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平成27年度「空知産ワイン」産地特性把握調査(気象調査)の概要
平成27年度「空知産ワイン」産地特性把握調査(気象調査)の概要 1 調査の目的 醸造用ぶどう栽培を行う上で重要な気象・土壌のデータ収集と調査 により、空知の産地特性(テロワール)を把握することを目的とする。 2 北海道空知総合振興局地域政策部 地域政策課 そらちワイン振興室 調査方法等 ○気象の現状と将来予測 現状(実測)は、北海道農業研究センターより提供を受けた1990~ 2015年の1kmメッシュ気象データを利用し、基本5カ年で月別に 集計。また、将来予測はMIROC3.2-HIRESを用いて計算した2020 ~2044年の気象予測値(1kmメッシュ)を利用し、基本5カ年で月別 に集計。 ○平均日平均気温、BEDDの現状と将来予測 醸造用ぶどうが成熟するかどうかの判断のため、4月~10月の平 均日平均気温とBEDD(*)に着目し、1990年~2015年の実測値及 び2020年~2044年の予測値を算出。 イ BEDD ・実測:1990~97年は年次変動が大きく900℃~1100℃で推移。 1998年以降は1000℃以上で高位安定化しているが、900 ℃前後の低い年も見られる。 ・予測:2020~27年頃までは950℃~1250℃と年次変動が大きい が2028年以降は1150℃以上に、2040年以降は1200℃以上 に変化。 ・品種:Gladstone(1992)による成熟に達するまでのBEEDの区分 では、現在はシルヴァーナ等であり、将来的にはピノ・ノワ ール、シャルドネ、ソービニヨンブラン等になると予測。 (*)BEDD: Gladstone(1992)が提唱した有効積算気温の考え方 ○醸造用ぶどう地域適応品種調査 各ヴィンヤードの栽培履歴及び中央農業試験場の調査結果と気象 調査の結果を照らし合わせ、気象とぶどうの果実品質の関連性につ いて考察。 3 調査結果 3-1 気象の現状と将来予測 ア 月別日平均気温 ・実測:7月~9月に上昇傾向が見られるがその他の月は明確な変 化なし。 ・予測:7月~8月は常時20℃以上で推移。高温化の傾向は特に1 ~4月、12月の冬期間に顕在化。 イ 月別日最高気温 ・実測:6月~9月に上昇傾向が見られるがその他の月は明確な変 化なし。 ・予測:各月で上昇傾向が見られ7月~8月は常時25℃以上で推 移。高温化の傾向は特に1~3月、12月の冬期間に顕在化。 ウ 月別日最低気温 ・実測:7月~9月に上昇傾向が見られるがその他の月は明確な変 化なし。 ・予測:各月で上昇傾向が見られ4月~11月は常時0℃以上で推 移。高温化の傾向は1~4月、10~12月の冬期間に顕在化。 融雪と発芽の早まり、遅霜の危険性増加の可能性。 エ 月別積算降水量 ・実測:明確な増減の傾向は見られないが、その中でも2010~15 年の8~9月は比較的高い数値。 ・予測:2020年以降8月は大幅に増加。数年に一度、8月は極端な 多雨に見舞われる可能性があり、防除や排水対策の検討が 重要。 オ 月別日日照時間 ・実測:6~8月に増加傾向。 ・予測:1~4月、8月、11~12月の期間に低下。 3-2 平均日平均気温、BEDDの現状と将来予測 ア 平均日平均気温 ・実測:1990~97年は年次変動が大きく13℃~15℃で推移。 1998年以降は低温年が減少し、概ね14℃~15℃の範囲で 安定化。 ・予測:比較的大きな年次変動を持ちながら上昇傾向。2020年~ 40年は概ね15℃以上、2040年以降は概ね16℃以上に変 化。 ・品種:Jones(2006)の4~10月の日平均気温に基づく区分では、 現在の適正品種としてミュラートゥルガウ、ピノ・グリ、 ゲヴュユルツトラミネール、さらに近年の低温年の減少に 伴いピノ・ノワールが該当し、将来的にはピノ・ノワール、 シャルドネ、ソービニヨンブラン等になると予測。 BEDDの実測値(1990~2015)と予測値(2020~2044)の推移 3-3 醸造用ぶどう地域適応品種調査(2013~2015年) ア 後志地域のピノ・ノワールの品質の年次変動と要因解析 ・6地点の各年平均糖度は18%以上で、特に2014年については20% を越えている。 ・2014年は4月、9~10月の月別積算降水量が少なく、平均日日照 時間は4月、8~10月で高く推移しており、これらが糖度の増加 に寄与した可能性。 イ 空知地域と後志地域とのピノ・ノワールの品質の地域間差とその 要因解析 ・空知で3年間継続して調査した地点はないが、2014年は後志同様 に他年次より糖度が高い結果。また調査箇所を加えた2015年も平 均糖度で20%を越えている。 ・両地域とも糖度と酸度の間には負の相関関係が認められ、糖度が高 い果実ほど酸度が低下することを確認。 ・しかし回帰式は両地域で異なり、同一糖度で比較した場合、空知地 域は酸を維持している傾向。これは低い夜温に影響を受けている可 能性。 2013~2015年におけるピノ・ノワールの糖度と酸度の関係 本調査の予測値、適正品種についてはあくまでも一つの可能性 を提示したものであり、結果には不確実性を含むことに留意