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3 王子シューレへの

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3 王子シューレへの
しゅざい き ろ く
3 王子シューレへの「いじめ」についての取材記録
日時:平成 19 年 10 月 29 日(月)
17時30分~19時
会場:王子シューレ 3階会議室
参加者:メンバー 5名
王子シューレ
中村 国生事務局長
質問の前に、シューレを紹介したDVDを見る。
ふじい
ま
お
麻緒(中学1年生)
質問1:藤井
こま
カリキュラムを見ると、すごく自由でしばられていないので、社会に出た時に困る
のではないかと思うのですが、どうですか。
回答:中村 国生事務局長
せつめい
まず、東京シューレの説明をしましょう。4ヶ所
のフリースクールがあり(都内3ヶ所、千葉県1ヶ
所)、初等部・中等部・高等部の6歳から20歳まで
かよ
の子どもが通ってきています。そのうちの王子シュー
回答を聞く藤井麻緒さん
レには、通っている子どもは80人、スタッフが10人
います。そのほか、学生や大人のボランティアが1日あたり2~3人来てくれていま
す。週5日制で10時から18時に開いていて、来る時間、帰る時間は自分で決めま
こうざ
さんか
す。また、講座やカリキュラムは子どもたちが決め、その講座に参加するかしないか
じ
こ けってい
じゆう
も自己決定です。そのようなことから、自由であると言えるかも知れません。シュー
レでは、自由とは、自らに由ることと考えています。つまり、自己決定ということで
す。
やしな
シューレは自分で決める力を 養 うところと言えます。何でも自分で決めなくては
むずか
ならないので、難しいという人もいます。しかし、カリキュラムが自由ということは
法律で定める学校ではないということでもあって、学歴になりません。初等部・中等
ざいせきこう
部の子どもは不登校をしている在籍校を卒業しますが、高等部の子どもが高卒の資格
にんてい
ひつよう
をとるには、高校に入るか高校卒業の認定試験を受ける必要があります。
むか
王子シューレは今年で23年目を迎えますが、20年目の時に、卒業生にアンケー
ふとうこう
しょうがい
トをしました。質問に「不登校で何か 障 害 はありましたか」、「シューレに在籍して
こうもく
いたことで障害はありましたか」という項目がありました。1つめの回答では7割の
人が、2つめでは9割の人が障害は無いとの回答でした。
- 14 -
さくらい
質問2:桜井
もと こ
統香(高校2年生)
どうしてフリースクールの先生になろうと思ったの
ですか。
回答:中村 国生事務局長
かんかく
まず、先生になるという感覚はありません。ここでは、
我々はスタッフ、通っている人は生徒ではなく会員ある
いは子どもと言います。ここ数年、教育学などを学んだ
真剣に聴き入る桜井統香さん
さいよう
大学4年生から、採用についての問い合わせが年間20
人位はあるでしょうか。私は、‘92年にスタッフになりましたが、当時、フリースク
しせつ
いっぱん
ールなどの団体や施設が職場になるという感覚は一般にありませんでした。今でも、
うんえい
全国のフリースクールの多くがボランティアで運営されている状況で、私も東京シュ
せいけい
ーレに関わって生計を立てられるとは考えていませんでした。新しい教育の現場で勉
もど
強させてもらって、2年から3年で大学院に戻ろうと考えていました。しかし、東京
おやご
がく
シューレの場合、親御さんがお金を出し合って、生活するのにギリギリの額でしたけ
きゅうりょう
しごと
れど、スタッフに 給 料 を出していたのです。きちんと仕事をして子どもたちに関わ
い
み
いしき
ってくださいという意味がこめられていたのです。そこで、私の方も意識が変わり本
気で関わろうと思ったのです。
シューレでは、子どもたちが何もかも作りあげてい
きます。新しいことが次々に起こります。だから、こ
や
れまで辞めたいと思ったことはありません。子どもた
ていあん
ちの提案でカナダの木を使ってログハウスを4年半か
けて作りあげたこともあります。そのときは、カナダ
はけん
まで委員を派遣して、ログハウスの建て方を学ぶとい
く
か え
おもしろ
うことまでしました。何も無いところから生み出していくことの繰り返しが面白く、
スタッフとしていっしょに創ることにやりがいを感じています。
教育制度の面で言えば、東京シューレが出来てからの23年間、一切、変わってい
ません。変えたいと思い、いろいろ活動をしています。しかし、変わりません。政治
ひつよう
家も含め世の中の多くの人が、フリースクールのようなところが必要だと感じるよう
になりましたが、教育制度のなかに位置づいていないのです。制度を変えることはや
せんたくし
りがいのあることです。フリースクールのようなところをもっともっと広げて、選択肢
として考えてもらいたいと思っています。
うえき
質問3:上木
ゆりか(中学3年生)
フリースクールの先生になって学んだことはどのようなことですか。
回答:中村 国生事務局長
- 15 -
かな
先ず、学んだことは「夢は叶うものである」ということです。ほかにも、世の中を知
ぎいん
ることができることです。シューレには、学校の先生・議員・文部科学省の人たちなど
けんがく
いろいろな人が見学に来ますので、社会のいろいろな人と出会うことができます。また、
ほうじん
シューレはNPO法人ですから、環境や福祉などさまざまな活動をしているNPOの人
よ
き
で
あ
たちとも知り合えます。そのなかで予期せぬ出会いがたくさんあります。いろいろな世
界に出会えることも楽しいです。
ふくおか
質問4:福岡
ま
ゆ
み
万由未(中学3年生)
くろう
苦労していることは、どのようなことですか。
回答:中村 国生事務局長
東京シューレなどフリースクールが、教育制度
上木ゆりかさん(左)と福岡万由未さん
のなかに位置づいていないため、運営が大変なこ
ぜいきん
まかな
ほじょ
とです。制度のなかに位置づいた教育施設は、税金で 賄 われたり、補助が得られますが、
フリースクールにはないのです。シューレに通っている子どもは、不登校をしている学
せき
校に籍があり、公的な予算はその学校へ行ってしまっています。私たちは、その分がフ
リースクールに割り振られてもいいのではないかと考えています。
そうりつ
今年の4月に東京シューレ葛飾中学校が創立されました。子どもの数は89人です。
かんぜん
はいこう
この学校は、制度で言えば、完全な私立中学校になります。葛飾区の廃校を利用してで
かいこう
つい
きたものです。昨年は、開校に向けて多くの時間を費やし、大変な苦労でした。実現さ
ぎょうせい き か ん
そうだん
せるために、4つの 行 政 機関に行き相談しました。先ず、校舎を貸してくれる葛飾区で
にんか
す。2つめは、私立学校を認可する東京都です。3つめは、不登校の子どもたちを受け
こうぞうかいかくとっ く
入れる特別な学校ということで、文部科学省です。そして4つめに、構造改革特区の制
しんせい
ないかくふ
度を利用して申請したことから内閣府とも調整が必要でした。この4つとシューレがピ
ッタリと合わさらなければ実現できなかったので、それはまるでパズルを組み合わせる
ように難しいものでした。
ごとう
質問5:後藤
しょう
翔 (高校2年生)
いじめをどのように思いますか。
回答:中村 国生事務局長
みなさんから、シューレに通っている子どもに
質問したいことを事前にFAXでいただいていた
ので、何人かの子どもに聞いてみました。
ずばり質問する後藤翔君
そんざい
先ず、何故いじめが存在するかという質問ですが、
りゆう
い ば し ょ
回答として「いじめる子にも理由がある」「家庭で居場所がないからいじめるのではな
いか」「親が話を聞いてくれないからいじめてしまうのでは」「学校には、いじめる文
- 16 -
ただよ
化が 漂 っている」というのがありました。シューレに通ってきている子どもたちは学
つら
たいけん
かか
校で辛い体験をしているにも関わらず、いじめている人を思いやる内容が多かったの
です。
いや
また、シューレでもいじめがあるかと聞いたところ、トラブルや嫌なことはたくさ
んあると話していましたが、いじめとは違うと言っていました。スタッフが話をよく
聴いてくれるから心強いし相談しやすいと話していました。
わく
今の教育制度は、学校に合う人も合わない人も、一つの枠に押し込もうとしていま
す。嫌な思いをし続けていても学校に通い続けている子どもが、たくさんいると考え
なや
だれ
そうだん
ます。そのため、思い悩み誰に相談できずにいる子どもがいます。そういう教育制度
が、いじめを生み出す文化を作り出しているのではないかと思います。そうならない
せんたくし
ように、フリースクールなどいろいろな選択肢を増やしたいと思います。
ふじい
ま
お
麻緒(中学1年生)
質問6:藤井
子どもと接する時に、心がけていることは何ですか。
回答:中村 国生事務局長
どうし
つ
ら けいけん
1対1の人間同士であるということです。ここに来ている子どもは、辛い経験をし
ている子どもが多いです。世の中のほとんどの子どもが学校に行くという選択をして
けつだん
いるなかで、学校には行かないことを選択したことは、勇気ある決断だと思っていま
そんけい
す。そのような決断をした子どもと付き合っているので、私は子どもたちを尊敬もし
ています。
い け ん こうかん
意見交換
質問:上木
ゆりか(中学3年生)
シューレのなかで、いじめが起きたらどう対処しますか。
回答:中村 国生事務局長
先ほど話したように、シューレのなかでは人間関係の
トラブルがあっても、いじめとは違うようです。トラブ
ルがあったときは、多くの場合、話し合いやミーティン
かいけつ
いや
グなどで解決していきます。でも、話もしたくないほど嫌だ、という気持ちのときも
ありますね。そういうときは無理やり解決しようとしないで、嫌な相手とできるだけ
ほお
む
し
距離をとって放っておく。それは、その子を無視するということではないんですね。
そうほう
きょり
たも
てだす
スタッフもできるだけ双方がぶつからないよう距離を保つことを手助けしたりします。
それも一つの解決の方法なんです。
そもそも、このシューレという空間は、例えてみれば、図書館のようなところです。
図書館は行きたい人が行きたいときに行くことができます。たくさん行く人はその人
がそうしたいからで、たくさん行っても、行かなくても、それによってその人が評価
- 17 -
されません。図書館に行って知り合いができたり学びが深まったりしますね。シュー
ふ ん い き
みつ
レは、その図書館の雰囲気を、密にしたようなものだと言えます。そういう雰囲気の
ところに、いじめが起こることは少ないと思います
質問:桜井
統香(高校2年生)
学校には通えないけど、シューレにならば通えるというのはどうしてなのですか。学
校とシューレの違いは何ですか。
回答:中村 国生事務局長
一番のポイントは「学校に行かないこと」をどうみるかだと思います。学校の先生
は、学校に来ることそのものを評価します。なので、学校に来なくなった子どもには、
来させようとします。みなさんの学校にもスクールカウンセラーがいると思いますが、
もど
それは不登校対策つまり、何とか学校に戻れるようにということで文部科学省が予算
をつけて全校配置しました。しかし、学校へ行くことでいじめを受け、その結果、な
た
かには、生命を絶つ子どもがいるのであれば、行きたくない人は、行く必要が無いと
考えます。学校に行かないのも一つの方法と考えているのです。学校に行かないこと
が認められるということが、シューレに来やすくしていると思います。
きょうかい
シューレの子どもが、学校との違いは年齢の 境 界 が無いことだと言っていました。
たが
おどろ
年齢に関係なく、お互いため口で会話しています。何年か後に、お互いの年齢を知り 驚
くことなんていうこともよくあります。年齢に関わらず、みんなが対等な関係である
と言えます。そういう雰囲気も来やすいのではないでしょうか。
かいぜん
ぎ
む
たいとう
せきにん
ともな
大人には、改善する義務があります。対等な関係のなかにもスタッフには、責任が 伴
います。
さいとう
質問:斎藤
はな え
花恵(サポーター)
教育制度がいじめを生み出す文化になっているということですが、その教育制度を変
えていくために活動されていることを教えていただけますか。
回答:中村 国生事務局長
シュ-レのことをより広く多くの人に知ってもらうために、
マスコミの取材なども大変ですができるだけ受けるようにし
ています。また、ずっと活動している通学定期券の運動につ
いて話しますと、以前はシューレに通っている子どもたちは
ていきだい
みと
通学定期代は認めらず、中学生になると大人と同じ通勤定期
券でした。そのため、親御さんがシューレに通う子どもさん
しょめい
たちの学割定期券が認められるようにと署名活動をし、国会
うった
議員の人に 訴 え、国会で質問をしてくれました。その日には、
- 18 -
サポーターの2人
金澤真之
さんと(左)と斎藤花恵さん
ぼうちょう
子どもたちも大勢で 傍 聴 に行きました。その結果、小・中学生の子どもには、通学定期
券が出るようになりました。しかし、高等部の人には今も出ていません。先々週も何人
みんしゅとう
こ み や ま ようこ
かの議員に会いに行き、訴えてきました。その一人、民主党の小宮山洋子議員が、先週
とうべん
の文部科学委員会で質問をしてくれました。それに対する文科大臣の答弁は「いろいろ
難しい問題もありまして・・・」というものでしたが、国会の議論になったことは大きな前
進です。実現するまで活動していこうと思います。
あきらめません。
~後藤
翔:中村さんから私たちに
何か聞きたいことはありますか?~
質問:みなさんが、このハイティーン会議に応募した
きっかけは何ですか。
すべての質問にていねいに答えて
回答:中村 国生事務局長
後藤
くれた中村国生事務局長
翔:生徒会の先生より、うちの学校からも何人
か参加してもらいたいという話があったからです。昨年も参加しているので
2年目です。でも、ハイティーン会議は有名ではないので知られていない気
がします。
桜井
統香:私も先生から募集ちらしを渡され、前年は学校の先輩も参加しているの
だと思い応募しました。
藤井
うらめん
麻緒:募集のちらしの裏面を見て、同じ学校の人が昨年参加していたこと。母
親から、面白そうな会だからと言われ応募しました。
質問:みなさん、この会議での活動をどうして続けているのですか。
回答:中村 国生事務局長
上木
たいけん
ゆりか:学校に行っているだけでは体験できないことが、ハイティーン会議で
は、できるので続けています。
後藤
翔:中野区内の他の学校の生徒と協同して作業を進めていけることにやりがい
を感じています。脱線することもあるけど、みんなで話し合って会を進めて
いくことも楽しく感じています。本日は、ありがとうございました。
(この取材は、何らかの原因で不登校になってしまった子どもの現状とその理由や、
フリースクールで働いている人の思いを理解することで、「いじめを無くすために」は
どうしたらよいか考えるために実施したものです)
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