ー ) に お い て Wa n g ら ( 1 9 9 9 ) は , 葯 培 養 と小 胞 子 培 養 では,再 分 化 植 物 体 の自 然 倍 加 頻 度 に有 意 差 がないこと を報 告 している.一 方 ,B. napus (ナタネ) において Lichter ら(1988)は,再 分 化 植 物 の半 数 体 と二 倍 体 の割 合 が,それぞれ,葯 培 養 では 33%と 67%,小 胞 子 培 養 では 70.7%と 29.3%と報 告 している.これは,本 節 におけるハクサイとは逆 の結 果 であり,培 養 法 の自 然 倍 加 への影 響 の仕 方 は植 物 種 によって異 なる可 能 性 を示 している.さらに,本 研 究 では,自 然 倍 加 の頻 度 は同 一 種 内 の品 種 や系 統 に よ っ て も 異 な る こ と が 示 唆 さ れ た . B . o l e r a c e a ( Wa n g e t a l . 1 9 9 9 ) , B . - 41 - Table 2-9. Percentages of haploids and diploids in the regenerated embryos obtained by microspore culture of B. rapa subsp. pekinensis L. (Chinese cabbage) No. of embryos examined 100 %. of regenerated embryos with each ploidy Haploids Diploids 30 - 42 - 70 Figure 2-4. Histograms of fluorescence intensity of nuclei from a torpedo shaped embryo of B.rapa. A: diploid embryo, B: haploid embryo and C: control diploid leaf. One primary peak that corresponds to G 0 + G 1 phase cells and a secondary peak corresponds to G 2 + M phase cells. diploid and 4C: tetraploid. - 43 - 1C: haploid, 2C: napus (Lichter et al. 1988) および B.oleracea (キャベツ)(Sato et al. 2005) の結 果 においても,品 種 や系 統 により自 然 倍 加 の頻 度 が異 なることが報 告 されている.これらの結 果 から,小 胞 子 における自 然 倍 加 に対 する感 受 性 は, 培 養 方 法 ,植 物 種 そして品 種 や系 統 により著 しく異 なるものと考 えられる. 葯 培 養 や小 胞 子 培 養 を利 用 する育 種 では,いかに効 率 的 に倍 加 半 数 体 を獲 得 できるかが重 要 となる.Lichter(1988)らは,B.napus では小 胞 子 培 養 の方 が, 葯 培 養 に比 べて植 物 体 の作 出 効 率 が 10 倍 以 上 高 いので,小 胞 子 培 養 の方 が 有 利 であると考 察 している.本 研 究 におけるハクサイの場 合 でも,蕾 当 たりの植 物 体 再 生 効 率 は葯 培 養 より小 胞 子 培 養 の方 が高 いことから小 胞 子 培 養 の方 が有 利 と考 えられる.さらに,二 倍 体 の出 現 率 も小 胞 子 培 養 の方 が高 い品 種 ・系 統 が 多 かったので,小 胞 子 培 養 が作 業 量 と倍 加 半 数 体 獲 得 の時 間 の点 で有 利 であ る.しかも,実 体 顕 微 鏡 下 で 1 蕾 ずつ葯 を摘 出 する葯 培 養 に比 べて小 胞 子 培 養 は一 度 に多 数 の蕾 を処 理 できるので,培 養 の作 業 効 率 性 の点 でも優 れている.こ れらのことから,ハクサイの半 数 体 育 種 を実 施 する場 合 には,葯 培 養 よりも小 胞 子 培 養 を利 用 する方 が有 利 と考 えられる. 小 胞 子 培 養 で得 られた不 定 胚 には,半 数 性 と二 倍 数 性 のものが存 在 し,その 割 合 は再 分 化 植 物 と同 程 度 であったことから,自 然 倍 加 は小 胞 子 からの胚 形 成 過 程 の極 初 期 に,すでに生 じていると推 定 される.さらに,倍 数 性 キメラが存 在 し なかったので,不 定 胚 形 成 へ向 かう最 初 の細 胞 分 裂 時 に自 然 倍 加 が起 きた可 能 性 が強 く示 唆 される.Keller (1987) らは,オオムギやコムギの葯 培 養 における 花 粉 の細 胞 学 的 観 察 によって,自 然 倍 加 は胚 発 生 初 期 の細 胞 核 の融 合 と有 糸 分 裂 時 に起 きると推 察 している.自 然 倍 加 が胚 発 生 のごく初 期 に起 きているので あれば,培 養 の極 初 期 化 もしくは培 養 開 始 直 前 に何 らかの処 理 をすることにより, 二 倍 体 の出 現 割 合 を増 加 させることができる可 能 性 がある.実 際 ,B.napus では, 小 胞 子 培 養 開 始 時 に培 地 にコルヒチン (Zhao et al. 1996b) やトリフルラリン - 44 - (Zhao and Simmonds 1995) を添 加 することで二 倍 体 の再 分 化 植 物 が増 加 し たことが報 告 されている.また,凍 結 処 理 した小 胞 子 の培 養 によって,二 倍 体 の出 現 頻 度 が向 上 するという報 告 もある (Sharne et al. 1988, Chen and Beversdorf 1992). 本 研 究 において,ハクサイの葯 ・小 胞 子 培 養 により得 られた再 分 化 植 物 のうち, 四 倍 体 の出 現 頻 度 は品 種 系 統 により異 なり 0~20.0%であった.B.oleracea (キ ャベツ) において Sato ら (2005) は,葯 培 養 により得 られた植 物 体 では四 倍 体 が 7 ~ 5 0 % 得 ら れ る こ と を 報 告 し て い る . Wa n g ら ( 1 9 9 9 ) も ブ ロ ッ コ リ ー の 葯 ・ 小 胞 子 培 養 において,四 倍 体 の出 現 割 合 は 5~58%であったと報 告 している.これ らのことから,自 然 倍 加 率 を上 げる操 作 では,二 倍 体 を増 加 させるだけでなく,同 時 に四 倍 体 の出 現 割 合 を抑 制 するという反 する技 術 の開 発 も重 要 と考 えられる. 本 研 究 において,葯 ・小 胞 子 培 養 から再 分 化 植 物 体 の獲 得 までの各 段 階 の効 率 は,不 定 胚 からの植 物 体 再 分 化 率 90%,再 分 化 植 物 体 の順 化 成 功 率 70%,シュート (苗 条 ) からの発 根 率 90%およびコルヒチン処 理 による染 色 体 倍 加 率 は 5 0 % で あ る ( Ta b l e 2 - 11 ) . ハ ク サ イ 葯 培 養 の 最 初 の 報 告 ( S a t o e t a l . 1989a)では,不 定 胚 からの再 分 化 率 は 5%以 下 で非 常 に低 く,実 用 化 レベルで はなかった.しかし,再 分 化 培 地 に各 種 の植 物 成 長 調 節 剤 を組 み合 わせて添 加 すると 70%程 度 まで再 分 化 率 を向 上 できた.小 胞 子 培 養 によって得 られた不 定 胚 からの再 分 化 は,葯 培 養 由 来 の不 定 胚 に比 べてさらに困 難 であったが,葯 培 養 から小 胞 子 培 養 への移 行 の妨 げにもなっていた.しかし,2 段 階 の培 養 法 を用 いることで,この困 難 を克 服 し,葯 培 養 由 来 の不 定 胚 からの再 分 化 率 と同 程 度 ま でに向 上 した.半 数 体 のコルヒチン処 理 による倍 加 成 功 率 は 50%と低 かったが, 葯 培 養 に較 べて小 胞 子 培 養 では自 然 倍 加 した二 倍 体 の出 現 頻 度 が高 いので, 倍 加 半 数 体 獲 得 効 率 は倍 加 処 理 のは著 しく向 上 する.本 研 究 で開 発 した倍 加 半 数 体 作 出 方 法 は,育 種 への利 用 という観 点 では実 用 レベルに達 していると考 - 45 - えられる.倍 加 率 の向 上 ,自 然 倍 加 の制 御 および不 定 形 成 における品 種 間 差 の 克 服 により,さらに育 種 効 率 が向 上 するものと考 えられる. - 46 - Table 2-10. Successful efficiency of each process from obtained embryo to colchicine treatment. Process Efficiency (%) Shoot regeneration from the embryo 70 Root formation from the shoot 90 Acclimatization 90 Chromosome doubling by colchicine 50 - 47 - 第 3章 優 良 倍 加 半 数 体 系 統 の育 成 本 章 では,半 数 体 育 種 の実 用 場 面 での有 用 技 術 として,ハクサイ花 粉 の保 存 に関 する検 討 を行 った.さらに開 発 した半 数 体 育 種 技 術 の実 用 化 を検 討 するた めに,倍 加 半 数 体 の作 出 と選 抜 ,そして選 抜 された倍 加 半 数 体 系 統 を用 いたF 1 新 品 種 の育 成 を試 みた. 第 1節 交 配 に利 用 するための成 熟 花 粉 の保 存 に関 する検 討 花 粉 の保 存 技 術 は育 種 やF 1 種 子 の採 種 において,開 花 期 の異 なる系 統 間 の 交 配 を可 能 にする.倍 加 半 数 体 を用 いた品 種 育 成 において,小 胞 子 培 養 により 得 られる再 分 化 植 物 と通 常 の系 統 選 抜 を行 った個 体 との間 で試 験 交 配 を実 施 する場 合 に,それらの開 花 期 が必 ずしも一 致 しないといった問 題 が生 じる.また, それぞれの再 分 化 植 物 同 士 で交 配 を行 いたい場 合 でも,各 個 体 の生 育 は斉 一 ではないので,開 花 期 が合 致 せず交 配 できないといった問 題 が常 に生 じる.こうし た倍 加 半 数 体 を用 いた交 配 育 種 の日 常 的 な問 題 は,花 粉 を保 存 できれば,簡 単 に解 決 できる. アブラナ属 (Brassica)植 物 の B. oleracea,B. campestris および B. napus では,花 粉 は-20℃の乾 燥 状 態 で保 存 すれば 1 年 以 上 生 存 可 能 であることが報 告 さ れ て い る ( O c k e n d o n , 1 9 7 4 ; B r o w n a n d D y e r, 1 9 9 1 ) . し か し , 品 種 に よ っ ては保 存 中 に花 粉 稔 性 が低 下 することや,保 存 花 粉 を受 粉 して得 られた種 子 の 一 部 が登 熟 途 中 の莢 上 で早 期 に発 芽 する現 象 が報 告 されている(Brown and D y e r, 1 9 9 1 ) . 品 種 に よ る 花 粉 保 存 時 の 稔 性 の 低 下 や 種 子 の 早 期 発 芽 は 遺 伝 子 型 によるものなのか,花 粉 採 取 時 の環 境 を含 めた保 存 条 件 の微 細 な違 いによ るものかは必 ずしも明 らかにされていない.実 際 の育 種 場 面 では 1 年 以 上 の長 期 保 存 よりも数 週 間 から数 ヶ月 の比 較 的 短 期 間 の保 存 が必 要 な場 合 が多 く,また, - 48 - 出 来 るだけ簡 便 な手 法 が望 まれる. 本 節 においてはハクサイ(Brassica rapa subsp. pekinensis L.)の半 数 体 育 種 法 の実 用 化 において大 きな障 害 となる開 花 期 のずれを解 決 するため,できる だけ簡 便 な花 粉 の保 存 方 法 を確 立 することを目 指 した.最 初 に,ハクサイ花 粉 の 保 存 に関 する検 討 を行 うための基 本 条 件 となる簡 便 かつ安 定 的 な花 粉 の生 死 判 定 法 について検 討 した(第 1項 ).次 いでこの検 定 法 を用 いて保 存 の条 件 や保 存 可 能 期 間 について検 討 した(第 2項 ).最 後 に長 期 保 存 した花 粉 について,受 精 能 力 や自 家 不 和 合 性 について検 討 した(第 3項 ). 第 1項 in vitro での花 粉 発 芽 法 の検 討 本 項 では,生 存 率 の簡 便 かつ安 定 的 な花 粉 の生 死 判 定 法 として,人 工 培 地 上 での花 粉 の発 芽 能 の有 無 により判 定 する方 法 について検 討 した. 1. 共 通 の材 料 および方 法 材料植物 ハ ク サ イ ( B r a s s i c a r a p a s u b s p . p e k i n e n s i s L . ) 品 種 ‘ W 111 6 ’ ( ( 株 ) 渡 辺 採 種 場 )を主 な実 験 材 料 として用 いた.材 料 植 物 の栽 培 は,第 2章 第 1節 共 通 の 方 法 と同 様 に行 い,抽 苔 開 花 後 に材 料 を順 次 採 取 し実 験 した. 花 粉 の採 取 開 花 直 前 もしくは直 後 の花 から裂 開 前 の葯 を集 め,相 対 湿 度 (RH)15%に調 整 した 20℃暗 黒 下 に 16~24 時 間 置 いて乾 燥 ・開 葯 させた.乾 燥 した葯 壁 と花 粉 が混 在 した状 態 で花 粉 を採 取 し,各 種 の処 理 を行 った.なお,実 験 は 6 月 から 12 月 の間 に実 施 した. 花 粉 発 芽 培 地 と発 芽 花 粉 発 芽 の培 地 としては 20%のショ糖 を含 む Kwack(1964)の培 地 を基 本 培 - 49 - 地 と し て 用 い た ( Ta b l e 3 - 1 ) . 全 て の 培 地 は オ ー ト ク レ ー ブ 殺 菌 後 に 使 用 し た . 2 4 ×48mm のカバーグラスの上 に綿 棒 に付 着 させた 500~1000 粒 程 度 の花 粉 粒 を 置 き,その上 に 20μl の液 体 培 地 を滴 下 した.その後 ,プラスチックシャーレ(径 9 cm,高 さ 2 cm)の中 に蒸 留 水 で湿 らせた濾 紙 を敷 いた上 に楊 枝 を 2 本 置 き,そ の上 に濾 紙 に接 触 しないように上 記 のカバーグラスを置 いた.このシャーレを密 封 容 器 の中 にいれて高 湿 度 状 態 を保 持 したまま,20℃暗 黒 下 で 8~16 時 間 培 養 した.その後 ,顕 微 鏡 下 で花 粉 の発 芽 率 を調 査 した.花 粉 管 が花 粉 粒 の長 径 以 上 に発 芽 伸 長 したものを発 芽 と判 定 した.破 裂 または奇 形 花 粉 は発 芽 とは判 定 しなかった. 2. 培 地 の pH の影 響 方法 pH の影 響 を調 査 するため,塩 酸 または水 酸 化 カリウム溶 液 用 いて pH を 4.0, 5.0,6.0,7.0,8.0,9.0 および 10.0 に調 整 した培 地 を用 いて花 粉 の発 芽 を調 査 した.なお,この実 験 においては後 述 の花 粉 の湿 度 前 処 理 は行 っていない. 結果 花 粉 の in vitro 発 芽 に対 する培 地 の pH の影 響 を調 査 した結 果 ,花 粉 の発 芽 率 は培 地 の pH が 7.0~9.0 で高 い値 が得 られた(Figure 3-1).そこで,この後 の実 験 では最 も高 かった pH8.0 の培 地 を用 いた. しかし,その後 いくつかの予 備 的 な実 験 を行 う中 では,pH8.0 の培 地 を用 いた場 合 でも発 芽 率 が低 下 する場 合 があった. - 50 - Table 3-1. Composition of culture medium for pollen germination. Component H3BO3 Concentration(mg/l) 100 Ca(NO3)・4H2O 300 MgSO4・7H2O 200 KNO3 100 Sucrose 200,000 The medium was sterilized by autoclave. - 51 - Figure 3-1. The effect of the medium pH on the percentage of pollen g e r m i n a t i o n i n C h i n e s e c a b b a g e c v. ‘ W 111 6 ’ . grains were scored for each determination. errors. - 52 - More than 200 pollen Bars represent standard 3. 湿 度 前 処 理 の in vitro 花 粉 発 芽 への影 響 方法 花 粉 発 芽 実 験 において,花 粉 へ発 芽 培 地 を滴 下 する前 に一 定 の湿 度 条 件 下 に花 粉 を一 定 期 間 静 置 する,湿 度 前 処 理 を行 った.花 粉 を置 いたカバーグラスを, 相 対 湿 度 (RH)を調 整 した密 閉 容 器 に入 れて暗 黒 下 で 16~24 時 間 静 置 した. RH の調 整 は,密 閉 容 器 中 に 6 種 の塩 類 の飽 和 溶 液 を静 置 して,15,32,52, 6 6 , 8 1 ま た は 9 5 % R H に 設 定 し た ( Ta b l e 3 - 2 ) . 結果 花 粉 の in vitro 発 芽 能 力 に対 する湿 度 前 処 理 の影 響 を調 査 した結 果 ,52% RH と 66% RH の湿 度 前 処 理 区 では 80%以 上 の高 い発 芽 率 が認 められたのに 対 し,15% RH と 95% RH 処 理 区 では 20%以 下 の低 い発 芽 率 を示 した(Figure 3-2).また,81%RH,および 32%RH では中 間 的 な発 芽 率 を示 した.66% RH での湿 度 前 処 理 の時 間 を調 査 した結 果 ,5 時 間 の処 理 でその効 果 が十 分 に得 ら れることを確 認 した(データ省 略 ). 66%RH の湿 度 前 処 理 で最 も高 い発 芽 率 を示 したので,以 降 の in vitro 花 粉 発 芽 の実 験 では 66%RH で 5 時 間 の低 温 前 処 理 を行 った. 4. 湿 度 前 処 理 が花 粉 の形 態 に与 える影 響 方法 湿 度 前 処 理 による花 粉 の外 観 形 態 の変 化 を共 焦 点 レーザー顕 微 鏡 (バイオ ラッドラボラトリーズ(株 ) MRC-600) により観 察 した.花 粉 を 15,32,66 または 95%RH で 16 時 間 湿 度 処 理 をした後 ,湿 度 を調 節 したプラスチックシャーレ内 に 置 いた状 態 で観 察 に供 試 した.シャーレ内 に各 種 の飽 和 塩 溶 液 を入 れ,上 部 に 径 1 cm の穴 をあけ,花 粉 を置 いたカバーグラスを逆 さにして穴 の上 に置 き,隙 間 - 53 - Table 3-2. Theoritcal values of relative humidity in the surface space above supersaturated solutions of various salts at 25℃ Salts Relative humidity (%) LiCl 15.0 CaCl2・2H2O 32.0 NaHSO4・2H2O 52.0 NaNO2 66.0 (NH4)2 SO4 81.0 Na2HPO4・2H2O 95.0 - 54 - Figure 3-2. The effect of humidity pretreatment on pollen g e r m i n a t i o n i n C h i n e s e c a b b a g e c v. ‘ W 111 6 ’ . Before the germination medium (pH 8.0) was added to pollen, the pollen was i n c u b a t e d i n t h e r e l a t i v e h u m i d i t y, 1 5 , 3 2 , 5 2 , 6 6 , 8 1 a n d 9 5 % , a t 2 5 ℃ in the dark for 24 hours. for each determination. More than 200 pollen grains were scored Bars represent standard errors. - 55 - をパラフィルムと白 色 ワセリンでふさいで密 封 した.処 理 後 にこのままの状 態 で観 察 した. 結果 異 なる相 対 湿 度 の条 件 下 で,16 時 間 処 理 した花 粉 の形 態 を観 察 した結 果 , 15, 32 および 66%RH 処 理 の間 では明 確 な差 は認 められずやや細 長 いラグビー ボール状 の形 状 であったが,95%RH 処 理 後 の花 粉 は前 者 に比 べてやや円 形 状 に膨 張 しており,形 態 的 に明 らかな差 異 が認 められた(Figure 3-3). 95%RH の高 湿 度 処 理 は花 粉 に過 度 の水 分 吸 収 を促 し,その結 果 ,花 粉 の形 状 が肥 大 したと思 われる. 5. 花 粉 発 芽 率 の品 種 ・系 統 間 差 異 材 料 および方 法 in vitro での花 粉 発 芽 率 の品 種 ・系 統 間 差 異 を検 討 するために,‘CR 歓 呼 ’ ((株 )日 本 農 林 社 ),‘つばめ’((株 )トーホク),‘サラダ白 菜 ’(タキイ種 苗 (株 )), ‘ 信 玄 ’ ( ( 株 ) 渡 辺 採 種 場 ) お よ び ‘ F o r m o s a 4 5 d a y s ’ ( A s i a n Ve g e t a b l e R e s e a r c h a n d D e v e l o p m e n t C e n t e r ( AV R D C ) ) を 用 い た . 結果 実 験 2の in vitro 発 芽 の条 件 において,‘CR 歓 呼 ’((株 )日 本 農 林 社 ),‘つば め’((株 )トーホク),‘サラダ白 菜 ’(タキイ種 苗 (株 )),‘信 玄 ’((株 )渡 辺 採 種 場 )お よ び ‘ F o r m o s a 4 5 d a y s ’ ( A s i a n Ve g e t a b l e R e s e a r c h a n d D e v e l o p m e n t C e n t e r ( AV R D C ) ) の i n v i t r o 発 芽 率 は そ れ ぞ れ 8 2 . 8 % , 9 0 . 1 % , 8 3 . 2 % , 97.6%および 95.4%であった.いずれの品 種 ・系 統 も 80%以 上 の高 い花 粉 発 芽 率 となり,花 粉 発 芽 率 の品 種 ・系 統 間 差 はわずかであった. - 56 - A B C D Figure 3-3. (RH). Pollen grains treated with various relative humidity A: 15% RH, B: 33% RH, C: 66% RH, D: 95% RH. The pollen grains had been incubated under each humidity condition for 16 hours before observation. Scale bar indicated 25 μm. - 57 - 第 2項 花 粉 の保 存 条 件 の検 討 本 項 では,花 粉 の保 存 条 件 ,特 に温 度 ,湿 度 および保 存 可 能 期 間 について検 討 した.花 粉 を各 種 の保 存 条 件 で保 存 した後 ,前 項 において確 立 した in vitro 発 芽 による評 価 法 を用 いて,発 芽 率 を調 査 した. 1. 花 粉 保 存 時 の湿 度 の影 響 方法 花 粉 をプラスチックシャーレ(径 3 cm,高 さ 1 cm) に入 れ,このシャーレを前 節 と 同 様 の方 法 で 15%RH または 66%RH に調 整 した密 封 容 器 に入 れ,20℃,暗 黒 下 で保 存 した.保 存 開 始 から 1,2,3,4,5,7,10,14,21 および 25 日 経 過 後 に花 粉 の発 芽 を調 査 した.in vitro 花 粉 発 芽 の調 査 は,湿 度 前 処 理 (66%RH, 5 時 間 )の有 無 の 2 条 件 下 で行 った. 結果 20℃の温 度 で,15%RH と 66%RH で保 存 した花 粉 における,花 粉 発 芽 率 の日 ごとの変 化 を示 した(Figure 3-4).66%RH で保 存 した花 粉 の発 芽 率 は急 激 に 低 下 し,2 日 後 で 44%になり 3 日 後 にはほとんど発 芽 しなかった.一 方 ,15%RH で保 存 した場 合 には,10 日 後 で 73%,14 日 後 で 43%の発 芽 率 を示 したが,その 後 の低 下 は顕 著 であった.また,in vitro 花 粉 発 芽 実 験 における湿 度 前 処 理 の 効 果 について調 査 した結 果 ,15%RH で保 存 した花 粉 で前 処 理 を行 わない場 合 は,2 日 後 以 降 でも発 芽 率 は極 端 に低 下 した. 花 粉 保 存 時 の湿 度 は重 要 で,66%RH 前 処 理 5 時 間 行 った場 合 15%RH が 66%RH よりも良 好 であった. - 58 - 15% RH Figure 3-4. 66% RH Time courses change in the percent germination pollens preserved at 15% RH (left) and 66% RH (right), at 20℃ in Chinese c a b b a g e c v. ‘ W 111 6 ’ . O p e n c i r c l e a n d c l o s e c i r c l e i n d i c a t e t h e percentage of germination with and without the humidity p r e t r e a t m e n t a t 6 6 % R H f o r 5 h o u r s , r e s p e c t i v e l y. pollen grains were scored for each determination. - 59 - More than 200 2. 花 粉 保 存 時 の温 度 の影 響 方法 花 粉 をパラフィン紙 で包 み,シリカゲルを入 れた密 封 プラスチック容 器 に入 れた. この容 器 を-20,5,15 または 25℃の暗 黒 下 で保 存 した.保 存 開 始 から 1,2,3, 4,6,8,10 および 12 週 間 経 過 後 に in vitro 花 粉 発 芽 による発 芽 率 を調 査 し た. in vitro 花 粉 発 芽 の調 査 では湿 度 前 処 理 (66%RH,5 時 間 )を実 施 した. 結果 保 存 温 度 とその期 間 が異 なる花 粉 における,発 芽 率 の推 移 を示 した(Figure 3-5).25℃または 15℃で保 存 した場 合 には,それぞれ 3 または 4 週 後 には花 粉 の 発 芽 が認 められなくなった.5℃で保 存 した場 合 には 6 週 間 経 過 後 も,50%程 度 の発 芽 率 を維 持 していたが,その後 は時 間 経 過 とともに徐 々に発 芽 率 は低 下 し, 12 週 後 には 10%程 度 になった.一 方 ,-20℃で保 存 した場 合 には,12 週 間 後 でも 90%程 度 の発 芽 能 力 を維 持 していた.さらに-20℃では,1 年 経 過 後 も 50% 以 上 の発 芽 能 力 を示 すことを確 認 した(データ省 略 ). 以 上 より,保 存 時 の湿 度 は 15%RH,温 度 は-20℃が良 好 で,12 週 間 以 上 の 保 存 が可 能 であった. 第 3項 長 期 保 存 花 粉 の受 精 能 力 と自 家 不 和 合 性 本 項 では,保 存 花 粉 が開 花 ・葯 の裂 開 直 後 の新 鮮 花 粉 と同 様 の受 精 能 力 を 保 持 しているか,そして自 家 不 和 合 性 を維 持 しているかを,保 存 花 粉 を用 いた交 配 によって確 認 しようとした. 材 料 および方 法 前 項 に 記 載 し た 方 法 で , - 2 0 ℃ で 1 年 間 保 存 し た ハ ク サ イ 品 種 ‘ W 111 6 ’ の 花 粉 を交 配 実 験 に用 いた.交 配 母 本 には品 種 ,‘つばめ’((株 )トーホク) および - 60 - :-20℃ : 5℃ : 15℃ : 25℃ Figure 3-5. Time course changes of the pollen t germination percentage preserved at various temperatures and periods in Chinese c a b b a g e c v. ‘ W 111 6 ’ . Pollen grains were cultured for germination after the humidity pretreatment. More than 200 pollen grains were scored for each determination. - 61 - ‘ W 111 6 ’ ( ( 株 ) 渡 辺 採 種 場 ) を 用 い た . 植 物 体 の 栽 培 は 第 2 章 と 同 様 に 行 っ た . この実 験 では保 存 花 粉 には湿 度 処 理 は行 わず,葯 が未 裂 開 の花 の葯 を全 て切 除 して.開 花 直 後 の花 の柱 頭 に保 存 花 粉 を授 粉 した.同 時 に,同 一 花 序 の上 部 に位 置 する 4 つの蕾 を用 いて蕾 受 粉 を以 下 のように行 った.ピンセットを用 いて 蕾 上 部 を取 り除 き柱 頭 を露 出 させた後 ,蕾 当 り 6 つの葯 を全 て切 除 した後 に保 存 した花 粉 を授 粉 した.対 照 として,当 日 開 花 した花 の裂 開 直 後 の葯 から採 取 し た新 鮮 な花 粉 を用 いて同 様 に授 粉 した.授 粉 した花 および蕾 にはパラフィン紙 製 の袋 をかぶせ,他 の花 粉 の混 入 を防 いだ.授 粉 から 2 ヵ月 後 に 1 莢 当 たりの結 実 種 子 数 の調 査 と,得 られた種 子 の発 芽 調 査 を行 った.プラスチックシャーレ(径 9 cm,高 さ 2 cm)に湿 らせた濾 紙 を置 き,その上 に得 られた種 子 を播 種 し,25℃の 培 養 室 内 (条 件 は第 2章 第 4節 共 通 の方 法 ,植 物 体 の再 分 化 と同 様 )でインキュ ベートした.種 子 の発 芽 率 は播 種 後 10 日 後 には打 ち切 った. 結果 保 存 花 粉 と 新 鮮 花 粉 の 受 粉 か ら 2 ヶ 月 後 の 種 子 の 結 実 の 結 果 を 示 し た ( Ta b l e 3 - 3 ) . 品 種 間 交 配 ‘ つ ば め ’ × ‘ W 111 6 ’ の 組 み 合 わ せ で は , 保 存 花 粉 を 用 い て も 結 実 は 新 鮮 花 粉 の 場 合 と ほ ぼ 同 数 の 種 子 が 得 ら れ た . 一 方 , ‘ W 111 6 ’ × ‘ W 111 6 ’ の 自 殖 ま た は ジ ブ 交 配 の 組 み 合 わ せ で は , 保 存 花 粉 と 新 鮮 花 粉 の 両 方 ともに最 上 部 の若 い蕾 以 外 では,僅 かな種 子 しか結 実 しなかった.これは自 家 不 和 合 性 の発 現 によるものであると推 測 された. また,得 られた種 子 の発 芽 調 査 の結 果 ,保 存 花 粉 と新 鮮 花 粉 を用 いた交 配 実 験 によって得 られた種 子 発 芽 能 力 に差 異 は認 められなかった(Figure 3-4). - 62 - Table 3-3. Number of seeds per silique of each flower bud obtained by crosses using pollen preserved for 1 year or fresh pollen. Cross combination Female Male No. of seeds obtained / silique Pollen condition Position on inflorescence Bottom Top Anthesised Bud Bud Bud Bud Tsubame W1116 Preserved 20 23 29 23 27 Tsubame W1116 Fresh 28 28 30 30 25 Tsubame - Unpollinated 0 0 0 0 0 W1116 W1116 Preserved 0 0 0 1 28 W1116 W1116 Fresh 0 1 2 3 8 - 63 - Figure 3-4. Germination of seeds of which obtained by pollination of preserved and fresh pollen. - 64 - 第 4項 考察 花 粉 の生 存 率 を評 価 する最 も直 接 的 な方 法 は,柱 頭 に花 粉 を受 粉 して種 子 の 稔 実 を調 査 することであるが,結 果 を得 るまでには長 い時 間 を要 する.これに代 わ り,比 較 的 簡 便 に花 粉 の生 存 率 を評 価 するための方 法 として様 々な手 法 が開 発 されているが,広 範 囲 な植 物 種 間 で共 通 して利 用 可 能 な簡 便 かつ信 頼 性 の高 い 方 法 は無 いのが現 状 である(Shivanna et al. 1992).生 存 率 の評 価 方 法 の中 で,in vitro での花 粉 発 芽 は最 も一 般 的 な方 法 であるが,最 適 な培 地 条 件 は植 物 種 によって異 なることが報 告 されている(Shivanna et al. 1992). 花 粉 発 芽 培 地 の pH については,ソバ(Fagopyrum esculentum)では pH5.0 (Adhikari and Campbell, 1998),ユリ(Lilium anratum)では pH 5.2 (Singh and Knox, 1984),アボカド(Persea americana)では pH 7.0 (Sahar a n d S p i e g e l - R o y, 1 9 8 4 ) が 用 い ら れ て お り , ワ タ ( G o s s y p i u m h i r s u t u m お よ び G. barbadense)では,培 地 の pH が 6.0~8.0 の間 では発 芽 率 に差 がないことが 報 告 されている (Burke et al. 2004).またキャベツ (Brassica oleraea) では, F e r r a r i と Wa l l a c e ( 1 9 7 5 ) は p H 5 . 8 の 培 地 を 用 い , R o b e r t ら ( 1 9 8 3 ) は p H 8.0~9.0 が良 好 であったと報 告 している.本 実 験 の結 果 からハクサイでは pH 7.0 ~9.0 で花 粉 の発 芽 が良 好 であることが示 された. 湿 度 処 理 については,キク(Chrysanthemum cineraliaefolium)では,培 養 前 の花 粉 を,90%RH 以 上 の高 湿 度 条 件 下 で 15 分 間 処 理 すると in vitro 花 粉 発 芽 率 が向 上 すると報 告 された(Hoekstra and Bruinsma 1975).同 様 に,高 湿 度 処 理 の花 粉 発 芽 率 の向 上 効 果 を 8 種 類 の植 物 種 で調 べた結 果 ,植 物 種 によって効 果 は異 なると報 告 されている(Shivannna and Heslop-Harrison 1981).本 実 験 において,pH 8.0 の培 地 を用 いた場 合 でも実 験 ごとに変 動 するこ とがあり,特 に季 節 による変 動 が大 きかった.したがって,この変 動 は実 験 室 内 や 温 室 における環 境 要 因 によるものと推 定 された.その中 でも湿 度 条 件 の変 動 が年 - 65 - 間 を通 して最 も大 きいと考 えられた.この問 題 は,発 芽 培 地 で培 養 する前 の花 粉 に湿 度 前 処 理 を行 うことにより改 善 することができた.本 実 験 のハクサイにおいては, 66%RH で 5 時 間 処 理 すると発 芽 率 が向 上 することがわかった.一 方 ,15%や 95%RH の前 処 理 では花 粉 発 芽 率 は極 端 に低 下 した.形 態 観 察 の結 果 によれ ば,15%と 66%RH では外 観 上 の変 化 は認 められなかったが,95%RH では,球 状 に膨 らんでいた.このことは,95%RH 処 理 では急 激 な水 分 吸 収 が生 じたことで, 発 芽 に悪 影 響 を与 えたと推 定 された.15%RH 処 理 の結 果 は,極 度 に乾 燥 した 状 態 の花 粉 は,通 常 の花 粉 発 芽 培 地 では何 らかの理 由 により花 粉 管 を発 芽 させ にくい状 態 にあることを示 している. in vitro での花 粉 発 芽 法 について検 討 した結 果 ,培 地 の pH は 8.0 が良 好 で, 66%RH の湿 度 前 処 理 により最 も安 定 した花 粉 発 芽 が見 られた.湿 度 前 処 理 に よる花 粉 への形 態 的 な影 響 は認 められなかった.この in vitro 花 粉 発 芽 法 は複 数 の品 種 で同 様 の結 果 を示 した. 花 粉 保 存 中 の湿 度 は,花 粉 の生 存 率 に著 しく影 響 を与 えた.20℃で保 存 した 場 合 ,15%RH の低 湿 度 であれば 2 週 間 程 度 は 40%以 上 の花 粉 が発 芽 能 力 を 維 持 したが,66%RH では 3 日 後 までにほとんどの花 粉 が発 芽 能 力 を失 っていた. この結 果 は,花 粉 を交 配 や保 存 に用 いる場 合 には,比 較 的 高 湿 度 になりやすい 温 室 内 では,少 なくとも開 花 から 2 日 以 内 のなるべく新 鮮 な花 粉 を使 用 することが 重 要 であることが示 唆 された. 花 粉 の保 存 温 度 と保 存 可 能 期 間 の関 係 については,25℃で 10 日 程 度 ,5℃ で 6 週 間 程 度 ,-20℃では 1 年 程 度 であることが示 された.したがって,開 花 期 の ずれに対 しては,その期 間 に応 じて冷 蔵 庫 や冷 凍 庫 の利 用 によって,対 応 できる ことが示 された. 交 配 実 験 の結 果 ,-20℃で保 存 した花 粉 は新 鮮 花 粉 とほぼ同 等 の受 精 能 力 をもち,また,自 家 不 和 合 性 も維 持 していることがわかった.交 配 による保 存 花 粉 - 66 - の受 精 能 力 の調 査 では,in vitro 花 粉 発 芽 の調 査 とは異 なって湿 度 前 処 理 を 行 わなかった.それにも関 わらず正 常 に結 実 したことは,人 工 培 地 上 で発 芽 しない 保 存 花 粉 の中 にも十 分 な受 精 能 力 を保 持 しているものがあることがわかった.した がって,実 用 場 面 では保 存 花 粉 (-20℃)を直 接 交 配 に使 用 可 能 であることを示 している.これらの結 果 から,ハクサイの花 粉 保 存 は比 較 的 容 易 であり,保 存 花 粉 の利 用 によって,倍 加 半 数 体 を利 用 した育 種 の際 に生 じる開 花 期 のずれの問 題 を解 決 できることが示 された. 次 に,小 胞 子 培 養 により倍 加 半 数 体 の種 子 を獲 得 するまでの作 業 過 程 を時 系 列 で示 した(Figure 3-5). 再 分 化 植 物 が自 然 倍 加 した二 倍 体 の場 合 は,培 養 開 始 から 9 ヶ月 を要 し,半 数 体 の場 合 には倍 加 処 理 のために更 に 2 ヶ月 必 要 と なる. また,系 統 育 種 の作 業 過 程 と選 抜 個 体 を培 養 材 料 にした半 数 体 育 種 の 作 業 過 程 を比 較 した(Figure 3-6).実 際 に,圃 場 で夏 秋 栽 培 (8 月 下 旬 播 種 ,9 月 下 旬 定 植 ) を 行 い 11 月 中 旬 ~ 1 2 月 上 旬 に 選 抜 し た 個 体 を 掘 り 上 げ て 移 植 し , 温 室 で開 花 誘 導 して得 られた蕾 を用 いて,小 胞 子 培 養 を 2 月 ~5 月 に実 施 した 場 合 ,獲 得 した倍 加 半 数 体 の開 花 期 は,同 年 9 月 ~翌 年 2 月 くらいの秋 から冬 までの長 期 間 に渡 る(温 室 で栽 培 した場 合 )(Figure 3-6).通 常 の夏 秋 栽 培 個 体 の開 花 期 は,前 述 の通 り 2 月 ~5 月 になる.倍 加 半 数 体 から交 配 によりF 1 品 種 育 成 と採 種 のためには,F 1 親 との一 般 ・特 定 組 合 せ能 力 検 定 をしなければな らない.選 抜 個 体 から作 出 した倍 加 半 数 体 当 代 と,F 1 片 親 候 補 系 統 との交 配 で得 られた種 子 をその年 の夏 秋 栽 培 (播 種 8 月 下 旬 ,定 植 9 月 下 旬 ,収 穫 ・選 抜 11 月 中 旬 ~ 1 2 月 中 旬 ) に 供 試 し , F 1 特 定 組 合 せ の 検 定 を 実 施 し よ う と す る 場 合 ,両 者 の開 花 期 が大 きく異 なるので,交 配 可 能 な期 間 は 2 月 のわずか 1 ヵ 月 間 だけとなる(Figure 3-6).したがって,得 られた多 数 の倍 加 半 数 体 のうち, 片 親 候 補 系 統 と交 配 できるのは 2 月 に開 花 するものに限 られてしまう.また,交 配 親 のF 1 片 親 候 補 系 統 についても 2 月 に開 花 するものに限 られてしまう.したがっ - 67 - て,得 られた倍 加 半 数 体 の全 てを,全 てのF 1 片 親 候 補 系 統 と交 配 するためには, 一 旦 倍 加 半 数 体 系 統 の自 殖 種 子 を 5~6 月 に採 種 し,これを 8 月 に播 種 して, 翌 年 の 2 月 ~5 月 に開 花 するように調 整 しなければならない.しかし,保 存 花 粉 の 利 用 が可 能 になったので,9 月 から翌 年 2 月 にかけて開 花 する全 ての倍 加 半 数 体 の花 粉 を-20℃の低 温 で保 存 する.こうすると倍 加 半 数 体 の一 世 代 を省 略 し て,この保 存 花 粉 を 2 月 から 5 月 に開 花 する全 てのF 1 片 親 候 補 系 統 と交 配 する ことが可 能 となった.その結 果 ,F 1 組 合 せ検 定 が 1 年 早 く実 施 できるようになっ た. - 68 - Month 0 Microspore cuture 1 Embryo formation and transpantation 2 Shoot formation and transplantation 3 Root formation and aclimatization Ploidy check 4 Diploids Vernalization Haploids Chromosome doubling by colchicine treatment 5 6 7 Vernalization Flowering and bud pollination 8 9 Harvest of doubled haploid seeds Flowering and bud pollination 10 11 Figure 3-5. haploid seeds Harvest of doubled haploid seeds Time course processes in the production of doubled by microspore culture. - 69 - Pedigree breeding 1 Month First year 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 ○ △ Sowing Transplantation Selection and of F1 seeds transplantation Second year Flowering and selfing of selected plants ○ △ Sowing Transplantation Selection and transplantation of F2 seeds Harvest of seeds Haploid Breeding 1 Month First year 2 3 4 5 6 Microspore culture of selected plants 7 8 9 10 11 12 F lowering and selfing of DH plants Harvest of seeds Second year F lowering and selfing of DH plants ○ △ Sowing Transplantation Selection and of DH seeds transplantation Harvest of seeds Figure 3-6. Time course processes in the pedigree breeding and the doubled haploid (DH) breeding. - 70 - 第 2節 葯 および小 胞 子 培 養 による優 良 倍 加 半 数 体 系 統 の作 出 と品 種 育 成 前 節 までに,ハクサイの葯 ・小 胞 子 培 養 による倍 加 半 数 体 作 出 方 法 や成 熟 花 粉 の保 存 技 術 についての開 発 ・検 討 を行 ってきた.本 節 では,開 発 した技 術 の活 用 による半 数 体 育 種 の実 用 化 ,すなわち倍 加 半 数 体 を用 いた品 種 育 成 につい て実 証 的 に検 証 した. ①第 1項 では,F 1 品 種 から葯 を供 試 して葯 培 養 を行 い,得 られた倍 加 半 数 体 を 用 いた新 品 種 育 成 を試 みた(F 1 DH法 という). ②第 2項 では,半 数 体 育 種 法 の効 率 をより高 くすることを目 指 して,葯 培 養 に比 べて作 業 効 率 の高 い小 胞 子 培 養 を用 いた. ③次 に,F 1 品 種 から得 たF 2 世 代 を圃 場 で栽 培 して育 種 目 標 について弱 い選 抜 個 体 から倍 加 半 数 体 を作 出 する方 法 (F 2 DH法 という)を試 みた.自 殖 選 抜 により 固 定 化 が進 んでいるので,少 数 の倍 加 半 数 体 から,多 くの遺 伝 子 座 について固 定 した優 良 個 体 を獲 得 できる可 能 性 がある.この場 合 ,供 試 材 料 は選 抜 された 1 個 体 のみであるために,小 胞 子 培 養 に用 いる蕾 の数 は限 定 される. ④また,育 種 年 限 をさらに短 縮 させるため,倍 加 半 数 体 の再 分 化 植 物 当 代 を直 接 圃 場 で栽 培 し,特 性 検 査 および選 抜 を試 みた. 第 1項 F 1 品 種 からの倍 加 半 数 体 の作 出 と育 種 母 本 の育 成 育 種 目 標 は,ハクサイの栽 培 上 の大 きな減 収 量 の原 因 となる根 こぶ病 に対 する 抵 抗 性 と,消 費 者 の嗜 好 性 に合 致 した,球 内 部 の黄 色 味 が強 い黄 芯 系 の付 与 である.目 的 形 質 をもつF 1 品 種 を材 料 に用 いて葯 培 養 法 により倍 加 半 数 体 を作 出 し,優 良 個 体 の選 抜 と品 種 育 成 を試 みた. - 71 - 材 料 および方 法 材料植物 ハクサイ (Brassica rapa subsp. pekinensis L.) の試 作 系 統 4 系 統 , ‘W‐901’,‘W‐902’,‘W‐903’,‘W‐004’(以 上 (株 )渡 辺 採 種 場 ),および, F 1 品 種 3 品 種 , ‘CR歓 呼 ‘ ((株 )日 本 農 林 社 ),‘福 宝 ’ ((株 )トーホク), ‘ W 111 6 ’ ( ( 株 ) 渡 辺 採 種 場 ) を 用 い た . 材 料 植 物 の 栽 培 は , 第 2 章 第 1 節 共 通 の 方 法 にしたがって行 い,開 花 後 の花 序 を順 次 採 取 して供 試 した. 倍 加 半 数 体 の作 出 葯 培 養 ,不 定 胚 からの再 分 化 ,発 根 ,順 化 および倍 数 性 の確 認 は第 2章 第 4 節 共 通 の方 法 にしたがって行 った.自 然 倍 加 した二 倍 体 は,第 2章 第 1節 共 通 の方 法 と同 様 に 4℃で 30 日 間 の春 化 処 理 後 ,1/5000 ワグネルポットへ移 植 して 温 室 内 で栽 培 した.抽 苔 開 花 後 ,第 3章 第 1節 第 2項 実 験 1で示 した蕾 受 粉 によ って採 種 した.半 数 体 と確 認 された場 合 には,コルヒチン処 理 による染 色 体 倍 加 を行 った.コルヒチン 0.1%水 溶 液 を浸 みこませた綿 球 を半 数 体 植 物 の茎 頂 部 に 押 し付 けるようにしてのせて 2 日 間 処 理 した.処 理 後 ,綿 球 を取 り除 き,茎 頂 部 を 水 道 水 で洗 浄 した.その後 ,上 記 の自 然 倍 加 した二 倍 体 と同 様 に春 化 処 理 によ る開 花 誘 導 を行 い,抽 苔 開 花 後 に蕾 受 粉 によって採 種 した.各 々の倍 加 した二 倍 体 の自 殖 によって得 られたS 1 世 代 は,遺 伝 的 にホモの完 全 固 定 系 統 と考 えら れ,ここでは倍 加 半 数 体 系 統 と呼 ぶ. 根 こぶ病 抵 抗 性 検 定 茨 城 県 結 城 市 の圃 場 の罹 病 したハクサイから罹 病 組 織 を採 取 して,-20℃で 保 存 した.冷 凍 保 存 した罹 病 組 織 から根 こぶ病 菌 の休 眠 胞 子 を単 離 して供 試 し た . 根 こ ぶ 病 抵 抗 性 の 検 定 は , Yo s h i k a w a ( 1 9 8 1 ) の 方 法 に 準 じ て 行 っ た . 菌 密 度 を 5×10 7 休 眠 胞 子 /mlに調 製 した懸 濁 液 に,検 定 する幼 苗 の根 を 1 分 間 浸 漬 した.この幼 苗 を,根 こぶ病 菌 休 眠 胞 子 を 5×10 6 /g培 養 土 の密 度 で接 種 し - 72 - た培 養 土 を入 れたポットに移 植 し,昼 温 25~30℃,夜 温 22℃の温 室 内 で 50 日 間 もしくは 69 日 間 栽 培 した.この株 を掘 り上 げ根 部 の根 こぶ形 成 の有 無 を調 査 することにより根 こぶ病 抵 抗 性 を判 定 した. 圃 場 栽 培 と特 性 調 査 得 られた倍 加 半 数 体 系 統 は,栃 木 県 小 山 市 大 字 出 井 1900 番 地 の圃 場 で栽 培 し,系 統 選 抜 を実 施 した. 栽 培 方 法 : 8 月 下 旬 に温 室 内 で 25 穴 ビニポットに播 種 ・育 苗 後 ,9 月 中 旬 に 圃 場 に定 植 して露 地 栽 培 を行 った.栽 植 密 度 は,畝 間 160 cm,床 幅 100 cm, 株 間 40 cmの 2 条 植 え,条 間 50 cmとした.施 肥 は元 肥 と追 肥 合 計 で,窒 素 : 2.2 kg/a,リン酸 :1.6 kg/a,カリ:1.8 kg/a,を施 用 した.得 られた倍 加 半 数 体 系 統 ごとに 8 個 体 ,2 反 復 で計 16 個 体 を定 植 した. 特 性 調 査 : 11 月 中 旬 か ら 1 2 月 上 旬 に , 特 性 調 査 を 行 っ た . 調 査 項 目 は , 草 姿 ,草 勢 ,葉 色 ,球 の大 小 ,包 皮 ,葉 数 ,尻 張 ,球 内 色 黄 色 の濃 さと広 がり,球 の締 り具 合 および熟 期 である.それぞれの項 目 について 5 段 階 評 価 で特 性 調 査 をした. 組 合 せ能 力 検 定 選 抜 した倍 加 半 数 体 系 統 と従 来 の交 雑 育 種 法 により育 成 した系 統 との間 で試 験 交 配 を行 ってF 1 種 子 を採 種 し,そのF 1 の特 性 を調 査 して組 合 せ能 力 を検 定 した.試 験 交 配 は,共 同 研 究 先 の(株 )渡 辺 採 種 場 (宮 城 県 ,小 牛 田 町 )で実 施 した.1994 年 2~6 月 に,選 抜 した 5 系 統 の倍 加 半 数 体 系 統 を父 親 (花 粉 親 ) とし,(株 )渡 辺 採 種 場 が従 来 法 で育 成 した母 本 系 統 に 15 の交 配 組 合 せで人 工 交 配 して試 験 交 配 のF 1 を採 種 した.試 験 交 配 により得 られたF 1 を,栃 木 県 小 山 市 の圃 場 において前 述 と同 様 の方 法 で,各 F 1 につき 16 個 体 ,3 反 復 で計 48 個 体 を栽 培 し,特 性 調 査 した.なお,調 査 項 目 には前 述 の項 目 の他 にF 1 系 統 内 の揃 い(斉 一 性 ),球 の重 量 および縁 腐 れやゴマ症 といった生 理 障 害 の有 無 を - 73 - 加 えた. 地 域 適 応 性 試 験 と品 種 の育 成 選 抜 したF 1 系 統 は,95 年 に北 海 道 長 沼 町 ,福 島 県 伊 達 町 , 茨 城 県 八 千 代 町 および長 野 県 長 野 原 町 の 4 箇 所 の委 託 農 家 において地 域 適 応 性 試 験 を実 施 した.栽 培 の作 型 は現 地 の作 型 とし,株 間 40 cm,床 幅 90 cm,二 条 千 鳥 植 えとして各 F 1 系 統 当 り 50 個 体 を供 試 した. 結果 1991 年 10 月 に 7 つのF 1 品 種 を選 定 して葯 培 養 を開 始 し,1993 年 7 月 まで に合 計 740 の倍 加 半 数 体 系 統 の種 子 を得 た.1993 年 8~12 月 に,これら全 て の系 統 について,根 こぶ病 検 定 ・圃 場 栽 培 ・特 性 調 査 を行 い,5 系 統 を選 抜 した. 1994 年 8~12 月 に試 験 交 配 によって得 られた 15 系 統 のF 1 を,圃 場 で栽 培 し て組 合 せ能 力 検 定 を行 い,目 的 とする形 質 をもつ 2 つのF 1 系 統 を選 抜 した.この 2 系 統 の父 親 系 統 は,ともに同 一 の系 統 (AC4-729)であった.これらの地 域 適 応 性 試 験 によって栽 培 特 性 を確 認 し,新 品 種 育 成 を完 了 した.これらは 96 年 4 月 に,F 1 品 種 ‘JT103’と‘JT107’として日 本 たばこ産 業 (株 )から販 売 された (Figure 3-7). ‘JT103’および‘JT107’の特 性 2 品 種 ともに,球 内 色 黄 色 の濃 さと広 がりおよび根 こぶ病 抵 抗 性 を付 与 すること ができたので,育 種 目 標 を達 成 した.それぞれの品 種 の特 性 は,以 下 の通 りであ る. JT103 : 播 種 後 70 日 で球 重 が 2.5~3kgになる中 早 生 品 種 である.葉 色 は 濃 く球 内 色 も濃 く広 がる黄 芯 系 で胴 ・尻 張 りの良 い抱 合 砲 弾 型 となる.根 こぶ病 抵 抗 性 をもち,Ca欠 乏 症 にも強 く,高 冷 地 の夏 播 きと一 般 平 坦 地 の秋 播 きに適 する. - 74 - Figure 3-7. The new F 1 hybrid cultivars (‘JT103’: left and ‘JT107’: right) of Chinese cabbagese were established by using the doubled haploid method. - 75 - JT107 : 播 種 後 80 日 で球 重 が 2.5~3kgになる中 生 品 種 である.葉 色 は濃 緑 色 で球 内 色 が濃 く広 がる黄 芯 系 で胴 ・尻 張 りの良 い抱 合 砲 弾 型 となる.根 こ ぶ病 抵 抗 性 をもち,Ca欠 乏 症 やゴマ症 の生 理 障 害 に強 く,一 般 平 坦 地 の秋 播 きに適 する. 第 2項 圃 場 選 抜 個 体 からの倍 加 半 数 体 の育 成 本 項 では,F 2 世 代 で一 度 選 抜 した個 体 から倍 加 半 数 体 を作 出 する方 法 (F 2 DH法 という)を試 みた.また,得 られた倍 加 半 数 体 は,順 化 後 の培 養 当 代 植 物 を直 接 圃 場 で栽 培 して特 性 を調 査 して選 抜 した後 に採 種 を行 うことを試 みた. ここでは,黄 芯 系 で晩 抽 性 のF 1 品 種 の親 系 統 の育 成 を目 指 し,根 こぶ病 抵 抗 性 はもう一 方 の親 系 から付 与 することとした. 材 料 および方 法 F 2 個 体 の特 性 調 査 と選 抜 ハクサイのF 1 品 種 ,‘幸 村 ’ (清 水 種 苗 (株 ))のF 2 種 子 を採 種 し,このF 2 の 188 個 体 を,前 節 と同 様 に圃 場 で栽 培 して特 性 を調 査 して,これらの中 から優 良 個 体 を選 抜 した.選 抜 個 体 を温 存 し,栽 培 を継 続 して開 花 させ小 胞 子 培 養 に供 するため,球 内 の特 性 調 査 は,圃 場 で各 株 の結 球 の成 長 点 を残 して上 部 2/3 を 横 に切 りと取 った後 ,縦 に半 分 に切 って球 内 の状 態 を調 べた.また,切 り取 った 下 部 の状 態 から尻 張 り(底 部 の張 り具 合 )や,結 球 の締 まり状 態 を調 査 した.選 抜 個 体 を堀 上 げ,温 室 にて第 2章 第 1節 共 通 の方 法 と同 様 の培 養 土 を 3 分 の 1 程 度 入 れた 1/5000aワグネルポットへ移 植 した. F 2 選 抜 個 体 からの倍 加 半 数 体 作 出 抽 苔 開 花 した材 料 植 物 から花 序 を採 取 し,第 2章 第 1 節 ,共 通 の方 法 と同 様 の方 法 で小 胞 子 培 養 した.小 胞 子 培 養 により得 られた不 定 胚 からの再 分 化 ,発 - 76 - 根 ,順 化 および倍 数 性 の確 認 は第 2章 第 4節 共 通 の方 法 にしたがって行 った.な お,順 化 終 了 後 に倍 数 性 を調 査 して自 然 倍 加 した二 倍 体 と確 認 した.また,一 部 の再 分 化 植 物 当 代 を直 接 圃 場 で栽 培 し,特 性 を調 査 した.半 数 体 の倍 加 処 理 と倍 加 半 数 体 の開 花 誘 導 蕾 および蕾 受 粉 は,前 項 と同 様 にして倍 加 半 数 体 系 統 の採 種 を行 った. 倍 加 半 数 体 系 統 の圃 場 栽 培 および特 性 調 査 得 られた倍 加 半 数 体 系 統 は,栃 木 県 小 山 市 大 字 出 井 1900 番 地 の圃 場 で前 節 と同 様 の方 法 で栽 培 し,特 性 を調 査 した. 結果 1995 年 6 月 に‘幸 村 ’の自 殖 によるF 2 種 子 を得 た.‘幸 村 ’F 2 世 代 188 個 体 を 同 年 8 月 2 8 日 に 播 種 , 9 月 2 0 日 に 圃 場 に 定 植 , 栽 培 し て , 11 月 1 ~ 1 4 日 に球 内 色 の黄 色 が鮮 やかな 33 個 体 を選 抜 した.温 室 で栽 培 中 に枯 死 するもの もあり,最 終 的 にべと病 に抵 抗 性 で抽 苔 の遅 い晩 生 2 個 体 (YM-57 とYM-121) を選 抜 した.これら 2 個 体 は,ともに 1996 年 3 月 15 日 に抽 苔 が認 められた. 選 抜 したF 2 個 体 を材 料 植 物 とした小 胞 子 培 養 は,1996 年 4 月 17 日 に ‘YM-121’について,4 月 22 日 にYM-57 について実 施 し, ‘YM-121’からは 84,‘YM-57’から 400 の不 定 胚 を得 た.7 月 末 日 までに順 化 終 了 した再 分 化 個 体 については倍 数 性 を調 査 し,自 然 倍 加 した二 倍 体 を 4 号 鉢 に移 植 して栽 培 を 続 け,8 月 23 日 および 9 月 4 日 に,それぞれ‘YM-57’の倍 加 半 数 体 70 個 体 と ‘YM-121’由 来 13 個 体 の合 計 83 個 体 のF 2 不 定 胚 由 来 の再 分 化 植 物 を直 接 圃 場 に 定 植 し た . 同 年 11 月 ~ 1 2 月 に 球 内 色 の 黄 色 が 濃 く 広 が り が 特 に 良 い ‘YM-57’の 18 個 体 を選 抜 し,温 室 に移 して栽 培 ,採 種 を行 って選 抜 倍 加 半 数 体 F 2 DHの自 殖 種 子 を得 た.平 行 して,生 育 の遅 れから再 分 化 植 物 の直 接 定 植 に間 に合 わなかった未 選 抜 倍 加 半 数 体 F 2 DHの自 殖 種 子 の採 種 を行 うと, - 77 - ‘YM-57’から 21 個 体 と‘YM-121’から 3 個 体 の合 計 24 個 体 を得 た.これら一 回 予 備 選 抜 の倍 加 半 数 体 系 統 (18)および未 選 抜 の倍 加 半 数 体 系 統 (24)の合 計 42 系 統 は,1997 年 8 月 ~12 月 に圃 場 で栽 培 し,特 性 を調 査 して,2 回 目 の 選 抜 を行 い最 終 的 に 10 系 統 にした.目 標 形 質 の球 内 色 黄 色 の濃 さと広 がりは 調 査 したすべての倍 加 半 数 体 系 統 で認 められた. 最 終 選 抜 した 10 系 統 のうち,6 系 統 は共 同 研 究 先 の柿 沼 育 種 センターにおい て品 種 育 成 母 本 として利 用 された.これら 6 系 統 中 の「15-39」と命 名 した系 統 を, さらに系 統 選 抜 した育 種 母 本 の中 からF 1 品 種 の優 良 育 種 母 本 を見 いだした.こ れを片 親 とし,通 常 の系 統 選 抜 により育 成 された根 こぶ病 抵 抗 性 をもつ系 統 を交 配 母 本 とする,根 こぶ病 抵 抗 性 のF 1 品 種 ‘ひろ黄 ’が 2001 年 に柿 沼 育 種 センタ ーより販 売 された.品 種 育 成 に利 用 された「15-39」は,1996 年 に再 分 化 植 物 を 直 接 圃 場 栽 培 し,特 性 調 査 を行 って選 抜 した倍 加 半 数 体 個 体 のひとつである. 第 3項 考察 葯 培 養 を用 いた半 数 体 育 種 法 を適 用 することで培 養 開 始 から約 5 年 で品 種 を 育 成 できた(Figure 3-8).品 種 育 成 期 間 のうち,葯 培 養 による固 定 に要 した期 間 は 2 年 であった.交 雑 育 種 によるF 1 品 種 育 成 の場 合 には,母 本 の固 定 に 6~ 7 年 ,さらに組 合 せ検 定 ,地 域 適 応 性 試 験 を含 めて 10 年 以 上 を要 するので,半 数 体 育 種 を用 いることで育 種 年 限 を半 減 できた.最 終 的 に,2 つの品 種 の雄 親 と して用 いられた倍 加 半 数 体 系 統 は同 一 の系 統 であり,F 1 品 種 から作 出 した倍 加 半 数 体 740 系 統 から 1 系 統 のみが利 用 されたことになり,その選 抜 効 率 は低 いと 考 えられた.通 常 ,ハクサイのF 1 品 種 は自 家 不 和 合 性 を利 用 して採 種 されるが, 選 抜 した系 統 は自 家 不 和 合 性 の程 度 が低 く,自 殖 種 子 が混 入 する危 険 性 があ り,採 種 時 には雌 親 系 統 としては利 用 できないので,採 種 効 率 が半 減 する問 題 点 もあった. - 78 - F 2 選 抜 個 体 を材 料 とする,小 胞 子 培 養 を用 いた半 数 体 育 種 を実 施 し,培 養 開 始 から約 5 年 で品 種 の育 成 を行 うことができた(Figure 3-8).半 数 体 育 種 にお ける培 養 材 料 として,選 抜 を加 えたF 2 個 体 の利 用 によって比 較 的 少 数 の倍 加 半 数 体 から,効 率 的 に目 的 形 質 をもつ個 体 を選 抜 することができた.F 2 世 代 で選 抜 した球 内 色 が鮮 やかな黄 色 の形 質 は,得 られた倍 加 半 数 体 の全 てで観 察 され たことから,選 抜 の効 果 が示 唆 された.培 養 当 代 の植 物 を直 接 圃 場 で栽 培 した 場 合 でも,球 内 色 や,尻 張 りのような特 定 の形 質 においては,十 分 に選 抜 可 能 で あることがわかった.しかし,圃 場 で選 抜 後 に温 室 に移 して採 種 を行 う場 合 には, 病 気 で枯 死 する個 体 も生 じることから,1 個 体 しかない当 代 植 物 を,種 子 を得 る 前 に直 接 選 抜 することの危 険 性 も示 唆 された.半 数 体 育 種 を行 う場 合 ,F 1 品 種 を直 接 培 養 材 料 にして育 種 を進 めるよりも,F 2 や,更 にその後 代 で選 抜 した個 体 を出 発 材 料 とする方 が,目 的 形 質 をもった倍 加 半 数 体 を効 率 的 に獲 得 する点 で は有 利 と考 えられた. 一 方 ,培 養 により得 られた倍 加 半 数 体 には遺 伝 的 変 異 が生 じる場 合 があること が知 られており (Kumashiro and Oinuma 1985, Murigneux et al. 1993, 山 岸 1998 ),後 代 を慎 重 に検 定 する必 要 性 も指 摘 されている.今 回 選 抜 した ‘15-39’は,少 なくとも 1997 年 の圃 場 栽 培 での特 性 調 査 時 には,外 観 での形 質 の変 異 は観 察 されず良 く揃 っていたが,その後 の育 種 時 に後 代 での系 統 選 抜 を 要 したのは,培 養 変 異 による特 定 形 質 に関 する僅 かな系 統 内 変 異 が生 じたため と考 えられる.育 種 における固 定 操 作 の年 限 短 縮 効 果 と,倍 加 半 数 体 の作 出 効 率 を考 慮 して培 養 の材 料 を選 択 することで,より効 率 的 な半 数 体 育 種 が可 能 に なると考 えられる. - 79 - Haploid production from the F 1 plants Month 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 Year 1991 Microspore culture of F1 plants 1992 Microspore culture of F1 plants Seed production 1993 ○ △ Sowing Transplantation Selection and of DH seeds transplantation Seed production 1994 ○ △ Sowing Transplantation Combining ability test Harvest of F1 seeds Test cross of F1 of F1 seeds 1995 Local adaptability Test 1996 Distribution and selection Haploid production from the F 2 plants Month 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 Year 1995 ○ Sowing of F1 seeds and vernalization Flowering and selfing in green house ○ △ Harvest Sowing Transplantation Selection and of F2 seeds transplantation of F 2 seeds in green house 1996 △ Direct transplantation of DH plants Microspore culture of selected plants 1997 ○ △ Sowing Transplantation Selection of of DH seeds DHs Flowering and selfing of DH plants 1998 Selection and transplantation Use of DHs for breeding Line selection and test cross of F1 2001 Distribution Figure 3-8. Comparison of the time courses of doubled haploid production and selection between the F 1 plants and F 2 plants. - 80 - 第 4章 総 合 考 察 本 章 では,本 研 究 を通 して明 らかになった点 を総 合 的 に考 察 し,ハクサイの半 数 体 育 種 の現 状 と問 題 点 を明 らかにして本 研 究 の育 種 学 的 成 果 について言 及 し今 後 の展 望 を論 じる. 倍 加 半 数 体 は全 体 ゲノムについて同 型 接 合 となるので,優 劣 性 遺 伝 子 はともに ホモ化 し表 現 型 として現 れ形 質 分 離 が見 られないので,育 種 上 の利 用 価 値 は極 めて高 い.葯 培 養 によりチョウセンアサガオの半 数 体 作 出 が可 能 であることが Guha and Maheshwari (1964, 1966) により見 出 された.その後 ,現 在 までの 約 半 世 紀 の間 に,半 数 体 作 出 技 術 は多 数 の作 物 において開 発 され,タバコ,ナ タネ,イネ,コムギ等 で実 用 化 されて倍 加 半 数 体 を利 用 した新 品 種 の育 成 も行 わ れている. アブラナ属 (Brassica)植 物 では,Kameya と Hinata (1970)は,最 初 の半 数 体 作 出 の報 告 をした.その後 ,数 多 くの研 究 者 らによって半 数 体 作 出 に関 する研 究 と報 告 がなされ,その培 養 技 術 は著 しい発 展 を遂 げてきた.アブラナ属 (Brassica)植 物 における葯 ・小 胞 子 培 養 の大 きな特 徴 は,培 養 初 期 の高 温 処 理 が有 効 であること,高 濃 度 のショ糖 ,特 定 アミノ酸 として L-グルタミンや L-セリン の培 地 への添 加 が有 効 であることがあげられる.また,高 温 処 理 によって,小 胞 子 が成 熟 花 粉 への発 達 から逸 脱 し,不 定 胚 形 成 へ向 かう引 き金 となることが知 られ て い る ( H a m a o k a e t a l . 1 9 9 1 b ; Te l m e r e t a l . 1 9 9 3 ; C u s t e r e t a l . 1 9 9 4 ) . また,高 濃 度 のショ糖 は炭 素 源 として作 用 するだけではなく,高 浸 透 圧 剤 としても 作 用 していることや L-グルタミンと L-セリンは不 定 胚 の生 育 過 程 には必 須 であるこ とが知 られている(Dunwell and Thuring 1985, 浜 岡 ら 1991c).このように, 葯 ・小 胞 子 培 養 における不 定 胚 の発 生 機 構 が,徐 々に明 らかにされつつあった. 一 方 ,このような基 本 的 培 地 組 成 に加 えて,不 定 胚 形 成 率 を向 上 させるための - 81 - さらなる培 地 への添 加 物 の検 討 ,報 告 されてきた.培 地 へのコルヒチンの添 加 (Zaki and Dickinson 1991)や硝 酸 銀 の添 加 (Dias 1999)がその一 例 である. このような研 究 は主 に,B. napus と B. oleracea を対 象 として行 われ,ハクサイで は葯 ・小 胞 子 培 養 に関 する報 告 は少 なかった.しかし,倍 加 半 数 体 の利 用 価 値 が高 いことは広 く認 識 されており,日 本 でも各 種 の研 究 機 関 や種 苗 会 社 で葯 ・小 胞 子 培 養 を用 いたハクサイの育 種 が行 われてきた(湊 1989).半 数 体 育 種 を実 用 化 する際 の最 大 の問 題 は,倍 加 半 数 体 の作 出 効 率 が低 いということである.国 内 で栽 培 されているハクサイ品 種 の葯 ・小 胞 子 培 養 における不 定 胚 形 成 率 が一 般 に低 くく,品 種 ・系 統 間 差 異 が存 在 し,不 定 胚 形 成 が全 く認 められない品 種 が 多 数 存 在 することが報 告 されている(Kuginuki et al. 1997).この品 種 間 差 異 を 克 服 できれば半 数 体 育 種 の実 用 性 が高 まると考 えられる. 本 研 究 において,培 養 前 の蕾 もしくは花 序 の低 温 前 処 理 が不 定 胚 形 成 を促 進 し,その効 果 は花 序 全 体 に対 するより蕾 処 理 の方 が高 いことが明 らかになった.ま た,蕾 の低 温 処 理 は材 料 蕾 の保 存 にも利 用 できるので,育 種 作 業 効 率 を高 め, さらに実 用 性 を上 げるものと考 えられた(第 2章 第 1 節 ).さらに,蕾 の低 温 処 理 は 小 胞 子 から不 定 胚 形 成 に向 かうための形 態 形 成 トリガーの一 つになっている可 能 性 が示 された(第 2章 第 2節 ).一 方 ,選 抜 した 1 個 体 を材 料 植 物 にして倍 加 半 数 体 の作 出 を想 定 した場 合 ,1 個 体 から 1000 蕾 程 度 が培 養 材 料 として利 用 可 能 であること,材 料 植 物 の齢 については,主 枝 の開 花 始 めから 2 ヶ月 以 上 経 過 する と,不 定 胚 形 成 率 が低 下 することを見 出 した.実 際 に半 数 体 育 種 を行 う際 は,こ れらのことを考 慮 して半 数 体 育 種 の実 行 計 画 を策 定 するのが望 ましい(第 2章 第 3 節 ).また,葯 培 養 と小 胞 子 培 養 を比 較 した場 合 ,小 胞 子 培 養 の方 が作 業 性 の点 で優 れる上 に,倍 加 半 数 体 の作 出 過 程 で生 じる自 然 倍 加 の発 生 頻 度 も高 く,人 為 的 な倍 加 処 理 を省 略 できること,小 胞 子 培 養 においても品 種 ・系 統 により 自 然 倍 加 の頻 度 が異 なることを明 らかにした(第 2章 第 4節 ).さらに,倍 加 半 数 体 - 82 - を実 際 の育 種 に利 用 する際 には,開 花 期 の異 なる親 系 統 間 との交 配 を可 能 にす るための技 術 として,花 粉 の保 存 方 法 を確 立 した(第 3章 第 1節 ). 最 後 に,これらの技 術 を総 合 し,半 数 体 育 種 法 によるハクサイ新 品 種 の育 種 年 限 の短 縮 法 の確 立 を試 みた.(第 3章 第 2節 ).ここでは,被 害 が甚 大 で生 産 上 の大 きな問 題 となっている根 こぶ病 に対 する抵 抗 性 と,消 費 ・加 工 の観 点 では球 内 色 の黄 色 が濃 く,広 がりを見 せる黄 芯 系 形 質 に着 目 した.葯 培 養 を用 いたF 1 植 物 からの倍 加 半 数 体 作 出 と,小 胞 子 培 養 を用 いたF 2 選 抜 個 体 からの倍 加 半 数 体 の作 出 を実 践 し,それぞれから優 良 倍 加 半 数 体 系 統 を選 抜 した.また,再 分 化 植 物 当 代 を圃 場 で栽 培 した場 合 でも球 内 色 や一 部 の結 球 形 態 については 十 分 に選 抜 が可 能 であることを見 出 した.半 数 体 育 種 を行 う場 合 には,F 1 品 種 を培 養 材 料 にして育 種 を進 めるよりも,F 2 以 降 の分 離 後 代 で 1 回 弱 く選 抜 した 個 体 を出 発 材 料 とする方 が,目 的 形 質 をもつ倍 加 半 数 体 の効 率 的 な獲 得 がで きると考 えられた.実 際 には,育 種 の目 的 と状 況 に合 わせ,固 定 操 作 の年 限 短 縮 効 果 と倍 加 半 数 体 の作 出 効 率 を考 慮 して培 養 材 料 を選 択 することで効 率 的 な 半 数 体 育 種 が可 能 になると考 えられる.さらには,本 研 究 で明 らかになった小 胞 子 培 養 条 件 下 では,国 内 において販 売 ・栽 培 されているF 1 品 種 の中 にも,非 常 に高 い不 定 胚 形 成 能 率 を示 す,‘春 楽 ’や‘北 洋 ’といった品 種 が存 在 することを 見 出 した(第 2章 第 4節 ).また,不 定 胚 形 成 が非 常 に低 い品 種 は存 在 するものの, 不 定 胚 形 成 が全 く認 められない品 種 はなかった. このような本 研 究 の結 果 は,不 定 胚 形 成 効 率 の低 さと品 種 間 差 が存 在 するとい う問 題 に対 して,材 料 蕾 の低 温 前 処 理 は品 種 ・系 統 にかかわらず,不 定 胚 形 成 率 を向 上 させると考 えられる.これまでに報 告 されている不 定 胚 形 成 率 向 上 のた めの改 良 方 法 と組 み合 わせて培 養 を行 えば,不 定 胚 形 成 のより一 層 の向 上 を期 待 できる.低 温 前 処 理 は実 際 に半 数 体 育 種 を実 践 する中 では,材 料 の保 存 ,す なわち培 養 作 業 の平 準 化 と材 料 蕾 の損 失 の低 減 効 果 により効 率 性 を高 めること - 83 - ができると考 えられる.花 粉 保 存 技 術 を利 用 して,開 花 期 の異 なる倍 加 半 数 体 間 や,系 統 選 抜 個 体 との間 での試 験 交 配 が可 能 になることにより,育 種 年 限 を著 し く短 縮 できると考 えられた.そして,育 種 計 画 に基 づいて倍 加 半 数 体 作 出 技 術 を 実 践 し,短 期 間 で球 内 色 黄 色 の根 こぶ病 抵 抗 性 の品 種 を育 成 ・上 市 できたので, 当 研 究 によってハクサイ半 数 体 育 種 を改 善 ・効 率 化 できることが実 証 できたと考 えられる. 本 研 究 で実 践 ・確 立 してきたハクサイの小 胞 子 培 養 による倍 加 半 数 体 植 物 作 出 の過 程 およびその概 要 は,以 下 に示 す通 りである. (1)小 胞 子 培 養 による不 定 胚 形 成 : 最 も重 要 なステップである不 定 胚 の獲 得 は, 葯 培 養 よりも作 業 効 率 の高 い小 胞 子 培 養 による.この際 ,蕾 を液 体 培 地 に置 床 し 4℃で低 温 前 処 理 することで不 定 胚 形 成 は促 進 される.前 処 理 の期 間 は 3 週 間 程 度 まで有 効 なので,材 料 蕾 の保 存 にも利 用 可 能 である(第 2章 第 1 節 ). (2)不 定 胚 からの再 分 化 : 魚 雷 型 胚 および子 葉 型 胚 にまでに生 育 した不 定 胚 は植 物 生 長 調 節 剤 を含 む培 地 へ移 植 して再 分 化 を促 す.この際 ,培 地 の固 化 剤 が 1.0%ゲランガムから 0.8%寒 天 へと異 なる 2 種 類 の培 地 へ継 代 移 植 する,2 段 階 法 を用 いる(第 2章 第 4節 ).この方 法 による再 分 化 率 は概 ね 70%である. (3)発 根 : 再 分 化 したシュート(幼 苗 )は植 物 調 整 物 質 を含 まない B5 培 地 に移 植 して発 根 を促 す(第 2章 )ことで,90%以 上 が発 根 して培 養 幼 植 物 体 となる.再 分 化 培 地 において,不 定 胚 からの再 分 化 と同 時 に発 根 する場 合 もあるが,順 化 の際 に,根 の基 部 と植 物 体 上 部 を切 断 してしまう場 合 があるので,再 分 化 したシ ュート(幼 苗 )部 分 を切 り取 って,発 根 培 地 へ移 植 し,発 根 を誘 導 するのが確 実 で ある. (4)順 化 : 発 根 した幼 植 物 体 は,培 地 の寒 天 をよく洗 い除 いた後 に培 養 土 を入 れたポットに移 植 し,相 対 湿 度 90%以 上 に制 御 した温 室 内 に 2 週 間 置 いて順 化 処 理 (第 2章 第 4節 )を行 うことで 90%以 上 が順 化 された植 物 体 が得 られる. - 84 - (5)倍 数 性 の確 認 と倍 加 処 理 : 順 化 終 了 後 の植 物 体 は,半 数 体 と自 然 倍 加 し た二 倍 体 や四 倍 体 が混 在 するので,葉 表 皮 の孔 辺 細 胞 の葉 緑 体 数 を調 査 して 倍 数 性 を確 認 し,半 数 体 はコルヒチン処 理 により倍 加 する.自 然 倍 加 の頻 度 は, 品 種 ・系 統 により異 なるが,概 ね 50%以 上 (第 2章 )である.コルヒチンによる倍 加 率 も 50%程 度 であり,自 然 倍 加 の発 生 頻 度 は倍 加 半 数 体 の作 出 効 率 に大 きく 影 響 する. (6)採 種 : 自 然 倍 加 および倍 加 処 理 した二 倍 体 は,低 温 処 理 により開 花 を誘 導 し,自 殖 (蕾 受 粉 )によって採 種 を行 う(第 3章 第 1 節 ).しかし,何 らかの理 由 で自 殖 種 子 が得 られない場 合 もあり,採 種 の成 功 率 は 90%程 度 である.倍 加 半 数 体 間 や系 統 育 種 により選 抜 された個 体 との間 で試 験 交 配 を行 う場 合 には,花 粉 保 存 技 術 (第 3章 第 1節 ))を利 用 する. 以 上 のような段 階 を経 てようやく倍 加 半 数 体 を獲 得 することができる.仮 に自 然 倍 加 率 を 50%とした場 合 でも,不 定 胚 からの倍 加 半 数 体 獲 得 効 率 は 40%程 度 になる.従 って,葯 ・小 胞 子 培 養 による不 定 胚 形 成 率 の向 上 が最 も重 要 である が,倍 加 半 数 体 作 出 の各 ステップの効 率 を高 めることが半 数 体 育 種 の成 否 を握 ることになる. 本 研 究 で確 立 した上 述 のハクサイの半 数 体 育 種 技 術 は実 用 レベルに達 してい ることが,新 品 種 育 成 によって実 証 された.しかし,この技 術 を,広 くハクサイの育 種 に利 用 する上 では小 胞 子 培 養 における不 定 胚 形 成 率 の品 種 ・系 統 間 差 異 が 大 きな問 題 となる.多 くの品 種 で多 数 の倍 加 半 数 体 を獲 得 するためには,不 定 胚 形 成 率 をさらに向 上 させる工 夫 が望 まれる.その一 つの試 みとして,ハクサイの 南 方 型 の捲 心 群 の中 から見 出 されている不 定 胚 形 成 能 力 の高 い系 統 (Sato et al. 1989a)から,日 本 型 のハクサイに高 い不 定 胚 形 成 能 力 を導 入 する試 みがな され(kuginuki et al. 1997),‘ハクサイ中 間 母 本 農 7 号 ’が育 成 されている(釘 貫 ら 2001).この高 不 定 胚 形 成 能 母 本 を利 用 する場 合 には,品 種 育 成 の前 過 - 85 - 程 でこの母 本 との交 配 が必 要 となるので,育 種 年 限 の延 長 になる.しかし,今 後 ハクサイにおける半 数 体 育 種 が広 く普 及 し,日 本 型 ハクサイの中 にも存 在 している 不 定 胚 形 成 能 力 の高 い系 統 が選 抜 されて,その形 質 をエリート品 種 に集 積 (遺 伝 子 のピラミダイズ)していくことが可 能 になれば,倍 加 半 数 体 作 出 効 率 の向 上 が さらに期 待 できる. 一 方 ,培 養 条 件 や培 地 組 成 に関 する新 たな報 告 もある.アブラナ属 (Brassica)植 物 のナタネの小 胞 子 培 養 における材 料 蕾 の最 適 な発 達 段 階 は一 細 胞 期 後 期 から二 細 胞 期 前 期 とされてきたが,二 細 胞 期 後 期 の小 胞 子 の培 養 においても通 常 よりも高 い 41℃,1~2 時 間 の高 温 処 理 によって,不 定 胚 が形 成 が促 進 されることが報 告 されている(Simmonds and Keller 1999).さらにナタネ では,培 地 中 の高 濃 度 のショ糖 は,高 濃 度 (25%)のポリエチレングリコール(PEG) に置 き換 えられることが可 能 であると報 告 されている(Ilic-Grubor et al. 1998). PEG 培 地 で培 養 して得 られた不 定 胚 は,ショ糖 培 地 で形 成 した不 定 胚 よりも in vivo で発 達 中 の受 精 胚 に形 態 が酷 似 しており,その不 定 胚 (PEG)からの再 分 化 率 も高 いことが報 告 されている(Ferrie and Keller 2007).このような不 定 胚 形 成 に影 響 する培 養 条 件 と培 地 組 成 の発 見 や培 養 技 術 の進 展 は,今 後 の半 数 体 育 種 の効 率 化 と普 及 に大 きく貢 献 すると期 待 される. また,選 抜 した倍 加 半 数 体 系 統 の遺 伝 子 型 の固 定 度 が不 完 全 であった(第 3 章 第 2節 )理 由 としては,培 養 過 程 で何 らかのソマクローン変 異 が生 じたことによる のではないかと考 えられる.これは,従 前 より指 摘 されている,遺 伝 的 に純 系 である はずの倍 加 半 数 体 の中 で変 異 が生 じる場 合 があるということである.これは,培 養 変 異 が主 因 と考 えられる.変 異 を回 避 したり低 減 したりするためには,培 養 期 間 を できるだけ短 縮 する改 良 が考 えられるが,現 段 階 では決 定 的 な解 決 策 はないので, 原 因 の究 明 と解 決 は残 された課 題 である. 根 こぶ病 抵 抗 性 に関 しては,半 数 体 育 種 により短 期 間 で抵 抗 性 品 種 が育 成 さ - 86 - れても,抵 抗 性 品 種 の罹 病 化 という問 題 が残 されている.根 こぶ病 抵 抗 性 遺 伝 子 は 4 つの遺 伝 子 座 (Crr1, Crr2, Crr3 および CRb)が同 定 ,マッピングされて おり,これら CR 遺 伝 子 に連 鎖 した DNA マーカーも単 離 されてきている(Hirai 2006).半 数 体 育 種 法 により,これら有 用 遺 伝 子 のピラミダイズが行 われ,罹 病 化 に対 応 した抵 抗 性 マルチラインの新 品 種 の育 成 が期 待 される.しかし,根 こぶ病 のレース分 化 は今 後 も続 くものと考 えられることから,ダイコンの根 こぶ病 抵 抗 性 の ような,これまでとは異 なるメカニズムによる抵 抗 性 の発 見 と,その育 種 的 利 用 が期 待 される. ハクサイ育 種 における倍 加 半 数 体 の利 用 は,育 種 目 標 に対 して迅 速 な品 種 育 成 を可 能 とする.病 原 菌 のレース分 化 への迅 速 な対 応 のみならず,ハクサイ生 産 の低 コスト化 に貢 献 するセル形 成 苗 向 けや晩 抽 性 品 種 ,さらには消 費 者 の嗜 好 の急 速 な変 化 といった多 くの育 種 目 標 に対 して,タイムリーな品 種 育 成 が期 待 で きる. - 87 - 摘要 ハクサイの半 数 体 育 種 法 の効 率 化 を目 的 として,葯 および小 胞 子 培 養 における 倍 加 半 数 体 作 出 の効 率 向 上 や,育 種 を行 う上 で必 要 となる成 熟 花 粉 の保 存 技 術 について検 討 を行 った.さらに,半 数 体 育 種 法 の実 用 性 を検 証 するため,実 際 に倍 加 半 数 体 の作 出 と品 種 の育 成 を行 った. 第 1 章 ハクサイは,1875 年 に日 本 に本 格 導 入 されて以 来 ,我 が国 の気 候 風 土 に適 合 するように品 種 改 良 され,現 在 では最 も重 要 な野 菜 のひとつになっている.しかし 生 産 現 場 では,育 成 された耐 病 性 品 種 を犯 す新 しいレースの根 こぶ病 菌 によっ て壊 滅 的 な被 害 を受 けることがある.また,消 費 者 の嗜 好 は急 速 に変 化 しており, 嗜 好 性 の高 い品 種 の育 成 も需 要 に追 いつかないのが現 状 である.したがって,防 除 が困 難 な土 壌 伝 染 性 病 害 である根 こぶ病 に対 する抵 抗 性 とともに,嗜 好 性 の 高 い品 種 の早 期 育 成 技 術 の開 発 が求 められている. ハクサイの品 種 育 成 は,固 定 種 に始 まったが,雑 種 強 勢 で斉 一 性 が高 く,育 成 者 権 の保 護 が容 易 な一 代 雑 種 (F 1 )品 種 が主 流 となり,現 在 では市 販 品 種 のほ とんどがF 1 品 種 になっている.通 常 の交 雑 育 種 によるF 1 品 種 の育 成 では,10 年 以 上 の長 い年 月 を要 し,そのうち 7~8 年 (7~8 世 代 )はF 1 品 種 の両 親 となる純 系 の育 成 (固 定 )に費 やされる.これに対 して半 数 体 育 種 法 では,純 系 の育 成 が 1 世 代 で完 了 するので,育 種 年 限 の大 幅 な短 縮 が可 能 になる. アブラナ属 (Brassica)植 物 では,ナタネやブロッコリーで半 数 体 育 種 が行 われ ている.ハクサイでも葯 培 養 を用 いた半 数 体 育 種 法 による品 種 育 成 が報 告 された 経 緯 はあるが,不 定 胚 形 成 率 が低 く,品 種 や系 統 によっては不 定 胚 が得 られな いので,主 たる育 種 法 にはなっていない.そのため,ハクサイの半 数 体 育 種 技 術 を - 88 - 実 用 化 できる水 準 に改 良 し,実 際 に品 種 を育 成 することを目 指 した. 第 2章 ハクサイの小 胞 子 培 養 における,不 定 胚 形 成 の促 進 法 を検 討 した.不 定 胚 形 成 率 は,培 養 前 の花 序 あるいは蕾 を 4℃の低 温 下 で 3~10 日 間 処 理 すると向 上 し,その効 果 は蕾 処 理 の方 が花 序 処 理 より高 かった.また,蕾 の低 温 前 処 理 は, 7~20 日 間 の処 理 でも不 定 胚 形 成 率 の向 上 効 果 が認 められた.低 温 前 処 理 が 不 定 胚 形 成 の向 上 効 果 をもたらすメカニズムを解 明 するため,蕾 の低 温 前 処 理 中 における小 胞 子 の発 達 を経 時 的 に観 察 した.その結 果 ,処 理 前 の小 胞 子 は 一 細 胞 期 後 期 であったが,徐 々に,不 均 等 サイズ二 分 裂 の結 果 生 じた大 きさの 異 なる生 殖 細 胞 と栄 養 細 胞 からなる二 細 胞 期 の小 胞 子 が増 加 し,低 温 処 理 期 間 中 にゆっくりと成 熟 花 粉 に発 達 すると推 定 された.その中 で,わずかではあるが, 不 定 胚 形 成 に進 行 すると推 定 される,均 等 な大 きさの 2 つの核 からなる二 細 胞 期 の小 胞 子 も観 察 された.すなわち,低 温 処 理 によりごく一 部 の小 胞 子 が不 定 胚 形 成 に向 かうことが,不 定 胚 形 成 率 が向 上 する原 因 のひとつと考 えられた. 次 に,圃 場 で特 性 検 定 した後 に選 抜 した 1 個 体 から,できるだけ多 くの倍 加 半 数 体 を獲 得 することを想 定 し,1 個 体 から獲 得 できる不 定 胚 数 の推 定 を試 みた. 品 種 ‘ W 111 6 ’ の 1 個 体 を 温 室 で 栽 培 し , 開 花 の 開 始 か ら 採 集 可 能 な 材 料 蕾 を すべて用 いて小 胞 子 培 養 を行 った.その結 果 ,開 花 始 めから 143 日 間 に 27 回 に わたって花 序 を採 取 できた.それらの一 部 の培 養 によって得 られた不 定 胚 数 から, この 1 個 体 から 970 個 の不 定 胚 を獲 得 できると推 定 された.また不 定 胚 発 生 率 は, 開 花 始 めから 2 ヶ月 間 は比 較 的 高 く,それを越 えると低 くなることが示 唆 された. 半 数 体 は,人 為 的 に倍 加 した後 に育 種 に利 用 するが,倍 加 処 理 には労 力 と時 間 がかかるうえ,その成 功 率 は 50%程 度 と低 い.しかし,葯 ・小 胞 子 培 養 により得 られる再 分 化 植 物 体 には半 数 体 の他 に,自 然 倍 加 した二 倍 体 や四 倍 体 が含 ま - 89 - れる.これらのうち二 倍 体 は,倍 加 処 理 なしで育 種 に利 用 できるので,その出 現 率 が高 いほど有 利 である.そこで,培 養 方 法 の違 いが再 分 化 植 物 の自 然 倍 加 頻 度 に与 える影 響 を調 査 した.倍 数 性 は,孔 辺 細 胞 あたりの葉 緑 体 数 を指 標 とした. 品 種 ‘ W 111 6 ’ と ‘ 信 玄 ’ を 用 い て 葯 培 養 と 小 胞 子 培 養 を 比 べ る と , 蕾 あ た り の 再 分 化 植 物 体 の作 出 効 率 は小 胞 子 培 養 のほうが葯 培 養 より高 く,自 然 倍 加 した 二 倍 体 の出 現 率 は,小 胞 子 培 養 由 来 では 60%以 上 であったのに対 し,葯 培 養 由 来 では 20~30%であった.さらに,異 なるハクサイ 12 品 種 ・系 統 の小 胞 子 培 養 を行 い,再 分 化 植 物 体 の作 出 と倍 数 性 を調 査 した結 果 ,二 倍 体 の出 現 頻 度 は 38~85%であった.これらの結 果 から,自 然 倍 加 の発 生 頻 度 は培 養 条 件 と材 料 植 物 の遺 伝 子 型 双 方 の影 響 を受 けていることが示 唆 された.また,自 然 倍 加 の 発 生 時 期 を推 定 するため,小 胞 子 培 養 によって得 られた不 定 胚 の倍 数 性 をフロ ーサイトメーターにより調 査 した結 果 ,70%が二 倍 性 で 30%が半 数 性 であった.倍 数 性 キメラは存 在 しなかった.このことから,染 色 体 の自 然 倍 加 は不 定 胚 形 成 の 初 期 段 階 に生 じていることが示 唆 された. 第 3章 倍 加 半 数 体 を用 いた品 種 育 成 では,再 分 化 植 物 の生 育 は斉 一 ではなく開 花 期 も個 体 ごとに異 なるので,これらの個 体 間 ,あるいは従 来 育 種 により系 統 選 抜 を 行 った個 体 との間 で開 花 期 が一 致 せず,試 験 交 配 できないという問 題 が生 じる. しかし,花 粉 の保 存 技 術 があれば,育 種 や試 験 交 配 のF 1 種 子 の採 種 において 開 花 期 の異 なる系 統 間 の交 配 が可 能 になる.そこで,花 粉 の保 存 方 法 を検 討 し た.始 めに,保 存 した花 粉 の活 性 をin vitroでの 発 芽 能 によって評 価 することと して,in vitro での花 粉 発 芽 条 件 を検 討 した.その結 果 ,花 粉 発 芽 培 地 の最 適 pHは 8.0 であった.また,花 粉 に培 地 を滴 下 する前 に,相 対 湿 度 (RH)66%で 5 時 間 処 理 する湿 度 前 処 理 がin vitro花 粉 発 芽 の安 定 化 に有 効 であった.これら - 90 - を組 み合 わせてin vitro 花 粉 発 芽 による花 粉 活 性 評 価 法 を確 立 した.次 に,花 粉 の保 存 期 間 中 における湿 度 と温 度 について検 討 した結 果 ,発 芽 能 力 の維 持 には 15%RHが最 適 であり,15℃~20℃では 1 週 間 ,5℃では 6 週 間 ,-20℃では 1 年 程 度 花 粉 を保 存 できることがわかった.また,-20℃で 1 年 間 保 存 した花 粉 を 用 いた交 配 実 験 の結 果 ,新 鮮 花 粉 と同 様 の受 精 能 力 と自 家 不 和 合 性 能 力 を 維 持 していることがわかった. 次 に,半 数 体 育 種 の実 用 化 ,すなわち倍 加 半 数 体 を用 いた品 種 育 成 について 実 証 的 に検 討 した.根 こぶ病 抵 抗 性 を持 つ 7 つのF 1 品 種 あるいは試 作 系 統 の 葯 培 養 を行 い,合 計 740 の倍 加 半 数 体 の種 子 を得 た.これらについて,根 こぶ 病 抵 抗 性 検 定 と,圃 場 栽 培 での特 性 調 査 を行 い,根 こぶ病 抵 抗 性 で,かつ球 内 色 が濃 黄 色 で嗜 好 性 の高 い優 良 倍 加 半 数 体 系 統 を 5 系 統 選 抜 した.これら を従 来 の交 雑 育 種 法 により育 成 した 3 系 統 の母 本 と交 配 し,組 合 わせ能 力 検 定 試 験 によって目 的 の形 質 を持 つ 2 組 合 せのF 1 を選 抜 した.これらは,地 域 適 応 性 試 験 を経 てF 1 品 種 (‘JT103’と‘JT107’) として販 売 された.次 に半 数 体 育 種 法 の効 率 を高 めるために,F 2 選 抜 個 体 を材 料 とする小 胞 子 培 養 による倍 加 半 数 体 の作 出 を行 った.F 1 品 種 の自 殖 後 代 F 2 植 物 188 個 体 を圃 場 で栽 培 し て特 性 検 定 を行 い,優 良 個 体 を選 抜 した.その後 ,選 抜 個 体 を掘 り上 げて温 室 内 で栽 培 し,翌 年 4 月 に抽 苔 開 花 した個 体 から蕾 を採 取 して小 胞 子 培 養 による 倍 加 半 数 体 を作 出 した.一 部 の倍 加 半 数 体 は,順 化 終 了 後 の再 分 化 植 物 当 代 を直 接 圃 場 に定 植 して栽 培 し,検 定 ・選 抜 した.F 1 品 種 を材 料 にした場 合 より も少 ないF 2 倍 加 半 数 体 107 系 統 の中 から優 良 個 体 を 10 個 体 選 抜 した.それら の中 から系 統 選 抜 した中 に,優 良 育 種 母 本 を見 いだした.そして,この育 種 母 本 を利 用 して球 内 色 が鮮 やかな黄 色 で根 こぶ病 抵 抗 性 のF 1 品 種 ‘ひろ黄 ’が育 成 , 市 販 されるに到 った. - 91 - 第 4章 一 連 の倍 加 半 数 体 作 出 技 術 を用 いて実 際 に品 種 が育 成 され,上 市 されたこ とにより,本 研 究 によって確 立 したハクサイの半 数 体 育 種 技 術 は実 用 レベルに達 していることを実 証 できた.しかし,不 定 胚 形 成 における品 種 間 差 ,培 養 変 異 ,ま た根 こぶ病 抵 抗 性 品 種 の罹 病 化 といった問 題 は依 然 として残 されており,今 後 , 新 たな抵 抗 性 素 材 の探 索 と小 胞 子 培 養 技 術 の進 展 による育 種 への利 用 が期 待 される. - 92 - Studies on haploid breeding of Chinese cabbage ( Brassica rapa s ub s p . pekinensis ) Seiki Sato Summary To i m p r o v e t h e e f f i c i e n c y o f h a p l o i d b r e e d i n g i n C h i n e s e c a b b a g e (Brassica rapa subsp. pekinensis), conditions for embryo formation and for doubled haploid (DH) production by anther culture and microspore culture were investigated. Furthermore, conditions for pollen preservation to enable crossing between DHs and other breeding materials flowering at different times were assessed. Then, new F 1 cultivars were bred using the method described herein to demonstrate that this method is applicable for commercial breeding of Chinese cabbage. Chapter 1 C h i n e s e c a b b a g e h a s b e e n b r e d f o r a d a p t a t i o n t o J a p a n ’s c l i m a t e since it was first introduced to Japan in 1875. It remains an important vegetable in Japan. In Japan, clubroot disease is a damaging disease of Chinese cabbage. Although clubroot-resistant (CR) cultivars have been bred and distributed in Japan, most have now become susceptible in many cultivation areas because of race differentiation of pathogens. Therefore, clubroot resistance is an - 93 - indispensable trait to introduce into commercial breeding of Chinese c a b b a g e . M o r e o v e r, c o n s u m e r t a s t e s v a r y. T h e r e f o r e , t o c o p e w i t h many demands of growers for CR and various consumer tastes, it is necessary to develop new early breeding methods. Although purebred varieties were produced many years ago, almost all contemporary cultivars of Chinese cabbage are F 1 hybrids in Japan. The advantages of F 1 hybrids are heterosis and ease of protection of exclusive rights. In conventional crossbreeding, raising a new cultivar requires more than 10 years, including 7–8 years for fixation of parent lines. In contrast, using haploid breeding methods, the term can be shortened dramatically: the pure line is producible in one generation w i t h i n a s i n g l e y e a r. In Brassica crops, haploid breeding has been performed in rape seed and broccoli. In Chinese cabbage, although some reports in the literature describe haploid breeding, haploid breeding has not become a standard method of breeding because the efficiency of embryo formation is generally very low; for some cultivars and lines, embryos are never obtained. This study was undertaken to improve haploid breeding methods to a level that is practical in commercial breeding and to raise commercial varieties using the haploid breeding method improved t h r o u g h t h i s s t u d y. - 94 - Chapter 2 The effect inflorescence of on low-temperature the efficiency of pretreatment embryogenesis of in buds or microspore culture was examined. Incubation of the buds or inflorescence at 4°C for 3–10 days before the culture of microspores improved the efficiency of microspore embryogenesis. Pretreatment of flower buds was more effective pretreatment Microspores up in than to the that 20 buds of days were the inflorescence. promoted observed embryo using a Prolonged formation. microscope to determine the developmental stage before and after pretreatment. All microspores were at the late unicellular stage before pretreatment. The percentage of microspores at the late unicellular stage decreased during pretreatment, whereas the percentage of bicellular stage increased. A microspores few bicellular having two stage nuclei microspores of unequal with equal size size nuclei―the first step of microspore embryogenesis―were observed after the pretreatment, which suggested that the low-temperature treatment of buds or inflorescence would have a small portion of microspores in the buds divide e v e n l y, thereby improving the efficiency of microspore embryogenesis. The chance to obtain promising DHs with target traits would be higher if an individual selected on target traits in the field were used as the starting material of a microspore culture or anther culture. H o w e v e r, i n t h i s c a s e , m a t e r i a l p l a n t s w o u l d b e r e s t r i c t e d t o o n e plant selected. The more microspores that are cultured, the higher - 95 - the chance of obtaining promising DHs. Therefore, embryos were taken from one individual to the greatest extent possible to estimate how many DHs would be obtainable from an individual. Based on the results, it was estimated that about 970 embryos would be obtainable f r o m o n e m a t e r i a l p l a n t o f c v. ‘ W 111 6 ’ . A l t h o u g h t h e e f f i c i e n c y o f embryogenesis was high for 2 months from anthesis, it decreased t h e r e a f t e r. Haploids, diploids, and occasionally polyploids regenerate spontaneously in anther culture or microspore culture. The ploidy of Chinese cabbage plants regenerated from cultured anthers or m i c r o s p o r e s w a s e x a m i n e d . I n t w o c u l t i v a r s , ‘ W 111 6 ’ a n d ‘ S h i n g e n ’ , the percentages of diploids in plants derived from the microspore culture were greater than 60%, whereas those from the anther culture were 20–30%. In 12 other genotypes, the percentages of diploids in plants derived from the microspore culture were 38–85%. C o n s e q u e n t l y, t h e f r e q u e n c y o f s p o n t a n e o u s c h r o m o s o m e d o u b l i n g was shown to be affected by both the genetic background and culture conditions. The ploidy of torpedo-shaped stage embryos obtained using the microspore cultures was determined by measuring the amount of DNA i n e a c h n u c l e u s u s i n g f l o w c y t o m e t r y. A b o u t 7 0 % o f t h e e m b r y o s w e r e diploids; the rest were haploids. No ploidy chimera was observed. These results suggest that spontaneous chromosome doubling might occur in the first cell division embryogenesis. - 96 - on the way to microspore Chapter 3 The pollen preservation makes it easy to cross varieties with different flowering times in crop breeding and hybrid seed production. A simple and reliable method for evaluating the viability of Chinese cabbage pollen was established in which the in vitro germination rate o f p o l l e n w a s a d o p t e d a s t h e i n d e x o f p o l l e n g r a i n v i a b i l i t y. P o l l e n grains were preincubated at 20°C for 5 hr in an atmosphere in which the relative humidity (RH) was fixed at 66%. Then they were cultured f o r 1 6 h r a t 2 5 ° C i n l i q u i d K w a c k ’s m e d i u m ( 1 9 6 4 ) s u p p l e m e n t e d w i t h 20% sucrose, the pH of which was adjusted to 8.0. The germination rate of pollen was improved and stabilized through preincubation and the use of pH 8.0 medium. More than 90% of the freshly harvested pollen grains of Chinese cabbage germinated constantly in this condition. The conditions of the pollen preservation were investigated. Undehisced anthers were collected from flowers at anthesis and dehydrated using incubation at 20°C for 16–24 hr in an atmosphere in which the RH was fixed at 15%. Low humidity (RH15%) was more effective for pollen preservation than high humidity (RH66%). The effects of temperature during preservation in RH15% were examined. Pollen of Chinese cabbage proved to remain viable for about 10 days at 20°C, about 6 wk at 5°C, and for one year or more at -20°C. The pollen grains preserved at -20°C for one year proved to be as efficient f o r s e e d s e t t i n g a s f r e s h p o l l e n . M o r e o v e r, t h e p o l l e n p r e s e r v e d f o r one year proved to maintain the nature of self-incompatibility as well - 97 - as fresh pollen did. Most seeds obtained using one-year-preserved pollen germinated n o r m a l l y. C o n s e q u e n t l y, pollen preservation techniques were established to bridge the gap of the flowering times of various breeding materials. New F 1 hybrid cultivars of Chinese cabbage were developed using t h e h a p l o i d b r e e d i n g m e t h o d e s t a b l i s h e d i n t h i s s t u d y. T h e m a j o r target traits of breeding were clubroot resistance (CR) and wide y e l l o w c o r e o f t h e h e a d . We p e r f o r m e d t w o a p p r o a c h e s u s i n g d i f f e r e n t starting materials of anther or microspore cultures. In the first approach, seven commercial F 1 hybrid cultivars having target traits were used as the material plants of anther culture, yielding 740 DH lines. They were planted in the field and selected for target traits and other agronomical traits. Five DH lines combining CR, wide yellow core of the head and good agronomical traits were selected as prospective paternal lines. Then they were examined for their combinatory capabilities by crossing with three prospective maternal lines that had been bred using the conventional method. Tw o c o m b i n a t i o n s w e r e s e l e c t e d a n d t h e F 1 h y b r i d l i n e s o f t h e s e c o m b i n a t i o n s w e r e t e s t e d f o r t h e i r l o c a l a d a p t a b i l i t y. S u b s e q u e n t l y, both were released as new varieties: ‘JT103’ and ‘JT107’. In the second approach, F2 seeds of a commercial variety ‘ Yu k i m u r a ’ w e r e o b t a i n e d i n i t i a l l y b y s e l f i n g . T h e n 1 8 8 F 2 p l a n t s were planted in the field and selected for target traits and other agronomical traits. In all, 33 individuals were selected and transplanted to pots and grown in a greenhouse. Among them, two - 98 - individuals which showed resistance to Downey mildew and late bolting character were finally selected. They were used as the s t a r t i n g m a t e r i a l s o f m i c r o s p o r e c u l t u r e s . T h e r e b y, 1 0 7 D H s w e r e obtained. The DHs or their S 1 progeny were planted in the field for selection; then 10 elite lines were selected as prospective paternal lines. They were examined for their combining abilities by crossing with prospective maternal lines bred using conventional methods. One combination was selected and the F1 hybrid line was released as a new variety: ‘Hiroki’. Chapter 4 Haploid breeding methods of Chinese cabbage was greatly i m p r o v e d b y r e s u l t s o b t a i n e d t h r o u g h t h i s s t u d y. T h i s m e t h o d w a s demonstrated as practical for commercial breeding of Chinese cabbage. Although some problems―such as great differences in the frequency of embryo formation among cultivars and mutation during culture and breakdown of CR traits―remain as issues to be resolved in the future, use of the haploid-breeding method described herein would accelerate breeding of Chinese cabbage. - 99 - 謝辞 本 論 文 を取 りまとめるにあたり,終 始 懇 切 な御 指 導 ご鞭 撻 を賜 りました大 阪 府 立 大 学 大 学 院 生 命 環 境 科 学 研 究 科 教 授 小 田 雅 行 博 士 には謹 んで感 謝 の意 を表 します.本 論 文 の御 校 閲 と御 指 導 を頂 いた,大 阪 府 立 大 学 大 学 院 生 命 環 境 科 学 研 究 科 教 授 阿 部 一 博 博 士 ,同 教 授 大 門 弘 幸 博 士 ,同 准 教 授 森 川 利 信 博 士 に謹 んで感 謝 の意 を表 します. 本 研 究 の遂 行 と論 文 の取 りまとめに際 し,終 始 懇 切 な御 指 導 と御 鞭 撻 を頂 い た,農 研 機 構 近 畿 中 国 四 国 農 業 研 究 センター 萩 森 学 博 士 ,鹿 児 島 大 学 農 学部生物生産学科教授 岩 井 純 夫 博 士 ,日 本 たばこ産 業 株 式 会 社 植 物 イノ ベーションセンター 加 藤 紀 夫 博 士 には謹 んで感 謝 いたします. 研 究 の遂 行 全 般 にあたり,多 大 なご協 力 を頂 いた阿 部 とき子 氏 には心 より感 謝 いたします.品 種 育 成 にあたり御 指 導 とご協 力 を頂 いた,東 北 農 業 研 究 センター 由 比 進 博 士 , 株式会社渡辺採種場 津 野 勲 氏 ,柿 沼 育 種 センター 柿 沼 博 昭 氏 (故 人 ),日 本 たばこ産 業 株 式 会 社 植 物 開 発 研 究 所 後 藤 房 雄 氏 ,酒 主 光 枝 氏 ,斉 藤 秀 章 氏 に謹 んで感 謝 いたします.長 年 に渡 り,アブラナ科 を中 心 とした多 くの植 物 種 において,研 究 に従 事 させて頂 いた中 で,御 指 導 と御 教 示 を頂 いた日 本 たば こ産 業 株 式 会 社 および各 種 研 究 機 関 の多 くの方 々に対 し,心 より感 謝 の意 を表 します. 本 論 文 執 筆 中 にたえず激 励 してくれた妻 ます. - 100 - 千 秋 と子 供 達 久 未 ,寛 泰 に感 謝 し 引用文献 Adhikari, K.N. and C. 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