...

資料5 生産性向上に向けた検討について

by user

on
Category: Documents
25

views

Report

Comments

Transcript

資料5 生産性向上に向けた検討について
資料5
生産性向上に向けた検討について
(プラントエンジニアリング業)
平成20年3月7日
プラントエンジニアリング業WG
目 次
1.業界の現状
①エンジニアリング業の成り立ち
(参考)エンジニアリング業とメンテナンス業の関係
②我が国エンジニアリング産業の構造
③エンジニアリング産業の業態
④エンジニアリング会社の組織
⑤エンジニアリング業を巡る市場動向
⑥我が国エンジニアリング業界の現状
⑦エンジニアリング業界の生産性の現状
⑧ユーザーからの評価
2.取り組むべき対策
①エンジニアリング業界を取り巻く事業環境と課題
②エンジニアリング業界を取巻く課題の具体例
③全体像
3.取組の方向性
①個別企業が取り組むべき課題
②業界として取り組むべき課題
③政策として取り組むべき課題
4.具体的対策
①人材育成・確保対策
②グローバル展開・ローカリゼーション対応
③官民協力によるトップセールスの推進
④海外プロジェクトへの金融・保険機能の補完
⑤事業対象の上下展開及び横展開
⑥マネジメント効率の向上のためのIT活用
⑦競争力のあるプロセス開発のための新技術開発
⑧業界固有の課題に対応した基盤整理
5.プラントエンジニアリング業に係る産業再生法事業指針作成の意義
・・・ 2
・・・ 3
・・・ 4
・・・ 5
・・・ 6
・・・ 7
・・・ 8
・・・ 9
・・・ 10
・・・ 11
・・・ 12
・・・ 14
・・・ 15
・・・ 16
・・・ 17
・・・ 18
・・・ 19
・・・ 20
・・・ 21
・・・ 22
・・・ 23
・・・ 24
・・・ 25
・・・ 26
1
1.業界の現状 ①エンジニアリング業の成り立ち
■従来、製造業では、自社の設備部門(工務部)が、プラントの企画、設計、調達・検収、施工管理といったサービス業的な業務を担当。プラント建
設は建築業に外注。
・
■今日、主に石油精製、化学、製鉄、発電等では、エンジニアリング・ノウハウを外販し、新たなビジネス展開を目指す等の観点から設備部門が独
立してエンジニアリング会社を設立するケースが多くなってきている。
・
■これらエンジニアリング会社は、企画、設計、調達、施工監理、性能保証を一括して請負い、これらサービスの請負い先は、国内製造業のみなら
ず、海外製造業からも請け負うなど、国際展開する企業が多くなってきている。
今日の状況と産業の関係
従来の状況と産業の関係
石油精製、化学、製鉄、
発電等の産業構造の変化
業務は「サービス
業」の内容
設計
・機械設計業(8062)
調達・検収
・商品検査業(9021)
購入
施工監理
・土木建築サービス業(805)
外注
一部
外注
画
設
計
材料
機器
等
調
建
設
業
建
達
設
建設業に外注したプラント建
設に加え、性能を保証するた
めのシステム統合試験や試運
転等も実施。
一括して外注
一部
外注
製品の市場性、原材料の調達
上の制約、プラントのエネル
ギー効率・環境負荷等を配慮
した製造プロセスの選定やプ
ラント条件の提案。
個別機械、建物の設計に加え、
運営やメンテナンス面での作
業効率や作業員の動線を考慮
した効率的な配置・配管レイ
アウト等を提案。
機器・資材や作業員等の調達
に加え、大型・重量物の輸送
方法の検討や、顧客の資金調
達等も実施。
海外・
他社製造業
・工学研究所(8112)
・特許事務所(8012)
・経営コンサル(8093)
企
製造業 設備部門
工務部︶
製造業 設備部門︵
企画
エンジニアリング業︵サービス業︶
エンジニアリング業の業務の流れ
エンジニアリング業の定義
石油精製,化学,製鉄,発電等のプラントを対象と
して,企画,設計,調達,施工,施工監理を一括して
請負い,これらのサービスを提供する事業所をいう。
企画
(内製)
設計
(内製)
調達・検収
購入
施工監理
外注
性能保証
材料
機器
等
建
設
業
2
(参考) エンジニアリング業とメンテナンス業の関係
■従来は製造業の設備・整備部門(工務部門)が担当していたプラントの「設備投資」と「維持改
善」について、「設備投資」の分野については、「プラントエンジニアリング業」が担当し、「修理改
善」分野は、「プラントメンテナンス業」が担当するようになっている。
変化
過去の状況・背景
と業のイメージ
今日の状況・背景
と業のイメージ
業務区分
企画
一部外注
企画
企画
(内製)
エ
設計
ン
(内製)
ジ
ニ
ア
材料
調達
リ
検収 購入 機器
等
ン
グ
業
施工管理 建設業
設計
一部外注
設
備
投
資
維
持
・
改
善
調達
検収
製
造
業
設
備
・
整
備
部
門
設計
材料
購入 機器
等
施工管理
外注
建
設
業
調達
製
造
業
建設
オペレーション(運転)
操業・製造
設備
管理
一部外注
保全
一部外注
整備
一部外注
改善
一部外注
サ
|
ビ
ス
業
一
括
し
て
外
注
外注
設
備
・
整
備
部
門
性能保証
製造業
外注
メ ン テナン ス
プ
ラ
ン
ト
メ
ン
テ
ナ
ン
ス
業
設備管理
保 全
整 備
改 善
3
1.業界の現状 ②我が国エンジニアリング産業の構造
■製造業である親会社から独立したエンジニアリング会社が、親会社からの発注のみならず、
独自のエンジニアリング・ノウハウを外販し、国内よりもむしろ海外展開を積極的に図る
企業も多くなってきている。
■一方で、総合建設や造船重機においては、社内にエンジニアリング部門を有し「エンジニ
アリング・サービス」を外販している会社も多い。
■今回の検討対象としては、主にエンジニアリング・サービスを外販する「プラント・エン
ジニアリング業」の活力の向上の観点で議論を行う。
専業エンジ
製造業から独立し、現在で
は海外中心に総合エンジニ
アリング企業に発展
専業中堅
親会社からの発注による国
内事業が中心
鉄鋼系エンジ
鉄鋼会社の事業多角化でエ
ンジニアリング事業に展開し、
現在では親会社の事業に加
え国内外で事業展開し、積極
的な海外展開を企図
造船・重機系エンジ
製造中心の親会社であるが、
国内外で自社製品を含めた
エンジニアリング業とも展開
重電系エンジ
製造中心の親会社であるが、
国内外で自社製品を含めた
エンジニアリング業とも展開
総合建設(エンジ部門)
総合建設会社の中にエンジ
ニアリング部門を有する会社
多く、国内外で事業を展開
4
1.業界の現状 ③エンジニアリング産業の業態
■プラントエンジニアリング業が国内外の石油会社、石油化学会社から受注するプラント建設事業
とは、一般的にEPC(E:設計(Engineering)、P:調達(Procurement)、C:建設(Construction) )と
言われ、プラントが操業可能なレベルまで完成させて顧客に引き渡すターンキー(Turn Key:
キーを回すと稼働する)契約である。
■そのため、プロジェクトの規模が巨大(100億円∼1兆円)で長期(3~4年)にわたり、莫大な設
計図面の作成、管理や資機材の調達管理が求められ、建設工事要員かつ熟練工、管理監督要員など
多くの人材をマネージしなくてはならないビジネスであることから、プロジェクトマネジメントの
技術が極めて重要である。
■プロジェクトの企画から設計、建設、機能保証に至るビジネス遂行のためには、市場調査に始まり、
化学工学、材料工学、土木建設工学等の多様な学問体系に係る専門家によるマネジメントが不可欠。
【プラントエンジニアリング業の業態】
顧客(石油会社、石油精製会社、石油化学会社、電力会社、製鉄会社など)
−プロジェクト規模は100億円∼1兆円と莫大。契約から納入まで3∼4年。納入後の性能保証も必要−
Full Turn
Key※で納入
エンジニアリング会社
EPC契約
プロジェクト企画
経済性調査
技術調査
インハウスの
設計部隊
現地設計
会社による
設計
調達
機器・
資材メーカー
コンサル・商社
市場調査
設計(基本・詳細)
建設
主要機器
運営支援
効率的なプラント
点検の支援
サブコン
輸送
サブコン
サブコン
建設資材
安全確保のための
効率的なメンテナン
ス
現場での建設工事請負
労働力
ファイナンス・
アレンジメント
設計図面は
2tトラック1台分
部品の種類は、3万種類、
部品数は1000万点
超大型LNGプラント
1プロジェクト:2系列×780万㌧/年の工事量
※Full Turn Keyとは、顧客が鍵を回すだけで稼動できる状態にまで仕上げて納品することを指す。
コンクリート22万㎥を使用
(ギザのピラミッドと同規模)
鉄骨 28,000トン
(東京タワーは4,000トン)
一つの部品のミスでも
プラントが停止することがある
電気ケーブル全長 2,000km
(東京-福岡 1,800km)
5
1.業界の現状 ④エンジニアリング会社の組織
■1つのプロジェクトのマネージャーは、
「1つの会社の社長」のようなもの。
■国内外プロジェクトを営業、入札により
受注し、そのプロジェクトの実施は、プ
ロジェクトマネージャーが担当。
■顧客との間に立ちプロジェクトの進捗に
つき全権限を持ち、プロジェクトの進捗
状況、発注変更、資金回収、受け渡し等
の調整を行う。
■本社機能として、受注量の管理、プロ
ジェクトの採算性評価、プロジェクト実
施中のリスク管理等のプロジェクト・マ
ネージメントが重視される。
■特に、建設現場は多国籍であり、設計通
りにプラントの品質を維持し、工程管理
を行う上でのマンアワー管理(Man
Hour)がコスト管理上不可欠。
■将来の受注を目指した新技術の開発のた
めの研究開発機能。
■プロジェクト工程管理の効率を高めるI
T導入が不可欠。
■最近では、資機材の高騰や人材確保難か
ら調達コストのヘッジングや人材の囲い
込み等も重要。
会社の組織
プロジェクト体制
社長
IT
経営企画・総務
品質・環境
技術統括
CSR・コンプライアンス
業務管理
経営企画部
総務部
エンジニアリング
財務部
技術開発
法務部
プロジェクトマネージャー
海外事業統括
契約・保険
海外営業部
調達
プロジェクト部
輸送
地域拠点
監査室
プロジェク
ト管理マ
ネージャー
国内事業統括
エンジニア
リングマ
ネージャー
調達マ
ネージャー
品質管理
マネー
ジャー
現地工事
マネー
ジャー
環境安全
マネー
ジャー
国内営業部
プロジェクト部
会
計
総
務
輸
送
建
築
設
備
機
械
電
気
制
御
設
計
建
築
設
備
機
械
電
気
制
御
6
1.業界の現状 ⑤エンジニアリング業を巡る市場動向
■2000年以降、世界のプラント・エンジニアリング市場は拡大傾向が継続。
■我が国の海外プラントエンジニアリングの成約実績は、1960年代から拡大傾向にあるが、円高、
アジア通貨危機等の経済環境変化による需要動向により、大きく変動。
■我が国のエンジ企業全体の受注高を見ると、国内事業の縮小、海外事業の拡大という構造に
なっている。
我が国の海外プラント・エンジニアリング成約実績の推移
(億ドル)
我が国企業のエンジニアリング業務受注高の推移
(兆円)
20
2001 米国同時多発テロ
300
1997 アジア通貨危機
1985 プラザ合意
200
197.4
192.4
1991 湾岸戦争172.0
174.6
1979∼80
第二次石油危機
193.7
188.8
153.7
16.6
16.1
257.7
139.7
15
13.7
12.5
12.4
11.711.512.1
11.7
10.7
10.2
12.2
10
1977 円高不況
1973 第一次
石油危機
1971 ニクソ
ンショック
100
15.9
15.1
14.514.3
14.0
13.6
8.9 8.8 8.6 8.9 8.9 9.1
9.6
海外
国内
124.4
80.4
5
0
'50
'55
'60
'65
’70
'75
'80
'85
'90
'95
'00
(出典)『海外プラント・エンジニアリング成約実績』のデータをもとに作成。
'05
(年度)
プラントエンジニアリング関連世界市場の推移(売上高ベース)
(10億ドル)
700
600
500
200
1981
1986
1996
2001
2005(年度)
我が国エンジニアリング業の受注高及び従業者数の推移
上位10社
集中度
60%
651.2
(百万円)
14,000,000
50%
12,000,000
562.8
1991
(出典)(財)エンジニアリング振興協会『エンジニアリング産業の実態と動向』
(人)
250,000
受注高
従業者数
技術系
200,000
502.3
399.7 425.6 423.4
400
300
0
435.1
343.9
363.8 368.3 371.9 354.7 372.7
30%
30.0%
22.2% 21.4% 23.7% 22.9% 22.0%
25.1% 24.7%
23.2%
25.8% 25.9% 24.7% 24.5%
2002 2003 2004
6,000,000
100,000
2005 2006
(出典) 『ENR Top 225 International Contractors』より作成
50,000
2,000,000
0
0%
0
1999 2000 2001
150,000
8,000,000
20%
10%
1996 1997 1998
売上高
上位10社集中度
4,000,000
100
1994 1995
10,000,000
40%
(年)
0
1994年
1995年
1996年
1997年
1998年
1999年
2000年
2001年
2002年
2003年
2004年
2005年
2006年
(出典)経済産業省「特定サービス産業動態統計調査」
7
1.業界の現状 ⑥我が国エンジニアリング業界の現状
■我が国の海外プラント・エンジニアリング成約実績は、2005年度257億ドルと過去最高を
記録。2006年度は新規受注に比し受注残プロジェクトの遂行に注力した企業や顧客サイド
のプロジェクト投資決定の延期等から178億ドルに減少も2007年度上期は、126億ドル(対
前年度同期比16%増)と堅調に推移。
■地域的には、中東、アジアが大半を占めてきたが、近年、環境、新エネルギープラントの需要が
大きい北米や欧州、アフリカの産油・ガス国のウエイトが高まっている。
■機器別で見ると、LNG、石油関連のエネルギープラントと発電プラントが大半を占めてきたが、近
年、都市交通、鉄道等の交通インフラのウエイトが高まっている。
海外プラント・エンジニアリング成約実績の推移
地域別
2005年度
(257.7)
(億ドル)
2003年度
(188.8)
150
2004年度
(193.7)
120.3
100
機器別
122.8
119.1
2006年度
(178.5)
125.9
108.2
2002年度
(139.7)
80.0
68.5
74.6
70.3
50
2004年度
(193.7)
120.3
その他
西欧
100
北米
大洋州
中南米
アフリカ
50
中東
アジア
59.7
122.8
20006度
(178.5)
125.9
108.2
80.0
68.5
74.6
70.3
59.7
一般プラント
鉄鋼プラント
化学プラント
発電プラント
エネルギープラント
交通インフラ
情報・通信プラント
生活関連・環境プラント
2 0 0 7年 度
上期
2 0 0 6年 度
下期
2 0 0 6年 度
上期
2 0 0 5年 度
下期
2 0 0 5年 度
上期
2 0 0 4年 度
下期
2 0 0 4年 度
上期
2 0 0 3年 度
下期
2 0 0 3年 度
上期
2 0 0 2年 度
下期
0
134.9
119.1
2002年度
(139.7)
2 0 0 2年 度
上期
2 0 0 7年 度
上期
2 0 0 6年 度
下期
2 0 0 6年 度
上期
2 0 0 5年 度
下期
2 0 0 5年 度
上期
2 0 0 4年 度
下期
2 0 0 4年 度
上期
2 0 0 3年 度
下期
2 0 0 3年 度
上期
2 0 0 2年 度
下期
2 0 0 2年 度
上期
0
2003年度
(188.8)
150
134.9
2005年度
(257.7)
(億ドル)
8
1.業界の現状 ⑦エンジニアリング業界の生産性の現状
■我が国エンジニアリング企業の「従業員一人あたりの受注高」の推移をみると、全体としては過去
数年上昇傾向にあるが、企業別にみると、受注高が大型案件の有無等により、年によって上下す
ることから、中期的傾向としての上昇傾向はあるものの、「1人あたり受注高」も上下している。
■我が国のエンジニアリング企業のROA、ROEを見ると、欧米企業とも比肩している中で、韓国企
業とも差があまりない状況。
一人当たり受注額の推移(百万円)
B社一人あたり受注高の推移(百万円)
エンジニアリング企業のROA(%)
100.0
200
2,000
100
0
1人あたり受注額
受注高
米
p(
ou
F lu
Gr
g in
w
En
ha
bs
2006年度
eS
2005年度
従業員一人あたりの受注高
co
2004年度
2.5
Ja
2003年度
Th
2002年度
20
01
20
02
20
03
20
04
20
05
20
06
20
07
0.0
2.5
2.0
or (
0
2.2
)
4,000
5.4
g(
米
L in )
de
(独
)
Te
ch
n ip
(仏
Th
)
ys
se
n(
独
大
)
林
産
業
(
現
韓
)
代
重
工
(韓
)
20.0
300
5.6
4.3
r in
40.0
6,000
6.6
5.4
5.3
ee
58.1
400
6.9
)
60.0
8,000
8
7
6
5
4
3
2
1
0
米
69.9
61.3
500
C社
78.3
A社
80.0
B社
10,000 億円
84.9
(出所)経済産業省「特定サービス産業動態統計調査」
20
15
15.2
12.8
10.7
8.4
10
1,000
50
15.9
13.9
9.9
10.0
4.1
5
)
米
米
r in
ee
g in
w
En
ha
受注高
g(
p(
ou
従業員一人あたりの受注高
Gr
2001200220032004200520062007
L in )
de
(独
)
Te
ch
n ip
(仏
Th
)
ys
se
n(
独
大
)
林
産
業
(韓
現
)
代
重
工
(韓
)
)
(米
or
0
C社
0
0
bs
従業員一人あたりの受注高
100
22.6
25
eS
2006
2,000
30.4
30
co
2005
150
Ja
受注高
2004
3,000
35
F lu
2003
200
Th
2002
500
400
300
200
100
0
4,000 億円
B社
10,000
8,000
6,000
4,000
2,000
0
億円
エンジニアリング企業のROE(%)
C社一人あたり受注高の推移(百万円)
A社
A社一人あたり受注高の推移(百万円)
9
1.業界の現状 ⑧ユーザーからの評価
■我が国のプラントエンジニアリング会社の主要顧客
−国内では、石油精製会社、石油化学会社等
−海外では、国営石油・ガス会社、国際石油メジャー等石油・ガスの開発、精製、化学製品関連企業
が主
■国内顧客においては、自社国内工場建設にあたり、外国企業に発注することは極めてまれ(自社工
場の外国人労働者の活用を認めない等)であることから、国内プラントエンジ会社は、建設工事の請
負先として貴重な存在。
■海外顧客からの日本企業のみならず一般的なコントラクターに対する評価としては、その選定要因と
して「キーパーソンの質」、「プロジェクトマネージメント能力」を重視する企業が多い。
■また、顧客が好む契約形態も多様化、第三国エンジニアの活用も賛成する意見が多い一方で、品質
低下に不満を有する企業も多い。
【ダウンストリーム顧客のE&C選定要因】
1989
E&Cコントラクター選定要因
1995 1997 2001 2003
2005
0
プロジェクト・マネジメント
能力
工事能力
2
好ましい契約形態
3%
22%
折衷型契約
サービスの価値(品質/価格)
31%
コスト償還契約
5%
30%
満足
65%
品質低下に不満
EPC定額契約
詳細設計能力
4
ランキング
【ダウンストリーム顧客の動向】
キーパーソンの質
44%
価格競争力
6
第三国エンジニアの直接雇用
11%
同種ジョブ実績
56%
8
プロジェクト管理システ
ム
10
反対
賛成
大型案件分割発注の検討
9%
反対
9%
82%
賛成
33%
迅速性・柔軟性
12
出典: The 10h Transmar Study Report on the
Global Downstream E&C Industry, 2005
(注:2005年8月∼11月、米国Transmar Consult Inc.が世界のガス・石油精製・石化企業60社の意思決定
者120名に対するインタビューを実施し世界の主要EPCコントラクターの評価を取り纏めたレポート)
10
2.取り組むべき対策 ①エンジニアリング業界を取り巻く事業環境と課題
阻害要因・問題点
課題
取組の方向性
人材育成・確保対策
外部要因
○環境、資源・エネルギー制約の拡大
○資機材価格の短期高騰への対応
○世界的に旺盛なプロジェクト需要への対応
グローバル展開・ローカリゼーション対応
業界要因
個
別
企
業
要
因
付
加
価
値
の
向
上
効
率
性
の
向
上
○プロジェクトの大型化によるプロジェクトリ
スクの拡大
○EPCという単一ビジネスモデルからの事業
多角化
○海外に比べ国内の人材流動性が低い
マーケティング
○付加価値拡大競争への対応
○海外での顧客やサブコンとのパートナリン
グの必要性の高まり
○新興国市場への展開
プロダクト
○新技術を活用した新事業展開
○事業の上下・横展開による新たな事業分
野の開拓
業務プロセス
○IT活用による設計・調達・建設の効率化
○契約形態によるリスク回避
組織・人材
○高度なプロジェクトマネジメント人材の育成
○海外の熟練技術者の確保・育成
官民協力による
トップセールスの推進
海外プロジェクトへの
金融・保険機能の補完
事業対象の上下展開及び横展開
マネジメント効率の向上のIT活用
競争力のあるプロセス開発のための
新技術開発
業界固有の課題に対応した
基盤整備
11
2.取り組むべき対策 ②エンジニアリング業界を取巻く課題の具体例
【課題】
【個別企業要因:
【取組の方向性】
高度なプロジェクトマネジメント人材の育成】
発注側のエンジニアリング企業選定要因としては、「プ
ロジェクトマネジメント能力」、「キーパーソンの質」が主
として上げられことから、人材育成・確保が個別企業、
業界、産学連携等のレベルで大きな課題。
【外部要因: 資機材価格の短期高騰への対応】
近年の石油・金属価格の高騰は、資機材調達コスト
や現地での建設コストの高騰を招いており、工期の長
いプラント建設において契約額を上回るコストを発生
させる要因となっている。
【業界要因:プロジェクトの大型化によるプロジェクトリスクの拡大】
人材育成・確保対策
マネジメント効率向上のた
めのIT活用
プロジェクトの大型化とプロジェクト数が増大している
ことからプロジェクトマネジメントのリスクや建設現場
での労働者確保も困難になってきている。
【個別企業要因:付加価値拡大競争への対応】
コスト重視ではなく、付加価値重視となる商品を提供
する企業として競争力を持つことが必要であり、プラ
ントの大型化を望む顧客に対応する技術力が課題。
競争力のあるプロセス開
発のための新技術開発
12
2.取り組むべき対策 ②エンジニアリング業界を取巻く課題の具体例
【課題】
【取組の方向性】
【業界要因:EPCという単一ビジネスモデルからの事業多角化】
プラント・エンジニアリング産業の事業形態は、プ
ラント単体売り、EPC契約を中心とするもので受
注契約が存在するときは業績好調、受注が減る
という受注頼りの構造となっており、こうした構造
からの脱却が課題。
事業対象の上下展開
及び横展開
【個別企業要因: 海外での顧客やサブコンとのパートナリングの必要性の高まり】
従来先進国が導入していた現地調達、現地雇用等
の地域貢献を途上国側が求めてきている。特に産
油・ガス国における技術移転、人材育成等現地で
の高付加価値な産業育成への協力がビジネス展
開上、重要な課題となっている。
【個別企業要因: 新興国市場への展開】
海外需要、特に新興国におけるプラントエンジニア
リング市場は、ますます拡大するものと見込まれる
なか、各企業が新たな市場に進出するにあたって
の戦略構築が課題。
グローバル展開・ローカリ
ゼーション対応
官民協力によるトップ
セールスの推進
海外プロジェクトへの金
融・保険機能の補完
13
2.取り組むべき対策 ②全体像
取り組むべき対策
外部要因
○環境、資源・エネルギー制約の拡大
○資機材価格の短期高騰への対応
○世界的に旺盛なプロジェクト需要へ
の対応
競争力のあるプロセス開発のための新
技術開発
科学的・工学的アプローチ
プロジェクトマネジメント、リスク管理手法の導入
業界要因
品質を適正に評価する顧客との関係醸成
○プロジェクトの大型化によるプロジェク
トリスクの拡大
○EPCという単一ビジネスモデルからの
事業多角化
○海外に比べ国内の人材流動性が低い
人材育成・確保対策
マネジメント効率の向上のためのIT活用
製造・工程管理ノウハウ
品質の見える化
人材育成
IT活用
グローバル展開・ローカリゼーション対応
○新技術を活用した新事業展開
○事業の上下・横展開による新たな事
業分野の開拓
○IT活用による設計・調達・建設の効
率化
○契約形態によるリスク回避
○高度なプロジェクトマネジメント人材
の育成
○海外の熟練技術者の確保・育成
海外プロジェクトへの金融・保険機能
の補完
グローバル展開
日本企業の商談の側面支援
官民ミッションの派遣
官民協力による
トップセールスの推進
コンサル機能、デザインファーム的な設計・企
画機能、O&M等の上流、下流展開
事業対象の上下展開
及び横展開
国内外における連携、協業
(財)エンジニアリング振興協会による取組
国による情報基盤整備
業界固有の課題
個別企業要因
○付加価値拡大競争への対応
○海外での顧客やサブコンとのパート
ナリングの必要性の高まり
○新興国市場への展開
サービス産業生産性協議会で
示された横断的課題
課題
業界固有の課題に
対応した基盤整備
14
3.取組の方向性 ①個別企業が取り組むべき課題
■顧客に付加価値を提供・評価され、他社と差別化しうる事業提案力、プロジェクト遂行力
の醸成
−自社の技術力を評価してもらえる顧客との継続的パートナーシップの形成
−コーポレート・ブランド力の確立
■効率的なプロジェクト遂行により、顧客に信頼されるマネジメント能力の強化
○人材育成・確保 ○IT活用強化 ○新技術開発 ○リスクマネジメント
○契約法務の強化
■企業として持続可能な成長を確保するための事業展開
○事業の上流・下流展開、横展開
○新市場(グローバル化)と現地化(ローカリゼーション)対応
現地企業
ローカリゼー
ション対応
パートナ
リング
顧客(国営石油会社、
石油メジャー等)
他分野の事業
EPC契約
(契約技術の
高度化)
海外エンジ会社
人材育成確保
海外関連企業
JV
プラントエンジ会社
(IT活用、新技術開発、PM)
他の事業分野
への展開
国内大学
調達
国内外の資機
材メーカー
如何に差別化を図るか
(交通、環境等)
競合他社
15
3.取組の方向性 ②業界として取り組むべき課題
■業界((財)エンジニアリング振興協会)としても、2006年から最近の事業環境変化の現状認
識と今後の将来展望について、官民協力の下で経済産業省と議論を実施。
■我が国エンジニアリング産業における事業環境の変化
1.気候変動等
地球規模の課
題の顕在化
2.エンジニアリング
産業が直面するビ
ジネス現場の複雑
化、グローバル化
3.海外からの期
待は「経済協
力」から「産
業協力」へ
4.我が国エンジ
ニアリング産業
の意識の変化
5.協会活動へ
の新たな期
待の高まり
■業界として、エンジニアリング振興協会の新たな理念を設置
「当協会は、産学官の密接な協力により技術立国日本のエンジニアリング産業の社会的プレゼ
ンスを高めるとともに、会員の英知と技術を集合して持続可能な社会の発展に貢献する。」
■本理念の下で、以下の5つのミッションと10個のアクションプランに取り組む方向
1.我が国エンジ
産業の社会的
プレゼンス向
上と競争力強
化の推進
①情報発信
②基盤形成事業
の重点化
2.異業種団体の強
みを活かした協力
事業の推進
③異業種交流の充実
④海外ネットワーク
の構築
⑤外部資金活用を業
界横断的プロジェ
クト形成目的にシ
フト
3.気候変動問
題への対策を
含む持続可能
な社会発展へ
の貢献
4.エンジニアリ 5.透明性の高い
健全な財団運
ングを基礎と
営と事務局体
する産学官協
制の見直し
力・交流の推
進
⑨開かれた財団
⑥社会発展の
ための貢献活
動の強化
運営、収益事業
⑦エンジニアリ
ング学会機能の の拡大、コスト
削減
研究
⑧官との連携強 ⑩効率的な委員
会と事務局体制
化
16
3.取組の方向性 ③政策として取り組むべき課題
■官民連携によるトップセールス外交
― 欧米や中国はトップ外交によるプラント商談成立に注力。
― 我が国においても近年、総理・大臣のビジネスミッションが拡大。
■海外プロジェクトへの金融・保険機能の強化
― 他国に劣後しないECA(Export Credit Agency: 輸出金融機関)機能の確保
― PPP(Public Private Partnership:官民協調)プロジェクトへの円滑なリスク補
完
■2国間経済連携における競争環境の整備
― 世界的に経済連携はマルチとバイの2本立て。
― 特にEPA、租税条約、投資協定等での第3国と劣後しない対応が必要。
■プロジェクトマネジメント(PM)に係る人材育成支援
― 業界全体における取組を支援(製造中核人材育成事業)
― 産学連携パートナーシップにより大学活用のあり方を検討中。
■統計等の産業基盤の整備
― 産業分類における位置付けを明確化
―(財)エンジニアリング振興協会の活動支援
17
4.具体的対策 ①人材育成・確保対策
■プラントエンジニアリング企業の海外の主要顧客である国際的な石油精製、石油・ガス化
学産業が、プラントの設計・建設(E&C)を発注するエンジニアリング企業を選定する要因
は、過去10年以上にわたり「プロジェクトマネジメント能力」、「キーパーソンの質」が
上位1、2位を占めており、「価格競争力」や「ジョブ実績」などを上回っている。
■これは、エンジニアリング企業における「人材」育成の重要性を物語っており、企業レベ
ル、業界レベル、産学連携による人材育成・確保対策がエンジニアリング業の競争力確保
の観点から極めて重要。
企業・業界レベルでの人材育成対策
¾A社は国内に「社内カレッジを」を
創設し、プラント建設に係る高専レ
ベルからの人材育成・確保策を推進
¾(財)エンジニアリング振興協会は、
PM講習(基礎レベル、初級レベル、
中級レベル)を開始し(昭和54年か
ら)、エンジ会社のPM能力向上を支
援
¾NPO法人日本プロジェクトマネジ
メント協会(PMAJ)はP2M資格(入
門からスペシャリストまで4段階)や
プロジェクトマネジメントシンポジウ
ムを実施し、エンジ産業のみならず、
産業界のPM能力向上を支援。
国の支援による人材育成事業
産学連携による人材育成支援
産学連携製造中核人材育成事業
「次世代のエンジニアリング産業を担う
プロジェクトマネージャー育成事業」
産学人材育成パートナーシップ
学生から社会人まで一貫した人材
育成プログラムの構築。
〔業界向け教育プログラムの作成〕
・プロジェクトマネジメントコース
・プロジェクト人材育成コース
・海外プロジェクトマネジャー育成
コース
〔大学向け教育プログラムの作成〕
・エンジニアリングマネジメントコース
・現場体験型学生研修コース
機械分科会 プラント・エンジニアリ
ングWG
・プラントエンジニアリング業の人材
育成に関係する産学の関係者に
よって構成。
・「エンジニアリング産業における人材
育成の現状と対応 」、「求められる人
材像」、「今後の産学連携に向けた取
組」等を議論。
・大学における社会人教育のあり方
も要検討
・本年2月末に報告書を提出。
18
4.具体的対策 ②グローバル展開・ローカリゼーション対応
■我が国のエンジニアリング産業は、1960年代から海外展開を積極的に展開。当時の円安下
の経済環境も後押しし発展途上国や共産圏等の産業インフラ建設に貢献。
■これまで日本の技術力が発揮し得る中東、北アフリカ等産油・ガス国やアジア諸国の市場
が重点地域となっているが、これらの地域でも欧米エンジ会社に加え、中韓印のエンジ会
社との競争にも直面している。
■今後、アフリカ、中央アジア、CLM(カンボジア、ラオス、ミャンマー)等の我が国エンジニアリング
業界における新規市場への戦略的な展開が重要。
■また一方で、相手国サイドにおいて、従来先進国が導入していた現地調達、現地雇用等の地域貢
献が発展途上国サイドも求めるようになってきており、特に産油・ガス国における技術移転、人材
育成等現地での高付加価値な産業育成への協力が海外でもエンジニアリング・ビジネスを展開す
る上で、極めて重要な課題となっている。
グローバル展開の歴史的な事例
■アルジェリアの石油・ガス精
製プラント建設に1950年代か
ら進出(A社)
■ナイジェリアのグラスルーツ
製油所の建設を1977年に実
施(B社)
■ソ連時代から肥料建設プラ
ントを多数受注(C社)
海外事業所のローコストエンジニアリ
ング拠点から地域市場の戦略拠点へ
■従来、エンジ会社の海外事業所は人件費
の安い現地雇用によるローコストエンジニ
アリング拠点。
ローカリゼーションへの対応
■A社は、サウジアラビアに2008年にサウジアラム
コからの受注を担う子会社を設立予定。(サウダイ
ゼーションへの貢献を担う。)
■最近では、当該国や地域的なEPCビジネ ■B社は、カタールにプラントの一貫受注を目指し
スを獲得するための戦略的拠点としての位 た現地企業との合弁会社設立予定。
置付けへ発展。
■D社は、インド・エンジニアリング会社のL&T社と
超臨界石炭火力発電用のボイラー・タービン製造、
建設合弁会社を設立予定。(2009年11月)
○A社の海外事業所従業者 約4,000人
○B社の海外事業所従業者 約1,700人
■E社は、中国のセメント・プラント・メーカーと合弁
○C社の海外事業所従業者 約3,500 人
で、セメント廃熱回収・利用プラントの生産・建設
の合弁会社を設立。(2007年9月)
19
4.具体的対策 ③官民協力によるトップセールスの推進
■欧米のトップ外交においては、自国企業の戦略商品を相手国のトップに自ら売り込む又は
外交カードに使うような「トップセールス」が実施されるケースが多い(競合他社が国内
に存在しないという背景もある)。
■最近、我が国でも我が国企業の海外への投資や大型案件の受注を支援するにあたり、総理
等日本政府のトップと民間企業が一緒に海外へのビジネス展開を図るトップセールスを推
進する。
■二国間経済連携が進展する中で、相手国との具体的な産業協力強化の観点から個別のイン
フラ整備案件における日本企業の商談を側面支援し、日本企業が参加した場合の貿易保険
や輸出信用付与等の政府として支援するトップセールスは、第三国との競争環境整備の点
からも極めて重要。
【最近の外国政府のトップセールスの事例】
■仏・サルコジ大統領が、モロッコを訪問し、高速鉄道の付
与をコミット。2007年10月にアルストムがプレスリリースで
「高速鉄道鉄のデザイン、建設、オペレーション、メンテナン
スについてモロッコと合意した」と発表。
■ 仏・アルストムは、サルコジ大統領の同席のもと2008年2
月に新型高速列車AGVの試作車を公開し、戦闘機のよう
な外観の最新鋭機(AGV)を、世界最高の速度、車両空間、
環境性能を備えた列車だと紹介。イタリアの新しい鉄道会
社NTVは、一般公開を待たずにAGVを発注。
■米・ブッシュ大統領が、ベトナムのIPP事業へのAES社の
参入を支援。(中国も同様)
■中国・トップ外交によるアフリカ、中南米等の資源権益の
獲得。
【我が国における官民協力によるトップセールスの事例】
■安倍前総理による越、中東、アジア3か国への官民ハイレベル
ミッションの派遣
−日越戦略的パートナーシップの締結(高速鉄道、高速道路、ハ
イテクパーク)
−インドの幹線貨物鉄道輸送力強化計画に、STEPを活用した円
借款による支援を前向きに検討したい旨表明
■甘利経済産業大臣の中東、中央アジア外交、南部アフリカ資源
外交等
−カザフスタンの原子力・ウラン協力
−サウジアラビアとの経済協力
−南アフリカでのレアメタル協力、インフラ整備協力
■台湾新幹線の日本連合の受注
一度は敗退した日本連合も政官
民による対応により逆転受注に
成功。
■中国・三峡ダム建設で失注
−欧州連合の強力なトップ
セールス。結果的には失注。
20
4.具体的対策 ④海外プロジェクトへの金融・保険機能の補完
■海外のプラント建設プロジェクトは、高額かつ大規模なプラント資材の輸出に係るリスクに加え、ファイ
ナンス・アレンジが応札条件に付加される例やプラント建設のみならず事業権(コンセッション)契約やB
OT契約等PPP(Public Private Partnership)型のインフラ整備が拡大。
■よって、海外のプラント・エンジニアリング・ビジネスにおいて、JBIC(輸出信用、投資金融)及び
NEXI(貿易保険、投資保険)による支援制度は極めて重要。
■特に、今後著しいプラント需要の拡大が見込まれる中東、ロシア・中央アジア、アフリカ等はビジネス遂
行上のリスク補完が不可欠。
■世界的に二国間経済連携が拡大しつつある中で第三国に比し日本企業が不利とならない環境整備は不可欠。
■また、資機材の高騰等によるリスク回避の必要性から、日本のプラント企業が得意としていたLump
Sum(定額請負)契約からCost Plus Fee(コスト実費構造に業務対価を上乗せ)、Reimbursable(コスト償還)
契約またはこれらの統合型・転換型契約など契約技術の高度化が進展。
【我が国ECA(Export Credit Agency)機関による支援強化】
NEXI
■資源エネルギー総合保険の制度
資源エネルギー案件のリスク特性
を踏まえ、従来に比べて大幅に低
い料率、幅広いリスクてん補範囲等
を実現。本保険は、ニーズの高まり
を勘案し、また、資源開発を促すこ
とで高騰する資源価格を抑制する
一助となることも視野に引受枠を従
来の3倍以上に拡大。
■地球環境保険の制度
日本企業による風力発電、太陽光
発電等の省エネ・新エネ機器の輸
出などを後押しするための制度を創
設する方針。 これによって途上国
の経済成長と温室効果ガス削減の
両立を支援。
JBIC
■マッチングの実施
第三国が有利なファイナンス条
件を提示した場合に、日本企業
の公平な競争環境を確保するた
めに、同程度のファイナンス条件
を日本としても用意。
■電力セクターへの民間資金活用の
ための連携
(インドネシア政府とIPPに関する包括
覚書を締結)
■ロシア国内産業のための日本企
業による輸出を支援
(ロシア国営銀行向けクレジットラインの
設定)
【PPPプロジェクトへの対応】
アジアPPP協議会の活動
【二国間経済連携への対応】
二国間経済連携施策
■近年、2国間の経済交流拡大の観点
アジア地域におけるインフラ整備事業
から、EPA、租税条約、投資協定等の
において日本企業が参加するPPP事
2国間経済連携に係る枠組みの構築
業の推進が経済協力としての重要で
を推進。
あるため、2006年1月にアジアPPP
推進協議会を設立。現在、約50社の ■このような二国間枠組の中で、第三
会員企業が4つの調査部会に分かれ
国に比し日本のプラントエンジニアリン
て活動。
グ企業の公平な競争環境の確保が不
可欠。
1.電力調査部会(資金協力課)
○IPP等の発電プロジェクト
■特に、エンジニアリング産業がEPC
2.都市交通調査部会(プラント室)
から事業投資、現地企業との協業、
○地下鉄、MRT等の鉄道プロジェクト
ローカリゼーションへの対応等の流れ
3.上下水道調査部会(プラント室)
の中で、このような2国間スキームを
○自治体の上水道供給、下水道処理プロ
活用しうる機会も相当に拡大しつつあ
ジェクト
ると認識。
4.IT・公共サービス調査部会(経済協力課)
○病院・防災・空港プロジェクト
21
4.具体的対策 ⑤事業対象の上下展開及び横展開
■従来から、プラント・エンジニアリング産業の事業形態は、プラント単体売り、EPC契約を中
心とするものであり、需要拡大期には業績好調、減退期には業績悪化という受注生産性の高い構造
にある。
■そのため、コンサルティング機能、デザインファーム的な設計・企画機能、O&M(Operation &
Maintenance)、ライフサイクルエンジニアリング等のエネルギー、石油・ガス化学等の各社の主力
分野での事業の上流・下流展開、事業投資、さらに主力分野から今後需要が見込まれるインフラ整
備に係るエンジニアリング分野への事業の多角化等の横展開が必要。そのための国内外における連
携、協業も重要。
■プロジェクトの大規模化と資機材高騰等に対応したプロジェクト・リスクの低減の観点から顧客
サイドも企画段階(FEED : Front End Engineering and Design)から建設、工事投資まで一貫したエ
ンジニアリング会社とのパートナーシップを実現する動きもあり。
コンサルティング機能への展開
R&Dエンジニアリング・サービスへの展開
■2008年、B社は、国際石油メジャー
のシェルと協力契約を締結し、国内プ
ラント・オーナー向け総合コンサル
ティング業務を開始。
■C社は、素材・バイオ等のメーカーの
有する科学的知見を産業化するため
のR&Dに係るプロセス化とプラント
のスケールアップに係るサービスを
展開中。
エネルギー分野での事業投資への展開
環境ビジネスへの展開
■A社は、海外で受注したプラント建設
に関連した造水・電力事業に資本参
加。
■A社は、2007年に中国メーカーと共
同で代替フロン工場から排出される
「フロンHFC23」の回収・分解事業に
関するCDM事業として、承認を獲得。
■また、石油開発・精製プラントのノウ
ハウをベースに石油の探鉱・開発事
業にも一部参画。
■本件は日本企業が中国で認められた
CDM事業。
O&Mサービスへの展開
■Flour社(米)は、電力・非鉄精錬等
の分野でのO&Mの受託事業を米国
内で展開するとともに、大学と連携し人
材育成事業にも進出。
■国内エンジ会社もメンテナンス・サー
ビスの新規商品開発や子会社設立に
よる事業拡大に注力。
鉄道エンジニアリングへの展開
■C社は、2007年にJ社と提携し、K
社を設立し、海外で需要拡大が見込
まれる都市交通・鉄道分野のエンジ
ニアリング事業を展開。
22
4.具体的対策
⑥マネジメント効率の向上のためのIT活用
■プラントエンジニアリング業は、莫大な量の設計図面(2tトラック1台)、調達資材(3万種、100万
点)、建設要員(3万人)及び長期の建設工事期間(3∼4年)を効率的に管理するビジネスで、IT活
用は不可欠。
■また、プラント建設は、大規模かつ複雑な空間構築技術であることから、3次元さらには時間軸も加味し
た4次元なCAD(Computer Aided Design)技術の採用により、安全なインターフェースの確保や調達・納
品・据付等のハード情報と契約・発注・送金等のソフト情報を総合化したITシステムの導入が進展して
おり、一部には顧客サイドの工事管理部門とのシステム共有化が指示される事例もある。
■さらに、調達資機材の納品・在庫管理には、GIS(Geographic Information System)が活用される等、最
新のIT技術の採用が競争力向上を図る上で重要。
■情報資産を安全かつ適正に維持し、有効活用するために、情報セキュリティマネジメントシステム
(ISMS)の国際規格ISO/IEC 27001:2005 (JIS Q 27001:2006)の第三者認証を取得する事例もある。
[i-PLANT21による情報管
理の効率化]
i-FRONT(初期設計におけるエンジニアリン
グ),i-ENG(エンジニアリングデータベース),i3D(3D統合設計),i-MAT(資材管理),iFIELD(現場管理),i-DMS(ドキュメント管
理),i-PMS(プロジェクト管理)の7つのサブ
システムを統合したプロジェクト遂行
システム。
プラント建設に必要なデータを入力すれ
ば設計から完了まで一元的に管理可能。
[4次元CADシステムによる
プラント設計]
4次元の建設工法シミュレーション
とスケジュールデータを結合して、
現場のイメージをシステムで把握し
ながらプロジェクトをコントロール
するシステム。
[GIS活用による在庫管理]
バーコードラベルを資材に貼り
付け、読み込み時にGPS情報も同
時に記録する。
現場取付時に必要な資材とその
座標データを地図に表示させて、
捜索する。
23
4.具体的対策 ⑦競争力のあるプロセス開発のための新技術開発
■プラント・エンジニアリングにおける競争力は、顧客の求める最終製品をより経済的・
技術的に生産し得る「プロセス」を提供できるかがカギ。
■すなわち、プラントのスケールアップ技術、既存の科学的知見の応用による新
たな工業プロセス化技術、既存技術の統合化技術等により如何に差別化され競争
力のある技術を開発、提供するかが重要。
■今後、気候変動等の環境制約や資源エネルギー制約が高まっていくにつれ、プラント・
エンジニアリング産業による工業化技術力や統合力への期待が高まるとともに、国主
導の技術開発プロジェクトへの積極的な貢献が期待される。
【環境制約対応】
CO2の回収・固定化技術
CCS (Carbon Capture Storage )
【資源エネルギー制約対応】
GTL(Gas To Liquid)
技術開発プロジェクト
■石油や天然ガスと一緒に採掘 ■ 天然ガスを液体燃料化する
される採掘ガスに含まれている
GTL技術は、石油に代わる新
CO2は、分離後、大気に放出さ
たな液体燃料ソースを確保す
れているが、これを大気に放出
る極めて有用な技術。
せず、圧力をかけ、地中のガス
貯留層下部に位置する帯水層 【取組事例】
・日本GTL技術研究組合
に再注入、固定化する地中隔
平成18年度から平成23年度(
離する技術。
予定) まで、約360億円(5年間
)の予算を用い、技術的・経済
的に利用可能なGTL技術の開
発を目指している。
・B社、F社等が本研究開発に
参加。
【スケールアップ対応】
【競争力のあるプロセス技術】
■B社は、カタールが有する世 ■医薬品製造現場では、医薬
界最大級のガス田「ノースフィー 品メーカーによる新薬開発競
ルド」の年産800万トン超の既存
争が激しく、その新薬を如何
のLNG生産施設3 系列と同じ
に効率的なプロセスで大量生
敷地に、世界初・最大となる年
産できる工業プロセスを提供
産780万トンの超大型LNGプラ
できるかがエンジニアリング
ント2系列とその関連設備を建
会社の役割。
設中。
【最近のA社の建設事例】
以下の製薬工場の工場計画又
は基本設計から完成後の性能保
証まで実施。
B社のLNG
B社のLNG プロジェクト実績・大型化
Qatargas II Train 4 & 5
QatargasII Ras Laffan,
Qatar
7.8mtpa
x 2 2007, 2008
RasGas II Train 3
RasGas II Ras Laffan, Qatar
4.7mtpa 2003
Qatargas Train 1 & 2
Qatargas Ras Laffan,
Qatar
2.0mtpa x 2 1997
ADGAS Train 1 & 2
ADGAS Das Island,
U.A.E. 1.1mtpa x 2
1976
Arun Train 4 & 5
Pertamina Arun,
Indonesia 1.76mtpa x 2
1984
Qatargas Train 3
Qatargas Ras Laffan,
Qatar
2.0mtpa 1998
RasGas II Train 4
RasGasII Ras Laffan,
Qatar
4.7mtpa 2005
RasGas(3) Train 6 & 7
RasGas(3) Ras Laffan,
Qatar
7.8mtpa x 2 2008, 2009
RasGas II Train 5
RasGas II Ras Laffan,
Qatar
4.7mtpa 2006
・G製薬栃木(完成2004年)
・H薬品工業静岡(完成2004年)
・I製薬大分(完成2003年)
Qatargas 3&4 Train 6 & 7
Qatargas 3&4 Ras Laffan, Qatar
7.8mtpa x 2 2009, 2010
Sakhalin LNG Train 1 & 2
Sakhalin Energy Sakhalin Island,
Russia 4.8mtpa x 2 2007 & 2008
ADGAS Train 3
ADGAS Das Island,
U.A.E.
2.5mtpa 1994
Bontang Train E, F, G
Pertamina Bontang,
Indonesia
2.3mtpa 1989, 1993, 1997
Oman LNG Train 1 & 2
Oman LNG Qalhat,
Oman
3.3mtpa x 2 2000
等
Qalhat LNG Project
Qalhat LNG Qalhat,
Oman
3.3mtpa 2005
Qatargas Debottlenecking Project
Qatargas Ras Laffan, Qatar
+1.0mtpa x 3 2003, 2004, 2005
1
24
4.具体的対策 ⑧業界固有の課題に対応した基盤整備
■プラント・エンジニアリング業界が抱える固有の課題に対応した諸事業を(財)エンジニ
アリング振興協会において推進中。特に2008年度は「エンジニアリング改革元年」と
位置付け、事業改革を計画中(2008年は設立30周年)
■国としても、産業分類における位置付けの明確化やサービス統計の整備が必要。
(財)エン振協(ENAA)による取組み
協会のミッションの
明確化
1.我が国エンジ産業の
社会的プレゼンス向上
と競争力強化の推進
2.異業種団体の強み
を活かした協力事業の
推進
3.気候変動問題への
対策を含む持続可能な
社会発展への貢献
国による情報基盤整備
プラント建設契約モデルフォームの作成
・プラントオーナーとプラント建設の請負業者との
間での責任所在等の明確化が主眼
・世界銀行の標準入札のベースとして採用された。
ENAAスタンタードの作成
・プラント建設に係る設計、積算、調達、品質検査、
工事等に係る業務の標準マニュアルを作成
・80∼90年代の国内企業の業務標準として活用。
エンジニアリング白書の作成
・1982年から毎年、国内エンジ産
業の「実態と動向」をとりまとめ
産業分類の明確化
平成20年度制度改正により、20
年4月1日から「プラントエンジニアリ
ング業」が「技術サービス業」の例示
として明記されることが決定。
サービス統計のエンジニアリング業
・特定サービス産業動態統計調査
(平成4年∼)
・特定サービス産業実態調査
(昭和57年∼平成15年)
4.エンジニアリングを
基礎とする産学官協力・
交流の推進
国際市場におけるFS調査支援
5.透明性の高い健全
な財団運営と事務局体
制の見直し
・JETRO等による民活プラント
貿易に係る各種FS調査は、案件
発掘、相手国政府への提案等の観
点で重要。
社会的プレゼンス向上対策
・「エンジニアリングの魅力(仮称)」小冊子の作成
を計画中
・「エンジニアリング功労者表彰」の実施
25
5.プラントエンジニアリング業に係る産業再生法事業指針作成の意義
■プラントエンジニアリング産業の生産性の向上は、単に当該産業の国際競争力の
維持・向上という効果のみならず、以下のような我が国の製造業やエネルギー産
業の生産性向上にも寄与するもの。
○国内外における我が国の石油・ガス、化学、発電、製鉄等の産業界に技術的・
経済的に競争力のあるプラントを提供することにより、これらの産業の競争力強
化に貢献。
○環境・資源エネルギー等の成長制約に対応した新たな生産プロセスやエネル
ギー供給プロセスを、我が国産業に提供することにより、国際競争力強化に貢献。
■海外の産業・社会インフラ構築に協力することにより、我が国による国際貢献に
寄与。
■よって、産業再生法に係る「プラントエンジニアリング産業の活力の再生に向け
た基本指針」(事業分野別指針)を作成し、業界の取り組みに対する国の継続的
な支援を行うこととする。
26
Fly UP