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13.特別 史跡 一乗 谷 朝倉 氏 遺跡
とくべつ し せ き いちじょうだにあさくら し い せ き 13.特別史跡 一 乗 谷朝倉氏遺跡 所 在 地:福井市城戸ノ内町字門ノ内 調 査 原 因:調査整備事業(第 130 次発掘調査) 調 査 期 間:平成 21 年4月 22 日~12 月 16 日 調 査 主 体:福井県立一乗谷朝倉氏遺跡資料館 調 査 面 積:約 2,500 ㎡ 時 代:室町時代 位置図(S=1/10,000) 調査の概要 一乗谷朝倉氏遺跡資料館では朝倉館より一乗谷川上流約 400m の右岸に位置 する福井市城戸ノ内町字門ノ内の町並(都市計画)の解明を目的として発掘調査を実施しま した(位置図参照)。 付近の字米津では、平成19 年の発掘調査により目貫や小柄、笄など刀装具の製作に関わる 土製文様型が多量に発見された金工師の屋敷が存在します。 今回の調査では、土塁に囲まれた上級武家屋敷規模に相当する屋敷が確認でき、建物跡や 石積施設など山裾から一乗谷川の際まで遺構が残存していることが判明しました。 さらに、調査区の北東端にあたる山裾では炉 1 基やガラス製遺物などが多量に発見されま した。ガラス玉を製作していたと考えられる工房跡を確認できたことは特筆すべきことです。 遺構 検出された遺構は、土塁や石垣、礎石建物、掘立柱建物、溝、石積施設、池状遺構、 土抗などです。掘立柱建物には柱根が残存するものがありました。確認された柱には径12~ 15cm の柱根やチョウナなどの工具で加工された痕跡が良好に確認できる断面約 12~14cm 角 柱があります。また、ガラス製遺物が集中して出土した工房跡は南庇をもち、内部に炉や大 甕埋設土抗が存在する2間×5間の建物と考えられます。 石積施設は、約2.4m×2.0m、深さ約 1.0mと約1.2×0.9m、深さ約0.3mの床面構造の異 なる施設が2基連結して検出され、浅い石積施設の床面は、石積み内に約20cm 大の石を詰め て上面に小石を敷いています。深い石積施設の南東角では、竹製の導水管が検出されました。 遺物 越前焼などの国産陶器や中国製陶磁器、木製品、金属製品などの遺物が約26,000 点 出土しました。貴重な出土品に、炉をもつ工房跡からのガラス製遺物や溶解した鉛、鞴の羽 口、石英、水晶が挙げられます。ガラス製遺物は4色(水色・緑色・紺色・白色)のガラス 玉や屑のような溶解ガラスが存在します。現在、独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研 究所と共同研究中ですが、ガラス玉はカリウム鉛ガラスで、巻き付け法によって製作された ことが分かってきています。 まとめ 上級武家屋敷に相当する区画においてガラス工房跡が確認されたことは、国内ガ ラス生産の空白期間とされ、ベールに包まれていた室町時代のガラス工芸史にとって大きな 成果であり、戦国時代の交易を解明していく上で非常に重要な発見といえます。 (川越光洋) 22 工房跡 第 130 次発掘調査区全景(南から) ガラス製遺物(上中段:ガラス玉、下段:溶解ガラス) 23