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立命館大学 学外研究成果報告書
(様式9) 立命館大学 学外研究成果報告書 年 月 日 立命館大学長 殿 所属: 経営 学部/研究科 職名: 准教授 氏名: 善本 哲夫 印 このたび学外研究を終了しましたので、下記のとおり報告いたします。 所属長承認 印 研 究 課 題 申 請 区 分 □ 学部研究科人数・予算枠内 □ 学外資金・セメスターごと人数枠内 滞在先国名 (複数ある場合は 全て記入してく ださい) ■ 国外のみ □ 国内のみ □ 国内_ヵ月、国外_ヵ月 イギリス及びフランス 2010 年 9 月1日 ~ 研究期間 期 □ 役職者別枠 □ 助教 2012 年 間 3 月 24 日 ( 19ヵ月間) 滞在都市名 研究機関名 ① 10 年 9 月 ~ 11 年 9月 オックスフォー オックスフォード大学サイード・ビ ド ジネススクール ② 11 年 10 月 ~ 12 年 3月 リヨン 研 究 日 程 概 要 ③ 年 月 ~ 年 月 ④ 年 月 ~ 年 月 ⑤ 年 月 ~ 年 月 ⑥ 年 月 ~ 年 月 リヨン高等師範学校(ENS) 1.実施状況:研究方法や受入研究機関との関係なども含め、上記研究日程概要に即して実施した事柄を具体的に記述してください。 ○オックスフォード大学サイード・ビジネススクール客員研究員として研究に従事 ・Prof.Mari SAKO, Dr.Eric THUN, Dr.Alexandra Brintrup, Dr.鬼頭朋美らをはじめとする受入研究機関研究 者との研究交流 ・MBA 大学院生との研究交流 ・UK 製造業/EU 製造業及び日系企業に関する実態調査 ・ビジネススクール開催アカデミックセミナーへの参加 ・国際学会への参加 ○リヨン高等師範学校東アジア研究所客員研究員として研究に従事 ・Prof. Yveline Lecrel, Dr. Beatrice JALUZOT, Prof. Jean-Pascal Bassino らをはじめとるす受入研究機関研 究者との研究交流 ・国立社会科学高等研究院 Dr. Sébastien LECHEVALIER との研究交流 ・ENS 大学院生との研究交流 ・フランス製造業及び日系企業に関する実態調査 ・シンポジウムへの参加 1 (様式9) 2.成果の概要: 今回の研究成果の概要を上記の実施状況に則して具体的に記入してください。 [2500~3000字程度] ①欧州製造業に関する各種議論を受入研究機関研究者と実施した。特に、欧州製造業とアジア製造業をどのようにブ リッジさせるかを中心に研究を進めた本研究にとって、欧州サプライチェーンの実態や課題に関する議論は非常に有 益であった。また、サイード・ビジネススクールの日本人大学院生(社会人含む)とは、日本製造業のありようや欧 州事業について様々な角度から考察・分析を実施し、学外研究後においても継続的な研究交流をしている。 ②UK に進出する日系企業の実態調査を実施した。例えば、トヨタ・ダービー工場、トヨタ UK、シャープ欧州研究所な ど、である。 ③UK 製造業の実態調査を実施した。例えば、モーガンモーター・マルヴァーン工場、BMV グループ MINI・オックスフ ォード工場、紳士靴産業集積、地方インダストリアル・パークなどである。 ④EU 域内で事業展開する日系企業の実態調査を実施した。例えば、トヨタ欧州本社(ベルギー)、トヨタ・トルコ工 場、ダイキン欧州本社(ベルギー)及びトルコ事務所など、である。 上記活動による研究成果の一つとして、以下のことが明らかになった。第一に、欧州の中堅・中小企業の疲弊は周 知の通りであるが、現地は我々が考えていたよりも厳しい状況にある。例えば、UK 内で産業集積を狙った工業団地や インダストリアル・パークが散見もされるが、その実態は生産拠点・工場の立地というよりも、「倉庫拠点化」して いるといったケースも調査において垣間見られた。中堅・中小企業の疲弊状況にみる欧州の厳しい製造業集積事情は、 欧州事業を展開する日系企業のオペレーションにも影響を与えている。部品の現調化を進めるも、高い加工技術が求 められる部品では、日系企業側の品質基準を満たし、かつコストで魅力ある現地サプライヤー・ベンダーを探すのが 困難となっている。欧州製造業とアジア製造業のポテンシャルを効果的かつ戦略的にブリッジさせることが日系企業 の欧州事業の重要なポイントになっているのだが、現地部品調達が困難であることから「アジアに頼らざるを得ない」 ケースも多い。つまり、日系企業はアジアから部品を調達せざるを得ない状況にあり、現地オペレーションがアジア 製造業を立脚基盤にせざるを得ないといったことが生じている。東日本大震災及びタイの大洪水時には、こうした状 況がより鮮明に顕在化したといってよい。以上のように第二の成果は、日系企業の欧州事業にみるアジア製造業への 依存度を明らかにしたことである。第三は、過渡期にある欧州オペレーションの実態把握である。「日本の生産現場 の強みを移転する」、「現場能力構築に向けた改善活動を活性化させる」といったことが現地事情(技能訓練の難し さなど)のありようから難しい現場もあった。しかしながら、他方でリーマンショックによる減産対応・稼働率低下 によって「現場育成の時間」を作ることができた、といった意見や、実際にこの時期を現場育成のチャンスと捉え、 雇用調整を実施するという厳しい局面もありながらも、技能訓練・改善定着に向けた様々な取り組みを進めた日系企 業もあった。すでに述べたように、欧州の現地オペレーションは計画的ローテションの実施等が難しいなどの結果、 高度な技能獲得に向けた訓練の実施や改善活性化が難しかったのだが、リーマンショックを現場育成の契機とする日 系企業が存在したことは、モノのみならず、知識のフローとしてアジアと欧州をブリッジさせるポイントを考える上 で、非常に大きな調査であった。UK では、上記のような論点を中心に UK を基軸に欧州各地域の調査を実施した。 ・以下は、フランス移動後である。UK での議論及び成果を踏まえつつ、大きくは下記の研究を実施した。 ⑤フランス国内の日系企業の展開に関する実態調査。例えば、ジェイテクト・リヨン工場、ダイキン・リヨン工場(ケ ミカル)、森精機フランスサービス事業所、等である。 ⑥スマート・コミュニティ産業に関する日欧比較。リヨン大学 ENS でスマート・コミュニティに関する共同研究を進 める準備等を進めた。 ⑦フランスにおける地域イノベーションの実態調査 フランス製造業は重点育成が叫ばれる航空産業やバイオ産業等を除いて、厳しい環境にあるといってよい。製造業 が雇用吸収できず、かつ中堅・中小企業が疲弊しているのは他欧州地域でも同様のことである。こうした状況下にお いて、フランス各地方は積極的な地域イノベーション創出政策を打っている。しかしながら、地域イノベーションの 成果が必ずしもフランス国内の雇用創出に結びついているかといえば、そうでもない。例えば、興味深い技術を開発 したベンチャー企業が事業を外資に売却するケースでは、売却後に創業時からのスタッフが継続して雇用される保証 はなく、また技術成果をもって新規投資が国内で行われるケースも多くない。この問題は、日本国内に同じであり、 フランス固有の問題ではない。こうした地域イノベーション政策が抱える課題等を日欧比較から洗い出し、日欧で協 働する方向性を編著にてまとめた。 こうした現状について、リヨン ENS での研究交流・議論のみならず、フランス国立社会科学高等研究院の Dr. Sébastien LECHEVALIER 氏とのディスカッション及び同氏がパリで開催した「Deindustrialization」をテーマとする セミナーにて日仏韓の研究者らと議論を行った。 氏 名 2 (様式9) また、研究期間中、新たな産業として大きな期待が寄せられている「スマート・コミュニティ」の共同研究及び交 流をリヨン ENS と進めることになった。大規模実証実験を我が国 NEDO と東芝がフランス・リヨンコンフリュエンス地 区において展開している。リヨン ENS はこの実証実験の成果や再開発地域のありようを研究するとともに、我々とと もにスマート・コミュニティの産業化における課題やその実態、また実証実験のありよう等を、欧州とアジアの連携 等の視野から比較検討していくことになっている。スマート・コミュニティに関する技術的課題や議論については、 フランスよりも日本の方が活発化している他方で、パリで具体的に運用・実用化されている EV のカーシェアリングで ある「オート・リブ」のように、素早い展開についてはフランスが進んでいる。オート・リブが具体的にスマート・ コミュニティと関連しながら展開されたかといえば、必ずしもそうではない。しかし、EV の活用と運用がスマート・ コミュニティの産業化において焦点の一つになっており、世界的に見て EV 関連で様々な実証実験で先行する日本も、 オート・リブのありようは参考すべき点がある。 スマート・コミュニティの実現や産業において、大きな課題は以下である。スマート関連技術の実装による「スマ ート・コミュニティ化」が、その地域社会及び地域住民にどのような積極的意味を持つかが、明確にコンセプトとし て提示できていない。リヨンの実証実験や構想は、地域再開発と結びつけられ展開されているものの、省エネ・環境 に偏重しているのが実態であり、例えば旧市街地が世界遺産である歴史都市リヨンにおいて、先端的なスマート関連 技術を導入することで、地域コミュニティにとって、どのような「ポジティブ・インパクト」があるのかが見えにく い。リヨンの再開発地域は、旧ローヌ・ソーヌ川が合流する南部エリアで、旧産業港湾エリアであった。旧市街とは エリアの雰囲気や景観も違う旧工業区域であり、そこでスマート関連技術を実装することで街が「どのように変わる のか」あるいは「変えたいのか」に関する具体的活動を研究することは、我が国にとっても非常に示唆深い知見が得 られるはずである。 以上が、学外研究における主要な研究成果・活動である。 氏 名 3 善本哲夫 (様式9) 3.研究成果の公表:今回の研究成果公表の状況と予定を具体的に記入してください。 既 発 表 テーマ 発表形態 出版社/掲載誌、巻号/学会名等 The Dynamics of Regional Innovation: ■ 著書 Policy Challenges in Europe and Japan □ 論文 Series on Innovation and Knowledge □ 学会発表 Management 「多極化する生産立地と海外工場間の技術移 転・支援 -日本,タイ,チェコのケース-」 □ 著書 □ 論文 ■ 学会発表 「マザー工場と海外拠点間の技術移転・支援― エレクトロニクスメーカーのケース―」 □ ■ □ 著書 論文 学会発表 □ 著書 2011 年 11 月 World Scientific Publishing 映像情報メディア学会アント レプレナーエンジニアリング 2011 年 11 月 研究会関西大会 東京大学ものづくり経営研究 セ ン タ ー DISCUSSION 2011 年 2 月 PAPER SERIES No.335. 「グローバル生産体制と海外拠点間の技 ■ 論文 術支援・移転」 □ 学会発表 「新興国市場での販売・サービス網構築:トル コのエアコン事情を題材に」 刊行/発表年月日 『社会科学』(41 巻 3 号) □ 著書 ■ 論文 □ 学会発表 2011 年 11 月 『赤門マネジメント・レビュ 2011 年 4 月 ー』(10 巻 4 号) 執 筆 中 ・ 発 表 予 定 テーマ 発表形態 出版社/掲載誌、巻号/学会名等 「スマート・コミュニティ産業の競争力」 □ 著書 ■ 論文 □ 学会発表 「シンガポール拠点のポテンシャル評価」 □ 著書 ■ 論文 □ 学会発表 □ 著書 □ 論文 □ 学会発表 □ 著書 □ 論文 □ 学会発表 □ 著書 □ 論文 □ 学会発表 『立命館経営学』発表予定 刊行/発表予定年月 執筆中 『赤門マネジメント・レビュ 執筆中 ー』発表予定 構想計画中 氏名 善本哲夫 R O 受付 提出期限:帰着後 2 ヶ月以内 提出先: 各リサーチオフィス ★ 本書式は、研究部ホームページにて公開します。 4